説明

トナー、現像剤、及び画像形成方法

【課題】離型剤の表面偏在を抑制することにより、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保存性に優れると共に、キャリアへの耐フィルミング性にも優れたトナー、現像剤、画像形成方法の提供。
【解決手段】第一の結着樹脂、着色剤、離型剤、及び離型剤分散樹脂を含有し、下記(I)〜(II)の要件を満たすトナー。
(I)第一の結着樹脂が、光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する非結晶性ポリエステル樹脂(a)を含有し、該樹脂(a)のポリヒドロキシカルボン酸骨格の光学純度が80モル%以下である。
(II)離型剤が、グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、静電印刷、ファクシミリ、プリンタ、静電記録等の電子写真方式の画像形成に用いられるトナー、該トナーを用いた現像剤、及び該現像剤を用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置、静電記録装置等において、電気的又は磁気的潜像はトナーによって顕像化されている。例えば電子写真法では、感光体上に静電荷像(潜像)を形成した後、トナーを用いて潜像を現像してトナー画像を形成している。トナー画像は、通常、紙等の記録媒体上に転写された後、加熱等の方法で定着される。
加熱定着方式の画像形成装置においては、トナーを熱溶融させて紙等の記録媒体上に定着させる過程で多くの電力が必要となるため、省エネルギー化を図る観点から、トナーについては低温定着性が重要な特性の一つとなっている。また、加熱定着方式においては、熱定着後に定着ローラ等の加熱部材からトナーが適切に離型することも重要な特性である(耐ホットオフセット性)。
トナーの耐ホットオフセット性を向上させる手段としては、従来のオイル塗布方式に替わり近年ではトナー中に離型剤を添加するオイルレストナーが主流となっている。一般にトナーに用いられる離型剤としては、例えば、カルナウバワックス(植物)、パラフィンワックス(原油)などの天然由来のものや、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの合成ワックス等が知られており、これらを用いた種々のトナーが開発されている。しかしながら、これらの離型剤を用いた場合でも、トナーの耐ホットオフセット性としては未だ不十分であった。
【0003】
これに対して、特許文献1では、平均重合度が2〜10のポリグリセリンと平均炭素数が16〜24の脂肪酸からなるポリグリセリンエステルを離型剤として用いることにより、耐ホットオフセット性が大きく向上することが開示されている。しかし、低温定着性については昨今の省エネルギー化の要求に対して不十分であるという課題があった。
トナーの低温定着性を向上させるには、トナーの大半を占める結着樹脂の熱特性を制御する必要がある。その手段の一つとして、特許文献2〜3では、L体とD体のモノマー比率を規定したポリヒドロキシカルボン酸骨格を主鎖の一部に含有する非結晶性ポリエステル樹脂(ポリ乳酸等)を結着樹脂として用いたトナーが提案されている。これにより、従来のポリエステル樹脂を用いたトナーよりも優れた低温定着性が得られている。しかし、結着樹脂として非結晶性のポリ乳酸樹脂を用いて溶解懸濁法によるトナーを製造した際に顕著に現れる特有の課題として、離型剤をトナー内部に均一に分散させることが困難であり、離型剤がトナー表面に偏在するという問題があった。
このように、結着樹脂としてポリヒドロキシカルボン酸骨格を主鎖の一部に含有する非結晶性ポリエステル樹脂(ポリ乳酸等)を含有するトナーにおいて、離型剤の表面偏在を抑制することにより、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保存性に優れると共に、キャリアへの耐フィルミング性にも優れたトナー及びその関連技術は未だ得られておらず、更なる改良、開発が望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の諸問題を解決し、結着樹脂としてポリヒドロキシカルボン酸骨格を主鎖の一部に含有する非結晶性ポリエステル樹脂(ポリ乳酸等)を含有するトナーにおいて、離型剤の表面偏在を抑制することにより、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保存性に優れると共に、キャリアへの耐フィルミング性にも優れたトナー、該トナーを用いた現像剤、及び該現像剤を用いた画像形成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、前記課題が下記の1)〜14)の発明によって解決されることを見出した。即ち、低温定着性に優れるポリヒドロキシカルボン酸骨格を主鎖の一部に含有する非結晶性ポリエステル樹脂(ポリ乳酸等)を結着樹脂として用いた場合にも、離型剤の表面偏在を抑制し、トナー中に均一に微分散することが可能となり、前記課題を効果的に解決できることを見出した。
1) 少なくとも第一の結着樹脂、着色剤、離型剤、及び離型剤分散樹脂を有機溶媒中に溶解乃至分散させた油相組成物を水系媒体中で分散乃至乳化させて得られる、下記(I)〜(II)の要件を満たすことを特徴とするトナー。
(I)前記第一の結着樹脂が少なくとも光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を主鎖の一部に含有する非結晶性ポリエステル樹脂(a)を含有し、
該非結晶性ポリエステル樹脂(a)のポリヒドロキシカルボン酸骨格は、モノマー成分換算で、光学純度X(モル%)=|X(L体)−X(D体)|〔ただし、X(L体)は光学活性モノマー換算でのL体比率(モル%)、X(D体)は光学活性モノマー換算でのD体比率(モル%)を表す〕が80モル%以下である。
(II)前記離型剤が、少なくともグリセリン又は平均重合度が2〜10のポリグリセリンと、平均炭素数が18〜24の脂肪酸をエステル化させた融点が55〜80℃のグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルを含有する。
2) 前記離型剤分散樹脂が、少なくともポリオレフィン樹脂とビニル樹脂とからなるグラフト重合体及び/又は炭素数が16〜24の脂肪酸と3価以上の多価アルコールとを反応させて得られる分岐構造を有する脂肪酸エステルを含有するポリエステル樹脂を含有することを特徴とする1)に記載のトナー。
3) 前記非結晶性ポリエステル樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)が10000〜40000であることを特徴とする1)又は2)に記載のトナー。
4) 前記グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルのトナー中における分散径が0.2〜1.0μmであることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載のトナー。
5) 前記グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルを構成する脂肪酸が、ベヘン酸を含有することを特徴とする1)〜4)のいずれかに記載のトナー。
6) 前記離型剤がグリセリンエステル又はジグリセリンエステルであることを特徴とする1)〜5)のいずれかに記載のトナー。
7) 前記離型剤分散樹脂の含有量が前記離型剤100質量部に対して、40〜90質量部であることを特徴とする1)〜6)のいずれかに記載のトナー。
8) トナー表面に第二の結着樹脂(b)からなる樹脂微粒子を付着させた構造を有することを特徴とする1)〜7)のいずれかに記載のトナー。
9) 前記非結晶性ポリエステル樹脂(a)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する直鎖状のポリエステルジオールであることを特徴とする1)〜8)のいずれかに記載のトナー。
10) 前記非結晶性ポリエステル樹脂(a)のポリヒドロキシカルボン酸骨格が、L−ラクチドとD−ラクチドの混合物を開環重合して得られたものであることを特徴とする1)〜9)のいずれかに記載のトナー。
11) 前記非結晶性ポリエステル樹脂(a)のポリヒドロキシカルボン酸骨格が、メソラクチドを開環重合して得られたものであることを特徴とする1)〜9)のいずれかに記載のトナー。
12) 1)〜11)のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
13) 更にキャリアを含有することを特徴とする12)に記載の現像剤。
14) 少なくとも下記(イ)〜(ニ)の工程を含むことを特徴とする画像形成方法。
(イ)静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程
(ロ)前記静電潜像を12)又は13)記載の現像剤を用いて可視像を形成する現像工程
(ハ)前記可視像を記録媒体に転写する転写工程
(ニ)前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、上記従来の諸問題を解決し、結着樹脂としてポリヒドロキシカルボン酸骨格を主鎖の一部に含有する非結晶性ポリエステル樹脂(ポリ乳酸等)を含有するトナーにおいて、離型剤の表面偏在を抑制することにより、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保存性に優れると共に、キャリアへの耐フィルミング性にも優れたトナー、該トナーを用いた現像剤、及び該現像剤を用いた画像形成方法を提供できる。
また、本発明の画像形成方法では、本発明のトナーを用いることにより、高光沢で高画質な画像を長期に亘って提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の画像形成方法に用いる画像形成装置の一例を示す概略説明図。
【図2】本発明の画像形成方法に用いる画像形成装置の他の例を示す概略説明図。
【図3】本発明の画像形成方法に用いるタンデム型カラー画像形成装置の一例を示す概略説明図。
【図4】図3に示す画像形成装置の一部拡大概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
<トナー>
本発明のトナーは、少なくとも第一の結着樹脂、着色剤、離型剤、及び離型剤分散樹脂を有機溶媒中に溶解乃至分散させた油相組成物を水系媒体中で分散乃至乳化させて得られるトナーであって、前記(I)〜(II)の要件を満たすことを特徴とする。なお、必要に応じて上記以外の公知の成分を含有してもよい。
―結着樹脂―
本発明のトナーは、第一の結着樹脂として、少なくとも光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を主鎖の一部に含有する非結晶性ポリエステル樹脂(a)を含有することを特徴とする。
第一の結着樹脂は、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を主鎖の一部に含有する非結晶性ポリエステル樹脂(a)を含有するが、この樹脂は主鎖に高濃度にエステル基を有し、且つ短鎖のアルキル基を側鎖に有する。これにより、従来のポリヒドロキシカルボン酸骨格以外を主鎖とするポリエステル樹脂に比べて分子量当りのエステル基の濃度が高く、紙との親和性(接着性)に優れるため、良好な低温定着性が得られると共に、非結晶性状態であるため、透明性にも優れる。
【0009】
前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格は、ヒドロキシカルボン酸が(共)重合した骨格を有し、ヒドロキシカルボン酸を直接脱水縮合する方法、対応する環状エステルを開環重合する方法、リパーゼなどの酵素反応を利用して合成する方法などで形成できる。中でも、重合されるポリヒドロキシカルボン酸の分子量を大きくするという観点から環状エステルの開環重合が好ましい。
ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成する光学活性モノマーとしては、トナーの透明性と熱特性の観点から、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは炭素数3〜6のヒドロキシカルボン酸である。その例としては、乳酸、3−ヒドロキシ酪酸などが挙げられるが、特に好ましいのは乳酸である。ポリマーの原材料としてヒドロキシカルボン酸以外に、ヒドロキシカルボン酸の環状エステルを用いることもでき、その場合には重合して得られる樹脂のヒドロキシカルボン酸骨格は、環状エステルを構成するヒドロキシカルボン酸が重合した骨格となる。例えば、ラクチドを用いて得られる樹脂のポリヒドロキシカルボン酸骨格は、乳酸が重合した骨格になる。
【0010】
前記非結晶性ポリエステル樹脂(a)のポリヒドロキシカルボン酸骨格はモノマー成分換算で光学純度X(モル%)=|X(L体)−X(D体)|〔ただし、X(L体)は光学活性モノマー換算でのL体比率(モル%)、X(D体)は光学活性モノマー換算でのD体比率(モル%)を表す〕が80モル%以下である必要があり、60モル%以下であることが好ましい。これにより、溶剤溶解性及び樹脂の透明性が向上する。ポリマーの原材料として環状エステルを用いる場合には、L体とD体を混合して用いることもできるが、メソ体を開環重合する方法や、D体、L体のいずれかとメソ体を混合して用いる方法でも、前記範囲の光学純度とすることができ、同様の効果が得られる。
また、透明性や熱特性を損なわない範囲で他の骨格の樹脂を共重合することも可能である。たとえば、各種のジオール、ジカルボン酸類、グリセリンやグリコール酸などの多価アルコール、リンゴ酸、酒石酸などの多価ヒドロキシ酸を併用することで、樹脂の組成を変更することも可能である。
前記非結晶性ポリエステル樹脂(a)の重量平均分子量(以下、Mwと略記)は、耐熱保存性と低温定着性の観点から、7000〜70000が好ましく、さらに好ましくは10000〜40000、最も好ましくは15000〜35000である。
また、前記非結晶性ポリエステル樹脂(a)のガラス転移温度(以下、Tgと略記)は50〜70℃が好ましく、55〜65℃がより好ましい。Tgが50℃未満では耐熱保存性が不十分となることがあり、70℃を超えると低温定着性が不十分となることがある。
【0011】
前記光学純度Xの測定方法は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリエステル骨格を有する樹脂乃至該樹脂を含むトナーを純水と1N水酸化ナトリウム及びイソプロピルアルコールの混合溶媒に投入し、70℃で加熱攪拌して加水分解をする。次いで、ろ過により液中の固形分を除去した後、硫酸を加えて中和し、ポリエステル樹脂から生成したL−及び/又はD−ヒドロキシカルボン酸を含有する水性溶液を得る。次いで、該水性溶液を、キラル配位子交換型のカラムSUMICHIRAL OA−5000(株式会社住化分析センター製)を用いた高速液体クロマトグラフ(HPLC)で測定し、L−ヒドロキシカルボン酸由来のピーク面積S(L)とD−ヒドロキシカルボン酸由来のピーク面積S(D)を算出する。そして該ピーク面積から次の式により求めることができる。
X(L体)モル%=100×S(L)/〔S(L)+S(D)〕
X(D体)モル%=100×S(D)/〔S(L)+S(D)〕
光学純度Xモル%=|X(L体)−X(D体)|
【0012】
ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成する際に、ジオール(11)を添加して共重合することで、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール(a11)が得られる。ジオールとして好ましいものは、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)のアルキレンオキサイド〔アルキレンオキサイドを以下AOと略記する。具体例としてはエチレンオキサイド(以下EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、ブチレンオキサイド(以下BOと略記)などが挙げられる〕付加物(付加モル数2〜30)、及びこれらの併用であり、更に好ましくは、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールAのAO付加物であり、特に好ましくは1,3−プロパンジオールである。
【0013】
非結晶性ポリエステル樹脂(a)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有する直鎖状のポリエステルジオール(a11)を含有すると、低温定着性が更に向上し、好ましい。また、非結晶性ポリエステル樹脂(a)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有する直鎖状のポリエステルジオール(a11)と、(a11)以外のポリエステルジオール(a12)とを、伸長剤とともに反応させて得られる直鎖状のポリエステル系樹脂(A)を含有すると、耐熱保存性が更に向上するため好ましい。
直鎖状のポリエステルは構造が単純であり、分子量や物性(熱特性、他樹脂との相溶性など)の制御が容易である。また、前記直鎖状のポリエステル樹脂(A)は(a11)と(a12)のユニットから構成され、(a12)のユニットに用いるポリエステル種、分子量、構造によってもポリエステル樹脂(A)の物性制御が可能になるというメリットがあり、従来の乳酸を含有する組成物に対し、物性制御手段を明確に具備させたことが特徴である。
【0014】
(a11)以外のポリエステルジオール(a12)としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール(11)とジカルボン酸(13)の反応物と同様のものが使用可能であり、重合時にジオールとジカルボン酸の仕込み比率を調整して、水酸基を過剰にすることで得られる。(a12)として好ましいものは、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)のAO(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2〜30)、及びこれらの併用から選ばれる1種以上と、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、及びこれらの併用から選ばれる1種以上との反応物である。
(a11)及び(a12)の数平均分子量(以下、Mnと略記)は、(A)の物性調整の観点から、500〜30000が好ましく、更に好ましくは1000〜20000、最も好ましくは2000〜5000である。
【0015】
(a11)と(a12)の伸長に用いる伸長剤としては、(a11)及び(a12)に含有される水酸基と反応可能な官能基を2つ有しているものであれば特に制限されないが、ジカルボン酸(13)及びその無水物、ポリイソシアネート(15)、ポリエポキシド(19)のうち、2官能のものが挙げられる。これらのうち、(a11)及び(a12)との相溶性の観点から、好ましいものは、ジイソシアネート化合物、ジカルボン酸化合物であり、更に好ましくはジイソシアネート化合物である。具体的には、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸(及び無水物)、フマル酸(及び無水物)、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4′−及び/又は4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート(水添MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。中でも好ましいものは、コハク酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸(及び無水物)、フマル酸(及び無水物)、HDI、IPDIであり、最も好ましいものはマレイン酸(及び無水物)、フマル酸(及び無水物)、及びIPDIである。
【0016】
直鎖状ポリエステル樹脂(A)中の伸長剤の含有量は、透明性と熱特性の観点から、好ましくは0.1〜30質量%であり、更に好ましくは1〜20質量%である。
直鎖状ポリエステル樹脂(A)を構成する、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール(a11)と(a11)以外のポリエステルジオール(a12)との質量比は、好ましくは31:69〜90:10であり、透明性と熱特性の観点から、更に好ましくは、40:60〜80:20である。
【0017】
前記樹脂微粒子を構成する第二の結着樹脂としては特に制限はなく、公知の樹脂の中から適宜選択することができるが、Tgが55〜80℃のポリエステル樹脂や、スチレン−アクリル系樹脂が好ましい。Tgが55℃未満の場合には耐熱保存性が不十分になることがあり、80℃を超えると低温定着性が不十分になることがある。従って、55℃未満の場合や80℃を超える場合は低温定着性と耐熱保存性の両立が難しくなることがある。
前記第二の結着樹脂のMwは9000〜45000が好ましい。
【0018】
前記結着樹脂としては、第一の結着樹脂である光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を主鎖の一部に含有する非結晶性ポリエステル樹脂(a)と、第二の結着樹脂以外に、必要に応じて適宜好ましい公知の樹脂を併用することができる。
好ましい併用樹脂としては、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらの中でもポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。また、併用する樹脂は、後述する製造方法(I)において使用する反応性プレポリマーと、活性水素基含有化合物とが反応して得られる樹脂であっても良い。
【0019】
前記結着樹脂のTgは、例えば、DSC(示差走査熱量分析)又は、フローテスター(DSCで測定できない場合)により測定することが可能である。
DSC測定は、例えば、島津製作所製DSC−60を用い、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で行うことができる。
フローテスター測定には、例えば、島津製作所製の高架式フローテスターCFT500型を用いることができる。その測定条件は下記のとおりであり、後述する実施例についても同様である。
(フローテスター測定条件)
・荷重:30kg/cm
・昇温速度:3.0℃/min
・ダイ口径:0.50mm
・ダイ長さ:10.0mm
【0020】
前記結着樹脂の内、ポリウレタン樹脂以外の樹脂については、Mn及びMwを、テトラヒドロフラン(THF)可溶分について、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により以下の条件で測定することができる。
・装置(一例) :東ソー製HLC−8120
・カラム(一例):TSKgelGMHXL(2本)
:TSKgelMultiporeHXL−M(1本)
・試料溶液 :0.25%のTHF溶液
・溶液注入量 :100μL
・流量 :1mL/分
・測定温度 :40℃
・検出装置 :屈折率検出器
・基準物質 :東ソー製標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYS
TYRENE)12点
(分子量500 1050 2800 5970 9100
18100 37900 96400 190000
355000 1090000 2890000)
【0021】
また、ポリウレタン樹脂のMn及びMwは、GPCにより以下の条件で測定することができる。
・装置(一例) :東ソー製HLC−8220GPC
・カラム(一例):GuardcolumnαTSKgelα−M
・試料溶液 :0.125%のジメチルホルムアミド溶液
・溶液注入量 :100μL
・流量 :1mL/分
・温度 :40℃
・検出装置 :屈折率検出器
・基準物質 :東ソー製標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYS
TYRENE)12点
(分子量500 1050 2800 5970 9100
18100 37900 96400 190000
355000 1090000 2890000)
【0022】
―離型剤―
本発明のトナーは、離型剤として、グリセリン又は平均重合度が2〜10のポリグリセリンと、平均炭素数が18〜24の脂肪酸をエステル化させたグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルを含有することを特徴とする。該グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの融点は、55〜80℃の範囲とするが、60〜75℃が好ましく、65〜75℃が更に好ましい。これにより、トナーの定着時に優れた耐ホットオフセット性(離型性)を示すと共に、トナーの耐熱保存性と耐フィルミング性も良好となる。該融点が55℃未満であると、トナーの耐熱保存性、及び耐フィルミング性が悪化したり、トナー中での微分散が困難となり、トナー粒子間でのグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの含有量のばらつきが顕著になり、離型性の低下や、トナーの造粒性の悪化に繋がったりするので好ましくない。一方、80℃を超えると、トナーの低温定着性が低下したり、画像光沢が低下したりするため好ましくない。
【0023】
なお、前記グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの融点は、例えばDSCシステム(「DSC−60」、島津製作所製)を用いて測定することができる。
即ち、まず、グリセリンエステル又はポリグリセリンエステル5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、20℃から昇温速度10℃/minで200℃まで加熱する。その後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/minで200℃まで加熱し、DSC曲線を計測する。得られたDSC曲線から、DSC−60システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時におけるDSC曲線の吸熱ピークを選択し、グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの融点を求めることができる。
【0024】
前記グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルを合成する際には、グリセリン又は平均重合度が2〜10のポリグリセリンを用いるが、平均重合度が大きいほど、トナーが正帯電性になる傾向があること、及び耐ホットオフセット性の点から、グリセリン又は平均重合度が2のポリグリセリンが好ましい。ポリグリセリンの平均重合度が10を超える場合は、ポリグリセリンの溶融粘度が上昇し、トナーの耐オフセット性が悪化するため好ましくない。
前記グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルは、分子中にエステル結合を多く含み、且つ、分岐鎖構造を有することにより前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格を主鎖の一部に含有する非結晶性ポリエステル樹脂(a)との適度な親和性を有する。その結果、従来の離型剤ではトナー中への内包が困難であった前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格を主鎖の一部に含有する非結晶性ポリエステル樹脂(a)を用いた場合でも、トナー中に内包可能であり、均一に微分散させることができる。なお、ポリグリセリンの平均重合度は、ポリグリセリンの水酸基価から算出することができる。
【0025】
なお、水酸基価とは、試料1gを以下の条件でアセチル化したとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)量[mg]である。
水酸基価の測定方法は次のとおりである。
まず、試料約1gを精密に量り、丸底フラスコに入れ、無水酢酸・ピリジン試液5mLを正確に量って加え、フラスコの口に小漏斗を載せ、95〜100℃の油浴中に底部を約1cm浸して1時間加熱する。次いで冷却し、水1mLを加えてよく振り混ぜ、更に10分間加熱する。次いで冷却し、小漏斗及びフラスコの首部をエタノール5mLで洗い、指示薬としてフェノールフタレイン試液1mLを添加した後、過量の酢酸を0.5mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液で滴定する(本試験)。別に、試料を入れない点以外は、上記と同様にして空試験を行い、次の式により水酸基価が求められる。
水酸基価=〔(a[mL]−b[mL])×28.05〕/試料の採取量[g]+酸価
式中、a及びbは、それぞれ空試験及び本試験における0.5mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液の滴定量である。
【0026】
前記グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルを構成する炭素数18〜24の脂肪酸としては特に限定されないが、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。中でも、グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの融点を上昇させ、且つ、離型性にも優れることから、ステアリン酸、ベヘン酸が好ましく、ベヘン酸が特に好ましい。脂肪酸の炭素数が18未満である場合、グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの融点が低下し易く、トナーの耐熱保存性、及び耐フィルミング性の悪化に繋がると共に、トナー中での微分散が困難となり、トナー粒子間でのグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの含有量のばらつきが顕著になることから好ましくない。一方、脂肪酸の炭素数が24を超える場合は、グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの融点が高くなり過ぎてしまい、トナーの低温定着性が低下したり、画像光沢が低下したりすることから好ましくない。
前記グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの平均エステル化度(グリセリン又はポリグリセリンのOH基が脂肪酸とエステル化した割合)は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。前記平均エステル化度が90%未満である場合、トナーの耐ホットオフセット性が悪化することがあるため、好ましくない。
【0027】
本発明において、グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルは、従来の離型剤に比べ、低温で素早く溶解する性質(シャープメルト性)を有するが、更に、グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの100℃における溶融粘度が1〜50mPa・秒であることが好ましい。これにより、トナーの低温定着性及び耐オフセット性を向上させると共に、高光沢な画像を得ることができる。グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの100℃における溶融粘度が50mPa・秒を超える場合、トナーの低温定着性が充分に得られなくなることがあったり、高光沢な画像が得られなくなることがあったりするため、好ましくない。なお、溶融粘度は、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて測定することができる。
【0028】
本発明のトナー中におけるグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの分散径(最大方向の粒径)は0.2〜1.0μmであることが好ましい。分散径が1.0μmを超える場合は、個々のトナー粒子間でのグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの含有量のばらつきが大きくなって、トナーの離型性が低下することがあったり、トナーの粒度分布を悪化させる原因となったり、また、トナー表面にグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルが露出し易くなり、現像装置内やキャリアなどにグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルがフィルミングしたりすることがある。また、分散径が0.2μm未満である場合は、トナーの内部に存在するグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの割合が大きくなって、トナーの離型性が充分に得られないことがある。
トナー中におけるグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの分散径の測定方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナーをエポキシ樹脂に包埋して約100nmに超薄切片化し、四酸化ルテニウムにより染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率10,000倍で観察して写真撮影し、この写真を画像評価することにより、分散径を測定することができる。
【0029】
前記グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの具体例としては、上記の条件を満たすものであれば特に限定はされないが、以下のようなものが挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を併用しても良い。
・グリセリンの炭素数18〜24の脂肪酸エステル;
グリセリンステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリントリベヘネート、グリセリンリグノセレート、グリセリンジリグノセレート、グリセリントリリグノセレート
・ジグリセリン(平均重合度2)の炭素数18〜24の脂肪酸エステル;
ジグリセリンステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリントリステアレート、ジグリセリンテトラステアレート、ジグリセリンベヘネート、ジグリセリンジベヘネート、ジグリセリントリベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネート、ジグリセリンリグノセレート、ジグリセリンジリグノセレート、ジグリセリントリリグノセレート、ジグリセリンテトラリグノセレート
【0030】
・テトラグリセリン(平均重合度4)の炭素数18〜24の脂肪酸エステル;
テトラグリセリンステアレート、テトラグリセリンジステアレート、テトラグリセリントリステアレート、テトラグリセリンテトラステアレート、テトラグリセリンペンタステアレート、テトラグリセリンヘキサステアレート、テトラグリセリンベヘネート、テトラグリセリンジベヘネート、テトラグリセリントリベヘネート、テトラグリセリンテトラベヘネート、テトラグリセリンペンタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、テトラグリセリンリグノセレート、テトラグリセリンジリグノセレート、テトラグリセリントリリグノセレート、テトラグリセリンテトラリグノセレート、テトラグリセリンペンタリグノセレート、テトラグリセリンヘキサリグノセレート
【0031】
・ヘキサグリセリン(平均重合度6)の炭素数18〜24の脂肪酸エステル;
ヘキサグリセリンステアレート、ヘキサグリセリンジステアレート、ヘキサグリセリントリステアレート、ヘキサグリセリンテトラステアレート、ヘキサグリセリンペンタステアレート、ヘキサグリセリンヘキサステアレート、ヘキサグリセリンヘプタステアレート、ヘキサグリセリンオクタステアレート、ヘキサグリセリンベヘネート、ヘキサグリセリンジベヘネート、ヘキサグリセリントリベヘネート、ヘキサグリセリンテトラベヘネート、ヘキサグリセリンペンタベヘネート、ヘキサグリセリンヘキサベヘネート、ヘキサグリセリンヘプタベヘネート、ヘキサグリセリンオクタベヘネート、ヘキサグリセリンリグノセレート、ヘキサグリセリンジリグノセレート、ヘキサグリセリントリリグノセレート、ヘキサグリセリンテトラリグノセレート、ヘキサグリセリンペンタリグノセレート、ヘキサグリセリンヘキサリグノセレート、ヘキサグリセリンヘプタリグノセレート、ヘキサグリセリンオクタリグノセレート
【0032】
・デカグリセリン(平均重合度10)の炭素数18〜24の脂肪酸エステル;
デカグリセリンステアレート、デカグリセリンジステアレート、デカグリセリントリステアレート、デカグリセリンテトラステアレート、デカグリセリンペンタステアレート、デカグリセリンヘキサステアレート、デカグリセリンヘプタステアレート、デカグリセリンオクタステアレート、デカグリセリンノナステアレート、デカグリセリンデカステアレート、デカグリセリンウンデカステアレート、デカグリセリンドデカステアレート、デカグリセリンベヘネート、デカグリセリンジベヘネート、デカグリセリントリベヘネート、デカグリセリンテトラベヘネート、デカグリセリンペンタベヘネート、デカグリセリンヘキサベヘネート、デカグリセリンヘプタベヘネート、デカグリセリンオクタベヘネート、デカグリセリンノナベヘネート、デカグリセリンデカベヘネート、デカグリセリンウンデカベヘネート、デカグリセリンドデカベヘネート、デカグリセリンリグノセレート、デカグリセリンジリグノセレート、デカグリセリントリリグノセレート、デカグリセリンテトラリグノセレート、デカグリセリンペンタリグノセレート、デカグリセリンヘキサリグノセレート、デカグリセリンヘプタリグノセレート、デカグリセリンオクタリグノセレート、デカグリセリンノナリグノセレート、デカグリセリンデカリグノセレート、デカグリセリンウンデカリグノセレート、デカグリセリンドデカリグノセレート
これらの中でも、トナー中で上記の好適な範囲に微分散され易く、耐ホットオフセット性も良好なグリセリントリベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネートが好ましい。
【0033】
前記グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの前記トナーにおける含有量としては、トナー樹脂成分に対し、3〜15質量%含有することが好ましく、5〜12質量%がより好ましい。グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの含有量が3質量%未満である場合は、トナーの耐ホットオフセット性が低下することがあり、15質量%を超えると、トナーの流動性、転写性、及び帯電性が低下することがある。
本発明において、トナー中のグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの含有量Wは、融点と同様にDSCにより求められる。具体的には、まず、グリセリンエステル又はポリグリセリンエステル単体のDSC測定を行い、グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの単位質量当たりの融解熱量Qw[J/mg]を求める。次に、トナーのDSC測定を同様に行い、グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの吸熱ピークの面積から、トナー単位質量中に含まれるグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの融解熱量Qt[J/mg]を求める。そしてWは次の式により算出できる。
W(x)=Qt/Qw×100[質量%]
前記離型剤の導入方法としては、離型剤を樹脂内部に混練分散したものを溶媒に分散乃至溶解して油相組成物に添加する方法、離型剤分散樹脂と、必要に応じて結着樹脂とを溶解した溶媒中に離型剤を分散ないし溶解させて導入する方法等が好適に用いられる。
【0034】
―離型剤分散樹脂―
本発明のトナーは、離型剤分散樹脂を含有するが、該離型剤分散樹脂としては、少なくともポリオレフィン樹脂とビニル樹脂とからなるグラフト重合体、及び/又は、炭素数が16〜24の脂肪酸と3価以上の多価アルコールとを反応させて得られる分岐構造を有する脂肪酸エステルを含有するポリエステル樹脂を含有することが望ましい。
【0035】
―グラフト重合体―
前記グラフト重合体は、少なくともポリオレフィン樹脂からなる主鎖にビニル樹脂をグラフトさせた構造を有し、従来公知の方法により製造することができる。即ち、グラフト重合体の主鎖を構成するポリオレフィン樹脂を有機溶媒に溶解させ、この溶液に、側鎖を構成するビニル樹脂用のビニルモノマーを添加し、これらのポリオレフィン樹脂とビニルモノマーを、有機溶媒中で有機過酸化物などの重合開始剤の存在下でグラフト重合させる。ポリオレフィン樹脂とビニルモノマーの質量比は、耐フィルミング性の観点から、好ましくは1:99〜30:70、より好ましくは5:95〜25:75である。
【0036】
前記グラフト重合体には、未反応のポリオレフィン樹脂及びビニルモノマー同志の重合により生成したグラフトしていないビニル樹脂が混入するが、本発明の場合、これらの樹脂を分離除去する必要はなく、グラフト重合体は、これらの樹脂を含む混合樹脂として好ましく用いることができる。この混合樹脂において、未反応のポリオレフィン樹脂の含有量は、5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。また、グラフトしていないビニル樹脂の含有量は10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。また、混合樹脂中のグラフト重合体の割合は、85質量%以上、好ましくは90質量%以上とするのがよい。前記混合樹脂中のグラフト重合体の割合、その分子量及びビニルポリマーの分子量などは、反応原料の仕込み割合、重合反応温度、反応時間などの条件によって適宜調節することができる。
【0037】
本発明のトナーにおいては、離型剤は、その少なくとも一部がグラフト重合体中に内包されているか付着していることが好ましい。
離型剤及びグラフト重合体を含有するトナー組成物を溶解又は分散し液化させたトナー組成液中で、グラフト重合体は微細化した離型剤の再凝集を抑制すると共に、離型剤をトナー内部に移動させ、離型剤がトナー表面に偏在することを抑制する。離型剤とグラフト重合体の作用については、グラフト重合体のポリオレフィン樹脂部分が離型剤との親和性が高いことによるものと考えられる。離型剤をトナー内部に移動させる作用については、グラフト重合体と結着樹脂である非結晶性ポリエステル樹脂(a)との何らかの作用、あるいは、何らかの性質の順列によるものと考えられるが、詳細は不明である。
【0038】
前記ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィン類の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンなどが挙げられる。
前記ポリオレフィン樹脂としては、オレフィン類の重合体、その熱減成品、酸化物、変性物、オレフィン類と共重合可能な他のモノマーとの共重合物などが挙げられる。
前記オレフィン類の重合体の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、プロピレン/1−ヘキセン共重合体などが挙げられる。
オレフィン重合体の熱減成品とは、Mwが50000〜5000000のポリオレフィン樹脂を250〜450℃に加熱して低分子量化したポリオレフィン樹脂であり、熱減成後のMnから導かれる分子数に対応する1分子あたりの二重結合含有率が、30〜70%のものが好ましい。
前記オレフィン類の重合体の酸化物としては、例えば、前記例示したオレフィン類の重合体の酸化物などが挙げられる。
前記オレフィン類の重合体の変性物としては、例えば、前記例示したオレフィン類の重合体のマレイン酸誘導体付加物などが挙げられる。前記マレイン酸誘導体としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチルなどが挙げられる。
【0039】
前記オレフィン類と共重合可能な他のモノマーとの共重合物としては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸アルキルエステルなどのモノマーと、オレフィン類との共重合体などが挙げられる。前記不飽和カルボン酸の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などが挙げられる。前記不飽和カルボン酸アルキルエステルの例としては、炭素原子数1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素原子数1〜18のマレイン酸アルキルエステルなどが挙げられる。
本発明で用いるポリオレフィン樹脂は、ポリマー構造がポリオレフィンの構造を有していればよく、必ずしもモノマーがオレフィン構造を有している必要はない。このため、例えばサゾールワックスなどのポリメチレンなども使用することができる。
【0040】
前記ポリオレフィン樹脂の軟化点は、トナーの流動性を良好にするために、通常60〜170℃が好ましく、更に、有効な離型効果を発揮する観点からは、70〜150℃が好ましく、70〜130℃がより好ましい。
前記ポリオレフィン樹脂の分子量は、キャリアなどへのフィルミング及び離型性の観点から、通常、Mnが500〜20000、Mwが800〜100000であり、Mnが1000〜15000、Mwが1500〜60000であることが好ましく、Mnが1500〜10000、Mwが2000〜30000であることが特に好ましい。
【0041】
前記ビニル樹脂としては、従来公知のビニルモノマーの単独重合体又は共重合体が使用でき、例えば、スチレン系モノマー、炭素原子数1〜18の不飽和カルボン酸のアルキルエステル、ビニルエステル系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、ハロゲン元素含有ビニル系モノマー、ジエン系モノマー、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレンなどの不飽和ニトリル系モノマーが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記スチレン系モノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン、エチルスチレン、フェニルスチレン、ベンジルスチレンなどが挙げられる。
【0042】
前記炭素原子数1〜18の不飽和カルボン酸のアルキルエステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記ビニルエステル系モノマーの例としては、酢酸ビニルなどが挙げられ、前記ビニルエーテル系モノマーの例としては、ビニルメチルエーテルなどが挙げられ、前記ハロゲン元素含有ビニル系モノマーの例としては、塩化ビニルなどが挙げられ、前記ジエン系モノマーの例としては、ブタジエン、イソブチレンなどが挙げられる。
これらの中では、スチレン系モノマー、不飽和カルボン酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、及びその併用が好ましく、スチレン;スチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は(メタ)アクリロニトリルとの併用が特に好ましい。
【0043】
前記ビニル樹脂のSP値(ソルビリティー パラメーター)は、結着樹脂である非結晶性ポリエステル樹脂(a)のSP値を考慮して選択する。なお、SP値は公知のFedors法で算出することができる。
前記ビニル樹脂の分子量は、通常、Mnが1500〜100000、Mwが5000〜200000であり、Mnが2500〜50000、Mwが6000〜100000であることが好ましく、Mnが2800〜20000、Mwが7000〜50000であることが特に好ましい。
前記ビニル樹脂のTgは、保存性が良好となり、低温定着性が良好になる観点から、通常50〜80℃が好ましく、55〜70℃がより好ましい。
【0044】
本発明で用いるグラフト重合体の具体例としては、以下のポリオレフィン樹脂(R)とビニル樹脂(S)からなるものなどが挙げられる。
(R):ポリエチレンと(S):スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸ブチル共重合体、(R):ポリエチレンと(S):スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸ブチル/アクリル酸共重合体、(R):ポリプロピレンと(S):スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸ブチル共重合体、(R):ポリプロピレンと(S):スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸ブチル/アクリル酸共重合体、(R):ポリプロピレンと(S):スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸ブチル/マレイン酸モノブチル共重合体、(R):酸化型ポリプロピレンと(S):スチレン/アクリロニトリル共重合体、(R):ポリエチレン/ポリプロピレン混合物と(S):スチレン/アクリロニトリル共重合体、(R):エチレン/プロピレン共重合体と(S):スチレン/アクリル酸/アクリル酸ブチル共重合体、(R):エチレン/プロピレン共重合体と(S):スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸ブチル共重合体、(R):マレイン酸変性ポリプロピレンと(S):スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸/アクリル酸ブチル共重合体、(R):マレイン酸変性ポリプロピレンと(S):スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸/アクリル酸−2−エチルヘキシル共重合体、(R):ポリエチレン/マレイン酸変性ポリプロピレン混合物と(S):アクリロニトリル/アクリル酸ブチル/スチレン/マレイン酸モノブチル共重合体
【0045】
前記グラフト重合体の製造方法としては、例えば、まず、ポリオレフィン樹脂を、トルエン、キシレンなどの溶剤に溶解又は分散させ、100〜200℃に加熱した後、ビニルモノマーをパーオキサイド系開始剤とともに滴下して重合させ、次いで溶剤を留去してグラフト重合体を得る方法が挙げられる。前記パーオキサイド系開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキサイドベンゾエートなどが挙げられる。
前記パーオキサイド系開始剤の量は、反応原料の質量に基づき適宜調整することができ、通常、0.2〜10質量%であるが、0.5〜5質量%が好ましい。
また、未反応のポリオレフィン樹脂及びビニル樹脂を含めたグラフト重合体の添加量は、離型剤の分散安定性の面から、離型剤100質量部に対し、30〜100質量部が好ましく、40〜90質量部がより好ましい。
【0046】
―分岐構造を有する脂肪酸エステルを含有するポリエステル樹脂―
前記分岐構造を有する脂肪酸エステルを含有するポリエステル樹脂は、少なくとも炭素数が16〜24の脂肪酸と、3価以上の多価アルコールとを反応させて得られる分岐構造を有する脂肪酸エステルを、従来公知のポリエステル樹脂と従来公知の方法により反応させることで得られる。
【0047】
―分岐構造を有する脂肪酸エステル―
前記分岐構造を有する脂肪酸エステルは、少なくとも炭素数が16〜24の脂肪酸と、3価以上の多価アルコールとを従来公知の方法で反応させることにより得られる。
―炭素数16〜24の脂肪酸―
前記脂肪酸としては炭素数16〜24のものが好ましく、炭素数18〜24のものがより好ましい。具体的には、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の単体、又はそれらの混合物等が挙げられる。前記炭素数が16未満であると、前記分岐構造を有する脂肪酸エステルを含有するポリエステル樹脂のTgが低下し、トナーの熱特性を悪化させ、充分な耐熱保存性が得られないことがあるため好ましくない。一方、前記炭素数が24を超えると、トナーの低温定着性を悪化させることがあるため好ましくない。
―3価以上の多価アルコール―
前記3価以上の多価アルコールとしては特に制限されず、従来公知のものを用いることができるが、その例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ぺンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールが挙げられる。
【0048】
―ポリエステル樹脂―
前記ポリエステル樹脂としては特に制限されず、従来公知のものを用いることができるが、特に、ジカルボン酸成分とジオール成分とを基本構成成分とするものであるのが好ましい。
前記ジカルボン酸成分としては特に制限されず、その例としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、フタル酸、セバシン酸、イソデシル琥珀酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、及びそれらの低級アルキルエステル又は酸無水物等が挙げられる。該ジカルボン酸の低級アルキルエステルの例としては、該ジカルボン酸のモノメチルエステル、モノエチルエステル、ジメチルエステル、ジエチルエステル等が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。中でも、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0049】
前記ジオール成分としては特に制限されず、従来公知の脂肪族ジオール、芳香族ジオール等を使用することができる。
前記脂肪族ジオールとしては特に制限されず、その例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。中でも、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールが好ましい。
【0050】
前記芳香族ジオールとしては特に制限されず、その例としては、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。中でも、2.1≦n≦8であるポリオキシプロピレン−(n)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、及び2.0≦n≦3.0であるポリオキシエチレン−(n)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0051】
また、前記ポリエステル樹脂を構成する成分として、必要に応じて3価以上の多価カルボン酸及び/又は3価以上の多価アルコール成分を使用しても良い。
3価以上の多価カルボン酸成分及び/又は3価以上の多価アルコール成分としては特に制限されず、3価以上の多価カルボン酸成分の例としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、及びそれらの酸無水物を挙げることができ、3価以上の多価アルコール成分の例としては、ソルビトール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、2−メチルプロパントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。中でも、トリメリット酸及び/又はその酸無水物、ペンタエリスリトール及びトリメチロールプロパンが好ましい。これらは、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0052】
前記分岐構造を有する脂肪酸エステルを含有するポリエステル樹脂中の、分岐構造を有する脂肪酸エステルの含有量は、1〜5質量%が好ましく、1.5〜4質量%がより好ましい。該分岐構造を有する脂肪酸エステルの含有量が1質量%未満であると、トナー中での離型剤の微分散が困難になることがあるため好ましくなく、5質量%を超えると、トナーの耐熱保存性を悪化させることがあるため好ましくない。
【0053】
前記分岐構造を有する脂肪酸エステルを含有するポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、先にポリエステル樹脂を重合した後に、分岐構造を有する脂肪酸エステルを混合し、溶融混練することによって得ることができる。また、ポリエステル樹脂の重合時に分岐構造を有する脂肪酸エステルを添加することによって得ることもできる。特に、ポリエステル樹脂中における分岐構造を有する脂肪酸エステルの分散性の観点からは、後者の方法により製造するのが好ましい。
【0054】
前記分岐構造を有する脂肪酸エステルの製造方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
まず、触媒の存在下又は非存在下、反応温度120〜240℃程度で、前記3価以上の多価アルコールに対して、前記炭素数16〜24の脂肪酸の量を過剰に用いてエステル化反応を行い、エステル化粗生成物を得る。次いで、該エステル化粗生成物中の過剰の脂肪酸成分を、アルカリ水溶液を用いた脱酸により除去する。脱酸時に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属塩、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。アルカリの量は、カルボン酸とアルコールとを反応させて得られるエステル化粗生成物の酸価に対し1〜2倍当量が好ましい。また、脱酸の際、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素溶剤及び所望によりメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、又はエチレングリコール、プロピレングリコール等の水溶性有機溶剤を用いても良い。脱酸により分離したアルカリ水層を除去し、エステル層に温水又は熱水を加えて水層がほぼ中性になるまで水洗を繰り返す。炭化水素溶剤や水溶性有機溶剤を用いた場合は、水洗後に残存する溶剤を減圧留去することにより、前記分岐構造を有する脂肪酸エステルが得られる。
【0055】
前記ポリエステル樹脂の製造方法としては特に制限されず、従来公知の方法を用いることができるが、例えば、前述したジカルボン酸成分及びジオール成分、更に必要に応じて3価以上の多価カルボン酸成分及び/又は3価以上の多価アルコール成分を反応容器に投入し、加熱昇温して、エステル化反応又はエステル交換反応を行う方法が挙げられる。また、前述のように、ポリエステル樹脂の重合時に分岐構造を有する脂肪酸エステルを添加することで、分岐構造を有する脂肪酸エステルの分散性を良好にすることができる。エステル化反応又はエステル交換反応の温度は特に制限されないが、150〜300℃であることが好ましい。次いで常法に従って上記の反応で生じた水又はアルコールを除去する。その後、引き続いて重合反応を実施するが、このとき150mmHg(20kPa)以下の真空下でジオール成分を留出除去させながら縮重合を行う。縮重合反応の温度は、特に制限されないが、150〜300℃であることが好ましい。
前記エステル化反応、エステル交換反応又は縮重合に用いる触媒としては特に制限されないが、例えば、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の公知の触媒を用いることができる。
【0056】
前記分岐構造を有する脂肪酸エステルを含有するポリエステル樹脂の分子量としては、Mnが2000〜10000、Mwが5000〜80000であることが好ましく、Mnが3000〜5000、Mwが8000〜60000であることがより好ましい。
前記分岐構造を有する脂肪酸エステルを含有するポリエステル樹脂のTgは50〜80℃が好ましく、55〜70℃がより好ましい。
前記分岐構造を有する脂肪酸エステルを含有するポリエステル樹脂の添加量は、離型剤の分散安定性の面から、離型剤100質量部に対し、30〜100質量部が好ましく、40〜90質量部がより好ましい。
【0057】
―着色剤―
本発明のトナーに用いられる着色剤としては特に制限はなく、公知の着色剤から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記着色剤の色としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーなどのトナーの色に合わせて、前記着色剤の中から1種又は2種以上を適宜選択することができるが、カラートナーが好ましい。
黒色用顔料としては、例えばファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料等が挙げられる。
マゼンタ用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、48:1、49、50、51、52、53、53:1、54、55、57、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、177、179、202、206、207、209、211;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。
【0059】
シアン用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、60;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料、グリーン7、グリーン36等が挙げられる。
イエロー用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー0−16、1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、55、65、73、74、83、97、110、151、154、180;C.I.バットイエロー1、3、20、オレンジ36等が挙げられる。
トナー中における着色剤の含有量は、1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。前記含有量が1質量%未満であると、トナーの着色力が低下することがあり、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0060】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。このような樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリ乳酸、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明で用いる結着樹脂との相溶性の点から、ポリエステル、ポリ乳酸が好ましい。
【0061】
前記マスターバッチは、高せん断力をかけて、樹脂と着色剤を混合又は混練させて製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために有機溶媒を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。フラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶媒と共に混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水及び有機溶媒を除去する方法である。混合又は混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置を用いることができる。
【0062】
本発明のトナーには、前記成分の他に、特性の改善や調整などを目的として、必要に応じて種々の添加剤(帯電制御剤、異型化剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料など)を用いることも可能である。
―帯電制御剤―
帯電制御剤は、トナーに適切な帯電能を付与するために用いる。
帯電制御剤としては公知のものを使用できる。有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色乃至白色に近い材料が好ましく、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
帯電制御剤は市販品を使用してもよく、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(いずれもオリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(いずれも保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(いずれもヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製);キナクリドン、アゾ系顔料;スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物などが挙げられる。
【0064】
帯電制御剤は、着色剤と樹脂とを複合化したマスターバッチと共に溶融混練させた後、溶解乃至分散させてもよく、トナーの前記各成分と共に前記有機溶剤に直接、溶解乃至分散させる際に添加してもよく、あるいはトナー粒子製造後にトナー表面に固定させてもよい。中でも、含フッ素四級アンモニウム塩を粒子表面に付与する方法が好ましい。
帯電制御剤の含有量は、結着樹脂の種類、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるものであり、一義的に限定されるものではないが、前記結着樹脂に対し0.01〜5質量%が好ましく、0.02〜2質量%がより好ましい。添加量が5質量%を超えると、トナーの帯電性が大きくなって帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電気的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがあり、0.01質量%未満であると、帯電立ち上り性や帯電量が十分でなく、トナー画像に影響を及ぼすことがある。
【0065】
―異型化剤―
異型化剤は、トナーの形状を異型化する目的で用いる。
異型化剤としては特に制限はないが、層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物を含有することが好ましい。該変性層状無機鉱物としては、スメクタイト系の基本結晶構造を持つものを有機カチオンで変性したものが望ましい。また、層状無機鉱物の2価金属の一部を3価の金属に置換することにより、金属アニオンを導入することが出来る。しかし、金属アニオンを導入すると親水性が高くなるため、金属アニオンの少なくとも一部を有機アニオンで変性した層状無機化合物が望ましい。
【0066】
前記変性層状無機鉱物の有機物カチオン変性剤としては、第4級アルキルアンモニウム塩、フォスフォニウム塩、イミダゾリウム塩などが挙げられるが、第4級アルキルアンモニウム塩が望ましい。前記第4級アルキルアンモニウムの例としては、トリメチルステアリルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム等が挙げられる。
さらに、前記有機物アニオン変性剤としては、分岐、非分岐又は環状アルキル(C1〜C44)、アルケニル(C1〜C22)、アルコキシ(C8〜C32)、ヒドロキシアルキル(C2〜C22)、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を有する硫酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、又はリン酸塩も挙げられるが、中でもエチレンオキサイド骨格を持ったカルボン酸が望ましい。
【0067】
層状無機鉱物を少なくとも一部を有機物イオンで変性することにより、適度な疎水性を持ち、トナー組成物を含む油相が非ニュ−トニアン粘性を持ち、トナーを異型化することが出来る。このとき、トナー材料中の一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の含有量は、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。
前記変性層状無機鉱物は適宜選択することができるが、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト、セピオライト及びこれらの混合物等が挙げられる。中でも、トナー特性に影響を与えず、容易に粘度調整ができ、添加量を少量にすることができることから、有機変性モンモリロナイト又はベントナイトが好ましい。
【0068】
一部を有機カチオンで変性した層状無機鉱物の市販品としては、Bentone 3、Bentone 38、Bentone 38V(以上、レオックス社製)、チクソゲルVP(United catalyst社製)、クレイトン34、クレイトン40、クレイトンXL(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18ベントナイト;Bentone 27(レオックス社製)、チクソゲルLG(United catalyst社製)、クレイトンAF、クレイトンAPA(以上、サザンクレイ社製)等のステアラルコニウムベントナイト;クレイトンHT、クレイトンPS(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18/ベンザルコニウムベントナイトが挙げられる。特に好ましいのはクレイトンAF、クレイトンAPAである。また、一部を有機アニオンで変性した層状無機鉱物としては、DHT−4A(協和化学工業社製)に、下記一般式で表される有機アニオンで変性させたものが特に好ましく、例えばハイテノール330T(第一工業製薬社製)が挙げられる。
R1(OR2)nOSO
(式中、R1は炭素数13のアルキル基、R2は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。nは2〜10の整数を表し、Mは1価の金属元素を表す。)
【0069】
―外添剤―
外添剤は、流動性改質や帯電量調整、電気特性の調整などを目的として用いる。
外添剤としては特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、シリカ微粒子、疎水化されたシリカ微粒子、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムなど);金属酸化物(例えばチタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモンなど)又はこれらの疎水化物、フルオロポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、疎水化されたシリカ微粒子、チタニア粒子、疎水化されたチタニア微粒子、が好適である。
【0070】
前記疎水化されたシリカ微粒子としては、例えば、HDK H2000、HDK H2000/4、HDK H2050EP、HVK21、HDK H1303(いずれも、ヘキスト社製);R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(いずれも日本アエロジル社製)などが挙げられる。
前記チタニア微粒子としては、例えば、P−25(日本アエロジル社製);STT−30、STT−65C−S(いずれも、チタン工業社製);TAF−140(富士チタン工業社製);MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−150A(いずれも、テイカ社製)などが挙げられる。
前記疎水化された酸化チタン微粒子としては、例えば、T−805(日本アエロジル社製);STT−30A、STT−65S−S(いずれも、チタン工業社製);TAF−500T、TAF−1500T(いずれも、富士チタン工業社製);MT−100S、MT−100T(いずれも、テイカ社製);IT−S(石原産業社製)などが挙げられる。
【0071】
前記疎水化されたシリカ微粒子、疎水化されたチタニア微粒子、疎水化されたアルミナ微粒子は、親水性の微粒子をメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤で処理することにより得ることができる。前記疎水化処理剤としては、例えばジアルキルジハロゲン化シラン、トリアルキルハロゲン化シラン、アルキルトリハロゲン化シラン、ヘキサアルキルジシラザンなどのシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンワニスなどが挙げられる。
【0072】
また、無機微粒子にシリコーンオイルを必要ならば熱を加えて処理したシリコーンオイル処理無機微粒子も好適である。
無機微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、べンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。これらの中でも、シリカ、二酸化チタンが特に好ましい。
【0073】
前記シリコーンオイルの例としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アクリル又はメタクリル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0074】
前記無機微粒子の一次粒子の平均粒径は、1〜100nmが好ましく、3〜70nmがより好ましい。平均粒径が1nm未満であると、無機微粒子がトナー中に埋没し、その機能が有効に発揮されにくいことがあり、100nmを超えると、静電潜像担持体表面を不均一に傷つけてしまうことがある。
前記外添剤としては、無機微粒子や疎水化処理無機微粒子を併用することができるが、疎水化処理された一次粒子の平均粒径は1〜100nmが好ましく、5〜70nmがより好ましい。また、疎水化処理された一次粒子の平均粒径が20nm以下の無機微粒子を少なくとも2種類含み、かつ30nm以上の無機微粒子を少なくとも1種類含むことがより好ましい。また、前記無機微粒子のBET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。
前記外添剤の添加量は、トナーに対し0.1〜5質量%が好ましく、0.3〜3質量%がより好ましい。
【0075】
前記外添剤として樹脂微粒子も添加することができる。例えばソープフリー乳化重合、懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン;メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルの共重合体;シリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロン等の重縮合系;熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。このような樹脂微粒子を併用することによってトナーの帯電性が強化でき、逆帯電のトナーを減少させ、地肌汚れを低減することができる。
前記樹脂微粒子の添加量は、トナーに対し0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0076】
―流動性向上剤―
流動性向上剤は、表面処理を行って疎水性を上げ、高湿度下における流動特性や帯電特性の悪化を防止するために用いる。
その例としては、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが挙げられる。前述したシリカ微粒子や酸化チタン微粒子は、このような流動性向上剤により表面処理行って、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0077】
―クリーニング性向上剤―
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために用いる。その例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子等が挙げられる。該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好適である。
【0078】
―磁性材料―
磁性材料は、トナーに磁性を付与するなどの種々の目的で用いる。
磁性材料としては特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト等が挙げられる。これらの中でも色調の点で白色のものが好ましい。
【0079】
―トナーの製造方法―
本発明のトナーを製造する方法としては、イソシアネート基含有プレポリマーを含有する組成物を水相中においてアミン類で直接的に伸長/架橋する重付加反応法、イソシアネート基含有プレポリマーを用いた重付加反応法、溶剤で溶解し脱溶剤して粉砕する方法、溶融スプレー法等が挙げられる。
これらの中でも、樹脂の選択性が高く、低温定着性が高く、また、造粒性に優れ、粒径、粒度分布、形状の制御が容易であるため、活性水素基含有化合物と、反応性基含有プレポリマー(α)と、非結晶性ポリエステル樹脂(a)を含む第一の結着樹脂と、着色剤と、離型剤を含むトナー材料を有機溶剤に溶解乃至分散させてトナー溶液を調製した後、該トナー溶液を第二の結着樹脂からなる樹脂微粒子を含む水性媒体中に乳化乃至分散させて分散液を調製し、該水系媒体中で、前記活性水素基含有化合物と、前記反応性基含有プレポリマーとを反応させて接着性基材を粒子状に生成させ、前記有機溶剤を除去して得られるものが好適である〔製造方法(I)〕。
【0080】
前記第二の結着樹脂(b)からなる樹脂微粒子は、公知の重合方法を用いて形成することができるが、樹脂微粒子の水性分散液として得ることが好ましい。樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法としては、例えば、以下の(i)〜(viii)に示す方法が挙げられる。
(i)ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法、分散重合法のいずれかにより、直接、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(ii)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を、適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は硬化剤を添加して硬化させ、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(iii)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましく、加熱により液状化してもよい。)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化させ、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(iv)予め重合反応(例えば、付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等)により合成した樹脂を、機械回転式、ジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤の存在下、水中に分散させて、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(v)予め重合反応(例えば、付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等)により合成した樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を形成した後、この樹脂微粒子を適当な分散剤の存在下、水中に分散させて、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(vi)予め重合反応(例えば、付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等)により合成した樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解させた樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、溶剤を除去して樹脂微粒子を形成した後、この樹脂微粒子を適当な分散剤の存在下、水中に分散させて、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(vii)予め重合反応(例えば、付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等)により合成した樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液を、適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、減圧等によって溶剤を除去し、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(viii)予め重合反応(例えば、付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等)により合成した樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化させ、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
【0081】
前記樹脂微粒子の体積平均粒径は10〜300nmが好ましく、30〜120nmがより好ましい。
【0082】
前記反応性基含有プレポリマー(α)とは、活性水素基含有化合物と反応可能な官能基(α1)を有する重合体である。
前記活性水素基含有化合物と反応可能な官能基(α1)としては、イソシアネート基(α1a)、ブロック化イソシアネート基(α1b)、エポキシ基(α1c)、酸無水物基(α1d)及び酸ハライド基(α1e)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは(α1a)、(α1b)及び(α1c)であり、特に好ましいものは(α1a)及び(α1b)である。ブロック化イソシアネート基(α1b)は、ブロック化剤によりブロックされたイソシアネート基のことをいう。
上記ブロック化剤としては、オキシム類(アセトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、ジエチルケトオキシム、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルエチルケトオキシム等);ラクタム類(γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、γ−バレロラクタム等):炭素数1〜20の脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、オクタノール等);フェノール類(フェノール、クレゾール、キシレノール、ノニルフェノール等);活性メチレン化合物(アセチルアセトン、マロン酸エチル、アセト酢酸エチル等);塩基性窒素含有化合物(N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、2−ヒドロキシピリジン、ピリジン−N−オキサイド、2−メルカプトピリジン等):及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいものはオキシム類であり、特に好ましいものはメチルエチルケトオキシムである。
【0083】
反応性基含有プレポリマー(α)の骨格としては、ポリエーテル(αw)、ポリエステル(αx)、エポキシ樹脂(αy)及びポリウレタン(αz)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは(αx)、(αy)及び(αz)であり、特に好ましいものは(αx)及び(αz)である。
ポリエーテル(αw)の例としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイドなどが挙げられる。
ポリエステル(αx)の例としては、ジオールとジカルボン酸の重縮合物、ポリラクトン(ε−カプロラクトンの開環重合物)などが挙げられる。
エポキシ樹脂(αy)の例としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)とエピクロルヒドリンとの付加縮合物などが挙げられる。
ポリウレタン(αz)の例としては、ジオールとポリイソシアネートの重付加物、ポリエステル(αx)とポリイソシアネートの重付加物などが挙げられる。
【0084】
ポリエステル(αx)、エポキシ樹脂(αy)、ポリウレタン(αz)などに反応性基を含有させる方法としては、
〔1〕二以上の構成成分のうちの一つを過剰に用いることにより、構成成分の官能基を末端に残存させる方法、
〔2〕二以上の構成成分のうちの一つを過剰に用いることにより、構成成分の官能基を末端に残存させ、更に残存した該官能基と反応可能な官能基及び反応性基を含有する化合物を反応させる方法などが挙げられる。
【0085】
上記方法〔1〕では、水酸基含有ポリエステルプレポリマー、カルボキシル基含有ポリエステルプレポリマー、酸ハライド基含有ポリエステルプレポリマー、水酸基含有エポキシ樹脂プレポリマー、エポキシ基含有エポキシ樹脂プレポリマー、水酸基含有ポリウレタンプレポリマー、イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーなどが得られる。
構成成分の比率は、例えば、水酸基含有ポリエステルプレポリマーの場合、ポリオールとポリカルボン酸の比率が、水酸基[OH]の当量とカルボキシル基[COOH]の当量の比=[OH]/[COOH]で、好ましくは2/1〜1/1、更に好ましくは1.5/1〜1/1、特に好ましくは1.3/1〜1.02/1である。他の骨格、末端基のプレポリマーの場合も、構成成分が変わるだけで比率は同様である。
【0086】
上記方法〔2〕では、上記方法〔1〕で得られたプレプリマーに、ポリイソシアネートを反応させることによりイソシアネート基含有プレポリマーが得られ、ブロック化ポリイソシアネートを反応させることによりブロック化イソシアネート基含有プレポリマーが得られ、ポリエポキサイドを反応させることによりエポキシ基含有プレポリマーが得られ、ポリ酸無水物を反応させることにより酸無水物基含有プレポリマーが得られる。
官能基及び反応性基を含有する化合物の使用量は、例えば、水酸基含有ポリエステルにポリイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーを得る場合、ポリイソシアネートの比率が、イソシアネート基[NCO]の当量と、水酸基含有ポリエステルの水酸基[OH]の当量の比=[NCO]/[OH]で、好ましくは5/1〜1/1、更に好ましくは4/1〜1.2/1、特に好ましくは2.5/1〜1.5/1である。他の骨格、末端基を有するプレポリマーの場合も、構成成分が変わるだけで比率は同様である。
【0087】
反応性基含有プレポリマー(α)の1分子当たりに含有する反応性基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、更に好ましくは、平均1.8〜2.5個である。この範囲にすることにより、活性水素基含有化合物(β)と反応させて得られる硬化物の分子量が高くなる。反応性基含有プレポリマー(α)のMnは、好ましくは500〜30000、更に好ましくは1000〜20000、特に好ましくは2000〜10000である。反応性基含有プレポリマー(α)のMwは、1000〜50000、好ましくは2000〜40000、更に好ましくは4000〜20000である。反応性基含有プレポリマー(α)の粘度は、100℃において、好ましくは2,000ポイズ以下、更に好ましくは1,000ポイズ以下である。2,000ポイズ以下にすることで、少量の有機溶剤で粒度分布のシャープなトナー母体粒子が得られる点で好ましい。
【0088】
活性水素基含有化合物(β)としては、脱離可能な化合物でブロック化されていてもよいポリアミン(βa)、ポリオール(βb)、ポリメルカプタン(βc)及び水(βd)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは(βa)、(βb)及び(βd)であり、更に好ましいものは(βa)及び(βd)であり、特に好ましいものはブロック化されたポリアミン類及び(βd)である。(βa)の例は後述するが、好ましいものは4,4′−ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びそれらの混合物である。
(βa)が脱離可能な化合物でブロック化されたポリアミンである場合の例としては、前記ポリアミン類と炭素数3〜8のケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、炭素数2〜8のアルデヒド化合物(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド)から得られるアルジミン化合物、エナミン化合物、及びオキサゾリジン化合物などが挙げられる。
ポリオール(βb)としては、前記のジオール及びポリオールと同様のものが例示される。ジオール単独、又はジオールと少量のポリオールの混合物が好ましい。
ポリメルカプタン(βc)としては、エチレンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオールなどが挙げられる。
【0089】
前述した(βa)の例としては、以下のものが挙げられる。
・脂肪族ポリアミン類(C2〜Cl8)
〔1〕脂肪族ポリアミン{C2〜C6アルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、へキサメチレンジアミンなど)、ポリアルキレン(C2〜C6)ポリアミン〔ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン,トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなど〕}
〔2〕上記脂肪族ポリアミンのアルキル(C1〜C4)又はヒドロキシアルキル(C2〜C4)置換体〔ジアルキル(C1〜C3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−へキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミンなど〕
〔3〕脂環又は複素環含有脂肪族ポリアミン〔3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど〕
〔4〕芳香環含有脂肪族アミン類(C8〜C15)(キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミンなど)
・脂環式ポリアミン(C4〜C15):1,3−ジアミノシクロヘキサンイソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4′−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)など
・複素環式ポリアミン(C4〜C15):ピペラジン、N−アミノエチルビペラジン、1,4−ジアミノエチルビペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなど
・芳香族ポリアミン類(C6〜C20)
〔1〕非置換芳香族ポリアミン〔1,2−、1,3−及び1,4−フェニレンジアミン、2,4′−及び4,4′−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフエール)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリアミン、ナフチレンジアミンなど
〔2〕核置換アルキル基〔メチル,エチル,n−及びi−プロピルブチルなどのC1〜C4アルキル基〕を有する芳香族ポリアミン、例えば2.4−及び2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、4,4′−ビス(O−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3,5,5−テトラメチルベンジジン、3,3,5,5−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3′−メチル−2′,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジエチル−2,2′−ジアミノジフェニルメタン、4,4−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、3,3,5,5−テトラエチル−4,4−ジアミノベンゾフェノン、3,3,5,5−テトラエチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3,5,5−テトライソプロピル−4,4′−ジアミノジフェニルスルホンなど〕、及びこれらの異性体の種々の割合の混合物
〔3〕核置換電子吸引基(Cl,Br,I,Fなどのハロゲン;メトキシ、エトキシなどのアルコキシ基:ニトロ基など)を有する芳香族ポリアミン〔メチレンビス−o−クロロアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、2−クロル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロル−1,4−フェニレンジアミン、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン、3−ジメトキシ−4−アミノアニリン;4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチル−5,5′−ジブロモ−ジフェニルメタン、3,3−ジクロロベンジジン、3,3−ジメトキシベンジジン、ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)オキシド、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)デカン、ビス(4−アミノフェニル)スルフイドビス(4−アミノフェニル)テルリド、ビス(4−アミノフェニル)セレニド、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)ジスルフイド、4,4−メチレンビス(2−ヨードアニリン)、4,4−メチレンビス(2−ブロモアニリン)、4,4−メチレンビス(2−フルオロアニリン)、4−アミノフェニル−2−クロロアニリンなど〕
〔4〕2級アミノ基を有する芳香族ポリアミン[上記〔1〕〜〔3〕の芳香族ポリアミンの−NHの一部又は全部が−NH−R′(R′はアルキル基、例えばメチル,エチルなどの低級アルキル基)で置き換ったもの]〔4,4−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼンなど〕、ポリアミドポリアミン:ジカルボン酸(ダイマー酸など)と過剰の(酸lモル当り2モル以上の)ポリアミン類(上記アルキレンジアミン,ポリアルキレンポリアミンなど)との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミンなど、ポリエーテルポリアミン:ポリエーテルポリオール(ポリアルキレングリコールなど)のシアノエチル化物の水素化物など。
【0090】
必要により活性水素基含有化合物(β)と共に反応停止剤(βs)を用いることができる。反応停止剤(βs)を活性水素基含有化合物(β)と一定の比率で併用することにより、反応性基含有プレポリマー(α)と活性水素基含有化合物(β)とを反応させて得られる樹脂の分子量を所定の値に調整することができる。
反応停止剤(βs)の例としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなど);モノアミンをブロックしたもの(ケチミン化合物など):モノオール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、フェノールなど);モノメルカプタン(ブチルメルカプタン、ラウリルメルカブタンなど);モノイソシアネート(ラウリルイソシアネート、フェニルイソシアネートなど):モノエポキサイド(ブチルグリシジルエーテルなど)などが挙げられる。
活性水素基含有化合物(β)の比率は、反応性基含有プレポリマー(α)中の反応性基の当量[α]と、活性水素基含有化合物(β)中の活性水素含有基[β]の当量の比=[α]/[β]で、好ましくは1/2〜2/1、更に好ましくは1.5/1〜1/1.5、特に好ましくは1.2/1〜1/1.2である。なお、活性水素基含有化合物(β)が水(βd)である場合は、水は2価の活性水素化合物として取り扱う。
【0091】
前記製造方法(I)において、水性媒体中に、水以外に後述の有機溶剤(u)のうち水と混和性を有する有機溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)が含まれていてもよい。この水と混和性を有する有機溶剤としては、樹脂粒子の造粒を妨げないものであれば特に制限はなく、また、その含有量についても樹脂粒子の造粒を妨げない量であれば特に制限はない。例えば、水との合計量に対し40質量%以下程度の量を用いても、乾燥後の樹脂粒子中に残らないものが好ましい。
【0092】
―有機溶剤―
前記製造方法(I)における前記トナー材料を溶解乃至分散させるための有機溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶剤、n−ヘキサン、n−へブタン、ミネラルスピリットシクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶剤、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、プチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、N−メチルピロリドン等の複素環式化合物系溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0093】
―乳化剤又は分散剤―
前記製造方法(I)において、構成成分の乳化/分散を目的として、乳化剤又は分散剤を用いてもよい。乳化剤又は分散剤としては、公知の界面活性剤、水溶性ポリマー等を用いることができる。また、乳化又は分散の助剤として、上記の有機溶剤及び可塑剤等を併用することができる。界面活性剤としては特に制限はなく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。界面活性剤の具体例としては以下に述べるもの等が挙げられる。
【0094】
―アニオン界面活性剤―
アニオン界面活性剤としては、カルボン酸又はその塩、硫酸エステル塩、カルボキシメチル化物の塩、スルホン酸塩及びリン酸エステル塩等が用いられる。
前記カルボン酸又はその塩の例としては、炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸又はその塩が使用でき、例えば、カブリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸及びリシノール酸並びにヤシ油、パーム核油、米ぬか油及び牛脂などをケン化して得られる高級脂肪酸の混合物等が挙げられる。これらのカルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アンモニウム塩、4級アンモニウム塩及びアルカノールアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等)などが挙げられる。
【0095】
前記硫酸エステル塩の例としては、高級アルコール硫酸エステル塩(炭素数8〜18の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩)、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩(炭素数8〜18の脂肪族アルコールのEO又はPO1〜10モル付加物の硫酸エステル塩)、硫酸化油(炭素数12〜50の天然の不飽和油脂又は不飽和のロウをそのまま硫酸化して中和したもの)、硫酸化脂肪酸エステル〔不飽和脂肪酸(炭素数6〜40)の低級アルコール(炭素数1〜8)エステルを硫酸化して中和したもの〕及び硫酸化オレフィン(炭素数12〜18のオレフィンを硫酸化して中和したもの)等が挙げられる。
硫酸エステル塩の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アンモニウム塩、4級アンモニウム塩及びアルカノールアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等)等が挙げられる。
高級アルコール硫酸エステル塩の例としては、オクチルアルコール硫酸エステル塩、デシルアルコール硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、ステアリルアルコール硫酸エステル塩、チーグラー触媒を用いて合成されたアルコール(例えば、商品名:ALFOL1214:CONDEA社製)の硫酸エステル塩及びオキソ法で合成されたアルコール(例えば、商品名:ドバノール23,25,45、ダイヤドール115、115H、135:三菱化学社製:、商品名:トリデカノール:協和発酵社製、商品名:オキソコール1213,1215,1415:日産化学社製)の硫酸エステル塩等が挙げられる。高級アルキルエーテル硫酸エステル塩の例としては、ラウリルアルコールEO2モル付加物硫酸エステル塩及びオクチルアルコールEO3モル付加物硫酸エステル塩等が挙げられる。硫酸化油の例としては、ヒマシ油、落花生油、オリーブ油、ナタネ油、牛脂及び羊脂などの硫酸化物の塩等が挙げられる。硫酸化脂肪酸エステルの例としては、オレイン酸ブチル及びリシノレイン酸ブチル等の硫酸化物の塩等が挙げられる。硫酸化オレフィンの例としてはティーポール(商品名:シェル社製)等が挙げられる。
【0096】
前記カルボキシメチル化物の塩としては、炭素数8〜16の脂肪族アルコールのカルボキシメチル化物の塩及び炭素数8〜16の脂肪族アルコールのEO又はPO1〜10モル付加物のカルボキシメチル化物の塩等が使用できる。
脂肪族アルコールのカルボキシメチル化物の塩の例としては、オクチルアルコールカルボキシメチル化ナトリウム塩、ラウリルアルコールカルボキシメチル化ナトリウム塩、ドバノール23のカルボキシメチル化ナトリウム塩、トリデカノールカルボキシメチル化ナトリウム塩等が挙げられる。
脂肪族アルコールのEO又はPO1〜10モル付加物のカルボキシメチル化物の塩の例としては、オクチルアルコールEO又はPO3モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩、ラウリルアルコールEO又はPO4モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩、及びトリデカノールEO又はPO5モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩などが挙げられる。
【0097】
前記スルホン酸塩としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジエステル塩、イゲポンT型及びその他芳香環含有化合物のスルホン酸塩等が使用できる。アルキルベンゼンスルホン酸塩の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。アルキルナフタレンスルホン酸塩の例としては、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。スルホコハク酸ジエステル塩の例としては、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩などが挙げられる。芳香環含有化合物のスルホン酸塩の例としては、アルキル化ジフェニルエーテルのモノ又はジスルホン酸塩及びスチレン化フェノールスルホン酸塩などが挙げられる。
【0098】
前記リン酸エステル塩としては、高級アルコールリン酸エステル塩及び高級アルコールEO付加物リン酸エステル塩等が挙げられる。高級アルコールリン酸エステル塩の例としては、ラウリルアルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩及びラウリルアルコールリン酸ジエステルナトリウム塩等が挙げられる。高級アルコールEO付加物リン酸エステル塩の例としては、オレイルアルコールEO5モル付加物リン酸モノエステルジナトリウム塩等が挙げられる。
【0099】
―カチオン界面活性剤―
カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型界面活性剤及びアミン塩型界面活性剤等が使用できる。
第4級アンモニウム塩型界面活性剤は、炭素数3〜40の3級アミンと4級化剤(例えば、メチルクロライドメチルブロマイド、エチルクロライド、ベンジルクロライド及びジメチル硫酸などのアルキル化剤並びにEOなど)との反応等で得られ、その例としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)、セチルピリジニウムクロライド、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライド及びステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェートなどが挙げられる。
【0100】
アミン塩型界面活性剤は、1〜3級アミンを無機酸(例えば、塩酸、硝酸、硫酸、ヨウ化水素酸、リン酸及び過塩素酸など)又は有機酸(酢酸、ギ酸、膠酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸、炭素数2〜24のアルキルリン酸、リンゴ酸及びクエン酸など)で中和すること等により得られる。第1級アミン塩型界面活性剤の例としては、炭素数8〜40の脂肪族高級アミン(例えば、ラウリルアミン、ステアリルアミン、セチルアミン、硬化牛脂アミン及び、ロジンアミンなどの高級アミン)の無機酸塩又は有機酸塩及び低級アミン(炭素数2〜6)の高級脂肪酸(炭素数8〜40、ステアリン酸、オレイン酸など)塩などが挙げられる。第2級アミン塩型界面活性剤の例としては、炭素数4〜40の脂肪族アミンのEO付加物などの無機酸塩又は有機酸塩が挙げられる。また、第3級アミン塩型界面活性剤の例としては、炭素数4〜40の脂肪族アミン(例えば、トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミンなど)、脂肪族アミン(炭素数2〜40)のEO(2モル以上)付加物、炭素数6〜40の脂環式アミン(例えば、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルヘキサメチレンイミン、N−メチルモルホリン及び1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセンなど)、炭素数5〜30の含窒素へテロ環芳香族アミン(例えば、4−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール及び4,4′−ジピリジルなど)の無機酸塩又は有機酸塩及びトリエタノールアミンモノステアレ−ト、ステアラミドエチルジエチルメチルエタノールアミンなどの3級アミンの無機酸塩又は有機酸塩などが挙げられる。
【0101】
―両性界面活性剤―
両性界面活性剤としては、カルボン酸塩型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤などが使用できる。
カルボン酸塩型両性界面活性剤の例としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤及びイミダゾリン型両性界面活性剤などが挙げられる。
アミノ酸型両性界面活性剤は、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する両性界面活性剤であり、その例としては、下記一般式で示される化合物等が挙げられる。
[R−NH−(CH)n−COO]mM
(式中、Rは1価の炭化水素基、nは1又は2、mは1又は2、Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムカチオン、アミンカチオン、アルカノールアミンカチオンなどである。)
上記一般式で表される両性活性剤の例としては、アルキル(炭素数6〜40)アミノプロピオン酸型両性界面活性剤(ステアリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなど);アルキル(炭素数4〜24)アミノ酢酸型両性界面活性剤(ラウリルアミノ酢酸ナトリウムなど)などが挙げられる。
【0102】
ベタイン型両性界面活性剤は、分子内に第4級アンモニウム塩型のカチオン部分とカルボン酸型のアニオン部分を持っている両性界面活性剤であり、その例としては、アルキル(炭素数6〜40)ジメチルベタイン(ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなど)、炭素数6〜40のアミドベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインなど)、アルキル(炭素数6〜40)ジヒドロキシアルキル(炭素数6〜40)ベタイン(ラウリルジヒドロキシエチルベタインなど)などが挙げられる。
イミダゾリン型両性界面活性剤は、イミダゾリン環を有するカチオン部分とカルボン酸型のアニオン部分を持っている両性界面活性剤であり、その例としては、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。
その他の両性界面活性剤の例としては、ナトリウムラウロイルグリシン、ナトリウムラウリルジアミノエチルグリシン、ラウリルジアミノエチルグリシン塩酸塩、ジオクチルジアミノエチルグリシン塩酸塩などのグリシン型両性界面活性剤;ペンタデシルスルホタウリンなどのスルホベタイン型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0103】
―非イオン界面活性剤―
非イオン界面活性剤としては、AO付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコール型非イオン界面活性剤などが使用できる。
AO付加型非イオン界面活性剤は、炭素数8〜40の高級アルコール、炭素数8〜40の高級脂肪酸又は炭素数8〜40のアルキルアミン等に直接AO(炭素数2〜20)を付加させるか、グリコールにAOを付加させて得られるポリアルキレングリコールに高級脂肪酸などを反応させるか、又は多価アルコールに高級脂肪酸を反応して得られたエステル化物にAOを付加させるか、高級脂肪酸アミドにAOを付加させることにより得られる。
AOとしては、例えばEO、PO及びBOが挙げられる。これらのうち好ましいものは、EO及びEOとPOのランダム又はブロック付加物である。AOの付加モル数は10〜50モルが好ましく、このAOのうち、50〜100%がEOであるものが好ましい。
【0104】
AO付加型非イオン界面活性剤の例としては、オキシアルキレンアルキルエーテル(アルキレンの炭素数2〜24、アルキルの炭素数8〜40)(例えば、オクチルアルコールEO20モル付加物、ラウリルアルコールEO20モル付加物、ステアリルアルコールEO10モル付加物、オレイルアルコールEO5モル付加物、ラウリルアルコールEO10モルPO20モルブロック付加物など);ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル(アルキレンの炭素数2〜24、高級脂肪酸の炭素数8〜40)(例えば、ステアリル酸EO10モル付加物、ラウリル酸EO10モル付加物など);ポリオキシアルキレン多価アルコール高級脂肪酸エステル(アルキレンの炭素数2〜24、多価アルコールの炭素数3〜40、高級脂肪酸の炭素数8〜40)(例えば、ポリエチレングリコール(重合度20)のラウリン酸ジエステル、ポリエチレングリコール(重合度20)のオレイン酸ジエステルなど);ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(アルキレンの炭素数2〜24、アルキルの炭素数8〜40)(例えば、ノニルフェノールEO4モル付加物、ノニルフェノールEO8モルPO20モルブロック付加物、オクチルフェノールEO10モル付加物、ビスフェノールA・EO10モル付加物、スチレン化フェノールEO20モル付加物など);ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル(アルキレンの炭素数2〜24、アルキルの炭素数8〜40)及び(例えば、ラウリルアミンEO10モル付加物、ステアリルアミンEO10モル付加物など);ポリオキシアルキレンアルカノールアミド〔アルキレンの炭素数2〜24、アミド(アシル部分)の炭素数8〜24〕(例えば、ヒドロキシエチルラウリン酸アミドのEO10モル付加物、ヒドロキシプロピルオレイン酸アミドのEO20モル付加物など)が挙げられる。
【0105】
多価アルコール型非イオン界面活性剤としては、多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルAO付加物、多価アルコールアルキルエーテル及び多価アルコールアルキルエーテルAO付加物等が挙げられる。多価アルコールの炭素数としては3〜24、脂肪酸の炭素数としては8〜40、AOの炭素数としては2〜24が好ましい。
多価アルコール脂肪酸エステルの例としては、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタンジオレート及びショ糖モノステアレートなどが挙げられる。
多価アルコール脂肪酸エステルAO付加物の例としては、エチレングリコールモノオレートEO10モル付加物、エチレングリコールモノステアレートEO20モル付加物、トリメチロールプロパンモノステアレートEO20モルPO10モルランダム付加物、ソルビタンモノラウレートEO10モル付加物、ソルビタンジステアレートEO20モル付加物及びソルビタンジラウレートEO12モルPO24モルランダム付加物などが挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテルの例としては、ペンタエリスリトールモノブチルエーテル、ペンタエリスリトールモノラウリルエーテル、ソルビタンモノメチルエーテル、ソルビタンモノステアリルエーテル、メチルグリコシド及びラウリルグリコシドなどが挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテルAO付加物の例としては、ソルビタンモノステアリルエーテルEO10モル付加物、メチルグリコシドEO20モルPO10モルランダム付加物、ラウリルグリコシドEO10モル付加物及びステアリルグリコシドEO20モルPO20モルランダム付加物などが挙げられる。
【0106】
―水溶性ポリマー―
水溶性ポリマーとしては、セルロース系化合物(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びそれらのケン化物など)、ゼラチン、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、アクリル酸(塩)含有ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸の水酸化ナトリウム部分中和物、アクリル酸ナトリウム−アクリル酸エステル共重合体)、スチレン−無水マレイン酸共重合体の水酸化ナトリウム(部分)中和物、水溶性ポリウレタン(ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール等とポリイソシアネートの反応生成物等)などが挙げられる。
【0107】
またトナーの流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、以上のようにして製造されたトナー母体粒子に更に疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。
添加剤の混合には一般の粉体用混合機を用いるが、ジャケット等を装備して内部の温度を調節できるようにすることが好ましい。なお、添加剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中で又は漸次添加剤を加えていけばよい。この場合、混合機の回転数、転動速度、時間、温度等を変化させてもよい。また、始めに強い負荷を、次いで比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。使用できる混合設備の例としては、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。次いで、250メッシュ以上の篩を通過させて、粗大粒子、凝集粒子を除去し、トナーが得られる。
【0108】
本発明のトナーは、その形状、大きさ等について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下のような、平均円形度、体積平均粒径、体積平均粒径と個数平均粒径との比(体積平均粒径/個数平均粒径)等を有していることが好ましい。
平均円形度は、トナーの形状と投影面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値であり、0.900〜0.980が好ましく、0.950〜0.975がより好ましい。なお、平均円形度が0.94未満の粒子が15%以下であるものが好ましい。
平均円形度が、0.900未満であると、満足できる転写性やチリのない高画質画像が得られないことがあり、0.980を超えると、ブレードクリーニング等を採用している画像形成システムでは、感光体上及び転写ベルト等のクリーニング不良が発生し、画像上の汚れ、例えば、写真画像等の画像面積率の高い画像形成の場合において、給紙不良等で未転写の画像を形成したトナーが感光体上に転写残トナーとなって蓄積した画像の地汚れが発生してしまうことがあり、あるいは、感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまうことがある。
【0109】
平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(FPIA−2100:シスメックス社製)を用いて計測し、解析ソフト(FPIA−2100 Data Processing Program for FPIA version00−10)を用いて解析を行った。具体的には、ガラス製100mLビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC−A、第一工業製薬社製)を0.1〜0.5mL添加し、各トナーを0.1〜0.5g添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mLを添加した。得られた分散液を超音波分散器(本多電子社製)で3分間分散処理し、該分散液について、前記FPIA−2100を用いて濃度5,000〜15,000個/μLにおけるトナーの形状及び分布を測定した。本測定法は平均円形度の測定再現性の点から前記分散液濃度を5,000〜15,000個/μLにすることが重要である。前記分散液濃度を得るために、前記分散液の条件、即ち、添加する界面活性剤量、トナー量を変更する必要がある。界面活性剤量は前述したトナー粒径の測定と同様にトナーの疎水性により必要量が異なり、多く添加すると泡によるノイズが発生し、少ないとトナーを十分に濡らすことができないため、分散が不十分となる。またトナー添加量は粒径により異なり、小粒径の場合は少なく、また大粒径の場合は多くする必要があり、トナー粒径が3〜10μmの場合、トナー量を0.1〜0.5g添加することにより分散液濃度を5,000個/μL〜15,000個/μLに合わせることが可能となる。
【0110】
トナーの体積平均粒径は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3〜10μmが好ましく、3〜8μmがより好ましい。体積平均粒径が3μm未満では、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、10μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒径の変動が大きくなることがある。
【0111】
トナーの体積平均粒径と個数平均粒径の比(体積平均粒径/個数平均粒径)は、1.00〜1.25が好ましく、1.10〜1.25がより好ましい。
体積平均粒径、及び体積平均粒径と個数平均粒径の比は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman CoulterMutlisizer 3 Version3.51)で解析を行った。具体的には、ガラス製100mLビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC−A、第一工業製薬社製)を0.5mL添加し、各トナーを0.5g添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mLを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II、本多電子社製)で10分間分散処理した。この分散液について、前記マルチサイザーIIIを用い、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定した。測定は装置が示す濃度が8±2%になるように前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0112】
<現像剤>
本発明の現像剤は、本発明のトナーを含有し、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有する。該現像剤は、一成分現像剤であっても二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で二成分現像剤が好ましい。
前記一成分現像剤は、トナーの収支が行われてもトナーの粒子径の変動が少なく、現像剤担持体としての現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の層厚規制部材へのトナーの融着がなく、現像手段の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、前記二成分現像剤は、長期に亘るトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像手段における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0113】
(キャリア)
キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層(被覆層)とを有するものが好ましい。
―芯材―
芯材としては、磁性を有する粒子であれば特に限定されず、例えば、フェライト、マグネタイト、鉄、ニッケル等が好適に挙げられる。また、近年著しく進む環境面への適応性を配慮した場合には、フェライトであれば、従来の銅−亜鉛系フェライトに代えて、例えば、マンガンフェライト、マンガン−マグネシウムフェライト、マンガン−ストロンチウムフェライト、マンガン−マグネシウム−ストロンチウムフェライト、リチウム系フェライト等を用いることが好適である。
また、芯材の抵抗を制御する目的や、製造安定性を高める目的等で、芯材の組成成分として、他の元素、例えば、Li、Na、K、Ca、Ba、Y、Ti、Zr、V、Ag、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Sb、Bi等の元素を一種以上配合させても良い。これらの配合量としては、総金属元素量の5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であることがより好ましい。
【0114】
―被覆層―
被覆層は、少なくとも結着樹脂を含有しており、必要に応じて微粒子等の他の成分を含有していても良い。
[結着樹脂]
キャリアの被覆層を形成するための結着樹脂としては特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択できるが、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)やその変性品、スチレン、アクリル樹脂、アクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルアルコール、塩化ビニル、ビニルカルバゾール、ビニルエーテル等を含む架橋性共重合物;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変性品(例えば、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等による変性品);ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;ユリア樹脂;メラミン樹脂;ベンゾグアナミン樹脂;エポキシ樹脂;アイオノマー樹脂;ポリイミド樹脂、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリル樹脂と、シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0115】
前記アクリル樹脂は、芯材及び被覆層に含有される微粒子との密着性が強く脆性が低いので、被覆層の剥離に対して非常に優れた性質を持ち、被覆層を安定的に維持することができると共に、導電性粒子等の被覆層中に含有する粒子を強固に保持することができる。特に、被覆層膜厚よりも大きな粒径を有する粒子の保持には強力な効果を発揮する。
前記アクリル樹脂のTgは、20〜100℃の範囲が好ましく、25〜80℃の範囲がより好ましい。樹脂のTgをこの範囲とすることによって、該結着樹脂は適度な弾性を持ち、現像剤の摩擦帯電時にキャリアが受ける衝撃を軽減させると考えられ、被覆層の剥離や磨耗が抑制される。
また、被覆層を形成する結着樹脂を、アクリル樹脂とアミノ樹脂の架橋物とすることにより、適度な弾性を維持したまま、アクリル樹脂単独使用の場合に発生しがちな樹脂同士の融着、いわゆるブロッキングを防止することができるため、より一層好ましい。
【0116】
アミノ樹脂としては、従来公知のアミノ樹脂を用いることができるが、中でも、グアナミン、メラミンを用いることで、キャリアの帯電付与能力をも向上させることができるため、より好ましい。
また、適度にキャリアの帯電付与能力を制御する必要がある場合には、グアナミン及び/又はメラミンと、他のアミノ樹脂を併用しても差し支えない。このようなアミノ樹脂と架橋し得るアクリル樹脂としては、水酸基やカルボン酸基を有するものが好ましく、水酸基を有するものがより好ましい。水酸基を有することにより、前述の芯材や微粒子との密着性を更に向上させることができ、微粒子の分散安定性も向上させることができる。このときの水酸基価は好ましくは10mgKOH/g以上であり、更に好ましくは20mgKOH/g以上である。
【0117】
更に、前記結着樹脂が、シリコーン部位を構成単位として含むことにより、キャリア表面の表面エネルギー自体を低くすることができ、トナースペントの発生自体を抑制することができるため、キャリア特性をより長期に亘って維持することができる。
該シリコーン部位の構成単位としては、メチルトリシロキサン単位、ジメチルジシロキサン単位、トリメチルシロキサン単位の少なくとも一種を含むことが好ましく、該シリコーン部分は、他のコート層樹脂と化学的に結合していても良く、ブレンド状態であっても良く、また、多層状になっていても良い。
ブレンドや多層状の構成とする場合には、シリコーン樹脂及び/又はその変性体を使用することが好ましく、特に、少なくとも下記一般式で示される構成単位を持つシリコーン樹脂組成物を含むことにより、シリコーン樹脂又は他の樹脂の特異的な摩滅、磨耗、脱離といった不具合を抑制できる。
【0118】
【化1】

(式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよい炭化水素基及び/又はその誘導体、Xは縮合反応基、a、bは正の整数を表す。)
上記Xとしては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メチルエチルケトオキシム基等が挙げられ、大気中の水分や加熱によって該部位において縮合反応が起こり、三次元網目構造を取り得る。これらのシリコーン樹脂としては、前記一般式で示される構成単位を有するオルガノシロキサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂、及びアルキド、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ウレタンなどで変性したシリコーン樹脂が挙げられる。
【0119】
前記ストレートシリコーン樹脂の例としては、KR271、KR272、KR282、KR252、KR255、KR152(信越化学工業社製)、SR2400、SR2405、SR2406(東レダウコーニングシリコーン社製)などが挙げられる。また、上記変性シリコーン樹脂の例としては、エポキシ変性物:ES−1001N、アクリル変性シリコーン:KR−5208、ポリエステル変性物:KR−5203、アルキッド変性物:KR−206、ウレタン変性物:KR−305(以上、信越化学工業社製)、エポキシ変性物:SR2115、アルキッド変性物:SR2110(東レダウコーニングシリコーン社製)等が挙げられる。
なお、前記シリコーン樹脂は、単体で用いることも可能であるが、架橋反応性成分、帯電量調整成分等と併用することも可能である。該架橋反応性成分としては、シランカップリング剤等が挙げられる。該シランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、アミノシランカップリング剤等が挙げられる。
【0120】
[アミノシランカップリング剤]
前記被覆層液に、アミノシランカップリング剤を含有させることにより、トナーに対するキャリアの帯電量を良好に制御することができる。アミノシランカップリング剤としては、例えば、下記構造式で表されるものが好適である。
【化2】

アミノシランカップリング剤の含有量は、被覆層全体の0.001〜30質量%が好ましく、0.001〜10質量%がより好ましい。含有量が0.001質量%未満であると、帯電性が環境の影響を受け易く、また製品収率が低下しやすくなることがあり、30質量%を超えると、被覆層が脆くなりやすく、被覆層の耐磨耗性が低下することがある。
【0121】
[微粒子]
前記被覆層に含有させる微粒子としては特に制限はなく、従来公知の材料の中から目的に応じて適宜選択することができる。その例としては、金属粉、酸化錫、酸化亜鉛、シリカ、酸化チタン、アルミナ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、ホウ酸アルミニウム等の無機微粒子や、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリ(パラ−フェニレンスルフィド)、ポリピロール、パリレン等の導電性高分子、カーボンブラック等の有機微粒子等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
前記微粒子は、更に表面が導電性処理されていてもよい。このような導電性処理の方法としては、微粒子の表面に、アルミニウム、亜鉛、銅、ニッケル、銀、又はこれらの合金、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウム等を固溶体や融着の形態として被覆させる方法等が挙げられる。これらの中でも、酸化スズ、酸化インジウム、スズをドープした酸化インジウムを用いて導電性処理をする方法が好ましい。
【0122】
前記微粒子の体積平均粒径は1μm以下であることが好ましい。体積平均粒径が1μmより大きい場合には、該微粒子を被覆層中に保持することが困難となり、微粒子の脱離等により被覆層の強度が低下することがあるため好ましくない。
なお、前記微粒子の体積平均粒径は、例えばレーザードップラー/動的光散乱式粒度分布装置等を用いて測定することができる。
【0123】
前記被覆層のキャリアにおける割合は5質量%以上が好ましく、更には5〜10質量%がより好ましい。
前記被覆層の厚さは、0.1〜5μmが好ましく、0.3〜2μmであることが更に好ましい。
ここで、被覆層の厚さは、例えば、FIB(集束イオンビーム)でキャリア断面を作成後、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて50点以上のキャリア断面を観察し、求めた膜厚の平均値として算出することができる。
【0124】
―キャリア被覆層の形成方法―
キャリアの被覆層の形成法としては特に制限はなく、従来公知の被覆層形成方法が使用でき、結着樹脂又は結着樹脂前駆体を始めとする上述の被覆層用の原料を溶解した被覆層溶液を、芯材の表面に噴霧法又は浸漬法等を用いて塗布する方法が挙げられる。芯材表面に被覆層溶液を塗布し、塗布層が形成されたキャリアを加熱することにより、結着樹脂又は結着樹脂前駆体の重合反応を促進させることが好ましい。該加熱処理は、被覆層形成後、引き続きコート装置内で行っても良く、あるいは、被覆層形成後、通常の電気炉や焼成キルン等、別の加熱手段によって行っても良い。
加熱処理温度は、使用する被覆層の構成材料によって異なるため、一概に決められるものではないが、120〜350℃程度が好ましく、被覆層構成材料の分解温度以下であることが特に好ましい。なお、該被覆層構成材料の分解温度は、220℃程度以下であることが好ましく、加熱処理時間は、5〜120分間程度であることが好ましい。
【0125】
―キャリアの物性―
前記キャリアの体積平均粒径は、10〜100μmの範囲であることが好ましく、20〜65μmの範囲であることがより好ましい。
体積平均粒径が、10μm未満では前記芯材粒子の均一性が低下することに起因するキャリア付着が発生することがあり好ましくない。また、100μmを超える場合には画像細部の再現性が悪く精細な画像が得られないことがあり好ましくない。
体積平均粒径の測定手段は、粒度分布を測定できる機器であれば特に制限はなく、例えば、マイクロトラック粒度分布計:モデルHRA9320―X100(日機装社製)を用いて測定することができる。
【0126】
前記キャリアの体積抵抗率は、9〜16[log(Ω・cm)]であることが好ましく、10〜14[log(Ω・cm)]であることがより好ましい。
体積抵抗率が9[log(Ω・cm)]未満の場合は非画像部でのキャリア付着が生じて好ましくなく、16[log(Ω・cm)]より大きいと、現像時に、エッジ部における画像濃度が強調される、いわゆるエッジ効果が顕著になり好ましくない。該体積抵抗率は必要に応じて、キャリアの被覆層の膜厚、前記導電性の微粒子の含有量を調整することで、該範囲内で任意に調整可能である。
体積抵抗率は次の手順で測定できる。即ち、電極間距離0.2cm、表面積2.5cm×4cmの電極1a、電極1bを収容したフッ素樹脂製容器からなるセルにキャリアを充填し、落下高さ:1cm、タッピングスピード:30回/min、タッピング回数:10回の条件でタッピングを行う。次に、両電極間に1000Vの直流電圧を印加し、30秒後の抵抗値r[Ω]を、ハイレジスタンスメーター4329A(横川ヒューレットパッカード社製:High Resistance Meter)により測定し、下記式により算出する。
R=Log[r×(2.5cm×4cm)/0.2cm]
【0127】
前記現像剤が二成分現像剤である場合には、該二成分現像剤におけるトナーとキャリアの混合割合は、キャリアに対するトナーの割合が2.0〜12.0質量%であることが好ましく、2.5〜10.0質量%であることがより好ましい。
【0128】
(現像剤入り容器)
本発明の現像剤は容器に収容して用いることができる。
容器としては特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、現像剤容器本体とキャップとを有するもの等が挙げられる。
現像剤容器本体は、その大きさ、形状、構造、材質等について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、形状としては円筒状等が好ましく、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより内容物である現像剤が排出口側に移行可能であり、かつ該スパイラル部の一部又は全部が蛇腹機能を有しているものが特に好ましい。
材質は特に制限はないが、寸法精度がよいものが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂等が好適である。
現像剤入り容器は、保存、搬送等が容易であり、取扱性に優れ、後述する画像形成装置等に着脱可能に取り付けて現像剤の補給に好適に使用することができる。
【0129】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成方法は、静電潜像形成工程、現像工程、転写工程、定着工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
本発明の画像形成方法の実施に用いられる画像形成装置は、静電潜像担持体、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段、定着手段を少なくとも有し、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有する。
【0130】
―静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段―
静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
静電潜像担持体(「電子写真感光体」、「感光体」と称することがある)は、その材質、形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、形状はドラム状が好ましく、材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)等が挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコンが好ましい。
静電潜像の形成は、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える静電潜像形成手段により行うことができる。
【0131】
帯電は、帯電器を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。帯電器としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、等が挙げられる。中でも、静電潜像担持体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。また、静電潜像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであって、該帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
露光は、露光器を用いて静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、等の各種露光器が挙げられる。
なお、本発明では、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0132】
―現像工程及び現像手段―
現像工程は、静電潜像を、本発明の現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。可視像の形成は、本発明の現像剤を用いて静電潜像を現像することにより行うことができる。現像手段は、本発明の現像剤を用いて現像することができる限り特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、本発明の現像剤を収容し、静電潜像に現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を有するものが好適であり、前記現像剤入り容器を備えた現像器等がより好ましい。
現像器は、単色用現像器であっても多色用現像器であってもよく、現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有するものが好ましい。
現像器内ではトナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて静電潜像担持体(感光体)の表面にトナーによる可視像が形成される。
【0133】
―転写工程及び転写手段―
転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
転写は、転写帯電器を用いて静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができる。転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。なお、中間転写体としては特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適である。
転写手段(第一次転写手段、第二次転写手段)は、静電潜像担持体(感光体)上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有することが好ましい。転写手段は1つであってもよいし、2以上であってもよい。
転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、等が挙げられる。
なお、記録媒体としては特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0134】
―定着工程及び定着手段―
定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色の現像剤に対し記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色の現像剤に対しこれを積層した状態で同時に行ってもよい。
定着装置としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。該加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ等が挙げられる。
定着装置が、発熱体を具備する加熱体と、該加熱体と接触するフィルムと、該フィルムを介して加熱体と圧接する加圧部材とを有し、フィルムと加圧部材の間に未定着画像を形成させた記録媒体を通過させて加熱定着する手段であることが好ましい。加熱加圧手段における加熱は、通常、80〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、定着工程及び定着手段と共に、あるいはこれらに代えて、公知の光定着器を用いてもよい。
【0135】
除電工程は、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。除電手段としては特に制限はなく、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適である。
クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。クリーニング手段としては特に制限はなく、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適である。
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。リサイクル手段としては特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、各工程は制御手段により好適に行うことができる。制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0136】
図1に、本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の第一例を示す。
画像形成装置100Aは、静電潜像担持体(感光体ドラム)10、電ローラ20、露光装置(不図示)、現像装置40、中間転写ベルト50、クリーニングブレードを有するクリーニング装置60、除電ランプ70を備える。
中間転写ベルト50は、内側に配置されている3個のローラ51で張架されている無端ベルトであり、図中、矢印方向に移動することができる。3個のローラ51の一部は、中間転写ベルト50に転写バイアス(一次転写バイアス)を印加することが可能な転写バイアスローラとしても機能する。また、中間転写ベルト50の近傍に、クリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されている。更に、転写紙95にトナー像を転写するための転写バイアス(二次転写バイアス)を印加することが可能な転写ローラ80が中間転写ベルト50と対向して配置されている。また、中間転写ベルト50の周囲には、中間転写ベルト50に転写されたトナー像に電荷を付与するためのコロナ帯電装置58が、中間転写ベルト50の回転方向に対して、感光体ドラム10と中間転写ベルト50の接触部と、中間転写ベルト50と転写紙95の接触部との間に配置されている。
現像装置40は、現像ベルト41と、現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cから構成されている。なお、各色の現像ユニット45は、現像剤収容部42K、42Y、42M、42C、現像剤供給ローラ43K、43Y、43M、43C、及び現像ローラ44K、44Y、44M、44Cを備える。また、現像ベルト41は、複数のベルトローラで張架されている無端ベルトであり、図中、矢印方向に移動することができる。更に、現像ベルト41の一部が感光体ドラム10と接触している。
【0137】
次に、画像形成装置100Aを用いて画像を形成する方法について説明する。
まず、帯電ローラ20を用いて、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させた後、露光装置(不図示)を用いて、感光ドラム10に露光光Lを露光し、静電潜像を形成する。
次に、感光ドラム10上に形成された静電潜像を、現像装置40から供給されたトナーで現像してトナー像を形成する。更に、感光体ドラム10上に形成されたトナー像が、ローラ51から印加された転写バイアスにより、中間転写ベルト50上に転写(一次転写)された後、転写ローラ80から印加された転写バイアスにより、転写紙95上に転写(二次転写)される。一方、トナー像が中間転写ベルト50に転写された感光体ドラム10は、表面に残留したトナーがクリーニング装置60により除去された後、除電ランプ70により除電される。
【0138】
図2に、本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の第二の例を示す。
画像形成装置100Bは、現像ベルト41を設けず、感光体ドラム10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M、シアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されている点以外は、画像形成装置100Aと同様の構成を有する。
【0139】
図3に、本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の第三の例を示す。
画像形成装置100Cは、タンデム型カラー画像形成装置であり、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備える。
複写装置本体150の中央部に設けられている中間転写ベルト50は、3個のローラ14、15及び16に張架されている無端ベルトであり、図中、矢印方向に移動することができる。ローラ15の近傍には、トナー像が記録紙に転写された中間転写ベルト50上に残留したトナーを除去するためのクリーニングブレードを有するクリーニング装置17が配置されている。ローラ14及び15により張架された中間転写ベルト50に対向すると共に、搬送方向に沿って、画像形成ユニット120が並置されており、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各感光体ドラム10K、10Y、10M、10Cを備えている。また、画像形成ユニット120の近傍には、露光装置21が配置されている。更に、中間転写ベルト50の画像形成ユニット120が配置されている側とは反対側には、二次転写ベルト24が配置されている。なお、二次転写ベルト24は、一対のローラ23に張架されている無端ベルトであり、二次転写ベルト24上を搬送される記録紙と中間転写ベルト50は、ローラ16と23の間で接触することができる。また、二次転写ベルト24の近傍には、一対のローラに張架されている無端ベルトである定着ベルト26と、定着ベルト26に押圧されて配置された加圧ローラ27とを備える定着装置25が配置されている。なお、二次転写ベルト24及び定着装置25の近傍に、記録紙の両面に画像を形成する場合に、記録紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。なお、18は画像形成手段、22は二次転写装置を示す。
【0140】
次に、画像形成装置100Cを用いて、フルカラー画像を形成する方法について説明する。まず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に、カラー原稿をセットするか、原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に、カラー原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした場合は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした場合は、直ちに、スキャナ300が駆動し、光源を備える第1走行体33及びミラーを備える第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33から照射された光の原稿面からの反射光を第2走行体34で反射した後、結像レンズ35を介して、読み取りセンサ36で受光することにより、原稿が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報が得られる。
【0141】
各色の画像情報は、各色の画像形成ユニット120に伝達され、各色のトナー像が形成される。各色の画像形成ユニット120は、図4に示すように、それぞれ、感光体ドラム10と、感光体ドラム10を一様に帯電させる帯電ローラ160と、各色の画像情報に基づいて、感光体ドラム10に露光光Lを露光し、各色の静電潜像を形成する露光装置と、静電潜像を各色の現像剤で現像して各色のトナー像を形成する現像装置61と、トナー像を中間転写ベルト50上に転写させるための転写ローラ62と、クリーニングブレードを有するクリーニング装置63と、除電ランプ64とを備える。
各色の画像形成ユニット120で形成された各色のトナー像は、ローラ14、15及び16に張架されて移動する中間転写体50上に順次転写(一次転写)され、重ね合わされて複合トナー像が形成される。
【0142】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の一つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の一つから記録紙を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。あるいは、給紙ローラを回転して手差しトレイ54上の記録紙を繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、記録紙の紙粉を除去するためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。次に、中間転写ベルト50上に形成された複合トナー像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させることにより、中間転写ベルト50と二次転写ベルト24との間に記録紙を送出させ、複合トナー像を記録紙上に転写(二次転写)する。なお、複合トナー像を転写した中間転写ベルト50上に残留したトナーは、クリーニング装置17により除去される。
複合トナー像が転写された記録紙は、二次転写ベルト24により搬送された後、定着装置25により複合トナー像が定着される。次に、記録紙は、切換爪55により搬送経路が切り換えられ、排出ローラ56により排紙トレイ57上に排出される。あるいは、記録紙は、切換爪55により搬送経路が切り換えられ、シート反転装置28により反転され、裏面にも同様にして画像が形成された後、排出ローラ56により排紙トレイ57上に排出される。
【実施例】
【0143】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、例中の配合量を示す「部」はいずれも「質量部」である。
【0144】
(製造例1)
<非結晶性ポリエステル樹脂(a−1)の製造>
・L−ラクチド 70部
・D−ラクチド 30部
・ε−カプロラクトン 5部
・2−エチルヘキシル酸スズ 0.03部
温度計、撹拌機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、上記原材料の内、2−エチルヘキシル酸スズ以外のものを入れ、窒素雰囲気下、120℃で20分間加熱溶融させた後、2−エチルヘキシル酸スズを加えて、190℃で3時間開環重合させた。
その後、残留ラクチドとε−カプロラクトンを減圧留去し、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有する[非結晶性ポリエステル樹脂(a−1)]を得た。
この樹脂のMnは9200、Mwは37000、光学純度Xは40モル%であった。
【0145】
(製造例2)
<非結晶性ポリエステル樹脂(a−2)(ポリエステルジオール)の製造>
・1,3−プロパンジオール 0.8部
・L−ラクチド 76部
・D−ラクチド 24部
・2−エチルヘキシル酸スズ 0.03部
温度計、撹拌機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、上記原材料の内、2−エチルヘキシル酸スズ以外のものを入れ、窒素雰囲気下、120℃で20分間加熱溶融させた後、2−エチルヘキシル酸スズを加えて、190℃で3時間開環重合させた。
その後、残留ラクチドを減圧留去し、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール[非結晶性ポリエステル樹脂(a−2)]を得た。
この樹脂のMnは2400、Mwは9000、光学純度Xは52モル%であった。
【0146】
(製造例3)
<非結晶性ポリエステル樹脂(a−3)(ポリエステルジオール)の製造>
・1,4−ブタンジオール 0.9部
・L−ラクチド 76部
・D−ラクチド 24部
・2−エチルヘキシル酸スズ 0.03部
温度計、撹拌機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、上記原材料の内、2−エチルヘキシル酸スズ以外のものを入れ、窒素雰囲気下、120℃で20分間加熱溶融させた後、2−エチルヘキシル酸スズを加えて、180℃で3時間開環重合させた。
その後、残留ラクチドを減圧留去し、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール[非結晶性ポリエステル樹脂(a−3)]を得た。
この樹脂のMnは3200、Mwは11000、光学純度Xは52モル%であった。
【0147】
(製造例4)
<非結晶性ポリエステル樹脂(a−4)(ポリエステルジオール)の製造>
・1,3−プロパンジオール 0.7部
・L−ラクチド 50部
・メソラクチド 46部
・2−エチルヘキシル酸スズ 0.03部
温度計、撹拌機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、上記原材料の内、2−エチルヘキシル酸スズ以外のものを入れ、窒素雰囲気下、120℃で20分間加熱溶融させた後、2−エチルヘキシル酸スズを加えて、180℃で3時間開環重合させた。
その後、残留ラクチドを減圧留去し、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール[非結晶性ポリエステル樹脂(a−4)]を得た。
この樹脂のMnは4600、Mwは15000、光学純度Xは52モル%であった。
【0148】
(製造例5)
<非結晶性ポリエステル樹脂(a−5)(ポリエステルジオール)の製造>
・1,3−プロパンジオール 0.55部
・L−ラクチド 50部
・メソラクチド 46部
・2−エチルヘキシル酸スズ 0.03部
温度計、撹拌機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、上記原材料の内、2−エチルヘキシル酸スズ以外のものを入れ、窒素雰囲気下、120℃で20分間加熱溶融させた後、2−エチルヘキシル酸スズを加えて、180℃で3時間開環重合させた。
その後、残留ラクチドを減圧留去し、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール[非結晶性ポリエステル樹脂(a−5)]を得た。
この樹脂のMnは8200、Mwは34000、光学純度Xは52モル%であった。
【0149】
(製造例6)
<非結晶性ポリエステル樹脂(a−6)(ポリエステルジオール)の製造>
・1,4−ブタンジオール 0.6部
・L−ラクチド 76部
・D−ラクチド 24部
・2−エチルヘキシル酸スズ 0.03部
温度計、撹拌機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、上記原材料の内、2−エチルヘキシル酸スズ以外のものを入れ、窒素雰囲気下、120℃で20分間加熱溶融させた後、2−エチルヘキシル酸スズを加えて、180℃で3時間開環重合させた。
その後、残留ラクチドを減圧留去し、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール[非結晶性ポリエステル樹脂(a−6)]を得た。
この樹脂のMnは12000、Mwは41000、光学純度Xは52モル%であった。
【0150】
(製造例7)
<非結晶性ポリエステル樹脂(a−7)(ポリエステルジオール)の製造>
・1,3−プロパンジオール 0.65部
・L−ラクチド 80部
・D−ラクチド 20部
・2−エチルヘキシル酸スズ 0.03部
温度計、撹拌機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、上記原材料の内、2−エチルヘキシル酸スズ以外のものを入れ、窒素雰囲気下、120℃で20分間加熱溶融させた後、2−エチルヘキシル酸スズを加えて、180℃で3時間開環重合させた。
その後、残留ラクチドを減圧留去し、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール[非結晶性ポリエステル樹脂(a−7)]を得た。
この樹脂のMnは7600、Mwは26000、光学純度Xは60モル%であった。
【0151】
(製造例8)
<非結晶性ポリエステル樹脂(a−8)の製造>
・L−ラクチド 85部
・メソラクチド 25部
・2−エチルヘキシル酸スズ 0.03部
温度計、撹拌機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、上記原材料の内、2−エチルヘキシル酸スズ以外のものを入れ、窒素雰囲気下、120℃で20分間加熱溶融させた後、2−エチルヘキシル酸スズを加えて、180℃で3時間開環重合させた。
その後、残留ラクチドを減圧留去し、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有する[非結晶性ポリエステル樹脂(a−8)]を得た。
この樹脂のMnは8800、Mwは39000、光学純度Xは77モル%であった。
【0152】
(製造例9)
<非結晶性ポリエステル樹脂(a−9)(ポリエステルジオール)の製造>
・1,4−ブタンジオール 1部
・L−ラクチド 50部
・D−ラクチド 13部
・2−エチルヘキシル酸スズ 0.03部
温度計、撹拌機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、上記原材料の内、2−エチルヘキシル酸スズ以外のものを入れ、窒素雰囲気下、120℃で20分間加熱溶融させた後、2−エチルヘキシル酸スズを加えて、180℃で3時間開環重合させた。
その後、残留ラクチドを減圧留去し、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有する[ポリエステルジオール(a11−1)]を得た。
【0153】
・ビスフェノールA EO2モル付加物 17.5部
・テレフタル酸 17.5部
・2−エチルヘキシル酸スズ 0.02部
一方、温度計、撹拌機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、上記原材料を溶解させたトルエン溶液を入れ、200℃、8kPaで15時間反応を行った後、常温常圧に戻して[ポリエステルジオール(a12−1)]を得た。
【0154】
次いで、上記[ポリエステルジオール(a11−1)]70部と、[ポリエステルジオール(a12−1)]30部のそれぞれをメチルエチルケトン中に溶解し、伸長剤としてイソホロンジイソシアネート(IPDI)を8部加えて、50℃で6時間伸長反応を行った後、溶媒を留去して[非結晶性ポリエステル樹脂(a−9)]を得た。
この樹脂のMnは5300、Mwは21000、光学純度Xは59モル%であった。
【0155】
(製造例10)
<非結晶性ポリエステル樹脂(a−10)の製造>
・L−ラクチド 92部
・D−ラクチド 8部
・ε−カプロラクトン 10部
・2−エチルヘキシル酸スズ 0.03部
温度計、撹拌機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、上記原材料の内、2−エチルヘキシル酸スズ以外のものを入れ、窒素雰囲気下、120℃で20分間加熱溶融させた後、2−エチルヘキシル酸スズを加えて、190℃で3時間開環重合させた。
その後、残留ラクチドと、ε−カプロラクトンを減圧留去し、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有する[非結晶性ポリエステル樹脂(a−10)]を得た。
この樹脂のMnは8200、Mwは31000、光学純度Xは84モル%であった。
【0156】
(製造例11)
<ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有さない非結晶性ポリエステル樹脂(d)の製造>
・ビスフェノールA EO2モル付加物 10部
・テレフタル酸 8部
・アジピン酸 2部
・2−エチルヘキシル酸スズ 0.01部
温度計、撹拌機及び窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、上記原材料を溶解させたトルエン溶液を入れ、200℃、8kPaで15時間反応を行い、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有さない[非結晶性ポリエステル樹脂(d)]を得た。
この樹脂のMnは2900、Mwは6800であった。
【0157】
以上、第一の結着樹脂の製造に使用した原材料、及び第一の結着樹脂の物性について、表1に纏めて示した。
【表1】

【0158】
(製造例12)
<第二の結着樹脂からなるポリエステル樹脂微粒子(b−1)の水分散液の製造>
テレフタル酸79部、イソフタル酸7部、エチレングリコール14部、ネオペンチルグリコール29部からなる混合物を、オートクレーブ反応槽中で、260℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで触媒のテトラブチルチタネートを0.06部添加し、系の温度を280℃に昇温し、系内を徐々に減圧して1.5時間後に13Paとした。この条件下で更に重縮合反応を続け、2時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、270℃になったところでトリメリット酸2部を添加し、250℃で1時間撹拌して、解重合反応を行った。その後、窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。これを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状の[ポリエステル樹脂(b−1)]を得た。
続いて、ジャケット付きの1Lガラス容器を備えた撹拌機(特殊機化工業社製、T.K.ロボミックス)に、上記[ポリエステル樹脂(b−1)]100部、イソプロピルアルコール60部、1.6部の28質量%アンモニア水、及び170部の蒸留水を仕込み、7000rpmで撹拌した。次いで、ジャケットに熱水を通して加熱し、系内温度を73〜75℃に保って更に60分間撹拌した。その後、ジャケット内に冷水を流し、回転速度を5000rpmに下げて攪拌しつつ室温まで冷却して、乳白色の均一な[ポリエステル樹脂(b−1)の水性分散体]を得た。
続いて、上記[ポリエステル樹脂(b−1)の水性分散体]300部と蒸留水80部を1Lの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器を設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約160部の水性媒体を留去したところで加熱を終了し室温で冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を600メッシュ(あやたたみ織り)のフィルターで濾過し、濾液の固形分濃度を測定したところ40質量%であった。この濾液を攪拌しながら蒸留水を添加し、固形分濃度が30質量%になるように調整して、[ポリエステル樹脂微粒子(b−1)の水分散液]を得た。
この水分散液中に含まれる樹脂微粒子の体積平均粒径は68nmであり、樹脂分のMwは9800、Tgは68℃、酸価は30mgKOH/gであった。
【0159】
(製造例13)
<第二の結着樹脂からなるポリエステル樹脂微粒子の水分散液(b−2)の製造>
テレフタル酸56部、イソフタル酸27部、エチレングリコール12部、ネオペンチルグリコール31部からなる混合物をオートクレーブ反応槽中で、260℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで触媒のテトラブチルチタネートを0.05部添加し、系の温度を280℃に昇温し、系内を徐々に減圧して1.5時間後に13Paとした。この条件下で更に重縮合反応を続け、2時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、270℃になったところでトリメリット酸22部を添加し、250℃で1時間撹拌して、解重合反応を行った。その後、窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。これを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状の[ポリエステル樹脂(b−2)]を得た。
続いて、ジャケット付きの1Lガラス容器を備えた撹拌機(特殊機化工業社製、T.K.ロボミックス)に、上記[ポリエステル樹脂(b−2)]100部、イソプロピルアルコール60部、1.6部の28質量%アンモニア水、及び170部の蒸留水を仕込み、7000rpmで撹拌した。次いで、ジャケットに熱水を通して加熱し、系内温度を73〜75℃に保って更に60分間撹拌した。その後、ジャケット内に冷水を流し、回転速度を5000rpmに下げて攪拌しつつ室温まで冷却して、乳白色の均一な[ポリエステル樹脂(b−2)の水性分散体]を得た。
続いて、上記[ポリエステル樹脂(b−2)の水性分散体]300部と蒸留水80部を1Lの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器を設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約160部の水性媒体を留去したところで加熱を終了し室温で冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を600メッシュ(あやたたみ織り)のフィルターで濾過を行い、濾液の固形分濃度を測定したところ40質量%であった。この濾液を攪拌しながら蒸留水を添加し、固形分濃度が30質量%になるように調整して、[ポリエステル樹脂微粒子(b−2)の水分散液]を得た。
この水分散液中に含まれる樹脂微粒子の体積平均粒径は107nmであり、樹脂分のMwは13500、Tgは63℃、酸価は22mgKOH/gであった。
【0160】
(製造例14)
<第二の結着樹脂からなるスチレン−アクリル樹脂微粒子(b−3)の水分散液の製造>
攪拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水600部、スチレン120部、メタクリル酸100部、アクリル酸ブチル45部、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩(エレミノールJS−2、三洋化成工業社製)10部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で20分攪拌したところ、白色の乳濁液が得られた。この乳濁液を加熱して、系内温度75℃まで昇温し、6時間反応させた。更に1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で6時間熟成して[スチレン−アクリル樹脂微粒子(b−3)の水分散液]を得た。
この水分散液中に含まれる樹脂微粒子の体積平均粒径は80nmであり、樹脂分のMwは160000、Tgは74℃であった。
【0161】
以上、第二の結着樹脂の製造に使用した原材料、及び第二の結着樹脂の物性について、表2に纏めて示した。
【表2】

【0162】
(製造例15)
<離型剤分散樹脂(c−1)(グラフト重合体)の製造>
攪拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、キシレン480部、低分子量ポリエチレン(三洋化成工業社製サンワックスLEL−400:軟化点128℃)100部を入れて充分溶解し、窒素置換した後、スチレン740部、アクリロニトリル100部、アクリル酸ブチル60部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート36部、及びキシレン100部の混合溶液を170℃で3時間滴下して重合し、更にこの温度で30分間保持した。次いで、脱溶剤を行い、[グラフト重合体(c−1)]を合成した。
得られた重合体のMnは4500、Mwは24000、Tgは67℃、ビニル系樹脂のSP値(溶解度パラメータ)は10.9(cal/cm1/2であった。
【0163】
(製造例16)
<離型剤分散樹脂(c−2)(グラフト重合体)の製造>
攪拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、キシレン480部、低分子量ポリエチレン(三洋化成工業社製サンワックスLEL−400:軟化点128℃)150部を入れて充分溶解し、窒素置換した後、スチレン700部、アクリロニトリル95部、アクリル酸ブチル55部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート36部、及びキシレン100部の混合溶液を170℃で3時間滴下して重合し、更にこの温度で30分間保持した。次いで、脱溶剤を行い、[グラフト重合体(c−2)]を合成した。
得られた重合体のMnは3400、Mwは16000、Tgは63℃、ビニル系樹脂のSP値は10.7(cal/cm1/2であった。
【0164】
(製造例17)
<離型剤分散樹脂(c−3)(グラフト重合体)の製造>
攪拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、キシレン480部、低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業社製ビスコール660P:軟化点145℃)200部を入れて充分溶解し、窒素置換した後、スチレン636部、アクリロニトリル70部、アクリル酸ブチル88部、アクリル酸6部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート30部、及びキシレン250部の混合溶液を170℃で3時間滴下して重合し、更にこの温度で30分間保持した。次いで、脱溶剤を行い、[グラフト重合体(c−3)]を合成した。
得られた重合体のMnは2800、Mwは11000、Tgは58℃、ビニル系樹脂のSP値は10.8(cal/cm1/2であった。
【0165】
(製造例18)
<離型剤分散樹脂(c−4)(ポリエステル樹脂)の製造>
温度計、窒素導入管、攪拌機及び冷却管を取り付けた4つロフラスコに、ペンタエリスリトール10部、及びステアリン酸90部を加え、窒素気流下、220℃で反応水を留去しつつ、15時間常圧で反応させた。得られたエステル化粗生成物95部にエチレングリコール15部を入れ、エステル化粗生成物の酸価の1.5倍当量に相当する量の水酸化カリウムを含む10質量%水酸化カリウム水溶液を加え、70℃で30分間攪拌した。30分間静置して水層部を除去して脱酸工程を終了した。次いで、用いたエステル化粗生成物100部に対して、20部のイオン交換水を入れて、70℃で30分間攪拌した後、30分間静置して水層部を分離・除去した。廃水のpHが中性になるまで水洗を4回繰り返した。残ったエステル層を180℃、1kPaの減圧条件下で溶媒を留去し、ろ過を行い、融点79℃、酸価0.2mgKOH/g、水酸基価1.6mgKOH/gの[エステル化合物1](表4)を得た。
続いて、蒸留塔を備えた反応容器に、テレフタル酸29部、イソフタル酸0.4部、無水トリメリット酸7部、エチレングリコール8部、ポリオキシプロピレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン47部、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7部、上記[エステル化合物1]2部、及び触媒として800ppmの三酸化アンチモンを投入した。次いで、攪拌翼の回転数120rpm、反応系内の温度265℃で、7時間エステル化反応させた。次いで、反応系内の温度を235℃の縮重合反応温度に保ち、反応容器内を約40分かけて7.5mmHg(1kPa)まで減圧し、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った。反応とともに反応系の粘度が上昇し、粘度上昇とともに真空度を上昇させ、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮合反応を実施した。そして、所定のトルクを示した時点で反応系を常圧に戻し、加熱を停止し、窒素により加圧して約40分かけて反応物を取り出し、[ポリエステル樹脂(c−4)]を得た。
得られた樹脂のMnは4600、Mwは28000、Tgは55℃であった。
【0166】
(製造例19)
<離型剤分散樹脂(c−5)(ポリエステル樹脂)の製造>
蒸留塔を備えた反応容器に、テレフタル酸30部、イソフタル酸0.4部、無水トリメリット酸8部、エチレングリコール10部、ポリオキシプロピレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン48部、上記[エステル化合物1]4部、及び触媒として800ppmの三酸化アンチモンを投入した。次いで、攪拌翼の回転数120rpm、反応系内の温度265℃で、7時間エステル化反応させた。次いで、反応系内の温度を235℃の縮重合反応温度に保ち、反応容器内を約40分かけて7.5mmHg(1kPa)まで減圧し、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った。反応とともに反応系の粘度が上昇し、粘度上昇とともに真空度を上昇させ、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮合反応を実施した。そして、所定のトルクを示した時点で反応系を常圧に戻し、加熱を停止し、窒素により加圧して約40分かけて反応物を取り出し、[ポリエステル樹脂(c−5)]を得た。
得られた樹脂のMnは4900、Mwは34000、Tgは52℃であった。
【0167】
(製造例20)
<離型剤分散樹脂(c−6)(ポリエステル樹脂)の製造>
温度計、窒素導入管、攪拌機及び冷却管を取り付けた4つロフラスコに、ペンタエリスリトール9部、及びベヘン酸91部を加え、窒素気流下、220℃で反応水を留去しつつ、15時間常圧で反応させた。得られたエステル化粗生成物95部にエチレングリコール15部を入れ、エステル化粗生成物の酸価の1.5倍当量に相当する量の水酸化カリウムを含む10質量%水酸化カリウム水溶液を加え、70℃で30分間攪拌した。30分間静置して水層部を除去して脱酸工程を終了した。次いで、用いたエステル化粗生成物100部に対して、20部のイオン交換水を入れて、70℃で30分間攪拌した後、30分間静置して水層部を分離・除去した。廃水のpHが中性になるまで水洗を4回繰り返した。残ったエステル層を180℃、1kPaの減圧条件下で溶媒を留去し、ろ過を行い、融点85℃、酸価0.2mgKOH/g、水酸基価1.6mgKOH/gの[エステル化合物2](表4)を得た。
続いて、蒸留塔を備えた反応容器に、テレフタル酸29部、イソフタル酸0.4部、無水トリメリット酸7部、エチレングリコール8部、ポリオキシプロピレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン47部、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7部、上記[エステル化合物2]2部、及び触媒として800ppmの三酸化アンチモンを投入した。次いで、攪拌翼の回転数120rpm、反応系内の温度265℃で、7時間エステル化反応させた。次いで、反応系内の温度を235℃の縮重合反応温度に保ち、反応容器内を約40分かけて7.5mmHg(1kPa)まで減圧し、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った。反応とともに反応系の粘度が上昇し、粘度上昇とともに真空度を上昇させ、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮合反応を実施した。そして、所定のトルクを示した時点で反応系を常圧に戻し、加熱を停止し、窒素により加圧して約40分かけて反応物を取り出し、[ポリエステル樹脂(c−6)]を得た。
得られた樹脂のMnは6500、Mwは43000、Tgは60℃であった。
【0168】
(製造例21)
<離型剤分散樹脂(c−7)(ポリエステル樹脂)の製造>
温度計、窒素導入管、攪拌機及び冷却管を取り付けた4つロフラスコに、ペンタエリスリトール11部、及びパルミチン酸89部を加え、窒素気流下、220℃で反応水を留去しつつ、15時間常圧で反応させた。得られたエステル化粗生成物95部にエチレングリコール15部を入れ、エステル化粗生成物の酸価の1.5倍当量に相当する量の水酸化カリウムを含む10質量%水酸化カリウム水溶液を加え、70℃で30分間攪拌した後、30分間静置して水層部を除去し脱酸工程を終了した。次いで、用いたエステル化粗生成物100部に対して20部のイオン交換水を入れ、70℃で30分間攪拌した後、30分間静置して水層部を分離・除去した。更に廃水のpHが中性になるまで水洗を4回繰り返した。残ったエステル層について180℃、1kPaの減圧条件下で溶媒を留去し、ろ過を行い、融点72℃、酸価0.2mgKOH/g、水酸基価0.8mgKOH/gの[エステル化合物3](表4)を得た。
続いて、蒸留塔を備えた反応容器に、テレフタル酸29部、イソフタル酸0.4部、無水トリメリット酸7部、エチレングリコール8部、ポリオキシプロピレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン47部、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7部、上記[エステル化合物3]2部、及び触媒として800ppmの三酸化アンチモンを投入した。次いで、攪拌翼の回転数120rpm、反応系内の温度265℃で、7時間エステル化反応させた。次いで反応系内の温度を235℃の縮重合反応温度に保ち、反応容器内を約40分かけて7.5mmHg(1kPa)まで減圧し、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った。反応とともに反応系の粘度が上昇したので、粘度上昇とともに真空度を上昇させ、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮合反応させた。そして、所定のトルクを示した時点で反応系を常圧に戻して加熱を停止し、窒素により加圧し約40分かけて反応物を取り出し、[ポリエステル樹脂(c−7)]を得た。
得られた樹脂のMnは5700、Mwは38000、Tgは48℃であった。
【0169】
(製造例22)
<離型剤分散樹脂(c−8)(ポリエステル樹脂)の製造>
温度計、窒素導入管、攪拌機及び冷却管を取り付けた4つロフラスコに、グリセリン10部、及びステアリン酸90部を加え、窒素気流下、220℃で反応水を留去しつつ、15時間常圧で反応させた。得られたエステル化粗生成物95部にエチレングリコール15部を入れ、エステル化粗生成物の酸価の1.5倍当量に相当する量の水酸化カリウムを含む10質量%水酸化カリウム水溶液を加え、70℃で30分間攪拌した後、30分間静置し水層部を除去して脱酸工程を終了した。次いで、用いたエステル化粗生成物100部に対して、20部のイオン交換水を入れ、70℃で30分間攪拌した後、30分間静置して水層部を分離・除去した。更に廃水のpHが中性になるまで水洗を4回繰り返した。残ったエステル層について、180℃、1kPaの減圧条件下で溶媒を留去し、ろ過を行い、融点62℃、酸価0.3mgKOH/g、水酸基価1.5mgKOH/gの[エステル化合物4](表4)を得た。
続いて、蒸留塔を備えた反応容器に、テレフタル酸29部、イソフタル酸0.4部、無水トリメリット酸7部、エチレングリコール8部、ポリオキシプロピレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン47部、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7部、上記[エステル化合物4]2部、及び触媒として800ppmの三酸化アンチモンを投入した。次いで、攪拌翼の回転数120rpm、反応系内の温度265℃で、7時間エステル化反応させた。次いで、反応系内の温度を235℃の縮重合反応温度に保ち、反応容器内を約40分かけて7.5mmHg(1kPa)まで減圧し、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応させた。反応とともに反応系の粘度が上昇したので、粘度上昇とともに真空度を上昇させ、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮合反応させた。そして、所定のトルクを示した時点で反応系を常圧に戻して加熱を停止し、窒素により加圧して約40分かけて反応物を取り出し、[ポリエステル樹脂(c−8)]を得た。
得られた樹脂のMnは4700、Mwは31000、Tgは42℃であった。
【0170】
以上、離型剤分散樹脂の製造に使用した原材料、及び離型剤分散樹脂の物性について、表3〜表5に纏めて示した。
【表3】

【0171】
【表4】

【0172】
【表5】

【0173】
(製造例23〜38)
<(ポリ)グリセリンエステル(1)〜(16)の製造>
表6に示すグリセリン原料と脂肪酸を、触媒とともに、所定の比率で反応容器に入れ、窒素気流下、240℃でエステル化反応させて、[(ポリ)グリセリンエステル(1)〜(16)]を得た。得られた[(ポリ)グリセリンエステル(1)〜(16)]の物性を表7に示した。なお、ジグリセリンS、ポリグリセリン#310、#500、#750(何れも阪本薬品工業社製)の、水酸基価から算出した平均重合度は各々2、4、6、10である。また、表7に記載したグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの化合物名は、製造した各(ポリ)グリセリンエステルの主成分である。なお、グリセリンエステル(1)(2)については実質的に表7に記載したグリセリンエステル化合物のみからなるとみてよいが、ポリグリセリンエステル(3)〜(16)については、ジ又はポリグリセリン原料が僅かに重合度分布を有するため主成分と表現したものである。
【0174】
【表6】

【0175】
【表7】

【0176】
[実施例1〜18、比較例1〜8]
<トナーの製造>
―水相(1)〜(26)の調製―
水990部、(製造例12)〜(製造例14)で製造した樹脂微粒子の水分散液83部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液(エレミノールMON−7、三洋化成工業社製)37部、及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、水相(1)〜(26)を得た。樹脂微粒子の水分散液の種類は表8に示すとおりである。
【0177】
【表8】

【0178】
―ポリエステルプレポリマーの合成―
・ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物 720部
・ビスフェノールAのプロピレンオキシド2モル付加物 90部
・テレフタル酸 290部
・無水トリメリット酸 25部
・ジブチルスズオキシド 2部
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器内に、上記原材料を入れて、常圧下、230℃で8時間反応させた後、10〜15mmHgの減圧下で7時間反応させ、[中間体ポリエステル樹脂]を合成した。得られた樹脂のMnは2500、Mwは10700、ピーク分子量は3400、Tgは57℃、酸価は0.4mgKOH/g、水酸基価は49mgKOH/gであった。
【0179】
・中間体ポリエステル樹脂 400部
・イソホロンジイソシアネート 95部
・酢酸エチル 500部
続いて、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器内に、上記原材料を入れて、100℃で8時間反応させ、[ポリエステルプレポリマー]の50質量%酢酸エチル溶液を得た。
得られたプレポリマーは、遊離イソシアネートの含有量が1.42質量%であった。
【0180】
―ケチミン化合物の合成―
・イソホロンジアミン 30部
・メチルエチルケトン 70部
撹拌棒及び温度計の付いた反応容器内に、上記原材料を仕込み、50℃で5時間反応させ、[ケチミン化合物]を合成した。
得られた化合物のアミン価は423mgKOH/gであった。
【0181】
―マスターバッチ(1)の作製―
・非結晶性ポリエステル樹脂(a−1) 100部
・カーボンブラック(Printex35、デグサ社製) 100部
(DBP吸油量:42mL/100g、pH:9.5)
・水 50部
上記原材料を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。得られた混合物を、二本ロールを用いて80℃で30分間混練後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して[マスターバッチ(1)]を作製した。
【0182】
―マスターバッチ(2)〜(11)の作製―
マスターバッチ(1)における非結晶性ポリエステル樹脂(a−1)に代えて、表9に示す非結晶性ポリエステル樹脂を用いた点以外は、マスターバッチ(1)の場合と同様にして、マスターバッチ(2)〜(11)を作製した。
【表9】

【0183】
―離型剤分散液(1)〜(26)の調製―
表10に示す処方に従い、酢酸エチル、離型剤、離型剤分散樹脂を所定量仕込み、撹拌しながら離型剤の融点以上に加熱して溶解させた後、一気に0℃程度まで急冷した。次いでビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用い、粒径0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填して、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒、3パスの条件で分散を行い、[離型剤分散液(1)〜(26)]を調製した。
【0184】
【表10】

【0185】
―油相(1)〜(26)の調製―
次に、表11に示す原材料を、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用い、粒径0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填して、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒で、3パスした。更に、ケチミン化合物2.5部を加えて溶解させ、油相(1)〜(26)を調製した。
【0186】
【表11】

【0187】
―トナー母体(1)〜(26)の作製―
次に、別の容器内に、[水相(1)]を150部入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、12,000rpmで攪拌しながら、[油相(1)]100部を添加し、10分間混合して乳化スラリーを得た。
次いで、攪拌機及び温度計をセットしたコルベンに該乳化スラリー100部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら、30℃で10時間脱溶剤した後、洗浄、濾過、乾燥を行った。その後、目開き75μmメッシュで篩い、[トナー母体(1)]を作製した。
同様にして、[水相(2)]〜[水相(26)]と[油相(2)]〜[油相(26)]を順に用いて、[トナー母体(2)]〜[トナー母体(26)]を作製した。
【0188】
―トナー(1)〜(26)の作製―
得られた[トナー母体(1)]〜[トナー母体(26)]を100部と、外添剤である疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン社製)1.0部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて、周速30m/秒で30秒間混合し、1分間休止する処理を5サイクル行った後、目開きが35μmのメッシュで篩い、実施例1〜18及び比較例1〜8の[トナー(1)]〜[トナー(26)]を作製した。
【0189】
<キャリアの作製>
・シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン) 100部
・γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン 5部
・カーボンブラック 10部
・トルエン 100部
上記の原材料を、ホモミキサーで20分間分散させて、[樹脂層塗布液]を調製した。その後、流動床型コーティング装置を用いて、体積平均粒径が35μmの球状フェライト1,000部の表面に[樹脂層塗布液]を塗布して、[キャリア]を作製した。
【0190】
<現像剤の作製>
[トナー(1)]〜[トナー(26)]のそれぞれを5部と、前記[キャリア]95部とを混合して、実施例1〜18及び比較例1〜8の各現像剤を作製した。
【0191】
上記各現像剤を用いて、以下のようにして定着性(定着下限温度、定着上限温度)、耐熱保存性、耐フィルミング性、画像濃度の評価を行い、総合評価を下した。
その結果を表12、13に示す。
<評価方法>
≪体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)、及び比(Dv/Dn)の測定≫
トナー(トナー母体)の粒度分布の測定は、次のようにして行った。
即ち、測定装置としてコールターマルチサイザーIII(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機社製)及びパーソナルコンピューターを接続した。電解液は、1級塩化ナトリウムの1質量%水溶液を調製した。測定法は、この電解液100〜150mL中に、分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5mL加え、更に測定試料を2〜20mg加えて、超音波分散器で約1〜3分の分散処理を行い、サンプル分散液を得た。次いで別のビーカーに前記電解液100〜200mLを入れ、その中に前記サンプル分散液を所定の濃度になるように加え、前記コールターマルチサイザーIIIにより、100μmアパーチャーを用いて、50,000個の粒子の平均値を測定した。得られた体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)から両者の比(Dv/Dn)を求めた。
【0192】
≪離型剤のトナー中における分散径の測定≫
トナーをエポキシ樹脂に包埋して硬化させた後、約100nmに超薄切片化し、四酸化ルテニウムで染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率10,000倍で観察を行い、写真を撮影した。TEM写真により離型剤の分散状態を観察し、50個のトナーについて、含有する離型剤の最長径を画像処理により算出し、平均分散径を算出した。
【0193】
≪離型剤の融点の測定≫
離型剤の融点はDSCシステム(示差走査熱量計)(DSC−60:島津製作所製)を用いて測定した。
即ち、離型剤5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。次いで窒素雰囲気下、20℃から昇温速度10℃/minで200℃まで加熱した。その後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/minで200℃まで加熱し、DSC曲線を計測した。得られたDSC曲線から、DSC−60システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時におけるDSC曲線の吸熱ピークを選択し、グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの融点を求めた。
【0194】
≪定着性≫
定着ローラとして、テフロン(登録商標)ローラを使用した電子写真方式の複写機(MF−200、リコー社製)の定着部を改造した装置を用い、定着ベルトの温度を変化させて、普通紙及び厚紙の転写紙タイプ6200(リコー社製)及び複写印刷用紙<135>(NBSリコー社製)に、トナーの付着量が0.85±0.1mg/cmのベタ画像を形成した。このとき、普通紙でホットオフセットの発生しない上限温度を定着上限温度とした。また、厚紙でベタ画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる下限温度を定着下限温度とした。このようにして得た定着上限温度及び定着下限温度について、下記の評価基準に基づいて評価した。
〔定着上限温度の評価基準〕
◎:定着上限温度が190℃以上
○:定着上限温度が180℃以上190℃未満
△:定着上限温度が170℃以上180℃未満
×:定着上限温度が170℃未満
〔定着下限温度の評価基準〕
◎:定着下限温度が115℃未満
○:定着下限温度が115℃以上125℃未満
△:定着下限温度が125℃以上135℃未満
×:定着下限温度が135℃以上
【0195】
≪耐熱保存性(針入度)≫
50mLのガラス容器に各トナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した。このトナーを24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)により針入度(mm)を測定し、下記基準に基づいて評価した。
なお、針入度の値が大きいほど耐熱保存性が優れていることを示し、5mm未満の場合には、使用上問題が発生する可能性が高い。
〔評価基準〕
◎:針入度25mm以上
○:針入度15mm以上25mm未満
△:針入度5mm以上15mm未満
×:針入度5mm未満
【0196】
≪耐フィルミング性≫
タンデム型カラー画像形成装置(imagio Neo450、リコー社製)を用い、20%画像面積のチャートを、画像濃度1.4±0.2になるようにトナー濃度を制御しながら印字し、出力初期の現像剤の帯電量A(μC/g)と、20万枚印字後の現像剤の帯電量B(μC/g)をブローオフ法で測定し、帯電量Aに対する帯電量Bの低下割合=〔(A−B)/A〕×100(%)を算出して、下記基準で評価した。
トナーがキャリアにフィルミングすることにより、キャリア最表面の組成が変化して、帯電量が低下する。この、印字(ラン)前後における帯電量の変化が少ないほど、トナーのキャリアへのフィルミングの程度が少ないと判断される。
〔評価基準〕
◎:15%未満
○:15%以上30%未満
△:30%以上50%未満
×:50%以上
【0197】
≪画像濃度≫
タンデム型カラー画像形成装置(imagio Neo450、リコー社製)を用い、定着ローラの表面温度を160±2℃にして、複写紙TYPE 6000<70W>(リコー社製)に、トナーの付着量が1.00±0.05mg/cmのベタ画像を形成した。得られたベタ画像の任意の6箇所の画像濃度を、分光計(938 スペクトロデンシトメータ、X−Rite社製)を用いて測定し、得られた画像濃度の平均値について、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:画像濃度が2.0以上
△:画像濃度が1.70以上2.0未満
×:画像濃度が1.70未満
【0198】
<総合評価>
以上の評価結果を総合的に判断して、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:非常に良好(◎が三つ以上であり、且つ△、×がない)
○:良好 (△が二つ以下であり、且つ×がない)
△:不良 (△が三つ以上であり、且つ×がない)
×:極度に不良(×が一つ以上)
【0199】
【表12】

【0200】
【表13】

【0201】
表12、13から、実施例1〜18の現像剤は、比較例1〜8の現像剤と比較して、離型剤がトナー表面に偏在することなくトナー内部に分散されており、低温定着性に優れ、広い定着幅を有すると共に、耐熱保存性、耐フィルミング性、画像濃度についても良好であることが分かる。
【符号の説明】
【0202】
L 露光光
10 静電潜像担持体(感光体ドラム)
10K ブラック用静電潜像担持体(感光体ドラム)
10Y イエロー用静電潜像担持体(感光体ドラム)
10M マゼンタ用静電潜像担持体(感光体ドラム)
10C シアン用静電潜像担持体(感光体ドラム)
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写クリーニング装置
18 画像形成手段
20 帯電ローラ
21 露光装置
22 二次転写装置
23 ローラ
24 二次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ベルト
28 シート反転装置
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
40 現像装置
41 現像ベルト
42K 現像剤収容部
42Y 現像剤収容部
42M 現像剤収容部
42C 現像剤収容部
43K 現像剤供給ローラ
43Y 現像剤供給ローラ
43M 現像剤供給ローラ
43C 現像剤供給ローラ
44K 現像ローラ
44Y 現像ローラ
44M 現像ローラ
44C 現像ローラ
45K ブラック現像ユニット
45Y イエロー現像ユニット
45M マゼンタ現像ユニット
45C シアン現像ユニット
49 レジストローラ
50 中間転写ベルト
51 ローラ
52 分離ローラ
53 手差し給紙路
54 手差しトレイ
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排出トレイ
58 コロナ帯電装置
60 クリーニング装置
61 現像装置
62 転写ローラ
63 感光体クリーニング装置
64 除電ランプ
70 除電ランプ
80 転写ローラ
90 クリーニング装置
95 転写紙
100A 画像形成装置
100B 画像形成装置
100C 画像形成装置
120 画像形成ユニット
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
150 複写装置本体
160 帯電ローラ
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0203】
【特許文献1】特開2009−092927号公報
【特許文献2】特開2008−262179号公報
【特許文献3】特開2010−014757号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第一の結着樹脂、着色剤、離型剤、及び離型剤分散樹脂を有機溶媒中に溶解乃至分散させた油相組成物を水系媒体中で分散乃至乳化させて得られる、下記(I)〜(II)の要件を満たすことを特徴とするトナー。
(I)前記第一の結着樹脂が少なくとも光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を主鎖の一部に含有する非結晶性ポリエステル樹脂(a)を含有し、
該非結晶性ポリエステル樹脂(a)のポリヒドロキシカルボン酸骨格は、モノマー成分換算で、光学純度X(モル%)=|X(L体)−X(D体)|〔ただし、X(L体)は光学活性モノマー換算でのL体比率(モル%)、X(D体)は光学活性モノマー換算でのD体比率(モル%)を表す〕が80モル%以下である。
(II)前記離型剤が、少なくともグリセリン又は平均重合度が2〜10のポリグリセリンと、平均炭素数が18〜24の脂肪酸をエステル化させた融点が55〜80℃のグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルを含有する。
【請求項2】
前記離型剤分散樹脂が、少なくともポリオレフィン樹脂とビニル樹脂とからなるグラフト重合体及び/又は炭素数が16〜24の脂肪酸と3価以上の多価アルコールとを反応させて得られる分岐構造を有する脂肪酸エステルを含有するポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記非結晶性ポリエステル樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)が10000〜40000であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルのトナー中における分散径が0.2〜1.0μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
前記グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルを構成する脂肪酸が、ベヘン酸を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
前記離型剤がグリセリンエステル又はジグリセリンエステルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のトナー。
【請求項7】
前記離型剤分散樹脂の含有量が前記離型剤100質量部に対して、40〜90質量部であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のトナー。
【請求項8】
トナー表面に第二の結着樹脂(b)からなる樹脂微粒子を付着させた構造を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のトナー。
【請求項9】
前記非結晶性ポリエステル樹脂(a)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する直鎖状のポリエステルジオールであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のトナー。
【請求項10】
前記非結晶性ポリエステル樹脂(a)のポリヒドロキシカルボン酸骨格が、L−ラクチドとD−ラクチドの混合物を開環重合して得られたものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のトナー。
【請求項11】
前記非結晶性ポリエステル樹脂(a)のポリヒドロキシカルボン酸骨格が、メソラクチドを開環重合して得られたものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のトナー。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
【請求項13】
更にキャリアを含有することを特徴とする請求項12に記載の現像剤。
【請求項14】
少なくとも下記(イ)〜(ニ)の工程を含むことを特徴とする画像形成方法。
(イ)静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程
(ロ)前記静電潜像を請求項12又は13記載の現像剤を用いて可視像を形成する現像工程
(ハ)前記可視像を記録媒体に転写する転写工程
(ニ)前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−237859(P2012−237859A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106418(P2011−106418)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】