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トップコート皮膜の形成方法
説明

トップコート皮膜の形成方法

【課題】亜鉛系メッキ処理を施した後に三価クロメート処理によって下地皮膜を形成した金属材料からなる塗装対象物に対して、トップコート皮膜の膜厚を均一に形成できるトップコート皮膜の形成方法を提供する。
【解決手段】亜鉛系メッキ処理を施した後に三価クロメート処理によって下地皮膜を形成した金属材料からなる塗装対象物にトップコート皮膜を形成するトップコート皮膜の形成方法であって、塗装対象物および塗装媒体を混在させた状態で熱硬化性塗料を投入して混合容器内で攪拌し、塗装媒体に付着している熱硬化性塗料を塗装対象物に転移させることにより塗装対象物をウェット状態にする混合工程Aと、塗装対象物および塗装媒体を分離する分離工程Bと、塗装対象物をウェット状態で加熱して熱硬化性塗料を硬化させる熱処理工程Cと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛系メッキ処理を施した後に三価クロメート処理によって下地皮膜を形成した金属材料からなる塗装対象物にトップコート皮膜を形成する皮膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属部品の表面の保護を目的として、様々な表面処理が施されている。例えば、金属をある種の溶液中に浸漬してその表面に金属塩皮膜を形成する化成皮膜処理は、防錆・装飾・滑りなどの機能的効果が複合した表面処理である。当該化成皮膜処理は、主に鉄系部品の上に亜鉛メッキ又は亜鉛系合金メッキ(以下、亜鉛系メッキと称す)を施した後に行われる。
【0003】
亜鉛系メッキ鋼材の防錆処理として、六価クロムを含有する処理液を用いたクロメート処理がある。亜鉛系メッキのままでは亜鉛の酸化による白錆が発生し易いため、長期的な耐食性を得ることができない。しかし、亜鉛系メッキの後にクロメート処理を施すことにより、亜鉛系メッキ鋼材の耐食性は飛躍的に向上する。
【0004】
クロメート処理は、六価クロム化合物であるクロム酸(または重クロム酸)に各種の鉱酸や他の添加剤を含有させた処理液を使用した化成皮膜処理であって、その組成を変化させることにより、青・黄・緑・黒の4種類の色調の皮膜(クロメート皮膜)を形成することができる。六価クロメート皮膜は含水量が高く、比較的軟質で、その特徴である自己修復作用を発揮することにより、高い耐食性を有する。
【0005】
ところが六価クロム化合物は環境に有害であるため、その使用が規制されるようになってきた。そのため、亜鉛系メッキ鋼材の防錆処理についても、六価クロム化合物を含有しない六価クロムフリー処理液の使用に切り替わりつつある。当該六価クロムフリー処理液としては、例えば三価クロム化合物を使用した酸性処理液と、クロム化合物を全く使用しない無機系もしくは有機系の処理液とがある。三価クロム化合物は、主に処理液中のリン酸イオンと反応して不溶性のリン酸塩を形成することにより、耐食性に優れた皮膜を形成する。
【0006】
例えば特許文献1〜3には、三価クロム化合物を用いた化成皮膜処理について記載してある。このような化成皮膜処理では、例えば三価クロム化合物を主な皮膜形成成分とし、六価クロムを含有するクロメート皮膜に匹敵する耐食性を示す、六価クロムフリーの黒色防錆皮膜を亜鉛系メッキ鋼材の表面に形成している。
【0007】
一般的な三価クロムを用いた化成皮膜処理を行って形成された三価クロメート皮膜は、六価クロメート皮膜に比べて硬質である。そのため、例えば当該三価クロメート皮膜を締結部材であるボルトやナットに形成すれば、締結の際のトルク特性が低下し、特に緩みトルクが大きく低下するという問題がある。これでは従来の六価クロメート皮膜が形成された締結部材が保証していた機能を満足することができない可能性がある。
そのため、六価クロメート皮膜より劣る耐食性を補うよう、三価クロメート皮膜の表面にコーティングを追加して多層構造化する場合がある(例えば特許文献1,2)。即ち、亜鉛系メッキ処理を施した後に三価クロメート処理によって下地皮膜を形成した塗装対象物に、公知の塗布液を使用してトップコート皮膜を形成することで当該塗装対象物の多層構造化を図ることができる。このようにトップコート処理を施すことにより、三価クロメート皮膜を形成した場合であっても耐食性を向上させることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3584937号公報
【特許文献2】特開2005−126797号公報
【特許文献3】特開2006−348314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述したトップコート処理を行った場合には、トップコート皮膜の膜厚が安定化しない、即ち塗膜厚を一定にできないといった問題点があった。塗膜厚を一定にできない場合、例えばそれぞれの塗装対象物のトルク係数にばらつきが生じる。よって、当該三価クロメート皮膜およびトップコート皮膜をボルトやナットに形成した場合には、その締結程度にばらつきが生じる虞がある。また、塗膜厚の薄い箇所では、他物との接触や例えばメガネレンチによる締結時の衝撃に弱い場合がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、亜鉛系メッキ処理を施した後に三価クロメート処理によって下地皮膜を形成した金属材料からなる塗装対象物に対して、トップコート皮膜の膜厚を均一に形成できるトップコート皮膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係るトップコート皮膜の形成方法は、亜鉛系メッキ処理を施した後に三価クロメート処理によって下地皮膜を形成した金属材料からなる塗装対象物にトップコート皮膜を形成するトップコート皮膜の形成方法であって、その第一特徴手段は、前記塗装対象物および塗装媒体を混在させた状態で熱硬化性塗料を投入して混合容器内で攪拌し、前記塗装媒体に付着している前記熱硬化性塗料を前記塗装対象物に転移させることにより前記塗装対象物をウェット状態にする混合工程と、前記塗装対象物および前記塗装媒体を分離する分離工程と、前記塗装対象物をウェット状態で加熱して前記熱硬化性塗料を硬化させる熱処理工程と、を有する点にある。
【0012】
本構成によれば、亜鉛系メッキ処理を施した後に三価クロメート処理によって下地皮膜を形成した塗装対象物にトップコート皮膜を形成するに際し、環境負荷物質である六価クロム化合物を使用しない六価クロムフリー処理液を使用して行なうため、環境負荷を抑えながら当該トップコート皮膜を形成することができる。また、後述の実施例で説明するように、当該トップコート皮膜は、六価クロムグリーンクロメートと同等以上の防錆力を有する皮膜となる。
【0013】
混合工程では、塗装媒体に付着している熱硬化性塗料は、塗装対象物および塗装媒体が攪拌によって接触することで塗装対象物に転移する。当該混合工程は常温で行なうため、塗装対象物の表面の全体に亘ってほぼ均一な所望厚さの液体状の熱硬化性塗料の塗膜が形成される。攪拌中、仮に熱硬化性塗料が付着した塗装対象物に他物が接触した場合、接触箇所の塗膜の厚さは薄くなる。しかし、当該他物が接触箇所から離間すると、薄くなった液体状の熱硬化性塗料の塗膜は、表面張力の効果などによって元の厚さに直ちに回復しようとする。これは、熱硬化性塗料が液体状であるためである。
本発明では、トップコート皮膜を形成するために熱硬化性塗料を使用しているが、当該熱硬化性塗料は常温では液体状のウェットな状態を維持するため、混合工程を行なっている間は熱硬化性塗料が硬化することはない。そのため、塗装対象物に形成された熱硬化性塗料の塗膜は、常に前記所望厚さを維持しようとする性質を有する。
【0014】
分離工程においては、塗装対象物および塗装媒体を分離する。当該分離工程も常温で行なうため、分離工程を行なっている間も熱硬化性塗料が硬化することはない。そのため、例えば熱硬化性塗料が付着した塗装対象物に分離手段などが接触した場合であっても、塗装対象物に形成された熱硬化性塗料の塗膜は、常に所望厚さが維持される。
【0015】
熱処理工程では、分離した塗装対象物をウェット状態で加熱して熱硬化性塗料を硬化させる。加熱された熱硬化性塗料は硬化して乾燥したドライなトップコート皮膜が形成される。このトップコート皮膜は、液体状態の熱硬化性塗料が塗装対象物の表面の全体にほぼ均一な所望厚さで付着した塗膜を硬化した皮膜であるため、完成した皮膜の膜厚も塗装対象物の表面の全体に亘って均一ものとなる。そのため、当該トップコート皮膜を例えばボルトに形成した場合には、安定したトルク係数を有するボルトを得ることができる。また、皮膜の膜厚が均一であるため、他物との接触や衝撃に弱い箇所をなくすことができる。
【0016】
また、塗料中の溶剤が揮発して乾燥することによって塗膜成分を硬化させる塗料では、混合工程や分離工程を行なう際に塗料の乾燥の有無を考慮に入れた時間管理をする必要があるが、本発明の方法では、常温では硬化および乾燥しない熱硬化性塗料を使用するため当該時間管理が不要となる。
【0017】
本発明に係るトップコート皮膜の形成方法の第二特徴構成は、前記熱硬化性塗料を珪素化合物含有塗料とした点にある。
【0018】
珪素化合物含有塗料は、通常120〜150℃程度の加熱で硬化し、過度な加熱を必要としないため、取り扱いに優れる。さらに、例えば珪素化合物として珪素樹脂を含んだ珪素化合物含有塗料であれば、珪素樹脂は自己潤滑性に優れているため、塗装対象物に付着すれば直ちに塗装対象物の表面全体に行き渡り易く、混合工程において迅速に熱硬化性塗料のウェットな塗膜を形成することができる。
【0019】
本発明に係るトップコート皮膜の形成方法の第三特徴構成は、前記珪素化合物含有塗料に珪素化合物を10〜20重量%含み、さらに、前記珪素化合物含有塗料は、粘度カップNK‐2を用いて20℃で測定した値が19〜23秒(21±2秒)の粘度を有する点にある。
【0020】
本発明のトップコート皮膜の形成方法では、熱硬化性塗料の塗膜を加熱によって硬化させてトップコート皮膜を形成する。このとき、トップコート皮膜の全体に亘ってほぼ均一なトルク係数を維持するためには、トップコート皮膜に塗膜成分の必要量を存在させる必要がある。例えば希釈剤によって熱硬化性塗料を希釈する際には、塗膜成分を当該必要量以下に希釈しないようにする。即ち、前記珪素化合物含有塗料に珪素化合物を少なくとも10重量%含む程度までの希釈を行なえば、硬化したトップコート皮膜は良好なトルク係数を維持することができる。よって、使用する熱硬化性塗料において希釈限界点を設定しておけば、常に必要量の塗膜成分を有するトップコート皮膜を形成することができる。
【0021】
熱硬化性塗料は塗膜成分が高濃度になるに従って粘度が増すため、塗膜成分が低濃度である場合に比べて塗装対象物の表面の全体に行き渡らせる時間が長くなる。例えば前記珪素化合物含有塗料に珪素化合物が20重量%以上含まれる場合は塗装対象物の表面の全体に行き渡らせる時間が過大となり、迅速に混合工程を完了できないため好ましくない。
さらに熱硬化性塗料を塗装対象物の表面に迅速に付着させるには、所定の粘度範囲に維持する必要がある。よって、迅速に塗装対象物の表面に熱硬化性塗料の塗膜を形成でき、かつ好適なトルク係数を有するトップコート皮膜を形成するためには、珪素化合物含有塗料に珪素化合物を10〜20重量%含み、かつ粘度範囲が19〜23秒(粘度カップNK‐2:20℃)となるように熱硬化性塗料を調整すればよい。このように、熱硬化性塗料の珪素化合物および粘度範囲を設定することで、トップコート皮膜の膜厚を自在に制御することができる。
【0022】
本発明に係るトップコート皮膜の形成方法の第四特徴構成は、前記三価クロメート処理によって三価クロム黒色クロメート皮膜を形成した点にある。
【0023】
本構成によれば、六価クロム化合物を使用しない六価クロムフリー処理液を使用して行なうことができるため、環境負荷を抑えながら下地の皮膜(クロメート皮膜層)を形成することができる。また、耐食性および耐候性に優れたクロメート皮膜層を形成することができる。
【0024】
本発明に係るトップコート皮膜の形成方法の第五特徴構成は、前記塗装対象物をボルトおよびナットの少なくとも何れか一方とした点にある。
【0025】
本構成によれば、ボルトおよびナットのような比較的小さな加工品であっても、均一な膜厚のトップコート皮膜を形成できる。そのため、ボルトおよびナットを締結する際のトルク特性をほぼ一定にすることができるため、ボルトの締結作業を正確に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】トップコート皮膜を形成した塗装対象物(ボルト)の概略図である。
【図2】本発明のトップコート皮膜の形成方法の工程を示す流れ図である。
【図3】混合工程の概略図である。
【図4】分離工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明は、亜鉛系メッキ処理を施した後に三価クロメート処理によって下地皮膜aを形成した金属材料からなる塗装対象物10にトップコート皮膜bを形成するトップコート皮膜の形成方法である(図1,2)。当該トップコート皮膜の形成方法では、環境負荷物質である六価クロム化合物を使用しない化成皮膜処理を行う。
【0028】
本発明のトップコート皮膜の形成方法は、塗装対象物10および塗装媒体20を混在させた状態で熱硬化性塗料30を投入して混合容器40内で攪拌し、塗装媒体20に付着している熱硬化性塗料30を塗装対象物10に転移させる。即ち、本方法は、塗装対象物10をウェット状態にする混合工程Aと、塗装対象物10および塗装媒体20を分離する分離工程Bと、塗装対象物10をウェット状態で加熱して熱硬化性塗料30を硬化させる熱処理工程Cと、を有する。
【0029】
(亜鉛系メッキ処理)
塗装対象物10の下地処理(第一下地処理)として、亜鉛系メッキ処理を行って亜鉛系メッキ層a1を形成する。当該亜鉛系メッキ処理は、主に鉄系部品の表面に亜鉛メッキ又は亜鉛系合金メッキを施すことであり、防錆・装飾・滑りなどの機能的効果が複合した化成皮膜処理である。亜鉛系合金メッキとしては、Zn−Ni合金めっき、Zn−Fe合金めっき、Zn−Al合金めっきなどが例示される。亜鉛系メッキ処理は溶融亜鉛メッキ法・電気メッキ法・気相メッキ法など、公知の手法によって行なえばよい。亜鉛系メッキ層a1の膜厚は、塗装対象物10に必要な耐食性を付与することができるように適宜設定すればよい。
【0030】
(三価クロメート処理)
亜鉛系メッキ処理を行って形成した亜鉛系メッキ層a1のみの状態では経時的に変色や腐食が起こり易い。そのため、亜鉛系メッキの後処理(第二下地処理)として、三価クロメート処理を行い、亜鉛系メッキ層a1の表面に三価クロム化合物の皮膜(クロメート皮膜層a2)を形成し、耐食性を向上させている。三価クロム化合物としては、酸性水溶液中に可溶性の化合物を使用すればよい。当該三価クロム化合物の例としては、塩化クロム・硫酸クロム・硝酸クロム・リン酸クロム・酢酸クロムなどが挙げられる。また、三価クロムは、クロム酸や重クロム酸塩等の六価クロムを還元剤にて三価に還元して使用してもよい。三価クロムの濃度は、例えば3.0〜3.5g/Lの範囲とするのがよい。また、三価クロメート処理液は、pHが2.0〜2.3の範囲とするのがよい。このように本処理は、六価クロム化合物を使用しない六価クロムフリー処理液を使用して行なう。
【0031】
三価クロメート処理は、三価クロムに各種の鉱酸や他の添加剤を含有させた三価クロメート処理液を使用することによって、青・黄・緑・黒の4種類の色調のクロメート皮膜層a2を形成することができる。クロメート皮膜層a2の色調は、塗装対象物10を使用する場所や用途に応じて適宜選択すればよい。例えば三価クロメート処理液において、リン酸イオンや硫酸イオンの質量比や、pHを適宜設定することで黒色のクロメート皮膜層a2を形成することができる。例えば、三価クロム量3.0〜3.5g/L、pH2.0〜2.3の三価クロメート処理液で処理温度を25〜35℃にて約50秒程度浸漬させて行うとよい。
特に三価クロメート処理によって三価クロム黒色クロメート皮膜を形成した場合は、耐食性および耐候性に優れたクロメート皮膜層a2を形成することができる。クロメート皮膜層a2の膜厚は、亜鉛系メッキ層a1を形成した塗装対象物10に必要な美観や耐食性を付与することができるように適宜設定すればよい。
【0032】
(塗装対象物)
塗装対象物10は、亜鉛系メッキ処理を施した後に三価クロメート処理によって下地皮膜aを形成できる金属材料であれば、鋼板・鋼管・棒材などの一次加工品や、これらを加工した二次加工品、半加工品などでもよく、特に限定されるものではない。当該二次加工品としては、例えばボルト、ナット、ワッシャー等の締結部品、プレス成形品、打抜き加工品、鍛造品、鋳造品などが挙げられる。
金属としては、例えば鉄鋼材(SS400/SPHC/SPCC/SWCH/S45C/SCM435/SNB7等)、ステンレス(XM7/304/316/316L/410/430等)、真鍮、銅および銅合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金、チタンなどを使用できる。
【0033】
(塗装媒体)
塗装媒体20は、塗装対象物10と混在した状態で熱硬化性塗料30を投入して混合容器40内で攪拌したときに、当該塗装媒体20に付着している熱硬化性塗料30を塗装対象物10に転移させるものである。
【0034】
塗装媒体20のサイズおよび材質等は、塗装対象物10の形状やサイズ、塗装対象物10に形成される皮膜を構成する熱硬化性塗料30の材質等に応じて適宜選択することができる。また、サイズや材質の異なる塗装媒体20を混合して使用してもよく、塗装媒体20に表面処理・表面皮膜を施してもよい。塗装媒体20の形状は、円盤状・球状・楕円形・円柱・円錐・立方体・三角柱・三角錐・四角錐・菱面体・不定型体などを呈するものを使用することができ、これら形状の塗装媒体20を単独で、或いは、適宜混合して使用してもよい。塗装媒体20の大きさは、例えば塗装媒体20が円盤状の場合には、その粒径を3〜6mm程度とすればよい。塗装媒体20の材質は、鉄などの各種金属・炭素鋼・合金・セラミックス・ガラス・硬質プラスチック等が使用できる。
【0035】
塗装媒体20は、塗装対象物10の形状に合わせて所定の大きさ・形状のものを使用する。塗装媒体20を塗装対象物10より小さく形成すれば、例えば塗装対象物10の表面に凹凸形状がある場合、凹部分に塗装媒体20が入り込んで熱硬化性塗料30を付着させ易くなる。
【0036】
(熱硬化性塗料)
熱硬化性塗料30は、熱を加えると重合反応を起こして架橋し、網目構造が高まって硬化する塗膜成分を含有する塗料である。このような塗膜成分としては、珪素樹脂・尿素樹脂・フェノール樹脂・メラミン樹脂・エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂がある。
当該熱硬化性塗料30は、常温では硬化および乾燥しない塗料であるため、塗装対象物10に塗布しただけでは、所定の温度以上に加熱しない限り、ウェットな状態を維持する。
【0037】
本発明では、特に珪素化合物含有塗料を使用する。珪素化合物含有塗料は、通常、120〜150℃程度の加熱で硬化する。当該珪素化合物含有塗料は成分として、例えばシリコン珪素化合物を含む。珪素樹脂は自己潤滑性に優れているため、珪素樹脂を含んだ珪素化合物含有塗料であれば、塗装対象物10に付着すれば直ちに塗装対象物10の表面全体に行き渡り易い。
【0038】
当該珪素化合物含有塗料には、塗装対象物10に付着させる状態(混合容器40に投入する状態)の熱硬化性塗料30に対して珪素化合物が10〜20重量%程度含まれるのがよい。このような珪素化合物の濃度および粘度範囲にするため、適宜、希釈剤によって希釈すればよい。
【0039】
熱硬化性塗料30には、その他の成分として、樹脂成分・架橋剤成分・着色顔料・硬化触媒・沈降防止剤・流れ防止剤・紫外線安定剤・難燃剤・防汚剤などが配合してある。
樹脂成分としては、例えば水酸基・エポキシ基・カルボキシル基・アルコキシシラン基礎などの架橋性官能基を有するアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。
架橋剤成分は、前記樹脂成分を架橋硬化させることができる成分であり、例えばアルキルエ−テル化したメラミン樹脂・尿素樹脂・グアナミン樹脂・エポキシ化合物・カルボキシル基含有化合物などが挙げられる。
【0040】
熱硬化性塗料30は、液体の粘度計測器具である粘度カップNK‐2(孔径3mm:アネスト岩田株式会社製)を用いて20℃で測定した値が19〜23秒程度の粘度を有するのがよい。この粘度範囲は、粘度カップ内に収容した所定量の熱硬化性塗料30の流出が途切れるまでの時間(秒)を計測した値である。
【0041】
トップコート皮膜bの全体に亘ってほぼ均一なトルク係数を維持するためには、トップコート皮膜bに塗膜成分の必要量を存在させる必要がある。即ち、希釈剤によって熱硬化性塗料30を希釈する際には、塗膜成分を当該必要量以下に希釈しないようにする。よって、使用する熱硬化性塗料30において希釈限界点を設定しておけば、常に必要量の塗膜成分を有するトップコート皮膜bを形成することができる。
【0042】
熱硬化性塗料30は塗膜成分が高濃度になるに従って粘度が増すため、塗膜成分が低濃度である場合に比べて塗装対象物10の表面の全体に行き渡らせる時間が長くなる。熱硬化性塗料30を塗装対象物10の表面に迅速に付着させるには、所定の粘度範囲に維持する必要がある。よって、迅速に塗装対象物10の表面に熱硬化性塗料30の塗膜を形成でき、かつ好適なトルク係数を有するトップコート皮膜bを形成するためには、珪素化合物含有塗料に珪素化合物を10〜20重量%含み、かつ粘度範囲が19〜23秒となるように熱硬化性塗料30を調整すればよい。
【0043】
(混合容器)
混合容器40は、塗装対象物10、塗装媒体20および熱硬化性塗料30を投入して攪拌できる容器である(図3)。本実施形態の混合容器40は、塗装対象物10、塗装媒体20および熱硬化性塗料30を投入できる投入口41、塗装対象物10、塗装媒体20および熱硬化性塗料30を攪拌できる攪拌手段42、塗装対象物10および塗装媒体20を分離できる分離手段43を備える。
【0044】
投入口41は、塗装対象物10、塗装媒体20および熱硬化性塗料30を同一の投入口から投入してもよいし、別異に形成した投入口から投入してもよい。
攪拌手段42は、塗装対象物10、塗装媒体20および熱硬化性塗料30を均一に攪拌できる態様であれば、回転攪拌や振動攪拌など、何れの手法も適用できる。
【0045】
分離手段43は、塗装対象物10および塗装媒体20を分離するため、例えば網目状のステンレス製の篩(メッシュ)を使用することができる。当該篩の網目は、例えば塗装媒体20は通し、かつ塗装対象物10は通さない径を有するように設定する。攪拌中は、塗装対象物10および塗装媒体20を均一に混合して、塗装媒体20に付着している熱硬化性塗料30を塗装対象物10に確実に転移させる必要があるため、分離手段43によって塗装対象物10および塗装媒体20が分離されないようにしておく。
【0046】
例えば混合工程Aと分離工程Bとを混合容器40の同じ空間で行う場合は、混合工程Aが終了したのちに、塗装媒体20のみが重力によって落下するように構成する。また、混合工程Aと分離工程Bとを混合容器40の異なる空間で行う場合は、混合工程Aが終了したのちに塗装対象物10、塗装媒体20および熱硬化性塗料30の混合物を、分離工程Bを行なう空間にベルトコンベアなどの移送手段によって移送すればよい。
【0047】
(混合工程)
混合工程Aでは、塗装対象物10および塗装媒体20を混在させた状態で熱硬化性塗料30を投入して混合容器40内で攪拌する(図3)。混合工程Aは常温で行なう。塗装対象物10、塗装媒体20および熱硬化性塗料30の投入タイミングは同じであってもよい。また、予め塗装媒体20に熱硬化性塗料30を付着させた状態で混合容器40内に投入してもよい。これらを混合容器40内に投入した後、回転攪拌などの手法によって攪拌する。当該攪拌によって、塗装媒体20に付着している熱硬化性塗料30を塗装対象物10に転移させることにより塗装対象物10をウェット状態にすることができる。混合工程Aは、投入した全ての塗装対象物10に、熱硬化性塗料30が均一に転移するまで行なえばよい。
【0048】
投入する熱硬化性塗料30の量は、塗装対象物10に形成する塗膜の厚さ、および、塗装媒体20に付着している熱硬化性塗料30を塗装対象物10に転移させた後に塗装媒体20に残留する塗膜の厚さの合計の量とする。膜厚は、熱硬化性塗料30の種類あるいは粘度によって制御することができる。
【0049】
また、投入する熱硬化性塗料30の量は、過去の類似処理の実績データを基に、回転攪拌のスピード、回転時間、塗装対象物10の大きさ・投入量、塗装媒体20の大きさ・投入量を考慮して決定してもよい(試作検証法)。このとき、熱硬化性塗料30は、適宜希釈剤で所望の濃度に希釈してもよい。
【0050】
塗装媒体20には、予め熱硬化性塗料30を付着させた状態で混合容器40内に投入してもよい。予め塗装媒体20に付着させておく熱硬化性塗料30の量は、塗装媒体20の総表面積および塗装対象物10の総表面積の合計の量と、塗装対象物10に付着させる塗膜の所望の厚さとの相関から算出するとよい。
【0051】
このように、必要な熱硬化性塗料30の量を予め計算によって把握することができるため、無駄な熱硬化性塗料30の量を抑えることができる。
【0052】
塗装媒体20に付着している熱硬化性塗料30は、塗装対象物10および塗装媒体20が攪拌によって接触することで塗装対象物10に転移する。このとき、熱硬化性塗料30は液体状態であるため、塗装対象物10の表面の全体に亘ってほぼ均一な所望厚さの液体状の塗膜となる。攪拌中、仮に熱硬化性塗料30が付着した塗装対象物10に他物が接触した場合、接触箇所の塗膜の厚さは薄くなる。しかし、他物が接触箇所から離間すると、薄くなった液体状の熱硬化性塗料30の塗膜は、表面張力の効果などによって元の厚さに直ちに回復しようとする。当該熱硬化性塗料30は常温ではウェットな状態を維持するため、混合工程Aを行なっている間は熱硬化性塗料30が硬化することはないため、塗装対象物10に形成された熱硬化性塗料30の塗膜は、常に前記所望厚さを維持しようとする性質を有する。
【0053】
例えば回転攪拌を行なう場合、回転スピードはインバーターなどによって電気的に制御するとよい。回転スピードは50〜60回/分程度となるように設定する。また、回転時間は塗装対象物10の種類・大きさ・形状に依存するが、例えばボルト類は2分、ナット類は3分というように適宜設定すればよい。
【0054】
(分離工程)
混合工程Aにて、投入した全ての塗装対象物10に熱硬化性塗料30が均一に転移した後、塗装対象物10および塗装媒体20を分離する分離工程Bを行なう(図4)。分離工程Bは常温で行なう。
【0055】
当該分離工程Bは、例えば混合容器40の底面に形成したメッシュの上を、塗装対象物10および塗装媒体20を通過させる。メッシュの網目の径を、塗装媒体20のみを通過させる程度の大きさに設定することで、塗装対象物10および塗装媒体20を分離することができる。分離工程Bは常温で行なわれるため、当該熱硬化性塗料30はウェットな状態を維持している。そのため、熱硬化性塗料30が付着した塗装対象物10がメッシュなどの他物に接触した場合であっても、塗装対象物10に形成された熱硬化性塗料30の塗膜は、常に所望厚さが維持される。
【0056】
尚、混合容器40の内壁および分離手段43に予め熱硬化性塗料30の塗膜を形成しておけば、これらに熱硬化性塗料30が付着した塗装対象物10が接触した場合であっても、塗装対象物10に付着した熱硬化性塗料30が、混合容器40の内壁および分離手段43に転移し難くなる。その結果、塗装対象物10において熱硬化性塗料30の塗膜が所望の膜厚に維持され、安定した品質のトップコート皮膜bを得ることができる。そのため、投入する熱硬化性塗料30の量を算出する場合、予め混合容器40の内壁および分離手段43に付着させておく熱硬化性塗料30の量を考慮に入れておくとよい。
【0057】
(熱処理工程)
熱処理工程Cでは、分離した塗装対象物10をウェット状態で加熱して熱硬化性塗料30を硬化させる。
分離した塗装対象物10の表面には、ウェットな熱硬化性塗料30の塗膜が形成されている。当該塗装対象物10は、分離されれば直ちに加熱手段によって、例えば120〜150℃で所定時間の間(例えば20〜30分)加熱され、乾燥したドライなトップコート皮膜bが形成される。形成されたトップコート皮膜bは、液体状態の熱硬化性塗料30が塗装対象物10の表面の全体にほぼ均一な所望厚さで付着した塗膜を硬化した皮膜であるため、塗装対象物10の表面の全体に亘って均一な膜厚を有する。そのため、それぞれの塗装対象物10のトルク係数にばらつきが生じる虞は殆どない。当該トップコート皮膜bは、例えば1〜2μm程度の厚さとなっている。
【0058】
以上より、本発明のトップコート皮膜の形成方法では、環境負荷物質(六価クロム)を使用しないため安全性に優れ、かつ例えば六価クロムグリーンクロメートと同等以上の防錆力を有するトップコート皮膜を形成できる。さらに、当該トップコート皮膜bはその全体に亘って膜厚をほぼ均一に形成することができるため、例えば締め付け時のトルク係数の安定化を達成できる皮膜となる。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0060】
〔実施例1〕
塗装対象物10としてUBSボルト(M10×P1.25:株式会社佐賀鉄工所製)、塗装媒体20として円盤型(UFO型:カーボン・スプートニック)のメディア、および、熱硬化性塗料30としてダイコートBK(登録商標:株式会社大商社製)を使用した。ダイコートBKは、主成分として珪素化合物(シリコン珪素樹脂)を10〜20%含み、粘度19秒(粘度カップNK‐2:20℃)であり、125℃以上に加熱すると硬化する。本実施例では、ダイコートBKを希釈シンナー(ドルケン社製)にて20%希釈を行ない、珪素化合物の含有量を調整したものを使用した。
【0061】
ボルトに対して、下地処理として亜鉛メッキ処理および三価クロメート処理を施した。
亜鉛メッキ処理はハイパージンク7900(日本表面化学株式会社製)を用い、電気亜鉛メッキ法によって公知の条件で行った。三価クロメート処理は、トライナーTR-185(日本表面化学株式会社製)を用い、公知の条件で行った。
このように塗装対象物10であるボルトに亜鉛系メッキ処理を施した後、三価クロメート処理によって三価クロム黒色クロメート皮膜を形成した。
【0062】
下地処理を施したボルト、メディアと共にタンブリング機(混合容器40)に投入した。次に、20%希釈ダイコートBKの所定量をタンブリング機に投入し、所定条件で攪拌してボルトの表面全体にダイコートBKのウェット塗膜を形成させた(混合工程A)。
【0063】
その表面にダイコートBKの塗膜を形成したウェット状態のボルトおよびメディアを、分離手段43であるステンレス製のメッシュ(孔径8mm、株式会社大商社製)によって篩にかけ、ボルトのみを分離した(分離工程B)。ウェット状態のボルトに対して
150℃で30分間の加熱処理を行い、当該塗膜を硬化させ(加熱工程C)、本発明処理品を作製した。このとき、本発明処理品に形成されたトップコート皮膜の膜厚は、全体に亘って約1.5〜2μmであった。
【0064】
比較例として、下地処理として亜鉛メッキ処理したUBSボルト(M10×P1.25:株式会社佐賀鉄工所製)を、六価クロムグリーンクロメート処理して六価クロメート皮膜を形成することにより、六価クロムグリーンクロメート処理品を作製した。
【0065】
本発明処理品および六価クロムグリーンクロメート処理品のそれぞれについて、塩水噴霧試験(SST試験)を行なった。その結果、何れも168時間経過後に錆は認められなかった。従って、本発明処理品は、六価クロムグリーンクロメート処理品と同等の耐食性を有するものと認められた。
【0066】
また、本発明処理品のボルトをM108型のトラクター(株式会社クボタ製)に組み込み、約7ヶ月に亘る経年評価を行なった結果、当該ボルトに錆は認められなかった。
【0067】
尚、全ての結果は示さないが、熱硬化性塗料30として使用したダイコートBKは、希釈することによって珪素化合物を10〜20重量%含み、かつ、粘度が19〜23秒(粘度カップNK‐2:20℃)の条件となるように調整すれば、上記結果と同様の結果が得られた。
【0068】
〔実施例2〕
実施例1で作製した本発明処理品について、締め付け時のトルク係数を測定した。測定は、横型締結試験機により定法に従って実施した。その結果、本発明処理品のトルク係数は0.29〜0.35となり、大きなバラツキは認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のトップコート皮膜の形成方法は、亜鉛系メッキ処理を施した後に三価クロメート処理によって下地皮膜を形成した金属材料からなる塗装対象物にトップコート皮膜を形成する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
A 混合工程
B 分離工程
C 熱処理工程
b トップコート皮膜
10 塗装対象物
20 塗装媒体
30 熱硬化性塗料
40 混合容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛系メッキ処理を施した後に三価クロメート処理によって下地皮膜を形成した金属材料からなる塗装対象物にトップコート皮膜を形成するトップコート皮膜の形成方法であって、
前記塗装対象物および塗装媒体を混在させた状態で熱硬化性塗料を投入して混合容器内で攪拌し、前記塗装媒体に付着している前記熱硬化性塗料を前記塗装対象物に転移させることにより前記塗装対象物をウェット状態にする混合工程と、
前記塗装対象物および前記塗装媒体を分離する分離工程と、
前記塗装対象物をウェット状態で加熱して前記熱硬化性塗料を硬化させる熱処理工程と、を有するトップコート皮膜の形成方法。
【請求項2】
前記熱硬化性塗料が珪素化合物含有塗料である請求項1に記載のトップコート皮膜の形成方法。
【請求項3】
前記珪素化合物含有塗料に珪素化合物を10〜20重量%含み、さらに、前記珪素化合物含有塗料は、粘度カップNK‐2を用いて20℃で測定した値が19〜23秒の粘度を有する請求項2に記載のトップコート皮膜の形成方法。
【請求項4】
前記三価クロメート処理によって三価クロム黒色クロメート皮膜を形成してある請求項1〜3の何れか一項に記載のトップコート皮膜の形成方法。
【請求項5】
前記塗装対象物がボルトおよびナットの少なくとも何れか一方である請求項1〜4の何れか一項に記載のトップコート皮膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−135740(P2012−135740A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291013(P2010−291013)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(511001909)株式会社大商 (2)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】