説明

トナー供給ローラ

【課題】触媒や低架橋体などの汚染が低減した、低硬度で柔軟性に優れたトナー供給ローラを提供する。
【解決手段】発泡弾性体層が、少なくとも、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分混合発泡させて得られるものであるトナー供給ローラであって、該ポリオール成分が少なくとも下記成分A及び成分Bを含有する。
成分A:少なくとも末端にエチレンオキシドユニットが結合しており、エチレンオキシドユニットの含有量が全体の5モル%以上であり、総不飽和度が0.050meq/g以下であり、アミン価が0.1mgKOH/g以下であり、かつ、重量平均分子量(Mw)が4800を超え10000以下であるポリオール。
成分B:アミン価が、7mgKOH/g以上17mgKOH/gであるポリオール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー供給ローラに関し、特に、画像形成装置において、現像装置に内蔵され、潜像担持体の表面に目的とするトナー像を形成するための現像ローラへトナーの供給及び現像残りの現像ローラ上の残トナーの掻取りをするトナー供給ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機やプリンタなどの画像形成装置において、現像装置に内蔵されるトナー供給ローラは、その要求特性から発泡弾性体層が形成されたものが一般に用いられており、発泡弾性体としてポリウレタンフォームが用いられることが多い。
【0003】
このようなポリウレタンフォームを発泡弾性体層とするトナー供給ローラは、例えば次のような方法で製造される。まず、ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、整泡剤及び触媒を混合攪拌し、トナー供給ローラ用成形型内に注入する。これを型内で発泡硬化させ、次いで成形物を脱型してトナー供給ローラを得る(特許文献1参照)。
【0004】
トナー供給ローラの要求特性として、トナーへのダメージの少ない低硬度で、さらに現像ローラとの当接による圧縮力に対して迅速な形状回復性、つまり低ヒシテリシスロスであることが望まれている。また、ポリウレタンフォーム中の未反応成分や低架橋体成分により、現像ローラを汚染する場合がある。そのような特性のトナー供給ローラを得る方法として、ポリオール成分が、高分子量でかつモノオール成分量が少ないものであることが望ましい。そして、そのポリオール成分として、総不飽和度が0.050meq/g以下であり、重量平均分子量(Mw)が4500乃至8000の範囲内にあるポリエーテルポリオールが用いられる(特許文献2)。
【0005】
このようなポリウレタンフォームの製造に使用する触媒としては、下記するようなアミン系触媒や有機金属系触媒が知られている。アミン系触媒では、例えば、トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミンが挙げられる。また、有機金属系触媒では、例えば、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−N−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン等が挙げられる。
【0006】
これら触媒の中で、アミン系触媒は水との相性が良く、有機金属系触媒に比べてアミン系触媒は毒性やプレミックス時のライフタイムが長いといった長所がある。その反面、使用量が多くて、ポリウレタンフォームに残存するアミン系触媒が徐々に揮発し、電子写真装置においては、他の部品やトナーなどを汚染し、画像を悪化させる原因物質となる場合がある。
【0007】
そこで、ポリオール成分として、分子内にアミン結合を有し、自己触媒機能が期待されるポリオールを用いることも考えられるが、分子内にアミン結合を有するポリオールのみでは十分な低ヒシテリシスロスが容易に得られない。
【特許文献1】特開平09−274373号公報
【特許文献2】特開2004―037630号公報
【非特許文献1】今井嘉夫著「ポリウレタンフォーム」高分子刊行会出版、1987年5月20日(初版)、65ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来の問題を解決した、反応性や物性が悪化せず、触媒や低架橋体などの汚染が低減した、かつ、発泡弾性体層が低硬度で低ヒシテリシスロスである、優れた物性を有するトナー供給ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、下記(1)乃至(7)により解決される。
【0010】
(1)芯金の外周上に少なくとも発泡弾性体層を有するトナー供給ローラであって、
該発泡弾性体層が、少なくとも、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を混合発泡させて形成され、
かつ、該ポリオール成分が下記成分A及び成分Bを含有する
ことを特徴とするトナー供給ローラ。
成分A:少なくとも末端にエチレンオキシドユニットが結合しており、エチレンオキシドユニットの含有量が全体の5モル%以上であり、総不飽和度が0.050meq/g以下であり、アミン価が0.1mgKOH/g以下であり、かつ、重量平均分子量(Mw)が4800を超え10000以下であるポリオール。
成分B:アミン価が、7mgKOH/g以上17mgKOH/gであるポリオール。
【0011】
(2)成分Aの含有量が、ポリオール成分中5質量%以上60質量%以下であることを特徴とする上記(1)のトナー供給ローラ。
【0012】
(3)成分Aの水酸基価が20mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であり、平均官能基数が2.0以上4.0以下で、かつ、総不飽和度が0.035meq/g以下であり、成分Bのアミン価が、10mgKOH/g以上15mgKOH/gであることを特徴とする上記(1)又は(2)のトナー供給ローラ。
【0013】
(4)発泡弾性体層を形成する材料中の触媒の含有量がポリオール成分とポリイソシアネート成分の合計に対して0.4質量%以下であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかのトナー供給ローラ。
【0014】
(5)発泡弾性体層のヒシテリシスロスが15%以下であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかのトナー供給ローラ。
【0015】
(6)発泡弾性体のメチルエチルケトン(MEK)抽出率が4.0質量%以下であることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかのトナー供給ローラ。
【0016】
(7)発泡弾性体の密度が0.05g/cm3以上0.20g/cm3以下であり、かつ硬度が50g以上300g以下であることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかのトナー供給ローラ。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、触媒や低架橋体などの汚染が実質的にない、発泡弾性体層が低硬度で低ヒシテリシスロスである、優れた物性を有したトナー供給ローラが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のトナー供給ローラは、画像形成装置において、現像装置に内蔵され、潜像担持体の表面に目的とするトナー像を形成するための現像ローラへトナーの供給及び現像残りの現像ローラ上の残トナーの掻取りをするための部材として用いられるものである。
【0019】
本発明のトナー供給ローラの一例の斜視図を図1に示す。
【0020】
本発明のトナー供給ローラ1は、芯金2の外周上に少なくとも発泡弾性体層3を有するものである。
【0021】
発泡弾性体層は、少なくとも、主成分として下記成分A及び成分Bを含有するポリオール成分とポリイソシアネート成分を混合し、発泡硬化したものである。
成分A:後記特性を有するポリオール。少なくとも末端にエチレンオキシドユニットが結合しており、かつ、エチレンオキシドユニットの含有量が全体の5モル%以上である。総不飽和度が0.050meq/g以下である。アミン価が0.1mgKOH/g以下である。重量平均分子量(Mw)が4800を超え10000以下である。
成分B:アミン価が、7mgKOH/g以上17mgKOH/gであるポリオール。
【0022】
成分Aの含有量が、全ポリオール成分中5質量%以上60質量%以下であることが好ましい。該成分Aが5質量%未満である場合、十分な低硬度品が得られにくく、60質量%を超えると反応性が低下し、触媒を増量するなどの必要があり汚染が懸念されるので好ましくない。
【0023】
さらに該成分Aは、Mwが4800を超え10000以下である。Mwが4800未満であると架橋密度が高くなり過ぎるため、得られるポリウレタンフォームの柔軟性が低下する傾向がみられる。また、Mwが10000を越えると粘度が高くて、反応時の作業性が悪くなる傾向がみられる。
【0024】
この中でも、成分Aとしては、水酸基価が20mgKOH/g以上50mgKOH/g以下で、かつ平均官能基数が2.0以上4.0以下であるものを用いることが好ましい。
【0025】
なお、成分Aとして、少なくとも末端にエチレンオキシドユニットが結合しており、かつ、エチレンオキシドユニットの含有量が全体の5モル%以上である。また、総不飽和度が0.050meq/g以下、好ましくは、0.035meq/g以下である。そのために、成分Aとして、ポリエーテルポリオールの構造のものを用いると、耐湿熱耐久性に優れたポリウレタンフォームを得るのに好適である。エチレンオキサイド(EO)を末端に5モル%以上グラフトさせたポリエーテルポリオールが、反応性に優れるので好ましい。総不飽和度が0.050meq/gを超えるものでは、モノオール成分が多くて、発泡体の構造が弱くなることが多いので好ましくない。また、成分Aは、予めポリイソシアネートと反応させて、プレポリマーとして用いても差し支えない。
【0026】
また、分子内にアミノ基を有する(すなわちアミン価を有する)ポリオールは、ウレタン化触媒作用を有するので、成形後の系外流出の懸念といった従来触媒の問題点を著しく軽減できるので、ウレタン化触媒の使用を少なくでき、好ましい。しかし、アミノ基を有すると吸湿性が発現されやすいので、適宜好ましいものを選択する必要がある。
【0027】
そこで、本発明では、ポリオール成分として、成分Aがアミン価0.1gKOH/g以下のものを用い、成分Bがアミン価7mgKOH/g以上17mgKOH/g以下のものを用いることが好ましい。ここで、アミン価を有するようなポリオールであり、上記成分Aとしての水酸基価、官能基数及びMwを満足するものである場合、成分A及び成分Bの一部あるいは全部となることもありうる。なお、このようなアミン価を有する成分Aと成分Bの両方を満たすポリオールを用いた時は、アミン価を換算して、すなわちアミン価が7mgKOH/g乃至17mg/KOHに当たる量を成分Bの量とし、残りを成分Aとして換算する。したがって、本発明では、ポリオール成分が見かけ上一種のポリオールを使用しているときでも、成分A及び成分Bのポリオールが使用されているとみなす。
【0028】
成分Bのアミン価が7mgKOH/g未満ではアミノ基が触媒として十分に機能できる量ではなく、17mgKOH/gを超えると反応が早くなりすぎてしまい、反応の制御が困難になりセル開口率が低下する。更に好ましくはアミン価10mgKOH/g以上15mgKOH/g以下の範囲にあるものである。また、成分Bも成分A同様に、予めポリイソシアネートと反応させたプレポリマーとして用いても差し支えない。
【0029】
また、ポリオール成分として、ポリマーポリオール(商品名:三井化学ポリウレタン株式会社製)を用いてもよい。なお、ポリマーポリオールとは、ポリエーテルポリオール中でエチレン性不飽和単量体(アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸メチル、塩化ビニリデン等)を重合させて変性したものである。ポリオール成分の一部として使用することによりポリウレタンフォームの湿熱耐久性を低下させることなく、通気性向上等を図ることができる。
【0030】
本発明において、ポリオール成分と共に用いるポリイソシアネート成分としては、特に制限は無く、従来公知の各種ポリイソシアネートの中から、適宜選択して使用することができる。特に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)又はその誘導体を含有するイソシアネートが好ましい。また、トルエンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート及びその誘導体を併用することもできる。さらに予めポリオールと反応させておいたプレポリマーとして使用しても良い。
【0031】
これらポリイソシアネートとポリオールの配合割合は、特に制限はないが、通常、NCOインデックスで60以上130以下、好ましくは70以上115以下になるようにすることが好ましい。
【0032】
本発明では、ポリオール成分の成分Bとして、アミノ基を有するポリオールを使用するので必ずしも必要でないが、ウレタン化触媒を使用しても良い。なお、その使用量としては、発泡弾性体材料中で含有量が、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の合計に対して0.4質量%以下である。0.4質量%を超えて用いると、ポリウレタンローラ中に残存しているアミン系触媒が揮発し、それが画像不良の原因となる場合がある。なお、本発明で使用する触媒としては、特に制限が無いが、以下のものが特に好ましい。トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルアミノヘキサノール等。これらは、単独で、あるいは任意に組み合わせて用いることができる。
【0033】
ポリウレタンフォーム形成に際して、水を発泡剤として使用することができる。水はポリイソシアネートと反応してポリウレアを形成すると共に炭酸ガスを発生し、この炭酸ガスが発泡剤となる。水の使用量は、全ポリオール100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、さらに好ましくは、0.1質量部以上5質量部以下である。なお、水と共に、炭化水素(シクロペンタン等)、炭酸ガス、その他の発泡剤を使用しても構わない。
【0034】
また、ポリウレタンフォーム形成において、発泡セルを安定化させるために、整泡剤を使用しても構わない。整泡剤としては、ポリジメチルシロキサンとEO/PO共重合物からの水溶性ポリエーテルシロキサン、スルホン化リシノール酸のナトリウム塩やこれらとポリシロキサン・ポリオキシアルキレンコポリマーとの混合物等を挙げることができる。これらの中で、ポリジメチルシロキサンとEO/PO共重合物からの水溶性ポリエーテルシロキサンが好適である。使用量は全ポリオール100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が適当である。これは、使用量が、全ポリオール100質量部に対して0.01質量部未満であると、発泡セルが不均一になりやすく外観不良が発生しやすく、5質量部を超えると、染み出しなどの不具合が生じやすくなるからである。
【0035】
その他、助剤として、架橋剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、酸化防止剤、導電性付与剤等を必要により使用する。これらのその他助剤を添加しても何等本発明の主旨を損なうものではない。
【0036】
本発明のトナー供給ローラの発泡弾性体層の製造については、少なくともポリオール成分とポリイソシアネート成分を上記NCOインデックスになるように用い、その他原料、触媒と共に混合発泡する他は、特に制限は無く常法によれば良い。
【0037】
一例を示せば次の通りである。まず、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、触媒及び所望により用いられる整泡剤、水、その他助剤などを均質に混合した後、加熱して反応硬化させる。原料を混合する際の温度や時間について、特に制限は無いが、混合温度はとして、通常10℃乃至90℃、好ましくは20℃乃至60℃の範囲であり、混合時間は、通常1秒乃至10分間、好ましくは3秒乃至1分間程度である。また、加熱して反応硬化させる際、従来公知の方法により、発泡させることにより、ポリウレタンフォームからなる各種部材を作製することができる。
【0038】
本発明のトナー供給ローラの製造は、通常、鉄にメッキを施したものやステンレス鋼などからなる芯金上に、上記発泡弾性体層(ポリウレタンフォーム)を形成する。なお、芯金とポリウレタンフォームの接合方法については、特に制限は無いが、芯金を予めモールド(成形型)内部に配設しておき発泡弾性体原料を注型硬化する方法や、所定の形状に成形したポリウレタンフォームを芯金に接着する方法などがある。どちらの方法でも、必要に応じて芯金とポリウレタンフォームの間に接着層を設けることができる。この接着層としては、接着剤やホットメルトシートなどの公知の材料を用いることが可能である。なお、ポリウレタンフォームをローラの発泡弾性体層として使用可能なように形成する方法としては、特に制限は無く、公知の方法によればよい。例えば、所定の形状のモールドに注型する方法、予め製造したポリウレタンフォームブロックから切削加工により所定の寸法に切り出す方法、研磨処理により所定の寸法にする方法、あるいはこれらの方法を適宜組み合せた方法などである。
【0039】
本発明のトナー供給ローラは、上記したように、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、その他を混合発泡し、芯金の上に発泡弾性体層を形成したものであるが、該発泡弾性体層が以下のような物性を持っていることが好ましい。
【0040】
すなわち、発泡弾性体層のヒシテリシスロスが、15%以下であることが望ましい。15%を超えると現像ローラとの当接痕の形状が復元するが遅くなり、画像に影響を与える場合がある。
【0041】
また、発泡弾性体層をメチルエチルケトン(MEK)で抽出した時の抽出の量が発泡弾性体層の4.0質量%以下であること、更に好ましくは3.5質量%以下であることが好ましい。なお、メチルエチルケトン(MEK)抽出率が4.0質量%を超えると現像ローラに低架橋物質が移行する影響が現れ、特に画像に影響を与える場合があるので好ましくない。
【0042】
さらに、本発明のトナー供給ローラは、発泡弾性体層の密度が0.05g/cm3以上0.20g/cm3以下であること、硬度が50g以上300g以下であることが、現像ローラからのトナー掻き取り、現像ローラへのトナー供給などのため、望ましい。
【0043】
以上のような本発明のトナー供給ローラは、発泡弾性体層形成に用いた触媒による汚染が問題にならないくらい軽減され、発泡弾性体層は低硬度で良好な柔軟性に優れたものである。したがって、本発明のトナー供給ローラは、電子写真方式の画像形成装置に組み込んで使用すると、良好な画像を形成することが可能となる。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良等を加え得ることができる。
【0045】
実施例及び比較例で作製した使用したポリオール成分及びトナー供給ローラの物性の測定値は、下記の方法により測定した。
【0046】
〔ポリオール成分の水酸基価、総不飽和度及びアミン価の測定〕
・水酸基価及び総不飽和度:
JIS K−1557記載の方法による。
・アミン価:
京都電子工業株式会社製の電位差自動滴定装置AT−510(商品名)を用い手、測定した。なお、希釈液として、エタノール:トルエン=1:4の混合溶媒を用い、滴定液としては、0.1M塩酸/エタノール溶液を用いた。
【0047】
〔発泡弾性体層の硬度、ヒシテリシスロス、MEK抽出率及び密度の測定〕
・硬度及びヒシテリシスロス:
測定の概要を図2に示す。図2において、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。トナー供給ローラ1を、芯金2の両端の露出部において支持する。発泡弾性体層3に、長さ50mm×幅10mm×厚さ10mmの板状の押圧する治具4を、図2のように当てる。次いで該治具4を10mm/minの速度で押圧し、2mm圧縮し、その後10mm/minで押圧を解除する。その時の変形量と荷重(g)の関係をグラフに表す。測定の一例を図3に示す。
【0048】
そして、荷重を印加し、1mm変位(圧縮)時の荷重(g)を発泡弾性体層の硬度とする。その数値が大きくなるほど、発泡弾性体層3が硬いことを示している。なお、測定を長手方向に3箇所、周方向に4箇所の計12箇所行い、その平均値を当該トナー供給ローラの測定値とする。
【0049】
また、変形量と荷重の関係のグラフから、荷重押圧時の荷重面積から荷重開放時の荷重面積を引き、その値を荷重押圧時の荷重面積で割る。その値を、発泡弾性体層のヒシテリシスロスとする。なお、測定を長手方向に3箇所、周方向に4箇所の計12箇所行い、その平均値を当該トナー供給ローラの測定値とする。
【0050】
・MEK抽出率:
トナー供給ローラの発泡弾性体層を細かく刻み、その1g(精秤)を50mlの瓶に入れる。それに、MEK約30mlを入れ、5時間放置する。予め風袋を計ったビーカーに濾紙を用いて、発泡弾性体層をろ別して、MEK液を取る。その後、MEKを蒸発させ、さらに電気炉にて110℃で20分間乾燥する。室温にまで冷却した後に、該ビーカー重量を計り、風袋を引く。得られた値(g)の用いたトナー供給ローラの発泡弾性体層の精秤値に対する百分率を求め、当該トナー供給ローラのMEK抽出率とする。
【0051】
・密度:トナー供給ローラの発泡弾性体の両端面より10mm及び中央部の外径3点を平均した値を発泡弾性体の外径とし、芯金を除く発泡弾性体の体積D(cm3)を算出した。芯金を除く発泡弾性体の重量M(g)を該体積D(cm3)で除して、当該トナー供給ローラの発泡弾性体密度(g/cm3)とする。
【0052】
以下の実施例、比較例で使用した原料を示す。
【0053】
(1)ポリオール成分
・成分A
末端にエチレンオキシドユニットがグラフトされた、下記1の表に示すポリオール(POLa乃至POLe)を用いた。なお、分析は上記した方法により測定した。
【0054】
【表1】

【0055】
・成分B
ポリオール成分の成分Bとして、ポリエーテルポリオール「DVV6340」(商品名、ダウケミカル株式会社製)を用いた。なお、これは水酸基価32mgKOH/g及びアミン価13.5mgKOH/gである。
【0056】
(2)ポリイソシアネート成分
ポリイソシアネート成分として、ポリイソシアネート「コスモネートTM50」(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)を用いた。なお、これはNCO=39.8%である。
【0057】
(3)整泡剤
整泡剤として、シリコーン整泡剤「SRX−274C」(商品名、東レダウコーニング株式会社製)を用いた。
【0058】
(4)アミン系触媒
アミン系触媒として、触媒1:アミン触媒「TOYOCAT−ET」(商品名)及び触媒2:アミン触媒「TOYOCAT−MR」(商品名)(いずれも、東ソー株式会社製)を用いた。
【0059】
実施例1〜6及び比較例1〜4
表2に示す組成で各成分を機械的撹拌して得た発泡弾性体層用原料混合を、径5mm、長さ290mmの金属製芯金を挿入した内径16mmのパイプ状金型に注入し、60℃のオーブン中に30分間加熱して発泡硬化させた。その後、脱型し、バリ等の除去を行い、さらに、表面を研磨して、外径14mm、フォーム密度0.1g/cm3のトナー供給ローラを作成した。
【0060】
なお、この脱型時の発泡弾性体層の状況(ローラ形状保持状態、裂け等の不具合の有無等)を観察し、成形性を下記基準で評価した。
○:脱型時の形状復元性などで不具合が認められない。
△:不具合の予兆が若干認められる。
×:不具合が明確に認められる。
【0061】
また、得られた該トナー供給ローラをカートリッジに組み込み、温度40℃・湿度95%の環境下で1ヶ月保管した。その後、レーザービームプリンター「hp color Laser Jet4600」(商品名日本ヒューレット・パッカード株式会社製)に組み込み、耐久画像評価を行った。画像出力は5000枚を行い、そのときの画像の濃度、画質の一様性を目視により観察して、下記基準で評価した。
○:まったく不具合が認められない良好な画像であった。
△:不具合の予兆が若干認められる。
×:不具合が明確に認められる。
【0062】
上記結果及びトナー供給ローラの物性(上記測定方法による)を、表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
本発明のトナー供給ローラ(実施例1乃至6)では良好な画像が得られた。また、実施例1乃至3は成形性も問題なかった。実施例4及び6は脱型時にトナー供給ローラに若干の変形が見られた。一方、成分Aとして、総不飽和度の高いポリオール(POLc及びPOLd)を用いた比較例1、2では、過酷な条件の保管では、画像評価前の現像ローラ上に付着物が確認され、画像評価でも画像にスジが観察された。また、比較例3では画像上にスジが確認された。比較例4では成形性が悪く脱型後ローラ形状が変形し保持が困難で、画像評価できなかった。本結果より、本発明のトナー供給ローラは、画像性能が優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のトナー供給ローラの一例の斜視図である。
【図2】発泡弾性体層の硬度及びヒシテリシスロスの測定方法を示す説明図である。
【図3】発泡弾性体層の変位量と荷重の関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
1 トナー供給ローラ
2 芯金
3 発泡弾性体層
4 冶具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の外周上に少なくとも発泡弾性体層を有するトナー供給ローラであって、
該発泡弾性体層が、少なくとも、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を混合発泡させて形成され、
かつ、該ポリオール成分が下記成分A及び成分Bを含有する
ことを特徴とするトナー供給ローラ。
成分A:少なくとも末端にエチレンオキシドユニットが結合しており、エチレンオキシドユニットの含有量が全体の5モル%以上であり、総不飽和度が0.050meq/g以下であり、アミン価が0.1mgKOH/g以下であり、かつ、重量平均分子量(Mw)が4800を超え10000以下であるポリオール。
成分B:アミン価が、7mgKOH/g以上17mgKOH/gであるポリオール。
【請求項2】
成分Aの含有量が、全ポリオール成分中5質量%以上60質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー供給ローラ。
【請求項3】
成分Aの水酸基価が20mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であり、平均官能基数が2.0以上4.0以下で、かつ、総不飽和度が0.035meq/g以下であり、成分Bのアミン価が、10mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー供給ローラ。
【請求項4】
発泡弾性体層を形成する材料中の触媒の含有量がポリオール成分とポリイソシアネート成分の合計に対して0.4質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー供給ローラ。
【請求項5】
発泡弾性体層のヒシテリシスロスが15%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー供給ローラ。
【請求項6】
発泡弾性体層のメチルエチルケトン(MEK)抽出率が4.0質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナー供給ローラ。
【請求項7】
発泡弾性体層の密度が0.05g/cm3以上0.20g/cm3以下であり、かつ硬度が50g以上300g以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナー供給ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−42627(P2009−42627A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209400(P2007−209400)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】