説明

トナー供給ローラおよびその製造方法

【課題】本発明は、高温高湿下での圧縮永久歪、及びトナー掻き取り性に優れたトナー供給ローラおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】芯金と、該芯金の周りにポリウレタンフォーム層とを有するトナー供給ローラであって、該ポリウレタンフォーム層の赤外吸収スペクトルは、ウレタン結合に起因する波数1720cm-1における吸光度をaとし、ウレア結合に起因する波数1650cm-1における吸光度bをとした場合、該ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μm以内の表面側の深度部位において、a/b<1.0であり、かつ、ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μmよりも深い該芯金側の深度部位において、a/b>1.0であることを特徴とするトナー供給ローラ。およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に用いることのできるトナー供給ローラおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術の進歩に伴い、乾式電子写真装置等の画像形成装置には、帯電用、現像用、転写用、トナー供給用などに供される部品の部材として、ゴム弾性を有する高分子材料を含む部材が注目されている。その部材は、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ等のローラの形態で用いられている。
【0003】
近年、画像をデジタル化して扱うコンピュータなどでの画像の需要が増している。それに伴い、より高精細、高品位な画像が要求され、さらにはカラー画像と電子写真画像の改良が求められている。これらの目的に使用されるゴム弾性を有する高分子材料からなる部材には、通常ゴム、またはポリウレタンなどの高分子エラストマーやフォームが用いられる。また、トナーへのストレス低減や再生画像の画質向上のために低硬度の発泡弾性体材料、特にはポリウレタンフォームの適用が増加してきている。ポリウレタンフォームをトナー供給ローラなどの画像形成装置用弾性部材の用途に供する場合、以下の点が求められる。即ち、低硬度であると同時に、表面セルの開口が良いこと、外形の寸法精度が良いこと、表面の毛羽立ち、キズ、ボイドなどがないこと、および低コストであることが要求される。
【0004】
ローラ表面にセルが開口したローラ製造において、煩雑な工程を要することなくトナー供給ローラを提供する方法として、一体成形後のローラ表面に対する後加工を要しないポリウレタンフォーム製ローラの製造方法が提案されている。具体的には、以下のトナー供給ローラの製造法が提案されている(特許文献1参照)。成形キャビティを与える型内面に弗素樹脂コーティング層を形成すると共に、かかる弗素樹脂コーティング層表面の表面粗さ:Rzが5〜20μmとなるように加工してなる成形型を用い、軟質ポリウレタンスポンジ層を形成する製造法である。
【0005】
しかしながら、ポリオールと、ポリイソシアネートとを主成分として形成されたポリウレタンフォーム製トナー供給ローラは、以下の現象が起こる場合があった。即ち、成形物の強度や伸びが小さいために、トナー供給ローラを金型から脱型する際に、ポリウレタンフォームが欠落(裂け、欠け)してしまう場合があった。
【0006】
前記ポリウレタンフォームの強度低下を防ぐために、以下の方法により、トナー供給ローラを金型から脱型する際のポリウレタンフォームの欠落(裂け、欠け)を防止することが一般的に知られている。その方法とは、高分子量ポリオールや低官能基数ポリオールを使用することでポリウレタンフォームの強度や伸びを向上させる方法である。しかし、前記高分子量ポリオールや低官能基数ポリオールを使用することで、ポリイソシアネートとの反応が遅くなる場合があり、さらには、高温高湿下での圧縮永久歪が増加する場合があった。
【0007】
また、トナー供給ローラは、現像ローラに対しトナーの供給と掻き取りを同時に行うものである。近年、現像ローラに当接した際の高温高湿下での圧縮永久歪の抑制と、現像ローラ上の不要トナーの掻き取り性が、特に要求されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第03881719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、高温高湿下での圧縮永久歪、およびトナー掻き取り性に優れたトナー供給ローラおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための、本発明は、以下の通りである。
芯金と、該芯金の周りにポリウレタンフォーム層とを有するトナー供給ローラであって、該ポリウレタンフォーム層の赤外吸収スペクトルは、ウレタン結合に起因する波数1720cm-1における吸光度をaとし、ウレア結合に起因する波数1650cm-1における吸光度をbとした場合、該ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μm以内の表面側の深度部位において、a/b<1.0であり、かつ、該ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μmよりも深い該芯金側の深度部位において、a/b>1.0であることを特徴とするトナー供給ローラ。
前記トナー供給ローラを製造する方法であって、(1)成形金型の内表面に水系離型剤を塗布する工程と、(2)少なくとも以下に示す成分(A)と、成分(B)とを含むポリウレタン材料を、該成形金型内で発泡硬化させることにより、該水系離型剤中の水と該ポリウレタン材料中の成分(B)とが反応硬化して、ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μm以内の表面側の深度部位にのみウレア結合が連鎖生成することを特徴とするトナー供給ローラの製造方法。
成分(A):末端にエチレンオキシドユニットを有する共重合体であって、該共重合体の質量平均分子量に対する末端のエチレンオキシドユニットの含有量が5質量%以上、かつ質量平均分子量が3000以上5000以下のポリエーテルポリオール。
成分(B):トルエンジイソシアネートおよびその誘導体の合計質量の、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその誘導体の合計質量に対する比が、95対5から70対30であるポリイソシアネート。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温高湿下での圧縮永久歪、およびトナー掻き取り性に優れたトナー供給ローラおよびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】トナー供給ローラの一例の斜視説明図である。
【図2】トナー供給ローラ(ポリウレタンフォーム層)の硬度の測定方法を示す説明図であって、(a)は正面説明図、(b)は側面説明図である。
【図3】トナー供給ローラ(ポリウレタンフォーム層)の湿熱永久歪の測定方法を示す説明図であって、(a)は正面説明図、(b)は側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ポリウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラに関する。トナー供給ローラは、複写機やプリンター、ファクシミリ等の画像形成装置において、感光体や紙等の画像形成体にトナー(現像剤)を供給してその表面に可視画像を形成する現像ローラに対しトナーを供給するために用いられる。
【0014】
本発明のトナー供給ローラは、芯金と、芯金の周りにポリウレタンフォーム層とを有する。また、ローラ形状を与える成形金型内でのポリウレタン材料の発泡成形によって、芯金の周りにポリウレタンフォーム層が芯金と一体的に成形してなるトナー供給ローラであることができる。
前記ポリウレタンフォーム層の赤外吸収スペクトルは、ウレタン結合に起因する波数1720cm-1における吸光度をaとし、ウレア結合に起因する波数1650cm-1における吸光度をbとした場合、以下の通りである。すなわち、ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μm以内の表面側の深度部位において、a/b<1.0である。また、ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μmよりも深い芯金側の深度部位において、a/b>1.0である。すなわち、ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μmの位置を境に、ポリウレタンフォーム層中のウレア結合に対するウレタン結合の比が変化する。具体的には、深さ450μmの位置を含み、それより表面側のポリウレタンフォーム層(深さ0μm以上450μm以下のポリウレタンフォーム層)では、相対的にウレア結合が多く、a/b<1.0となる。また、深さ450μmよりも深い芯金側のポリウレタンフォーム層(深さ450μmを超えるポリウレタンフォーム層)では、相対的にウレタン結合が多く、a/b>1.0となる。
なお、ポリウレタンフォーム層の深さ方向におけるウレア結合およびウレタン結合の分布は、深さ450μmの境界以外では急に変化すること、即ちa/bが1.0より大きくなったり、小さくなったりすることはない。このため、本発明に用いるポリウレタンフォーム層の要件を満たしているかは例えば以下のように判定できる。すなわち、まず、カッターなどの切断手段を用いて、ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μm付近の深さ方向の少なくとも2点の位置(好ましくは、深さ450μmの位置、および深さ451μmの位置)の赤外線吸収スペクトルを測定する。そして、上記吸光度の比(a/b)をそれぞれ算出し、深さ450μmを境に表面側のポリウレタンフォーム層ではa/b<1.0、芯金側のポリウレタンフォーム層ではa/b>1.0になっていることを確認すれば良い。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
〈トナー供給ローラ〉
図1はトナー供給ローラの一例を示す斜視図である。図1に示すように、トナー供給ローラ1は、円柱状の芯金2と、芯金2の両端部を除いて芯金2の周りに設けられたポリウレタンフォーム層3とを備える。なお、トナー供給ローラのポリウレタンフォーム層の硬度は150g/mm以上200g/mm以下であることが好ましい。硬度が前記範囲にあることで、不要トナーの掻き取り性に優れるばかりでなく、トナー供給ローラの硬さによるトナー劣化を特に生じ難い。また、高温高湿下でのポリウレタンフォーム層の圧縮永久歪量は、130μm以下であることが好ましい。
【0016】
(芯金)
芯金2は、従来のトナー供給ローラ用の芯金を用いることができ、外径は2mm以上、10mm以下が好ましい。前記芯金の材質は適宜選択することができ、芯金としては、例えば硫黄快削鋼などの鋼材にニッケルなどのメッキを施した金属部材、アルミニウム、ステンレス鋼、マグネシウム合金などの金属部材が挙げられる。
【0017】
(ポリウレタンフォーム層)
また、ポリウレタンフォーム層3は、表面に内部に連通した複数のセル開口部を有することができる。ポリウレタンフォーム層の厚さは1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上6mm以下であることがより好ましい。厚さが1mm以上10mm以下であることによってトナー供給ローラは、より良好なトナー搬送性を有するようになる。前記トナー供給ローラは、前記芯金とポリウレタンフォーム層との間に、接着層や弾性層等を必要に応じて有していても良い。
【0018】
前記トナー供給ローラは、水系離型剤をトナー供給ローラ成形金型の内表面に塗布し、ポリウレタンフォーム材料を金型内で発泡硬化させたものであることができる。前記トナー供給ローラの表面セル開口は、金型に塗布された離型剤膜の撥水性とポリウレタンフォーム材料の発泡圧により、表面近傍の開口セルの破膜により生じるものである。
【0019】
〈トナー供給ローラのポリウレタンフォーム層形成用材料(ポリウレタン材料)〉
本発明に用いるポリウレタンフォーム層は、少なくともポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネートとを含むポリウレタン材料から形成されたものであることができる。以下、トナー供給ローラのポリウレタンフォーム層を製造する際に用いられる各成分について説明する。
【0020】
(ポリエーテルポリオール)
ポリウレタンフォーム層に使用されるポリエーテルポリオールは、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、また、シュークローズ、グルコース等のシュガー系アルコール、ビスフェノールA、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等のような、活性水素を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、グリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のモノマーの1種または2種以上を、公知の方法により付加することによって製造することができる。
これらのうち、上記開始剤と、少なくともエチレンオキシドとを用いて合成したポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。また、ポリエーテルポリオールは、末端にエチレンオキシドユニットを有する共重合体であることが好ましい。なお、末端に付加させたエチレンオキシド(エチレンオキシドユニット)の含有量が全体(ポリエーテルポリオールの質量平均分子量)の5質量%以上であると適度なウレタン化反応速度を容易に得ることができる。また、脱型時に十分な強度をもったポリウレタン成形品を容易に製造することができる。エチレンオキシドユニットとは、―C24O−を意味し、ポリエーテルポリオールの末端では、−C24O−Hとなる。
【0021】
エチレンオキシドは、ポリエーテルポリオールの末端に全体(ポリエーテルポリオールの質量平均分子量)の5質量%以上含有していることが好ましい。エチレンオキシドを末端に付加することで末端水酸基中の一級水酸基の割合が高まり、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとの反応(ウレタン化反応)を促進し、脱型時に十分な強度をもったポリウレタンを容易に成形することが可能となる。なお、エチレンオキシドはポリエーテルポリオールの末端にポリエーテルポリオールの質量平均分子量に対して50質量%以下含有することが好ましい。
【0022】
また、前記ポリエーテルポリオールの質量平均分子量は3000以上5000以下であることが好ましい。質量平均分子量が3000以上であると、架橋が密になること、および高硬度化することを容易に防ぐことができる。一方、質量平均分子量が5000以下であると、分子量の長さによるポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとの反応速度の低下を容易に防ぐことができる。これにより、ポリウレタン量の低下、およびポリウレア量の増加を容易に防ぐことができ、高温高湿下での圧縮永久歪が低下することを容易に防ぐことができる。前記ポリエーテルポリオールの質量平均分子量がこれらの範囲内にあることによって、トナー供給ローラとしての使用に好適な硬度を有し、高温高湿環境下での圧縮永久歪が向上したポリウレタンフォームを容易に得ることができる。
本発明において、前記ポリエーテルポリオールは、単独で、または二種以上を組み合せて用いても良い。なお、ポリエーテルポリオールを複数併用した場合、ポリエーテルポリオールの質量平均分子量およびエチレンオキシドユニットの含有量は、配合比率より特定(算出)することができる。また、所望により、質量平均分子量3000未満のポリエーテルポリオール、質量平均分子量5000を超えるポリエーテルポリオール、その他のポリオールとして、ポリエステルポリオールなどを併用することが出来る。
【0023】
(ポリイソシアネート)
ポリウレタンフォーム層に使用されるポリイソシアネートとしては、特に制限は無く、従来公知の各種ポリイソシアネートの中から、適宜選択して使用することができる。ポリイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、およびカーボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等が挙げられ、これらの誘導体も用いることができる。なお、これらのポリイソシアネートを1種または2種以上用いることができる。
前記誘導体としては、例えば、これらの、多核体、ポリオールなどで変性したポリウレタン変性物、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、ウレトイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物などを挙げることができる。これらのポリイソシアネートの中で、TDIおよびMDIおよびその誘導体をポリイソシアネートの主成分として用いて製造したトナー供給ローラは、低硬度化、高温高湿下での耐久性がより向上するので好適である。
上述したように、本発明において、TDIやMDIなどの芳香族ポリイソシアネートやその誘導体は、単独で、または二種以上を組み合せて用いても良い。また、所望により、本発明の目的が損なわれない範囲で、前記TDIやMDIなどの芳香族ポリイソシアネート及びその誘導体とともに、以下のものを併用することができる。ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート及びその誘導体。
【0024】
具体的にはトルエンジイソシアネート(TDI)及びその誘導体の合計質量の、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びその誘導体の合計質量に対する比が、95対5から70対30であるポリイソシアネートが好ましい。前記TDIおよびその誘導体の合計質量比が95以下であれば、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応速度の低下による硬化時間の長期化を容易に防ぐため、作業上好ましい。一方、TDIおよびその誘導体の合計質量比が70以上であると、MDIの比率が高まることによるローラの高硬度化を容易に防ぐ。
【0025】
ゆえに、本発明のトナー供給ローラに用いるポリウレタン材料は、少なくとも以下に示す成分(A)と、成分(B)とを含むポリウレタン材料であることが好ましい。
成分(A)とは、末端にエチレンオキシドユニットを有する共重合体であって、前記共重合体の質量平均分子量に対する末端のエチレンオキシドユニットの含有量が5質量%以上、かつ質量平均分子量が3000以上5000以下のポリエーテルポリオールである。
成分(B)とは、トルエンジイソシアネートおよびその誘導体の合計質量の、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその誘導体の合計質量に対する比が95対5から70対30であるポリイソシアネートである。
さらに、ポリウレタン材料は、成分(A)および成分(B)の他に、水、整泡剤、触媒およびその他の添加剤を含有することができる。以下にこれらについて説明する。
【0026】
(水)
ポリエーテルポリオール及びポリイソシアネートとともに必要に応じて用いることのできる発泡剤としての水は、使用するポリオール(ポリエーテルポリオールとその他ポリオール)100質量部に対して、1.0質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。さらに、1.4質量部以上1.7質量部以下がより好ましい。この「ポリオール100質量部」とするときの基準となるポリオールとは、ポリウレタンフォーム層形成のために材料として使用した全てのポリオールを示す。例えば、本発明に用いるポリウレタン発泡成形用材料としてプレポリマーを使用した場合、前記プレポリマー製造のために使用したポリオールも基準となるポリオールとして換算する。
【0027】
また、水以外の発泡剤、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、メチレンクロライド、トリクロロフルオロメタン、二酸化炭素などを単独で、または二種以上を混合して使用することもできる。
【0028】
(整泡剤)
また、前記ポリエーテルポリオールおよびポリイソシアネートと共に用いることのできる整泡剤としては、以下のものが挙げられる。ポリジメチルシロキサンとエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合物とから合成した水溶性ポリエーテルシロキサン、スルホン化リシノール酸のナトリウム塩、およびこれらとポリシロキサン・ポリオキシアルキレンコポリマーとの混合物など。この中でもポリエーテルポリオール系整泡剤としては、水溶性ポリエーテルシロキサンが好ましい。これらの整泡剤は単独でまたは複数種を使用することができる。
【0029】
本発明に用いるポリウレタンフォーム層は、ホットモールドフォームとすることができる。ホットモールドフォームは、一般的に、スラブフォームに比べてゲル化が速い傾向があり、型にオーバーパックされることからフォームの通気性が低くなる傾向にある。このため、スラブフォーム用の整泡剤と基本的には類似しているが、やや整泡力が弱くフォームの通気性を高くする整泡剤を用いることが好ましい。また、本発明に用いるポリウレタンフォーム層は、高弾性フォームとすることができる。一般的に、高弾性フォームは系の粘度が高く、反応性が高いことから、通常の軟質フォーム用整泡剤を使用すると泡が非常に安定化する傾向があり、連通化度が低下してフォームの収縮を生じる場合がある。このため、整泡剤としては分子量の小さいコポリマーを用いることが好ましい。また、ポリエーテル鎖の代わりに有機官能基を付加した整泡剤を使用することが好ましい。
【0030】
(触媒)
ポリウレタンフォーム層に使用できる触媒としては、トナー供給ローラの分野で公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、アミン系触媒として1,2−ジメチルイミダゾール、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−オクタデシルモルホリン、ジエチレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス〔2−(N.N−ジメチルアミノ)エチル〕エーテル、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、トリエチレンジアミンの塩類、第一及び第二アミンのアミノ基のオキシアルキレン付加物、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、N,N−ジアルキルピペラジン類のようなアザシクロ化合物、種々のN,N’,N’’−トリアルキルアミノアルキルヘキサヒドロトリアミン類等が挙げられる。有機金属系ウレタン化触媒としては、酢酸錫、オクチル酸錫、オクテタン酸錫、オレイン酸錫、ラウリン酸錫、ジブチル錫ジクロリド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。更には、前記アミン系触媒及び有機金属系触媒の初期活性を低下させた有機酸塩触媒(カルボン酸塩やホウ酸塩等)などが挙げられる。これらの触媒は、単独で、または複数を混合して使用することができる。
【0031】
(その他の助剤)
その他助剤としてポリマーポリオール(商品名:三井武田ケミカル)、架橋剤、難燃剤、着色剤、老化防止剤、酸化防止剤などを必要に応じて使用することができる。
前記ポリマーポリオールとは、ポリエーテルポリオール中でそのポリエーテルポリオールの少なくとも一部をエチレン性不飽和単量体と重合させることにより変性したものである。前記ポリマーポリオールを一部併用することによりフォームの湿熱耐久性を低下させることなく、通気性向上、硬度向上などを容易に図ることができる。エチレン性不飽和単量体は、適宜選択して使用することができるが、例えば、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸メチル、塩化ビニリデンなどが挙げられ、これらの重合体は通常直径0.1μm以上10μm以下の微粒子状で分散されている。
【0032】
前記架橋剤としては、例えば、アルキレングリコール、1,4−ブタンジオール(1,4BD)などのジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン(TMP)などのトリオール類、ペンタエリスルトールなどのテトラオール類、エチレンジアミン(EDA)などのジアミン類、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)などのアミノアルコール類などが挙げられる。これらを、単独、又は複数混合して使用することができる。
【0033】
(NCOインデックス)
ポリウレタン材料のNCOインデックスは90以上110以下であることが好ましく、95以上105以下であることがより好ましい。なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート(NCO)基の総数をイソシアネート基と反応するポリオールの活性水素基の総数で除したものに100を乗じた値とする(NCOインデックス=NCO基数/活性水素基数×100)。即ち、イソシアネート基と反応する活性水素数とポリイソシアネート中のイソシアネート基とが化学量論的に等しい場合にそのNCOインデックスは100となる。つまり、NCOインデックスが100の場合、ポリオールとポリイソシアネートが等価であることを示す。
ポリウレタン材料のNCOインデックスが90以上であると、未反応ポリエーテルポリオールの部材からの染み出しを特に抑制し、他部材への汚染を容易に防ぐことができる。一方、NCOインデックスが110以下であると、高硬度化によるトナー供給ローラのスポンジ(ゴム)性の損失を容易に防ぎ、トナー劣化起因の画像弊害の発生を容易に防ぐことができる。
【0034】
〈トナー供給ローラ成形用金型〉
本発明に用いるトナー供給ローラ成型用金型の材質、形状は特に限定されず、従来公知の材質、形状の中から適宜選択して使用することが出来る。前記トナー供給ローラ用成形金型内表面には、水系離型剤を塗布することが好ましい。これにより、ポリウレタン材料を成形金型内で発泡硬化させることにより、前記水系離型剤中の水とポリウレタン材料中のポリイソシアネート(好ましくは、成分(B))とが反応硬化し、トナー供給ローラ表面近傍にのみウレア結合を生成させることができる。前記水系離型剤の塗布方法は従来公知の方法を用いれば良く、例えばトナー供給ローラ成形金型に浸漬、吹付、刷毛塗り等により、あるいはエアゾール化して噴射、布に浸み込ませて塗り付けることにより塗布して、媒体を蒸発除去すればよい。
【0035】
〈水系離型剤の調整〉
水系離型剤は、ワックス、シリコーンオイル、水からなることができ、さらに水系離型剤はエマルション(水分散液)の形態で使用することができる。水系離型剤の各成分の配合、乳化(エマルション化)の手順は従来公知の方法で行うことができる。
【0036】
前記水系離型剤の各成分において、ワックスは離型性を付与し、シリコーンオイルは表面セルの均一開口を付与するものである。前記水系離型剤のワックス、シリコーンオイルは、好ましくは各々別々に、さらに、これらをそれぞれ複数種類ずつ用いる場合は、その種類毎に乳化した後混合する。このようにすることにより、例えばワックスおよびシリコーンオイルをそれぞれ2種以上用いる場合、最初からこれらを混合して乳化した場合と比較して、各々の成分の特徴を顕著に得ることができ、トナー供給ローラの表面セル開口がより安定となる。
【0037】
なお、水系離型剤固形分濃度は、1質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。前記固形分濃度が1質量%以上であると、金型表面への離型剤の塗着性が低下することを容易に防ぐことができるため、トナー供給ローラ表面の開口性が低下することを容易に防ぐことができる。また、前記固形分濃度が10質量%以下であると、金型表面へ離型剤が多く塗着することを容易に防ぐことができるため、成形後に不要離型剤を除去し難くなることを容易に防ぐことができる。これにより、表面の開口が不安定になることを容易に防ぐことができる。
【0038】
離型剤の固形分濃度を前記範囲に設定し、水系離型剤の膜厚を1μm以上5μm以下とすることが好ましい。これにより、表面の開口安定性に優れ、高温高湿下での圧縮永久歪、およびトナー掻き取り性に優れたトナー供給ローラを容易に得ることが出来る。
また、水系離型剤は、ワックス、シリコーンオイルおよび水の他に、界面活性剤および各種添加剤を含むこともできる。
【0039】
前記水系離型剤のエマルション粒子の粒径は2μm以下であることが好ましい。前記粒径が2μm以下であると、前記水系離型剤の乳化状態がより安定化し、分離し易くなることを特に防ぎ、トナー供給ローラ成形金型表面に構成成分を均一に塗布することが容易にでき、優れたトナー供給ローラの表面性を有することができる。
以下、水系離型剤を構成する各成分について説明する。
【0040】
(ワックス)
ワックスは従来公知の各種ワックスの中から適宜選択して使用することができる。ワックスとしては、例えば、酸化ワックス、ポリエチレンワックス、天然ワックス、パラフィンワックス、脂肪族カルボン酸塩などを使用できる。前記ワックスは、一種で使用しても良く、二種以上を組み合せて使用しても良い。
前記ワックスの融点は、トナー供給ローラ成形時の金型温度以上にすることが好ましい。金型温度以上の融点とすることにより、(ワックス溶融による)ポリウレタンの異常発泡をより生じ難くすることができる。
【0041】
(シリコーンオイル)
シリコーンオイルは従来公知の各種シリコーンオイルの中から適宜選択して使用することができる。シリコーンオイルとしては、例えば、側鎖にアルキル基、フォニル基、又はフルオロアルキル基を有するポリシロキサン等を使用できる。これらのシリコーンオイルは、一種で使用しても良く、二種以上を組み合せて使用してもよい。また、これらのシリコーンオイルは添加剤、例えば、シリコーン樹脂等を含有していてもよい。
前記シリコーンオイルは、トナー供給ローラの表面セルを微細に均一開口させるためのものであり、安定した表面セル開口性を容易に得ることができる。
【0042】
(界面活性剤)
水系離型剤成分を乳化分散する界面活性剤(乳化剤、分散剤)は特に制限は無く、従来公知の各種界面活性剤の中から、適宜選択して使用することができる。界面活性剤は、1種、または2種以上を組み合せて用いても良い。
界面活性剤は非イオン性界面活性剤およびイオン性界面活性剤から選択される1種、または2種以上を使用することが好ましい。これらの界面活性剤を使用することによって、より安定してトナー供給ローラ成形金型用水系離型剤成分を水中に溶解、分散等させることができる。
界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値として、HLB値(親水親油バランス)がある。HLB値は0以上20以下の値で、0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高くなる。HLB値は、計算によって決定する方法がいくつか提案されている。例えば、グリフィン法では以下のように定義される。
【0043】
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量
これら界面活性剤のHLB値は1以上、19以下のものが好ましい。界面活性剤のHLB値が1以上であれば、容易に界面活性剤を水に適度に分散させることができる。また、界面活性剤のHLB値が19以下であると、水滴が油に分散する油中水滴型(O/W)エマルションとなることを容易に防ぎ、容易に水中に均一に分散することができる。界面活性剤のHLB値は、3以上、16以下であるとより好ましい。
【0044】
非イオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタンモノアルキレート、ソルビタントリアルキレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレート、ポリオキシエチレンソルビタントリアルキレート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラアルキレート、グリセロールモノアルキレートなどが例示される。
【0045】
また、イオン性界面活性剤としてはアニオン性、カチオン性および両イオン性のものがある。アニオン性界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルリン酸カリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが、例示される。
【0046】
カチオン性界面活性剤としてはセチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルアミン塩酸塩、ココナットアミン塩酸塩、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライドなどが例示される。
【0047】
さらに、両イオン性界面活性剤としてはN−アシルアミドプロピル−N、N−ジメチルアンモニオベタイン類、N−アシルアミドプロピル−N、N’−ジメチル−N’−β−ヒドロキシプロピルアンモニオベタイン類などが例示される。
【0048】
前記水系離型剤固形分中の界面活性剤の含有量は0.5質量%以上、30質量%以下の範囲であることが好ましく、1質量%以上、20質量%以下の範囲であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が水系離型剤中に0.5質量%以上であると、乳化分散を容易にでき、適度な粒径を容易に得ることができる。界面活性剤の含有量が30質量%以下であると、適度な乳化組成物の粘度を容易に得ることができ、作業性がより向上する。
【0049】
(その他助剤)
前記水系離型剤は、上記成分の他に、乳化分散助剤や、フッ素系化合物など、必要に応じて他の添加剤を適時使用することができる。
【0050】
乳化分散助剤としては、乾燥性がよい低沸点の水性の極性有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、および2−ブタノン等を適宜使用することができる。
【0051】
また、フッ素系化合物としては、例えばフッ素処理された低分子量ポリオレフィンもしくはオレフィンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、低分子量オレフィンとポリテトラフルオロエチレンとの溶融混合物、パーフルオロアルケニルアリールエーテルのスルホン酸塩およびホスホン酸誘導体、フッ素スルホン酸塩およびホスホン酸塩、フッ素を含有する縮合多環化合物(例えばフッ素化ピッチ)などが挙げられ、これらの1種、又は2種以上のものを組み合せて用いても良い。
【0052】
前記水系離型剤にはワックスのレベリング性向上のために適当な有機溶剤、例えばシクロヘキサン等を適宜配合してもよい。また、水系離型剤には、前記の成分以外に必要に応じて、酸化防止剤、アルコール、石油系溶剤、防錆剤、防腐剤、消泡剤、増粘剤等の他の添加剤を適宜添加することができる。
【0053】
〈トナー供給ローラの製造方法〉
本発明のトナー供給ローラを製造する方法として、例えば、以下の工程を有する製造方法を挙げることができる。
(1)トナー供給ローラ用成形金型の内表面に水系離型剤を塗布する工程。
(2)少なくともポリエーテルポリオール(好ましくは成分(A))と、ポリイソシアネート(好ましくは、成分(B))とを含むポリウレタン材料を、前記成形金型内で発泡硬化させる工程。具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート、ならびに所望により用いられる水、整泡剤、触媒およびその他助剤などを均質に混合して、ポリウレタン材料を調製する。このポリウレタン材料を前記成形金型内で発泡硬化させる。これにより、水系離型剤中の水とポリウレタン材料中のポリイソシアネート成分とが反応硬化する。
【0054】
前記製造方法により、ポリウレタンフォーム層の表面近傍(すなわち、ポリウレタンフォーム層のうちの最表面から深さ450μmの位置までの部分)にのみウレア結合が連鎖生成する。これにより、前記表面近傍に、連鎖したウレタン結合(ポリウレタン結合)に対して連鎖したウレア結合(ポリウレア結合)を多く有するトナー供給ローラを製造することができる。このポリウレタンフォーム層の赤外吸収スペクトルは、波数1720cm-1のウレタン結合の吸光度をaとし、波数1650cm-1のウレア結合の吸光度をbとした場合、以下の通りである。即ち、ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μm以内の表面側の深度部位において、a/b<1.0であり、かつ、ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μmよりも内側(芯金側)の深度部位(深い深度部位)において、a/b>1.0である。なお、ポリウレタンフォーム層の赤外吸収スペクトルは、フーリエ変換型赤外分光 (FT-IR)により測定することができる。トナー供給ローラ成形金型の内表面に水系離型剤を塗布する際は、水系離型剤の膜厚を1μm以上5μm以下にすることが好ましい。
【0055】
例えば、以下の方法により、前記水系離型剤はトナー供給ローラ成形金型表面に対して1μm以上5μm以下の膜厚を形成することができる。すなわち、固形分濃度を5質量%に調整した水系離型剤をトナー供給ローラ成形金型にスプレー塗布し、その後、前記水系離型剤のトナー供給ローラ成形金型に定着しない不要分をエアブローで除去する方法である。前記水系離型剤膜中には水が分散されており、この水がポリウレタンフォーム層の最表面側から深さ450μmの深度部位にまでポリウレタンフォーム内部に徐々に浸透する。そして、その浸透した水とポリウレタンフォーム材料中のポリイソシアネート成分とが反応硬化し、ウレア結合を連鎖生成する。
【0056】
前記水系離型剤膜はトナー供給ローラの成形性(脱型、表面性)に影響するだけでなく、トナー供給ローラ最表面のウレア結合の連鎖生成に大きく影響する。例えば、前記水系離型剤膜厚が1μm以上であると、塗布した水系離型剤中に適度な水分を容易に有することができ、ポリウレタンフォーム内部へその水を浸透させ、適度な量のウレア結合を容易に形成することができる。これにより、最表面にウレア結合の多いポリウレタンフォーム層を容易に形成することができる。さらに、優れたトナー掻き取り性を得ることができ、画像弊害の発生を容易に防ぐことができる。
【0057】
また、前記水系離型剤膜厚が5μm以下であると、水系離型剤中の水がトナー供給ローラ最表面から450μmの深度部位を超えて浸透することを容易に防ぐことができる。これにより、トナー供給ローラのポリウレタンフォーム層中の適度なウレア結合比率を容易に得ることができ、高温高湿下で圧縮永久歪を特に抑制することができる。
【0058】
すなわち、以下の条件を満たすトナー供給ローラは、高温高湿下での圧縮永久歪、及びトナー掻き取り性に優れる。それは、ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μm以内の表面側の深度部位においては相対的にウレア結合が多く、450μmよりも深い芯金側の部位においては相対的にウレタン結合が多いことである。
【0059】
前記ポリウレタン材料を混合する際の温度や時間については適宜選択することができる。しかし、混合温度は、通常10℃以上90℃以下が好ましく、より好ましくは20℃以上60℃以下の範囲であり、混合時間は、通常1秒以上10分以下が好ましく、より好ましくは3秒以上5分以下である。
【0060】
また、ポリウレタン材料を加熱して反応硬化させる際、従来公知の方法で発泡させることにより、ポリウレタンフォームからなるトナー供給ローラを作製することができる。発泡方法については特に制限は無く、発泡剤を用いる方法、機械的な撹拌により気泡を混入する方法など、いずれの方法をも用いることができる。発泡時の成形型の温度は60℃以上100℃以下にすることが好ましく、60℃以上80℃以下にすることがより好ましい。なお、発泡倍率は適宜定めれば良く、特に制限はない。
【0061】
本発明のトナー供給ローラはこのようにして得られたポリウレタンフォームを用いたものである。用途によっては、導電性や半導電性、あるいは絶縁性の塗料により、ポリウレタンフォーム層の外側を塗装してもよい。本発明のトナー供給ローラの外径は適宜設定することができ、その目的によりさまざまな外径を有するものとすることが出来る。しかし、一般的には10mm以上、20mm以下の外径を有することが好ましい。芯金とポリウレタンフォームとの接合方法については特に限定されないが、芯金を予めモールド(成形型)内部に配置し、ポリウレタン材料を注型し硬化する方法や、ポリウレタンフォームを所定の形状に成形した後接着する方法などを用いることが出来る。どちらの方法においても、必要に応じて芯金とポリウレタンフォームの間に接着層を設けることが出来る。この接着層としては、接着剤やホットメルトシートなどの公知の材料を用いることが出来る。
【実施例】
【0062】
以下、実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0063】
[実施例1〜5、比較例1〜5]
まず、以下の材料をNCOインデックスが100となるように25℃で混合攪拌し、ポリウレタン材料を調製した。
表1および表2に示す質量部のポリエーテルポリオール及びポリイソシアネート。
水1.6質量部。
SZ1336(商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製シリコーン整泡剤)1質量部。
TOYOCAT−ET(商品名、東ソー株式会社製第3級アミン触媒)0.1質量部。
Dabco−33LV(商品名、エアプロダクツ株式会社製第3級アミン触媒)0.3質量部。
次いで、このポリウレタン材料を、以下に示す組成の材料を水で固形分濃度5質量%に調整した水系離型剤を塗布したトナー供給ローラ成形金型(材質:(ステンレス鋼)SUS304製)にて、70℃で10分間、発泡硬化した。なお、成形金型表面に塗布した水系離型剤の膜厚は、2μmであった。
(水系離型剤・固形分濃度5質量%中の成分比)
FT−0070(商品名、日本精鑞製ポリエチレンワックス、融点72℃)・・・42質量%。
Wax−LP(商品名、ヘキスト製脂肪族カルボン酸塩)・・18質量%。
KF−4917(商品名、信越化学工業製シリコーンオイル)・・・・・・・・・40質量%。
これにより図1に示すような芯金2(材質鉄製、Φ(直径)5mm)の周りに、ポリウレタンフォーム層3(厚さ4mm、長さ220mm)を芯金2と一体的に形成してなる、芯金を除いた成形品の質量が3.0g、外径13mmのトナー供給ローラを製造した。このトナー供給ローラの後述する高温高湿環境下での圧縮永久歪、及びポリウレタンフォーム層最表面と内部のポリウレア比率を測定し、画像評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
なお、表1および表2中の1)から17)は以下のものを示す。
1)商品名、三井化学(株)製ポリエーテルポリオール。質量平均分子量3000、エチレンオキシドユニットを20質量%末端に含有する(OH価=54mgKOH/g)。
2)商品名、三井化学(株)製ポリエーテルポリオール。質量平均分子量5000、エチレンオキシドユニットを15質量%末端に含有する(OH価=34mgKOH/g)。
3)商品名、三井化学(株)製TDI/MDI混和物(NCO=45%、TDI/MDI=80/20(質量比))。
4)商品名、三井化学(株)製TDI(NCO%=48)。
5)商品名、三井化学(株)製MDI(NCO%=31)。
【0067】
6)使用したポリエーテルポリオール(複数種類用いた場合は、複数種類からなるポリエーテルポリオール)の質量平均分子量を計算したもの。例えば、質量平均分子量3000のポリエーテルポリオール50質量%と、質量平均分子量5000のポリエーテルポリオール50質量%を混合した場合には、3000×0.5+5000×0.5=4000となる。
【0068】
7)使用したポリエーテルポリオール(複数種類用いた場合は、複数種類からなるポリエーテルポリオール)の換算質量平均分子量中の末端のエチレンオキシドユニットの含有量を計算したもの。例えば、末端エチレンオキシド含有量15質量%のポリエーテルポリオール50質量%と、末端エチレンオキシド含有量20質量%のポリエーテルポリオール50質量%を混合した場合には、15×0.5+20×0.5=17.5(質量%)となる。
【0069】
8)使用したポリイソシアネート(複数種類用いた場合は、複数種類からなるポリイソシアネート)中のTDI/MDIの質量比を計算したもの。
【0070】
9)図2(a)及び(b)に示すようにトナー供給ローラ1のポリウレタンフォーム層3を、幅10mm×長さ50mmの専用治具5にて、10mm/minの速度で押圧したときの、1mm変位(圧縮)時の荷重(g)、即ち硬度(g/mm)を示したものである。その数値が大きいほどポリウレタンフォーム層の硬度が高い、すなわち硬いことを示している。なお、トナー供給ローラ1は、芯金支持部4を用いてその両端の芯金部分2において支持した。また、測定ポイントは、図示したように周方向4ヶ所と、さらに長手方向3ヶ所の計12箇所であり、表1および2に記載の硬度はこれらの平均値である。以下の基準により、評価した。
○:150g/mm以上200g/mm以下、
×:150g/mm未満、もしくは200g/mmを超えるもの。
【0071】
10)図3(a)及び(b)に示すように、ポリウレタンフォーム層3をΦ13mmのスリーブ6を用いて、1.5mm変位(圧縮)させた状態で、高温高湿環境下、すなわち温度40℃、相対湿度95%の環境下に120時間放置した。表1および2に示す高温高湿下での圧縮永久歪量(μm)は、取り出し解放後30分経過した後のポリウレタンフォーム層の凹み8の量を示したものである。なお、トナー供給ローラ1は、圧縮永久歪治具(軸間規制による芯金設置)7を用いてその両端の芯金部分2において支持した。以下の基準により、評価した。
○:130μm以下、
×:130μmを超えるもの。
【0072】
11)ポリウレタンフォーム層の最表面から450μmの位置の赤外吸収スペクトル強度比を示したものである。aは、ウレタン結合に起因する波数1720cm-1における吸光度、bはウレア結合に起因する波数1650cm-1における吸光度を表す。この深さの位置をカッターで切り取り、赤外吸収スペクトル測定を行った。
12)ポリウレタンフォーム層の最表面から451μmの位置の赤外吸収スペクトル強度比を示したものである。
【0073】
13)赤外吸収スペクトル強度判定
本発明のトナー供給ローラでは、ポリウレタンフォーム層の赤外吸収スペクトルの強度比は、ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μm以内の表面側の部位においてa/b<1.0である。また、ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μmよりも深い芯金側の部位においてa/b>1.0である。以下の基準により、評価した。なお、ポリウレタンフォーム層の赤外吸収スペクトルは、フーリエ変換型赤外分光 (FT-IR)を用いて測定した。
○:最表面から深さ450μm以内の表面側の深度部位において、a/b<1.0であり、かつ450μmより深い芯金側の部位において、a/b>1.0であるもの。
×:上記条件の何れか一方、または二つとも満たさないもの。
【0074】
14)各トナー供給ローラをフルカラーレーザービームプリンタ(キヤノン(株)製:LBP−5050(商品名))のシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各トナーカートリッジに組み込んだ。このカートリッジを取り付けたフルカラーレーザービームプリンタを用いて、連続耐久試験用のテキストページを連続2000枚出力した。出力終了後、各色ベタ白画像を作像し、それを用いてカブリを評価した。前記ベタ白画像はトナーがない白色の画像であり、トナーが部分的に転写されるカブリ現象を評価するものである。カブリ現象は、トナーの掻き取り不足により、トナー供給ローラを現像ローラ間でトナーが滞留し劣化することで生じるものであり、本画像評価は掻き取り性を計るものである。
○:良好、
×:カブリの発生したもの。
【0075】
15)総合評価。
○:硬度、高温高湿下での圧縮永久歪量、赤外吸収スペクトル比、画像評価に優れるもの、×:何れかに劣るもの。
【0076】
16)商品名、三井化学(株)製ポリエーテルポリオール。質量平均分子量2400、エチレンオキシドユニットを20質量%末端に含有する(OH価=46mgKOH/g)。
17)商品名、三井化学(株)製ポリエーテルポリオール。質量平均分子量6000、エチレンオキシドユニットを15質量%末端に含有する(OH価=28mgKOH/g)。
【0077】
表1、2に見られるように、実施例1〜5では、本発明のトナー供給ローラを使用することにより、高温高湿下での圧縮永久歪、及びトナーの掻き取り性に優れたトナー供給ローラを提供でき、良好な画像評価結果を得た。これに対し、比較例1〜5では、高温高湿下での圧縮永久歪、及びトナーの掻き取り性に劣る結果となり、画像評価結果が低かった。
【符号の説明】
【0078】
1.トナー供給ローラ
2.芯金
3.ポリウレタンフォーム層
4.芯金支持部
5.専用治具
6.スリーブ
7.圧縮永久歪治具
8.解放後のフォーム凹み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、該芯金の周りにポリウレタンフォーム層とを有するトナー供給ローラであって、
該ポリウレタンフォーム層の赤外吸収スペクトルは、
ウレタン結合に起因する波数1720cm-1における吸光度をaとし、ウレア結合に起因する波数1650cm-1における吸光度をbとした場合、該ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μm以内の表面側の深度部位において、a/b<1.0であり、
かつ、該ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μmよりも深い該芯金側の深度部位において、a/b>1.0であることを特徴とするトナー供給ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載のトナー供給ローラを製造する方法であって、
(1)成形金型の内表面に水系離型剤を塗布する工程と、
(2)少なくとも以下に示す成分(A)と、成分(B)とを含むポリウレタン材料を、該成形金型内で発泡硬化させることにより、該水系離型剤中の水と該ポリウレタン材料中の成分(B)とが反応硬化して、ポリウレタンフォーム層の最表面から深さ450μm以内の表面側の深度部位にのみウレア結合が連鎖生成する工程と、
成分(A):末端にエチレンオキシドユニットを有する共重合体であって、該共重合体の質量平均分子量に対する末端のエチレンオキシドユニットの含有量が5質量%以上、かつ質量平均分子量が3000以上5000以下のポリエーテルポリオール、
成分(B):トルエンジイソシアネートおよびその誘導体の合計質量の、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその誘導体の合計質量に対する比が、95対5から70対30であるポリイソシアネート、
を有することを特徴とするトナー供給ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−232623(P2011−232623A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103881(P2010−103881)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】