説明

トナーの製造方法およびトナー

【課題】生産性に優れると共に、耐熱保管性および低温定着性に優れかつトナー飛散防止性に優れるトナーを与えるトナーの製造方法を提供する。
【解決手段】第一の樹脂および着色剤を含有するコア層を有し、該コア層上にシェル層を有するコアシェル型トナーを製造するトナーの製造方法であって、該第一の樹脂および該着色剤を含有するコア粒子を含有する分散液(1)と、ビニルトリアリールイミダゾールを有する第二の樹脂を含有するシェル層用粒子を含有する分散液(2)とを混合して、該コア粒子を、該第二の樹脂を含む層Aで覆うシェル化工程、および該層Aを、酸化剤を含有する酸化剤溶液で処理し、該第二の樹脂を架橋する架橋工程を有することを特徴とするトナーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置を用いた画像形成方法に用いられるトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、種々の分野で省エネルギー化が検討されており、画像形成装置などの情報機器においても、待機時の省電力化など低エネルギーで使用できるよう取り組みが進められてきており、一方では、最もエネルギーを消費する定着工程において定着温度を低くする検討がなされている。
【0003】
このような定着温度の低下を実現させるために、例えば特許文献1には、電子写真方式の画像形成装置に用いるトナーとして、カルボン酸成分を含有する重合体と多価金属化合物とを結合させて架橋させた樹脂を含有するトナーが開示されている。
【0004】
このようなトナーによれば、加熱定着時に架橋に係る結合が熱により開裂されることにより樹脂の溶融粘度が低下するため、保管時の耐熱保管性が得られながら低温定着性が得られる。
【0005】
一般的に、基本的な構造のトナーにおいては、本来、耐熱保管性を得るためにガラス転移点の高い樹脂により形成されるもののそのために定着温度は高温にならざるを得ないという問題があって、すなわち耐熱保管性と低温定着性とはトレードオフの関係にあって両立させることは困難であった。
【0006】
そして、このような上記した樹脂を用いることによっても、定着温度は最低でも150℃程度は必要であり、十分な低温定着性が得られない場合があるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平8−3665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、生産性に優れると共に、耐熱保管性および低温定着性に優れかつトナー飛散防止性に優れるトナーを与えるトナーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、下記手段により解決される。
【0010】
1.第一の樹脂および着色剤を含有するコア層を有し、該コア層上にシェル層を有するコアシェル型トナーを製造するトナーの製造方法であって、該第一の樹脂および該着色剤を含有するコア粒子を含有する分散液(1)と、下記一般式(1)で表されるトリアリールイミダゾール基を有する第二の樹脂を含有するシェル層用粒子を含有する分散液(2)とを混合して、該コア粒子を、該第二の樹脂を含む層Aで覆うシェル化工程、および該層Aを、酸化剤を含有する酸化剤溶液で処理し、該第二の樹脂を架橋する架橋工程を有することを特徴とするトナーの製造方法。
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、Rは、水素原子または塩素原子を表す。RおよびRは、水素原子、塩素原子またはメトキシ基を表す。]
2.前記第二の樹脂が、下記一般式(2)で表される重合性単量体を用いた重合により得られた樹脂であることを特徴とするトナーの製造方法。
【0013】
【化2】

【0014】
〔式中、Rは水素原子または塩素原子を表す。RおよびRは、水素原子、塩素原子またはメトキシ基を表す。Rは水素原子またはメチル基を表す。Lは、単結合または2価の連結基を表す。〕
3.前記1または2に記載のトナーの製造方法により製造されたトナーであって、前記第一の樹脂および前記着色剤を含有するコア層を有し、該コア層上に前記一般式(1)で表されるトリアリールイミダゾール基を有する第二の樹脂を含有するシェル層を有し、該シェル層の表面が、下記一般式(3)で表される架橋構造を有することを特徴とするトナー。
【0015】
【化3】

【0016】
〔式中、Rは水素原子または塩素原子を表す。RおよびRは、水素原子、塩素原子またはメトキシ基を表す。Rは水素原子またはメチル基を表す。Lは、単結合または2価の連結基を表す。〕
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記手段により、生産性に優れると共に、良好な耐熱保管性を有すると同時に十分な低温定着性を有しかつ粒子強度が高くトナー飛散防止性に優れるトナーを与えるトナーの製造方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、第一の樹脂および着色剤を含有するコア層を有し、該コア層上にシェル層を有するコアシェル型トナーを製造するトナーの製造方法であって、該第一の樹脂および該着色剤を含有するコア粒子を含有する分散液(1)と、上記一般式(1)で表されるトリアリールイミダゾール基を有する第二の樹脂を含有するシェル層用粒子を含有する分散液(2)とを混合して、該コア粒子を、該第二の樹脂を含む層Aで覆うシェル化工程、および該層Aを、酸化剤を含有する酸化剤溶液で処理し、該第二の樹脂を架橋する架橋工程を有することを特徴とする。
【0019】
本発明においては、特にシェル層に上記トリアリールイミダゾール基を有する樹脂を用い、コア層上にシェル層を設けた後に、この樹脂を、酸化剤を用いて架橋することで、生産性に優れると共に、良好な耐熱保管性を有すると同時に十分な低温定着性を有しかつ粒子強度が高くトナー飛散防止性に優れるトナーを与えるトナーの製造方法が提供できる。
【0020】
本発明の製造方法は、第一の樹脂および該着色剤を含有するコア粒子を含有する分散液(1)と、上記一般式(1)で表されるトリアリールイミダゾール基を有する第二の樹脂を含有するシェル層用粒子を含有する分散液(2)とを混合して、コア粒子を、第二の樹脂を含む層Aで覆うシェル化工程、および層Aを、酸化剤を含有する酸化剤溶液で処理し、第二の樹脂を架橋する架橋工程とを有する。
【0021】
(シェル化工程)
シェル化工程では、第一の樹脂および該着色剤を含有するコア粒子を含有する分散液(1)と、上記一般式(1)で表されるトリアリールイミダゾール基を有する第二の樹脂を含有するシェル層用粒子を含有する分散液(2)とを混合して、コア層を第二の樹脂を含有する層Aで覆う工程である。
【0022】
コア層は、第一の樹脂および着色剤を含有するコア粒子からなる。
【0023】
このコア粒子の作製方法は限定されないが、第一の樹脂の粒子を分散含有する第一樹脂分散液を作製し、また着色剤の粒子を分散含有する着色剤分散液を作製しこれらの分散液を混合し、第一の樹脂粒子と着色剤の粒子を凝集させることにより、コア粒子を作製することが生産性の観点から好ましい。
【0024】
コア粒子を製造するほかの方法としては、例えば、着色剤を含有したモノマー滴を重合させてコア粒子分散液とする懸濁重合や、溶剤中に樹脂と着色剤を溶解または分散させた油滴を水に分散したのちに、油滴中の溶剤を除去しコア粒子分散液とする溶剤脱溶法などが挙げられる。
【0025】
層Aは、コア粒子を含有する分散液(1)と、第二の樹脂を含有するシェル層用粒子を含有する分散液(2)とを混合して形成される。
【0026】
以下に、第一樹脂分散液、着色剤分散液、分散液(2)の作製、および層A(シェル層)の形成方法について説明する。
【0027】
(第一樹脂分散液の作製)
第一樹脂分散液を作製する工程としては、例えば、第一の樹脂がスチレンアクリルのようなラジカル重合性のモノマーを用いたものであれば、熱可塑性樹脂を形成すべき重合性モノマーにラジカル開始剤や連鎖移動剤を溶解あるいは分散させ、さらに必要に応じて離型剤、荷電制御剤などのトナー粒子構成材料を溶解あるいは分散させて重合性単量体溶液を調製し、これを、界面活性剤などを用いて水系媒体中に添加し、混合、攪拌しながら重合反応を行うことなどにより、第一樹脂分散液を得る工程があげられる。
【0028】
また、第一の樹脂がポリエステルのような樹脂であれば、酢酸エチル等の溶剤に、ポリエステル樹脂を溶解し、界面活性剤などを用いて、水系媒体中に分散機を用いて乳化分散させて、脱溶剤処理を行って、第一樹脂分散液を得る工程が挙げられる。
【0029】
ただし、これらの方法に限られるものではない。
【0030】
これらの工程において作製される分散液中の第一の樹脂の粒子は、その体積基準のメジアン径が80〜500nmの範囲であることが好ましい。
【0031】
ここに、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。
【0032】
水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0033】
第一の樹脂としては、熱可塑性樹脂である、ポリエステル樹脂やスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレンアクリル樹脂などのビニル系重合体、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが挙げられる。好ましいのはポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂である。
【0034】
ポリエステル樹脂としては多価アルコールおよび多価カルボン酸を重縮合させることによって合成することができる。
【0035】
多価アルコールとしては非ラジカル重合性のものであれば、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどの脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類;およびこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などを挙げることができ、また、3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
【0036】
また、ラジカル重合性を持ち合わせるものでは、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール、9−オクタデゼン−7,12ジオールなどのラジカル重合性不飽和二重結合を有するもの;2−ブチン−1,4ジオール、3−ブチン−1,4ジオールなどのラジカル重合性不飽和三重結合を有するものなどを挙げることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。多価カルボン酸としては非ラジカル重合性のものであれば、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;これらの低級アルキルエステルや酸無水物;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸などが挙げられる。
【0037】
また、ラジカル重合性を持ち合わせるものであれば、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;およびこれらの酸無水物または酸塩化物;特に、優れたラジカル重合性を示すことから、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸を用いることが好ましい。
【0038】
これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
スチレンアクリル樹脂などのビニル系重合体としてはこれを得るためのラジカル重合性モノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどのスチレンあるいはスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル誘導体;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのフッ化ビニル類;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物類;ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸またはメタクリル酸誘導体などのビニル系単量体を挙げることができる。これらのビニル系単量体は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
また、ラジカル重合性モノマーとしてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。イオン性解離基を有する重合性単量体は、例えばカルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基などの置換基を構成基として有するものであって、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0041】
水系媒体中に粒子を安定に分散させるために、当該水系媒体中に界面活性剤を添加してもよく、このような界面活性剤としては、従来公知の種々のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などを用いることができる。これはこれ以降の分散液の作製も同様に当てはまる。
【0042】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類;ポリエトキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩、およびその誘導体類などを挙げることができる。
【0043】
また、カチオン系界面活性剤としては、例えば脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などを挙げることができる。
【0044】
さらに、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックコポリマーなどを挙げることができる。
【0045】
重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤であって、その10時間半減期温度が、用いるラジカル発生剤に係る10時間半減期温度(A)未満、好ましくは(A−10℃)未満であるものであれば、適宜のものを使用することができる。
【0046】
重合開始剤の具体例としては、例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなど)、アゾ化合物(4,4’−アゾビス4−シアノ吉草酸およびその塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩など)、有機過酸化物などが挙げられる。
【0047】
熱可塑性樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。
【0048】
連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えば2−クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタンおよびスチレンダイマーなどを挙げることができる。
【0049】
上記のようにして得られた第一樹脂分散液と下述する着色剤分散液とを混合した後、混合液のpHを調整し、凝集してコア粒子を形成することができる。この際、凝集剤を使用することが有効である。
【0050】
用いられる凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に好ましい。
【0051】
前記無機金属塩としては、たとえば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。
【0052】
(着色剤分散液の作製)
着色剤分散液を作製する工程としては、水系媒体中に着色剤を添加し、これに機械的エネルギーを作用させることによって水系媒体中に着色剤粒子を分散させた着色剤粒子の分散液が調製される。
【0053】
機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、高速回転するローターを備えた撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。
【0054】
着色剤分散液作製工程において調製される分散液中の着色剤粒子は、その体積基準のメジアン径が20〜1,000nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜140nm、特に好ましくは30〜100nmである。
【0055】
着色剤粒子の体積基準のメジアン径を20〜1,000nmに制御する方法としては、例えば上述の機械的エネルギーの大きさを調整することなどにより、制御することができる。
【0056】
着色剤としては、下記に例示するような有機または無機の各種、各色の顔料を使用することができる。
【0057】
すなわち、黒トナー用の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラック等が使用可能であり、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用可能である。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが使用可能である。
【0058】
イエロートナー用のイエロー着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等、また、顔料としてC.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185等が使用可能で、これらの混合物も使用可能である。
【0059】
マゼンタトナー用のマゼンタ着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等、顔料としてC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222等が使用可能で、これらの混合物も使用可能である。
【0060】
シアントナー用のシアン着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントブルー25、C.I.ソルベントブルー36、C.I.ソルベントブルー60、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ソルベントブルー93、C.I.ソルベントブルー95等、顔料としてC.I.ピグメントブルー1、7、15、60、62、66、76等が使用可能である。
【0061】
これらの顔料は、1種単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0062】
着色剤の含有割合は、トナー粒子中0.5〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。
【0063】
(分散液(2)の作製)
分散液(2)は、下述する一般式(1)で表されるトリアリールイミダゾール基を有する第二の樹脂を含有するシェル層用粒子を分散して含有する分散液である。
【0064】
(一般式(1)で表されるトリアリールイミダゾール基を有する第二の樹脂)
一般式(1)中、Rは水素原子または塩素原子であり、好ましくは水素原子である。一般式(1)中、Rが塩素原子である場合は、基Rはイミダゾール環に対してパラ位に結合されていることが好ましい。
【0065】
塩素原子よりなる基Rがイミダゾール環に対してパラ位に結合された場合には、後述するイミダゾール環間の架橋結合を形成しやすい。
【0066】
また、上記一般式(1)において、RおよびRは、水素原子、塩素原子またはメトキシ基であり、好ましくは水素原子である。
【0067】
当該一般式(1)で表されるトリアリールイミダゾール基におけるRおよびRが塩素原子である場合は、RおよびRはイミダゾール環に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合されていてもよい。
【0068】
また、RおよびRがメトキシ基である場合は、RおよびRはイミダゾール環に対してオルト位に結合されていることが好ましい。
【0069】
とRは、生産性の面から同一であることが好ましい。
【0070】
一般式(1)で表されるトリアリールイミダゾール基を有する第二の樹脂は、一般式(1)で表されるトリアリールイミダゾール基を有する重合性単量体を用いた重合反応により得ることができる。
【0071】
重合性反応は、当該単量体のみを用いたものでもよいし、他の共重合単量体と共に行ってもよい。
【0072】
重合性単量体としては、ラジカル重合、縮合重合などに用いられる単量体であれば特に制限なく用いることができるが、上記の一般式(2)で表される重合性単量体を用いることが好まし。
【0073】
一般式(2)において、Lは、単結合または2価の連結基を表す。RからRは、一般式(1)におけるRからRと、各々同義である。すなわち一般式(2)のLに結合している基の一つは、上記一般式(1)で表される基である。Rは、水素原子またはメチル基を表す。
【0074】
一般式(2)において、トリアリールイミダゾール基におけるイミダゾール環は、当該トリアリールイミダゾール基における、基Lに連続して結合されるべきベンゼン環について、基Lに対してメタ位に結合されていることが好ましい。
【0075】
イミダゾール環がトリアリールイミダゾール基における、基Lに連続して結合されるべきベンゼン環について、基Lに対してメタ位に結合されている重合性トリアリールイミダゾール化合物は、イミダゾール環間の架橋結合を形成しやすい。
【0076】
Lで表される2価の連結基としては、例えば−C(=O)−NH−、−C(=O)O−、−NH(C=O)NH−および−NH−C(=O)O−などが挙げられる。
【0077】
一般式(2)で表される重合性単量体としては、例えば下記の例示化合物1〜8で表される化合物を例示することができる。
【0078】
【化4】

【0079】
本発明に係る第二の樹脂としては、上記のような重合性単量体を用いた重合反応により得ることができるが、この重合性単量体と共重合可能な共重合用単量体と共重合させたものが好ましく用いられる。
【0080】
共重合用単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンなどを挙げることができる。
【0081】
重合性単量体(重合性トリアリールイミダゾール化合物)と共重合用単量体との共重合比は、重合性トリアリールイミダゾール化合物:共重合用単量体のモル比で1:99〜30:70であることが好ましい。
【0082】
本発明においては、シェル層の形成に第二の樹脂を用いるが、シェル層を形成するためには、後述するように第二の樹脂を含有するシェル層用粒子を分散含有する分散液(2)を用いる。
【0083】
この分散液を得るには、重合反応を水系媒体中で行う方法が好ましく、いわゆる懸濁重合法、乳化重合法および乳化会合法などを用いることができる。
【0084】
また、第二の樹脂を含有するシェル層には、荷電制御剤を含有させてもよく、荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ、無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤および負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
【0085】
トナー中における荷電制御剤の含有割合としては、結着樹脂100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0086】
トナー中に荷電制御剤を含有させる方法としては、上記に示した離型剤を含有させる方法と同様の方法を挙げることができる。
【0087】
具体的には、正帯電制御剤としては、例えば「ニグロシンベースEX」(オリエント化学工業社製)などのニグロシン系染料、「第4級アンモニウム塩P−51」(オリエント化学工業社製)、「コピーチャージPX VP435」(ヘキストジャパン社製)などの第4級アンモニウム塩、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料、および「PLZ1001」(四国化成工業社製)などのイミダゾール化合物などが挙げられ、また、負帯電制御剤としては、例えば、「ボントロンS−22」(オリエント化学工業社製)、「ボントロンS−34」(オリエント化学工業社製)、「ボントロンE−81」(オリエント化学工業社製)、「ボントロンE−84」(オリエント化学工業社製)、「スピロンブラックTRH」(保土谷化学工業杜製)などの金属錯体、チオインジゴ系顔料、「コピーチャージNX VP434」(ヘキストジャパン社製)などの第4級アンモニウム塩、「ボントロンE−89」(オリエント化学工業社製)などのカリックスアレーン化合物、「LR147」(日本カーリット社製)などのホウ素化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カーボンなどのフッ素化合物などが挙げられる。負帯電制御剤として用いられる金属錯体としては、上記に示したもの以外にもオキシカルボン酸金属錯体、ジカルボン酸金属錯体、アミノ酸金属錯体、ジケトン金属錯体、ジアミン金属錯体、アゾ基含有ベンゼン−ベンゼン誘導体骨格金属体、アゾ基含有ベンゼン−ナフタレン誘導体骨格金属錯体などの各種の構造を有したものなどを使用することができる。
【0088】
このようにトナーが荷電制御剤を含有するものとして構成されることにより、トナーの帯電性が向上される。
【0089】
更に、磁性粉を含有させてもよく、磁性粉としては、例えばマグネタイト、γ−ヘマタイト、または各種フェライトなどを使用することができる。
【0090】
磁性粉の含有割合は、トナー粒子中10〜500質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜200質量%である。
【0091】
荷電制御剤および/または磁性粉が含有される場合、これらはシェル層に含有されていることが好ましい。
【0092】
(層A(シェル層)の形成方法)
層Aは、分散液(1)と分散液(2)とを混合することで得られ、コアシェル型のトナーを作製することができるが、混合した後、凝集剤の添加、pH調整を行って第二の樹脂を含有するシェル層用粒子をコア粒子の表面を覆うように付着させることが好ましい。
【0093】
たとえばコア粒子の分散液(1)に凝集剤を添加し、さらに第二の樹脂を含有する分散液(2)を添加し、pH調製、温度調整を行い、コア粒子の表面に第二の樹脂を含有する粒子を凝集、融着させ、コア粒子の表面を第二の樹脂を含む層A(シェル層)で覆おうことができる。
【0094】
また、下記の乳化会合法のように、コア粒子の作製と層Aの被覆をほぼ同時に行う方法も好ましく適用できる。
【0095】
たとえば乳化会合法を用いて、上記第一樹脂分散液および、着色剤分散液また、必要に応じて、離型剤分散液を混合した水系媒体中に、凝集剤を添加し、温度調節することにより、塩析を進行させると同時に凝集・融着を行い作製したコア粒子の分散液中に、分散液(2)を添加し、コア粒子の表面に第二の樹脂を含有するシェル層用粒子を凝集、融着させ、コア粒子の表面を被覆する層A(シェル層)を有するコアシェル型の粒子を分散含有する会合液を調製する方法が挙げられる。
【0096】
シェル層用粒子の体積基準メジアン径D50vは30nm以上300nm以下であることが好ましく、50nm以上250nm以下であることがより好ましい。
【0097】
体積基準メジアン径を上記範囲内とすることにより、シェル層を均一に形成することができるため好ましい。
【0098】
用いられる凝集剤は、界面活性剤、無機金属塩を好適に用いることができる。
【0099】
前記無機金属塩としては、たとえば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム、ポリシリカ鉄等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、マグネシウム塩、アルミニウム塩が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が2価、または3価が、トナー粒子径の制御性、および製造の安定性の観点から好ましい。
【0100】
(架橋工程)
架橋工程では、上記のようにして得られた層Aを、酸化剤を含有する酸化剤溶液で、処理して、第二の樹脂を架橋する。
【0101】
(酸化剤溶液)
酸化剤溶液に用いられる酸化剤としては、例えばフェリシアン化カリウム、フェリシアン化ナトリムなどのフェリシアン塩類、次亜塩素酸ナトリム、次亜塩素酸カリウムなどの次亜塩素酸塩類、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸塩類、塩素酸カリウム、塩素酸バリウム、塩素酸カルシウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸アンモニウムなどの塩素酸塩類、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸アンモニウムなどの過塩素酸塩類、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸ナトリウムなどの過マンガン酸塩類、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸マグネシウムなどの臭素酸塩類、重クロム酸カリウム、重クロム酸アンモニウムなどの重クロム酸塩類、ヨウ素酸塩類、過ヨウ素酸塩類、ホウ素酸塩類、過ホウ素酸塩類、過炭酸塩類、過酢酸塩類、過酸化水素、有機過酸化物などの過酸化物、亜硝酸塩類、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸バリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸塩類などを挙げることができる。これらのうち、特に好ましく用いられるのは、次亜塩素酸ナトリム、フェリシアン化カリウムである。
【0102】
酸化剤溶液の溶媒としては、水が好ましいが、水溶性アルコール類などの有機溶媒を含有してもよい。
【0103】
層Aを酸化剤溶液で処理し、とは上記のようにして得られた層Aを有する粒子の表面に酸化剤溶液を接触させる処理をいう。
【0104】
接触させる方法としては、たとえば上記のような、コアシェル型の粒子を分散含有する会合液中に酸化剤溶液を混合する方法や、取り出した粒子に直接接触させるディップ方法などを適用できる。
【0105】
会合液中に混合する方法においては、酸化剤溶液の処理は、層Aを有するコアシェル型の粒子を分散含有する会合液を上記のように作製終了後に、例えば、−5℃/minの冷却速度で冷却した後、行うことが好ましい。
【0106】
酸化剤処理時の溶液の温度としては、5〜15℃が好ましく、酸化剤溶液による処理の処理時間としては、2〜8時間が好ましい。
【0107】
架橋工程では、上記酸化剤により、第二の樹脂は、架橋されて下記のような架橋構造を有する。
【0108】
従って、本発明の製造方法により製造されたトナーの、第二の樹脂を含有するシェル層の表面が上記架橋構造を有する、すなわちシェル層の表面のみが上記架橋構造を有する。
【0109】
上記から、本発明の製造方法により製造されたトナーが、本発明の効果を奏する理由は、下記のようであると、推察できる。
【0110】
すなわち、本発明の製造方法により製造されたトナーは、特定の架橋重合体が含有されており、当該特定の架橋重合体は、圧力の付与によってイミダゾール環間の結合が開裂される特性を有するものである。この開裂が生じると、必然的に当該特定の架橋重合体の分子量は低下する。
【0111】
この開裂による分子量低下は、定着装置により加えられる圧力によっても発生し、トナーのガラス転移点および溶融特性カーブが低温側にシフトする。従って、低い加熱温度であってもトナーの溶融が加速し、その結果、十分な低温定着性が得られる。
【0112】
一方、当該特定の架橋重合体は、圧力を付与される前の状態においては熱によるミクロブラウン運動が抑制されているために、耐熱保管性が向上される。
【0113】
さらに、トナー粒子が架橋点によって補強されているために、定着温度が低くても、撹拌等によるストレスに耐性を有する、大きな粒子強度が得られる。
【0114】
そして、特にこのようなトナーの中でコアシェル型のものについては、緻密なシェルを形成後に架橋をかけて特定の架橋重合体を得ることで、シェルとしてより強固なものとなる。その結果、架橋した粒子によりシェル化を行うトナーに比べて、更に耐熱性を維持したまま低温定着が可能となり更に粒子の強度が向上する。
【0115】
架橋工程を経た、コアシェル型トナーである粒子の粒径は、例えば体積基準のメジアン径で4〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは6〜9μmである。
【0116】
体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0117】
粒子の体積基準のメジアン径は「コールターマルチサイザーTA−III」(ベックマン・コールター社製)にデータ処理用のコンピューターシステム(ベックマンコールター社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的にはトナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径とした。
【0118】
また、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、転写効率の向上の観点から、下記式(T)で示される平均円形度が0.930〜1.000であることが好ましく、より好ましくは0.950〜0.995である。
【0119】
式(T):平均円形度=円相当径から求めた円の周囲長/粒子投影像の周囲長
本発明に係るトナーは、離型剤を含有してもよい。
【0120】
本発明に係るトナー中に離型剤を含有させる場合に用いる離型剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス、カルナウバワックス、サゾールワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、ホホバ油ワックス、蜜蝋ワックスなどを挙げることができる。
【0121】
トナー中に離型剤を含有させる方法としては、上述のように第一の樹脂の粒子を離型剤を含有するものとして構成する方法や、たとえばトナーの粒子を形成する塩析、凝集、融着工程において、水系媒体中に離型剤粒子が分散されてなる分散液を添加する方法などを挙げることができ、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0122】
トナーの粒子中における離型剤の含有割合としては、オフセット防止効果、透光性や色再現性の面から、結着樹脂100質量部に対して通常0.5〜25質量部とされ、好ましくは4〜12質量部とされる。
【0123】
架橋工程を経た粒子は、そのままトナーとして用いることもできるが、下記の洗浄・乾燥工程、後処理工程を経ることが好ましい。
【0124】
(洗浄・乾燥工程)
水系媒体からトナーの粒子を濾別し、洗浄処理によってトナー粒子から界面活性剤等の不要物を除去し、洗浄処理されたトナーの粒子を乾燥処理する工程である。
【0125】
(後処理工程)
流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナーの粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加してもよい。
【0126】
後処理剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などよりなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0127】
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
【0128】
これらの種々の外添剤の添加量は、その合計が、トナー100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部とされる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0129】
〔現像剤〕
本発明の製造方法により作製されたトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
【0130】
本発明の製造方法により作製されたトナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなるバインダー型キャリアなど用いてもよい。
【0131】
コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0132】
キャリアの体積基準のメジアン径としては20〜100μmであることが好ましく、更に好ましくは20〜60μmとされる。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0133】
〔画像形成方法〕
本発明の製造方法により作製されたトナーは、圧力を付与すると共に加熱することができる熱圧力定着方式による定着工程を含む画像形成方法に好適に用いることができる。
【0134】
この画像形成方法においては、具体的には、以上のようなトナーを使用して、例えば感光体上に形成された静電潜像を現像してトナー像を得、このトナー像を画像支持体に転写し、その後、画像支持体上に転写されたトナー像を熱圧力定着方式の定着処理によって画像支持体に定着させることにより、可視画像が形成された印画物が得られる。
【0135】
定着工程における圧力の付与および加熱は、同時であることが好ましく、また、まず圧力を付与し、その後、加熱してもよい。
【0136】
画像支持体上に転写されたトナー像を構成するトナー粒子に付与されるべき圧力は、例えば、後述する(i)熱ローラ方式の定着装置においては、加熱ローラと加圧ローラとの当接荷重が40〜350Nとなる圧力であればよい。また例えば、後述する(ii)フィルム加熱方式の定着装置においては、定着ベルトの画像支持体に対する面圧が9×10〜5×10N/mとなる圧力であればよい。
【0137】
本発明に係るトナーを用いた画像形成方法における熱圧力定着方式の定着装置としては、公知の種々のものを採用することができる。以下に、熱圧力定着装置として、熱ローラ方式の定着装置、およびフィルム加熱方式の定着装置を説明する。
(i)熱ローラ方式の定着装置
熱ローラ方式の定着装置は、一般に、加熱ローラと、これに当接する加圧ローラとによるローラ対を備え、加熱ローラおよび加圧ローラ間に付与された圧力によって加圧ローラが変形されることにより、この変形部にいわゆる定着ニップ部が形成されてなるものである。
【0138】
加熱ローラは、一般に、アルミニウムなどよりなる中空の金属ローラよりなる芯金の内部に、ハロゲンランプなどよりなる熱源が配設されてなり、当該熱源によって芯金が加熱され、加熱ローラの外周面が所定の定着温度に維持されるように当該熱源ヘの通電が制御されて温度調節されるものである。
【0139】
特に、最大4層のトナー層からなるトナー像を十分に加熱溶融させて混色させる能力を要求されるフルカラー画像の形成を行う画像形成装置の定着装置として用いられる場合は、加熱ローラとして、芯金を高い熱容量を有し、また、その芯金の外周面上に、トナー像を均質に溶融させるためのゴム弾性層が形成されたものを用いることが好ましい。
【0140】
また、加圧ローラは、例えばウレタンゴム、シリコンゴムなどの軟質ゴムからなる弾性層を有するものである。
【0141】
加圧ローラとしては、例えばアルミニウムなどよりなる中空の金属ローラよりなる芯金を有するものとし、当該芯金の外周面上に弾性層が形成されたものを用いてもよい。
【0142】
さらに、加圧ローラは、芯金を有するものとして構成した場合に、その内部に、加熱ローラと同様にハロゲンランプなどよりなる熱源を配設して当該熱源によって芯金を加熱し、加圧ローラの外周面が所定の定着温度に維持されるように当該熱源ヘの通電が制御されて温度調節されるものとして構成してもよい。
【0143】
これらの加熱ローラおよび/または加圧ローラとしては、その最外層として、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂などよりなる離型層が形成されてなるものを用いることが好ましい。この離型層の厚みは、概ね10〜30μmとすることができる。
【0144】
このような熱ローラ方式の定着装置においては、ローラ対を回転させて定着ニップ部に可視画像を形成すべき画像支持体を挟持搬送させることによって、加熱ローラによる加熱と、定着ニップ部における圧力の付与とを行い、これにより、未定着のトナー像が画像支持体に定着される。
【0145】
(ii)フィルム加熱方式の定着装置
フィルム加熱方式の定着装置は、一般に、例えばセラミックヒータよりなる加熱体と、加圧ローラと、これらの加熱体と加圧ローラとの間に耐熱性フィルムよりなる定着フィルムが挟まれてなるものであり、加熱体および加圧ローラ間に付与された圧力によって加圧ローラが変形されることにより、この変形部にいわゆる定着ニップ部が形成されてなるものである。
【0146】
定着フィルムとしては、ポリイミドなどよりなる耐熱性のフィルム、シートおよびベルトなどが用いられ、また、このポリイミドなどよりなる耐熱性のフィルム、シートおよびベルトなどをフィルム基体とし、当該フィルム基体上にテトラフルオロエチレン(PTFE)またはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂などよりなる離型層が形成された構成のものであってもよく、さらに、フィルム基体と離型層との間に、ゴムなどよりなる弾性層が設けられた構成のものであってもよい。
【0147】
このようなフィルム加熱方式の定着装置においては、定着ニップ部を形成する定着フィルムと加圧ローラとの間に、未定着のトナー像が担持された画像支持体を前記定着フィルムと共に挟持搬送させることによって、定着フィルムを介した加熱体による加熱と、定着ニップ部における圧力の付与とを行い、これにより、未定着のトナー像が画像支持体に定着される。
【0148】
このようなフィルム加熱方式の定着装置によれば、加熱体を、画像形成時のみ当該加熱体に通電して所定の定着温度に発熱させた状態にすればよく、画像形成装置の電源の投入から画像形成が実行可能な状態に至るまでの待ち時間が短いクイックスタート性が得られ、画像形成装置のスタンバイ時の消費電力も極めて小さく、省電力化が図れるなどの利点が得られる。
【0149】
〔画像支持体〕
本発明の製造方法により作製されたトナーを用いた画像形成方法に使用される画像支持体としては、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
以上のようなトナーによれば、架橋重合体が含有されており、当該架橋重合体が圧力の付与によってトリアリールイミダゾール基のイミダゾール環間の結合が開裂される特性を有するものであるために、圧力を付与することによってガラス転移点が低下したものに変化するので、圧力を付与すると共に加熱することにより、低い加熱温度であってもトナーに十分な弾性率の低下状態が早期に得られ、その結果、十分な低温定着性が得られる。一方、当該特定の架橋重合体は、圧力を付与される前の状態においては熱によるミクロブラウン運動が抑制されているために、耐熱保管性が得られる。従って、このようなトナーによれば、耐熱保管性が得られながら十分な低温定着性が得られる。
【0151】
また、このようなトナーによれば、圧力の付与による架橋重合体の弾性率の低下状態が早期に得られることにより、十分な高速定着性をも得られる。
【実施例】
【0152】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、トナーの体積基準のメジアン径、ピーク分子量およびガラス転移点の測定は、上述の方法と同様の方法によって行った。そして、トナーを測定試料として測定されたピーク分子量およびガラス転移点を、架橋重合体のピーク分子量およびガラス転移点とした。
【0153】
<コア用樹脂(第一の樹脂)1(スチレンアクリル樹脂)の粒子分散液の作製>
反応液
スチレン 240質量部
ブチルアクリレート 130質量部
アクリル酸 6質量部
ターシャリードデシルメルカプタン 24質量部
を混合して溶解させた溶液を、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「E−700」(日本エマルジョン社製)6質量部およびn−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10質量部をイオン交換水1550質量部に溶解させた水系媒体中に、フラスコ中で添加して分散、乳化させ、10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸カリウム11質量部を溶解したイオン交換水50質量部を投入して窒素置換を行った。
【0154】
次いで、フラスコ内を撹拌しながらオイルバスで内容物が70℃になるまで加熱し、5時間にわたって乳化重合を継続することによって、コア用樹脂(第一の樹脂)粒子の固形分量が20質量部であるコア用樹脂(第一の樹脂)1(スチレンアクリル樹脂)の粒子分散液を得た。この粒子の体積基準のメジアン径が152nmであった。
【0155】
また、得られたコア用樹脂(第一の樹脂)1のガラス転移点は21℃であり、また、GPC測定のよるピーク分子量が19,200であった。
【0156】
<コア用樹脂(第一の樹脂)2(ポリエステル樹脂)の粒子分散液の作製>
攪拌装置、窒素導入管、温度制御装置、精留塔を備えたフラスコに、下記多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーを合計3質量部混合し、反応液を調製した。この反応液を1時間かけて190℃まで昇温し、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、触媒Ti(OBu)(非結晶性ポリエステル樹脂のカルボン酸成分の全量に対し、0.003質量%分)を投入した。
【0157】
反応液
(多価カルボン酸モノマー)
テレフタル酸 10質量部
フマル酸 60質量部
アジピン酸 30質量部
(多価アルコールモノマー)
ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
75質量部
ポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
25質量部
生成される水を留去しながら、同温度から6時間を要して240℃まで昇温し、240℃でさらに6時間、脱水縮合反応を継続して重合を行って、コア用樹脂(第一の樹脂)2(ポリエステル樹脂)を得た。
【0158】
得られたコア用樹脂(第一の樹脂)2のガラス転移点は40℃であり、また、GPC測定のよるピーク分子量が18000であった。
【0159】
酢酸エチル1700質量部に「コア用樹脂(第一の樹脂)2(ポリエステル樹脂)400質量部を投入し70℃まで昇温し溶解、混合し、「樹脂溶液1」を得た。
【0160】
別途、イオン交換水 2000質量部、ドデシル硫酸ナトリウム 4.8質量部を攪拌分散し連続相となる「水相1」を調製した。この「水相1」中に「TKホモミキサーMarkII2.5型」(プライミクス株式会社製)で攪拌しながら「樹脂溶液1」を投入し、攪拌回転数を調整することにより「油滴1」を調製した。その後、50℃で減圧溜去して酢酸エチルを除去し、固形分量が20質量部のコア用樹脂(第一の樹脂)2(ポリエステル樹脂)の粒子分散液分散液2を得た。体積基準のメジアン径が180nmであった。
【0161】
<シェル層用粒子分散液の作製>
ビニル−トリフェニルイミダゾール化合物(1)〜(5) 85質量部
スチレン 205質量部
ブチルアクリレート 80質量部
アクリル酸 6質量部
ターシャリードデシルメルカプタン 24質量部
を混合して溶解させた溶液を、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「E−700」(日本エマルジョン社製)6質量部およびn−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10質量部をイオン交換水550質量部に溶解させた水系媒体中に、フラスコ中で添加して分散、乳化させ、10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸カリウム4質量部を溶解したイオン交換水50質量部を投入して窒素置換を行った。
【0162】
次いで、フラスコ内を撹拌しながらオイルバスで内容物が70℃になるまで加熱し、5時間にわたって乳化重合を継続することによって乳化液を得た。
【0163】
ビニル−トリフェニルイミダゾール化合物を下記で合成する1〜5を用いて以下の表に示す物性の第二の樹脂を分散して有するシェル層用粒子1〜5を得た。
【0164】
また、同様に以下に示すように比較例用のシェル層用粒子6を作製した。
【0165】
ビニル−トリフェニルイミダゾール化合物(3) 70質量部
スチレン 240質量部
ブチルアクリレート 60質量部
アクリル酸 6質量部
ターシャリードデシルメルカプタン 24質量部
を混合して上述したように乳化重合により乳化液を得た。得られた乳化液を−5℃/minの冷却速度で10℃まで懸濁液を冷却し、1%フェリシアン化カリウム水溶液10質量部を加え、温度10℃で6時間反応させ、架橋工程を経た粒子を分散して有するシェル層用粒子6を得た。
【0166】
【表1】

【0167】
〔ビニル−トリフェニルイミダゾール化合物の合成例1〕
反応容器に、
ベンゾイン(2−ヒドロキシ−1,2−ジフェニルエタノン) 1609質量部
3−ビニルベンズアルデヒド 1002質量部
酢酸アンモニウム 5838質量部
四フッ化ホウ素 1603質量部
よりなる混合液を入れ、100℃に加温し、1.5時間撹拌を継続した。反応終了後、水で希釈し、得られた固形物を濾過し、繰り返し水で洗浄し、乾燥させ、次いで、ヘキサン/酢酸エチル(質量比9:1)の混合溶媒で、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した後、メタノール/ジクロロエタン(質量比9:1)混合溶媒で再結晶させることにより、一般式(2)で表される化合物であるビニル−トリフェニルイミダゾール化合物〔1〕を得た。
【0168】
〔ビニル−トリフェニルイミダゾール化合物の合成例2〕
反応容器に、
2−(p−アミノフェニル)4,5−ジフェニルイミダゾール 3090質量部
メタクリル酸クロライド 925質量部
よりなる混合液を入れ、10℃で1.5時間撹拌を継続した。反応終了後、0.1N水酸化ナトリウム水溶液で希釈し、得られた固形物を濾過し、繰り返し水で洗浄し、乾燥させ、次いで、ヘキサン/酢酸エチル(質量比9:1)の混合溶媒で、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した後、メタノール/ジクロロエタン(質量比9:1)混合溶媒で再結晶させることにより、一般式(2)で表される化合物であるビニル−トリフェニルイミダゾール化合物〔2〕を得た。
【0169】
〔ビニル−トリフェニルイミダゾール化合物の合成例3〕
ビニル−トリフェニルイミダゾール化合物の合成例2において、2−(p−アミノフェニル)4,5−ジフェニルイミダゾール3090質量部の代わりに2−(p−ヒドロキシフェニル)4,5−ジフェニルイミダゾール3100質量部を用いたことの他は同様にして、一般式(2)で表される化合物であるビニル−トリフェニルイミダゾール化合物〔3〕を得た。
【0170】
〔ビニル−トリフェニルイミダゾール化合物の合成例4〕
ビニル−トリフェニルイミダゾール化合物の合成例2において、メタクリル酸クロライド925質量部の代わりにビニルイソシアネート710質量部を用いたことの他は同様にして、一般式(2)で表される化合物であるビニル−トリフェニルイミダゾール化合物〔4〕を得た。
【0171】
〔ビニル−トリフェニルイミダゾール化合物の合成例5〕
ビニル−トリフェニルイミダゾール化合物の合成例2において、2−(p−アミノフェニル)4,5−ジフェニルイミダゾール3090質量部およびメタクリル酸クロライド925質量部の代わりに2−(p−ヒドロキシフェニル)4,5−ジフェニルイミダゾール3100質量部およびビニルイソシアネート710質量部を用いたことの他は同様にして、一般式(2)で表される化合物であるビニル−トリフェニルイミダゾール化合物〔5〕を得た。
【0172】
<着色剤微粒子分散液の調製>
非イオン性界面活性剤「E−700」(日本エマルジョン株式会社製)6質量部をイオン交換水200質量部に撹拌溶解し、撹拌を継続しながら、着色剤としてカーボンブラック「リーガル99R」(キャボット社製)50質量部を徐々に添加し、次いで、ホモジナイザー「ウルトラタラックス」(IKA社製)により10分間分散処理することにより、着色剤微粒子が分散された着色剤微粒子分散液を調製した。
【0173】
この着色剤微粒子分散液における着色剤微粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、体積基準のメジアン径で220nmであった。
【0174】
<離型剤微粒子分散液の調製>
非イオン性界面活性剤「E−700」(日本エマルジョン株式会社)6質量部をイオン交換水200質量部に撹拌溶解し、撹拌を継続しながら、離型剤としてパラフィンワックス「HNP−0190」(日本精鑞社製)50質量部を添加し、95℃に加熱し、次いで、ホモジナイザー「ウルトラタラックスT50」(IKA社製)により10分間分散処理することにより、離型剤微粒子が分散された離型剤微粒子分散液を調製した。
【0175】
この離型剤微粒子分散液における離型剤微粒子の粒子径を、「MICROTRAC UPA 150」(日機装株式会社製)を用いて測定したところ、体積基準のメジアン径で250nmであった。
【0176】
<トナー粒子〔1〕の作製>
コア用樹脂1(スチレンアクリル樹脂)を272質量部(固形分換算)、イオン交換水1088質量部、着色剤粒子分散液98質量部、離型剤微粒子分散液243質量部を、温度計、冷却管、窒素導入装置及び攪拌装置を設けたセパラブルフラスコに投入した。さらに、系内の温度を30℃に保った状態で水酸化ナトリウム水溶液(25質量%)を添加したpHを10に調整した。
【0177】
次に、塩化マグネシウム・6水和物54.3質量部をイオン交換水54.3質量部に溶解させた水溶液を添加し、その後、系内の温度を55℃に昇温させて、コア用樹脂粒子(第一の樹脂)と着色剤粒子の凝集反応を開始した。
【0178】
凝集反応開始後、定期的にサンプリングを行って、粒度分布測定装置「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)を用いて、粒子の体積基準におけるメジアン径(D50)が6.0μmになった時に、トナーのシェル層を形成するシェル層用粒子1(第二の樹脂)の857質量部を添加した。
【0179】
シェル層が形成された時点で、エチレンジアミン四酢酸を20.1質量部添加した。
【0180】
この時点のトナー粒子の円形度は0.92であった。
【0181】
温度を75℃まで昇温し、3時間保持することにより、トナー粒子の円形度が0.96に達し、その後−5℃/minの冷却速度で10℃まで懸濁液を冷却し、酸化剤溶液である1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液10質量部を加え、温度10℃で6時間反応させ、第二の樹脂を架橋した。
【0182】
分散液中の反応生成物をろ過し、イオン交換水で充分に洗浄した後、乾燥させることにより、架橋工程を経た黒色のトナー粒子〔1〕を得た。
【0183】
分散液中の反応生成物をろ過し、イオン交換水で充分に洗浄した後、乾燥させることにより、黒色のトナー粒子〔1〕を得た。
【0184】
このトナー粒子〔1〕100質量部と、外添剤として疎水性シリカ微粉体(BET値:200m/g、一次粒子径:12nm)0.7質量部およびルチル型酸化チタン微粉体(一次粒子径:250nm)0.05質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製)を用いて混合することにより、トナー〔1〕を得た。
【0185】
同様にして以下の表のような条件でトナー〔2〕からトナー〔12〕を作製した。
【0186】
トナー〔11〕、〔12〕おいては酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムの代わりに、1%フェリシアン化カリウムを用いた。
【0187】
トナー〔1〕〜〔12〕について、それぞれ表1に対応を示すビニル−トリフェニルイミダゾール化合物〔合成例1〕〜〔合成例5〕の赤外吸収スペクトルとの比較、並びに、上述の架橋開裂処理を施したものについての電子スピン共鳴分析(ESR)によるラジカル発生の確認、および架橋開裂処理を施したものについてテトラヒドロフラン不溶分が消失したことから、一般式(3)で表される構造部分を有することが確認された。
【0188】
また、比較例1、2ではシェル層用粒子として、予め架橋したシェル層用粒子6を添加し、温度を95℃まで昇温し、4時間保持することにより、トナー粒子の円形度が0.96に達し、トナー粒子〔A〕、〔B〕を得た。
【0189】
更に、特許文献1の実施例1で、使用しているトナーについても作製し、トナー粒子〔C〕を得た。(比較例3)
〔二成分現像剤の調製〕
フェライト粒子(体積基準のメジアン径:50μm(パウダーテック社製))100質量部と、メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート共重合体樹脂(一次粒子の体積基準のメジアン径:85nm)4質量部とを、水平撹拌羽根式高速撹拌装置に入れ、撹拌羽根の周速:8m/s、温度:30℃の条件で15分間混合した後、120℃まで昇温して撹拌を4時間継続した。その後、冷却し、200メッシュの篩を用いてメチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート共重合体樹脂の破片を除去することにより、樹脂被覆キャリアを作製した。
【0190】
この樹脂被覆キャリアを、上記のトナー〔1〕〜〔12〕および比較用のトナー〔A〕,〔B〕の各々に、前記トナーの濃度が7質量%になるよう混合し、二成分現像剤1〜12および比較用の二成分現像剤比較1、比較2を調製した。
【0191】
【表2】

【0192】
(評価)
二成分現像剤1〜12および比較用の二成分現像剤比較1、比較2を用いて下記の(1)〜(3)の評価項目について評価した。結果を表3に示す。
【0193】
(1)低温定着性
市販のデジタル複写機「bizhub 920」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を使用し、定着加熱部材の表面温度が80〜150℃の範囲において5℃刻みで変化するよう変更し、各温度において、常温常温(温度20℃、湿度50%RH)の環境下で秤量350g紙を画像支持体として用いてトナー像の定着処理を行って印画物を得、当該印画物の画像部の定着強度を、下記のメンディングテープ剥離法により測定し、定着強度が90%以上得られたときの定着加熱部材の温度を定着可能温度として評価した。なお、定着可能温度が110℃以下である場合に合格と判断される。
【0194】
−メンディングテープ剥離法−
1)印画物(画像濃度1.3)の画像部における絶対反射濃度Dを測定し、その後、印画物を、当該画像部を通るよう二つ折りにする。
2)メンディングテープ「No.810−3−12」(住友3M社製)を、印画物の二つ折りにした当該画像部に軽く貼り付ける。
3)1kPaの圧力でメンディングテープの上を4往復擦り付ける。
4)180度の角度、2Nの力でメンディングテープを剥がす。
5)剥離後の当該画像部の絶対反射濃度Dを測定する。
6)下記式(D)に基づいて定着率を算出する。
【0195】
式(D):定着強度(%)=D/D×100
なお、絶対反射濃度の測定には、反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)を使用した。
【0196】
(2)耐熱保管性
トナー0.5gを内径21mmの10mlガラス瓶に取り、蓋を閉めてタップデンサー「KYT−2000」(セイシン企業製)を用いて室温で600回振とうした後、蓋を取り温度55℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いでトナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に解砕しないよう注意しながら載せて、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調節し10秒間振動を加えた後、篩上に残存した残存トナー量を測定し、下記式(1)によりトナー凝集率を算出し、これにより評価した。
【0197】
式(1):トナー凝集率(%)={残存トナー量(g)/0.5(g)}×100
なお、トナー凝集率が15%未満である場合にトナーの耐熱保管性が極めて良好であると判断され、トナー凝集率が15%以上、20%以下である場合にトナーの耐熱保管性が良好であると判断され、トナー凝集率が20%を超える場合にはトナーの耐熱保管性が悪く、実用に耐えないと判断される。
【0198】
(3)トナー飛散防止性
下記のようにしてトナー粒子強度を求め、トナー飛散防止性の指標とした。
【0199】
市販のデジタル複写機「bizhub 920」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)の現像装置に二成分現像剤をセットし、感光体上に静電潜像が形成されない、すなわちトナーが現像されない電位条件で2時間撹拌する撹拌テストを行い、その後、トナーを取り出し、フロー式粒子像解析装置「FPIA−2100」(シスメック社製)を用いてトナーの粒度分布を測定し、1μm以下の粒子の数、および全体の粒子の数を計測し、下記式(M)で表される粒子強度指数を算出し、当該粒子強度指数に基づいて評価した。
【0200】
式(M):粒子強度指数={(1μm以下の粒子の数)/(全体の粒子の数)}×100
なお、撹拌テストの前はどの二成分現像剤も粒子強度指数が1未満であった。そして、撹拌テスト後の粒子強度指数が9未満である場合は、十分な粒子強度を有してトナー粒子の破砕微粉が発生せずにキャリア汚染の発生が抑制されて十分な耐ストレス性が得られ、その結果、二成分現像剤の交換サイクルが長いものになると判断され、一方、粒子強度指数が9を超える場合には、二成分現像剤を電子顕微鏡で目視したときにキャリア粒子の表面をトナー粒子の破砕片が支配的に覆った状態が観察されてキャリア粒子およびトナー粒子が摩擦帯電する機会が圧倒的に低減され、その結果、現像装置からのトナー飛散が激しいものとなり、実用に耐えないと判断される。
【0201】
【表3】

【0202】
表3から本発明の製造方法により製造されたトナーは、コアシェル型のトナーの表面を酸化剤溶液で処理するという簡単な方法であり生産性に優れると共に、良好な耐熱保管性を有すると同時に十分な低温定着性を有しかつ粒子強度が高くトナー飛散防止性に優れることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の樹脂および着色剤を含有するコア層を有し、該コア層上にシェル層を有するコアシェル型トナーを製造するトナーの製造方法であって、該第一の樹脂および該着色剤を含有するコア粒子を含有する分散液(1)と、下記一般式(1)で表されるトリアリールイミダゾール基を有する第二の樹脂を含有するシェル層用粒子を含有する分散液(2)とを混合して、該コア粒子を、該第二の樹脂を含む層Aで覆うシェル化工程、および該層Aを、酸化剤を含有する酸化剤溶液で処理し、該第二の樹脂を架橋する架橋工程を有することを特徴とするトナーの製造方法。
【化1】

[式中、Rは、水素原子または塩素原子を表す。RおよびRは、水素原子、塩素原子またはメトキシ基を表す。]
【請求項2】
前記第二の樹脂が、下記一般式(2)で表される重合性単量体を用いた重合により得られた樹脂であることを特徴とするトナーの製造方法。
【化2】

〔式中、Rは水素原子または塩素原子を表す。RおよびRは、水素原子、塩素原子またはメトキシ基を表す。Rは水素原子またはメチル基を表す。Lは、単結合または2価の連結基を表す。〕
【請求項3】
請求項1または2に記載のトナーの製造方法により製造されたトナーであって、前記第一の樹脂および前記着色剤を含有するコア層を有し、該コア層上に前記一般式(1)で表されるトリアリールイミダゾール基を有する第二の樹脂を含有するシェル層を有し、該シェル層の表面が、下記一般式(3)で表される架橋構造を有することを特徴とするトナー。
【化3】

〔式中、Rは水素原子または塩素原子を表す。RおよびRは、水素原子、塩素原子またはメトキシ基を表す。Rは水素原子またはメチル基を表す。Lは、単結合または2価の連結基を表す。〕

【公開番号】特開2012−128141(P2012−128141A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278965(P2010−278965)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】