説明

トナー容器及びトナー補給方法

【課題】トナー容器の運搬時、作動時におけるトナー漏れが十分に防止され正確なトナー補給を可能にする容器を提供する。
【解決手段】トナーが収容される容器本体、キャップ及び容器本体とキャップとの間に介在するシール部材を有するトナー容器において、シール部材が接触する容器本体の面を容器本体に形成した段部により形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナー容器の改良に関し、特に、電子写真方式の画像形成装置に用いられ、該画像形成装置に到着されるトナー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、トナーが収納されたトナー容器が画像形成装置に装着され、画像形成装置の作動時に、トナー容器から画像形成装置に暫時トナーが供給されるトナー補給方式が広く採用されている。
【0003】
このようなトナー補給方式に用いられるトナー容器は、画像形成装置内で、トナー排出口が開口し、トナー容器が画像形成装置から取り出された時には、トナー排出口が閉口するように工夫されている。
【0004】
そして、トナー容器には、トナーが収納された形態での運搬時及び画像形成装置内に装着され、トナー補給が行われている時において、トナー漏れがないことが要求される。
【0005】
特許文献1ではこのような要求性能に満足させるために、トナーを収容する容器本体と容器本体のトナー排出口を塞いでいるキャップとの間をシール部材でシールしている。
【0006】
図1に特許文献1に開示されたトナー容器の概略構造を示す。
【0007】
筒状のトナー容器本体10のトナー排出口には、キャップ20が連結され、トナー容器本体10の排出口を形成する端部とキャップ20の端部との間にシール部材60を介在させることにより、トナー漏れを防止している。
【特許文献1】特許第3628539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のトナー容器では、シール部材60が容器本体10の端面とキャップの端面との間に介在している。
【0009】
トナー漏れを防ぐは、トナーがシール部材60の部分に堆積しないようにする必要がある。
【0010】
このためには、図示のように、シール部材60の内周面が容器本体端部の内周面と同面ないしは、容器本体の内周面から突き出ている必要がある。
【0011】
このような構造の場合、トナーがシール部材によりせき止められ、シール部材近傍に堆積して容器本体10からとトナー排出を妨げることになる。
【0012】
このようなトナー堆積現象により、トナー補給が正確に行われない場合が生ずる。
【0013】
本発明は、このような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的は下記の発明により達成される。
【0015】
1.トナー収容部及びトナー排出口を有する容器本体、前記トナー排出口を覆うキャップ並びに、前記容器本体と前記キャップとの間に介在し、トナー漏れを防止するシール部材を有するトナー容器において、
前記容器本体は、前記トナー収容部と前記トナー排出口との間に形成された段部を有し、前記シール部材は、前記段部に固定され、前記段部と前記キャップとの間に介在していることを特徴とするトナー容器。
【0016】
2.前記トナー収容部は円筒形であり、前記段部及び前記シール部材は輪状であることを特徴とする前記1に記載のトナー容器。
【0017】
3.前記容器本体は、ブロー成型により作成されたものであることを特徴とする前記1又は前記2に記載のトナー容器。
【0018】
4.前記シール部材は圧縮された形態で前記段部と前記キャップとの間に介在し、前記シール部材の圧縮率は、10%〜40%であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のトナー容器。
【0019】
5.前記トナー収容部は、内壁に突出した螺旋状の突起を有し、前記容器本体と前記キャップとは相対回転が可能であるとともに、前記キャップはトナー排出部を有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のトナー容器。
【0020】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載されたトナー容器に収容されたトナーを、前記容器本体の回転により前記キャップから排出させトナーを補給することを特徴とするトナー補給方法。
【0021】
7.前記トナーは定積平均粒径が3〜9μmのトナーであることを特徴とする前記6に記載のトナー補給方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、容器本体に段部を形成し、該段部とキャップとの間にシール部材を介在させている。
【0023】
この構造により、シール性が向上しトナー漏れが十分に防止されるとともに、トナー容器からのトナーの排出が円滑に行われ、正確なトナー補給が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0025】
図2は本発明の実施の形態に係るトナー容器の外観斜視図及び側面図である。
【0026】
トナー容器は、筒状の容器本体10とキャップ20とを有する。
【0027】
トナー容器は画像形成装置(図示せず)に装着さるが、トナー補給時には、容器本体10は矢印W1で示すように回転する。
【0028】
容器本体10内のトナーはW1方向の回転時に螺旋状の突起11の推進作用でキャップ20の方向に送られ、キャップ20に設けられた排出口(後に説明)から排出される。
【0029】
容器本体10の図2(a)における右端には図示しないがトナー排出口が形成され、容器本体10の突起11が形成されている円筒部がトナー収容部である。
【0030】
容器本体10の矢印W1で示す回転は、図2(b)に示す溝12に嵌入した画像形成装置の駆動部材(図示せず)により行われる。
【0031】
なお、突起11及び溝12はトナー容器の外観としては、溝状に形成されているが、突起11は容器本体10の内側の壁では突出し、トナーを搬送する突起として機能し、溝12は駆動部材を受け入れる溝として機能する。
【0032】
キャップ20は、容器本体10に収容されているトナーを封止するとともに、容器本体10から排出されたトナーを画像形成装置の現像装置へと排出する部材で、プラスチックからなり、インジェクション成型により作成される。キャップ20はトナー補給時には回転しない。
【0033】
図3は図2に示すトナー容器の分解斜視図である。
【0034】
トナー容器は、容器本体10、キャップ20及び、シール部材60を有する。シール部材60は容器本体10に接着固定される。
【0035】
トナー補給時に回転する部品は、容器本体10及びシール部材60であり、キャップ20は回転しない。
【0036】
図4はキャップ20が容器本体10に装着されて組み上がったトナー容器の断面図である。
【0037】
容器本体10の排出側口部には、回転軸Xに直角な面13Aを持った輪状の段部13が形成されている。
【0038】
容器本体10はプラスチックからなる。容器本体10は製造コストの観点からブロ−成型により作られたものが好ましいが、インジェクション成型により容器本体10を作成してもよい。
【0039】
ブロー成型により作成された容器本体10のトナー排出口の端面は、成型後の切断処理により形成される。
【0040】
なお、シール部材60に接触する段部13は、ブロー成型により作成された場合でも、金型により形成されるので、段部面精度や段部位置精度の点で、高い精度が得られる。
【0041】
キャップ20の図3における左方端部には、複数の係止爪25が円周上に等間隔で形成される。
【0042】
係止爪25の先端は図4に示すように、容器本体10の段部14に突き当たる。この突き当てにより、キャップ20は容器本体10に対して回転軸X方向に移動しないように抜け止めされる。
【0043】
また、この突き当てにより容器本体10とキャップ20とは互いに回転可能に結合される。
【0044】
キャップ20は容器本体10の段部13に対向する壁27を有する。
【0045】
壁27は図示のように回転軸Xに直角であり、シール部材60は、段部13の面13Aと壁27との間に介在する。シール部材60が接触する段部13の面13Aは、図示の例では、回転軸Xに直角であるが、回転軸Xに交叉する面であればよく、必ずしも直角である必要はない。
【0046】
21はキャップ20のトナー排出部23を開閉するシャッタであり、図3に示すように、キャップ20のトナー排出部23に対して、回転方向にスライド可能にキャップ20に取り付けられている。
【0047】
シール部材60は容器本体10に設けられた段部13の面13Aに接着により固定される。
【0048】
トナーを画像形成装置に装着しない時及びトナー容器を画像形成装置に装着した段階では、シャッタ21はトナー排出部23を塞いでいる。
【0049】
キャップ20はつまみ22を有する。
【0050】
トナー容器が画像形成装置に装着された状態では、シャッタ21は画像形成装置に固定される。
【0051】
オペレータがつまみ22を操作してキャップ20を回転させることにより、シャッタ21に対してキャップ20が回転し、シャッタ21は排出部23を開口する。
【0052】
即ち、トナー容器が画像形成装置に装着され、つまみ24が回転操作されることにより、排出部23からトナー補給が可能な状態となる。
【0053】
26は、トナー排出部23からトナーが漏れ出すのを防止するシール部材である。シール部材26には図3に示すように、排出部23からのトナー排出口26Aが形成されている。
【0054】
以上説明したトナー容器では、トナー補給動作において回転する部材である容器本体10と、回転しない部材であるキャップ20との間にシール部材60を介在させることにより、トナー漏れを防止している。
【0055】
シール部材60は、金型により形成された段部13の面13Aと、キャップ部材の壁27との間に配置されている。
【0056】
面13A、壁27はともに、成型工程において、金型により形成されたものであるので、位置及び角度に関して高い精度で形成されている。
【0057】
容器本体10がブロー成型により作成されたものである場合、容器本体10の端面は切断処理により形成される。
【0058】
しかるに、切断により形成された面は、位置精度、平面性等の点で、精度が比較的高くない。
【0059】
従って、例えば、図1に示すようにシール部材60を端面間に介在させた場合、端面の精度が低いためにシールが十分でなくなる。このために、トナー漏れが発生したり、シール部材の劣化が速く進行する等の問題がある。
【0060】
前記に説明したように、シール部材60を段部13と壁27間に介在させることによって、シール性が向上し、トナー漏れが十分に防止される。
【0061】
また、高いシール性が達成されるとともに、トナー補給動作において容器本体10とキャップ20とが相対回転するときに、容器本体10を駆動する駆動力の変動が少ない。
【0062】
更に、シール部材60は容器本体10の段部13に接着されており、トナー補給時には、シール部材60と壁27とが摺動するので、容器本体の回転が安定する。
【0063】
トナー容器に収容されるトナーとしては、体積平均粒径が3〜9μmの小粒径トナーが好ましい。
【0064】
前記に説明したトナー容器、即ち、容器本体に設けられた段部13とキャップ20に設けられた壁27との間にシール部材60を介在させたトナー容器により、このような小粒径トナーでも、トナー漏れが十分に防止される。
【0065】
本発明におけるトナーには、画像を形成するトナー粒子の他に、流動性改良剤や少量(数ウェイトパーセント乃至数十ウェイトパーセント)のキャリアが含まれてもよい。
【0066】
キャリアを含有するトナーの補給においては、キャリア粒子がシール部材と容器本体の間やシール部材とキャップの間に入り込んで、シール性を低下させる場合がある。
【0067】
前記に説明したように高精度に形成された段部13と壁27との間にシール部材60を介在させることにより、キャリアの入り込みが防止される。
【0068】
なお、シール性を向上するには、シール部材60を圧縮状態で組み付けることが好ましい。
【0069】
図5は、シール部材60の圧縮率の変化に対する圧縮応力の変化を示す。
【0070】
圧縮応力の変動、即ち、駆動力の変動が大きい場合、変動範囲をカバーするために、大きなパワーのモータが必要になる。
【0071】
このために、装置が大型になる、消費電力が増す、コストが高くなる等が問題となる。
【0072】
範囲Hで示す圧縮率10〜40%の間であれば、駆動力の変動が小さく、容器本体10を安定して回転駆動することが可能であるとともに、装置の小型化、省電電力、コスト低減等の条件をクリアできることが実験により確認された。
【0073】
容器本体10の段部13の面13Aにシール部材60を接触させることにより、図5の範囲Hで示す圧縮率の条件をクリアすることができた。
【0074】
圧縮状態で、段部13と壁27間に介在させるのに好ましい材料としては、ウレタンフォームが上げられる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】従来のトナー容器を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るトナー容器の外観斜視図及び側面図である。
【図3】図2に示すトナー容器の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るトナー容器の断面図である。
【図5】シール部材60の圧縮率の変化に対する圧縮応力の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0076】
10 容器本体
13、14 段部
20 キャップ
50 トナー排出部材
26、60 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー収容部及びトナー排出口を有する容器本体、前記トナー排出口を覆うキャップ並びに、前記容器本体と前記キャップとの間に介在し、トナー漏れを防止するシール部材を有するトナー容器において、
前記容器本体は、前記トナー収容部と前記トナー排出口との間に形成された段部を有し、前記シール部材は、前記段部に固定され、前記段部と前記キャップとの間に介在していることを特徴とするトナー容器。
【請求項2】
前記トナー収容部は円筒形であり、前記段部及び前記シール部材は輪状であることを特徴とする請求項1に記載のトナー容器。
【請求項3】
前記容器本体は、ブロー成型により作成されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトナー容器。
【請求項4】
前記シール部材は圧縮された形態で前記段部と前記キャップとの間に介在し、前記シール部材の圧縮率は、10%〜40%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナー容器。
【請求項5】
前記トナー収容部は、内壁に突出した螺旋状の突起を有し、前記容器本体と前記キャップとは相対回転が可能であるとともに、前記キャップはトナー排出部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のトナー容器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載されたトナー容器に収容されたトナーを、前記容器本体の回転により前記キャップから排出させトナーを補給することを特徴とするトナー補給方法。
【請求項7】
前記トナーは定積平均粒径が3〜9μmのトナーであることを特徴とする請求項6に記載のトナー補給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−271279(P2009−271279A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121022(P2008−121022)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】