説明

トナー、及び現像剤、並びに定着方法、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】画像形成方法の定着工程における消費エネルギーが極めて小さく、かつ定着直後の画像強度が高く、ハーフトーン画像においても擦れに対して強い高品質な画像を形成できるトナー、及び現像剤、並びに定着方法、画像形成方法及び画像形成装置の提供。
【解決手段】希釈剤と、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤とを含有する定着液を記録媒体上のトナーに付与して該トナーを記録媒体に定着させるのに用いられるトナーであって、少なくとも結着樹脂と、着色剤と、下記一般式(I)で表されるポリアルキレングリコールとを含有するトナーである。


前記一般式(I)中、Rxm及びRymは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基のいずれかを表す。nは、2以上の整数を表す。mは、2以上4以下の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、及び現像剤、並びに定着方法、画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、定着速度、定着画像品質等の点から、記録媒体上のトナーを加熱溶融し、加圧することで定着させる熱定着方式が広く普及している。しかしながら、このような電子写真方式の画像形成装置における消費電力の約半分以上は、トナーの加熱のために消費されており、環境問題の観点から低消費電力(省エネルギー)の定着装置が望まれている。
【0003】
このような定着装置として、例えば特許文献1には、定着液でトナーを溶解又は膨潤させ、乾燥させることでトナーを定着させる方法が提案されている。
また、特許文献2には、トナーの樹脂を溶解又は膨潤させる可塑剤を含有した泡状定着液を調合し、泡状定着液を均一塗布することでトナー画像を乱すことなく非加熱定着させる方法が提案されている。
この定着方式では、熱定着方式のように、トナーを溶融させるための加熱処理が不要であることから、消費電力が低く、省エネルギー対策として優れた定着方式である。
【0004】
しかし、今までの定着方式を用いた場合には、トナーの軟化の進行が遅く、短時間の定着工程においてトナーを記録媒体上へ固定化することが不十分であるという問題があった。特に、ハーフトーン画像を記録媒体上へ固定化する場合、固定化の強度が不足し、記録媒体の画像部が何らかの接触によって擦られた場合には、画像が剥がれやすいという問題があった。
【0005】
また、特許文献3には、トナーを軟化させる可塑剤を含む定着液を用いて記録媒体にトナーを定着させる定着方式において、トナーを高速かつ少量で定着することが可能な定着方法を提供する目的で、可塑剤をトナー質量に対して3質量%で添加してDSC測定を行った際に、トナーの吸熱ショルダーのシフト幅ΔTが30℃以上である可塑剤とトナーを用いる定着方法が提案されている。この提案では、前記条件を満たすトナーと可塑剤を用いることで、可塑剤が少量の場合でもトナーと可塑剤の相溶性が充分であるため、トナーを充分軟化させることが可能となり、定着速度の高速化への対応が可能となる。
しかし、この提案においては、トナーへの可塑剤の浸透がトナー表面近傍に偏り、定着に寄与するトナーの軟化部分がトナーの表面近傍のみとなるため定着強度が低下し、特に強い定着強度が求められるトナーが単独で定着するようなハーフトーン画像において、定着したトナーが擦れにより剥がれてしまうという問題がある。
【0006】
したがって画像形成方法の定着工程における消費エネルギーが極めて小さく、かつ定着直後の画像強度が高く、ハーフトーン画像においても擦れに対して強い高品質な画像を形成できるトナー、及び現像剤、並びに該トナーを用いた定着方法、画像形成方法及び画像形成装置の速やかな提供が望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、画像形成方法の定着工程における消費エネルギーが極めて小さく、かつ定着直後の画像強度が高く、ハーフトーン画像においても擦れに対して強い高品質な画像を形成できるトナー、及び現像剤、並びに該トナーを用いた定着方法、画像形成方法及び画像形成装置を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤と親和性の大きい所定のポリアルキレングリコールを含有し、トナー内部に配置する構成をとることで、トナーに定着液が塗布された場合、トナー内部への可塑剤の浸透が加速されるため、定着直後に充分なトナーの軟化が進み、記録媒体への充分な定着強度を有することができ、ハーフトーン画像においても擦れに対して強い定着強度が得られることを知見した。
また、可塑剤のトナーへの浸透は、該可塑剤とトナーが接触するトナー粒子の表面から始まるため、トナーと定着液の接触によって短時間のうちにトナーを軟化させるにあたり、トナー粒子の表面近傍では軟化が速く、トナー粒子の中心近傍では軟化が遅くなる。そのため、短時間での定着直後においては、軟化が進行している部分がトナー粒子表面近傍のみであり、トナー粒子の記録媒体に対する定着強度が不充分となり、擦りによる剥がれが発生するものと考えられる。
そこで、本発明の画像形成方法及び画像形成装置においては、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤を含有する定着液を用いてトナーを定着するので、定着液中の可塑剤がトナーに浸透することで軟化が達成され、その後加圧ローラで記録媒体に押し付けることにより、記録媒体へのトナーの良好な定着が達成できることを知見した。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 希釈剤と、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤とを含有する定着液を記録媒体上のトナーに付与して該トナーを記録媒体に定着させるのに用いられるトナーであって、
少なくとも結着樹脂と、着色剤と、下記一般式(I)で表されるポリアルキレングリコールとを含有することを特徴とするトナーである。
【化1】

ただし、前記一般式(I)中、Rxm及びRymは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基のいずれかを表す。nは、2以上の整数を表す。mは、2以上4以下の整数を表す。
<2> ポリアルキレングリコールの重量平均分子量が2,000〜18,000である前記<1>に記載のトナーである。
<3> ポリアルキレングリコールの融点が50℃以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナーである。
<4> ポリアルキレングリコールの含有量が、結着樹脂100質量部に対し1質量部〜15質量部である前記<1>から<3>のいずれかに記載のトナーである。
<5> ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコールである前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナーである。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のトナーと、キャリアとを含んでなり、
前記キャリアが少なくとも芯材と、該芯材表面に微粒子を含む被覆層を有し、前記微粒子の平均粒子径(D)と、前記被覆層の平均厚み(h)とが、次式、1<[D/h]<10、を満たし、
前記微粒子の総含有量が被覆層組成全体の40質量%〜95質量%であることを特徴とする現像剤である。
<7> キャリアの被覆層が、少なくともシリコーン樹脂を含有する前記<6>に記載の現像剤である。
<8> キャリアの被覆層における微粒子が、アルミナ粒子、及び表面処理したアルミナ粒子の少なくともいずれかである前記<6>から<7>のいずれかに記載の現像剤である。
<9> 前記<6>から<8>のいずれかに記載の現像剤を用いて記録媒体上に形成されたトナー像を定着する定着方法であって、
水を含む希釈剤と、起泡剤と、可塑剤とを含有する定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成工程と、
前記泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整工程と、
前記所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上のトナー層に付与する泡状定着液付与工程と、
を含むことを特徴とする定着方法である。
<10> 可塑剤が脂肪族ジカルボン酸ジエトキシエトキシエチルである前記<9>に記載の定着方法である。
<11> 可塑剤が下記一般式で表される化合物である前記<9>に記載の定着方法。
(COO−(R−O)−R10
ただし、前記一般式中、nは1以上3以下であり、Rは炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が1以上3以下のアルキレン基であり、R10は炭素数が1以上4以下のアルキル基である。
<12> 静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と、
を含む画像形成方法であって、
前記定着工程が、前記<9>から<11>のいずれかに記載の定着方法により行われることを特徴とする画像形成方法。
<13> 静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器とを備え、前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、定着液を記録媒体上のトナー層に付与する定着液付与手段とを有する定着手段であって、
前記トナーが前記<1>から<5>のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置である。
<14> 静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給するトナーを含む現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、前記現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器とを備え、前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、水を含む希釈剤と、起泡剤と、可塑剤とを含有する定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成手段と、
前記泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整手段と、
前記所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上のトナー層に付与する泡状定着液付与手段とを有し、
前記トナーが前記<1>から<5>のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置である。
<15> 静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、現像剤を収納する現像剤収納器とを備え、前記静電潜像を前記現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、定着液を記録媒体上のトナー層に付与する定着液付与手段とを有する定着手段であって、
前記現像剤が前記<6>から<8>のいずれかに記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置である。
<16> 静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、
前記現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、現像剤を収納する現像剤収納器とを備え、前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、水を含む希釈剤と、起泡剤と、可塑剤とを含有する定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成手段と、
前記泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整手段と、
前記所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上のトナー層に付与する泡状定着液付与手段とを有し、
前記現像剤が前記<6>から<8>のいずれかに記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、画像形成方法の定着工程における消費エネルギーが極めて小さく、かつ定着直後の画像強度が高く、ハーフトーン画像においても擦れに対して強い画像を形成できるトナー、及び現像剤、並びに該トナーを用いた定着方法、画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、定着液付与後のトナーの定着の様子を示す概略断面図である。
【図2】図2は、塗布時の泡状定着液の層構成例を示す概略図である。
【図3】図3は、定着装置における泡状定着液生成手段の構成を示す概略図である。
【図4A】図4Aは、定着装置における膜厚調整手段及び泡状定着液付与手段の一例を示す概略構成図である。
【図4B】図4Bは、定着装置における塗布ローラ及び膜厚調整用ブレードを拡大した概略図である。
【図5A】図5Aは、泡状定着液の塗布ローラ上での膜厚調整方法を示す概略図である。
【図5B】図5Bは、泡状定着液の塗布ローラ上での膜厚調整方法を示す概略図である。
【図6】図6は、定着装置の一例を示す概略図である。
【図7】図7は、定着装置の他の一例を示す概略図である。
【図8】図8は、加温手段を設けた定着装置の他の一例を示す概略図である。
【図9】図9は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図10】図10は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略図である。
【図11】図11は、図10に示す画像形成装置に備える1つの作像手段の概略図である。
【図12】図12は、図10に示す画像形成装置の定着装置の拡大図である。
【図13】図13は、定着手段を含む画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図14】図14は、画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(トナー)
本発明のトナーは、希釈剤と、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤とを含有する定着液を記録媒体上のトナーに付与して該トナーを記録媒体に定着させるのに用いられ、
少なくとも結着樹脂と、着色剤と、ポリアルキレングリコールとを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0013】
<ポリアルキレングリコール>
前記ポリアルキレングリコールとしては、下記一般式(I)で表されるものが用いられる。
【化2】

前記一般式(I)において、Rxm及びRymは、いずれも水素原子、及び炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基のいずれかを表す。
前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
nは2以上の整数を表し、28〜408が好ましい。mは2以上4以下の整数を表す。
【0014】
前記一般式(I)で表されるポリアルキレングリコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレングリコールが特に好ましい。
【0015】
前記ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、2,000〜18,000が好ましく、2,500〜10,000がより好ましい。前記重量平均分子量が、2,000未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、18,000を超えると、十分な定着能力が発揮できないことがある。
ここで、前記ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定装置により測定することができる。
【0016】
前記ポリアルキレングリコールの融点は、50℃以上が好ましく、55℃〜60℃がより好ましい。前記融点が、50℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがある。
ここで、前記融点は、例えば示差走査熱量計により測定することができる。
【0017】
前記ポリアルキレングリコールのトナー中での含有量は、前記結着樹脂100質量部に対し1質量部〜15質量部が好ましく、2質量部〜10質量部がより好ましい。前記含有量が、1質量部未満であると、ポリアルキレングリコールの量が少量であるため、トナーの軟化が不十分となり定着強度が劣ることがあり、15質量部を超えると、トナーの軟化が過度に進行し、定着後の画像同士が接着してしまうコピーブロッキングが発生するおそれがある。
【0018】
<結着樹脂>
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリスチレン、ポリp−スチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の単重合体、スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプロピル共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体、ポリチメルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、定着される記録媒体との親和性から、ポリエステル樹脂を使用することが特に好ましい。
【0019】
前記ポリエステル樹脂を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール、などが挙げられる。ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上のアルコールを併用することが好ましい。
前記3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
【0020】
前記ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などが挙げられる。
また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
【0021】
−活性水素基含有化合物と反応可能な変性ポリエステル(プレポリマー)−
前記結着樹脂としては、活性水素基含有化合物と反応可能な変性ポリエステル(以下、ポリエステルプレポリマーと称することがある)を含有してもよい。活性水素基含有化合物は、トナー製造過程において、前記活性水素基含有化合物と反応可能なポリエステルが伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。該ポリエステルプレポリマーが伸張反応して高分子量化することにより、トナーの耐熱保存性や、定着後の画像のべたつきを効果的に低減させることができる。この場合、ポリエステルプレポリマーとしては、活性水素基含有化合物と反応可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基、などを有する変性ポリエステルが挙げられる。これらの中でも、イソシアネート基を含有した変性ポリエステルが特に好ましい。
【0022】
前記活性水素基含有化合物としては、活性水素基を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記活性水素基含有化合物と反応可能な変性ポリエステルがイソシアネート基含有変性ポリエステルである場合には、該イソシアネート基含有変性ポリエステルと伸長反応、架橋反応等の反応により高分子量化可能な点で、アミン類が好適である。
【0023】
前記アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばフェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、などが挙げられる。また、これらのアミノ基をケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)でブロックした、ケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物、などが挙げられる。
【0024】
<着色剤>
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えばカーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記着色剤の前記トナーにおける含有量としては、1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。該樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
<帯電制御剤>
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、感光体に帯電される電荷の正負に応じて、正又は負の荷電制御剤を適宜選択して用いることができる。
−負の帯電制御剤−
前記負の帯電制御剤としては、例えば、電子供与性の官能基を持つ樹脂又は化合物、アゾ染料、有機酸の金属錯体などを用いることができる。
具体的には、ボントロン(品番:S−31、S−32、S−34、S−36、S−37、S−39、S−40、S−44、E−81、E−82、E−84、E−86、E−88、A、1−A、2−A、3−A)(いずれも、オリエント化学工業株式会社製);カヤチャージ(品番:N−1、N−2)、カヤセットブラック(品番:T−2、004)(いずれも、日本化薬株式会社製);アイゼンスピロンブラック(T−37、T−77、T−95、TRH、TNS−2)(いずれも、保土谷化学工業株式会社製);FCA−1001−N、FCA−1001−NB、FCA−1001−NZ(いずれも、藤倉化成株式会社製)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
−正の帯電制御剤−
前記正の帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料等の塩基性化合物;4級アンモニウム塩等のカチオン性化合物;高級脂肪酸の金属塩などを用いることができる。
具体的には、ボントロン(品番:N−01、N−02、N−03、N−04、N−05、N−07、N−09、N−10、N−11、N−13、P−51、P−52、AFP−B)(いずれも、オリエント化学工業株式会社製);TP−302、TP−415、TP−4040(いずれも、保土谷化学工業株式会社製);コピーブルーPR、コピーチャージ(品番:PX−VP−435、NX−VP−434)(いずれも、ヘキスト社製);FCA(品番:201、201−B−1、201−B−2、201−B−3、201−PB、201−PZ、301)(いずれも、藤倉化成株式会社製);PLZ(品番:1001、2001、6001、7001)(いずれも、四国化成工業株式会社製)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記帯電制御剤の添加量は、特に制限はなく、結着樹脂の種類、分散方法を含めたトナー製造方法などに応じて適宜選択することができ、前記結着樹脂100質量部に対し、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記添加量が、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電気的吸引力が増大し、電子写真用現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがあり、0.1質量部未満であると、帯電立ち上り性や帯電量が十分でなく、トナー画像に影響を及ぼしやすいことがある。
【0029】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機微粒子、流動性向上剤、離型剤、磁性体などが挙げられる。
【0030】
−無機微粒子−
前記無機微粒子としては、例えばシリカ、チタニア、アルミナ、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム等を用いることができ、シリコーンオイルやヘキサメチルジシラザンなどで疎水化処理されたシリカ微粒子や、特定の表面処理を施した酸化チタンを用いることがより好ましい。
前記シリカ微粒子としては、例えばアエロジル(品番:130、200V、200CF、300、300CF、380、OX50、TT600、MOX80、MOX170、COK84、RX200、RY200、R972、R974、R976、R805、R811、R812、T805、R202、VT222、RX170、RXC、RA200、RA200H、RA200HS、RM50、RY200、REA200)(いずれも、日本アエロジル株式会社製);HDK(品番:H20、H2000、H3004、H2000/4、H2050EP、H2015EP、H3050EP、KHD50)、HVK2150(いずれも、ワッカーケミカル社製);カボジル(品番:L−90、LM−130、LM−150、M−5、PTG、MS−55、H−5、HS−5、EH−5、LM−150D、M−7D、MS−75D、TS−720、TS−610、TS−530)(いずれも、キャボット社製)などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記無機微粒子の添加量としては、トナー母体粒子100質量部に対し、0.1質量部〜5.0質量部が好ましく、0.8質量部〜3.2質量部がより好ましい。
【0031】
−離型剤−
前記離型剤としては、例えば、カルボニル基含有ワックス、ポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素、等を用いてもよいが、離型剤を用いない方が好ましい。従来の加熱加圧定着方式で用いられるトナーには、定着時のホットオフセット等を防止することを目的に、トナー材料として、離型剤とよばれる、熱ローラ定着を行う際に溶融し、ローラと被定着材上のトナーとの付着を防止する効果を有する物質(低分子量ポリオレフィン・ワックス等)が用いられてきた。しかし、これら離型剤はトナーのバインダー樹脂中への均一分散は困難であり、離型剤がトナー表面などに多く存在する場合には、耐ブロッキング性の低下、感光体、キャリア等へのフィルミング、スペント化、経時での部材汚染等の問題を生ずる原因ともなりうる。
トナーを軟化させる可塑剤を含む定着液を用いて記録媒体にトナーを定着させる方法に用いられるトナーは、非加熱の定着方法に用いられるものであるから、熱ローラ定着を行う際に溶融し、ローラと被定着材上のトナーとの付着を防止する効果を有する物質を有する必要がなく、離型剤を用いなくてもよい。
【0032】
−磁性体−
前記磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、又は他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金、(3)又はこれらの混合物、などが用いられる。
【0033】
前記磁性体としては、例えばFe、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe12O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末が特に好ましい。
【0034】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0035】
前記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
前記磁性体の使用量としては、前記結着樹脂100質量部に対し10質量部〜200質量部が好ましく、20質量部〜150質量部がより好ましい。前記磁性体の個数平均粒径としては、0.1μm〜2μmが好ましく、0.1μm〜0.5μmがより好ましい。
前記磁性体の個数平均粒径は、例えば透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
【0036】
また、前記磁性体の磁気特性としては、10kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20エルステッド〜150エルステッド、飽和磁化50emu/g〜200emu/g、残留磁化2emu/g〜20emu/gが好ましい。
なお、前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0037】
<トナーの製造方法>
前記トナーを構成するトナー母体粒子の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉砕法、特定の重合性単量体を含有する単量体組成物を水相中で直接的に重合する重合法(懸濁重合法、乳化重合法)、水系媒体中に特定の結着樹脂溶解液を乳化乃至分散させる方法、溶剤で溶解し脱溶剤して粉砕する方法、溶融スプレー法などが挙げられる。これらの中でも、ポリアルキレングリコールが比較的親水性が大きな材料であるため、水系媒体を用いないという点で粉砕法が特に好ましい。
【0038】
−粉砕法−
前記粉砕法は、例えば、トナー材料を溶融し、混練した後、粉砕し、分級等することにより、前記トナーの母体粒子を得る方法である。
前記粉砕法の場合、前記トナーの平均円形度を高くする目的で、得られたトナーの母体粒子に対し、機械的衝撃力を与えて形状を制御してもよい。この場合、前記機械的衝撃力は、例えば、ハイブリタイザー、メカノフュージョンなどの装置を用いて前記トナーの母体粒子に付与することができる。
前記トナー材料を混合し、該混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。該溶融混練機としては、例えば、一軸の連続混練機、二軸の連続混練機、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。例えば、株式会社神戸製鋼所製KTK型二軸押出機、東芝機械株式会社製TEM型押出機、有限会社ケイシーケイ製二軸押出機、株式会社池貝鉄工所製PCM型二軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。この溶融混練は、バインダー樹脂の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行うことが好ましい。具体的には、溶融混練温度は、バインダー樹脂の軟化点を参考にして行われ、該軟化点より高温過ぎると切断が激しく、低温すぎると分散が進まないことがある。
【0039】
前記粉砕では、前記混練で得られた混練物を粉砕する。この粉砕においては、まず、混練物を粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。この際ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターとの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
前記分級は、前記粉砕で得られた粉砕物を分級して所定粒径の粒子に調整する。前記分級は、例えば、サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができる。
前記粉砕及び分級が終了した後に、粉砕物を遠心力などで気流中に分級し、所定の粒径のトナーを製造する。
【0040】
−懸濁重合法−
前記懸濁重合法は、油溶性重合開始剤、重合性単量体中に着色剤、離型剤などを分散し、界面活性剤、その他固体分散剤などが含まれる水系媒体中で、後述する乳化法によって乳化分散する。その後重合反応を行い粒子化した後に、本発明におけるトナー粒子表面に無機微粒子を付着させる湿式処理を行えばよい。その際、余剰にある界面活性剤等を洗浄除去したトナー粒子に処理を施すことが好ましい。
前記重合性単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸又は無水マレイン酸などの酸類、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアミノ基を有するアクリレート、メタクリレートなどを一部用いることによってトナー粒子表面に官能基を導入できる。
また、使用する分散剤として酸基や塩基性基を有するものを選ぶことよって粒子表面に分散剤を吸着残存させ、官能基を導入することができる。
【0041】
−乳化重合法−
前記乳化重合法としては、水溶性重合開始剤、重合性単量体を水中で界面活性剤を用いて乳化し、通常の乳化重合の手法によりラテックスを合成する。別途着色剤、離型剤等を水系媒体中分散した分散体を用意し、混合の後にトナーサイズまで凝集させ、加熱融着させることによりトナーを得る。その後、後述する無機微粒子の湿式処理を行えばよい。ラテックスとして懸濁重合法に使用される単量体と同様なものを用いればトナー粒子表面に官能基を導入できる。
【0042】
−水系媒体中に特定の結着樹脂溶解液を乳化乃至分散させる方法−
前記水系媒体中に特定の結着樹脂溶解液を乳化乃至分散させる方法としては、少なくとも結着樹脂を有するトナー材料の溶解液乃至分散液を水系媒体中に乳化乃至分散させ、乳化液乃至分散液を調製した後、トナーを造粒(水系造粒)する方式である。この方式としては、例えば以下の工程〔1〕〜〔4〕からなる。
【0043】
<<工程〔1〕:トナー材料の溶解液乃至分散液の調製>>
前記トナー材料の溶解液乃至分散液は、着色剤、結着樹脂等のトナー材料を有機溶剤に溶解乃至分散させることにより調製される。なお、前記有機溶剤は、トナーの造粒時乃至造粒後に除去される。
【0044】
<<工程〔2〕:水系媒体の調製>>
前記水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば水、該水と混和可能なアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類等の溶剤、又はこれらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、水が特に好ましい。
前記水系媒体の調製は、例えば、樹脂微粒子のような分散安定化剤を前記水系媒体に分散させることにより行うことができる。樹脂微粒子の水系媒体中への添加量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5質量%〜10質量%が好ましい。
前記樹脂微粒子としては、水系媒体中で水性分散液を形成し得る樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも微細な球状の樹脂微粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されているのが好ましい。
また、前記水系媒体においては、必要に応じて、後述の乳化乃至分散時における、前記溶解液乃至分散液の油滴を安定化させ、所望の形状を得つつ粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が特に好ましい。
【0045】
<<工程〔3〕:乳化乃至分散>>
前記トナー材料を含む溶解液乃至分散液を前記水系媒体中で乳化乃至分散させる際、トナー材料を含む溶解液乃至分散液を前記水系媒体中で攪拌しながら分散させるのが好ましい。分散の方法としては、特に限定されるものではないが、ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー(在原製作所製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)、コロイドミル(神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機株式会社製)、キャピトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工株式会社製)等の連続式乳化機、マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機(冷化工業株式会社製)等の膜乳化機、バイブロミキサー(冷化工業株式会社製)等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機、などが挙げられる。これらの中でも、粒径の均一化の観点から、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサーが特に好ましい。
なお、前記溶解液乃至分散液に含まれる結着樹脂として活性水素基含有化合物と反応可能な変性ポリエステル(プレポリマー)を含む場合においては、乳化乃至分散時に反応が進行する。反応条件としては特に制限はなく、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と前記活性水素基含有化合物との組合せに応じて適宜選択することができるが、反応時間としては、10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。
【0046】
<<工程〔4〕:溶剤の除去>>
次に、前記乳化乃至分散により得られた乳化スラリーから有機溶剤を除去する。有機溶剤の除去は、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶剤を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶剤を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法等が挙げられる。
【0047】
<無機微粒子の添加混合>
また、トナーの流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、以上のようにして製造されたトナー母体粒子に、更に疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。
前記無機微粒子の混合は、一般の粉体の混合機が用いられるがジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。なお、添加剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中又は漸次添加剤を加えていけばよい。この場合、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよい。まず、はじめに強い負荷を、次に、比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。使用できる混合設備としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。次いで、250メッシュ以上の篩を通過させ、粗大粒子、凝集粒子を除去し、トナーが得られる。
【0048】
−トナーの平均粒径及び平均円形度−
前記トナーは、その形状、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下のような、平均円形度、体積平均粒径、体積平均粒径と個数平均粒径との比(体積平均粒径/個数平均粒径)などを有していることが好ましい。
【0049】
前記トナーの平均円形度は、前記トナーの形状と投影面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値であり、例えば、0.9〜0.98が好ましく、0.95〜0.975がより好ましい。なお、前記平均円形度が0.94未満の粒子が15%以下であるものが好ましい。
前記平均円形度が、0.9未満であると、満足できる転写性やチリのない高画質画像が得られないことがあり、0.98を超えると、ブレードクリーニングなどを採用している画像形成システムでは、感光体上及び転写ベルトなどのクリーニング不良が発生し、画像上の汚れ、例えば、写真画像等の画像面積率の高い画像形成の場合において、給紙不良等で未転写の画像を形成したトナーが感光体上に転写残トナーとなって蓄積した画像の地汚れが発生してしまうことがあり、あるいは、感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまうことがある。
前記平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(「FPIA−2100」、シスメックス株式会社製)を用いて計測し、解析ソフト(FPIA−2100 Data Processing Program for FPIA version00−10)を用いて解析を行った。
具体的には、ガラス製100mLビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)を0.1mL〜0.5mL添加し、各トナー0.1g〜0.5gを添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mLを添加する。得られた分散液を超音波分散器(本多電子株式会社製)で3分間分散処理する。前記分散液を、前記FPIA−2100を用いて、濃度5,000個/μL〜15,000個/μLが得られるまでトナーの形状及び分布を測定する。本測定法は平均円形度の測定再現性の点から前記分散液濃度が5,000個/μL〜15,000個/μLにすることが重要である。
前記分散液濃度を得るために、前記分散液の条件、即ち添加する界面活性剤量、トナー量を変更する必要がある。
前記界面活性剤量は前述したトナー粒径の測定と同様に、トナーの疎水性により必要量が異なり、多く添加すると、泡によるノイズが発生し、少ないと、トナーを十分に濡らすことができないため、分散が不十分となる。またトナー添加量は、粒径により異なり、小粒径の場合は少なく、また大粒径の場合は多くする必要があり、トナーの体積平均粒径が3μm〜10μmの場合、トナー量を0.1g〜0.5g添加することにより、分散液濃度を5,000個/μL〜15,000個/μLに合わせることが可能となる。
【0050】
前記トナーの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm〜10μmが好ましく、3μm〜8μmがより好ましい。前記体積平均粒径が、3μm未満であると、電子写真用現像剤では現像装置における長期の撹拌において電子写真用キャリアの表面にトナーが融着し、電子写真用キャリアの帯電能力を低下させることがあり、10μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、電子写真用現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
前記トナーにおける体積平均粒径と、個数平均粒径との比(体積平均粒径/個数平均粒径)としては、1.00〜1.25が好ましく、1.10〜1.25がより好ましい。
前記体積平均粒径、及び前記体積平均粒子径と個数平均粒子径との比(体積平均粒径/個数平均粒径)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer 3 Version3.51)にて解析を行うことができる。
具体的には、ガラス製100mLビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)を0.5mL添加し、各トナー0.5gを添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mLを添加する。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理する。前記分散液を、前記マルチサイザーIIIを用い、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行う。測定は、装置が示す濃度が8%±2%となるように、前記トナーサンプル分散液を滴下する。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8%±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0051】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明の前記トナーと、キャリアとを含んでなる。
前記キャリアは、芯材と、該芯材表面に、結着樹脂と微粒子を少なくとも含む被覆層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
前記芯材としては、特に制限はなく、電子写真用二成分キャリアとして公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェライト、マグネタイト、鉄、ニッケル、などが挙げられる。また、近年著しく進む環境面への配慮をし、フェライトであれば、従来の銅−亜鉛系フェライトではなく、例えば、Mn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Mn−Mg−Srフェライト、銅−亜鉛フェライト、リチウム系フェライト等を用いることが好適である。また、芯材抵抗を制御する目的及び製造安定性を高める目的などから、その他の芯材の組成成分として、例えばLi、Na、K、Ca、Ba、Y、Ti、Zr、V、Ag、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Sb、Bi等の組成成分元素1種以上配合させてもよい。これらの配合量としては、総金属元素量の5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であることがより好ましい。
前記芯材は、静電潜像担持体へのキャリア付着(飛散)防止の点から、体積平均粒径が20μmm以上の大きさのものが好ましく、キャリアスジ等の発生防止等画質低下防止の点から100μm以下のものが好ましく、特に、近年の高画質化に対しては、体積平均粒径が20μm〜50μmがより好ましい。
ここで、前記芯材の体積平均粒径は、例えば、「マイクロトラック粒度分析計SRA」、日機装株式会社製を使用し、0.7μm〜125μmのレンジ設定で測定することができる。
【0052】
前記被覆層は、少なくとも微粒子と、結着樹脂とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)又はその変性品、スチレン、アクリル樹脂、アクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルアルコール、塩化ビニル、ビニルカルバゾール、ビニルエーテル等を含む架橋性共重合物;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変性品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等による変性品);ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;ユリア樹脂;メラミン樹脂;ベンゾグアナミン樹脂;エポキシ樹脂;アイオノマー樹脂;ポリイミド樹脂、又はこれらの誘導体などが挙げられる。また、これらはモノマー類、マクロモノマー類、反応基を有するポリマーとして芯材表面に付着した後、加熱、又は架橋剤、重合開始剤等によってラジカル重合及び縮重合反応を引き起こし、被覆層として所望の特性を有する結着樹脂を形成する、結着樹脂前駆体であってもよい。
これらの中でも、結着樹脂として少なくともシリコーン樹脂が好適であり、キャリア表面の表面エネルギー自体を低くすることができ、トナーがキャリアと長時間にわたって混合攪拌される際の、トナー成分のキャリア表面への融着の発生を抑制することができるため、キャリア特性をより長期に亘って維持することができる。
【0053】
前記シリコーン部位の構成単位としては、メチルトリシロキサン単位、ジメチルジシロキサン単位、及びトリメチルシロキサン単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。該シリコーン部位は、他の被覆層の樹脂と化学的に結合していてもよく、ブレンド状態であってもよく、又は多層状になっていてもよい。
また、前記結着樹脂として、シリコーン樹脂以外の樹脂を1種類以上含有してもよい。なかでもアクリル樹脂は、芯材及び被覆層に含有される微粒子との密着性が強く脆性が低いので、被覆層の剥離に対して非常に優れた性質を持つので好ましい。
前記微粒子は、被覆層の厚みに対して、適切な含有量、粒子径を選択することにより、被覆層の強度を著しく向上させることができる。
【0054】
前記微粒子としては、特に制限はなく、従来公知の材料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えばアルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化スズ、酸化インジウム、又はこれらを表面処理した微粒子などが挙げられる。これらの中でも、トナーを負極性に帯電させる点、被覆層の抵抗値を所望の範囲で制御しやすい点から、酸化チタンの微粒子、アルミナの微粒子、表面処理したアルミナ微粒子が特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記キャリアの被覆層においては、前記微粒子の平均粒子径(D)と、被覆層の平均厚み(h)が1<[D/h]<10、が好ましい。これは、1<[D/h]<10であることで、被覆層に比べて微粒子の方が凸となるので、現像剤を摩擦帯電させるための攪拌により、トナーとの摩擦あるいはキャリア同士の摩擦で、結着樹脂への強い衝撃を伴う接触を緩和することができる。これにより、キャリアへのトナーのスペントを防止することが可能となるとともに、帯電発生箇所である被覆層の膜削れも抑制することが可能となる。前記[D/h]が1以下の場合、微粒子は結着樹脂中に埋もれてしまうため、効果が著しく低下し好ましくない。一方、前記[D/h]が10以上の場合、微粒子と結着樹脂との接触面積が少ないため充分な拘束力が得られず、該微粒子が容易に脱離してしまうため好ましくない。
【0055】
前記キャリアの被覆層中の微粒子の総含有量が、被覆層組成全体の40質量%〜95質量%の範囲であることで、その効果は顕著である。前記総含有量が、40質量%未満であると、キャリア粒子表面での結着樹脂の占める割合に比べ、該粒子の占める割合が少ないため、結着樹脂への強い衝撃を伴う接触を緩和する効果が小さいので、十分な耐久性が得られないことがある。一方、前記総含有量が、95質量%を超えると、キャリア表面での結着樹脂の占める割合に比べ、該粒子の占める割合が過多となるため、帯電発生箇所である結着樹脂の占める割合が不十分となり、十分な帯電能力を発揮できない。それに加え、結着樹脂量に比べ微粒子量が多過ぎるので、結着樹脂による微粒子の保持能力が不十分となり、微粒子が脱離し易くなるので、十分な耐久性が得られず好ましくない。
【0056】
前記被覆層の平均厚み(h)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、1.0μm以下が好ましく、0.02μm〜0.8μmがより好ましい。また、前記微粒子の平均粒子径(D)は、被覆層の平均厚み(h)に応じて適宜選択されるが、0.1μm〜1.5μmが好ましい。ここで、前記被覆層の平均厚み(h)、及び前記微粒子の平均粒子径(D)は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、キャリア断面を観察して測定することができる。
更に、本発明においては、前記キャリアがトナーに対して、長期に渡って安定して帯電を付与するために、被覆層中にアミノシランカップリング剤を含有させることが可能である。前記被覆層における含有量は、0.001質量%〜30質量%が好ましく、0.001質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、0.001質量%未満であると、帯電性が環境の影響を受け易く、また製品収率が低下しやすくなることがあり、30質量%を超えると、被覆層が脆くなりやすく、被覆層の耐摩耗性が低下することがある。
【0057】
前記被覆層の形成方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法が使用でき、例えば芯材表面に前記被覆層液を噴霧法又は浸漬法等の手段で塗布する方法などが挙げられる。
前記被覆層の重合反応を促進させる等を目的に、被覆層が形成されたキャリアを加熱処理してもよい。前記加熱は、被覆層形成後、引き続き、被覆層形成装置内で行ってもよく、或いは、被覆層形成後、通常の電気炉、焼成キルン等の別の加熱手段によって行ってもよい。また、加熱温度としては、使用する被覆層用樹脂によって異なるため、一概に決められるものではないが、120℃〜350℃が好ましく、被覆層用樹脂の分解温度以下の温度が好ましく、220℃程度までの上限温度がより好ましく、加熱時間としては、5分間〜120分間が好ましい。
【0058】
本発明のトナーは、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤を少なくとも含む定着液を用いて記録媒体に定着され、各種用途に用いることができるが、以下に説明する本発明の定着方法及び定着装置に好適に用いられる。
【0059】
<定着液>
前記定着液は、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤と、希釈剤とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。前記定着液を泡状定着液として用いる場合には、前記定着液を泡状にして使用する。前記泡状定着液は、希釈剤と、定着液を泡状とする起泡剤と、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。本発明の定着方法においては、この泡状定着液を用いることが好ましい。
【0060】
<<可塑剤>>
前記可塑剤としては、液体可塑剤、固体可塑剤などが挙げられる。
【0061】
−固体可塑剤−
前記固体可塑剤は、常温で固体であり、かつ、後述の希釈剤に可溶であって、この希釈剤に溶解している状態でトナーを軟化させ得る限り、特に制限はない。ここで、「常温」とは、熱したり冷やしたりせずに達成される温度のことをいい、例えば、JIS Z8703にて定義されている、5℃〜35℃が好ましい。この常温の範囲内であると、固体可塑剤は固体状態となる。即ち、泡状態の定着液においては水を含むために固体可塑剤は溶融している状態にあるが、未定着のトナーに付与され、該トナーに浸透し、更にトナーに浸透した定着液の水分が気化などにより量が低下した場合には、前記固体可塑剤は固体の状態に変化する。本発明では、このように、固体可塑剤が固体の状態に変化する点に注目し、この特性を利用することで定着液付与後のトナー固さを高め、タックに関する課題を解決している。また、常温における適当な条件下で固体可塑剤がトナーに対する可塑能力を発揮するとともに、可塑能力を失い固体の状態となると、それ自体が硬化し、タックの防止に寄与することとなる点で、好ましい。
【0062】
前記固体可塑剤としては、例えば、被定着物であるトナーと一定の相溶性を有するなどの親和性を有する官能基を有することが好ましい。ここでいう親和性を有する官能基とは、好ましくは、トナーを構成する分子に含まれる官能基と、固体可塑剤に含まれる官能基とが同一である場合に加え、これらの官能基間で一定の相互作用をし得る官能基を有することを意味する。固体可塑剤に含まれる官能基がトナーを構成する分子と一定の相互作用をし得る官能基を有すると、これらの官能基の相互作用によりトナーを構成する分子間に固体可塑剤が進入するきっかけとなり、結果として、固体可塑剤とトナーとの間でいわゆるポリマーブレンドの状態を形成し、固体可塑剤がトナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる際に効果的であるためである。具体的な例を挙げると、固体可塑剤がポリエチレングリコール系化合物であって、該ポリエチレングリコールにエチレンオキサイド基が含まれる。そして、対応するトナーには、樹脂分子中にエチレンオキサイド基を含む組合せがそれに相当する。このような場合、固体可塑剤とトナーの両者にエチレンオキサイド基が含まれ、これにより親和性を高めることで、両者の相溶性を高める効果が奏するものである。一方、この考え方は、固体可塑剤とトナーの両者に親和性を有する官能基を有することで成り立つため、前記エチレンオキサイド基に限定されることはなく、他の例としては、プロピレンオキサイド基を利用してもよく、更には、公知のトナーに含まれる官能基を固体可塑剤内に含ませる場合も有効に作用する。
【0063】
前記固体可塑剤としては、上記の要件のほか、一定の条件下で可塑能力を発揮するものが挙げられ、例えば、下記のものが挙げられる。
【0064】
(1)後述の希釈剤に溶解することで可塑能力が発揮されるもの:
エチレンオキサイド基を有する部剤:ポリエチレングリコールのうち、ピーク分子量が1,000〜2,000のもの
(2)希釈剤に溶解されても可塑能力は発揮されないが後述の液体可塑剤が少量存在すると可塑能力が発揮されるもの
エチレンオキサイド基を有する部剤:ポリエチレングリコールのうち、ピーク分子量が2,000〜10,000のもの
(3)希釈剤に溶解されても可塑能力は発揮されないが若干の加温(例えば、50℃〜100℃程度)により可塑能力が発揮されるもの
エチレンオキサイド基を有する部剤:ポリエチレングリコールのうち、ピーク分子量が2,000〜10,000
ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル類:ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテルなど
【0065】
前記(1)で例示したポリエチレングリコールのピーク分子量が、1,000未満であると、周囲環境によって定着画像が溶融する場合があり、2,000を超えると、前記常温状態で固体状態ではなくなるため、後述の液体可塑剤を共有しない定着液の系内においては十分な可塑能力が発揮できない場合がある。このような技術的な意義のもと、前記ピーク分子量は、1,000〜2,000が好ましい。
【0066】
前記(2)で例示したポリエチレングリコールのピーク分子量が、10,000を超えると、常温状態で明らかに固体状態ではなくなるため、被定着物であるトナー間に粒界が生じてしまう場合がある。このような観点から、液体可塑剤を共有しない定着液の系内においては、ピーク分子量が10,000以上である場合は使用が困難であることを明らかにすると共に、定着液に水を含む態様にて使用される場合には、ピーク分子量を1,000〜10,000が使用可能な分子量である。
【0067】
前記(3)に例示の固体可塑剤の加温の温度としては、可塑能力が発揮できる範囲であれば、特に制限はないが、50℃〜100℃が好ましい。上記加温の温度が、50℃未満であると、定着が不十分である場合があり、100℃を超えると、エネルギー消費の点で、不経済である。
【0068】
前記固体可塑剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着液の質量に対して、5質量%〜30質量%であることが好ましい。前記含有量が、5質量%未満であると、定着が困難となるためであり、30質量%を超えると、定着液及び泡状定着液としての粘度が高くなり、加えて泡立ちの悪さや、泡としての安定性に欠け、品質上問題が生じる。
【0069】
−液体可塑剤−
前記定着液は、可塑剤として液体可塑剤を含有してもよい。前記液体可塑剤は、後述の希釈剤に可溶であって、一定の条件下で可塑能力を発揮するものであれば、特に制限はなく、例えば、単独で可塑能力を発揮してトナーの少なくとも一部を溶解乃至膨潤させることでトナーを軟化させるものであってもよいが、上記の固体可塑剤と組み合わせることで可塑能力を発揮するものであってもよい。液体可塑剤の例としては、一定の条件下で溶解性乃至膨潤性に優れている点で、エステル化合物が挙げられる。このエステル化合物のなかでも、樹脂の軟化能力が優れている点、又は後述する希釈剤による起泡性の阻害の程度が低い点で、脂肪族エステル又は炭酸エステルが、より好ましい。
【0070】
前記液体可塑剤は、人体に対する安全性の観点から、その急性経口毒性LD50が3g/kgよりも大きいことが好ましく、5g/kg以上がより好ましい。液体可塑剤として、前記の脂肪族エステルは、化粧品原料として多用されているように、人体に対する安全性が高いものであることから、特に好ましい。
【0071】
また、記録媒体に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、液体可塑剤は、トナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は、揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。この点で、液体可塑剤は、揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。前記の脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し刺激臭を持たない点で、より好ましい。
【0072】
なお、オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数〔10×log(物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率)〕を臭気の指標としてもよい。また、液体可塑剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は、10以下が好ましい。この場合、通常のオフィス環境では、不快臭を感じなくなる。更に、液体可塑剤のみならず、定着液に含まれる他の液剤も、液体可塑剤と同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
【0073】
−脂肪族エステル−
前記の脂肪族エステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、飽和脂肪族エステル、脂肪族モノカルボン酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル及び脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルであってもよい。
【0074】
−−飽和脂肪族エステル−−
前記の脂肪族エステルが飽和脂肪族エステルである場合には、液体可塑剤の保存安定性(酸化、加水分解等に対する耐性)を向上させることができる。また、前記の飽和脂肪族エステルは、人体に対する安全性が高く、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内等の短時間で溶解乃至膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解乃至膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
【0075】
本発明による定着液において、好ましくは、前記の飽和脂肪族エステルの一般式は、RCOORで表される化合物であってもよく、ここでRは、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、Rは、炭素数が1以上6以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である。R及びRの炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。即ち、前記の飽和脂肪族エステルが、一般式RCOORで表される化合物であり、Rが、炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、Rが、炭素数が1以上6以下の直鎖型又は分岐型のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性乃至膨潤性を向上させることができる。また、前記一般式RCOORで表される化合物の臭気指数は、不快臭及び刺激臭を有さない点で、10以下であることが好ましい。
【0076】
−−脂肪族モノカルボン酸エステル−−
前記の脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えばラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。なお、これらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。このことから、脂肪族モノカルボン酸エステルを用いて水性溶媒からなる定着液とする場合、後述の溶解助剤としてグリコール類を定着液に含有させ、溶解又はマイクロエマルジョンの形態としてもよい。
【0077】
−−脂肪族ジカルボン酸エステル−−
前記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸エステルであってもよい。前記の脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルである場合には、より短い時間でトナーを溶解乃至膨潤させることができる。例えば、60ppm程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナーに定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するまでの時間は、1秒以内であることが好ましい。前記の脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルである場合には、記録媒体における未定着のトナー等に定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するのに要する時間を、0.1秒以内にすることが可能となる。更に、より少量の液体可塑剤を添加することによって、トナーを溶解乃至膨潤させることができるため、定着液に含まれる液体可塑剤の含有量を低減することができる。
【0078】
本発明による定着液において、好ましくは、前記の脂肪族ジカルボン酸エステルの一般式は、R(COORで表される化合物であって、Rは炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基であってもよい。R及びRの炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
【0079】
前記の脂肪族ジカルボン酸エステルが、一般式:R(COORで表される化合物であって、Rは炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基である場合には、トナーに対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、前記一般式:R(COORで表される化合物の臭気指数は、不快臭及び刺激臭を有さない点で、10以下が好ましい。
【0080】
前記の脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えばコハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。なお、これらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。このことから、脂肪族ジカルボン酸エステルを用いて水性溶媒からなる定着液とする場合、後述の溶解助剤としてグリコール類を定着液に含有させ、溶解又はマイクロエマルジョンの形態としてもよい。
【0081】
−−脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキル−−
本発明による定着液において、前記脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルであることが好ましい。前記脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルである場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0082】
本発明による定着液に含まれる液体可塑剤において、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式:R(COOR−O−Rで表される化合物であって、Rは炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が1以上4以下のアルキル基であってもよい。R、R及びRの炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
【0083】
脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式:R(COOR−O−Rで表される化合物であって、Rは炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が1以上4以下のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性乃至膨潤性を向上させることができる。また、前記一般式:R(COOR−O−Rで表される化合物の臭気指数は、不快臭及び刺激臭を有さない点で、10以下が好ましい。
【0084】
脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えばコハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジメトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチルなどが挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒で用いる場合、必要に応じてグリコール類を溶解助剤として定着液に含有させ、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
更に、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの類似構造として、下記一般式(5)で表される化合物は、エーテル基の分子内での割合が高くなるため、希釈剤である水に対する溶解性が非常に高くなり、高濃度の液体可塑剤を含有した定着液とすることができる。
8(COO−(R9−O)n−R102 一般式(5)
ただし、前記一般式(5)中、nは1以上3以下であり、R8は炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R9は炭素数が1以上3以下のアルキレン基であり、R10は炭素数が1以上4以下のアルキル基である。
前記一般式(5)で表される化合物としては、例えばコハク酸ジエトキシエトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエトキシエチル、コハク酸ジメトキシエトキシエチル、コハク酸ジメトキシメトキシプロピル等が挙げられる。
【0085】
−炭酸エステル−
液体可塑剤の一例である炭酸エステルとしては、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)などの環状エステル類、グリセロール1,2−カルボナート、4−メトキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン等が挙げられる。
【0086】
また、前記以外のエステル化合物としては、例えばクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル;エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジアセタート等のグリコールをエステル化した化合物;モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン等のグリセリンをエステル化した化合物等が挙げられる。
【0087】
前記液体可塑剤の含有量は、定着液の質量に対して、0.5質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜40質量%がより好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、トナーを溶解乃至膨潤させる効果が不十分になることがあり、50質量%を超えると、長時間に亘りトナーに含まれる樹脂の流動性を低下させることができず、定着トナー層が粘着性を有する可能性がある。
【0088】
<起泡剤>
本発明による定着液に含まれる起泡剤としては、定着液の泡状化するものであれば、特に制限はなく、優れた起泡性と泡沫安定性を実現することができる。起泡剤としては、飽和若しくは不飽和の脂肪酸塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩若しくはアルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、又はモノアルキルリン酸塩等のリン酸塩等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0089】
−脂肪酸塩−
前記起泡剤のなかでも、脂肪酸塩は、最も泡沫安定性に優れ、定着液の起泡剤として最も適する。
【0090】
脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム塩、脂肪酸カリウム塩又は脂肪酸アミン塩であることが好ましく、脂肪酸アミン塩であることがより好ましい。これらの脂肪酸塩の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、水を加熱し、脂肪酸を添加し、その後トリエタノールアミンを添加して、一定時間撹拌しながら加熱してケン化反応させることで製造してもよい。このとき、脂肪酸とトリエタノールアミンとのモル比を、1:0.5〜1:0.9の範囲と脂肪酸比率を高くすることで、ケン化後、未反応の脂肪酸が残留し、定着液中に脂肪酸と脂肪酸アミン塩とを混合させることができる。同じことは、ナトリウム塩やカリウム塩でも可能である。
【0091】
起泡剤として用い得る不飽和脂肪酸塩としては、特に制限はないが、炭素数18で2重結合数が1〜3の不飽和脂肪酸塩が好ましい。具体的には、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩が挙げられる。2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を一種単独又は二種以上を混合して起泡剤として用いてもよい。また、上記の飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩とを混合して起泡剤として用いてもよい。
【0092】
液体可塑剤は、消泡作用が強く、定着液中で液体可塑剤の濃度上昇と共に、定着液の起泡性及び泡沫安定性が悪くなり、なかなか起泡しなくなり、泡が直ぐに破泡するため、泡密度の低い泡状定着液を得ることができなくなることがある。
【0093】
そこで、定着液中の液体可塑剤濃度を高めたときの起泡性が劣化してしまうことを解消するため、アニオン系界面活性剤の種類や濃度を因子として多種の試作を行ったところ、起泡剤として炭素数12〜18の脂肪酸塩を用い、更に炭素数12〜18の脂肪酸を定着液中に含有することにより、液体可塑剤の濃度が高くなっても、定着液の起泡性が劣化しないことを見出した。これにより、安定した泡状定着液を提供できる。
【0094】
ここで、定着液に含まれる起泡剤において、脂肪酸塩の炭素数としては、単に水を起泡する場合と比較して起泡性に優れている点で、12〜18が好ましい。具体的には、ラウリン酸塩(炭素数12)、ミリスチン酸塩(炭素数14)、ペンタデシル酸(炭素数15)、パルミチン酸塩(炭素数16)、マルガリン酸(炭素数17)、ステアリン酸塩(炭素数18)が挙げられる。
【0095】
起泡剤として用いられる脂肪酸塩と共に用いられる脂肪酸と、液体可塑剤との作用について説明する。液体可塑剤としてエステル化合物を用いた場合、エステル化合物はエステル基を化学構造中に有しており、脂肪酸はカルボニル基を化学構造中に有している。この点から、液体可塑剤のエステル基と脂肪酸のカルボニル基とが定着液の系内で、電気的な作用を示し、またそれが分子間の結合作用を生じさせ、定着液の特性として起泡性及び泡沫安定性を向上させると考えられる。
【0096】
起泡剤として用い得る炭素数12〜18の脂肪酸塩において、炭素数が少ないほうが起泡性に優れているが泡沫安定性が悪く、炭素数が多いほうが起泡性にあまりよくないが泡沫安定性に極めて優れている。そこで、この脂肪酸塩としては、単独の脂肪酸塩を用いてもよいが、炭素数12〜18の脂肪酸塩であって異なる炭素数を有する複数の脂肪酸塩を混合する方がより好ましい。混合比率としては、ミリスチン酸塩(炭素数14)を最も多く含み、ラウリン酸塩(炭素数12)、ステアリン酸塩の割合を低くすることが好ましい。より具体的な脂肪酸塩の比率としては、ラウリン酸塩:ミリスチン酸塩:パルミチン酸塩:ステアリン酸塩の質量比で、0:6:3:1、0:4:3:1、1:5:3:1、1:4:4:1等が適する。
【0097】
前記起泡剤の含有量は、定着液の質量に対して、0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、起泡性が不十分になることがあり、20質量%を超えると、定着液の粘度が高くなり、起泡性が低下する可能性がある。
【0098】
前記定着液中に起泡剤である脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有することで、液体可塑剤の濃度が高くなっても起泡性及び泡沫安定性を維持することができる。液体可塑剤の濃度が、10質量%未満であると、脂肪酸を含有しなくても起泡性に問題はない。しかし、液体可塑剤の濃度が10質量%以上、特に液体可塑剤の濃度が30質量%以上になると、脂肪酸塩だけでは、ほとんど起泡しなくなり起泡性が悪くなる場合がある。起泡性が悪くなった場合であっても、脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有させると、起泡性を維持できる。
【0099】
ただし、脂肪酸の含有量が多くなりすぎると、起泡剤である脂肪酸塩の比率が下がり、起泡性が再び悪くなる場合がある。このような場合、起泡性が優れている点で、脂肪酸塩のモル数は、脂肪酸のモル数以上のモル数としてもよく、脂肪酸と脂肪酸塩の比率を、5:5〜1:9の範囲としてもよい。
【0100】
なお、同じ炭素数の脂肪酸と脂肪酸塩との組合せだけでなく、例えば、脂肪酸塩がミリスチン酸アミンであり脂肪酸がステアリン酸である組合せや、脂肪酸塩がパルミチン酸カリウムであり脂肪酸がステアリン酸である組み合わせのように、炭素数が12〜18の範囲で脂肪酸塩と脂肪酸との炭素数が異なる組合せであってもよい。炭素数12〜18の範囲の脂肪酸を定着液に含有することで、高濃度の液体可塑剤を含有しても、起泡性が悪くならず、泡沫安定性に優れ、密度の極めて低い泡化を可能とする。
【0101】
また、起泡性が悪化するのを防止し得る点で、他のアニオン系界面活性剤(例えばアルキルエーテル硫酸塩(AES))を起泡剤とし、炭素数12〜18の脂肪酸を更に含有してもよい。
【0102】
<希釈剤>
本発明による定着液に含まれる希釈剤としては、水を含む限り特に制限はなく、例えば、水、水にアルコール類等を添加した水性溶媒、等が好ましい。水としては、例えばイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
【0103】
希釈剤として水性溶媒を用いる場合には、界面活性剤を添加してもよく、なかでも、定着液の表面張力を20mN/m〜30mN/mとすることが好ましい。前記アルコール類としては、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする点で、例えばセタノール等の単価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
【0104】
前記希釈剤は、浸透性改善や紙等媒体のカール防止と目的として、油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成であることも好ましい。この油性成分としては、公知の種々の材料を用いることができる。油性成分を含有する希釈剤の場合、分散剤を用いてエマルジョンを形成してもよく、このエマルジョンの形成に用いる分散剤としては、公知の種々の材料を用いることができるが、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレート等のソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖エステル等が好ましい。
【0105】
分散剤を用いて定着液をエマルジョンの形態に分散させる方法として、特に制限はなく、公知の種々の方法を用いればよい。例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段などが挙げられる。これらの中でも、定着液中の可塑剤に強いせん断応力を加える方法であることが好ましい。
【0106】
<記録媒体>
本発明において、前記記録媒体としては、トナーを定着させ得るものであれば、特に制限はない。なかでも、前記記録媒体としては、定着液に対して浸透性を有するものであることが好ましく、媒体基板が液浸透性を持たない場合は、基板上に液浸透層を有する媒体が好ましい。前記記録媒体の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、シート状の他、平面及び曲面を有する立体物でも構わない。例えば、紙等の媒体に透明トナーを均一に定着させ紙面を保護したもの(いわゆる、ニスコート)であってもよい。記録媒体の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、布等を構成する一般的な繊維、液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルム、金属、樹脂、セラミックスが挙げられる。
【0107】
<その他の成分>
<<溶解助剤>>
本発明による定着液は、定着液中の液体可塑剤を溶解する目的で、溶解助剤を含有してもよい。溶解助剤としては、液体可塑剤を溶解させ得るものであれば、特に制限はなく、多価のアルコール類が挙げられる。この多価のアルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが挙げられる。これらの中でも、液体可塑剤が高濃度でも溶解可能でありかつ起泡剤の起泡性を劣化させない点で、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールであることが好ましい。前記多価のアルコール類の含有量は、定着液の質量に対して、1質量%〜30質量%が好ましい。前記含有量が、30質量%を超えると、起泡性がむしろ劣化するため適さず、1質量%未満であると、定着液中の液体可塑剤濃度が高くなると希釈溶液である水に液体可塑剤が溶解しにくくなる場合がある。
【0108】
<<増泡剤>>
本発明による定着液は、泡状化されて、後述の泡状定着液として、トナーの定着に用いられるところ、塗布接触ニップ部にてトナー層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで、本発明による定着液は、このような現象を抑え泡沫安定性を向上させる目的で、増泡剤を更に有してもよい。増泡剤としては、特に制限はないが、脂肪酸アルカノールアミドであることが好ましく、泡沫安定性の点で、脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型であることがより好ましい。前記増泡剤の含有量としては、前記定着液の質量に対して、0.01質量%〜3質量%が好ましい。
【0109】
(定着方法)
本発明の定着方法は、泡状定着液生成工程と、膜厚調整工程と、泡状定着液付与工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明で用いられる定着装置は、泡状定着液生成手段と、泡状定着液付与手段と、膜厚調整手段とを有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
【0110】
本発明の定着方法は、本発明で用いられる定着装置により好適に実施することができ、泡状定着液生成工程は、泡状定着液生成手段により行うことができ、膜厚調整工程は、膜厚調整手段により行うことができ、泡状定着液付与工程は、泡状定着液付与手段により行うことができ、前記のその他の工程は、前記のその他の手段により行うことができる。
【0111】
<泡状定着液生成工程及び泡状定着液生成手段>
泡状定着液生成工程は、定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する工程であり、泡状定着液生成手段により実施される。
【0112】
図1に示すように、泡状定着液生成手段によって定着液を泡で構成された泡状定着液114とすることで、定着液のかさ密度を低くできると共に塗布ローラ111上の定着液層を厚くすることができ、更には定着液の表面張力による影響が抑えられるため、塗布ローラ111への樹脂微粒子のオフセットを防止しながら記録媒体112上のトナー層に均一に泡状定着液114を塗付することができる。
【0113】
図2は塗布時の泡状定着液の層構成例を示す概略図である。同図に示す液体121は可塑剤を含有し、液体中に気泡122を含有した泡状の構成である。このように、気泡122を大量に含有することで、定着液120のかさ密度は極めて低くすることができる。この構成とすることで、定着液塗布時は、体積が多い状態で塗布しても、かさ密度が低く、塗布質量は小さいため、その後気泡122が破泡してしまえば、実質的な塗布量は極めて少なくすることができる。なお、本発明における泡状とは、液体中に気泡が分散し、液体が圧縮性を帯びた状態を示す。
【0114】
泡状定着液生成工程及び泡状定着液生成手段としては、上記の本発明による定着液を泡状化して泡状定着液を生成し得るものであれば、特に制限はない。その一態様について、図3を参照して、説明する。
【0115】
図3は、本発明による定着装置における泡状定着液生成手段の構成を示す概略図である。図3に示す泡状定着液生成手段130は、上記の本発明による定着液等の液状定着液132を貯留する定着液容器131と、液状定着液132を液搬送する液搬送パイプ134と、液搬送するための駆動を得る搬送ポンプ133と、気体と液体とを混合する気体・液体混合部135と、液状定着液132を泡状化して所望の泡状定着液を得る泡生成部138とを有する。
【0116】
定着液容器131に貯留された液状定着液132は、搬送ポンプ133の駆動力によって液搬送パイプ134を液搬送され、気体・液体混合部135へと送られる。搬送ポンプとしては、液状定着液を液搬送し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばギヤポンプ、ベローズポンプなどが挙げられるが、チューブポンプが好ましい。ギヤポンプ等の振動機構や回転機構があると、ポンプ内で定着液が起泡し、定着液に圧縮性が出て、搬送能力が低下する恐れがある。また、上記の機構部品等が定着液を汚染したり、逆に機構部品を劣化させる恐れがある。一方、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であるため、定着液と接する部材はチューブだけであり、定着液に対し耐液性を有する部材を用いることで、液の汚染やポンプ系部品の劣化がない。また、チューブを変形させるだけなので、液が起泡せず、搬送能力の低下を防止できる。
【0117】
気体・液体混合部135には、空気口136が設けられ、液の流れとともに、空気口136に負圧が発生し、空気口136から気体が気体・液体混合部135に導入され、液体と気体が混合される。更に、微小孔シート137を通過することで、泡径の揃った大きな泡を生成させることができる。孔径は、30μm〜100μmが好ましい。図3の微小孔シート137に限らず、連泡構造の多孔質部材であればよく、孔径30μm〜100μmを有する焼結セラミックス板や不織布や発泡樹脂シートであってもよい。また、別の大きな泡の生成方法としては、上記の搬送ポンプより供給された液状定着液と空気口からの空気を羽根状攪拌子で攪拌しながら、液に気泡を巻き込みながら大きな泡を生成させる構成や、上記の搬送ポンプより供給された液状定着液に空気供給ポンプ等でバブリングを行い大きな泡を生成する構成も好ましい。
【0118】
次に、空気と混合された液状定着液132は、所望の泡状定着液を得る泡生成部138に送液される。泡生成部138において、空気と混合された液状定着液132には、せん断力が加えられ、大きな泡を分割して2つ以上に分泡化される。泡生成部138の構成としては、このように行われ得るものであれば、特に制限はないが、閉じた二重円筒で、内側円筒が回転可能な構成とし、外部円筒の一部より、大きな泡状定着液を供給し、内部の回転する円筒と外部円筒との隙間(ここが流路となる)を通過しながら、回転円筒によりせん断力を受けるような構成であってもよい。このせん断力により、大きな泡は微小な泡へと変化し、外側円筒に設けられた泡の出口より、所望の微小な泡径を有する泡状定着液を得ることができる。また、内側円筒にらせん状の溝を設けて、円筒内での液搬送能力を高くしてもよい。
【0119】
定着液は、紙等の記録媒体上のトナー層への塗布時に泡状となっていればよく、定着液容器内で泡状である必要はない。定着液容器中では気泡を含有しない液体で、容器から液を供給する時点や、トナー層へ付与するまでの液搬送経路で泡状にする手段を設ける構成が好ましい。これは、定着液容器では液体であり容器から液を取り出した後に泡状とする構成のほうが、容器の小型化ができるという大きな利点を有するためである。
【0120】
定着液は、泡状化され、泡状化された定着液からなる泡状定着液層の厚みは、定着されるトナー層の厚みに応じて、記録媒体面全体に対し後述するように泡状定着液付与手段の面において、調整される。例えばトナーを構成し、記録媒体上にカラー画像や白黒文字が混在する場合、記録媒体面全体を同じ厚みの泡状定着液層で付与すると、カラー写真画像のような厚いトナー層では、定着不良や画像抜けが生じたり、白黒文字部に粘着感が生じて印刷物同士がくっついたりする部分不具合が生じる場合がある。以下に、その不具合の原因について詳細に説明する。
【0121】
一般的に0.5mm〜1mm程度の大きな泡の場合、単なる撹拌等により比較的容易に泡を生成可能であり、大きな泡の生成には数秒以下の時間(0.1秒もかからない)で生成することができる。そこで、この所望の泡径よりも大きな泡であって、目視で観察できる程度の大きさの泡の生成が容易で、かつすばやく得ることができる点に着目し、大きな泡から素早く5μm〜50μm程度の微小な泡を生成する方法を鋭意検討した結果、大きな泡にせん断力を加えることで大きな泡を分泡すると、上記のような液状態から微小な泡を起泡させる方法に比べ、極めて素早く所望の大きさの微小な泡が生成できることを見出した。この点、上記のような泡状定着液生成手段130の構成は、これを実現するために好ましい態様である。
【0122】
このように、液状定着液を大きな泡径を有する液へと変化させる大きな泡生成部と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡を生成する微小な泡生成部とを組み合わせることで、液状定着液を極めて短時間に5μm〜50μmの微小な泡径を有する泡状定着液を生成させることができる。
【0123】
特に、トナーの平均粒径が5μm〜10μm程度の場合、記録媒体112上のトナー層113を乱すことなく泡状定着液114をトナー層113に付与するには、泡状定着液114の泡径範囲が、5μm〜50μmが好ましい。なお、図2に示すように、気泡122で構成された泡状定着液120は、気泡122のそれぞれを区切る液体121から構成される。
【0124】
<膜厚調整工程及び膜厚調整手段>
本発明による定着方法における膜厚調整工程は、泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する工程であり、膜厚調整手段により実施される。
【0125】
膜厚調整手段としては、泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成し得る限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば膜厚調整用ブレード、ブレードと塗布ローラとの組み合わせが挙げられる。なお、膜厚調整工程及び膜厚調整手段の態様については、後述する。
【0126】
<泡状定着液付与工程及び泡状定着液付与手段>
本発明による定着方法における泡状定着液付与工程は、所望の厚みに形成された泡状定着液を媒体上のトナー層に付与する工程であり、泡状定着液付与手段により実施される。
【0127】
図4A及び図4Bは、本発明による定着装置における膜厚調整手段及び泡状定着液付与手段の一例を示す概略構成図である。図4Aに示す本発明の定着装置140は、上述した泡状定着液生成手段130によって生成された所望の微小な泡の泡状定着液を、トナー等を構成するトナー層へ付与するための塗布ローラ141と、塗布ローラ面に所望の微小な泡の泡状定着液の膜厚を、記録媒体上の未定着のトナー層の厚さに応じて調整し、泡状定着液の最適な膜厚の調整を行う膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード142と、塗布ローラ141と対峙する位置に加圧ローラ143とを有する。
【0128】
未定着トナーを表面上に有する記録媒体は、塗布ローラ141と加圧ローラ143とからなるニップ部を通過する。一方、泡状定着液生成手段130で生成された泡状定着液は、膜厚調整用ブレード142によって膜厚調整され、所望の厚みの泡状定着液層として塗布ローラ141に配置される。このように塗布ローラ141上に形成された泡状定着液層は、未定着トナーを有する記録媒体のニップ部の通過に同期して、未定着トナー上に付与される。
【0129】
また、図4Bは、塗布ローラ141及び膜厚調整用ブレード142を拡大した概略図であって、泡状定着液付与手段を構成する塗布ローラ141上には、泡状定着液の層が記録媒体上の未定着のトナー層の厚さに応じて膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード142を通じて形成される。この膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード142によって泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間に対して最適化した定着液層の膜厚となる。所望の微小な泡の泡状定着液は、上記のように、大きな泡を生成する大きな泡生成部と大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部とを含んで構成されている泡状定着液生成手段130で生成され、液供給口より塗布ローラ141と膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード142との間に滴下される。
【0130】
泡状定着液の塗布ローラ上での膜厚調整は、図5A及び図5Bに示すように、塗布ローラ141とギャップを設けた膜厚調整用ブレード142を用い、図5Aに示すように膜厚を薄くするときはギャップを狭くし、図5Bに示すように膜厚を厚くするときはギャップを広くするように行ってもよい。ギャップの調整は、膜厚調整用ブレード142の端部に、駆動可能な回転軸を用い、トナー層の厚さや環境温度等、更には泡状定着液の気泡の大きさ、泡粘度及び塗布加圧力並びに未定着トナーの層厚に応じた泡状定着液の未定着トナー層での浸透時間を調整するための最適な膜厚を調整してもよい。
【0131】
泡状定着液付与手段を構成する塗布ローラの形状、構造、大きさ及び材質としては、泡状定着液を付与し得る限り、特に制限はないが、曲面部を少なくともその表面の一部に有するものであることが好ましい。
【0132】
膜厚調整用ブレードとしては、図5A及び図5Bの膜厚調整用ブレードのほかに、ワイヤーバーであってもよい。ワイヤーバーによって、塗布ローラ上の泡状定着液の厚みを調整し、泡状定着液は、上記のごとく、大きな泡を生成する大きな泡生成部とその大きな泡をせん断力で分泡する微小な泡生成部とを有する泡状定着液生成手段によって生成され、液供給口より、膜厚調整ワイヤーバーと塗布ローラとの間に滴下する。ワイヤーバーを膜厚調整手段として用いることで、ブレードに比べ、塗布ローラ面の軸方向の泡状定着液膜均一性が向上する。
【0133】
泡状定着液のかさ密度としては、0.01g/cm〜0.1g/cmが好ましく、定着液付与時に媒体面に残液感を生じないようにするためには、0.01g/cm〜0.02g/cmがより好ましい。なぜならば、図4A及び図4Bの塗布ローラ141のように、接触付与手段面の定着液の泡膜は、記録媒体上の微粒子層の厚み以上であることが必須条件で(微粒子層の隙間を泡状定着液で埋めるため)、おおよそ、泡膜厚みは、50μm〜80μmが好ましい。一方、記録媒体面への定着液付着における残液感(ぬれたような感触)を生じさせないためには、定着液付着量として、記録媒体の単位面積当たり、0.1mg/cm以下が好ましい。このことから、前記泡のかさ密度としては、0.0125g/cm〜0.02g/cm3が好ましい。
【0134】
図6は、本発明の一実施の形態に係る定着装置の構成を示す概略構成図である。図6に示す実施の形態の定着装置140において、加圧ローラ143は、弾性層として弾性多孔質体(以下、スポンジ素材とも称する)を用いて構成してもよい。泡状定着液がトナー層を浸透して紙等の媒体まで到達した後に塗布ローラとトナー層とが剥離するようにニップ時間のタイミングを取る必要がある。この点、スポンジ素材からなる加圧ローラ43は、ニップ時間として50ミリ秒〜300ミリ秒の範囲を確保し、かつ弱い加圧力で大きく変形可能であることから、好ましい。
【0135】
なお、ニップ時間は、ニップ時間=ニップ幅/紙の搬送速度により算出される。紙の搬送速度は、紙搬送駆動機構の設計データにより求めることができる。ニップ幅は、塗布ローラ全面に乾燥しない着色塗料を薄くつけて、記録媒体を塗布ローラ141及び対峙する加圧ローラ143に挟んで加圧(各ローラは回転させない状態で)し、記録媒体に着色塗料を付着させ、着色部(通常長方形の形に着色)における紙搬送方向の長さをニップ幅として測定することで求めることができる。
【0136】
記録媒体の搬送速度に応じてニップ幅を調整することで、ニップ時間を泡状定着液のトナー層浸透時間と同じかそれ以上にする必要がある。図6に示す例では、加圧ローラ143を弾性層としてスポンジ素材とすることで、記録媒体の搬送速度に応じて、塗布ローラ141と加圧ローラ143との軸間距離を変更しニップ幅を変えることが容易となる。スポンジの代わりに弾性ゴムを加圧ローラ143の素材として用いてもよいが、スポンジは弾性ゴムよりも弱い力で変形させることが可能であり、塗布ローラ141の加圧力を過剰に高くすることなく長いニップ幅を確保することができる。
【0137】
なお、定着液中には可塑剤が含有されており、スポンジ素材で形成された加圧ローラに定着液が万が一付着した場合、スポンジ素材が軟化等の不具合が発生する恐れがある。そのため、スポンジ素材の樹脂材は、液体可塑剤に対し軟化や膨潤を示さない素材が好ましい。また、スポンジ素材を用いた加圧ローラは、可撓性フィルムで覆った構成であってもよい。スポンジ素材が液体可塑剤で劣化する素材であっても、液体可塑剤により軟化や膨潤を示さない可撓性フィルムで覆うことでスポンジローラの劣化を防止することができる。
前記スポンジ素材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の樹脂の多孔質体が挙げられる。また、スポンジを覆う可撓性フィルムとしては、可撓性を有する限り、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが挙げられる。
【0138】
図6において、塗布ローラ141とスポンジ素材を用いた加圧ローラ143とが常時接触している構成の場合、記録媒体が搬送されていない時に塗布ローラ141上の泡状定着液が加圧ローラ143に付着し汚す恐れがある。これを防止するため、塗布ローラ141からみて記録媒体の搬送方向の上流に紙先端検知手段(不図示)を設け、先端検知信号に応じて、記録媒体の先端から後方にのみ泡状定着液が塗布されるようなタイミングで塗布ローラ141に泡状定着液を形成することが好ましい。
【0139】
図6に記載の定着装置140は、待機時は塗布ローラ141とスポンジ素材を用いた加圧ローラ143とはそれぞれ離れており、図示していない駆動機構により、塗布時のみ、記録媒体の先端検知手段に応じて塗布ローラ141とスポンジ素材を用いた加圧ローラ143とを接触させる構成であることも好ましい。また、図6に記載の定着装置140は、記録媒体の後端検知も行い、記録媒体の後端検知信号に応じて塗布ローラ141とスポンジ素材を用いた加圧ローラ143とを離すように構成することも好ましい。
【0140】
図7は、本発明の一実施の形態に係る定着装置の別の構成を示す概略構成図である。図7に示す実施の形態の定着装置140は、図6の加圧ローラ143の代わりに加圧ベルト144を用いたものである。大きな泡を生成する大きな泡生成部と大きな泡をせん断力で分泡して微小な泡を生成する微小な泡生成部とを含んで構成されている泡状定着液生成手段130で生成され液供給口より所望の泡径を有する泡状定着液を、膜厚調整手段である膜厚調整用ブレード142の供給口へチューブ等を用いて供給する。そして、膜厚調整手段の膜厚調整用ブレード142と塗布ローラ141とのギャップを調整して塗布ローラ141上の泡状定着液の膜厚を調整し、泡状定着液の最適膜厚の調整を行う。加圧ベルト144の材料としては、例えばシームレスニッケルベルト、シームレスPETファイル等の基体にPFAのような離型性フッ素樹脂をコートした部材を用いてもよい。
【0141】
このように、ベルトを用いる構成では、ニップ幅を容易に広くすることが可能となる。したがって、ベルトを用いる構成としては、図7に限らず、塗布ローラをベルトとし、加圧手段をベルトではなくローラとする構成も好ましい。また、塗布側又は加圧側の少なくとも一方をベルトとする構成とすることで容易にニップ幅を広くすることが可能となり、紙にしわが発生するような無理な力をかけることがない。また、ニップ時間と紙の搬送速度とが同様であると、紙の搬送速度を速くすることが可能となり、高速定着が可能となる。
【0142】
また、トナーの定着装置は、本発明における定着液をトナーに供給した後、少なくともその一部が軟化乃至膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を有してもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、軟化乃至膨潤した上記のトナーを加圧することによって、軟化乃至膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体内へ軟化乃至膨潤したこのトナーを押し込むことによって、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0143】
<その他の工程及びその他の手段>
<<加温工程及び加温手段>>
本発明による定着方法及び定着装置は、泡状定着液が付与されたトナー層を加温する加温工程及び加温手段を更に有してもよい。加温工程及び加温手段における加温の温度としては、十分な定着特性の得られる範囲であれば、特に制限はないが、例えば、50℃〜100℃が好ましい。前記加温の温度が、50℃未満であると、定着が不十分である場合があり、100℃を超えると、エネルギー消費の点で、不経済である。
【0144】
加温手段の形態としては、上記の態様を実施できるものであれば、ローラなど、適宜選択すればよい。加温手段をローラで構成する場合、例えば図8に示すように、加圧ローラ146と加圧ローラ148とで構成し、被定着物と接する側のローラに赤外線ヒータ147などの加温媒体を設けたものであってもよい。
【0145】
本発明の画像形成方法は、前記本発明の定着方法を用いており、本発明の画像形成装置は本発明の定着方法を具現化した定着装置を用いている。
本発明の画像形成方法は、潜像担持体表面に均一に帯電を施す帯電工程と、帯電した潜像担持体の表面に画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光工程と、現像剤担持体上に現像剤層規制部材により所定層厚の現像剤層を形成し、現像剤層を介して潜像担持体表面に形成された静電潜像を現像し、可視像化する現像工程と、潜像担持体表面の可視像を被転写体に転写する転写工程と、被転写体上の可視像を定着させる定着工程とを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
前記定着工程は、本発明の定着方法により行われる。
【0146】
本発明の画像形成装置は、潜像を担持する潜像担持体と、潜像担持体表面に均一に帯電を施す帯電手段と、帯電した該潜像担持体の表面に画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光手段と、潜像担持体表面に形成された静電潜像にトナーを供給し可視像化する現像手段と、潜像担持体表面の可視像を被転写体に転写する転写手段と、被転写体上の可視像を定着させる定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
【0147】
前記静電潜像の形成は、例えば前記潜像担持体の表面を帯電手段により一様に帯電させた後、露光手段により像様に露光することにより行うことができる。
前記現像による可視像の形成は、現像剤担持体としての現像ローラ上にトナー層を形成し、現像ローラ上のトナー層を潜像担持体である感光体ドラムと接触させるように搬送することにより、感光体ドラム上の静電潜像を現像することでなされる。トナーは、撹拌手段により攪拌され、機械的に現像剤供給部材へ供給される。現像剤供給部材から供給され、現像剤担持体に堆積したトナーは現像剤担持体の表面に当接するよう設けられた現像剤層規制部材を通過することで均一な薄層に形成されるとともに、更に帯電される。潜像担持体上に形成された静電潜像は、現像領域において、前記現像手段により帯電したトナーを付着させることで現像され、トナー像となる。
【0148】
前記可視像の転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。
転写された可視像の定着は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いてなされ、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0149】
次に、本発明の実施形態に係る画像形成装置(プリンタ)の基本的な構成について図9及び10を参照して更に説明する。
図9は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、電子写真方式の画像形成装置に適用した一実施形態について説明する。画像形成装置は、イエロー(以下、「Y」と記す。)、シアン(以下、「C」と記す。)、マゼンタ(以下、「M」と記す。)、ブラック(以下、「K」と記す。)の4色のトナーから、カラー画像を形成するものである。
【0150】
まず、複数の潜像担持体を備え、該複数の潜像担持体を表面移動部材の移動方向に並列させる画像形成装置(「タンデム型画像形成装置」)の基本的な構成について説明する。
この画像形成装置は、潜像担持体として4つの感光体1Y、1C、1M、1Kを備えている。なお、ここではドラム状の感光体を例に挙げているが、ベルト状の感光体を採用することもできる。各感光体1Y、1C、1M、1Kは、それぞれ表面移動部材である中間転写ベルト10に接触しながら、図9中矢印の方向に回転駆動する。各感光体1Y、1C、1M、1Kは、それぞれ中間転写ベルト10に接触しながら、図9中矢印の方向に回転駆動する。各感光体1Y、1C、1M、1Kは、比較的薄い円筒状の導電性基体上に感光層を形成し、更にその感光層の上に保護層を形成したものであり、また、感光層と保護層との間に中間層を設けてもよい。
【0151】
図10は、感光体を配設する作像形成部2の構成を示す概略図である。なお、画像形成部2Y、2C、2M、2Kにおける各感光体1Y、1C、1M、1K周りの構成はすべて同じであるため、1つの作像形成部2についてのみ図示し、色分け用の符号Y、C、M、Kについては省略してある。感光体1の周りには、その表面移動方向に沿って、帯電手段としての帯電装置3、現像手段としての現像装置5、感光体1上のトナー像を記録媒体又は中間転写体10に転写する転写手段としての転写装置6、感光体1上の未転写トナーを除去するクリーニング装置7の順に配置されている。帯電装置3と現像装置5との間には、帯電した感光体1の表面の画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光手段としての露光装置4から発せられる光が感光体1まで通過できるようにスペースが確保されている。
【0152】
帯電装置3は、感光体1の表面を負極性に帯電する。本実施形態における帯電装置3は、いわゆる接触・近接帯電方式で帯電処理を行う帯電部材としての帯電ローラを備えている。即ち、この帯電装置3は、帯電ローラを感光体1の表面に接触又は近接させ、その帯電ローラに負極性バイアスを印加することで、感光体1の表面を帯電する。感光体1の表面電位が−500Vとなるような直流の帯電バイアスを帯電ローラに印加している。
【0153】
なお、帯電バイアスとして、直流バイアスに交流バイアスを重畳させたものを利用することもできる。また、帯電装置3には、帯電ローラの表面をクリーニングするクリーニングブラシが設けてもよい。なお、帯電装置3として、帯電ローラの周面上の軸方向両端部分に薄いフィルムを巻き付け、これを感光体1の表面に当接するように設置してもよい。この構成においては、帯電ローラの表面と感光体1の表面との間は、フィルムの厚さ分だけ離間した極めて近接した状態となる。したがって、帯電ローラに印加される帯電バイアスによって、帯電ローラの表面と感光体1の表面との間に放電が発生し、その放電によって感光体1の表面が帯電される。
【0154】
このようにして帯電した感光体1の表面には、露光装置4によって露光されて各色に対応した静電潜像が形成される。この露光装置4は、各色に対応した画像情報に基づき、感光体1に対して各色に対応した静電潜像を書き込む。なお、本実施形態の露光装置4は、レーザ方式であるが、LEDアレイと結像手段とからなる他の方式を採用することもできる。
【0155】
トナーボトル31Y、31C、31M、31Kから現像装置5内に補給されたトナーは、供給ローラ5bによって搬送され、現像ローラ5a上に担持されることになる。この現像ローラ5aは、感光体1と対向する現像領域に搬送される。ここで、現像ローラ5aは、感光体1と対向する領域(以下、「現像領域」と記す。)において感光体1の表面よりも速い線速で同方向に表面移動する。そして、現像ローラ5a上のトナーが、感光体1の表面を摺擦しながら、トナーを感光体1の表面に供給する。このとき、現像ローラ5aには、図示しない電源から−300Vの現像バイアスが印加され、これにより現像領域には現像電界が形成される。そして、感光体1上の静電潜像と現像ローラ5aとの間では、現像ローラ5a上のトナーに静電潜像側に向かう静電力が働くことになる。これにより、現像ローラ5a上のトナーは、感光体1上の静電潜像に付着することになる。この付着によって感光体1上の静電潜像は、それぞれ対応する色のトナー像に現像される。
【0156】
転写装置6における中間転写ベルト10は、3つの支持ローラ11、12、13に張架されており、図9中矢印の方向に無端移動する構成となっている。この中間転写ベルト10上には、各感光体1Y、1C、1M、1K上のトナー像が静電転写方式により互いに重なり合うように転写される。静電転写方式には、転写チャージャを用いた構成もあるが、ここでは転写チリの発生が少ない転写ローラ14を用いた構成を採用している。具体的には、各感光体1Y、1C、1M、1Kと接触する中間転写ベルト10の部分の裏面に、それぞれ転写装置6としての一次転写ローラ14Y、14C、14M、14Kを配置している。ここでは、各一次転写ローラ14Y、14C、14M、14Kにより押圧された中間転写ベルト10の部分と各感光体1Y、1C、1M、1Kとによって、一次転写ニップ部が形成される。そして、各感光体1Y、1C、1M、1K上のトナー像を中間転写ベルト10上に転写する際には、各一次転写ローラ14に正極性のバイアスが印加される。これにより、各一次転写ニップ部には転写電界が形成され、各感光体1Y、1C、1M、1K上のトナー像は、中間転写ベルト10上に静電的に付着し、転写される。
【0157】
中間転写ベルト10の周りには、その表面に残留したトナーを除去するためのベルトクリーニング装置115が設けられている。このベルトクリーニング装置115は、中間転写ベルト10の表面に付着した不要なトナーをファーブラシ及びクリーニングブレードで回収する構成となっている。なお、回収した不要トナーは、ベルトクリーニング装置115内から図示しない搬送手段により図示しない廃トナータンクまで搬送される。
【0158】
また、支持ローラ13に張架された中間転写ベルト10の部分には、二次転写ローラ16が接触して配置されている。この中間転写ベルト10と二次転写ローラ16との間には二次転写ニップ部が形成され、この部分に、所定のタイミングで記録部材としての転写紙が送り込まれるようになっている。この転写紙は、露光装置4の図中下側にある給紙カセット20内に収容されており、給紙ローラ21、レジストローラ対22等によって、二次転写ニップ部まで搬送される。そして、中間転写ベルト10上に重ね合わされたトナー像は、二次転写ニップ部において、転写紙上に一括して転写される。この二次転写時には、二次転写ローラ16に正極性のバイアスが印加され、これにより形成される転写電界によって中間転写ベルト10上のトナー像が転写紙上に転写される。
【0159】
二次転写ニップ部の転写紙搬送方向下流側には、図示していない露光装置からの画像情報に基づいてフォーム状の定着液の膜厚を制御する定着装置によって定着される。即ち、記録部材に転写された未定着のトナー像には、図示していない露光装置からの画像情報、例えばカラー画像又は黒ベタ画像に基づいてフォーム状の定着液層の膜厚が制御されたトナーの定着装置から供給されるフォーム状の定着液が付与され、フォーム状の定着液に含まれる、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる可塑剤によって、未定着のトナー像を、記録部材に定着させる。これにより、転写紙上に載っていたトナー像が転写紙に定着される。そして、定着後の転写紙は、排紙ローラ24によって、装置上面の排紙トレイ上に排出される。
【0160】
−噴霧方式による定着方法、定着装置−
[定着方法及び定着装置]
図11には、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又はそれらの複合機などの画像形成装置の要部構成を示す。図示のものは、電子写真方式のタンデム型カラー画像形成装置であって、中間転写体を用いずに、像担持体上のトナー像を記録材である用紙に直接画像転写する直接転写方式のものである。
【0161】
図11中符号10は、無端ベルト状の搬送ベルトである。搬送ベルト10は、図示例では駆動ローラ12と従動ローラ13間に掛けまわして図中反時計まわりに回転走行可能に設ける。もちろん、搬送ベルト10を掛けまわすローラは、2つに限らず、別途搬送ベルト10の片寄りを調整するローラや、テンションローラなどを設けて、3つ以上のローラに掛けまわすようにしてもよい。
【0162】
搬送ベルト10のまわりには、駆動ローラ12と従動ローラ13間の水平張り渡し部分上に、搬送ベルト10の走行方向に沿って順に、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4つの作像手段15K、15M、15C、15Yを横に並べて設置し、タンデム作像装置16を構成する。タンデム作像装置16の上には、図示省略するが、更に露光装置などを設けてなる。
【0163】
搬送ベルト10とタンデム作像装置16間には、搬送ベルト10の反時計まわりの走行とともに図11中右から左へと、記録媒体である用紙17を搬送する用紙搬送路を形成する。用紙搬送路に沿って、上流には図示しないレジストローラを配置し、下流には定着装置18を設置する。
【0164】
図12には、図11に示す画像形成装置に備える1つの作像手段15の概略構成を示す。4つの作像手段15K、15M、15C、15Yは、それぞれ図12に示すような同一構成とする。
【0165】
図12中符号20は、ドラム状の像担持体である感光体である。感光体20のまわりには、左上方に配置する帯電装置21から図中矢示する回転方向に順に、現像装置22、転写装置23、クリーニング装置24、除電装置25などを配置する。
【0166】
ここで、帯電装置21は、図示例では帯電チャージャを用いて均一なマイナス帯電を与える非接触帯電方式を採用したが、もちろん帯電ローラを用いる接触帯電方式を採用してもよい。現像装置22は、この例では、プラス帯電キャリア26とマイナス帯電トナー27とからなる二成分現像剤を使用し、それを現像スリーブ28で担持して感光体20にトナー27のみを付着し、感光体20上の静電潜像を可視像化する。
【0167】
また、転写装置23は、図示例では非接触のプラス転写コロナチャージャ方式を採用し、搬送ベルト10を挟んで感光体20に対向するように配置するが、非接触のコロナチャージャ方式の他に導電性ブラシや転写ローラなどを用いることもできる。また、クリーニング装置24には、クリーニング部材として、クリーニングブラシ30と、クリーニングブレード31を設ける。これにより、クリーニングブラシ30やクリーニングブレード31で掻き落としたトナーは、不図示の回収スクリュやトナーリサイクル装置で現像装置22に回収して再利用することができる。また、除電装置25としては、例えば除電ランプを用いる。
【0168】
そして、感光体20の時計まわりの回転とともに、感光体20の表面を帯電装置21で一様に帯電し、不図示の露光装置で書込み光L(図11ではLk、Lm、Lc、Ly)を照射してそれぞれ感光体20上に静電潜像を形成して後、現像装置22で各色トナーを付着してその静電潜像を可視像化し、各感光体20上に各色の単色トナー像を形成する。
【0169】
記録材(用紙)17は、用紙搬送路を通して搬送し、感光体20上に形成した各色トナー像にタイミングを合わせてレジストローラで搬送ベルト10上に送り込む。そして、搬送ベルト10の走行とともに更に記録材(用紙)17を搬送してその搬送する用紙17にそれぞれ転写装置23で、各感光体20上の単色トナー像を順次転写し、その用紙17上に各色の単色トナー像を重ね合わせて合成カラー画像を形成する。トナー像転写後の感光体20は、表面をクリーニング装置24で清掃して後、除電装置25で除電して初期化し、再び帯電装置21からはじまる再度の画像形成に備える。
【0170】
合成カラー画像を形成する用紙17上のマイナス帯電トナー27は、この時点では電気的に用紙17に付いているだけであり、強い衝撃を受けたり擦ったりすると、用紙17上から離れてしまうことから、合成カラー画像を形成した用紙17は、搬送ベルト10で搬送して定着装置18へと導き、その定着装置18で転写画像を定着して後、不図示の排紙スタック部へと排出する。
【0171】
定着装置18には、図11に示すように、トナー定着液が定着液滴として噴霧される噴霧手段33と、その噴霧手段33で噴霧された定着液滴に未定着トナーと同極性のマイナスの電荷を付与させる液滴帯電手段34と、その液滴帯電手段34で電荷を付与させた定着液滴の雰囲気中を通して、未定着トナーが載っている用紙17を搬送する媒体搬送手段35と、その媒体搬送手段35で搬送する用紙17を未定着トナー及び定着液滴とは逆極性のプラスに帯電させる記録材帯電手段36とが備えられている。
【0172】
図13には、図11に示す定着装置18を拡大して示す。
図13から判るとおり、噴霧手段33は、筐体37で区画された噴霧室38内に向けて設置されており、不図示の定着液貯留部に貯留されるトナー定着液が、最頻値の滴径が15μm以下の定着液滴として噴霧されて、噴霧室38が定着液滴で満たされる。
【0173】
液滴帯電手段34としては、イオナイザなどを用い、噴霧室38内に空気イオンを噴霧して、噴霧手段33で噴霧された定着液滴に混ぜ合わせ、定着液滴を未定着トナーと同極性のマイナスに帯電させる。図示例とは異なり、未定着トナーがプラスに帯電しているときは、定着液滴もプラスに帯電させる。
【0174】
媒体搬送手段35は、複数のローラ40と、それらのローラ40に掛けまわされて静電吸着して用紙17を搬送する搬送ベルト41とで構成されている。そして、転写装置23で転写されて図示するように残留電荷がマイナスの未定着トナー42が乗っている用紙17が、搬送ベルト10により搬送されて定着装置18に送り込まれ、定着装置18の媒体搬送手段35の搬送ベルト41で引き続いて図13中右から左に、液滴帯電手段34で電荷を付与させた定着液滴の雰囲気中を通して搬送される。
【0175】
記録材帯電手段36は、ローラ40に掛けまわされている搬送ベルト41の内側に配置される電極44と、その電極44に接続される電源45とで構成されている。そして、電源45により搬送ベルト41の内側に配置される電極44に電圧が印加されて、搬送ベルト41で搬送される用紙17を未定着トナー42及び定着液滴とは逆極性のプラスに帯電させる。このとき、もちろん搬送ベルト41は、用紙17の帯電を妨げない材料で形成される。これにより、クーロン力で用紙17の裏側から吸引することで、用紙17に付着された定着液滴が更に用紙17の裏側まで浸透するようにし、用紙17の表裏でなお一層液濃度を均等にして用紙17のカールを少なくすることができる。
【0176】
なお、図13中符号46は、定着装置18から出た用紙17に接触して除電する除電部材としての除電ローラであり、もちろんローラに限らずブラシなどでもよい。
【0177】
以上のとおり、図11〜13の図示例によれば、噴霧手段33で噴霧された定着液滴に、液滴帯電手段34で用紙17上の未定着トナー42と同極性の電荷を付与させる一方、電荷を付与させた定着液滴の雰囲気中を通して、媒体搬送手段35で、未定着トナー42が載っている用紙17が搬送され、その搬送される用紙17を記録材帯電手段36で未定着トナー42及び定着液滴とは逆極性に帯電させ、クーロン力で強制的に吸引されて記録材(用紙)17に未定着トナー42及び定着液滴53が吸着され、記録材(用紙)17に定着される。
【0178】
噴霧手段33でトナー定着液が、最頻値の滴径が15μm以下の定着液滴53として噴霧されると、噴霧された定着液滴53がドライミストとして空間に均一に浮遊して、用紙17に無駄なくムラなく付着されるので、定着液滴53を用紙17に無駄なく付着して定着液の有効使用を図るとともに定着ムラを解消することができる。
【0179】
−接触手段方式による定着方法、定着装置−
[定着方法及び定着装置]
図14に示すものは、電子写真方式のタンデム型カラー画像形成装置であって、中間転写体を用いて、像担持体上のトナー像をいったん中間転写体に一次転写した後、その中間転写体上のトナー像を記録材に二次転写する中間接転写方式のものである。
【0180】
図14は、本実施形態に係る画像形成装置の定着手段としての定着装置を含む部分の概略構成図である。本実施形態の画像形成装置は、中間転写ベルト10の表面移動方向において2次転写部の上流側に定着装置90が配置されている。この定着装置90は、中間転写ベルト10の表面と微小間隔を開けて対向するように配置される定着液供給手段としての供給ローラ91を備えている。定着装置90は、供給ローラ91が中間転写ベルト10の表面に対して近接したり離間したりできるように、図示しない駆動機構によって移動可能な構成となっている。また、定着装置90の定着液タンク93の内部には定着液92が収容されており、この定着液92に供給ローラ91が浸った状態で配置されている。供給ローラ91は、トナーに定着液92を付与する際には図中矢印の方向に回転駆動する。これにより、供給ローラ91の表面に定着液92が汲み上げられる。このようにして汲み上げられた定着液92は、メータリングブレード94によって規制され、供給ローラ91の表面に付着する定着液が適量に調整される。そして、供給ローラ91上の定着液は、供給ローラ91の回転に伴って中間転写ベルト10の表面との対向位置まで搬送され、中間転写ベルト10の表面に定着液を供給する。
【0181】
また、中間転写ベルト10上のトナーに定着液を供給する定着液供給手段として供給ローラ91を用いた場合、中間転写ベルト10上に担持されたトナー像を乱してしまうおそれがある。そのため、本実施形態では、導電性材料で構成した基体を絶縁層又は高抵抗層で覆った供給ローラ91を用い、その供給ローラ91に電界形成手段としての電源95を接続している。具体的には、例えば、ステンレス製の芯金に導電性のゴム層を形成し、その表面を絶縁性のPFAチューブで覆ったものを用いることができる。このような構成により、供給ローラ91と中間転写ベルト10との間には、トナーを中間転写ベルト側に押し付ける方向の電界が形成される。このような電界を形成することで、液供給位置における中間転写ベルト10上のトナーの中間転写ベルト10側への拘束力を高めることができる。これにより、中間転写ベルト10上に担持されたトナー像を乱すことなく、そのトナーに対して定着液92を供給することができる。
【0182】
本発明の画像形成方法及び画像形成装置は、本発明の定着方法を用いているので、定着直後の画像強度が高く、ハーフトーン画像においても擦れに対して強い高品質な画像が形成できる。
【実施例】
【0183】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0184】
(製造例1)
−結着樹脂の合成−
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物34,090質量部、フマル酸5,800質量部、及びジブチルチンオキサイド15質量部を仕込み、常圧下、230℃で5時間反応させた。次いで、10〜15mmHgの減圧下で6時間反応させ、「結着樹脂1」を合成した。
得られた「結着樹脂1」のガラス転移温度(Tg)は63℃であり、重量平均分子量(Mw)は12,000であり、酸価は22mgKOH/gであった。
【0185】
次に、得られたポリアルキレングリコール1〜7について、以下のようにして重量平均分子量、及び融点を測定した。結果を表1に示す。
【0186】
<ポリアルキレングリコールの重量平均分子量(Mw)>
ポリアルキレングリコールの重量平均分子量(Mw)は、以下に示す方法で測定した。
・ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定装置:GPC−8220GPC(東ソー株式会社製)
・カラム:TSKgel SuperHZM−H 15cm 3連(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:0.35ml/min
・試料:0.15質量%の試料を0.4ml注入
・試料の前処理:トナーをテトラヒドロフラン(THF;和光純薬株式会社製)に0.15質量%溶解後、0.2μmフィルターで濾過した濾液を試料溶液として用いた。
前記試料溶液を100μL注入して測定した。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した(即ち、ポリスチレン換算分子量で算出した)。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、昭和電工株式会社製Showdex STANDARDのStd.No.S−7300、S−210、S−390、S−875、S−1980、S−10.9、S−629、S−3.0、S−0.580を用いた。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
【0187】
<ポリアルキレングリコールの融点>
示差走査熱量計(「DSC−60」、島津製作所製)を用いて下記方法により測定した。
まず、各材料(試料)約5mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。次いで、20℃から昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱し、示差走査熱量計(「DSC−60」、島津製作所製)によりDSC曲線を計測した。得られたDSC曲線から、「DSC−60」システム中の解析システムを用いて、ベースラインに対する吸熱カーブの頂点から融点(融点ピーク温度)を算出した。
【0188】
【表1】

*ポリアルキレングリコール1(PEG#2000、日油株式会社製)
*ポリアルキレングリコール2(PEG#4000、日油株式会社製)
*ポリアルキレングリコール3(PEG#6000、日油株式会社製)
*ポリアルキレングリコール4(PEG#11000、日油株式会社製)
*ポリアルキレングリコール5(PEG#20000、日油株式会社製)
*ポリアルキレングリコール6(PEG#1540、日油株式会社製)
*ポリアルキレングリコール7(PEG#1000、日油株式会社製)
*表1中、Rxm、Rym、m、及びnは、下記一般式(I)で定義される。
【化3】

ただし、前記一般式(I)中、Rxm及びRymは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基のいずれかを表す。nは、2以上の整数を表す。mは、2以上4以下の整数を表す。
【0189】
(実施例1)
−トナー1の作製−
前記「結着樹脂1」100質量部、表1に記載の「ポリアルキレングリコール1(PEG#2000、日油株式会社製)」5質量部、カーボンブラック(Printex60、デグサ社製)5質量部、及び下記構造式(B)で表される含クロムアゾ染料2質量部を、熱ロールを用いて120℃で混練し、冷却して固化した後、粉砕し、分級して、トナー母体粒子を作製した。
【化4】

【0190】
次に、得られたトナー母体粒子100質量部に対し、シリカ粒子111(R972、日本アエロジル社製)を0.5質量部添加し、混合して、「トナー1」を作製した。
【0191】
(実施例2)
−トナー2の作製−
実施例1において、「ポリアルキレングリコール1」5質量部を、「ポリアルキレングリコール1」15質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、「トナー2」を作製した。
【0192】
(実施例3)
−トナー3の作製−
実施例1において、「ポリアルキレングリコール1」5質量部を、「ポリアルキレングリコール1」2質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、「トナー3」を作製した。
【0193】
(実施例4)
−トナー4の作製−
実施例1において、「ポリアルキレングリコール1」を、表1に記載の「ポリアルキレングリコール2(PEG#4000、日油株式会社製)」に代えた以外は、実施例1と同様にして、「トナー4」を作製した。
【0194】
(実施例5)
−トナー5の作製−
実施例1において、「ポリアルキレングリコール1」を、表1に記載の「ポリアルキレングリコール3(PEG#6000、日油株式会社製)」に代えた以外は、実施例1と同様にして、「トナー5」を作製した。
【0195】
(実施例6)
−トナー6の作製−
実施例1において、「ポリアルキレングリコール1」を、表1に記載の「ポリアルキレングリコール4(PEG#11000、日油株式会社製)」に代えた以外は、実施例1と同様にして、「トナー6」を作製した。
【0196】
(実施例7)
−トナー7の作製−
実施例1において、「ポリアルキレングリコール1」を、表1に記載の「ポリアルキレングリコール5(PEG#20000、日油株式会社製)」に代えた以外は、実施例1と同様にして、「トナー7」を作製した。
【0197】
(実施例8)
−トナー8の作製−
実施例1において、「ポリアルキレングリコール1」を、表1に記載の「ポリアルキレングリコール6(PEG#1540、日油株式会社製)」に変えた以外は、実施例1と同様にして、「トナー8」を作製した。
【0198】
(実施例9)
−トナー9の作製−
実施例1において、「ポリアルキレングリコール1」を、表1に記載の「ポリアルキレングリコール7(PEG#1000、日油株式会社製)」に代えた以外は、実施例1と同様にして、「トナー9」を作製した。
【0199】
(実施例10)
−トナー10の作製−
実施例1において、「ポリアルキレングリコール1」5質量部を、「ポリアルキレングリコール1」0.5質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、「トナー10」を作製した。
【0200】
(実施例11)
−トナー11の作製−
実施例1において、「ポリアルキレングリコール1」5質量部を、「ポリアルキレングリコール1」18質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、「トナー11」を作製した。
【0201】
(実施例12)
−トナー12の作製−
実施例1において、「ポリアルキレングリコール1」5質量部を、「ポリアルキレングリコール1」10質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、「トナー12」を作製した。
【0202】
(比較例1)
−トナー13の作製−
実施例1において、「ポリアルキレングリコール1」を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、「トナー13」を作製した。
【0203】
次に、作製したトナー1〜13について、以下のようにして、体積平均粒径(Dv)及び比(Dv/Dn)、平均円形度を測定した。結果を表2に示す。
【0204】
<体積平均粒径(Dv)及び比(Dv/Dn)>
前記体積平均粒径(Dv)、及び前記体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子径(Dn)との比(Dv/Dn)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer 3 Version3.51)にて解析を行うことで求めた。
具体的には、ガラス製100mLビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)を0.5mL添加し、各トナー0.5gを添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mLを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理した。前記分散液を、前記マルチサイザーIIIを用い、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行った。測定は、装置が示す濃度が8%±2%となるように、前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8%±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0205】
<平均円形度>
前記平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(「FPIA−2100」、シスメックス株式会社製)を用いて計測し、解析ソフト(FPIA−2100 Data Processing Program for FPIA version00−10)を用いて解析を行った。
具体的には、ガラス製100mLビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)を0.1mL〜0.5mL添加し、各トナー0.1g〜0.5gを添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mLを添加した。得られた分散液を超音波分散器(本多電子株式会社製)で3分間分散処理した。前記分散液を、前記FPIA−2100を用いて、濃度5,000個/μL〜15,000個/μLが得られるまでトナーの形状及び分布を測定した。本測定法は、平均円形度の測定再現性の点から前記分散液濃度が5,000個/μL〜15,000個/μLにすることが重要である。
【0206】
(キャリア1の製造例)
ステンレス容器に、アクリル樹脂溶液(日立化成工業株式会社製、ヒタロイド3018固形分50質量%)60質量部、グアナミン溶液(三井サイテック株式会社製、マイコート106、固形分77質量%)20質量部、シリコーン樹脂溶液(東レ・ダウコーニング株式会社製、SR2405、固形分50質量%)120質量部、アミノシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、SH6020、固形分100質量%)1.5質量部、粒子径0.4μm球径アルミナ微粒子50質量部を入れ、固形分濃度が15質量%となるようにトルエンで希釈し、次いでホモミキサーで10分間分散して、[被覆層液1]を調製した。
次に、芯材としてフェライト粉(1kガウスでの飽和磁気モーメント65emu/g)3,000質量部を用い、前記[被覆層液1]を転動流動式コーティング装置を用いて塗布し、乾燥した。得られたキャリアを電気炉中にて、120℃で60分間放置して焼成し、冷却後フェライト粉バルクを目開き90μmの篩を用いて解砕し、[キャリア1]を得た。
得られた[キャリア1]の粒度分布をマイクロトラック粒度分布計(モデルHRA9320−X100)で測定したところ、重量平均粒子径(Dw)が39μm、個数平均粒子径(Dn)が33μm、Dw/Dnが1.17であった。また、微粒子をFIB(集束イオンビーム)で切断し、微粒子断面を作製後、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて、被覆層の厚み(h)と微粒子の粒子径(D)、及びD/hを、50点以上の微粒子断面を観察して求めた平均値として算出したところ、平均厚み(h)が0.43μm、平均粒子径(D)が0.39μm、D/hは0.91であった。
【0207】
(キャリア2の製造例)
ステンレス容器に、アクリル樹脂溶液(日立化成工業株式会社製、ヒタロイド3018固形分50質量%)30質量部、グアナミン溶液(三井サイテック株式会社製、マイコート106、固形分77質量%)10質量部、シリコーン樹脂溶液(東レ・ダウコーニング株式会社製、SR2405、固形分50質量%)60質量部、アミノシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、SH6020、固形分100質量%)1質量部、粒子径0.5μm球径アルミナ微粒子80質量部を入れ、固形分濃度が15質量%となるようにトルエンで希釈し、次いでホモミキサーで10分間分散して、[被覆層液2]を調製した。
次に、芯材としてフェライト粉(1kガウスでの飽和磁気モーメント65emu/g)3,000質量部を用い、前記[被覆層液2]を転動流動式コーティング装置を用いて塗布し、乾燥した。得られたキャリアを電気炉中にて、120℃で60分間放置して焼成し、冷却後フェライト粉バルクを目開き90μmの篩を用いて解砕し、[キャリア2]を得た。
得られた[キャリア2]の粒度分布をマイクロトラック粒度分布計(モデルHRA9320−X100)で測定したところ、重量平均粒子径(Dw)が41μm、個数平均粒子径(Dn)が35μm、Dw/Dnが1.17であった。また、微粒子をFIB(集束イオンビーム)で切断し、微粒子断面を作製後、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて、被覆層の厚み(h)と微粒子の粒子径(D)、及びD/hを、50点以上の微粒子断面を観察して求めた平均値として算出したところ、被覆層の平均厚み(h)が0.22μm、平均粒子径(D)が0.51μm、D/hは2.32であった。
【0208】
<現像剤の作製>
2Lステンレス容器に、表2に示すように、トナー1〜13を7質量部、キャリア1を100質量部加え、容器が転動して攪拌される型式のターブラーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)を用いて48rpmで5分間均一混合し、実施例1〜12及び比較例1の二成分現像剤を作製した。
【0209】
(実施例13)
表2に示すようにトナー4とキャリア2を用いた以外は、前記現像剤の作製と同様にして、実施例13の二成分現像剤を作製した。
【0210】
(実施例14)
表2に示すようにトナー5とキャリア2を用いた以外は、前記現像剤の作製と同様にして、実施例14の二成分現像剤を作製した。
【0211】
【表2】

【0212】
<定着液の製造例>
−可塑剤を含有する液体−
・希釈溶媒としてのイオン交換水・・・53質量%
・液体可塑剤としてのコハク酸ジエトキシエトキシエチル(高級アルコール工業株式会社)・・・10質量%
・液体可塑剤としての炭酸プロピレン・・・20質量%
・増粘剤としてのプロピレングリコール・・・10質量%
・増泡剤としてのヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂製薬株式会社製、マーポンMM)・・・0.5質量%
・起泡剤としてのパルミチン酸アミン・・・2.5質量%
・起泡剤としてのミリスチン酸アミン・・・1.5質量%
・起泡剤としてのステアリン酸アミン・・・0.5質量%
・分散剤:POE(20)ラウリルソルビタン(花王株式会社製、レオドールTW−S120V)・・・1質量%
・分散剤としてのポリエチレングリコールモノステアレート(花王株式会社製、エマノーン3199)・・・1質量%
なお、分散剤は、可塑剤の希釈溶媒への溶解性を助長するために用いた。脂肪酸アミンは、脂肪酸とトリエタノールアミンにより脂肪酸アミンを合成した。
【0213】
上記成分比にて、まず、液温120℃にて可塑剤を除いて混合攪拌し溶液を作製した。次に、可塑剤を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて可塑剤が溶解した定着液(フォーム化する前の原液)を作製した。
【0214】
<塗布装置>
−大きな泡生成部−
図6を基に作製した。
・上記の液状定着液保存容器:ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるボトル
・液搬送ポンプ:チューブポンプ(チューブ内径2mm、チューブ材質:シリコーンゴム)
・搬送流路:内径2mmのシリコーンゴムチューブ
・大きな泡を作るための微小孔シート:#400のステンレススチール製メッシュシート(開口部約40μm)
【0215】
−微小な泡生成部−
図6を基に作製した。
・2重円筒の内側円筒は、回転軸に固定され、図示していない回転駆動モーターにより回転する。2重円筒の材質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂とした。
・外側円筒の内径:10mm、外側円筒の長さ:120mm
・内側円筒の外径:8mm、内側円筒の長さ:100mm
・回転数は、1,000rpm〜2,000rpmの範囲で可変とした。
【0216】
−定着液付与手段−
図6を基に作製した。上記の微小な泡を生成する微小な泡生成部を用い、泡状の定着液を作製し、液膜厚制御用ブレードに供給する構成とした。液膜厚制御用ブレードと塗布ローラとのギャップは25μmと40μmの2通り実施した。
【0217】
・加圧ローラ:アルミニウム合金製ローラ(直径10mm)を芯金とし、直径50mmのポリウレタンフォーム材(商品名「カラーフォームEMO」、イノアック社製)を形成した。
・塗布ローラ:PFA樹脂を焼付け塗装したステンレススチール(SUS)製ローラ(直径30mm)
・膜厚制御用ブレード:アルミニウム合金製支持板に厚み1mmの並板ガラスを接着し、ガラス面を塗布ローラ側に向け、10μm〜100μmの範囲で塗布ローラとガラス面の隙間を制御できるようにした。
・紙搬送速度:150mm/s
【0218】
次に、得られた各トナー及び各現像剤を用いて、以下のようにして耐熱保存性、定着性、及びコピーブロッキング性を評価し、以下の評価基準により総合評価を行った。結果を表3に示す。
【0219】
<耐熱保存性(針入度)>
50mLのガラス容器に、各トナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した後、24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)により、針入度(mm)を測定し、下記基準で耐熱保存性を評価した。なお、針入度が大きいほど、耐熱保存性が優れていることを意味し、針入度が5mm未満であるものは、使用上、問題が発生する可能性が高い。
〔評価基準〕
◎:針入度が25mm以上
○:針入度が15mm以上25mm未満
△:針入度が5mm以上15mm未満
×:針入度が5mm未満
【0220】
<定着性>
定着装置を除去した電子写真方式のプリンタ(株式会社リコー製、IpsioColorCX8800)に、各現像剤を装填して、ハーフトーン(定着後のID=0.25となる設定)の未定着トナー画像が形成されたPPC用紙に、図6に示す定着装置を用いてローラ塗布し、定着液の処方例で得られた定着液を搭載した塗布装置からなる定着装置にてスポンジの加圧ローラと塗布ローラとの軸間距離を15mm(ニップ時間100ms)にて定着を行った。このときの紙搬送速度は150mm/sであった。
定着5秒間後及び1時間後に、画像の表面を直径1cmの綿布で擦り、綿布の汚れを反射濃度計(X−Rite939、X−Rite社製)にて測定し、下記基準で定着性を評価した。
〔評価基準〕
◎:反射濃度が0.20未満
○:反射濃度が0.20以上0.30未満
△:反射濃度が0.30以上0.40未満
×:反射濃度が0.40以上
【0221】
<コピーブロッキング性>
定着装置を除去した電子写真方式のプリンタ(株式会社リコー製、IpsioColorCX8800)に、各現像剤を装填して、ハーフトーン(定着後のID=0.25となる設定)の未定着トナー画像が形成されたPPC用紙に、図6に示す定着装置を用いて液搬送ポンプを駆動し、定着液容器から定着液の処方例で得られた液状定着液をくみ上げ、液流路を通過させながら、大きな泡を生成する大きな泡生成部と泡を微小にする微小な泡生成部に定着液を通過させ、液排出口から1秒間後に泡径5μm〜30μmの微小な泡を有する定着液をローラ塗布し、搭載した塗布装置からなる定着装置にてスポンジの加圧ローラと塗布ローラとの軸間距離を15mm(ニップ時間100ms)にて定着を行った。このときの紙搬送速度は150mm/sである。
次いで、出力したPPC用紙の画像部が接触するように2枚の出力画像を重ね合わせ、上部から1kg重の分銅で加圧して、気温25℃、湿度30%RHの雰囲気下で30分間放置した。放置後の重ね合わせた紙を引き離す際の、定着画像同士の接着性を測定し、以下の基準でコピーブロッキング性を評価した。
〔評価基準〕
◎:用紙同士が問題なく1枚1枚引き離せる状態
○:用紙同士が部分的に接着しているが、力を加えると引き離せる状態
△:用紙同士が部分的に接着している状態
×:用紙同士が完全に接着している状態
【0222】
<キャリアスペント性(キャリア汚染性)>
定着装置を除去した電子写真方式のプリンタ(株式会社リコー製、IpsioColorCX8800)に各現像剤を入れて、20%画像面積の画像チャートをPPC用紙に画像濃度1.4±0.2となるようにトナー濃度を制御しながら、15万枚ランニング出力した後の現像剤を抜き取り、現像剤を目開き32μmのメッシュが張られたゲージ内に適量入れ、エアブローを行い、トナーとキャリアを分離した。得られたキャリア1.0gを50mlガラス瓶に入れ、クロロホルム10mlを加えて、50回手振りして、10分間静置させた。その後、上澄みのクロロホルム溶液をガラスセルに入れ、濁度計を用いてクロロホルム溶液の透過率を測定し、下記基準により評価した。
なお、キャリア汚染性が良好なものから、透過率が95%以上である場合は◎で、90〜94%である場合○で、80〜89%である場合は△で、及び、79%以下である場合は×で表示した。
〔評価基準〕
◎:透過率が95%以上
○:透過率が90%以上94%以下
△:透過率が80%以上89%以下
×:透過率が79%以下
【0223】
<総合評価>
各評価項目の◎を3点、○を2点、△を1点、×を0点とし、下記の基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:各評価項目に×がなく、全評価項目点数の合計が15点
○:各評価項目に×がなく、全評価項目点数の合計が12点以上15点未満
△:各評価項目に×がなく、全評価項目点数の合計が7点以上12点未満
×:各評価項目のいずれかに×の数が1つ以上ある
【0224】
【表3】

表3の結果から、実施例1〜14では、トナー材料に可塑剤と親和性の大きいポリアルキレングリコールを含有することで、定着直後に充分な定着強度を有することができ、ハーフトーン画像においても擦れに対して強い定着強度を有する画像が得られることが分かった。
また、実施例4及び5のように、ポリアルキレングリコールの物性が適切な範囲の場合には、耐熱保存性を確保でき、かつ定着性、及びコピーブロッキング性が良好な画像が得られることが分かった。
また、比較例1のように、ポリアルキレングリコールを含有しないトナーを用いた場合は、定着直後に充分な定着性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0225】
本発明のトナーは、画像形成方法の定着工程における消費エネルギーが極めて小さく、かつ定着直後の画像強度が高く、ハーフトーン画像においても擦れに対して強い高品質な画像を形成できるので、非熱定着方式を採用する電子写真形成技術に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0226】
1 感光体
2 作像形成部
3 帯電装置(帯電ローラ)
4 露光装置
5 現像装置
5a 現像ローラ
5b 現像剤供給ローラ
5c 規制ブレード
6 転写装置
7 クリーニング装置
10 中間転写ベルト
11、12、13 支持ローラ
14 一次転写ローラ
16 二次転写ローラ
T トナー(現像剤)
15K、15M、15C、15Y 作像手段
17 用紙(記録媒体)
18 定着装置
23 転写手段
33 噴霧手段
34 液滴帯電手段
35 媒体搬送手段
36 記録材帯電手段
38 噴霧室
40 ローラ
41 搬送ベルト
42 未定着トナー
44 電極
45 電源
50 印加手段
53 定着液滴
64 中間転写体
67 二次転写手段
69 一次転写手段
101 静電潜像担持体
102 帯電手段
103 露光手段
104 現像手段
105 記録媒体
107 クリーニング手段
108 転写手段
111 塗布ローラ
112 記録媒体
113 トナー層
114 泡状定着液
115 ベルトクリーニング装置
120 泡状定着液
121 液膜境界
122 気泡
130 泡状定着液生成手段
131 定着液容器
132 液状定着液
133 搬送ポンプ
134 液搬送パイプ
135 気体・液体混合部
136 空気口
137 微小孔シート
138 泡生成部
140 定着装置
141 塗布ローラ
142 膜厚調整用ブレード
143 加圧ローラ
144 加圧ベルト
145 加温手段
146 加圧ローラ
147 赤外線ヒータ
148 加圧ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0227】
【特許文献1】特開2006−133306号公報
【特許文献2】特開2009−008967号公報
【特許文献3】特開2008−139504号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈剤と、トナーの少なくとも一部を軟化乃至膨潤させる可塑剤とを含有する定着液を記録媒体上のトナーに付与して該トナーを記録媒体に定着させるのに用いられるトナーであって、
少なくとも結着樹脂と、着色剤と、下記一般式(I)で表されるポリアルキレングリコールとを含有することを特徴とするトナー。
【化1】

ただし、前記一般式(I)中、Rxm及びRymは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基のいずれかを表す。nは、2以上の整数を表す。mは、2以上4以下の整数を表す。
【請求項2】
ポリアルキレングリコールの重量平均分子量が2,000〜18,000である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
ポリアルキレングリコールの融点が50℃以上である請求項1から2のいずれかに記載のトナー。
【請求項4】
ポリアルキレングリコールの含有量が、結着樹脂100質量部に対し1質量部〜15質量部である請求項1から3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコールである請求項1から4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のトナーと、キャリアとを含んでなり、
前記キャリアが少なくとも芯材と、該芯材表面に微粒子を含む被覆層を有し、前記微粒子の平均粒子径(D)と、前記被覆層の平均厚み(h)とが、次式、1<[D/h]<10、を満たし、
前記微粒子の総含有量が被覆層組成全体の40質量%〜95質量%であることを特徴とする現像剤。
【請求項7】
キャリアの被覆層が、少なくともシリコーン樹脂を含有する請求項6に記載の現像剤。
【請求項8】
キャリアの被覆層における微粒子が、アルミナ粒子、及び表面処理したアルミナ粒子の少なくともいずれかである請求項6から7のいずれかに記載の現像剤。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載の現像剤を用いて記録媒体上に形成されたトナー像を定着する定着方法であって、
水を含む希釈剤と、起泡剤と、可塑剤とを含有する定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成工程と、
前記泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整工程と、
前記所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上のトナー層に付与する泡状定着液付与工程と、
を含むことを特徴とする定着方法。
【請求項10】
可塑剤が脂肪族ジカルボン酸ジエトキシエトキシエチルである請求項9に記載の定着方法。
【請求項11】
可塑剤が下記一般式で表される化合物である請求項9に記載の定着方法。
(COO−(R−O)−R10
ただし、前記一般式中、nは1以上3以下であり、Rは炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、Rは炭素数が1以上3以下のアルキレン基であり、R10は炭素数が1以上4以下のアルキル基である。
【請求項12】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と、
を含む画像形成方法であって、
前記定着工程が、請求項9から11のいずれかに記載の定着方法により行われることを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器とを備え、前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、定着液を記録媒体上のトナー層に付与する定着液付与手段とを有する定着手段であって、
前記トナーが請求項1から5のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給するトナーを含む現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、前記現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、トナーを含む現像剤を収納する現像剤収納器とを備え、前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、水を含む希釈剤と、起泡剤と、可塑剤とを含有する定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成手段と、
前記泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整手段と、
前記所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上のトナー層に付与する泡状定着液付与手段とを有し、
前記トナーが請求項1から5のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、現像剤を収納する現像剤収納器とを備え、前記静電潜像を前記現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、定着液を記録媒体上のトナー層に付与する定着液付与手段とを有する定着手段であって、
前記現像剤が請求項6から8のいずれかに記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、
前記現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、現像剤を収納する現像剤収納器とを備え、前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記定着手段が、水を含む希釈剤と、起泡剤と、可塑剤とを含有する定着液を泡状化して、泡状定着液を生成する泡状定着液生成手段と、
前記泡状定着液を泡状定着液付与手段の接触面上に所望の厚みに形成する膜厚調整手段と、
前記所望の厚みに形成された泡状定着液を記録媒体上のトナー層に付与する泡状定着液付与手段とを有し、
前記現像剤が請求項6から8のいずれかに記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−150321(P2011−150321A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283322(P2010−283322)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】