説明

トナー用ポリエステルの製造方法

【課題】定着時に臭気を発生せず、透明性に優れたトナー用ポリエステルの製造方法及び該製造方法により得られたポリエステルを含有した電子写真用トナーを提供すること。
【解決手段】
(A):特定のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含有した2価のアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物とを有機スズ系エステル化触媒の存在下で縮重合させる工程、(B):工程(A)における重合反応の反応率が90%以上の時点で、脂肪族ジカルボン酸化合物を反応系に添加して縮重合させる工程、及び(C):工程(A)と工程(B)を合わせた全重合反応の反応率が90%以上の時点で、3価以上の多価カルボン酸化合物及び/又は3価以上の多価アルコールを反応系に添加して縮重合させる工程を有するトナー用ポリエステルの製造方法であって、工程(A)における芳香族ジカルボン酸化合物の使用量に特徴を有するトナー用ポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーの結着樹脂として用いられるトナー用ポリエステルの製造方法及び該製造方法により得られたポリエステルを含有した電子写真用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のマシンの高速化やカラー化に伴い、帯電特性に優れたカラートナーの開発が要求されている。そこで、電子写真用トナーの結着樹脂として、耐久性や着色剤の分散性の観点から広く使用されているポリエステルにおいて、樹脂自体の帯電特性を高める観点から樹脂骨格にビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物と芳香族ジカルボン酸をモノマー成分とするポリエステルが提案されている(特許文献1参照)。また、カラー画像の形成では2色以上のトナーを混色するため、定着温度を下げる観点から、特定のモノマーを含有したカラートナー用結着樹脂が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−149660号公報
【特許文献2】特開平9−325518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、芳香族ジカルボン酸化合物とビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の組み合わせは、その反応性の低さから高温で長時間の反応が必要となるため、樹脂やトナーの製造中にビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物が熱分解する可能性があり、これにより得られる樹脂が着色したり、臭気が発生したりすることがある。従って、樹脂の帯電性を高めるために酸成分として芳香族ジカルボン酸化合物を多量に使用することは困難である。
【0004】
そのため、特許文献2に開示されている結着樹脂を含有したトナーでは、定着時に臭気が発生する場合があり、また、カラートナーの結着樹脂としては着色が問題になることもある。
【0005】
本発明の課題は、定着時に臭気を発生せず、透明性に優れたトナー用ポリエステルの製造方法及び該製造方法により得られたポリエステルを含有した電子写真用トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
〔1〕 工程(A)〜(C):
(A):式(I):
【0007】
【化1】

【0008】
〔式中、Rは炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は1〜4である〕
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含有した2価のアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物とを有機スズ系エステル化触媒の存在下で縮重合させる工程、
(B):工程(A)における重合反応の反応率が90%以上の時点で、脂肪族ジカルボン酸化合物を反応系に添加して縮重合させる工程、及び
(C):工程(A)と工程(B)を合わせた全重合反応の反応率が90%以上の時点で、3価以上の多価カルボン酸化合物及び/又は3価以上の多価アルコールを反応系に添加して縮重合させる工程
を有するトナー用ポリエステルの製造方法であって、工程(A)における芳香族ジカルボン酸化合物の使用量が、式(II):
80-0.15B≦A≦100-0.2B (II)
〔式中、Aは、2価のアルコール成分100モルに対する芳香族ジカルボン酸化合物の使用量(モル)、Bは、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物中のビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物の含有量(モル%)である〕
を満足する、トナー用ポリエステルの製造方法、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載の製造方法により得られるポリエステルを含有してなる電子写真用トナー
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、定着時に臭気を発生せず、透明性に優れた電子写真用トナー用結着樹脂を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、芳香族系の原料モノマーを含む特定の原料モノマーを特定量使用したポリエステルの製造方法において、原料モノマー、特にカルボン酸成分を工程(A)、(B)及び(C)の3段階に分けて反応系に添加し、縮重合させる点に特徴を有する。一般に、芳香族系の原料モノマーは、ベンゼン環による帯電保持力が強いため、高帯電量を発揮しやすい。しかしながら、芳香族系カルボン酸化合物とビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物は、反応性が低く、高温で長時間反応させる必要があるため、得られるポリエステルは着色により透明性が低下しやすく、場合によってはビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の分解が生じ、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の分解は定着時に臭気が発生する原因となる。特に、樹脂のガラス転移点を高めるのに有効なビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物で、この問題は顕著である。しかしながら、本発明では、使用する原料モノマーの反応性に応じて、反応性の低い順から縮重合反応に供することで、加熱による臭気の発生が低減され、カラートナー用結着樹脂としても透明性に優れたポリエステルを製造することができる。
【0011】
以下に、本発明の製造方法における工程(A)、(B)及び(C)について説明する。
【0012】
工程(A)は、式(I):
【0013】
【化2】

【0014】
〔式中、Rは炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は1〜4である〕
で表されるビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含有した2価のアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物とを、有機スズ系エステル化触媒の存在下で、縮重合させる工程である。
【0015】
芳香族ジカルボン酸化合物は反応性が低く、脂肪族ジカルボン酸化合物や3価以上の多価カルボン酸化合物が反応系に共存していると、さらに芳香族ジカルボン酸化合物の反応率は低下する。また、反応率を高める観点からは、220〜240℃の高温で縮重合させることが好ましい。しかしながら、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物は230℃以上で徐々に熱分解が始まる。これにより生じた分解物が原料モノマーとして縮重合反応に供されたポリエステルは、定着時に特有のアルデヒド臭を発生するだけでなく、透明性のない茶色に着色する。そこで、予め、芳香族ジカルボン酸化合物とビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物とを縮重合させて、高温下で縮重合させる時間を極力短くすることにより、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の熱分解を低減することができる。
【0016】
式(I)で表されるビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物としては、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0017】
ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の含有量は、2価のアルコール成分中、80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上であり、より好ましくは実質的に100モル%である。
【0018】
ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物以外の2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール等の脂肪族ジオール等が挙げられる。
【0019】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらの中ではテレフタル酸及びイソフタル酸が好ましい。これらはそれぞれ単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、カルボン酸、これらのカルボン酸の無水物、及びカルボン酸のアルキルエステルを、本明細書では総称してカルボン酸化合物と呼ぶ。
【0020】
工程(A)における芳香族ジカルボン酸化合物の使用量は、カルボン酸成分中、40〜98モル%が好ましく、50〜98モル%がより好ましく、60〜90モル%がさらに好ましい。
【0021】
工程(A)において、芳香族ジカルボン酸化合物は、反応速度と帯電性の観点から、式(II):
80-0.15B≦A≦100-0.2B (II)
〔式中、Aは、2価のアルコール成分100モルに対する芳香族ジカルボン酸化合物の使用量(モル)、Bは、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物中のビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物の含有量(モル%)である〕
を満足する量で使用する。本発明は、帯電特性に優れた芳香族ジカルボン酸化合物を他の物性を損なうことなく多く使用することを課題の一つとし、必要な帯電量を樹脂が保持するためには、2価のアルコール成分100モルに対する芳香族ジカルボン酸化合物の使用量のモル比(A)が、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物中のビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物の含有量(モル%)をBとするとき、80-0.15B以上であることが必要である。一方、100-0.2Bを超えると、縮重合反応時間が長くなり臭気が発生し、また芳香族ジカルボン酸化合物の残留物が樹脂に残存して透過率が低減することが確認された。従って、本発明の製造方法においては、芳香族ジカルボン酸化合物は、前記式(II)を満足する量で使用する必要があるが、帯電性を高め、かつより高い透過率を有し、より臭気の少ない樹脂とするためには、
85-0.15B≦A≦100-0.2B
であることが好ましい。
【0022】
工程(A)における反応系内の温度は、220〜245℃が好ましく、225〜240℃がより好ましい。
【0023】
また、2価のアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物との縮重合反応は、有機スズ系エステル化触媒の存在下で反応をさせることで、より臭気が少なく透明性に優れたポリエステルを製造できる。なお、本発明で有機スズとは、スズと炭素の共有結合を有する触媒を意味する。
【0024】
有機スズ系エステル化触媒としては、酸化ジブチルスズ、酸化モノブチルスズ、酸化ジオクチルスズ、酸化モノオクチルスズ、酸化ジフェニルスズ、酸化モノフェニルスズ等、スズと炭素の共有結合を有する酸化アルキルスズ等が挙げられ、スズと結合するアルキル基の炭素数は4〜8が好ましく、4〜6がより好ましい。かかる有機スズ系エステル化触媒の中では、酸化ジブチルスズ及び酸化モノブチルスズが好ましく、酸化モノブチルスズがより好ましい。
【0025】
有機スズ系エステル化触媒の使用量は、原料モノマー(アルコール成分及びカルボン酸成分)の総量100重量部に対して、スズ量換算(スズ含有率×添加量)で、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.05重量部がより好ましい。
【0026】
また、助触媒として、ポリアミド、脂肪酸アミド、芳香族アミド化合物、N,N'-ジメチルベンゾアミド等のアミド化合物や、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン四酢酸類等のアミン化合物を使用することが好ましい。これらのなかではアミン化合物がより好ましく、トリエタノールアミン及びエチレンジアミン四酢酸がさらに好ましい。
【0027】
工程(B)は、工程(A)における重合反応の反応率が90%以上、好ましくは95%以上の時点で、脂肪族ジカルボン酸化合物を反応系に添加して縮重合させる工程である。本発明において、反応率とは、[反応水量(モル)/反応に供した原料モノマー(モル)から算出される理論生成水量(モル)]×100の値をいう。
【0028】
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0029】
工程(B)における脂肪族ジカルボン酸化合物の使用量は、カルボン酸成分中、1〜50モル%が好ましく、1〜40モル%がより好ましく、5〜20モル%がさらに好ましい。
【0030】
工程(B)における反応系内の温度は、170〜220℃が好ましく、180〜210℃がより好ましい。
【0031】
工程(C)は、工程(A)と工程(B)を合わせた全重合反応の反応率が90%以上、好ましくは95%以上の時点で、3価以上の多価カルボン酸化合物及び/又は3価以上の多価アルコールを反応系に添加して縮重合させる工程である。全重合反応の反応率とは、[反応水量(モル)/反応に供した原料モノマー(モル)から算出される理論生成水量(モル)]×100の値をいう。
【0032】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、トリメリット酸、ピロリメット酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0033】
3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0034】
3価以上の多価カルボン酸化合物もしくは3価以上の多価アルコールの使用量、又はこれらを併用する場合の総使用量は、カルボン酸成分100モルに対して、0.1〜35モルが好ましく、0.1〜20モルがより好ましい。
【0035】
工程(C)における反応系内の温度は、200〜230℃が好ましく、205〜220℃がより好ましい。
【0036】
本発明により得られるポリエステルの軟化点は、80〜160℃が好ましく、90〜140℃がより好ましい。また、ガラス転移点は、50〜80℃が好ましく、55〜70℃がより好ましい。
【0037】
本発明により得られるポリエステルをトナー用結着樹脂として用いることにより、高い帯電量を有し、定着時の臭気がなく、透明性にも優れた電子写真用トナーを得ることができる。
【0038】
本発明のトナーには、さらに、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0039】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、プリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
【0040】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することが出来る。トナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0041】
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、またはキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
【実施例】
【0042】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0043】
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて昇温速度10℃/minで100℃まで昇温し、降温速度100℃/minで−10℃まで冷却した試料を3分間放置し、その後、昇温速度60℃/minで25℃まで昇温し2分間保持して、昇温速度10℃/minで測定を開始する。ガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間の最大傾斜を示す接線との交点の温度を、ガラス転移点とする。
【0044】
実施例1
表1に示す使用量のBPA-PO、BPA-EO、テレフタル酸及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、反応温度を180℃に下げ、フマル酸を添加した。10℃/hの割合で210℃まで温度を上げ、反応率が90%に達するまで反応させた後、無水トリメリット酸を添加し、210℃で1時間常圧で反応させた後、8.3kPaで所望の軟化点に達するまで反応させて、ポリエステルを得た。
【0045】
実施例2
表1に示す使用量のBPA-PO、BPA-EO、テレフタル酸及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、反応温度を210℃に下げ、ドデセニル無水コハク酸を添加した。反応率が90%に達するまで反応させた後、無水トリメリット酸を添加し、210℃で1時間常圧で反応させた後、8.3kPaで所望の軟化点に達するまで反応させて、ポリエステルを得た。
【0046】
比較例1
実施例2において使用したのと同量のBPA-PO、BPA-EO、テレフタル酸、ドデセニル無水コハク酸、無水トリメリット酸及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃にて7時間常圧で反応させた後、8.3kPaで所望の軟化点に達するまで反応させて、ポリエステルを得た。得られたポリエステルの軟化点は113℃、ガラス転移点は60℃であった。
【0047】
比較例2
実施例2において使用したのと同量のBPA-PO、BPA-EO、テレフタル酸、ドデセニル無水コハク酸及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、無水トリメリット酸を添加し、1時間常圧で反応させた後、8.3kPaで所望の軟化点に達するまで反応させて、ポリエステルを得た。得られたポリエステル中には、テレフタル酸の未反応物と思われる白い粒が観測された。得られたポリエステルの軟化点は113℃、ガラス転移点は61℃であった。
【0048】
【表1】

【0049】
試験例1
実施例又は比較例で得られたポリエステル5gを200℃のホットプレートで5分間加熱し、その臭気を10人により、ランク1〜4(1:非常に臭い、2:臭い、3:ほとんど臭わない、4:臭わない)で評価した。10人の評価結果の平均値を表2に示す。
【0050】
試験例2
実施例又は比較例で得られたポリエステルを180℃にて1mmの厚さにフィルム化した。OHP(オーバーヘッド・プロジェクター)上で分光式色差計「SE 2000」(日本電色工業社製)にて、700nmにおける透過率を測定し、以下の評価基準に従って透明性を評価した。結果を表2に示す。
【0051】
〔評価基準〕
○:透過率が60%以上
△:透過率が40%以上60%未満
×:透過率が40%未満
【0052】
【表2】

【0053】
以上の結果より、同じ原料モノマーを使用していても、反応工程の違いにより、実施例のポリエステルは、いずれも、臭気の発生が低減されており、また高い透明性を有することから、カラートナーの結着樹脂としても好適に用いられることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明により得られるトナー用ポリエステルは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられるトナーの結着樹脂等として好適に用いられるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(A)〜(C):
(A):式(I):
【化1】

〔式中、Rは炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は1〜4である〕
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含有した2価のアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物とを有機スズ系エステル化触媒の存在下で縮重合させる工程、
(B):工程(A)における重合反応の反応率が90%以上の時点で、脂肪族ジカルボン酸化合物を反応系に添加して縮重合させる工程、及び
(C):工程(A)と工程(B)を合わせた全重合反応の反応率が90%以上の時点で、3価以上の多価カルボン酸化合物及び/又は3価以上の多価アルコールを反応系に添加して縮重合させる工程
を有するトナー用ポリエステルの製造方法であって、工程(A)における芳香族ジカルボン酸化合物の使用量が、式(II):
80-0.15B≦A≦100-0.2B (II)
〔式中、Aは、2価のアルコール成分100モルに対する芳香族ジカルボン酸化合物の使用量(モル)、Bは、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物中のビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物の含有量(モル%)である〕
を満足する、トナー用ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
芳香族ジカルボン酸化合物がテレフタル酸及び/又はイソフタル酸である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法により得られるポリエステルを含有してなる電子写真用トナー。

【公開番号】特開2007−121454(P2007−121454A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310356(P2005−310356)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】