説明

トナー供給ローラ

【課題】電気抵抗値の環境依存性が小さく、かつ、低電気低抗化を実現した、表面のセル開口性を向上したポリウレタンスポンジ層を有する低硬度のトナー供給ローラを提供する。
【解決手段】芯金と、該芯金の外周に形成されたポリウレタンスポンジ層とを有するトナー供給ローラにおいて、前記ポリウレタンスポンジ層が、ポリオール成分、イソシアネート成分、吸着基と質量平均分子量が9000以上50000以下の側鎖からなるポリエステル樹脂系分散剤(A)及びカーボンブラックを含有するポリウレタン原材料を発泡硬化させて得られるものであることを特徴とするトナー供給ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、画像記録装置、プリンター、ファクシミリなどの画像形成装置において用いられるトナー供給ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写装置、画像記録装置、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置においては、電子写真感光体や静電記録誘電体等の像担持体上に形成した静電潜像を現像装置により現像して、トナー像として可視化することが行なわれている。このような現像装置においては、像担持体にトナーを付与して静電潜像を可視化する現像ローラにトナー(現像剤)を供給するためのトナー供給ローラが内蔵されている。
【0003】
トナー供給ローラは、ポリウレタンスポンジ層中にトナーを含浸し、吐き出すことにより、トナーを現像ローラに供給する作用をもったローラである。現像ローラ表面のセルの開口部の開口全面積が該ウレタンスポンジ層のスキン層表面積の20%以上を占めていると、トナーの供給性に優れたものとなることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、低温低湿環境下で長期間放置された場合などにおいて、トナーのチャージアップ等により、層規制ブレードだけでは現像ローラによって像坦持体に付与するトナー量を制御できず、濃度薄等の画像不良が発生する場合があった。その解決手段として、トナー供給ローラの電気抵抗を低抵抗化(導電化)することが考えられる。
【0005】
一方、低抵抗化したポリウレタンフォーム層を有する導電性ローラとしては、イオン導電剤を用いたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。ポリウレタンフォーム層にイオン導電剤を含有する導電性ローラは電気抵抗ムラが小さいことや電圧依存性が小さいなどの利点がある。
【0006】
しかしながら、イオン導電剤を用いて、ポリウレタンフォーム層の電気抵抗を低抵抗化した場合、高温高湿下や低温低湿下といった環境により大きく電気抵抗値が変化することが知られており、様々な環境下において、安定した電気抵抗値を得ることは困難である。
【0007】
環境依存性が小さい、低抵抗化したポリウレタンフォーム層の形成方法として、従来より、あらかじめ導電性カーボンブラックを配合したポリウレタン原材料を用いてポリウレタンフォーム層を形成する方法が知られている。しかし、この方法では、導電性カーボンブラックの添加量の増加に伴いポリウレタン原材料液の粘度が上昇し、ポリウレタンフォーム層を形成する際にローラ表面のセルがスムースに破泡しないため、ローラ表面のセルが十分に開口しない場合があった。即ち、良好なセル構造を形成するため、添加する導電性カーボンブラックの量を制限しなければならなかった。このため、体積固有抵抗値が107Ω・cm以下であって、かつ、表面のセルが十分に開口した導電性ポリウレタンフォーム層を形成することは、実質上不可能であった。
【0008】
この問題を解決する方法として、導電性カーボンブラックに加えてアルキド樹脂系分散剤および/またはポリエステル樹脂系分散剤を含有させたポリウレタン原材料を用いてポリウレタンフォーム層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この方法によれば、ポリウレタン原材料液の粘度上昇が抑制され導電性カーボンブラックの添加量を増加しても、良好な発泡状態のポリウレタンフォーム層が得られることが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
ポリエステル樹脂系分散剤には、主に、カーボンブラックの表面電荷を変化させることで静電斥力を得て安定に分散させるものがある。また、相溶鎖をカーボンブラック表面に吸着させることにより、主に、立体障害を利用して粒子間の反発力を高めることで安定に分散させるものなどがある。一般的にポリウレタンフォーム層の原材料中に配合されるポリエステル樹脂系分散剤は、静電斥力を得るタイプのものである。
【0010】
一方、インクや塗料に配合されるポリエステル樹脂系分散剤として、相溶鎖をカーボンブラック表面に吸着させることにより、立体障害を利用して粒子間の反発力を高めることで安定に分散させるタイプのものが使用されることはよく知られている。しかしながら、カーボンブラックを含有するポリウレタンフォーム層を形成するためのポリウレタン原材料については何ら検討されていない。また、静電斥力を得るタイプのポリエステル樹脂系分散剤を用いても、導電性カーボンブラックの添加量によっては、十分な粘度上昇抑制効果が得られないことがあった。このようなときには、トナー供給ローラのポリウレタンフォーム層表面のセルが十分に開口しなかったり、場合によっては全く開口しない場合や、必要な発泡倍率が得られず、トナー供給ローラが高硬度になってしまう場合があった。
【0011】
【特許文献1】特開平09−274373号公報
【特許文献2】特開平11−292948号公報
【特許文献3】特開2003−98786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来技術の事情を鑑みなされたものである。その解決課題とするところは、低電気抵抗で、かつ、該電気抵抗値の環境依存性が小さく、表面のセル開口性を向上したポリウレタンスポンジ層を有する、低硬度のトナー供給ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決した本発明は、芯金と、該芯金の外周に形成されたポリウレタンスポンジ層とを有するトナー供給ローラにおいて、前記ポリウレタンスポンジ層が、ポリオール成分、イソシアネート成分、吸着基と質量平均分子量が9000以上50000以下の側鎖からなるポリエステル樹脂系分散剤(A)及びカーボンブラックを含有するポリウレタン原材料を発泡硬化させて得られるものであることを特徴とするトナー供給ローラである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、濃度ムラや濃度薄といった問題を解決したトナー供給ローラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のトナー供給ローラは、芯金と、該芯金の外周に形成されたポリウレタンスポンジ層とを有するトナー供給ローラである。前記ポリウレタンスポンジ層は、ポリオール成分、イソシアネート成分、吸着基と質量平均分子量が9000以上50000以下の側鎖からなるポリエステル樹脂系分散剤(A)及びカーボンブラックを含有するポリウレタン原材料を発泡硬化させて得られる。
【0016】
以下、本発明について述べる。
【0017】
(トナー供給ローラ)
本発明のトナー供給ローラの実施形態の一例の概略構成を示す斜視図を図1に示す。図1に示されているように、トナー供給ローラ1は、円柱状の芯金2と、該芯金2の外周に形成されたポリウレタンスポンジ層3を有している。トナー供給ローラ1の芯金2の両端部位は、画像形成装置等のトナー供給ローラ駆動部等と組み合わされる部位であり、該部位にはポリウレタンスポンジ層3を設けない。
【0018】
(芯金)
芯金2としては、従来のトナー供給ローラ用の芯金を用いることができる。芯金2は、例えば、鉄等の金属で作製することができる。芯金2の外径は、通常、2mm以上10mm以下とすることが好ましい。
【0019】
(ポリウレタンスポンジ層)
ポリウレタンスポンジ層3は、ポリオール成分、イソシアネート成分、吸着基と質量平均分子量が9000以上50000以下の側鎖からなるポリエステル樹脂系分散剤(A)及びカーボンブラックを含有するポリウレタン原材料を発泡硬化させて得られる。
【0020】
ポリウレタンスポンジ層3は、表面のセル開口率が20%以上90%以下であることが好ましい。表面のセル開口率を20%以上とすると、トナー搬送量が安定化し、トナーを均一に供給することが出来る。また、セル開口率を90%以下とすると、このようなポリウレタンスポンジ層を容易に形成することができる。本発明においてセル開口率とは、ポリウレタンスポンジ層の表面の全表面積に対する開口したセルの占める表面積の百分率である。
【0021】
ポリウレタンスポンジ層3表面のセル開口率の調整は、ポリウレタン原材料中のポリオールの重合度、ポリウレタン原材料の組成や粘度、触媒の種類や使用量等を適切に選択する等によって行うことができる。また、ポリウレタンスポンジ層3の形成を円筒状金型のような成形型を用いておこなう場合には、ポリウレタン原材料と成形型内表面との接触角が適切な範囲となるように、該成形型の内表面を表面処理したり、離型剤を塗布してもよい。なお、ポリウレタンスポンジ層3表面のセル開口率を上記範囲に調整することが可能であれば、特に限定されず、好適な表面処理方法または離型剤を採用することができる。
【0022】
なお、ポリウレタンスポンジ層3は、通常、0.05g/cm3以上0.40g/cm3以下の密度を有するものが好ましく、0.07g/cm3以上0.35g/cm3以下の密度を有するものがより好ましい。ポリウレタンスポンジ層3が、この範囲の密度を有するものであるとトナー供給性が良好となり好ましい。
【0023】
(ポリウレタンスポンジ層の形成方法)
ポリウレタンスポンジ層3の形成を成形型を用いて行う場合には、内表面が、エチレングリコールの接触角で85度以上である成形型に、前記ポリウレタン原材料を注入し、加熱して、発泡硬化して、ポリウレタンスポンジ層3を形成させることが好ましい。内表面が、エチレングリコールの接触角で85度以上である成形型を用いると、該成形型の少なくともキャビティ内面を構成する表面と、そのポリウレタン原材料との非相溶作用乃至は表面張力作用により、ポリウレタン原材料の不存在部分が生じる。通常、ポリウレタン原材料の不存在部分は、液状のポリウレタン原材料の発泡硬化にて生じるセルの成形型内表面に最も近接する部分、換言すればスキン層の厚さが最も薄くなるセル中央部相当部位に生じる。これによって、形成されるポリウレタンスポンジ層表面のスキン層に開口部が生じ、この開口部を通じて、セルが外部に開口するようになるのである。この成形型内表面のエチレングリコールの接触角が85度よりも小さくなると、該成形型内表面とポリウレタン原材料との間に充分な非相溶作用乃至は表面張力作用による効果が発揮できず、セル開口にムラが生じ、また充分な開口径となりにくくなると考えられる。
【0024】
また、エチレングリコールの接触角が85度よりも小さいと、ポリウレタンスポンジ層3と成形型内面との接着性が強くなり、該成形型内で発泡硬化して得られたトナー供給ローラを該成形型から離型する事が困難になる場合もある。
【0025】
また、成形型内表面としては、エチレングリコールの接触角が85度以上であれば、特に制限は無く、従来公知の離型剤や表面処理方法で成形型内表面を処理してエチレングリコールの接触角が85度以上のものとして成形型を使用することができる。
【0026】
前記ポリウレタン原材料を構成する各原料を混合する際の温度や時間については特に制限は無いが、混合温度は、通常、10〜70℃、好ましくは20〜50℃の範囲であり、混合時間は、通常、1秒〜10分間、好ましくは3秒〜5分間程度である。
【0027】
また、発泡硬化させる際、従来公知の方法により発泡させることにより、ポリウレタンスポンジ層3を形成することが出来る。ここでの発泡方法については特に制限は無く、発泡剤を用いる方法、機械的な撹拌により気泡を混入する方法など、いずれの方法をも用いることが出来る。なお、発泡倍率は、適宜定めればよく、特に制限はない。
【0028】
本発明のトナー供給ローラは、上記芯金2とポリウレタンスポンジ層3との間に、接着層を必要に応じて有していても良い。
【0029】
芯金とポリウレタンスポンジ層との接合方法については特に制限は無い。例えば、芯金を予め成形型内部に配設しておき上記のような原料混合物を注型硬化する方法や、ポリウレタン原材料からあらかじめポリウレタンスポンジ層となる所定の形状に成形し、これを芯金と接着する方法などを用いることが出来る。どちらの方法でも、必要に応じて、芯金とポリウレタンスポンジ層との間に接着層を設けることが出来る。この接着層を構成する材料としては、接着剤やホットメルトシートなどの公知の接着材料を用いることが出来る。
【0030】
以上のような本発明によれば、電気抵抗の環境依存性が小さく、かつ、低電気抵抗化を実現した、表面のセル開口性を向上したポリウレタンスポンジ層を有する低硬度のトナー供給ローラを提供することが可能となる。
【0031】
また、本発明のトナー供給ローラは、温度22℃、相対湿度55%の雰囲気中で、200Vの電圧を印加して測定される電気抵抗値が1×105Ω以上1×108Ω未満であることが好ましい。好ましくは、5×105Ω以上6×107Ω以下である。電気抵抗値が1×108Ω未満であると、低温低湿環境下で長期間放置した場合においても、トナーのチャージアップ等に起因する濃度薄等の画像不良が発生することもない。これは、トナー供給ローラの電気抵抗値が1×108Ω未満であると、電気抵抗値が小さいためにチャージアップを防ぎ、層規制ブレードだけでトナー量を制御できるためであろうと推察される。また、電気抵抗値を1×105Ω以上とすると、トナーの供給量を好適なものとし、トナーに対する負荷を低減することができる。
【0032】
本発明のトナー供給ローラは、ローラ硬度が0.981N/mm以上2.94N/mm以下(100gf/mm以上300gf/mm以下)であることが好ましい。さらに、1.47N/mm以上2.45N/mm以下(150gf/mm以上250gf/mm以下)であるとより好ましい。ローラ硬度を0.981N/mm以上(100gf/mm)とすると、現像ローラ表面上の残存トナーの掻き取り性が向上する。また、ローラ硬度を2.94N/mm以下(300gf/mm以下)とすると、現像ローラ表面のトナーに対するストレスが低減され、トナーの劣化を防ぐことができる。
【0033】
本発明のトナー供給ローラのローラ硬度は、例えば、下記手段により調整することができる。
・ポリイソシアネートのイソシアネートインデックス(100×(イソシアネート当量/ポリオール当量))を調整(イソシアネートインデックスを小さく(大きく)すると硬度が小さく(大きく)なる。)すること
・発泡剤(例えば、水等)の使用量を調整(発泡剤の使用量を減少(増加)すると硬度が大きく(小さく)なる。但し、水を用いると、添加量が多すぎる場合に硬度が大きくなってしまうことがあり、加え過ぎないようにする。)すること
・成形型を使用する際には、成形型内へ注入するポリウレタン原材料の充填率を調整(充填率を大きく(小さく)すると、高比重(低比重)となり、硬度が大きく(小さく)なる。)する
【0034】
(カーボンブラック)
本発明で用いるカーボンブラックは、DBP吸油量300cm3/100g以上550cm3/100g以下であるものが好ましい。DBP吸油量が、300cm3/100g以上550cm3/100g以下のカーボンブラックを用いると、ポリウレタンスポンジ層を低抵抗化することができる。カーボンブラックのDBP吸油量が、300cm3/100g以上であると、導電性が得られやすいため、少量のカーボンブラックの添加でポリウレタンスポンジ層を低抵抗化することができ、ポリウレタンスポンジ層の硬度が高くなり過ぎてしまうこともない。また、DBP吸油量が550cm3/100g以下のカーボンブラックとすると、カーボンブラックを含むポリウレタン原材料の粘度の増加が抑制され、分散剤の効果を向上させることができる。また、本発明で用いるカーボンブラックは、BET比表面積が1000m2/g以上1400m2/g以下であるものが好ましい。
【0035】
また、カーボンブラックは、ポリウレタン原材料中に、該ポリウレタン原材料のポリオール成分総質量に対し、1.0質量%以上25.0質量%以下含まれることが好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下含まれることがより好ましい。該ポリウレタン原材料のポリオール成分総質量に対し、1.0質量%以上のカーボンブラックが含まれると十分に低抵抗化することができる。また、該ポリウレタン原材料のポリオール成分総質量に対し、25.0質量%以下のカーボンブラックが含まれるとトナー供給ローラの硬度が低くなり、トナーが劣化しにくくなる。
【0036】
(ポリエステル樹脂系分散剤(A))
本発明で用いるポリエステル樹脂系分散剤(A)は、吸着基と質量平均分子量が9000以上50000以下の側鎖からなるものである。ポリエステル樹脂系分散剤(A)の側鎖の質量平均分子量は、9000以上35000以下であることが好ましい。さらに好ましくは、9000以上25000以下である。ポリエステル樹脂系分散剤(A)の側鎖の質量平均分子量が9000未満であると、側鎖が短くなってしまい、立体障害による凝集防止の効果が得られにくくなる場合があるため、カーボンブラックの安定した分散状態を保つことが困難になる場合がある。ポリエステル樹脂系分散剤(A)の側鎖の質量平均分子量が50000より大きいと、ポリエステル樹脂系分散剤(A)自体の粘度が大きくなってしまい、取扱いが困難になったり、ポリウレタンスポンジ層を構成する材料に溶解することが困難になる場合がある。吸着基には塩基性、酸性、ノニオン系など様々なものがあるが、カーボンブラックに対しては、塩基性吸着基が好ましい。ポリエステル樹脂系分散剤(A)の質量平均分子量については、サイズ排除クロマトグラフィー等を用いて測定することができる。
【0037】
またポリエステル樹脂系分散剤(A)は、ポリウレタン原材料中に、該ポリウレタン原材料のポリオール成分総質量に対し、0.5質量%以上10.0質量%以下含まれることが好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下含まれるとより好ましい。ポリエステル樹脂系分散剤(A)が該ポリウレタン原材料のポリオール成分総質量に対し0.5質量%以上含まれると、該ポリウレタン原材料の粘度の上昇を抑制することができる。これにより、ポリウレタンスポンジ層の成形が容易になる。また、ポリエステル樹脂系分散剤(A)が該ポリウレタン原材料のポリオール成分総質量に対し10.0質量%以下含まれると、ポリエステル樹脂系分散剤(A)が染み出しトナー供給ローラと当接している現像ローラを汚染することもない。
【0038】
本発明で用いることのできるポリエステル樹脂系分散剤(A)としては、例えば、SOLSPERSE 71000(日本ルーブリゾール(株)製)やSOLSPERSE 20000(日本ルーブリゾール(株)製)等を挙げることができる。
【0039】
(ポリオール成分)
本発明で用いるポリオール成分は、特に制限は無く、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、THF−アルキレンオキサイド共重合体ポリオール、ポリエステルポリオール等を好適に用いることができる。また、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物、フォスフェート系ポリオール、ハロゲン含有ポリオール等を好適に用いることができる。
【0040】
本発明で用いるポリオール成分は、好ましくは、質量平均分子量2500以上7500以下のポリエーテルポリオールである。ポリエーテルポリオールの質量平均分子量が7500以下であると、取扱いやすい粘度となり、ポリウレタン原材料の他成分等との混合や、調製したポリウレタン原材料の金型への注型が容易になる。また、ポリエーテルポリオールの質量平均分子量が2500以上であると、形成されるポリウレタンスポンジ層の硬度を低くすることができる。ポリエーテルポリオールの質量平均分子量は、より好ましくは、3000以上6000以下である。
【0041】
また、ポリエーテルポリオールは、平均官能基数が2以上4以下であることが好ましい。平均官能基数が2以上であると、作製されるトナー供給ローラの高温高湿環境下での圧縮永久歪が良くなる傾向がある。また、平均官能基数が4以下であると、トナー供給ローラの硬度を低くすることができる。
【0042】
(イソシアネート成分)
本発明では、イソシアネート成分についても特に制限はなく、汎用であるトルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製−MDI(ポリメリックMDI)を用いることができる。また、ポリメリックMDI(変性MDI)だけでなく、特殊なイソシアネートを用いても差し支えない。特殊なイソシアネートとしては、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートを挙げることができる。また、特殊なイソシアネートとして、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添−XDI、水添−MDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。また、特殊なイソシアネートとして、トリス(イソシアネートフェニール)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネートが挙げられる。更に、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロへプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの特殊なイソシアネートも好適に用いることができる。
【0043】
イソシアネート成分としては、トルエンジイソシアネート(TDI)を20%以上含有するイソシアネート成分が好ましい。また、イソシアネート成分100質量部に含まれる、トルエンジエイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体の合計量は、20質量部以上含まれることが好ましい。これらの合計量が20質量部以上であると通気量が高く、イソシアネート成分が好適な粘度となり、ポリオール成分と混合しやすく、セル径を均一にしやすい。イソシアネート成分としてポリオールと予め反応しプレポリマー化したものを用いても良い。
【0044】
また、イソシアネートインデックス(100×(NCO基数/活性水素基数))は70以上120以下であることが好ましい。イソシアネートインデックスを70以上とすると樹脂化が十分になり、トナー供給ローラの成形性が向上する。また、イソシアネートインデックスを120以下とすると硬度が高くなりすぎることがない。
【0045】
(触媒)
本発明では、必要に応じて触媒を用いることができる。触媒の種類には特に制限は無く、従来公知のものを使用しても良い。例えば、下記触媒が用いられる。
【0046】
<アミン系触媒>
・トリエチレンジアミン
・ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル
・N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン
・1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7
・1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5
・1,2−ジメチルイミダゾール
・N−エチルモルホリン
・N−メチルモルホリン
【0047】
<有機金属系触媒>
・オクチル酸錫、オレイン酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、
・テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン
【0048】
<酸塩触媒>
前記アミン系触媒及び有機金属系触媒の初期活性を低下させた酸塩触媒(カルボン酸塩や蟻酸塩、オクチル酸塩、ホウ酸塩等)
【0049】
上記触媒は一種用いても良く、二種以上を組み合せて用いても良い。
【0050】
(発泡剤)
本発明では、必要に応じて発泡剤を用いることができる。特に、水は、ポリイソシアネートと反応して炭酸ガスを発生することから、発泡剤として好適に使用される。また、地球環境保護の目的で開発されたクロロフルオロカーボン類(HFC−134A等)、炭化水素(シクロペンタン等)、その他の発泡剤を使用しても、またこれらと水とを併用しても本発明の主旨を損なうものではない。
【0051】
(整泡剤)
本発明では、必要に応じて整泡剤を用いることができる。整泡剤としては、例えば、下記のものが挙げられる。
・ポリジメチルシロキサンとエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合物から得られる水溶性ポリエーテルシロキサン
・スルホン化リシノール酸のナトリウム塩やこれらとポリシロキサン・ポリオキシアルキレンコポリマーとの混合物
これらの整泡剤の中で、ポリジメチルシロキサンとエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合物から得られる水溶性ポリエーテルシロキサンが好適である。
【0052】
(その他助剤)
本発明では、その他助剤として、架橋剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、酸化防止剤、導電性付与剤等を必要に応じて適量用いることができる。これらの助剤を必要に応じて添加しても何等本発明の主旨を損なうものではない。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明する。本発明は、実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもない。
【0054】
本実施例及び比較例で作製したトナー供給ローラの表面のセル開口率、電気抵抗及び硬度は、下記方法により測定した。
【0055】
(トナー供給ローラの表面のセル開口率)
トナー供給ローラの表面のセル開口率は、トナー供給ローラのポリウレタンスポンジ層の全表面積に対する開口した部分(セル)の占める面積の割合であり、次のようにして測定した。すなわち、トナー供給ローラのポリウレタンスポンジ層表面の光学顕微鏡写真映像又は電子顕微鏡写真映像から開口したセルの占める面積So及び該写真映像の全面積Stを求め、下記式により算出した。
セル開口率=100×(So/St
【0056】
(トナー供給ローラの電気抵抗)
トナー供給ローラの芯金両端部を、トナー供給ローラの外径が1mm潰れるように、外径30mmのステンレス製ドラムに圧着し、芯金とステンレス製ドラムとの間に200Vの電圧を印加し、電流値を測定し、オームの法則により抵抗値を算出した。なお、トナー供給ローラの電気抵抗の測定は、22℃/55%RH(N/N)の環境下で行った。
【0057】
(トナー供給ローラの硬度)
まず、本実施例、比較例で作製したトナー供給ローラの軸方向に3ヶ所、各軸方向に於いて周方向の90度毎に4ヶ所、計12ヶ所においてトナー供給ローラを押圧していく時の荷重−変形量曲線を測定した。この荷重−変形量曲線の測定方法を、図2に基き説明する。図2に示したように、トナー供給ローラ1を、芯金2の両端部において圧縮試験機(不図示)の芯金支持体4で支持した。また、圧縮試験機に長さ50mm(トナー供給ローラ長手方向)×幅10mm×厚さ10mmの板状押圧面を有する冶具を取り付けた。次に、圧縮試験機にて、10mm/minの速度でトナー供給ローラを押圧して2mm変形させ、トナー供給ローラを押圧していく時の荷重−変形量曲線を測定した。トナー供給ローラの上記12ヶ所での測定で得られた荷重−変形量曲線から、硬度を次のようにして求めた。温度23℃、相対湿度53%の環境下で測定した前記荷重−変形量曲線の各々から、押圧して変形量Δ(mm)=1mmとなった時の該トナー供給ローラ表面にかかる荷重S1(N)を求め、下記式にて硬度(N/mm)を求め、その平均値をローラの硬度とした。この数値が大きくなるほど、ポリウレタンスポンジ層3が硬いことを示している。
硬度(N/mm)=S1/Δ
【0058】
(画像評価)
本実施例及び比較例において作製した各トナー供給ローラをレーザービームプリンター(hp color Laser Jet4600、商品名、日本ヒューレット・パッカード(株)製)用のカートリッジを改造して組み込んだ。この改造したカートリッジを上記レーザービームプリンターに搭載し、10℃/15%RH(L/L)の環境下に1週間静置後、10℃/15%RH(L/L)環境下で画像評価を行った。50枚プリントを行い、そのときのカブリを目視で観察し、得られた結果から下記基準に基づき画像評価を行った。
○:画像良好
△:使用に支障ない
×:不具合が明確に認められた
【0059】
実施例及び比較例のトナー供給ローラのポリウレタンスポンジ層を形成するための原料として下記のものを準備した。
(1)カーボンブラック
・カーボンECP
(商品名、ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)製、DBP吸油量=360cm3/100g、BET比表面積=800m2/g)
・カーボンECP600JP
(商品名、ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)製、DBP吸油量=495cm3/100g、BET比表面積=1270m2/g)
(2)ポリエステル樹脂系分散剤(A)
・SOLSPERSE 20000
(商品名、日本ルーブリゾール(株)製、吸着基を有する。側鎖の質量平均分子量=10500、界面活性剤なし)
(3)他のポリエステル樹脂系分散剤
・Disperse Ayd No.8(DA−8と表すことがある)
(商品名、エレメンティス ジャパン(株)製、質量平均分子量=8000)
・KS−860
(商品名、楠本化成(株)製、高分子ポリエステルアミン塩(アニオン系界面活性剤)40%含有、側鎖の質量平均分子量:7000以下)
【0060】
(実施例1〜5)
表1に示すカーボンブラック及びポリエステル樹脂系分散剤(A)を表1に示す量使用し、これに、下記原料をプレミックスした。
・ポリエーテルポリオール 100質量部
(アクトコールEP−550N、商品名、三井化学ポリウレタン(株)製、粘度530mPa・s(25℃)、OH価54±2mgKOH/g)
・整泡剤 1質量部
(SRX274C、商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製シリコーン整泡剤)
・触媒 0.1質量部
(TOYOCAT−ET、商品名、東ソー株式会社製第三級アミン触媒)
・触媒 0.5質量部
(TOYOCAT−L33、商品名、東ソー株式会社製第三級アミン触媒)
・発泡剤(水) 2.0質量部
【0061】
さらにこのプレミックスしたものに、NCOインデックスが90となるように、イソシアネート(コスモネートTM−20、商品名、三井化学ポリウレタン(株)製、変性MDI、NCO%=44.5)を25℃で混合攪拌し、ポリウレタン原材料を調製した。
【0062】
また、直径5mmの金属製芯金を、内径15mmの円筒状キャビティを有する円筒状金型のキャビティ内に該キャビティの中心線と、芯金の中心線とが一致するように配置した。形成されるポリウレタンスポンジ層の密度が0.10g/cm3になるように、前記ポリウレタン原材料の充填率を調整し注入した。次に、前記円筒状金型を60℃のオーブン中で30分間加熱することにより発泡硬化させた。その後、脱型しトナー供給ローラを得た。各実施例にて得られたトナー供給ローラ表面のセル開口率、電気抵抗、硬度は、上記方法で測定した。また各実施例にて得られたトナー供給ローラを上記のようにカートリッジに組み込み、上記の画像評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
カーボンブラックを用いなかったこと以外は実施例2と同様にしてトナー供給ローラを得、前記実施例と同様にして得られたトナー供給ローラの評価を行った。結果を表2に示す。
【0064】
(比較例2)
ポリエステル樹脂系分散剤(A)に替えて他のポリエステル樹脂系分散剤DA−8(Disperse Ayd No.8)を用いた以外は実施例2と同様にしてトナー供給ローラを得、前記実施例と同様にして得られたトナー供給ローラの評価を行った。結果を表2に示す。
【0065】
(比較例3)
ポリエステル樹脂系分散剤(A)に替えて他のポリエステル樹脂系分散剤KS−860を用いた以外は実施例2と同様にしてトナー供給ローラを得、前記実施例と同様にして得られたトナー供給ローラの評価を行った。結果を表2に示す。
【0066】
(比較例4)
ポリエステル樹脂系分散剤(A)を用いなかったこと以外は実施例5と同様にしてトナー供給ローラを得、前記実施例と同様にして得られたトナー供給ローラの評価を行った。結果を表2に示す。
【0067】
(比較例5)
ポリエステル系分散剤(A)を用いなかったこと以外は実施例2と同様にしてトナー供給ローラを得、前記実施例と同様にして得られたトナー供給ローラの評価を行った。結果を表2に示す。
【0068】
表1に示されているように、実施例品は、いずれもカーボンブラック及びポリエステル樹脂系分散剤(A)が含まれているため、低電気抵抗になっていることがわかる。また吸着基と質量平均分子量が9000以上50000以下の側鎖からなるポリエステル樹脂系分散剤(A)が混合されているため、表面のセル開口性に優れるばかりでなく、トナー供給ローラの硬度も高硬度になっていないため、画像も良好である。
【0069】
これに対し比較例品は、表2に示されているように、表面のセル開口性が不十分(比較例2)であったり、電気抵抗の高いもの(比較例1)や、トナー供給ローラが成形できない(比較例3〜5)ものもあった。また、表面のセル開口性が不十分であるもの(比較例2)は、画像の濃度ムラが発生し、電気抵抗の高いもの(比較例1)は画像の濃度ムラや濃度が薄くなるといった不具合が発生した。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のトナー供給ローラの概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明におけるトナー供給ローラの硬度の測定方法を示す簡略図である。
【符号の説明】
【0073】
1 トナー供給ローラ
2 芯金
3 ポリウレタンスポンジ層
4 芯金支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、該芯金の外周に形成されたポリウレタンスポンジ層とを有するトナー供給ローラにおいて、前記ポリウレタンスポンジ層が、ポリオール成分、イソシアネート成分、吸着基と質量平均分子量が9000以上50000以下の側鎖からなるポリエステル樹脂系分散剤(A)及びカーボンブラックを含有するポリウレタン原材料を発泡硬化させて得られるものであることを特徴とするトナー供給ローラ。
【請求項2】
前記ポリエステル系分散剤(A)が、前記ポリウレタン原材料中に、該ポリウレタン原材料のポリオール成分総質量に対し0.5質量%以上10.0質量%以下含まれることを特徴とする請求項1記載のトナー供給ローラ。
【請求項3】
前記カーボンブラックが、DBP吸油量300cm3/100g以上550cm3/100g以下のカーボンブラックであり、前記ポリウレタン原材料中に、該ポリウレタン原材料のポリオール成分総質量に対し1.0質量%以上25.0質量%以下含まれることを特徴とする請求項1または2記載のトナー供給ローラ。
【請求項4】
前記ポリウレタンスポンジ層の表面のセル開口率が20%以上90%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー供給ローラ。
【請求項5】
温度22℃、相対湿度55%の雰囲気中で、200Vの電圧を印加して測定される電気抵抗値が1×105Ω以上1×108Ω未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー供給ローラ。
【請求項6】
ローラ硬度が0.981N/mm以上2.94N/mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のトナー供給ローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−8907(P2009−8907A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170482(P2007−170482)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】