説明

トナー用ポリエステル樹脂、トナー、現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び、画像形成方法

【課題】低温定着性に優れるトナーの製造に供されるトナー用ポリエステル樹脂の提供。
【解決手段】ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位とアルコール成分由来の繰り返し単位とを含み、前記ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位全体に占める直鎖脂肪族ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位の割合が、50モル%以上100モル%以下であり、前記アルコール成分由来の繰り返し単位として、ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位を少なくとも含むトナー用ポリエステル樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー用ポリエステル樹脂、トナー、現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法のように、静電潜像を形成し、これを現像する工程を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されている。この方法による画像の形成は、感光体(潜像保持体)表面を全体に帯電させた後、この感光体表面に、画像情報に応じたレーザ光により露光して静電潜像を形成し、次いでこの静電潜像を、トナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成し、最後にこのトナー像を記録媒体表面に転写・定着することにより行われる。
【0003】
ホットオフセットが起こりにくく、且つ、低温定着性に優れるヒートロール定着方式用の電子写真トナーを好適に得ることができる電子写真トナー用樹脂組成物を提供するため、ロジン(R)とエポキシ基含有化合物(E)との反応生成物(P)と結着用樹脂(Q)とを含有することを特徴とする電子写真トナー用樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、低温定着性及び保存性に優れ、臭気の発生も低減されるトナー用ポリエステルを提供するため、アルコール成分と、精製ロジンを含有したカルボン酸成分とを重縮合させて得られるトナー用ポリエステルが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4505738号明細書
【特許文献2】特開2007−137910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低温定着性に優れるトナーの製造に供されるトナー用ポリエステル樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
即ち、請求項1に係る発明は、
ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位とアルコール成分由来の繰り返し単位とを含み、
前記ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位全体に占める直鎖脂肪族ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位の割合が、50モル%以上100モル%以下であり、
前記アルコール成分由来の繰り返し単位として、ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位を少なくとも含むトナー用ポリエステル樹脂である。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記アルコール成分由来の繰り返し単位全体に占める前記ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の割合が、50モル%以上100モル%以下である請求項1に記載のトナー用ポリエステル樹脂である。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の元となるアルコール成分が、ジオールである請求項1又は請求項2に記載のトナー用ポリエステル樹脂である。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の元となるアルコール成分が、2官能エポキシ化合物とロジンとの反応生成物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトナー用ポリエステル樹脂である。
【0011】
請求項5に係る発明は、
前記ロジン残基の元となるロジンが、精製ロジンである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトナー用ポリエステル樹脂である。
【0012】
請求項6に係る発明は、
前記ロジン残基の元となるロジンが、不均化処理をされた不均化ロジン及び水素添加処理をされた水素化ロジンの少なくとも一種である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトナー用ポリエステル樹脂である。
【0013】
請求項7に係る発明は、
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のトナー用ポリエステル樹脂を含むトナーである。
【0014】
請求項8に係る発明は、
請求項7に記載のトナーを含む現像剤である。
【0015】
請求項9に係る発明は、
請求項7に記載のトナーを収納し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。
【0016】
請求項10に係る発明は、
請求項8に記載の現像剤を収納し、潜像保持体表面に形成された静電潜像を前記現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0017】
請求項11に係る発明は、
潜像保持体と、前記潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を請求項8に記載の現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、を備える画像形成装置である。
【0018】
請求項12に係る発明は、
潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を請求項8に記載の現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、直鎖脂肪族ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位の割合が50モル%未満であるか、又は、アルコール成分由来の繰り返し単位としてロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位を含まない場合に比較して、低温定着性に優れるトナーの製造に供されるトナー用ポリエステル樹脂が提供される。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の割合が50モル%未満である場合に比較して、低温定着性にさらに優れるトナーの製造に供されるトナー用ポリエステル樹脂が提供される。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の元となるアルコール成分がジオールでない場合に比較して、樹脂中のロジン含有率を高くできることから帯電性に優れるトナーの製造に供されるトナー用ポリエステル樹脂が提供される。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の元となるアルコール成分が2官能エポキシ化合物とロジンとの反応生成物ではない場合に比較して、帯電性に優れるトナーの製造に供されるトナー用ポリエステル樹脂が提供される。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、ロジン残基の元となるロジンが精製ロジンではない場合に比較して、分子量制御(製造性)に優れるトナーの製造に供されるトナー用ポリエステル樹脂が提供される。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、ロジン残基の元となるロジンが不均化処理をされた不均化ロジン及び水素添加処理をされた水素化ロジンのどちらでもない場合に比較して、分子量制御(製造性)に優れるトナーの製造に供されるトナー用ポリエステル樹脂が提供される。
【0025】
請求項7に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、低温定着性に優れるトナーが得られる。
【0026】
請求項8に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、低温定着性に優れる現像剤が得られる。
【0027】
請求項9に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、低温定着性に優れるトナーを収納するトナーカートリッジが得られる。
【0028】
請求項10に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、低温定着性に優れる現像剤の取り扱いを容易にし、種々の構成の画像形成装置への適応性を高められる。
【0029】
請求項11に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、低温定着性に優れる現像剤を用いた画像形成装置が提供される。
【0030】
請求項12に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、低温定着性に優れる現像剤を用いた画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態のトナーの製造に用いるスクリュー押出機の一例について、スクリューの状態を説明する図である。
【図2】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明のトナー用ポリエステル樹脂、トナー、現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び、画像形成方法の実施形態について詳細に説明する。
【0033】
<トナー用ポリエステル樹脂>
本実施形態のトナー用ポリエステル樹脂(以下、特定ポリエステルと称することがある)は、ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位とアルコール成分由来の繰り返し単位とを含み、前記ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位全体に占める直鎖脂肪族ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位の割合が、50モル%以上100モル%以下であり、前記アルコール成分由来の繰り返し単位として、ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位を少なくとも含むものである。
【0034】
ロジンの特徴として、嵩高い構造及び疎水性が高い性質のため、含水しにくいことが挙げられる。
ここで、特許4505738号明細書に記載の電子写真トナー用樹脂組成物は、ロジン(R)とエポキシ基含有化合物(E)との反応生成物(P)と結着用樹脂(Q)とを含有するが、該反応生成物(P)は、ロジン(R)由来のカルボン酸とエポキシ基含有化合物(E)由来のエポキシ基との反応により、その分子中に水酸基を含む。電子写真トナー用樹脂組成物中に含まれる水酸基の量が多いとトナーの帯電性に悪影響を与えるおそれがあるため、電子写真トナー用樹脂組成物中に含有できる反応生成物(P)の量は制限される。すると、電子写真トナー用樹脂組成物中に十分なロジン残基を存在させることが困難な場合があり、特許4505738号明細書に記載の電子写真トナー用樹脂組成物を用いたとしても、ロジン残基由来の効果を享受できないことがある。
また、特開2007−137910号公報に記載のトナー用ポリエステルは、アルコール成分と、精製ロジンを含有したカルボン酸成分とを重縮合させて得られる。しかし、ロジンに含まれるカルボン酸は3級カルボン酸であるため低反応性であり、アルコール成分とロジンとの間でエステル化反応が起こりにくく樹脂中に未反応のロジンが残留しやすい。その結果、トナー用ポリエステル中に水分が取り込まれやすくなり、該トナー用ポリエステルを含むトナーの帯電性が悪化することがある。
【0035】
本実施形態の特定ポリエステルを含むトナーは、帯電性に優れる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
本実施形態の特定ポリエステルは、ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位を含有する。ロジン残基の元となるロジンは、嵩高い構造を有し、且つ、疎水性が高い性質のため、ロジン残基を含む本実施形態の特定ポリエステルは含水しにくい。それに加えて、ポリエステル樹脂の構造上、樹脂分子の末端にのみ水酸基又はカルボキシル基が存在するため、トナーの帯電性に悪影響を与えるおそれのある水酸基又はカルボキシル基の量を増やすことなく樹脂中のロジン残基の量を増やすことができる。さらに、ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の元となるアルコール成分をロジンと2官能エポキシ化合物とを反応させて得る場合に、2官能エポキシ化合物中のエポキシ基とロジン中のカルボキシル基との間で生ずるエポキシ基の開環反応は、アルコール成分とロジンとの間で生ずるエステル化反応よりも反応性が高いため、本実施形態の特定ポリエステル中に未反応のロジンが残留しにくい。そのため、本実施形態の特定ポリエステルを含むトナーは、帯電性に優れるものと推察される。
【0036】
また、熱保管性を満たしながらトナーの低温定着性を得る場合、樹脂のガラス転移温度と樹脂の溶融粘度のバランスが重要であり、高ガラス転移温度でかつ低粘度の樹脂をトナーの結着樹脂として用いることが望ましい。
ロジン残基を含有するアルコール成分を用い、かつロジン残基を含有するアルコール成分と脂肪族ジオールを併用して用いたポリエステル樹脂を用いた場合、酸モノマーにテレフタル酸或いはイソフタル酸を用いて樹脂のガラス転移温度を予め定められた値に調製するが、上記バランスは必ずしも良くない。ロジン残基を含有するアルコール成分を用いながら上記バランスを良くするには、脂肪族ジオールを用いないかわりに酸モノマーに直鎖脂肪族ジカルボン酸を用いることが肝要である。
ジカルボン酸成分(酸モノマー)に直鎖脂肪族ジカルボン酸を主に用い、アルコール成分(アルコールモノマー)にロジン残基を含有するアルコール成分を主に用いて構成するポリエルテルはシャープメルト性に優れ、このポリエステル樹脂を結着樹脂に用いたトナーの低温定着性が良好となる。その理由は明確ではないが以下のように推察される。
ロジン自体がガラス転移温度(40℃以上50℃以下)を示す硬い成分であることから、樹脂中にロジン由来の残基を多く含むことにより、樹脂の耐熱性(対ブロッキング性)を高めることができる。一方、加熱されるとロジン以外の樹脂成分(直鎖脂肪族カルボン酸他)も流動するようになるので、樹脂全体として流動する。本実施形態でいうシャープメルト性とは、耐熱性を示す上限温度と流動する温度の差が小さいことをいう。今回の樹脂は耐熱性を示す上限温度側を高めることからシャープメルト性を示すと考えられる。
なお、本実施形態において「低温定着」とは、トナーを130℃以下で加熱して定着させることをいう。
【0037】
以下に、本実施形態の特定ポリエステルの合成スキームの一例を示す。下記合成スキームにおいては、2官能のエポキシ化合物とロジンとを反応させてロジン残基を含有するアルコール成分が合成され、このロジン残基を含有するアルコール成分とジカルボン酸成分とを脱水重縮合させることで本実施形態の特定ポリエステルが合成される。なお、特定ポリエステルを表す構造式のうち、点線で囲まれた部分が本実施形態のロジン残基に該当する。
【0038】
【化1】



【0039】
なお、本実施形態の特定ポリエステルを加水分解すると下記モノマーに分解する。ポリエステルはジカルボン酸とジオールの1:1縮合物なので、分解物から樹脂の構成成分を推定することができる。
【0040】
【化2】

【0041】
また、2官能のエポキシ化合物とロジンとを反応させてロジン残基を含有するアルコール成分を合成する場合、エポキシ化合物は製造工程上塩素を含有することから、本実施形態の特定ポリエステル中に塩素を含有していれば、エポキシ化合物を経て本実施形態の特定ポリエステルが調製されたものと推定することができる。
【0042】
本実施形態の特定ポリエステルは、アルコール成分由来の繰り返し単位として、ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位を少なくとも含む。ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の元となるアルコール成分については特に限定されるものではないが、樹脂中にロジン残基を多く含有させる観点からジオールであることが好ましい。
ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の元となるアルコール成分としては、例えば、2官能エポキシ化合物とロジンとの反応生成物が挙げられ、特に、下記一般式(1)で表されるアルコール成分が好ましい。
【0043】
【化3】



【0044】
一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素、又はメチル基を表わす。RとRとは、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが望ましい。L、L、Lはそれぞれ独立にカルボニル基、エステル基、エーテル基、スルホニル基、置換基を有しても良い鎖状アルキレン基、置換基を有しても良い環状アルキレン基、置換基を有しても良いアリーレン基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、LとL又はLとLで環を形成しても良い。LとLとは、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが望ましい。A、Aはロジン残基を表わす。
【0045】
一般式(1)で表されるジアルコール成分は、1分子中に2個のロジン残基を含有するジアルコール化合物である(以下、特定ロジンジオールと称することがある)。一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素、又はメチル基を表わす。A、Aはロジン残基を表す。本実施形態において、ロジン残基とは、ロジンに含まれるカルボキシル基から水素原子を除いた残基をいう。
【0046】
一般式(1)において、L、L、Lで表される鎖状アルキレン基としては、例えば、炭素数1以上10以下のアルキレン基が挙げられる。
【0047】
一般式(1)において、L、L、Lで表される環状アルキレン基としては、例えば、炭素数3以上7以下の環状アルキレン基が挙げられる。
【0048】
一般式(1)において、L、L、Lで表されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセン基が挙げられる。
【0049】
鎖状アルキレン基、環状アルキレン基、アリーレン基の置換基の例としては炭素数1以上8以下のアルキル基、アリール基などが挙げられ、直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。
【0050】
本実施形態で用いられる特定ロジンジオールは、ロジンと2官能エポキシ化合物を反応させて得られてもよい。ロジンと2官能エポキシ化合物との反応は、主としてロジンのカルボキシル基と2官能エポキシ化合物のエポキシ基との開環反応により進む。その際、反応温度としては両構成成分の融解温度以上、及び/又は均一な混合が可能な温度であることが好ましく、具体的には60℃以上200℃以下の範囲が一般的である。反応に際し、エポキシ基の開環反応を促進する触媒を加えてもよい。
【0051】
使用できる触媒としては、エチレンジアミン、トリメチルアミン、2−メチルイミダゾールなどのアミン類、トリエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルアンモニウムクロライド、ブチルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィンなどを挙げることができる。
【0052】
反応は種々の方法で行うことができ、一般的には回分式の場合は冷却管、撹拌装置、不活性ガス導入口、温度計等を備えた加熱可能なフラスコにロジンと2官能エポキシ化合物を仕込み、加熱溶融し反応物をサンプリングすることによって反応進行を追跡することができる。反応の進行度は主として酸価の低下によって確認することができ、化学量論的な反応終点に到達した時点をもって反応を完結することができる。
【0053】
ロジンと2官能エポキシ化合物との反応比率は、2官能エポキシ化合物1モルに対してロジンを1.5モル以上2.5モル以下の範囲で反応させることが好ましく、さらには2官能エポキシ化合物1モルに対してロジンを1.8モル以上2.2モル以下の範囲で反応させることがより好ましく、1.85モル以上2.1モル以下の範囲で反応させることが最も好ましい。ロジンが1.5モルよりも少ないと、2官能エポキシ化合物のエポキシ基が次工程のポリエステル製造工程で残存することとなり、架橋剤としての作用により分子量上昇を引き起こし、ゲル化の懸念がある。一方、ロジンが2.5モルよりも多いと未反応のロジンが残存し、酸価上昇による帯電悪化を引き起こすことがある。
【0054】
本実施形態で用いるロジンとは樹木から得られる樹脂酸の総称であり、主成分は3環性ジテルペン類の1種であるアビエチン酸とその異性体類を含む天然物由来の物質である。具体的な成分としては、例えば、アビエチン酸の他にパラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸などがあり、本実施形態で用いるロジンはこれらの混合物である。ロジンは採取方法による分類では、原料をパルプとするトールロジン、原料を生松脂とするガムロジン、及び原料を松の切り株とするウッドロジンの3種に大別される。本実施形態で用いるロジンは入手が容易であることからガムロジン及びトールロジンの少なくとも一方が好ましい。
【0055】
これらのロジン類は精製することが好ましく、未精製のロジン類から樹脂酸の過酸化物から生起したと考えられる高分子量物や、未精製のロジン類に含まれていた不ケン化物を除去することにより精製ロジンを得ることができる。精製方法は特に限定されず、公知の各種精製方法を選択できる。具体的には蒸留、再結晶、抽出等の方法が挙げられる。工業的には蒸留による精製を行うことが好ましい。蒸留は、通常、200℃以上300℃以下、6.67kPa以下の圧力で蒸留時間を考慮して選択される。再結晶は、例えば、未精製ロジンを良溶媒に溶解し、ついで溶媒を留去して濃厚な溶液とし、この溶液に貧溶媒を添加することにより行う。良溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、クロロホルムなどの塩素化炭化水素類、低級アルコール等のアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどの酢酸エステル類等が挙げられ、貧溶媒としてはn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、イソオクタン等の炭化水素系溶媒が挙げられる。抽出は、例えば、アルカリ水を用いて未精製のロジンをアルカリ水溶液となし、これに含まれる不溶性の不ケン化物を、有機溶媒を用いて抽出したのち、水層を中和することで精製ロジンを得る方法である。
【0056】
本実施形態のロジンは、不均化処理をされた不均化ロジンでも良い。不均化ロジンとは、主成分としてアビエチン酸を含むロジンを不均化触媒の存在下で高温加熱することによって、分子内の不安定な共役二重結合を消失させたもので、主成分として、デヒドロアビエチン酸とジヒドロアビエチン酸との混合物である。
不均化触媒としては、パラジウムカーボン、ロジウムカーボン、白金カーボンなどの触媒、ニッケル、白金等の金属粉末、ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ化物、リン系化合物等の各種公知のものが挙げられる。該触媒の使用量はロジンに対して通常0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.01質量%以上1質量%以下であり、反応温度は100℃以上300℃以下が好ましく、さらに好ましくは150℃以上290℃以下である。なおデヒドロアビエチン酸量を制御する方法としては例えば、不均化ロジンからエタノールアミン塩として結晶化する方法(J.Org.Chem.,31,4246(1996))により単離したデヒドロアビエチン酸を狙いとするデヒドロアビエチン酸量になるように不均化触媒の存在下で高温加熱して調製した不均化ロジンに添加しても良い。
【0057】
本実施形態のロジンは水素添加処理をされた水素化ロジンでも良い。水素化ロジンとは、主成分としてテトラヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸を含み、公知の水素化反応により分子内の不安定な共役二重結合を消失させて得ることができる。水素化反応は水素化触媒の存在下に通常10Kg/cm2以上200Kg/cm2以下、好ましくは50Kg/cm2以上150Kg/cm2以下の水素加圧下で、未精製ロジンを加熱することにより行なう。水素化触媒としては、パラジウムカーボン、ロジウムカーボン、白金カーボンなどの触媒、ニッケル、白金等の金属粉末、ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ化物等の各種公知のものを例示しうる。該触媒の使用量は、ロジンに対して通常0.01質量%以上5質量%以下、好ましくは0.01質量%以上1.0質量%以下であり、反応温度は100℃以上300℃以下、好ましくは150℃以上290℃以下である。
これらの不均化ロジン、水素化ロジンは、不均化処理、又は水素化処理の前後において、上記精製工程を設けても良い。
【0058】
また、本実施形態のロジンはロジンを重合して得られる重合ロジン、ロジンに不飽和カルボン酸を付加させた不飽和カルボン酸変性ロジン、フェノール変性ロジンでも良い。なお、不飽和カルボン酸変性ロジンの調製に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。当該不飽和カルボン酸変性ロジンは、原料ロジン100質量部に対し、不飽和カルボン酸を通常1質量部以上30質量部以下程度用いて変性したものである。
【0059】
本実施形態におけるロジンは上記ロジンのうち上記精製ロジン、不均化ロジン、水素化ロジンが好ましく、これらを単独で用いても、いずれかの混合物でも良い。
【0060】
本実施形態で用いる2官能エポキシ化合物としては、例えば、芳香族系ジオールのジグリシジルエーテル、芳香族ジカルボン酸のジグリシジルエーテル、脂肪族系ジオールのグリシジルエーテル、脂環式ジオールのグリシジルエーテル、脂環式エポキシド等が挙げられる。
【0061】
芳香族系ジオールのジグリシジルエーテルの代表例としては芳香族ジオール成分としてビスフェノールA、ビスフェノールAのポリアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノールAの誘導体類、ビスフェノールF、ビスフェノールFのポリアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノールFの誘導体類、ビスフェノールS、ビスフェノールSのポリアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノールSの誘導体類、レソルシノール、t-ブチルカテコール、ビフェノールなどが挙げられる。
【0062】
芳香族ジカルボン酸のジグリシジルエーテルの代表例としては、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸などが挙げられる。
【0063】
脂肪族ジオールのジグリシジルエーテルの代表例としては脂肪族ジオール成分としてエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0064】
脂環式ジオールのグリシジルエーテルの代表例として脂環式ジオール成分として水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのポリアルキレンオキサイド付加物等の水添ビスフェノールAの誘導体類、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0065】
脂環式エポキシドの代表例としてはリモネンジオキサイドが挙げられる。
【0066】
上記エポキシ化合物は例えば、ジオール成分とエピハロヒドリンの反応で得ることができるが、その量比によって重縮合させることができ高分子量化することもできる。
【0067】
以下に、本実施形態で好適に用いうる特定ロジンジオールの例示化合物を以下に示すが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0068】
【化4】



【0069】
【化5】



【0070】
【化6】



【0071】
【化7】



【0072】
【化8】



【0073】
【化9】



【0074】
【化10】



【0075】
なお、上記特定ロジンジオールの例示化合物において、nは1以上の整数を表す。
【0076】
本実施形態の特定ポリエステルにおいて、アルコール成分由来の繰り返し単位全体に占めるロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の割合は、50モル%以上100モル%以下が好ましく、70モル%以上90モル%以下がさらに好ましい。
【0077】
本実施形態において使用可能な、ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の元となるアルコール成分以外のその他のアルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類;が挙げられる。これら多価アルコールの1種又は2種以上用いることができる。これら多価アルコールの中、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。また良好なる定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
【0078】
本実施形態の特定ポリエステルにおいて、ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位全体に占める直鎖脂肪族ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位の割合が、50モル%以上100モル%以下とされる。直鎖脂肪族ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位の割合は、60モル%以上100モル%以下が好ましく、70モル%以上100モル%以下がさらに好ましい。
【0079】
ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位の元となるジカルボン酸成分としては、ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、分岐鎖を有する炭素数1以上20以下のアルキルコハク酸、分岐鎖を有する炭素数1以上20以下のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;それらの酸の無水物及び、それらの酸のアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられる。
【0080】
本実施形態において、望ましい直鎖脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸が挙げられる。
【0081】
本実施形態の特定ポリエステルはジカルボン酸成分由来の繰り返し単位とアルコール成分由来の繰り返し単位とを含むものであり、上述したアルコール成分とジカルボン酸成分とを縮重合させて得られる。
本実施形態の特定ポリエステルは、上述したアルコール成分とジカルボン酸成分を原料として、公知慣用の製造方法によって調製され、その反応方法としては、エステル交換反応又は直接エステル化反応のいずれも適用可能である。また、加圧して反応温度を高くする方法、減圧法又は常圧下で不活性ガスを流す方法によって重縮合を促進することもできる。上記反応によっては、アンチモン、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム及びマンガンより選ばれる少なくとも1種の金属化合物等、公知慣用の反応触媒が用いられ、反応が促進されてもよい。これら反応触媒の添加量はアルコール成分とジカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01質量部以上1.5重量部以下が好ましく、0.05質量部以上1.0重量部以下がより好ましい。反応は180℃以上300℃以下の温度で行うことができる。
【0082】
トナーの定着性、保存性、及び耐久性の観点から、本実施形態の特定ポリエステルの軟化温度は80℃以上160℃以下が好ましく、90℃以上150℃以下がより好ましい。本実施形態の特定ポリエステルのガラス転移温度は、定着性、保存性、及び耐久性の観点から35℃以上80℃以下が好ましく、40℃以上70℃以下がより好ましい。軟化温度及びガラス転移温度は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整、又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
【0083】
本実施形態の特定ポリエステルの酸価は、トナーの帯電性の観点から1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下が好ましく、3mgKOH/g以上30mgKOH/g以下がより好ましく、9mgKOH/g以上21mgKOH/g以下が特に好ましい。
トナーの耐久性、耐ホットオフセットの観点から、本実施形態の特定ポリエステルの重量平均分子量は4,000以上1,000,000以下が好ましく、7,000以上300,000以下がより好ましい。
【0084】
なお、本実施形態の特定ポリエステルは、変性されたポリエステルであっても良い。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルを包含する。
【0085】
<トナー>
本実施形態のトナーは、本実施形態の特定ポリエステルを含有し、必要に応じて着色剤、離型剤、外添剤等のその他の成分を含んでもよい。
本実施形態の特定ポリエステルをトナー用結着樹脂として用いることにより、低温定着性に優れたトナーを得ることができる。本実施形態のトナーには、本実施形態の効果を損なわない範囲で、公知の結着樹脂、例えば、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、特定ポリエステル以外のポリエステル等の他の樹脂が併用されても良いが、本実施形態の特定ポリエステルの含有量は、結着樹脂中、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%であることがさらに好ましい。
【0086】
また、本実施形態のトナーには、必要に応じて結晶性ポリエステル樹脂を含有させてもよい。結晶性ポリエステル樹脂は溶融時に本実施形態の特定ポリエステルと相溶してトナー粘度を著しく低下させることから、より低温定着性にすぐれたトナーを得ることができる。また結晶性ポリエステル樹脂のうち、芳香族結晶性樹脂は一般に後述の融解温度範囲よりも高いものが多いため、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0087】
結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、トナー粒子に対して2質量%以上30質量%以下が好ましく、4質量%以上25質量%以下がより好ましい。2質量%以上あれば、溶融時に非結晶性ポリエステル樹脂を低粘度化することができ、低温定着性の向上が得られ易い。また30質量%以下であれば、結晶性ポリエステル樹脂の存在に起因するトナーの帯電性の悪化が防止されるので、記録媒体への定着後の画像強度が得られ易い。
【0088】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上90℃以下の範囲であることが好ましく、55℃以上90℃以下の範囲であることが好ましく、60℃以上90℃以下の範囲であることがより好ましい。融解温度が50℃以上あれば、トナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性がよい。また、90℃以下であれば、低温定着性が向上する。
【0089】
なお、本実施形態の「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry;以下、「DSC」と略記することがある)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。また、結晶性ポリエステル樹脂は、その主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合は、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0090】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、下記において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂において、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。
【0091】
〔酸由来構成成分〕
前記酸由来構成成分となるための酸としては、種々のジカルボン酸が挙げられるが本実施形態の結晶性ポリエステル樹脂における酸由来構成成分としては、直鎖型の脂肪族ジカルボン酸が望ましい。
例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性を考慮するとアジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
【0092】
酸由来構成成分としては、その他として2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分を含有していてもよい。
【0093】
〔アルコール由来構成成分〕
アルコール構成成分となるためのアルコールとしては、脂肪族ジオールが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性やコストを考慮すると1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0094】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量(重量平均分子量;Mw)は、樹脂の製造性、トナー製造時の微分散化や、溶融時の相溶性の観点から、8,000以上40,000以下が好ましく、10,000以上30,000以下がさらに好ましい。8,000以上あれば、結晶性ポリエステル樹脂の抵抗の低下が抑制されるので、帯電性の低下が防止される。40,000以下であれば、樹脂合成のコストが抑えられ、また、シャープメルト性の低下が防止されるために低温定着性に悪影響を与えない。
【0095】
本実施形態で用いられる着色剤としては、染料であっても顔料であってもかまわないが、耐光性や耐水性の観点から顔料が望ましい。
望ましい着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、キナクリドン、ベンジシンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド185、C.I.ピグメント・レッド238、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の公知の顔料を使用してもよい。
【0096】
本実施形態のトナーにおける前記着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下の範囲が望ましい。また、必要に応じて表面処理された着色剤を使用したり、顔料分散剤を使用したりすることも有効である。前記着色剤の種類を選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等が得られる。
【0097】
本実施形態で用いられる離型剤としては、例えば、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン等のパラフィンワックス;シリコーン樹脂;ロジン類;ライスワックス;カルナバワックス;等が挙げられる。これらの離型剤の融解温度は、50℃以上100℃以下が望ましく、60℃以上95℃以下がより望ましい。離型剤のトナー中の含有量は0.5質量%以上15質量%以下が望ましく、1.0質量%以上12質量%以下がより望ましい。離型剤の含有量が0.5質量%以上であれば、特にオイルレス定着において剥離不良の発生が防止される。離型剤の含有量が15質量%以下であれば、トナーの流動性が悪化することがなく、画質および画像形成の信頼性が向上する。
【0098】
本実施形態で用いられる帯電制御剤としては、公知のものを使用してもよいが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いてもよい。
【0099】
本実施形態のトナーは、流動性の向上などを目的として、白色の無機粉末を外添剤として含有してもよい。適当な無機粉末としては、例えば、シリカ粉末、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化硅素、窒化硅素などが挙げられるが、シリカ粉末が特に望ましい。かかる無機粉末のトナーに混合される割合は、通常、トナー100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下の範囲であり、望ましくは0.01質量部以上2.0質量部以下の範囲である。また、かかる無機粉末に、シリカ、チタン、樹脂粒子(ポリスチレン、PMMA、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、アルミナ等の公知の材料を併用してもよい。また、クリーニング活剤として、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子粉末を添加してもよい。
【0100】
−トナーの特性−
本実施形態のトナーの形状係数SF1は110以上150以下の範囲であることが望ましく、120以上140以下の範囲であることがより望ましい。
【0101】
ここで上記形状係数SF1は、下記式(1)により求められる。
SF1=(ML/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
上記式(1)中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
【0102】
SF1は、主に顕微鏡画像または走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式(1)によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0103】
本実施形態のトナーの体積平均粒子径は3μm以上15μm以下の範囲であることが望ましく、より望ましくは4μm以上10μm以下の範囲であり、さらに望ましくは5μm以上8μm以下の範囲である。
【0104】
なお、上記体積平均粒子径の測定は、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で行われる。この際、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行った。
【0105】
本実施形態のトナーの製造方法は特に限定されず、公知である混練粉砕法等の乾式法や、乳化凝集法や懸濁重合法等の湿式法等によってトナー粒子を作製し、必要に応じてトナー粒子に外添剤が外添されてトナーが得られる。
【0106】
混練粉砕法は、結着樹脂を含むトナー形成材料を混錬して混錬物を得た後、前記混錬物を粉砕することによりトナー粒子を作製する方法である。
混練粉砕法は、より詳細には、結着樹脂を含むトナー形成材料を混錬する混錬工程と、前記混錬物を粉砕する粉砕工程とに分けられる。必要に応じて、混錬工程により形成された混錬物を冷却する冷却工程等、他の工程を有してもよい。
各工程について詳しく説明する。
【0107】
−混錬工程−
混錬工程は、結着樹脂を含むトナー形成材料を混錬する。
混錬工程においては、トナー形成材料100質量部に対し、0.5質量部以上5質量部以下の水系媒体(例えば、蒸留水やイオン交換水等の水、アルコール類等)を添加することが望ましい。
【0108】
混錬工程に用いられる混錬機としては、例えば、1軸押出し機、2軸押出し機等が挙げられる。以下、混錬機の一例として、送りスクリュー部と2箇所のニーディング部とを有する混錬機について図を用いて説明するが、これに限られるわけではない。
【0109】
図1は、本実施形態のトナーの製造方法における混錬工程で用いるスクリュー押出機の一例について、スクリューの状態を説明する図である。
スクリュー押出し機11は、スクリュー(図示せず)を備えたバレル12と、バレル12にトナーの原料であるトナー形成材料を注入する注入口14と、バレル12中のトナー形成材料に水系媒体を添加するための液体添加口16と、バレル12中でトナー形成材料が混錬されて形成された混錬物を排出する排出口18と、から構成されている。
【0110】
バレル12は、注入口14に近いほうから順に、注入口14から注入されたトナー形成材料をニーディング部NAに輸送する送りスクリュー部SA、トナー形成材料を第1の混錬工程により溶融混錬するためのニーディング部NA、ニーディング部NAにおいて溶融混錬されたトナー形成材料をニーディング部NBに輸送する送りスクリュー部SB、トナー形成材料を第2の混錬工程により溶融混錬し混錬物を形成するニーディング部NB、及び形成された混錬物を排出口18に輸送する送りスクリュー部SCに分かれている。
【0111】
またバレル12の内部には、ブロックごとに異なる温度制御手段(図示せず)が備えられている。すなわち、ブロック12Aからブロック12Jまで、それぞれ異なる温度に制御してもよい構成となっている。なお図1は、ブロック12A及びブロック12Bの温度をt0℃に、ブロック12Cからブロック12Eの温度をt1℃に、ブロック12Fからブロック12Jの温度をt2℃に、それぞれ制御している状態を示している。そのため、ニーディング部NAのトナー形成材料はt1℃に加熱され、ニーディング部NBのトナー形成材料はt2℃に加熱される。
【0112】
結着樹脂を含むトナー形成材料を、注入口14からバレル12へ供給すると、送りスクリュー部SAによりニーディング部NAへトナー形成材料が送られる。このとき、ブロック12Cの温度がt1℃に設定されているため、トナー形成材料は加熱されて溶融状態へと変化した状態で、ニーディング部NAに送り込まれる。そして、ブロック12D及びブロック12Eの温度もt1℃に設定されているため、ニーディング部NAではt1℃の温度でトナー形成材料が溶融混錬される。結着樹脂は、ニーディング部NAにおいて溶融状態となり、スクリューによりせん断を受ける。
【0113】
次に、ニーディング部NAにおける混錬を経たトナー形成材料は、送りスクリュー部SBによりニーディング部NBへと送られる。
ついで、送りスクリュー部SBにおいて、液体添加口16からバレル12に水系媒体を注入することにより、トナー形成材料に水系媒体を添加する。また図1では、送りスクリュー部SBにおいて水系媒体を注入する形態を示しているが、これに限られず、ニーディング部NBにおいて水系媒体が注入されてもよく、送りスクリュー部SB及びニーディング部NBの両方において水系媒体が注入されてもよい。すなわち、水系媒体を注入する位置及び注入箇所は、必要に応じて選択される。
【0114】
上記のように、液体添加口16からバレル12に水系媒体が注入されることにより、バレル12中のトナー形成材料と水系媒体とが混合し、水系媒体の蒸発潜熱によりトナー形成材料が冷却され、トナー形成材料の温度が適切に保たれる。
最後に、ニーディング部NBにより溶融混錬されて形成された混錬物は、送りスクリュー部SCにより排出口18に輸送され、排出口18から排出される。
以上のようにして、図1に示したスクリュー押出機11を用いた混錬工程が行われる。
【0115】
−冷却工程−
冷却工程は、上記混錬工程において形成された混錬物を冷却する工程であり、冷却工程では、混錬工程終了の際における混錬物の温度から4℃/sec以上の平均降温速度で40℃以下まで冷却することが好ましい。上記平均降温速度で急冷すると、混錬工程終了直後の分散状態がそのまま保たれるため好ましい。なお上記平均降温速度とは、混錬工程終了の際における混錬物の温度(例えば図1のスクリュー押出し機11を用いた場合は、t2℃)から40℃まで降温させる速度の平均値をいう。
冷却工程における冷却方法としては、具体的には、例えば、冷水又はブラインを循環させた圧延ロール及び挟み込み式冷却ベルト等を用いる方法が挙げられる。なお、前記方法により冷却を行う場合、その冷却速度は、圧延ロールの速度、ブラインの流量、混錬物の供給量、混錬物の圧延時のスラブ厚等で決定される。スラブ厚は、1から3mmの薄さであることが好ましい。
【0116】
−粉砕工程−
冷却工程により冷却された混錬物は、粉砕工程により粉砕され、粒子が形成される。粉砕工程では、例えば、機械式粉砕機、ジェット式粉砕機等が使用される。
【0117】
−分級工程−
粉砕工程により得られた粒子は、必要に応じて、目的とする範囲の体積平均粒子径のトナー粒子を得るため、分級工程により分級を行ってもよい。分級工程においては、従来から使用されている遠心式分級機、慣性式分級機等が使用され、微粉(目的とする範囲の粒径よりも小さい粒子)及び粗粉(目的とする範囲の粒径よりも大きい粒子)が除去される。
【0118】
−外添工程−
得られたトナー粒子は、帯電調整、流動性付与、電荷交換性付与等を目的として、既述の特定シリカ、チタニア、酸化アルミに代表される無機粉末を添加付着してもよい。これらは、例えばV型ブレンダーやヘンシェルミキサー、レディゲミキサー等によって行われ、段階を分けて付着される。
【0119】
−篩分工程−
上記外添工程の後に、必要に応じて篩分工程を設けてもよい。篩分方法としては、具体的には、例えば、ジャイロシフター、振動篩分機、風力篩分機等が挙げられる。篩分することにより、外添剤の粗粉等が取り除かれ、感光体上の筋の発生、装置内のぼた汚れなどが抑制される。
【0120】
本実施形態のトナーは乳化凝集法を利用して作製されてもよい。ここで、トナーの作製に際しては、トナーを構成する各材料を水系分散液に分散させた分散液(樹脂粒子分散液等)を準備する(乳化工程)。続いて、樹脂粒子分散液や、その他必要に応じて用いられる各種の分散液(着色剤分散液や離型剤分散液等)を混合して原料分散液を準備する。
次に、原料分散液中で、凝集粒子を形成する凝集粒子形成工程と、凝集粒子を融合する融合工程とを経て、トナー粒子を得る。なお、コア粒子と、このコア粒子を被覆するシェル層とを有するいわゆるコアシェル構造型のトナーを作製する場合には、凝集粒子形成工程を終えた後の原料分散液に、樹脂粒子分散液を添加して(トナー化した際にコア粒子となる)凝集粒子表面に樹脂粒子を付着させて(トナー化した際にシェル層となる)被覆層を形成する被覆層形成工程を実施し、その後に融合工程を実施する。なお、被覆層形成工程に用いる樹脂成分は、コア粒子を構成する樹脂成分と同一であっても異なっていてもよいが、通常は、非晶性樹脂が用いられる。
【0121】
以下、各工程について詳細に説明する。
−乳化工程−
凝集粒子形成工程に用いる原料分散液を準備するために、乳化工程では、トナーを構成する主要な材料を、水系媒体中に分散させた乳化分散液を調製する。以下、樹脂粒子分散液や、着色剤分散液、離型剤分散液等について説明する。
【0122】
−樹脂粒子分散液−
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径は、0.01μm以上1μm以下であってもよく、0.03μm以上0.8μm以下であってもよく、0.03μm以上0.6μmであってもよい。
樹脂粒子の体積平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られるトナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易くなる場合がある。一方、体積平均粒径が上記範囲内であれば前記欠点がない上、トナー間の組成偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。
【0123】
なお、樹脂粒子等、原料分散液中に含まれる粒子の体積平均粒径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定される。
【0124】
樹脂粒子分散液やその他の分散液に用いられる分散媒としては、水系媒体であってもよい。
前記水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本実施形態においては、前記水系媒体に界面活性剤を添加混合しておいてもよい。
【0125】
界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用されてもよい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0126】
なお、前記アニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。また、前記カチオン界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤等のイオン性界面活性剤が挙げられる。
【0127】
樹脂粒子が、ポリエステル樹脂である場合、中和によりアニオン型となり得る官能基を含有しているため自己水分散性をもっており、親水性となり得る官能基の一部又は全部が塩基で中和された、水性媒体の作用下で安定した水分散体を形成する。
【0128】
ポリエステル樹脂において中和により親水性基と成り得る官能基はカルボキシル基やスルホン酸基等の酸性基である為、中和剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンなどの有機塩基が挙げられる。
【0129】
ポリエステル樹脂を用いて樹脂粒子分散液を調製する場合は、転相乳化法を利用してもよい。なお、ポリエステル樹脂以外の結着樹脂を用いて樹脂粒子分散液を調製する場合にも転相乳化法を利用してもよい。転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散安定化する方法である。
【0130】
この転相乳化に用いられる有機溶剤としては例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が例示される。これらの溶剤は単一でも、また2種以上を併用して使用してもよい。
【0131】
転相乳化に用いる有機溶媒の溶媒量に関しては、樹脂の物性により所望の分散粒径を得るための溶媒量が異なるため、一概に決定することは困難である。しかし、本実施形態において、錫化合物触媒の樹脂中の含有量が通常のポリエステル樹脂に対して多量である場合、樹脂重量に対する溶媒量は比較的多くてもよい。溶媒量が少ない場合には乳化性が不十分となり、樹脂粒子の粒径の大径化や粒度分布のブロード化等が発生する場合がある。
【0132】
結着樹脂を水中に分散させる場合、必要に応じて樹脂中のカルボキシル基の一部または全部を中和剤によって中和してもよい。中和剤としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機アルカリ、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−nプロピルアミン、ジメチルn−プロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン等のアミン類等が挙げられ、これらから選ばれるところの1種または2種以上を使用してもよい。これらの中和剤を添加することによって、乳化の際のpHを中性に調節し、得られるポリエステル樹脂分散液の加水分解が防止される。
【0133】
また、この転相乳化の際に分散粒子の安定化や水系媒体の増粘防止を目的として、分散剤を添加してもよい。該分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムの等の水溶性高分子、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤、リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機化合物等が挙げられる。これらの分散剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。分散剤は、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下添加してもよい。
【0134】
転相乳化の際の乳化温度は、有機溶剤の沸点以下でかつ、結着樹脂の融解温度あるいはガラス転移温度以上であればよい。乳化温度が結着樹脂の融解温度あるいはガラス転移温度未満の場合、樹脂粒子分散液を調製することが困難となる。なお、有機溶剤の沸点以上で乳化する場合は、加圧密閉された装置で乳化を行えば良い。
【0135】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量は通常、5質量%以上50質量%以下であってもよく、10質量%以上40質量%以下であってもよい。含有量が前記範囲外にあると、樹脂粒子の粒度分布が広がり、特性が悪化する場合がある。
【0136】
−着色剤分散液−
着色剤分散液を調製する際の分散方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用してもよく、なんら制限されるものではない。必要に応じて、界面活性剤を使用して着色剤の水分散液を調製したり、分散剤を使用して着色剤の有機溶剤分散液を調製したりしてもよい。分散に用いる界面活性剤や分散剤としては、結着樹脂を分散させる際に用い得る分散剤と同様のものを用いてもよい。
【0137】
また、原料分散液を調製する際に、着色剤分散液は、その他の粒子を分散させた分散液と共に一度に混合してもよいし、分割して多段回で添加混合してもよい。
【0138】
着色剤分散液に含まれる着色剤の含有量は通常、5質量%以上50質量%以下であってもよく10質量%以上40質量%以下であってもよい。含有量が前記範囲外にあると、着色剤粒子の粒度分布が広がり、特性が悪化する場合がある。
【0139】
−離型剤分散液−
離型剤分散液は、ポリエステル樹脂以外の結着樹脂を乳化分散する場合と同様、離型剤を水中にイオン性界面活性剤等と共に分散し、離型剤の融解温度以上に加熱し、ホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて強い剪断力を印加することにより調製される。これにより、体積平均粒径が1μm以下の離型剤粒子を分散させる。また、離型剤分散液における分散媒としては、結着樹脂に用いる分散媒と同様のものを用いてもよい。
【0140】
なお、結着樹脂や着色剤等を分散媒と混合して、乳化分散させる装置としては、公知のものが利用でき、例えばホモミキサー(特殊機化工業株式会社)、あるいはスラッシャー(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホミジナイザー(ゴーリン社)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社)、スタティックミキサー(ノリタケカンパニー)などの連続式乳化分散機等が利用される。
【0141】
なお、目的に応じて、結着樹脂分散液に、既述した離型剤、内添剤、帯電制御剤、無機粉体等の成分を分散させておいても良い。
【0142】
また、結着樹脂、着色剤、離型剤以外のその他の成分の分散液を調製する場合、この分散液中に分散する粒子の体積平均粒径としては、通常1μm以下であればよく、0.01μm以上0.5μm以下であってもよい。体積平均粒径が1μmを超えると、最終的に得られるトナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招きやすくなる場合がある。一方、体積平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり性能や信頼性のばらつきが小さくなる点で有利である。
【0143】
−凝集粒子形成工程−
凝集粒子形成工程においては、樹脂粒子分散液の他に、通常は着色剤分散液及び離型剤分散液を加え、必要に応じて添加されるその他の分散液を少なくとも混合して得られた原料分散液に対して、凝集剤を更に添加して加熱し、これらの粒子を凝集させた凝集粒子を形成する。なお、樹脂粒子が結晶性ポリエステル等の結晶性樹脂である場合には、結晶性樹脂の融解温度付近(±20℃)の温度で、且つ、融解温度以下の温度にて加熱し、これらの粒子を凝集させた凝集粒子を形成する。
【0144】
凝集粒子の形成は、回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温で凝集剤を添加し、原料分散液のpHを酸性にすることによってなされる。また、加熱による急凝集を抑える為に、室温で攪拌混合している段階でpH調整を行ない、必要に応じて分散安定剤を添加してもよい。
なお、本実施形態において「室温」とは25℃をいう。
【0145】
凝集粒子形成工程に用いられる凝集剤は、原料分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、すなわち無機金属塩の他、2価以上の金属錯体が好適に用いられる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上する。
また、凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0146】
ここで、無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
【0147】
また、キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。非水溶性のキレート剤では、原料分散液中への分散性に乏しく、トナー中において凝集剤に起因する金属イオンの捕捉が充分になされなくなる場合がある。
【0148】
キレート剤としては、公知の水溶性キレート剤であれば特に限定されないが、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などのオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などを好適に用いてもよい。
【0149】
キレート剤の添加量としては、結着樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下の範囲内であってもよく、0.1質量部以上3.0質量部未満であってもよい。キレート剤の添加量が0.01質量部未満であるとキレート剤添加の効果が発現しなくなる場合がある。一方、5.0質量部を超えると、帯電性に悪影響を及ぼす他、トナーの粘弾性も劇的に変化するため、低温定着性や画像光沢性に悪影響を与える場合がある。
【0150】
なお、キレート剤は、凝集粒子形成工程や被覆層形成工程の実施中や実施前後において添加されるものであるが、添加に際して原料分散液の温度調整は必要なく、室温のまま加えてもよいし、凝集粒子形成工程や被覆層形成工程での槽内温度に調節した上で加えてもよい。
【0151】
−被覆層形成工程−
凝集粒子形成工程を経た後には、必要であれば被覆層形成工程を実施してもよい。被覆層形成工程では、上記した凝集粒子形成工程を経て形成された凝集粒子の表面に、被覆層形成用の樹脂粒子を付着させることにより被覆層を形成する。これにより、いわゆるコアシェル構造を有するトナーが得られる。
【0152】
被覆層の形成は、凝集粒子形成工程において凝集粒子(コア粒子)を形成した原料分散液中に、通常、非晶性樹脂粒子を含む樹脂粒子分散液を追添加することにより行われる。
【0153】
なお、被覆層形成工程を終えた後は、融合工程が実施されるが、被覆層形成工程と融合工程とを交互に繰り返し実施することにより、被覆層を多段階に分けて形成してもよい。
【0154】
−融合工程−
凝集粒子形成工程、あるいは、凝集粒子形成工程および被覆層形成工程を経た後に実施される融合工程では、これらの工程を経て形成された凝集粒子を含む懸濁液のpHを6.5以上8.5以下程度の範囲にすることにより、凝集の進行を停止させる。
【0155】
そして、凝集の進行を停止させた後、加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。結着樹脂の融解温度以上の温度で加熱を行うことにより凝集粒子を融合させてもよい。
【0156】
−洗浄、乾燥工程等−
凝集粒子の融合工程を終了した後、洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て所望のトナー粒子を得るが、洗浄工程は塩酸、硫酸、硝酸等の強酸の水溶液でトナー粒子に付着した分散剤を除去後、ろ液が中性になるまでイオン交換水などで洗浄することが望ましい。また、固液分離工程には特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好適である。さらに、乾燥工程も特に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が用いられる。
【0157】
乾燥工程では、通常の振動型流動乾燥法、スプレードライ法、凍結乾燥法、フラッシュジェット法などの方法を採用してもよい。この際、トナー粒子の乾燥後の含水分率が1.0質量%以下に調製してもよく、0.5質量%以下に調製してもよい。
【0158】
また、乾燥後のトナー粒子には、既述した種々の外添剤を必要に応じて添加してもよい。
【0159】
<現像剤>
本実施形態の現像剤は、本実施形態のトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態のトナーは、そのまま一成分現像剤として、あるいは二成分現像剤として用いられる。二成分現像剤として用いる場合にはキャリアと混合して使用される。
【0160】
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いてもよい。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等が挙げられる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0161】
前記二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100程度の範囲が好ましく、3:100乃至20:100程度の範囲がより好ましい。
【0162】
<画像形成装置および画像形成方法>
次に、本実施形態の現像剤を用いた本実施形態の画像形成装置について説明する。
本実施形態の画像形成装置は、潜像保持体と、前記潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を本実施形態の現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、を備える。
本実施形態の画像形成装置により、潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を本実施形態の現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着工程と、を有する本実施形態の画像形成方法が実施される。
【0163】
尚、この画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して着脱可能なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。該プロセスカートリッジとしては、本実施形態の現像剤を収納し、潜像保持体表面に形成された静電潜像を前記現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、画像形成装置に着脱される本実施形態のプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0164】
以下、本実施形態の画像形成装置の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。尚、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
図2は、4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図2に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」ということがある。)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0165】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図中における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20内面に接する駆動ローラ22および支持ローラ24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に予め定められた張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の潜像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。
【0166】
上述した第1乃至第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0167】
第1ユニット10Yは、潜像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電潜像を形成する露光装置3、静電潜像に帯電したトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ(1次転写手段)5Y、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0168】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V以上−800V以下程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
【0169】
静電潜像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0170】
現像装置4Y内に収納されているイエロー現像剤は、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定められた1次転写位置へ搬送される。
【0171】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写位置へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに予め定められた1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向かう静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性(+)の極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部(図示せず)によって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0172】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ね合わされて重ね合わせトナー像が形成される。
【0173】
第1乃至第4ユニットを通して4色のトナー像が重ね合わされた中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定められたタイミングで給紙され、予め定められた2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性(−)の極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向かう静電気力が重ね合わせトナー像に作用され、中間転写ベルト20上の重ね合わせトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0174】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれ重ね合わせトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬送ロール(排出ロール)32により搬送され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
尚、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介して重ね合わせトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0175】
<プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ>
図3は、本実施形態の現像剤を収納するプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電装置(帯電ローラ)108、現像装置111、感光体クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、および除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。
上記プロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。尚、300は記録紙である。
【0176】
図3で示すプロセスカートリッジ200では、感光体107、帯電装置108、現像装置111、感光体クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせてもよい。本実施形態のプロセスカートリッジでは、現像装置111のほかには、感光体107、帯電装置108、感光体クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えてもよい。
【0177】
次に、トナーカートリッジについて説明する。
トナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収容するトナーカートリッジにおいて、前記トナーが既述した本実施形態のトナーとしたものである。なお、トナーカートリッジには少なくともトナーが収容されればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収められてもよい。
【0178】
なお、図2に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱が可能な構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しない現像剤供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されている現像剤が少なくなった場合には、このトナーカートリッジを交換することができる。
【実施例】
【0179】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態は以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。なお、実施例中において「部」及び「%」は、特に断りのない限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0180】
〔各種物性の測定方法〕
<軟化温度の測定>
軟化温度の測定は、高化式フローテスターCFT−500(島津製作所社製)を用い、ダイスの細孔の径を0.5mm、加圧荷重を0.98MPa(10Kg/cm)、昇温速度を1℃/分とした条件下で、1cmの試料を溶融流出させたときの流出開始点から終了点の高さの1/2に相当する温度として求めた。
【0181】
<ガラス転移温度の測定>
「DSC−20」(セイコー電子工業(株)製)を使用し、試料10mgを一定の昇温速度(10℃/min)で加熱して測定した。
【0182】
<重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定>
装置HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)製)と、カラムTSKgel SuperHM−H(6.0mmID×15cm×2本)(東ソー(株)製)を用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、RI検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー(株)製「Polystyrene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0183】
<酸価の測定>
酸価は、JIS K0070に従って行い、中和滴定法を用いた測定で行った。即ち、適当量の試料を分取し、溶剤(ジエチルエーテル/エタノール混合液)100ml、及び、指示薬(フェノールフタレイン溶液)数滴を加え、水浴上で試料が溶けるまで充分に振り混ぜる。これに、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が30秒間続いた時を終点とした。酸価をA、試料量をS(g)、滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液をB(ml)、fを0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクターとした時、A=(B×f×5.611)/Sとして算出した。
【0184】
〔合成例1〕
−特定ロジンジオール(1)の合成−
2官能エポキシ化合物としてビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名jER828、三菱化学(株)製、Mw340.41)113部、ロジン成分として蒸留による精製処理(蒸留条件:6.6kPa、220℃)を行ったガムロジン(Mw302.45)200部、及び反応触媒としてテトラエチルアンモニウムブロマイド(東京化成工業(株)製)0.4部を撹拌装置、加熱装置、冷却管、温度計を備えたステンレス製反応容器に仕込み、130℃に温度を上げ、ロジンの酸基とエポキシ化合物のエポキシ基との開環反応を行った。同温度で4時間継続して行い、酸価が0.5mgKOH/gになった時点で反応を停止し、上記例示化合物として挙げられた特定ロジンジオール(1)を得た。
【0185】
−特定ポリエステル樹脂1の合成−
アルコール成分として特定ロジンジオール(1)38mol部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド(商品名BA-P2 日本乳化剤(株)製)12mol部、酸成分としてセバシン酸(和光純薬工業(株)製)39mol部、イソフタル酸(和光純薬工業(株)製)11mol部、及び反応触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート(東京化成工業(株)製)0.15mol部を攪拌装置、加熱装置、温度計、分留装置、窒素ガス導入管を備えたステンレス製反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、攪拌しながら230℃で7時間重縮合反応させ、予め定められた分子量、酸価に達したことを確認し、特定ポリエステル樹脂1を合成した。合成した特定ポリエステル樹脂1を2gとり、重ジメチルスルホキシド10mlと水酸化ナトリウムの重メタノール溶液(7N)2ml中で150℃、3時間加熱し、加水分解させた。その後、重水を加え、H−NMR測定を行い、特定ロジンジオール(1)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド、セバシン酸、及び、イソフタル酸で仕込み値通り樹脂が構成されていることを確認した。
【0186】
〔合成例2〕
−特定ロジンジオール(30)の合成−
2官能エポキシ化合物としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名EX−810、ナガセケムテックス(株)製,Mw174.19)70部、ロジン成分として不均化ロジン(商品名パインクリスタルKR614、荒川化学工業(株)製,Mw300.44)200部、及び反応触媒としてテトラエチルアンモニウムブロマイド(東京化成工業(株)製)0.4部を撹拌装置、加熱装置、冷却管、温度計を備えたステンレス製反応容器に仕込み、130℃に温度を上げ、ロジンの酸基とエポキシ化合物のエポキシ基との開環反応を行った。同温度で4時間継続して行い、酸価が0.5mgKOH/gになった時点で反応を停止し、上記例示化合物として挙げられた特定ロジンジオール(30)を得た。
【0187】
−特定ポリエステル樹脂2の合成−
アルコール成分として特定ロジンジオール(30)25mol部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド(商品名BA-P2 日本乳化剤(株)製)25mol部、酸成分としてセバシン酸(和光純薬工業(株)製)30mol部、テレフタル酸(和光純薬工業(株)製)20mol部、及び反応触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート(東京化成工業(株)製)0.15mol部を攪拌装置、加熱装置、温度計、分留装置、窒素ガス導入管を備えたステンレス製反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、攪拌しながら230℃で7時間重縮合反応させ、予め定められた分子量、酸価に達したことを確認し、特定ポリエステル樹脂2を合成した。合成した特定ポリエステル樹脂2を2gとり、重ジメチルスルホキシド10mlと水酸化ナトリウムの重メタノール溶液(7N)2ml中で150℃、3時間加熱し、加水分解させた。その後、重水を加え、H−NMR測定を行い、特定ロジンジオール(30)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド、セバシン酸、及び、テレフタル酸で仕込み値通り樹脂が構成されていることを確認した。
【0188】
〔合成例3乃至11〕
合成例1の特定ポリエステル樹脂1の合成と同様の方法で、表2に示すモノマーを用いて特定ポリエステル3乃至11の合成を行った。分子量、酸価、ガラス転移温度、軟化温度の測定結果、ロジンの種類、及び、ジカルボン酸性分中の直鎖脂肪族ジカルボン酸の比率(即ち、ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位全体に占める直鎖脂肪族ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位の割合)を表2に示す。
なお、特定ポリエステル7の合成で用いた特定ロジンジオール(38)は、下記方法によって合成した。
−特定ロジンジオール(38)の合成−
2官能エポキシ化合物としてビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名jER828、三菱化学(株)製、Mw340.41)113部、ロジン成分として水素化ロジン(商品名パインクリスタルKE-604、荒川化学工業(株)製,Mw306.48)200部、及び反応触媒としてテトラエチルアンモニウムブロマイド(東京化成工業(株)製)0.4部を撹拌装置、加熱装置、冷却管、温度計を備えたステンレス製反応容器に仕込み、130℃に温度を上げ、ロジンの酸基とエポキシ化合物のエポキシ基との開環反応を行った。同温度で4時間継続して行い、酸価が0.5mgKOH/gになった時点で反応を停止し、上記例示化合物として挙げられた特定ロジンジオール(38)を得た。
【0189】
[混練粉砕法によるトナー製造例]
〔実施例1〕
−トナー粒子1の製造−
下記混合物をエクストルーダーで混練し、表面粉砕方式の粉砕機で粉砕した。その後、風力式分級機(ターボクラシファイアー(TC−15N),日清エンジニアリング社製)で細粒、粗粒を分級し、その中間サイズの粒子を得る過程を3回繰り返し、体積平均粒子径=7.0μmのマゼンタ色のトナー粒子1を得た。
【0190】
特定ポリエステル1 90部
マゼンタ顔料(C.I.ピグメント レッド57) 4部
ワックス(HNP-9、日本精蝋社製) 6部
【0191】
−トナー1の製造−
トナー粒子1の100部に、シリカ(商品名:R812(日本エアロジル社製))0.5部を加え、高速混合機によって混合し、トナー1を得た。
【0192】
−現像剤1の製造−
上記トナー1とメチルメタクリレート−スチレン共重合体で被覆した粒径40μmのフェライトよりなるキャリアを用い、キャリア100部に対して、トナー1を7部添加し、タンブラーシェーカーミキサーで混合して現像剤1を得た。
【0193】
−評価−
トナー1あるいは現像剤1を用いて定着性テスト、熱保管性テストを行った。その結果、いずれも良好な低温定着性が得られた。その結果を表3に示す。
<定着性(最低定着温度)>
現像剤を市販の電子写真複写機(富士ゼロックス社製 A−Color 635)に用いてトナー載り量4.5g/mの3cm×4cmのソリッド画像出しを行い、未定着画像を得た。
ついで、ベルトニップ方式の外部定着機を用いて、定着温度を80℃から220℃の間で段階的に上昇させながら画像の定着性を評価した。なお、低温定着性は、未定着のソリッド画像を定着した後、一定荷重の重りを用いて折り曲げ、その部分の画像欠損度合いグレード付けし、ある一定のグレード以上になる定着温度を最低定着温度として、低温定着性の指標とした。
【0194】
<熱保管性>
トナー2gを上皿に怦量し、53℃50%RHに設定されたチャンバー内に24時間静置した。次にチャンバーから取り出したトナーを上皿から目開き44μのメッシュに乗せ、そのメッシュ越しにトナーを吸引をしながら振動をかけて、メッシュ上に残ったトナー量(凝集粗大トナー)を測定して熱保管性を評価した。
熱保管性=メッシュ上のトナー残量/2g×100 (%)
−判定基準−
0%以上15%未満:○
15%以上25%未満:△
25%以上100%:×
【0195】
〔実施例2乃至8〕
特定ポリエステル1、マゼンタ顔料(C.I.ピグメント レッド57)を表1に示す特定ポリエステル、顔料に変えたこと以外は実施例1と同様の方法でトナー粒子2乃至8、トナー2乃至8、現像剤2乃至8を得た。次に、実施例1と同様の方法で定着性テスト、熱保管性テストを行い、いずれも良好な低温定着性が得られた。その結果を表3に示す。
【0196】
【表1】

【0197】
〔比較例1乃至3〕
表1に示すように特定ポリエステル3を特定ポリエステル9乃至11に変えたこと以外は実施例3と同様の方法でトナー粒子9乃至11、トナー9乃至11、現像剤9乃至11を得た。次に、実施例1と同様の方法で定着性テスト、熱保管性テストを行い、いずれも高い定着温度が必要であった。その結果を表3に示す。
【0198】
[乳化凝集法によるトナー製造例]
−樹脂粒子分散液(1)の調製−
・特定ポリエステル樹脂1:100部
・酢酸エチル:100部
・イソプロピルアルコール:15部
5Lのセパラブルフラスコに酢酸エチル、イソプロピルアルコールを投入し、その後上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に10%アンモニア水溶液を合計で3部となるようにスポイトで徐々に滴下し、更にイオン交換水230部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、特定ポリエステル樹脂1からなる樹脂粒子分散液(1)を得た。この樹脂粒子の体積平均粒径は、140nmであった。(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調製して30%とした)
【0199】
−樹脂粒子分散液(2)の調製−
特定ポリエステル樹脂1を特定ポリエステル樹脂3に変えた以外は樹脂粒子分散液(1)の調製と同様の方法で樹脂粒子分散液(2)を得た。この樹脂粒子の体積平均粒径は、150nmであった。(樹脂粒子濃度はイオン交換水で調製して30%とした)
【0200】
−結晶性ポリエステル樹脂(A)の合成−
加熱乾燥した三口フラスコに、デカンジカルボン酸 100mol%、ノナンジオール 100mol%と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.13mol%とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で5時間攪拌・還流を行った。
その後、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(A)を合成した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)で、得られた結晶性ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は22700で数平均分子量(Mn)は7100であった。
また、結晶性ポリエステル樹脂(A)の融解温度(Tm)を、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確な吸熱ピークを示し、吸熱ピーク温度は72.5℃であった。
【0201】
次いで結晶性ポリエステル樹脂(A)を用い、樹脂分散液を調製した。
・結晶性ポリエステル樹脂(A):90部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK (第一工業製薬):1.8部
・イオン交換水:210部
以上を100℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで110℃に加温して分散処理を1時間行い、中心径200nm, 固形分量30%の結晶性ポリエステル樹脂分散液(A)を得た。
【0202】
-着色剤分散液1の調製-
・青色顔料(銅フタロシアニンB15:3:大日精化製):50部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK (第一工業製薬):5部
・イオン交換水:195部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機:杉野マシン製)を用い圧力245Mpaで15分間分散処理を行い、着色剤粒子の中心粒径が442nmで固形分量が20.0%の着色剤分散液1を得た。
【0203】
−離型剤分散液1の調製−
・オレフィンワックス、(HNP-9、日本精蝋社製):90部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK (第一工業製薬):1.8部
・イオン交換水:210部
以上を100℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで110℃に加温して分散処理を1時間行い、中心径180nm, 固形分量30%の離型剤分散液1を得た。
【0204】
〔実施例9〕
−トナー粒子12の作製−
・樹脂粒子分散液(1):220部
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(A):10部
・着色剤分散液1:25部
・離型剤分散液1:30部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてウルトラタラックスT50で混合・分散した。次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.20部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で60分保持した後、ここに樹脂粒子分散液(1)を60部追加した。
その後、0.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを8.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら90℃まで加熱し、3時間保持した。
反応終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水1Lに再分散し、15分300rpmで攪拌・洗浄した。
これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.5、電気伝導度7.0μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで凍結乾燥を40℃設定で24時間継続してトナー粒子12を得た。
このときの粒子径をコールターカウンターにて測定したところ体積平均径D50は5.8μm、粒度分布係数GSDvは1.21であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めた粒子の形状係数SF1は135でポテト状であった。
【0205】
トナー粒子1をトナー粒子12に変えたこと以外は実施例1と同様の方法でトナー12、現像剤12を得た。次に、実施例1と同様の方法で定着性テスト、熱保管性テストを行い、いずれも良好な低温定着性が得られた。その結果を表3に示す。
【0206】
〔実施例10〕
樹脂粒子分散液(1)を樹脂粒子分散液(2)に変えたこと以外は実施例9と同様の方法でトナー粒子13、トナー13、現像剤13を得た。次に、実施例1と同様の方法で定着性テスト、熱保管性テストを行い、いずれも良好な低温定着性が得られた。その結果を表3に示す。
【0207】
【表2】

【0208】
【表3】

【符号の説明】
【0209】
1Y,1M,1C,1K,107 感光体(像保持体)
2Y,2M,2C,2K 帯電ローラ
3Y,3M,3C,3K レーザ光線
3 露光装置
4Y,4M,4C,4K,111 現像装置(現像手段)
5Y,5M,5C,5K 1次転写ローラ
6Y,6M,6C,6K,113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)
8Y,8M,8C,8K トナーカートリッジ
10Y,10M,10C,10K ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ(転写手段)
28,115 定着装置(定着手段)
30 中間転写体クリーニング装置
32 搬送ロール(排出ロール)
108 帯電装置
112 転写装置
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
P,300 記録紙(被転写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位とアルコール成分由来の繰り返し単位とを含み、
前記ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位全体に占める直鎖脂肪族ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位の割合が、50モル%以上100モル%以下であり、
前記アルコール成分由来の繰り返し単位として、ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位を少なくとも含むトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記アルコール成分由来の繰り返し単位全体に占める前記ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の割合が、50モル%以上100モル%以下である請求項1に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の元となるアルコール成分が、ジオールである請求項1又は請求項2に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項4】
前記ロジン残基を含有するアルコール成分由来の繰り返し単位の元となるアルコール成分が、2官能エポキシ化合物とロジンとの反応生成物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項5】
前記ロジン残基の元となるロジンが、精製ロジンである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項6】
前記ロジン残基の元となるロジンが、不均化処理をされた不均化ロジン及び水素添加処理をされた水素化ロジンの少なくとも一種である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のトナー用ポリエステル樹脂を含むトナー。
【請求項8】
請求項7に記載のトナーを含む現像剤。
【請求項9】
請求項7に記載のトナーを収納し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【請求項10】
請求項8に記載の現像剤を収納し、潜像保持体表面に形成された静電潜像を前記現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項11】
潜像保持体と、前記潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を請求項8に記載の現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、を備える画像形成装置。
【請求項12】
潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を請求項8に記載の現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−229420(P2012−229420A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92980(P2012−92980)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】