説明

トナー及び現像剤

【課題】ポリ乳酸を用いた場合においても、耐熱保存性を確保しつつ、低温定着性と定着ラチチュードにも優れるトナー用樹脂を提供すること。
【解決手段】分子構造が下記一般式(1)で表され、かつ、水に対する静的接触角が70°以上80°以下であることを特徴とするトナー用樹脂。
X−(Y−Z)n (1)
ただし、X:平面構造を有する骨格、Y:ポリヒドロキシカルボン酸骨格、Z:末端に疎水基を持つ剛直性骨格を表し、nは2以上の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、静電印刷、プリンター、ファクシミリ、静電記録などの電子写真方式の画像形成に用いられるトナーの製造に適したトナー用樹脂、該トナー用樹脂を使用したトナー、該トナーを含む現像剤及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式の画像形成装置、静電記録装置等において、電気的又は磁気的潜像は、トナーによって顕像化されている。例えば、電子写真法では、感光体上に静電荷像(潜像)を形成した後、トナーを用いて潜像を現像して、トナー画像を形成している。トナー画像は、通常、紙等の記録媒体上に転写された後、加熱等の方法で定着される。
【0003】
静電荷像の現像に使用されるトナーは、一般に、結着樹脂中に、着色剤、帯電制御剤等を含有する着色粒子であり、その製造方法は、混練粉砕法に代表されるが、近年、懸濁重合法や溶解懸濁法、乳化凝集法、転相乳化法、伸長重合法などさまざまな方法がとられるようになってきた。
【0004】
また、用いられる樹脂も代表的なスチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられるが、中でもポリエステル樹脂はスチレンアクリル樹脂に比べ、低軟化点の組成を得た場合に、分子量が比較的大きく、Tgを高めにできることや、樹脂自体の強度が強いことなどから、使用時の安定性に好ましく特に低温定着性を要求されるトナーにおいては広く使用されている。こうした理由からポリエステル樹脂はカラートナーとして用いられる例が多くある。
【0005】
従来、トナーの構成成分の70%以上を占める結着樹脂は、そのほとんどが石油資源を原料としており、石油資源の枯渇問題、石油資源を大量消費して二酸化炭素を大気中へ排出することによる温暖化問題が懸念されている。そこで、結着樹脂として、大気中の二酸化炭素を取り込んで成長する植物由来の樹脂を使用すれば、生じる二酸化炭素は、環境中で循環するだけとなり、温暖化問題と石油資源の枯渇問題を同時に解決できる可能性があり、このような植物由来の樹脂を結着樹脂として用いたトナーが種々提案されている。例えば、結着樹脂として、ポリ乳酸を使用することが提案されている。
【0006】
ポリ乳酸は、L体又はD体のみでは結晶性が高いため、有機溶剤に対する溶解性が極めて低く、溶解樹脂懸濁法などの水中でトナーを造粒するトナーの製造方法を用いることは困難である。そのため従来よりポリ乳酸を用いたトナー化は粉砕法により行っており、分級によって生じるトナーのロスと、それに伴う廃棄の問題があった。また、結晶性が高いため、トナー中の顔料の分散性が悪く、不透明なトナーとなり、色相の再現範囲が乏しかった。これに対して、特許文献1ではポリ乳酸のL体及びD体を混合して結晶性を低下させて、有機溶剤への溶解性を向上させることが開示されている。
【0007】
しかしながら、ラセミ化により結晶性を崩すことで十分な有機溶剤溶解性を確保するためには、ガラス転移温度が50℃以下程度になるまでD体比率を上げる必要があるのに加えて、吸湿によりガラス転移点や熱変形温度の低下が起こり、高温多湿下での輸送、保管等を行った際、粒子同士、あるいは形成画像が膠着し、使用に耐えないという欠点も有している。従って、ポリ乳酸をトナーの結着樹脂として使用するためには、樹脂の改質が必要となる。
【0008】
樹脂の末端構造の特性がより樹脂表面に現れやすいことが一般に知られており、ポリ乳酸の耐熱性や耐加水分解性を向上させるための改質として、末端を疎水基で封鎖することが提案されている(特許文献2)。しかしながら、トナーの結着樹脂として使用する場合、耐熱保存性、耐加水分解性と同時に、定着温度に影響するトナーの融点にも留意しなければならない。
【0009】
現在、省エネルギーのために低温定着性の要求が高まっており、トナーの融点を低くすることが強く望まれており、耐熱保存性と低温定着性の両立のために、結着樹脂に、融点と軟化点の差が小さく粘度がある温度から急激に低下する、いわゆるシャープメルト性を持たせることが提案されている。しかし、その一方で、シャープメルト性には定着に有効なゴム状領域幅が狭く、紙上のトナーの一部が定着加熱体側に付着するホットオフセットの発生温度が低くなりやすいため、定着下限温度からホットオフセット発生温度までの範囲である定着ラチチュードが狭くなってしまうという問題がある。
【0010】
この点に関して、特許文献3では高分子鎖に分岐骨格を持たせることで低温定着を達成しつつホットオフセットを抑制するトナーの開発方法を提案している。しかし、この手法はスチレン系モノマー及びアクリル系モノマーから形成されるポリマーに適用されており、ポリ乳酸樹脂に対して適用されるものではない。さらに、ポリ乳酸の末端を疎水基で封鎖する場合、末端の疎水基の特性が表面に強く現れるため、トナーの紙に対する親和性が低下し、定着に有効な弾性率の範囲が狭くなるために、広い定着ラチチュードを得ることはできない。
【0011】
定着ラチチュードの悪化は、定着装置のシステム安定化や省電力化を阻害する。特に、近年、省電力化の徹底のため、定着装置への通電を定着時以外停止することが必要となっており、通電から素早く使用可能温度まで高めることが求められている。これを達成するために低熱容量の部材を使用することが望ましいが、その場合、通電時のオーバーシュートや通紙による温度低下などがより顕著になり、定着装置の温度振れ幅が大きくなりやすい。
【0012】
これを解決する手段として、特許文献4では結着樹脂の不飽和部位による架橋構造を有する結晶性ポリエステルを主成分とする方法が提案されている。しかし、結晶性を持つ樹脂では上述のとおり有機溶剤溶解性は得られず、前記の溶解樹脂懸濁法といったトナー製法を用いることが困難となる。
以上のことから、耐熱保存性、耐加水分解性、低温定着性、そして定着ラチチュードに優れたポリ乳酸樹脂が望まれているが、これら全ての要求を満たす樹脂を得られていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、ポリ乳酸を用いた場合においても、耐熱保存性を確保しつつ、低温定着性と定着ラチチュードにも優れるトナー用樹脂、並びに該トナー用樹脂を使用したトナー、該トナーを用いた現像剤、該現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)分子構造が下記一般式(1)で表され、かつ、水に対する静的接触角が70°以上80°以下であることを特徴とするトナー用樹脂。
X−(Y−Z)n (1)
ただし、X:平面構造を有する骨格、Y:ポリヒドロキシカルボン酸骨格、Z:末端に疎水基を持つ剛直性骨格を表し、nは2以上の整数を表す。
(2)ガラス転移温度が57℃以上、90%RH環境下での圧縮試験においてその変形温度が53℃以上であることを特徴とする(1)に記載のトナー用樹脂。
(3) 前記トナー用樹脂におけるXが複素環式化合物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のトナー用樹脂。
(4)前記トナー用樹脂におけるZが環式化合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のトナー用樹脂。
(5)前記トナー用樹脂におけるZが末端にフッ素を持つ環式化合物であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のトナー用樹脂。
(6)前記トナー用樹脂におけるYがウレタン結合を有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のトナー用樹脂。
(7)前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格が、炭素数2〜6のヒドロキシカルボン酸が(共)重合して得られたものを含むことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のトナー用樹脂。
(8)前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格が、L−ラクチドとD−ラクチドの混合物を開環重合して得られたものであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のトナー用樹脂。
(9)前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格がポリ乳酸骨格であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のトナー用樹脂。
(10)前記ポリ乳酸骨格が、モノマー成分換算での光学純度X(%)が下記式(I)で表される80%以下であることを特徴とする(9)に記載のトナー用樹脂。
X(%)=|X(L体)−X(D体)| (I)
〔ただし、X(L体)は乳酸モノマー換算でのL体比率(%)、X(D体)は乳酸モノマー換算でのD体比率(%)を表す。〕
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載のトナー用樹脂を使用して製造されたことを特徴とするトナー。
(12)少なくとも、(11)に記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤。
(13)更にキャリアを含むことを特徴とする(12)に記載の現像剤。
(14)静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と
を少なくとも含む画像形成方法であって、
前記現像剤が、(12)又は(13)に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
(15)静電潜像担持体と、
該静電潜像担持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と
を少なくとも有する画像形成装置であって、
前記現像剤が、(12)又は(13)に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
(16)静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像剤を用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、前記現像剤が、(12)又は(13)に記載の現像剤であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポリ乳酸を用いた場合においても、耐熱保存性を確保しつつ、低温定着性定着ラチチュードにも優れるトナー用樹脂、並びに該トナー用樹脂を使用したトナー、該トナーを用いた現像剤、該現像剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るトナーを用いて画像を形成する方法に用いる画像形成装置の一実施の形態における構成例を示す概略説明図である。
【図2】タンデム型カラー画像形成装置の一実施の形態における構成例を示す概略説明図である。
【図3】図2に示す画像形成装置における一部拡大概略説明図である。
【図4】本発明のプロセスカートリッジの一実施の形態における構成例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳しく説明する。
(トナー用樹脂)
本発明に係るトナー用樹脂は、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するトナー用樹脂であって、前記トナー用樹脂が下記一般式(1)で表され、かつ、水に対する静的接触角が70°以上80°以下であることを特徴としている。
X−(Y−Z)n (1)
ただし、Xは平面構造を有する骨格、Yはポリヒドロキシカルボン酸骨格、Zは末端に疎水基を持つ剛直性骨格を表し、nは2以上の整数を表す。
【0018】
前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格は、ヒドロキシカルボン酸が(共)重合した骨格を有し、ヒドロキシカルボン酸を直接脱水縮合する方法、あるいは、対応する環状エステルを開環重合する方法で形成できる。重合法は、重合されるポリヒドロキシカルボン酸の分子量を大きくするという観点から環状エステルの開環重合体がより好ましい。さらに、重合の際に2価以上の多価アルコールを開始剤として用いた樹脂は、着色剤との親和性を向上させる効果を示す。トナーの透明性と熱特性の観点から、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成するモノマーとしては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは炭素数2〜6のヒドロキシカルボン酸であり、乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸などが挙げられるが、適切なガラス転移温度を示し、樹脂の透明性や着色剤との親和性の上で、乳酸は特に好ましい。
【0019】
ポリマーの原材料としてヒドロキシカルボン酸以外に、ヒドロキシカルボン酸の環状エステルを用いる事も可能であり、その場合には重合して得られる樹脂のヒドロキシカルボン酸骨格は、環状エステルを構成するヒドロキシカルボン酸が重合した骨格となる。例えば、ラクチド(乳酸ラクチド)を用いて得られる樹脂のポリヒドロキシカルボン酸骨格は、乳酸が重合した骨格になる。また、モノマーとしてL型とD型のモノマーを適量併用することで、ラセミ体の非結晶性樹脂を得ることができる。ラクチドを用いる場合、L型ラクチド、D型ラクチドをそれぞれ混合して用いることができるが、さらにメソ型ラクチドを開環重合することや、D型、L型いずれかのラクチドとメソ型ラクチドを混合して用いることもできる。
【0020】
本発明のトナー用樹脂の構造は一般式X−(Y−Z)nで表されるが、このような構造をとることによって前記樹脂のガラス転移温度等の物性を制御することができる。
【0021】
前記式中のXは分岐型の多官能基を有する分子であれば使用できるが、特に平面構造を有する骨格である必要がある。特に芳香族化合物や、複素環式化合物であることが好ましく、なかでも複素環式化合物であることがより好ましい。Xが平面構造を有する場合、剛直な部位として作用し、さらに分子間での相互作用が強まるため、耐熱性向上に効果があると考えられる。
Xとして使用される平面構造を有する分子としては、2官能性であれば、芳香環を有する、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(略称:BHET)、ビス(2−ヒドロキシプロピル)テレフタレート(略称:BHPT)のようなジオール系化合物、3官能性であれば、イソシアネート基やエポキシ基のようにポリヒドロキシカルボン酸骨格(Y)との反応性を有する官能基であればいずれも用いることができるが、中でも下記式で表されるイソシアヌレート骨格は耐熱性向上の観点から好ましい。
【0022】
【化1】


式中、Rは後述のY或いは連結成分との反応性を有する官能基を持ち、炭素数が8以下のアルキル鎖を有する。
【0023】
前記一般式(1)中のYのポリヒドロキシカルボン酸骨格は、ポリ乳酸骨格であることが好ましい。ポリ乳酸は、乳酸がエステル結合により結合したポリマーであり、近年、環境に優しい生分解性プラスティックとして注目を集めている。即ち、自然界には、エステル結合を切断する酵素(エステラーゼ)が広く分布していることから、ポリ乳酸は環境中でこのような酵素により徐々に分解されて、単量体である乳酸に変換され、最終的には二酸化炭素と水になる。
【0024】
また、前記一般式(1)中のYはウレタン結合を有していることが好ましい。これにより分子間でウレタン相互作用が生じ、耐熱性向上に効果があると考えられる。
【0025】
前記一般式(1)中のZの末端に疎水基を有する剛直性骨格としては、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を合成する際の反応開始剤として利用する観点から水酸基を有する骨格であることが好ましい。また耐熱保存性、耐加水分解性の観点から、環式化合物であることが好ましく、さらにトナーの定着時の濡れ性の観点から末端にフッ素を持つ環式化合物であることがより好ましい。このような環式化合物の例としては、環を有するものであれば特に制限はないが、フェノール、クレゾールといった単環化合物、ナフタレン、アントラセン、フルオレンのような多環芳香族化合物、キノリン、ベンゾフラン、アクリジンのような多環芳香族ヘテロ環化合物、またステロイド骨格などが挙げられ、末端にフッ素を持つ環式化合物としては4−フルオロフェノール、2,3,4,5−ペンタフルオロベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0026】
本発明のトナー用樹脂は水に対する静的接触角が70°以上80°以下であることを特徴とする。静的接触角とは、静止した液体の表面が固体壁と接するところで液体と固体面とがなす角度であり、液体の固体への濡れ性の指標である。樹脂の全ての末端に疎水基を有する剛直性骨格で封鎖しつつ樹脂全体として適度に親水性を持たせることで、耐熱保存性と耐加水分解性を確保し、かつ、主成分がセルロースの記録媒体である紙との接着性を向上させ、低温定着性を向上させると同時に定着ラチチュードを改善することができる。水に対する静的接触角を70°以上80°以下に制御する方法としては、例えば前記式中のYのポリヒドロキシカルボン酸骨格の種類や分子量を制御する、前記式中のXの平面構造を有する骨格において極性基を導入する、等が挙げられる。接触角の測定方法としては、例えば前記トナー用樹脂を有機溶剤に溶解させ、ワイヤーバーにてスライドガラスに均一に塗布し、有機溶剤が十分に揮発した後にθ/2法により測定する方法などが挙げられる。
【0027】
前記トナー用樹脂は、90%RH環境下での圧縮試験においてその変形温度が53℃以上であることが好ましい。ガラス転移点が57℃を超えていても90%RH環境下での変形温度が53℃未満の場合、夏場の長期保存、製品の陸運・海運時、およびトナー化後の画像の保管時において粒子同士や画像の膠着が発生し、品質上重大な欠陥となるため、好ましくない。
【0028】
本発明のトナー用樹脂は、下記式(I)で表される光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を有し、モノマー成分換算での光学純度X(%)は、80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
X(%)=|X(L体)−X(D体)| (I)
〔ただし、X(L体)は、光学活性モノマー換算での前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格に含まれるL体比率(モル%)を表し、X(D体)は、光学活性モノマー換算での前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格に含まれるD体比率(モル%)を表す。〕
【0029】
ここで、前記光学純度Xの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリエステル骨格を有する高分子乃至トナーを純水と1N水酸化ナトリウム及びイソプロピルアルコールの混合溶媒に添加し、70℃で加熱攪拌して加水分解をする。次いで、ろ過して液中の固形分を除去した後硫酸を加えて中和して、ポリエステル樹脂から分解されたL−及び/又はD−乳酸を含有する水性溶液を得る。該水性溶液を、キラル配位子交換型のカラムSUMICHIRAL OA−5000(株式会社住化分析センター製)を用いた高速液体クロマトグラフ(HPLC)で測定し、L−乳酸由来のピーク面積S(L)とD−乳酸由来のピーク面積S(D)を算出した。該ピーク面積から光学純度Xを次のようにして求めることができる。
X(L体)% = 100× S(L)/(S(L)+S(D))
X(D体)% = 100× S(D)/(S(L)+S(D))
光学純度X% = |X(L体)−X(D体)|
なお、当然のことながら、原料で用いているL体、D体は光学異性体であり、光学異性体は、光学特性以外の物理的、化学的性質は同じであるため、重合に用いた場合その反応性は等しく、モノマーの成分比と重合体におけるモノマーの成分比は同じとなる。
上記光学純度が80%以下であると、溶剤溶解性、樹脂の透明性が向上するため好ましい。
【0030】
ヒドロキシカルボン酸骨格を形成するモノマーのX(D体)、X(L体)は、ヒドロキシカルボン酸骨格を形成する際に用いたモノマーのD体、L体の比率と等しくなる。従って、トナー用樹脂のヒドロキシカルボン酸骨格のモノマー成分換算での光学純度X(%)を制御するにはモノマーとしてL体とD体のモノマーを適量併用しラセミ体を得ることで達成できる。
【0031】
ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有する樹脂の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。公知の製造方法のうち、例えば、原料となるとうもろこし等の澱粉を発酵し、乳酸を得た後、乳酸モノマーから直接脱水縮合する方法や乳酸から環状二量体ラクチドを経て、触媒の存在下で開環重合によって合成する方法がある。中でも、分子量の制御を開始剤量で制御できること、および反応を短時間で完結できることなど、生産性の観点から鑑みて開環重合法による方法が好ましい。
【0032】
反応開始剤としては、100℃、20mmHg以下の減圧乾燥や200℃程度の重合過熱を行っても揮散しないアルコール成分であれば、官能基数を問わず従来公知のいずれをも使用することができる。
【0033】
本発明においては、前述の剛直成分Zを開始剤として使用してポリヒドロキシカルボン酸骨格Yを導入したのち、平面構造を有する骨格Xと反応させることができ、またはZを開始剤として別途ポリヒドロキシカルボン酸を合成した後にXを含有するポリ乳酸と連結成分を解して反応させる手法を用いても良い。
【0034】
前記連結成分としては、イソシアネート系化合物、グリシジル系化合物、酸無水物系化合物、酸クロライド系化合物などが挙げられる。好ましい連結成分としては、トリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネートなどのジイソシアネート、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA ジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタル酸、ジグリシジルイソフタル酸、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどのジグリシジルエーテル、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ジオキソテトラヒドロフラニルメチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、テトラフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、ターフェニルテトラカルボン酸無水物、シクロブタンテトラカルボン酸無水物、カルボキシメチルシクロペンタントリカルボン酸無水物などの酸無水物、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族カルボン酸およびその酸クロライドなどが挙げられ、なかでもジイソシアネートが反応性が高く、取り扱いが容易であることから特に好ましい。さらには、反応性が高く、Tgの低下を防ぐ効果が高いことから芳香族系ジイソシアネートが最も好適である。中でもイソホロンジイソシアネート(略称:IPDI)が反応性、安全性の面から好ましい。
【0035】
本発明においては、各種重合反応を促進するために、アミン化合物、スズ化合物、チタン化合物などのエステル化触媒やウレタン化触媒を使用してもよい。ただし、ウレタン化触媒は、樹脂中では分解触媒としても作用するおそれがあるので、全く使用しないか使用量を減らすことが好ましい。
【0036】
さらに、本発明において樹脂重合過程、および/または、重合後に、必要に応じて公知の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、非反応性加水分解防止剤、耐光性改良剤、ワックス、滑剤、帯電制御剤、有機可塑剤、他の生分解性熱可塑性樹脂、そのほかに、着色剤、艶消し剤などの各種添加剤を適宜加えてもよい。
【0037】
(トナー)
―トナーの製造方法―
前記トナーを構成するコア粒子の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適
宜選択することができ、例えば混練粉砕法、乳化凝集法、溶解懸濁法、溶解乳化法、懸濁造粒法、懸濁重合法やエステル伸長法等が挙げられる。以下にこれらを詳細に説明する。
【0038】
<混練粉砕法>
混練粉砕法の場合、ステップ1の前混合工程と、ステップ2の溶融混練工程と、ステップ3の粉砕工程と、ステップ4の分級工程とを含む。
以下に、ステップ1〜ステップ4の各製造工程について詳細に説明する。
【0039】
(ステップ1:前混合工程)
ステップ1の前混合工程では、少なくとも結着樹脂、着色剤および疎水性微粒子を混合機によって乾式混合して混合物を作製する。混合物には、結着樹脂、着色剤および疎水性微粒子の他に、その他のトナー添加成分が含有されていてもよい。その他のトナー添加成分としては、たとえば、前述の離型剤、帯電制御剤などが挙げられる。
乾式混合に用いられる混合機としては、公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
【0040】
(ステップ2:溶融混練工程)
ステップ2の溶融混練工程では、前混合工程で作製された混合物を溶融混練して溶融混練物を作製する。混合物の溶融混練は、結着樹脂の軟化点以上、熱分解温度未満の温度に加熱して行われ、結着樹脂を溶融または軟化させて結着樹脂中に結着樹脂以外のトナーの各原料を分散させる。
溶融混練に使用される混練機としては公知のものを使用でき、たとえば、ニーダ、二軸押出機、二本ロールミル、三本ロールミル、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を用いることができる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダや、MOS320−1800、ニーデックス(以上いずれも商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール型混練機などが挙げられる。トナー原料の混合物は、複数の混練機を用いて溶融混練されても構わない。
【0041】
(ステップ3:粉砕工程)
ステップ3の粉砕工程では、溶融混練工程にて得られた溶融混練物を冷却して固化させた後、粉砕して粉砕物を作製する。すなわち、冷却固化された溶融混練物は、まずハンマーミルまたはカッティングミルなどによって、たとえば体積平均粒径100μm以上5mm以下程度の粗粉砕物に粗粉砕される。その後、得られた粗粉砕物は、たとえば体積平均粒径15μm以下の粉砕物にまでさらに微粉砕される。
粗粉砕物の微粉砕には、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機などを用いることができる。なお、冷却固化された溶融混練物は、ハンマーミルまたはカッティングミルなどによる粗粉砕を経ることなく、直接ジェット式粉砕機または衝撃式粉砕機などにより粉砕されてもよい。
【0042】
(ステップ4:分級工程)
ステップ4の分級工程では、粉砕工程にて作製された粉砕物から、分級機を用いることによって、過粉砕トナー粒子(以下、「過粉砕物」と記す場合がある)や粗大トナー粒子(以下、「粗粉」と記す場合がある)を除去する。過粉砕トナー粒子や粗大トナー粒子は、他のトナーの製造に再利用するために回収して使用することもできる。分級には、遠心力による分級や風力による分級によって過粉砕トナー粒子や粗大トナー粒子を除去できる公知の分級機を使用することができ、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用することができる。分級は分級条件を適宜調整して、分級後に得られるトナー粒子の体積平均粒径が3μm以上15μm以下となるように行われることが好ましい。
【0043】
<乳化凝集法>
乳化凝集法の場合、ステップ1の凝集工程と、ステップ2の付着工程と、ステップ3の融合工程を含む方法により製造される。結着樹脂粒子は一般に乳化重合などにより製造される。
(ステップ1:凝集工程)
ステップ1の凝集工程では、結着樹脂粒子を調製する段階で重合性単量体により結着樹脂粒子を調製し、結着樹脂粒子をイオン性界面活性剤により溶媒中に分散させる。続いて、これと反対極性イオン性界面活性剤で分散された着色剤等のその他のトナー構成材料を混合してヘテロ凝集を生じさせて凝集粒子を形成する。
【0044】
(ステップ2:付着工程)
ステップ2の付着工程では、必要に応じて、樹脂粒子が形成された溶液に更に樹脂粒子を添加して、凝集粒子表面に付着させて、凝集粒子表面を被覆する被覆層を形成する。これによりコアシェル構造を有するトナーを得ることができる。
【0045】
(ステップ3:融合工程)
ステップ3の融合工程では、凝集工程あるいは付着工程を経た後の凝集粒子を、これに含まれる結着樹脂のうち最も高いガラス転移点あるいは融点を有する樹脂の当該ガラス転移点あるいは融点以上に加熱することにより凝集粒子を融合する。
そして、その後、洗浄、乾燥を経てトナーを得る。
【0046】
なお、プロセスは上述したように、各種のトナー原料を分散させた分散液を一括で混合し、凝集することによりなされるものであってもよいが、付着工程を実施するものであってもよい。後者の場合、凝集工程において、初期に各極性のイオン性分散剤の量のバランスを予めずらしておき、例えば硝酸カルシウム等の無機金属塩、もしくはポリ塩化アルミニウム等の無機金属塩の重合体を用いてこれをイオン的に中和し、結着樹脂のガラス転移点あるいは融点以下で凝集粒子(コア層を形成するコア粒子)を形成し、安定化させる。続いて、付着工程でバランスのずれを補填するような極性、量の分散剤で処理された樹脂粒子分散液を追添加して、コア粒子表面に樹脂粒子を付着させる。さらに必要に応じコア粒子または追添加される樹脂粒子分散液に含まれる結着樹脂のガラス転移点以下でわずかに加熱して、より高い温度で安定化させたのち、追添加される樹脂粒子分散液に含まれる結着樹脂のガラス転移点以上に加熱することにより融合させたものでも良い。
更にこの付着工程は複数回、くり返し実施してもよい。
【0047】
<溶解懸濁法>
溶解懸濁法の場合、結着樹脂、着色剤、及び、必要に応じて用いられる離型剤等のその他の成分を、一旦、たとえば、酢酸エチルの如きこれを溶解する有機溶剤に溶解し、ついでこれを溶解しないたとえば水系溶媒中に燐酸カルシウムの如き無機微粒子や、ポリビニルアルコールやポリアクリル酸ナトリウムの如き有機の分散剤とともに、たとえばTKホモミキサー如きホモジナイザーにより、機械的せん断力を与えて、分散させる。
ついで、得られた分散液をたとえば1M塩酸水溶液中に添加し、分散剤成分を溶解、除去した後、ろ紙を用いてヌッチェなどによって固液分離した後に、粒子中に残存する溶媒成分を留去する工程を経てトナーを得る。
【0048】
<溶解乳化法>
溶解乳化法の場合は、結着樹脂成分を溶解するたとえば酢酸エチルの如き溶媒中に溶解したのち、これをイオン性界面活性剤の存在下、たとえばTKホモミキサーの如きホモジナイザーによる機械的せん断力とたとえばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のイオン性界面活性剤の界面活性力によって乳化樹脂粒子を得た後、減圧蒸留等によって残存する溶媒分を留去することで、樹脂粒子分散液を得る。
続いてこれ以降は、この樹脂粒子分散液を用いて乳化凝集法と同様にしてトナーを得る。
【0049】
<懸濁造粒法>
懸濁造粒法の場合、重合性単量体をあらかじめ予備重合させGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定から求められる重量平均分子量Mwが3000から15000の予備重合体を含む重合体溶液を調製後、この溶液に着色剤、重合性単量体、重合開始剤、さらに必要に応じて離型剤等のその他の成分を加え、続いて、これを無機分散剤あるいは有機分散剤の存在下において、機械的せん断力を与え懸濁させた後、攪拌せん断を与えながら、熱エネルギーを付与することによって重合体粒子を得ることもできる。
【0050】
この場合、基本的には懸濁重合法と同様であるが、予備重合体の重量平均分子量Mwを3000〜15000の範囲内に調整することで、定着、造粒に適した粘度が得られるばかりでなく、生成されるトナーに含まれる結着樹脂の重量平均分子量Mwを連鎖移動剤なしに制御することができる。
【0051】
<懸濁重合法>
懸濁重合法の場合、重合性単量体、重合開始剤、着色剤、離型剤等を含有する重合性混合物を、懸濁安定剤を含有する水系媒体中に投入し、撹拌することで重合粒子を形成することで製造することができる。更に好ましくは、重合性単量体、重合開始剤、着色剤、離型剤、カチオン性重合体、を含有する重合性混合物、アニオン性分散剤を添加した水性分散媒系中に投入し、撹拌下に造粒する懸濁重合法が望ましい。このように造粒されたトナーは、離型剤が懸濁粒子中に内包され、定着性や耐オフセット性が顕著に改善される。
【0052】
<エステル伸長法>
少なくとも結着樹脂を有するトナー材料の溶解液乃至分散液を水系媒体中に乳化乃至分散させ、乳化液乃至分散液を調製した後、トナーを造粒(水系造粒)する方式である。この方式としては例えば以下の工程〔1〕〜〔4〕から成る。
【0053】
工程〔1〕:トナー材料の溶解液乃至分散液の調製
前記トナー材料の溶解液乃至分散液は、着色材、結着樹脂などのトナー材料を有機溶剤に溶解乃至分散させることにより調製される。なお、前記有機溶剤は、トナーの造粒時乃至造粒後に除去される。
【0054】
工程〔2〕:水系媒体の調製
前記水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、該水と混和可能なアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類、など溶剤、これらの混合物などが挙げられるが、これらの中でも、水が特に好ましい。
前記水系媒体の調製は、例えば、樹脂微粒子のような分散安定化剤を前記水系媒体に分散させることにより行うことができる。樹脂微粒子の水系媒体中への添加量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5〜10質量%が好ましい。
【0055】
前記樹脂微粒子としては、水系媒体中で水性分散液を形成し得る樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも微細な球状の樹脂粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂およびポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されているのが好ましい。
【0056】
また、前記水系媒体においては、必要に応じて、後述の乳化乃至分散時における、前記溶解液乃至分散液の油滴を安定化させ、所望の形状を得つつ粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0057】
工程〔3〕:乳化乃至分散
前記トナー材料を含む溶解液乃至分散液を前記水系媒体中で乳化乃至分散させる際、トナー材料を含む溶解液乃至分散液を前記水系媒体中で攪拌しながら分散させるのが好ましい。分散の方法としては、特に限定されるものではないが、ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー(在原製作所社製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(特殊機化工業社製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機社製)、キャピトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工社製)等の連続式乳化機、マイクロフルイダイザー(みずほ工業社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機(冷化工業社製)等の膜乳化機、バイブロミキサー(冷化工業社製)等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機等が挙げられる。中でも、粒径の均一化の観点から、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサーを用いることが好ましい。
【0058】
なお、前記溶解液乃至分散液に含まれる結着樹脂として活性水素基含有化合物と反応可能な変性ポリエステル(プレポリマー)を含む場合においては、乳化乃至分散時に反応が進行する。反応条件としては特に制限はなく、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と前記活性水素基含有化合物との組合せに応じて適宜選択することができるが、反応時間としては、10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。
【0059】
工程〔4〕:溶剤の除去
次に、前記乳化乃至分散により得られた乳化スラリーから有機溶剤を除去する。有機溶剤の除去は、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶剤を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶剤を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法等が挙げられる。
【0060】
<その他の成分>
本発明によるトナーは、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。その他の成分としては、帯電制御剤、異形化剤、着色剤、離型剤、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、などが挙げられる。
【0061】
<<帯電制御剤>>
本発明によるトナーは、トナーの帯電性を制御することを目的として、帯電制御剤をトナー中に含有させることができる。帯電制御剤としては、特に制限はなく、下記の各材料が挙げられる。
【0062】
例えば、ニグロシン、炭素数2〜16のアルキル基を含むアジン系染料(特公昭42−1627号公報)、塩基性染料、例えばC.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Bas ic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue 25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)など及びこれらの塩基性染料のレーキ顔料、C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩、ジブチル若しくはジオクチルなどのジアルキルスズ化合物、ジアルキルスズボレート化合物、グアニジン誘導体、アミノ基を含有するビニル系ポリマー、アミノ基を含有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂、特公昭41−20153号公報、特公昭43−27596号公報、特公昭44−6397号公報、特公昭45−26478号公報に記載されているモノアゾ染料の金属錯塩、特公昭55−42752号公報、特公昭59−7385号公報に記載されているサルチル酸、ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体、スルホン化した銅フタロシアニン顔料、有機ホウ素塩類、含フッ素四級アンモニウム塩、カリックスアレン系化合物等が挙げられる。ブラック以外のカラートナーは、当然目的の色を損なう帯電制御剤の使用は避けるべきであり、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好適に使用される。
【0063】
帯電制御剤の含有量は、前記結着樹脂の100質量部に対して、0.01質量部〜2質量部が好ましく、0.02質量部〜1質量部がより好ましい。含有量が、0.01質量部以上であると、帯電制御性が得られ、2質量部以下であると、トナーの帯電性が大きくなりすぎることがなく、帯電制御剤の効果を減退させることもなく、現像ローラとの静電的吸引力が増大してトナーの流動性低下や画像濃度の低下を招くということもない。
【0064】
<<異形化剤>>
本発明によるトナーは、カラートナーの形状を異形化することを目的として、異形化剤を有してもよい。異形化剤としては、この目的が達成できるものであれば、目的に応じて適宜選択することができるが、層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物を含有することが好ましい。本発明において異形化剤として用い得る層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、スメクタイト系の基本結晶構造を持つものを有機カチオンで変性したものが望ましい。また、層状無機鉱物の2価金属の一部を3価の金属に置換することにより、金属アニオンを導入することができる。しかし、金属アニオンを導入すると親水性が高いため、金属アニオンの少なくとも一部を有機アニオンで変性した層状無機化合物が望ましい。
【0065】
層状無機鉱物が有するイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の、有機物カチオン変性剤としては、有機物イオンでこのように変性し得るものであれば、特に制限はなく、第4級アルキルアンモニウム塩、フォスフォニウム塩やイミダゾリウム塩などが挙げられる。なかでも、第4級アルキルアンモニウム塩が望ましい。この第4級アルキルアンモニウムとしては、トリメチルステアリルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0066】
層状無機鉱物が有するイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の、有機物アニオン変性剤としては、有機物イオンで上記のように変性し得るものであれば、特に制限はないが、さらに分岐、非分岐又は環状アルキル(C1〜C44)、アルケニル(C1〜C22)、アルコキシ(C8〜C32)、ヒドロキシアルキル(C2〜C22)、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を有する硫酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、又はリン酸塩が挙げられる。エチレンオキサイド骨格を持ったカルボン酸が望ましい。
【0067】
層状無機鉱物の少なくとも一部を有機物イオンで変性することにより、適度な疎水性を持ち、トナー組成物を含む前記油相(O1)及び(O2)が非ニュ−トニアン粘性を持ち、トナーを異形化することができる。このとき、トナー材料中の一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の含有量は、0.05質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0068】
また、一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物を適宜選択することができ、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト、セピオライト及びこれらの混合物等が挙げられる。なかでも、トナー特性に影響を与えず、容易に粘度調整ができ、添加量を少量とすることができることから、有機変性モンモリロナイト又はベントナイトが好ましい。
【0069】
一部を有機カチオンで変性した層状無機鉱物の市販品としては、Bentone 3、Bentone 38、Bentone 38V(以上、レオックス社製)、チクソゲルVP(United catalyst社製)、クレイトン34、クレイトン40、クレイトンXL(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18ベントナイト;Bentone 27(レオックス社製)、チクソゲルLG(United catalyst社製)、クレイトンAF、クレイトンAPA(以上、サザンクレイ社製)等のステアラルコニウムベントナイト;クレイトンHT、クレイトンPS(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18/ベンザルコニウムベントナイトが挙げられる。好ましいのは、クレイトンAF、クレイトンAPAが挙げられる。また一部を有機アニオンで変性した層状無機鉱物としてはDHT−4A(協和化学工業社製)に下記一般式(2)で表される有機アニオンで変性させたものがより好ましい。下記一般式(2)は例えばハイテノール330T(第一工業製薬社製)が挙げられる。
【0070】
(OROSOM ・・・ (2)
[一般式(2)中、Rは炭素数13を有するアルキル基、Rは炭素数2〜6を有するアルキレン基を表し、nは2から10の整数を表し、Mは1価の金属元素を表す]
【0071】
<<着色剤>>
本発明において、着色剤としては、特に制限はなく、公知の着色剤から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
トナーの着色剤の色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーから選択される少なくとも1種とすることができ、各色のトナーは着色剤の種類を適宜選択することにより得ることができるが、カラートナーであるのが好ましい。
【0073】
黒色用のものとしては、例えばファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
【0074】
マゼンタ用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、48:1、49、50、51、52、53、53:1、54、55、57、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、177、179、202、206、207、209、211;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35、などが挙げられる。
【0075】
シアン用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、60;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45又フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料、グリーン7、グリーン36、などが挙げられる。
【0076】
イエロー用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー0−16、1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、55、65、73、74、83、97、110、151、154、180;C.I.バットイエロー1、3、20、オレンジ36、などが挙げられる。
【0077】
トナー中における着色剤の含有量は、トナー質量に対して、1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力が低下することがあり、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0078】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。このような樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のもののなかから適宜選択することができ、例えば、ポリエステル、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。また、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を有するポリエステル系樹脂(b1)を用いてもよく、樹脂同士の相溶性が向上する点、及び植物度が向上する点で、好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
マスターバッチは、高せん断力をかけて、樹脂と着色剤とを混合又は混練させて製造することができる。この際、着色剤と樹脂との相互作用を高めるために、有機溶媒を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。フラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶媒と共に混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水及び有機溶媒を除去する方法である。混合又は混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置を用いることができる。
【0080】
<<離型剤>>
本発明によるトナーに用い得る離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ワックス類、等が好適に挙げられる。このワックス類としては、特に脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス及び酸化ライスワックスを単独又は組み合わせて使用することができる。カルナウバワックスとしては、微結晶のものがよく、酸価が5以下であり、トナーバインダー中に分散した時の粒子径が1μm以下の粒径であるものが好ましい。モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であることが好ましい。酸化ライスワックスは、米ぬかワックスを空気酸化したものであり、その酸価は10〜30が好ましい。その理由は本発明のトナー結着樹脂に対してこれらのワックスは適度に微分散するため後述するようにオフセット防止性と転写性・耐久性ともに優れたトナーとすることが容易なためである。これらワックス類は1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0081】
その他の離型剤としては、固形シリコーンワックス、高級脂肪酸高級アルコール、モンタン系エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等、従来公知のいかなる離型剤をも混合して使用できる。
【0082】
離型剤のTgとしては、特に制限はないが、70〜90℃が好ましい。70℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、90℃超では低温での離型性が発現されず、耐コールドオフセット性の悪化、定着機への紙の巻付きなどが発生する。離型剤の使用量としては、特に制限はないが、トナー樹脂成分に対し、1質量%〜20質量%、好ましくは3質量%〜10質量%である。1質量%未満ではオフセット防止効果が不十分であり20質量%を超えると転写性、耐久性が低下する。
【0083】
<<無機微粒子>>
本発明によるトナーは、トナー粒子に流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として無機微粒子を有してもよい。
【0084】
無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のもののなかから適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。無機微粒子の一次粒子径としては、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。無機微粒子のトナーにおける含有量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましく、0.01質量%〜2.0質量%がより好ましい。この範囲であると、トナーの流動性、現像性、帯電性が向上する。
【0085】
<<流動性向上剤>>
流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものを意味し、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが挙げられる。なかでも、シリカ及び酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが好ましい。
【0086】
<<クリーニング性向上剤>>
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためにトナーに添加され、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。このポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm〜1μmのものが好適である。
【0087】
<<磁性材料>>
磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のもののなかから適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等が挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0088】
(現像剤)
本発明による現像剤は、上述の本発明によるトナーを少なくとも含有してなり、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有してなる。本発明による現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンター等に使用する場合には、寿命向上等の点で二成分現像剤が好ましい。
【0089】
<キャリア>
キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、この芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
【0090】
芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のもののなかから適宜選択することができる。例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料などが好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている静電潜像担持体(感光体)への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0091】
芯材の粒径としては、平均粒径(重量平均粒径(D50))で、10〜200μmが好ましく、40〜100μmがより好ましい。平均粒径(重量平均粒径(D50))が、10μm未満であると、キャリア粒子の分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、200μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0092】
芯材を被覆する樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂のなかから目的に応じて適宜選択することができる。例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、フッ化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー(フッ化三重(多重)共重合体)、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、キャリアへのトナーフィルミング防止効果が高い点で、シリコーン樹脂が好ましい。
【0093】
樹脂層を構成するシリコーン樹脂としては、特に制限はなく、一般的に知られているシリコーン樹脂のなかから目的に応じて適宜選択することができる。例えば、オルガノシロサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂;アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等で変性したシリコーン樹脂、などが挙げられる。
【0094】
シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、ストレートシリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKR271、KR255、KR152;東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2400、SR2406、SR2410などが挙げられる。
【0095】
変性シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、信越化学工業株式会社製のKR206(アルキド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性);東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキド変性)、などが挙げられる。
【0096】
なお、シリコーン樹脂を単体で用いることも可能であるが、架橋反応する成分、帯電量調整成分等を同時に用いることも可能である。
【0097】
芯材を被覆する樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、この導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、などが挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0098】
芯材を被覆する樹脂層は、例えば、シリコーン樹脂等を有機溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、塗布溶液を芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、などが挙げられる。
【0099】
有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブ、ブチルアセテート、などが挙げられる。
【0100】
樹脂層の焼付としては、特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法、などが挙げられる。
【0101】
樹脂層のキャリアにおける量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましい。0.01質量%未満であると、芯材の表面に均一な樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
【0102】
本発明による現像剤が二成分現像剤である場合には、二成分現像剤におけるキャリアの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二成分系現像剤のトナーとキャリアとの好ましい混合割合は、一般にキャリア100質量部に対しトナー1〜10.0質量部である。
【0103】
(画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ)
本発明による画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
【0104】
本発明による画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
【0105】
<静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段>
静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。静電潜像担持体(「電子写真感光体」、「感光体」、「像担持体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のもののなかから適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)、などが挙げられる。これらのなかでも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
【0106】
静電潜像の形成は、例えば静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成手段により行うことができる。静電潜像形成手段は、例えば静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0107】
帯電は、例えば、帯電器を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。また、帯電器としては、静電潜像担持体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。また、帯電器が、静電潜像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
【0108】
露光は、例えば、露光器を用いて静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。なお、本発明においては、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0109】
<現像工程及び現像手段>
現像工程は、静電潜像を、本発明のトナー又は現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。可視像の形成は、例えば、静電潜像を本発明のトナー乃至現像剤を用いて現像することにより行うことができ、現像手段により行うことができる。現像手段は、例えば、本発明のトナー乃至現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のもののなかから適宜選択することができ、例えば、本発明のトナー乃至現像剤を収容し、静電潜像に現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0110】
現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0111】
現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて静電潜像担持体(感光体)の表面にトナーによる可視像が形成される。
【0112】
<転写工程及び転写手段>
転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、中間転写体上に可視像を一次転写した後、この可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、この複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。転写は、例えば、可視像を転写帯電器を用いて静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、転写手段により行うことができる。転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、この複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。なお、中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体のなかから適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0113】
転写手段(第一次転写手段、第二次転写手段)は、静電潜像担持体(感光体)上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。なお、記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0114】
<定着工程及び定着手段>
定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着手段を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ、などが挙げられる。定着手段が、発熱体を具備する加熱体と、この加熱体と接触するフィルムと、このフィルムを介して加熱体と圧接する加圧部材とを有し、フィルムと加圧部材の間に未定着画像を形成させた記録媒体を通過させて加熱定着する手段であることが好ましい。加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。なお、本発明においては、目的に応じて、定着工程及び定着手段と共に或いはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0115】
<その他の工程及び手段>
<<除電工程及び除電手段>>
除電工程は、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。除電手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器のなかから適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0116】
<<クリーニング工程及びクリーニング手段>>
クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。クリーニング手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体上に残留する電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナのなかから適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0117】
<<リサイクル工程及びリサイクル手段>>
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0118】
<<制御工程及び制御手段>>
制御工程は、本発明による画像形成方法の各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。制御手段としては、各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0119】
本発明による画像形成装置により本発明による画像形成方法を実施する一の態様について、図1を参照しながら説明する。図1に示す画像形成装置100は、静電潜像担持体としての感光体ドラム10(以下「感光体10」という)と、帯電手段としての帯電ローラ20と、露光手段としての露光装置30と、現像手段としての現像装置45と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有するクリーニング手段としてのクリーニング装置60と、除電手段としての除電ランプ70とを備える。
【0120】
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、図1中の矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50には、その近傍に中間転写体用クリーニングブレードなどのクリーニング装置90が配置されており、また、転写紙などの記録媒体95に可視像(トナー像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な転写手段としての転写ローラ80が対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、この中間転写体50上の可視像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、中間転写体50の回転方向において、感光体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と記録媒体95との接触部との間に配置されている。
【0121】
現像装置45は、ブラック用現像ユニット45K、イエロー用現像ユニット45Y、マゼンタ用現像ユニット45M及びシアン用現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック用現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー用現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ用現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン用現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。
【0122】
図1に示す画像形成装置100において、例えば、帯電ローラ20が感光体10を一様に帯電させる。露光装置30が感光体10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光体10上に形成された静電潜像を、現像装置45からトナーを供給して現像して可視像(トナー像)を形成する。この可視像(トナー像)が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙などの記録媒体95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙などの記録媒体95上には転写像が形成される。なお、感光体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
【0123】
本発明による画像形成装置により本発明による画像形成方法を実施する他の態様について、図2を参照しながら説明する。図2に示すタンデム画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置である。このタンデム画像形成装置は、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。尚、図3は図2に示す画像形成装置における一部拡大概略説明図である。
【0124】
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、図2中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、露光装置21が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される記録媒体(転写紙)と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。なお、タンデム画像形成装置においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために、転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
【0125】
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、或いは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0126】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動し、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
【0127】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達され、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。即ち、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、図3に示すように、それぞれ、感光体10(ブラック用感光体10K、イエロー用感光体10Y、マゼンタ用感光体10M、及びシアン用感光体10C)と、感光体10を一様に帯電させる帯電装置160と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に感光体を露光(図3中、L)し、感光体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、この静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する現像装置61と、このトナー画像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置63と、除電器64とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成されたブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用感光体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用感光体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用感光体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用感光体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上にブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0128】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写装置本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。或いは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により合成カラー画像(カラー転写像)をシート(記録紙)上に転写(二次転写)することにより、シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0129】
カラー画像が転写され形成されたシート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより合成カラー画像(カラー転写像)がシート(記録紙)上に定着される。その後、シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排出トレイ57上にスタックされ、或いは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排出トレイ57上にスタックされる。
【0130】
<プロセスカートリッジ>
本発明で用いるプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、トナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを、少なくとも有してなり、画像形成装置本体に着脱可能であり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
【0131】
現像手段としては、本発明の前記現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容された現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなり、更に、担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。
前記プロセスカートリッジは、各種電子写真方式の画像形成装置に着脱可能に備えさせることができ、本発明で用いる画像形成装置に着脱可能に備えさせるのが好ましい。
【0132】
プロセスカートリッジは、例えば、図4に示すように、静電潜像担持体101を内蔵し、帯電手段102、現像手段104、転写手段108、クリーニング手段107を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図4中、103は露光手段による露光、105は記録媒体をそれぞれ示す。
【0133】
次に、図4に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、静電潜像担持体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段104で現像され、得られた可視像は転写手段108により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の静電潜像担持体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【実施例】
【0134】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。また、「部」及び「%」は特にことわらない限り質量部及び質量%を示す。
【0135】
[実施例及び比較例で用いた成分の各物性値の測定方法]
(分子量、残留モノマー量の測定)
装 置 :GPC(東ソー(株)製)
検出器:RI
測定温度:40℃、
移動相:テトラヒドロフラン
流 量:0.45mL/min.
分子量Mn、Mw、及び分子量分布Mw/Mnは、夫々、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定される数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布である。
【0136】
(水に対する接触角の測定)
装置:自動接触角計(協和界面科学(株)製、DM−301)
合成して得られた樹脂を酢酸エチルに溶解させ、ピペッターにて75μL量りとり、スライドガラス上に線径0.3mmのワイヤーバーにて薄く均一に塗布した。この試料の酢酸エチルを十分揮発させた後、自動接触角計のディスペンサから純水を3μL滴下し、液滴が試料上で静置された後にθ/2法にて接触角を算出した。一度の純水の滴下に対して接触角を1回測定するのを1セットとし、これを5セット繰り返し、得られた接触角の平均値を樹脂の水に対する静的接触角の値とした。
【0137】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
装置:DSC(TAインスツルメンツ社製、Q2000)
試料5〜10mgをアルミ製の簡易密閉パンに充填したものを以下の測定フローに供した。
1st Heating:30℃〜220℃、5℃/min.、220℃到達後1分保持
冷却 :温度制御なしで−20℃までクエンチ、−20℃到達後1分保持
2nd Heating:−20℃〜180℃、5℃/min.
ガラス転移温度は、2nd Heatingのサーモグラムにおいてミッドポイント法を採用して値を読み取り、ガラス転移温度として評価を行った。
【0138】
(90%RH熱変形温度の測定)
装置:TMA(SIIナノテクノロジー(株)製、EXSTAR7000)
試料5〜10mgを3mmφ、厚さ1mmのダイに充填し、ハンドプレスにて圧縮し、錠剤成形したものを測定に供した。装置付属の温度/湿度制御装置を使用し、90%RH条件下で30℃から90℃まで2℃/min.で昇温し、標準プローブを用いて圧縮力100mNで加圧してその変位を追った。得られたサーモグラムにおけるピークトップを90%RH熱変形温度とし、評価を行った。
【0139】
(製造例1)樹脂Aの合成
フラスコ中に、L−ラクチド85.0質量部、D−ラクチド15.0質量部、および開始剤としてコレステロール8質量部を投入し、内温を徐々に昇温し減圧条件下で脱水処理を行った。次いで、N2パージ下でさらに昇温し、目視下で系が均一化したことを確認した後、2−エチルヘキサン酸スズ0.03質量部を系に投入して重合反応を行った。この際、系の内温が190℃を超えないように制御した。2時間の反応時間経過後、系を再び流出ラインに切り替え、減圧条件下で未反応のラクチドを除去し、重合反応を完結させ、樹脂Aを得た。
【0140】
(製造例2〜8)樹脂B〜Iの合成
製造例1において、使用する開始剤の種類および量、ラクチドの量を表1に示す通りに変更した以外は製造例1と同様の手順により樹脂B〜Iを合成した。ただし、化合物Pとは以下に示したような構造のものである。
【0141】
【表1】

【化2】

【0142】
(製造例9) 樹脂1の合成
フラスコ中に、樹脂Aを97質量部投入し、内温を徐々に昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。その後、系の温度を150℃に保ち、下記式で表される化合物Qを3質量部、2−エチルヘキサン酸スズ0.20質量部を加えて反応させ、樹脂1を得た。
【化3】

【0143】
(製造例10) 樹脂2の合成
フラスコ中に、樹脂Bを92質量部投入し、内温を徐々に昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。その後、系の温度を150℃に保ち、BAYER社製のBayhydur(以下、化合物Rという)を8質量部、2−エチルヘキサン酸スズ0.20質量部を加えて反応させ、樹脂2を得た。なお、化合物Rは一般式(1)におけるYと反応する官能基として−NCOを有し、官能基数は3.2であり、さらに極性を有する官能基としてスルホ基を有している。
【0144】
(製造例11) 樹脂3の合成
フラスコ中に、樹脂Bを88質量部投入し、内温を徐々に昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。その後、酢酸エチルを加えて50質量%とし、2−エチルヘキサン酸スズ0.20を質量部、イソホロンジイソシアネートを8質量部加えた後、系の温度を80℃に保ち、反応させた。その後、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを4質量部加えて反応させ、樹脂3を得た。
【0145】
(製造例12) 樹脂4の合成
フラスコ中に、樹脂Cを94質量部投入し、内温を徐々に昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。その後、酢酸エチルを加えて50質量%とし、2−エチルヘキサン酸スズ0.20を質量部、イソホロンジイソシアネートを4質量部加えた後、系の温度を80℃に保ち、反応させた。その後、化合物Pを2質量部加えて反応させ、樹脂4を得た。
【0146】
(製造例13) 樹脂5の合成
フラスコ中に、樹脂Aを94質量部投入し、内温を徐々に昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。その後、酢酸エチルを加えて50質量%とし、2−エチルヘキサン酸スズ0.20を質量部、イソホロンジイソシアネートを4質量部加えた後、系の温度を80℃に保ち、反応させた。その後、化合物Pを2質量部加えて反応させ、樹脂5を得た。
【0147】
(製造例14) 樹脂6の合成
フラスコ中に、樹脂Dを94質量部投入し、内温を徐々に昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。その後、酢酸エチルを加えて50質量%とし、2−エチルヘキサン酸スズ0.20を質量部、イソホロンジイソシアネートを4質量部加えた後、系の温度を80℃に保ち、反応させた。その後、化合物Pを2質量部加えて反応させ、樹脂6を得た。
【0148】
(製造例15) 樹脂7の合成
フラスコ中に、樹脂Bを48質量部投入し、内温を徐々に昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。その後、酢酸エチルを加えて50質量%とし、2−エチルヘキサン酸スズ0.20を質量部、イソホロンジイソシアネートを4質量部加えた後、系の温度を80℃に保ち、反応させた。その後、樹脂Eを48質量部加えて反応させ、樹脂7を得た。
【0149】
(製造例16) 樹脂8の合成
フラスコ中に、樹脂Fを92質量部投入し、内温を徐々に昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。その後、系の温度を150℃に保ち、化合物Rを8質量部、2−エチルヘキサン酸スズ0.20質量部を加えて反応させ、樹脂8を得た。
【0150】
(製造例17) 樹脂9の合成
フラスコ中に、樹脂Gを89質量部投入し、内温を徐々に昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。その後、系の温度を150℃に保ち、化合物Qを11質量部、2−エチルヘキサン酸スズ0.20質量部を加えて反応させ、樹脂9を得た。
【0151】
(製造例18) 樹脂10の合成
フラスコ中に、樹脂Hを92質量部投入し、内温を徐々に昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。その後、系の温度を150℃に保ち、化合物Rを8質量部、2−エチルヘキサン酸スズ0.20質量部を加えて反応させ、樹脂10を得た。
【0152】
(製造例19) 樹脂11の合成
フラスコ中に、樹脂Bを91質量部投入し、内温を徐々に昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。その後、酢酸エチルを加えて50質量%とし、2−エチルヘキサン酸スズ0.20を質量部、イソホロンジイソシアネートを8質量部加えた後、系の温度を80℃に保ち、反応させた。その後、1,3−プロパンジオールを1質量部加えて反応させ、樹脂11を得た。
【0153】
(製造例20) 樹脂12の合成
フラスコ中に、樹脂Aを94質量部投入し、内温を徐々に昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。その後、酢酸エチルを加えて50質量%とし、2−エチルヘキサン酸スズ0.20を質量部、イソホロンジイソシアネートを4質量部加えた後、系の温度を80℃に保ち、反応させた。その後、フェノールを2質量部加えて反応させ、樹脂12を得た。
【0154】
得られた樹脂1〜12、Iの各種物性値を表2に示した。
【表2】

【0155】
(実施例1〜8)−トナー1〜8の製造−
−マスターバッチaの作成−
表3に示す部数で顔料、各種樹脂1〜8、水をヘンシェルミキサーにて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。
これをロール表面温度130℃に設定した2本ロールにより45分間混練を行ない、パルベライザーで1mmφの大きさに粉砕し、マスターバッチaを得た。また、トナー1〜8で使用する樹脂は表4に示した通りである。
【0156】
【表3】

【0157】
【表4】

【0158】
表5に示す処方でカルナウバワックス((分子量1,800、酸価2.7mgKOH/g、針入度1.7mm(40℃))、マスターバッチa、帯電制御剤(オリエント化学工業社製:E−84)を加えて2軸エクストルーダーを用いて100℃で混練し、粉砕、分級し、トナー母体粒子を得た。ついで、トナー粒子100部に外添剤としての疎水性シリカ0.5部と、疎水化酸化チタン0.5部をヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)にて混合して、トナー1〜8を得た。
【0159】
【表5】

【0160】
(実施例9〜10)−トナー9〜10の製造−
−マスターバッチbの作製−
水37質量部、及びDBP吸油量が42ml/100g、pHが9.5のカーボンブラック(Printex35、デグサ社製)19質量部、及び樹脂1又は樹脂2を44質量部、ヘンシェルミキサーを用いて混合した(表6参照)。
二本ロールを用いて、得られた混合物を150℃で30分間混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕して、マスターバッチbを作製した。なお、実施例9では樹脂1を混合したもの、実施例10では樹脂2を混合したものを使用した。
【0161】
【表6】

【0162】
−微粒子分散液の製造−
攪拌棒および温度計をセットした反応容器に、水600部、スチレン120部、メタクリル酸100部、アクリル酸ブチル45部、アルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩(エレミノールJS−2、三洋化成工業製)10部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で20分攪拌したところ、白色の乳濁液が得られた。
【0163】
加熱して、系内温度75℃まで昇温し6時間反応させた。
さらに1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で6時間熟成してビニル樹脂(スチレン−メタクリル酸一メタクリル酸ブチル−アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩の共重合体)の水性分散液である微粒子分散液Wを得た。
微粒子分散液WをELS−800で測定した体積平均粒径は0.08μmであった。
微粒子分散液Wの一部を乾燥して樹脂分を単離し、該樹脂分のフローテスター測定によるガラス転移温度は74℃であった。
【0164】
−水系媒体の調製−
イオン交換水300質量部、微粒子分散液300質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2質量部を混合撹拌して均一に溶解させて水系媒体を調製した。
【0165】
−樹脂溶液の調製−
反応容器内に表7に示す部数で各種樹脂、ポリエステルプレポリマー、及び酢酸エチル80質量部を加えて攪拌して、樹脂溶液1及び樹脂溶液2を調製した。
【0166】
【表7】

【0167】
−油相の調製−
次に、樹脂溶液1又は樹脂溶液2各400質量部に、カルナウバワックス(分子量1,800、酸価2.7mgKOH/g、針入度1.7mm(40℃))5質量部、及びマスターバッチb 5質量部を仕込み、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒で、粒径が0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスし、油相1又は2を得た。
【0168】
−トナーの調製−
次に、別の容器内に、水系媒体相 150質量部を入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmで攪拌しながら、油相1又は2 100質量部を添加し、10分間混合して乳化スラリーを得た。更に、攪拌機及び温度計をセットしたコルベンに、乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら、30℃で10時間脱溶剤し、分散スラリーを得た。
【0169】
次に、分散スラリー100質量部を減圧濾過し、得られた濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%の水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、フッ素系第四級アンモニウム塩化合物フタージェントF−310(ネオス社製)を、フッ素系四級アンモニウム塩がトナーの固形分100質量部に対して0.1質量部相当になるよう5%メタノール溶液で添加し、10分間攪拌した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行い、濾過ケーキを得た。循風乾燥機を用いて、得られた濾過ケーキを40℃で36時間乾燥し、目開きが75μmのメッシュで篩い、トナー母体粒子9及び10を作製した。
【0170】
得られたトナー母体粒子9及び10に対して、外添剤をトナー1〜8と同様の処方で混合し、トナー9及び10を作製した。
【0171】
(比較例1〜5)−トナー11〜15の製造−
実施例1の製造方法において、使用する樹脂を下記表8のように変更した以外は同様の手順によりトナー11〜15を作成した。
【0172】
【表8】

【0173】
(比較例6)−トナー16の製造−
実施例9の製造方法において、樹脂溶液を調製する際、使用する樹脂および添加量を下記表9のように変更した以外は同様の手順によりトナー16を作成した。
【0174】
【表9】

【0175】
−キャリアの作製−
トルエン100質量部に、下記成分を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。
【0176】
シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン) 100質量部
γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン 5質量部
カーボンブラック 10質量部
【0177】
流動床型コーティング装置を用いて、体積平均粒径が50μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面に樹脂層塗布液を塗布して、キャリアを作製した。
【0178】
−現像剤の作製−
トナー1〜16のそれぞれを5質量部と、前記キャリア95質量部とを混合して、実施例1〜10及び比較例1〜6の各現像剤を作製した。
【0179】
次に、得られた各現像剤を用いて、以下の評価方法に従って、定着性、耐熱保存性を評価した。結果を下記表10に示す。
【0180】
<定着性>
定着ローラとしてテフロン(登録商標)ローラを用いた電子写真方式の複写機(MF−200、リコー社製)の定着部を改造した装置を用い、定着ベルトの温度を変化させて、普通紙と厚紙の転写紙タイプ6200(リコー社製)及び複写印刷用紙<135>(NBSリコー社製)に、トナーの付着量が0.85±0.1mg/cmのベタ画像を形成した。このとき、厚紙でベタ画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる下限温度を定着下限温度とした。A〜Cの評価が合格基準である。
〔定着下限温度の評価基準〕
A:130℃未満
B:130℃以上140℃未満
C:140℃以上150℃未満
D:150℃以上
〔定着ラチチュードの評価基準〕
A:定着ラチチュードが60℃以上
B:定着ラチチュードが40℃以上60℃未満
C:定着ラチチュードが20℃以上40℃未満
D:定着ラチチュードが20℃未満
【0181】
<耐熱保存性>
トナー4gを、直径5cm、高さ2cmの開封系の円筒容器に入れ、温度45℃、相対湿度65%の環境下で、72時間放置した。放置後、トナーを入れた容器を軽く振り、トナーの凝集の発生の有無を目視により観察し、以下の評価基準にしたがって、保存性を評価した。A〜Cの評価が合格基準である。
【0182】
〔評価基準〕
A:トナーの凝集は全く認められない
B:トナーの凝集の粒が1〜2個観測される
C:トナーの凝集の粒が3〜5個観測される
D:トナーの凝集の粒が6個以上観測される
【0183】
【表10】

【0184】
トナー用樹脂が一般式X−(Y−Z)n(Y:ポリヒドロキシカルボン酸骨格)で表され、かつ、水に対する接触角が70〜80°であることを特徴とするトナーは、低温定着性、定着ラチチュード、耐熱保存性のいずれも満足することが確認された。一方、比較例1のような水に対する接触角が80°より大きいトナー用樹脂を使用したトナーの場合、紙に対する接着性が低下し定着ラチチュードが悪化した。比較例2のように水に対する接触角が70°より小さいトナー用樹脂を使用したトナーの場合は、同水準のガラス転移温度であっても耐熱保存性が悪化した。比較例3、4のようにXが平面構造を持たない、あるいはZが末端に疎水基を持つ剛直性骨格を持たないトナー用樹脂を使用したトナーの場合、耐熱保存性が大きく悪化した。また、比較例5、6のように分岐を持たない樹脂では、シャープメルト性が欠けるため定着下限温度と耐熱保存性の両立ができないことが確認された。
【符号の説明】
【0185】
10 感光体
10K ブラック用感光体
10Y イエロー用感光体
10M マゼンタ用感光体
10C シアン用感光体
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写体クリーニング装置
18 画像形成手段
20 帯電ローラ
21 露光装置
22 二次転写装置
23 ローラ
24 二次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 シート反転装置
30 露光装置
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
42K 現像剤収容部
42Y 現像剤収容部
42M 現像剤収容部
42C 現像剤収容部
43K 現像剤供給ローラ
43Y 現像剤供給ローラ
43M 現像剤供給ローラ
43C 現像剤供給ローラ
44K 現像ローラ
44Y 現像ローラ
44M 現像ローラ
44C 現像ローラ
45 現像装置
45K ブラック用現像ユニット
45Y イエロー用現像ユニット
45M マゼンタ用現像ユニット
45C シアン用現像ユニット
49 レジストローラ
50 中間転写体
51 ローラ
52 コロナ帯電器
53 手差し給紙路
54 手差しトレイ
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排出トレイ
58 コロナ帯電器
60 クリーニング装置
61 現像装置
62 転写帯電器
63 クリーニング装置
64 除電器
70 除電ランプ
80 転写ローラ
90 クリーニング装置
95 記録媒体
100 画像形成装置
101 静電潜像担持体(感光体)
102 帯電手段
103 露光手段
104 現像手段
105 記録媒体
107 クリーニング手段
108 転写手段
120 タンデム型現像器
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
150 複写装置本体
160 帯電装置
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
L 露光
【先行技術文献】
【特許文献】
【0186】
【特許文献1】特開2008−262179
【特許文献2】特開2002−30208
【特許文献3】特開平11−327209
【特許文献4】特開2001−117268

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子構造が下記一般式(1)で表され、かつ、水に対する静的接触角が70°以上80°以下であることを特徴とするトナー用樹脂。
X−(Y−Z)n (1)
ただし、X:平面構造を有する骨格、Y:ポリヒドロキシカルボン酸骨格、Z:末端に疎水基を持つ剛直性骨格を表し、nは2以上の整数を表す。
【請求項2】
ガラス転移温度が57℃以上、90%RH環境下での圧縮試験においてその変形温度が53℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のトナー用樹脂。
【請求項3】
前記トナー用樹脂におけるXが複素環式化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー用樹脂。
【請求項4】
前記トナー用樹脂におけるZが環式化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトナー用樹脂。
【請求項5】
前記トナー用樹脂におけるZが末端にフッ素を持つ環式化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトナー用樹脂。
【請求項6】
前記トナー用樹脂におけるYがウレタン結合を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のトナー用樹脂。
【請求項7】
前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格が、炭素数2〜6のヒドロキシカルボン酸が(共)重合して得られたものを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のトナー用樹脂。
【請求項8】
前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格が、L−ラクチドとD−ラクチドの混合物を開環重合して得られたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のトナー用樹脂。
【請求項9】
前記ポリヒドロキシカルボン酸骨格がポリ乳酸骨格であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のトナー用樹脂。
【請求項10】
前記ポリ乳酸骨格が、モノマー成分換算での光学純度X(%)が下記式(I)で表される80%以下であることを特徴とする請求項9に記載のトナー用樹脂。
X(%)=|X(L体)−X(D体)| (I)
〔ただし、X(L体)は乳酸モノマー換算でのL体比率(%)、X(D体)は乳酸モノマー換算でのD体比率(%)を表す。〕
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のトナー用樹脂を使用して製造されたことを特徴とするトナー。
【請求項12】
少なくとも、請求項11に記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項13】
更にキャリアを含むことを特徴とする請求項12に記載の現像剤。
【請求項14】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と
を少なくとも含む画像形成方法であって、
前記現像剤が、請求項12又は13に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項15】
静電潜像担持体と、
該静電潜像担持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と
を少なくとも有する画像形成装置であって、
前記現像剤が、請求項12又は13に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像剤を用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジであって、前記現像剤が、請求項12又は13に記載の現像剤であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−236927(P2012−236927A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107298(P2011−107298)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】