説明

トナーバインダーおよびトナー

【課題】 高温高湿度下でのトナーの耐ブロッキング性と低温定着性とが共に優れた、ポリエステル樹脂系トナーバインダーを提供する。
【解決手段】 重縮合ポリエステル樹脂からなる静電荷像現像用トナーバインダーであって、該ポリエステル樹脂が、リン化合物のアルミニウム塩から選ばれる少なくとも1種のアルミニウム含有触媒(a)の存在下に形成されてなり、重縮合後に触媒失活剤(b)が添加されてなることを特徴とする静電荷像現像用トナーバインダー。(a)はホスホン酸系化合物のアルミニウム塩が好ましく、(b)はリン系プロトン酸が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる乾式トナー用として有用なポリエステル樹脂、およびこれをバインダーとして用いたトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
トナーの低温定着性能を向上させる目的で、バインダーとしてポリエステル樹脂を用いることが従来より知られている(特許文献1、2等)。しかし、トナーの低温定着性をさらに向上させるためには、分子量やガラス転移温度(以下Tgと略す)を下げる必要があるが、そうした場合、高温高湿度下でのトナーの耐ブロッキング性が劣るという問題点を有していた。
【特許文献1】特開昭62−78568号公報
【特許文献2】特開昭62−178278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高温高湿度下でのトナーの耐ブロッキング性と低温定着性とが共に優れた、ポリエステル樹脂からなるトナーバインダー、およびトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、これらの問題点を解決するべく鋭意検討した結果、特定の触媒の存在下で形成された重縮合ポリエステル樹脂に、該触媒の失活剤を含有させたトナーバインダーを用いることで解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、重縮合ポリエステル樹脂からなる静電荷像現像用トナーバインダーであって、該ポリエステル樹脂が、リン化合物のアルミニウム塩から選ばれる少なくとも1種のアルミニウム含有触媒(a)の存在下に形成されてなり、重縮合後に触媒失活剤(b)が添加されてなることを特徴とする静電荷像現像用トナーバインダー;並びに、上記の静電荷像現像用トナーバインダー(A)と着色剤(B)を含有する静電荷像現像用トナー;である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の重縮合ポリエステル樹脂からなるトナーバインダーを用いた本発明のトナーは、高湿度下における耐ブロッキング性と低温定着性が共に優れ、保存安定性、溶融流動性、および帯電特性も良好である。また、環境上問題のあるスズ化合物を触媒として使用しなくとも、良好な樹脂性能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における、上記アルミニウム含有触媒(a)は、少なくとも1種のリン化合物のアルミニウム塩であり、アルミニウムを含有するリン化合物であれば特に限定されないが、ホスホン酸系化合物のアルミニウム塩を用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物のアルミニウム塩としては、モノアルミニウム塩、ジアルミニウム塩、トリアルミニウム塩などが含まれる。
本発明で言うホスホン酸系化合物とは、下記式(2)で表される構造を有する化合物を意味する。



−O−P−O− (2)

上記リン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0007】
また、本発明の(a)として、下記一般式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。


[ R1−(CH2)n−P−O- ]p Al3+ (R3-)m (1)

OR2
[式(1)中、R1は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、または、水酸基もしくはハロゲン基もしくはアルコキシル基もしくはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、または、水酸基もしくはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、または、水酸基もしくはアルコキシル基もしくはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。pは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、p+mは3である。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。]
【0008】
上記のR1としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、および2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、および−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。上記のR3-としては、水酸化物イオン、アルコラートイオン、エチレングリコラートイオン、アセテートイオン、およびアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
リン化合物のアルミニウム塩の具体例としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、(1−ナフチル)メチルホスホン酸のアルミニウム塩、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸のアルミニウム塩、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、2−メチルベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、4−クロロベンジルホスホン酸フェニルのアルミニウム塩、4−アミノベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、フェニルホスホン酸エチルのアルミニウム塩などが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、およびベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩がとくに好ましい。
【0009】
本発明のトナーバインダーを構成する重縮合ポリエステル樹脂としては、ポリオールとポリカルボン酸との重縮合物であるポリエステル樹脂(X)、(X)にさらにポリエポキシド(c1)および/またはポリイソシアネート(c2)などを反応させて得られる変性ポリエステル樹脂(Y)などが挙げられる。(X)、(Y)などは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて混合物として使用してもよい。
ポリオールとしては、ジオール(g)、および必要により3価以上のポリオール(h)が、ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸(i)、および必要により3価以上のポリカルボン酸(j)が挙げられ、それぞれ2種以上を併用してもよい。
【0010】
ジオール(g)としては、水酸基価180〜1900mgKOH/gのものが好ましい。具体的には、炭素数2〜36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、および1,6−ヘキサンジオールなど);炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリブチレングリコールなど);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、および水素添加ビスフェノールAなど);上記脂環式ジオールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド〔エチレンオキシド(以下EOと略記する)、プロピレンオキシド(以下POと略記する)およびブチレンオキシド(以下BOと略記する)など〕付加物(付加モル数1〜30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSなど)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、POおよびBOなど)付加物(付加モル数2〜30)などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物およびこれらの併用であり、とくに好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物、炭素数2〜4のアルキレングリコールおよびこれらの2種以上の併用である。
なお、上記および以下において水酸基価および酸価は、JIS K 0070に規定の方法で測定される。
【0011】
3価以上(3〜8価またはそれ以上)のポリオール(h)としては、水酸基価150〜1900mgKOH/gのものが好ましい。具体的には、炭素数3〜36の3〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物、例えば、グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、およびジペンタエリスリトール;糖類およびその誘導体、例えば蔗糖およびメチルグルコシド;など);上記脂肪族多価アルコールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、POおよびBOなど)付加物(付加モル数1〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、POおよびBOなど)付加物(付加モル数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラックおよびクレゾールノボラックなど:平均重合度3〜60)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2〜30)などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、3〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコールおよびノボラック樹脂のアルキレンオキシド付加物(付加モル数2〜30)であり、とくに好ましいものはノボラック樹脂のアルキレンオキシド付加物である。
【0012】
ジカルボン酸(i)としては、酸価180〜1250mgKOH/gのものが好ましい。具体的には、炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、およびセバシン酸など)およびアルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸など);炭素数4〜36の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕;炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、およびメサコン酸など);炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケンジカルボン酸、および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。なお、(i)として、上述のものの酸無水物または低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
【0013】
3価以上(3〜6価またはそれ以上)のポリカルボン酸(j)としては、酸価150〜1250mgKOH/gのものが好ましい。具体的には、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など);不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(以下Mnと記載、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による):450〜10000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、α−オレフィン/マレイン酸共重合体、スチレン/フマル酸共重合体など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸であり、とくに好ましいものはトリメリット酸、およびピロメリット酸である。なお、3価以上のポリカルボン酸(j)として、上述のものの酸無水物または低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
【0014】
また、(g)、(h)、(i)および(j)とともに炭素数4〜20の脂肪族または芳香族ヒドロキシカルボン酸(k)、炭素数6〜12のラクトン(l)を共重合することもできる。
ヒドロキシカルボン酸(k)としては、ヒドロキシステアリン酸、硬化ヒマシ油脂肪酸などが挙げられる。ラクトン(l)としては、カプロラクトンなどが挙げられる。
【0015】
ポリオールとポリカルボン酸の反応比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.3、とくに好ましくは1.3/1〜1/1.2である。また使用するポリオールとポリカルボン酸の種類は、最終的に調整されるポリエステル系トナーバインダーのガラス転移点が45〜85℃となるよう分子量調整も考慮して選択される。
【0016】
トナーバインダーはフルカラー用、モノクロ用で各々異なる物性が求められており、ポリエステル樹脂の設計も異なる。
即ち、フルカラー用には高光沢画像が求められるため、低粘性のバインダーとする必要があるが、モノクロ用は光沢は特に必要なく、ホットオフセット性が重視されるため高弾性のバインダーとする必要がある。
【0017】
フルカラー複写機等に有用である高光沢画像を得る場合は、低粘性であることが好ましいことから、ポリエステル樹脂を構成する(h)および/または(j)の比率は、(h)と(j)のモル数の和が、(g)〜(j)のモル数の合計に対して、好ましくは0〜20モル%、さらに好ましくは0〜15モル%、とくに0〜10モル%である。
【0018】
モノクロ複写機等に有用である高い耐ホットオフセット性を得る場合は、高弾性であることが好ましいことから、ポリエステル樹脂としては、(h)と(j)を両方用いたものが好ましい。(h)および(j)の比率は、(h)と(j)のモル数の和が、(g)〜(j)のモル数の合計に対して、好ましくは0.1〜40モル%、さらに好ましくは0.5〜25モル%、とくに1〜20モル%である。
【0019】
変性ポリエステル樹脂(Y)を得るのに用いるポリエポキシド(c1)としては、ポリグリシジルエーテル〔エチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラック(平均重合度3〜60)グリシジルエーテル化物など〕;ジエンオキサイド(ペンタジエンジオキサイド、ヘキサジエンジオキサイドなど)などが挙げられる。これらの中で好ましくは、ポリグリシジルエーテルであり、さらに好ましくは、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、およびでフェノールノボラックグリシジルエーテル化物ある。
(c1)の1分子当たりのエポキシ基数は、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜6、とくに好ましくは2〜4である。
(c1)のエポキシ当量は、好ましくは50〜500である。下限は、さらに好ましく70、とくに好ましくは80であり、上限は、さらに好ましく300、とくに好ましくは200である。エポキシ基数とエポキシ当量が上記範囲内であると、現像性と定着性が共に良好である。上述の1分子当たりのエポキシ基数およびエポキシ当量の範囲を同時に満たせばさらに好ましい。
【0020】
ポリイソシアネート(c2)としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシヌアレート基、またはオキサゾリドン基含有変性物など)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0021】
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のイソシアネートも同様)6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6〜20の芳香族トリイソシアネートおよびこれらのイソシアネートの粗製物などが挙げられる。具体例としては、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜10の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0022】
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜16の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数8〜12の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
変性ポリイソシアネートの具体例としては、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、などが挙げられる。
これらのうちで好ましいものは、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、およびMDIである。
【0023】
本発明においてトナーバインダー(A)として用いるポリエステル樹脂は、通常のポリエステルの製造法と同様にして製造することができる。例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、アルミニウム含有触媒(a)の存在下、反応温度が、好ましくは150〜280℃、さらに好ましくは180〜260℃、とくに好ましくは180〜240℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、とくに2〜40時間である。反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
(a)の添加量としては、重合活性などの観点から、得られる重合体の重量に対して、好ましくは0.0001〜0.8%、さらに好ましくは0.0002〜0.6%、とくに好ましくは0.0015〜0.55%である。
上記および以下において%は、とくに断りのない限り、重量%を意味する。
また、(a)の触媒効果を損なわない範囲で他のエステル化触媒を併用することもできる。他のエステル化触媒の例としては、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒(例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、およびテレフタル酸チタン)、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、ゲルマニウム含有触媒、アルカリ(土類)金属触媒(例えばアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のカルボン酸塩:酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、および安息香酸カリウムなど)、および酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの他の触媒の添加量としては、得られる重合体に対して、0〜0.6%が好ましく、0.001〜0.5%がさらに好ましい。0.6%以内とすることで、ポリエステル樹脂の着色が少なくなり、カラー用のトナーに用いるのに好ましい。
【0024】
ポリエステル樹脂(X)の製造方法としては、例えば、得られる重合体の重量に対して0.0001〜0.8%の触媒(a)と、必要により他の触媒の存在下、ジオール(g)とジカルボン酸(i)と、必要により、3価以上のポリオール(h)および/または3価以上のポリカルボン酸(j)とを、180℃〜260℃に加熱し、常圧および/または減圧条件で脱水縮合させて、(X)を得る方法が挙げられる。(h)と(j)を用いる場合、(g)、(i)、および(h)の脱水縮合後に、さらに(j)を反応させてもよい。
【0025】
変性ポリエステル樹脂(Y)の製造方法としては、ポリエステル樹脂(X)にポリエポキシド(c1)および/またはポリイソシアネート(c2)を加え、好ましくは100℃〜260℃でポリエステルの分子伸長反応を行うことで、(Y)を得る方法が挙げられる。
【0026】
本発明において、上記触媒失活剤(b)は、触媒(a)を失活させることができるものであれば特に限定されないが、リン系のプロトン酸、およびその低級アルキルエステルが、効果の点で優れる。
具体的な化合物としては、リン系のプロトン酸としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、および次亜リン酸などが挙げられる。リン系のプロトン酸の低級アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜5のリン酸トリアルキル(リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等)などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中ではリン系のプロトン酸が好ましい。
これらの失活剤(b)を、重合触媒(a)に含まれるアルミニウム原子に対して等モル以上用いると、アルミニウム原子周囲の分子配列が変わり(a)の触媒活性が低下すると考えられ好ましい。
【0027】
(b)の添加量としては、重合体の分子量維持などの観点から、得られる重合体の重量に対して、好ましくは0.00005〜0.8%、さらに好ましくは0.0001〜0.6%、とくに好ましくは0.0008〜0.55%である。
【0028】
(b)の添加の方法は特に限定されないが、重縮合完了後、240℃以下の温度で重合系内に投入すると樹脂の着色も少なく好ましい。ポリエステル樹脂の種類によっては、重縮合反応後に無水トリメリット酸などで分子末端修飾を行ったり、さらに離型剤、荷電調整剤などの添加剤を添加する場合があるが、これらの場合でも240℃以下であれば、投入の順序に特に制限はなく混合することができる。プロセスの容易さなどを加味すると(b)の投入順序を、他の添加剤等の投入後、最後にすると好ましい場合がある。
また、変性ポリエステル樹脂(Y)を得る場合は、ポリエポキシド(c1)および/またはポリイソシアネート(c2)などによる変性前に、(b)を添加するのが好ましい。
【0029】
本発明のポリエステル樹脂からなるトナーバインダーにおいて、フルカラー用のトナーバインダーに用いるポリエステル樹脂のテトラヒドロフラン(THF)不溶分は、光沢度の観点から、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
なお、THF不溶分およびTHF可溶分は以下の方法で得られる。
200mlの共栓付きマイヤーフラスコに、試料約0.5gを精秤し、THF50mlを加え、3時間撹拌還流させて冷却後、グラスフィルターにて不溶分をろ別する。THF不溶分の値(%)は、グラスフィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧乾燥した後の重量と試料の重量比から算出する。
なお、後述する分子量の測定には、このろ液をTHF可溶分として使用する。
【0030】
モノクロ用ポリエステル樹脂は、THF不溶分を2〜70%含有していることが好ましく、さらに好ましくは5〜60%、とくに10〜50%である。THF不溶分が2%を以上で耐ホットオフセット性が良好になり、70%以下で良好な低温定着性が得られる。
【0031】
ポリエステル樹脂のピークトップ分子量(Mp)はモノクロ用、フルカラー用いずれの場合も、好ましくは1000〜30000、さらに好ましくは1500〜25000、とくに1800〜20000である。Mpが1000以上で、耐熱保存安定性および粉体流動性が良好となり、30000以下でトナーの粉砕性が向上し、生産性が良好となる。
【0032】
また本発明のポリエステル樹脂からなるトナーバインダー(A)を用いてトナーとしたときの、トナー中の分子量1500以下の成分の比率は、1.8%以下が好ましく、さらに好ましくは1.3%以下、とくに好ましくは1.2%以下である。分子量1500以下の成分の比率が1.8%以下になることで、保存安定性がより良好となる。
【0033】
上記および以下において、ポリエステル樹脂またはトナーの、Mp、Mn、および分子量1500以下の成分の比率は、THF可溶分についてGPCを用いて、以下の条件で測定される。
装置 : 東ソー製 HLC−8120
カラム : TSKgelGMHXL(2本)
TSKgelMultiporeHXL−M(1本)
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25%のTHF溶液
溶液注入量: 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : ポリスチレン
得られたクロマトグラム上最大のピーク高さを示す分子量をピークトップ分子量(Mp)と称する。さらに分子量1500で分割したときのピーク面積の比率で低分子量物の存在比を評価する。
【0034】
ポリエステル樹脂のTgはモノクロ用、フルカラー用いずれの場合も、好ましくは40〜90℃、さらに好ましくは50〜80℃、とくに55〜75℃である。Tgが40℃〜90℃の範囲では耐熱保存安定性と低温定着性が良好である。
なお、上記および以下においてポリエステル樹脂のTgは、セイコー電子工業(株)製DSC20,SSC/580を用いてASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
【0035】
また、ポリエステル樹脂の水酸基価(mgKOH/g)は、好ましくは60以下、さらに好ましくは0.1〜40である。水酸基価が60以下であると、環境安定性や帯電量が向上する。ポリエステル樹脂の酸価(mgKOH/g)は、好ましくは60以下、さらに好ましくは0.1〜40である。酸価が60以下であると環境安定性が向上する。また、適度の酸価を有している方が帯電の立ち上がりが向上する点で好ましい。
【0036】
また、本発明のトナーバインダー(A)中に、上記重縮合ポリエステル樹脂以外に、必要により、他の樹脂などを含有させることもできる。
他の樹脂としては、スチレン系樹脂[スチレンとアルキル(メタ)アクリレートの共重合体、スチレンとジエン系モノマーとの共重合体等]、エポキシ樹脂(ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの付加縮合物等)、ウレタン樹脂(ジオールとジイソシアネートの重付加物等)などが挙げられる。
他の樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1000〜200万である。
トナーバインダー(A)における他の樹脂の含有量は、好ましくは0〜40%、さらに好ましくは0〜30%、とくに好ましくは0〜20%である。
【0037】
ポリエステル樹脂を2種以上併用する場合、および少なくとも1種のポリエステル樹脂と他の樹脂を混合する場合、予め粉体混合または溶融混合してもよいし、トナー化時に混合してもよい。
溶融混合する場合の温度は、それらの樹脂の軟化点以上の温度であればよいが、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは100〜170℃、とくに好ましくは120〜160℃である。
混合温度が低すぎると充分に混合できず、不均一となることがある。2種以上のポリエステル樹脂を混合する場合、混合温度が高すぎると、エステル交換反応による平均化などが起こるため、トナーバインダーとして必要な樹脂物性が維持できなくなる場合がある。
【0038】
溶融混合する場合の混合時間は、好ましくは10秒〜60分、さらに好ましくは20秒〜30分、特に好ましくは30秒〜15分である。2種以上のポリエステル樹脂を溶融混合する場合、混合時間が長すぎると、エステル交換反応による平均化などが起こるため、トナーバインダーとして必要な樹脂物性が維持できなくなる場合があるが、本発明に用いるポリエステル樹脂の場合は、(b)を含有するため、エステル交換反応が遅く十分な混合時間を確保しやすい。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽などのバッチ式混合装置、および連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダー、3本ロールなどが挙げられる。これらのうちエクストルーダーおよびコンティニアスニーダーが好ましい。
粉体混合する場合は、通常の混合条件および混合装置で混合することができる。
粉体混合する場合の混合条件としては、混合温度は、好ましくは0〜80℃、さらに好ましくは10〜60℃である。混合時間は、好ましくは3分以上、さらに好ましくは5〜60分である。混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、およびバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
【0039】
本発明の静電荷像現像用トナーは、本発明のトナーバインダー(A)と着色剤(B)から構成され、必要に応じて、離型剤(C)、荷電制御剤(D)、および流動化剤(E)等、種々の1種以上の添加剤を含有する。
トナー中の(A)の含有量は、着色剤として染料または顔料を使用する場合は、好ましくは70〜98%、さらに好ましくは74〜96%であり、磁性粉を使用する場合は、好ましくは20〜85%、さらに好ましくは35〜65%である。
【0040】
着色剤(B)としては公知の染料、顔料および磁性粉を用いることができる。具体的には、カーボンブラック、スーダンブラックSM、ファーストイエロ−G、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB、オイルピンクOP、マグネタイトおよび鉄黒等が挙げられる。
トナー中の着色剤(B)の含有量は、染料または顔料を使用する場合は、好ましくは2〜15%であり、磁性粉を使用する場合は、好ましくは15〜70%、さらに好ましくは30〜60%である。
【0041】
離型剤(C)としては、カルナウバワックス(C1)、フィッシャートロプシュワックス(C2)、パラフィンワックス(C3)、およびポリオレフィンワックス(C4)などが挙げられる。
(C1)としては、天然カルナウバワックス、および脱遊離脂肪酸型カルナウバワックスが挙げられる。
(C2)としては、石油系フィッシャートロプシュワックス(シューマン・サゾール社製パラフリントH1、パラフリントH1N4およびパラフリントC105など)、天然ガス系フィッシャートロプシュワックス(シェルMDS社製FT100など)、およびこれらフィッシャートロプシュワックスを分別結晶化などの方法で精製したもの[日本精蝋(株)製MDP−7000、MDP−7010など]などが挙げられる。
(C3)としては、石油ワックス系のパラフィンワックス[日本精蝋(株)製パラフィンワックスHNP−5、HNP−9、HNP−11など]などが挙げられる。
(C4)としては、ポリエチレンワックス[三洋化成工業(株)製サンワックス171P、サンワックスLEL400Pなど]、およびポリプロピレンワックス[三洋化成工業(株)製ビスコール550P、ビスコール660Pなど]などが挙げられる。
これらのワックスの内、カルナウバワックス、およびフィッシャートロプシュワックスが好ましく、カルナウバワックス、および石油系フィッシャートロプシュワックスがさらに好ましい。これらのワックスを離型剤として使用することで、トナーとした場合の低温定着性が優れる。
トナー中の(C)の含有量は、好ましくは0〜10%であり、さらに好ましくは1〜7%である。
【0042】
荷電制御剤(D)としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩化合物、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、サリチル酸金属塩、スルホン酸基含有ポリマー、含フッソ系ポリマー、およびハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
トナー中の(D)の含有量は、好ましくは0〜5%、さらに好ましくは0.01〜4%である。
【0043】
流動化剤(E)としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、および炭酸カルシウム粉末等、公知のものが挙げられる。
トナー中の(E)の含有量は好ましくは0〜5%である。
【0044】
トナーの製造法としては、公知の混練粉砕法等が挙げられる。例えば、上記トナー構成成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後、ジェットミル等を用いて微粉砕し、さらに風力分級し、粒径D50が通常2〜20μmの粒子として得られる。
なお、粒径D50は、コールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用い測定される。
【0045】
本発明のトナーバインダーを用いた本発明のトナーは、必要に応じて磁性粉(鉄粉、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト等)、ガラスビーズおよび/または樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリアー粒子と混合されて、電気的潜像の現像剤として用いられる。また、キャリアー粒子のかわりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
次いで、公知の熱ロール定着方法等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。
【実施例】
【0046】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、部は重量部を示す。
なお、実施例および比較例における軟化点は以下の方法で測定される。
〔軟化点の測定方法〕
フローテスターを用いて、下記条件で等速昇温し、その流出量が1/2になる温度をもって軟化点とする。
装置 :島津(株)製 フローテスター CFT−500D
荷重 :20kgf/cm2
ダイ :1mmΦ−1mm
昇温速度:6℃/min
試料量 :1.0g
【0047】
実施例1
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物430部、ビスフェノールA・PO3モル付加物300部、テレフタル酸257部、イソフタル酸65部、無水マレイン酸10部、および重縮合触媒として(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩2部を入れ、220℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで0.5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が0.8になった時点で亜リン酸0.3部を加え、十分に拡散した段階(30分)で取り出し、室温まで冷却後粉砕して、ポリエステル樹脂(X−1)を得た。
(X−1)はTHF不溶分を含有しておらず、その酸価は0.8、水酸基価は12、Tgは59℃、Mnは6890、Mpは19800であった。分子量1500以下の成分の比率は1.2%であった。
【0048】
実施例2
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO3モル付加物723部、テレフタル酸244部、イソフタル酸27部、および重縮合触媒として(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩1.5部と酢酸リチウム0.3部を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2になった時点で180℃に冷却し、亜リン酸を2部加え、さらに無水トリメリット酸16部を加え、常圧密閉下2時間反応後取り出し、室温まで冷却後粉砕して、ポリエステル樹脂(X−2)を得た。
(X−2)はTHF不溶分を含有しておらず、その酸価は10、水酸基価は16、Tgは59℃、Mnは5200、Mpは11400であった。分子量1500以下の成分の比率は1.1%であった。
【0049】
実施例3
(X−1)400部と(X−2)600部をコンティニアスニーダーにて、ジャケット温度150℃、滞留時間3分で溶融混合した。4分間で30℃まで冷却後粉砕してポリエステル樹脂(X−3)を得た。
【0050】
実施例4
(X−2)975部とビスフェノールAジグリシジルエーテル25部をコンティニアスニーダーにて190℃、滞留時間25分で反応させ、室温まで冷却後粉砕して、エポキシ変性ポリエステル樹脂(Y−1)を得た。(Y−1)は、THF不溶分が23%であり、その酸価は2、水酸基価は23、Tgは57℃、Mnは4800、Mpは9100であった。分子量1500以下の成分の比率は1.2%であった。
【0051】
実施例5
(X−2)975部と1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート11部をコンティニアスニーダーにて190℃、滞留時間25分で反応させ、室温まで冷却後粉砕して、ウレタン変性ポリエステル樹脂(Y−2)を得た。(Y−2)は、THF不溶分が3%であり、その酸価は7、水酸基価は12、Tgは56℃、Mnは5400、Mpは9200であった。分子量1500以下の成分の比率は1.0%であった。
【0052】
比較例1
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物430部、ビスフェノールA・PO3モル付加物300部、テレフタル酸257部、イソフタル酸65部、無水マレイン酸10部、および重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2部を10回に分割して入れ、220℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が0.8になった時点で取り出し、室温まで冷却後粉砕して、比較用のポリエステル樹脂(HX−1)を得た。
(HX−1)はTHF不溶分を含有しておらず、その酸価は0.8、水酸基価は13、Tgは59℃、Mnは6600、Mpは19200であった。分子量1500以下の成分の比率は2.1%であった。
【0053】
比較例2
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO3モル付加物723部、テレフタル酸244部、イソフタル酸27部、および重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド1.6部を8分割して入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2になった時点で180℃に冷却し、無水トリメリット酸16部を加え、常圧密閉下2時間反応後取り出し、室温まで冷却後粉砕して、比較用のポリエステル樹脂(HX−2)を得た。
(HX−2)はTHF不溶分を含有しておらず、その酸価は11、水酸基価は17、Tgは59℃、Mnは5000、Mpは10500であった。分子量1500以下成分の比率は2.2%であった。
【0054】
実施例6〜10および比較例3〜4
ポリエステル樹脂(X−1)〜(X−3)、(Y−1)〜(Y−2)、および比較用のポリエステル樹脂(HX−1)〜(HX−2)のそれぞれについて、トナーバインダーとしてのポリエステル樹脂100部、カルナバワックス5部、およびイエロー顔料[クラリアント(株)製toner yellow HG VP2155]4部をヘンシェルミキサ[三井三池化工機(株)製FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I]で分級し、粒径D50が8μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部にコロイダルシリカ[アエロジルR972:日本アエロジル(株)製]0.5部をサンプルミルにて混合して、本発明のトナー(T1)〜(T5)、および比較トナー(HT1)〜(HT2)を得た。ただし、実施例8〔トナー(T3)〕については、着色剤としてイエロー顔料[クラリアント(株)製toner yellow HG VP2155]4部に替えてカーボンブラック[三菱化学(株)製MA100]4部を使用した。
以下の評価方法により評価した結果をを表1に示す。
【0055】
[評価方法]
〔1〕最低定着温度(MFT)
トナー30部とフェライトキャリア(F−150;パウダーテック社製)800部を均一混合し、評価用の二成分現像剤とした。該現像剤を用い市販複写機(AR5030;シャープ製)で現像した未定着画像を、市販複写機(SF8400A;シャープ製)の定着ユニットを改造し熱ローラー温度を可変にした定着機でプロセススピード145mm/secで定着した。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって最低定着温度とした。
〔2〕ホットオフセット発生温度(HOT)
上記GLOSSと同様に定着評価し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視評価した。ホットオフセットが発生した定着ロール温度をもってホットオフセット発生温度とした。
〔3〕トナーの耐ブロッキング性試験
上記〔1〕で作成した現像剤を、50℃・85%R.H.の高温高湿環境下で、48時間調湿した。同環境下において該現像剤のブロッキング状態を目視判定し、さらに市販複写機(AR5030:シャープ製)でコピーした時の画質を観察した。
判定基準
◎:トナーのブロッキングがなく、3000枚複写後の画質も良好。
○:トナーのブロッキングはないが、3000枚複写後の画質に僅かに乱れが観察さ
れる。
△:トナーのブロッキングが目視でき、3000枚複写後の画質に乱れが観察される

×:トナーのブロッキングが目視でき、3000枚までに画像が出なくなる。
〔4〕トナー中の分子量1500以下の成分の量
前記のGPCを用いる方法による。
【0056】
【表1】

【0057】
表1の結果から、本発明のトナーは、良好な低温定着性を有し、高温高湿度下においてもトナーのブロッキングがないことが分かる。また、本発明で使用する重縮合触媒(a)は触媒活性に優れており、前述のようにポリエステル樹脂中の分子量1500以下の低分子量成分が低減できるばかりでなく、触媒失活剤(b)を含有するためトナー化後においても低分子量成分が少ないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のトナーバインダー、およびそれを含有する本発明のトナーは、高温高湿度下でのトナーの耐ブロッキング性と低温定着性とが共に優れるため、静電荷像現像用トナーとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重縮合ポリエステル樹脂からなる静電荷像現像用トナーバインダーであって、該ポリエステル樹脂が、リン化合物のアルミニウム塩から選ばれる少なくとも1種のアルミニウム含有触媒(a)の存在下に形成されてなり、重縮合後に触媒失活剤(b)が添加されてなることを特徴とする静電荷像現像用トナーバインダー。
【請求項2】
(a)がホスホン酸系化合物のアルミニウム塩である請求項1記載の静電荷像現像用トナーバインダー。
【請求項3】
(a)が芳香環構造を有する化合物である請求項1または2記載の静電荷像現像用トナーバインダー。
【請求項4】
(a)が下記一般式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか記載の静電荷像現像用トナーバインダー。
[式(1)中、R1は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、または、水酸基もしくはハロゲン基もしくはアルコキシル基もしくはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、または、水酸基もしくはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、または、水酸基もしくはアルコキシル基もしくはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。pは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、p+mは3である。nは1以上の整数を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を含んでいてもよい。]


[ R1−(CH2)n−P−O- ]p Al3+ (R3-)m (1)

OR2
【請求項5】
(b)がリン系のプロトン酸である請求項1〜4のいずれか記載の静電荷像現像用トナーバインダー。
【請求項6】
(b)の存在下、2種以上のポリエステル樹脂がそれらの軟化点以上で溶融混合されてなるポリエステル樹脂からなる請求項1〜5のいずれか記載の静電荷像現像用トナーバインダー。
【請求項7】
該ポリエステル樹脂の少なくとも一部がポリエポキシド(c1)および/またはポリイソシアネート(c2)で変性されてなる請求項1〜6のいずれか記載の静電荷像現像用トナーバインダー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の静電荷像現像用トナーバインダー(A)と着色剤(B)を含有する静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
さらに、離型剤(C)、荷電制御剤(D)、および流動化剤(E)から選ばれる1種以上の添加剤を含有する請求項8記載の静電荷像現像用トナー。

【公開番号】特開2006−38954(P2006−38954A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214831(P2004−214831)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】