説明

トナー、現像剤、及びトナーの製造方法

【課題】小粒径かつ単一分散性を有するトナーを効率よく生産することができ、離型剤に起因する吐出孔の詰まりが生じることがなく、耐ホットオフセット性に優れ、更に地肌汚れがなく、高精細で高品質な画像を長期にわたって提供することのできるトナー、現像剤、及びトナーの製造方法の提供。
【解決手段】結着樹脂、着色剤、及び離型剤を有機溶剤に溶解乃至分散させ、かつ、前記結着樹脂と前記離型剤とを溶解させたトナー組成液を調製するトナー組成液調製工程と、複数の吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動手段により液柱共鳴による定在波を形成し、前記定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から前記トナー組成液を吐出して液滴を形成する液滴形成工程と、前記液滴から前記有機溶剤を除去し、前記結着樹脂と前記離型剤とが相分離しているトナー粒子を形成するトナー粒子形成工程とを含むトナーの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、静電印刷、プリンタ、ファクシミリ、静電記録等における静電荷像を現像するためのトナー、該トナーを含む現像剤、及び該トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真、静電記録、静電印刷等において使用されるトナーは、その現像工程において、例えば、静電荷像が形成されている静電潜像担持体等の像担持体に一旦付着され、次に転写工程において静電潜像担持体から転写紙等の転写媒体に転写された後、定着工程において紙面に定着される。定着方法としては、加熱したロールやベルト等を用いて接触加熱溶融することで定着する方法が、熱効率がよいため一般的に行われている。
しかし、接触加熱定着方法では熱ロールやベルトにトナーが融着するホットオフセットの発生が起こりやすいという問題があった。
【0003】
このホットオフセットを防止するため、従来から熱ロールやベルトにシリコーンオイル等の離型オイルを塗布することが行われている。しかしながら、熱ロールに離型オイルを塗布する方法は、オイルタンク、オイル塗布装置が必要であり、装置が複雑、大型となる点で問題であった。また、コピー用紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)用フィルム等にオイルが付着することが不可避であり、水性インクでの加筆性やOHPでは付着オイルによる色調の悪化等の問題があった。
【0004】
そこで、加熱用のローラやベルトにオイル塗布しないでトナーの融着を防ぐ方法として、トナー自体にワックス等の離型剤を添加する方法がいくつか提案されている。その中の一例として、特定の示差走査熱量(DSC:Differential scanning calorimetry)の吸熱ピークを有するワックスを含有するトナーが提案されている(特許文献1参照)。また、他の例として、離型剤として、キャンデリラワックス、高級脂肪酸系ワックス、高級アルコール系ワックス、植物系天然ワックス(カルナバワックス、ライスワックス)、モンタン系エステルワックス等を用いることが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
一方、電子写真、静電記録、静電印刷等に用いられる乾式トナーの製造方法としては、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等のトナーバインダーを着色剤等と共に溶融混練し、微粉砕したもの、いわゆる粉砕型トナーが広く用いられている。
しかし、近年高画質な画像を得るためトナーが小粒径化する傾向にあり、前記粉砕法では、8μm以下の小粒径にすると粉砕効率が低下するとともに分級によるロスが大きくなり、生産性が低い上にコストアップとなってしまう点で問題である。
【0006】
また、最近では、懸濁重合法、乳化重合凝集法といったいわゆる重合型トナーやポリマー溶解懸濁法と呼ばれる体積収縮を伴う工法が提案され実用化もされている。これらのトナーは、小粒径のトナーを製造する点では優れているが、水系媒体中で分散剤を使用することを前提としているために、トナーの帯電特性を損なう分散剤がトナー表面に残存して環境安定性が損なわれるなどの不具合が発生することや、これを除去するために非常に大量の洗浄水を必要とすることが知られており、環境負荷の点から問題があった。
【0007】
これに代わるトナーの製造方法として、トナーの原材料成分を有機溶媒に溶解又は分散した液体(以下、「トナー組成液」と称することがある。)を、様々なアトマイザを用いて微粒子化した後に、乾燥させて粉体状のトナーを得る噴射造粒法が知られている(例えば、特許文献3〜5参照)。この方法によれば、水を用いる必要がなく、洗浄や乾燥といった工程を大幅に削減することができるため、重合法の欠点を回避することができる。
しかし、このトナーの製造方法においては、ノズル(「吐出孔」、「貫通孔」とも称する。)からノズル径に対応した液滴を放出しなければならず、この方法ではトナーの粒度分布が広いため微粉や粗粉を除去する分級工程が必要となり生産性が低下してしまう点で問題であった。
【0008】
このような課題に対して、本願出願人が提案した噴射造粒によるトナー製造方法は、多量の洗浄液、溶媒と粒子の分離の繰り返しが不要で、非常に製造効率が高く、かつ省エネルギーで、粒径分布の狭いトナーを製造できる(特許文献6参照)。
しかし、このような微小な吐出孔からトナー組成物を吐出させてトナー粒子を形成する方法の場合、トナー組成物中に粒子として含有する顔料や離型剤に起因する吐出孔の詰まりが生じやすいという問題があった。顔料は、比較的微細化が容易であり、微細化した方が色再現性の面から好都合であるが、離型剤の場合は、微細化が困難であると同時に微細化すると離型性が低下するため吐出孔閉塞の原因となりやすい点で問題であった。
特に、カルナバワックスや、パラフィンワックスは、特に微細化が困難であり、大粒径のワックス粒子によって吐出孔の閉塞が頻繁に生じるという問題があった。
【0009】
また、トナー組成液を貯留する貯留部を加圧して、該貯留部が有する吐出孔より前記トナー組成液を吐出させて液柱を形成し、該液柱に振動手段により微細な振動を与え、該液柱にレイリー分裂を誘起させて液滴を形成する方法も知られている(特許文献7参照)。
しかし、このレイリー分裂法は、吐出孔を形成した貯留部に耐圧性が要求されるため、該貯留部の膜厚を厚くせねばならず、小径の吐出孔を形成するのが困難であり、トナー粒径のばらつきが大きくなるという問題があった。
【0010】
したがって、小粒径かつ単一分散性を有するトナーを効率よく生産することができ、離型剤に起因する吐出孔の詰まりが生じることがなく、耐ホットオフセット性に優れ、更に地肌汚れがなく、高精細で高品質な画像を長期にわたって提供することのできるトナー、現像剤、及びトナーの製造方法の提供が望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、小粒径かつ単一分散性を有するトナーを効率よく生産することができ、離型剤に起因する吐出孔の詰まりが生じることがなく、耐ホットオフセット性に優れ、更に地肌汚れがなく、高精細で高品質な画像を長期にわたって提供することのできるトナー、現像剤、及びトナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、少なくとも結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含有するトナー組成物を有機溶剤に溶解乃至分散させ、かつ、前記結着樹脂と前記離型剤とを相分離しないように溶解させたトナー組成液を調製するトナー組成液調製工程と、複数の吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動手段により振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、前記定在波の腹となる領域に形成された前記複数の吐出孔から前記トナー組成液を該吐出孔の外側に周期的に吐出して液滴を形成する液滴形成工程と、前記液滴形成工程で形成された液滴から前記有機溶剤を除去し、前記結着樹脂と前記離型剤とが相分離しているトナー粒子を形成するトナー粒子形成工程と、を含むトナーの製造方法は、小粒径かつ単一分散性を有するトナーを効率よく生産することができ、離型剤に起因する吐出孔の詰まりが生じることがなく、耐ホットオフセット性に優れ、更に地肌汚れがなく、高精細で高品質な画像を長期にわたって提供することのできることを知見し、本発明の完成に至った。
【0013】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含有するトナー組成物を有機溶剤に溶解乃至分散させ、かつ、前記結着樹脂と前記離型剤とを相分離しないように溶解させたトナー組成液を調製するトナー組成液調製工程と、
複数の吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動手段により振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、前記定在波の腹となる領域に形成された前記複数の吐出孔から前記トナー組成液を該吐出孔の外側に周期的に吐出して液滴を形成する液滴形成工程と、
前記液滴形成工程で形成された液滴から前記有機溶剤を除去し、前記結着樹脂と前記離型剤とが相分離しているトナー粒子を形成するトナー粒子形成工程と、
を含むことを特徴とするトナーの製造方法である。
<2> 定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、複数の吐出孔が形成されている前記<1>に記載のトナーの製造方法である。
<3> 液滴形成工程におけるトナー組成液の温度が、下記式(I)を満たす前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
トナー組成液の温度(℃)<[有機溶剤の沸点(℃)−20(℃)]・・・式(I)
<4> 離型剤が、合成エステルワックス、合成アミドワックス、及びマイクロクリスタリンワックスの少なくともいずれかを含む前記<1>から<3>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<5> 離型剤の添加量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部〜50質量部である前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<6> 結着樹脂が、重量平均分子量5,000〜300,000のポリエステル樹脂及びスチレンアクリル酸共重合体の少なくともいずれかを含む前記<1>から<5>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<7> 液柱共鳴液室に形成された吐出孔の開口径が、3μm〜30μmである前記<1>から<6>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<8> 振動手段が、液柱共鳴液室の複数の吐出孔が形成された面に対して平行な振動面を有し、前記振動面が前記液柱共鳴液室の複数の吐出孔が形成された面に対して垂直方向に縦振動する振動手段である前記<1>から<7>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<9> 液滴形成工程におけるトナー組成液の温度及びトナー組成液が接する部材の温度を所定の温度で制御する温度制御工程を含む前記<3>から<8>のいずれかに記載のトナー製造方法である。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載のトナーの製造方法により得られ、体積平均粒径が1μm〜8μmであり、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)が、1.00〜1.15の範囲にあることを特徴とするトナーである。
<11> 少なくとも前記<10>に記載のトナーと、キャリアとを含有することを特徴とする現像剤である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、小粒径かつ単一分散性を有するトナーを効率よく生産することができ、離型剤に起因する吐出孔の詰まりが生じることがなく、耐ホットオフセット性に優れ、更に地肌汚れがなく、高精細で高品質な画像を長期にわたって提供することのできるトナー、現像剤、及びトナーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、液柱共鳴液滴形成手段の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、液柱共鳴液滴ユニットの一例を示す概略図であり、図1を吐出面から見た底面図である。
【図3A】図3Aは、液柱共鳴液室が片側固定端であり、N=1の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略説明図である。
【図3B】図3Bは、液柱共鳴液室が両側固定端であり、N=2の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略説明図である。
【図3C】図3Cは、液柱共鳴液室が両側開放端であり、N=2の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略説明図である。
【図3D】図3Dは、液柱共鳴液室が片側固定端であり、N=3の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略説明図である。
【図4A】図4Aは、液柱共鳴液室が両側固定端であり、N=4の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略説明図である。
【図4B】図4Bは、液柱共鳴液室が両側開放端であり、N=4の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略説明図である。
【図4C】図4Cは、液柱共鳴液室が片側固定端であり、N=5の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略説明図である。
【図5A】図5Aは、液柱共鳴液滴形成手段の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図5B】図5Bは、液柱共鳴液滴形成手段の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図5C】図5Cは、液柱共鳴液滴形成手段の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図5D】図5Dは、液柱共鳴液滴形成手段の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図5E】図5Eは、液柱共鳴液滴形成手段の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図6】図6は、液柱共鳴液滴形成手段での実際の液滴吐出の様子を示す図である。
【図7】図7は、駆動周波数と液滴吐出速度との周波数特性の一例を示す特性図である。縦軸:吐出速度(m/s)、横軸:駆動周波数(kHz)
【図8A】図8Aは、液柱共鳴液室の断面から見た吐出孔の形状の一例を示す概略図である。
【図8B】図8Bは、液柱共鳴液室の断面から見た吐出孔の形状の一例を示す概略図である。
【図8C】図8Cは、液柱共鳴液室の断面から見た吐出孔の形状の一例を示す概略図である。
【図8D】図8Dは液柱共鳴液室の断面から見た吐出孔の形状の一例を示す概略図である。
【図9】図9は、本発明のトナーの製造方法に用いられるトナー製造装置の一例を示す概略断面図である。
【図10】図10は、気流通路の別一例を示す概略図である。
【図11】図11は、気流通路の更に別の一例を示す概略図である。
【図12】図12は、補助気流による合着防止工程の一例を示す概略図である。
【図13】図13は、本発明のトナーの製造方法により得られたトナー粒径分布の一例を示すグラフである。
【図14】図14は、実施例1で調製したトナー母体粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の観察像(倍率:15,000倍)を示す図である。
【図15】図15は、実施例2で調製したトナー母体粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の観察像(倍率:15,000倍)を示す図である。
【図16】図16は、実施例3で調製したトナー母体粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の観察像(倍率:15,000倍)を示す図である。
【図17】図17は、実施例4で調製したトナー母体粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の観察像(倍率:15,000倍)を示す図である。
【図18】図18は、実施例5で調製したトナー母体粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の観察像(倍率:15,000倍)を示す図である。
【図19】図19は、実施例6で調製したトナー母体粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の観察像(倍率:15,000倍)を示す図である。
【図20】図20は、実施例7で調製したトナー母体粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の観察像(倍率:15,000倍)を示す図である。
【図21】図21は、比較例2で調製したトナー母体粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の観察像(倍率:15,000倍)を示す図である。
【図22】図22は、比較例3で調製したトナー母体粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の観察像(倍率:15,000倍)を示す図である。
【図23】図23は、比較例4で調製したトナー母体粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の観察像(倍率:15,000倍)を示す図である。
【図24】図24は、比較例5で調製したトナー母体粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の観察像(倍率:15,000倍)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(トナーの製造方法)
本発明のトナーの製造方法は、トナー組成液調製工程と、液滴形成工程と、トナー粒子形成工程と、を少なくとも含み、更に必要に応じて、温度制御工程、合着防止工程などのその他の工程を含む。
【0017】
<トナー組成液調製工程>
前記トナー組成液調製工程は、トナー組成物を有機溶剤に溶解乃至分散させたトナー組成液を調製する工程である。
前記トナー組成物は、少なくとも結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含み、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。
【0018】
<<トナー組成液>>
前記トナー組成液は、結着樹脂、着色剤、離型剤、有機溶剤を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0019】
前記トナー組成液は、前記結着樹脂及び前記離型剤が相分離せずに溶解していることを必須とする。前記トナー組成液において、前記結着樹脂及び前記離型剤が相分離せずに溶解しているとは、前記トナー組成液中の有機溶剤の沸点より20℃低い温度未満の温度となるように加熱したスライドガラスとカバーグラスに挟み透過型光学顕微鏡(倍率1,000倍)にて観察した際、透明になっていればよい。溶解を観察する観察方法の具体例としては、有機溶剤として酢酸エチル(沸点77℃)を用いた場合においては、該トナー組成液を57℃未満の温度に加熱したスライドガラスとカバーグラスに挟み透過型光学顕微鏡にて観察することにより確認することができる。
【0020】
−結着樹脂−
前記結着樹脂としては、前記有機溶剤に溶解するものであれば、特に制限はなく、公知の樹脂の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン単量体、アクリル単量体、メタクリル単量体等のビニル単量体、これらの単量体が2種類以上からなる共重合体、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
−−ビニル単量体又は共重合体−−
前記スチレン単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体などが挙げられる。
前記誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することがでる。
【0022】
前記アクリル酸単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸、アクリル酸のエステル類などが挙げられる。
前記アクリル酸のエステル類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルなどが挙げられる。
【0023】
前記メタクリル単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸のエステル類などが挙げられる。
前記メタクリル酸のエステル類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。
【0024】
他のモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の(1)〜(18)などが挙げられる。
(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステル等の不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸等のα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステル等のカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレン等のヒドロキシ基を有するモノマー。
【0025】
これらの中でも、スチレン共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0026】
前記結着樹脂のビニル単量体又はビニル共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等のアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの等のエーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類などが挙げられる。その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物なども挙げられる。また、前記架橋剤として、例えば、商品名:MANDA(日本化薬株式会社製)などのポリエステル型ジアクリレート類なども用いることができる。
【0027】
また、前記架橋剤として、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等の多官能の架橋剤なども挙げられる。
【0028】
これらの架橋剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの架橋剤のうち、トナーの定着性、耐ホットオフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好ましい。
前記架橋剤の添加量としては、前記結着樹脂が前記有機溶剤に溶解できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0029】
前記ビニル共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2’,4’−ジメチル−4’−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記結着樹脂がスチレン−アクリル樹脂の場合、その重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5,000〜300,000の領域に少なくとも1つのピークが存在することが、トナーの定着性、耐ホットオフセット性の点で好ましい。
前記結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0031】
−−ポリエステル樹脂−−
前記ポリエステル樹脂(重合体)を構成するモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルコール成分と、酸成分とからなることが好ましい。
【0032】
前記アルコール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール等の2価のアルコール成分などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
また、3価以上の多価アルコールを併用することにより、前記ポリエステル樹脂を架橋させることができる。
前記3価以上の多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記3価以上の多価アルコールの含有量としては、前記結着樹脂が前記有機溶剤に溶解できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
前記ポリエステル樹脂を形成する前記酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
また、3価以上の酸を併用することにより、前記ポリエステル樹脂を架橋させることができる。
前記3価以上の酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル等の多価カルボン酸成分などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記3価以上の酸の含有量としては、前記結着樹脂が前記有機溶剤に相分離せずに溶解できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25,000〜100,000の領域に少なくとも1つのピークが存在することが好ましく、5,000〜300,000の領域に少なくとも1つのピークが存在することがより好ましい。前記重量平均分子量が、前記好ましい範囲内であると、トナーの定着性、耐ホットオフセット性に優れる点で有利である。
また、テトラヒドロフラン(THF)可溶分の重量平均分子量50,000以下の成分が70%〜100%となるような結着樹脂が、吐出性の面から好ましい。
【0037】
前記結着樹脂は、使用する有機溶剤や離型剤によって適宜選択することができるが、前記有機溶剤への溶解性が優れた離型剤を用いる場合は、トナーの軟化点を低下させる場合がある。そのような場合は、前記結着樹脂の重量平均分子量を高めて前記結着樹脂の軟化点を高めておくことが、耐ホットオフセット性を良好に保つために有効な手段となる。
【0038】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gが特に好ましい。
【0039】
本発明において、前記トナー組成液中の前記結着樹脂成分の酸価の測定は、基本操作は、JIS K−0070に準じ、以下の方法により求める。
(1)試料は、予め前記結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、前記結着樹脂及び前記架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。測定対象試料を0.5g〜2.0g精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから前記結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により前記結着樹脂の酸価を求める。
(2)300mLのビーカーに前記測定対象試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1(体積比))の混合液150mLを加え溶解する。
(3)0.1mol/Lの水酸価カリウム(KOH)のエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOHのエタノール溶液の使用量をS(mL)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOHのエタノール溶液の使用量をB(mL)とし、下記式(C)で算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W ・・・式(C)
【0040】
前記結着樹脂及び該結着樹脂を含むトナー組成液のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー保存性の観点から、35℃〜80℃が好ましく、40℃〜70℃がより好ましい。前記ガラス転移温度(Tg)が、35℃未満であると、高温雰囲気下でトナーが劣化しやすくなることがあり、80℃を超えると、定着性が低下することがある。
前記ガラス転移温度は、例えば、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(例えば、「DSC−60」、島津製作所製)を用いて、昇温速度10℃/分間で測定することができる。
【0041】
−着色剤−
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の着色剤の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーに対して1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。
【0043】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
前記マスターバッチとともに混練されるマスターバッチ用の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂をイソシアネート基やエポキシにより変性させた変性ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂とポリカルボン酸とからなる未変性ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
前記マスターバッチは、前記マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合乃至混練して得ることができる。
この際、前記着色剤と前記マスターバッチ用の樹脂との相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる、前記着色剤の水を含んだ水性ペーストを、前記マスターバッチ用の樹脂と有機溶剤とともに混合乃至混練し、前記着色剤を前記マスターバッチ用の樹脂側に移行させ、水分と前記有機溶剤成分を除去する方法も、前記着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。
前記マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを混合乃至混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用することができる。
【0045】
前記マスターバッチの使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましい。
【0046】
前記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100で、前記着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50で、前記着色剤を分散させて使用することがより好ましい。
前記酸価が30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性が不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。
前記酸価は、例えば、JIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価は、例えば、JIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0047】
−−顔料分散液−−
前記着色剤は、顔料分散液に分散させた着色剤分散液として用いることもできる。
前記顔料分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものを適宜選択することができるが、顔料分散性の点で、前記結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、そのような市販品としては、例えば、商品名で、アジスパーPB821、アジスパーPB822(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)、Disperbyk−2001(ビックケミー社製)、EFKA−4010(EFKA社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記顔料分散剤の重量平均分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100,000が好ましく、顔料分散性の観点から、3,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000が更に好ましく、5,000〜30,000が特に好ましい。前記重量平均分子量が、500未満であると、極性が高くなり、前記着色剤の分散性が低下することがあり、前記重量平均分子量が100,000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、前記着色剤の分散性が低下することがある。
【0049】
前記顔料分散剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、着色剤100質量部に対して、1質量部〜200質量部が好ましく、5質量部〜80質量部がより好ましい。前記添加量が、1質量部未満であると、分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると、帯電性が低下することがある。
【0050】
−離型剤−
前記離型剤としては、前記有機溶剤に溶解するものであれば、特に制限はなく、公知の離型剤の中から、目的に応じて適宜選択することができるが、ワックス類が好ましい。
なお、前記有機溶剤及び前記トナー組成液を加熱して前記離型剤を溶解することも可能であるが、その場合、安定した連続吐出のためには下記式(I’)を満たす温度で加熱とすることが重要である。下記式(I’)を満たす温度で加熱を行うと、前記有機溶剤の蒸発によりトナー組成液室内で気泡を生じることや、吐出孔近傍でトナー組成液が乾燥して吐出孔を狭めてしまうことがあり、安定した吐出を阻害する場合がある。
離型剤の加熱温度(℃)<[有機溶剤の沸点(℃)−20(℃)]・・・式(I’)
【0051】
前記離型剤は、吐出孔の閉塞を防止するため、前記トナー組成液中で溶解していることが必要であるが、トナー組成液中で溶解している前記結着樹脂と相分離せずに溶解していることが、均一なトナー粒子を得る上で重要である。更に、定着時に離型性を発揮して耐ホットオフセットを防止するためには、前記有機溶剤を除去したトナー粒子中では前記結着樹脂と前記離型剤とが相分離していることが重要である。前記離型剤が前記結着樹脂と相分離していない場合は、離型性が発揮できないばかりでなく、前記結着樹脂の溶融時の粘性や弾性を低下させてしまい、よりホットオフセットが生じやすくなってしまう。したがって、使用する有機溶剤や結着樹脂によって最適な離型剤が選択される。
【0052】
このような離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はこれらのブロック共重合体;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;各種の合成エステルワックス、合成アミドワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記離型剤は、合成エステルワックス、合成アミドワックス、及びマイクロクリスタリンワックスの少なくともいずれかを含むことが、液滴の吐出を安定的に実施するために、ワックスの溶解性を確保することができる点で好ましい。
【0053】
前記合成エステルワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価以上のアルコール成分と、脂肪酸とから得られるものなどが挙げられる。
前記2価以上のアルコール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ポリエステル樹脂で挙げた成分などが挙げられる。
前記脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数12〜28の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸などが挙げられる。
前記合成エステルワックスの具体例としては、商品名で、WAX−42、WEP−2(以上、日油株式会社製)などが挙げられる。
【0054】
前記合成アミドワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族アミンと、脂肪酸とから得られるものなどが挙げられる。
このような合成アミドワックスとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、ジメチトール油アミド、ジメチルラウリン酸アミド、ジメチルステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプロン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、N−ブチル−N’ステアリル尿素、N−プロピル−N’ステアリル尿素、N−アリル−N’ステアリル尿素、N−ステアリル−N’ステアリル尿素などが挙げられる。
前記合成アミドワックスの具体例としては、商品名で、WAX−3、WAX−4、WA−8(以上、日油株式会社製)などが挙げられる。
【0055】
前記マイクロクリスタリンワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭素数30〜60の炭化水素類を含み、重量平均分子量500〜800のものなどが挙げられる。
前記マイクロクリスタリンワックスの具体例としては、商品名で、BSQ−180W(東洋アドレ株式会社製)などが挙げられる。
【0056】
前記離型剤は、ワックス以外のものであってもよく、ワックス以外の離型剤としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、その他の直鎖アルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸;プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、その他の長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール;ソルビトール等の多価アルコール;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも前記離型剤として好ましく用いられる。
【0058】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性と耐ホットオフセット性のバランスを取る観点で、50℃〜140℃が好ましく、55℃〜120℃がより好ましい。前記融点が、50℃未満であると、耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると、耐ホットオフセット効果が発現しにくくなることがある。
【0059】
なお、本発明において、前記離型剤の融点とは、示差走査熱量測定(DSC)において測定される離型剤の吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度を意味する。
前記離型剤及びトナーの融点を測定するためのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計が好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/分間で昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0060】
離型剤の含有量としては、特に制限はなく、前記結着樹脂の溶融粘弾性や定着方式などに応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂100質量部に対して、1質量部〜50質量部が好ましく、5質量部〜10質量部がより好ましい。前記離型剤の含有量が、1質量部未満であると、定着時の離型性が不十分となることがあり、50質量部を超えると、発色性が損なわれることや、現像剤の寿命が低下することがある。
【0061】
−有機溶剤−
前記有機溶剤としては、前記トナー組成液中のトナー組成物を溶解乃至分散できる揮発性のものであり、かつ、前記トナー組成液中の前記結着樹脂及び前記離型剤を相分離させることなく溶解させることができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0062】
前記有機溶剤の沸点としては、特に制限はなく、前記トナー組成液中の前記結着樹脂及び前記離型剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、50℃〜120℃が好ましく、70℃〜100℃がより好ましい。前記沸点が、50℃未満であると、揮発性が高すぎてトナー組成液の扱いが難しくなることがあり、120℃を超えると、乾燥が遅いために乾燥に必要なエネルギーが膨大となり、液滴が乾燥しにくいために吐出された液滴どうしが乾燥前に結合する合一が生じやすくなることがある。
【0063】
このような有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)(沸点:66℃)、等のエーテル類;アセトン(沸点:57℃)、メチルエチルケトン(MEK)(沸点:80℃)、メチルイソブチルケトン(沸点:116℃)等のケトン類;酢酸エチル(沸点:77℃)、酢酸ブチル(沸点:126℃)等のエステル類;トルエン(沸点:110.6℃)等の炭化水素類;2−プロパノール(沸点:82℃)等のアルコール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエンが特に好ましい。
【0064】
前記トナー組成液中の前記有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50質量%〜95質量%が好ましく、80質量%〜90質量%がより好ましい。前記有機溶剤の含有量が、50質量%未満であると、トナー組成液が高粘度を呈するため、液滴の吐出が不安定化することがあり、95質量%を超えると、回収できるトナー重量が少なく、トナー粒子を形成する際の乾燥エネルギーも多くなるために生産性が低下することがある。
【0065】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、従来の電子写真用トナーに用いられる公知の材料の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、帯電制御剤、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤等の界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の含有量としは、特に制限は無く、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて適宜選択することができる。
【0066】
−−帯電制御剤−−
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のもの中から適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記帯電制御剤の具体例としては、商品名で、ニグロシン系染料の「ボントロン03」、第四級アンモニウム塩の「ボントロンP−51」、含金属アゾ染料の「ボントロンS−34」、オキシナフトエ酸系金属錯体の「Eー82」、サリチル酸系金属錯体の「E−84」、フェノール系縮合物の「E−89」(以上、オリエント化学工業株式会社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体の「TP−302」、「TP−415」(以上、保土谷化学工業株式会社製);第四級アンモニウム塩の「コピーチャージPSY VP2038」、トリフェニルメタン誘導体の「コピーブルーPR」、第四級アンモニウム塩の「コピーチャージ NEG VP2036」、「コピーチャージ NX VP434」(以上、ヘキスト社製)、「LRA−901」(日本カ一リット株式会社製);ホウ素錯体である「LR−147」(日本カ一リット株式会社製)などが挙げられる。
また、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物、フェノール系樹脂、フッ素系化合物なども用いることができる。
【0068】
前記帯電制御剤の使用量としては、特に制限はなく、前記結着樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法などに応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記帯電制御剤の使用量が、10質量部を超えると、トナーの定着性を阻害することがある。
これらの帯電制御剤は、有機溶剤に溶解することが吐出安定性の面から好ましいが、ビーズミルなどで前記有機溶剤に微分散して加えてもよい。
【0069】
<<トナー組成液の調製方法>>
前記トナー組成液の調製方法としては、該トナー組成液中に前記結着樹脂及び前記離型剤を相分離することなく溶解させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記トナー組成液の調製には、ホモミキサーやビーズミルなどを用いて、前記着色剤などの分散体がノズルの開口径に対して十分微細とすることが吐出孔の詰りを防止するために重要となる。
【0070】
前記トナー組成液の固形分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3質量%〜40質量%であることが好ましい。前記固形分が、3質量%未満であると、トナー粒子の生産性が低下するだけでなく、前記着色剤などの分散体が沈降や凝集を起こしやすくなるためトナー粒子ごとの組成が不均一になりやすく、トナー品質が低下することがある。前記固形分が、40質量%を超えると、小粒径のトナーが得られないことがある。
【0071】
<液滴形成工程>
前記液滴形成工程は、複数の吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動手段により振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、前記定在波の腹となる領域に形成された前記複数の吐出孔から前記トナー組成液を該吐出孔の外側に周期的に吐出して液滴を形成する工程である。この液柱共鳴法を用いることで、小粒径かつ単一分散性を有するトナーを効率よく生産することができる。
【0072】
前記液滴形成工程において、前記トナー組成液の温度としては、特に制限はなく、溶解物の析出温度、前記有機溶剤の凝固点、デバイスによる液滴の吐出限界などに応じて適宜選択することができるが、下記式(I)を満たすことが、前記トナー組成液中に、前記結着樹脂と前記離型剤とが相分離することなく溶解させることができ、安定した連続吐出を行うことができる点で好ましく、下記式(II)を満たすことがより好ましく、下記式(III)を満たすことが特に好ましい。
トナー組成液の温度(℃)<[有機溶剤の沸点(℃)−20(℃)]・・・式(I)
トナー組成液の温度(℃)<[有機溶剤の沸点(℃)−30(℃)]・・・式(II)
トナー組成液の温度(℃)<[有機溶剤の沸点(℃)−40(℃)]・・・式(III)
【0073】
また、このとき、前記トナー組成液が接する部材(例えば、液柱共鳴液室など)の温度も、前記式(I)を満たすトナー組成液の温度以上であることが好ましく、前記トナー組成液の温度と同程度であることがより好ましい。前記部材の温度が、前記式(I)を満たすトナー組成液より低い温度であると、前記結着樹脂や前記離型剤の前記トナー組成液に対する溶解性が低下し、析出することがあり、吐出孔が詰まることがある。
前記トナー組成液及び該トナー組成液が接する部材の温度は、後述する温度制御工程で所望の温度に制御することができる。
【0074】
前記液柱共鳴法は、液柱共鳴液滴形成手段により好適に行われ、前記液柱共鳴液滴形成手段は、前記複数の吐出孔を有する液柱共鳴液室と、振動手段と、を少なくとも有し、必要に応じて、その他の手段を有する。
【0075】
<<液柱共鳴液室>>
前記液柱共鳴液室とは、後述する液柱共鳴現象の原理に従い、前記振動手段によって付与される振動により圧力定在波を形成することができる液室であり、該圧力定在波の腹となる領域に吐出孔が形成され、トナー組成液供給のための連通口を有してなり、必要に応じて、前記液柱共鳴液室の長手方向の片端乃至両端における少なくとも一部に反射壁面を有する。
前記トナー組成液供給のための連通口は、前記液柱共鳴液室の長手方向の端部に設けられることが好ましく、前記反射壁面は、前記液柱共鳴液室の長手方向の軸と垂直な面に設けられることが好ましい。
また、前記液柱共鳴液室は、液柱共鳴液室の長手方向と平行な壁の1つに配置された振動手段を有することが好ましく、また、振動手段が配置された壁と対面する壁に吐出孔が形成されていることが好ましい。
【0076】
前記液柱共鳴液室の形状としては、前記振動により圧力定在波を形成することができれば特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、四角柱(長方体)、円柱、円すい台などが挙げられる。
【0077】
前記反射壁面は、前記液柱共鳴液室の長手方向の両端における少なくとも一部に設けられることが好ましい。ここで、「反射壁面」とは、液体の音波を反射させる程度に硬質な部材、例えば、アルミ、ステンレス等の金属部材、シリコーン等の部材などにより形成された壁面をいう。
【0078】
また、図1に示す、前記液柱共鳴液室の長手方向の両端の壁面間の長さLとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述するような液柱共鳴原理に基づいて決定されることが好ましい。
また、図2に示す、前記液柱共鳴液室の幅Wとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液柱共鳴に余分な周波数を与えないように、前記液柱共鳴液室の長さLの2分の1より小さいことが好ましい。
【0079】
また、液共通供給路側の端部と、該端部に最も近い吐出孔19の中心部との距離をLeとしたとき、前記Lと、前記Leとの距離比(Le/L)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.6より大きいことが好ましい。
【0080】
また、前記液柱共鳴液室としては、前記振動の駆動周波数においてトナー組成液の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されたフレームがそれぞれ接合されて形成されたことが好ましく、そのような材質としては、金属やセラミックス、シリコーンなどが挙げられる。
【0081】
前記液柱共鳴液室における複数の吐出孔が形成される面の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜200μmが好ましく、5μm〜100μmがより好ましく、10μm〜60μmが特に好ましい。前記厚みが5μm未満であると、膜の剛性が不足し、液滴の吐出が不安定化することがあり、100μmを超えると、小径(小開口径)の吐出孔を形成するのが困難となり、トナー粒径のばらつきが大きくなることがある。
【0082】
前記液柱共鳴液室は、露出表面全体に後述する絶縁体の撥液膜が形成されていてもよい。
前記撥液膜に用いる材料としては、絶縁体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のエポキシ樹脂;SiOなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、特開2010−107904号公報に記載の、SiO膜上にパーフルオロアルキル基を有し、かつ末端にシロキサン結合アルキル基を有する化合物からなる撥液膜も好適に用いることができる。
【0083】
前記液柱共鳴液室は、トナーの生産性を飛躍的に向上させるために1つの液滴形成手段に対して複数配置されることが好ましい。1つの液滴形成手段に対して設置される液柱共鳴液室の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、操作性と生産性が両立できる点において、100個〜2,000個が好ましく、100個〜1,000個がより好ましく、100個〜400個が特に好ましい。液柱共鳴液室の数が、前記好ましい範囲で備えられた1つの液滴形成ユニットであると、操作性と生産性が両立できる点で有利である。
【0084】
−吐出孔−
前記吐出孔(「ノズル」、「貫通孔」と称することもある。)は、前記液柱共鳴液室の一の面(壁)に形成されている。
前記吐出孔としては、前記圧力定在波の腹となる領域に形成されたものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記圧力定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、複数形成されていることが好ましい。
【0085】
前記「圧力定在波の腹となる領域」とは、液柱共鳴定在波の圧力波において振幅が大きく、圧力変動が大きい領域であり、かつ液滴を吐出するのに十分な大きさの圧力変動を有する領域である。そのような圧力定在波の腹となる領域としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記圧力定在波の振幅が極大となる位置(速度定在波としての節)から極小となる位置に向かって±1/3波長が好ましく、±1/4波長がより好ましい。
前記吐出孔が、前記圧力定在波の腹となる領域に形成されていると、複数の吐出孔が開口されていても、それぞれの吐出孔からほぼ均一な液滴を形成することができ、更には効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出孔の詰まりも生じ難くなる点で好ましい。
【0086】
前記圧力定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、形成された吐出孔の個数(開口数)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1個〜20個が好ましく、4個〜15個がより好ましく、4個〜10個が特に好ましい。前記吐出孔の個数は多いほど生産性が高くなるが、20個を超えると、吐出孔が密集しすぎ、吐出した液滴が合体して粗大な粒子となって画質に悪影響を及ぼすことがある。
【0087】
1つの液柱共鳴液室において、吐出孔は複数個配置されており、2個〜100個が好ましく、4個〜60個がより好ましく、4個〜20個が特に好ましい。前記吐出孔の個数が、100個を超えると、100個の吐出孔から所望のトナー組成液の液滴を形成させる場合に、前記振動手段に与える電圧を高く設定する必要が生じ、前記振動手段の挙動が不安定となることがある。また、1つの液柱共鳴液室において吐出孔が4個〜20個配置されている場合、定在波が安定し、かつ生産性が保たれる。
【0088】
前記複数の吐出孔は、全て同じ開口径を有していてもよく、2つ以上の吐出孔で異なる開口径を有していてもよいが、全て同じ開口径を有することが好ましい。
ここで、前記吐出孔の開口径とは、前記吐出孔の吐出開口(吐出孔の吐出方向における端部)の開口径を意味する。前記吐出孔の開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円や、四角形、六角形、八角形等の多角形又は正多角形であれば平均径を意味する。また、「同じ開口径」とは、平均開口径が±10%の範囲内であることをいう。
【0089】
前記吐出孔の開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜30μmが、吐出孔からトナー組成液の液滴を吐出させるときに、極めて均一な粒子径を有する微小液滴を発生させる点で好ましく、3μm〜30μmがより好ましく、3μm〜20μmが更に好ましく、5μm〜15μmが特に好ましい。前記開口径が、1μm未満であると、形成される液滴が非常に小さくなるためトナーを得ることができない場合がある。また、トナー組成液の成分として顔料などの固形微粒子が含有された場合、前記吐出孔の閉塞が頻繁に発生して生産性が低下する恐れがある。また、前記開口径が、30μmを超えると、トナー液滴の直径が大きく、これを乾燥固化させて所望のトナー粒子径1μm〜8μmを得る場合、有機溶媒でトナー組成を非常に希薄な液に希釈する必要がある場合があり、一定量のトナーを得るために乾燥エネルギーが大量に必要となってしまい、不都合となる。
【0090】
前記吐出孔間のピッチ(隣接する吐出孔の中心部間の最短間隔)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限値としては20μm以上が好ましい。また、上限値としては、後述する液柱共鳴液室の長手方向の長さなどに応じて適宜選択することができる。また、前記ピッチは、20μm〜200μmがより好ましく、40μm〜135μmが更に好ましく、40μm〜80μmが特に好ましい。前記吐出孔間のピッチが20μm未満であると、隣り合う吐出孔より放出された液滴同士が衝突して大きな滴となってしまう確率が高くなり、トナーの粒径分布悪化につながることがある。
吐出孔間のピッチは、複数の吐出孔間において、全て等間隔であってもよく、少なくとも1つのピッチが異なっていてもよいが、等間隔であることが、均一な粒子径のトナー粒子を得ることができる点で好ましい。
【0091】
前記液柱共鳴液室の厚み方向における前記吐出孔の断面形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、図8A〜Dに示すような断面形状などが挙げられる。
図8Aは、吐出孔19の接液面69から吐出方向に向かってラウンド形状を持ちながら開口径が狭くなるような形状を有しており、振動が発生した際に吐出孔19の出口付近で前記トナー組成液にかかる圧力が最大となるため、吐出の安定化に際しては最も好ましい形状である。
図8Bは、吐出孔19の接液面69から吐出方向に向かって一定の角度をもって開口径が狭くなるような形状を有しており、この吐出孔の断面における接液面から吐出口に向かう角度(以下、「吐出孔の角度」と称することがある。)44は、適宜変更することができる。図8Aと同様に吐出孔の角度44によって振動が発生した際の吐出孔19の出口付近で液にかかる圧力を高めることができる。前記吐出孔の角度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60°〜90°が好ましい。60°未満であると、前記トナー組成液に圧力がかかりにくく、更に加工もし難いため好ましくない。
吐出孔の角度が90°のときは、図8Cが相当するが、吐出孔19の出口に圧力がかかりにくくなるため、90°が最大値となる。90°を超えると、吐出孔19の出口に圧力がかからなくなるため、液滴吐出が非常に不安定化する。
図8Dは、図8Aと図8Bとを組み合わせたような形状である。このように段階的に形状を変更しても構わない。
【0092】
前記液柱共鳴液室に前記吐出孔を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電鋳による加工する方法、放電により加工する方法などが挙げられる。また、吐出孔を任意の形状に加工する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電鋳により加工する場合は、LIGAプロセス、放電により加工する場合は、電極で制御する方法などが挙げられる。
【0093】
<<振動手段>>
前記振動手段としては、振動を発生させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。これにより、前記液柱共鳴液室における複数の吐出孔内のトナー組成液が液滴状に吐出される。
前記振動手段は、前記液柱共鳴液室の複数の吐出孔が形成された面に対して平行な振動面を有し、前記振動面が前記液柱共鳴液室の複数の吐出孔が形成された面に対して垂直方向に縦振動するものであることが好ましい。
【0094】
前記振動発生体の具体例としては、圧電効果や、磁歪効果により機械的振動を発生させる超音波発生体などが挙げられる。これらの中でも、圧電効果により電気を機械的振動に変換できるものが、より高い周波数で効率よく振動を発生させることができる点で好ましく、例えば、圧電体などが挙げられる。
前記圧電体の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスなどが挙げられる。前記圧電セラミックスは、一般に変位量が小さいため、積層して使用されることが多い。また、その他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO等の単結晶などが挙げられる。これらの中でも、前記振動手段は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が振動制御性の点で好ましい。
【0095】
前記振動手段は、弾性板に貼りあわせた形態であることが好ましく、該弾性板は、振動手段が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を形成することが好ましい。
更に、前記振動手段は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されることが好ましい。また、液柱共鳴液室の配置にあわせて、弾性板を介してブロック状の圧電体などの振動手段を配置することが、それぞれの液柱共鳴液室を個別制御できる観点から好ましい。
【0096】
<<液滴形成のメカニズム>>
次に、本実施の形態の液滴形成のメカニズムについて説明する。
図1は、液柱共鳴液滴形成手段の一例を示す断面図である。図1に示す液柱共鳴液滴形成手段11は、トナー組成液14を内部に貯留する液柱共鳴液室18及び液共通供給路17を有する。液柱共鳴液室18は、長手方向の両端の壁面のうち一方の壁面に設けられた液共通供給路17と連通されている。また、液柱共鳴液室18は、両端の壁面と連結する壁面のうち一つの壁面に液滴21を吐出する吐出孔19と、吐出孔19と対向する壁面に設けられ、かつ液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動発生手段20とを有する。なお、振動発生手段20には、図示していない高周波電源が接続される。
【0097】
まず、図1の液柱共鳴液滴形成手段11内の液柱共鳴液室18において生じる液柱共鳴現象の原理について説明する。液柱共鳴液室内のトナー組成液の音速をcとし、振動手段20から媒質であるトナー組成液14に与えられた駆動周波数をfとした場合、液体の共鳴が発生する波長λは、下記(式1)の関係にある。
λ=c/f ・・・(式1)
【0098】
また、図1の液柱共鳴液室18において固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さをLとし、更に液共通供給路17側のフレームの端部の高さをh1とし、連通口の高さをh2とする。
液共通供給路17側の端部が閉じている固定端と等価であるとした両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、次の(式2)で表現される。
L=(N/4)λ ・・・(式2)
(但し、Nは偶数を表す。)
【0099】
なお、固定端と等価である場合とは、ある端において圧力の逃げ部がないとみなすことができる場合であり、例えば、ある端において反射壁面の高さが、トナー組成液供給のための連通口の高さの2倍以上である場合、及びある端において反射壁面の面積が、トナー組成液供給のための連通口の開口部の面積の2倍以上である場合などを指す。
図1において、液柱共鳴液室18の固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さが、長さLに相当する。また、液共通供給路17側のフレームの端部の高さh1(=約80μm)は、連通口の高さh2(=約40μm)の約2倍あり当該端部が閉じている両側固定端と等価であるとみなすことができる。
【0100】
また、両端が完全に開いている両側開放端の場合乃至両側開放端と等価である場合にも前記(式2)が成り立つ。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある開放端と等価で、他方側が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端又は片側開放端の場合には、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、前記(式2)のNが奇数で表現される。なお、両側開放端の場合は、Lが波長の4分の1の偶数倍、片側固定端の場合は、Lが波長の4分の1の奇数倍に相当する。
【0101】
最も効率の高い駆動周波数fは、前記(式1)と前記(式2)より、下記(式3)が導かれる。
f=N×c/(4L) ・・・(式3)
(但し、Lは液柱共鳴液室の長手方向の長さを表し、cはトナー組成液の音波の速度を表し、Nは整数を表す。)
したがって、本発明のトナーの製造方法において、前記トナー組成液に対して、前記(式1)が成立する周波数fの振動を付与することが好ましい。しかし、実際には、液体は共鳴を減衰させる粘性を持つために無限に振動が増幅されるわけではなく、Q値を持ち、後述する(式4)及び(式5)に示すように、(式3)に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
【0102】
図3A〜Dに、N=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示し、図4A〜Cに、N=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す。
本来は疎密波(縦波)であるが、図3A〜D及び図4A〜Cのように表記することが一般的である。図3A〜D及び図4A〜Cにおいて、実線が速度定在波、点線が圧力定在波である。
例えば、N=1の片側固定端の場合を示す図3Aからわかるように、速度分布の場合閉口端で速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で振幅が最大となる。
液柱共鳴液室の長手方向の両端の間の長さをLとしたとき、液体が液柱共鳴する波長をλとし、整数Nが1〜5の場合に定在波が最も効率よく発生する。また、両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、それらも併記した。後述するが、吐出孔の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。
なお、音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度がゼロとなる端であり、逆に圧力は極大となる。閉口端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。閉口端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口若しくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図3A〜D及び図4A〜Cのような形態の共鳴定在波を生じるが、吐出孔数、吐出孔の開口位置によっても定在波パターンは変動し、前記(式3)より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。
【0103】
例えば、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmを用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と完全に等価のN=2の共鳴モードを用いた場合、前記(式2)より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。
他の例では、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmと、上記と同じ条件を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と等価のN=4の共鳴モードを用いた場合、前記(式2)より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれ、同じ構造を有する液柱共鳴液室であっても、より高次の共鳴を利用することができる。
【0104】
なお、図1に示す液柱共鳴液滴形成手段11における液柱共鳴液室18は、両端が閉口端状態と等価であるか、吐出孔19の開口の影響で、音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが周波数を高めるためには好ましいが、それに限らず開放端であってもよい。ここでの吐出孔19の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、特にコンプライアンス成分が大きくなることを意味する。よって、図3B及び図4Aのような液柱共鳴液室18の長手方向の両端に壁面を形成することは、両側固定端の共鳴モード、そして吐出孔側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できるために好ましい。
【0105】
また、吐出孔19の開口数、開口配置位置、吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。
例えば、吐出孔19の数(開口数)を多くすると、徐々に固定端であった液柱共鳴液室18の先端の拘束が緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。更に、最も液共通供給路17側に存在する吐出孔19の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となり、また吐出孔19の断面形状がラウンド形状となったりフレームの厚さによる吐出孔の体積が変動したり、実際上の定在波は短波長となり、駆動周波数よりも高くなる。このように決定された駆動周波数で振動手段に電圧を与えたとき、振動手段20が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さをL、液共通供給路17側の端部に最も近い吐出孔19までの距離をLeとしたとき、L及びLeの両方の長さを用いて下記(式4)及び(式5)で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴を吐出孔から吐出することが可能である。
【0106】
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式4)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式5)
(但し、Lは液柱共鳴液室の長手方向の長さを表し、Leは液供給路側の端部に最も近い吐出孔までの距離を表し、cはトナー組成液の音波の速度を表し、Nは整数を表す。)
【0107】
以上説明した液柱共鳴現象の原理を用いて、図1の液柱共鳴液室18において液柱共鳴圧力定在波が形成され、液柱共鳴液室18の一部に配置された吐出孔19において連続的に液滴吐出が発生するのである。なお、定在波の圧力が最も大きく変動する位置に吐出孔19を配置すると、吐出効率が高くなり、低い電圧で駆動することができる点で好ましい。
【0108】
次に、液柱共鳴液滴形成手段における液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子について当該様子を示す図5A〜Eを用いて説明する。
なお、図5A〜Eにおいて、液柱共鳴液室内に記した実線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における速度をプロットした速度分布を示し、液共通供給路側から液柱共鳴液室への方向を「+」とし、その逆方向を「−」とする。
また、液柱共鳴液室内に記した点線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示し、大気圧に対して正圧を「+」とし、負圧は「−」とする。また、正圧であれば図中の下方向に圧力が加わることになり、負圧であれば図中の上方向に圧力が加わることになる。
更に、図5A〜Eにおいて、上述したように液共通供給路側が開放されているが液共通供給路17と液柱共鳴液室18とが連通する開口の高さ(図1に示す高さh2)に比して固定端となるフレームの高さ(図1に示す高さh1)が好ましくは約2倍以上であるため、液柱共鳴液室18はほぼ両側固定端であるという近似的な条件のもとでの速度分布及び圧力分布の時間的なそれぞれの変化を示している。
【0109】
図5Aは、液滴吐出時の液柱共鳴液室18内の圧力波形と速度波形を示している。また、図5Bは、液滴吐出直後の液引き込みを行った後再びメニスカス圧が増加してくる。これらの図5A及びBに示すように、液柱共鳴液室18における吐出孔19が設けられている流路内での圧力は極大となっている。その後、図5Cに示すように、吐出孔19付近の正の圧力は小さくなり、負圧の方向へ移行して液滴21が吐出される。
【0110】
そして、図5Dに示すように、吐出孔19付近の圧力は極小になる。このときから液柱共鳴液室18へのトナー組成液14の充填が始まる。その後、図5Eに示すように、吐出孔19付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。この時点で、トナー組成液14の充填が終了する。そして、再び、図5Aに示すように、液柱共鳴液室18の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、吐出孔19から液滴21が吐出される。このように、液柱共鳴液室内には振動手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生し、また圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹に相当する液滴吐出領域に吐出孔19が配置されていることから、当該腹の周期に応じてトナー液滴21が吐出孔19から連続的に吐出される。
【0111】
次に、実際に液柱共鳴法によって液滴が吐出された場合の一例について説明する。この一例は、図1において液柱共鳴液室18の長手方向の両端間の長さLが1.85mm、N=2の共鳴モード(両側固定端)であって、第1から第4の吐出孔がN=2の共鳴モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置し、駆動周波数を340kHzのサイン波で行った吐出をレーザーシャドウグラフィ法にて撮影した様子を図6に示す。図6からわかるように、液滴の径が非常に揃っており、かつ吐出速度もほぼ揃った液滴の吐出が実現している。
また、図7は、第1から第4の吐出孔がN=1の共鳴モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置し、駆動周波数85kHz〜165kHzの同一振幅サイン波にて駆動した際の液滴速度周波数特性、及び、第1から第4の吐出孔がN=2の共鳴モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置し、駆動周波数290kHz〜395kHzの同一振幅サイン波にて駆動した際の液滴速度周波数特性を示す特性図である。図7からわかるように、第1から第4の吐出孔において駆動周波数が340kHz付近では各吐出孔からの吐出速度が均一となって、かつ最大吐出速度となっている。この特性結果から、液柱共鳴周波数のN=2の共鳴モード、駆動周波数340kHzにおいて、液柱共鳴定在波の腹の位置で均一吐出が実現していることがわかる。また、図7の特性結果から、N=1の共鳴モードである130kHzにおいての液滴吐出速度ピークと、N=2の共鳴モードである340kHzにおいての液滴吐出速度ピークとの間では液滴は吐出しないという液柱共鳴の特徴的な液柱共鳴定在波の周波数特性が液柱共鳴液室内で発生していることがわかる。
【0112】
以下、本発明のトナーの製造方法の液柱共鳴法を利用した液滴形成工程の一実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明のトナーの製造方法における液滴形成工程は、これに限られるものではない。
【0113】
図9は、本発明のトナーの製造方法を実施するためのトナー製造装置の全体を示す断面図の一例であり、主に、液滴形成手段2及びトナー粒子形成手段60を有する。
液柱共鳴法において、液滴形成手段2(液滴吐出ユニット)は、図1及び図2に示す、吐出孔19によって外部と連通する液吐出領域を有する液柱共鳴液室であって、前記メカニズムにより液柱共鳴定在波が発生する液柱共鳴液室18内のトナー組成液14を液滴21として吐出孔19から吐出する液滴形成手段2が複数配列された液滴形成ユニットである。
【0114】
まず、図9を用いて、液滴形成手段2へのトナー組成液14の送液形態の一例について説明する。
トナー製造装置1は、原料収容器13に収容されているトナー組成液14を、液供給管16を通して液循環ポンプ15により圧送し、液滴形成手段2に供給する。更にトナー組成液14は、液滴形成手段2から液戻り管22を通って原料収容器13に戻る。
【0115】
液滴形成手段は、図1に示すように、液共通供給路17及び液柱共鳴液室18を有する液柱共鳴液滴形成手段11である。液柱共鳴液室18は、長手方向の両端の壁面のうち一方の壁面に設けられた液共通供給路17と連通されている。また、液柱共鳴液室18は、両端の壁面と連結する壁面のうち一つの壁面にトナー液滴21を吐出する吐出孔19と、吐出孔19と対向する壁面に設けられ、かつ液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動手段20とを有している。なお、振動手段20には、図示していない高周波電源が接続されている。
【0116】
図2は、図1の液柱共鳴液滴形成手段11を下側(吐出孔の開口面と平行な面)から見た図である。液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液共通供給路17から連通接続されており、液共通供給路17には複数の液柱共鳴液室18と連通している。
液柱共鳴液室18内には、吐出孔19が複数形成されている。複数の吐出孔19は、図2に示すように液柱共鳴液室18内の幅W方向に設けることが、吐出孔19の開口を多数設けることができ、よって生産効率が高くなるために好ましい。なお、吐出孔19の開口配置によって液柱共鳴周波数が変動するため、液柱共鳴周波数は液滴の吐出を確認して適宜決定することが望ましい。
【0117】
また、液柱共鳴液滴形成手段11における振動手段20としては、所定の周波数で駆動できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、圧電体を、弾性板に貼りあわせた形態が好ましい。前記弾性板は、前記圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を形成している。
【0118】
なお、吐出孔19の断面形状は、図1においては吐出方向に向かって一定の角度をもって開口径が狭くなるような形状として記載されているが、適宜断面形状を変更することができる。
【0119】
次に、液柱共鳴法による液滴形成について概説する。
図9に示す原料収容器13に収容されているトナー組成液14は、当該トナー組成液14を循環させるための液循環ポンプ15によって液供給管16を通って、図2に示す液滴形成ユニットの液共通供給路17内に流入し、図1に示す液柱共鳴液滴形成手段11の液柱共鳴液室18に供給される。
そして、トナー組成液14が充填されている液柱共鳴液室18内には、振動手段20によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波において振幅の大きな部分であって圧力変動が大きい、定在波の腹となる領域に配置されている吐出孔19からトナー液滴21が吐出される。
【0120】
液滴形成手段2への送液圧力及び、チャンバ61内の圧力は、液圧力計P1及びチャンバ内圧力計P2によって管理される。このとき、P1>P2の関係であると、トナー組成液14が吐出孔から染み出す恐れがあり、P1<P2の場合には液滴形成手段2に気体が入り、吐出が停止する恐れがあるため、P1≒P2があることが望ましい。
【0121】
液共通供給路17を通過したトナー組成液14は、図9に示す液戻り管22を流れて原料収容器13に戻される。トナー液滴21の吐出によって液柱共鳴液室18内のトナー組成液14の量が減少すると、液柱共鳴液室18内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用し、液共通供給路17から供給されるトナー組成液14の流量が増加し、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充される。そして、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充されると、液共通供給路17を通過するトナー組成液14の流量が元に戻り、液供給管16及び液戻り管22には装置内を循環するトナー組成液14の流れが再び形成された状態となる。
【0122】
<温度制御工程>
前記温度制御工程は、前記トナー組成液や、該トナー組成液が接するトナー製造装置中の部材の温度を制御する工程である。前記温度制御工程は、温度制御手段により好適に行われる。
前記温度制御手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、間接加熱型ヒーター、接触加熱型ヒーターなどが挙げられる。また、ヒーターと温度レギュレーターを備えた槽に一定温度の液体を循環させ、当該手段を浸漬させることや、一定温度の液体を当該手段に密着させるように循環経路を組むこともできる。
前記トナー組成液が接する部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、原料収容器、液供給管、液滴形成手段(液滴形成ユニット)などが挙げられる。
【0123】
<トナー粒子形成工程>
前記トナー粒子形成工程は、前記液滴形成工程で形成された液滴から前記有機溶剤を除去し、液適を乾燥固化することによりトナー粒子を形成する工程である。前記トナー粒子形成工程は、トナー粒子形成手段により好適に行われる。
前記トナー粒子は、前記結着樹脂及び前記離型剤が相分離していることを必須とする。前記トナー粒子において、前記結着樹脂及び前記離型剤が相分離していることは、トナー粒子をエポキシ樹脂等の公知の材料で包埋し、ウルトラソニックミクロトームにて切片を作成し、RuOにて染色後、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察することにより確認することができる。
【0124】
以下、本発明のトナーの製造方法のトナー粒子形成工程の一実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明のトナーの製造方法におけるトナー粒子形成工程は、これに限られるものではない。
【0125】
図1及び図2に示すように、前記液滴形成工程において液柱共鳴液滴形成手段11から吐出したトナー組成液14の液滴21は、気流通路12内に、図示していない搬送気流発生手段によって発生する搬送気流101が通ることにより、図9に示すトナー粒子形成手段60側に流出される。
図1は、気流通路12の方向は液滴21吐出方向と同じ方向であるが、必ずしもその必要はなく、気流通路12の方向は適宜選択できる。
【0126】
図10は、気流通路12の別の一例を示す図である。気流通路12は、第1の気流通路12−1と、第1の気流通路12−1に連通するとともにトナー粒子形成手段60におけるチャンバ61の気相へとつながる第2の気流通路12−2とからなる。そして、第1の気流通路12−1の方向は液滴吐出方向に対して略直交する方向であり、第2の気流通路12−1は第1の気流通路12−1の方向と略直交する方向でかつ液滴吐出方向と同じ方向である。
【0127】
図11は、気流通路12の更に別の一例を示す図である。気流通路12の方向は、液滴吐出方向に対して略直交する方向であって、この方向はトナー粒子形成手段60におけるチャンバ61の気相への方向である。
【0128】
図9に示すトナー粒子形成手段60は、チャンバ61、トナー捕集手段62、トナー貯留部63を有する。チャンバ61内では、搬送気流導入口64から搬送気流102が流され下降気流が形成されている。液滴形成手段2から吐出された液滴21は、重力によってのみではなく、搬送気流102によっても下方に向けて搬送されるため、噴射されたトナー液滴21が空気抵抗によって減速されることを抑制できる。これにより、トナー液滴21を連続的に噴射したときに、前に噴射されたトナー液滴21が乾燥する前に空気抵抗によって減速し、後に噴射されたトナー液滴21が前に噴射されたトナー液滴21に追い付くことで、トナー液滴21同士が合着して一体となり、トナー液滴21の粒径が大きくなることを抑制できる。トナー組成液14で構成された液滴21は、液滴形成手段2から吐出された直後は液体の状態であるが、チャンバ61内を搬送される間にトナー組成液中に含まれる揮発溶剤が揮発することで乾燥が進行し、液体から固体に変化する。図9では液滴形成手段2は重力方向に向かって液滴21を吐出しているが、必ずしもその必要はなく、液滴21を吐出させる角度は適宜選択できる。
なお、搬送気流102を発生させる搬送気流発生手段として、チャンバ61上部の搬送気流導入口64に送風機を設けて加圧する方法と、搬送気流排出口65より吸引する方法のいずれを採用することもできる。
【0129】
トナー捕集手段62としては公知の捕集装置を用いることができ、サイクロン捕集機やバックフィルター等を用いることができる。
搬送気流(101、102)は、液滴21同士の合着を抑制することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、層流や旋回流や乱流であっても構わない。搬送気流(101、102)を構成する気体の種類は特に限定はなく、空気であっても窒素等の不燃性気体を用いてもよいが、液滴21が乾燥することで合着しなくなる性質があるために、液滴21の乾燥を促進できる条件を持つことが好ましい。
このことから、搬送気流(101、102)は、トナー組成液14に含まれる有機溶剤の蒸気を含まないことが好ましい。また搬送気流(101、102)の温度は適宜調整することができ、生産時において変動のないことが望ましい。
またチャンバ61内に搬送気流(101、102)の気流状態を変えるような手段をとっても構わない。搬送気流(101、102)は液滴21同士の合着を防止すだけでなく、チャンバ61や、気流通路(12、12−1、12−2)に付着することを防止することに用いてもよい。
【0130】
液滴が乾燥固化した固体の状態になると、粒子同士が接触しても合着は生じないため、トナー捕集手段62によってトナー粒子(粉体)として回収することができる。トナー捕集手段62は、例えば、鉛直方向に平行な軸周りに回転するような回転気流を発生させる回転気流発生装置などが挙げられる。トナー捕集手段62により捕集されたトナーは、チャンバ61と連結する捕集チューブを介してトナー貯留部63に格納することができる。
【0131】
トナー貯蔵部63に格納されたトナーは必要に応じて更に別工程で二次乾燥されてもよい。前記二次乾燥を行う方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動床乾燥法、真空乾燥法、送風乾燥法などが挙げられる。
有機溶剤がトナー中に残留すると、耐熱保存性や定着性、帯電特性等のトナー特性が経時で変動するだけでなく、加熱による定着時において有機溶剤が揮発するため、使用者及び周辺機器へ悪影響を及ぼす可能性が高まるため十分な乾燥を実施する必要がある。そのため、二次乾燥を行うことでトナー組成液中の有機溶剤を十分に乾燥させることができる点で有利である。
【0132】
<合着防止工程>
前記トナー粒子形成工程において、搬送気流により粒子の合着を抑えることができるが、これでも不十分な場合は、本発明のトナーの製造方法は、更なる合着防止工程を含んでいてもよい。前記合着防止工程は、合着防止手段により好適に行われる。
前記合着防止手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記液滴形成手段付近に補助搬送気流を導入する手段、液滴へ同一極性の帯電を付与する手段などが挙げられる。
【0133】
図12は、前記合着防止手段として補助搬送気流を用いた一例を示した図である。
液滴形成手段2の周りにはシュラウド66が配置されており、その一部に補助搬送気流導入口67が配置されている。補助搬送気流導入口67から導入された気体は、シュラウド66によって形成された補助搬送気流通路12−3を通って液滴形成手段2の吐出孔19の周辺に補助搬送気流68が作られる。液滴形成手段2から吐出された液滴21は、順次補助搬送気流68によって、液滴形成手段2の近傍においては速度を落とすことなく移動するので、液滴同士の合着の頻度はきわめて低く抑えることができる。補助搬送気流68の速度は、液滴形成手段2から吐出された直後の液滴速度に対して同じか、速いことが望ましく、それより遅い場合は逆効果となる場合もある。
【0134】
図12に記載されるように補助搬送気流68の方向としては、合着を防ぐことができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液滴21の進行方向と同一であることが好ましい。
【0135】
シュラウド66の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、図12に示されるように液滴形成手段2の吐出孔19付近で開口部を絞る形状などが挙げられる。これにより流速を制御することができるが、絞りを持たせなくてもよい。
前記補助搬送気流68を構成する気体の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、空気、窒素等の不燃性気体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0136】
(トナー)
本発明のトナーは、本発明の前記トナーの製造方法により得られるトナーであり、その体積平均粒径は、1μm〜8μmであり、3μm〜6μmが好ましい。前記トナーの体積平均粒径が1μm〜8μmの範囲内であると、高解像度で、高精細、高品質な画像を形成することができる。
【0137】
前記トナーの粒度分布としては、前記体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子径(Dn)との比で比較することができ、Dv/Dnで示すことができる。Dv/Dn値は、最も小さいもので1.0であり、これはすべての粒径が同一であることを示している。Dv/Dnが大きいほど粒径分布が広いことを示す。
前記トナーの粒度分布(Dv/Dn)としては、1.00〜1.15であり、1.00〜1.10が好ましく、1.00〜1.05が特に好ましい。Dv/Dnが1.00〜1.15の範囲内であると、長期にわたって安定した画像を維持することができる。
なお、一般的な粉砕トナーは、Dv/Dnが1.15〜1.25程度である。また重合トナーは、Dv/Dnが1.10〜1.15程度である。
本発明のトナーの製造方法によれば、Dv/Dnが、1.00〜1.15はもちろんのこと、1.00〜1.10のトナーも容易に得ることができる点で有利である。
本発明のトナーの製造方法により得られたトナーの粒径分布の一例を図13に示す。これは捕集したトナーの一例であるが、ほとんど単一粒径のトナー粒子しか存在しないことがわかる。これは前記トナー粒子形成工程において液滴21が合着することなく、乾燥して得られた場合に得られる。
前記トナーの粒径分布の測定は、粒度測定器(商品名:マルチサイザーIII、ベックマンコールター社製)を用いて測定することができる。
【0138】
本発明のトナーには、必要に応じて流動性向上剤やクリーニング性向上剤などを表面に添加してもよい。
【0139】
−流動性向上剤−
前記流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善する(流動しやすくする)ものである。
前記流動性向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナなどの金属酸化物の微粉末、及びそれらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ、処理酸化チタン、処理アルミナ;フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記流動性向上剤は、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカがより好ましい。
前記流動性向上剤の平均一次粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001μm〜2μmが好ましく、0.002μm〜0.2μmがより好ましい。
【0140】
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
前記ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体の具体例としては、商品名で、AEROSIL−130、AEROSIL−300、AEROSIL−380、AEROSIL−TT600、AEROSIL−MOX170、AEROSIL−MOX80、AEROSIL−COK84(以上、日本アエロジル社製);Ca−O−SiL−M−5、Ca−O−SiL−MS−7、Ca−O−SiL−MS−75、Ca−O−SiL−HS−5、Ca−O−SiL−EH−5(以上、CABOT社製);Wacker HDK−N20 V15、Wacker HDK−N20E、Wacker HDK−T30、Wacker HDK−T40(以上、ACKER−CHEMIE社製);D−CFineSi1ica(ダウコーニング社製);Franso1(Fransi1社製)などが挙げられる。
【0141】
更に、前記ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。前記処理シリカ微粉体として、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30%〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法が好ましい。
【0142】
前記有機ケイ素化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2個〜12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0個〜1個含有するジメチルポリシロキサン、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0143】
前記流動性向上剤の個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜100nmが好ましく、5nm〜50nmがより好ましい。なお、前記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
前記流動性向上剤をBET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30m/g以上が好ましく、60m/g〜400m/gがより好ましい。
前記表面処理された微粉体の比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20m/g以上が好ましく、40m/g〜300m/gがより好ましい。なお、前記微粉体の比表面積は、BET比表面積測定装置により求めることができる。
【0144】
前記流動性向上剤のトナー粒子に対する添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.03質量%〜8質量%が好ましい。
【0145】
−クリーニング性向上剤−
前記クリーニング性向上剤は、記録紙等にトナーを転写した後、静電潜像担持体や一次転写媒体に残存するトナーの除去性を向上させるためのものである。
前記クリーニング向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子などを挙げることかできる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ポリマー微粒子としては、比較的粒度分布が狭く、重量平均粒径が0.01μm〜1μmのものが好ましい。
【0146】
前記流動性向上剤や前記クリーニング性向上剤などは、トナーの表面に付着乃至固定化させて用いられるため、外添剤とも呼ばれている。このような外添剤をトナーに外添する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種の粉体混合機等が用いられる。前記粉体混合機としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられ、固定化も行う場合に用いる粉体混合機としては、ハイブリタイザー、メカノフュージョン、Qミキサー等が挙げられる。
【0147】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明の前記トナーと、キャリアと、を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。
【0148】
<キャリア>
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェライト、マグネタイト等のキャリア、樹脂コートキャリアなどを挙げることができる。
前記樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子と該キャリアコア粒子の表面を被覆(コート)する樹脂である樹脂被覆材とからなる。
【0149】
−キャリアコア粒子−
前記キャリアコアの磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄等の酸化物、鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又はこれらの合金などが挙げられる。
また、これらの磁性材料に含まれる元素としては、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムなどが挙げられる。
これらの磁性材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの磁性材料の中でも、銅、亜鉛、及び鉄成分を主成分とする銅−亜鉛−鉄系フェライト、マンガン、マグネシウム及び鉄成分を主成分とするマンガン−マグネシウム−鉄系フェライトが特に好ましい。
また、前記キャリアコア粒子として、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアを用いることもできる。
【0150】
−樹脂被覆材−
前記被覆に使用する樹脂(樹脂被覆材)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂;シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂などが好適に挙げられる。この他にも、アイオモノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等のキャリアの被覆材として使用できる樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記樹脂被覆材としては、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、フッ素含有樹脂とスチレン系共重合体との混合物、シリコーン樹脂などが好ましく、シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0151】
前記含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデンとスチレン−メタクリ酸メチル共重合体との混合物、ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メタクリル酸メチル共重合体との混合物、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合(10:90〜90:10(共重合体質量比))とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体(10:90〜90:10(共重合体質量比))とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチル共重合体(20〜60:5〜30:10:50(共重合体質量比))との混合物などが挙げられる。
【0152】
前記シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、含窒素シリコーン樹脂及び含窒素シランカップリング剤と、シリコーン樹脂とが反応することにより生成された、変性シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0153】
2種以上の混合物の前記樹脂被覆材で前記キャリアコア粒子(磁性材料)を被覆する使用例としては、(1)酸化チタン微粉体100質量部に対して、ジメチルジクロロシランとジメチルシリコーンオイル(1:5(質量比))の混合物12質量部で処理したもの、(2)シリカ微粉体100質量部に対して、ジメチルジクロロシランとジメチルシリコーンオイル(1:5(質量比))の混合物20質量部で処理したものなどが挙げられる。
【0154】
前記樹脂コートキャリアにおいて、前記キャリアコア粒子の表面を少なくとも前記樹脂被覆剤で被覆する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を溶剤中に溶解又は懸濁せしめて塗布したキャリアコアに付着せしめる方法、あるいは単に粉体状態で混合する方法などが挙げられる。
【0155】
前記樹脂コートキャリアに対する前記樹脂被覆材の使用割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂コートキャリア100質量部に対して、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.1質量%〜1質量%がより好ましい。
【0156】
前記キャリアの体積抵抗値としては、特に制限はなく、キャリアの表面の凹凸度合い、被覆する樹脂の量などに応じて適宜調整することにより設定することができるが、10Ω・cm〜1010Ω・cmが好ましい。
【0157】
前記キャリアの平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4μm〜200μmが好ましく、10μm〜150μmがより好ましく、20μm〜100μmが特に好ましい。これらの中でも、前記樹脂コートキャリアの粒径としては、50%粒径が20μm〜70μmが最も好ましい。
【0158】
前記現像剤における前記キャリアの使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、キャリア100質量部に対して、本発明のトナーが、1質量部〜200質量部が好ましく、2質量部〜50質量部がより好ましい。
【0159】
<用途>
本発明のトナーを用いた現像剤は、従来の電子写真法に使用する静電潜像担持体が全て使用できる。例えば、有機静電潜像担持体、非晶質シリカ静電潜像担持体、セレン静電潜像担持体、酸化亜鉛静電潜像担持体などが好適に使用可能である。
【実施例】
【0160】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0161】
(合成例1:ポリエステル樹脂Aの合成)
テレフタル酸50部及びイソフタル酸50部と、ネオペンチルグリコール50部とエチレングリコール50部とを反応させて、ポリエステル樹脂Aを合成した。
得られたポリエステル樹脂Aは、重量平均分子量65,000、ガラス転移温度(Tg)60℃、酸価10mg/KOHであった。
【0162】
−重量平均分子量の測定−
ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量(Mw)は、ポリエステル樹脂AのTHF溶解分をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定装置(商品名:GPC−150C、ウォーターズ社製)によって測定した。カラムにはKF801〜807(ショウデックス社製)を使用し、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
【0163】
−ガラス転移温度の測定−
ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(例えば、「DSC−60」、島津製作所製)を用いて、昇温速度10℃/分間で測定した。
【0164】
−酸価の測定−
ポリエステル樹脂Aの酸価は、基本操作は、JIS K−0070に準じ、以下の方法により求めた。
(1)ポリエステル樹脂Aを0.5〜2.0g精秤し、前記ポリエステル樹脂Aの重さをWgとした。
(2)300mLのビーカーにポリエステル樹脂Aを入れ、トルエン/エタノール(4/1(体積比))の混合液150mLを加え溶解した。
(3)0.1mol/LのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定した。
(4)この時のKOHのエタノール溶液の使用量をS(mL)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOHのエタノール溶液の使用量をB(mL)とし、下記式(C)で算出した。ただしfは、KOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W ・・・式(C)
【0165】
(合成例2:ポリエステル樹脂Bの合成)
テレフタル酸50部、イソフタル酸45部、及びアジピン酸5部と、ネオペンチルグリコール50部とエチレングリコール50部とを反応させて、ポリエステル樹脂Bを合成した。
得られたポリエステル樹脂Bの重量平均分子量、ガラス転移温度、及び酸価を合成例1と同様の方法で測定したところ、重量平均分子量61,000、ガラス転移温度(Tg)50℃、酸価10mg/KOHであった。
【0166】
(合成例3:スチレン−アクリル酸メチル共重合体の合成)
スチレン55モルと、アクリル酸メチル45モルとを反応させて、スチレン−アクリル酸メチル共重合体を合成した。
得られたスチレン−アクリル酸メチル共重合体の重量平均分子量、ガラス転移温度、及び酸価を合成例1と同様の方法で測定したところ、重量平均分子量68,000、ガラス転移温度(Tg)60℃であった。また、スチレンとアクリル酸メチルの共重合比は、スチレン:アクリル酸メチル=55:45(モル比)であった。
【0167】
(実施例1)
<着色剤分散液の調製>
攪拌羽根を有するミキサーを用いて、カーボンブラック(商品名:Regal400、Cabot社製)20質量部、及び顔料分散剤(商品名:アジスパーPB821、味の素ファインテクノ株式会社製)2質量部を、酢酸エチル78質量部に一次分散させた。得られた一次分散液を、ビーズミル(商品名:アシザワファインテック社製LMZ、ジルコニアビーズ 0.3mmφ)を用いて強力なせん断力により細かく分散し、凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。更に、0.45μmの細孔を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルター(商品名:フロリナートメンブレンフィルターFHLP09050、日本ミリポア株式会社)を通過させ、サブミクロン領域まで分散させたカーボンブラック分散液を調製した。
【0168】
<トナー組成液の調製>
酢酸エチル676.7質量部に、離型剤(商品名:WAX−42、日油株式会社製)10質量部、及び結着樹脂(合成例1で合成したポリエステル樹脂A)263.3質量部を混合し、25℃にて攪拌羽を有するミキサーを用いて溶解した。
この溶解液に、更に前記カーボンブラック分散液50質量部を混合し、10分間撹拌することによりトナー組成液を調製した。
なお、WAX−42は、合成エステルワックスであり、後述する方法で測定した融点は、55.2℃であり、酢酸エチルに25℃にて11質量%溶解可能であった。また、酢酸エチルの沸点は76.8℃であった。
【0169】
カーボンブラック分散液添加前の溶解液中の離型剤と結着樹脂との分離を後述する方法で分析したところ、離型剤及び結着樹脂は、ともに相分離することなく酢酸エチルに透明に溶解(相溶)していた。
【0170】
<トナーの調製>
得られたトナー組成液を、液滴形成手段として図1に示す液柱共鳴液滴形成手段11を有する図9のトナーの製造装置を用いて以下に示す条件で液滴を吐出させた後、乾燥窒素を用いた液滴固化手段により該液滴を乾燥固化し、サイクロン捕集した後、更に温度35℃、相対湿度90%にて48時間、温度40℃、相対湿度50%にて24時間送風乾燥することにより、実施例1のトナー母体粒子を調製した。
なお、このとき、トナー組成液及びトナー組成液が接するトナーの製造装置の部材は、電気配線を密閉系で配線した状態で、全ての機器を25℃の水を循環させた水槽に投入することで25±1℃に温度制御した。
[液滴吐出条件]
液柱共鳴液室18の長手方向の長さL :1.85mm
吐出孔19が形成されている面の液柱共鳴液室18の壁の厚み :130μm
吐出孔の断面形状 :図8Cに示す吐出孔の角度が90°の形状
吐出孔の開口部の形状 :真円
吐出孔開口部の開口径 :8.0μm
吐出孔のピッチ :135μm
乾燥温度(窒素) :40℃
駆動周波数 :340kHz
圧電体への印加電圧 :10.0V
【0171】
調製したトナー母体粒子中の離型剤と結着樹脂との分離を後述する方法で分析した。
結果を図14に示す。図14において、黒い部分は離型剤(WAX−42)であり、白い部分は測定時に離型剤が抜け落ちてしまったところ(本来離型剤である部分)であり、その他の部分が結着樹脂(ポリエステル樹脂A)である。これより、結着樹脂と離型剤とが相分離していることが確認された。
【0172】
次に、このトナー母体粒子100.0質量部に対して疎水性シリカ(商品名:H2000、クラリアントジャパン社製)2.0質量部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて外添処理を行い、ブラックトナーを調製した。
【0173】
得られたブラックトナーの粒径及び粒度分布を後述する方法で測定した結果、体積平均粒径(Dv)は、4.8μmであり、Dv/Dnは、1.05であり、非常にシャープな粒度分布であった。また、トナーの調製は連続して6時間行い、下記に示す方法で吐出孔の閉塞について評価した結果、吐出孔が詰まることはなく、良好な結果が得られた。これらの結果を下記表2に示す。
【0174】
<キャリアの調製>
下記材料の混合物をホモミキサーで20分間分散し、コート層形成液を調製した。このコート層形成液を、流動床型コーティング装置を用いて、粒径50μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面にコーティングして磁性キャリアを得た。
−コート層形成液の材料−
シリコーン樹脂 100質量部
(商品名:オルガノストレートシリコーン、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)
トルエン 100質量部
γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン 5質量部
カーボンブラック 10質量部
【0175】
<現像剤の調製>
トナー4質量部及び前記磁性キャリア96.0質量部をボールミルで混合して現像剤を調製した。
得られた現像剤の耐ホットオフセット性及び画像安定性を後述する方法で評価した結果、耐ホットオフセット性及び画像安定性ともに良好であった。この結果を下記表2に示す。
【0176】
<分析方法、評価方法>
<<トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析>>
離型剤及び結着樹脂を有機溶剤に溶解させた溶解液(カーボンブラック分散液を添加する前の溶解液)を、該溶解液調製時の溶解温度と同じ温度(実施例1では25℃)に調温したスライドガラスとカバーグラスに挟み透過型光学顕微鏡(倍率1,000倍)にて観察した。観察した結果、透明であるものが、離型剤及び結着樹脂が有機溶剤に溶解しているものと判断した。
【0177】
<<トナー粒子中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析>>
トナー母体粒子をエポキシ樹脂に包埋し、ウルトラソニックミクロトームにて切片を作成し、RuOにて染色後、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した。
【0178】
<<吐出孔の閉塞の評価>>
トナーの調製を連続して6時間行った後、吐出孔の閉塞及び吐出液量の減少の有無を下記評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
○:吐出孔が詰まることはなく初期の吐出量を維持していた
△:吐出液量の減少量が20%未満であり、吐出孔の一部に閉塞が認められた
×:吐出液量の減少量が20%以上であり、吐出孔の一部に閉塞が認められた
【0179】
<<トナーの粒径及び粒度分布の測定>>
トナーの体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)は、粒度測定器(商品名:マルチサイザーIII、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径50μmで測定した。即ち、トナー粒子又はトナーの体積及び個数を測定後、体積分布と個数分布を算出した。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)を求めた。粒度分布の指標としては、トナーの体積平均粒径(Dv)を個数平均粒径(Dn)で除したDv/Dnを用いた。完全に単分散であれば1となり、数値が大きいほど分布が広いことを意味する。
【0180】
<<耐ホットオフセット性の評価>>
現像剤を、市販の複写機(商品名:イマジオネオ455、株式会社リコー製)に入れ、記録媒体(商品名:タイプ6000ペーパー、株式会社リコー製)を用いて定着温度を低温から高温に変化させながら画像を出力した。画像の光沢度が低下した温度若しくは画像にオフセット画像が見られた場合をオフセット発生温度とした。このオフセット発生温度を、下記評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
○:オフセット発生温度が200℃以上
×:オフセット発生温度が200℃未満
【0181】
<<画像安定性の評価>>
現像剤を、市販の複写機(商品名:イマジオネオ455、株式会社リコー製)に入れ、画像占有率7%の印字率で、記録媒体(商品名:タイプ6000ペーパー、株式会社リコー製)を用いて5万枚の連続ランニングテストを実施し、5万枚目の画像品質(画像濃度、細線再現性、及び地肌汚れ)を下記評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
○:5万枚目でも初期画像と同等の良好な画像である
△:画像濃度、細線再現性、及び地肌汚れのいずれかの評価項目で初期画像より変化を生じたが許容範囲の変化である
×:画像濃度、細線再現性、及び地肌汚れのいずれかの評価項目で初期画像より明らかな変化を生じて許容できる水準でない
【0182】
(実施例2)
実施例1において、トナー組成液の調製方法及びトナーの調製方法を以下の方法に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2のトナー組成液、トナー、キャリア、及び現像剤を調製した。
【0183】
<トナー組成液の調製>
実施例1のトナー組成液の調製において、離型剤としてWAX−42に代えてWA−4(日油株式会社製)を用い、溶解温度を25℃に変えて30℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例2のトナー組成液を調製した。
なお、WA−4は、合成アミドワックスであり、実施例1に記載の方法で測定した融点は、62.6℃であり、酢酸エチルに30℃にて2.9質量%溶解可能であった。
【0184】
<トナーの調製>
実施例1のトナーの調製において、トナー組成液及びトナー組成液が接するトナーの製造装置の部材を25±1℃で温度制御したことに変えて30±1℃で温度制御したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2のトナーを調製した。
【0185】
実施例2のトナー組成液、トナー、及び現像剤について、実施例1と同様の方法で、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、トナー粒子中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、吐出孔の閉塞の評価、トナーの粒径及び粒度分布の測定、耐ホットオフセット性の評価、及び画像安定性の評価を行った。
その結果、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂は、ともに相分離することなく酢酸エチルに透明に溶解(相溶)していた。
また、トナー調製において吐出孔の詰まりは発生せず、トナーの体積平均粒径(Dv)は、4.9μm、Dv/Dnは、1.05と非常にシャープな粒度分布であり、良好な画像が得られ、耐ホットオフセット性及び画像安定性も良好であった。結果を下記表2に示す。
また、実施例2で調製したトナー母体粒子を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した結果を図15に示す。図15において、黒い部分が離型剤(WAX−4)であり、白い部分は測定時に離型剤が抜け落ちてしまったところ(本来離型剤である部分)であり、その他の部分が結着樹脂(ポリエステル樹脂A)である。これより、結着樹脂と離型剤とが相分離していることが確認された。
【0186】
(実施例3)
実施例1において、トナー組成液の調製方法及びトナーの調製方法を以下の方法に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3のトナー組成液、トナー、キャリア、及び現像剤を調製した。
【0187】
<トナー組成液の調製>
実施例1のトナー組成液の調製において、離型剤としてWAX−42に代えてWA−3(日油株式会社製)を用い、結着樹脂としてポリエステル樹脂Aに代えて合成例2で合成したポリエステル樹脂Bを用い、溶解温度を25℃に変えて35℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例3のトナー組成液を調製した。
なお、WA−3は、合成アミドワックスであり、実施例1に記載の方法で測定した融点は、61.0℃であり、酢酸エチルに35℃にて3.3質量%溶解可能であった。
【0188】
<トナーの調製>
実施例1のトナーの調製において、トナー組成液及びトナー組成液が接するトナーの製造装置の部材を25±1℃で温度制御したことに変えて35±1℃で温度制御したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3のトナーを調製した。
【0189】
実施例3のトナー組成液、トナー、及び現像剤について、実施例1と同様の方法で、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、トナー粒子中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、吐出孔の閉塞の評価、トナーの粒径及び粒度分布の測定、耐ホットオフセット性の評価、及び画像安定性の評価を行った。
その結果、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂は、ともに相分離することなく酢酸エチルに透明に溶解(相溶)していた。
また、トナー調製において吐出孔の詰まりは発生せず、トナーの体積平均粒径(Dv)は、5.1μm、Dv/Dnは、1.06と非常にシャープな粒度分布であり、良好な画像が得られ、耐ホットオフセット性及び画像安定性も良好であった。結果を下記表2に示す。
また、実施例3で調製したトナー母体粒子を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEにて観察した結果を図16に示す。図16において、針状の黒く細長い部分は離型剤(WA−3)であり、白い部分は測定時に離型剤が抜け落ちてしまったところ(本来離型剤である部分)であり、その他の部分が結着樹脂(ポリエステル樹脂B)である。これより、結着樹脂と離型剤とが相分離していることが確認された。
【0190】
(実施例4)
実施例1において、トナー組成液の調製方法及びトナーの調製方法を以下の方法に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4のトナー組成液、トナー、キャリア、及び現像剤を調製した。
【0191】
<トナー組成液の調製>
実施例1のトナー組成液の調製において、離型剤としてWAX−42に代えてWEP−2(日油株式会社製)を用い、結着樹脂としてポリエステル樹脂Aに代えて合成例2で合成したポリエステル樹脂Bを用い、溶解温度を25℃に変えて40℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例4のトナー組成液を調製した。
なお、WEP−2は、合成エステルワックスであり、実施例1に記載の方法で測定した融点は、75.2℃であり、酢酸エチルに40℃にて4.4質量%溶解可能であった。
【0192】
<トナーの調製>
実施例1のトナーの調製において、トナー組成液及びトナー組成液が接するトナーの製造装置の部材を25±1℃で温度制御したことに変えて40±1℃で温度制御したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4のトナーを調製した。
【0193】
実施例4のトナー組成液、トナー、及び現像剤について、実施例1と同様の方法で、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、トナー粒子中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、吐出孔の閉塞の評価、トナーの粒径及び粒度分布の測定、耐ホットオフセット性の評価、及び画像安定性の評価を行った。
その結果、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂は、ともに相分離することなく酢酸エチルに透明に溶解(相溶)していた。
また、トナー調製において吐出孔の詰まりは発生せず、トナーの体積平均粒径(Dv)は、5.1μm、Dv/Dnは、1.06と非常にシャープな粒度分布であり、良好な画像が得られ、耐ホットオフセット性及び画像安定性も良好であった。結果を下記表2に示す。
また、実施例4で調製したトナー母体粒子を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEにて観察した結果を図17に示す。図17において、黒い部分は離型剤(WEP−2)であり、白い部分は測定時に離型剤が抜け落ちてしまったところ(本来離型剤である部分)であり、その他の部分が結着樹脂(ポリエステル樹脂B)である。これより、結着樹脂と離型剤とが相分離していることが確認された。
【0194】
(実施例5)
実施例1において、トナー組成液の調製方法及びトナーの調製方法を以下の方法に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5のトナー組成液、トナー、キャリア、及び現像剤を調製した。
【0195】
<トナー組成液の調製>
実施例1のトナー組成液の調製において、離型剤としてWAX−42に代えてWA−8(日油株式会社製)を用い、結着樹脂としてポリエステル樹脂Aに代えてポリエステル樹脂Bを用い、溶解温度を25℃に変えて50℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例5のトナー組成液を調製した。
なお、WA−8は、合成アミドワックスであり、実施例1に記載の方法で測定した融点は、67.4℃であり、酢酸エチルに50℃にて9.5質量%溶解可能であった。
【0196】
<トナーの調製>
実施例1のトナーの調製において、トナー組成液及びトナー組成液が接するトナーの製造装置の部材を25±1℃で温度制御したことに変えて50±1℃で温度制御したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5のトナーを調製した。
【0197】
実施例5のトナー組成液、トナー、及び現像剤について、実施例1と同様の方法で、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、トナー粒子中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、吐出孔の閉塞の評価、トナーの粒径及び粒度分布の測定、耐ホットオフセット性の評価、及び画像安定性の評価を行った。
その結果、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂は、ともに相分離することなく酢酸エチルに透明に溶解(相溶)していた。
また、トナー調製において吐出孔の詰まりは発生せず、トナーの体積平均粒径(Dv)は、5.2μm、Dv/Dnは、1.07と非常にシャープな粒度分布であり、良好な画像が得られ、耐ホットオフセット性及び画像安定性も良好であった。結果を下記表2に示す。
また、実施例5で調製したトナー母体粒子を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEにて観察した結果を図18に示す。図18において、黒く細長い部分は離型剤(WA−8)であり、白い部分は測定時に離型剤が抜け落ちてしまったところ(本来離型剤である部分)であり、その他の部分が結着樹脂(ポリエステル樹脂B)である。これより、結着樹脂と離型剤とが相分離していることが確認された。
【0198】
(実施例6)
実施例5において、トナー組成液の調製方法及びトナーの調製方法を以下の方法に変えたこと以外は、実施例5と同様の方法で、実施例6のトナー組成液、トナー、キャリア、及び現像剤を調製した。
【0199】
<トナー組成液の調製>
実施例5のトナー組成液の調製において、溶解温度を50℃に変えて55℃としたこと以外は、実施例5と同様の方法で実施例6のトナー組成液を調製した。
【0200】
<トナーの調製>
実施例5のトナーの調製において、トナー組成液及びトナー組成液が接するトナーの製造装置の部材を50±1℃で温度制御したことに変えて55±1℃で温度制御したこと以外は、実施例5と同様の方法で、実施例6のトナーを調製した。
【0201】
実施例6のトナー組成液、トナー、及び現像剤について、実施例1と同様の方法で、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、トナー粒子中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、吐出孔の閉塞の評価、トナーの粒径及び粒度分布の測定、耐ホットオフセット性の評価、及び画像安定性の評価を行った。
その結果、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂は、ともに相分離することなく酢酸エチルに透明に溶解(相溶)していた。
また、トナー調製において吐出孔の一部に閉塞が認められ、トナー調製開始から6時間経過後の吐出量は初期に比べて4%減少した。
トナーの体積平均粒径(Dv)は、5.1μm、Dv/Dnは、1.11とやや微粉量の増加が認められたが、耐ホットオフセット性及び画像安定性は良好であった。結果を下記表2に示す。
また、実施例6で調製したトナー母体粒子を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEにて観察した結果を図19に示す。図19において、黒く細長い部分は離型剤(WA−8)であり、白い部分は測定時に離型剤が抜け落ちてしまったところ(本来離型剤である部分)であり、その他の部分が結着樹脂(ポリエステル樹脂B)である。これより、結着樹脂と離型剤とが相分離していることが確認された。
【0202】
(実施例7)
実施例1において、トナー組成液の調製方法及びトナーの調製方法を以下の方法に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例7のトナー組成液、トナー、キャリア、及び現像剤を調製した。
【0203】
<トナー組成液の調製>
トルエン676.7質量部に、離型剤(商品名:BSQ−180W、東洋アドレ株式会社製)10質量部、及び結着樹脂としての合成例3で合成したスチレン−アクリル酸メチル共重合体 263.3質量部を混合し、70℃にて攪拌羽を有するミキサーを用いて溶解した。前記溶解液に、更に前記カーボンブラック分散液50質量部を混合し、10分間撹拌することによりトナー組成液を調製した。
なお、BSQ−180Wは、マイクロクリスタリンワックスであり、実施例1に記載の方法で測定した融点は、86.4℃であり、トルエンに70℃にて6質量%溶解可能であった。また、トルエンの沸点は、110.6℃であった。
【0204】
<トナーの調製>
実施例1のトナーの調製において、トナー組成液及びトナー組成液が接するトナーの製造装置の部材を25±1℃で温度制御したことに変えて70±1℃で温度制御したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例7のトナーを調製した。
【0205】
実施例7のトナー組成液、トナー、及び現像剤について、実施例1と同様の方法で、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、トナー粒子中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、吐出孔の閉塞の評価、トナーの粒径及び粒度分布の測定、耐ホットオフセット性の評価、及び画像安定性の評価を行った。
その結果、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂は、ともに相分離することなく酢酸エチルに透明に溶解(相溶)していた。
また、トナー調製において吐出孔の詰まりは発生せず、トナーの体積平均粒径(Dv)は4.9μm、Dv/Dnは、1.07と非常にシャープな粒度分布であり、良好な画像が得られ、耐ホットオフセット性及び画像安定性も良好であった。結果を下記表2に示す。
また、実施例7で調製したトナー母体粒子を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEにて観察した結果を図20に示す。図20において、黒い細長い部分は離型剤(BSQ−180W)であり、白い部分は測定時に離型剤が抜け落ちてしまったところ(本来離型剤である部分)であり、その他の部分が結着樹脂(スチレン−アクリル酸メチル共重合体)である。これより、結着樹脂と離型剤とが相分離していることが確認された。
【0206】
(比較例1)
実施例1において、トナー組成液の調製方法を以下の方法に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1のトナー組成液、トナー、キャリア、及び現像剤を調製した。
【0207】
<トナー組成液の調製>
実施例1のトナー組成液の調製において、離型剤を添加せず、酢酸エチルの添加量を676.7質量部に変えて653.3質量部とし、ポリエステル樹脂Aの添加量を263.3質量部に変えて296.7質量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1のトナー組成液を調製した。
【0208】
比較例1のトナー組成液、トナー、及び現像剤について、実施例1と同様の方法で、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、トナー粒子中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、吐出孔の閉塞の評価、トナーの粒径及び粒度分布の測定、耐ホットオフセット性の評価、及び画像安定性の評価を行った。
その結果、トナー調製において吐出孔の詰まりは発生せず、トナーの体積平均粒径(Dv)は、4.8μm、Dv/Dnは、1.05と非常にシャープな粒度分布であった。しかし、低温での定着でもホットオフセットが発生してしまい、画像安定性の試験は実施できなかった。
【0209】
(比較例2)
実施例1において、トナー組成液の調製方法を以下の方法に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2のトナー組成液、トナー、キャリア、及び現像剤を調製した。
【0210】
<トナー組成液の調製>
実施例1のトナー組成液の調製において、離型剤としてWAX−42に代えてIrganox245(チバ・ジャパン株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例2のトナー組成液を調製した。
なお、Irganox245は、ヒンダードフェノール系エステルであり、実施例1に記載の方法で測定した融点は、76℃であり、酢酸エチルに25℃にて30質量%以上溶解可能であった。
【0211】
比較例2のトナー組成液、トナー、及び現像剤について、実施例1と同様の方法で、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、トナー粒子中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、吐出孔の閉塞の評価、トナーの粒径及び粒度分布の測定、耐ホットオフセット性の評価、及び画像安定性の評価を行った。
その結果、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂は、ともに相分離することなくトルエンに透明に溶解(相溶)していた。
また、トナー調製において吐出孔の詰まりは発生せず、トナーの体積平均粒径(Dv)は、4.8μm、Dv/Dnは、1.05と非常にシャープな粒度分布であったが、低温での定着でもホットオフセットが発生してしまい、画像安定性の試験は実施できなかった。結果を下記表2に示す。
また、比較例2で調製したトナー母体粒子を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した結果を図21に示す。図21において、離型剤(Irganox245)が確認できず、結着樹脂と離型剤が相分離していないことが確認された。
【0212】
(比較例3)
実施例3において、トナーの調製方法を以下の方法に変えたこと以外は、実施例3と同様の方法で、比較例3のトナー組成液、トナー、キャリア、及び現像剤を調製した。
【0213】
<トナーの調製>
トナー組成液を、液滴形成手段として二流体スプレーノズル(6552−1/8JAC、スプレーイングシステムスジャパン社製、ノズル開口径:250μm)を有する図9のトナーの製造装置を用い、空気圧0.15MPaで乾燥窒素中に噴霧し、サイクロン捕集した後、更に温度35℃、相対湿度90%にて48時間、温度40℃、相対湿度50%にて24時間送風乾燥することにより、比較例3のトナー母体粒子を調製した。
なお、このとき、トナー組成液及びトナー組成液が接するトナーの製造装置の部材は、35℃±1℃に温度制御した。
【0214】
比較例3のトナー組成液、トナー、及び現像剤について、実施例1と同様の方法で、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、トナー粒子中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、吐出孔の閉塞の評価、トナーの粒径及び粒度分布の測定、耐ホットオフセット性の評価、及び画像安定性の評価を行った。
その結果、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂は、ともに相分離することなく酢酸エチルに透明に溶解(相溶)していた。
また、トナー調製において吐出孔の詰まりは発生しなかったが、トナーの体積平均粒径(Dv)は、5.3μm、Dv/Dnは、1.47と非常に粒度分布の広いトナーであり、ランニングテスト5万枚目の画像は明らかに変化しており、画像濃度が低下し、細線が太り、地肌汚れの増加が認められた。結果を下記表2に示す。
また、比較例3で調製したトナー母体粒子を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した結果を図22に示す。図22において、黒い部分は離型剤(WA−3)であり白い部分は測定時に離型剤が抜け落ちてしまったところ(本来離型剤である部分)であり、その他の部分が結着樹脂(ポリエステル樹脂A)である。これより、結着樹脂と離型剤とが相分離していることが確認された。
【0215】
(比較例4)
実施例5において、トナー組成液の調製方法を以下の方法に変えたこと以外は、実施例5と同様の方法で、比較例4のトナー組成液、トナー、キャリア、及び現像剤を調製した。
【0216】
<トナー組成液の調製>
−ワックス分散液の調製−
撹拌羽と温度計をセットした容器に、WA−8を20質量部及び酢酸エチル80質量部を仕込み、60℃に加温しながら20分間撹拌し、WA−8を溶解させた後、急冷してWA−8の微粒子を析出させた。このWA−8分散液を0.3μmφのジルコニアビーズを充填したスターミル(商品名:LMZ06、アシザワファインテック株式会社製)を用いて回転数1,800回転/分間にて更に細かく分散し、ワックスの平均粒径が0.3μm、最大粒径が0.8μmのWA−8分散液を調製した。ワックスの粒径は、粒度分布計(商品名:NPA150、マイクロトラック社製)で測定した。
【0217】
酢酸エチル676.7質量部に、結着樹脂としてのポリエステル樹脂Bを263.3質量部溶解させた後、25℃にて攪拌羽を有するミキサーを使用して前記WA−8分散液を50質量部、実施例1で調製したカーボンブラック分散液50質量部を混合してトナー組成液を調製した。
【0218】
比較例4のトナー組成液、トナー、及び現像剤について、実施例1と同様の方法で、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、トナー粒子中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、吐出孔の閉塞の評価、トナーの粒径及び粒度分布の測定、耐ホットオフセット性の評価、及び画像安定性の評価を行った。
その結果、トナー組成液中の離型剤と結着樹脂とは相分離していることが確認された。
また、一部の吐出孔に閉塞が認められ、トナー調製開始から6時間経過後の吐出量は初期に比べて38%減少した。トナーの体積平均粒径(Dv)は、5.0μm、Dv/Dnは、1.28であり、微粉量の増加が認められた。耐ホットオフセット性は良好であったが、ランニングテスト5万枚目の画像は、細線の若干の太りと地肌汚れの若干の増加が認められた。結果を下記表2に示す。
また、比較例4で調製したトナー母体粒子を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEにて観察した結果を図23に示す。図23において、黒く細長い部分は離型剤(WA−8)であり、白い部分は測定時に離型剤が抜け落ちてしまったところ(本来離型剤である部分)であり、その他の部分が結着樹脂(ポリエステル樹脂B)である。これより、結着樹脂と離型剤とが相分離していることが確認された。
【0219】
(比較例5)
実施例5において、トナー組成液の調製方法及びトナーの調製方法を以下の方法に変えたこと以外は、実施例5と同様の方法で、比較例5のトナー組成液、トナー、キャリア、及び現像剤を調製した。
【0220】
<トナー組成液の調製>
実施例5のトナー組成液の調製において、溶解温度を50℃に変えて60℃としたこと以外は、実施例5と同様の方法で比較例5のトナー組成液を調製した。
【0221】
<トナーの調製>
実施例5のトナーの調製において、トナー組成液及びトナー組成液が接するトナーの製造装置の部材を50±1℃で温度制御したことに変えて60±1℃で温度制御したこと以外は、実施例5と同様の方法で、比較例5のトナーを調製した。
【0222】
比較例5のトナー組成液、トナー、及び現像剤について、実施例1と同様の方法で、トナー組成液中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、トナー粒子中の離型剤及び結着樹脂の分離の分析、吐出孔の閉塞の評価、トナーの粒径及び粒度分布の測定、耐ホットオフセット性の評価、及び画像安定性の評価を行った。
その結果、トナー組成液中の離型剤と結着樹脂とは相分離していることが確認された。
また、一部の吐出孔に閉塞が認められ、トナー調製開始から6時間経過後の吐出量は初期に比べて29%減少した。トナーの体積平均粒径(Dv)は、5.4μm、Dv/Dnは、1.22であり、微粉量の増加が認められた。耐ホットオフセット性は良好であったが、ランニングテスト5万枚目の画像は、地肌汚れの若干の増加が認められた。結果を下記表2に示す。
また、比較例5で調製したトナー母体粒子を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEにて観察した結果を図24に示す。図24において、黒い部分が離型剤(WA−8)であり、白い部分は測定時に離型剤が抜け落ちてしまったところ(本来離型剤である部分)であり、その他の部分が結着樹脂(ポリエステル樹脂B)である。これより、結着樹脂と離型剤とが相分離していることが確認された。
【0223】
実施例1〜7及び比較例1〜5のトナー組成液の調製条件及びトナーの調製条件をまとめて下記表1に示す。また、実施例1〜7及び比較例1〜5の結果を下記表2にまとめて示す。
【0224】
【表1】

【0225】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明のトナーの製造方法は、小粒径かつ単一分散性を有するトナーを効率よく生産することができ、離型剤に起因する吐出孔の詰まりが生じることがなく、耐ホットオフセット性に優れ、更に地肌汚れがなく、高精細で高品質な画像を長期にわたって提供することができる。そのため、本発明のトナーの製造方法で製造されたトナー及び現像剤は、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するための現像剤に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0227】
1 トナー製造装置
2 液滴形成手段
6 トナー組成液供給口
11 液柱共鳴液滴形成手段
12 気流通路
12−1 第1の気流通路
12−2 第2の気流通路
12−3 補助搬送気流通路
13 原料収容器
14 トナー組成液
15 液循環ポンプ
16 液供給管
17 液共通供給路
18 液柱共鳴液室
19 吐出孔
20 振動発生手段
21 液滴
22 液戻り管
44 吐出孔の角度
60 トナー粒子形成手段
61 チャンバ
62 トナー捕集手段
63 トナー貯留部
64 搬送気流導入口
65 搬送気流排出口
66 シュラウド
67 補助搬送気流導入口
68 補助搬送気流
69 接液面
101、102 搬送気流
P1 液圧力計
P2 チャンバ内圧力計
【先行技術文献】
【特許文献】
【0228】
【特許文献1】特開平7−84401号公報
【特許文献2】特開平5−341577号公報
【特許文献3】特許第3786034号公報
【特許文献4】特許第3786035号公報
【特許文献5】特開昭57−201248号公報
【特許文献6】特開2006−293320号公報
【特許文献7】特開2008−64979号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含有するトナー組成物を有機溶剤に溶解乃至分散させ、かつ、前記結着樹脂と前記離型剤とを相分離しないように溶解させたトナー組成液を調製するトナー組成液調製工程と、
複数の吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動手段により振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、前記定在波の腹となる領域に形成された前記複数の吐出孔から前記トナー組成液を該吐出孔の外側に周期的に吐出して液滴を形成する液滴形成工程と、
前記液滴形成工程で形成された液滴から前記有機溶剤を除去し、前記結着樹脂と前記離型剤とが相分離しているトナー粒子を形成するトナー粒子形成工程と、
を含むことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、複数の吐出孔が形成されている請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
液滴形成工程におけるトナー組成液の温度が、下記式(I)を満たす請求項1から2のいずれかに記載のトナーの製造方法。
トナー組成液の温度(℃)<[有機溶剤の沸点(℃)−20(℃)]・・・式(I)
【請求項4】
離型剤が、合成エステルワックス、合成アミドワックス、及びマイクロクリスタリンワックスの少なくともいずれかを含む請求項1から3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
離型剤の添加量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部〜50質量部である請求項1から4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
結着樹脂が、重量平均分子量5,000〜300,000のポリエステル樹脂及びスチレンアクリル酸共重合体の少なくともいずれかを含む請求項1から5のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項7】
液柱共鳴液室に形成された吐出孔の開口径が、3μm〜30μmである請求項1から6のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項8】
振動手段が、液柱共鳴液室の複数の吐出孔が形成された面に対して平行な振動面を有し、前記振動面が前記液柱共鳴液室の複数の吐出孔が形成された面に対して垂直方向に縦振動する振動手段である請求項1から7のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項9】
液滴形成工程におけるトナー組成液の温度及び該トナー組成液が接する部材の温度を所定の温度で制御する温度制御工程を含む請求項3から8のいずれかに記載のトナー製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のトナーの製造方法により得られ、体積平均粒径が1μm〜8μmであり、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)が、1.00〜1.15の範囲にあることを特徴とするトナー。
【請求項11】
少なくとも請求項10に記載のトナーと、キャリアとを含有することを特徴とする現像剤。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−185219(P2012−185219A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46610(P2011−46610)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】