説明

トナー、並びに定着方法、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤を少なくとも含む定着液の浸透時間が短く、短時間で適切な軟化状態のトナーが得られ、画像が記録媒体に強固に定着し、高速画像形成が可能であり、高品質な画像を形成できるトナー、並びに該トナーを用いた定着方法等の提供。
【解決手段】希釈剤と、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤とを含有する定着液を記録媒体上のトナーに付与して該トナーを記録媒体に定着させるのに用いられるトナーであって、少なくとも、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂と、着色剤とを含有するトナー。該ポリヒドロキシカルボン酸骨格が、モノマー成分換算での光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|〔ただし、X(L体)は光学活性モノマー換算でのL体比率(モル%)、X(D体)は光学活性モノマー換算でのD体比率(モル%)を表す〕が80%以下である態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、並びに定着方法、画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、定着速度、定着画像品質等の点から、記録媒体上のトナーを加熱溶融し、加圧することで定着させる熱定着方式が広く普及している。しかしながら、このような電子写真方式の画像形成装置における消費電力の約半分以上は、トナーの加熱のために消費されており、環境問題の観点から低消費電力(省エネルギー)の定着装置が望まれている。
【0003】
このような定着装置として、例えば特許文献1には、定着液でトナーを溶解又は膨潤させ、乾燥させることでトナーを定着させる方法が提案されている。
また、特許文献2には、トナーの樹脂を溶解又は膨潤させる可塑剤を含有した泡状定着液を調合し、泡状定着液を均一塗布することでトナー画像を乱すことなく非加熱定着させる方法が提案されている。
この定着方式では、熱定着方式のように、トナーを溶融させるための加熱処理が不要であることから、消費電力が低く、省エネルギー対策として優れた定着方式である。
【0004】
しかし、今までの定着方式を用いた場合には、トナーの軟化の進行が遅く、短時間の定着工程においてトナーを記録媒体上へ固定化することが不十分であるという問題があった。特に、ハーフトーン画像を記録媒体上へ固定化する場合、固定化の強度が不足し、記録媒体の画像部が何らかの接触によって擦られた場合には、画像が剥がれやすいという問題があった。
【0005】
また、特許文献3には、トナーを軟化させる可塑剤を含む定着液を用いて記録媒体にトナーを定着させる定着方式において、トナーを高速かつ少量で定着することが可能な定着方法を提供する目的で、可塑剤をトナー質量に対して3質量%で添加してDSC測定を行った際に、トナーの吸熱ショルダーのシフト幅ΔTが30℃以上である可塑剤とトナーを用いる定着方法が提案されている。この提案では、前記条件を満たすトナーと可塑剤を用いることで、可塑剤が少量の場合でもトナーと可塑剤の相溶性が充分であるため、トナーを充分軟化させることが可能となり、定着速度の高速化への対応が可能となる。
この提案のトナーにおいては、充分な軟化状態を得るためには可塑剤がトナー中に速やかに浸透することが課題であった。この提案のトナーは、可塑剤がトナー中に充分に浸透した後は、僅かな添加量であっても充分なガラス転移温度の変化をもたらすが、最近の電子写真印刷方式に求められる高速画像形成に対応するためには、浸透するまでの速度が充分に速いことが要求される。
【0006】
したがって先行技術文献のように、トナーへの可塑剤の浸透の速度が遅い場合には紙等の記録媒体に対するトナーの充分な定着強度が得られないため、高品質な画像が形成できず、また紙等の記録媒体に可塑剤が浸透し、シワやカールが発生してしまうという課題があり、その速やかな解決が望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤を少なくとも含む定着液の浸透時間が短く、短時間で適切な軟化状態のトナーが得られ、画像が記録媒体に強固に定着し、高速画像形成が可能であり、高品質な画像を形成できるトナー、並びに該トナーを用いた定着方法、画像形成方法及び画像形成装置を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、トナーの結着樹脂の組成を適宜選定することにより、定着液中の可塑剤を速やかに浸透させることが可能なトナーが得られることを知見した。即ち、ポリエステル樹脂を構成する酸やアルコールの微小な含有率振りや混合比の差等よりも支配的なのはポリエステル樹脂を合成時に使用されるモノマー種の選択であること、ポリ乳酸を構成するモノマーとして乳酸、ラクチドが好適であること、このようにモノマー種を選択することで、重量平均分子量やガラス転移温度(Tg)等の他の物性の影響があってもトナーの軟化速度や定着液のトナーへの浸透速度を適当な範囲に制御できることを知見した。
【0009】
そして、本発明者らが更に鋭意検討を行った結果、定着液中の可塑剤は脂肪族アルキル鎖部位、エステル結合部位、アルコール基部位など、骨格の点で共通な構成部位を多く有する、ポリ乳酸樹脂を主な結着樹脂として使用したトナーの場合には、可塑剤の浸透が速やかであり、かつポリ乳酸自体の紙への親和性が高いことから結着樹脂への可塑剤の浸透開始と同時に、良好な定着性が得られ、画像が記録媒体に強固に定着し、高速画像形成が可能であり、高品質な画像を形成できるトナーが得られることを知見した。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 希釈剤と、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤とを含有する定着液を記録媒体上のトナーに付与して該トナーを記録媒体に定着させるのに用いられるトナーであって、
少なくとも、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂と、着色剤とを含有することを特徴とするトナーである。
<2> ポリヒドロキシカルボン酸骨格が、モノマー成分換算での光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|〔ただし、X(L体)は光学活性モノマー換算でのL体比率(モル%)、X(D体)は光学活性モノマー換算でのD体比率(モル%)を表す〕が80%以下である前記<1>に記載のトナーである。
<3> ポリヒドロキシカルボン酸骨格の重量平均分子量が7,000〜60,000である前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナーである。
<4> ポリヒドロキシカルボン酸骨格が炭素数3〜6のヒドロキシカルボン酸が重合乃至共重合した骨格である前記<1>から<3>のいずれかに記載のトナーである。
<5> トナーが、更に帯電制御剤を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナーである。
<6> 帯電制御剤が含フッ素四級アンモニウム塩である前記<5>に記載のトナーである。
<7> トナーが、更に変性層状無機鉱物を含有し、該変性層状無機鉱物が、層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性してなる前記<1>から<6>のいずれかに記載のトナーである。
<8> トナーが、少なくとも結着樹脂、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂、着色剤、帯電制御剤、及び変性層状無機鉱物を含むトナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー材料液を水系媒体中に分散して造粒することで得られる前記<1>から<7>のいずれかに記載のトナーである。
<9> 少なくとも第1の樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)、又は第1の樹脂(a)を含有する被膜(P)が、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に付着されてなるトナーであって、
前記樹脂粒子(B)が、前記<1>から<8>のいずれかに記載のトナーからなる粒子であり、
前記第1の樹脂(a)が、多塩基酸と、多価アルコールとを含むポリエステル樹脂であることを特徴とするトナーである。
<10> ガラス転移温度の異なる第1の樹脂(a1)及び第2の樹脂(a2)と、第3の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)とからなるトナーであって、
前記第1の樹脂(a1)及び前記第2の樹脂(a2)が、いずれも前記樹脂粒子(B)の表面に付着されており、
前記第1の樹脂(a1)及び前記第2の樹脂(a2)が、スチレン系モノマー及びアクリル系モノマーの少なくともいずれかから構成され、
前記樹脂粒子(B)が、前記<1>から<8>のいずれかに記載のトナーからなる粒子であることを特徴とするトナーである。
<11> 第1の樹脂(a)と、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)と、を有するトナーであって、
前記第1の樹脂(a)が、ポリウレタン−アクリルポリマー複合体より構成され、前記樹脂粒子(B)の表面に付着されてなり、
前記樹脂粒子(B)が、前記<1>から<8>のいずれかに記載のトナーからなる粒子であることを特徴とするトナーである。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載のトナーと、キャリアとを含む現像剤において、
前記キャリアが少なくとも芯材と、該芯材表面に微粒子を含む被覆層とを有し、前記微粒子の平均粒子径(D)と前記被覆層の平均厚み(h)が1<[D/h]<10であり、前記微粒子の含有量が40質量%〜95質量%であることを特徴とする現像剤である。
<13> 被覆層が少なくともシリコーン樹脂を含有する前記<12>に記載の現像剤である。
<14> 被覆層における微粒子が、アルミナ、及び表面処理したアルミナの少なくともいずれかである前記<12>から<13>のいずれかに記載の現像剤である。
<15> トナーの少なくとも一部を溶解乃至膨潤させることで該トナーを軟化させる可塑剤を含有する定着液を記録媒体上のトナーに付与して該トナーを記録媒体に定着させる定着方法において、
前記トナーが前記<1>から<11>のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする定着方法である。
<16> 前記<1>から<11>のいずれかに記載のトナーを用いて記録媒体上にトナーを定着する定着方法であって、
水を含む希釈剤と、起泡剤と、可塑剤とを含有する定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成工程と、
前記泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整工程と、
前記所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上のトナー層に付与する泡状定着液付与工程と、
を含むことを特徴とする定着方法である。
<17> 可塑剤が、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルである前記<15>から<16>のいずれかに記載の定着方法である。
<18> 可塑剤が下記一般式で表される化合物である前記<15>から<16>のいずれかに記載の定着方法である。
(COO−(R−O)−R10
ただし、前記一般式中、nは1以上3以下であり、Rは炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が1以上3以下のアルキレン基であり、R10は炭素数が1以上4以下のアルキル基である。
<19> 静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と、
を含む画像形成方法であって、
前記定着工程が、前記<15>から<18>のいずれかに記載の定着方法により行われることを特徴とする画像形成方法である。
<20> 静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器とを備え、前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、定着液を記録媒体上のトナー層に付与する定着液付与手段とを有する定着手段であって、
前記トナーが前記<1>から<11>のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置である。
<21> 静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給するトナーを含む現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、前記現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器とを備え、前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、水を含む希釈剤と、起泡剤と、可塑剤とを含有する定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成手段と、
前記泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整手段と、
前記所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上のトナー層に付与する泡状定着液付与手段とを有し、
前記トナーが前記<1>から<11>のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤を少なくとも含む定着液の浸透時間が短く、短時間で適切な軟化状態のトナーが得られ、画像が記録媒体に強固に定着し、高速画像形成が可能であり、高品質な画像を形成できるトナー、並びに該トナーを用いた定着方法、画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、定着液付与後のトナーの定着の様子を示す概略断面図である。
【図2】図2は、塗布時の泡状定着液の層構成例を示す概略図である。
【図3】図3は、定着装置における泡状定着液生成手段の構成を示す概略図である。
【図4A】図4Aは、定着装置における膜厚調整手段及び泡状定着液付与手段の一例を示す概略構成図である。
【図4B】図4Bは、定着装置における塗布ローラ及び膜厚調整用ブレードを拡大した概略図である。
【図5A】図5Aは、泡状定着液の塗布ローラ上での膜厚調整方法を示す概略図である。
【図5B】図5Bは、泡状定着液の塗布ローラ上での膜厚調整方法を示す概略図である。
【図6】図6は、定着装置の一例を示す概略図である。
【図7】図7は、定着装置の他の一例を示す概略図である。
【図8】図8は、加温手段を設けた定着装置の他の一例を示す概略図である。
【図9】図9は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図10】図10は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略図である。
【図11】図11は、図10に示す画像形成装置に備える1つの作像手段の概略図である。
【図12】図12は、図10に示す画像形成装置の定着装置の拡大図である。
【図13】図13は、定着手段を含む画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図14】図14は、画像形成装置の他の一例を示す概略図である。
【図15】図15は、実施例における定着液のトナー層への浸透時間を測定する装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(トナー)
本発明のトナーは、希釈剤と、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤とを含有する定着液を記録媒体上のトナーに付与して該トナーを記録媒体に定着させるのに用いられ、
少なくとも、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂と、着色剤とを含有してなり、帯電制御剤、変性層状無機鉱物、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0014】
<ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂>
前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂におけるポリヒドロキシカルボン酸骨格は、ヒドロキシカルボン酸が重合乃至共重合した骨格を有し、ヒドロキシカルボン酸を直接脱水縮合する方法、あるいは、対応する環状エステルを開環重合する方法で形成できる。
【0015】
前記重合法は、重合されるポリヒドロキシカルボン酸の分子量を大きくするという観点から環状エステルの開環重合が好ましい。光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂は、透明性、耐熱性、耐久性に優れるが、トナー用樹脂としての透明性と、使用する定着液中の可塑剤の浸透速度の観点から、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成するモノマーとしては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び環状エステルが好ましく、炭素数3〜6のヒドロキシカルボン酸(炭素数3〜6のヒドロキシカルボン酸に対応する環状エステルも含める)がより好ましく、乳酸、ラクチドが特に好ましい。
【0016】
前記光学活性モノマーとして、ヒドロキシカルボン酸の環状エステルを用いた場合、重合して得られる樹脂のヒドロキシカルボン酸骨格は、環状エステルを構成するヒドロキシカルボン酸が重合した骨格となる。例えばラクチドを用いて得られる樹脂のポリヒドロキシカルボン酸骨格は、乳酸が重合した骨格になる。
【0017】
前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成する光学活性モノマーは、モノマー成分換算で光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|〔ただし、X(L体)は光学活性モノマー換算でのL体比率(モル%)、X(D体)は光学活性モノマー換算でのD体比率(モル%)を表す〕が80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。前記光学純度Xがこの範囲であると、溶剤溶解性、樹脂の透明性が向上する。
前記光学純度がこの範囲ではない場合には、樹脂の非晶化が不十分で結晶性が残っていることにより微細な結晶が樹脂中に発生するため、結晶界面で光の散乱が発生し樹脂の透明性は損なわれ、また結晶部分は溶剤や可塑剤の浸透が困難であるため、定着液中の可塑剤の浸透速度は遅くなる。またトナー中の顔料やワックスは微小結晶からは排除され、トナー内での顔料やワックスの凝集、偏在が発生しやすくなることで光沢均一性、色再現性は悪化する。
なお、当然のことながら、原料で用いているL体、D体は光学異性体であり、光学異性体は、光学特性以外の物理的、化学的性質は同じであるため、重合に用いた場合その反応性は等しく、モノマーの成分比と重合体におけるモノマーの成分比は同じとなる。
【0018】
ここで、前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格含有樹脂の光学純度は、例えばポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有する樹脂をアルカリ水溶液環境下で長時間加熱し、モノマー単位にまで分解したものを、半透膜を通して低分子量モノマー部のみ抽出し、光学分割カラムを装着したHPLC法などにより測定することができる。
【0019】
前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成するヒドロキシカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば脂肪族ヒドロキシカルボン酸(グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸等)、芳香族ヒドロキシカルボン酸(サリチル酸、クレオソート酸、マンデル酸、バーリン酸、シリング酸等)、又はこれらの混合物などが挙げられる。なお、対応する環状エステルとしては、グリコリド、ラクチド、γ−ブチロラクトン、6−バレロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、トナーの透明性と熱特性の観点から、トナーに含まれる樹脂は光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有し、該光学活性モノマーとしては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び環状エステルが好ましく、炭素数3〜6のヒドロキシカルボン酸がより好ましく、乳酸及びラクチドが特に好ましい。
【0020】
また、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有する樹脂の重合時に、共開始剤としてアルコール類、ラクトン類を用いてもよい。
前記アルコール類としては、公知のアルコールを用いることができるが、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールが、得られる樹脂の熱溶融特性の面で好ましい。ラクトン類としては、公知のラクトンを用いることができるが、ε−カプロラクトンが、得られる樹脂の熱溶融特性の面で好ましい。
【0021】
前記樹脂中の光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格の重量平均分子量(Mw)は、7,000〜60,000が好ましく、10,000〜20,000がより好ましい。前記重量平均分子量がこの範囲より低い場合には保存性が悪化し、前記分子量がこれより高い場合には溶剤溶解性が損なわれることで水系造粒トナーの製造が困難となる。
ここで、前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格の重量平均分子量(Mw)は、例えば後述するGPC法により測定することができるにより測定することができる。
【0022】
また、前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂は、トナー作製時に伸張させてもよく、その場合には前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂はイソシアネート基を有することが好ましく、伸張剤としてはアミン類などが挙げられる。
【0023】
本発明においてはポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂以外の第2の樹脂を併用することも可能である。
前記第2樹脂としては、特に制限はなく、公知のいかなる樹脂を併用してもよく、併用する樹脂は、用途・目的に応じて適宜好ましいものを選択することができ、例えばビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体、ポリチメルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、1,2−プロピレングリコールを構成単位として含有する、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂がより好ましく、トナーの保存性や、水系造粒のしやすさ等の物性調整の観点から直鎖状ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0024】
前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、トナーの透明性と定着液中の可塑剤の観点から、トナー中に含まれる全樹脂に対するポリヒドロキシカルボン酸骨格の割合が50質量%〜90質量%であることが好ましく、65質量%〜85質量%であることがより好ましい。前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格の割合が、50質量%未満であると、定着液中の可塑剤は速やかに浸透しないと同時に透明性が得られないことがあり、90質量%を超えると、水系造粒トナーの製造時に油相粘度が高くなり、トナーの製造が困難になることがある。
【0025】
<帯電制御剤>
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩、ジブチル又はジオクチル等のジアルキルスズ化合物、ジアルキルスズボレート化合物、グアニジン誘導体、アミノ基を含有するビニル系ポリマー、アミノ基を含有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂、有機ホウ素塩類、含フッ素四級アンモニウム塩、カリックスアレン系化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有色帯電制御剤の使用は避けるべきであり、白色のサリチル酸誘導体の金属塩、含フッ素四級アンモニウム塩が好ましく、含フッ素四級アンモニウム塩が特に好ましい。前記帯電制御剤として含フッ素四級アンモニウム塩を用いることで、トナーの帯電を速やかに所望の帯電量まで上昇させることができ、更に樹脂の透明性を損なうことがない。
【0026】
前記帯電制御剤の含有量は、前記樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜2質量部が好ましく、0.02質量部〜1質量部がより好ましい。前記含有量が、0.01質量部以上であると、帯電制御性が得られ、2質量部以下であると、トナーの帯電性が大きくなりすぎることがなく、主帯電制御剤の効果を減退させることもなく、現像ローラとの静電的吸引力が増大してトナーの流動性低下や画像濃度の低下を招くということもない。
【0027】
<変性層状無機鉱物>
本発明のトナーは、帯電性を安定にするために層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した変性層状無機鉱物を含有することが好ましい。
【0028】
前記変性層状無機鉱物は、スメクタイト系の基本結晶構造を持つものを有機カチオンで変性したもの等を好適に使用することができる。また、層状無機鉱物の2価金属の一部を3価の金属に置換することにより、金属アニオンを導入することができる。しかし、金属アニオンを導入すると親水性が高いため、使用する場合には金属アニオンの少なくとも一部を有機アニオンで変性した層状無機化合物が好ましい。
【0029】
前記変性層状無機鉱物の、有機物カチオン変性剤としては、例えば第4級アルキルアンモニウム塩、フォスフォニウム塩、イミダゾリウム塩などが挙げられる。これらの中でも、第4級アルキルアンモニウム塩が特に好ましい。
前記第4級アルキルアンモニウムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することがで、例えばトリメチルステアリルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、などが挙げられる。
【0030】
前記有機物アニオン変性剤としては、分岐、非分岐、又は環状アルキル(C1〜C44)、アルケニル(C1〜C22)、アルコキシ(C8〜C32)、ヒドロキシアルキル(C2〜C22)、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を有する硫酸塩、スルフォン酸塩、カルボン酸塩、又はリン酸塩が挙げられる。これらの中でも、エチレンオキサイド骨格を有するカルボン酸塩が好ましい。
【0031】
層状無機鉱物を少なくとも一部を有機物イオンで変性することにより、適度な疎水性を持ち、トナー組成物を含む有機溶媒相が非ニュートニアン粘性を持ち、トナーを異形化することができる。このとき、トナー材料中の変性層状無機鉱物の含有量は、0.05質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0032】
前記変性層状無機鉱物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト、セピオライト、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トナー特性に影響を与えず、容易に粘度調整ができ、添加量を少量とすることができることから有機変性モンモリロナイト又はベントナイトが特に好ましい。
【0033】
一部を有機カチオンで変性した変性層状無機鉱物としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えばBentone 3、Bentone 38、Bentone 38V(以上、レオックス社製)、チクソゲルVP(United catalyst社製)、クレイトン34、クレイトン40、クレイトンXL(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18ベントナイト;Bentone 27(レオックス社製)、チクソゲルLG(United catalyst社製)、クレイトンAF、クレイトンAPA(以上、サザンクレイ社製)等のステアラルコニウムベントナイト;クレイトンHT、クレイトンPS(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18/ベンザルコニウムベントナイト、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、クレイトンAF、クレイトンAPAが特に好ましい。
【0034】
一部を有機アニオンで変性した層状無機鉱物としては、例えばDHT−4A(協和化学工業株式会社製)に下記一般式(1)で表される有機アニオンで変性させたものが特に好ましい。
(OR)nOSOM・・・一般式(1)
ただし、前記一般式(1)中、Rは、炭素数13のアルキル基、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を表す。nは、2〜10の整数を表し、Mは1価の金属元素を表す。
前記一般式(1)で示される有機アニオンとしては、例えばハイテノール330T(第一工業製薬株式会社製)などが挙げられる。
【0035】
<着色剤>
前記着色剤としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色のトナーを得ることが可能な公知の顔料や染料が使用できる。
前記着色剤としては、例えば、黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどが挙げられる。
橙色顔料としては、例えばモリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKなどが挙げられる。
赤色顔料としては、例えばベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが挙げられる。
紫色顔料としては、例えばファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色顔料としては、例えばコバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCなどが挙げられる。
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキなどが挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記着色剤の前記トナーにおける含有量としては、1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機微粒子、離型剤、流動性向上剤、磁性体などが挙げられる。
【0038】
−無機微粒子−
前記無機微粒子としては、例えばシリカ、チタニア、アルミナ、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム等を用いることができ、シリコーンオイルやヘキサメチルジシラザンなどで疎水化処理されたシリカ微粒子や、特定の表面処理を施した酸化チタンを用いることがより好ましい。
前記シリカ微粒子としては、例えばアエロジル(品番:130、200V、200CF、300、300CF、380、OX50、TT600、MOX80、MOX170、COK84、RX200、RY200、R972、R974、R976、R805、R811、R812、T805、R202、VT222、RX170、RXC、RA200、RA200H、RA200HS、RM50、RY200、REA200)(いずれも、日本アエロジル株式会社製)、HDK(品番:H20、H2000、H3004、H2000/4、H2050EP、H2015EP、H3050EP、KHD50)、HVK2150(いずれも、ワッカーケミカル社製)、カボジル(品番:L−90、LM−130、LM−150、M−5、PTG、MS−55、H−5、HS−5、EH−5、LM−150D、M−7D、MS−75D、TS−720、TS−610、TS−530)(いずれも、キャボット社製)などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記無機微粒子の添加量としては、トナー母体粒子100質量部に対し、0.1質量部〜5.0質量部が好ましく、0.8質量部〜3.2質量部がより好ましい。
【0039】
−離型剤−
前記離型剤としては、例えばカルボニル基含有ワックス、ポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素、などを用いてもよいが、離型剤は用いない方が好ましい。従来の加熱加圧定着方式で用いられるトナーには、定着時のホットオフセット等を防止することを目的として、離型剤とよばれる、熱ローラ定着を行う際に溶融し、ローラと被定着材上のトナーとの付着を防止する効果を有する物質(低分子量ポリオレフィン・ワックス等)が用いられてきた。しかし、前記離型剤が、トナーのバインダー樹脂中への均一分散が困難であり、前記離型剤がトナー表面などに多く存在する場合には、耐ブロッキング性の低下、感光体、キャリア等へのフィルミング、スペント化、経時での部材汚染等の問題を生ずる原因ともなりうる。
なお、本発明のトナーを軟化させる可塑剤を含む定着液を用いて記録媒体にトナーを定着させる方法に用いられるトナーは、非加熱の定着方法に用いられるものであるから、熱ローラ定着を行う際に溶融し、ローラと被定着材上のトナーとの付着を防止する効果を有する物質を有する必要がなく、離型剤を用いなくてもよい。
【0040】
−磁性体−
前記磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、又は他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金、(3)又はこれらの混合物、などが用いられる。
【0041】
前記磁性体としては、例えばFe、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe12O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末が特に好ましい。
【0042】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。これらの中でも、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムが特に好ましい。前記異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0043】
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
前記磁性体の使用量は、前記結着樹脂100質量部に対して10質量部〜200質量部が好ましく、20質量部〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒径としては、0.1μm〜2μmが好ましく、0.1μm〜0.5μmがより好ましい。
前記個数平均粒径は、例えば透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
【0044】
また、前記磁性体の磁気特性としては、10kエルステッド印加での磁気特性が、それぞれ抗磁力20エルステッド〜150エルステッド、飽和磁化50emu/g〜200emu/g、残留磁化2emu/g〜20emu/gのものが好ましい。
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0045】
また、本発明のトナーは、以下の第1から第3の態様のコアシェル型のトナーとることができる。
第1の態様のコアシェル型トナーは、少なくとも第1の樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)、又は第1の樹脂(a)を含有する被膜(P)が、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に付着されてなり、
前記樹脂粒子(B)が、少なくとも、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂を含有する本発明の前記トナーからなる粒子であり、
前記第1の樹脂(a)が、多塩基酸と、多価アルコールとを含むポリエステル樹脂である。
【0046】
前記多塩基酸としては、例えば芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、3官能以上の多塩基酸などが挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等を挙げることができ、必要に応じて耐水性を損なわない範囲で少量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸や5−ヒドロキシイソフタル酸を用いることができる。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、(無水)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水添ダイマー酸等の飽和ジカルボン酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和ジカルボン酸などが挙げられる。
前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸(無水物)、テトラヒドロフタル酸(無水物)などが挙げられる。
前記3官能以上の多塩基酸としては、例えば(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などが挙げられる。
【0047】
前記多価アルコールとしては、グリコールとして炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコールなどが挙げられる。
前記炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールなどが挙げられる。
前記炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
前記エーテル結合含有グリコールとしては、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要により使用しうる。ただし、エーテル構造はポリエステル樹脂被膜の耐水性、耐候性を低下させることから、その使用量は全多価アルコール成分の10質量%以下、更には5質量%以下にとどめることが好ましい。
3官能以上の多価アルコールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
3官能以上の多塩基酸及び/又は多価アルコールは、全酸成分あるいは全アルコール成分に対し10モル%以下、好ましくは5モル%以下の範囲で共重合されるが、10モル%を超えると、ポリエステル樹脂の長所である被膜の高加工性が発現されなくなる。
【0048】
第2の態様のコアシェル型トナーは、ガラス転移温度の異なる第1の樹脂(a1)及び第2の樹脂(a2)と、第3の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)を有してなり、
前記第1の樹脂(a1)及び前記第2の樹脂(a2)が、前記樹脂粒子(B)の表面に付着されてなり、
前記第1の樹脂(a1)及び前記第2の樹脂(a2)が、スチレン系モノマー及びアクリル系モノマーの少なくともいずれかから構成され、
前記樹脂粒子(B)が、少なくとも、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂を含有する本発明の前記トナーからなる粒子である。
【0049】
前記スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレンなどが挙げられる。
前記アクリル系モノマーとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチル脂肪酸モノカルボン酸エステル類などが挙げられる。
【0050】
第3の態様のコアシェル型トナーは、第1の樹脂(a)と、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)を有してなり、
前記第1の樹脂(a)が、ポリウレタン−アクリルポリマー複合体より構成され、前記樹脂粒子(B)の表面に付着されてなり、
前記樹脂粒子(B)が、少なくとも、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂を含有する本発明の前記トナーからなる粒子である。
【0051】
前記ポリウレタン−アクリルポリマー複合体としては、例えば、まず、ジイソシアネート化合物、ジオール化合物、カルボキシル基を有するジオール化合物及び重合性不飽和基を有するヒドロキシル化合物を有機溶媒中におけるウレタン化反応によりプレポリマーを調製する。その後、得られたNCO末端のプレポリマーを3級アミン類などの中和剤によって中和する。続いて、(1)多官能カルボン酸ポリヒドラジド化合物とプレポリマーの末端NCO基を反応させるか、又は(2)多官能アミン及び/又は多官能カルボン酸ポリヒドラジドによって、鎖伸長させた後、残存するNCO末端基を多官能カルボン酸ポリヒドラジドと反応させることによって、末端に−CONHNH基を有する水性ポリウレタン樹脂へ転換する。これによりポリウレタン水性分散液が得られる。
続いて、前述の方法で製造されたポリウレタン水性分散液の存在下でアクリル系モノマーを重合させポリウレタン−アクリルポリマー複合体の水性分散液を製造する。使用されるアクリル系モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸グリシジルなどのメタクリル酸エステル類、スチレンなどを主成分とする単量体混合物が挙げられる。
【0052】
<現像剤>
前記現像剤は、本発明のトナーを少なくとも含有してなり、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有してなる。該現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
【0053】
−キャリア−
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する被覆層とを有するものが好ましい。
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料などが好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている静電潜像担持体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
前記芯材の粒径としては、平均粒径(重量平均粒径(D50))で、10μm〜200μmが好ましく、40μm〜100μmがより好ましい。前記平均粒径(重量平均粒径(D50))が、10μm未満であると、キャリアの分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、200μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがある。
【0054】
前記被覆層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、フッ化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー(フッ化三重(多重)共重合体)、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリコーン樹脂が特に好ましい。
前記シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、一般的に知られているシリコーン樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オルガノシロサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂;アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等で変性したシリコーン樹脂、などが挙げられる。
前記シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、ストレートシリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKR271、KR255、KR152;東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2400、SR2406、SR2410などが挙げられる。
前記変性シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、信越化学工業株式会社製のKR206(アルキド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性);東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキド変性)、などが挙げられる。
なお、シリコーン樹脂を単体で用いることも可能であるが、架橋反応する成分、帯電量調整成分等を同時に用いることも可能である。
前記被覆層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、該導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化錫、酸化亜鉛、などが挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。前記平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0055】
前記被覆層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を有機溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、該塗布溶液を前記芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。前記塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、などが挙げられる。
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブ、ブチルアセテート、などが挙げられる。
前記焼付としては、特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法、などが挙げられる。
前記被覆層の前記キャリアにおける量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましい。前記量が、0.01質量%未満であると、前記芯材の表面に均一な前記被覆層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、前記被覆層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリアが得られないことがある。
前記現像剤が二成分現像剤である場合には、前記キャリアの該二成分現像剤における含有量としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばキャリア100質量部に対しトナー1質量部〜10.0質量部が好ましい。
【0056】
前記被覆層には物性調整の観点から微粒子を含有させてもよい。前記微粒子は、被覆層の平均厚みに対して、適切な含有量、平均粒子径を選択することにより、被覆層の強度を著しく向上させることができる。
前記微粒子としては、特に制限はなく、従来公知の材料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えばアルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化スズ、酸化インジウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トナーを負極性に帯電させる点、前記被覆層の抵抗値を所望の範囲で制御しやすい点から、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子が特に好ましい。なお、前記微粒子は表面処理されていていてもよく、表面処理したアルミナ微粒子が好適である。
【0057】
前記被覆層を構成する結着樹脂として、シリコーン樹脂以外の樹脂を1種類以上含有してもよい。これらの中でも、アクリル樹脂は、芯材及び被覆層に含有される微粒子との密着性が強く脆性が低いので、前記被覆層の剥離に対して非常に優れた性質を持つので特に好ましい。
前記微粒子は、前記被覆層の厚みに対して、適切な含有量、平均粒子径を選択することにより、前記被覆層の強度を著しく向上させることができる。
前記キャリアにおいては、前記微粒子の平均粒子径(D)と、前記被覆層の平均厚み(h)とが、1<[D/h]<10であることが好ましく、1<[D/h]<5であることがより好ましい。これは、1<[D/h]<10であることで、前記被覆層に比べて微粒子の方が凸となるので、現像剤を摩擦帯電させるための攪拌により、トナーとの摩擦あるいはキャリア同士の摩擦で、結着樹脂への強い衝撃を伴う接触を緩和することができる。これにより、キャリアへのトナースペントを防止することが可能となるとともに、帯電発生箇所である結着樹脂の膜削れも抑制することが可能となる。前記[D/h]が、1以下であると、前記微粒子は結着樹脂中に埋もれてしまうため、効果が著しく低下し好ましくない。一方、前記[D/h]が、10以上であると、微粒子と結着樹脂との接触面積が少ないため充分な拘束力が得られず、前記微粒子が容易に脱離してしまうため好ましくない。
【0058】
更に、前記被覆層中の微粒子の含有量が、被覆層全体の40質量%〜95質量%の範囲であることで、その効果は顕著である。前記含有量は、50質量%〜80質量%であることが好ましい。前記含有量が、40質量%よりも少ない場合には、キャリア表面での結着樹脂の占める割合に比べ、該微粒子の占める割合が少ないため、結着樹脂への強い衝撃を伴う接触を緩和する効果が小さいので、十分な耐久性が得られず好ましくない。一方、前記含有量が、95質量%を超えると、キャリア表面での結着樹脂の占める割合に比べ、該微粒子の占める割合が過多となるため、帯電発生箇所である結着樹脂の占める割合が不十分となり、十分な帯電能力を発揮できない。それに加え、結着樹脂量に比べて微粒子の含有量が多過ぎるので、結着樹脂による微粒子の保持能力が不十分となり、微粒子が脱離し易くなるので、十分な耐久性が得られないことがある。
【0059】
前記被覆層の平均厚みhは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、1.0μm以下が好ましく、0.02μm〜0.8μmがより好ましい。
前記微粒子の平均粒子径Dは、前記被覆層の平均厚みhに応じて適宜選択されるが、0.1μm〜1.5μmが好ましい。
ここで、前記被覆層の平均厚みh、及び微粒子の平均粒子径Dは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、キャリア断面を観察して測定することができる。
【0060】
本発明においては、前記キャリアがトナーに対して、長期に亘って安定して帯電を付与するために、被覆層中にアミノシランカップリング剤を含有させることが可能である。前記被覆層における含有量は、0.001質量%〜30質量%が好ましく、0.001質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、0.001質量%未満であると、帯電性が環境の影響を受け易く、また製品収率が低下しやすくなることがあり、30質量%を超えると、被覆層が脆くなりやすく、被覆層の耐摩耗性が低下することがある。
【0061】
前記被覆層の形成方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法が使用でき、芯材表面に前記被覆層液を噴霧法又は浸漬法等の手段で塗布する方法が挙げられる。
前記被覆層の重合反応を促進させる等を目的に、被覆層が形成されたキャリアを加熱処理してもよい。前記加熱は、被覆層を形成後、引き続き、被覆層形成装置内で行ってもよく、或いは被覆層を形成後、通常の電気炉、焼成キルン等の別の加熱手段によって行ってもよい。また、加熱温度としては、使用する被覆層用樹脂によって異なるため、一概に決められるものではないが、120℃〜350℃が好ましく、被覆層用樹脂の分解温度以下の温度が好ましく、220℃程度までの上限温度がより好ましく、加熱時間としては、5分間〜120分間が好ましい。
【0062】
<トナーの製造方法>
前記トナーを構成するトナー母体粒子の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉砕法、特定の重合性単量体を含有する単量体組成物を水相中で直接的に重合する重合法(懸濁重合法、乳化重合法)、水系媒体中に特定の結着樹脂溶解液を乳化乃至分散させる方法、溶剤で溶解し脱溶剤して粉砕する方法、溶融スプレー法などが挙げられる。
【0063】
−粉砕法−
前記粉砕法は、例えば、トナー材料を溶融し、混練した後、粉砕し、分級等することにより、前記トナーの母体粒子を得る方法である。
前記粉砕法の場合、前記トナーの平均円形度を高くする目的で、得られたトナーの母体粒子に対し、機械的衝撃力を与えて形状を制御してもよい。この場合、前記機械的衝撃力は、例えば、ハイブリタイザー、メカノフュージョンなどの装置を用いて前記トナーの母体粒子に付与することができる。
前記トナー材料を混合し、該混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。該溶融混練機としては、例えば、一軸の連続混練機、二軸の連続混練機、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。例えば、株式会社神戸製鋼所製KTK型二軸押出機、東芝機械株式会社製TEM型押出機、有限会社ケイシーケイ製二軸押出機、株式会社池貝鉄工所製PCM型二軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。この溶融混練は、バインダー樹脂の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行うことが好ましい。具体的には、溶融混練温度は、バインダー樹脂の軟化点を参考にして行われ、該軟化点より高温過ぎると切断が激しく、低温すぎると分散が進まないことがある。
【0064】
前記粉砕では、前記混練で得られた混練物を粉砕する。この粉砕においては、まず、混練物を粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。この際ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターとの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
前記分級は、前記粉砕で得られた粉砕物を分級して所定粒径の粒子に調整する。前記分級は、例えば、サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができる。
前記粉砕及び分級が終了した後に、粉砕物を遠心力などで気流中に分級し、所定の粒径のトナーを製造する。
【0065】
−懸濁重合法−
前記懸濁重合法は、油溶性重合開始剤、重合性単量体中に着色剤、離型剤などを分散し、界面活性剤、その他固体分散剤などが含まれる水系媒体中で、後述する乳化法によって乳化分散する。その後重合反応を行い粒子化した後に、本発明におけるトナー粒子表面に無機微粒子を付着させる湿式処理を行えばよい。その際、余剰にある界面活性剤等を洗浄除去したトナー粒子に処理を施すことが好ましい。
前記重合性単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸又は無水マレイン酸などの酸類、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアミノ基を有するアクリレート、メタクリレートなどを一部用いることによってトナー粒子表面に官能基を導入できる。
また、使用する分散剤として酸基や塩基性基を有するものを選ぶことよって粒子表面に分散剤を吸着残存させ、官能基を導入することができる。
【0066】
−乳化重合法−
前記乳化重合法としては、水溶性重合開始剤、重合性単量体を水中で界面活性剤を用いて乳化し、通常の乳化重合の手法によりラテックスを合成する。別途着色剤、離型剤等を水系媒体中分散した分散体を用意し、混合の後にトナーサイズまで凝集させ、加熱融着させることによりトナーを得る。その後、後述する無機微粒子の湿式処理を行えばよい。ラテックスとして懸濁重合法に使用される単量体と同様なものを用いればトナー粒子表面に官能基を導入できる。
【0067】
−水系媒体中に特定の結着樹脂溶解液を乳化乃至分散させる方法−
前記水系媒体中に特定の結着樹脂溶解液を乳化乃至分散させる方法としては、少なくとも結着樹脂を有するトナー材料の溶解液乃至分散液を水系媒体中に乳化乃至分散させ、乳化液乃至分散液を調製した後、トナーを造粒(水系造粒)する方式である。この方式としては、例えば以下の工程(1)〜(4)からなる。
【0068】
<<工程(1):トナー材料の溶解液乃至分散液の調製>>
前記トナー材料の溶解液乃至分散液は、着色剤、結着樹脂等のトナー材料を有機溶剤に溶解乃至分散させることにより調製される。なお、前記有機溶剤は、トナーの造粒時乃至造粒後に除去される。
【0069】
<<工程(2):水系媒体の調製>>
前記水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば水、該水と混和可能なアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類等の溶剤、又はこれらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、水が特に好ましい。
前記水系媒体の調製は、例えば、樹脂微粒子のような分散安定化剤を前記水系媒体に分散させることにより行うことができる。樹脂微粒子の水系媒体中への添加量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5質量%〜10質量%が好ましい。
前記樹脂微粒子としては、水系媒体中で水性分散液を形成し得る樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも微細な球状の樹脂微粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されているのが好ましい。
また、前記水系媒体においては、必要に応じて、後述の乳化乃至分散時における、前記溶解液乃至分散液の油滴を安定化させ、所望の形状を得つつ粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が特に好ましい。
【0070】
<<工程(3):乳化乃至分散>>
前記トナー材料を含む溶解液乃至分散液を前記水系媒体中で乳化乃至分散させる際、トナー材料を含む溶解液乃至分散液を前記水系媒体中で攪拌しながら分散させるのが好ましい。分散の方法としては、特に限定されるものではないが、ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー(在原製作所製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)、コロイドミル(神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機株式会社製)、キャピトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工株式会社製)等の連続式乳化機、マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機(冷化工業株式会社製)等の膜乳化機、バイブロミキサー(冷化工業株式会社製)等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機、などが挙げられる。これらの中でも、粒径の均一化の観点から、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサーが特に好ましい。
なお、前記溶解液乃至分散液に含まれる結着樹脂として活性水素基含有化合物と反応可能な変性ポリエステル(プレポリマー)を含む場合においては、乳化乃至分散時に反応が進行する。反応条件としては特に制限はなく、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と前記活性水素基含有化合物との組合せに応じて適宜選択することができるが、反応時間としては、10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。
【0071】
<<工程(4):溶剤の除去>>
次に、前記乳化乃至分散により得られた乳化スラリーから有機溶剤を除去する。有機溶剤の除去は、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶剤を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶剤を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法等が挙げられる。
【0072】
−無機微粒子の添加混合−
また、トナーの流動性、保存性、現像性、転写性を高めるために、以上のようにして製造されたトナー母体粒子に、更に疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。
添加剤の混合は、一般の粉体の混合機が用いられるがジャケット等装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。なお、添加剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中又は漸次添加剤を加えていけばよい。この場合、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよい。まず、はじめに強い負荷を、次に、比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。使用できる混合設備としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。次いで、250メッシュ以上の篩を通過させ、粗大粒子、凝集粒子を除去し、トナーが得られる。
【0073】
−トナーの体積平均粒径、及び比(体積平均粒径/個数平均粒径)−
前記トナーは、その形状、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下のような、体積平均粒径、体積平均粒径と個数平均粒径との比(体積平均粒径/個数平均粒径)などを有していることが好ましい。
【0074】
前記トナーの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm〜10μmが好ましく、3μm〜8μmがより好ましい。前記体積平均粒径が、3μm未満であると、電子写真用現像剤では現像装置における長期の撹拌において電子写真用キャリアの表面にトナーが融着し、電子写真用キャリアの帯電能力を低下させることがあり、10μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、電子写真用現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
前記トナーにおける体積平均粒径と、個数平均粒径との比(体積平均粒径/個数平均粒径)としては、1.00〜1.25が好ましく、1.10〜1.25がより好ましい。
前記体積平均粒径、及び前記体積平均粒子径と個数平均粒子径との比(体積平均粒径/個数平均粒径)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer 3 Version3.51)にて解析を行うことができる。
具体的には、ガラス製100mLのビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)を0.5mL添加し、各トナー0.5gを添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜ、次いで、イオン交換水80mLを添加する。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理する。前記分散液を、前記マルチサイザーIIIを用い、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行う。測定は、装置が示す濃度が8%±2%となるように、前記トナーサンプル分散液を滴下する。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8%±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0075】
本発明のトナーは、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤を少なくとも含む定着液を用いて記録媒体に定着され、各種用途に用いることができるが、以下に説明する本発明の定着方法及び定着装置に好適に用いられる。
【0076】
<定着液>
前記定着液は、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤と、希釈剤とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。定着液を泡状定着液として用いる場合には、前記定着液を泡状にして使用する。泡状定着液は、希釈剤と、定着液を泡状とする起泡剤と、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤と、を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。本発明の定着方法においては、この泡状定着液を用いることが好ましい。
【0077】
<<可塑剤>>
前記可塑剤としては、常温で固体であって、希釈剤に可溶な固体可塑剤を含み、更に必要に応じて常温で液体であって、希釈剤に可溶な液体可塑剤を含んでなる。
【0078】
−固体可塑剤−
前記固体可塑剤は、常温で固体であり、かつ、後述の希釈剤に可溶であって、この希釈剤に溶解している状態でトナーを軟化させる得る限り、特に制限はない。ここで、「常温」とは、熱したり冷やしたりせずに達成される温度のことをいい、例えば、JIS Z8703にて定義されている、5℃〜35℃であることが好ましい。この常温の範囲内であると、固体可塑剤は固体状態となる。即ち、泡状態の定着液においては水を含むために固体可塑剤は溶融している状態にあるが、未定着のトナーに付与され、該トナーに浸透し、更にトナーに浸透した定着液の水分が気化などにより量が低下した場合には、前記固体可塑剤は固体の状態に変化する。本発明では、このように、固体可塑剤が固体の状態に変化する点に注目し、この特性を利用することで定着液付与後のトナー固さを高め、タックに関する課題を解決している。また、常温における適当な条件下で固体可塑剤がトナーに対する可塑能力を発揮するとともに、可塑能力を失い固体の状態となると、それ自体が硬化し、タックの防止に寄与することとなる点で、好ましい。
【0079】
前記固体可塑剤としては、例えば、被定着物であるトナーと一定の相溶性を有するなどの親和性を有する官能基を有することが好ましい。ここでいう親和性を有する官能基とは、好ましくは、トナーを構成する分子に含まれる官能基と、固体可塑剤に含まれる官能基とが同一である場合に加え、これらの官能基間で一定の相互作用をし得る官能基を有することを意味する。前記固体可塑剤に含まれる官能基がトナーを構成する分子と一定の相互作用をし得る官能基を有すると、これらの官能基の相互作用によりトナーを構成する分子間に固体可塑剤が進入するきっかけとなり、その結果として、固体可塑剤とトナーとの間でいわゆるポリマーブレンドの状態を形成し、固体可塑剤がトナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる際に効果的であるためである。具体的な例を挙げると、固体可塑剤がポリエチレングリコール系化合物であって、該ポリエチレングリコールにエチレンオキサイド基が含まれる。そして、対応するトナーには、樹脂分子中にエチレンオキサイド基を含む組合せがそれに相当する。このような場合、固体可塑剤とトナーの両者にエチレンオキサイド基が含まれ、これにより親和性を高めることで、両者の相溶性を高める効果が奏するものである。一方、この考え方は、固体可塑剤とトナーの両者に親和性を有する官能基を有することで成り立つため、前記エチレンオキサイド基に限定されることはなく、他の例としては、プロピレンオキサイド基を利用してもよく、更には、公知のトナーに含まれる官能基を固体可塑剤内に含ませる場合も有効に作用する。
【0080】
前記固体可塑剤としては、上記の要件のほか、一定の条件下で可塑能力を発揮するものが挙げられ、例えば、下記のものが挙げられる。
【0081】
(1)希釈剤に溶解することで可塑能力が発揮されるもの:
エチレンオキサイド基を有する部剤:ポリエチレングリコールのうち、ピーク分子量が1,000〜2,000のもの
(2)希釈剤に溶解されても可塑能力は発揮されないが後述の液体可塑剤が少量存在すると可塑能力が発揮されるもの
エチレンオキサイド基を有する部剤:ポリエチレングリコールのうち、ピーク分子量が2,000〜10,000のもの
(3)希釈剤に溶解されても可塑能力は発揮されないが若干の加温(例えば、50℃〜100℃程度)により可塑能力が発揮されるもの
エチレンオキサイド基を有する部剤:ポリエチレングリコールのうち、ピーク分子量が2,000〜10,000のもの
ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテルなどが挙げられる。
【0082】
前記(1)で例示したポリエチレングリコールのピーク分子量が、1,000未満であると、周囲環境によって定着画像が溶融する場合があり、2,000を超えると、前記常温状態で固体状態ではなくなるため、後述の液体可塑剤を共有しない定着液の系内においては十分な可塑能力が発揮できない場合がある。このような技術的な意義のもと、前記ピーク分子量は、1,000〜2,000であることが好ましい。
【0083】
前記(2)で例示したポリエチレングリコールのピーク分子量が、10,000を超えると、常温状態で明らかに固体状態ではなくなるため、被定着物であるトナー間に粒界が生じてしまう場合がある。このような観点から、液体可塑剤を共有しない定着液の系内においては、ピーク分子量が10,000以上である場合は使用が困難であることを明らかにすると共に、定着液に水を含む態様にて使用される場合には、ピーク分子量を1,000〜10,000が使用可能な分子量である。
【0084】
前記(3)に例示の固体可塑剤の加温の温度としては、可塑能力が発揮できる範囲であれば、特に制限はないが、50℃〜100℃が好ましい。上記加温の温度が、50℃未満であると、定着が不十分である場合があり、100℃を超えると、エネルギー消費の点で、不経済である。
【0085】
前記固体可塑剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着液の質量に対して、5質量%〜30質量%であることが好ましい。前記含有量が、5質量%未満であると、定着が困難となるためであり、30質量%を超えると、定着液及び泡状定着液としての粘度が高くなり、加えて泡立ちの悪さや、泡としての安定性に欠け、品質上問題が生じる。
【0086】
−液体可塑剤−
前記液体可塑剤は、後述の希釈剤に可溶であって、一定の条件下で可塑能力を発揮するものであれば、特に制限はなく、例えば、単独で可塑能力を発揮してトナーの少なくとも一部を溶解乃至膨潤させることでトナーを軟化させるものであってもよいが、上記の固体可塑剤と組み合わせることで可塑能力を発揮するものであってもよい。液体可塑剤の例としては、一定の条件下で溶解性乃至膨潤性に優れている点で、エステル化合物が挙げられる。このエステル化合物のなかでも、樹脂の軟化能力が優れている点、又は後述する希釈剤による起泡性の阻害の程度が低い点で、脂肪族エステル又は炭酸エステルが、より好ましい。
【0087】
前記液体可塑剤は、人体に対する安全性の観点から、その急性経口毒性LD50が3g/kgよりも大きいことが好ましく、5g/kg以上であることがより好ましい。液体可塑剤として、前記脂肪族エステルは、化粧品原料として多用されているように、人体に対する安全性が高いものであることから、特に好ましい。
【0088】
また、記録媒体に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、液体可塑剤は、トナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は、揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。この点で、液体可塑剤は、揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。前記脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し刺激臭を持たない点で、より好ましい。
【0089】
なお、オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数〔10×log(物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率)〕を臭気の指標としてもよい。また、液体可塑剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は、10以下であることが好ましい。この場合、通常のオフィス環境では、不快臭を感じなくなる。更に、液体可塑剤のみならず、定着液に含まれる他の液剤も、液体可塑剤と同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
【0090】
−脂肪族エステル−
前記脂肪族エステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、飽和脂肪族エステル、脂肪族モノカルボン酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル及び脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルであってもよい。
【0091】
−−飽和脂肪族エステル−−
前記脂肪族エステルが飽和脂肪族エステルである場合には、液体可塑剤の保存安定性(酸化、加水分解等に対する耐性)を向上させることができる。また、前記飽和脂肪族エステルは、人体に対する安全性が高く、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内等の短時間で溶解乃至膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解乃至膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
【0092】
本発明による定着液において、好ましくは、前記飽和脂肪族エステルの一般式は、RCOORで表される化合物であってもよく、ここでRは、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、Rは、炭素数が1以上6以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である。R及びRの炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。即ち、前記飽和脂肪族エステルが、一般式RCOORで表される化合物であり、Rが、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、Rが、炭素数が1以上6以下の直鎖型又は分岐型のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性乃至膨潤性を向上させることができる。また、前記一般式RCOORで表される化合物の臭気指数は、不快臭及び刺激臭を有さない点で、10以下であることが好ましい。
【0093】
−−脂肪族モノカルボン酸エステル−−
前記脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えばラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。なお、これらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。このことから、脂肪族モノカルボン酸エステルを用いて水性溶媒からなる定着液とする場合、後述の溶解助剤としてグリコール類を定着液に含有させ、溶解又はマイクロエマルジョンの形態としてもよい。
【0094】
−−脂肪族ジカルボン酸エステル−−
前記脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸エステルであってもよい。前記脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルである場合には、より短い時間でトナーを溶解乃至膨潤させることができる。例えば、60ppm程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナーに定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するまでの時間は、1秒以内であることが好ましい。前記脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルである場合には、記録媒体における未定着のトナー等に定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するのに要する時間を、0.1秒以内にすることが可能となる。更に、より少量の液体可塑剤を添加することによって、トナーを溶解乃至膨潤させることができるため、定着液に含まれる液体可塑剤の含有量を低減することができる。
【0095】
本発明による定着液において、好ましくは、前記脂肪族ジカルボン酸エステルの一般式は、R(COORで表される化合物であって、Rは炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基であってもよい。R及びRの炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
【0096】
前記脂肪族ジカルボン酸エステルが、一般式R(COORで表される化合物であって、Rは炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である場合には、トナーに対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、前記一般式R(COORで表される化合物の臭気指数は、不快臭及び刺激臭を有さない点で、10以下であることが好ましい。
【0097】
前記脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えばコハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。なお、これらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。このことから、脂肪族ジカルボン酸エステルを用いて水性溶媒からなる定着液とする場合、後述の溶解助剤としてグリコール類を定着液に含有させ、溶解又はマイクロエマルジョンの形態としてもよい。
【0098】
−−脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキル−−
更に、本発明による定着液において、前記脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルであることが好ましい。前記脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルである場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0099】
本発明による定着液に含まれる液体可塑剤において、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R(COOR−O−Rで表される化合物であって、Rは炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が1以上4以下のアルキル基であってもよい。R、R及びRの炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
【0100】
脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R(COOR−O−Rで表される化合物であって、Rは炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が1以上4以下のアルキル基である場合にはトナーに含まれる樹脂に対する溶解性乃至膨潤性を向上させることができる。また、前記一般式R(COOR−O−Rで表される化合物の臭気指数は、不快臭及び刺激臭を有さない点で、10以下であることが好ましい。
【0101】
脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えばコハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジメトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチルなどが挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒で用いる場合、必要に応じてグリコール類を溶解助剤として定着液に含有させ、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
更に、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの類似構造として、一般式(5)で表される化合物は、エーテル基の分子内での割合が高くなるため、希釈剤である水に対する溶解性が非常に高くなり、高濃度の液体可塑剤を含有した定着液とすることができる。
(COO−(R−O)n−R10 一般式(5)
ただし、前記一般式(5)中のnは1以上3以下であり、Rは炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が1以上3以下のアルキレン基であり、R10は炭素数が1以上4以下のアルキル基構ある。
前記一般式(5)で表される化合物としては、例えば、コハク酸ジエトキシエトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエトキシエチル、コハク酸ジメトキシエトキシエチル、コハク酸ジメトキシメトキシプロピルなどが挙げられる。
【0102】
−炭酸エステル−
液体可塑剤の一例である炭酸エステルとしては、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)等の環状エステル類、グリセロール1,2−カルボナート、4−メトキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
【0103】
また、前記以外のエステル化合物としては、例えばクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル;エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジアセタート等のグリコールをエステル化した化合物;モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン等のグリセリンをエステル化した化合物などが挙げられる。
【0104】
前記液体可塑剤の含有量は、定着液の質量に対して、0.5質量%〜50質量%であることが好ましく、5質量%〜40質量%であることがより好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、トナーを溶解乃至膨潤させる効果が不十分になることがあり、50質量%を超えると、長時間に亘りトナーに含まれる樹脂の流動性を低下させることができず、定着トナー層が粘着性を有する可能性がある。
【0105】
<起泡剤>
本発明による定着液に含まれる起泡剤としては、定着液の泡状化するものであれば、特に制限はなく、優れた起泡性と泡沫安定性を実現することができる。起泡剤としては、飽和若しくは不飽和の脂肪酸塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩若しくはアルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、又はモノアルキルリン酸塩等のリン酸塩等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0106】
−脂肪酸塩−
前記起泡剤のなかでも、脂肪酸塩は、最も泡沫安定性に優れ、定着液の起泡剤として最も適する。
【0107】
脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム塩、脂肪酸カリウム塩又は脂肪酸アミン塩であることが好ましく、脂肪酸アミン塩であることがより好ましい。これらの脂肪酸塩の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、水を加熱し、脂肪酸を添加し、その後トリエタノールアミンを添加して、一定時間撹拌しながら加熱してケン化反応させることで製造してもよい。このとき、脂肪酸とトリエタノールアミンとのモル比を、1:0.5〜1:0.9の範囲と脂肪酸比率を高くすることで、ケン化後、未反応の脂肪酸が残留し、定着液中に脂肪酸と脂肪酸アミン塩とを混合させることができる。同じことは、ナトリウム塩やカリウム塩でも可能である。
【0108】
起泡剤として用い得る不飽和脂肪酸塩としては、特に制限はないが、炭素数18で2重結合数が1〜3の不飽和脂肪酸塩が好ましい。具体的には、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩が挙げられる。2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を一種単独又は二種以上を混合して起泡剤として用いてもよい。また、上記の飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩とを混合して起泡剤として用いてもよい。
【0109】
液体可塑剤は、消泡作用が強く、定着液中で液体可塑剤の濃度上昇と共に、定着液の起泡性及び泡沫安定性が悪くなり、なかなか起泡しなくなり、泡が直ぐに破泡するため、泡密度の低い泡状定着液を得ることができなくなることがある。
【0110】
そこで、定着液中の液体可塑剤濃度を高めたときの起泡性が劣化してしまうことを解消するため、アニオン系界面活性剤の種類や濃度を因子として多種の試作を行ったところ、起泡剤として炭素数12〜18の脂肪酸塩を用い、更に炭素数12〜18の脂肪酸を定着液中に含有することにより、液体可塑剤の濃度が高くなっても、定着液の起泡性が劣化しない。これにより、安定した泡状定着液を提供できる。
【0111】
ここで、前記定着液に含まれる起泡剤において、脂肪酸塩の炭素数としては、単に水を起泡する場合と比較して起泡性に優れている点で、12〜18であることが好ましい。具体的には、ラウリン酸塩(炭素数12)、ミリスチン酸塩(炭素数14)、ペンタデシル酸(炭素数15)、パルミチン酸塩(炭素数16)、マルガリン酸(炭素数17)、ステアリン酸塩(炭素数18)が挙げられる。
【0112】
起泡剤として用いられる脂肪酸塩と共に用いられる脂肪酸と、液体可塑剤との作用について説明する。前記液体可塑剤としてエステル化合物を用いた場合、エステル化合物はエステル基を化学構造中に有しており、脂肪酸はカルボニル基を化学構造中に有している。この点から、前記液体可塑剤のエステル基と脂肪酸のカルボニル基とが定着液の系内で、電気的な作用を示し、またそれが分子間の結合作用を生じさせ、定着液の特性として起泡性及び泡沫安定性を向上させると考えられる。
【0113】
前記起泡剤として用い得る炭素数12〜18の脂肪酸塩において、炭素数が少ないほうが起泡性に優れているが泡沫安定性が悪く、炭素数が多いほうが起泡性にあまりよくないが泡沫安定性に極めて優れている。そこで、この脂肪酸塩としては、単独の脂肪酸塩を用いてもよいが、炭素数12〜18の脂肪酸塩であって異なる炭素数を有する複数の脂肪酸塩を混合する方がより好ましい。混合比率としては、ミリスチン酸塩(炭素数14)を最も多く含み、ラウリン酸塩(炭素数12)、ステアリン酸塩の割合を低くすることが好ましい。より具体的な脂肪酸塩の比率としては、ラウリン酸塩:ミリスチン酸塩:パルミチン酸塩:ステアリン酸塩の質量比で、0:6:3:1、0:4:3:1、1:5:3:1、1:4:4:1等が適する。
【0114】
前記起泡剤の含有量は、定着液の質量に対して、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜10質量%であることがより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、起泡性が不十分になることがあり、20質量%を超えると、定着液の粘度が高くなり、起泡性が低下する可能性がある。
【0115】
前記定着液中に起泡剤である脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有することで、液体可塑剤の濃度が高くなっても起泡性及び泡沫安定性を維持することができる。前記液体可塑剤の濃度が、10質量%未満であると、脂肪酸を含有しなくても起泡性に問題はない。しかし、液体可塑剤の濃度が10質量%以上、特に液体可塑剤の濃度が30質量%以上になると、脂肪酸塩だけでは、ほとんど起泡しなくなり起泡性が悪くなる場合がある。起泡性が悪くなった場合であっても、脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有させると、起泡性を維持できる。
【0116】
ただし、前記脂肪酸の含有量が多くなりすぎると、起泡剤である脂肪酸塩の比率が下がり、起泡性が再び悪くなる場合がある。このような場合、起泡性が優れている点で、脂肪酸塩のモル数は、脂肪酸のモル数以上のモル数としてもよく、脂肪酸と脂肪酸塩の比を、5:5〜1:9の範囲としてもよい。
【0117】
なお、同じ炭素数の脂肪酸と脂肪酸塩との組合せだけでなく、例えば、脂肪酸塩がミリスチン酸アミンであり脂肪酸がステアリン酸である組合せや、脂肪酸塩がパルミチン酸カリウムであり脂肪酸がステアリン酸である組み合わせのように、炭素数が12〜18の範囲で脂肪酸塩と脂肪酸との炭素数が異なる組合せであってもよい。炭素数12〜18の範囲の脂肪酸を定着液に含有することで、高濃度の液体可塑剤を含有しても、起泡性が悪くならず、泡沫安定性に優れ、密度の極めて低い泡化を可能とする。
【0118】
また、起泡性が悪化するのを防止し得る点で、他のアニオン系界面活性剤(例えばアルキルエーテル硫酸塩(AES))を起泡剤とし、炭素数12〜18の脂肪酸を更に含有してもよい。
【0119】
<希釈剤>
本発明による定着液に含まれる希釈剤としては、水を含む限り特に制限はなく、例えば、水、水にアルコール類等を添加した水性溶媒、等が好ましい。水としては、例えばイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
【0120】
希釈剤として水性溶媒を用いる場合には、界面活性剤を添加してもよく、なかでも、定着液の表面張力を20mN/m〜30mN/mとすることが好ましい。前記アルコール類としては、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする点で、例えばセタノール等の単価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
【0121】
前記希釈剤は、浸透性改善や紙等媒体のカール防止と目的として、油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成であることも好ましい。この油性成分としては、公知の種々の材料を用いることができる。油性成分を含有する希釈剤の場合、分散剤を用いてエマルジョンを形成してもよく、このエマルジョンの形成に用いる分散剤としては、公知の種々の材料を用いることができるが、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレート等のソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖エステル等が好ましい。
【0122】
前記分散剤を用いて定着液をエマルジョンの形態に分散させる方法として、特に制限はなく、公知の種々の方法を用いることができ、例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段などが挙げられる。これらの中でも、定着液中の可塑剤に強いせん断応力を加える方法であることが好ましい。
【0123】
<記録媒体>
前記記録媒体としては、トナーを定着させ得るものであれば、特に制限はない。なかでも、前記記録媒体としては、定着液に対して浸透性を有するものであることが好ましく、媒体基板が液浸透性を持たない場合は、基板上に液浸透層を有する媒体が好ましい。記録媒体の形態としては、特に制限はなく、シート状の他、平面及び曲面を有する立体物でもよい。例えば、紙等の媒体に透明トナーを均一に定着させ紙面を保護したもの(いわゆる、ニスコート)であってもよい。記録媒体の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、布等を構成する一般的な繊維、液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルム、金属、樹脂、セラミックスが挙げられる。
【0124】
<その他の成分>
<<溶解助剤>>
本発明による定着液は、定着液中の液体可塑剤を溶解する目的で、溶解助剤を含有してもよい。溶解助剤としては、液体可塑剤を溶解させ得るものであれば、特に制限はなく、多価のアルコール類が挙げられる。前記多価のアルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。これらの中でも、液体可塑剤が高濃度でも溶解可能であり、かつ起泡剤の起泡性を劣化させない点で、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールであることが特に好ましい。
前記多価のアルコール類の含有量は、定着液の質量に対して、1質量%〜30質量%の範囲が好ましい。前記含有量が、30質量%を超えると、起泡性がむしろ劣化するため適さず、1質量%未満では、定着液中の液体可塑剤濃度が高くなると希釈溶液である水に液体可塑剤が溶解しにくくなる場合がある。
【0125】
<<増泡剤>>
本発明による定着液は、泡状化されて、後述の泡状定着液として、トナーの定着に用いられるところ、塗布接触ニップ部にてトナー層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで、本発明による定着液は、このような現象を抑え泡沫安定性を向上させる目的で、増泡剤を更に有してもよい。増泡剤としては、特に制限はないが、脂肪酸アルカノールアミドであることが好ましく、泡沫安定性の点で、脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型であることがより好ましい。増泡剤の含有量としては、定着液の質量に対して、0.01質量%〜3質量%であることが好ましい。
【0126】
(定着方法)
本発明の定着方法は、泡状定着液生成工程と、膜厚調整工程と、泡状定着液付与工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明で用いる定着装置は、泡状定着液生成手段と、泡状定着液付与手段と、膜厚調整手段とを有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
【0127】
本発明の定着方法は、本発明で用いる定着装置により好適に実施することができ、泡状定着液生成工程は、泡状定着液生成手段により行うことができ、膜厚調整工程は、膜厚調整手段により行うことができ、泡状定着液付与工程は、泡状定着液付与手段により行うことができ、前記その他の工程は、前記その他の手段により行うことができる。
【0128】
<泡状定着液生成工程及び泡状定着液生成手段>
泡状定着液生成工程は、定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する工程であり、泡状定着液生成手段により実施される。
【0129】
図1に示すように、泡状定着液生成手段によって定着液を泡で構成された泡状定着液114とすることで、定着液のかさ密度を低くできると共に塗布ローラ111上の定着液層を厚くすることができ、更には定着液の表面張力による影響が抑えられるため、塗布ローラ111への樹脂微粒子のオフセットを防止しながら記録媒体112上のトナー層に均一に泡状定着液114を塗付することができる。
【0130】
図2は、塗布時の泡状定着液の層構成例を示す概略図である。図2に示す液体121は可塑剤を含有し、液体中に気泡122を含有した泡状の構成である。このように、気泡122を大量に含有することで、定着液120のかさ密度は極めて低くすることができる。この構成とすることで、定着液塗布時は、体積が多い状態で塗布しても、かさ密度が低く、塗布重量は小さいため、その後気泡122が破泡してしまえば、実質的な塗布量は極めて少なくすることができる。なお、本発明における泡状とは、液体中に気泡が分散し、液体が圧縮性を帯びた状態を示す。
【0131】
泡状定着液生成工程及び泡状定着液生成手段としては、上記の本発明による定着液を泡状化して泡状定着液を生成し得るものであれば、特に制限はない。その一態様について、図3を参照して、説明する。
【0132】
図3は、本発明による定着装置における泡状定着液生成手段の構成を示す概略図である。図3に示す泡状定着液生成手段130は、上記の本発明による定着液等の液状定着液132を貯留する定着液容器131と、液状定着液132を液搬送する液搬送パイプ134と、液搬送するための駆動を得る搬送ポンプ133と、気体と液体とを混合する気体・液体混合部135と、液状定着液132を泡状化して所望の泡状定着液を得る泡生成部138とを有する。
【0133】
定着液容器131に貯留された液状定着液132は、搬送ポンプ133の駆動力によって液搬送パイプ134を液搬送され、気体・液体混合部135へと送られる。搬送ポンプとしては、液状定着液を液搬送し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばギヤポンプ、ベローズポンプなどが挙げられるが、チューブポンプが好ましい。ギヤポンプ等の振動機構や回転機構があると、ポンプ内で定着液が起泡し、定着液に圧縮性が出て、搬送能力が低下する恐れがある。また、上記の機構部品等が定着液を汚染したり、逆に機構部品を劣化させる恐れがある。一方、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であるため、定着液と接する部材はチューブだけであり、定着液に対し耐液性を有する部材を用いることで、液の汚染やポンプ系部品の劣化がない。また、チューブを変形させるだけなので、液が起泡せず、搬送能力の低下を防止できる。
【0134】
気体・液体混合部135には、空気口136が設けられ、液の流れとともに、空気口136に負圧が発生し、空気口136から気体が気体・液体混合部135に導入され、液体と気体が混合される。更に、微小孔シート137を通過することで、泡径の揃った大きな泡を生成させることができる。孔径は、30μm〜100μmが好ましい。図3の微小孔シート137に限らず、連泡構造の多孔質部材であればよく、孔径30μm〜100μmを有する焼結セラミックス板や不織布や発泡樹脂シートであってもよい。また、別の大きな泡の生成方法としては、上記の搬送ポンプより供給された液状定着液と空気口からの空気を羽根状攪拌子で攪拌しながら、液に気泡を巻き込みながら大きな泡を生成させる構成や、上記の搬送ポンプより供給された液状定着液に空気供給ポンプ等でバブリングを行い大きな泡を生成する構成も好ましい。
【0135】
次に、空気と混合された液状定着液132は、所望の泡状定着液を得る泡生成部138に送液される。泡生成部138において、空気と混合された液状定着液132には、せん断力が加えられ、大きな泡を分割して2つ以上に分泡化される。泡生成部138の構成としては、このように行われ得るものであれば、特に制限はないが、閉じた二重円筒で、内側円筒が回転可能な構成とし、外部円筒の一部より、大きな泡状定着液を供給し、内部の回転する円筒と外部円筒との隙間(ここが流路となる)を通過しながら、回転円筒によりせん断力を受けるような構成であってもよい。このせん断力により、大きな泡は微小な泡へと変化し、外側円筒に設けられた泡の出口より、所望の微小な泡径を有する泡状定着液を得ることができる。また、内側円筒にらせん状の溝を設けて、円筒内での液搬送能力を高くしてもよい。
【0136】
定着液は、紙等の記録媒体上のトナー層への塗布時に泡状となっていればよく、定着液容器内で泡状である必要はない。定着液容器中では気泡を含有しない液体で、容器から液を供給する時点や、トナー層へ付与するまでの液搬送経路で泡状にする手段を設ける構成が好ましい。これは、定着液容器では液体であり容器から液を取り出した後に泡状とする構成のほうが、容器の小型化ができるという大きな利点を有するためである。
【0137】
定着液は、泡状化され、泡状化された定着液からなる泡状定着液層の厚みは、定着されるトナー層の厚みに応じて、記録媒体面全体に対し後述するように泡状定着液付与手段の面において、調整される。例えばトナーを構成し、記録媒体上にカラー画像や白黒文字が混在する場合、記録媒体面全体を同じ厚みの泡状定着液層で付与すると、カラー写真画像のような厚いトナー層では、定着不良や画像抜けが生じたり、白黒文字部に粘着感が生じて印刷物同士がくっついたりする部分不具合が生じる場合がある。以下に、その不具合の原因について詳細に説明する。
【0138】
一般的に0.5mm〜1mm程度の大きな泡の場合、単なる撹拌等により比較的容易に泡を生成可能であり、大きな泡の生成には数秒以下の時間(0.1秒もかからない)で生成することができる。そこで、この所望の泡径よりも大きな泡であって、目視で観察できる程度の大きさの泡の生成が容易で、且つすばやく得ることができる点に着目し、大きな泡から素早く5μm〜50μm程度の微小な泡を生成する方法を鋭意検討した結果、大きな泡にせん断力を加えることで大きな泡を分泡すると、上記のような液状態から微小な泡を起泡させる方法に比べ、極めて素早く所望の大きさの微小な泡が生成できることを見出した。この点、上記のような泡状定着液生成手段130の構成は、これを実現するために好ましい態様である。
【0139】
このように、液状定着液を大きな泡径を有する液へと変化させる大きな泡生成部と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡を生成する微小な泡生成部とを組み合わせることで、液状定着液を極めて短時間に5μm〜50μmの微小な泡径を有する泡状定着液を生成させることができる。
【0140】
特に、トナーの体積平均粒径が5μm〜10μm程度の場合、記録媒体112上のトナー層113を乱すことなく泡状定着液114をトナー層113に付与するには、泡状定着液114の泡径範囲が、5μm〜50μmであることが好ましい。なお、図2に示すように、気泡122で構成された泡状定着液120は、気泡122のそれぞれを区切る液体121から構成される。
【0141】
<膜厚調整工程及び膜厚調整手段>
本発明の定着方法における膜厚調整工程は、泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する工程であり、膜厚調整手段により実施される。
【0142】
前記膜厚調整手段としては、泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成し得る限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば膜厚調整用ブレード、ブレードと塗布ローラとの組み合わせが挙げられる。なお、膜厚調整工程及び膜厚調整手段の態様については、後述する。
【0143】
<泡状定着液付与工程及び泡状定着液付与手段>
本発明の定着方法における泡状定着液付与工程は、所望の厚みに形成された泡状定着液を媒体上のトナー層に付与する工程であり、泡状定着液付与手段により実施される。
【0144】
図4A及び図4Bは、本発明による定着装置における膜厚調整手段及び泡状定着液付与手段の一例を示す概略構成図である。図4Aに示す本発明の定着装置140は、上述した泡状定着液生成手段130によって生成された所望の微小な泡の泡状定着液を、トナー等を構成するトナー層へ付与するための塗布ローラ141と、塗布ローラ面に所望の微小な泡の泡状定着液の膜厚を、記録媒体上の未定着のトナー層の厚さに応じて調整し、泡状定着液の最適な膜厚の調整を行う膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード142と、塗布ローラ141と対峙する位置に加圧ローラ143とを有する。
【0145】
未定着トナーを表面上に有する記録媒体は、塗布ローラ141と加圧ローラ143とからなるニップ部を通過する。一方、泡状定着液生成手段130で生成された泡状定着液は、膜厚調整用ブレード142によって膜厚調整され、所望の厚みの泡状定着液層として塗布ローラ141に配置される。このように塗布ローラ141上に形成された泡状定着液層は、未定着トナーを有する記録媒体のニップ部の通過に同期して、未定着トナー上に付与される。
【0146】
また、図4Bは、塗布ローラ141及び膜厚調整用ブレード142を拡大した概略図であって、泡状定着液付与手段を構成する塗布ローラ141上には、泡状定着液の層が記録媒体上の未定着のトナー層の厚さに応じて膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード142を通じて形成される。この膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード142によって泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間に対して最適化した定着液層の膜厚となる。所望の微小な泡の泡状定着液は、上記のように、大きな泡を生成する大きな泡生成部と大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部とを含んで構成されている泡状定着液生成手段130で生成され、液供給口より塗布ローラ141と膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード142との間に滴下される。
【0147】
泡状定着液の塗布ローラ上での膜厚調整は、図5A及び図5Bに示すように、塗布ローラ141とギャップを設けた膜厚調整用ブレード142を用い、図5Aに示すように膜厚を薄くするときはギャップを狭くし、図5Bに示すように膜厚を厚くするときはギャップを広くするように行ってもよい。ギャップの調整は、膜厚調整用ブレード142の端部に、駆動可能な回転軸を用い、トナー層の厚さや環境温度等、更には泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間を調整するための最適な膜厚を調整してもよい。
【0148】
泡状定着液付与手段を構成する塗布ローラの形状、構造、大きさ及び材質としては、泡状定着液を付与し得る限り、特に制限はないが、曲面部を少なくともその表面の一部に有するものであることが好ましい。
【0149】
膜厚調整用ブレードとしては、図5A及び図5Bの膜厚調整用ブレードのほかに、ワイヤーバーであってもよい。ワイヤーバーによって、塗布ローラ上の泡状定着液の厚みを調整し、泡状定着液は、上記のごとく、大きな泡を生成する大きな泡生成部とその大きな泡をせん断力で分泡する微小な泡生成部とを有する泡状定着液生成手段によって生成され、液供給口より、膜調整ワイヤーバーと塗布ローラとの間に滴下する。ワイヤーバーを膜厚調整手段として用いることで、ブレードに比べ、塗布ローラ面の軸方向の泡状定着液膜均一性が向上する。
【0150】
泡状定着液のかさ密度としては、0.01g/cm〜0.1g/cm程度の範囲が好ましい。更に、定着液付与時に媒体面に残液感を生じないようにするためには、0.01g/cm〜0.02g/cmが好ましく、0.02g/cm以下がより好ましい。なぜならば、図4A及び図4Bの塗布ローラ141のように、接触付与手段面の定着液の泡膜は、記録媒体上の微粒子層の厚み以上であることが必須条件で(微粒子層の隙間を泡状定着液で埋めるため)、おおよそ、泡膜厚みは、50μm〜80μmが好ましい。一方、記録媒体面への定着液付着における残液感(ぬれたような感触)を生じさせないためには、定着液付着量として、記録媒体の単位面積当たり、0.1mg/cm以下が好ましい。このことから、泡のかさ密度としては、0.0125g/cm〜0.02g/cm3の範囲が好ましく、0.02g/cm以下の泡の密度がより好ましい。
【0151】
図6は、本発明の一実施の形態に係る定着装置の構成を示す概略構成図である。図6に示す実施の形態の定着装置140において、加圧ローラ143は、弾性層として弾性多孔質体(以下、スポンジ素材とも称する)を用いて構成してもよい。泡状定着液がトナー層を浸透して紙等の媒体まで到達した後に塗布ローラとトナー層とが剥離するようにニップ時間のタイミングを取る必要がある。この点、スポンジ素材からなる加圧ローラ43は、ニップ時間として50ミリ秒〜300ミリ秒の範囲を確保し、且つ弱い加圧力で大きく変形可能であることから、好ましい。
【0152】
なお、ニップ時間は、ニップ時間=ニップ幅/紙の搬送速度により算出される。紙の搬送速度は、紙搬送駆動機構の設計データにより求めることができる。ニップ幅は、塗布ローラ全面に乾燥しない着色塗料を薄くつけて、記録媒体を塗布ローラ141及び対峙する加圧ローラ143に挟んで加圧(各ローラは回転させない状態で)し、記録媒体に着色塗料を付着させ、着色部(通常長方形の形に着色)における紙搬送方向の長さをニップ幅として測定することで求めることができる。
【0153】
記録媒体の搬送速度に応じてニップ幅を調整することで、ニップ時間を泡状定着液のトナー層浸透時間と同じかそれ以上にする必要がある。図6に示す例では、加圧ローラ143を弾性層としてスポンジ素材とすることで、記録媒体の搬送速度に応じて、塗布ローラ141と加圧ローラ143との軸間距離を変更しニップ幅を変えることが容易となる。スポンジの代わりに弾性ゴムを加圧ローラ143の素材として用いてもよいが、スポンジは弾性ゴムよりも弱い力で変形させることが可能であり、塗布ローラ141の加圧力を過剰に高くすることなく長いニップ幅を確保することができる。
【0154】
なお、定着液中には可塑剤が含有されており、スポンジ素材で形成された加圧ローラに定着液が万が一付着した場合、スポンジ素材が軟化等の不具合が発生する恐れがある。そのため、スポンジ素材の樹脂材は、液体可塑剤に対し軟化や膨潤を示さない素材が好ましい。また、スポンジ素材を用いた加圧ローラは、可撓性フィルムで覆った構成であってもよい。スポンジ素材が液体可塑剤で劣化する素材であっても、液体可塑剤により軟化や膨潤を示さない可撓性フィルムで覆うことでスポンジローラの劣化を防止することができる。スポンジ素材としては、特に制限はなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の樹脂の多孔質体が挙げられる。また、スポンジを覆う可撓性フィルムとしては、可撓性を有する限り、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が挙げられる。
【0155】
図6において、塗布ローラ141とスポンジ素材を用いた加圧ローラ143とが常時接触している構成の場合、記録媒体が搬送されていない時に塗布ローラ141上の泡状定着液が加圧ローラ143に付着し汚す恐れがある。これを防止するため、塗布ローラ141からみて記録媒体の搬送方向の上流に紙先端検知手段(不図示)を設け、先端検知信号に応じて、記録媒体の先端から後方にのみ泡状定着液が塗布されるようなタイミングで塗布ローラ141に泡状定着液を形成することが好ましい。
【0156】
図6に記載の定着装置140は、待機時は塗布ローラ141とスポンジ素材を用いた加圧ローラ143とはそれぞれ離れており、図示していない駆動機構により、塗布時のみ、記録媒体の先端検知手段に応じて塗布ローラ141とスポンジ素材を用いた加圧ローラ143とを接触させる構成であることも好ましい。また、図6に記載の定着装置140は、記録媒体の後端検知も行い、記録媒体の後端検知信号に応じて塗布ローラ141とスポンジ素材を用いた加圧ローラ143とを離すように構成することも好ましい。
【0157】
図7は、本発明の一実施の形態に係る定着装置の別の構成を示す概略構成図である。図7に示す実施の形態の定着装置140は、図6の加圧ローラ143の代わりに加圧ベルト144を用いたものである。大きな泡を生成する大きな泡生成部と大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部とを含んで構成されている泡状定着液生成手段130で生成され液供給口より所望の泡径を有する泡状定着液を、膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード142の供給口へチューブ等を用いて供給する。そして、膜厚調整手段の膜厚調整用ブレード142と塗布ローラ141とのギャップを調整して塗布ローラ141上の泡状定着液の層膜厚を調整し、泡状定着液の最適膜厚の調整を行う。加圧ベルト144の材料としては、例えばシームレスニッケルベルト、シームレスPETファイル等の基体にPFAのような離型性フッ素樹脂をコートした部材を用いてもよい。
【0158】
このように、ベルトを用いる構成では、ニップ幅を容易に広くすることが可能となる。したがって、ベルトを用いる構成としては、図7に限らず、塗布ローラをベルトとし、加圧手段をベルトではなくローラとする構成も好ましい。また、塗布側又は加圧側の少なくとも一方をベルトとする構成とすることで容易にニップ幅を広くすることが可能となり、紙にしわが発生するような無理な力をかけることがない。また、ニップ時間と紙の搬送速度とが同様であると、紙の搬送速度を速くすることが可能となり、高速定着が可能となる。
【0159】
また、トナーの定着装置は、本発明における定着液をトナーに供給した後、少なくともその一部が軟化乃至膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を有してもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、軟化乃至膨潤した上記のトナーを加圧することによって、軟化乃至膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体内へ軟化乃至膨潤したこのトナーを押し込むことによって、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0160】
<その他の工程及びその他の手段>
<<加温工程及び加温手段>>
本発明の定着方法及び本発明による定着装置は、泡状定着液が付与されたトナー層を加温する加温工程及び加温手段を更に有してもよい。加温工程及び加温手段における加温の温度としては、十分な定着特性の得られる範囲であれば、特に制限はないが、例えば、50℃〜100℃が好ましい。上記加温の温度が、50℃未満であると、定着が不十分である場合があり、100℃を超えると、エネルギー消費の点で、不経済である。
【0161】
加温手段の形態としては、上記の態様を実施できるものであれば、ローラなど、適宜選択すればよい。加温手段をローラで構成する場合、例えば図8に示すように、加圧ローラ146と加圧ローラ148とで構成し、被定着物と接する側のローラに赤外線ヒータ147などの加温媒体を設けたものであってもよい。
【0162】
本発明の画像形成方法は前記本発明の定着方法を用いており、本発明の画像形成装置は本発明の定着方法を具現化した定着装置を用いている。
本発明の画像形成方法は、潜像担持体表面に均一に帯電を施す帯電工程と、帯電した潜像担持体の表面に画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光工程と、現像剤担持体上に現像剤層規制部材により所定層厚の現像剤層を形成し、現像剤層を介して潜像担持体表面に形成された静電潜像を現像し、可視像化する現像工程と、潜像担持体表面の可視像を被転写体に転写する転写工程と、被転写体上の可視像を定着させる定着工程と、を有し、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。そして、定着工程は、本発明の定着方法により行われる。
【0163】
本発明の画像形成装置は、潜像を担持する潜像担持体と、潜像担持体表面に均一に帯電を施す帯電手段と、帯電した該潜像担持体の表面に画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光手段と、潜像担持体表面に形成された静電潜像にトナーを供給し可視像化する現像手段と、潜像担持体表面の可視像を被転写体に転写する転写手段と、被転写体上の可視像を定着させる定着手段と、を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなり、前記トナーはBET比表面積が2.0m/g〜8.0m/gである。
【0164】
前記静電潜像の形成は、例えば前記潜像担持体の表面を帯電手段により一様に帯電させた後、露光手段により像様に露光することにより行うことができる。
前記現像による可視像の形成は、現像剤担持体としての現像ローラ上にトナー層を形成し、現像ローラ上のトナー層を潜像担持体である感光体ドラムと接触させるように搬送することにより、感光体ドラム上の静電潜像を現像することでなされる。トナーは、撹拌手段により攪拌され、機械的に現像剤供給部材へ供給される。現像剤供給部材から供給され、現像剤担持体に堆積したトナーは現像剤担持体の表面に当接するよう設けられた現像剤層規制部材を通過することで均一な薄層に形成されるとともに、更に帯電される。潜像担持体上に形成された静電潜像は、現像領域において、前記現像手段により帯電したトナーを付着させることで現像され、トナー像となる。
【0165】
前記可視像の転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。
転写された可視像の定着は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いてなされ、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0166】
次に本発明の実施形態に係る画像形成装置(プリンタ)の基本的な構成について図9及び10を参照して更に説明する。
図9は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、電子写真方式の画像形成装置に適用した一実施形態について説明する。画像形成装置は、イエロー(以下、「Y」と記す。)、シアン(以下、「C」と記す。)、マゼンタ(以下、「M」と記す。)、ブラック(以下、「K」と記す。)の4色のトナーから、カラー画像を形成するものである。
【0167】
まず、複数の潜像担持体を備え、該複数の潜像担持体を表面移動部材の移動方向に並列させる画像形成装置(「タンデム型画像形成装置」)の基本的な構成について説明する。
この画像形成装置は、潜像担持体として4つの感光体1Y、1C、1M、1Kを備えている。なお、ここではドラム状の感光体を例に挙げているが、ベルト状の感光体を採用することもできる。各感光体1Y、1C、1M、1Kは、それぞれ表面移動部材である中間転写ベルト10に接触しながら、図9中矢印の方向に回転駆動する。各感光体1Y、1C、1M、1Kは、それぞれ中間転写ベルト10に接触しながら、図9中矢印の方向に回転駆動する。各感光体1Y、1C、1M、1Kは、比較的薄い円筒状の導電性基体上に感光層を形成し、更にその感光層の上に保護層を形成したものであり、また、感光層と保護層との間に中間層を設けてもよい。
【0168】
図10は、感光体を配設する作像形成部2の構成を示す概略図である。なお、画像形成部2Y、2C、2M、2Kにおける各感光体1Y、1C、1M、1K周りの構成はすべて同じであるため、1つの作像形成部2についてのみ図示し、色分け用の符号Y、C、M、Kについては省略してある。感光体1の周りには、その表面移動方向に沿って、帯電手段としての帯電装置3、現像手段としての現像装置5、感光体1上のトナー像を記録媒体又は中間転写体10に転写する転写手段としての転写装置6、感光体1上の未転写トナーを除去するクリーニング装置7の順に配置されている。帯電装置3と現像装置5との間には、帯電した感光体1の表面の画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光手段としての露光装置4から発せられる光が感光体1まで通過できるようにスペースが確保されている。
【0169】
帯電装置3は、感光体1の表面を負極性に帯電する。本実施形態における帯電装置3は、いわゆる接触・近接帯電方式で帯電処理を行う帯電部材としての帯電ローラを備えている。即ち、この帯電装置3は、帯電ローラを感光体1の表面に接触又は近接させ、その帯電ローラに負極性バイアスを印加することで、感光体1の表面を帯電する。感光体1の表面電位が−500Vとなるような直流の帯電バイアスを帯電ローラに印加している。
【0170】
なお、帯電バイアスとして、直流バイアスに交流バイアスを重畳させたものを利用することもできる。また、帯電装置3には、帯電ローラの表面をクリーニングするクリーニングブラシが設けてもよい。なお、帯電装置3として、帯電ローラの周面上の軸方向両端部分に薄いフィルムを巻き付け、これを感光体1の表面に当接するように設置してもよい。この構成においては、帯電ローラの表面と感光体1の表面との間は、フィルムの厚さ分だけ離間した極めて近接した状態となる。したがって、帯電ローラに印加される帯電バイアスによって、帯電ローラの表面と感光体1の表面との間に放電が発生し、その放電によって感光体1の表面が帯電される。
【0171】
このようにして帯電した感光体1の表面には、露光装置4によって露光されて各色に対応した静電潜像が形成される。この露光装置4は、各色に対応した画像情報に基づき、感光体1に対して各色に対応した静電潜像を書き込む。なお、本実施形態の露光装置4は、レーザ方式であるが、LEDアレイと結像手段とからなる他の方式を採用することもできる。
【0172】
トナーボトル31Y、31C、31M、31Kから現像装置5内に補給されたトナーは、供給ローラ5bによって搬送され、現像ローラ5a上に担持されることになる。この現像ローラ5aは、感光体1と対向する現像領域に搬送される。ここで、現像ローラ5aは、感光体1と対向する領域(以下、「現像領域」と記す。)において感光体1の表面よりも速い線速で同方向に表面移動する。そして、現像ローラ5a上のトナーが、感光体1の表面を摺擦しながら、トナーを感光体1の表面に供給する。このとき、現像ローラ5aには、図示しない電源から−300Vの現像バイアスが印加され、これにより現像領域には現像電界が形成される。そして、感光体1上の静電潜像と現像ローラ5aとの間では、現像ローラ5a上のトナーに静電潜像側に向かう静電力が働くことになる。これにより、現像ローラ5a上のトナーは、感光体1上の静電潜像に付着することになる。この付着によって感光体1上の静電潜像は、それぞれ対応する色のトナー像に現像される。
【0173】
転写装置6における中間転写ベルト10は、3つの支持ローラ11、12、13に張架されており、図9中矢印の方向に無端移動する構成となっている。この中間転写ベルト10上には、各感光体1Y、1C、1M、1K上のトナー像が静電転写方式により互いに重なり合うように転写される。静電転写方式には、転写チャージャを用いた構成もあるが、ここでは転写チリの発生が少ない転写ローラ14を用いた構成を採用している。具体的には、各感光体1Y、1C、1M、1Kと接触する中間転写ベルト10の部分の裏面に、それぞれ転写装置6としての一次転写ローラ14Y、14C、14M、14Kを配置している。ここでは、各一次転写ローラ14Y、14C、14M、14Kにより押圧された中間転写ベルト10の部分と各感光体1Y、1C、1M、1Kとによって、一次転写ニップ部が形成される。そして、各感光体1Y、1C、1M、1K上のトナー像を中間転写ベルト10上に転写する際には、各一次転写ローラ14に正極性のバイアスが印加される。これにより、各一次転写ニップ部には転写電界が形成され、各感光体1Y、1C、1M、1K上のトナー像は、中間転写ベルト10上に静電的に付着し、転写される。
【0174】
中間転写ベルト10の周りには、その表面に残留したトナーを除去するためのベルトクリーニング装置115が設けられている。このベルトクリーニング装置115は、中間転写ベルト10の表面に付着した不要なトナーをファーブラシ及びクリーニングブレードで回収する構成となっている。なお、回収した不要トナーは、ベルトクリーニング装置115内から図示しない搬送手段により図示しない廃トナータンクまで搬送される。
【0175】
また、支持ローラ13に張架された中間転写ベルト10の部分には、二次転写ローラ16が接触して配置されている。この中間転写ベルト10と二次転写ローラ16との間には二次転写ニップ部が形成され、この部分に、所定のタイミングで記録部材としての転写紙が送り込まれるようになっている。この転写紙は、露光装置4の図中下側にある給紙カセット20内に収容されており、給紙ローラ21、レジストローラ対22等によって、二次転写ニップ部まで搬送される。そして、中間転写ベルト10上に重ね合わされたトナー像は、二次転写ニップ部において、転写紙上に一括して転写される。この二次転写時には、二次転写ローラ16に正極性のバイアスが印加され、これにより形成される転写電界によって中間転写ベルト10上のトナー像が転写紙上に転写される。
【0176】
二次転写ニップ部の転写紙搬送方向下流側には、図示していない露光装置からの画像情報に基づいてフォーム状の定着液の膜厚を制御する定着装置によって定着される。すなわち、記録部材に転写された未定着のトナー像には、図示していない露光装置からの画像情報、例えばカラー画像又は黒ベタ画像に基づいてフォーム状の定着液層の膜厚が制御されたトナーの定着装置から供給されるフォーム状の定着液が付与され、フォーム状の定着液に含まれる、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる可塑剤によって、未定着のトナー像を、記録部材に定着させる。これにより、転写紙上に載っていたトナー像が転写紙に定着される。そして、定着後の転写紙は、排紙ローラ24によって、装置上面の排紙トレイ上に排出される。
【0177】
−噴霧方式による定着方法、定着装置−
[定着方法及び定着装置]
図11には、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又はそれらの複合機などの画像形成装置の要部構成を示す。図示のものは、電子写真方式のタンデム型カラー画像形成装置であって、中間転写体を用いずに、像担持体上のトナー像を記録材である用紙に直接画像転写する直接転写方式のものである。
【0178】
図11中符号10は、無端ベルト状の搬送ベルトである。搬送ベルト10は、図示例では駆動ローラ12と従動ローラ13間に掛けまわして図中反時計まわりに回転走行可能に設ける。もちろん、搬送ベルト10を掛けまわすローラは、2つに限らず、別途搬送ベルト10の片寄りを調整するローラや、テンションローラなどを設けて、3つ以上のローラに掛けまわすようにしてもよい。
【0179】
搬送ベルト10のまわりには、駆動ローラ12と従動ローラ13間の水平張り渡し部分上に、搬送ベルト10の走行方向に沿って順に、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4つの作像手段15K、15M、15C、15Yを横に並べて設置し、タンデム作像装置16を構成する。タンデム作像装置16の上には、図示省略するが、更に露光装置などを設けてなる。
【0180】
搬送ベルト10とタンデム作像装置16間には、搬送ベルト10の反時計まわりの走行とともに図11中右から左へと、記録媒体である用紙17を搬送する用紙搬送路を形成する。用紙搬送路に沿って、上流には図示しないレジストローラを配置し、下流には定着装置18を設置する。
【0181】
図12には、図11に示す画像形成装置に備える1つの作像手段15の概略構成を示す。4つの作像手段15K、15M、15C、15Yは、それぞれ図12に示すような同一構成とする。
【0182】
図12中符号20は、ドラム状の像担持体である感光体である。感光体20のまわりには、左上方に配置する帯電装置21から図中矢示する回転方向に順に、現像装置22、転写装置23、クリーニング装置24、除電装置25などを配置する。
【0183】
ここで、帯電装置21は、図示例では帯電チャージャを用いて均一なマイナス帯電を与える非接触帯電方式を採用したが、もちろん帯電ローラを用いる接触帯電方式を採用してもよい。現像装置22は、この例では、プラス帯電キャリア26とマイナス帯電トナー27とからなる二成分現像剤を使用し、それを現像スリーブ28で担持して感光体20にトナー27のみを付着し、感光体20上の静電潜像を可視像化する。
【0184】
また、転写装置23は、図示例では非接触のプラス転写コロナチャージャ方式を採用し、搬送ベルト10を挟んで感光体20に対向するように配置するが、非接触のコロナチャージャ方式の他に導電性ブラシや転写ローラなどを用いることもできる。また、クリーニング装置24には、クリーニング部材として、クリーニングブラシ30と、クリーニングブレード31を設ける。これにより、クリーニングブラシ30やクリーニングブレード31で掻き落としたトナーは、不図示の回収スクリュやトナーリサイクル装置で現像装置22に回収して再利用することができる。また、除電装置25としては、例えば除電ランプを用いる。
【0185】
そして、感光体20の時計まわりの回転とともに、感光体20の表面を帯電装置21で一様に帯電し、不図示の露光装置で書込み光L(図11ではLk、Lm、Lc、Ly)を照射してそれぞれ感光体20上に静電潜像を形成して後、現像装置22で各色トナーを付着してその静電潜像を可視像化し、各感光体20上に各色の単色トナー像を形成する。
【0186】
記録材(用紙)17は、用紙搬送路を通して搬送し、感光体20上に形成した各色トナー像にタイミングを合わせてレジストローラで搬送ベルト10上に送り込む。そして、搬送ベルト10の走行とともに更に記録材(用紙)17を搬送してその搬送する用紙17にそれぞれ転写装置23で、各感光体20上の単色トナー像を順次転写し、その用紙17上に各色の単色トナー像を重ね合わせて合成カラー画像を形成する。トナー像転写後の感光体20は、表面をクリーニング装置24で清掃して後、除電装置25で除電して初期化し、再び帯電装置21からはじまる再度の画像形成に備える。
【0187】
合成カラー画像を形成する用紙17上のマイナス帯電トナー27は、この時点では電気的に用紙17に付いているだけであり、強い衝撃を受けたり擦ったりすると、用紙17上から離れてしまうことから、合成カラー画像を形成した用紙17は、搬送ベルト10で搬送して定着装置18へと導き、その定着装置18で転写画像を定着して後、不図示の排紙スタック部へと排出する。
【0188】
定着装置18には、図11に示すように、トナー定着液が定着液滴として噴霧される噴霧手段33と、その噴霧手段33で噴霧された定着液滴に未定着トナーと同極性のマイナスの電荷を付与させる液滴帯電手段34と、その液滴帯電手段34で電荷を付与させた定着液滴の雰囲気中を通して、未定着トナーが載っている用紙17を搬送する媒体搬送手段35と、その媒体搬送手段35で搬送する用紙17を未定着トナー及び定着液滴とは逆極性のプラスに帯電させる記録材帯電手段36とが備えられている。
【0189】
図13には、図11に示す定着装置18を拡大して示す。
図13から判るとおり、噴霧手段33は、筐体37で区画された噴霧室38内に向けて設置されており、不図示の定着液貯留部に貯留されるトナー定着液が、最頻値の滴径が15μm以下の定着液滴として噴霧されて、噴霧室38が定着液滴で満たされる。
【0190】
液滴帯電手段34としては、イオナイザなどを用い、噴霧室38内に空気イオンを噴霧して、噴霧手段33で噴霧された定着液滴に混ぜ合わせ、定着液滴を未定着トナーと同極性のマイナスに帯電させる。図示例とは異なり、未定着トナーがプラスに帯電しているときは、定着液滴もプラスに帯電させる。
【0191】
媒体搬送手段35は、複数のローラ40と、それらのローラ40に掛けまわされて静電吸着して用紙17を搬送する搬送ベルト41とで構成されている。そして、転写装置23で転写されて図示するように残留電荷がマイナスの未定着トナー42が乗っている用紙17が、搬送ベルト10により搬送されて定着装置18に送り込まれ、定着装置18の媒体搬送手段35の搬送ベルト41で引き続いて図13中右から左に、液滴帯電手段34で電荷を付与させた定着液滴の雰囲気中を通して搬送される。
【0192】
記録材帯電手段36は、ローラ40に掛けまわされている搬送ベルト41の内側に配置される電極44と、その電極44に接続される電源45とで構成されている。そして、電源45により搬送ベルト41の内側に配置される電極44に電圧が印加されて、搬送ベルト41で搬送される用紙17を未定着トナー42及び定着液滴とは逆極性のプラスに帯電させる。このとき、もちろん搬送ベルト41は、用紙17の帯電を妨げない材料で形成される。これにより、クーロン力で用紙17の裏側から吸引することで、用紙17に付着された定着液滴が更に用紙17の裏側まで浸透するようにし、用紙17の表裏でなお一層液濃度を均等にして用紙17のカールを少なくすることができる。
【0193】
なお、図13中符号46は、定着装置18から出た用紙17に接触して除電する除電部材としての除電ローラであり、もちろんローラに限らずブラシなどでもよい。
【0194】
以上のとおり、図11〜13の図示例によれば、噴霧手段33で噴霧された定着液滴に、液滴帯電手段34で用紙17上の未定着トナー42と同極性の電荷を付与させる一方、電荷を付与させた定着液滴の雰囲気中を通して、媒体搬送手段35で、未定着トナー42が載っている用紙17が搬送され、その搬送される用紙17を記録材帯電手段36で未定着トナー42及び定着液滴とは逆極性に帯電させ、クーロン力で強制的に吸引されて記録材(用紙)17に未定着トナー42及び定着液滴53が吸着され、記録材(用紙)17に定着される。
【0195】
噴霧手段33でトナー定着液が、最頻値の滴径が15μm以下の定着液滴53として噴霧されると、噴霧された定着液滴53がドライミストとして空間に均一に浮遊して、用紙17に無駄なくムラなく付着されるので、定着液滴53を用紙17に無駄なく付着して定着液の有効使用を図るとともに定着ムラを解消することができる。
【0196】
−接触手段方式による定着方法、定着装置−
[定着方法及び定着装置]
図14に示すものは、電子写真方式のタンデム型カラー画像形成装置であって、中間転写体を用いて、像担持体上のトナー像をいったん中間転写体に一次転写した後、その中間転写体上のトナー像を記録材に二次転写する中間接転写方式のものである。
【0197】
図14は、本実施形態に係る画像形成装置の定着手段としての定着装置を含む部分の概略構成図である。本実施形態の画像形成装置は、中間転写ベルト10の表面移動方向において2次転写部の上流側に定着装置90が配置されている。この定着装置90は、中間転写ベルト10の表面と微小間隔を開けて対向するように配置される定着液供給手段としての供給ローラ91を備えている。定着装置90は、供給ローラ91が中間転写ベルト10の表面に対して近接したり離間したりできるように、図示しない駆動機構によって移動可能な構成となっている。また、定着装置90の定着液タンク93の内部には定着液92が収容されており、この定着液92に供給ローラ91が浸った状態で配置されている。供給ローラ91は、トナーに定着液92を付与する際には図中矢印の方向に回転駆動する。これにより、供給ローラ91の表面に定着液92が汲み上げられる。このようにして汲み上げられた定着液92は、メータリングブレード94によって規制され、供給ローラ91の表面に付着する定着液が適量に調整される。そして、供給ローラ91上の定着液は、供給ローラ91の回転に伴って中間転写ベルト10の表面との対向位置まで搬送され、中間転写ベルト10の表面に定着液を供給する。
【0198】
また、中間転写ベルト10上のトナーに定着液を供給する定着液供給手段として供給ローラ91を用いた場合、中間転写ベルト10上に担持されたトナー像を乱してしまうおそれがある。そのため、本実施形態では、導電性材料で構成した基体を絶縁層又は高抵抗層で覆った供給ローラ91を用い、その供給ローラ91に電界形成手段としての電源95を接続している。具体的には、例えば、ステンレス製の芯金に導電性のゴム層を形成し、その表面を絶縁性のPFAチューブで覆ったものを用いることができる。このような構成により、供給ローラ91と中間転写ベルト10との間には、トナーを中間転写ベルト側に押し付ける方向の電界が形成される。このような電界を形成することで、液供給位置における中間転写ベルト10上のトナーの中間転写ベルト10側への拘束力を高めることができる。これにより、中間転写ベルト10上に担持されたトナー像を乱すことなく、そのトナーに対して定着液92を供給することができる。
【0199】
本発明による画像形成方法及び画像形成装置は、本発明の定着方法を用いているので、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤を少なくとも含む定着液の浸透時間が短く、短時間で適切な軟化状態のトナーが得られ、画像が記録媒体に強固に定着し、高品質な画像が形成できる。
【実施例】
【0200】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0201】
(合成例1〜13)
−ポリヒドロキシカルボン酸骨格含有樹脂A−1〜A−13の合成−
温度計、撹拌機、及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、表1に示す原材料を入れ、テレフタル酸チタン1質量部を入れ、窒素置換した後、常圧下、160℃で10時間開環重合し、更に常圧下、130℃で反応させた。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕粒子化し、ポリヒドロキシカルボン酸骨格含有樹脂A−1〜A−13を合成した。
【0202】
【表1】

*L−ラクチド:東京化成株式会社製
*D−ラクチド:武蔵野化学株式会社製
*1,3−PD(1,3−プロパンジオール):東京化成株式会社製
*ε−カプロラクトン:東京化成株式会社製
【0203】
(実施例1〜13)
<トナー1〜13の作製>
−樹脂粒子の水性分散液の調製−
撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器内に、水680質量部、メタクリル酸のエチレンオキシド付加物の硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業株式会社製)15質量部、スチレン85質量部、メタクリル酸85質量部、アクリル酸ブチル110質量部、及び過硫酸アンモニウム3質量部を仕込み、4,200rpmで1時間撹拌し、白色の乳濁液を得た。次に、系内温度を77℃まで昇温し、4時間反応させた。更に、1質量%の過硫酸アンモニウム水溶液30質量部を加え、75℃で6時間熟成し、[樹脂分散液1]を調製した。
得られた[樹脂分散液1]について、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−920、堀場製作所製)で測定したところ、体積平均粒径が50nmであった。また、[樹脂分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離したところ、樹脂分は、ガラス転移温度(Tg)が53℃、重量平均分子量(Mw)が125,000であった。
【0204】
−水系媒体の調製−
イオン交換水800質量部、前記[樹脂分散液1]200質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10質量部を、混合撹拌し、均一に溶解させて[水系媒体1]を調製した。
【0205】
−ポリエステル樹脂の合成−
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物700質量部、及びテレフタル酸300質量部を投入し、常圧下、窒素気流下で、210℃で10時間縮合反応した。次いで、10mmHg〜15mmHgの減圧下、脱水しながら5時間反応を継続した後に冷却し、「ポリエステル樹脂」を合成した。得られた「ポリエステル樹脂」のTHF可溶分の重量平均分子量(Mw)は3,700、酸価10mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)41℃であった。
【0206】
−ポリエステルプレポリマーの合成−
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物660質量部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド2モル付加物80質量部、テレフタル酸285質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルスズオキシド2質量部を入れ、常圧下、230℃で7時間反応させた後、10mmHg〜15mmHgの減圧下で5時間反応させ、「中間体ポリエステル樹脂」を合成した。
得られた「中間体ポリエステル樹脂」は、数平均分子量(Mn)が2,400、重量平均分子量(Mw)が9,800、ピーク分子量が3,200、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.4mgKOH/g、水酸基価51mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、390質量部の「中間体ポリエステル樹脂」、イソホロンジイソシアネート90質量部、及び酢酸エチル550質量部を入れ、100℃で6時間反応させ、「ポリエステルプレポリマー」を合成した。
得られた「ポリエステルプレポリマー」は、遊離イソシアネートの含有量が1.47質量%であった。
【0207】
−ケチミン化合物の合成−
撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器内に、イソホロンジアミン30質量部、及びメチルエチルケトン70質量部を仕込み、50℃で5時間反応させ、「ケチミン化合物」を合成した。得られたケチミン化合物は、アミン価が423mgKOH/gであった。
【0208】
−トナー材料液1〜13の調製−
攪拌装置を備えた容器内に、表2に示す配合量(質量部)で、[ポリヒドロキシカルボン酸骨格含有樹脂A−1〜A−13]、[ポリエステル樹脂1]、酢酸エチル100質量部、及び顔料としてブラック顔料(カーボンブラック)を表2に示す配合量(質量部)で溶液を作製し、攪拌周速20m/分で20時間攪拌し、樹脂溶液を調製した。その後、表2に示す配合量(質量部)で「ポリエステルプレポリマー」を仕込み、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒で、粒径が0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスした。更に、「ケチミン化合物」を表2に示す配合量(質量部)加えて溶解させ、トナー材料液1〜13を調製した。
表2中のトナー材料液1〜13は、それぞれ後述するトナー1〜13の原料となるものである。
【0209】
【表2】

【0210】
次に、容器内に、「水系媒体」150質量部を入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmで攪拌しながら、「トナー材料液1〜13」100質量部をそれぞれ添加し、10分間混合して各乳化スラリーを得た。更に、攪拌機、及び温度計をセットしたコルベンに、乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら、30℃で12時間脱溶剤し、各分散スラリーを得た。
【0211】
次に、各分散スラリー100質量部を減圧濾過し、得られた各濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた各濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。得られた各濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、フッ素系第四級アンモニウム塩化合物(フタージェントF−310、ネオス社製)を、フッ素系四級アンモニウム塩がトナーの固形分100質量部に対して0.1質量部相当になるよう5%メタノール溶液で添加し、10分間攪拌した後、濾過した。得られた各濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行い、各濾過ケーキを得た。循風乾燥機を用いて、得られた各濾過ケーキを40℃で36時間乾燥し、目開きが75μmのメッシュで篩い、「トナー母体粒子1〜13」を作製した。
【0212】
次に、得られた[トナー母体粒子1〜13]の各トナー母体粒子を100質量部と、外添剤としての疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン社製)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて、周速30m/秒で30秒間混合し、1分間休止する処理を5サイクル行った後、目開きが35μmのメッシュで篩い、トナーを作製し、実施例1〜13の「トナー1〜13」を作製した。
【0213】
(実施例14)
−トナー14の作製−
実施例1において、トナー1の製造時に用いた「トナー材料液1」に、少なくとも一部をベンジル基を有する第4級アンモニウム塩で変性した層状無機鉱物モンモリロナイト(クレイトンAPA Souther Clay Products社製)3質量部を添加し、T.K.ホモディスパー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、30分間攪拌した以外は、実施例1と同様にして、実施例14の「トナー14]を作製した。
【0214】
(実施例15)
−トナー15の作製−
実施例2において、トナー2の製造時に用いた「トナー材料液2」に、少なくとも一部をベンジル基を有する第4級アンモニウム塩で変性した層状無機鉱物モンモリロナイト(クレイトンAPA Souther Clay Products社製)3質量部を添加し、T.K.ホモディスパー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、30分間攪拌した以外は、実施例2と同様にして、実施例15の「トナー15]を作製した。
【0215】
(実施例16)
−トナー16の作製−
実施例3において、フッ素系第四級アンモニウム塩化合物のメタノール溶液を加えなかった以外は、実施例3と同様にして、実施例16の「トナー16」を作製した。
【0216】
(実施例17)
−トナー17の作製−
テレフタル酸1,592質量部、イソフタル酸82質量部、エチレングリコール379質量部、及びネオペンチルグリコール750質量部からなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で2.5時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、二酸化ゲルマニウムを触媒として0.273質量部添加し、系の温度を30分で280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に0.1Torrとした。この条件下で更に重縮合反応を続け、1.5時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、260℃になったところでイソフタル酸50質量部、及び無水トリメリット酸38質量部を添加し、255℃で30分間撹拌し、シート状に払い出した。そして、これを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1mm〜6mmの分画のポリエステル樹脂を[樹脂a−1]として得た。
【0217】
次に、ジャケット付きの2Lガラス容器に、前記[樹脂a−1]200質量部、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル35質量部、ポリビニルアルコール(ユニチカ株式会社製、「ユニチカポバール」050G)0.5質量%水溶液(以下、PVA−1)463質量部、及び該ポリエステル樹脂中に含まれる全カルボキシル基量の1.2倍当量に相当するN,N−ジメチルエタノールアミン(以下、DMEA)を投入し、これを開放系で卓上型ホモディスパー(特殊機化工業株式会社製、TKロボミックス)を用いて6,000rpmで撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、完全浮遊状態となっていることが確認された。そこで、この状態を保ち、10分後にジャケットに熱水を通し、加熱した。そして、容器内温度が68℃に達したところで撹拌を7,000rpmとし、容器内温度を68℃〜70℃に保って更に20分間撹拌し、乳白色の均一な水分散体を得た。そして、ジャケット内に冷水を流して3,500rpmで撹拌しながら室温まで冷却し、ステンレス製のフィルター(635メッシュ、平織)を用いて濾過し、濾液を「微粒子分散液w−1」として得た。フィルター上には樹脂粒子がほとんど残らなかった。
【0218】
次いで、実施例1において、「樹脂分散液1」の代わりに前記「微粒子分散液w−1」を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例17の「トナー17」を作製した。
【0219】
(実施例18)
−トナー18の作製−
撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器に、水685質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業株式会社製)13質量部、スチレン80質量部、メタクリル酸71質量部、アクリル酸ブチル128質量部、チオグリコール酸ブチル15質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。この乳濁液を加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。更に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成して、[微粒子分散液(w−2)]を得た。
得られた[微粒子分散液(w−2)]の粒子の体積平均粒径は、105nmであった。また、[微粒子分散液(w−2)]の樹脂分の重量平均分子量(Mw)は10,000、ガラス転移温度(Tg)は40℃であった。
【0220】
次いで、実施例1において、乳化スラリーの作製時に[微粒子分散液(w−2)]を5質量部滴下しながら乳化スラリーを作製した以外は、実施例1と同様にして、実施例18の「トナー18」を作製した。
【0221】
(実施例19)
−トナー19の作製−
温度計、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた2リットルの4つ口フラスコ中に、ポリカプロラクトン71質量部、共重合ポリエステル樹脂(*)85質量部、イソホロンジイソシアネート88質量部、ジメチロールプロピオン酸25質量部、及び酢酸エチル60質量部を入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら、90℃まで昇温し、この温度で1時間ウレタン化反応を行った。
((*)エチレングリコール(E)、ネオペンチルグリコール(N)、テレフタル酸(T)、イソフタル酸(I)からなる共重合ポリエステル樹脂(共重合組成:E/N・T/I=50/50・50/50(モル比)))
【0222】
次いで、酢酸エチル90質量部を30分間で滴下し、更に90℃で1時間反応を続けた。その後40℃まで冷却し、NCO末端のプレポリマーを得た。次いで、このプレポリマーにトリエチルアミン16質量部を加えて、中和した後、イオン交換水500質量部を添加した。次いで、反応系にアジピン酸ジヒドラジド13質量部、及びジヒドラジド化合物(味の素株式会社)24質量部を添加し、50℃にて1時間撹拌を続けた後、酢酸エチルを減圧留去し、ヒドラジド末端のポリウレタン水性分散液を得た。この水性樹脂の固形分は39質量%であった。
温度計、冷却管、撹拌機、窒素導入管及び滴下ロートの付いた2リットルの4つ口フラスコ中に、イオン交換水150質量部、上記項で合成したポリウレタン水性分散液63質量部を入れ、室温より30分間を要して、80℃まで昇温した。滴下ロートより、アクリル酸エチル130質量部、スチレン35質量部、ジアセトンアクリルアミド12質量部、過酸化水素2質量部、及びイオン交換水20質量部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間撹拌を続けた。次いで、過酸化水素1質量部を添加し、80℃において2時間撹拌を続け、グラフト重合反応を完成させ、[微粒子分散液(w−3)]を得た。
【0223】
次いで、実施例1において、[微粒子分散液(w−1)]の代わりに[微粒子分散液(w−3)]を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例19の「トナー19」を作製した。
【0224】
(実施例20)
−トナー20の作製−
実施例1において、ポリヒドロキシカルボン酸骨格含有樹脂A−1の合成時にε−カプロラクトン3質量部の代わりにグリセリン3質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例20の「トナー20」を作製した。
【0225】
(実施例21)
−トナー21の作製−
実施例1において、ポリヒドロキシカルボン酸骨格含有樹脂A−1の合成時にε−カプロラクトン3質量部の代わりにエリトリトール3質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例21の「トナー21」を作製した。
【0226】
(比較例1)
<トナー17の作製>
−ブラックマスターバッチの作製−
下記の組成の顔料、スチレン−アクリル樹脂、及び純水を1:1:0.5(質量比)の割合で、混合して、2本ロールにより混練した。混練を70℃で行い、その後、ロール温度を120℃まで上げて、水を蒸発させて、ブラックマスターバッチを作製した。
〔ブラックマスターバッチ処方〕
・スチレン−アクリル樹脂(FCA−1001−NS、藤倉化成株式会社製)・・・100質量部
・ブラック顔料(カーボンブラック)・・・100質量部
・純水・・・50質量部
【0227】
下記組成のブラックトナー処方1を、へンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製、FM10B)を用いて予備混合した後、二軸混練機(株式会社池貝製、PCM−30)で混練した。次いで、超音速ジェット粉砕機(ラボジェット、日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業株式会社製、MDS−I)で分級し、重量平均粒径が7μmのトナー母体粒子を作製した。
次いで、トナー母体粒子100質量部に対し、コロイダルシリカ(H−2000、クラリアント株式会社製)1.0質量部を、サンプルミルを用い、混合して、比較例1の「トナー17」を作製した。
【0228】
〔ブラックトナー処方1〕
・スチレン−アクリル樹脂(FCA−1001−NS、藤倉化成株式会社製)・・・92質量部
・前記ブラックマスターバッチ・・・16質量部
・帯電制御剤(オリエント化学工業株式会社製、E−84)・・・1質量部
【0229】
(比較例2)
−トナー18の作製−
実施例1において、トナー作製時にポリヒドロキシカルボン酸骨格含有樹脂A−1を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例2の「トナー18」を作製した。
【0230】
次に、得られた各トナーについて、以下のようにして、ポリヒドロキシカルボン酸骨格の光学純度X、樹脂全量に対するポリヒドロキシカルボン酸骨格部の質量%、ポリヒドロキシカルボン酸骨格の重量平均分子量(Mw)、体積平均粒径(Dv)、及び比(Dv/Dn)を測定した。結果を表3に示す。
【0231】
<ポリヒドロキシカルボン酸骨格の光学純度Xの測定>
作製した各トナーに対し、蒸留水とNaOHを加えてpH=9に調整後、50℃で24時間の条件でポリ乳酸を含むポリエステル成分をモノマー単位にまで分解した。得られた溶解液を冷却後、半透膜を備えたガラス容器に入れ、ガラス容器全体を蒸留水を満たした容器に24時間浸し、半透膜を通して低分子量成分を抽出した。得られた低分子量成分含有の水溶液に、炭酸カルシウムを入れpH=7に調整し、その後濾過して得られた濾液に硫酸を加えてカルシウム成分を硫酸カルシウムとして沈殿させて、更に濾過し、乳酸を含む濾液を得た。得られた乳酸の光学純度を光学分割カラムを装着したHPLCを用いて測定した。
【0232】
<樹脂全量に対するポリヒドロキシカルボン酸骨格(PLA)部の割合の測定方法>
樹脂全量に対するポリヒドロキシカルボン酸骨格の割合は、公知の化学分析を用いることができるが、本発明においてはああ希薄溶液を用いた1H−NMR法を使用し、ポリヒドロキシカルボン酸以外の成分が持つ芳香環に結合したプロトンピークの面積と、乳酸部分に含まれるメチルのプロトンピークの面積の比から成分の含有比を測定し、得られた含有比を重量換算での比率に変換することで測定を行った。
【0233】
<ポリヒドロキシカルボン酸骨格(PLA)部の重量平均分子量(Mw)>
重量平均分子量(Mw)は、測定試料のTHF可溶分について、GPCを用いて測定した。なお、測定装置としては、HLC−8120(東ソー株式会社製)、カラムとしては、TSKgelGMHXL(2本)、TSKgelMultiporeHXL−M(1本)、検出装置としては、屈折率検出器を用い、測定温度を40℃とし、試料の0.25重量%THF溶液を100μL注入して測定した。また、校正曲線を作成するための標準試料としては、ポリスチレンを用いた。
【0234】
<体積平均粒径(Dv)及び比(Dv/Dn)>
前記体積平均粒径(Dv)、及び前記体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子径(Dn)との比(Dv/Dn)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer 3 Version3.51)にて解析を行うことで求めた。
具体的には、ガラス製100mLビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)を0.5mL添加し、各トナー0.5gを添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mLを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理した。前記分散液を、前記マルチサイザーIIIを用い、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行った。測定は、装置が示す濃度が8%±2%となるように、前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8%±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0235】
【表3】

【0236】
(キャリア1の製造例)
トルエン100質量部に、シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン)100質量部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、及びカーボンブラック10質量部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、被覆層塗布液を調製した。流動床型コーティング装置を用いて、体積平均粒径が50μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面に被覆層塗布液を塗布して、キャリア1を作製した。
【0237】
(キャリア2の製造例)
ステンレス容器に、アクリル樹脂溶液(日立化成工業株式会社製、ヒタロイド3018固形分50質量%)60質量部、グアナミン溶液(三井サイテック株式会社製、マイコート106、固形分77質量%)20質量部、シリコーン樹脂溶液(東レ・ダウコーニング株式会社製、SR2405、固形分50質量%)120質量部、アミノシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、SH6020、固形分100質量%)1.5質量部、粒子径0.4μmの球状アルミナ微粒子50質量部を入れ、固形分濃度が15質量%となるようにトルエンで希釈し、次いで、ホモミキサーで10分間分散して、[被覆層液1]を調製した。
【0238】
次に、芯材としてフェライト粉(1kガウスでの飽和磁気モーメント65emu/g)3000質量部を用い、前記[被覆層液1]を転動流動式コーティング装置を用いて塗布し、乾燥した。得られたキャリアを電気炉中にて、120℃で60分間放置して焼成し、冷却後フェライト粉バルクを目開き90μmの篩を用いて解砕し、[キャリア2]を得た。
得られた[キャリア2]の粒度分布をマイクロトラック粒度分布計(モデルHRA9320−X100)で測定したところ、重量平均粒子径(Dw)が39μm、個数平均粒子径(Dn)が33μm、Dw/Dnが1.17であった。また、アルミナ微粒子をFIB(集束イオンビーム)で切断し、アルミナ微粒子断面を作製後、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて、被覆層の平均厚み(h)とアルミナ微粒子の平均粒子径(D)、及びD/hを、50点以上の微粒子断面を観察して求めた平均値として算出したところ、被覆層の平均厚み(h)が0.43μm、アルミナ微粒子の平均粒子径(D)が0.39μm、D/hは0.91であった。
【0239】
(キャリア3の製造例)
ステンレス容器に、アクリル樹脂溶液(日立化成工業株式会社製、ヒタロイド3018、固形分50質量%)30質量部、グアナミン溶液(三井サイテック株式会社製、マイコート106、固形分77質量%)10質量部、シリコーン樹脂溶液(東レ・ダウコーニング株式会社製、SR2405、固形分50質量%)60質量部、アミノシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、SH6020、固形分100質量%)1質量部、粒子径0.5μmの球状アルミナ微粒子80質量部を入れ、固形分濃度が15質量%となるようにトルエンで希釈し、次いで、ホモミキサーで10分間分散して、[被覆層液2]を調製した。
次に、芯材としてフェライト粉(1kガウスでの飽和磁気モーメント65emu/g)3,000質量部を用い、前記[被覆層液2]を、転動流動式コーティング装置を用いて塗布し、乾燥した。得られたキャリアを電気炉中にて、120℃で60分間放置して焼成し、冷却後フェライト粉バルクを目開き90μmの篩を用いて解砕し、[キャリア3]を得た。
得られた[キャリア3]の粒度分布をマイクロトラック粒度分布計(モデルHRA9320−X100)で測定したところ、重量平均粒子径(Dw)が41μm、個数平均粒子径(Dn)が35μm、Dw/Dnが1.17であった。また、アルミナ微粒子をFIB(集束イオンビーム)で切断し、アルミナ微粒子断面を作製後、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて、被覆層の平均厚み(h)とアルミナ微粒子の平均粒子径(D)、及びD/hを、50点以上の微粒子断面を観察して求めた平均値として算出したところ、被覆層の平均厚み(h)が0.22μm、アルミナ微粒子の平均粒子径(D)が0.51μm、D/hは2.32であった。
【0240】
−現像剤の作製−
作製したトナー1〜23のそれぞれを5質量部と、前記キャリア1を95質量部混合して、実施例1〜21及び比較例1〜2の各現像剤を作製した。
また、2Lのステンレス容器に前記トナー1を7質量部、及び前記[キャリア2]100質量部を加え、容器が転動して攪拌される型式のターブラーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)を用いて48rpmで5分間均一混合し、実施例22の二成分現像剤を作製した。
また、前記[キャリア2]の代わりに前記[キャリア3]を使用した以外は、キャリア2と同様にして、実施例23の二成分現像剤を作製した。
【0241】
(製造例1)
<定着液の作製>
−可塑剤を含有する液体−
・希釈溶媒としてのイオン交換水・・・53質量%
・液体可塑剤としてのコハク酸ジエトキシエトキシエチル(高級アルコール工業株式会社)・・・10質量%
・液体可塑剤としての炭酸プロピレン・・・20質量%
・増粘剤としてのプロピレングリコール・・・10質量%
・増泡剤としてのヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂製薬株式会社製、マーポンMM)・・・0.5質量%
・起泡剤としてのパルミチン酸アミン・・・2.5質量%
・起泡剤としてのミリスチン酸アミン・・・1.5質量%
・起泡剤としてのステアリン酸アミン・・・0.5質量%
・分散剤としてのPOE(20)ラウリルソルビタン(花王株式会社製、レオドールTW−S120V)・・・1質量%
・分散剤としてのポリエチレングリコールモノステアレート(花王株式会社製、エマノーン3199)・・・1質量%
なお、分散剤は、可塑剤の希釈溶媒への溶解性を助長するために用いた。脂肪酸アミンは、脂肪酸とトリエタノールアミンにより脂肪酸アミンを合成した。
【0242】
上記成分比にて、まず、液温120℃にて可塑剤を除いて混合攪拌し溶液を作製した。次に、可塑剤を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて可塑剤が溶解した定着液(フォーム化する前の原液)を作製した。
【0243】
<塗布装置>
−大きな泡生成部−
図6を基に作製した。
・上記の液状定着液保存容器:ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるボトル
・液搬送ポンプ:チューブポンプ(チューブ内径2mm、チューブ材質:シリコーンゴム)
・搬送流路:内径2mmのシリコーンゴムチューブ
・大きな泡を作るための微小孔シート:#400のステンレススチール製メッシュシート(開口部約40μm)
【0244】
−微小な泡生成部−
図6を基に作製した。
・2重円筒の内側円筒は、回転軸に固定され、図示していない回転駆動モーターにより回転する。2重円筒の材質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂とした。
・外側円筒の内径:10mm、外側円筒の長さ:120mm
・内側円筒の外径:8mm、内側円筒の長さ:100mm
・回転数は、1,000rpm〜2,000rpmの範囲で可変とした。
【0245】
−定着液付与手段−
図6を基に作製した。上記の微小な泡を生成する微小な泡生成部を用い、泡状の定着液を作製し、液膜厚制御用ブレードに供給する構成とした。液膜厚制御用ブレードと塗布ローラとのギャップは25μmと40μmの2通り実施した。
・加圧ローラ:アルミニウム合金製ローラ(直径10mm)を芯金とし、直径50mmのポリウレタンフォーム材(商品名:「カラーフォームEMO」、イノアック社製)を形成した。
・塗布ローラ:PFA樹脂を焼付け塗装したステンレススチール(SUS)製ローラ(直径30mm)
・膜厚制御用ブレード:アルミニウム合金製支持板に厚み1mmの並板ガラスを接着し、ガラス面を塗布ローラ側に向け、10μm〜100μmの範囲で塗布ローラとガラス面の隙間を制御できるようにした。
・紙搬送速度:150mm/s
【0246】
次に、得られた各トナー及び各現像剤を用いて、以下のようにして定着液のトナー層への浸透時間、及び定着性を評価した。結果を表4に示す。
【0247】
<スペント性(キャリア汚染性)>
定着装置を除去した電子写真方式のプリンタ(株式会社リコー製、IpsioColorCX8800)に、各現像剤を入れて、20%画像面積の画像チャートをPPC用紙に画像濃度1.4±0.2となるようにトナー濃度を制御しながら、15万枚ランニング出力した後の現像剤を抜き取り、現像剤を目開き32μmのメッシュが張られたゲージ内に適量入れ、エアブローを行い、トナーとキャリアを分離した。得られたキャリア1.0gを50mLガラス瓶に入れ、クロロホルム10mLを加えて、50回手振りして、10分間静置させた。その後、上澄みのクロロホルム溶液をガラスセルに入れ、濁度計を用いてクロロホルム溶液の透過率を測定し、下記基準により評価した。
〔キャリア汚染性の評価基準〕
A:透過率95%以上
B:透過率85%以上95%未満
C:透過率75%以上85%未満
D:透過率75%未満
【0248】
<定着液のトナー層への浸透時間>
図15に示すように、上部電極61を接触付与手段面に、下部電極62を記録媒体にそれぞれみたて、上部電極61上に前記泡状の定着液層63を形成し、下部電極62の面上にトナー層64を形成した。そして、電極同士の接触タイミングは、下部電極62の下に加重検知ロードセル65を配置し、上下電極間には電圧を印加する。上部電極61を下部電極62に接触させると、加重検知ロードセル65が上部電極61の加重を検知し、接触開始点を決めた。その後、泡状の定着液63がトナー層64を通過して下部電極62に到達すると電極間に電流が流れ、印加電圧値が変化した。このときの、加重検知ロードセル65の検出から電圧変化開始までのタイミングを測定することでトナー層の浸透時間とした。
・泡状定着液層:平均泡径20μm、かさ密度0.05g/cm、厚みを40μmとした泡層を上部電極上に形成した。
・トナー層:厚みが約30μmとなるように下部電極に形成した。
・上部電極、下部電極は同一の材料としSUS304を用いた。上部電極をリニアステージに固定し、下部電極に圧力0.03kgf/cm(塗布時圧力)にて接触させた。
・電極間で定着液の電気分解が起きないようにするため、電圧間への印加電圧は0.8Vとした。
前記浸透時間の評価は、下記基準に従うものとし、B以上を実用可能とした。
〔浸透時間の評価基準〕
A:浸透時間50ms未満
B:浸透時間50ms以上150ms未満
C:浸透時間150ms以上250ms未満
D:浸透時間250ms以上
【0249】
<定着性の評価>
定着装置を除去した電子写真方式のプリンタ(株式会社リコー製、IpsioColorCX8800)に、各現像剤を装填して、ハーフトーン(定着後のID=0.25となる設定)の未定着トナー画像が形成されたPPC用紙に、図6に示す定着装置を用いてローラ塗布し、定着液の処方例で得られた定着液を搭載した塗布装置からなる定着装置にてスポンジの加圧ローラと塗布ローラとの軸間距離を15mm(ニップ時間100ms)にて定着を行った。このときの紙搬送速度は150mm/sであった。
定着した画像をクロックメーター(Atras Electric Devices社製、Model 1)を使用してJIS スミア布(JIS L−0849)で擦り、出力画像をJIS スミア布で擦った後、600dpi×600dpiの解像度でスキャナで取り込み、画像化を行った。トナーが転写されていない地肌の紙の部分を階調0、トナーがベタで印刷されている部分を階調255とし、階調が127以下の部分を白、階調が128以上の部分を黒とする2値化処理をし、任意の1cm×1cmの面積に対して、黒部分の面積がどれだけあるかをデータ処理により求め、画像残存率とした。
なお、定着性の評価がB以上を実用可能とした。
〔評価基準〕
A:画像残存率90%以上
B:画像残存率80%以上90%未満
C:画像残存率60%以上80%未満
D:画像残存率60%未満
【0250】
【表4】

【0251】
表3及び表4の結果から、実施例1〜23は、いずれも結着樹脂としてポリ乳酸を使用しており、いずれも定着液の浸透時間が短く、短時間で適切な軟化状態が得られるため、画像は基材(紙)に強固に定着し、良好な画像が得られた。
これに対し、比較例1は、結着樹脂としてスチレン−アクリル樹脂を使用しており、定着液の浸透時間が長く、また浸透が充分になされないため、定着状態も悪いという結果が得られた。
また、比較例2は、従来トナーに使用しているポリエステル樹脂を使用した場合にはスチレン−アクリル樹脂よりは浸透時間が短いが、ポリ乳酸を使用したトナーに比べると浸透に要する時間は長い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0252】
本発明のトナーは、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤を少なくとも含む定着液の浸透時間が短く、短時間で適切な軟化状態のトナーが得られ、画像が記録媒体に強固に定着し、高品質な画像を形成できるので、非熱定着方式を採用する電子写真形成技術に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0253】
1 感光体
2 作像形成部
3 帯電装置(帯電ローラ)
4 露光装置
5 現像装置
5a 現像ローラ
5b 現像剤供給ローラ
5c 規制ブレード
6 転写装置
7 クリーニング装置
10 中間転写ベルト
11、12、13 支持ローラ
14 一次転写ローラ
16 二次転写ローラ
T トナー(現像剤)
15K、15M、15C、15Y 作像手段
17 用紙(記録媒体)
18 定着装置
23 転写手段
33 噴霧手段
34 液滴帯電手段
35 媒体搬送手段
36 記録材帯電手段
38 噴霧室
40 ローラ
41 搬送ベルト
42 未定着トナー
44 電極
45 電源
50 印加手段
53 定着液滴
64 中間転写体
67 二次転写手段
69 一次転写手段
101 静電潜像担持体
102 帯電手段
103 露光手段
104 現像手段
105 記録媒体
107 クリーニング手段
108 転写手段
111 塗布ローラ
112 記録媒体
113 トナー層
114 泡状定着液
115 ベルトクリーニング装置
120 泡状定着液
121 液膜境界
122 気泡
130 泡状定着液生成手段
131 定着液容器
132 液状定着液
133 搬送ポンプ
134 液搬送パイプ
135 気体・液体混合部
136 空気口
137 微小孔シート
138 泡生成部
140 定着装置
141 塗布ローラ
142 膜厚調整用ブレード
143 加圧ローラ
144 加圧ベルト
145 加温手段
146 加圧ローラ
147 赤外線ヒータ
148 加圧ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0254】
【特許文献1】特開2006−133306号公報
【特許文献2】特開2009−008967号公報
【特許文献3】特開2008−139504号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈剤と、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤とを含有する定着液を記録媒体上のトナーに付与して該トナーを記録媒体に定着させるのに用いられるトナーであって、
少なくとも、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂と、着色剤とを含有することを特徴とするトナー。
【請求項2】
ポリヒドロキシカルボン酸骨格が、モノマー成分換算での光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|〔ただし、X(L体)は光学活性モノマー換算でのL体比率(モル%)、X(D体)は光学活性モノマー換算でのD体比率(モル%)を表す〕が80%以下である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
ポリヒドロキシカルボン酸骨格の重量平均分子量が7,000〜60,000である請求項1から2のいずれかに記載のトナー。
【請求項4】
ポリヒドロキシカルボン酸骨格が炭素数3〜6のヒドロキシカルボン酸が重合乃至共重合した骨格である請求項1から3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
トナーが、更に帯電制御剤を含有する請求項1から4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
帯電制御剤が含フッ素四級アンモニウム塩である請求項5に記載のトナー。
【請求項7】
トナーが、更に変性層状無機鉱物を含有し、該変性層状無機鉱物が、層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性してなる請求項1から6のいずれかに記載のトナー。
【請求項8】
トナーが、少なくとも結着樹脂、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂、着色剤、帯電制御剤、及び変性層状無機鉱物を含むトナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー材料液を水系媒体中に分散して造粒することで得られる請求項1から7のいずれかに記載のトナー。
【請求項9】
少なくとも第1の樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)、又は第1の樹脂(a)を含有する被膜(P)が、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に付着されてなるトナーであって、
前記樹脂粒子(B)が、請求項1から8のいずれかに記載のトナーからなる粒子であり、
前記第1の樹脂(a)が、多塩基酸と、多価アルコールとを含むポリエステル樹脂であることを特徴とするトナー。
【請求項10】
ガラス転移温度の異なる第1の樹脂(a1)及び第2の樹脂(a2)と、第3の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)とからなるトナーであって、
前記第1の樹脂(a1)及び前記第2の樹脂(a2)が、いずれも前記樹脂粒子(B)の表面に付着されており、
前記第1の樹脂(a1)及び前記第2の樹脂(a2)が、スチレン系モノマー及びアクリル系モノマーの少なくともいずれかから構成され、
前記樹脂粒子(B)が、請求項1から8のいずれかに記載のトナーからなる粒子であることを特徴とするトナー。
【請求項11】
第1の樹脂(a)と、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)と、を有するトナーであって、
前記第1の樹脂(a)が、ポリウレタン−アクリルポリマー複合体より構成され、前記樹脂粒子(B)の表面に付着されてなり、
前記樹脂粒子(B)が、請求項1から8のいずれかに記載のトナーからなる粒子であることを特徴とするトナー。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のトナーと、キャリアとを含む現像剤において、
前記キャリアが少なくとも芯材と、該芯材表面に微粒子を含む被覆層とを有し、前記微粒子の平均粒子径(D)と前記被覆層の平均厚み(h)が1<[D/h]<10であり、
前記微粒子の含有量が40質量%〜95質量%であることを特徴とする現像剤。
【請求項13】
被覆層が少なくともシリコーン樹脂を含有する請求項12に記載の現像剤。
【請求項14】
被覆層における微粒子が、アルミナ、及び表面処理したアルミナの少なくともいずれかである請求項12から13のいずれかに記載の現像剤。
【請求項15】
トナーの少なくとも一部を溶解乃至膨潤させることで該トナーを軟化させる可塑剤を含有する定着液を記録媒体上のトナーに付与して該トナーを記録媒体に定着させる定着方法において、
前記トナーが請求項1から11のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする定着方法。
【請求項16】
請求項1から11のいずれかに記載のトナーを用いて記録媒体上にトナーを定着する定着方法であって、
水を含む希釈剤と、起泡剤と、可塑剤とを含有する定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成工程と、
前記泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整工程と、
前記所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上のトナー層に付与する泡状定着液付与工程と、
を含むことを特徴とする定着方法。
【請求項17】
可塑剤が、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルである請求項15から16のいずれかに記載の定着方法。
【請求項18】
可塑剤が下記一般式で表される化合物である請求項15から16のいずれかに記載の定着方法。
(COO−(R−O)−R10
ただし、前記一般式中、nは1以上3以下であり、Rは炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が1以上3以下のアルキレン基であり、R10は炭素数が1以上4以下のアルキル基である。
【請求項19】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と、
を含む画像形成方法であって、
前記定着工程が、請求項15から18のいずれかに記載の定着方法により行われることを特徴とする画像形成方法。
【請求項20】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器とを備え、前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、定着液を記録媒体上のトナー層に付与する定着液付与手段とを有する定着手段であって、
前記トナーが請求項1から11のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項21】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給するトナーを含む現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、前記現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器とを備え、前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、水を含む希釈剤と、起泡剤と、可塑剤とを含有する定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成手段と、
前記泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整手段と、
前記所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上のトナー層に付与する泡状定着液付与手段とを有し、
前記トナーが請求項1から11のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。

【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−150285(P2011−150285A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228695(P2010−228695)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】