説明

トナーおよびその製造方法

【課題】ロジンの含有量を多くしても、保存性、帯電安定性、および定着性に優れたトナーおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ロジンを含む結着樹脂、着色剤、前記結着樹脂のガラス転移温度より10℃以上高い融点を有する離型剤および電荷制御剤を混合して混合物を得る混合工程;前記混合物を溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程;前記溶融混練物を冷却固化し粉砕して粉砕物を得る冷却粉砕工程;および前記粉砕物を分級して未外添のトナーを得る分級工程を含み、前記トナーが外添剤をさらに添加されてなる場合には、前記未外添のトナーに外添剤をさらに添加混合してトナーを得る外添工程を含み、前記冷却粉砕工程が、前記離型剤の融点まで20℃/sec以上の冷却速度で冷却する第1冷却工程と、前記結着樹脂のガラス転移温度まで10℃/min以下の冷却速度で冷却する第2冷却工程とを含むことを特徴とするトナーの製造方法により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
潜像を顕像化するトナーは、例えば電子写真方式のような種々の画像形成プロセスに用いられている。
電子写真方式の画像形成プロセスを用いる画像形成装置では、一般的に、潜像担持体である感光体ドラム表面の感光層を均一に帯電させる帯電工程;帯電状態の感光体層に原稿像の信号光を投射して静電潜像を形成する露光工程;静電潜像に電子写真用トナーを供給し顕像化してトナー像を形成する現像工程;トナー像を紙やOHPシートなどの記録媒体に転写する転写工程;転写したトナー像を加熱、加圧などにより記録媒体上に定着させる定着工程;および転写工程後に感光体ドラム表面に残留するトナーなどをクリーニングブレードにより除去して清浄化するクリーニング工程を実行することにより、記録媒体上に所望の画像が形成される。また、記録媒体へのトナー像の転写は、中間転写媒体を介して行われることもある。
【0003】
画像形成に用いられる電子写真用トナーは、例えば混練粉砕法や懸濁重合法および乳化重合凝集法に代表される重合法などにより製造される。
混練粉砕法では、例えば、結着樹脂(「バインダー樹脂」ともいう)および着色剤を主成分とし、必要に応じて離型剤や電荷制御剤(「帯電制御剤」ともいう)などを添加・混合したトナー原料を溶融混練し、冷却・固化させた後、粉砕・分級することにより、トナーが製造される。
【0004】
近年、地球環境保全の観点から、様々な技術分野において様々な取り組みがなされている。例えば、多くの工業製品が石油を原材料として製造され、それらの製造時に必要となるエネルギーや焼却時に発生する二酸化炭素などを削減する取り組みが、地球温暖化対策として実施されている。
【0005】
二酸化炭素を削減するための新たな取り組みとして、バイオマスと呼ばれる植物由来の資源の利用が大いに注目されている。バイオマスが燃焼する際に発生する二酸化炭素は、元来植物が光合成により取り込んだ大気中の二酸化炭素であるため、大気中の二酸化炭素の収支はゼロ、すなわち二酸化炭素の増減に影響を与えないと考えられている。この性質はカーボンニュートラルと呼ばれ、バイオマス(「バイオマスモノマー」ともいう)から製造されるバイオマス材料は、バイオマスポリマー、バイオマスプラスチック、非石油系高分子材料などの名称で呼ばれている。
【0006】
電子写真の技術分野においても、環境安全性に優れ、二酸化炭素増加の抑制に有効な資源であるバイオマスを利用する取り組みがなされている。
例えば、特開2008−122509号公報(特許文献1)には、低温定着性、耐ホットオフセット性、現像耐久性を兼ね備えたトナーを提供し得る、ロジンを必須成分として得られる軟化点80〜120℃のポリエステル樹脂と、多価エポキシ化合物を必須成分として得られる軟化点160℃以上のポリエステル樹脂とを含有する電子写真トナー用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−122509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のような電子写真トナー用樹脂組成物において、バイオマスの利用率を高めるためにロジン含有量をさらに多くすると、(1)トナーの保存性が低下する、(2)現像工程のトナーの撹拌時にトナー粒子同士が凝集して帯電量が不安定になる、(3)そこで、保存性が劣化しないように、ガラス転移温度のより高い結着樹脂を用いると定着性が劣化するという課題があった。
したがって、本発明は、ロジンの含有量を多くしても、保存性、帯電安定性および定着性に優れたトナーおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、結着樹脂としてロジン由来のバイオマスを原材料にしたポリエステル樹脂を含むトナーの製造において、結着樹脂のガラス転移温度以上の融点を有する離型剤を用い、溶融混練後の冷却において冷却速度を2段階に調整することにより、結着樹脂のガラス転移温度近傍のエンタルピー緩和量を増大させて、従来のバイオマス含有トナーの問題点である保存性と定着性の特性のバランスが取れたトナーを製造できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
かくして、本発明によれば、少なくとも芳香族ジカルボン酸およびロジンと多価アルコールとからなるポリエステル樹脂(A)ならびに少なくとも芳香族ジカルボン酸とビスフェノールA誘導体とからなるポリエステル樹脂(B)を含む結着樹脂、着色剤、前記結着樹脂のガラス転移温度より10℃以上高い融点を有する離型剤および電荷制御剤を混合して混合物を得る混合工程;
前記混合物を溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程;
前記溶融混練物を冷却固化し粉砕して粉砕物を得る冷却粉砕工程;および
前記粉砕物を分級して未外添のトナーを得る分級工程
を含み、前記トナーが外添剤をさらに添加されてなる場合には、
前記未外添のトナーに外添剤をさらに添加混合してトナーを得る外添工程
を含み、
前記冷却粉砕工程が、前記離型剤の融点まで20℃/sec以上の冷却速度で冷却する第1冷却工程と、前記結着樹脂のガラス転移温度まで10℃/min以下の冷却速度で冷却する第2冷却工程とを含むことを特徴とするトナーの製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、上記の製造方法により得られたトナーが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロジンの含有量を多くしても、保存性、帯電安定性および定着性に優れたトナーおよびその製造方法を提供することができる。
【0013】
本発明のトナーの製造方法は、離型剤が90℃以上の融点を有する場合に、結着樹脂が50〜80℃のガラス転移温度を有する場合に、ロジンが結着樹脂に対して60重量%以上含まれる場合に、上記の効果がさらに発揮される。
また、本発明のトナーの製造方法は、第2冷却工程が冷却機能および加熱機能を備えた保温装置を用いて実施される場合に、トナーを有利に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のトナーの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のトナーの製造方法は、
少なくとも芳香族ジカルボン酸およびロジンと多価アルコールとからなるポリエステル樹脂(A)ならびに少なくとも芳香族ジカルボン酸とビスフェノールA誘導体とからなるポリエステル樹脂(B)を含む結着樹脂、着色剤、結着樹脂のガラス転移温度より10℃以上高い融点を有する離型剤および電荷制御剤を混合して混合物を得る混合工程;
混合物を溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程;
溶融混練物を冷却固化し粉砕して粉砕物を得る冷却粉砕工程;および
粉砕物を分級して未外添のトナーを得る分級工程
を含み、トナーが外添剤をさらに添加されてなる場合には、
未外添のトナーに外添剤をさらに添加混合してトナーを得る外添工程
を含み、
冷却粉砕工程が、離型剤の融点まで20℃/sec以上の冷却速度で冷却する第1冷却工程と、結着樹脂のガラス転移温度まで10℃/min以下の冷却速度で冷却する第2冷却工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明では、溶融混練物を冷却する工程が上記の冷却速度に調製された第1冷却工程と第2冷却工程とを含むので、ロジン成分の含有量が多いトナーであっても、トナー粒子同士の凝集を抑制することができ、トナーの保存性を低下させることなく、帯電安定性を良好に維持することができ、長期間にわたって良好な画像を安定して形成し得るトナーを製造することができる。
【0017】
1、トナーの製造方法
以下、本発明のトナーをその製造工程に沿って説明する。
図1は、本発明のトナーの製造方法の一実施形態を示す工程図であり、混合工程S1、溶融混練工程S2、冷却粉砕工程S3、分級工程S4および外添工程S5を含む。
この実施形態は、乾式法による粒子形成方法であるが、本発明はこれに限定されない。
【0018】
(1)混合工程S1
混合工程S1では、少なくとも(a)芳香族ジカルボン酸およびロジンと多価アルコールとからなるポリエステル樹脂(A)ならびに少なくとも芳香族ジカルボン酸とビスフェノールA誘導体とからなるポリエステル樹脂(B)を含む結着樹脂、(b)着色剤、(c)離型剤および(d)電荷制御剤を混合して混合物を得る。
混合は乾式混合が好ましく、後述する混合機を用いることができる。
以下、各構成成分について説明する。
【0019】
(a)結着樹脂
結着樹脂は、(a−1)ポリエステル樹脂(A)および(a−2)ポリエステル樹脂(B)を含む。
ポリエステル樹脂(A)は、少なくとも酸成分としての(a−1−1)芳香族ジカルボン酸および(a−1−2)ロジンと(a−1−3)多価アルコールとを重縮合して得られる。
ポリエステル樹脂(B)は、少なくとも酸成分としての(a−2−1)芳香族ジカルボン酸と(a−2−2)多価アルコールとを重縮合して得られる。
【0020】
ポリエステル樹脂(A)および(B)は、公知の重縮合反応、具体的にはエステル交換反応または直接エステル化反応により製造することができる。
製造においては、加熱、加圧および反応触媒の使用により重縮合反応を促進することができる。反応触媒としては、例えば、アンチモン、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウムおよびマンガンから選択される少なくとも1種の金属化合物が挙げられ、その添加量は、酸成分および多価アルコールの総量100重量部に対して、0.01〜1.0重量部が好ましい。
【0021】
このようにして得られるポリエステル樹脂(A)および(B)は、適度な分岐構造を含むので、樹脂の軟化温度を極端に高くすることなくトナーの低温定着性を維持すると共に、樹脂の分子量分布を広くすることができ、高分子量側に広い分布を有する樹脂を得ることができるので、トナーの耐オフセット性を向上できる。
【0022】
(a−1)ポリエステル樹脂(A)
(a−1−1)芳香族ジカルボン酸
ポリエステル樹脂(A)の酸成分としての芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸および5−tert−ブチル−1,3−ベンゼンジカルボン酸などが挙げられる。
また、芳香族ジカルボン酸の代わりに、その無水物および低級アルキルエステルなどの芳香族ジカルボン酸誘導体を用いてもよい。
本発明においては、上記の芳香族ジカルボン酸およびその誘導体の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
上記の芳香族ジカルボン酸およびその誘導体の中でも、テレフタル酸およびイソフタル酸は、芳香環骨格による電子の共鳴安定化効果が高く、帯電安定性に優れ、適度な強度を有する樹脂を得ることができるので特に好ましい。
テレフタル酸およびイソフタル酸の低級アルキルエステルとしては、例えば、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジブチルおよびイソフタル酸ジブチルなどが挙げられる。これらの中でも、コストおよび取り扱いの観点から、テレフタル酸ジメチルおよびイソフタル酸ジメチルが特に好ましい。
【0024】
ポリエステル樹脂(A)は、酸成分として、上記の芳香族ジカルボン酸およびその誘導体以外に、脂肪族ポリカルボン酸および3塩基酸以上のカルボキシ基を有する芳香族ポリカルボン酸をさらに用いることができる。
【0025】
脂肪族ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類、炭素数16〜18のアルキル基で置換されたコハク酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸およびグルタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類、ダイマー酸などが挙げられる。
本発明においては、上記の脂肪族ポリカルボン酸の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
脂肪族ポリカルボン酸の含有量は、芳香族ジカルボン酸100モルに対して0.5〜15モルであるのが好ましく、1〜13モルであるのがより好ましい。脂肪族ポリカルボン酸の含有量が上記の範囲であることで、トナーの低温定着性が向上する。
【0027】
3塩基酸以上のカルボキシ基を有する芳香族ポリカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびビフェニルテトラカルボン酸ならびにそれらの無水物などが挙げられ、これらの芳香族ポリカルボン酸の中でも、反応性の観点から、無水トリメリット酸が特に好ましい。
本発明においては、上記の芳香族ポリカルボン酸の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
3塩基酸以上のカルボキシ基を有する芳香族ポリカルボン酸の含有量は、芳香族ジカルボン酸100モルに対して0.1〜5モルであるのが好ましく、0.5〜3モルであるのがより好ましい。
芳香族ポリカルボン酸の含有量が0.1モル未満では、ポリエステル樹脂(A)の分岐構造が充分でなく、高分子側に広い分布を有するポリエステル樹脂(A)を得ることができず、トナーの耐オフセット性が低下することがある。また、芳香族ポリカルボン酸の含有量が5モルを超えると、ポリエステル樹脂(A)の軟化温度が高くなり、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0029】
(a−1−2)ロジン
ポリエステル樹脂(A)のもう1つの酸成分としてのロジンとしては、公知の製法によって得られるロジン、例えば、松材をクラフト法によってパルプ化する製造工程で副生する粗トール油を水蒸気蒸留して得られるトールロジン、松の樹幹に傷をつけ、採集した生松ヤニを水蒸気蒸留して得られるガムロジンおよび伐採した松の根株をチップ状にして有機溶剤で抽出し、さらに蒸留して得られるウッドロジンなどが挙げられる。
【0030】
ロジンは、その約90%が樹脂酸であり、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、イソピマル酸およびサンダラコピマル酸などの樹脂酸の混合物を主成分としている。
ロジンは、ヒドロフェナンスレン環の嵩高で剛直な骨格を含むので、ロジンをポリエステル樹脂(A)の構成成分として導入することにより、見掛けのガラス転移温度の上昇を促進させ、保存性の良好なトナーを得ることができる。
【0031】
また、ロジンは、ロジンを不均化させた不均化ロジンであってもよい。
不均化ロジンは、通常、パラジウム活性炭触媒(例えば米国特許第2177530号公報参照)、硫黄系触媒(例えば特公昭49−5360号公報参照)またはヨウ素系触媒(例えば特開昭51−34896号公報参照)などを用いた不均化反応により得られる。
不均化反応では、2分子のロジンが反応し、1分子は2重結合が3つに増えて芳香族化合物となり、もう1分子は共役2重結合の1つの2重結合が水素化されて単独の2重結合を有する化合物となる。
不均化ロジンは、デヒドロアビエチン酸およびジヒドロアビエチン酸の混合物を主成分とし、不安定な共役二重結合を有するロジンに比べて変質し難いという特徴があり、この点において本発明では不均化していないロジンよりも好ましい。
したがって、本発明における「ロジン」は、その不均化反応により得られる「不均化ロジン」を含む。
【0032】
(a−1−3)多価アルコール
ポリエステル樹脂(A)の多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,3−プロパンジオールおよびペンタエリスリトールなどが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の多価アルコールの中でも、植物由来の原料から製造する手法が工業的に確立され、入手が容易であり、バイオマスの利用を促進する効果が得られることから、グリセリンが特に好ましい。
【0033】
ポリエステル樹脂(A)において、芳香族ジカルボン酸1モルに対する多価アルコールのモル比は1.05〜1.65であるのが好ましい。
多価アルコールのモル比が1.05未満では、樹脂の高分子側の分子量分布が広くなり、軟化温度が高くなることによりトナーの低温定着性が低下し、また分子量分布の広がりを制御できなくなる結果、トナーのゲル化が起こることがある。
一方、多価アルコールのモル比が1.65を超えると、ポリエステル樹脂が含む分岐構造が少なくなることにより軟化温度およびガラス転移温度が低下し、その結果、トナーの保存性が低下することがある。
【0034】
ロジンの含有量は、ポリエステル樹脂(A)(100重量%)中に、60重量%以上であるのが好ましく、60〜75重量%であるのが特に好ましい。
ロジンの含有量が60重量%未満では、バイオマスを利用することによる地球環境保全の効果が低くなり、またロジンの含有量が75重量%を超えると、トナーの機械的強度の低下や粉体流動性の低下が生じることがある。
【0035】
また、ポリエステル樹脂(A)は、多価アルコールとして、上記の主成分の多価アルコール以外に、脂肪族ジオールおよびエーテル化ジフェノールの少なくとも1種をさらに用いることができる。
【0036】
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,7−へプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパノエート、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジプロピレングリコールなどが挙げられる。これらの脂肪族ジオールの中でも、酸成分との反応性および樹脂のガラス転移温度の観点から、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよびネオペンチルグリコールが特に好ましい。
本発明においては、上記の脂肪族ジオールの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
脂肪族ジオールの含有量は、グリセリンを含む上記の主成分の多価アルコール100モルに対して、5〜20モルであるのが好ましく、5〜15モルであるのがより好ましい。
【0038】
エーテル化ジフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAとアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるジオール(ビスフェノールA誘導体)が挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドが挙げられ、ビスフェノールA1モルに対するアルキレンオキサイドの平均付加モル数は2〜16モルであるのが好ましい。
本発明においては、上記のエーテル化ジフェノールの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
エーテル化ジフェノールの含有量は、グリセリンを含む上記の主成分の多価アルコール100モルに対して、25〜65モルであるのが好ましく、30〜60モルであるのがより好ましい。
【0040】
(a−2)ポリエステル樹脂(B)
(a−2−1)芳香族ジカルボン酸
ポリエステル樹脂(B)の酸成分としては、ポリエステル樹脂(A)と同様の芳香族ジカルボン酸およびその誘導体が挙げられ、ポリエステル樹脂(A)と同一でも異なっていてもよい。
また、ポリエステル樹脂(B)の酸成分としては、上記の芳香族ジカルボン酸以外に、ポリエステル樹脂(A)と同様の脂肪族ポリカルボン酸または3塩基酸以上のカルボキシ基を有する芳香族ポリカルボン酸をさらに用いることができ、これらはポリエステル樹脂(A)と同一でも異なっていてもよい。
【0041】
(a−2−2)多価アルコール
ポリエステル樹脂(B)の多価アルコールとしては、ポリエステル樹脂(A)と同様の多価アルコールが挙げられ、ポリエステル樹脂(A)と同一でも異なっていてもよい。
また、ポリエステル樹脂(B)の多価アルコールとしては、上記の主成分の多価アルコール以外に、ポリエステル樹脂(A)と同様の脂肪族ジオールおよびエーテル化ジフェノールを用いることができ、これらはポリエステル樹脂(A)と同一でも異なっていてもよい。
【0042】
エーテル化ジフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAとアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるジオール(ビスフェノールA誘導体)が挙げられ、ポリエステル樹脂(B)の多価アルコールとして好適に用いられる。
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド(EO)やプロピレンオキサイド(PO)が挙げられ、ビスフェノールA1モルに対するアルキレンオキサイドの平均付加モル数は2〜16モルであるのが好ましい。
【0043】
ポリエステル樹脂(B)におけるエーテル化ジフェノールの含有量は、芳香族ジカルボン酸100モルに対して、25〜65モルであるのが好ましく、30〜60モルであるのがより好ましい。
【0044】
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の多価アルコール以外に、シクロヘキサンジメタノールのような脂環族ジオール類を用いてもよく、ステアリルアルコールなどのモノアルコール類を併用してもよい。
本発明においては、上記の多価アルコールおよびそれに代わる化合物の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
ポリエステル樹脂(B)は、実質的にロジンを含まないポリエステル樹脂であり、トナーに高温オフセット耐性を付与するため、高分子量でかつ高粘度を有することが好ましい。
ポリエステル樹脂(B)の粘度は、ポリエステル樹脂(A)の軟化温度において103〜105Pa・sであるのが好ましい。
ポリエステル樹脂(A)の軟化温度におけるポリエステル樹脂(B)の粘度が103Pa・s未満では、トナーの耐ホットオフセット性が得られないことがある。一方、ポリエステル樹脂(B)の粘度Bが105Pa・sを超えると、混練時におけるポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との溶融粘度差が大きく、樹脂の混合性が悪くなり、トナー中のポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の分散性が不均一となることがある。その結果、トナー粒子においてポリエステル樹脂(A)の比率が高い部分が破壊され易くなり、破壊によって粒子径の小さな微粉が発生して、粒度分布および帯電分布が広くなり、画像かぶりなどの不具合が生じることがある。
【0046】
本発明においては、ポリエステル樹脂(A)および(B)のガラス転移温度は、離型剤の融点より10℃以上低いことを必須要件とし、この要件を満たす限り特に限定されず、得られるトナーの保存性および低温定着性などを考慮すると、45〜80℃であるのが好ましく、50〜80℃であるのがより好ましく、50〜65℃であるのが特に好ましい。
ポリエステル樹脂(A)および(B)のガラス転移温度が45℃未満では、トナーの保存性が不充分になり、画像形成装置内部でトナーが熱凝集し易くなり、現像不良が発生することがある。また、ホットオフセットが発生し始める温度(「ホットオフセット開始温度」という)が低下することがある。
【0047】
「ホットオフセット」は、画像形成装置の定着部材によりトナーを加熱および加圧して記録媒体に定着させる際に、加熱されたトナー粒子の凝集力が、トナーと定着部材との接着力を下回ることによりトナー層が分断され、トナーの一部が定着部材に付着して取去られる現象をいう。
一方、ポリエステル樹脂(A)および(B)のガラス転移温度が80℃を超えると、トナーの低温定着性が低下し、定着不良が発生することがある。
【0048】
結着樹脂におけるポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との配合割合は、20〜60:80〜40であるのが好ましく、25〜60:75〜40であるのが特に好ましい。
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との配合割合が上記の範囲内であれば、トナーの帯電性を損なうことなしに、変色し難いカラー画像を形成し得るトナーを得ることができる。
【0049】
また、ポリエステル樹脂(A)の配合量は、トナー100重量部に対して20〜60重量部であるのが好ましい。
ポリエステル樹脂(A)の配合量が20重量部未満では、トナーの粘度が高くなり、トナーの低温定着性が損なわれることがある。一方、ポリエステル樹脂(A)の配合量が60重量部を超えると、ロジンの含有量が高くなり、トナーの機械的強度や粉体流動性が低下することがある。
ロジンの含有量は、結着樹脂に対して60重量%以上であるのが好ましい。
【0050】
本発明の効果を阻害しない範囲で、結着樹脂として、上記のポリエステル樹脂(A)および(B)以外の樹脂、例えば、ポリスチレン系重合体およびスチレン−アクリル系樹脂などのポリスチレン系共重合体、上記ポリエステル樹脂以外のポリエステル系樹脂などの当該技術分野で常用される樹脂を併用してもよい。
【0051】
(b)着色剤
本発明のトナーの着色剤としては、当該技術分野で常用される有機系および無機系の様々な種類および色の顔料および染料を用いることができ、例えば、黒色、白色、黄色、橙色、赤色、紫色、青色および緑色の着色剤が挙げられる。
【0052】
黒色の着色剤としては、例えば、カーボンブラックおよび複合酸化物ブラックなどの無機顔料;アニリンブラックのような有機顔料が挙げられる。
カーボンブラックは、その製造法などにより、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラックおよびアセチレンブラックなどに分類され、これらの中でも、ファーネス法より製造されるガスファーネスブラックおよびオイルファーネスブラックが特に好ましい。
【0053】
このようなファーネスブラックとしては、例えば、三菱化学株式会社製の銘柄名:MA7、MA77、MA8、MA11、MA100、#1000、#2200B、#2350および#2400Bなど、キャボット社製の製品名:MOGUL L,REGAL400RおよびMONARCH1000など、コロンビア社製の製品名:RAVENシリーズの1035、1040、1255および3500などが挙げられる。また、そのBET法による比表面積は25〜400m2/gであり、ジブチルフタレート(DBP)吸収量は40〜140ml/100gであるのが好ましい。
【0054】
白色の着色剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛(亜鉛華)、リトポン、酸化チタン、アンチモン白および硫化亜鉛などの無機顔料が挙げられる。
【0055】
黄色の着色剤としては、例えば、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、複合酸化物イエロー、ビスマスイエロー、クロムイエロー、ニッケルチタンイエローおよび黄土などの無機顔料;カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、およびC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180およびC.I.ピグメントイエロー185などの有機顔料;C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19およびC.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
【0056】
橙色の着色剤としては、例えば、赤色黄鉛およびモリブデンオレンジなどの無機顔料;パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジGおよびインダスレンブリリアントオレンジGK、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントオレンジ31およびC.I.ピグメントオレンジ43などの有機顔料が挙げられる。
【0057】
赤色の着色剤としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀およびモリブデンレッドなどの無機顔料;カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10およびC.I.ディスパーズレッド15などの有機顔料が挙げられる。
【0058】
紫色の着色剤としては、例えば、マンガン紫のような無機顔料;ファストバイオレットBおよびメチルバイオレットレーキなどの有機顔料が挙げられる。
【0059】
青色の着色剤としては、例えば、例えば、紺青およびコバルトブルーなどの無機顔料;カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、C.I.ダイレクトブルー86およびKET.BLUE111などの有機顔料が挙げられる。
【0060】
緑色の着色剤としては、例えば、クロムグリーンおよび酸化クロムなどの無機顔料;ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、カラーインデックスによって分類されるファイナルイエローグリーンGおよびC.I.ピグメントグリーン7などの有機顔料が挙げられる。
【0061】
顔料は染料に比べて耐光性および発色性に優れ、耐光性および発色性に優れるトナーを得ることができるので、着色剤としては顔料が好ましい。
本発明においては、上記の着色剤の1種を単独でまたは2種を組み合わせて用いることができ、それらの組み合わせは異色であっても同色であってもよい。
また2種以上の着色剤を複合粒子化して用いてもよい。
複合粒子は、例えば、2種以上の着色剤に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。
さらに、結着樹脂中に着色剤を均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。
複合粒子およびマスターバッチは、乾式混合の際にトナー組成物に混入される。
【0062】
マスターバッチは、例えば、結着樹脂および着色剤を混合機で乾式混合し、得られた粉体混合物を混練機で混練し、得られた混練物を、例えば粒子径2mm〜3mm程度に粉砕することにより製造することができる。
【0063】
マスターバッチの乾式混合には、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などの混合機が挙げられる。
混合の条件は、使用する混合機やマスターバッチ原料などにより適宜設定すればよい。
【0064】
マスターバッチの溶融混練には、当該技術分野で常用される公知の装置を使用で、一軸、二軸または多軸の押出機(エクストルーダ)、ニーダ、二本または三本のロールミル、ラボブラストミルなどの一般的な混練機が挙げられる。具体的には、TEM−100B(型式、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも型式、株式会社池貝製)などの一軸または二軸押出機、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。
溶融混練においては、上記の混練機の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
混練温度は、結着樹脂の軟化温度などの条件によるが、通常50〜150℃程度、好ましくは50〜120℃程度である。
他の溶融混練の条件は、使用する混練機やマスターバッチ原料などにより適宜設定すればよい。
【0065】
着色剤の配合量は特に限定されないが、着色剤がカーボンブラックなどの黒色である場合、結着樹脂100重量部に対して5〜12重量部であるのが好ましく、6〜8重量部であるのがより好ましい。また、着色剤が黒色以外である場合、結着樹脂100重量部に対して3〜8重量部であるのが好ましく、4〜6重量部であるのがより好ましい。
【0066】
マスターバッチを用いる場合には、着色剤の配合量が上記の範囲内になるように、マスターバッチの使用量を調整すればよい。
着色剤の配合量が上記の範囲内であれば、着色剤の配合によるフィラー効果を抑え、かつ高い着色力を有するトナーを得ることができ、また、充分な画像濃度を有し、発色性が高く、画像品位に優れた良好な画像を形成することができる。
【0067】
(c)離型剤
本発明のトナーの離型剤としては、当該技術分野で常用される離型剤を用いることができ、例えば、パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスならびにそれらの誘導体などの石油系ワックス;フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)、低分子量ポリプロピリンワックスおよびポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)ならびにそれらの誘導体などの炭化水素系合成ワックス;カルナバワックス、ライスワックスおよびキャンデリラワックスならびにそれらの誘導体、木蝋などの植物系ワックス;蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス;脂肪酸アミドおよびフェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス;長鎖カルボン酸およびその誘導体;長鎖アルコールおよびその誘導体;シリコーン系重合体;高級脂肪酸などが挙げられる。
上記の誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。
本発明においては、上記の離型剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
本発明においては、離型剤の融点(Tm)は、結着樹脂のガラス転移温度より10℃以上高いことを必須要件とし、この要件を満たす限り特に限定されず、90℃以上であるのが好ましく、その上限は180℃であるのが好ましい。
融点が90℃未満では、本発明の効果が得られず、現像装置内において離型剤が溶融し、トナー粒子同士が凝集したり、感光体表面へのフィルミングなどが発生することがある。一方、融点が180℃を超えると、トナーを記録媒体に定着する際に離型剤が充分に溶出することができず、耐ホットオフセット性が充分に向上しないことがある。
【0069】
離型剤の配合量は特に限定されないが、結着樹脂100重量部に対して3〜10重量部であるのが好ましく、3〜8重量部であるのが特に好ましい。
離型剤の配合量が3重量部未満では、低温定着性および耐ホットオフセット性が充分に向上しないことがある。一方、離型剤の配合量が10重量部を超えると、混練物中における離型剤の分散性が低下し、一定の性能を有するトナーを安定して得ることができないことがあり、またトナーが感光体などの像担持体の表面に皮膜(フィルム)状に融着するフィルミングと呼ばれる現象が発生することがある。
【0070】
(d)電荷制御剤
本発明のトナーの電荷制御剤としては、当該技術分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用の電荷制御剤を用いることができる。
【0071】
正電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
【0072】
正電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
負電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。
本発明においては、上記の電荷制御剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
電荷制御剤の配合量は特に限定されないが、結着樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部であるのが好ましく、0.01〜4重量部であるのが特に好ましい。
電荷制御剤の配合量が上記の範囲内であれば、保存性と定着性のバランスが取れたトナーを得ることができる。
【0074】
混合工程では、少なくとも上記の(a)〜(d)を混合する。
混合には、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、マスターバッチの製造において例示した混合機が挙げられる。
混合の条件は、使用する混合機やトナー原料などにより適宜設定すればよい。
【0075】
(2)溶融混練工程S2
溶融混練工程S2では、混合工程S1で得られた混合物を溶融混練して、結着樹脂中に着色剤などの添加剤が分散された溶融混練物を得る。
溶融混練には、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、マスターバッチの製造において例示した混練機が挙げられる。
溶融混練においては、混練機の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
溶融混練の温度は、使用する混練機やトナー原料などにより適宜設定すればよく、通常、80〜200℃であるのが好ましい。
溶融混練の温度が上記の範囲内であれば、結着樹脂中に着色剤などの添加剤を均一に分散させることができる。
他の溶融混練の条件は、使用する混練機やトナー原料などにより適宜設定すればよい。
【0077】
(3)冷却粉砕工程S3
冷却粉砕工程S3では、溶融混練工程S2で得られた溶融混練物を冷却固化し粉砕して粉砕物を得る。
本発明では、冷却粉砕工程が、離型剤の融点まで20℃/sec以上の冷却速度で冷却する第1冷却工程と、結着樹脂のガラス転移温度まで10℃/min以下の冷却速度で冷却する第2冷却工程とを含むことを特徴とする。
【0078】
第1冷却工程においては、結着樹脂であるポリエステル樹脂のガラス転移温度より10℃以上高い融点を有する離型剤を用い、溶融混練物を離型剤の融点まで20℃/sec以上の速度で冷却するので、溶融混練物中の離型剤の分散状態を維持することができ、良好な高温定着性を維持することができる。冷却速度が20℃/sec未満では、溶融混練物中に分散した離型剤が合一するなど、分散状態が劣化することがある。
【0079】
また、第2冷却工程においては、離型剤の融点から結着樹脂のガラス転移温度まで10℃/min以下の速度で冷却するので、固化したトナー組成物のガラス状態が安定化するエンタルピー緩和現象が起き、トナーの保存性が向上する。一方、冷却速度の下限は特に制限されるものではない。
本発明では、結着樹脂として2種類のポリエステル樹脂(A)および(B)を用いるので、上記の結着樹脂のガラス転移温度とは、各樹脂のガラス転移温度において、より低い方の温度を意味する。
例えば、結着樹脂として、ガラス転移温度がそれぞれ60℃および65℃であるポリエステル樹脂(A)および(B)を用いる場合には、60℃となる。
【0080】
冷却には、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、圧延ロールにより、溶融混練物を圧延することにより冷却する圧延装置付き冷却機などが挙げられる。かかる装置では、圧延ロールの温度や間隔を調整することにより、冷却速度を変更することができる。例えば、圧延ロールの温度を低下させることで冷却速度を上昇させることができ、圧延ロールの間隔を狭くすることで溶融混練物の圧延後の厚みを薄くし、冷却速度を上昇させることができる。
さらに、圧延物を自然または強制的に冷却する冷却機能や、冷却速度を制御または保持する目的で加熱機能を備えた保温装置も用いることができる。
【0081】
溶融混練物の粉砕には、当該技術分野で常用される公知の装置を使用できる。
例えば、まず溶融混練物を体積平均粒径100μm〜5mm程度の粗粉砕物に粗粉砕し、次いで得られた粗粉砕物を体積平均粒径15μm以下の微粉砕物に微粉砕する。
粗粉砕には、例えば、ハンマーミル、カッティングミルなどの粉砕機を用いることができ、微粉砕には、例えば、超音速ジェット気流を利用するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機などを用いることができる。
粉砕の条件は、使用する粉砕機やトナー原料などにより適宜設定すればよい。
【0082】
(4)分級工程S4
分級工程S4では、冷却粉砕工程S3で得られた粉砕物を分級し、過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子を除去して未外添のトナーを得る。過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子は、回収して他のトナーの製造に再利用することができる。
ここで得られた未外添のトナーを、次の外添工程S5を省略して外添剤を添加しないトナーとして用いることもできる。
【0083】
分級には、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)のような遠心力および風力により過粉砕トナー粒子を除去できる分級機が挙げられる。
分級の条件は、使用する分級機やトナー原料などにより適宜設定すればよい。
【0084】
未外添のトナーの体積平均粒径は、3〜15μmであるのが好ましく、より高画質画像を得るためには3〜9μmであるのが好ましく、5〜8μmであるのがより好ましい。
未外添のトナーの体積平均粒径が3μm未満では、トナーの粒径が小さいため、高帯電化および低流動化が起こり、感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生することがある。未外添のトナーの体積平均粒径が15μmを超えると、トナーの粒径が大きくなり過ぎ、高精細な画像が得られないことがある。また、粒径が大きくなることでトナーの比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなり、感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、トナー飛散による機内汚染が発生することがある。
【0085】
(5)外添工程S5
外添工程S5は、トナーが外添剤をさらに添加されてなる場合の任意の工程であり、この工程では、分級工程S4で得られた未外添のトナーにさらに外添剤を添加混合、すなわち未外添のトナーと外添剤とを混合してトナーを得る。
外添剤の添加により、トナーの流動性および感光体表面における残留トナーのクリーニング性が向上し、感光体へのフィルミングが防止できる。
【0086】
外添剤としては、当該技術分野で常用される外添剤を用いることができ、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫および酸化亜鉛などの無機酸化物;アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類およびスチレンなどの化合物ならびにこれらの共重合体樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子;ステアリン酸などの高級脂肪酸およびこれらの金属塩;カーボンブラック、フッ化黒鉛、炭化珪素、窒化ホウ素などが挙げられる。
また外添剤、特に無機残化物の外添剤は、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などにより表面処理されているものが好ましい。例えば、疎水性のシリカ微粒子が好適に用いられる。
【0087】
外添剤の一次粒子の個数平均粒径は、トナーの流動性がより向上させる観点から、10〜500nmであるのが好ましい。
外添剤のBET比表面積は、トナーに適度な流動性および帯電性を付与する観点から、20〜200m2/gであるのが好ましい。
【0088】
外添剤の添加量は、未外添のトナー100重量部に対して、0.5重量部〜5重量部であるのが好ましい。
【0089】
2、トナー
本発明のトナーは、上記のトナーの製造方法により得られ、保存性、帯電安定性および定着性に優れる。
【0090】
3、現像剤
本発明のトナーは、1成分現像剤、2成分現像剤のいずれの形態でも使用することができる。
2成分現像剤として使用する場合、トナーにさらにキャリアを配合する。
キャリアとしては、当該技術分野で常用されるキャリアを用いることができ、例えば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリア芯粒子を被覆物質で表面被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどが挙げられる。
【0091】
被覆物質としては、当該技術分野で常用される被覆物質を用いることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。これらの被覆物質は、トナー成分に応じて選択し、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0092】
また、樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としては、当該技術分野で常用される被覆物質を用いることができ、例えば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、トナー成分に応じて選択し、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。
キャリアの平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmである。キャリアの粒子径が50μm以下であることにより、トナーとキャリアの接触機会が増え、個々のトナー粒子を適正に帯電制御でき、非画像部カブリが発生せず、かつ高画質な画像を形成することができる。
【0094】
キャリアの体積抵抗率は、好ましくは108Ω・cm以上、より好ましくは1012Ω・cm以上である。
キャリアの体積抵抗率は、キャリア粒子を断面積0.50cm2の容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cm2の荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値から得られる値である。
体積抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアが帯電し、感光体にキャリア粒子が付着し易くなり、バイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
【0095】
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10〜60emu/g、より好ましくは15〜40emu/gである。
一般的な現像ローラの磁束密度条件下では、10emu/g未満では、磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となることがある。一方、磁化強さが60emu/gを超えると、非接触現像ではキャリアの穂立ちが高くなり過ぎ、像担持体とトナーの非接触状態を保つことが困難になり、接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなる。
【0096】
キャリアの配合量は、特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択すればよく、例えばトナー100重量部に対して4〜15重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。また、トナーによるキャリアの被覆率は、40〜80%であるのが好ましい。
【実施例】
【0097】
以下に製造例、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施製造例および実施例により本発明が限定されるものではない。
製造例、実施例および比較例において、各物性値を以下に示す方法により測定した。
【0098】
[樹脂のガラス転移温度Tg(℃)]
示差走査熱量計(パーキンエルマージャパン株式会社製、商品名:Diamond DSC)を用いて、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料0.01gを昇温速度毎分10℃(10℃/分)で加熱してDSC曲線を測定する。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、吸熱ピークの低温側の曲線に対して勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度Tg(℃)とする。
【0099】
[樹脂の軟化温度T1/2(℃)]
流動特性評価装置フローテスター(株式会社島津製作所製、型式:CFT−500C)を用いて、試料1gを昇温速度毎分6℃で加熱し、荷重20kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えてダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化温度(T1/2)とする。
【0100】
[樹脂の重量平均分子量Mwおよび分子量分布指数Mw/Mn]
GPC装置(東ソー株式会社製、型式:HLC−8220GPC)に、試料0.25重量%のテトラヒドロフラン(THF)溶液からなる試料溶液200μLを注入し、温度40℃において分子量分布曲線を測定する。
得られた分子量分布曲線から、重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnを求め、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比である分子量分布指数Mw/Mnを求める。なお、分子量校正曲線は標準ポリスチレンを用いて作成する。
【0101】
[樹脂およびロジンの酸価(mgKOH/g)]
中和滴定法により測定する。テトラヒドロフラン(THF)50mLに試料5gを溶解し、指示薬としてフェノールフタレインのエタノール溶液を数滴加えた後、0.1モル/Lの水酸化カリウム(KOH)水溶液で滴定する。試料溶液の色が無色から紫色に変化した点を終点とし、終点に達するまでに要した水酸化カリウム水溶液の量と滴定に供した試料の重量とから、酸価(mgKOH/g)を算出する。
【0102】
[樹脂のテトラヒドロフラン(THF)不溶分]
試料1gを円筒濾紙に投入し、ソックスレー抽出器にかける。THF100mLを抽出溶媒として用い6時間加熱還流して、試料からTHF可溶画分を抽出する。THF可溶画分を含む抽出液から溶媒を除去した後、THF可溶画分を100℃で24時間乾燥し、得られたTHF可溶画分を秤量して重量X(g)を求める。THF可溶画分重量X(g)と、測定に用いた試料の重量(1g)とから、次式により、試料中のTHF不溶画分の割合、すなわちTHF不溶分P(重量%)を算出する。
P(重量%)=[1(g)−X(g)]/1(g)×100
【0103】
[離型剤の融点Tm]
示差走査熱量計(パーキンエルマージャパン株式会社製、商品名:Diamond DSC)を用いて、試料0.01gを温度20℃から昇温速度毎分10℃(10℃/分)で200℃まで加熱し、次いで200℃から20℃に急冷する操作を2回繰返し、DSC曲線を測定する。2回目の操作で測定したDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの温度を離型剤の融点(℃)とする。
【0104】
[トナーの体積平均粒径(μm)および変動係数]
電解液(ベックマン・コールター社製、商品名:ISOTON−II)50mlに、試料20mgおよび分散剤としてのアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(キシダ化学株式会社製)1mlを加え、超音波分散器(株式会社エスエムテー製、型式:UH−50)を用いて周波数20kHzで3分間分散処理し、測定用試料とする。
得られた測定用試料について、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、商品名:Multisizer3)を用いて、アパーチャ径20μm、測定粒子数50000カウントの条件下で測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒径を求める。またトナーの変動係数を、体積平均粒径およびその標準偏差に基づいて、次式より算出する。
変動係数CV(%)=(体積粒度分布における標準偏差/体積平均粒径)×100
【0105】
(製造例1)ポリエステル樹脂A−1の製造
撹拌装置、加熱装置、温度計、冷却管、分留装置および窒素導入管を備えた反応容器中に、酸成分としてテレフタル酸305g、イソフタル酸55g、無水トリメリット酸30gおよび不均化ロジン(酸価157.2mgKOH/g、荒川化学工業株式会社製、製品名:ロンヂスR)1400g、多価アルコール成分としてグリセリン300gおよび1,3−プロパンジオール150g、反応触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート1.79gを投入した。これらの原料を、窒素雰囲気下で撹拌し、生成する水を留去しながら、250℃で10時間重縮合反応させ、フローテスターにより所定の軟化温度に達したことを確認して反応を終了し、ポリエステル樹脂A−1(Tg=60℃、T1/2=112℃、Mw=2800、Mw/Mn=2.3、酸価24mgKOH/g、THF不溶分0%)2018g(収率90%)を得た。
【0106】
(製造例2)ポリエステル樹脂A−2の製造
重縮合反応時間10時間を12時間に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてポリエステル樹脂A−2(Tg=60℃、T1/2=115℃、Mw=4200、Mw/Mn=2.9、酸価23mgKOH/g、THF不溶分0%)1972g(収率88%)を得た。
【0107】
(製造例3)ポリエステル樹脂B−1の製造
酸成分として、テレフタル酸350g、イソフタル酸400gおよび無水トリメリット酸50g、アルコール成分として、グリセリン125g、ビスフェノールAのPO2モル付加物350gおよびビスフェノールAのPO3モル付加物450g、反応触媒として、テトラ−n−ブチルチタネート1.38gを使用し、220℃で重縮合反応させたこと以外は、製造例1と同様にしてポリエステル樹脂B−1(Tg=61℃、T1/2=147℃、Mw=29500、Mw/Mn=10.8、酸価22mgKOH/g、THF不溶分40%)1467g(収率85%)を得た。
【0108】
(実施例1)
<混合工程S1>
ポリエステル樹脂A−1中に着色剤としてカーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名:MA−77)を濃度11.5重量%で予備混練分散させたマスターバッチAを作製した。
マスターバッチA 43.5重量部
ポリエステル樹脂B−1(Tg=61℃) 52.7重量部
離型剤A
(Tm=75℃、日本精蝋株式会社製、型番:HNP−10) 2.6重量部
電荷制御剤
(クラリアントジャパン株式会社製、商品名:Copy Charge N4P VP 2481)
1.9重量部
上記の原料をヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:FM20C)に投入し、周速25m/secの撹拌速度で3分間混合し、混合物50kgを得た。
【0109】
<溶融混練工程S2>
混合工程S1で得られた混合物を、二軸混練機(株式会社池貝製、型式:PCM60)を用いて、シリンダ設定温度80℃〜120℃(最高温度120℃)、回転数250RPM、供給量5kg/hで溶融混練して溶融混練物を得た。
【0110】
<冷却粉砕工程S3>
溶融混練工程S2で得られた溶融混練物を、圧延装置付き冷却機の圧延ロールにより、25℃/minの冷却速度で離型剤の融点Tm75℃まで冷却(第1冷却工程)した後、保管BOX中で5℃/minの冷却速度で樹脂のガラス転移温度Tg60℃まで冷却(第2冷却工程)し、その後、室温まで自然冷却させた。
【0111】
その後、カッタータイプの粉砕機(株式会社セイシン企業製、型式:VM−16)で粗粉砕して粗粉砕物を得た。次いで、得られた粗粉砕物を、微粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製、型式:カウンタジェットミルAFG)で微粉砕して微粉砕物を得た。
【0112】
<分級工程S4>
冷却粉砕工程S3で得られた微粉砕物を、ロータリー式分級機(ホソカワミクロン株式会社製、型式:TSPセパレータ)で分級し、未外添のトナーを得た。
【0113】
<外添工程S5>
分級工程S4で得られた未外添のトナー100重量部(500g)に対して、シランカップリング剤とジメチルシリコーンオイルとで表面処理された疎水性シリカ微粉子A(BET比表面積140m2/g)1.2重量部(6g)、シランカップリング剤で表面処理された疎水性シリカ微粉子B(BET比表面積30m2/g)0.8重量部(4g)および酸化チタン(BET比表面積130m2/g)0.5重量部(2.5g)を添加し、ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:FM20C)を用いて、周速35m/secの撹拌速度で3分間混合し、実施例1のトナー(体積平均粒径6.7μm、CV値25%)を得た。
【0114】
(実施例2)
冷却粉砕工程S3において、第1冷却工程の冷却速度を21℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のトナー(体積平均粒子径6.7μm、CV値24%)を得た。
【0115】
(実施例3)
冷却粉砕工程S3において、第2冷却工程の冷却速度を9.5℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のトナー(体積平均粒子径6.7μm、CV値23%)を得た。
【0116】
(実施例4)
混合工程S1において、離型剤Aを下記の離型剤Bに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のトナー(体積平均粒子径6.7μm、CV値25%)を得た。
離型剤B(Tm=89℃、日本精蝋株式会社製、型番:FT105)
【0117】
(実施例5)
混合工程S1において、離型剤Aを下記の離型剤Cに変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5のトナー(体積平均粒子径6.7μm、CV値24%)を得た。
離型剤C(Tm=127℃、クラリアント社製、商品名:Licowax PE−130 Powder)
【0118】
(比較例1)
冷却粉砕工程S3において、第1冷却工程の冷却速度を18℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のトナー(体積平均粒子径6.7μm、CV値26%)を得た。
【0119】
(比較例2)
冷却粉砕工程S3において、第2冷却工程の冷却速度を11℃/minに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2のトナー(体積平均粒子径6.7μm、CV値26%)を得た。
【0120】
(比較例3)
混合工程S1において、離型剤Aを下記の離型剤Dに変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3のトナー(体積平均粒子径6.7μm、CV値25%)を得た。
離型剤D(Tm=55℃、日本精蝋株式会社製、型番:ESTEC−0015)
【0121】
[評価]
実施例1〜5および比較例1〜3のトナーを用いて以下の評価を行った。
(1)保存性
保存性は、メッシュアップ率を用いて評価した。
トナー100gを容量250mLのポリエチレン製の容器に入れて密封し、50℃の恒温槽で48時間放置した。その後、200メッシュ網を搭載した振動式ふるい機を用いて、トナーを振動数60Hzで1分間振動させ、メッシュ網上に残留するトナーの重量Wr(g)を測定した。メッシュ網上に残留するトナーの割合をメッシュアップ率とし、次式によりメッシュアップ率を算出した。
メッシュアップ率(%)=[Wr(g)/100(g)]×100
【0122】
メッシュアップ率が低いほど、高温環境下でのトナーの保存性が良好であることを示す。
以下の基準で保存性を評価した。
○(良好):メッシュアップ率が10%未満
△(実使用上問題なし):メッシュアップ率が10%以上30%未満
×(不良):メッシュアップ率が30以上
【0123】
(2)帯電安定性
トナー5重量部とフェライトコアキャリア(体積平均粒径70μm、パウダーテック製)95重量部とを、V型混合機(株式会社徳寿工作所製、型式:V−5)を用いて、20分間混合して2成分現像剤を得た。
得られた2成分現像剤をカラー複合機(シャープ株式会社製、商品名:MX−2700)に充填し、記録媒体として記録用紙(シャープ株式会社製、商品名:PPC用紙SF−4AM3)を用いて、25℃、45%RH環境で実機評価を行った。帯電量比について、印字前の数値と、画像面積5%の原稿を20000枚印字した後の数値とを比較した。
【0124】
帯電量比
帯電量測定装置(トレック・ジャパン株式会社製、型式:210HS−2A)を用いて帯電量比を測定した。すなわち、カラー複合機から分取した2成分現像剤を、底部に500メッシュの導電性スクリーンを備えた金属製の容器に入れ、吸引機によってトナーのみを吸引圧250mmHgで吸引し、吸引前および吸引後の2成分現像剤の重量差と、容器に接続されたコンデンサー極板間の電位差とからトナーの帯電量Cを求めた。
トナーの初期帯電量(実機評価を行う前のトナーの帯電量)CIに対するトナーの帯電量Cの割合を帯電量比とし、次式により算出した。
帯電量比(%)=[C(μC/g)/CI(μC/g)]×100
【0125】
以下の基準で帯電量比を評価した。
○(良好):帯電量比が80%以上
△(実使用上問題なし):帯電量比が70%以上80%未満
×(不良):帯電量比が70%未満
【0126】
(3)総合評価
(1)保存性および(2)帯電安定性の評価結果を総合して以下の基準で分類した。
○(良好):いずれの評価結果も○である
×(不良):△または×の評価結果である
得られた評価結果をトナーの原料およびその製造条件と共に表1および表2に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
表1および表2の結果から、特定の冷却速度に調製された第1冷却工程と第2冷却工程とを含む本発明の製造方法により得られたトナー(実施例1〜5)は、従来法により得られたトナー(比較例1〜3)と比較して、保存性、帯電安定性および定着性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも芳香族ジカルボン酸およびロジンと多価アルコールとからなるポリエステル樹脂(A)ならびに少なくとも芳香族ジカルボン酸とビスフェノールA誘導体とからなるポリエステル樹脂(B)を含む結着樹脂、着色剤、前記結着樹脂のガラス転移温度より10℃以上高い融点を有する離型剤および電荷制御剤を混合して混合物を得る混合工程;
前記混合物を溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程;
前記溶融混練物を冷却固化し粉砕して粉砕物を得る冷却粉砕工程;および
前記粉砕物を分級して未外添のトナーを得る分級工程
を含み、前記トナーが外添剤をさらに添加されてなる場合には、
前記未外添のトナーに外添剤をさらに添加混合してトナーを得る外添工程
を含み、
前記冷却粉砕工程が、前記離型剤の融点まで20℃/sec以上の冷却速度で冷却する第1冷却工程と、前記結着樹脂のガラス転移温度まで10℃/min以下の冷却速度で冷却する第2冷却工程とを含むことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
前記離型剤が、90℃以上の融点を有する請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
前記結着樹脂が、50〜80℃のガラス転移温度を有する請求項1または2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
前記ロジンが、前記結着樹脂に対して60重量%以上含まれる請求項1〜3のいずれか1つに記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
前記第2冷却工程が、冷却機能および加熱機能を備えた保温装置を用いて実施される請求項1〜4のいずれか1つに記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のトナーの製造方法により得られたトナー。

【図1】
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【公開番号】特開2013−92694(P2013−92694A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235346(P2011−235346)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】