説明

トップコート用組成物およびそれを用いたパターン形成方法

【課題】波長300nm以下の電磁波である高エネルギー線または電子線を用いたフォトリソグラフィーにより、特に液浸リソグラフィーにて、極めて微細且つ高精度なパターンを与えるトップコート用組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰返し単位を構造中に含有することを特徴とするトップコート用組成物。


(式(1)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、フッ素を有していてもよく、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖状パーフルオロアルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィーによるパターン形成時に、レジスト膜上にコートするトップコート用組成物およびそれを用いたパターン形成方法に関する。特に、本発明のトップコート用組成物は、波長300nm以下の紫外光を用いた液浸リソグラフィー、即ち液浸露光プロセスに適する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターを始めとするデジタル機器の発展により、二次元、三次元画像データ等の膨大な量のデータの演算処理が可能となってきた。これを実現するためには単位時間当たりの処理量の増加が不可欠であり、高速処理に見合う大容量且つ高速転送が可能なメモリ、およびより高速なマイクロプロセッサが要求され、そのスペックは益々高度のものとなりつつある。また、インターネット等のネットワークのブロードバンド化が加速し、デジタル機器に要求される演算処理能力は益々高まっていくものと予想される。
【0003】
これら要求を満たすために、半導体素子および各種デバイス機器には、より一層の素子および回路の高密度、高集積化が求められる。高密度、高集積化に伴い微細且つ高精度なパターン加工を可能とするフォトリソグラフィー技術は益々高度なものとなり、より高精度なパターンを与える露光装置の検討がなされてきた。尚、フォトリソグラフィーとは、感光性の物質(フォトレジスト)を塗布した基板表面を、所望のパターンに露光することである。また、フォトリソグラフィー技術は、フォトレジストの露光された部分と露光されていない部分の現像液による溶解度の差異により、レジストからなるパターンを基板上に形成させる技術である。
【0004】
このような、フォトリソグラフィー技術において、短波長の紫外光を用いることによって、より微細且つ高精度なパターンが得られるようになって来た、例えば、波長248nmのフッ化クリプトンエキシマレーザー(以下、KrFレーザーと呼ぶ)、波長193nmのフッ化アルゴンエキシマレーザー(以下、ArFレーザーと呼ぶ)がフォトリソグラフィーに使用される。
【0005】
また、半導体素子製造装置であるステッパー型露光装置(縮小投影型露光装置)に用いられる縮小投影レンズにおいては、レンズの光学設計技術の進歩により解像度が大きく向上し、フォトリソグラフィー技術による半導体素子の高密度、高集積化に大いに貢献している。ステッパー型露光装置は、極精細フォトマスクであるレチクルのパターンを縮小投影レンズにて縮小させウェハー上のフォトレジストに露光する。
【0006】
ステッパー型露光装置に使用されるレンズの分解能は、NA(開口数)で表されるが、空気中ではNAは0.9程度が物理的な限界とされており、既に達成されている。
【0007】
例えば、ArFレーザー(波長:193nm)を使用したフォトリソグラフィーにおいては、レンズとウェハーの間の空間を空気よりも屈折率の高い媒体で満たすことによって、NAを1.0以上に引き上げる試みがなされており、特に媒体として純水(以下、単に水という場合もある)を使った液浸方式による露光、即ち、液浸リソグラフィーが注目される。
【0008】
しかしながら、液浸リソグラフィーにおいては、レジスト膜が媒体(例えば水)と接触することから様々な問題点が指摘されてきた。
【0009】
例えば、露光によってレジスト膜中に発生した酸や、クエンチャーとして加えたアミン化合物が水に溶解することに起因しレジストの溶解性が変化し、パターン加工精度が甘くなることで、意図したパターン形状と差異が生じること、またレジストの膨潤による露光済のレジストパターンの倒れ(パターン倒れ)等が挙げられる。
【0010】
解決手段としては、レジスト膜と水とを完全に分離すべく、レジスト膜上にトップコート層を設けることが有効である。
【0011】
従って、トップコート用組成物には、透明性、良好な現像液溶解性、溶剤溶解性および純水に対する耐性(撥水性)が要求される。尚、本発明において、溶剤溶解性とは、トップコート用組成物を溶剤に溶かしてトップコート液を調製する際の、トップコート用組成物の溶剤に対する溶解性をいい、現像液溶解性とは、レジスト上にトップコート液を塗布しトップコート膜と成し、露光した後にトップコート膜および露光部のレジスト膜を溶解させるが、その際のトップコート膜の現像液に対する溶解性をいう。
【0012】
かかる要求を満たすトップコート用組成物として、例えば、特許文献1には、ヘキサフルオロイソプロパノール基を2個以上含むユニット(構造単位)を含む繰り返し単位を有するトップコート組成物が開示されている。本トップコート用組成物は、現像液溶解性に優れ、且つレジストの膨潤を抑制できる。
【0013】
また、レジストにおいては基板への密着性を確保するためにラクトンユニットが用いられ、特に透明性、ドライエッチング耐性に優れた脂環ラクトンが優れていることが知られ、例えば、非特許文献1に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−316352号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】長谷川悦雄、前田克己「ラクトン骨格を有するポリマーの研究開発動向」、高分子学会編「高分子」2008年10月号 vol.57 P850〜855
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
液浸リソグラフィーでは、露光後に媒体(水)が残存すると欠陥の原因になるためトップコート用組成物に撥水性があることが要求されるようになってきた。トップコート用組成物は、相反する性質である撥水性と現像液溶解性とを併せ持つことが好ましい。
【0017】
しかしながら、その繰り返しユニットにヘキサフロオルイソプロパノール基を2個以上有する、特許文献1に記載のトップコート用組成物は、複数のOH基を有し、撥水性に優れるとは言い難かった。
【0018】
上述したように脂環ラクトンは透明性、ドライエッチング耐性に優れていることが知られているが、溶剤溶解性および現像液溶解性がトップコート用途には適しているとは言えなかった。
【0019】
よって、特許文献1に記載のトップコート用組成物、非特許文献1に記載のレジストを、長300nm以下の紫外線を用いてフォトリソグラフィー、特に液浸リソグラフィーにてパターン形成を行う際にレジスト膜に塗布するトップコート用組成物に使用するには、撥水性または現像液溶解性のいずれかに不安があった。
【0020】
本発明は、かかる問題を解決し、波長300nm以下の電磁波である高エネルギー線または電子線を用いてフォトリソグラフィー、特に液浸リソグラフィーにてパターン形成を行う際にレジスト膜に塗布するトップコート用組成物であって、好適な撥水性および現像液溶解性を備えることで、極めて微細且つ高精度なパターンを与える有用なトップコート用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明において、トップコート用組成物に用いる含フッ素ポリマー化合物の化学構造中の繰り返し単位として、含フッ素ラクトンモノマー化合物を導入した。このことで、相反する性質である撥水性および現像液溶解性を併せ持つトップコート用組成物が得られた。
【0022】
即ち、本発明において、フォトリソグラフィーに適用させるために、含フッ素ラクトンモノマー化合物を重合させた含フッ素ラクトンポリマー化合物を材料に用いて、トップコート用組成物を調製したところ、液浸リソグラフィーに用いるに好適な、微細且つ高精度のパターンを得るに有用な現像液溶解性および撥水性を持つトップコート用組成物が得られた。
【0023】
具体的には、ラクトン化合物は透明性に優れるので、レジスト膜に塗布するためのトップコート用組成物として用いることで、微細且つ高精度なパターンが得られる可能性がある。さらに、ラクトン化合物に、特定の含フッ素アルキル基を付加させたことで、フォトリソグラフィー、特に液浸リソグラフィーにてパターン形成を行う際に、好適な撥水性および現像液溶解性を備えるトップコート用組成物が得られた。
【0024】
即ち、本発明は以下の発明より構成される。
【0025】
[発明1]
下記一般式(1)で表される繰返し単位を含有することを特徴とするトップコート用組成物。
【化1】

【0026】
(式(1)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、フッ素を有していてもよく、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖状パーフルオロアルキル基である。)
即ち、本発明のトップコート用組成物の含有する前記繰り返し単位は、以下、3点の特徴を兼ね備える。
【0027】
その1.エステル結合のアルコール部位の1位炭素が3級になっている点。即ち、酸分解性を持つ繰り返し単位の特徴を有する。
【0028】
その2.前記アルコール部位がラクトン構造を有する点。即ち、密着性を持つ繰り返し単位の特徴を有する。
【0029】
その3.前記ラクトン構造にパーフルオロアルキル基であるRが付加している点。即ち、パーフルオロアルキル基の導入効果により、従来よりも、撥水性および溶剤溶解性を向上させる。
【0030】
[発明2]
下記一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物と他の重合性単量体とが重合したことを特徴とするトップコート用組成物。
【化2】

【0031】
(式(2)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、Rは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、フッ素を有していてもよく、Rは炭素数1〜4の直鎖状パーフルオロアルキル基である。)
即ち、一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物と、一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物を除く他の重合性単量体とが重合したことを特徴とする発明1のトップコート用組成物である。
【0032】
[発明3]
が、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基またはシクロヘキシル基であることを特徴とする発明1または発明2のトップコート用組成物。
【0033】
[発明4]
、RおよびRがメチル基であり、RおよびRが水素原子であることを特徴とする発明1乃至発明3のいずれかのトップコート用組成物。
【0034】
[発明5]
がトリフルオロメチル基であることを特徴とする発明1乃至発明4のいずれかのトップコート用組成物。
【0035】
また、一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物は、種々の重合性単量体と重合可能であり幅広いものが用いられるが、中でも(メタ)アクリル酸エステルの重合性が高く、特にヘキサフルオロイソプロピル基を有するものが好適に使用される。
【0036】
[発明6]
前記他の重合性単量体が、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含むことを特徴とする発明1乃至発明5のいずれかのトップコート用組成物。
【0037】
好ましくは、前記他の重合性単量体が、少なくともヘキサフルオロイソプロピル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むことを特徴とする発明1〜5のいずれかのトップコート用組成物である。
【0038】
ヘキサフルオロイソプロピル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、トップコート用組成物の極性向上に寄与し、トップコート液を調製する際の溶剤溶解性を向上させる。
【0039】
また、酸によって分解する酸分解性は、前記含フッ素ラクトンモノマー化合物が有しているものの、別途、酸分解性の重合性単量体をさらに加えてもよく、トップコート膜の現像液溶解性が向上する。
【0040】
以上のことから、一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物、ヘキサフルオロイソプロピル基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび酸分解性重合性単量体を有する3成分以上が重合したトップコート用組成物が特に好ましい。即ち、前記重合性単量体が、ヘキサフルオロイソプロピル基を有する(メタ)アクリル酸エステルまたは酸分解性重合性単量体であることが好ましい。
【0041】
[発明7]
重合性単量体が、ヘキサフルオロイソプロピル基を有する(メタ)アクリル酸エステルまたは酸分解性重合性化合物であることを特徴とする発明1乃至発明6のいずれかのトップコート用組成物。
【0042】
[発明8]
質量平均分子量が1,000以上、1,000,000以下であることを特徴とする発明1乃至発明7のいずれかのトップコート用組成物。
【0043】
当該質量平均分子量が1000以上であると、レジスト膜としたときの強度が得られ、1,000,000以下であるとトップコート液とする際に、好適な溶媒への溶剤溶解性が得られ、平坦なレジスト膜を得やすい。
【0044】
[発明9]
発明1乃至発明8のいずれかのトップコート用組成物と溶剤とを含むことを特徴とするトップコート液。
【0045】
[発明10]
発明9のトップコート液をレジスト塗布済の基板に塗布する第1の工程と、当該基板を加熱する第2の工程と、波長300nm以下の電磁波である高エネルギー線または電子線を用いてフォトマスクを介してレジストを露光する第3の工程と、現像液を用いて露光部位のレジストを溶解しパターン形成する第4の工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0046】
本発明により、特定の含フッ素ラクトンモノマー化合物を含有するトップコート用組成物、含フッ素ラクトンモノマーと他の重合性単量体を含有するトップコート用組成物、これらトップコート用組成物に溶剤を加えてなる本発明のトップコート液が得られた。トップコート液とした際に、従来より撥水性および現像液溶解性が増したことで、波長300nm以下の紫外光を用いてフォトリソグラフィー、特に液浸リソグラフィーにて、レジスト膜上に塗布した後にパターン形成を行うと、極めて微細且つ高精度なパターン形状を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2010−39242号明細書の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
【0048】
以下、本発明を構成する各要素について説明する。
【0049】
[含フッ素ラクトンモノマー化合物]
本発明のトップコート用組成物に用いる一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物は、重合性アクリルのカルボン酸部位とアルコール部位を有する含フッ素ラクトンのアルコール部位とがエステル結合したものである。当該含フッ素ラクトンモノマー化合物を用いて調製したトップコート用組成物は、従来のフッ素を持たないラクトンモノマーを用いて調製したトップコート用組成物と比較して、撥水性および現像液溶解性の向上を果たすことができる。
【0050】
即ち、一般式(2)に示すように、さらに含フッ素基を導入することにより、当該含フッ素ラクトンモノマー化合物を用いて調製したトップコート用組成物に撥水性および現像液溶解性の向上を果たすことができる。
【0051】
一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物において、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、Rは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、フッ素原子を有していてもよく、Rは炭素数1〜4の直鎖状パーフルオロアルキル基である。
【0052】
当該含フッ素ラクトンモノマー化合物を重合させトップコート用組成物とした際の、撥水性および現像液溶解性の向上のためには、一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物において、Rが水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基またはシクロヘキシル基であることが好ましく、さらに、R、RおよびRがメチル基であり、RおよびRが水素原子であることが好ましく、さらに、Rがトリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0053】
これらの含フッ素ラクトンモノマー化合物は一般的な手法で合成できる。例えば、R、RおよびRがメチル基、RおよびRが水素原子、Rがトリフルオロメチル基である化合物は、市販の含フッ素ラクトニルアルコールとメタクリル酸との脱水縮合反応、もしくは含フッ素ラクトニルアルコールとメタクリル酸無水物、メタクリル酸クロリドとのカップリング反応、もしくは含フッ素ラクトニルアルコールとメタクリル酸メチルとのエステル交換反応により合成することができる。
【0054】
反応により得られた含フッ素ラクトンモノマー化合物は必要に応じて再結晶、クロマトグラフィー、蒸留等の方法により精製することが可能である。
【0055】
[含フッ素ラクトンポリマー化合物]
本発明のトップコート用組成物に用いる一般式(1)で表される繰り返し単位を含む含フッ素ラクトンポリマー化合物は、一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物の有する重合性二重結合が開裂して単独でまたは後に説明する他の重合性二重結合を有するモノマー化合物と共重合してポリマーの骨格を形成しているものである。
【0056】
一般式(1)で表される繰り返し単位を含む含フッ素ラクトンポリマー化合物において、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、フッ素を有していてもよく、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖状パーフルオロアルキル基である。
【0057】
一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物を重合したトップコート用組成物を用い、レジスト上にトップコート膜を形成した際の撥水性と現像液溶解性の向上のためには、これらの含フッ素ラクトンモノマー化合物のうち、Rが水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基またはシクロヘキシル基であることが好ましく、さらに、R、RおよびRがメチル基であり、RおよびRが水素原子であることが好ましく、さらにRがトリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0058】
[含フッ素ラクトンポリマー化合物の製造]
本発明のトップコート用組成物に用いる含フッ素ラクトンポリマー化合物を製造する際の含フッ素ラクトンモノマー化合物の重合方法としては、一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、ラジカル重合、イオン重合等が好ましく、場合により、配位アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、開環メタセシス重合、ビニレン重合またはビニルアディションも可能である。
【0059】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合または乳化重合等の公知の重合方法により、回分式、半連続式または連続式のいずれかの操作で行えばよい。
【0060】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてアゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、とくにアゾビスイソブチロニトリル、tert−ブチルパーオキシピバレート、ジ−tert−ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素または過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。
【0061】
重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また、重合反応においては、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、エステル系溶媒では、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ケトン系溶媒では、アセトン、メチルイソブチルケトン、炭化水素系溶媒では、シクロヘキサン、アルコール系溶剤では、メタノール、イソプロピルアルコールまたはエチレングリコールモノメチルエーテル、芳香族系溶媒では、トルエン、他には、水、エーテル系溶媒、環状エーテル系溶媒、フロン系溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。共重合反応の反応温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源により適宜変更され、通常は20℃以上、200℃以下が好ましく、特に30℃以上、140℃以下が好ましい。
【0062】
得られる含フッ素ラクトンポリマー化合物の溶液または分散液から、有機溶媒または水を除去する方法として、再沈殿、ろ過、減圧下での加熱留出等の方法が可能である。
【0063】
[重合性単量体]
前記含フッ素ラクトンモノマー化合物は、他の重合性単量体との間で、良好に共重合体ポリマーとしての含フッ素ラクトンポリマー化合物を形成し、このような含フッ素ラクトンポリマー化合物をトップコート用組成物に使用することができる。尚、以下において、重合性単量体とは、前記含フッ素ラクトンモノマー化合物を除く他の単量体である。
【0064】
本発明のトップコート用組成物に用いる含フッ素ラクトンポリマー化合物は、一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物を単独重合、あるいは以下に述べる他の重合性単量体と共重合したものである。この含フッ素ラクトンポリマー化合物は一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物のRの置換基が結合した二重結合含有基を有する炭素−炭素間の二重結合に基づいて含フッ素ラクトンポリマー化合物の骨格を形成するが、その他の構造は重合反応において変化しない。
【0065】
含フッ素ラクトンポリマー化合物は、一般式(1)で表される繰り返し単位以外に、液浸リソグラフィー用のトップコートの一般的な必要な特性である溶剤溶解性、現像液溶解性、成膜性(ガラス転移点)、撥水性、解像力、耐熱性、レジスト膜との密着性または膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)等を調節する目的で様々な繰り返し単位を含有することができる。
【0066】
本発明の含フッ素ラクトンモノマー化合物と共重合可能な重合性単量体を、例を挙げて示せば、無水マレイン酸、アクリル酸エステル類、含フッ素アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテル、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄、ビニルシラン、ビニルスルホン酸およびビニルスルホン酸エステルから選ばれた少なくとも一種類以上の重合性単量体が挙げられる。
【0067】
以下、重合性単量体について説明する。
【0068】
<(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体>
一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物は、前記種々の重合性単量体と重合可能であり幅広いものが用いられるが、中でも(メタ)アクリル酸エステルが重合性が高く、特にヘキサフルオロイソプロピル基を有するものが好適に使用される。
【0069】
ヘキサフルオロイソプロピル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、トップコート用組成物の極性向上に寄与し、トップコート液を調製する際の溶剤溶解性を向上させる。
【0070】
また、酸によって分解する酸分解性は、前記含フッ素ラクトンモノマー化合物が有しているものの、別途、酸分解性の重合性単量体をさらに加えてもよく、トップコート膜の現像液溶解性が向上する。
【0071】
以上のことから、一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物、ヘキサフルオロイソプロピル基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび酸分解性重合性単量体を有する3成分以上が重合した含フッ素ラクトンポリマー化合物が、トップコート用組成物としては、特に好ましい。即ち、前記重合性単量体が、ヘキサフルオロイソプロピル基を有する(メタ)アクリル酸エステルまたは酸分解性重合性単量体であることが好ましい。
【0072】
本発明において、重合性単量体には、一般式(2)で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物と共重合反応することが容易であることより、アクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、メタクリル酸エステおよび含フッ素メタクリル酸エステルからなる群から選ばれた重合性単量体が、特に好ましく、本発明のトップコート用組成物に好適に用いられる。
【0073】
前記重合性単量体としてのアクリル酸エステルには、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、21−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、3−オキソシクロヘキシルアクリレート、アダマンチルアクリレート、アルキルアダマンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートまたはトリシクロデカニルアクリレート、あるいはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはテトラメチレングリコール基を含有したアクリレートが挙げられる。加えて、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはテトラメチレングリコール基を含有したアクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリルもしくはアルコキシシラン含有のアクリル酸エステル、tert−ブチルアクリレート3−オキソシクロヘキシルアクリレート、アダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、エチルアダマンチルアクリレート、ドロキシアダマンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、またはラクトン環もしくはノルボルネン環の環構造を有したアクリレートあるいはアクリル酸が挙げられる。
【0074】
また、前記重合性単量体としてのメタクリル酸エステルには、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートまたは2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、あるいはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはテトラメチレングリコール基を含有したメタクリレートが挙げられる。加えて、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはテトラメチレングリコール基を含有したメタクリレート、またはアクリロニトリル、メタクリロニトリルもしくはアルコキシシラン含有のメタクリル酸エステル、tert−ブチルメタクリレート、3−オキソシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、エチルアダマンチルメタクリレート、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、またはラクトン環もしくはノルボルネン環の環構造を有したメタクリレート、またはメタクリル酸が挙げられる。
【0075】
また、前記重合性単量体としての、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルには、フッ素原子またはフッ素原子を有する基がアクリルのα位に含有した重合性単量体、またはエステル部位にフッ素原子を含有した置換基からなるアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルであって、α位とエステル部ともにフッ素を含有した含フッ素化合物が挙げられ、本発明に使用できる。
【0076】
さらに、前記重合性単量体には、α位にシアノ基が導入されていてもよく、上述した非フッ素系のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのα位にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基またはノナフルオロ−n−ブチル基が付与された重合性単量体が好適に使用される。
【0077】
一方、エステル部位にフッ素を含有する重合性単量体としては、エステル部位としてパーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基であるフッ素アルキル基、またはエステル部位に環状構造とフッ素原子を共存する単位であって、その環状構造がフッ素原子、トリフルオロメチル基またはヘキサフルオロイソプロピル水酸基等で置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環または含フッ素シクロヘプタン環を有するアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0078】
また、重合性単量体には、エステル部位が含フッ素のt−ブチルエステル基であるアクリル酸またはメタクリル酸のエステルが使用可能である。
【0079】
前述の含フッ素の官能基は、α位の含フッ素アルキル基と併用した重合性単量体を用いることが可能である。
【0080】
従って、重合性単量体には、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルアクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルメタクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルアクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イル 2−(トリフルオロメチル)アクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルメタクリレート、1,4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルアクリレート、1、4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート、または1,4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル 2−トリフルオロメチルアクリレートが挙げられる。
【0081】
また、重合性単量体には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドまたはジアセトンアクリルアミドに代表される不飽和アミドが挙げられる。
【0082】
その他、重合性単量体には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル含有のビニルシランが挙げられる。
【0083】
<その他の重合性単量体>
アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル以外のその他の重合性単量体としては、マレイン酸、フマル酸または無水マレインが挙げられ、アルコキシシラン含有のビニルシランが挙げられる。
【0084】
また、重合性単量体としてのスチレン系化合物または含フッ素スチレン系化合物には、スチレン、フッ素化スチレンまたはヒドロキシスチレンの他、ヘキサフルオロカルビノール基もしくはその水酸基を修飾した官能基が一つまたは複数個結合した化合物が挙げられる。より具体的には、ペンタフルオロスチレン、トリフルオロメチルスチレンまたはビストリフルオロメチルスチレン等のフッ素原子あるいはトリフルオロメチル基で芳香環の水素を置換したスチレン、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基、またはその水酸基を保護した官能基で芳香環の水素を置換したスチレンが挙げられる。また、α位にハロゲン、アルキル基または含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン、パーフルオロビニル基含有スチレンが挙げられる。フッ素原子またはトリフルオロメチル基で水素を置換したスチレンまたはヒドロキシスチレン、α位にハロゲン、アルキル基または含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン、パーフルオロビニル基含有のスチレンが好ましく、本発明に使用可能である。
【0085】
また、重合性単量体には、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテルまたは含フッ素アリルエーテルが使用でき、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基またはヒドロキシブチル基を含有するアルキルビニルエーテルあるいはアルキルアリルエーテルが好ましく、使用可能である。
【0086】
また、重合性単量体には、シクロヘキシル基、ノルボルニル基または芳香環およびその環状構造内に、水素またはカルボニル結合を有した環状型ビニルまたはアリルエーテル、あるいは上記官能基の水素の一部または全部がフッ素原子で置換された含フッ素ビニルエーテルまたは含フッ素アリルエーテルが使用できる。
【0087】
尚、本発明には、ビニルエステル、ビニルシラン、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、またはその他の重合性不飽和結合を含有した重合性単量体も、本発明で使用できる。
【0088】
また、重合性単量体としてのオレフィンには、エチレン、プロピレン、イソブテン、シクロペンテンまたはシクロヘキセンが、含フッ素オレフィンには、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンまたはヘキサフルオロイソブテンが挙げられる。
【0089】
また、重合性単量体としてのノルボルネン化合物には、含フッ素ノルボルネン化合物または複数の核構造を有するノルボルネン化合物が挙げられる。
【0090】
以上、重合性化合物には、含フッ素オレフィン、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、ホモアリルアルコール、含フッ素ホモアリルアルコールが、アクリル酸、α−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、メタクリル酸および本明細書で記載したすべてのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステル、2−(ベンゾイルオキシ)ペンタフルオロプロパン、2−(メトキシエトキシメチルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(テトラヒドロキシピラニルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(ベンゾイルオキシ)トリフルオロエチレン、または2−(メトキメチルオキシ)トリフルオロエチレンの不飽和化合物と、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンとのDiels−Alder付加反応で生成するノルボルネン化合物であって、3−(5−ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル)−1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−プロパノールが挙げられる。尚、以上の本発明のトップコート用組成物で使用される含フッ素ラクトンモノマー化合物と共重合可能な重合性単量体は、単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0091】
[酸不安定性基の導入]
本発明のトップコート用組成物に使用される含フッ素ラクトンポリマー化合物には、含フッ素ラクトンモノマー化合物と酸不安定基を有する重合性単量体と共重合させた含フッ素ラクトンポリマー化合物を使用してもよい。
【0092】
本発明のトップコート用組成物に酸不安定基を導入する目的は、波長300nm以下の紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線もしくは電子線の露光によりレジスト膜中で発生してトップコート膜へ拡散して来た酸を捕捉しつつ、露光部位近傍のトップコート膜のアルカリ現像液への現像液溶解性を向上させることである。
【0093】
本発明のトップコート用組成物に使用される酸不安定基を有する重合性単量体は、酸不安定基が光酸発生剤から発生した酸により加水分解して脱離するものであればよく、重合性基としてはアルケニル基またはシクロアルケニル基であればよく、ビニル基、1−メチルビニル基または1−トリフルオロメチルビニル基であるものが好ましい。また、酸不安定基を例示するならば、三級アルコールのエステル部位、三級アルコールの炭酸エステル部位、アルコキシメチレンエーテル部位から選ばれる少なくとも一種の酸不安定基を有する重合性単量体が好ましく使用できる。
【0094】
[含フッ素ラクトンポリマー化合物]
一般式(1)で表される繰り返し単位を含む含フッ素ラクトンポリマー化合物における、一般式(1)で表される繰り返し単位(a)と、前述の重合性単量体に基づく繰り返し単位(b)とのモル比(共重合比)はトップコートの一般的な必要性能である溶剤溶解性、成膜性(ガラス転移点)、撥水性、解像力、耐熱性、レジスト膜との密着性、または膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)等を調節するために適宜設定される。
【0095】
本発明にかかる含フッ素ラクトンポリマー化合物は、(a)単独のポリマー化合物でもよく、一般式(1)で表される繰り返し単位(a)と、前述の重合性単量体に基づく繰り返し単位(b)との質量比は、質量%による(a):(b)で表して、それぞれ0.1%〜99.9%:99.9%〜0.1%とし、または1%〜99%:99%〜1%である。また、10%〜90%:90%〜10%とすることができ、30%〜70%:70%〜30%とすることが好ましい。繰り返し単位(a)の含有が0.1%未満においては、現像時の溶解性に劣り、99.9%を超えると溶解性の調節が困難になりあまり好ましくない。
【0096】
前述の繰り返し単位は、ラクトン基を有するアクリル酸またはメタアクリル酸エステルに基づく繰り返し単位(a)と極性基を有するアクリル酸またはメタアクリル酸エステルに基づく繰り返し単位(b)であることは好ましい。その場合、ラクトン基含有モノマー化合物に基づく繰り返し単位を10質量%以上、60質量%以下含むものが好ましく、20質量%以上、50質量%以下含有するものがさらに好ましい。
【0097】
本発明のトップコート用組成物に用いる含フッ素ラクトンポリマー化合物の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した質量平均分子量で1,000〜1,000,000であり、2,000〜500,000が好ましい。質量平均分子量1,000未満では、塗布膜の強度が不十分であり、1,000,000を超えると溶媒への溶解性が低下し、平滑な塗膜を得るのが困難になり好ましくない。分散度(Mw/Mn)は、1.01〜5.00が好ましく、1.01〜4.00がより好ましく、1.01〜3.00が特に好ましく、1.10〜2.50が最も好ましい。
【0098】
また、本発明のトップコート用組成物に用いる含フッ素ラクトンポリマー化合物は、5員環ラクトン構造とその環に結合したトリフルオロメチル基を含むので、300nm以下の波長における吸光度が非常に低いという特性を有する。したがって、露光においては、300nm以下の高エネルギー線を使用することが可能である。
【0099】
また、本発明のトップコート用組成物に用いる含フッ素ラクトンポリマー化合物は、環状構造を有しているため、比較的高いガラス転移温度(Tg)を与える。ガラス転移温度(Tg)が低いとレジスト構成成分がトップコート層へ拡散して好ましくない。本発明にかかる含フッ素ラクトンポリマーは、共重合する成分にも依存するが、概ね120℃以上のTgを有するので、ベーク温度(100℃)よりも高いため、かかる拡散は抑えることができる。
【0100】
[トップコート液]
本発明においては、上記で製造した含フッ素ラクトンポリマー化合物を有機溶剤、または水と有機溶媒の混合液に溶解しトップコート液とする。本発明のトップコート液は、基板上成膜したレジスト上に塗布後、乾燥させることによってトップコート膜とする。
【0101】
トップコート液において、分子量により、溶解性およびキャスティングの特性が変わり得る。分子量が高いポリマーは現像液への溶解速度が遅くなり、分子量が低い場合は溶解速度が速くなる可能性があるが、分子量はこの技術分野の常識に基づいて重合条件を適宜調整することにより制御可能である。
【0102】
[溶剤]
また、含フッ素ラクトンポリマー化合物の溶解に使用する有機溶剤としては、その溶剤が下層のレジスト膜を浸食しにくく、かつ、レジスト膜から添加剤等を抽出しにくい溶剤であることが必須の要件になる。
【0103】
レジスト膜を浸食しにくく、かつ、レジスト膜から添加物を抽出しにくい有機溶剤としては、下層のレジスト膜組成に依存するが、炭化水素溶媒、アルコール、エーテル、エステルおよびフッ素系溶剤が挙げられる。
【0104】
特に、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンまたはデカンに代表されるアルカン、脂環類の炭化水素溶媒、ブタノール(ノルマル、イソ、ターシャリー体)、メチルエチルカルビノール、ペンタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコールまた4−メチル−2−ペンタノールに代表されるアルコール、好ましくは部分的にフッ素で置換された炭化水素系溶媒が好適に使用される。また部分的にフッ素で置換された炭化水素溶媒とは、アルカンや脂環類の炭化水素溶媒またはアルコール類であって、その水素の一部がフッ素原子で置換されたものが好適に使用される。フッ素原子を導入することで本発明のポリマー化合物を効果的に溶解させ、かつ下地のレジスト膜にダメージを与えないコーティングを行うことが可能となる。
【0105】
他の溶剤として、ケトン類としてのアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトンまたは2‐ヘプタノン、多価アルコール類およびその誘導体としての、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアセテート、モノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテル、環式エーテル類としてのジオキサン、エステル類としての、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチルまたはエトキシプロピオン酸エチル、芳香族系溶媒としてのキシレン、トルエン、フッ素系溶剤としてのフロン、代替フロン、パーフルオロ化合物、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、その他、塗布性を高める目的において高沸点弱溶剤であるターペン系の石油ナフサ溶媒やパラフィン系溶媒が使用でき、これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0106】
トップコート液に配合する溶剤の量は特に限定されないが、好ましくはトップコート用組成物の固形分濃度が1質量%以上、25質量%以下、より好ましくは2質量%以上、15質量%以下となる様に用いる。トップコート用組成物の固形分濃度を調整することによって、形成される樹脂膜の膜厚を調整することが可能である。
【0107】
本発明のトップコート用組成物には、水の膨潤やしみ込みに対する影響を抑制するための疎水性添加剤、現像液への溶解性を促進させるための酸性添加剤も使用可能であり、好適に使用される。
【0108】
[パターン形成]
本発明によるトップコート用組成物は、下層のレジスト膜の種類に制限なく、トップコート膜として使用することができる。すなわち下層レジストが、ネガ型、ポジ型、複合型等の任意のレジストシステムであっても好適に使用できる。
【0109】
露光に用いる波長は限定されないが、前述のように、300nm以下の高エネルギー線が使用でき、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fレーザー(157nm)、極単紫外線(Extreme Ultra Violet、EUV)、電子線(electron beam、EB)またはX線が好適に使用でき、特には、ArFエキシマレーザーが好ましく採用される。
【0110】
また、特に本発明のトップコート用組成物は液浸リソグラフィーにおいて、好適に応用される。
【0111】
以下、液浸リソグラフィーを用いたデバイス(半導体装置)製造において本発明を使用する場合について説明する。デバイスとしては、特に限定されないが、シリコンウェハ、化合物半導体基板、絶縁性基板等に形成される中央演算処理装置(Central Processing Unit、CPU)、Static Random Access Memory(SRAM)、Dynamic Random Access Memory(DRAM)等の微細加工により製造される半導体装置が挙げられる。
【0112】
まずシリコンウェハや半導体製造基板のような支持体上に、レジスト組成物の溶液をスピンナー等で塗布した後、プレベークを行い、レジスト層を形成させる。この工程にかかる条件は、使用するレジスト組成物の組成に応じて適宜設定できる。
【0113】
次に上記のように形成したレジスト膜の表面に、本発明のトップコート液をスピンナー等で均一に塗布した後、熱処理することにより、レジスト膜の上にトップコート膜を成形した2層膜からなる樹脂膜が形成される。
【0114】
この樹脂層が形成された基板を水等の媒体に浸漬し、次いで300nm以下の紫外線を所望のマスクパターンを介して照射する。この時、露光光は、媒体(例えば水)とトップコー層を通過してレジスト層に到達する。また、レジスト層は、トップコート層によって媒体(例えば水)と分離しているので、媒体(例えば水)がレジスト層に浸漬して膨潤したり、逆にレジストが媒体(例えば水)に溶出することもない。
【0115】
露光された基板をベーク後、現像液、例えば濃度0.1質量%以上、10質量%以下のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液等を用いて現像処理する。現像処理においては、まず、トップコート膜が全溶解し、次いで露光部のレジスト膜が溶解する。すなわち、1回の現像処理により、トップコート層とレジスト層の一部を溶解除去することが可能で、所望のマスクパターンに応じたレジストパターンを得ることができる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0117】
〔合成例〕
[含フッ素ラクトンモノマー化合物の合成]
本発明のトップコート用組成物に使用する含フッ素ラクトンモノマー化合物の合成例として、以下に、5,5−ジメチル−2−オキソ−3−(トリフルオロメチル)テトラヒドロフラン−3−イル メタクリレートの合成方法について説明する。
【化3】

【0118】
温度計を備えた200mLの三口フラスコにテトラフルオロエチレンで被覆された撹拌子および構造式(3)で示される3−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−3−(トリフルオロメチル)ジヒドロフラン−2(3H)−オン30.0g (0.15 mol)、メタクリル酸無水物24.5g (0.16 mol)、メタンスルホン酸 0.3g (0.003 mol)、および重合禁止剤として2,2’−Methylene−bis(4−methyl−6−tert−butylphenol)精工化学株式会社製、商品名:ノンフレックスMBP 0.15g (0.5質量%)を入れ、スターラーで撹拌しながら50℃以上、55℃以下の範囲内で1.5時間撹拌させた。反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、目的とする構造式(4)で示される5,5−ジメチル−2−オキソ−3−(トリフルオロメチル)テトラヒドロフラン−3−イルメタクリレート(以下、化合物(4))が94.1質量%得られていた。他は、原料の3−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−3−(トリフルオロメチル)ジヒドロフラン−2(3H)−オンが1質量%、その他が4.8質量%であった。ジイソプロピルエーテル60gを加えた後、水酸化ナトリウム水溶液で加え、続いて水洗を行い、pH7に調整した。その後、有機層を−20℃に冷却し、1時間攪拌した。析出した結晶をろ過後、乾燥し、化合物(4)を31.1g得た。ガスクロマトグラフィーにより組成を調べたところ、目的物である化合物(4)が99.8質量%、その他が0.2質量%であった。収率は77%であった。
【0119】
<5,5−ジメチル−2−オキソ−3−(トリフルオロメチル)テトラヒドロフラン−3−イル メタクリレート(化合物(4))の物性>
H NMR (溶媒:CDCl, 基準物質:TMS);δ6.25 (d, J=1.0Hz, 1H), 5.75 (d, J=1.4Hz, 1H), 2.64 (d, J=14.8Hz,1H), 2.53 (d, J=14.8Hz, 1H), 1.97 (s, 3H), 1.68(s,3H), 1.51(s, 3H).19F NMR (溶媒:CDCl, 基準物質:CClF);δ−78.94 (s, 3F)
次いで、上記含フッ素ラクトンモノマー化合物を用いた含フッ素ポリマー化合物の合成を実施例1および実施例2に示す。
【0120】
〔実施例1〕
(含フッ素ラクトンポリマー化合物の合成1)
前記化合物(4)と構造式(5)で表されるメタアクリル酸エステル(以下、化合物(5))との共重合を下記の方法で行った。
【0121】
攪拌子を備えたフラスコに、前記化合物(4)(2.0g)、以下の化合物(5)(4.0g)、重合開始剤としてt−buty peroxypivalate(日本油脂株式会社製、商品名:パーブチルPV)を4mol%となるように、重合溶媒としてメチルエチルケトンが400wt%となるように順に入れた。このフラスコを75℃のオイルバスで加熱して16時間反応させた。反応後、反応溶液をn−ヘキサンに投入して攪拌し、生成した沈殿を濾過して取り、50℃で10時間真空乾燥した。分子量はゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC、標準物質:ポリスチレン)から、組成モル比はNMRから求めた。組成、分子量および収率を表1に示す。
【化4】

【0122】
〔実施例2〕
(含フッ素ラクトンポリマー化合物の合成2)
前記化合物(4)と構造式(6)で表されるメタアクリル酸エステル(以下、化合物(6))との共重合を下記の方法で行った。
【0123】
攪拌子を備えたフラスコに、前記化合物(4)(2.0g)、以下の化合物(6)(4.0g)、重合開始剤としてt−buty peroxypivalate(日本油脂株式会社製、商品名:パーブチルPV)を4mol%となるように、重合溶媒としてメチルエチルケトンが400wt%となるように順に入れた。このフラスコを75℃のオイルバスで加熱して16時間反応させた。反応後、反応溶液をn-ヘキサンに投入して攪拌し、生成した沈殿を濾過して取り、50℃で10時間真空乾燥した。分子量はゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC、標準物質:ポリスチエレン)から、組成モル比はNMRから求めた。組成、分子量および収率を表1に示す。
【化5】

【0124】
〔比較例1〕
構造式(7)で表されるフッ素を含有しないラクトン化合物(以下、化合物(7))と化合物(5)との共重合を下記の方法で行った。比較例1においては、含フッ素ラクトン化合物を使用しない。
【0125】
攪拌子を備えたフラスコに、以下の化合物(7)(2.0g)、化合物(5)(4.0g)、重合開始剤としてt−buty peroxypivalate(日本油脂株式会社製、商品名:パーブチルPV)を4mol%となるように、重合溶媒としてメチルエチルケトンが400wt%となるように順に入れた。このフラスコを75℃のオイルバスで加熱して16時間反応させた。反応後、反応溶液をn−ヘキサンに投入して攪拌し、生成した沈殿を濾過して取り、50℃で10時間真空乾燥した。分子量はゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC、標準物質:ポリスチエレン)から、組成モル比はNMRから求めた。組成、分子量および収率を表1に示す。
【化6】

【表1】

【0126】
[トップコート用組成物の調製]
上記実施例1、実施例2および比較例1で得られた含フッ素ラクトンポリマー化合物を用い、表2に示すようにトップコート液を調製した。表2の( )内は組成比であり、質量比で表した。
【0127】
それぞれ表2に示す組成比で、表2に示す溶剤1(4−メチル−2−ペンタノール:MIBC)または溶剤2(n−デカン/2−オクタノール=90/10質量比)に溶解したところ、いずれも均一で透明な6種のトップコート液(トップコート液1、トップコート液2、トップコート液3、トップコート液4、トップコート液5、トップコート液6)が得られた。トップコート液の配合を調整するにあたりいずれも、良好な溶解性を示した。結果を表2に示す。
【0128】
[トップコート膜の形成]
シリコンウェハ上に予め78nmの反射防止膜(日産化学工業株式会社製、商品名:ARC29A)を塗布後、200℃下で60秒間焼成)したシリコンウェハ上に、それぞれのトップコート溶液を、メンブランフィルター(0.2μm)でろ過した後、スピナーを用いて回転数1,500rpmでスピンコートし、ホットプレート上、100℃で90秒間乾燥したところ、それぞれ均一なトップコート膜が得られた。尚、表2中、トップコート膜1〜6で示す。トップコート膜1〜6はトップコート液1〜6に対応する)
[トップコート膜の評価]
得られたトップコート膜1〜6に対して、後退接触角について評価した。
【0129】
詳しくは、動的接触角計(協和界面科学社製)の拡張縮小法により、水滴の後退接触角を測定した。初期液滴サイズ7μLを6μL/秒の速度にて8秒間吸引し、吸引中の動的接触角が安定した値を後退接触角とした。結果を表2に示す。いずれも良好な後退接触角を示した。
【0130】
次いで、得られたトップコート膜1〜4に対して、現像液溶解性を評価した。トップコート膜1〜4を2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(現像液)に室温で60秒間浸漬したところ、速やかに膜が溶解して消失した。結果を表2に示す。
【表2】

【0131】
[レジスト膜上に塗布してのトップコート膜の評価]
続いて、表2に示すトップコート液1〜6を用いて、下記に示すプロセスでシリコンウェハ上にレジスト層とトップコート層の2層膜よりトップコート膜の評価を行った。
【0132】
最初に、レジスト用ポリマー化合物の合成について説明する。以下の構造式(8)で表されるメタクリル酸エステル(以下、化合物(8))と構造式(9)で表されるメタクリル酸エステル(以下、化合物(9))と構造式(10)で表されるメタクリル酸エステル(以下、化合物(10))とを共重合させてレジストポリマー化合物とした。
【化7】

【0133】
攪拌子を備えたフラスコに、化合物(8)(12.0g)、化合物(9)(10.1g)、化合物(10)(10.8g)、重合開始剤としてAIBN(製品名2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬株式会社)を1.35g、重合溶媒として2−ブタノン(65.8g)を順に入れた。このフラスコを75℃のオイルバスで加熱して16時間反応させた。反応終了後の溶液を500gのn-ヘキサンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い、29.6gの白色固体(レジスト用ポリマー化合物)を得た(収率90質量%)。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC、標準物質:ポリスチエレン)から、分子量は11500、分子量分散MW/MNは2.1であった。
【0134】
上記レジスト用ポリマー化合物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、固形分が12%となるように調整した。さらに酸光発生剤としてノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウムを重合体100重量部に対して5重量部、塩基としてイソプロパノールアミンを同2質量部溶解し、レジスト液を調製した。反射防止膜処理したシリコンウェハに、得られたレジスト溶液を、スピナーを用いシリコンウェハ上にスピンコート後、ホットプレート上に100℃下で、90秒間乾燥させ、膜厚150nmのレジスト膜を得た。このレジスト膜上に、メンブランフィルター(0.2μm)でろ過したトップコート液1を、スピナーを用いてスピンコート後、ホットプレート上に100℃下、90秒間乾燥して、レジスト層とトップコート層からなる2層膜、合計膜厚200nmの樹脂膜を、シリコンウェハ上に形成した。
【0135】
同様に、レジスト膜を形成したシリコンウェハ上に、トップコート液2、トップコート液3、トップコート液4、トップコート液5、トップコート液6をそれぞれ塗布して、レジスト層とトップコート層からなる2層膜、合計膜厚200nmの樹脂膜を形成してなるシリコンウェハを各々形成した。
【0136】
次いで、次に示す純水浸漬処理、トップコート膜のアルカリ現像液溶解性試験、および露光解像試験を行った。これら試験の結果を表3に示す。
【0137】
尚、純水浸漬試験は、以下のように行った。
【0138】
上記の方法で樹脂膜を形成した各々のシリコンウェハを、それぞれ、20mlの純水に10分浸漬して溶出物を抽出後、当該抽出液をイオンクロマトグラフィにて測定して、溶出物の有無を確認したところ、レジスト膜の成分に帰属されるピークは観測されなかった。これは、トップコート膜を設けたことにより、レジスト膜からレジスト成分の水への溶出が抑えられたことを示す。
【0139】
次いで、トップコート膜のアルカリ現像液溶解性試験を、以下のように行った。
【0140】
樹脂膜を形成した各々のシリコンウェハを、レジスト現像アナライザー RDA−790(リソテックジャパン(株)製)を用いて室温でアルカリ現像液(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)に浸漬して溶解速度を測定した。結果を表3に示す。トップコート膜1〜4は良好な溶解速度を示したが、トップコート膜5およびトップコート膜6は良好な溶解速度を示さなかった。
【0141】
次いで、露光解像試験を、以下のように行った。
【0142】
レジスト膜上にトップコート液1〜6を塗布して樹脂膜を形成したシリコンウェハを、100℃で90秒間プリベークを行った後、フォトマスクを介して193nmで露光した。露光後のウェハーを回転させながら純水を2分間滴下した。その後、120℃で60秒間ポストエクスポーザーベークを行い、アルカリ現像液で現像した。アルカリ現像液としては、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた。得られたパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、解像性の評価を行った。結果を表3に示す。トップコート膜1〜4におけるレジストにおいては矩形形状のパターンの形成が観測された。トップコート膜5におけるレジストにおいても矩形形状のパターンの形成が観察されたが欠陥も多く見られ、トップコート膜6においては溶解性不良とみられる頭はり形状で残渣のあるパターンが得られた。
【0143】
このことは、比較例1では、トップコート用組成物の原料として含フッ素ラクトンモノマー化合物を使用しなかったことにより、適切な現像液溶解性が得られなかった結果である。
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0144】
特定の含フッ素ラクトンモノマー化合物に他の重合性単量体を組合せ、さらに溶剤を加えてなる本発明のトップコート用組成物は、好適な撥水性および溶剤溶解性を備えることで、レジスト膜上に塗布し、波長300nm以下の電磁波である高エネルギー線または電子線を光源に用いた露光装置によるフォトリソグラフィーにより、特に液浸リソグラフィーによりパターン形成を行うと、極めて微細且つ高精度なパターン形状を得ることができる。
【0145】
本発明のトップコート用組成物は、例えばKrFレーザー(波長、248nm)、ArFレーザー(波長、193nm)等、極短波長の紫外線を光源とする露光装置を用い、フォトリソグラフィーにより、特に液浸リソグラフィーにて極微細且つ高精度にパターン形成を行う際のレジスト膜上に塗布するトップコート用組成物として有用である。
【0146】
また、本発明のトップコート用組成物は、X線、γ線等の高エネルギー線、電子線を用いたリソグラフィー技術にも応用できる可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

(式(1)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、フッ素を有していてもよく、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖状パーフルオロアルキル基である。)
で表される繰返し単位を含有することを特徴とするトップコート用組成物。
【請求項2】
下記一般式(2):
【化2】

(式(2)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、Rは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基または炭素数3〜6の環状アルキル基であり、フッ素を有していてもよく、Rは炭素数1〜4の直鎖状パーフルオロアルキル基である。)
で表される含フッ素ラクトンモノマー化合物と他の重合性単量体とが重合したことを特徴とするトップコート用組成物。
【請求項3】
が、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基またはシクロヘキシル基であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトップコート用組成物。
【請求項4】
、RおよびRがメチル基であり、RおよびRが水素原子であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のトップコート用組成物。
【請求項5】
がトリフルオロメチル基であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のトップコート用組成物。
【請求項6】
前記他の重合性単量体が、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のトップコート用組成物。
【請求項7】
前記他の重合性単量体が、ヘキサフルオロイソプロピル基を有する(メタ)アクリル酸エステルまたは酸分解性重合性化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のトップコート用組成物。
【請求項8】
質量平均分子量が1,000以上、1,000,000以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のトップコート用組成物。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のトップコート用組成物と溶剤とを含むことを特徴とするトップコート液。
【請求項10】
請求項9に記載のトップコート液をレジスト塗布済の基板に塗布する第1の工程と、当該基板を加熱する第2の工程と、波長300nm以下の電磁波である高エネルギー線または電子線を用いてフォトマスクを介してレジストを露光する第3の工程と、現像液を用いて露光部位のレジストを溶解しパターン形成する第4の工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2011−195819(P2011−195819A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32027(P2011−32027)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】