説明

トナー供給ローラ

【課題】ポリウレタンフォーム層の目詰まりによるトナー搬送力の低下や硬度の増大等の問題を防止した、トナーの供給、掻き取りを良好かつ均一に行うことのできるトナー供給ローラを提供する。
【解決手段】芯金1と、該芯金の外周面上にポリオールとポリイソシアネートを用いて得られるポリウレタンフォーム層3を有するトナー供給ローラにおいて、前記ポリウレタンフォーム層が、20%以下のヒステリシスロス率を有し、かつ、該ポリウレタンフォーム層の内部セル径をDiとし、表面セル径をDsとしたとき、Di/Dsの値が1以上2以下であることを特徴とするトナー供給ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、画像記録装置、プリンター、ファクシミリなどの画像形成装置において用いられるトナー供給ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複写装置、画像記録装置、プリンター、ファクシミリなどの画像形成装置においては、電子写真感光体や静電記録誘導体などの現像ローラ上に形成した静電潜像を現像装置により現像して、トナー像として可視化することが行われている。このような現像装置においては、トナー(現像剤)を現像ローラに供給するためのトナー供給ローラが内蔵せしめられている。トナー供給ローラは、表面セルが開口した、ポリウレタンフォーム等の発泡弾性体からなる表面層を有している。
【0003】
発泡弾性体は、気泡の形態により、連続気泡発泡体と独立気泡発泡体とに分類される。このような分類法は周知である(例えば、非特許文献1参照)。トナー供給ローラは、ポリウレタンフォーム層として独立気泡型の発泡弾性体を用いることにより、内部のセルへのトナーの侵入が抑制され、長期使用後におけるローラ硬度の変化は生じないとされる(特許文献1)。
【0004】
また、表面から内部に向かって通気性が小さくなるよう設定したポリウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラの製法が提案されている(特許文献2)。しかし、このような低通気性の独立気泡発泡体のポリウレタンフォーム層を備えたトナー供給ローラを長期間使用すると、ポリウレタンフォーム層へ繰り返し加えられる機械的応力により気泡間の隔壁が破壊され、ポリウレタンフォーム層に目詰まりが生じる。これにより、トナー供給ローラのトナー搬送力の低下や硬度の増大等の問題が発生することがあった。またローラ表面にセルが開口したポリウレタンフォーム層では独立気泡発泡体を作製することが難しい。ポリウレタンフォーム層の連通度が低い場合、一旦侵入したトナーは排出され難く、かえってポリウレタンフォーム層の目詰まりによる硬度増加が大きくなる場合があった。トナー供給ローラのポリウレタンフォーム層として単に連続気泡発泡体を用いただけでは、ポリウレタンフォーム層の気泡内部にトナーが入り込みやすく、硬度の増大等の問題が発生することがあった。
【0005】
【特許文献1】特許3511830号公報
【特許文献2】特許3747795号公報
【非特許文献1】牧廣、小坂田篤、「プラスチックフォームハンドブック」、日刊工業新聞社、昭和48年2月28日初版発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の事情を背景になされたものである。本発明の目的は、ポリウレタンフォーム層の目詰まりによるトナー搬送力の低下や硬度の増大等の問題を防止した、トナーの供給、掻き取りを良好かつ均一に行うことのできるトナー供給ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は、芯金と、該芯金の外周面上にポリオールとポリイソシアネートを用いて得られるポリウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラにおいて、前記ポリウレタンフォーム層が、20%以下のヒステリシスロス率を有し、かつ、該ポリウレタンフォーム層の内部セル径をDiとし、表面セル径をDsとしたとき、Di/Dsの値が1以上2以下であることを特徴とするトナー供給ローラである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリウレタンフォーム層の目詰まりによるトナー搬送力の低下や硬度の増大等の問題を防止した、トナーの供給、掻き取りを良好かつ均一に行うことのできるトナー供給ローラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、芯金と、該芯金の外周面上にポリオールとポリイソシアネートを用いて得られるポリウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラに関する。前記ポリウレタンフォーム層は、20%以下のヒステリシスロス率を有し、かつ、該ポリウレタンフォーム層の内部セル径をDiとし、表面セル径をDsとしたとき、Di/Dsの値が1以上2以下であることを特徴とする。
【0010】
以下、本発明について述べる。
【0011】
(トナー供給ローラ)
図1−1に本発明のトナー供給ローラの実施形態の一例及び本発明におけるトナー供給ローラのポリウレタンフォーム層の硬度、内部硬度低下率及びヒステリシスロス率の測定方法を示す。図1−1中の(a)、(b)に示されているように、本発明のトナー供給ローラ1は、芯金2と、該芯金2の外周面上にポリオールとポリイソシアネートを用いて得られるポリウレタンフォーム層3を有している。トナー供給ローラ1の芯金2の両端部位は、画像形成装置のトナー供給ローラ駆動部等と組み合わされる部位であり、該部位にはポリウレタンフォーム層3を設けない。
【0012】
芯金2として、従来のトナー供給ローラ用の芯金を用いることができる。芯金2は、例えば、鉄等の金属で作製することができる。芯金2の外径は、通常、2mm以上10mm以下とすることが好ましい。
【0013】
また、ポリウレタンフォーム層3は、表面に内部に連通した複数のセル開口部を有している。
【0014】
ポリウレタンフォーム層3の層厚は、通常、1mm以上20mm以下とすることが好ましく、2mm以上10mm以下とするとより好ましい。層厚がこれらの範囲にあることによってトナー供給ローラはより良好なトナー搬送性を有するようになる。
【0015】
本発明のトナー供給ローラは、上記芯金2とポリウレタンフォーム層3との間に、接着剤層や弾性体層等を必要に応じて有していても良い。
【0016】
上記ポリウレタンフォーム層3は、20%以下のヒステリシスロス率を有し、かつ、該ポリウレタンフォーム層の内部セル径をDiとし、表面セル径をDsとしたとき、Di/Dsの値が1以上2以下であることが好ましい。さらに上記ポリウレタンフォーム層3は、ヒステリシスロス率が15%以下であり、かつ、前記Di/Dsの値が1以上1.5以下であるとより好ましい。
【0017】
ポリウレタンフォーム層3のヒステリシスロス率が20%を超えると、充分に回復しきれない部分において現像ローラへのトナー供給及び掻き取りが不均一となる。また、濃度ムラ等の画像不良を引き起こすことがある。
【0018】
本発明にて規定されるヒステリシスロス率を有するポリウレタンフォーム層は、ポリウレタン原料を構成する成分の選択、例えば、高分子量のポリオール成分の使用、イソシアネート成分のTDI/MDIの比率の調整等を行うことによって形成することができる。
【0019】
また、前記Di/Dsの値を好ましくは1以上2以下、さらに好ましくは1以上1.5以下とすると、トナーのポリウレタンフォーム層への出入りが均一化されてポリウレタンフォーム層内部でトナーの移動が速やかとなる。これにより、目詰まりや硬度の上昇を抑制し、現像ローラへのトナー供給及び掻き取りを均一化することができる。前記Di/Dsの値が1より小さいと、トナーが内部から速やかに排出されるが、現像ローラへのトナー供給が過剰になり消費が早く、また現像ローラ上のトナー掻き取りが不均一となる。前記前記Di/Dsの値が2を超えるとポリウレタンフォーム層内部でトナーの移動が速やかであるが内部に侵入したトナーが表面から出にくくなり、硬度の上昇により画像に色抜けや濃度むらが発生するおそれがある。
【0020】
本発明にて規定される範囲の前記Di/Ds値を有するポリウレタンフォーム層は、原料の配合組成や成形型への充填量、攪拌混合性といった成形条件等の選択によって、形成することができる。具体的には、成形型を用いて成形する場合においては、例えば、成形型への充填量を増やすとDi/Dsを大きくすることができる。一方、例えば、泡がつぶれるほど攪拌を行うとDi/Dsを小さくすることができる。それ故、これらを調整してポリウレタンフォーム層を形成することによって前記Di/Dsの値を容易に1以上2以下にすることができる。
【0021】
また、ポリウレタンフォーム層3の内部硬度低下率は20%以下とすることが好ましく、15%以下とするとより好ましい。通常、トナー供給ローラは、現像ローラへ1.5mm程度侵入させた状態で使用される。内部硬度低下率を20%以下とすると現像ローラからのトナー掻き取りを容易に行うことができ、濃度ムラ等の画像不良が発生することもない。内部硬度低下率が小さいほど掻き取り均一性が良好となり好ましい。なお、本発明にて規定する内部硬度低下率を有するトナー供給ローラは、原料の配合組成や成形型への充填量、成形温度といった成形条件等の選択によって、実現することができる。具体的には、例えば、材料粘度が低く表面の開口性が良好な配合や、充填量を少なめとし、成形温度を高めることにより20%以下の内部硬度低下率のポリウレタンフォーム層を形成することができる。
【0022】
本発明においては、ポリウレタンフォーム層3の通気量が2.6L/min・cm2以上6.5L/min・cm2以下であると、有利に用いられる。ポリウレタンフォーム層3の通気量をこの範囲とすると、トナー供給ローラによるトナー供給性が安定する。なお、このような通気量を有するポリウレタンフォーム層は、原料の配合組成や成形型への充填量、あるいはクラッシング方法等の選択によって、実現することができる。具体的には、例えば、充填量を少なめとし、エアーによるクラッシングを用いることで規定の通気量のポリウレタンフォーム層を形成することができる。
【0023】
また、ポリウレタンフォーム層3の表面セル径は200μm以上700μm以下とすることが好ましい。ポリウレタンフォーム層3の表面セル径を200μm以上とすると内部に侵入したトナーが表面から出やすくなり、硬度の上昇に起因する画像の色抜けや濃度むらが発生するおそれもない。また表面セル径を700μm以下とすると現像ローラへのトナー供給及び掻き取りが均一となり、濃度ムラ等の画像不良を引き起こすこともない。
【0024】
なお、トナー供給ローラのポリウレタンフォーム層の硬度は0.49N/mm以上2.94N/mm以下(50gf/mm以上300gf/mm以下)であることが好ましい。さらに、0.98N/mm以上2.45N/mm以下(100gf/mm以上250gf/mm以下)であるとより好ましい。トナー供給ローラの硬度がこの範囲にあるとトナー供給ローラにおけるトナー供給性に優れ好ましい。
【0025】
なお、前記各物性は、実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0026】
本発明のトナー供給ローラは、公知の方法で製造することができる。例えば、まず、離型剤を塗布したパイプ状金型などの成形型のキャビティ内に、キャビティの中心線と芯金の中心線とが一致するように配置する。次に、ポリオールとポリイソシアネートを含むポリウレタン原料を前記成形型のキャビティ内に注入し、加熱して発泡硬化させることにより作製することができる。
【0027】
ポリウレタン原料は、ポリオール、イソシアネート、及び、所望により用いられる触媒、発泡剤、整泡剤、導電性付与剤、その他助剤を含むものが好ましく用いられる。
【0028】
(ポリオール)
本発明で用いるポリオールは、25℃での粘度が1000mPa・s以下であるものが好ましい。粘度が1000mPa・s以下であると表面セル径が大きくなりやすく、また、内部硬度低下率を容易に小さくすることができる。
【0029】
また、本発明で用いるポリオールは、質量平均分子量が4500以上8000以下であるものが好ましい。質量平均分子量が8000以下のものは適度の粘度を有しており、取扱いやすく、注型、イソシアネートとの均一な混合が容易になる。また質量平均分子量が4500以上のポリオールを用いると、得られるポリウレタンフォーム層の低温低湿下での物性値の変化が小さく、ヒステリシスロス率が小さく、硬度が高くなりすぎてしまうこともない。すなわち、質量平均分子量がこの範囲内にあるポリオールを用いることによって、低温低湿から高温高湿な使用環境において、トナー供給ローラとしての使用に好適な物性を有するポリウレタンフォーム層とすることができる。
【0030】
ポリオールは一種を用いてもよいし、二種以上を用いてもよく、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、各種ポリオールを適宜組み合わせて用いることができる。例えば、一般に軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられているポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等の公知のポリオール類の中から適宜選択して使用することが出来る。また、あらかじめポリイソシアネートと重合させたプレポリマーとして用いても差し支えない。
【0031】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしてはトルイレンジイソシアネートを70%以上含有するものが好ましい。さらには、トルイレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及び/又はジフェニルメタンジイソシアネートの混合物であることが好ましい。トルイレンジイソシアネートを70%以上含有するものを用いると、内部セル径が大きく、内部硬度低下率の小さいポリウレタンフォーム層を形成することができる。さらに、ポリイソシアネートとしてトルイレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及び/又はジフェニルメタンジイソシアネートの混合物を用いると、ポリウレタンフォーム層の成形性が良くなる。また、低硬度で、かつ、引き裂き強度が大きいトナー供給ローラが容易に得られる。また、ポリイソシアネートを公知の活性水素化合物の1種又は2種以上と反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーもポリイソシアネートとして使用することができる。
【0032】
〈整泡剤〉
本発明においては、必要に応じて整泡剤を用いることができる。整泡剤として、ポリジメチルシロキサンとエチレンオキサイド(EO)/プロピレンオキサイド(PO)共重合物からの水溶性ポリエーテルシロキサンを用いることができる。また、スルホン化リシノール酸のナトリウム塩やこれらとポリシロキサン・ポリオキシアルキレンコポリマーとの混合物等が挙げられる。これらの整泡剤の中で、ポリジメチルシロキサンとEO/PO共重合物からの水溶性ポリエーテルシロキサンが好適である。特に、分子量の小さいEO/PO共重合物を用いて調製した、EO率が低く、末端に反応性基を持たない水溶性ポリエーテルシロキサンを用いると、得られるポリウレタンフォーム層の連通化が高く、内部硬度低下率が低くなり好ましい。
【0033】
整泡剤の使用量は、通常、ポリオール100質量部に対して、0.1質量部以上3質量部以下とすることが好ましい。
【0034】
また、ポリウレタン原料には、更に、架橋剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、界面活性剤、触媒等を、必要に応じて用いることができる。また、難燃剤や充填剤、更には導電性を付与するための導電性付与剤や、帯電防止剤等も、添加することができる。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0036】
本実施例及び比較例で作製したトナー供給ローラのポリウレタンフォーム層のヒステリシスロス率、硬度、内部硬度低下率、表面セル径、内部セル径及び通気量は、下記方法により測定した。
【0037】
(ヒステリシスロス率、硬度及び内部硬度低下率)
まず、本実施例、比較例で作製したトナー供給ローラの軸方向に3ヶ所、各軸方向に於いて周方向の90度毎に4ヶ所、計12ヶ所においてポリウレタンフォーム層を押圧していく時と開放していく時の荷重−変形量曲線を、JIS K 6400に準じ測定した。この荷重−変形量曲線の測定方法を、図1−1及び図1−2に基き説明する。
【0038】
図1−1中の(a)及び(b)に示したように、トナー供給ローラ1を、芯金2の両端部において圧縮試験機の支持部材(不図示)で支持した。また、該圧縮試験機に長さ50mm(トナー供給ローラ長手方向)×幅10mm×厚さ10mmの板状押圧面を有する冶具4を取り付けた。次に、該圧縮試験機にて、10mm/minの速度でポリウレタンフォーム層3を冶具4で押圧して2mm変形させた後、該冶具を10mm/minの速度で開放して、押圧していく時と開放していく時の荷重−変形量曲線を記録した。記録された荷重−変形量曲線の一例を図1−2に模式的に示す。
【0039】
トナー供給ローラの上記12ヶ所での測定で得られた荷重−変形量曲線から、ヒステリシスロス率、硬度及び内部硬度低下率の各々を次のようにして求めた。
【0040】
(1)硬度
温度23℃、相対湿度53%の環境下で測定した前記荷重−変形量曲線の各々から、押圧して変形量Δ(mm)が1mmとなった時の該ローラ表面にかかる荷重S1(N)を求め、下記式にて硬度Hs(N/mm)を求める。そして、その平均値をポリウレタンフォーム層の硬度とした。この数値が大きくなるほど、ポリウレタンフォーム層3が硬いことを示している。
Hs=S1/Δ
【0041】
(2)内部硬度低下率
温度23℃、相対湿度53%の環境下で測定した前記荷重−変形量曲線の各々から、押圧して変形量Δ(mm)が1mmとなった時の該ローラ表面にかかる荷重S1(N)、2mmとなった時の該ローラ表面にかかる荷重S2(N)を求める。次に、これらの値から下記式にて内部硬度低下率を求め、その平均値をポリウレタンフォーム層の内部硬度低下率とした。
内部硬度低下率=100×((2×S1−S2)/S1)
【0042】
(3)ヒステリシスロス率
温度15℃、相対湿度10%の環境下で測定した前記荷重−変形量曲線の各々から、面積OabcO及び面積OabeOを求め、下記式にてヒステリシスロス率を求め、その平均値をポリウレタンフォーム層のヒステリシスロス率とした。
ヒステリシスロス率=100×(面積OabcO/面積OabeO)
【0043】
(表面セル径及び内部セル径)
リアルタイム走査型レーザー顕微鏡で得られた、芯金に垂直なポリウレタンフォーム層断面の画像を倍率50倍で取り込んだ。取り込んだ画像から、無作為に50個のセルの径を読み取り、ローラの表面1層目に位置するセルのセル径の平均値を表面セル径とし、1層目より内部に位置するセルのセル径の平均値を内部セル径とした。
【0044】
(通気量)
図2は、本実施例及び比較例のトナー供給ローラの通気量の測定方法を示す説明図である。
本実施例及び比較例のトナー供給ローラの外径より1mm小さい内径を有する通気量測定用冶具6は、周面に第一の貫通孔6a及び第二の貫通孔6b(いずれも径1cm)を有している。これら貫通孔は円筒体6の中心軸について互いに略対称な位置に配されている。
この通気量測定用冶具6に本実施例及び比較例のトナー供給ローラを挿入した。次に、通気量測定用治具6に覆われていないトナー供給ローラの両端部分に密閉用冶具7で密閉した。第一の貫通孔6a及び第二の貫通孔6bのうちの一方を大気圧に曝し、他方をチャンバー5に接続し125Paの減圧下に曝した。大気圧下に曝された貫通孔から減圧状態の貫通孔へと吸引される1minあたりの外気の流量を測定し、その測定値を貫通孔の断面積で除することによって、ポリウレタンフォーム層の通気量を求めた。
【0045】
また、本実施例及び比較例で作製したトナー供給ローラを備えた画像形成装置の画像評価は下記方法により行った。
【0046】
(画像評価)
本実施例及び比較例において作製した各トナー供給ローラをフルカラーレーザービームプリンタ(キヤノン(株)製;LBP−2510、商品名)用のシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各トナーカートリッジに組みこんだ。このカートリッジを前記フルカラーレーザービームプリンタに搭載し、温度15℃、相対湿度10%環境下に12時間以上放置し、初期画像として各色ベタ画像を作像した。その後、前記環境下で連続耐久試験用のテキストページを連続4000枚出力した。出力終了後12時間以上放置してから耐久画像として各色ベタ画像を作像し、得られた画像を目視で検査し、下記評価基準に基づき評価した。
◎:画像に不良(色抜け、濃度むら)なし
○:部分的に画像に不良(色抜け、濃度むら)発生
×:画像全面に不良(色抜け、濃度むら)発生
【0047】
実施例及び比較例のトナー供給ローラのポリウレタンフォーム層を形成するための原材料として下記のものを準備した。
(1)ポリエーテルポリオール
・FA−908(商品名)
(三洋化成工業(株)製、質量平均分子量7000、粘度1400mPa・s)
・FA−703(商品名)
(三洋化成工業(株)製、質量平均分子量5100、粘度904mPa・s)
・GL−3000(商品名)
(三洋化成工業(株)製、質量平均分子量3000、粘度526mPa・s)
(2)ポリイソシアネート
・コスモネートT−80
(三井化学ポリウレタン(株)製、トルイレンジイソシアネート(TDI)、NCO%=48)
・コスモネートM−200
(三井化学ポリウレタン(株)製、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、モノメリック及びポリメリックMDI混合物、NCO%=31.4)
(3)架橋剤
・1,4−ブタンジオール(キシダ化学(株)製)
(4)シリコーン整泡剤
・SZ−1333(商品名、東レ・ダウコーニング(株)製)
・SZ−1328(商品名、東レ・ダウコーニング(株)製)
(5)触媒
・TOYOCAT ET(東ソー(株)製、第三級アミン系)
・Dabco 33LV(三共エアプロダクツ(株)製、第三級アミン系)
【0048】
(実施例1〜3)
内径16mm円筒状キャビティを有するパイプ状金型の内壁面に離型剤を塗布し、直径5mm、長さ290mmの金属製の芯金を該芯金の中心線と該キャビティの中心線とが一致するように該キャビティ内に配置した。表1に示す各実施例にて使用する原材料を機械的攪拌により混合し、この混合物を前記パイプ状金型のキャビティ内に注入し、該パイプ状金型を60℃のオーブン中に入れ15分間加熱することにより発泡硬化させた。その後、脱型、エアーを吹き付けてクラッシングしてトナー供給ローラを作製した。作製したトナー供給ローラのポリウレタンフォーム層のヒステリシスロス率、硬度、内部硬度低下率、表面セル径、内部セル径及び通気量を上記方法により測定した。また各実施例にて得られたトナー供給ローラを備えた画像形成装置を用いて作製した画像を上記方法により評価した。結果を表1に示す。
【0049】
また、実施例1〜3のポリウレタンフォーム層の比重(あらかじめ芯金の重さを計っておき、得られたトナー供給ローラ重量を計り、ポリウレタンフォーム層の重量を求め、これをポリウレタンフォーム層の体積で割った値。ポリウレタンフォーム層の体積は、トナー供給ローラの径、芯金の径、ポリウレタンフォーム層の長手方向長さを計測して求めればよい。)は、いずれも0.10g/cm3であった。
【0050】
(比較例1)
表1に示す原材料を用いたこと及び混合物の充填量をポリウレタンフォーム層の比重が所定の値となるよう調整したこと以外は前記実施例と同様にしてトナー供給ローラを作製した。さらに、前記実施例と同様にしてポリウレタンフォーム層の物性を測定し、画像評価を行った。結果を表1に示す。また、前記実施例と同様にしてポリウレタンフォーム層の比重を測定したところ、0.10g/cm3であった。
【0051】
(比較例2)
表1に示す各原材料を用いたこと及び混合物の充填量をポリウレタンフォーム層の比重が所定の値となるよう調整したこと以外は前記実施例と同様にしてトナー供給ローラを作製し、ポリウレタンフォーム層の物性を測定し、画像評価を行った。結果を表1に示す。また、前記実施例と同様にしてポリウレタンフォーム層の比重を測定したところ、0.12g/cm3であった。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例1〜3のトナー供給ローラでは、ヒステリシスロス率が20%以下、Di/Dsの値が1以上2以下、内部硬度低下率が20%以下、通気量が2.6L/min・cm2以上である。これに対して、比較例1のトナー供給ローラではヒステリシスロス率が20%より大きく、比較例2のトナー供給ローラではDi/Dsの値が2よりも大きく、画像評価において色抜け、濃度むらなどが発生した。本結果より本実施例のトナー供給ローラは、トナーの供給、掻き取りに優れ、本発明のトナー供給ローラを備えた画像形成装置により色抜けや濃度むらのない画像が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1−1】本発明のトナー供給ローラの実施形態の一例及び本発明におけるトナー供給ローラのポリウレタンフォーム層の硬度、内部硬度低下率及びヒステリシスロス率の測定方法を示す図である。(a)は圧縮試験機の支持部材(不図示)に支持された本発明のトナー供給ローラを正面から見た図である。(b)は圧縮試験機の支持部材(不図示)に支持された本発明のトナー供給ローラを側面から見た図である。
【図1−2】測定された荷重−変形量曲線の一例を模式的に示した図である。
【図2】トナー供給ローラのポリウレタンフォーム層の通気量の測定方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 トナー供給ローラ
2 芯金
3 ポリウレタンフォーム層
4 冶具
5 チャンバー
6 通気量測定用治具
6a 第一の貫通孔(貫通孔)
6b 第二の貫通孔(貫通孔)
7 密閉用治具
8 圧力計
9 流量計
10 吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、該芯金の外周面上にポリオールとポリイソシアネートを用いて得られるポリウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラにおいて、前記ポリウレタンフォーム層が、20%以下のヒステリシスロス率を有し、かつ、該ポリウレタンフォーム層の内部セル径をDiとし、表面セル径をDsとしたとき、Di/Dsの値が1以上2以下であることを特徴とするトナー供給ローラ。
【請求項2】
前記ポリウレタンフォーム層の内部硬度低下率が、20%以下であることを特徴とする請求項1記載のトナー供給ローラ。
【請求項3】
前記ポリウレタンフォーム層の通気量が、2.6L/min・cm2以上6.5L/min・cm2以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のトナー供給ローラ。
【請求項4】
前記ポリウレタンフォーム層のヒステリシスロス率が15%以下であり、かつ、Di/Dsの値が1以上1.5以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー供給ローラ。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−309930(P2008−309930A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156210(P2007−156210)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】