説明

トナー供給ロール

【課題】 低硬度で、導電特性及び耐久性に優れたトナー供給ロールを提供する。
【解決手段】 導電性のシャフト11と、シャフト11の外周に設けられる非導電性の発泡弾性層12とを具備するトナー供給ロール10であって、発泡弾性層12の外周及び端部には、導電剤を含有する厚さが0.5〜1.5mmの導電層13が設けられており、前記トナー供給ロール表面の平均開口セル径は100〜800μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式複写機及びプリンター、又はトナージェット式複写機及びプリンター等の画像形成装置に用いられるトナー供給ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機及びプリンターなどの画像形成装置のトナー供給ロールは、装置の高速化に伴い、低硬度化が要求されている。そこで、トナー供給ロールとして、ポリウレタンフォーム等の発泡弾性体を用いたものが提案されており、発泡弾性体の配合や発泡倍率により、硬度(当接圧)や摩擦係数を調製している。しかしながら、導電剤を配合して発泡弾性体を形成する場合、材料の粘度が上昇して、高発泡の発泡弾性体を得るのが困難であるという問題があった。
【0003】
また、ポリウレタンフォームの表面に、塗料を塗布して皮膜を形成したトナー供給ロールが提案されていている(特許文献1参照)。しかしながら、十分な導電性が得られないことや、コート層が剥離し易いということが問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2002−236414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、低硬度で、導電特性及び耐久性に優れたトナー供給ロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、導電性のシャフトと、前記シャフトの外周に設けられる非導電性の発泡弾性層とを具備するトナー供給ロールであって、前記発泡弾性層の外周及び端部には、導電剤を含有する厚さが0.5〜1.5mmの導電層が設けられており、前記トナー供給ロール表面の平均開口セル径は100〜800μmであることを特徴とするトナー供給ロールにある。
【0007】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のトナー供給ロールにおいて、前記導電剤は、電子導電剤及びイオン導電剤のうち少なくも一方であることを特徴とするトナー供給ロールにある。
【0008】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載のトナー供給ロールにおいて、前記導電層は、導電剤を含有する導電性塗料を塗布することにより形成したものであり、前記導電性塗料は、有機溶媒と、前記有機溶媒に可溶のゴム及び樹脂のうち少なくとも一方と、を含むことを特徴とするトナー供給ロールにある。
【0009】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載のトナー供給ロールにおいて、前記有機溶媒は、前記発泡弾性層を膨潤させるものであることを特徴とするトナー供給ロールにある。
【0010】
本発明の第5の態様は、第3又は4の態様に記載のトナー供給ロールにおいて、前記導電性塗料は、ウレタン、シリコーン、アクリル、及びナイロンから選択される少なくとも1つを含むことを特徴とするトナー供給ロールにある。
【0011】
本発明の第6の態様は、第3〜5のいずれか一つの態様に記載のトナー供給ロールにおいて、前記導電性塗料は、添加剤を含有することを特徴とするトナー供給ロールにある。
【0012】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載のトナー供給ロールにおいて、前記添加剤は、フッ素化合物、シリコーン又はシリカであることを特徴とするトナー供給ロールにある。
【0013】
本発明の第8の態様は、第1又は2の態様に記載のトナー供給ロールにおいて、前記導電層は、前記発泡弾性層の表層部に、少なくともイソシアネート成分及び有機溶媒を含有する表面処理液を含浸させて形成したものであることを特徴とするトナー供給ロールにある。
【0014】
本発明の第9の態様は、第1〜8のいずれか一つの態様に記載のトナー供給ロールにおいて、前記トナー供給ロールは、前記シャフトの外周に前記発泡弾性層を成形した後、前記発泡弾性層の外周及び端部に前記導電層を形成して得たものであることを特徴とするトナー供給ロールにある。
【0015】
本発明の第10の態様は、第1〜9のいずれか一つの態様に記載のトナー供給ロールにおいて、前記発泡弾性層は、NN環境(23℃、55%RH)下、印加電圧100Vで測定される電気抵抗値が1.0×10Ω〜1.0×1016Ωであることを特徴とするトナー供給ロールにある。
【0016】
本発明の第11の態様は、第1〜10のいずれか一つの態様に記載のトナー供給ロールにおいて、前記トナー供給ロールは、NN環境(23℃、55%RH)下、印加電圧100Vで測定される電気抵抗値が1.0×10Ω未満であることを特徴とするトナー供給ロールにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発泡弾性体の低硬度性を維持しつつ、所望の導電特性とし、且つ剥がれ等のない耐久性に優れたトナー供給ロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のトナー供給ロールの断面図である。
【図2】試験例3の測定方法を説明する図である。
【図3】本発明のトナー供給ロールの拡大断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のトナー供給ロールについて詳細に説明する。図1は、本発明のトナー供給ロールの断面図である。
【0020】
図1に示すようにトナー供給ロール10は、導電性のシャフト11と、シャフト11の外周に設けられる非導電性の発泡弾性層12を有するものであり、発泡弾性層12の外周及び端部には、導電剤を含有する厚さが0.5〜1.5mmの導電層13が設けられている。このトナー供給ロール10の表面の平均開口セル径は、100〜800μmである。
【0021】
このように、発泡弾性層12の外周及び端部に、所定の厚さの導電層13を設けることにより、シャフト11と導電層13とが電気的に導通し、トナー供給ロール10は導電性に優れたものとなる。本発明のトナー供給ロール10は、導電性を十分に確保することができることで、画像形成の際に画像不良の発生することのないものとなる。なお、発泡弾性層12の端部に導電層13が形成されていない場合は、十分な導電性が確保できなくなってしまう。
【0022】
本発明にかかる導電層13は、上述したように、厚さが0.5〜1.5mmである。ここで、導電層13の厚さは、導電剤が存在する領域の幅を指す。この導電層13は、発泡弾性層12の表面のセル開口部を塞ぐことなく形成されている。すなわち、導電層13は、発泡弾性層12の表面のセル開口部を塞いで表面を覆うように形成されるのではなく、発泡弾性層12の表面のセル開口部をそのまま保持するようにセルの内表面に沿って形成されるものである。これにより、トナー供給ロール10は、表面にセルが開口した状態となり、トナーの掻き取り性能に優れたものとなる。また、発泡弾性層12のセルが保持されていることにより、発泡弾性層12の低硬度・低比重等の特性を維持することができ、また、厚さが0.5〜1.5mmの導電層13を形成していることにより、導電性及び耐摩耗性に優れたものとなる。すなわち、トナー供給ロール10は、低硬度でニップを確保しつつ、導電性及び耐摩耗性の向上したものとなる。
【0023】
なお、導電層13の厚さが0.5mm未満であると、導電性を十分に確保することができなくなってしまう。一方、1.5mmよりも大きくなると、トナー供給ロール10の硬度が上昇してしまい、現像ロールの表面にフィルミングが発生しやすくなったり、トナーの劣化を招いたりしてしまう。また、トナー供給ロール10を長期間使用することにより、変形してしまう虞がある。
【0024】
導電層13の形成方法としては、導電剤を含有する導電性塗料を塗布することにより形成する方法や、導電剤及びイソシアネート化合物を含有する表面処理液を発泡弾性層12の表層部に含浸させることにより形成する方法がある。これらの方法により、導電剤が発泡弾性層12の外周及び端部に固定化されて、導電層13とすることができる。また、発泡弾性層12の外周に導電層13を形成することにより、トナー供給ロール10を所望の摩擦係数に調製することができる。
【0025】
導電剤としては、カーボンブラック、金属粉などの電子導電性付与剤や、イオン導電性付与剤、又はこれらの両者を混合して用いることができる。カーボンブラックは種々の性質を持ったものがあるが、カーボン微粉末を用いるのが好ましい。イオン導電性付与剤としては、有機塩類、無機塩類、金属錯体、イオン性液体等が挙げられる。有機塩類、無機塩類としては、過塩素酸リチウム、4級アンモニウム塩、三フッ化酢酸ナトリウムなどが挙げられる。また、金属錯体としては、ハロゲン化第二鉄−エチレングリコールなどを挙げることができ、具体的には、特許第3655364号公報に記載されたものを挙げることができる。一方、イオン性液体は、室温で液体である溶融塩であり、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、特に、融点が70℃以下、好ましくは30℃以下のものをいう。具体的には、特開2003−202722号公報に記載されたものを挙げることができる。
【0026】
導電剤を含有する導電性塗料を塗布することにより導電層13を形成する場合は、有機溶媒と、有機溶媒に可溶のゴム及び樹脂のうち少なくとも一方と、を含む導電性塗料を塗布し、乾燥硬化させることにより、導電層13を形成する。ゴムや樹脂がバインダーとなり、導電剤が発泡弾性層12の外周及び端部に固定化されることにより、十分な導電性を確保することができる。導電性塗料を塗布することにより導電層13を形成する場合は、導電層13は、発泡弾性層12の表面をコートするように且つ発泡弾性層12の表面のセル開口部を塞ぐことなく形成される。すなわち、導電層13は、表面をコートする部分と、セルの内表面に沿って形成される部分とからなる。
【0027】
ゴム及び樹脂は、少なくとも一方を用いればよく、併用してもよい。ゴム及び樹脂は、有機溶媒に可溶である必要があり、また、使用時の変形に耐えることができるように、乾燥後に伸びるものが好ましい。また、ゴム及び樹脂は、使用するゴム基材とのSP値が近いものを選択するのが好ましい。SP値が近いものを選択することにより、ゴム基材からなる発泡弾性層に含浸しやすく、比較的厚い導電層13を形成することができ、また、密着性も向上する。これにより、より耐久性に優れたトナー供給ロールとすることができる。樹脂としては、アクリル樹脂、アミド樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂が挙げられ、ゴムとしては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム等が挙げられる。なお、アミド樹脂としては、ナイロンが挙げられる。シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴムは、柔軟性及びゴム基材との密着性に優れるため特に好ましい。
【0028】
また、導電性塗料は、添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、フッ素化合物、シリコーン、シリカ等を挙げることができる。添加剤を配合することにより、トナー供給ロール10の表面におけるトナー離型性が向上する。
【0029】
有機溶媒は、発泡弾性層を膨潤させ、塗料を溶解し、導電剤を分散させることができるものであればよい。ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン、又はアクリルゴム基材からなる発泡弾性層に対しては酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン(MEK)メチルエチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン等が好適に用いられ、シリコーンゴム基材からなる発泡弾性層に対しては酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン等が好適に用いられ、EPDM基材からなる発泡弾性層に対してはトルエン等が好適に用いられる。
【0030】
導電性塗料は、樹脂やゴム100質量部に対して、導電剤は0.5〜50質量部配合したものであるのが好ましい。これにより、例えば、導電性塗料の電気抵抗値が1.0×10Ω未満となるようにする。
【0031】
導電性塗料を塗布する方法としては、発泡弾性層12に導電性塗料をスプレーコート法、ロールコート法、ディップコート法が挙げられるが、スプレーコート法、ロールコート法が好ましい。このとき、導電層13の厚さが0.5〜1.5mmとなるように、導電性塗料のゴムや樹脂の種類・配合量、塗布量、塗布エアー圧、塗布回数、ロール押付け量等を適宜調製する。
【0032】
導電剤及びイソシアネート化合物を含有する表面処理液を発泡弾性層12の表層部に含浸させることにより導電層13を形成する場合は、発泡弾性層12を表面処理液に浸漬させる、又は発泡弾性層12に表面処理液をスプレー塗布などにより塗布し、乾燥硬化させることにより、導電層13を形成する。この場合は、導電層13は、発泡弾性層12と一体的に形成される。具体的には、表面処理液中の有機溶媒が発泡弾性層12に浸透することにより、発泡弾性層12はわずかに膨潤して微細な溝が発生し、この微細な溝に表面処理液中の少なくともイソシアネート成分及び導電剤が充填されて、発泡弾性層12と一体的な導電層13が形成される。
【0033】
ここで、表面処理液は、有機溶媒に、少なくともイソシアネート成分を溶解させたものである。
【0034】
表面処理液に含まれるイソシアネート成分としては、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(TODI)などのイソシアネート化合物、および前記の多量体および変性体などを挙げることができる。さらに、ポリオールとイソシアネートからなるプレポリマーを挙げることができる。
【0035】
表面処理液は、イソシアネート成分100質量部に対して、導電剤は0.5〜50質量部配合したものであるのが好ましい。これにより、例えば、導電性塗料の電気抵抗値が1.0×10Ω未満となるようにする。
【0036】
また、表面処理液には、ポリエーテル系ポリマーを含有させてもよい。ここで、ポリエーテル系ポリマーは、有機溶媒に可溶であるのが好ましく、また、活性水素を有して、イソシアネート化合物と反応して化学的に結合可能なものが好ましい。
【0037】
活性水素を有する好適なポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、エピクロルヒドリンゴムが挙げられる。ここでいうエピクロルヒドリンゴムは未加硫状態のものを指す。エピクロルヒドリンゴムは、導電層に導電性と共に弾性を付与することができるため好ましい。なお、エピクロルヒドリンゴムは、末端に活性水素(水酸基)を有しているが、ユニットに水酸基、アリル基などの活性水素を有しているものも好ましい。なお、エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体やその誘導体などを挙げることができる。
【0038】
活性水素を有する他の好適なポリエーテル系ポリマーとしては、水酸基又はアリル基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリオール、グリコール等が挙げられる。このようなポリエーテル系ポリマーは活性水素を有する基を両末端に備えたものよりも片末端にのみ備えたものが好ましい。また、数平均分子量が300〜1000であることが好ましい。導電層に弾性を付与することができるためである。このようなポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル、ポリアルキレングリコールジメチルエーテル、アリル化ポリエーテル、ポリアルキレングリコールジオール、ポリアルキレングリコールトリオール等を挙げることができる。
【0039】
このように表面処理液にポリエーテル系ポリマーを添加することで、導電層の柔軟性や強度が向上し、その結果、所望のロールの表面が摩耗したり、当接する感光体等の表面を傷つけたりする虞がなくなる。
【0040】
また、表面処理液には、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択されるポリマーを含有させてもよい。
【0041】
本発明の表面処理液に用いられるアクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーは、所定の溶媒に可溶でイソシアネート化合物と反応して化学的に結合可能なものである。アクリルフッ素系ポリマーは、例えば、水酸基、アルキル基、又はカルボキシル基を有する溶媒可溶性のフッ素系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。また、アクリルシリコーン系ポリマーは、溶媒可溶性のシリコーン系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸シロキサンエステルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。
【0042】
また、表面処理液中のアクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーは、イソシアネート成分に対し、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーの総量を10〜70質量%となるようにするのが好ましい。10質量%より少ないと離型性などの機能が発現し難くなる。一方、ポリマー量が70質量%より多いと、トナー供給ロールの電気抵抗値が上昇するという問題や、相対的にイソシアネート成分が少なくなって有効な導電層が形成できないという問題がある。
【0043】
さらに、表面処理液は、イソシアネート成分、および必要に応じて含有されるこれらポリエーテル系ポリマー、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーを溶解する有機溶媒を含有する。有機溶媒としては特に限定されないが、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の有機溶媒を用いればよい。
【0044】
上述したように、発泡弾性層12の表層部に表面処理液を含浸・硬化させて導電層13を設けることで、導電層13は、発泡弾性層12の表層部に含浸されて一体的に設けられる。このような導電層13は、主にイソシアネート成分がバインダーとなり、硬化することにより導電剤が発泡弾性層12の外周及び端部に固定化されることにより、十分な導電性を確保することができる。
【0045】
本発明のトナー供給ロール10は、シャフト11の外周に発泡弾性層12を成形した後に、発泡弾性層12の外周及び端部に導電層13を形成して得たものであるのが好ましい。これにより、シャフト11と発泡弾性層12の外周及び端部に形成される導電層13とが確実に電気的に導通する。
【0046】
また、トナー供給ロール10は、平均開口セル径が100〜800μmである。ここでいう平均開口セル径とは、トナー供給ロール表面に開口しているセルの開口径の平均値である。平均開口セル径が小さすぎると、トナーを取り込めず搬送量が低下してしまう。また、セル径が小さくなると低硬度・低比重という特性が得られない虞がある。一方、平均開口セル径が大きすぎると、トナー掻き取り効果が十分に得られず、ロール表面が粗悪になるからである。
【0047】
非導電性の発泡弾性層12は、ゴム基材を発泡させたものである。ゴム基材は、特に限定されず、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、シリコーンゴム、EPDMなどが挙げられる。これらのゴム基材は併用してもよく、用途・目的に応じて、種類、組み合わせを適宜選択する。発泡弾性層12は、上述したゴム基材を混合・発泡して成形するものであり、発泡剤、発泡助剤、加硫剤、加硫促進剤、充填剤等を混合して成形してもよい。比重は特に限定されないが、0.015〜0.3の範囲にあるのが好ましい。
【0048】
非導電性の発泡弾性層12は、導電剤を配合していないものであり、例えば、NN環境(23℃、55%RH)下、印加電圧100Vで測定される電気抵抗値が1.0×10Ω〜1.0×1016Ωである。なお、ウレタンからなる発泡弾性層は1.0×10Ω〜1.0×1011Ω程度、EPDMからなる発泡弾性層は1.0×1014Ω〜1.0×1016Ω程度となる。非導電性の発泡弾性層12は、導電剤を配合していないことにより、容易に高発泡とすることができ、低硬度・低比重のものとすることができる。
【0049】
発泡弾性層12は、連続気泡でも独立気泡でもよいが、導電性塗料を用いて導電層を形成する場合は、連続気泡が好ましい。発泡弾性層12が連続気泡であることで、導電性塗料がセルを介して発泡弾性層12の内部に入り込み、所望の厚さの導電層13を容易に形成することができるためである。
【0050】
本発明にかかるトナー供給ロール10は、NN環境(23℃、55%RH)下、印加電圧100Vで測定される電気抵抗値が1.0×10Ω未満であるのが好ましく、さらに好ましくは、1.0×10Ω〜1.0×10Ωである。これにより、トナーを好適に保持することができるものとなる。
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
<ロールの製造>
比重0.078、硬度353N(JISK6400)のウレタンスポンジをスライスして、中央にシャフトの通る穴を空け、表面に接着剤で処理した直径6mmのシャフトを挿入後、加熱、表面研磨をすることによって、発泡弾性層部分の直径15.5mm×幅220mmのロール部材を得た。
【0053】
ロールの電気抵抗値は1.8×1010Ω、平均開口セル径は290μmであった。
【0054】
<導電性塗料の調製>
メチルエチルケトン100質量部に、ウレタン樹脂(ニッポラン5199;日本ポリウレタン社製)20質量部を溶解した溶液に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC300J;ライオン社製)5質量部を分散混合した。
【0055】
<ロールの処理>
ロール部材の外周及び端部に、導電性塗料をスプレーにより塗布し、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱することにより、厚さ0.5mmの導電層を形成したものを実施例1のトナー供給ロールとした。
【0056】
塗装後のロールの電気抵抗値は3.5×10Ω、平均開口セル径は280μmであった。
【0057】
(実施例2)
<ロールの製造>
比重0.017、硬度80Nのウレタンスポンジをスライスして、中央にシャフトの通る穴を空け、表面に接着剤で処理したシャフトを挿入後、加熱、表面研磨をすることによって目的のロール部材を得た。
【0058】
ロールの電気抵抗値は4.2×10Ω、平均開口セル径は760μmであった。
【0059】
<導電性塗料の調製>
縮合反応型シリコーンゴム(YSR3022;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)100質量部に、トルエン446質量部、触媒(YC6831;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)4質量部、密着向上剤(XC9603;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)50質量部、カーボンブラック(アセチレンブラック;電気化学社製)30質量部を添加混合溶解させ、実施例2の導電性塗料を作製した。
【0060】
<ロールの処理>
ロール部材の外周及び端部に、導電性塗料をスプレーにより塗布エアー圧を調製して塗布し、120℃に保持されたオーブンで5分間加熱することにより、厚さ1.0mmの導電層を形成したものを実施例2のトナー供給ロールとした。
【0061】
塗装後のロールの電気抵抗値は1.4×10Ω、平均開口セル径は740μmであった。
【0062】
(実施例3)
<ロールの製造>
10インチロールにて混練りしたエピクロルヒドリンゴムをクロスヘット押出し機でシャフトを用いてこのゴム組成物の押出しを行い、ロール形状物を成形した。成形後、電気炉にロール形状物を投入して加硫発泡を行い、目的のロール部材を得た。
【0063】
比重0.250、ロールの電気抵抗値は5.8×10Ω、平均開口セル径は130μmであった。
【0064】
<導電性塗料の調製>
アクリル系ポリマー(アクリディックA−801−P;DIC社製)20質量部に、イソシアネート化合物(MDI;大日本インキ社製)4質量部、酢酸ブチル100質量部、カーボンブラック(アセチレンブラック;電気化学社製)5質量部を添加混合溶解させ、実施例3の導電性塗料を作製した。
【0065】
<ロールの処理>
ロール部材の外周及び端部に、導電性塗料を含浸したロールに当接させることで転写塗布し、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱することにより、厚さ1.5mmの導電層を形成したものを実施例3のトナー供給ロールとした。
【0066】
塗装後のロールの電気抵抗値は7.1×10Ω、平均開口セル径は130μmであった。
【0067】
(実施例4)
実施例1のロール部材を用い、実施例1の導電性塗料においてアセチレンブラックの代わりに過塩素酸リチウムを入れた以外は同様にして、実施例4の導電性ロールを得た。
【0068】
塗装後のロールの電気抵抗値は4.9×10Ω、平均開口セル径は300μmであった。
【0069】
(実施例5)
<導電性塗料の調製>
N−メトキシメチル化ナイロン(帝国化学社製トレジンEF30T)100質量部と、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC300J;ライオン社製)20質量部とを、MEK 400質量部と混合することにより、実施例5の導電性塗料を作製した。
【0070】
<ロールの処理>
実施例2のロール部材の外周及び端部に、実施例5の導電性塗料を含浸したロールに当接させることで転写塗布し、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱することにより、厚さ1.0mmの導電層を形成したものを実施例5のトナー供給ロールとした。
【0071】
塗装後のロールの電気抵抗値は4.2×10Ω、平均開口セル径は770μmであった。
【0072】
(実施例6)
<表面処理液の調製>
酢酸エチル100質量部、イソシアネート化合物(MDI;大日本インキ社製)7質量部、カーボンブラック(アセチレンブラック;電気化学社製)2質量部、アクリルフッ素ポリマー(モディパーF600;日本油脂社製)1.5質量部、アクリルシリコーンポリマー(モディパーFS700;日本油脂社製)1.5質量部、ポリエチレングリコールジアリルエーテル(分子量450)1.0質量部をボールミルで3時間分散混合した。
【0073】
<ロールの処理>
上記の表面処理液を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例6の導電性ロールを得た。
【0074】
表面処理後のロールの電気抵抗値は8.6×10Ω、平均開口セル径は290μmであった。
【0075】
(比較例1)
<ロールの処理>
塗布量を減らして導電層の厚さを0.3mmにした以外は実施例1と同様にして比較例1のトナー供給ロールを得た。
【0076】
塗装後のロールの電気抵抗値は1.8×10Ω、平均開口セル径は290μmであった。
【0077】
(比較例2)
<ロールの処理>
塗布回数を増やして導電層の厚さを1.8mmにした以外は実施例1と同様にして比較例2のトナー供給ロールを得た。
【0078】
塗装後のロールの電気抵抗値は2.2×10Ω、平均開口セル径は280μmであった。
【0079】
(比較例3)
ロール部材の端部に導電性塗料を塗布しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例3の導電性ロールを得た。
【0080】
塗装後のロールの電気抵抗値は1.3×1010Ω、平均開口セル径は280μmであった。
【0081】
(比較例4)
実施例1のロール部材、導電性塗料を用いて、ディッピング処理によってスポンジ全体に含浸、その後エアーを吹き付けることにより処理液を吹き飛ばし、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱した以外は同様にして、比較例4のロール部材を得た。
【0082】
塗装後のロールの電気抵抗値は9.7×10Ω、平均開口セル径は270μmであった。
【0083】
(比較例5)
<導電性塗料の調製>
水性ウレタン樹脂(ハイドランWLS221;DIC社製)100質量部に、カーボンブラック(アセチレンブラック;電気化学社製)5質量部を添加混合分散させ、比較例5の導電性塗料を作製した。
【0084】
<ロールの処理>
比較例5の導電性塗料を含浸したロールに当接させることで転写塗布し、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱することにより、厚さ0.3mmの導電層を形成したものを比較例5のトナー供給ロールとした。
【0085】
塗装後のロールの電気抵抗値は7.7×10Ω、平均開口セル径は750μmであった。
【0086】
(比較例6)
比重0.014、硬度30N、平均開口セル径880μmのスポンジを用いた以外は実施例2と同様にして比較例6の導電性ロールを得た。
【0087】
塗装後のロールの電気抵抗値は1.4×10Ω、平均開口セル径は870μmであった。
【0088】
(試験例1)平均開口セル径の測定
導電性発泡弾性体表面(外周部)に開口した発泡セル径を顕微鏡(KEYENCE社製 VHX−100)で50倍に拡大観察し、任意に50個セルを選択してそのセル径を平均化することで平均開口セル径とした。
【0089】
(試験例2)導電層の厚さの測定
塗布による領域の厚さはロール両端から40mm部分、およびロール中央部分のスポンジを側面と平行になるように切り出し、それぞれ断面を顕微鏡によって観察した。表面から導電剤が到達した部分(図3中の黒い部分)までの距離を測定して、平均値を求め、導電層の厚さとした。
【0090】
(試験例3)フレ測定
各実施例および各比較例のフレを測定した。フレとは、直径をロール一周分測定したときの最大値から最小値を引いた値のことである。結果を表1に示す。
【0091】
(試験例4)電気抵抗測定
各実施例および各比較例のトナー供給ロールについて、電気抵抗値を測定した。図2に示すように、トナー供給ロール10をSUS304板からなる電極部材40の上に載置し、シャフト11の両端に100g荷重をかけた状態で、シャフト11と電極部材40との間の電気抵抗値を、NN環境(23℃、55%RH)にて、ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて測定した。なお、このときの印加電圧はDC−100Vであった。結果を表1に示す。
【0092】
(試験例5)画像評価
各実施例及び各比較例のトナー供給ロールを、市販のプリンター(C5800 株式会社沖データ製)に実装し、NN環境(23℃、55%RH)の下で、ベタ画像印字、ゴースト確認用画像印字試験を行い、印刷された画像を目視にて評価した。なお、画像評価は、○:画像にカスレ、ゴースト、濃度差が見られない、カスレ:画像後端にカスレが観察された、ゴースト:ゴーストが見られた、濃度差:ベタ画像に濃度差が見られた、で判定した。結果を表1に示す。
【0093】
(試験例6)耐久試験
各実施例及び各比較例のトナー供給ロールを、市販のプリンター(C5800 株式会社沖データ製)に実装し、NN環境(23%、55%RH)の下で、縦10mm×横197mmの帯を10000枚印字した後、発泡弾性層12と導電層13との密着性を確認した。具体的には、トナーを掃除した後、発泡弾性層12と導電層13との剥離がないかを目視により確認した。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

(結果のまとめ)
導電層の厚さが0.5〜1.5mmの実施例1〜6のトナー供給ロールは、電気抵抗値が1.0×10Ω未満であり、画像評価が良好であった。また、耐久試験において剥離が発生することがなく、フレが非常に小さいものであった。
【0095】
これに対し、導電層の厚さが0.3mmの比較例1のトナー供給ロールは、電気抵抗値が1.8×10Ωであり、十分な導電性が得られなかった。このため、トナー供給を良好に行うことができず、画像評価においてカスレが発生した。
【0096】
導電層の厚さが1.8mmの比較例2のトナー供給ロールは、フレが大きいためか、画像評価において濃度差が発生した。
【0097】
端部に導電層を形成しなかった比較例3のトナー供給ロールは、電気抵抗値が1.3×1010Ωであり、十分な導電性が得られなかった。このため、トナー供給を良好に行うことができず、画像評価においてカスレが発生した。
【0098】
発泡弾性層の全体に導電層を形成した比較例4のトナー供給ロールは、フレが大きいためか、画像評価において濃度差が発生した。また、フレは、比較例2よりもさらに大きいものであった。
【0099】
水系ウレタンを塗料として用い、導電層の厚さが0.3mmの比較例5の導電性ロールは、電気抵抗値が7.7×10Ωであり、十分な導電性が得られなかった。このため、トナー供給を良好に行うことができず、画像評価においてカスレが発生した。また、密着が不十分のため、部分的に剥がれが生じた。
【0100】
ロール表面の平均開口セル径が870μmの比較例6の導電性ロールは、現像ロールのトナーを掻き取ることができなかったためか、画像評価においてゴーストが見られた。
【0101】
以上より、導電性のシャフトと、前記シャフトの外周に設けられる非導電性の発泡弾性層とを具備するトナー供給ロールであって、前記発泡弾性層の外周及び端部には、導電剤を含有する厚さが0.5〜1.5mmの導電層が設けられており、表面の平均開口セル径が100〜800μmであるトナー供給ロールは、導電特性及び耐久性に優れたものとなることがわかった。
【符号の説明】
【0102】
10 トナー供給ロール
11 シャフト
12 発泡弾性層
13 導電層
40 電極部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のシャフトと、前記シャフトの外周に設けられる非導電性の発泡弾性層とを具備するトナー供給ロールであって、前記発泡弾性層の外周及び端部には、導電剤を含有する厚さが0.5〜1.5mmの導電層が設けられており、前記トナー供給ロール表面の平均開口セル径は100〜800μmであることを特徴とするトナー供給ロール。
【請求項2】
請求項1に記載のトナー供給ロールにおいて、前記導電剤は、電子導電剤及びイオン導電剤のうち少なくも一方であることを特徴とするトナー供給ロール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトナー供給ロールにおいて、前記導電層は、導電剤を含有する導電性塗料を塗布することにより形成したものであり、前記導電性塗料は、有機溶媒と、前記有機溶媒に可溶のゴム及び樹脂のうち少なくとも一方と、を含むことを特徴とするトナー供給ロール。
【請求項4】
請求項3に記載のトナー供給ロールにおいて、前記有機溶媒は、前記発泡弾性層を膨潤させるものであることを特徴とするトナー供給ロール。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のトナー供給ロールにおいて、前記導電性塗料は、ウレタン、シリコーン、アクリル、及びナイロンから選択される少なくとも1つを含むことを特徴とするトナー供給ロール。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載のトナー供給ロールにおいて、前記導電性塗料は、添加剤を含有することを特徴とするトナー供給ロール。
【請求項7】
請求項6に記載のトナー供給ロールにおいて、前記添加剤は、フッ素化合物、シリコーン又はシリカであることを特徴とするトナー供給ロール。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のトナー供給ロールにおいて、前記導電層は、前記発泡弾性層の表層部に、少なくともイソシアネート成分及び有機溶媒を含有する表面処理液を含浸させて形成したものであることを特徴とするトナー供給ロール。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のトナー供給ロールにおいて、前記トナー供給ロールは、前記シャフトの外周に前記発泡弾性層を成形した後、前記発泡弾性層の外周及び端部に前記導電層を形成して得たものであることを特徴とするトナー供給ロール。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のトナー供給ロールにおいて、前記発泡弾性層は、NN環境(23℃、55%RH)下、印加電圧100Vで測定される電気抵抗値が1.0×10Ω〜1.0×1016Ωであることを特徴とするトナー供給ロール。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のトナー供給ロールにおいて、前記トナー供給ロールは、NN環境(23℃、55%RH)下、印加電圧100Vで測定される電気抵抗値が1.0×10Ω未満であることを特徴とするトナー供給ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−33838(P2011−33838A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180141(P2009−180141)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】