説明

トナー搬送ローラおよびそれを用いた画像形成装置

【課題】特に印字初期において、十分な濃度を確保することができるトナー搬送ローラおよびそれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】軸1の外周に、接着層2を介して導電性弾性層3が担持されてなり、導電性弾性層3がウレタンフォームからなるトナー搬送ローラである。100V印加時におけるローラ抵抗が10Ω以下、好ましくは104.5Ω以下であって、かつ、5V印加時におけるローラ抵抗が10〜10Ωである。接着層2が、熱溶融型高分子接着剤よりなり、熱溶融型高分子接着剤の融点以下の温度で形成されてなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー搬送ローラ(以下、単に「ローラ」とも称する)およびそれを用いた画像形成装置に関し、詳しくは、複写機やプリンタ等の画像形成装置において、感光体や紙等の画像形成体にトナー(現像剤)を搬送してその表面に可視画像を形成する現像ローラに対しトナーを供給するために用いるトナー搬送ローラおよびそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置等における現像部には、図5に示すように、静電潜像を保持する感光体等の画像形成体11と、この画像形成体11に当接して表面に担持したトナー20を付着させることにより静電潜像を可視画像化する現像ローラ12と、この現像ローラ12にトナーを供給するためのトナー搬送ローラ(トナー供給ローラおよび不要トナー剥ぎ取りのためのクリーニングローラを含む)13とが設けられており、トナー20を、トナー収容部14からトナー搬送ローラ13および現像ローラ12を介して画像形成体11まで搬送する一連のプロセスにより、画像形成が行われる。なお、図中の符号15は転写ローラ、16は帯電部、17は露光部、18はトナー掻き取り用のブレードを示す。
【0003】
このうち、トナー搬送ローラは、現像ローラとの接触により相手を傷つけないこと、および、ローラの接触面積を増してグリップ性を確実にする等の観点から、軸の外周に、接着層を介して導電性弾性体を担持させた構成にて形成されている。かかる軸と導電性弾性層との接着に用いられる接着剤としては、従来、接着時の加熱により導電性弾性体にダメージを与えない観点から、融点110℃以下程度の比較的低融点のものが用いられていた。
【0004】
上記現像機構において、トナー搬送ローラ13から現像ローラ12にトナー20を搬送するメカニズムは、図6に示す通りである。まず、正(または負)に帯電されたトナー20に対し、トナー搬送ローラ13の表層を、トナー20および現像ローラ12との摩擦により負(または正)に帯電させる。帯電されたトナー搬送ローラ13においては、芯金等からなる軸1を介して電荷を逃がすことで、ローラ表層の帯電量(電荷の量)が制御される。この場合、トナー搬送ローラの表層の帯電量が少なければ、ローラ表層にトナーが吸着しにくくなり、結果として、搬送するトナー量を増大させることができることになる。
【0005】
従来、レーザービームプリンタ(LBP)等のトナーカートリッジで使用されているトナー搬送用ローラの導電性については、上記したように静電気的にトナーを制御するために、100V印加時のローラ抵抗で10〜10Ω程度に設定することが要求されている。そのため、従来は、主として導電性弾性体中に導電性フィラーや帯電防止剤などを混入することで、ローラの導電特性の制御を行っていた。また、例えば、特許文献1には、導電特性のコントロールが容易で、導電性の低いローラについても容易に製造できる導電性ローラを提供する目的で、軸の外周に内側導電層と導電性弾性層とを順次設けて、両者の厚み方向での電気的抵抗値を内側導電層のほうが大きくなるように構成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平4−256985号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、導電性弾性体の配合によりローラの導電性を変える従来の方法では、100V印加時のローラ抵抗をコントロールすることは容易であったが、この条件を規定するだけでは印字初期での濃度が十分ではなかった。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、特に印字初期において、十分な濃度を確保することができるトナー搬送ローラおよびそれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、上述したローラにおける帯電量の制御メカニズムに着目して鋭意検討した結果、印字耐久初期での濃度を上げるためには、低電圧印加時、特に5V印加時のローラ抵抗が10〜10Ωであるように電圧依存性をコントロールすることが有効であることを見出した。具体的には、従来のように導電性弾性体を変更するのではなく、導電性弾性層と軸との間に存在する接着層を改良することで、量産時における不都合を生ずることなく、印字初期における濃度を確保することが可能となることを見出した。
【0009】
トナーの搬送をコントロールするにあたっては、トナー搬送ローラにアースとの間に数100Vの電位を印加し、トナーの電荷をローラ表層に移行させ、ローラ表層から導電性弾性体、接着層および軸を介してアースに放電することにより、トナー帯電量を低減制御し、トナー離れを良くすることで、トナー搬送量を増加させている。この状態では、アースとの電位差に近い100Vで10Ω以下、好ましくは104.5Ω以下の低い抵抗のトナー搬送ローラが求められる。しかし、印字初期においては、トナーが非常に帯電しやすく、帯電過多であることが通例である。その状態では上記メカニズムでもトナー離れが良くならないため、印字初期のトナー搬送量が少なくなっていた。
【0010】
そこで、本発明者らは、今までのトナー帯電量を低減させてトナー搬送量を増加させる発想に加え、トナー搬送ローラ・トナー・現像ローラ間の微妙な電位差を利用して、クーロン力によりトナーをトナー搬送ローラから現像ローラに移行させ、トナー搬送量をさらに増加させる方法を考案した。すなわち、トナー搬送ローラと現像ローラとは、通常、同一の電源に接続されておりほぼ同電位であるが、厳密には、トナー搬送ローラの抵抗が電圧依存性を持つように設計すれば、トナー搬送ローラと現像ローラの間に数Vの電位差を生じさせることができる。すなわち、トナー搬送ローラの抵抗を、アースとの間の回路を想定した数100Vの領域では、従来より要求されている如く10Ω以下、より好ましくは104.5Ω以下とし、現像ローラとの間の回路を想定した数V、代表的には5Vという低電圧では、10〜10Ωとすることで、従来からのトナーの帯電量を低減して制御するメカニズムを活用しつつ、トナー搬送ローラと現像ローラとの間にも微小ながら電位差を設けて、クーロン力によりトナー搬送ローラとは斥力、現像ローラとは引力を、トナーとの間に働かせて、トナー搬送量を増大させ、印字初期においても画像濃度を確保することが可能となる。
【0011】
ここで、トナー搬送ローラのローラ抵抗に電圧依存性を持たせる方法としては、接着層を絶縁性としてその厚さを制御することにより電圧依存性を設計する方法と、絶縁性弾性物質に導電性物質を混合して導電性弾性層を形成するとともに、電圧依存性を設計する方法とがある。このうち前者の絶縁性接着層の厚さを制御する方法としては、接着層自体の厚さを変化させる方法や、接着剤を熱溶融性のものとして、接着温度を制御することにより接着層の導電性弾性層への染み込みを制御し、間接的に接着層の厚さを制御する方法がある。また、後者の方法としては、混合する導電性物質の粒子形状と配合量を設計することにより、抵抗の電圧依存性を設計する方法がある。
【0012】
上記のうちでも、制御の容易性の点で、前者の絶縁性接着層の厚さを制御する方法、特に、接着温度を制御することによりトナー搬送ローラの抵抗電圧依存性を設計する方法が、安定してローラ抵抗の電圧依存性を設計でき有効であることを本発明者らは知見し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、従来のように熱溶融型の接着剤を、その接着剤の融点以上で接着処理して接着層を形成する場合、軸と導電性弾性層との接着時において、溶融した接着剤は、フォーム状の導電性弾性層内に実質的に浸透した状態となるものと考えられ、ローラ抵抗の電圧依存性は小さい。これに対し、熱溶融型の接着剤を、その融点には到達しないものの軟化して充分な接着力を確保できる温度で接着処理し、接着層を形成すれば、軸と導電性弾性層との接着時において、接着剤半溶融のままフォームに浸透しないため、5V印加時で10〜10Ωの抵抗を実現することができる。
【0014】
以上より、本発明のトナー搬送ローラは、軸の外周に、接着層を介して導電性弾性層が担持されてなり、該導電性弾性層がウレタンフォームからなるトナー搬送ローラにおいて、100V印加時におけるローラ抵抗が10Ω以下、特には104.5Ω以下であって、かつ、5V印加時におけるローラ抵抗が10〜10Ωであることを特徴とするものである。
【0015】
本発明においては、前記接着層が、熱溶融型高分子接着剤よりなり、該熱溶融型高分子接着剤の融点以下の温度で形成されてなることが好ましい。また、本発明のローラにおいて、上記抵抗値を実現するためには、弾性層とのなじみやすさとそれによる接着強度、量産性などを考慮すると、前記熱溶融型高分子接着剤として、融点120℃以上のアジペート系ポリウレタン樹脂を主成分とするものを用いることが好ましい。これにより、接着剤を充分に軟化させて接着力を確保しつつ、かつ、接着剤の融点より低い温度で充分な厚さの接着層を確保して、低電圧領域で安定してローラ抵抗を10〜10Ωとすることができる。
【0016】
また、本発明の画像形成装置は、上記本発明のトナー搬送ローラを具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記構成としたことにより、特に印字初期において、十分な濃度を確保することができるトナー搬送ローラおよびそれを用いた画像形成装置を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の好適実施形態に係るトナー搬送ローラの幅方向断面図を示す。図示するように、本発明のトナー搬送ローラは、軸1の外周に、接着層2を介して導電性弾性層3が担持されてなる。
【0019】
本発明のトナー搬送ローラにおいては、100V印加時におけるローラ抵抗が10Ω以下であって、かつ、5V印加時におけるローラ抵抗が10〜10Ωであることを要する。このような電圧依存性を持たせることによって、印字初期における濃度を印字耐久後半と同程度に確保することが可能となり、印字初期において十分な濃度が得られないという問題を解消することが可能となった。
【0020】
また、導電性弾性層3はウレタンフォームからなる。特に、導電性弾性層3が、水発泡を用いた、導電剤であるカーボンブラック内添タイプのポリウレタンフォーム、または、導電性塗料に含浸処理して導電性を付与したポリウレタンフォームからなるとともに、接着層2が、熱溶融型高分子接着剤、中でも、融点120℃以上のアジペート系ポリウレタン樹脂を主成分とする接着剤からなることが好ましい。接着層の構成材料として、従来の接着剤に比し高融点の接着剤、中でも、アジペート系ポリウレタン樹脂を主成分とするものを用いることが特に好ましい。
【0021】
これは、以下のような理由によるものと考えられる。すなわち、前述したように、低融点の接着剤では、軸と導電性弾性層との接着時に、溶融した接着剤が導電性弾性層内に実質的に浸透した状態となる。これに対し、本発明におけるように高融点の接着剤を用いた場合、接着時において接着剤が完全に溶融せずに、得られたローラにおいて、ある程度厚膜状に固化したままの状態で軸の周囲に残留する。そのため、この厚膜状の接着層2により低電圧印加条件での電荷の流れが阻害され、帯電ローラ表層との帯電量が適切に分布し、現像ローラとの間に適切な電位差が生じる。これにより、吸着したトナーが現像ローラにスムーズに移行する結果、トナーの帯電がしやすい印字初期においても適切にトナー離れが起こることにより、トナー搬送量が増大し、十分な濃度が確保されることとなるのである。したがって本発明によれば、5V印加時におけるローラ抵抗が10Ω以下である従来ローラに比べて、下記の表1中に示すような効果が得られるといえる。
【0022】
【表1】

【0023】
また、上述のような理由より、本発明においては接着剤を溶融させる温度、すなわち、軸と導電性弾性層との接着時の加熱温度も重要である。具体的には、接着時の加熱温度は、100℃以上とすることが必要である。接着のための加熱時には、接着剤が溶融するのみならず、ウレタンフォームからなる導電性弾性層側についても、接着剤との間の化学反応による改質が行われているものと考えられるが、加熱温度が100℃未満では、接着剤の溶融が不十分であるか、導電性弾性層の改質が不十分で導電性弾性層と接着層との化学的結合が促進されないため、十分な接着性が得られない。また、加熱温度が100℃あれば、長時間(例えば、8時間程度)の加熱により接着性は確保できるが、生産性を考慮しつつ安定して改質を行うためには、加熱温度120℃以上、特には130℃以上が好適である。さらに、加熱温度が200℃を超えると、ウレタンフォームからなる導電性弾性層が変質したり、燃焼するなどの問題を生ずる。したがって、より好ましくは、加熱温度を130℃以上200℃以下とする。
【0024】
また、接着剤の融点についても、上記と同様の理由から、好適には130℃以上200℃以下とする。さらに、接着剤の融点と上記加熱温度との関係からは、より好ましい条件としては、加熱温度を130℃以上200℃以下とするとともに、この加熱温度よりも高く、かつ、130℃以上200℃以下の範囲の融点を示す接着剤を用いる。接着剤の融点が加熱温度以下であると、接着剤が完全に溶融してしまい、本発明の所望の効果が得られないからである。
【0025】
また、120℃以下の融点を示す接着剤を、さらに低融点で接着しようとしても、フォームそのものの保温性により上手く接着できず、所望の接着剤の層が形成されにくいばかりか、使用環境において通電による発熱や機械的なせん断により、実質的に接着層が使用中になくなってしまい、効果が得られない。
【0026】
本発明においては、上記接着層に係る条件を満足するものであればよく、これにより、本発明の所期の効果を得ることができ、それ以外のローラ構成の詳細や、具体的なローラ抵抗の値等については、所望に応じ適宜決定することができ、特に制限されるものではない。
【0027】
例えば、上記接着層2に用いる接着剤としては、熱溶融型高分子接着剤であれば、それ以外の配合成分については特に制限はない。また、その性状としては、フィルムやペレット等、いかなる形態であってもよい。接着層2の厚みは、好適には20〜300μmであり、薄すぎると接着不良が発生し、厚すぎると好適なローラ抵抗が得られず、いずれも好ましくない。
【0028】
また、本発明のローラに用いる軸1としては、特に制限はなく、いずれのものも使用し得るが、例えば、硫黄快削鋼などの鋼材にニッケルや亜鉛等のめっきを施したものや、鉄、ステンレススチール、アルミニウム等の金属製の中実体からなる芯金、内部を中空にくりぬいた金属製円筒体等の金属製シャフトを用いることができる。
【0029】
さらに、導電性弾性層3に用いるウレタンフォームの材料としては、樹脂中にウレタン結合を含むものであれば、特に制限はないが、例えば、以下のようなものを用いることができる。
【0030】
ウレタンフォームの製造方法については、水発泡の方法を用いることができる。具体的には、あらかじめイソシアネート成分とポリオール成分を反応させてなるプレポリマー、水、ウレタン反応触媒などを含む発泡体形成材料を、規定のブロック状型に自由に発泡させたのち、加熱硬化させる方法が知られている。
【0031】
プレポリマーの製造に用いられるポリオール成分としては、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、酸成分とグリコール成分を縮合したポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合したポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール等を用いることができる。
【0032】
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、メチルグルコジット、芳香族ジアミン、ソルビトール、ショ糖、リン酸等を出発物質とし、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したものを挙げることができるが、特に、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質としたものが好適である。付加するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率やミクロ構造については、エチレンオキサイドの比率が好ましくは2〜95重量%、より好ましくは5〜90重量%であり、末端にエチレンオキサイドが付加しているものが好ましい。また、分子鎖中のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの配列は、ランダムであることが好ましい。
【0033】
なお、かかるポリエーテルポリオールの分子量としては、水、プロピレングリコール、エチレングリコールを出発物質とする場合は2官能となり、重量平均分子量で300〜6000の範囲のものが好ましく、3000〜5000の範囲のものがより好ましい。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質とする場合は3官能となり、重量平均分子量で900〜9000の範囲のものが好ましく、4000〜8000の範囲のものがより好ましい。更に、2官能のポリオールと3官能のポリオールとを適宜ブレンドして用いることもできる。
【0034】
また、ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合によって得ることができ、重量平均分子量が400〜4000の範囲、特には、650〜3000の範囲にあるものが好ましく用いられる。また、分子量の異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールをブレンドすることも好ましい。さらに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを共重合して得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いることもできる。
【0035】
さらに、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとをブレンドして用いることも好ましい。この場合、これらのブレンド比率が、重量比で95:5〜20:80の範囲、特には90:10〜50:50の範囲となるよう用いることが好適である。
【0036】
また、上記ポリオール成分とともに、ポリオールをアクリロニトリル変性したポリマーポリオール、ポリオールにメラミンを付加したポリオール、ブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンなどのポリオール類やこれらの誘導体を併用することもできる。
【0037】
プレポリマーの製造に用いられるポリイソシアネート成分としては、芳香族イソシアネートまたはその誘導体、脂肪族イソシアネートまたはその誘導体、脂環族イソシアネートまたはその誘導体が用いられる。これらの中でも芳香族イソシアネートまたはその誘導体が好ましく、特に、トリレンジイソシアネート(TDI)またはその誘導体、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはその誘導体が好適に用いられる。
【0038】
トリレンジイソシアネートまたはその誘導体としては、粗製トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、これらのウレア変性物、ビュレット変性物、カルボジイミド変性物、ポリオール等で変性したウレタン変性物等が用いられる。ジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体としては、例えば、ジアミノジフェニルメタンまたはその誘導体をホスゲン化して得られたジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体が用いられる。ジアミノジフェニルメタンの誘導体としては多核体などがあり、ジアミノジフェニルメタンから得られた純ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアミノジフェニルメタンの多核体から得られたポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートなどを用いることができる。ポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートの官能基数については、通常、純ジフェニルメタンジイソシアネートと様々な官能基数のポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物が用いられ、平均官能基数が好ましくは2.05〜4.00、より好ましくは2.50〜3.50のものが用いられる。また、これらのジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体を変性して得られた誘導体、例えば、ポリオール等で変性したウレタン変性物、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド/ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物なども用いることができる。また、数種類のジフェニルメタンジイソシアネートやその誘導体をブレンドして用いることもできる。
【0039】
プレポリマー化の方法としては、ポリオールとイソシアネートを適当な容器に入れ、充分に攪拌し、30〜90℃、より好ましくは40〜70℃に、6〜240時間、より好ましくは24〜72時間保温する方法が挙げられる。この場合、ポリオールとイソシアネートとの分量の比率は、得られるプレポリマーのイソシアネート含有率が4〜30重量%となるように調節することが好ましく、より好ましくは6〜15重量%である。イソシアネートの含有率が4重量%未満であると、プレポリマーの安定性が損なわれ、貯蔵中にプレポリマーが硬化してしまい、使用に供することができなくなるおそれがある。また、イソシアネートの含有率が30重量%を超えると、プレポリマー化されていないイソシアネートの含有量が増加し、このポリイソシアネートは、後のポリウレタン硬化反応において用いるポリオール成分と、プレポリマー化反応を経ないワンショット製法に類似の反応機構により硬化するため、プレポリマー法を用いる効果が薄れる。
【0040】
ウレタンフォームには、上記ポリオール成分およびイソシアネート成分に加え、所望に応じて導電剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、架橋剤、界面活性剤、触媒、整泡剤等を添加することができ、これにより所望に応じた層構造とすることができる。また、難焼剤や充填材、イオン導電剤や電子導電剤等の導電剤、公知の充填剤や架橋剤等を適宜使用することも可能である。
【0041】
イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムなどの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、アルキル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩などが挙げられる。
【0042】
また、電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属などを挙げることができる。これらの導電剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。その配合量には特に制限はなく、所望に応じ適宜選定可能であるが、通常は、ポリオールとイソシアネートとの総量100重量部に対し、0.1〜40重量部、好ましくは0.3〜20重量部の割合である。
【0043】
ウレタンフォームの硬化反応に用いる触媒としては、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン等のトリアミン類、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、メチルエチルピペラジン、メチルモルホリン、ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルイミダゾール等の環状アミン類、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、メチルヒドロキシエチルピペラジン、ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マーカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫マーカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等の有機金属化合物などが挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明においては、ウレタンフォーム配合中にシリコーン整泡剤や各種界面活性剤を配合することが、フォーム材のセルを安定させるために好ましい。シリコーン整泡剤としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合物等が好適に用いられ、分子量350〜15000のジメチルポリシロキサン部分と分子量200〜4000のポリオキシアルキレン部分とからなるものが特に好ましい。ポリオキシアルキレン部分の分子構造は、エチレンオキサイドの付加重合物やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共付加重合物が好ましく、その分子末端をエチレンオキサイドとすることも好ましい。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性等のイオン系界面活性剤や各種ポリエーテル、各種ポリエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリコーン整泡剤や各種界面活性剤の配合量は、ポリオール成分とイソシアネート成分との総量100重量部に対して0.1〜10重量部とすることが好ましく、0.5〜5重量部とすることが更に好ましい。
【0045】
本発明において、ウレタンフォームからなる導電性弾性層は、表面に内部から連通するセル開口部を有することが好ましく、これにより、トナーがフォーム内部から良好に供給され、トナー搬送量の不安定化の問題が解消されることになる。好ましくは、セル開口部の径が50〜400μmであり、また、開口部のウレタンフォーム表面1cmあたりの個数が100〜2000個であることが好ましい。かかるセル開口部を有する構造を得るためのウレタンフォームの形成は、ポリウレタン配合と離型剤との組合せで、従来技術に基づき行うことができる。
【0046】
本発明のトナー搬送ローラは、軸1の外周に、接着剤を介して導電性弾性層3を担持させた後、上記所定の温度で加熱することにより製造することができる。具体的にはまず、スラブ状等の任意の形状のポリウレタンフォームからなる導電性弾性体3を成形するとともに、軸1の外周に、フィルム状接着剤を巻回するか、またはペレット状接着剤を溶融、塗布することにより、接着剤の膜を形成する。その後、導電性弾性体3に孔をあけて、この孔に接着剤付きの軸1を挿入する。その後、所定温度で加熱を行って、軸1と導電性弾性層3とを接着層2を介して一体化させ、導電性弾性層3の表面を研磨して所望の円筒形状とし、さらに、導電性弾性層3の端部を裁断して所定形状とすることで、本発明のトナー搬送ローラを得ることができる。
【0047】
また、本発明の画像形成装置は、特に、上記本発明のトナー搬送ローラを具備するものであればよく、それ以外の装置構成については、特に制限されるものではない。本発明のトナー搬送ローラを用いた本発明の画像形成装置によれば、印字初期における十分な濃度を確保することが可能である。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を、実施例を用いてより具体的に説明する。
図1に示すような、軸1の外周に接着層2を介して導電性弾性層3が担持されてなるトナー搬送ローラを、接着層の形成に用いる接着剤として下記の表2に示すものを用いて作製した。軸1としては、金属製のシャフト(直径φ6mm,長さ約260mm)を用いた。また、導電性弾性層3の材料としては、分子量5000のポリエーテルポリオールにトリレンジイソシアネート(TDI)をあらかじめ反応させたプレポリマー100重量部に対して、発泡剤としての水に導電剤としてのケッチェンブラックを分散させた水分散カーボン20重量部、泡化触媒としてのトリレンジアミン0.2重量部、硬化触媒としてのジプロピレンジオール0.2重量部および整泡剤としてのシリコン0.65重量部を混合した発泡体形成材料を、温度50℃のブロック状金型に所定量流し込んで発泡させ、加熱硬化させた後、120℃の乾燥炉にて余剰水分を乾燥させ、所定寸法に裁断したウレタンフォーム原料を用いた。
【0049】
まず、上記方法により得られた導電性弾性層3を成形して軸1に対応する孔をあけ、軸1の外周には、フィルム状接着剤を巻回するか、またはペレット状接着剤を溶融、塗布することにより、各接着剤の膜を形成した。次いで、導電性弾性層3の孔に軸1を挿入して、温度130℃で60分間加熱し、軸1と導電性弾性層3とを接着層2を介して一体化させた。その後、導電性弾性層3の表面を研磨して外径13mmの円筒形状とし、さらに、導電性弾性層3の端部を長さ約218mmにて裁断することで、各供試ローラを得た。
【0050】
【表2】

*1)高化式フローテスター((株)島津製作所製)による測定値である。
【0051】
<ローラ抵抗測定方法>
得られた各供試ローラにつき、常温常湿環境(22.5℃/55RH%)にて、図2に示すような装置を用いて、ローラ抵抗を測定した。具体的には、金属板100上に各ローラを載置し、ローラの両端に0.98Nの荷重を負荷した状態で(総圧:1.96N)、低電圧電源にて印加電圧5Vをかけて、測定を行った。測定箇所は1ヶ所とした。印加電圧100Vの場合についても、同様に行った。
【0052】
<画像濃度試験>
各供試ローラを、市販のLBPにトナー搬送ローラとして組み込んで、常温常湿環境(22.5℃/55RH%)にて、一枚の印刷用紙中に所定のパターンを印字した。使用するカートリッジを同一製造ロットとして、印字3枚目に得られた画像の透過濃度を測定した。透過濃度の測定には、サカタインクスエンジニアリング株式会社製X−Rite310Tを使用し、パターン中の5箇所の黒ベタ(100%濃度)部分の各箇所の透過濃度平均値をさらに平均化した。
これらの結果を、下記の表3および図3,4のグラフに示す。
【0053】
【表3】

【0054】
上記表3等に示すように、本発明に係る高融点接着剤を用いた実施例においては、低融点接着剤を用いた従来例に比して、高いローラ抵抗が得られているとともに、印字初期において良好な画像濃度が確保できることが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態に係るトナー搬送ローラを示す幅方向断面図である。
【図2】実施例における抵抗測定装置の概略を示す説明図である。
【図3】実施例におけるローラ抵抗と画像濃度との関係を示すグラフである。
【図4】実施例における画像濃度を示すグラフである。
【図5】画像形成装置の一例を示す概略説明図である。
【図6】トナー搬送ローラから現像ローラにトナーが搬送されるメカニズムを示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 軸
2 接着層
3 導電性弾性層
11 画像形成体
12 現像ローラ
13 トナー搬送ローラ
14 トナー収容部
15 転写ローラ
16 帯電部
17 露光部
18 ブレード
20 トナー
100 金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸の外周に、接着層を介して導電性弾性層が担持されてなり、該導電性弾性層がウレタンフォームからなるトナー搬送ローラにおいて、
100V印加時におけるローラ抵抗が10Ω以下であって、かつ、5V印加時におけるローラ抵抗が10〜10Ωであることを特徴とするトナー搬送ローラ。
【請求項2】
前記接着層が、熱溶融型高分子接着剤よりなり、該熱溶融型高分子接着剤の融点以下の温度で形成されてなる請求項1記載のトナー搬送ローラ。
【請求項3】
前記熱溶融型高分子接着剤が、融点120℃以上のアジペート系ポリウレタン樹脂を主成分とする請求項2記載のトナー搬送ローラ。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項記載のトナー搬送ローラを具備することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−122439(P2009−122439A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296782(P2007−296782)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】