説明

トナー搬送装置、現像装置、プロセスユニット及び画像形成装置

【課題】トナー搬送基板20Yの表面に付着した磁性キャリアによって基板上での良好なトナー搬送を阻害してしまうといった事態を抑える。
【解決手段】所定のピッチで並ぶ複数の搬送電極を有する筒状のトナー搬送基板20Yと、トナー及び磁性キャリアを含有する現像剤中のトナーをトナー搬送基板20Yの表面に供給する供給ロール14Yと、トナー搬送基板20Yの複数の搬送電極に印加するためのパルス電圧を出力する図示しない搬送電源回路とを備え、それら搬送電極にそれぞれパルス電圧を印加してトナー搬送基板20Yの表面上のトナーを周方向にホッピングさせて感光体2Yとの対向位置である現像領域まで搬送し、そこでホッピングしたトナーを感光体2Yの静電潜像に付着させてトナー像を得る構成において、トナー搬送基板20Yの表面に付着した磁性キャリアを静電気力によって除去ローラ31Yの表面に転位させて基板表面から除去するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー搬送部材の表面上でトナーをホッピングさせながら搬送するトナー搬送装置、並びに、これを用いる現像装置、プロセスユニット及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置として、特許文献1や特許文献2に記載のものが知られている。これら画像形成装置の現像装置は、トナーと磁性キャリアとを含有する現像剤を担持する現像スリーブ等の現像剤担持体と、所定のピッチで並ぶ複数の搬送電極を有するトナー搬送基板とを有している。また、このトナー搬送基板における互いに隣り合う搬送電極に対して、互いに位相ずれしたパルス電圧を出力する電源回路も有している。そして、現像剤担持体の表面に担持した現像剤中からトナーを飛翔させて、トナー搬送基板の表面上に供給する。このようにしてトナーが供給されるトナー搬送基板の表面上には、複数の搬送電極に位相ずれしたパルス電圧が印加されることで進行電界が形成される。トナー搬送基板に供給されたトナーは、この進行電界によって基板表面上でホッピングしながら、搬送電極の並び方向に向けて搬送される。そして、やがて潜像担持体に対向する現像領域まで搬送され、そこでホッピングしながら潜像担持体の潜像に付着する。これにより、潜像担持体の潜像が現像されてトナー像になる。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−257461号公報
【特許文献2】特開平3−21967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの画像形成装置においては、現像剤担持体からトナー搬送基板に向けて、トナーだけではなく、磁性キャリアやその粉砕物も供給してしまうことがある。例えば、磁性キャリアやその粉砕物が、トナーから離脱した外添剤を長期の使用に伴って表面に徐々に付着させていくと、現像剤担持体の磁力による吸着力を低下させ、現像剤担持体からトナー搬送基板に転位し易くなってしまう。トナー搬送基板上に転位してしまった磁性キャリアやその粉砕物は、トナー搬送基板上におけるトナーの良好な搬送を阻害して種々の問題を発生させるおそれがある。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、次のようなトナー搬送装置、並びにこれを用いる現像装置、プロセスユニット及び画像形成装置を提供することである。即ち、トナー搬送部材の表面に付着した磁性キャリア等の付着物によってトナー搬送部材上での良好なトナー搬送を阻害してしまうといった事態を抑えることができるトナー搬送装置等である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、所定方向に並ぶ複数の搬送電極を有するトナー搬送部材と、トナー及び磁性キャリアを含有する現像剤中のトナーを該トナー搬送部材の表面に供給するトナー供給手段と、該トナー搬送部材の複数の搬送電極に印加するための電圧を出力する電圧出力手段とを備え、それら搬送電極にそれぞれ該電圧を印加することで、該トナー搬送部材の表面上のトナーをホッピングさせて該搬送電極の並び方向に搬送するトナー搬送装置において、上記トナー搬送部材の表面上の付着物を除去する付着物除去手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のトナー搬送装置であって、上記付着物除去手段として、上記トナー搬送部材の表面と所定の間隙を介して対向する対向部材と、該対向部材にトナーと同極性の除去電圧を印加する除去電圧印加手段とを有するものを用いることで、該トナー搬送部材の表面上でトナーとは逆極性に帯電している付着物を静電気力によって該対向部材に向けて引き寄せて該表面上から除去することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1のトナー搬送装置であって、上記付着物除去手段として、上記トナー搬送部材の表面と所定の間隙を介して対向する対向部材と、該対向部材にトナーと逆極性の除去電圧を印加する除去電圧印加手段とを有するものを用いることで、該トナー搬送部材の表面上のトナー及びこれと同極性に帯電している付着物を静電気力によって該対向部材に向けて引き寄せて該表面上から除去するものことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3のトナー搬送装置であって、上記除去電圧印加手段として、所定のタイミングで上記除去電圧をトナーと同極性の電圧とトナーと逆極性の電圧とで切り替えるものを用いることで、上記トナー搬送部材の表面上で該逆極性に帯電している付着物と、トナー及びこれと同極性に帯電している付着物との両方を除去することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項2乃至4の何れかのトナー搬送装置であって、上記対向部材に対する上記除去電圧の印加を停止することで、該対向部材に付着している付着物を該対向部材から除去することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項2乃至4の何れかのトナー搬送装置であって、上記除去電圧印加手段として、上記対向部材に対してそれに付着している付着物と同極性の2次除去電圧を所定のタイミングで印加するものを用いることで、該付着物を該所定のタイミングで該対向部材から除去することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項2乃至6の何れかのトナー搬送装置において、上記除去電圧印加手段として、上記電圧出力手段から複数の上記搬送電極に電圧が出力されていないときに、上記対向部材に上記除電電圧を印加するものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項2乃至6の何れかのトナー搬送装置において、上記除去電圧印加手段として、上記電圧出力手段から複数の上記搬送電極に電圧が出力されているときに、上記対向部材に上記除電電圧を印加するものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1のトナー搬送装置であって、上記付着物除去手段として、上記トナー搬送部材の表面と所定の間隙を介して対向する磁力発生手段を有するものを用いることで、該トナー搬送部材の表面上の付着物を磁力によって該磁力発生手段に向けて引き寄せて該表面上から除去することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9のトナー搬送装置において、上記磁力発生手段として、電圧の供給に伴って磁力を発揮するものを用いるとともに、該磁力発生手段に磁力発生電圧を印加する磁力発生電圧印加手段を上記付着物除去手段に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項2乃至8の何れかのトナー搬送装置において、上記トナー搬送部材の表面を移動させる表面移動手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11のトナー搬送装置において、上記トナー搬送部材として、筒状又は無端ベルト状に形成されたものを用いるとともに、上記表面移動手段として、筒状又は無端ベルト状の該トナー搬送部材の表面を無端移動させるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項11又は12のトナー搬送装置において、上記表面移動手段として、上記電圧出力手段から上記搬送電極に向けて電圧が出力されていないときに、上記トナー搬送部材の表面を移動させるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項11又は12のトナー搬送装置において、上記表面移動手段として、上記電圧出力手段から上記搬送電極に向けて電圧が出力されているときに、上記トナー搬送部材の表面を移動させるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、トナー搬送装置のトナー搬送部材の表面上に存在するトナーをホッピングさせながら潜像担持体との対向位置に搬送して、該潜像担持体に担持される潜像を現像する現像装置において、上記トナー搬送装置として、請求項1乃至14の何れかのトナー搬送装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、少なくとも、画像形成装置内で潜像を担持する潜像担持体、これの表面を一様に帯電せしめる帯電手段、及び該潜像担持体の表面に付着したトナーをクリーニングするクリーニング手段の何れか1つと、該潜像担持体上の潜像を現像する現像手段とを、1つのユニットとして共通の支持体に支持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能にしたプロセスユニットにおいて、上記現像手段として、請求項15の現像装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項17の発明は、潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体上の潜像を現像する現像手段とを備える画像形成装置において、上記現像手段として、請求項15の現像装置を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
これらの発明においては、トナー搬送部材の表面に付着してしまった磁性キャリアやその粉砕物などの付着物を、付着物除去手段によって除去することで、トナー搬送部材の表面に付着した付着物によってトナー搬送部材上での良好なトナー搬送を阻害してしまうといった事態を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を適用した画像形成装置である電子写真方式のプリンタの一実施形態について説明する。
【0009】
まず、本実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、本プリンタは、イエロー(Y),シアン(C),マゼンタ(M),ブラック(K)の各色のトナー像を形成するための4つのプロセスユニット1Y,C,M,Kと、これらにそれぞれ個別に対応する4つの光書込装置80Y,C,M,Kとを備えている。また、転写ユニット81、定着装置89、給紙装置90なども備えている。
【0010】
転写ユニット81は、無端状の紙搬送ベルト82を、駆動ローラ83、第1従動ローラ84、第2従動ローラ85、テンションローラ86によって張架しながら、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ83によって図中時計回り方向に無端移動せしめる。紙搬送ベルト82の図中左側張架面には、鉛直方向に並ぶY,C,M,K用の転写ローラ87Y,C,M,Kが、後述するY,M,C,K用の感光体2Y,C,M,Kとの間に紙搬送ベルト82を挟み込んでいる。この挟み込みにより、紙搬送ベルト82のループおもて面と、Y,C,M,K用の感光体2Y,C,M,Kとが当接するY,C,M,K用の転写ニップが形成されている。なお、転写ユニット81は、紙搬送ベルト82のおもて面に当接しながら電荷を付与することで、紙搬送ベルト82による記録紙Pの静電吸着を可能にするための電荷付与ローラ88も備えている。
【0011】
4つの転写ローラ87Y,C,M,Kは、少なくとも芯金とこれの表面に被覆された導電性弾性層とを有している。導電性弾性層はポリウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)等の弾性材料に、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化スズ等の導電性付与剤を配合分散して電気抵抗値(体積抵抗率)を10〜1010[Ω・cm]の中抵抗に調整されている。
【0012】
Y,M,C,K用の4つの光書込装置80Y,C,M,Kは、それぞれ、Y,C,M,K用のプロセスユニット1Y,C,M,Kの感光体2Y,C,M,Kに静電潜像を光書込するためのものである。レーザーダイオードから発した光をポリゴンミラーで主走査方向に偏向せしめることで主走査方向の光走査を行う周知のものを用いることができる。LEDアレイから発した複数の光ビームによって主走査方向の光走査を行うものでもよい。
【0013】
給紙装置90は、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容しており、紙束における一番上の記録紙Pを、所定のタイミングで、転写ユニット81に向けて送り出す。送り出された記録紙Pは、転写ユニット81の紙搬送ベルト82のおもて面に静電吸着されながら、紙搬送ベルト82の無端移動に伴って、図中鉛直方向下側から上側に向けて搬送される。そして、この搬送の過程で、Y,C,M,K用の転写ニップを順次通過していく。
【0014】
Y,C,M,K用のプロセスユニット1Y,M,C,Kでは、光書込装置80Y,C,M,Kによる光書込によって感光体2Y,C,M,Kの表面に形成された静電潜像が現像されてY,C,M,Kトナー像になる。感光体2Y,C,M,Kと、図示しない電源によって転写バイアスが印加される転写ローラ87Y,C,M,Kとの間には、転写電界が形成される。Y,C,M,K用の感光体2Y,C,M,Kの表面に形成されたY,C,M,Kトナー像は、この転写電界やニップ圧の作用により、Y,C,M,K用の転写ニップにおいて、紙搬送ベルト82に静電吸着された記録紙Pに重ね合わせて転写される。この重ね合わせの転写により、記録紙Pの表面には紙面の白色と相まったフルカラー画像が形成される。
【0015】
このようにしてフルカラー画像が形成された記録紙Pは、駆動ローラ83によるベルト掛け回し箇所で移動方向を急激に変化させる紙搬送ベルト82から分離して、定着装置89内に送られる。定着装置89は、ハロゲンランプ等の発熱源を内容する定着ローラ89bと、これに所定の圧力で当接する加圧ローラ89aとを、当接部で互いの表面を同方向に移動させるように回転させながら、その当接部たる定着ニップを形成している。定着装置89内に送り込まれた記録紙Pは、この定着ニップを通過する際に加熱されたり加圧されたりすることで、フルカラー画像が表面に定着せしめられる。定着処理が施された記録紙Pは、プリンタの筺体91の上面に設けられたスタック部91a上に排紙される。
【0016】
Y,C,M,K用の4つのプロセスユニット1Y,C,M,Kは、内包するトナーの色が異なる点の他は、互いに同様の構成になっている。Yトナー像を形成するY用のプロセスユニット1Yを例にすると、これは図2に示すように、ドラム状の感光体2Yの他、これの表面を一様帯電せしめる帯電ローラ3Y、図示しない除電手段、ドラムクリーニング装置6Y、現像装置10Yなどを有している。これら感光体2Y、帯電手段たる帯電ローラ3Y、除電手段、クリーニング手段たるドラムクリーニング装置6Y及び現像装置10Yを、共通の支持体たるケーシングで支持して、プリンタ本体に対して一体的に着脱可能されるようになっている。
【0017】
感光体2Yは、例えば負帯電性の有機感光体であり、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される。
【0018】
帯電ローラ3Yは、芯金4Y上に、カーボンブラック、硫化剤、発泡剤などを含有する中抵抗のウレタン樹脂からなる発泡ウレタン層5Yが形成されたローラである。芯金4Y上に形成される中抵抗の層としては、発泡ウレタン層5Yに限らず、他の材料からなる層を採用していもよい。例えば、ウレタン、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムや、イソプレンゴム等の母材に、電気抵抗調整のためにカーボンブラックや金属酸化物等の導電性物質を分散した材料や、かかる材料を発泡させた材料からなる層でもよい。かかる構成の帯電ローラ3Yには、図示しない電源によって帯電バイアスが印加されている。感光体2Yの表面は、回転に伴って帯電ローラ3Yとの対向位置を通過する際に、トナーと同極性、例えば負極性に一様帯電せしめられる。
【0019】
このように一様帯電せしめられた感光体2Yの表面が回転しながら、その表面に対して、プロセスユニット1Yのケーシングに設けられた光受入光からユニット内に受け入れられた光ビームLが主走査方向に偏向しながら照射される。このような光ビームLの照射により、感光体2Y表面は、副両方向の光走査がなされて、静電潜像を担持する。
【0020】
ドラムクリーニング装置6Yは、感光体2Yの回転方向に対してカウンタ方向で当接するクリーニングブレード7Yと、これによって感光体2Y表面から除去された除去トナーを収容する除去トナー収容部8Yとを有している。そして、上述の1次転写ニップを通過した後の感光体2Yの表面に残留している転写残トナーを掻き取って除去する。クリーニング後の感光体2Y表面は、図示しない除電ランプ等の除電手段によって除電された後、帯電ローラ3Yによって再び一様帯電せしめられる。
【0021】
現像装置10Yは、Yトナー及び磁性キャリアを含有する図示しないY現像剤を収容する現像剤収容部11Y、これの内部に配設された第1撹拌スクリュウ12Y及び第2撹拌スクリュウ13Y、供給ロール14Yなどを有している。また、Yトナーを感光体2Yとの対向領域である現像領域まで搬送するトナー搬送基板20Yなども有している。トナー搬送基板20Yは筒状に形成され、感光体2Yに対して50〜1000[μm]、好ましくは150〜400[μm]の間隙を介して対向している。
【0022】
第1撹拌スクリュウ12Y、第2撹拌スクリュウ13Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動されることで、現像剤収容部11Y内のY現像剤を撹拌する。この撹拌に伴って、Y現像剤中のYトナーが磁性キャリアに摺擦せしめられて摩擦帯電する。
【0023】
供給ロール14Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される非磁性パイプからなる供給スリーブ15Yと、これに連れ回らないように内包されるマグネットローラ16Yとを有している。供給スリーブ15Yの非磁性パイプとしては、アルミニウム、真鍮、ステンレス、導電性樹脂などの非磁性体を円筒状に成型したものを用いることができる。
【0024】
供給スリーブ15Yに内包されるマグネットローラ16Yは、図3に示すように、その周方向に並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極のうち、図中で概ね時計の7時の位置に形成されているS極からなる磁極P4や、9時の位置に形成されているN極からなる磁極P5は、供給スリーブ(15Y)に対してその回転に伴ってY現像剤を汲み上げさせるための磁極である。また、12時の位置に形成されているS極からなる磁極P6は、供給スリーブに汲み上げられたY現像剤の層厚を図2に示したドクターブレード17Yとの対向位置で規制したり、Y現像剤をトナー搬送基板20Yとの対向位置である供給領域に向けて搬送したりするための磁極である。また、1時〜2時の位置に形成されたN極からなる磁極P1は、供給スリーブ上のY現像剤を供給領域で穂立ちさせて磁気ブラシを形成するための供給磁極である。また、概ね4時の位置に形成されたS極からなる磁極P3は、供給領域を通過した供給スリーブ上のY現像剤をスリーブ回転方向に搬送するための磁極である。また、5時の位置に形成されたS極からなる磁極P3は、上流側の磁極P2や、下流側の磁極P4との間に反発磁界を形成して供給スリーブ上のY現像剤をスリーブ表面から離脱させるための離脱磁極である。
【0025】
先に示した図2において、図中時計回り方向に回転駆動される供給スリーブ15Yは、現像剤収容部11Y内のY現像剤をマグネットローラ16Yの発する磁力によって表面に吸着させて汲み上げる。汲み上げられたY現像剤は、供給スリーブ15Yの回転に伴って搬送される過程で、ドクターブレード17Yとの対向位置を通過してスリーブ上の層厚が規制された後、トナー搬送基板20Yとの対向領域である供給領域に搬送される。そして、この供給領域において、磁性キャリアの表面からYトナーを離脱させて、トナー搬送基板20Y上に供給する。このようにしてYトナーを供給したY現像剤は、スリーブの回転に伴って上述した反発磁界が形成される5時の位置まで搬送され、ここでスリーブ表面から離脱して現像剤収容部11Y内に戻る。
【0026】
なお、ドクターブレード17Yの先端と、供給スリーブ15Yとのとの間隔であるドクターギャップについては、0.4[mm]に設定している。また、Y,M,C,K用の4つのプロセスユニットのうち、Y用のプロセスユニット1Yについてだけ図2や図3を用いて説明したが、他色用のプロセスユニット1C,M,Kも同様の構成になっている。
【0027】
現像剤に含有せしめるトナー粒子の母材樹脂としては、スチレン系又はアクリル系の重合性単量体を重合開始剤と共に水中に分散させた状態でラジカル重合させたものや、ポリエステル系樹脂を水中に分散させ重付加反応により高分子化させたものを用いることができる。かかる母材樹脂を造粒する過程で、着色剤や帯電制御剤などを加えることにより、重量平均粒径約5[μm]程度の非磁性トナー粒子を得る。かかる非磁性トナー粒子の集合からなるトナー粉体を、現像剤に含有せしめるトナーとして用いればよい。
【0028】
現像剤に含有せしめる磁性キャリアとしては、1キロエルステッドの磁界中における磁化量が30[emu/cm]以上、200[emu/cm]以下の範囲にあるものを用いることが好ましい。磁化量が200[emu/cm]以下、好ましくは140[emu/cm]以下の低磁化であれば、隣り合う磁気ブラシの磁気的な相互作用が小さくなり、形成される磁気ブラシの穂が緻密に且つ短くなる。この結果、トナー搬送基板20Yに対して均一なトナー粒子の供給を行なうができる。一方、磁性キャリアの磁化量が30[emu/cm]未満の場合には現像剤の搬送性能が劣る。したがって、磁性キャリアは30[emu/cm]以上、好ましくは80[emu/cm]以上の磁化量のものを用いる必要がある。
【0029】
かかる磁性キャリアとして、少なくともバインダー樹脂と、磁性金属酸化物及び非磁性金属酸化物とからなる重合法により生成された磁性体が分散されている樹脂磁性キャリアを用いる。具体的には、磁性金属酸化物としてはマグネタイト(Fe)を用い、金属酸化物を分散させて結着させるバインダー樹脂としては、スチレン、アクリル酸エチルなどのビニル系モノマーを重合して得られる樹脂を用いる。磁性体がバインダー樹脂中に分散されているキャリアをそのまま用いてもよいが、これをキャリアコアとして用い、絶縁性樹脂をコート剤とし、キャリアコア表面に被覆してコート磁性キャリアとして用いるとよい。磁化量は、キャリアの磁気特性を理研電子(株)製の振動磁場型磁気特性自動記録装置にて、1キロエルステッドの外部磁場中に、円筒状の容器内にパッキングした磁性キャリアを置き、その際に測定して得た磁化の強さにキャリアの真比重を掛けることで算出できる。
【0030】
図4は、トナー搬送基板20の拡大断面を、搬送電源回路とともに示す模式図である。トナー搬送基板20は図2に示したように筒状に形成されているが、図4では、基板の一部を拡大して示しているため、トナー搬送基板20が板状に示されている。図中左側における基板面が筒状の基板のループおもて面であり、図中右側における基板面が基板のループ裏面である。図示しないYトナーは、図中左側の基板面である基板表面に保持されながら搬送される。
【0031】
トナー搬送基板20Yは、絶縁性の基体21Yと、筒の周方向に沿って所定のピッチで並ぶように基体21Yのおもて面に形成された複数の搬送電極22Yと、これら搬送電極22Yや、基体21Yの非電極形成面を覆う絶縁性材料からなる表面層23Yとを有している。複数の搬送電極22Yには、パルス電圧を出力する電圧出力手段たる搬送電源回路30Yが接続されており、この搬送電源回路30Yからは互いに位相ズレしたn相のパルス電圧が出力される。n相のパルス電圧は、複数の搬送電極22Yのうち、互いにn個おきに並んでいるものに導かれる。例えば、同図では、搬送電源回路30Yから3相のパルス電圧が出力される例を示しており、3相のうちのA相パルス電圧Va1は、複数の搬送電極22Yのうち、3個おきに並んでいるA相搬送電極に導かれる。また、B相パルス電圧Vb1は、これらA相搬送電極からそれぞれ電極並び方向に1個ずつずれた位置にあるB相搬送電極に導かれる。また、C相パルス電圧Vc1は、これらB相搬送電極からそれぞれ電極並び方向に1個ずつずれた位置にあるC相搬送電極に導かれる。
【0032】
搬送電源回路30Yは、通常のA相パルス電圧Va1、B相パルス電圧Vb1、C相パルス電圧Vc1からなる通常3相パルス電圧の他、現像用のA相パルス電圧Va2、B相パルス電圧Vb2、C相パルス電圧Vc2からなる現像用3相パルス電圧も出力する。トナー搬送基板20Yに形成された複数の搬送電極22Yのうち、Yトナーを感光体との対向領域である現像領域に向けて搬送するための供給領域及び搬送領域に形成されたものや、現像領域を通過したYトナーをトナー搬送基板20Y上に回収するための回収領域に形成されたものには、上述した通常3相パルス電圧が印加される。これに対し、現像領域に形成された搬送電極22Yに対しては、通常の3相パルス電圧に代えて、現像用3相パルス電圧が印加される。
【0033】
トナー搬送基板20Yの基体21Yとしては、ガラス、樹脂、セラミックス等の絶縁性材料からなるもの、ステンレスなどの導電性材料からなる基板にSiO等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなるものなどを用いることができる。
【0034】
搬送電極22Yは、基体21Y上に、Al、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10[μm]厚、好ましくは0.5〜2.0[μm]で成膜し、これをフォトリソグラフィー法などによって所定の電極パターンに加工したものである。これら複数の搬送電極22Yのトナー搬送方向における長さである電極幅については、トナーの平均粒径の1倍以上20倍以下にしている。また、互いに隣り合う2つの搬送電極22Y間の間隙についても、トナーの平均粒径の1倍以上20倍以下にしている。
【0035】
表面層23Yとしては、例えばSiO、TiO、TiO、SiON、BN、TiN、Taなどを厚さ0.5〜10[μm]、好ましくは厚さ0.5〜3[μm]で成膜したものを採用している。
【0036】
同図においては、各搬送電極22Yから伸びる線は各搬送電極22Yに電圧を導くためのリード線をあらわしており、各リード線の重なる部分のうち、黒丸で示した部分だけが電気的に接続されており、他の部分は電気的に絶縁状態となっている。搬送電極22Yに対しては、既に述べたように、搬送電源回路30Yから通常のA相パルス電圧Va1、B相パルス電圧Vb1、C相パルス電圧Vc1、あるいは、現像用のA相パルス電圧Va2、B相パルス電圧Vb2、C相パルス電圧Vc2が印加される。なお、3相パルス電圧に代えて、4相以上のパルス電圧を採用してもよい。
【0037】
搬送電極22Yと、搬送電源回路30Yとの間の導通路には、接点Sa1、Sb1、Sc1、Sa2、Sb2又はSc2が介在しており、搬送電極22Yは何れかを介して搬送電源回路30Yに接続されている。
【0038】
トナー搬送基板20Yにおいて、上述した供給スリーブとの対向位置である供給領域や、これと上述の現像領域との間にある搬送領域では、複数の搬送電極22YのうちのA相搬送電極、B相搬送電極、C相搬送電極に対し、通常のA相パルス電圧Va1、B相パルス電圧Vb1、C相パルス電圧Vc1が印加される。これに対し、感光体(2Y)との対向位置である現像領域では、複数の搬送電極22YのうちのA相搬送電極、B相搬送電極、C相搬送電極に対し、現像用のA相パルス電圧Va2、B相パルス電圧Vb2、C相パルス電圧Vc2が印加される。
【0039】
このようなパルス電圧の印加により、トナー搬送基板20Yの表面上には、供給領域や搬送領域にあるYトナーを現像領域に向けてホッピングさせながら移動させる進行電界が形成される。また、現像領域にあるYトナーを回収領域に向けてホッピングさせながら移動させる進行電界が形成される。また、回収領域にあるYトナーを供給領域に向けてホッピングさせながら移動させる進行電界が形成される。上述した供給スリーブからトナー搬送基板20Yの表面に供給されたYトナーは、これらの進行電界により、供給領域と搬送領域とを順次通過するように搬送されて現像領域内に至り、ここでその一部が現像に寄与する。現像領域で感光体(2Y)に過剰に付着したYトナーは、回収領域でトナー搬送基板20Y上に回収され、現像に寄与しなかったYトナーとともに、供給領域に向けて搬送される。
【0040】
図5は、各搬送電極22Yに印加される通常の3相パルス電圧における波形の一例を示す波形図である。同図において、3相パルス電圧は、互いに1/3周期ずつ位相ずれしたA相、B相、C相のパルス電圧からなり、それぞれのパルス電圧は、グランドG(0V)の状態から正の電圧+まで立ち上がる矩形波を具備している。図6に示すように、トナー搬送基板20Y上に負極性に帯電したトナーTがあり、トナー搬送基板20Yには連続したA相搬送電極、B相搬送電極、C相搬送電極にからなる搬送電極組が繰り返し形成されている。A相搬送電極、B相搬送電極、C相搬送電極に、図5に示したA相パルス電圧、B相パルス電圧、C相パルス電圧が印加され、各搬送電極22Yが図6(1)に示すように「G」、「G」、「+」、「G」、「G」という電位状態になったとする。すると、「G」という電位状態になっている図中一番左のB相搬送電極と、{G}という電位状態になっている図中左から2番目のC相搬送電極との間には、C相搬送電極上の負帯電性のトナーTをB相搬送電極と反発させる電界が形成される。また、「+」という電位状態になっている図中左から3番目のA相搬送電極と、「G」という電位状態になっている図中左から2番目のC相搬送電極との間には、C相搬送電極上の負帯電性のトナーTをC相搬送電極側からA相搬送電極側に向けて引き寄せる電界が形成される。これらの電界により、図中左から2番目のC相搬送電極上にあったトナーTは、基板表面からホッピングして、図中左から3番目のA相搬送電極上に移る。また、同図(1)で示した電位状態が、同図(2)で示すように、図中左から「+」、「G」、「G」、「+」、「G」に切り替わったとする。すると、図中左から3番目のA相搬送電極上にあったトナーTが基板面からホッピングして、図中左から4番目のB相搬送電極上に移る。更に、同図(2)で示した電位状態が、同図(3)で示すように、図中左から「G」、「+」、「G」、「G」、「+」に切り替わったとする。すると、図中左から4番目のB相搬送電極上にあったトナーTが基板面からホッピングして、図中左から5番目のC相搬送電極上に移る。
【0041】
このように3つで1セットの搬送電極組を構成するA相搬送電極、B相搬送電極、C相搬送電極に、その相の数分の1、即ち1/3の周期で位相ずれしたパルス電圧を印加することで、図中左側から右側に向かうトナー搬送方向Xの進行電界を形成する。これにより、トナー搬送基板20YのトナーTを基板面上でホッピングさせながらトナー搬送方向Xに向けて搬送することができる。なお、正帯電性のトナーを用いる場合には、パルス電圧の波形の変化パターンを逆にすることで、トナーを同様にトナー搬送方向Xに搬送することが可能である。
【0042】
本プリンタでは、上述の供給領域、搬送領域及び回収領域にある搬送電極20Yに印加する通常の3相パルス電圧として、図7に示すように、各相の+100Vの印加時間taを繰り返し周期tfの1/3である約33%に設定したA相パルス電圧Va1、B相パルス電圧Vb1、C相パルス電圧Vc1からなるものを採用している。図示のような波形パターン(以下、搬送波形パターンという)の3相パルス電圧を採用することにより、供給領域、搬送領域及び回収領域にて、トナーを高速搬送させ得ることを本発明者らは実験によって確かめている。
【0043】
また、上述の現像領域にある搬送電極20Yに印加する現像用の3相パルス電圧としては、図8に示すように、各相の+100V又は0Vの印加時間taを繰り返し周期tfの2/3である約67%に設定したA相パルス電圧Va1、B相パルス電圧Vb1、C相パルス電圧Vc1からなるものを採用している。図示のような波形パターン(以下、現像波形パターンという)からなる現像用の3相パルス電圧を採用することにより、現像領域において、基板表面上のトナー粒子を感光体に向けて積極的に打ち上げて、潜像を良好に現像し得ることを本発明者らは実験によって確かめている。
【0044】
なお、現像用の3相パルス電圧を印加した場合でも、0Vになる搬送電極20Yの幅方向中央付近に位置しているトナー以外に対しては、基板面方向への静電気力も作用させるため、全てのトナーを一斉に高く打ち上げることはできず、基板面方向に移動するトナーも出現させる。また、通常の3層パルス電圧を印加した場合でも、基板上におけるトナーの位置によっては、大きな角度で斜めに打ち上げられ、基板面方向の移動量よりも高さ方向の移動量の方が多くなるトナーが出現する。
【0045】
なお、通常のパルス電圧や現像用のパルス電圧の波形や、図7や図8に示したものに限られるものではない。これまで、3相のパルス電圧を印加する例について説明したが、n相に一般化すると次のようになる。即ち、各搬送電極に対してn相(nは3以上の整数)のパルス状電圧(駆動波形)を印加して進行波電界を発生させる場合、1相あたりの電圧印加時間が{繰り返し周期時間×(n−1)/n}未満となる電圧印加デューティとすることによって、搬送、現像の効率を上げることができる。例えば、3相のパルス電圧を採用する場合には、各相の電圧印加時間taを繰り返し周期時間tfの2/3である約67%未満に設定し、4相のパルス電圧を用いる場合には、各相の電圧印加時間を繰り返し周期時間の3/4である75%未満に設定することが好ましい。また、電圧印加デューティは、{繰り返し周期時間/n}以上に設定することが好ましい。例えば、3相のパルス電圧を用いる場合には、各相の電圧印加時間taを繰り返し周期時間tfの1/3である約33%以上に設定することが好ましい。注目電極に印加する電圧と進行方向上流側隣接電極及び下流側隣接電極に印加する各電圧との間には、上流側隣接電極が反発、下流側隣接電極が吸引という時間を設定することによって、効率を向上することができる。特に、パルス電圧の周波数が比較的高い場合は、{繰り返し周期時間/n}以上で{繰り返し周期時間×(n−1)/n}未満の範囲内に設定することにより、注目電極上のトナーに対する初期速度が得られやすくなる。
【0046】
なお、これまでトナー搬送基板20Yとして、ベストモードと考えられるものの構成を説明してきたが、所望の搬送性能や現像性能が得られるのであれば、現像領域やその他の領域とで搬送電極の間隔を異ならせて電界の方向を調整しても良いし、あるいは現像領域と搬送領域で電極の間隔およびパルス電圧を同一としても良い。
【0047】
先に示した図1において、本プリンタにスキャナを具備させることも可能である。この場合、スキャナから読み込まれた画像情報がA/D変換、MTF補正、階調処理等の種々の画像処理を施されて書込みデータに変換される。プリンタとして機能するときには、コンピュータ等から転送されるページ記述言語やビットマップ等の形式の画像情報に対して画像処理が施され書込みデータに変換される。
【0048】
そして、画像形成に先駆けて、各感光体2Y,C,M,Kは表面の移動速度が所定の速度となるように、図中反時計回りに回転駆動し始める。帯電ローラ3Y,C,M,Kが感光体2Y,C,M,Kに連れ回って回転する。このとき帯電ローラ3Y,C,M,Kの芯金には、−100[V]の直流電圧と、振幅1200[V]で周波数2[kHz]とを重畳した帯電バイアスが印加され、これにより感光体2Y,C,M,Kの表面が約−100[V]に一様帯電せしめられる。
【0049】
このようにして一様帯電した感光体2Y,C,M,Kに対し、光書込装置80Y,C,M,Kは、書込みデータに応じてレーザーLを照射して光走査を行なう。そして、感光体2Y,M,C,Kの表面に、光照射に伴う電位の減衰による静電潜像を形成し、光照射を受けずに一様帯電電位のままである非画像部との間に電位差を発生させる。
【0050】
感光体2Y,C,M,K上に形成された静電潜像は、現像装置10Y,M,C,KによってY,C,M,Kトナー像に現像される。この際、各現像装置10Y,C,M,K内では、トナー搬送基板上のY,M,C,Kトナー粒子をホッピングさせながら現像領域まで搬送する。なお、本実施形態では、供給手段たる供給ロールに−250[V]の電圧を印加して、トナー搬送基板の各搬送電極との間に250〜350[V]の電位差を生じせしめることで、供給ロールの供給スリーブ上のトナーをトナー搬送基板上に転位させるようにしている。
【0051】
以上の基本的な構成を備える本プリンタにおいては、トナー搬送基板の各搬送電圧にn相のパルス電圧を印加することで、トナーをトナー搬送基板上でホッピングさせながら現像領域に向けて搬送する。かかる構成では、従来の現像ローラや現像スリーブ上のトナーを感光体の静電潜像に付着させる構成とは異なり、現像領域でのトナーのホッピングにより、トナーに対して現像ローラや磁性キャリアとの付着力を発揮させていない。これにより、感光体の静電潜像の電位と非画像部電位とに僅かな電位差を設けるだけで、ホッピングさせたトナーを静電潜像に選択的に付着させる低電位差現像を実現することができる。また、低電位差現像を実現することで、感光体の一様帯電電位を非常に小さくして、感光体の長寿命化を図ることができる。
【0052】
本プリンタは、筐体(91)の端部に開閉扉を有しており、これを筐体(91)の本体に対して開くと、図9に示すように、それに伴って転写ユニット81がその第1張架ローラ84の軸部を中心にして図中左側に回転する。各色のプロセスユニット1Y,C,M,Kをプリンタ本体に対して着脱する際には、図示のようにして開閉扉を開いて、転写ユニット81を各色のプロセスユニット1Y,C,M,Kの側方から待避させることで、各色のプロセスユニット1Y,C,M,Kを外部に露出させる。そして、プロセスユニット1Y,C,M,Kをプリンタ本体内で開閉扉の開放によってあらわになった開口に向けてスライド移動させることで、プリンタ本体から取り外すことができる。また、反対側にスライド移動させることで、プリンタ本体内に装着することができる。
【0053】
次に、本実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。先に示した図2において、図中時計回り方向に回転駆動される供給スリーブ15Yの表面に担持された図示しないY現像剤中のYトナーは、トナー搬送基板20Yとの対向位置において、磁性キャリア表面から離脱してトナー搬送基板20Yに向けて飛翔する。そして、トナー搬送基板20Yにおける供給スリーブ15Yとの対向領域である供給領域に供給された後、トナー搬送基板20Y表面上をホッピングしながら、基板の曲面に沿って図中点線矢印のように時計回り方向に移動する。そして、トナー搬送基板20Yの供給領域から、基板とスリーブとが対向していない搬送領域に進入した後、基板と感光体2Yとが対向する現像領域に進入して現像に寄与する。現像に寄与しなかったYトナーは、現像領域を通過して回収領域に至る。また、現像領域にて、感光体2Yに過剰に付着したYトナーは、回収領域にて感光体2Y表面からトナー搬送基板20Y上に回収される。現像に寄与しないままにトナー搬送基板20Yの回収領域に進入したYトナーや、感光体2Y上からトナー搬送基板20Yの回収領域に回収されたトナーは、更に基板面でホッピングしながら、トナー搬送基板20Yの供給領域に向けて搬送される。
【0054】
供給スリーブ15Yとトナー搬送基板20Yとが対向する供給領域では、供給スリーブ15Yに担持されるY現像剤のYトナーだけでなく、磁性キャリアやこれの粉砕物がトナー搬送基板20Y上に供給されてしまうことがある。供給されてしまった磁性キャリアやこれの粉砕物は、トナー搬送基板20Y上におけるYトナーの良好な搬送を阻害してしまう。基板曲面を図中時計回り方向あるいは反時計周り方向に少しずつ移動してやがて回収領域に至るが、本プリンタにおけるY用のプロセスユニット1Yの現像装置10Yにおいては、トナー搬送基板20Y上に付着した磁性キャリアやこれの粉砕物などの付着物をトナー搬送基板20Yの表面上から除去する付着物除去手段を設けている。この付着物除去手段によって磁性キャリアやこれの粉砕物などの付着物をトナー搬送基板20Yの表面から除去することで、付着物によって基板上におけるトナーの良好な搬送を阻害してしまうといった事態を抑えることができる。
【0055】
なお、Y用の現像装置10Yのみならず、他色用の現像装置10C,M,Kについても、同様の付着物除去手段を設けている。
【0056】
また、トナーとして、外添剤がトナーと逆極性に帯電するものを用いれば、トナー粒子表面から離脱してトナー搬送基板の表面に付着してしまった外添剤を付着物除去手段によって基板表面から除去することもできる。
【0057】
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例のプリンタについて説明する。
[第1実施例]
図10は、本第1実施例に係るプリンタにおけるY用のプロセスユニット1Yを示す拡大構成図である。同図において、プロセスユニット1Yの現像装置10Yは、次のような構成の付着物除去手段を備えている。即ち、トナー搬送基板20Yの回収領域と所定の間隙を介して対向しながら、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される対向部材たる除去ローラ31Yと、これに対して除去電圧を印加する除去電圧印加手段たる除去電源回路32Yとを備えた付着物除去手段である。
【0058】
対向部材たる除去ローラ31Yは、ステンレスやアルミ等の金属からなるか、あるいは芯金に導電性ゴムが被覆されたものからなる直径3〜10[mm]程度のローラであり、0.5[mm]程度のギャプを介してトナー搬送基板20Yの回収領域に対向している。
【0059】
除去電源回路32Yは、Yトナーと同極性である負極性の除去電圧を所定のタイミングで除去ローラ31Yに印加する。これにより、トナー搬送基板20Yの回収領域と、−300[V]〜−3[kV]、好ましくは−800[V]〜−3[kV]の除去電圧が印加される除去ローラ31Yとの間には、除去電界が形成される。トナー搬送基板20Yの回収領域では、図示しない磁性キャリアやこれの粉砕物がトナーとは逆極性である正極性に帯電している。そして、前述の除去電界による静電気力を受けて、トナー搬送基板20Yの回収領域から飛翔して、負極性の電位を帯びる除去ローラ31Yの表面上に転位する。この転位により、トナー搬送基板20Yの回収領域に存在していた磁性キャリアやその粉砕物が回収領域から除去される。
【0060】
トナー搬送基板20Yの供給領域に供給されてしまった磁性キャリアやその粉砕物は、ゆっくりと回収領域に搬送されて付着物除去手段によって回収領域から除去される。そして、回収領域に向けてゆっくりと搬送されている間には、トナーの良好な搬送を阻害してしまう。磁性キャリアやその粉砕物の搬送速度が遅くなるほど、それらによってトナーの搬送性を阻害してしまう期間が長くなってしまう。
【0061】
そこで、本プリンタにおいては、筒状のトナー搬送基板20Yを所定のタイミングで回転させて、その表面を無端移動させるようになっている。そして、トナー搬送基板20Yの無端移動により、基板上に付着している磁性キャリアやその粉砕物を、対向部材である除去ローラ31Yに対向する回収領域に向けて強制的に搬送するようになっている。かかる構成では、トナー搬送基板20Yに形成される進行電界によってゆっくりと移動する磁性キャリアやその粉砕物が回収領域まで搬送されるのを待つのではなく、トナー搬送基板20Yの表面移動によって磁性キャリアや粉砕物を短時間で回収領域まで移動させて、除去ローラ31Yによって基板面から除去する。これにより、磁性キャリアやその粉砕物によるトナー搬送性の低下を更に確実に抑えることができる。なお、表面を無端移動させるトナー搬送基板20Yとして、筒状のものに代えて、無端ベルト状のものであって、複数の張架部材によって張架されながら無端移動せしめられるものを採用してもよい。
【0062】
トナー搬送基板20の表面には、磁性キャリアやその粉砕物のようにトナーと逆極性に帯電している付着物の他、トナーとは異なる物質であって且つトナーと同極性に帯電している付着物が付着することがある。後者の付着物は、トナーとは逆極性の除去電圧を印加した除去ローラ31Yによってトナー搬送基板20Y表面から除去することができない。
【0063】
そこで、本プリンタにおいては、図示のように、除去電圧印加手段たる除去電源回路32Yとして、所定のタイミングで除去電圧をトナーと同極性の電圧とトナーと逆極性の電圧とで切り替えるものを用いている。かかる構成では、除去電圧の極性の切替により、トナーとは逆極性に帯電している磁性キャリアやその粉砕物の他、トナーと同極性に帯電している付着物もトナー搬送基板20Y上から除去することができる。除去電圧の切替については、例えば、10〜60分間隔などで行えばよい。トナーとして、外添剤がトナーと同極性に帯電するものを用いた場合には、トナー搬送基板20Y表面に付着してしまった外添剤を除去電圧の切替によって除去することもできる。
【0064】
なお、除去ローラ31Yにトナーと逆極性の除去電圧を印加した場合、Yトナーとは異なる物質であってYトナーと同極性の付着物の他に、Yトナーも除去ローラ31Yによって基板表面から除去することになる。このようにYトナーをトナー搬送基板20Yの回収領域から除去しても、供給領域で十分量のYトナーを供給スリーブ15Yからトナー搬送基板20Y上に供給すれば、トナー量不足による画像劣化を引き起こすことはない。供給スリーブ15Yの回転速度や、供給スリーブ15Yに印加する供給バイアスの値の調整などにより、供給領域で十分量のYトナーをトナー搬送基板20Yに供給することが可能である。
【0065】
除去ローラ31Yに付着した付着物については、除去電源回路32Yからの電圧出力を停止して除去ローラ31Yを0[V]にすることで、除去ローラ31Yの表面から離脱させることができる。また、除去ローラ31Yから離脱させた磁性キャリアについては、自重による落下に伴って供給スリーブ15Y上の磁気ブラシに回収させてもよいし、図示しない搬送スクリュウによって現像剤収容部10Yに戻してもよい。また、現像装置10Yの外部に回収してもよい。
【0066】
トナー搬送基板20Yの表面を移動させる移動手段たるトナー搬送基板20の回転駆動手段は、電圧出力手段たる搬送電源回路(30Y)からトナー搬送基板20Yの複数の搬送電極にパルス電圧が出力されていないときに、トナー搬送基板20Yを回転駆動してその表面を無端移動させるように構成されている。また、除去電圧印加手段たる除去電源回路32Yは、搬送電源回路(30Y)からトナー搬送基板20Yの複数の搬送電極にパルス電圧が出力されていないときに、除去ローラ31Yに対して除去電圧を印加するように構成されている。即ち、本プリンタにおいては、現像のためにYトナーをトナー搬送基板20Y上で搬送していないときに、トナー搬送基板20Y上からの付着物の除去を行うようになっている。
【0067】
かかる構成では、トナー搬送基板20上で進行電界によるトナー搬送を行っていないときに、除去処理を行うことで、相当に大きな除去電圧を除去ローラ31Yに印加しても、それによる電界によってトナー搬送基板20上のトナー搬送不良を引き起こすことがない。このため、トナー搬送基板20上の付着物を確実に除去できる程度に十分に大きな除去電圧を除去ローラ31Yに印加して、付着物を確実に除去することができる。
【0068】
また、トナー搬送基板20上で進行電界によるトナー搬送を行っていないときに、トナー搬送基板20を回転させることで、その回転によってトナーの現像領域への搬送量を変動させてしまうといった事態を回避することができる。
【0069】
なお、Y用の現像装置10Yに設けた付着物除去手段について詳しく説明したが、他色用の現像装置10C,M,Kにも、Y用のものと同様の付着物除去手段を設けている。
【0070】
[第2実施例]
本第2実施例に係るプリンタの構成は、以下に特筆しない限り、第1実施例に係るプリンタと同様である。本プリンタの付着物除去手段の除去電源回路は、除去ローラ(例えば31Y)に対し、それに付着している付着物と同極性の2次除去電圧を所定のタイミングで印加することで、その付着物を所定のタイミングで除去ローラから除去するようになっている。具体的には、除去電圧として、トナーと同極性の電圧を印加して磁性キャリア等をトナー搬送基板(例えば20Y)から除去ローラに転位させた場合には、トナーとは逆極性の電圧を印加することで、磁性キャリア等を除去ローラから除去する。また、除去電圧として、トナーとは逆極性の電圧を印加してトナーやこれと同極性に帯電している付着物をトナー搬送基板から除去ローラに転位させた場合には、トナーと同極性の電圧を印加することで、それらを除去ローラから除去する。かかる構成では、除去電圧の印加を停止することで、付着物を除去ローラから除去する場合よりも確実に、付着物を除去ローラから除去することができる。
【0071】
また、本プリンタでは、トナー搬送基板(例えば20Y)の回転駆動手段が、電圧出力手段たる搬送電源回路(例えば30Y)からトナー搬送基板の複数の搬送電極にパルス電圧が出力されていないときに、トナー搬送基板を回転駆動してその表面を無端移動させるように構成されている。また、除去電源回路(例えば32Y)は、搬送電源回路からトナー搬送基板の複数の搬送電極にパルス電圧が出力されていないときに、除去ローラ(例えば31Y)に対して除去電圧を印加するように構成されている。即ち、本プリンタにおいては、現像のためにYトナーをトナー搬送基板20Y上で搬送しているときに、トナー搬送基板上からの付着物の除去を行うようになっている。かかる構成では、トナー搬送基板上でトナーをホッピングさせて現像を行いながら、トナー搬送基板から付着物を除去することができる。
【0072】
[第3実施例]
本第3実施例に係るプリンタの構成は、以下に特筆しない限り、第1実施例に係るプリンタと同様である。図11は、本プリンタにおけるY用のプロセスユニット1Yを示す拡大構成図である。このプロセスユニット1Yの現像装置10Yには、トナー搬送基板20Yの回収領域に対して所定の間隙を介して対向する対向電極板33Yと、これにおける基板との非対向面に固定された振動子34Yとを備えている。また、振動子34Yへの電圧を入切する図示しない振動電源回路も備えている。
【0073】
対向電極板33Yは、トナー搬送基板20Yの回収領域に対して、50〜1000[μm]、好ましくは150〜400[μm]のギャップを介して対向している。このギャプの寸法は、回収領域でYトナーが基板面上でホッピングする高さよりも大きい値である。
【0074】
対向電極板33Yには、除去電源回路32Yが接続されており、除去電圧が印加される。回収領域における基板上の付着物は、基板面から飛翔して対向電極板33Yにおける基板との対向面に転位する。この転位により、トナー搬送基板20Y上の付着物が除去される。対向電極板33Yに印加される除去電圧としては、|100V|〜|1KV|の範囲、好ましくは|300V|〜|500V|である。
【0075】
対向電極板33Yにおける基板面とは反対面に固定された振動子34Yは、所定のタイミングで電源が供給されることで、超音波振動する。この超音波振動が対向電極板33Yに伝わることで、対向電極板33Yにおける基板との対向面に堆積した付着物がその面から滑り落ちる。これにより、付着物が対向電極板33Yから除去される。このとき、対向電極板33Yへの除去電圧の印加は停止されている。図示のように、対向電極板33Yを水平方向から傾けた姿勢で配設することで、基板との対向面を傾斜面にして、付着物を滑り落ちやすくすることができる。
【0076】
[第4実施例]
本第4実施例に係るプリンタの構成は、以下に特筆しない限り、第1実施例に係るプリンタと同様である。本プリンタの付着物除去手段は、トナー搬送基板上の付着物に静電気力を作用させてそれを除去するものではなく、トナー搬送基板との対向位置にある対向部材に除去電圧を印加する除去電源回路を備えていない。
【0077】
図12は本プリンタのY用のプロセスユニット1Yを示す拡大構成図である。このプロセスユニット1Yの現像装置10Yの付着物除去手段は、トナー搬送基板20Yの回収領域と所定の間隙を介して対向する除去ロール35Yと、除去ブレード38Yとを有している。
【0078】
除去ロール35Yは、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される非磁性パイプからなる除去スリーブ36Yと、これに連れ回らないように内包される除去マグネットローラ37Yとを有している。磁力発生手段たる除去マグネットローラ37Yは、図13に示すように、その周方向に所定のピッチでN極とS極とが繰り返し並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極の配設ピッチは、一定間隔で且つ供給ロール16Yのマグネットローラ16Yの磁極よりも小さい間隔である。このような磁極配置により、周方向において均一な磁界が形成される。
【0079】
先に示した図12において、トナー搬送基板20Yの回収領域と除去ロール35Yとが対向する領域では、トナー搬送基板20Y上の磁性キャリアやこれの粉砕物が、除去マグネットローラ37Yの磁力に引かれて除去スリーブ36Yの表面上に転位する。そして、除去スリーブ36Yの回転に伴って、スリーブと除去ブレード38Yとの当接位置まで搬送され、ここで除去ブレード38Yによって除去スリーブ36Y表面から掻き落とされる。掻き落とされた磁性キャリアは、自重によって落下して、供給スリーブ15Y上の磁気ブラシに回収される。除去スリーブ36Y表面から掻き取った磁性キャリアを、図示しない搬送スクリュウによって現像剤収容部10Yに戻してもよいし、現像装置10Yの外部に回収してもよい。
【0080】
なお、Y用の現像装置10Yに設けた付着物除去手段について詳しく説明したが、他色用の現像装置10C,M,Kにも、Y用のものと同様の付着物除去手段を設けている。
【0081】
[第5実施例]
本第5実施例に係るプリンタの構成は、以下に特筆しない限り、第4実施例に係るプリンタと同様である。図14は、本プリンタにおけるY用のプロセスユニット1Yを示す拡大構成図である。このプロセスユニット1Yの現像装置10Yの付着物除去手段は、トナー搬送基板20Yの回収領域と所定の間隙を介して対向する磁力発生手段たる電磁石39Yと、これに対して電源をオンオフする電磁石電源回路40Yとを有している。電磁石39Yは、電磁石電源回路40Yから電源が供給されるのに伴って、磁力を発生する。
【0082】
トナー搬送基板20Yの回収領域と、電源が供給される電磁石39Yとが対向する領域では、トナー搬送基板20Y上の磁性キャリアやこれの粉砕物が、電磁石39Yの発する磁力に引かれて電磁石39Yの表面上に転位する。このようにして転位した磁性キャリアは、電磁石39Yへの電源供給が停止されて電磁石39Yが磁力を発しなくなるのに伴って、電磁石39Y表面上から離脱する。離脱した磁性キャリアは、自重によって落下して、供給スリーブ15Y上の磁気ブラシに回収される。除去スリーブ36Y表面から掻き取った磁性キャリアを、図示しない搬送スクリュウによって現像剤収容部10Yに戻してもよいし、現像装置10Yの外部に回収してもよい。
【0083】
なお、Y用の現像装置10Yに設けた付着物除去手段について詳しく説明したが、他色用の現像装置10C,M,Kにも、Y用のものと同様の付着物除去手段を設けている。
【0084】
これまで、4つのプロセスユニット1Y,C,M,Kを用いて他色画像を形成するプリンタの例について説明したが、プロセスユニットを1つしか備えておらず単色画像を形成する画像形成装置にも本発明の適用が可能である。
【0085】
以上、第1実施例、第2実施例及び第3実施例のプリンタにおいては、付着物除去手段として、トナー搬送部材たるトナー搬送基板の表面と所定の間隙を介して対向する対向部材たる除去ローラ又は対向電極板と、これにトナーと同極性の除去電圧を印加する除去電圧印加手段たる除去電源回路とを有するものを用いることで、トナー搬送基板の表面上でトナーとは逆極性に帯電している付着物を静電気力によって除去ローラ又は対向電極板に向けて引き寄せて基板表面上から除去する。かかる構成では、トナー搬送基板にクリーニング部材を接触させることなく、トナー搬送基板から付着物を除去することができる。
【0086】
また、第1実施例、第2実施例及び第3実施例のプリンタにおいては、付着物除去手段として、トナー搬送基板の表面と所定の間隙を介して対向する対向部材たる除去ローラ又は対向電極板と、これにトナーと逆極性の除去電圧を印加する除去電源回路とを有するものを用いることで、トナー搬送基板の表面上のトナー及びこれと同極性に帯電している付着物を静電気力によって除去ローラ又は対向電極板に向けて引き寄せて基板表面上から除去する。かかる構成では、トナーと逆極性に帯電している磁性キャリアやこれの粉砕物だけでなく、トナーやこれと同極性に帯電している付着物も、トナー搬送基板から除去することができる。
【0087】
また、第1実施例、第2実施例及び第3実施例のプリンタにおいては、除去電源回路として、所定のタイミングで除去電圧をトナーと同極性の電圧とトナーと逆極性の電圧とで切り替えるものを用いることで、トナー搬送基板の表面上でトナーと逆極性に帯電している付着物と、トナー及びこれと同極性に帯電している付着物との両方を除去することができる。
【0088】
また、第1実施例及び第3実施例のプリンタにおいては、除去ローラ又は対向電極板に対する除去電圧の印加を停止することで、それら対向部材に付着している付着物を対向部材から除去する。かかる構成では、除去電圧を印加したままで付着物を対向部材から除去しようとすることによる除去性の悪化を回避することができる。
【0089】
また、第2実施例のプリンタにおいては、除去電源回路として、除去ローラに対してそれに付着している付着物と同極性の2次除去電圧を所定のタイミングで印加するものを用いることで、付着物をその所定のタイミングで除去ローラから除去する。かかる構成では、除去電圧の出力停止だけを行いながら除去ローラから付着物を除去するよりも、付着物を確実に除去することができる。
【0090】
また、第1実施例及び第3実施例のプリンタにおいては、除去電源回路として、搬送電源回路からトナー搬送基板の複数の搬送電極にパルス電圧が出力されていないときに、除去ローラ又は対向電極板に除電電圧を印加するものを用いている。かかる構成では、上述した理由により、除電電圧として相当に大きな値のものを除去ローラ又は対向電極板に印加して付着物をトナー搬送基板から確実に除去しながら、その除去電圧によって基板上のトナー搬送性に悪影響を及ぼしてしまうといった事態を回避することができる。
【0091】
また、第2実施例のプリンタにおいては、除去電源回路として、搬送電源回路から複数の搬送電極にパルス電圧が出力されているときに、除去ローラに除電電圧を印加するものを用いているので、トナー搬送基板上でトナーを搬送しながら、トナー搬送基板上から付着物を除去することができる。
【0092】
また、第4実施例及び第5実施例のプリンタにおいては、付着物除去手段として、トナー搬送基板の表面と所定の間隙を介して対向する磁力発生手段たる除去マグネットローラ又は電磁石を有するものを用いることで、トナー搬送基板の表面上の付着物を磁力によってそれら磁力発生手段に向けて引き寄せて基板表面から除去する。かかる構成では、トナー搬送基板上のトナーに除去電圧による静電気力を作用させることなく、トナー搬送基板上の付着物を除去することができる。
【0093】
また、第5実施例のプリンタにおいては、磁力発生手段として、電圧の供給に伴って磁力を発揮する電磁石を用いるとともに、この電磁石に磁力発生電圧を印加する電磁石電源回路を設けている。かかる構成では、必要に応じて電磁石への電源を停止して電磁石から発せられる磁力を消すことで、電磁石に付着した付着物を電磁石から除去することができる。
【0094】
また、各実施例のプリンタにおいては、トナー搬送基板の表面を移動させる表面移動手段たるトナー搬送基板の回転駆動手段を設けている。かかる構成では、必要に応じてトナー搬送基板の表面を無端移動させて、対向部材や磁力発生手段との対向位置に移動させることで、トナー搬送基板上の付着物をその静電移動ではなく、強制的に除去位置まで搬送する。これにより、トナー搬送基板上に付着した付着物を除去位置まで移動させるまで待つということを行わず、付着物を除去位置まで強制的に移動させて迅速に除去することができる。
【0095】
また、各実施例のプリンタにおいては、トナー搬送基板として、筒状に形成されたものを用い、表面移動手段たる回転駆動手段として、基板表面を無端移動させるものを用いている。かかる構成では、トナー搬送基板の無端状の表面上でトナーを何周も循環移動させることができる。なお、トナー搬送基板を無端ベルト状に構成してもよい。
【0096】
また、第1実施例、第3実施例、第4実施例及び第5実施例のプリンタにおいては、表面移動手段たる回転駆動手段として、搬送電源回路から各搬送電極に向けてパルス電圧が出力されていないときに、トナー搬送基板の表面を無端移動させるものを用いている。かかる構成では、基板表面上で搬送されるトナーの感光体に対する相対速度をトナー搬送基板の無端移動によって変化させてしまうといった事態を回避することができる。
【0097】
また、第2実施例のプリンタにおいては、回転駆動手段として、搬送電源回路から各搬送電極に向けてパルス電圧が出力されているときに、トナー搬送基板の表面を無端移動させるものを用いている。かかる構成では、トナー搬送基板上のトナーを感光体に対して、ホッピングによる移動と、基板の無端移動による移動との両方によって相対移動させながら、搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタのY用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図3】同プロセスユニットの現像装置に搭載された供給ロールのマグネットローラを示す模式図。
【図4】同現像装置のトナー搬送基板の拡大断面を、搬送電源回路とともに示す模式図。
【図5】同トナー搬送基板の各搬送電極に印加される通常の3相パルス電圧における波形の一例を示す波形図。
【図6】同トナー搬送基板の各搬送電極の電位状態を示す模式図。
【図7】各搬送電極に印加される通常の3相パルス電圧の波形を示す波形図。
【図8】各搬送電極に印加される現像用の3相パルス電圧の波形を示す波形図。
【図9】開閉カバーを開いた状態の同プリンタを示す概略構成図。
【図10】第1実施例に係るプリンタにおけるY用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図11】第3実施例に係るプリンタにおけるY用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図12】第4実施例に係るプリンタにおけるY用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図13】同プロセスユニットの現像装置に搭載される除去ロールの除去マグネットローラを示す模式図。
【図14】第5実施例に係るプリンタにおけるY用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【符号の説明】
【0099】
1Y,C,M,K:プロセスユニット
2Y,C,M,K:感光体(潜像担持体)
3Y:帯電ローラ(帯電手段)
6Y:ドラムクリーニング装置(クリーニング手段)
10Y,C,M,K:現像装置
20Y:トナー搬送基板(トナー搬送部材)
22Y:搬送電極
14Y:供給ロール(トナー供給手段)
30Y:搬送電源回路(電圧出力手段)
31Y:除去ローラ(対向部材)
32Y:除去電源回路(除去電圧印加手段)
33Y:対向電極板(対向部材)
37Y:除去マグネットローラ(磁力発生手段)
39Y:電磁石(磁力発生手段)
40Y:電磁石電源回路(磁力発生電圧印加手段)
P:記録紙(記録部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に並ぶ複数の搬送電極を有するトナー搬送部材と、トナー及び磁性キャリアを含有する現像剤中のトナーを該トナー搬送部材の表面に供給するトナー供給手段と、該トナー搬送部材の複数の搬送電極に印加するための電圧を出力する電圧出力手段とを備え、それら搬送電極にそれぞれ該電圧を印加することで、該トナー搬送部材の表面上のトナーをホッピングさせて該搬送電極の並び方向に搬送するトナー搬送装置において、
上記トナー搬送部材の表面上の付着物を除去する付着物除去手段を設けたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項2】
請求項1のトナー搬送装置であって、
上記付着物除去手段として、上記トナー搬送部材の表面と所定の間隙を介して対向する対向部材と、該対向部材にトナーと同極性の除去電圧を印加する除去電圧印加手段とを有するものを用いることで、該トナー搬送部材の表面上でトナーとは逆極性に帯電している付着物を静電気力によって該対向部材に向けて引き寄せて該表面上から除去することを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項3】
請求項1のトナー搬送装置であって、
上記付着物除去手段として、上記トナー搬送部材の表面と所定の間隙を介して対向する対向部材と、該対向部材にトナーと逆極性の除去電圧を印加する除去電圧印加手段とを有するものを用いることで、該トナー搬送部材の表面上のトナー及びこれと同極性に帯電している付着物を静電気力によって該対向部材に向けて引き寄せて該表面上から除去するものことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項4】
請求項2又は3のトナー搬送装置であって、
上記除去電圧印加手段として、所定のタイミングで上記除去電圧をトナーと同極性の電圧とトナーと逆極性の電圧とで切り替えるものを用いることで、上記トナー搬送部材の表面上で該逆極性に帯電している付着物と、トナー及びこれと同極性に帯電している付着物との両方を除去することを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れかのトナー搬送装置であって、
上記対向部材に対する上記除去電圧の印加を停止することで、該対向部材に付着している付着物を該対向部材から除去することを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項6】
請求項2乃至4の何れかのトナー搬送装置であって、
上記除去電圧印加手段として、上記対向部材に対してそれに付着している付着物と同極性の2次除去電圧を所定のタイミングで印加するものを用いることで、該付着物を該所定のタイミングで該対向部材から除去することを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項7】
請求項2乃至6の何れかのトナー搬送装置において、
上記除去電圧印加手段として、上記電圧出力手段から複数の上記搬送電極に電圧が出力されていないときに、上記対向部材に上記除電電圧を印加するものを用いたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項8】
請求項2乃至6の何れかのトナー搬送装置において、
上記除去電圧印加手段として、上記電圧出力手段から複数の上記搬送電極に電圧が出力されているときに、上記対向部材に上記除電電圧を印加するものを用いたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項9】
請求項1のトナー搬送装置であって、
上記付着物除去手段として、上記トナー搬送部材の表面と所定の間隙を介して対向する磁力発生手段を有するものを用いることで、該トナー搬送部材の表面上の付着物を磁力によって該磁力発生手段に向けて引き寄せて該表面上から除去することを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項10】
請求項9のトナー搬送装置において、
上記磁力発生手段として、電圧の供給に伴って磁力を発揮するものを用いるとともに、該磁力発生手段に磁力発生電圧を印加する磁力発生電圧印加手段を上記付着物除去手段に設けたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項11】
請求項2乃至8の何れかのトナー搬送装置において、
上記トナー搬送部材の表面を移動させる表面移動手段を設けたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項12】
請求項11のトナー搬送装置において、
上記トナー搬送部材として、筒状又は無端ベルト状に形成されたものを用いるとともに、上記表面移動手段として、筒状又は無端ベルト状の該トナー搬送部材の表面を無端移動させるものを用いたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項13】
請求項11又は12のトナー搬送装置において、
上記表面移動手段として、上記電圧出力手段から上記搬送電極に向けて電圧が出力されていないときに、上記トナー搬送部材の表面を移動させるものを用いたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項14】
請求項11又は12のトナー搬送装置において、
上記表面移動手段として、上記電圧出力手段から上記搬送電極に向けて電圧が出力されているときに、上記トナー搬送部材の表面を移動させるものを用いたことを特徴とするトナー搬送装置。
【請求項15】
トナー搬送装置のトナー搬送部材の表面上に存在するトナーをホッピングさせながら潜像担持体との対向位置に搬送して、該潜像担持体に担持される潜像を現像する現像装置において、
上記トナー搬送装置として、請求項1乃至14の何れかのトナー搬送装置を用いたことを特徴とする現像装置。
【請求項16】
少なくとも、画像形成装置内で潜像を担持する潜像担持体、これの表面を一様に帯電せしめる帯電手段、及び該潜像担持体の表面に付着したトナーをクリーニングするクリーニング手段の何れか1つと、該潜像担持体上の潜像を現像する現像手段とを、1つのユニットとして共通の支持体に支持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能にしたプロセスユニットにおいて、
上記現像手段として、請求項15の現像装置を用いたことを特徴とするプロセスユニット。
【請求項17】
潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体上の潜像を現像する現像手段とを備える画像形成装置において、
上記現像手段として、請求項15の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−133116(P2007−133116A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325619(P2005−325619)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】