説明

トナー搬送装置、クリーニング装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジ

【課題】搬送部材が削られてしまうのを抑制することができるトナー搬送装置、クリーニング装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】回転によりトナーを、トナー収容器(廃トナー収容器10)へ搬送する断面非円形の搬送部材8と、搬送部材8に所定の当接力で当接して搬送部材8に付着したトナーを掻き落とす金属部材で構成された板状の回収部材(回収ブレード14)とを備えたトナー搬送装置30において、回収部材よりも硬度が低く、搬送部材8と当接する当接部材を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー搬送装置、クリーニング装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や2には、クリーニングブレードにより感光体から掻き落とされたトナー(以下、廃トナーという)を、廃トナー収容部へ搬送するトナー搬送装置が記載されている。トナー搬送装置は、クリーニングブレードの下方に設けられ、クリーニングブレードにより掻き落とされた廃トナーを、廃トナー収容部へ向けて搬送する多角柱形状の搬送部材と、この搬送部材の外周面に当接し、搬送部材に付着した廃トナーを掻き落とす回収部材として回収ブレードとで構成されている。
【0003】
搬送部材を回転させると、多角柱形状の搬送部材の外周面が、クリーニングブレードによって掻き落とされた廃トナーを捉え、廃トナーを、搬送部材の回転方向へと搬送する。これにより、クリーニングブレードにより掻き落とされた廃トナーを、廃トナー収容部へと搬送することができる。そして、搬送部材に付着した廃トナーを回収ブレードで掻き落とすことで、廃トナーを、廃トナー収容器に留める。
【0004】
特許文献1や2に記載のトナー搬送装置においては、回収ブレードを、ポリエステルフイルムなどの弾性フィルムで形成し、回収ブレードを弾性変形させて、搬送部材に対して所定の当接力で当接させている。これにより、断面が非円形であり、中心軸と距離が一定でない外周をもつ多角柱形状の搬送部材の外周面に追随して回収ブレードが変形し、搬送部材との当接を維持することができる。
【0005】
回収ブレードを構成するポリエステルフイルムなどの弾性フィルムは、粘弾性体である高分子材料であるため、クリープ変形しやすい。このため、長期間高温環境にさらされると回収ブレードがクリープ変形し、所定の当接力より弱い力で搬送部材に当接し回収機能が低下してしまうという課題があった。
【0006】
特許文献3には、回収ブレードを金属部材で形成したトナー搬送装置が記載されている。金属材料は、ポリエステルフイルムなどの弾性フィルムに比べて、クリープ変形しにくい。よって、回収ブレードを金属部材で構成することで、長期間高温環境にさらされても、弾性フィルムにした場合に比べてクリープ変形を抑制でき、所定の当接力を維持することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、回収ブレードを金属部材で構成した場合、金属部材は硬い材質であるため、搬送部材が回収ブレードの先端部により削りられてしまい、早期に搬送部材が寿命を向かえてしまうという課題があった。
【0008】
なお、上述の課題は、クリーニングブレードにより掻き落とされた廃トナーを廃トナー収容器へ搬送する装置に限らず、トナーを収容器へ搬送するトナー搬送装置であれば、同様に生じる課題である。
【0009】
本発明は以上の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、搬送部材が削られてしまうのを抑制することができるトナー搬送装置、クリーニング装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、回転によりトナーを、トナー収容器へ搬送する断面非円形の搬送部材と、前記搬送部材に所定の当接力で当接して前記搬送部材に付着したトナーを掻き落とす金属部材で構成された板状の回収部材とを備えたトナー搬送装置において、前記回収部材よりも硬度が低く、前記回収部材の先端部から突出して前記搬送部材と当接する当接部材を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回収部材よりも硬度が低い当接部材を搬送部材に当接させるので、搬送部材が、回収部材の先端で削られてしまうのを抑制することができる。これにより、金属部材からなる回収部材の先端を直接、搬送部材に当接させる構成に比べて、搬送部材の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るプリンタの概略構成図。
【図2】プロセスカートリッジの長手方向(軸方向)略中央部の断面図。
【図3】クリーニング装置の概略構成図。
【図4】四角柱搬送部材が初期位置にあるときの搬送部材と回収ブレード先端部との接触位置と廃トナー収容量との関係について調べたグラフ。
【図5】廃トナー収容量を調べたトナー搬送装置の要部拡大構成図。
【図6】四角柱の搬送部材と回収ブレード先端部との接触状態を表した図。
【図7】四角柱の搬送部材と回収ブレード先端部との接触状態の変化を説明する図。
【図8】廃トナーを廃トナー収容器へ搬送する様子を説明する図。
【図9】回収ブレードの湾曲のクセ付きの状態と先端部の当接位置の変化を示す図。
【図10】回収ブレードの分解斜視図。
【図11】回収ブレードの側面図。
【図12】回収ブレードの搬送部材への当接力と、廃トナー収容量との関係を示すグラフ。
【図13】回収ブレード14の変形例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、画像形成装置であるレーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
本プリンタは、装置本体に対して着脱可能に構成されたプロセスカートリッジ1、露光装置2、転写手段としての転写ローラ3、給紙ユニット4、定着ユニット5などを備えている。
【0014】
図2は、プロセスカートリッジ1の長手方向(軸方向)略中央部の断面図である。
プロセスカートリッジ1は、像担持体としての感光体12、帯電手段としての帯電ローラ22、現像手段としての現像装置20、クリーニング手段としてのクリーニング装置21などを有している。
【0015】
現像装置20は、現像剤規制部材としての規制ブレード11により所定量のトナーを保持しながら感光体12に接触しトナーを供給する現像剤担持体としての現像ローラ13、現像ローラ13にトナーを供給する供給ローラ20b、トナーを攪拌しながら供給ローラ20bにトナーを供給する攪拌部材20aなどを有している。また、クリーニング装置21は、感光体12上の転写残トナーを掻き取るクリーニングブレード7などを備えている。
【0016】
感光体12は、図中時計回りに回転駆動されながら、帯電ローラ22により、その表面を一様に帯電される。その後、露光装置2により画像情報に基づき走査露光されて、感光体12の表面に静電潜像が形成される。感光体12上に形成された静電潜像は、現像装置20により現像され、感光体12上にトナー像が形成される。感光体12上に形成されたトナー像は、転写ローラ3により、給紙ユニット4からレジストローラ対を経て搬送される記録材としての用紙上に転写される。
【0017】
転写終了後の用紙は、定着手段としての定着ユニット5によりトナー像が定着され、機外に排出される。一方、転写されずに感光体12上に残留した転写残トナーは、クリーニング装置21により感光体12の表面から除去される。
【0018】
図3は、クリーニング装置21の概略構成図である。
クリーニング装置21は、感光体12に当接するクリーニングブレード7と、廃トナー15を収容するトナー収容器としての廃トナー収容器10と、クリーニングブレード7により感光体12から除去された廃トナーを廃トナー収容器10へと搬送するトナー搬送装置30とを備えている。トナー搬送装置30は、クリーニングブレード7の下方の廃トナー収容器10の開口部に配置された断面非円形状の搬送部材8を有している。なお、断面非円形状の搬送部材8の形状としては、楕円や四角柱などの多角柱(5角、6角等)などの形状を意味しており、本実施形態では四角柱の形状の搬送部材8を用いた例について、説明するが、他の形状でも同じである。
【0019】
また、トナー搬送装置30は、一方をクリーニング装置21内(廃トナー収容器10の内壁面)に固定し他方を搬送部材8に当接させる回収部材としての回収ブレード14を有している。回収ブレード14は、搬送部材8の回転とともにその外周距離の変化に合わせて常に接触できるように弾性変形させて搬送部材8に当接させている。回収ブレード14は、搬送部材8の回転方向に対してカウンター方向に先端部14aを当接させて、回収ブレード先端部14aで搬送部材8に付着した廃トナーを掻き取る。また、搬送部材8の回転方向に対してカウンター方向に先端部14aを当接させることで、廃トナー収容器10内に溜まった廃トナー15を堰き止めて、廃トナー15を、クリーニングブレード7側に移動しないようにすることができる。廃トナー収容器内の廃トナーが溜まって、回収ブレード14と接触する箇所まで溜まった場合、回収ブレード14は、廃トナー収容器内の廃トナーからの圧力を受ける。このとき、回収ブレードの先端部14aを、搬送部材8の回転方向に対してトレーリング方向に当接させた場合、廃トナー収容器内の廃トナーからの圧力は、先端部14aを搬送部材8から離間させる方向に働く。その結果、回収ブレード14の搬送部材8との当接力が低下して、搬送部材8の表面に付着したト廃ナーを良好に掻き取ることができなくなる。一方、カウンター方向に先端部14aを当接させた場合は、廃トナー収容器内の廃トナーからの圧力は、搬送部材8との当接力を高める方向に働くので、当接力の低下が生じることなく、経時にわたり良好な掻き取り性能を維持することができる。
【0020】
搬送部材8が、図示方向に回転することで、感光体12から掻き落とした廃トナー15を廃トナー収容器10内に搬送する。そして、搬送部材8に付着した廃トナー15は、回収ブレード14により掻き取られ、廃トナー収容器10に回収される。
【0021】
図4は四角柱搬送部材8が初期位置にあるときの搬送部材8と回収ブレード先端部14aとの接触位置と廃トナー収容量との関係について調べてグラフであり、図5は、廃トナー収容量を調べたトナー搬送装置30の要部拡大構成図である。
図5に示すように、一辺の長さが9mmの四角柱の搬送部材8で実施し、搬送部材8が初期位置にあるときの搬送部材8と回収ブレード先端部14aとの接触位置は、搬送部材8の面の中央を"0"として、回転の下流側であるクリーニングブレード側を"+"で表し、逆の回転上流側である収容容器奥側を"−"とした。また、廃トナーの収容量は、クリーニングブレード7により除去された廃トナーが、廃トナー収容器に回収されず、再び感光体12に付着して、クリーニングブレード7をすり抜けて異常が発生することなく収容出来る量である。また、搬送部材8初期位置とは、回収ブレード14の弾性変形量が最も少なくなる搬送部材8の位置である。
【0022】
図4に示すように、四角柱の搬送部材8が初期位置にあるとき、搬送部材8の面の中央付近に回収ブレード先端部14aが接触するように構成することで、廃トナー収容量がもっとも多くなることがわかる。一方、"−"側、すなわち、搬送部材初期位置において、回転上流側である廃トナー収容器側に回収ブレード先端部14aが接触するよう構成した場合は、廃トナー収容量が低下していることがわかる。また、逆に、搬送部材初期位置において、"+"側、すなわち、回転下流側であるクリーニングブレード側に回収ブレード先端部14aが接触するよう構成した場合は、回収ブレード14が搬送部材8の回転に巻き込まれて、動作不能になってしまった。このことから、回収ブレード先端部14aを、搬送部材8の面の中央付近(中央の位置に対して±0.5mm)に接触させるのが好ましいことがわかる。
【0023】
図6は、四角柱の搬送部材8と回収ブレード先端部14aの接触状態を表した図である。(a)は、搬送部材8の面の中央付近に回収ブレード先端部14aを接触させたときの接触状態を表した図であり、(b)は、搬送部材8の面の中央よりも回転上流側である廃トナー収容器側に回収ブレード先端部14aを接触させたときの接触状態を表した図である。
図6に示す四角柱の搬送部材8の外接円Aに対してその内部にある領域の廃トナーが、搬送部材により搬送される。図6(a)、(b)に示すように、回収ブレード14により掻き取られずに、搬送部材8に付着した付着廃トナー18があると、搬送部材8により搬送される領域17が狭くなるので廃トナーの搬送量が減少する。図6(b)に示すように、廃トナー収容器側に回収ブレード先端部14aを接触させたときは、図6(a)に示すように、搬送部材8の面の中央付近に回収ブレード先端部14aを接触させたときよりも付着廃トナー18が多くなる。
【0024】
ここで、廃トナー収容器側に回収ブレード先端部14aを接触させたときの付着廃トナー18が、搬送部材8の面の中央付近に回収ブレード先端部14aを接触させたときよりも多くなる理由について、図7を用いて説明する。
図7(a)、図7(b)に示すように、搬送部材8が回転して、回収ブレード先端部14aが、搬送部材8の角部に到達するまでのは、回収ブレード先端部14aが搬送部材8の面を摺動して、搬送部材8に付着した廃トナーを良好に掻き取ることができる。図7(b)の状態から搬送部材がさらに回転すると、図7(c)に示すように、搬送部材8の角部が回収ブレード表面を移動し、回収ブレード先端部14aが搬送部材8から離間する。そして、搬送部材8がさらに回転して、図7(a)の状態となると、回収ブレード先端部14aが再び搬送部材の辺と当接する。
【0025】
図7では、図7(a)に示す状態のとき、回収ブレード先端部14aが辺の中央部に当接する構成であるため、回収ブレード先端部14aで搬送部材8に付着した廃トナーを掻き取れる領域は、図7(a)に示す辺の中央部から回転上流側の端部となり、回転下流側の端部から辺の中央部までは、回収ブレード14は、図7(c)に示すように、搬送部材8の角部で持上げられた状態となり、回収ブレード先端部14aにより掻き取られることはない。よって、図6(a)に示すように、回転下流側の端部から辺の中央部までの領域に付着廃トナー18が生じるのである。また、図6(b)に示すように、回収ブレード先端部14aの搬送部材8との接触箇所が中央部よりも回転上流側にあるときは、回収ブレード先端部14aの搬送部材8との接触箇所よりも搬送部材の回転下流側の付着廃トナーは、回収ブレード先端部14aにより除去されない。これにより、付着廃トナー18が、図6(a)の構成よりも多くなるである。
【0026】
次に、搬送部材による廃トナーの搬送量が少なくなると、廃トナーの収容量が減少する理由について、図8を用いて説明する。
クリーニングブレード7の感光体と当接する箇所は、重力方向下の位置に位置する事が多い。また、クリーニングブレード7の感光体1との当接箇所よりもさらに下方には、転写部5が配置されており、クリーニング装置の真下に記録紙が搬送される搬送経路が配置される。このため、クリーニングブレード7の下方に配置される搬送部材8よりも下方には、ほとんど空間がない(図1参照)。よって、廃トナー収容器10は、搬送部材8の上方に空間を設けることとなる。このため、廃トナー収容器内に廃トナーが溜まってくると、搬送部材8は、図8(a)の矢印Aに示すように、廃トナー収容器内の廃トナーを、搬送部材8の辺で容器内部へ押し退けて、廃トナー収容器内の空き空間の上方へと廃トナー全体を移動させることで、空間S2を形成する。また、搬送部材8に付着した廃トナーを回収ブレード14aで掻き落とすことで、空間S1を形成する。搬送部材8と感光体1の間に落下したクリーニングブレード7によって掻き落とされたトナーXを、搬送部材8の廃トナーを押し退けた辺よりも回転上流側の辺で、空間S2へ搬送することで、廃トナー収容器10内に廃トナーを搬送することになる。
【0027】
また、廃トナー収容器10内に廃トナーが溜まってくると、溜まった廃トナーの圧力により廃トナー収容器10の開口部から廃トナー15が流出しようとする。このため、図8(b)の矢印Bに示すように、搬送部材8により廃トナーを押し退けて形成された空間S2に収容器内の廃トナーが流れ込んで空間S2を埋めようとする。廃トナー収容器内の廃トナー量が多くなるにつれ、開口部から流出しようとする廃トナーの勢いが強くなり、空間S2に流れ込んでくる廃トナー量(単位時間当たりの廃トナー量)が徐々に多くなる。そして、最終的には、搬送部材8の辺で廃トナーを押し退けて空間S2が形成されたとしてもその空間S2に流れて込んできた廃トナーによりクリーニングブレード7により掻き落とされた廃トナーXが、押し出されてしまい、廃トナー収容器10へ搬送できなくなってしまう。その結果、クリーニングブレード7によって掻き落とされた廃トナーが、感光体12と搬送部材8との間の領域に溜まっていく。そして、感光体12と搬送部材8との間の領域に溜まった廃トナーが感光体と接触して感光体12に再付着し、クリーニングブレード7をすり抜ける現象が発生する。
【0028】
さらに感光体1と搬送部材8との間の領域に廃トナーが溜まると、クリーニングブレード7のエッジで堰き止める廃トナー量が多くなり、クリーニングブレードで堰き止めることができなくなり、廃トナーがまとまってクリーニングブレード7と感光体1の間からすり抜ける現象が発生する。
【0029】
廃トナーのすり抜けが発生すると、すり抜けた廃トナーが帯電ローラ9に付着して帯電ローラ9を汚してしまう。帯電ローラ9が汚れると、感光体表面を一様に所定電圧に帯電させることができなくなり、画像が白くなる現象が発生してしまう。また、すり抜けた廃トナーが感光体1の回転とともに転写部5まで移動し、画像に転写されて画像に黒ポチが出るなどの現象が発生する。このように、廃トナーのすり抜けは、画像不良の要因となる。
【0030】
搬送部材8の廃トナーの搬送量が少ないと、廃トナー収容器内のトナーを押し退ける量が少なくなくなり、その結果、廃トナー収容器内のトナーを押し退けて形成された空間S2に流れ込む廃トナーの勢いを十分に低下させることができず、空間S2に勢いよく廃トナーが流れ込んでくる。その結果、早期に(廃トナー収容器内の廃トナー量が少ない段階で)、空間S2に流れ込んできた廃トナーによって、クリーニングブレードにより掻き落とされた廃トナーXが押し出され、掻き落とされた廃トナーXを、廃トナー収容器へ搬送することができなくなる。よって、トナー搬送量の少ない先の図6(b)の構成は、先の図6(a)に比べて、廃トナーの収容量が減少するのである。
【0031】
通常、回収ブレード14の材料は弾性フィルム(例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)シートなど)を用いる事が一般的である。しかし、PETシートのような弾性フィルムの材料自体の特徴として、湾曲させて加圧状態とすると少しずつ塑性変形(クリープ変形)を起こし、当接力が減少してしまう問題がある。
【0032】
図9に回収ブレード14の湾曲のクセ付きの状態と先端部の当接位置の変化を示す。
図9(a)に示すように、初期的には搬送部材の面の中央付近に回収ブレード14を接触させるような位置関係にしていても、その状態で長期保管を行うと先端部14aの接触位置は変わらずとも接触圧が低下してしまう。また、図9(b)に示すように、搬送部材8と回収ブレード14との接触位置が、回収ブレード14が一番湾曲するような位置で高温下で長期保管された時等は、回収ブレード14のクセ付きが大きくなり、図9(c)の実線で示すように、初期の搬送部材8の面の中央位置では接触せずに浮いてしまうような状態も発生する場合がある。その結果、図9(d)に示すように示すように、回収ブレード先端部14aが当接する領域が狭まり、掻き取り量が減少してしまい、廃トナーの収容量が減少するという問題が発生する。
【0033】
回収ブレード14を、弾性フィルムなどの高分子材料よりもクリープ変形しにくい金属部材にすることで、回収ブレードのクリープ変形による廃トナー収容量の減少を防止することができる。金属部材は、曲げ強さが弾性フィルムより大きく弾性フィルムよりも機械剛性が高い。一般的なPET部材の曲げ強さは常温で70[Mpa]、一般的なSUSの板バネの曲げ強さは常温で390[Mpa]であり、PET部材に比べて5倍以上の曲げ強さを有する。さらに、弾性フィルム材は高温環境では曲げ強さが低下することから、高温環境では、弾性フィルムはクリープ変形しやすくなるのに対し、金属部材は高温環境でも曲げ強さが低下することがないので、弾性フィルム材に比べて、さらにクリープ変形に対して優位である。しかし、金属部材は、剛性が高いため、搬送部材8に追随できるように回収ブレード14を弾性変形させて、搬送部材8に当接させたとき、当接力が必要以上に高くなってしまう。当接力が高くなりすぎると、搬送部材8の表面の磨耗、搬送部材8の回転負荷の増加、回収ブレード14が搬送部材8の回転によって各面に接触する際のはじき音等の問題が発生する。
【0034】
また、一般的には、加工の容易さなどの理由から、搬送部材8は、樹脂で形成されている。このため、回収ブレードを硬い金属部材で構成した場合、回収ブレード14と搬送部材8との当接状態では、搬送部材8が、金属材料の回収ブレード14の先端部14aにより削られてしまうという問題もある。
【0035】
図10は、本実施形態の回収ブレード14の分解斜視図であり、図11は、本実施形態の回収ブレード14の側面図である。
図10に示すように、本実施形態においては、回収ブレード14を、金属部材(SUS)で構成し、回収ブレード14に回収ブレードを貫通する複数の貫通孔14bを設け、回収ブレード14の剛性を下げ、搬送部材8に追随できるように回収ブレード14を所定量撓ませて(弾性変形させて)搬送部材8に当接させたときの当接力が適正となるように調整した。回収ブレード14の貫通孔14bが形成された領域が撓み、他の部分は断面係数が大きく撓みが無視できる。よって、貫通孔14bの形状を適宜調整することにより、回収ブレード14を所定量撓ませて搬送部材8に当接させたときの当接力を適正にすることができる。
【0036】
また、貫通孔14bから廃トナー収容器10内の廃トナーが漏れないように、弾性フィルム(例えばPETシートなど)からなる蓋部材141で貫通孔14bを覆っている。蓋部材141は、回収ブレード14に設けられた貫通孔14bを覆う大きさであり、両面テープなどの接着部材により回収ブレード14の搬送部材8との対向面と逆の面、すなわち、廃トナー収容器内のトナーが積載される面に接着されている。
【0037】
蓋部材141は、回収ブレード14の弾性変形に追随して変形するが、このとき、蓋部材141の剛性が高いと、蓋部材141の復元力が、回収ブレード14と搬送部材8との当接力に影響を及ぼし、当接力が高くなってしまうおそれがある。よって、蓋部材141のヤング率を、回収ブレード14のヤング率よりも小さくしたり、回収ブレード14の板厚よりも蓋部材の板厚を薄くしたりして、蓋部材141の剛性を、回収ブレード14の剛性よりも小さくする。また、蓋部材141を所定量撓ませるのに必要な荷重が、回収ブレード14を同量撓ませるのに必要な荷重の1/10以下となるよう、蓋部材141を構成するのが好ましい。
【0038】
このように、蓋部材141で貫通孔14bを覆うことで、廃トナー収容器10内の廃トナーが溜まっていき、廃トナーが回収ブレード上に堆積しても、貫通孔14bから再びクリーニングブレード7周辺に流れ込むことを防止することができる。これにより、図3に示す、感光体12と搬送部材8とクリーニングブレード7と回収ブレード14とにより囲われた空間を、貫通孔14bから流出した廃トナーで埋めてしまうのを防止することができる。これにより、クリーニングブレード7で掻き落としたトナーの行き場がなくなってクリーニングブレードからすり抜け、クリーニング不良が発生するという不具合が発生するのを防止することができる。
【0039】
また、回収ブレード14の搬送部材8と対向する面には、回収ブレード14の先端から一部が突出するように、弾性フィルム(例えばPETシートなど)からなる当接部材143が両面テープなどの接着部材により接着されている。当接部材143の回収ブレード14からの突出量は、1mm以下とし、当接部材143の弾性変形(撓み)が、搬送部材8の当接力に影響が出ないようにしている。
【0040】
このように、本実施形態の回収ブレード14においては、回収ブレード14の先端から当接部材143を突出させたので、金属部材よりも硬度の低い弾性フィルムからなる当接部材143が、搬送部材8に当接する。これにより、搬送部材8の削れを防止することができ、搬送部材8の寿命を延ばすことができる。
【0041】
本実施形態の回収ブレードの要目を表1に示す。
【表1】

表1の開口率とは、回収ブレード14の長手方向寸法に占める貫通孔14bの回収ブレード14の長手方向における寸法合計値の割合である。また、表1の自由長とは貫通孔14bの突出方向(回収ブレードの短手方向)の寸法である。また、ブレード幅は、回収ブレード14の長手方向の長さであり、実板バネ幅は、回収ブレード14の短手方向の長さである。開口率は、50%以上、90%以下が好ましい。50%未満だと、回収ブレード14の剛性が高くなり、搬送部材8に追随できるように回収ブレード14を所定量撓ませて(弾性変形させて)搬送部材8に当接させたときの当接力が適正値よりも高くなってしまう。また、開口率が90%を超えると、回収ブレード14の剛性が保てず、搬送部材8に追随できるように回収ブレード14を所定量撓ませる前の段階で、回収ブレード14が折れ曲がって、塑性変形してしまうおそれがある。
【0042】
また、搬送部材8への当接力は、下記の数1で示す片持ち梁の式より求め、本実施形態においては、当接力Pが1.2Nであった。
【数1】

【0043】
また、蓋部材141は、回収ブレード14と同じ板厚のPET材を用いており、ヤング率は、540Mpaであり、蓋部材141を所定量撓ませるのに必要な荷重が、回収ブレード14を同量撓ませるのに必要な荷重の1/370となっている。よって、蓋部材141の弾性変形による当接力の影響(蓋部材の復元力)は、回収ブレード14の弾性変形による当接力の影響に対して十分小さく、無視できるレベルである。
【0044】
図12は、回収ブレード14の搬送部材8への当接力と、廃トナー収容量との関係を示すグラフである。廃トナー収容量は、上述と同様、クリーニング不良が発生するまでの収容量である。
図12に示すように、当接力0.5N程度までは当接力に比例して廃トナー重量が増加していることがわかる。これは、当接力が大きいほど搬送部材8上のトナーを掻き取る能力が高くなるため、廃トナー搬送量が多くなる。その結果、廃トナーの収容量が増加する。そして、当接力0.5Nで、廃トナー収容器が満杯の状態の270gに到達した。また、当接が2.5Nを超えると異音が発生した。このため、当接力は、1〜1.5N程度にするのが望ましい。本実施形態の様に回収ブレード14に貫通孔14bを設けることで、回収ブレードを剛性の高い金属材料で構成しても、搬送部材8との当接力を、1〜1.5Nにすることができる。
【0045】
PET材からなる回収ブレードを、高温環境で長期間放置して、クリープ変形させたときは、当接力が、適正値の1.0〜1.5Nから図中点線で示すように、当接力0.2Nまで減少し、早期にクリーニング不良が発生した。
【0046】
図13は、回収ブレード14の変形例を示す側面図である。
図13に示すように、この変形例の回収ブレード14は、一枚の弾性フィルム材192で、貫通孔14bを覆う機能と、回収ブレード14の先端から突出して、搬送部材8と当接する機能とを有するように、構成したものである。この変形例の回収ブレード14は、弾性フィルム材192の一部を、回収ブレード14の搬送部材8と対向する面に貼り付け、回収ブレード先端部14aで折り返す。折り返した弾性フィルム材192の部分を、回収ブレード14の貫通孔14bを覆うように、搬送部材8と対向する面と反対側の面に貼り付けける。これにより、弾性フィルムの貫通孔を覆う部分が、蓋部192aとなり、回収ブレード14の先端を覆う部分が、搬送部材8を当接する当接部192bとなる。
【0047】
このように、構成することでも、回収ブレード14の貫通孔14bから廃トナー収容器10内のトナーが漏れ出すのを防止することができるとともに、搬送部材8の表面が削られてしまうのを抑制することができる。
【0048】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の(1)〜(11)態様毎に特有の効果を奏する。
(1)
回転によりトナーを、トナー収容器へ搬送する断面非円形の搬送部材と、前記搬送部材に所定の当接力で当接して前記搬送部材に付着したトナーを掻き落とす金属部材で構成された板状の回収部材とを備えたトナー搬送装置において、前記回収部材よりも硬度が低く、前記搬送部材8と当接する当接部材142を設けた。
かかる構成を備えたことで、実施形態で説明したように、搬送部材8の削れを抑制することができ、搬送部材8の寿命を延ばすことができる。
【0049】
(2)
また、(1)に記載の態様のトナー搬送装置において、当接部材142の回収部材の先端部からの突出量を1mm以下としたことを特徴とするトナー搬送装置
かかる構成とすることで、当接部材の撓みにより回収部材の搬送部材に対する当接力が低下するのを抑制することができる。
【0050】
(3)
また、(1)または(2)に記載の態様のトナー搬送装置において、当接部材を、フィルム材で構成した。
かかる構成とすることで、実施形態で説明したように、当接部材の硬度を、回収部材の硬度よりも低くすることができ、搬送部材8の削れを抑制することができる。
【0051】
(4)
また、(1)乃至(3)いずれかに記載の態様のトナー搬送装置において、回収部材に当該回収部材を貫通する貫通孔を設けた。
かかる構成を有することで、実施形態で説明したように、金属部材で構成された回収部材の剛性を下げることができ、搬送部材8に追随できるように回収部材を所定量撓ませて(弾性変形)させて搬送部材8に当接させたときの当接力が必要以上に大きくなるのを抑制することができる。これにより、異音の発生を抑制することができる。
【0052】
(5)
また、上記(4)に記載の態様のトナー搬送装置において、前記貫通孔の開口率は、50%以上、90%以下である。ここで、開口率とは、回収ブレード14の長手方向寸法に占める貫通孔14bの回収ブレード14の長手方向における寸法合計値の割合である。
かかる構成とすることで、本実施形態で説明したように、搬送部材8に追随できるように回収部材を所定量撓ませて(弾性変形)させて搬送部材8に当接させたときの当接力を適正値にすることができる。
【0053】
(6)
また、上記(4)または(5)に記載の態様のトナー搬送装置において、前記貫通孔を覆う蓋部材を設けた。
かかる構成を備えることで、回収部材の貫通孔からトナー収容器内のトナーが漏れ出すのを防止することができる。
【0054】
(7)
また、上記(6)に記載の態様のトナー搬送装置において、蓋部材は、回収部材よりヤング率および/または厚みを小さくした。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、蓋部材の弾性変形が、当接力に影響するのを抑制することができる。
【0055】
(8)
また、上記(6)または(7)に記載の態様のトナー搬送装置において、蓋部材を所定量撓ませるのに必要な荷重が、回収部材を同量撓ませるのに必要な荷重の1/10以下となるよう、蓋部材を構成した。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、蓋部材の弾性変形が、当接力に影響するのを抑制することができる。
【0056】
(9)
また、感光体12などの像担持体上の転写残トナーを掻き落とすクリーニングブレード7などのクリーニング部材と、クリーニング部材により掻き落とされたトナーを、廃トナー収容器10へ搬送するトナー搬送手段とを備えたクリーニング装置6において、上記トナー搬送手段として、上記(1)乃至(8)いずれかに記載の態様のトナー搬送装置を用いた。
かかる構成を備えることで、クリーニング部材により掻き落とされた廃トナーを良好に廃トナー収容器10へ搬送することができ、掻き取った廃トナーが像担持体に再付着し、クリーニング部材をすり抜けて、クリーニング不良となるのを抑制することができる。
【0057】
(10)
また、感光体12などの像担持体上に形成した画像を最終的に記録紙などの記録体に転移させる画像形成装置において、上記像担持体上に付着した不要な付着物を除去するためのクリーニング手段として、上記(9)に記載の態様のクリーニング装置を用いる。
かかる構成を備えることで、クリーニング不良を抑制することができ、廃トナーが帯電装置に付着したり、記録体に付着したりして、画像不良となるのを抑制することができる。
【0058】
(11)
感光体12などの像担持体上に形成した画像を最終的に記録紙などの記録体に転移させる画像形成装置の本体に着脱自在に構成され、上記像担持体に付着した不要な付着物を除去するクリーニング手段と、像担持体とを一体に支持したプロセスカートリッジにおいて、上記クリーニング手段として、上記(9)に記載の態様のクリーニング装置を用いた。
かかる構成を備えることで、クリーニング不良を抑制することができ、廃トナーが帯電装置に付着したり、記録体に付着したりして、画像不良となるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0059】
1:プロセスカートリッジ
2:露光装置
6:クリーニング装置
7:クリーニングブレード
8:搬送部材
10:廃トナー収容器
12:感光体
14:回収ブレード
14a:先端部
14b:貫通孔
15:廃トナー
20:現像装置
21:クリーニング装置
30:トナー搬送装置
142:蓋部材
143:当接部材
192:弾性フィルム材
192a:蓋部
192b:保護部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特許第2516619号公報
【特許文献2】特許第3162798号公報
【特許文献3】特開平11−143323号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転によりトナーを、トナー収容器へ搬送する断面非円形の搬送部材と、
前記搬送部材に所定の当接力で当接して前記搬送部材に付着したトナーを掻き落とす金属部材で構成された板状の回収部材とを備えたトナー搬送装置において、
前記回収部材よりも硬度が低く、前記回収部材の先端部から突出して前記搬送部材と当接する当接部材を設けたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項2】
請求項1のトナー搬送装置において、
前記当接部材の前記回収部材の先端部からの突出量を1mm以下としたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2のトナー搬送装置において、
前記当接部材が、フィルム材からなることを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかのトナー搬送装置において、
前記回収部材に当該回収部材を貫通する貫通孔を設けたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項5】
請求項4のトナー搬送装置において、
前記貫通孔の開口率は、50%以上、90%以下であることを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項6】
請求項4または5のトナー搬送装置において、
前記貫通孔を覆う蓋部材を設けたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項7】
請求項6のトナー搬送装置において、
前記蓋部材は、前記回収部材よりヤング率および/または厚みが小さいことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項8】
請求項6または7のトナー搬送装置において、
前記蓋部材を所定量撓ませるのに必要な荷重が、前記回収部材を同量撓ませるのに必要な荷重の1/10以下となるよう、前記蓋部材を構成したことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項9】
像担持体上の転写残トナーを掻き落とすクリーニング部材と、
クリーニング部材により掻き落とされたトナーを、廃トナー収容器へ搬送するトナー搬送手段とを備えたクリーニング装置において、
前記トナー搬送手段として、請求項1乃至8いずれかのトナー搬送装置を用いたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項10】
像担持体上に形成した画像を最終的に記録体に転移させる画像形成装置において、
前記像担持体上に付着した不要な付着物を除去するためのクリーニング手段として、請求項9のクリーニング装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
像担持体上に形成した画像を最終的に記録体に転移させる画像形成装置の本体に着脱自在に構成され、
前記像担持体に付着した不要な付着物を除去するクリーニング手段と、像担持体とを一体に支持したプロセスカートリッジにおいて、
前記クリーニング手段として、請求項9に記載のクリーニング装置を用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−114173(P2013−114173A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262103(P2011−262103)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】