説明

トナー搬送装置、並びにこれを用いる現像装置、プロセスユニット及び画像形成装置

【課題】トナー搬送方向への勢力をもつ気流をトナー搬送基板の上空に発生させることによる現像濃度不足の発生を抑えつつ、トナーの回収不良の発生を抑えることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナー搬送基板と、これからトナーを回収する回収部材との対向位置にて、トナー搬送基板上におけるトナーの搬送方向と、回収部材の表面移動方向とを互いに逆方向に設定し、回収部材として、その表面に磁性粒子を担持する供給スリーブ36aを用い、トナー搬送基板と、供給スリーブ36aに担持される磁性粒子とを接触させるように、トナー搬送基板及び供給スリーブ36aを配設した。かかる構成では、回収領域において、供給スリーブ36aの表面に担持されながら移動する磁性粒子によってトナー搬送基板上のトナーを積極的に掻き取って回収不良の発生を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー搬送部材の表面上でトナーをホッピングさせながら搬送するトナー搬送装置、並びに、これを用いる現像装置、プロセスユニット及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置として、特許文献1や特許文献2に記載のものが知られている。これら画像形成装置は、所定のピッチで並ぶ複数の搬送電極を有するトナー搬送基板と、このトナー搬送基板における互いに隣り合う搬送電極に対して、互いに位相ずれした繰り返しパルス電圧を印加するパルス電圧印加手段とを有している。そして、その位相ずれした繰り返しパルス電圧の印加により、トナー搬送基板上に進行電界を形成する。トナー搬送基板上のトナーは、進行電界によってホッピングしながら潜像担持体との対向位置である現像領域に向けて搬送される。そして、現像領域に到達すると、潜像担持体の潜像に付着してトナー像を形成する。
【0003】
【特許文献1】特開2002−341656号公報
【特許文献2】特開2004−333845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなホッピング方式の現像を行う画像形成装置においては、文字画像などといった低面積率の画像で現像濃度不足を引き起こし易くなるという不具合があった。本発明者らは、かかる不具合を引き起こす原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことを見出した。即ち、多量のトナー粒子が空気中で放物線状の軌道を描くホッピングを繰り返すと、やがて基板表面の上空に気流が発生し始める。この気流は主に基板表面と平行な方向に勢力を持っており、上空200[μm]程度の領域において最も強くなる。但し、この領域ではトナーに対して十分な強さの進行電界が働くため、トナーは気流の影響をあまり受けることなく、進行電界の電気力線に沿って忠実に進んでいく。これに対し、上空300[μm]以上の領域では、トナーに作用する進行電界の力が弱まるため、トナーは本来の軌道よりも気流方向に流されながら進む。現像領域では、基板表面から少なくとも400[μm]程度離れている潜像担持体の表面近傍において、トナーがこのように流されながら進むことになる。潜像担持体の表面に高面積率のベタ潜像が形成されている場合には、トナーに対してベタ潜像による電界が十分に作用するため、トナーは気流に逆らいながら進んでベタ潜像に付着することができる。ところが、文字潜像などといった低面積率の潜像の場合には、トナーに対して、潜像による電界と、潜像周囲の大きな非画像部による電界との両方が作用する。そして、前者の電界が支配的になっている潜像近傍にトナーを留めようとする静電気力よりも、後者の電界が支配的になっている非画像部近傍にトナーを押し流そうとする気流の力が勝ってしまい易くなる。このことが、低面積率の画像で現像濃度不足を引き起こし易くなる原因となっていることがわかった。
【0005】
そこで、本発明者らは、進行電界の向きを順方向と逆方向とで交互に切り換えることでトナーを定期的にスイッチバックさせつつ、相対的に順方向に搬送するという新規な構成を備えた画像形成装置を開発中である。かかる構成では、トナーを定期的にスイッチバックさせることで順方向への気流の発生を抑えて、低面積率の画像における現像濃度不足の発生を抑えることができる。
【0006】
しかしながら、この画像形成装置においては、トナー搬送基板からのトナーの回収が不十分になり易くなるという新たな問題が発生してしまった。具体的には、ホッピング方式の現像を行う画像形成装置においては、トナー搬送基板の被供給領域に対して、トナー供給ローラなどによってトナーを供給する。そして、被供給領域に供給したトナーを、トナー搬送基板上で現像領域に向けてホッピングさせながら搬送し、現像領域で潜像担持体の潜像に付着させる。更に、現像に寄与しなかったトナーについては、現像領域から回収領域に向けて搬送し、回収領域で回収ローラ表面に付着させるなどして回収する。回収ローラ表面に付着したトナーは、掻き取りブレードで掻き取られるなどして、回収ローラ表面から除去される。かかる構成において、上述のようにしてトナーをスイッチバックさせながら搬送すると、スイッチバックさせない場合に比べてトナー搬送速度が遅くなる。このため、基板上における単位面積あたりのトナー搭載量を多くする、即ちトナー搬送密度を高くすることで、現像領域へのトナーの搬送量不足を回避する必要が出てくる。すると、回収ローラ等の回収部材によるトナーの回収が間に合わなくなって、トナーの回収が不十分になってしまうのである。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、次のようなトナー搬送装置、並びにこれを用いる現像装置、プロセスユニット及び画像形成装置を提供することである。即ち、トナー搬送方向への勢力をもつ気流をトナー搬送部材の上空に発生させることによる現像濃度不足の発生を抑えつつ、トナーの回収不良の発生を抑えることができるトナー搬送装置等である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、所定方向における並び順が連続しているn(3以上の整数)個の搬送電極からなる電極組が該所定方向に繰り返し配設されたトナー搬送部材と、パルス電圧の出現と消失とが繰り返される繰り返しパルス電圧を、パルス電圧の出現タイミングを互いに同期させないようにn相出力するパルス電圧出力手段と、該電極組における個々の搬送電極に対し、n相の繰り返しパルス電圧からなるn相パルス電圧における互いに異なる相の繰り返しパルス電圧を導くための導通路と、繰り返しパルス電圧が印加される各搬送電極上に形成された進行電界によって該トナー搬送部材上でホッピングしながら搬送されるトナーを、自らの無端移動する表面に付着させることで該トナー搬送部材上から回収する回収部材とを備えるトナー搬送装置において、上記トナー搬送部材と上記回収部材との対向位置にて、該トナー搬送部材上におけるトナーの搬送方向と、該回収部材の表面移動方向とを互いに逆方向に設定し、該回収部材として、その表面に磁性粒子を担持するものを用い、該トナー搬送部材と、該回収部材に担持される磁性粒子とを接触させるように、該トナー搬送部材及び回収部材を配設したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のトナー搬送装置において、トナーと磁性粒子とを混合した現像剤を上記回収部材の表面に担持させたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、所定方向における並び順が連続しているn(3以上の整数)個の搬送電極からなる電極組が該所定方向に繰り返し配設されたトナー搬送部材と、パルス電圧の出現と消失とが繰り返される繰り返しパルス電圧を、パルス電圧の出現タイミングを互いに同期させないようにn相出力するパルス電圧出力手段と、該電極組における個々の搬送電極に対し、n相の繰り返しパルス電圧からなるn相パルス電圧における互いに異なる相の繰り返しパルス電圧を導くための導通路と、繰り返しパルス電圧が印加される各搬送電極上に形成された進行電界によって該トナー搬送部材上でホッピングしながら搬送されるトナーを、自らの無端移動する表面に付着させることで該トナー搬送部材上から回収する回収部材と、該回収部材の表面からトナーを除去する除去手段とを備えるトナー搬送装置において、上記n相パルス電圧として、トナーを上記トナー搬送部材上で順方向に搬送するための順方向n相パルス電圧と、逆方向に搬送するための逆方向n相パルス電圧とを交互に切り換えて出力させるように、上記パルス電圧出力手段を構成するとともに、該トナー搬送部材と上記回収部材との対向位置にて、該トナー搬送部材上におけるトナーの搬送方向と、該回収部材の表面移動方向とを互いに同方向に設定し、且つ該トナー搬送部材上におけるトナーの平均搬送速度vtと、上記回収部材の表面移動速度vkとを、「vt≦vk」という条件を具備するように設定したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、所定方向における並び順が連続しているn(3以上の整数)個の搬送電極からなる電極組が該所定方向に繰り返し配設されたトナー搬送部材と、パルス電圧の出現と消失とが繰り返される繰り返しパルス電圧を、パルス電圧の出現タイミングを互いに同期させないようにn相出力するパルス電圧出力手段と、該電極組における個々の搬送電極に対し、n相の繰り返しパルス電圧からなるn相パルス電圧における互いに異なる相の繰り返しパルス電圧を導くための導通路と、繰り返しパルス電圧が印加される各搬送電極上に形成された進行電界によって該トナー搬送部材上でホッピングしながら搬送されるトナーを、自らの無端移動する表面に付着させることで該トナー搬送部材上から回収する回収部材と、該回収部材の表面からトナーを除去する除去手段とを備えるトナー搬送装置において、上記n相パルス電圧として、トナーを上記トナー搬送部材上で順方向に搬送するための順方向n相パルス電圧と、逆方向に搬送するための逆方向n相パルス電圧とを交互に切り換えて出力させるように、上記パルス電圧出力手段を構成するとともに、該トナー搬送部材と上記回収部材との対向位置にて、該トナー搬送部材上におけるトナーの搬送方向と、該回収部材の表面移動方向とを互いに逆方向にしたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項3のトナー搬送装置において、上記トナー搬送部材と上記回収部材とを互いに接触させたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかのトナー搬送装置において、上記トナー搬送部材の全領域のうち、トナーの供給を受けるための被供給領域に配設された上記電極組と、トナーの回収が行われるための回収領域に配設された上記電極組とで、互いに異なる条件のn相パルス電圧を印加するように、上記パルス電圧出力手段及び導通路を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、トナー搬送部材の表面上でトナーをホッピングさせながら搬送するトナー搬送装置により、トナーを潜像担持体との対向位置に搬送して該潜像担持体上の潜像を現像する現像装置において、上記トナー搬送装置として、請求項1乃至6の何れかのトナー搬送装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体に担持される潜像をトナーによって現像する現像手段とを備える画像形成装置における、該潜像担持体及び現像装置を1つのユニットとして共通の支持体に支持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能にしたプロセスユニットにおいて、上記現像手段として、請求項7の現像装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体に担持される潜像をトナーによって現像する現像手段とを備える画像形成装置において、上記現像手段として、請求項7の現像装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の画像形成装置において、上記潜像担持体と上記現像装置との組合せを複数設けるとともに、それぞれの潜像担持体上で得られたトナー像を転写体に重ね合わせて転写する転写手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
これらの発明においては、順方向n相パルス電圧と逆方向n相パルス電圧とを交互に切り換えてトナー搬送部材上でトナーを定期的にスイッチバックさせることで、トナー搬送部材の上空にてトナー搬送方向への勢力をもつ気流の発生を抑える。よって、かかる気流をトナー搬送部材の上空で発生させることによる現像濃度不足の発生を抑えることができる。
また、これらの発明において、請求項1の発明特定事項の全てを備えるものでは、回収領域において、回収部材の表面に担持されながら移動する磁性粒子によってトナー搬送部材上のトナーを積極的に掻き取ることで、トナーの搬送密度が比較的高い場合であってもトナー搬送部材上からトナーを良好に回収して、回収不良の発生を抑えることができる。
また、請求項3の発明特定事項の全てを備えるものでは、回収ローラなどといった回収部材の表面移動速度vkを、トナー搬送部材上で順方向の進行とスイッチバックとを繰り返すトナーの平均搬送速度vt以上に設定することで、次のことが可能になる。即ち、回収領域に向けて搬送されてくるトナーに対して、回収部材の無端移動する表面の全領域のうち、トナーを付着させていない無垢の領域を対面させることが可能になる。かかる構成では、トナーの搬送密度が比較的高い場合であっても、回収領域に搬送されてくるトナーを回収部材の無垢の領域に良好に付着させて、トナーの回収不良の発生を抑えることができる。
また、請求項4の発明特定事項の全てを備えるものでは、トナー搬送部材と回収部材との対向位置にて、回収部材の表面をトナーの搬送方向とは逆方向に移動させることで、順方向への急流の勢いを弱めたり、逆方向の気流を発生させたりする。これにより、回収部材との対向位置におけるトナーの滞留時間を引き延ばすことで、トナーの搬送密度が比較的高い場合であってもトナー搬送部材上からトナーを良好に回収して、回収不良の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用したトナー搬送装置の第1実施形態について説明する。
図1は、本第1実施形態に係るトナー搬送装置のトナー搬送基板1及び搬送電源回路5を、画像形成装置の感光体25とともに示す構成図である。同図において、トナー搬送部材たるトナー搬送基板1は、基体1a、複数の搬送電極1b、表面層1cなどを有している。板状の基体1aは絶縁性材料が板状に形成されたものである。複数の搬送電極1bは、それぞれ短冊状の形状をしており、同図において、長手方向を図紙面に直交する方向に延在させる姿勢で、図中左右方向に所定のピッチで並ぶように基体1aの表面に形成されている。表面層1cは、絶縁性材料からなり、基体1aの非電極形成面や複数の搬送電極1bの表面を覆っている。
【0011】
それぞれの搬送電極1bに対しては、基板上に進行電界を形成するためのn相(例えば3相)の繰り返しパルス電圧が搬送電源回路3によって印加される。具体的には、複数の搬送電極2のうち、潜像担持体たる感光体25との対向領域で且つ感光体25に比較的近い領域である現像領域R2に位置するものに対しては、3相の繰り返しパルス電圧であるVa2〜Vc2が印加される。また、それ以外の搬送電極1bに対しては、3相の繰り返しパルス電圧であるVa1〜Vc1が印加される。なお、現像領域R2よりもトナー搬送方向上流側の基板領域は、トナー搬送基板1上のトナーTを現像領域R2に向けて搬送するための搬送領域R1となっている。また、現像領域R2よりもトナー搬送方向下流側の基板領域は、感光体1の表面に過剰に付着したトナーTをトナー搬送基板1に回収する回収領域R3となっている。
【0012】
トナー搬送基板1上のトナーTは、各搬送電極1bに繰り返しパルス電圧が印加されることによって基板上に形成される進行電界により、基板上でホッピングしながら図中右側から左側へと搬送されていく。これにより、搬送領域R1内に存在するトナーTが搬送領域R1内から現像領域R2に向けて搬送され、現像領域R2内に進入する。現像領域R2では、トナー搬送基板1の上方に、図示しない駆動手段によって回転駆動されるドラム状の感光体25がトナー搬送基板1と所定の間隙を介して対向するように配設されている。そして、ホッピングによって感光体25にある程度近づいたトナーTに対し、周知の電子写真プロセスによって感光体25の表面に形成された静電潜像による電界が作用して、トナーTが静電潜像に付着する。このとき、感光体25の非画像部(地肌部)上にはトナーTを静電反発させる電界が形成されているため、殆どのトナーTは非画像部に付着せずに、静電潜像だけに選択的に付着する。このような選択的なトナーTの付着により、感光体25上の静電潜像がトナー像に現像される。
【0013】
現像領域R2内では、このようにしてトナーTの一部が現像に寄与しながら、残りがホッピングの繰り返しによって図中右側から左側へと搬送されていき、現像領域R2を通過して回収領域R3に進入する。
【0014】
回収領域R3では、感光体25の非画像部電位と、各搬送電極1bのパルス電位との関係により、ホッピングしたトナーTを非画像部からトナー搬送基板1に向けて静電移動させる電界が形成される。これにより、非画像部上に付着してしまったトナーTがトナー搬送基板1に回収される。
【0015】
図2は、トナー搬送基板1をおもて面側から示す平面図である。また、図3は、トナー搬送基板1の図2におけるA−A’断面を示す縦断面図である。また、図4は、トナー搬送基板1の図2におけるB−B’断面を示す横断面図である。また、図5は、トナー搬送基板1の図2におけるC−C’断面を示す横断面図である。また、図6は、トナー搬送基板1の図2におけるD−D’断面を示す横断面図である。なお、図2や図3における矢印Xは、トナーの搬送方向を示している。以下、これらの図を用いながら、トナー搬送基板1の構成について詳述する。
【0016】
トナー搬送基板1の複数の搬送電極1bは、A相搬送電極1bAと、これに対してトナー搬送方向下流側で隣り合うB相搬送電極1bBと、これに対してトナー搬送方向下流側で隣り合うC相搬送電極1bCとからなる電極組が、トナー搬送方向に繰り返し並ぶように配設されたものである。これら搬送電極1bの表面には、上述したように、絶縁性の表面層1cが形成されている。
【0017】
搬送電極1bの長手方向の両端部には、それぞれトナー搬送方向に延在するリード電極が接続されている。このリード電極は、A相用、B相用、C相用のものがあり、A相用のものは、複数のA相搬送電極1bAに接続され、搬送電源回路(5)からA相の繰り返しパルス電圧であるA相パルス電圧の印加を受けながら、それを各A相搬送電極1bAに導く。また、B相用のものは、複数のB相搬送電極1bBに接続され、搬送電源回路からB相の繰り返しパルス電圧であるB相パルス電圧の印加を受けながら、それを各B相搬送電極1bBに導く。また、C相用のものは、複数のC相搬送電極1bCに接続され、搬送電源回路からC相の繰り返しパルス電圧であるC相パルス電圧の印加を受けながら、それを各C相搬送電極1bCに導く。但し、上述のように、図1に示した現像領域R2における搬送電極1bに対しては、それぞれ搬送領域R1や回収領域R3においける搬送電極とは異なる3相の繰り返しパルス電圧(Va2、Vb2、Vc2)が印加される。このため、A相用のリード電極には、搬送領域R1や回収領域R3の各A相搬送電極1bAに接続される搬送用A相リード電極2Aと、現像領域R2の各A相搬送電極1bAに接続される現像用A相リード電極3Aとがある。また、B相やC相も同様にして、搬送用B相リード電極2B、現像用B相リード電極3B、搬送用C相リード電極2C、現像用C相リード電極3Cがある。
【0018】
基体1aの非電極形成面や各搬送電極1bと、表面層1cとの間には中間層1dが形成されている。この中間層1d材料は、表面層1cと同じであってもよいし、異なってもよい。A相搬送電極1bAと、B相やC相のリード電極(2B、2C、3B、3C)との間にこの中間層1dが介在することにより、両者間での絶縁性が確保されている。また、B相搬送電極1bBと、A相やC相のリード電極との間にも中間層1dが介在しており、これによって両者間での絶縁性が確保されている。また、C相搬送電極1cCも同様にして、A相やB相のリード電極との間の絶縁性が確保されている。
【0019】
なお、各リード電極には、パルス電圧出力手段たる搬送電源回路(5)からの配線を接続するための図示しない入力端子が設けられている。この入力端子をリード電極と同じ層に設け、基体1aに設けたスルーホールに配線を通して入力端子に接続してもよいし、入力端子を中間層1dの上に設け、表面層1cに設けたスルーホールに配線を通して入力端子に接続してもよい。
【0020】
基体1aとしては、ガラス、樹脂、セラミックスなどの絶縁性材料からなる基板、ステンレスなどの導電性材料からなる基板にSiO等の絶縁膜を形成した基板、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなる基板などを用いることができる。
【0021】
搬送電極1bは、基体1a上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10[μm](好ましくは0.5〜2.0μm)の厚みで成膜したものが、フォトリソグラフィー技術などによって所要の電極パターン形状に加工されたものである。搬送電極1bのトナー搬送方向Xにおける幅L(図3参照)については、トナーTの平均粒径の1倍以上20倍以下とし、かつ、搬送電極間の間隙Gを同様の長さにすることが望ましい。
【0022】
表面層1cとしては、例えばSiO、TiO、TiO、SiON、BN、TiN、TaO5などの材料が0.5〜10[μm](好ましくは0.5〜3μm)の厚みで成膜されたものである。これらの材料に代えて、SiN、Bn、Wなどの無機ナイトライド化合物を用いてもよい。特に、表面水酸基が増えるとトナーの帯電量が搬送途中で下がる傾向にあるので、表面水酸基(SiOH、シラトール基)の少ない無機ナイトライド化合物が好ましい。
【0023】
かかる構成のトナー搬送基板1における複数の搬送電極1bに対し、搬送電源回路5から繰り返しパルス電圧を出力すると、基板上に進行電界が形成される。そして、トナー搬送基板1上のトナーはこの進行電界による静電気力によってホッピングする。繰り返しパルス電圧は、例えば、図7や図8に示すように、正(+)又は負(−)の値の矩形パルス波を所定の周期で立ち上がらせるA相パルス電圧Va、B相パルス電圧Vb、C相パルス電圧Vcであって、互いの位相がそれぞれずれているものである。A相パルス電圧Va、B相パルス電圧Vb、C相パルス電圧Vcは、A相搬送電極1bA、B相搬送電極1bB、C相搬送電極1bCに印加される。
【0024】
例えば、B相搬送電極1bBの上に負帯電性のトナーTがあったとする。そして、時刻T1において、A相パルス電圧Vaを受けるA相搬送電極1bAと、B相パルス電圧Vbを受けるB相搬送電極1bBとが「0V(G)」になり、且つC相パルス電圧Vcを受けるC相搬送電極1bCが「+電位」になったとする。すると、B相搬送電極1bB上の負帯電性のトナーTがC相搬送電極1bCに向けて静電気的に引き寄せられて、基板面からホッピングする。そして、C相搬送電極1bCの上に移る。
【0025】
次に、時刻T2において、A相搬送電極1bAが「+電位」になる一方で、B相搬送電極1bBと、C相搬送電極1cCとが「0V(G)」になったとする。すると、B相搬送電極1bBとC相搬送電極1bCとの間にはC相搬送電極1bC上のトナーTに対する反発電界が形成されるとともに、C相搬送電極1bCとA相搬送電極1cCとの間には同トナーTに対する吸引電界が形成される。これにより、C相搬送電極1bC上のトナーTがA相搬送電極1bAに向けてホッピングして、A相搬送電極1bA上に移る。
【0026】
更に、時刻T3において、A相搬送電極1bAとC相搬送電極1bCとがそれぞれ「0V(G)」になる一方で、B相搬送電極1bBが「+電位」になったとする。すると、C相搬送電極1bCとA相搬送電極1bAとの間にはA相搬送電極1bA上のトナーTに対する反発電界が形成されるとともに、A相搬送電極1bAとB相搬送電極1bBとの間には同トナーに対する吸引電界が形成される。これにより、A相搬送電極1bA上のトナーTがB相搬送電極1bBに向けてホッピングして、B相搬送電極1bB上に移る。以上のような反発電界の出現及び消失と、吸引電界の出現及び消失とが繰り返される進行電界がトナー搬送基板1上に形成されるのである。
【0027】
トナー搬送基板1上のトナーの動きをより具体的に説明すると、図9(a)に示すように、A相、B相、C相の搬送電極1bが何れも0V(G)の状態でトナー搬送基板1上に負帯電性のトナーTが載っているとする。この状態から、図9(b)に示すようにA相搬送電極(A)だけが「+電位」になると、C相搬送電極(C)上のトナーTはA相搬送電極(A)に向けて静電吸引されてホッピングし、A相搬送電極(A)の上に移る。次に、図9(c)に示すように、B相搬送電極(B)だけが「+電位」になると、B相搬送電極(B)上のトナーTは、A相搬送電極(A)側から反発力を受けるとともに、C相搬送電極(C)側から吸引力を受ける。これにより、B相搬送電極(B)上のトナーは、C相搬送電極(C)に向けて基板面からホッピングして、C相搬送電極(C)上に移る。更に、図9(d)に示すように、C相搬送電極(C)だけが「+電位」になると、C相搬送電極(C)上のトナーTは、B相搬送電極(B)側から反発力を受けるとともに、A相搬送電極(A)側から吸引力を受ける。これにより、C相搬送電極(C)上のトナーは、A相搬送電極(A)に向けて基板面からホッピングして、A相搬送電極(A)上に移る。
【0028】
なお、図8や図9により、トナーTとして負帯電性のものを用い、且つ、繰り返しパルス電圧として正極性のものを電極に印加した例について説明したが、その逆に、正帯電性のトナーTと、負極性の繰り返しパルス電圧との組み合わせを採用してもよい。また、正又は負帯電性のトナーTと、これと同極性の繰り返しパルス電圧との組み合わせを採用してもよい。
【0029】
図10は、本第1実施形態に係るトナー搬送装置の電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、搬送電源回路5は、パルス信号を生成出力するパルス信号発生回路6、一般用A相波形増幅器7A、一般用B相波形増幅器7B、一般用C相波形増幅器7C、現像用A相波形増幅器8A、現像用B相波形増幅器8B、現像用C相波形増幅器8Cなどを有している。
【0030】
パルス信号発生回路6は、例えばロジックレベルの入力パルスを受けて、互いに120°に位相ずれした2組みパルスで、次段の波形増幅器7A,B,C、(A,B,Cに含まれる図示しないスイッチング手段、例えばトランジスタを駆動して100[V]のスイッチングを行うことができるレベルの出力電圧10〜15Vのパルス信号を生成して出力する。
【0031】
パルス発生回路6から発せられた一般用のA相パルス波,B相パルス波,C相パルス波は、一般用A相波形増幅器7A,一般用B相波形増幅器7B,一般用C相波形増幅器7Cによって増幅されて、一般用のA相パルス電圧Va1,B相パルス電圧Vb1,C相パルス電圧Vc1となる。そして、トナー搬送基板(1)における搬送領域(R1)や回収領域(R3)に存在する一般用のA相,B相,C相搬送電極に印加される。また、パルス発生回路6から発せられた現像用のA相パルス波,B相パルス波,C相パルス波は、現像用A相波形増幅器8A,現像用B相波形増幅器8B,現像用C相波形増幅器8Cによって増幅されて、現像用のA相パルス電圧Va2,B相パルス電圧Vb2,C相パルス電圧Vc2となる。そして、トナー搬送基板(1)における現像領域(R2)に存在する現像用のA相,B相,C相搬送電極に印加される。
【0032】
一般用のA相波形増幅器7A,B相波形増幅器7B,C相波形増幅器7Cは、パルス発生回路6から発せられたパルス波を、例えば図11に示すように、各相の+100[V]の印加時間taを繰り返し周期tfの1/3である約33%にした(これを「搬送電圧パターン」という)3相のパルス電圧Va1,Vb1,Vc1に変換する。また、現像用のA相波形増幅器8A,B相波形増幅器8B,C相波形増幅器8Cは、例えば図12又は図13に示すように、各相の+100[V]又は0]V]の印加時間taを繰り返し周期tfの2/3である約67%にした(これを「ホッピング電圧パターン」という)3相の繰り返しパルス電圧(Va2,Vb2,Vc2)に変換する。このような搬送電圧パターンやホッピング電圧パターンにより、トナー搬送基板上でトナーTをホッピングさせるETH現象を生起せしめる。
【0033】
ETH現像とは、現像ローラや現像スリーブなどといった表面を無端移動させる現像剤担持体上からのトナーのスモーク化あるいはクラウド化を意味するのではなく、表面移動しないトナー搬送部材の表面上でトナーのホッピングによる波移動が発生する現象を意味する。この波移動により、トナーを搬送領域(R1)から現像領域(R2)に向けて搬送することができる。また、現像領域(R1)において、ホッピングしたトナーを潜像担持体の潜像に対しては現像担持体に向かわせる一方で、非画像部に対してはトナー搬送部材に向かわせる電界を形成することができる。
【0034】
例えば、図13に示したホッピング電圧パターンのように、0〜−100Vで遷移するパルス状電圧波形を採用した場合、潜像担持体上の非画像部電位を−100Vより低くしたときには、現像領域(R1)でホッピングしたトナーを潜像の付近で潜像に向かわせる一方で、非画像部の付近で基板に向かわせる。非画像部の電位を−150Vや−170Vにすると、トナー非画像部の近くでトナーを非画像部に向かわせてしまう。
【0035】
また、ホッピング電圧パターンの繰り返しパルス電圧が20V〜−80Vで遷移するパルス波形を採用した場合、潜像の電位を約0V、非画像部の電位を−110Vにすると、繰り返しパルス電圧のローレベルの電位が潜像電位と非画像部電位との間になる。このため、同様にして、現像領域(R1)でホッピングしたトナーを潜像の付近で潜像に向かわせる一方で、非画像部の付近で基板に向かわせる。
【0036】
このように、繰り返しパルス電圧のローレベルの電位を潜像電位と非画像部電位との間の値にすることで、潜像に対してトナーを吸引付着させる一方で、非画像部に対してはトナーを反発させることができる。ホッピングによってある程度まで潜像担持体に近づいたトナーに対しては、進行電界が及ばないので、そのトナーを容易に潜像に向けて飛翔させることができ、高い画像品質が得られる現像を低電圧で行うことができる。
【0037】
これに対し、現像ローラなどの表面移動する現像剤担持体を用いるいわゆるジャンピング現像方式では、現像剤担持体の表面に付着しているトナーをそこから離脱させるためには、トナーと現像剤担持体との付着力を超える静電気力を作用させる必要がある。しかも、離脱させたトナーを潜像担持体の潜像に向けて引き寄せるとともに、非画像部と反発させる必要がある。このような条件では、現像担持体にDC600〜900Vもの現像バイアスをかけなければならない。これに対し、ETH現象を利用すると、前述の条件を進行電界の領域外で具備させればよいので、進行電界の強さとしては、トナーと現像剤担持体との付着力を超える静電気力を作用させ得るレベルであればよい。このため、搬送電極に印加する繰り返しパルス電圧の振幅を|150〜100|V以下の低電圧にしても、トナーを潜像に対して選択的に付着させることが可能になる。また、OPC感光体等の潜像担持体における潜像と非画像部との電位差もジャンピング方式のような大きな値にする必要がないため、非画像部電位を相当に小さくすることが可能になる。これにより、潜像担持体の表面を非画像部電位に一様帯電させる際に発生するオゾンやNOの量を非常に少なくして、環境に優しく且つ潜像担持体の寿命低下を抑えた現像を行うことができる。
【0038】
例えば、潜像担持体として、表面のCTL(Charge Transport Layer)の厚さが15[μm]で且つその比誘電率εが3程度であるOPC感光体を使用し、トナーの電荷密度を10−3〜−4[C/m]にした場合、ETH現象を利用すれば、各搬送電極に対して、0〜−100V、デューティー50%の繰り返しパルス電圧を印加すればよい。すると、繰り返しパルス電圧の値は平均で−50Vとなり、負に帯電しているトナーであれば、トナーの潜像に対する選択的な付着が可能になる。搬送電極に印加する繰り返しパルス電位の平均値(平均値電位)を潜像担持体の潜像電位と非画像部電位との間の電位に設定することで、潜像担持体の潜像の画像部に対してはトナーが潜像担持体側に向かい、非画像部に対してはトナーが搬送基板側に向かう電界を発生させることができる。
【0039】
なお、トナー搬送基板とOPC感光体とのギャップ(間隔)については、0.2〜0.3[mm]程度にすればよい。トナーの帯電量Q/M、パルス電圧の大きさ、OPC感光体の表面線速などによっても異なるが、負帯電性のトナーの場合、OPC感光体の非画像部電位が−300V以下、更には−100V以下であっても十分に現像を行うことができる。正帯電性のトナーの場合には、非画像部の電位が+電位となる。
【0040】
また、繰り返しパルス電圧としては、図示のような矩形波のものの他、sin波(サインカーブ)や三角波などを採用してもよい。繰り返しパルス電圧のDutyは、3相の場合で33.3〜66.7[%]の範囲、4相の場合で25〜75[%]の範囲で調整することが可能である。
【0041】
先に示した図3において、トナー搬送基板1における電極幅Lや電極間隙Gは、トナーの搬送効率やホッピング効率に大きく影響する。電極間の真ん中あたりを飛んでいるトナーにはほぼ水平方向の静電気力が作用するのに対し、搬送電極1bの真上にあるトナーには、基板面に対して垂直方向及び水平方向の成分をもった静電気力が作用するのであるが、これらの静電気力のバランスが電極幅Lや電極間隙Gによって左右されるからである。具体的には、搬送電極1bの上で且つ電極幅方向の端部付近にあるトナーは、ホッピングにより、隣の搬送電極1bを飛び越えることがあるため、電極幅Lが大きいと、ホッピング1回あたりにおける移動距離の大きいトナーが増える。これにより、トナーの搬送効率が上がる。但し、電極幅Lが大きすぎると、搬送電極1bの上で且つ電極幅方向の中央付近における電界強度が不足して、トナーの搬送効率が却って低下することになる。
【0042】
また、電極間隙Gは、電極間の電界強度を左右する。電極間隙Gが小さくなるほど、電極間の電界強度が強くなって、ホッピングの初速(勢い)が高まる。しかし、搬送電極1bの真上から隣の搬送電極1bの真上に移動するトナーでは、ホッピング1回あたりにおける移動距離が短くなるため、駆動周波数を高くしないと所望のトナー搬送効率が得られなくなる。
【0043】
さらには、搬送電極1bの表面を覆う表面層1cの厚さは、搬送電極1b上の電界強度を左右する。特に、垂直方向成分の電気力線への影響が大きくなる。
【0044】
搬送電極1bの上には、搬送方向において最低1個のトナーを存在させることが望ましく、そのためには電極幅Lをトナーの平均粒径と同等以上に設定する必要がある。電極幅Lをこれよりも小さくすると、トナーに作用する電界が少なくなって搬送力が著しく飛翔力ため、実用上は十分でない。
【0045】
搬送電極1bの上における電極幅方向中央付近では、電極幅Lが大きくなるに従って、電極表面から延びる電気力線が進行方向(水平方向)に向けて傾斜するため、、垂直方向の電界強度が低下する。そして、これにより、ホッピングの初速が小さくなる。よって、電極幅Lが大きくなり過ぎると、ホッピングのための電界強度よりも、トナーと基板面との鏡像力、ファンデルワールス力、水分等による吸着力が勝り、トナーをホッピングさせることができなくなる。
【0046】
搬送効率やホッピングの初速などの観点からすると、搬送電極1bの上に電極幅方向において20個程度のトナーを存在させる電極幅Lであれば、100[V]程度の低電圧の繰り返しパルス電圧でもトナーを良好にホッピングさせて、効率良く搬送することができる。例えば、トナーの平均粒径が5[μm]であれば、電極幅Lは5〜100[μm]の範囲がよい。電極幅Lがそれよりも大きいと、搬送電極1b上でのトナーの滞留が発生する。
【0047】
パルス電圧による印加電圧を100[V]以下の低電圧でトナーを効率的に搬送するための電極幅Lのより好ましい範囲は、トナーの平均粒径の2〜10倍以下である。電極幅Lをこの範囲内にすることで、搬送電極1bの上の電極幅方向中央付近における電界強度の低下が1/3以下に抑えられ、ホッピングの効率低下は10%以下となって、効率の大幅な低下をきたすことがなくなる。これは、例えば、トナーの平均粒径を5[μm]とすると、10〜50[μm]の範囲に相当する。電極幅Lの更に好ましい範囲は、トナーの平均粒径の2〜6倍以下である。これは、例えば、トナーの平均粒径を5[μm]とすると、10〜30[μm]に相当する。
【0048】
図14は、トナー搬送基板上における電界における進行方向(水平方向)電界強度TEと、高さ方向電界強度HEとの関係を示すグラフである。また、図15は、進行方向電界強度TEと、電極幅Lと、電極間隙Gとの関係を示すグラフである。また、図16は、高さ方向電界強度HEと、電極幅Lと、電極間隙Gとの関係を示すグラフである。これらのグラフは、トナー搬送基板として、搬送電極1bの電極幅Lを30[μm]、電極間隙Gを30[μm]、搬送電極1bの厚みを5[μm]、表面層1cの厚みを0.1[μm]にそれぞれ設定したものを用いた実験結果に基づいて作成したものである。A相搬送電極1bAが0[V]になり、且つB相搬送電極1bBが+100[V]になったときの電界強度である。同図では、細部を分かり易くするために2つの搬送電極しか示していないが、実験ではA,B,C相の搬送電極をそれぞれ複数設けたトナー搬送基板を用いた。トナーTとしては、粒径が8[μm]で、電荷量が−20[μC/g]のものを用いた。図15や図16で示す電界強度は搬送電極1b上における代表点の値であり、進行方向強度TEの代表点TEaは図14に示すように、搬送電極1bの端部から5[μm]上方の点である。また、高さ方向電界強度HEの代表点HEaは、搬送電極1bの幅方向中央部から5[μm]上方の点である。
【0049】
これらのグラフから、トナーTにホッピングのための静電気力を作用させる電界強度としては、5E+5[V/m]以上が必要であることがわかる。また、トナーTに電極上で滞留させない程度に強い静電気力を作用させる電界強度としては、1E+6[V/m]以上が必要であり、さらに十分な静電気力を付与できるより好ましい電界強度としては、2E+6[V/m]以上であることがわかる。電極間隙Gを大きくするほど進行方向電界強度TEを低下させてしまう。トナーの平均粒径の1倍以上〜20倍以下、好ましくは2倍以上〜10倍以下、さらにより好ましくは2倍以上〜6倍以下であることが望ましい。
【0050】
また、図16のグラフに示すように、電極間隙Gが大きくなるとホッピングの効率が低下するが、トナーTの平均粒径の20倍までは実用上差し支えないホッピング効率が得られる。トナーTの平均粒径の20倍を越えると多くのトナーが電極上で滞留するため、電極間隙Gはトナーの平均粒径の20倍以下にする必要がある。
【0051】
本発明者らの実験によれば、トナーの平均粒径が2〜10[μm]、帯電量Q/Mが|3〜40|[μC/g]、より好ましくは、|10〜30|[μC/g]であるときに、特に効率の良いトナー搬送を実現することができた。
【0052】
トナー搬送基板には、上述した表面層1cを設けることで、搬送電極1bの汚れや基板表面へのトナー固着を抑えることができる。先に図14に示した電極構成において、表面層1cの厚さを0.1〜80[μm]の範囲で変化させたときにおける進行方向電界強度TEを測定した結果を図17に示す。振幅100[V]のパルス電圧を各搬送電極1bに印加したときの結果である。実験に用いた表面層1cの誘電率εは空気より高い値であり、通常ε=2以上である。同図のグラフからわかるように、表面層1cの膜厚が大きすぎると、基板表面のトナーに作用する進行方向電界強度TEが低下する。トナー搬送効率や耐温湿度環境等を考慮すると、実用可能な表面層1cの厚さは、トナー搬送効率の低下を30[%]程度に留める10[μm]以下、より好ましくはトナー搬送効率の低下を数[%]程度に留める5[μm]以下である。
【0053】
図18は、表面層1cの厚みが5[μm]である場合のトナー搬送基板上における電界の状態を示す模式図である。また、図19は、表面層1cの厚みが30[μm]である場合のトナー搬送基板上における電界の状態を示す模式図である。何れも、トナー搬送基板の電極幅Lが30[μm]、電極間隔Gが30[μm]であるトナー搬送基板の各搬送電極に、振幅100[V]のパルス電圧を印加した場合の電界の状態である。これらの図からわかるように、表面層1cの厚さが大きくなると空気より誘電率が高い表面層1c内で電極間を橋渡しする電気力線が増加するため、高さ方向に延びる電気力線数が減少する。また、表面層1cの厚みの分だけ、トナーに作用する電界強度が低下する。トナーのホッピングに寄与する高さ方向の電気力線数は、表面層1cの厚さに大きく左右されるのである。100[V]程度の小さなパルス電圧では、トナーの滞留を引き起こさない電界強度が1E+6[V/m]以上である。また、トナーを十分な勢いでホッピングさせ得る電界強度が2E+6[V/m]以上である。これらの条件を満足する表面層1cの厚みは、10[μm]以下、より好ましくは5[μm]以下である。
【0054】
表面層1cの材料としては、比抵抗が10[Ωcm]以上で、且つ誘電率εが2以上のものを用いることが好ましい。また、負帯電性のトナーを用いる場合には、感光体の非画像部電位を−300Vあるいはこれよりも0Vに近い値にすることが望ましい。また、正帯電性のトナーを用いる場合には、+300V以下にすることが望ましい。このようにすることで、ファインピッチで配設した各搬送電極に150〜100[V]以下の低いパルス電圧を印加しても、トナーを良好にホッピングさせることができる。
【0055】
トナーの樹脂材料としては、溶融温度や透明性等の観点から、一般的にはスチレン−アクリル系の共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂等が用いられる。トナーの帯電特性はこれらの樹脂材料によって影響を受けるが、帯電制御剤の添加によってその特性を調整することが可能である。ブラックトナー(BK)用の帯電制御剤としては、正帯電の場合には、ニグロシン系染料、四級アンモニウム塩類などが挙げられる。また、負帯電の場合には、アゾ系含金属錯体、サリチル酸金属錯体等が挙げられる。カラートナー用の帯電制御剤としては、正帯電の場合には、四級アンモニウム塩類、イミダゾール系錯体類等が挙げられる。また、負帯電の場合には、サリチル酸金属錯体や塩類、有機ホウ素塩類等が挙げられる。
【0056】
トナーは、進行電界の作用によるトナー搬送基板上でのホッピングに伴って、表面層1cに対して接触と離脱とを繰り返すため、摩擦帯電の影響を受けることになるが、その帯電量と極性は材料相互の帯電系列によって左右される。トナーの帯電量を主に帯電制御剤によって決定される飽和帯電量、または多少低下する程度に維持することで、ホッピング効率や現像効率を向上させることができる。具体的には、負帯電性のトナーの場合には、表面層1cの材料として、トナーの帯電制御剤として用いられる材料に近い摩擦帯電性を発揮するものや、正帯電性のものを使用することが好ましい。例えば、トナーの帯電制御剤がサリチル酸金属錯体である場合には、ポリアミド66(商品名)、ナイロン11(商品名)などのポリアミド系樹脂が好ましい。また、正帯電性のトナーの場合には、表面層1cの材料として、トナーの帯電制御剤として用いられる材料に近い摩擦帯電性を発揮するものや、負帯電性のものを用いることが好ましい。例えば、帯電制御剤が四級アンモニウム塩類である場合には、テフロン(登録商標)等のフッ素含有樹脂がよい。
【0057】
トナー搬送基板の表面には、表面層1cの下に電極がある領域と、ない領域とに対応した凹凸が生ずる。但し、搬送電極1bの厚さを3[μm]以下にすることで、その凹凸によるトナー搬送性の低下を抑えることができる。これにより、表面層1cの平坦化処理を省略して、基板製造コストを低減することが可能になる。
【0058】
次に、本第1実施形態に係るトナー搬送装置の特徴的な構成について説明する。
図20は、パルス電圧出力手段たる搬送電源回路5によって出力されるn相パルス電圧たる3相パルス電圧における繰り返しパルス電圧Va2、Vb2、Vc2の波形を示す波形図である。図示のように、搬送電源回路5は、搬送領域(R1)の電極組に出力するための3相パルス電圧として、順方向n相パルス電圧たる順方向3相パルス電圧と、逆方向n相パルス電圧たる逆方向3相パルス電圧とを、交互に切り換えて出力する。
【0059】
順方向3相パルス電圧は、搬送領域(R1)に存在するトナーを現像領域(R2)に向けて搬送するための進行電界を形成するものである。A相、B相、C相という順でパルス電圧を出現させることにより、トナーを搬送領域側から現像領域側に向けて順方向に進行させることが可能になる。
【0060】
これに対し、逆方向3相パルス電圧は、搬送領域(R1)に存在するトナーを現像領域(R2)に向かう方向とは逆方向に向けて搬送するためのスイッチバック電界を形成するためのものである。図示のように、C相、B相、A相という順でパルス電圧を出現させることにより、トナーを順方向とは逆方向にスイッチバックさせることが可能になる。
【0061】
順方向3相パルス電圧、逆方向3相パルス電圧は、互いに周波数が同じであるが、出力時間が異なっている。具体的には、図示のように、順方向3相パルス電圧の出力時間は、各相の繰り返しパルス電圧Va2、Vb2、Vc2をそれぞれ6回出現させる長さ(6周期)であるのに対し、逆方向3相パルス電圧の出力時間は、繰り返しパルス電圧Va2、Vb2、Vc2をそれぞれ3回出現させる長さ(3周期)であり、前者の出力時間よりも短くなっている。このような出力では、搬送領域(R1)に存在するトナーが進行電界によって距離L1だけ現像領域(R2)に向けて進行した後、逆方向に向けて距離L1の半分だけスイッチバックするという挙動を繰り返す。そして、順方向3相パルス電圧の出力と逆方向3相パルス電圧の出力とからなる1対出力が行われる毎に、距離L1の半分だけ現像領域(R2)に向けて進行する。
【0062】
かかる構成では、トナー搬送基板1上でトナーを定期的にスイッチバックさせることにより、トナー搬送基板1の上空にてトナー搬送方向への勢力をもつ気流の発生を抑える。そして、これにより、かかる気流をトナー搬送基板の上空で発生させることによる現像濃度不足の発生を抑えることができる。
【0063】
なお、搬送領域(R1)に配設された各電極組に印加される3相パルス電圧(繰り返しパルス電圧Va2、Vb2、Vc2)について説明したが、回収領域(R3)にも、上述したように、これと同じ3相パルス電圧が印加される。また、現像領域(R2)に配設された各電極組に印加される3相パルス電圧(繰り返しパルス電圧Va1、Vb1、Vc1)も、搬送領域(R1)や回収領域(R3)と同様に、順方向3相パルス電圧と逆方向3相パルス電圧とが交互に繰り返される。
【0064】
進行電界やスイッチバック電界によるトナーの平均搬送速度vtについては、「v=f×p×n」という計算式によって求めることができる。この計算式において、fは、3相パルス電圧における各繰り返しパルス電圧の繰り返し周波数である。また、pは、各搬送電極のトナー搬送方向における配設ピッチである。また、nは、繰り返しパルス電圧の相数であり、本第1実施形態では「3」である。
【0065】
順方向3相パルス電圧の出力と、逆方向3相パルス電圧の出力とからなる1対出力におけるトナーの搬送距離X1については、「X1=vts−vtr」という計算式によって求めることができる。この計算式において、tsは、順方向3相パルス電圧の出力時間である。また、trは、逆方向3相パルス電圧の出力時間である。例えば、繰り返し周波数fが7[KHz]であり、搬送電極配設ピッチpが0.06[mm]であり、繰り返しパルス電圧の総数nが3であり、出力時間tsが4[msec]であり、且つ出力時間trが2[msec]である場合には、トナーの平均搬送速度vtは1.26[m/sec]となる。そして、トナーの搬送距離X1は、2.52[mm]となる。
【0066】
本第1実施形態に係るトナー搬送装置は、図20に示したように、順方向から逆方向への切り換えや、逆方向から順方向への切り換えに際して、切り換え直前に出現しているパルス電圧を正規のタイミングで消失させると同時に、切り換えを行っている。かかる構成では、切り換え直前にホッピングしたトナーをトナー搬送基板1表面の正規の位置に着地させてから、ホッピングの方向を逆転させることになる。このため、トナーを空中で急激に方向転換させることを回避して、トナー搬送部材周囲へのトナー飛散を回避することができる。
【0067】
次に、第1実施形態に係るトナー搬送装置を適用した画像形成装置の一例について説明する。
トナーの平均搬送速度vtは、画像品質に影響する。具体的には、平均搬送速度vtが比較的遅い場合には、トナーが現像領域R2に存在する時間が比較的長くなる。このため、低面積率の画像でも現像濃度不足を引き起こすことなく良好に現像される。しかし、ベタ画像などといった高面積率の画像の場合には、現像領域R2へのトナーの供給量が不足して、現像濃度不足となってしまう。これに対し、平均搬送速度vtが比較的速い場合には、高面積率の画像に対しても十分量のトナーが供給されるため、現像濃度不足を引き起こすことなく良好に現像される。しかし、低面積率の画像の場合には、既に述べたように、周囲の非画像部による電界の影響を受けて潜像に付着し難くなるため、現像濃度不足を引き起こし易くなる。
【0068】
表1に、速度比(平均搬送速度vt/感光体周速)と、低面積率の画像における現像濃度と、高面積率の画像における現像濃度との関係を示す。速度比が0.3の場合には、感光体上における高面積率の潜像(ベタ潜像)に対するトナーの供給が追いつかなくなる結果、高面積率の画像(ベタ画像)で現像濃度不足が発生している。また、速度比が2.2の場合には、感光体上における低面積率の潜像(孤立ドット潜像)に対するトナーの付着が、周囲の非画像部による電界に阻害される結果、低面積率の画像(孤立ドット)で現像濃度不足が発生している。低面積率の画像、高面積率の画像ともに、良好な現像濃度を得るためには、速度比が0.5〜2.0である必要があることがわかる。
【表1】

【0069】
そこで、本第1実施形態に係る画像形成装置では、平均搬送速度vtを感光体25の周速の0.5〜2.0倍に設定している。
【0070】
図22は、第1実施形態に係る画像形成装置の感光体25と、現像装置30とを示す概略構成図である。同図において、潜像担持体たる感光体25は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。この感光体25の側方には、第1実施形態に係るトナー搬送装置を有する現像装置30が配設されている。
【0071】
現像装置30は、そのケーシング31内に、トナーと磁性粒子とを含有する図示しない現像剤を収容する収容部を有している。また、収容部から供給されるトナーを受け取って感光体25との対向領域である現像領域(R2)まで搬送するための筒状のトナー搬送基板1を収容するトナー搬送部33も有している。
【0072】
上述の収容部は、第1収容部32aと第2収容部32bと第3収容部32cとに分かれており、第1収容部32aと第2収容部32bとは仕切壁31aによって区切られている。第1収容部32a内には、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられながら、現像剤を図紙面に直交する方向の手前側から奥側に向けて搬送する第1搬送スクリュウ34が配設されている。また、第2収容部32a内には、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられながら現像剤を同方向の奥側から手前側に向けて搬送する第2搬送スクリュウ35が配設されている。また、第3収容部32c内には、供給ロール36が配設されている。
【0073】
第1収容部32a内において、第1搬送スクリュウ34の回転に伴って図中手前側から奥側の端部付近まで搬送された現像剤は、仕切壁31aに設けられた図示しない連通口を通って第2収容部32b内に進入する。そして、第2搬送スクリュウ34の回転に伴って、今度は図中奥側から手前側に向けて搬送される。
【0074】
第3収容部32c内に配設された供給ロール36は、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる非磁性パイプからなる供給スリーブ36aと、これに連れ回らないように内包されるマグネットローラ36bとを有している。そして、マグネットローラ36bは、その周方向にN極とS極とが交互に並ぶ6つの磁極を具備している。
【0075】
第2収容部32b内において第2搬送スクリュウ34の回転に伴って図中奥側から手前側に搬送される現像剤の一部は、マグネットローラ36bの発する磁力によって供給スリーブ36aの表面に吸着される。そして、現像剤担持体たる回転する供給スリーブ36aに汲み上げられて第3収容部32c内に進入する。その後、供給スリーブ36aに連れ回りながら、ドクターグレード37との対向位置でスリーブ上での層厚が規制された後、トナー搬送部33内における筒状のトナー搬送基板1との対向位置に至る。
【0076】
供給ロール36には、ロール電源回路38によってロールバイアスが印加されている。供給スリーブ36aに連れ回りながらトナー搬送基板1との対向位置に進入した現像剤中のトナーは、このロールバイアスと、トナー搬送基板1の搬送電極に印加されるパルス電圧との電位差により、現像剤から離脱してトナー搬送基板1上に転移する。この転移により、トナー搬送基板1の被供給領域にトナーが供給される。
【0077】
トナー搬送基板1の被供給領域に供給されたトナーは、進行電界とスイッチバック電界との繰り返しにより、トナー搬送基板1の曲面に沿ってホッピングしながら、相対的に図中反時計回り方向に搬送される。そして、搬送領域(R1)を経由してから現像領域(R2)に進入して現像に寄与した後、回収領域(R3)に進入する。
【0078】
第3収容部32cの供給スリーブ36a上において、トナー搬送基板1にトナーを供給した現像剤は、スリーブの回転に伴ってトナー搬送基板1との対向位置を通過した後、第2収容部32bとの対向位置に戻ってくる。そして、マグネットローラ36bの2つの反発磁極の磁力によってスリーブ表面から離脱して、第2収容部32bに戻る。更に、第2搬送スクリュウ35の回転に伴って図紙面に直交する方向の手前側端部付近まで搬送された後、仕切壁31aに設けられた図示しない連通口を通って第1収容部32a内に戻る。
【0079】
第1収容部32a内に戻った現像剤は、第1搬送スクリュウ34の回転に伴って図中手前側から奥側に搬送される過程で、ケーシング31の底面に固定された透磁率センサ等からなるトナー濃度センサ40によってトナー濃度が検知される。この検知結果は、図示しないトナー濃度制御部に送られる。トナー濃度制御部は、トナー濃度センサ40による検知結果が所定の閾値以下であると、図示しないトナー補給装置を所定時間だけ駆動する。これにより、ケーシング31のトナー補給口31bを通して第1収容部32a内にトナーが補給され、トナー濃度の回復を図る。
【0080】
第1収容部32a内に補給されたトナーは、第1搬送スクリュウ34や第2搬送スクリュウ35によって磁性粒子と撹拌混合されながら搬送されたり、供給スリーブ36a上でドクターブレード37による現像剤層厚規制で加圧されたりすることで、十分に帯電する。そして、この状態でトナー搬送基板1の搬送領域に供給される。本第1実施形態では、トナーとして、負帯電性のものを用いているが、正帯電性のものを用いてもよい。
【0081】
図23は、本第1実施形態に係る画像形成装置の感光体とトナー搬送基板1と供給ロール36とを示す模式図である。同図において、供給ロール30の供給スリーブ36aは、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。そして、その表面に担持した無数の磁性粒子Mと、個々の磁性粒子Mの表面に付着したトナーとからなる現像剤を、供給スリーブ36aの側方に配設された円筒状のトナー搬送基板1に摺擦せしめる。
【0082】
円筒状のトナー搬送基板1の表面上では、トナーがその曲面に沿って図中反時計回り方向にホッピングしながら搬送される。そして、感光体25との対向領域である現像領域(R1)を通過した後、供給スリーブ36aとの対向領域である回収領域(R3)に戻ってくる。この回収領域(R3)では、鉛直方向下方から上方に向けて搬送されるトナーに対して、鉛直方向上方から下方に向けて移動する供給スリーブ36a表面が対面する。そして、図24に示すように、供給スリーブ36aの表面に担持されながら移動する現像剤により、トナー搬送基板1上のトナーが掻き取られて、供給スリーブ36a上に回収される。即ち、本第1実施形態に係る画像形成装置では、供給スリーブ36aを回収部材として機能させている。トナー搬送基板1上のトナーを現像剤で積極的に掻き取ることで、トナーの搬送密度が比較的高い場合であってもトナー搬送基板1上からトナーを良好に回収して、回収不良の発生を抑えることができる。
【0083】
回収領域(R3)よりも少しだけロール回転方向上流側には、供給ローラ36a表面に担持された現像剤中のトナーがトナー搬送基板1上に供給される被供給領域(R1)が位置している。かかる構成では、供給スリーブ36aを、トナー搬送基板1上にトナーを供給する供給手段として機能させるとともに、回収部材としても機能させることで、装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0084】
図25は、本第1実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。同図において、潜像担持体としてのドラム状の感光体25(例えば、有機感光体:OPC)は、図中時計回り方向に回転駆動される。
【0085】
操作者がコンタクトガラス50に図示しない原稿を載置し、図示しないプリントスタートスイッチを押すと、原稿照明光源25及びミラー52を具備する第1走査光学系53と、ミラー54,55を具備する第2走査光学系56とが移動して、原稿画像の読み取りが行われる。
【0086】
走査された原稿画像がレンズ57の後方に配設された画像読み取り素子58で画像信号として読み込まれ、読み込まれた画像信号はデジタル化された後に画像処理される。そして、処理後の信号でレーザーダイオード(LD)が駆動され、このレーザーダイオードからのレーザー光がポリゴンミラー59で反射した後、ミラー60を介して感光体25を走査する。この走査に先立って、感光体25は帯電装置61によって一様に帯電せしめられており、レーザー光による走査により、感光体25の表面に静電潜像が形成される。
【0087】
この静電潜像は、現像装置30によってトナーが付着せしめられてトナー像に現像された後、感光体25の回転に伴って、転写チャージャー66との対向領域である転写領域に搬送される。この転写領域には、感光体25上のトナー像と同期するように、第1給紙コロ64を具備する第1給紙部62、又は第2給紙コロ65を具備する第2給紙部63から記録紙Pが送り込まれる。そして、感光体25上のトナー像は、転写チャージャー66のコロナ放電によって記録紙P上に転写される。このようにしてトナー像が転写された記録紙Pは、分離チャージャー67のコロナ放電によって感光体25表面から分離された後、搬送ベルト68によって定着ローラ対69に向けて搬送される。そして、定着ローラ対69の2つのローラの当接によって形成された定着ニップ内に進入して、トナー像が定着せしめられた後、機外の排紙トレイ70に向けて排紙される。
【0088】
転写領域を通過した感光体25表面に付着している転写残トナーは、クリーニング装置71によって感光体25表面から除去される。このようにしてクリーニング処理が施された感光体25表面は、除電ランプ72によって除電されて次の潜像形成に備えられる。
【0089】
次に、本発明を適用した第2実施形態の画像形成装置について説明する。なお、以下に特筆しない限り、第2実施形態に係る画像形成装置の構成は、第1実施形態に係る画像形成装置と同様である。
【0090】
図26は、第2実施形態に係る画像形成装置における3相パルス電圧の繰り返しパルス電圧Va2、Vb2、Vc2の波形を示す波形図である。本画像形成装置においても、第1実施形態と同様に、3相パルス電圧として、順方向3相パルス電圧と逆方向3相パルス電圧とを交互に切り換えて出力するようになっている。
【0091】
順方向3相パルス電圧、逆方向3相パルス電圧は、互いに出力時間が同じであるが、各相の繰り返し周波数fやパルス持続時間(立ち上がりから立ち下がりまで)が異なっている。具体的には、図示のように、順方向3相パルス電圧における各相の繰り返し周波数やパルス持続時間は、それぞれ逆方向3相パルス電圧の半分になっている。
【0092】
かかる構成においても、第1実施形態と同様に、トナー搬送基板1の上空にてトナー搬送方向への勢力をもつ気流の発生させることによる現像濃度不足の発生を抑えることができる。また、切り換え直前に出現しているパルス電圧を正規のタイミングで消失させると同時に切り換えを行うことで、トナーを空中で急激に方向転換させることを回避して、トナー搬送部材周囲へのトナー飛散を回避することができる。
【0093】
本画像形成装置において、進行電界やスイッチバック電界によるトナーの平均搬送速度vtについては、第1実施形態と同様に、「v=f×r×n」という計算式で求めることができる。
【0094】
また、上述の1対出力におけるトナーの搬送距離X1については、
「X1=fs×p×n×t−fr×p×n×t=(fs−fr)p×n×t」という計算式で求めることができる。この計算式において、fsは、順方向3相パルス電圧の各相の繰り返し周波数である。また、frは、逆方向3相パルス電圧の各相の繰り返し周波数である。また、tは、順方向3相パルス電圧の各相の繰り返し時間である。例えば、順方向の繰り返し周波数fsが6[KHz]であり、逆方向の繰り返し周波数frが3[KHz]であり、搬送電極配設ピッチpが0.06[mm]であり、相数nが「3」であり、且つ、順方向の繰り返し時間tが1[msec]である場合には、トナーの搬送距離X1は0.54[mm]となる。
【0095】
なお、順方向と逆方向とで、3相パルス電圧の出力時間だけを異ならせた例や、繰り返し周波数f及びパルス持続時間だけを異ならせた例について説明したが、これらを組み合わせて異ならせてもよい。
【0096】
図27は、第2実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。この第2変形例装置は、イエロー,マゼンタ,シアン,ブラック(以下、Y,M,C,Kという)の4色にそれぞれ個別に対応する4つの光書き込み装置80Y,M,C,Kや、4つのプロセスユニット81Y,M,C,Kを備えている。また、記録紙を収納する給紙カセット82、このカセットから記録紙を給紙する給紙ローラ83なども備えている。更には、給紙ローラ83から送り出された記録紙を各プロセスユニットの転写部に搬送する転写ベルト84、記録紙に対して画像を定着せしめる定着ユニット87、画像定着後の記録紙を載置する排紙トレイ88なども備えている。
【0097】
4つのプロセスユニット81Y,M,C,Kは、使用するトナーの色が異なる点の他は同様の構成になっている。Yトナー像を形成するためのYプロセスユニット81Yを例にすると、これは、図28に示すように、感光体25Y、帯電手段たる帯電ローラ51Y、現像装置30Y、クリーニングブレード52Yなどを、支持体たるケーシング内に有している。そして、画像形成装置本体に対して着脱可能になっている。
【0098】
図29は、Y用のプロセスユニットにおける感光体25Yと現像装置30Yとを示す拡大構成図である。現像装置30Y内には、非磁性のYトナーと磁性粒子とを含む現像剤ではなく、非磁性のYトナーだけが収容されている。トナーを収容するトナー収容部内では、Yトナーが第1撹拌翼42Yと第2撹拌翼43Yとによって撹拌せしめられながら、摩擦帯電する。このようにして摩擦帯電したYトナーは、時計回り方向に回転駆動される供給ローラ44Yによって汲み上げられた後、ローラの回転に伴って筒状のトナー搬送基板1における被供給領域との対向位置に運ばれる。
【0099】
供給ローラ44Yには、図示しないロール電源回路によってロールバイアスが印加されており、供給ローラ44Y上のYトナーは、ロールバイアスと、各搬送電極に印加されるパルス電圧との電位差による静電気力を受けて、供給ローラ44Yからトナー搬送基板1Yの被供給領域に転移する。そして、トナー搬送基板1Y上の進行電界とスイッチバック電界との繰り返しにより、トナー搬送基板1Yの曲面に沿ってホッピングしながら、相対的に図中時計回り方向に搬送され、搬送領域(R1)を経由してから現像領域(R2)に進入して現像に寄与する。
【0100】
トナー搬送基板1Yの図中下方には、図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動される金属製の回収ローラ45Yが配設されており、トナー搬送基板1Yの回収領域(R3)に対して所定の間隙を介して対向している。現像領域(R2)で現像に寄与しなかったトナーは、回収領域(R3)まで進み、回収バイアスが印加される回収ローラ45Yの表面に静電的に吸着される。
【0101】
回収バイアスとしては、各搬送電極に印加される3相パルス電圧とは逆極性の直流電圧を採用している。本第2実施形態では、0〜+100[V]程度の回収バイアスを回収ローラ45Yに印加している。
【0102】
回収ローラ45Yとトナー搬送基板1との間のギャップについては、50〜1000[μm]、好ましくは150〜400[μm]とし、Yトナーの基板上におけるホッピング高さよりも小さくすることが望ましい。本第2実施形態では、400[μm]程度に設定している。
【0103】
回収ローラ45Yの表面に吸着したYトナーは、回収ローラ45Yに当接する掻き取りブレード46Yによってローラ表面から掻き取られた後、重力によってトナー収容部に戻る。
【0104】
回収領域(R3)においては、図示のように、トナー搬送基板1上におけるYトナーの搬送方向と、回収ローラ45Yの表面移動方向とを互いに同方向に設定している。そして、トナー搬送基板1上におけるトナーの平均搬送速度vtと、回収ローラ45Yの表面移動速度vkとを、「vt≦vk」という条件を具備するように設定している。このような設定では、回収領域(R3)に向けて搬送されてくるトナーに対して、回収ローラ45Yの無端移動する表面の全領域のうち、トナーを付着させていない無垢の領域を対面させる。これにより、トナーのスイッチバックに起因してトナーの搬送密度を比較的高く設定していても、回収領域(R3)に搬送されてくるトナーを回収部材の無垢の領域に良好に付着させて、トナーの回収不良の発生を抑えることができる。
【0105】
本発明者らは、上述の速度比(平均搬送速度vt/回収部材の表面移動速度vk)を様々な値に変化させながら、各速度比におけるトナーの回収率を調べる実験を行った。この結果を図21に示す。なお、回収率とは、回収部材の表面に回収したトナーの量を、回収領域(R3)に進入したトナーの量で除算した値である。図示のように、速度比を1よりも大きくすると、その増加に伴って回収率が徐々に低下していくことがわかる。回収部材に供給される単位面積たりのトナー量の増加に伴って、トナーが何層にも重なって回収部材表面に付着するようになる結果、十分量のトナーが回収されなくなるからである。これに対し、速度比を1以上にすると、トナーをほぼ100[%]の回収率で回収し得ることがわかる。なお、図中の一点鎖線よりも右側の領域では、回収部材の表面に対してトナーが何層も重なって付着することになる。
【0106】
本画像形成装置においても、トナー搬送基板1上でトナーを定期的にスイッチバックさせることで、順方向への気流の発生を抑えることができるが、気流の発生を完全に無くすことはできない。どうしても僅かな気流が発生してしまう。本画像形成装置のように、回収ローラ45Yとトナー搬送基板1とを非接触にした場合には、回収ローラ45Yの表面移動方向をYトナーの搬送方向と同方向にして、回収ローラ45Y表面に対して僅かな気流を追いかけさせることで、ローラ表面とYトナーとの対面時間を増加させることが可能になる。そして、これにより、Yトナーをより効率良く回収することが可能になる。また、回収ローラ45Yを順方向の気流とは逆方向に表面移動させることによる乱気流の発生を回避することもできる。
【0107】
なお、Yトナーを用いるY用のプロセスユニット81Yだけについて説明したが、他色用のプロセスユニット81M,C,Kも同様の構成になっている。
【0108】
先に示した図28において、Yプロセスユニット81Yのケーシング背面側には、Y光書き込み装置(80Y)からのレーザービームLをケーシング内に入射するためのスリットが設けられている。
【0109】
先に示した図27において、Y,M,C,K光書き込み装置80Y,M,C,Kは、図示しない半導体レーザー、コリメートレンズ、ポリゴンミラー等の光偏向器、走査結像用光学系等から構成されている。そして、装置外部のパーソナルコンピュータ等のホスト(画像処理装置)から入力される各色用の画像データに応じて変調されたレーザービームを出射する。出射されたレーザービームは、Y,M,C,K用の感光体25Y,M,C,Kを走査して、静電潜像を書き込む。
【0110】
画像形成動作が開始されると、各プロセスユニット81Y,M,C,Kの感光体25Y,M,C,Kが帯電ローラによって一様帯電せしめられた後、光書き込み装置80Y,M,C,Kから画像データに応じたレーザービームが照射されて静電潜像を担持する。この静電潜像は、現像装置のトナー搬送基板によるETH現像により、各色のトナーによって現像され顕像化される。
【0111】
各プロセスユニット81Y,M,C,Kの各色の画像形成に同期して、供給カセット82内の記録紙が給紙ローラ83によって送り出された後、転写ベルト84に向けて搬送される。そして、記録紙は無端移動する転写ベルト84に保持されながら各プロセスユニット81Y,M,C,Kにおける転写部に順次送られる。そして、各転写部で、感光体25Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が転写体たる転写ベルト84に重ね合わせて転写される。これにより、記録紙にフルカラー画像が形成される。記録紙は、定着ユニット87内に送られてフルカラー画像が定着せしめられた後、機外の排紙トレイ88に向けて排紙される。
【0112】
なお、同図において、符号85が付されているのは、転写ベルト84を複数のローラによって張架しながら図中時計回り方向に無端移動せしめる転写手段たる転写ユニットを示している。この転写ユニット85は、転写ベルト84のループ内側に転写ローラ86Y,M,C,Kを有しており、感光体25Y,M,C,Kと転写ローラ86Y,M,C,Kとの間に転写ベルト84を挟み込んで転写部を形成している。転写ローラ86Y,M,C,Kには、図示しないバイアス印加手段によって転写バイアスが印加される。これにより、各色用の転写部では、感光体25Y,M,C,Kと転写ローラ86Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成され、感光体25Y,M,C,K上のトナー像が転写ベルト84上に転写される。
【0113】
転写ユニット85は、図示のように、水平方向よりも鉛直方向にスペースをとる縦長の姿勢で転写ベルト84を張架している。画像形成装置の筺体には、図示しない開閉扉が設けられており、この開閉扉が開かれた状態で、転写ユニット85は図中最も下側に位置する張架ローラである従動ローラの回転軸を中心にして、図30に示すように回動することが可能になっている。この回動により、鉛直方向よりも水平方向にスペースをとる横長の姿勢になると、図示のように各色のプロセスユニット81Y,M,C,Kを外部に露出させることができる。各色のプロセスユニット81Y,M,C,Kは、この状態で、水平方向にスライド移動せしめられることで、画像形成装置本体に対して着脱される。
【0114】
図31は、第2実施形態に係る画像形成装置の変形例装置を示す概略構成図である。この変形例装置は、鉛直方向よりも水平方向にスペースをとる横長の姿勢で張架されながら図中反時計回り方向に無端移動せしめられる転写ベルト84を備えている。この転写ベルト84の水平な上部張架面の上方には、4つのプロセスユニット81Y,M,C,Kがベルト移動方向に沿って並ぶように配設されている。
【0115】
これらプロセスユニット81Y,M,C,Kは、使用するトナーの色が異なる点の他が同様の構成になっている。Yプロセスユニット81Yを例にすると、これは図32に示すように、ドラム状の感光体25Yの周囲に、帯電ローラ51Y、現像装置30Y、ドラムクリーニング装置48Y等を有しており、これらを支持体たるケーシングによって一体的に支持している。そして、画像形成装置本体に対して着脱可能になっている。
【0116】
各色のプロセスユニット81Y,M,C,Kの感光体25Y,M,C,K上で現像されたY,M,C,Kトナー像は、転写ベルト84に重ね合わせて転写されて4色トナー像となる。そして、転写ベルト84の無端移動に伴って、転写ベルト84のおもて面と、2次転写ローラ89とが当接する2次転写ニップに送り込まれ、同時にニップに進入してきた記録紙P上に一括2次転写される。
【0117】
次に、本発明を適用した第3実施形態の画像形成装置について説明する。なお、以下に特筆しない限り、第3実施形態に係る画像形成装置の構成は、第1実施形態に係る画像形成装置と同様である。
【0118】
図33は、第3実施形態に係る画像形成装置の現像装置と感光体とを示す拡大構成図である。この画像形成装置の現像装置30においても、非磁性のYトナーと磁性粒子とを含む現像剤ではなく、非磁性のYトナーだけを用いるようになっている。
【0119】
円筒状のトナー搬送基板1の図中下方には、回転軸部材の周面に無数の起毛が立設せしられた回収ブラシ47が配設されており、図示しない駆動手段によって図中都会回り方向に回転駆動される。
【0120】
トナー搬送基板1と回収ブラシ47の対向位置においては、トナー搬送方向と、回収ブラシ47の表面移動方向とが互いに逆方向になっている。そして、回収ブラシ47の表面が逆方向に移動することで、順方向への急流の勢いを弱めたり、逆方向の気流を発生させたりする。これにより、回収ブラシ47との対向位置におけるトナーの滞留時間を引き延ばすことで、トナーの搬送密度が比較的高い場合であってもトナー搬送基板1上からトナーを良好に回収して、回収不良の発生を抑えることができる。
【0121】
回収ブラシ47は、そのブラシの先端側をトナー搬送基板1の回収領域(R3)に摺擦せしめるように配設されている。この摺擦により、トナーの摩擦帯電を助長する。現像領域(R2)を通過したトナーは、回収ブラシ47によってトナー搬送基板1上から機械的に掻き取られながら、トナーとは逆極性の回収バイアスが印加される回収ブラシ47に転移する。回収領域(R3)において、回収ブラシ47をトナーの搬送方向とは逆方向に表面移動させることで、トナーをブラシによって積極的に掻き取ることが可能になっている。これにより、トナーの回収不良をより確実に抑えることができる。
【0122】
回収バイアスとしては、各搬送電極に印加される3相パルス電圧とは逆極性の直流電圧を採用している。本第3変形例装置では、0〜+100[V]程度の回収バイアスを回収ブラシ47に印加している。
【0123】
ブラシの先端側に付着したトナーは、ブラシ回転軸線方向に延在しながらブラシに接触するように配設されたフリッカー棒49によってブラシが弾かれる際の衝撃により、ブラシから除去される。フリッカー棒49の替わりにバイアスローラをブラシ先端に接触させてもよい。フリッカー棒49によってブラシから除去されたトナーは、自重によってトナー収容部に戻る。
【0124】
図34は、本画像形成装置の変形例装置におけるトナー搬送基板1と搬送電源回路5とを示す拡大構成図である。トナー搬送基板1の回収領域R3上のトナーを図示しない回収ローラ等の回収部材に付着させるためには、回収領域R3の各搬送電極に印加される3相パルス電圧の平均電位と、回収部材に印加される回収バイアスとの関係が、トナーを相対的に基板側から回収部材側に移動させる関係である必要がある。例えば、3相パルス電圧の振幅を+120[V]あるいは−120[V]に設定し、且つ回収バイアスを−800[V]に設定すれば、かかる関係を満足することができる。
【0125】
一方で、被供給領域R0には、トナーを供給スリーブ等からトナー搬送基板1に供給するのに適した電界を形成する必要があり、かかる電界を形成するための3相パルス電圧の条件は、回収領域R3とは異なってくる。
【0126】
そこで、本画像形成装置においては、図示のように、トナー搬送部材1の全領域のうち、被供給領域R0に配設された電極組(A相搬送電極、B相搬送電極及びC相搬送電極)と、回収領域R3に配設された電極組とで、互いに異なる条件の3相パルス電圧を印加するように、搬送電源回路5や、リード電極等からなる導通路を構成している。具体的には、搬送電源回路5は、被供給領域R0に対する3相パルス電圧を専用に出力するための出力部を有しており、ここから3相パルス電圧Va4、Vb4、Vc4を出力する。出力された3相パルス電圧は、リード電極や電線等からなる導通路により、被供給領域R0内に配設された電極組だけに導かれる。また、搬送電源回路5は、回収領域R3に対する3相パルス電圧を専用に出力するための出力部も有しており、ここから3相パルス電圧Va3、Vb3、Vc3を出力する。出力された3相パルス電圧は、リード電極や電線等からなる導通路により、回収領域R3に配設された電極組だけに導かれる。
【0127】
かかる構成においては、被供給領域R0と回収領域R3とで、3相パルス電圧の条件を異ならせることで、トナーの供給に適した電界を回収領域R0に形成しつつ、トナーの回収に適した電界を回収領域R3に形成することができる。
【0128】
なお、第1実施形態のように現像剤中のトナーをトナー搬送基板1に供給する構成において、例えば3相パルス電圧の振幅を+120[V]あるいは−120[V]に設定し、回収バイアスを−800[V]に設定し、且つ3相パルス電圧に−600[V]を重畳した場合、マイナス帯電性のトナーは回収部材である供給スリーブ表面と静電気的に反発するが、その力は比較的弱いため、供給スリーブ上の磁性粒子に付着させることができる。
【0129】
これまで、順方向n相パルス電圧や逆方向n相パルス電圧として、3相のものを出力する例について説明したが、4相以上の繰り返しパルス電圧を出力し、それぞれを電極組における互いに異なる搬送電極に印加するようにしてもよい。
【0130】
以上、第1実施形態に係る画像形成装置においては、トナーと磁性粒子とを混合した現像剤を回収部材たる供給スリーブ36aの表面に担持させている。かかる構成では、既に述べたように、供給スリーブ36aを、トナー搬送基板1上にトナーを供給する供給手段として機能させるとともに、回収部材としても機能させることで、装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0131】
また、第2実施形態に係る画像形成装置においては、トナー搬送基板1Yと、回収部材たる回収ローラ45Yとの対向位置にて、トナー搬送基板1Y上におけるトナーの搬送方向と、回収ローラ45Yの表面移動方向とを互いに同方向にしている。かかる構成では、上述した理由により、回収ローラ45Yを基板に対して非接触に配設した場合に、搬送方向と表面移動方向とを逆方向にする場合よりもトナーを効率良く回収しつつ、回収ローラ45Yを順方向の気流とは逆方向に表面移動させることによる乱気流の発生を回避することができる。
【0132】
また、第3実施形態に係る画像形成装置の変形例装置においては、トナー搬送基板1の全領域のうち、トナーの供給を受けるための被供給領域R0に配設された電極組と、トナーの回収が行われるための回収領域R3に配設された電極組とで、互いに異なる条件の3相パルス電圧を印加するように、パルス電圧出力手段たる搬送電源回路5、及び導通路を構成している。かかる構成では、既に述べたように、被供給領域R0と回収領域R3とで、3相パルス電圧の条件を異ならせることで、トナーの供給に適した電界を回収領域R0に形成しつつ、トナーの回収に適した電界を回収領域R3に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】第1実施形態に係るトナー搬送装置のトナー搬送基板及び搬送電源回路を画像形成装置の感光体とともに示す構成図。
【図2】同トナー搬送基板をおもて面側から示す平面図。
【図3】同トナー搬送基板の図2におけるA−A’断面を示す縦断面図。
【図4】同トナー搬送基板の図2におけるB−B’断面を示す横断面図。
【図5】同トナー搬送基板の図2におけるC−C’断面を示す横断面図。
【図6】同トナー搬送基板の図2におけるD−D’断面を示す横断面図。
【図7】同トナー搬送基板の各搬送電極に印加されるA相パルス電圧Va、B相パルス電圧Vb、C相パルス電圧Vcを示す波形図。
【図8】同トナー搬送基板と、それの各搬送電極に印加される電圧の状態とを示す模式図。
【図9】(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ同トナー搬送基板上におけるトナーの挙動を説明するための模式図。
【図10】同トナー搬送装置の電気回路の一部を示すブロック図。
【図11】同トナー搬送基板の被供給領域や回収領域にある各搬送電極に印加される3相の繰り返しパルス電圧Va1,Vb1,Vc1を示す波形図。
【図12】同トナー搬送基板の現像領域にある各搬送電極に印加される3相の繰り返しパルス電圧Va2,Vb2,Vc2を示す波形図。
【図13】図12とは別のタイミングの繰り返しパルス電圧Va2,Vb2,Vc2を示す波形図。
【図14】同トナー搬送基板上に形成される進行電界の進行方向(水平方向)における電界強度TEと、高さ方向における電界強度HEとの関係を示すグラフ。
【図15】進行方向の電界強度TEと電極幅Lと電極間隙Gとの関係を示すグラフ。
【図16】高さ方向の電界強度HEと電極幅Lと電極間隙Gとの関係を示すグラフ。
【図17】同トナー搬送基板の表面層の厚さと、進行方向の電界強度TEとの関係を示すグラフ。
【図18】同表面層の厚みが5[μm]である場合の相同ナー搬送基板上における電界の状態を示す模式図。
【図19】同表面層の厚みが30[μm]である場合の相同ナー搬送基板上における電界の状態を示す模式図。
【図20】同トナー搬送装置の搬送電源回路によって出力される繰り返しパルス電圧Va2、Vb2、Vc2の波形を示す波形図。
【図21】速度比(平均搬送速度vt/回収部材の表面移動速度)と、トナーの回収率との関係を示すグラフ。
【図22】第1実施形態に係る画像形成装置における感光体と現像装置とを示す概略構成図。
【図23】同画像形成装置の感光体とトナー搬送基板と供給ロールとを示す模式図。
【図24】同トナー搬送基板と供給ロールとの対向部を示す拡大模式図。
【図25】同画像形成装置を示す概略構成図。
【図26】第2実施形態に係る画像形成装置における3相パルス電圧のパルス電圧Va2、Vb2、Vc2の波形を示す波形図。
【図27】同画像形成装置を示す概略構成図。
【図28】同画像形成装置におけるY用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図29】同プロセスユニットの感光体及び現像装置を示す拡大構成図。
【図30】転写ユニットを待避位置まで回動させた状態の同画像形成装置を示す概略構成図。
【図31】同画像形成装置の変形例装置を示す概略構成図。
【図32】同変形例装置におけるY用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図33】第3実施形態に係る画像形成装置における現像装置と感光体とを示す拡大構成図。
【図34】同画像形成装置の変形例装置におけるトナー搬送基板と搬送電源回路とを示す拡大構成図。
【符号の説明】
【0134】
1:トナー搬送基板(トナー搬送部材)
1a:基体
1bA:A相搬送電極
1bB:B相搬送電極
1bC:C相搬送電極
5:搬送電源回路(パルス電圧出力手段)
25:感光体(潜像担持体)
36a:供給スリーブ(回収部材)
30:現像装置
45Y:回収ローラ(回収部材)
47:回収ブラシ(回収部材)
81Y,M,C,K:プロセスユニット
84:転写ベルト(転写体)
85:転写ユニット(転写手段)
R0:被供給領域
R1:搬送領域
R2:現像領域
R3:回収領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向における並び順が連続しているn(3以上の整数)個の搬送電極からなる電極組が該所定方向に繰り返し配設されたトナー搬送部材と、パルス電圧の出現と消失とが繰り返される繰り返しパルス電圧を、パルス電圧の出現タイミングを互いに同期させないようにn相出力するパルス電圧出力手段と、該電極組における個々の搬送電極に対し、n相の繰り返しパルス電圧からなるn相パルス電圧における互いに異なる相の繰り返しパルス電圧を導くための導通路と、繰り返しパルス電圧が印加される各搬送電極上に形成された進行電界によって該トナー搬送部材上でホッピングしながら搬送されるトナーを、自らの無端移動する表面に付着させることで該トナー搬送部材上から回収する回収部材とを備えるトナー搬送装置において、
上記トナー搬送部材と上記回収部材との対向位置にて、該トナー搬送部材上におけるトナーの搬送方向と、該回収部材の表面移動方向とを互いに逆方向に設定し、
該回収部材として、その表面に磁性粒子を担持するものを用い、該トナー搬送部材と、該回収部材に担持される磁性粒子とを接触させるように、該トナー搬送部材及び回収部材を配設したことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項2】
請求項1のトナー搬送装置において、
トナーと磁性粒子とを混合した現像剤を上記回収部材の表面に担持させたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項3】
所定方向における並び順が連続しているn(3以上の整数)個の搬送電極からなる電極組が該所定方向に繰り返し配設されたトナー搬送部材と、パルス電圧の出現と消失とが繰り返される繰り返しパルス電圧を、パルス電圧の出現タイミングを互いに同期させないようにn相出力するパルス電圧出力手段と、該電極組における個々の搬送電極に対し、n相の繰り返しパルス電圧からなるn相パルス電圧における互いに異なる相の繰り返しパルス電圧を導くための導通路と、繰り返しパルス電圧が印加される各搬送電極上に形成された進行電界によって該トナー搬送部材上でホッピングしながら搬送されるトナーを、自らの無端移動する表面に付着させることで該トナー搬送部材上から回収する回収部材と、該回収部材の表面からトナーを除去する除去手段とを備えるトナー搬送装置において、
上記n相パルス電圧として、トナーを上記トナー搬送部材上で順方向に搬送するための順方向n相パルス電圧と、逆方向に搬送するための逆方向n相パルス電圧とを交互に切り換えて出力させるように、上記パルス電圧出力手段を構成するとともに、該トナー搬送部材と上記回収部材との対向位置にて、該トナー搬送部材上におけるトナーの搬送方向と、該回収部材の表面移動方向とを互いに同方向に設定し、且つ該トナー搬送部材上におけるトナーの平均搬送速度vtと、上記回収部材の表面移動速度vkとを、「vt≦vk」という条件を具備するように設定したことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項4】
所定方向における並び順が連続しているn(3以上の整数)個の搬送電極からなる電極組が該所定方向に繰り返し配設されたトナー搬送部材と、パルス電圧の出現と消失とが繰り返される繰り返しパルス電圧を、パルス電圧の出現タイミングを互いに同期させないようにn相出力するパルス電圧出力手段と、該電極組における個々の搬送電極に対し、n相の繰り返しパルス電圧からなるn相パルス電圧における互いに異なる相の繰り返しパルス電圧を導くための導通路と、繰り返しパルス電圧が印加される各搬送電極上に形成された進行電界によって該トナー搬送部材上でホッピングしながら搬送されるトナーを、自らの無端移動する表面に付着させることで該トナー搬送部材上から回収する回収部材と、該回収部材の表面からトナーを除去する除去手段とを備えるトナー搬送装置において、
上記n相パルス電圧として、トナーを上記トナー搬送部材上で順方向に搬送するための順方向n相パルス電圧と、逆方向に搬送するための逆方向n相パルス電圧とを交互に切り換えて出力させるように、上記パルス電圧出力手段を構成するとともに、
該トナー搬送部材と上記回収部材との対向位置にて、該トナー搬送部材上におけるトナーの搬送方向と、該回収部材の表面移動方向とを互いに逆方向にしたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項5】
請求項3のトナー搬送装置において、
上記トナー搬送部材と上記回収部材とを互いに接触させたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかのトナー搬送装置において、
上記トナー搬送部材の全領域のうち、トナーの供給を受けるための被供給領域に配設された上記電極組と、トナーの回収が行われるための回収領域に配設された上記電極組とで、互いに異なる条件のn相パルス電圧を印加するように、上記パルス電圧出力手段及び導通路を構成したことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項7】
トナー搬送部材の表面上でトナーをホッピングさせながら搬送するトナー搬送装置により、トナーを潜像担持体との対向位置に搬送して該潜像担持体上の潜像を現像する現像装置において、
上記トナー搬送装置として、請求項1乃至6の何れかのトナー搬送装置を用いたことを特徴とする現像装置。
【請求項8】
潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体に担持される潜像をトナーによって現像する現像手段とを備える画像形成装置における、該潜像担持体及び現像装置を1つのユニットとして共通の支持体に支持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能にしたプロセスユニットにおいて、
上記現像手段として、請求項7の現像装置を用いたことを特徴とするプロセスユニット。
【請求項9】
潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体に担持される潜像をトナーによって現像する現像手段とを備える画像形成装置において、
上記現像手段として、請求項7の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9の画像形成装置において、
上記潜像担持体と上記現像装置との組合せを複数設けるとともに、それぞれの潜像担持体上で得られたトナー像を転写体に重ね合わせて転写する転写手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2007−248908(P2007−248908A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73374(P2006−73374)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】