説明

トナー用ポリエステル樹脂の製造方法およびトナー用ポリエステル樹脂並びにトナー

【課題】フルカラー印刷、高速印刷に対応し低温定着性、耐高温オフセット性、耐ブロッキング性、耐久性及び材料分散性に優れ、広い定着温度幅を有するトナー及びこれに使用されるポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】 不飽和二重結合を有しアルコール成分としてビスフェノールA誘導体を構成単位として含有するポリエステル樹脂と、該ポリエステル樹脂と軟化温度の異なる不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂を、溶融混合した後、架橋反応開始剤を用いて架橋反応させるトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー用ポリエステル樹脂の製造方法およびトナー用ポリエステル樹脂並びにトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真印刷法及び静電荷現像法により画像を得る方法においては、感光体上に形成された静電荷像をあらかじめ摩擦により帯電させたトナーによって現像したのち、定着を行う。
【0003】
これらのプロセスを問題なく通過するためには、トナーは、まず安定した帯電量を保持することが必要であり、次に紙への定着性が良好であることが必要とされる。また、装置は定着部に加熱体を有するため、装置内で温度が上昇することから、トナーは、装置内でブロッキングしないことが要求される。
【0004】
最近では、省エネ化が特に要求されるようになってきており、その結果、ヒートローラー方式において、定着部の低温化が進んできた。そのため、トナーにはより低い温度で紙に定着する性能、つまり低温定着性が強く求められるようになってきている。また、ヒートローラー方式においては、いわゆるオフセット現象が発生するため、耐オフセット性が要求されるのが前提である。また、近年の電子写真技術の発展に伴い、カラー印刷対応、高速印刷対応のトナーの要求も高まっている。従って、高速印刷においても耐オフセット性を維持しつつ、例えば定着温度140℃以下の条件でも紙への定着を示すといった低温定着性を発現させる必要があり、より広いワーキングレンジ、例えば定着温度幅が50℃以上を有するトナーが要求されるようになってきている。
【0005】
トナー用バインダー樹脂は、上述のようなトナー特性に大きな影響を与えるものであり、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が知られているが、最近では、透明性と定着性のバランスを取りやすいことから、ポリエステル樹脂が特に注目されている。
【0006】
従来、ポリエステル樹脂の定着温度幅を拡大させる方法として、物性の異なる2種類のポリエステル樹脂を混合して使用する手法が知られている。
【0007】
例えば、特許文献1では、不飽和二重結合を含有し、軟化温度の異なる2種類のポリエステル樹脂と架橋反応開始剤を混合した後、溶融混練し、架橋反応したトナー用ポリエステル樹脂が記載されている。
【特許文献1】国際公開 WO2007/034813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1記載のトナー用ポリエステル樹脂は、低温定着性と耐ブロッキング性の両立がなされているものの、軟化温度の異なる2種類のポリエステル樹脂と架橋反応開始剤を溶融せずに混合した後、架橋反応しているため、2種類の樹脂同士が均一に混合されておらず、軟化温度の高いもの同士が架橋反応し高密度化したテトラヒドロフラン(THF)不溶分が発生しやすく、着色剤等の材料分散性が不十分であった。本発明はこの問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、不飽和二重結合を有しアルコール成分としてビスフェノールA誘導体を構成単位として含有するポリエステル樹脂と、該ポリエステル樹脂と軟化温度の異なる不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂を、溶融混合した後、架橋反応開始剤を用いて架橋反応させるトナー用ポリエステル樹脂の製像方法にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により得られたトナー用ポリエステル樹脂は、フルカラー印刷、高速印刷に対応し定着温度140℃以下でも充分な定着強度を与える低温定着性を有し、耐高温オフセット性に優れ、耐ブロッキング性、耐久性及び材料分散性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂とは、不飽和二重結合をポリエステル樹脂の主鎖および/または側鎖に有するものである。不飽和二重結合をポリエステル樹脂の主鎖および/または側鎖に有するためには、不飽和二重結合を有するカルボン酸化合物および/または不飽和二重結合を有するアルコール化合物を用いて重縮合反応をさせ、これらの化合物をポリエステル樹脂の構成成分として取り込めばよい。
【0012】
本発明の不飽和二重結合を有しアルコール成分としてビスフェノールA誘導体を構成単位として含有するポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂1)とは、アルコール成分として、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等を用いて重縮合反応して得られたポリエステル樹脂である。
【0013】
アルコール成分としてビスフェノールA誘導体を構成単位として含有することにより、耐ブロッキング性、耐久性が向上する
なお、ポリエステル樹脂1のアルコール成分におけるビスフェノールA誘導体の含有量の下限値は、トナーの耐ブロッキング性の観点から、30モル部以上が好ましく、80モル部以上が特に好ましい。また、上限値は、ポリエステル樹脂合成時のハンドリング性の観点から、100モル部以下が好ましく、95モル部以下が特に好ましい。
【0014】
さらに、ポリエステル樹脂1においては、炭素数30以上の1価のカルボン酸化合物及び/または炭素数30以上の1価のアルコール化合物から導かれる構成成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂1が、炭素数30以上の1価のカルボン酸化合物及び/または炭素数30以上の1価のアルコール化合物を構成成分として含む場合に、トナー化時に添加する離型剤の分散性が良好となり、耐高温オフセット性がさらに良好となり、定着温度幅がより一層拡大する傾向にある。
【0015】
炭素数30以上の1価のカルボン酸化合物及び/または炭素数30以上の1価のアルコール化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0016】
(i)炭素数30以上のポリエチレンの片末端に水酸基を有する化合物。例えば、東洋ペトロライト社製ユニリンシリーズのうち数平均分子量が438以上のもの。
【0017】
(ii)炭素数30以上のポリエチレンの片末端にカルボキシル基を有する化合物。例えば、東洋ペトロライト社製ユニシッドシリーズのうち数平均分子量が438以上のもの。
【0018】
(iii)数平均分子量(Mn)=1000(炭素数約70)のポリプロピレンをベースとして、片末端をマレイン酸変性したもの。
【0019】
また、該ポリエステル樹脂1と軟化温度の異なる不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂2)としては、軟化温度の差が20℃以上あるポリエステル樹脂が好ましい。軟化温度の差が20℃以上である場合に、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性のバランスが良好になる傾向にある。この軟化温度の差は、40℃以上がより好ましく、50℃以上が特に好ましい。また、軟化温度の差の上限値は、150℃以下であることが好ましい。
【0020】
また本発明では、ポリエステル樹脂1のほうが、ポリエステル樹脂2より軟化温度が低いことが好ましい。
【0021】
軟化温度の低いポリエステル樹脂1にアルコール成分としてビスフェノールA誘導体が含まれていることにより、脂肪族アルコール化合物を含有するポリエステル樹脂と比較してTgが高くなり、トナーの耐ブロッキング性が良好になる。
【0022】
ポリエステル樹脂1の軟化温度は80〜130℃であることが好ましい。ポリエステル樹脂1の軟化温度が80℃以上である場合に、トナーの耐ブロッキング性、耐久性が良好となる傾向にあり、130℃以下である場合に、トナーの低温定着性が良好となる傾向にある。ポリエステル樹脂1の軟化温度の下限値は、90℃以上が好ましく、上限値は110℃以下が好ましい。
【0023】
ポリエステル樹脂2の軟化温度は、130〜230℃であることが好ましい。ポリエステル樹脂2の軟化温度が130℃以上である場合に、トナーの耐高温オフセット性が良好となる傾向にあり、230℃以下である場合に、トナーの低温定着性が良好となる傾向にある。ポリエステル樹脂2の軟化温度の下限値は、150℃以上であることが好ましく、上限値は210℃以下が好ましい。
【0024】
また、ポリエステル樹脂1のガラス転移温度(Tg)は、40〜70℃の範囲であることが好ましい。ポリエステル樹脂1のTgが40℃以上の場合に、トナーの耐ブロッキング性が良好となる傾向にあり、70℃以下の場合に、トナーの低温定着性が良好となる傾向にある。
【0025】
さらに、ポリエステル樹脂1の酸価は、50mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が50mgKOH/g以下の場合に、トナーの定着画像濃度が良好となる傾向にある。酸価の下限値は、1mgKOH/g以上が好ましい。
【0026】
また、ポリエステル樹脂2のTgは、45〜80℃の範囲が好ましい。ポリエステル樹脂2のTgが45℃以上の場合に、トナーの耐ブロッキング性が良好となる傾向にあり、80℃以下の場合に、トナーの低温定着性が良好となる傾向にある。
【0027】
さらに、ポリエステル樹脂2の酸価は、10mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が10mgKOH/g以下の場合に、トナーの定着画像濃度が良好となる傾向にある。酸価の下限値は、0.1mgKOH/g以上が好ましい。
【0028】
ポリエステル樹脂1とポリエステル樹脂2の混合比率は、特に制限されないが、99/1〜50/50(質量比)であることが好ましい。この混合比率が上記比率の範囲内である場合に、トナーの低温定着性が良好となる傾向にある。この混合比率は、99/1〜50/50であることがより好ましく、95/5〜80/20であることが好ましい。
【0029】
なお本発明では、ポリエステル樹脂2にもアルコール成分としてビスフェノールA誘導体を含有していても良いが、ポリエステル樹脂1のみにアルコール成分としてビスフェノールA誘導体を含有していることが好ましい。
【0030】
また、本発明においては、結晶性のポリエステル樹脂を使用することも可能であるが、トナーの定着性が良好となる傾向にあることから、ポリエステル樹脂1及びポリエステル樹脂2は、共に融点を持たない非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0031】
さらに本発明では、ポリエステル樹脂1とポリエステル樹脂2を溶融混合した後、架橋反応開始剤を用いて架橋反応させることが必要である。
不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂を架橋反応させると、その一部は、THFに溶解しない架橋密度の高い架橋成分(THF不溶分)に変化し、またその一部は、THFに溶解する架橋密度の低い架橋成分に変化し、残りは未反応のまま残存する。その結果、架橋反応させて得られた樹脂は、THF不溶分(THFに溶解しない架橋成分)とTHF可溶分(THFに溶解する架橋成分及び未反応のポリエステル樹脂)を含有することとなる。
【0032】
そして、THF不溶分は、高密度に架橋しているため、トナーにさらに高い弾性を付与する作用を奏し、トナーの耐高温オフセット性が更に良好になる傾向にある。ただし、THF不溶分は高密度に架橋しているため、着色剤等のトナー材料の分散を低下させるため、架橋反応が過度に進みすぎないよう制御することが必要である。
【0033】
本発明では、ポリエステル樹脂1とポリエステル樹脂2を溶融混練することにより、軟化温度の高い樹脂と低い樹脂が均一に混練され、軟化温度が高いポリエステル樹脂同士の反応が抑制され、軟化温度が高いポリエステル樹脂同士が架橋反応した過度に高密度化したTHF不溶分が発生しにくく、着色剤等の材料分散性が良好となる。
【0034】
なお、THFに溶解する架橋成分が生成していることは、架橋反応前のポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)分布曲線と架橋反応後のポリエステル樹脂のTHF可溶分のGPC分布曲線を比較することにより確認することができる。すなわち、架橋反応によってTHFに溶解する架橋成分が生成するため、架橋反応後のGPC分布曲線は、架橋反応前のGPC分布曲線よりも高分子量側に裾をひき、架橋反応後の分子量分布(Mw/Mn)は、架橋反応前の分子量分布(Mw/Mn)よりも大きくなる。ポリエステル樹脂を有効に架橋反応させるためには、ポリエステル樹脂の構成成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を含有することが好ましい。
【0035】
次に本発明のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
【0036】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、不飽和二重結合を有するカルボン酸化合物および/または不飽和二重結合を有するアルコール化合物を用いて重縮合反応させて得られる。
【0037】
不飽和二重結合を有するカルボン酸化合物の例としては、特に制限されないが、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸およびこれらのエステル誘導体、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸およびこれらのエステル誘導体等が挙げられる。また、不飽和二重結合を有するアルコール化合物としては、特に制限されないが、例えば、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン等が挙げられる。これらの中では、反応性の観点から、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
【0038】
また本発明では、上述の不飽和二重結合を有するカルボン酸化合物及び/または不飽和二重結合を有するアルコール化合物以外にも、不飽和二重結合を有さない2価のカルボン酸化合物及び不飽和二重結合を有さない2価のアルコール化合物から導かれる構成成分、1価のカルボン酸化合物及び/または1価のアルコール化合物から導かれる構成成分、3価以上のカルボン酸化合物及び/または3価以上のアルコール化合物から導かれる構成成分を含有してもよい。
【0039】
なお、ポリエステル樹脂1の構成成分としては、2価のアルコール成分として、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノールA誘導体を構成単位として含むことが必要である。
【0040】
またポリエステル樹脂2には、架橋反応が有効に起こる傾向にあることから、2価のアルコール化合物として、1,4−シクロヘキサンジメタノールを含むことが好ましい。
【0041】
本発明の不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂の製造方法については、特に制限されず、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、上述の不飽和二重結合を有するカルボン酸化合物および/または不飽和二重結合を有するアルコール化合物、不飽和二重結合を有さないカルボン酸化合物および不飽和二重結合を有さないアルコール化合物から導かれる成分を重合反応釜に仕込み、エステル化反応又はエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、不飽和ポリエステル樹脂を製造する。
【0042】
不飽和ポリエステル樹脂の重合に際しては、チタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマンニウム等の重合触媒を用いることができる。また、重合温度は、特に制限されないが、180℃〜290℃の範囲が好ましい。
【0043】
次に本発明では、ポリエステル樹脂1とポリエステル樹脂2を溶融混合した後、架橋反応開始剤を用いて架橋反応を行う。
【0044】
溶融混合装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、連続密閉式混合機、ギア押出機、ディスク押出機及びロールミル押出機、スタティックミキサー等の連続溶融混合装置;バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー及びハーケミキサー等のバッチ密閉式溶融混合装置が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、短時間で効率よくポリエステル樹脂中に架橋反応開始剤を分散させることが可能なことから、連続溶融混合装置が好ましい。
【0046】
また、重合直後の溶融状態にあるポリエステル樹脂に架橋反応開始剤を添加して架橋反応を行う場合には、溶融混合装置は重縮合反応釜に連結されていることが好ましい。
【0047】
本発明では、溶融温度は120〜230℃が好ましい。溶融温度が120℃以上の場合にポリエステル樹脂1とポリエステル樹脂2の混合性が良好になり、トナーの材料分散性が良好になる傾向にあり、230℃以下の場合に架橋反応開始剤添加時に架橋反応開始剤の分解速度が抑えられ、効率よく架橋反応が行われる傾向にある。
【0048】
溶融混合工程の後の架橋反応の方法については特に制限はされないが、2種類以上のポリエステル樹脂の溶融混合を行った後、樹脂を一旦冷却し、固体状のポリエステル樹脂に架橋反応開始剤を混合し、架橋反応を行ってもよいし、2種類以上のポリエステル樹脂の溶融混合を行い、ポリエステル樹脂が溶融状態で架橋反応開始剤を添加し、架橋反応を行ってもよい。
【0049】
不飽和二重結合の架橋反応の形態は、特に制限されないが、例えば、不飽和ポリエステル樹脂中の不飽和二重結合をラジカル付加反応、カチオン付加反応、またはアニオン付加反応等によって反応させ、分子間炭素−炭素結合を生成させる反応が好ましい。
【0050】
ポリエステル樹脂中の不飽和二重結合をラジカル付加反応、カチオン付加反応、またはアニオン付加反応等によって反応させ、分子間炭素−炭素結合を生成させる反応は、熱反応、光反応、酸化還元反応等により発生する活性種により進行させることができる。このうち、熱反応が好ましく、特に、ラジカル反応が好ましい。
ラジカル反応開始剤としては、特に制限されず、アゾ化合物や有機過酸化物が用いられる。中でも開始剤効率が高く、シアン化合物副生成物を生成しないことから、有機過酸化物が好ましい。
【0051】
中でも、架橋反応が効率よく進行し、使用量が少なくて済むことから、水素引抜き能の高い反応開始剤が特に好ましく、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α、α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキサン、ジ−t−へキシルパーオキシド等の水素引抜き能の高い架橋反応開始剤が特に好ましい。
【0052】
ラジカル反応開始剤の使用量は、特に制限されないが、ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。ラジカル反応開始剤の使用量が、0.1質量部以上の場合に架橋反応が進行し易くなる傾向にあり、10質量部以下の場合に、臭気が良好となる傾向にある。
【0053】
また、架橋反応開始剤としてラジカル反応開始剤を使用する場合、ラジカル反応開始剤を希釈剤で希釈して添加することによって、ラジカル反応開始剤の自己誘発分解を抑制できる傾向にあり、ポリエステル樹脂製造時に高い安全性が確保できることと、自己誘発分解によるラジカル反応開始剤の無駄な消費が抑えられ、ラジカル反応開始剤の使用量を低減させることが可能となる傾向にある。
【0054】
また希釈された架橋反応開始剤を用いることにより、THF不溶分の過度な高密度化を抑制できる。
【0055】
架橋反応開始剤の希釈剤としては、離型剤が特に好ましい。希釈剤は、トナー用ポリエステル樹脂中に残存することになるが、離型剤はトナーの添加剤として使用されものであるため、トナー用ポリエステル樹脂中に残存してもトナー性能に悪影響を及ぼさないからである。さらに、予めトナー用ポリエステル樹脂に離型剤が含有されることによって、トナー化時に添加される場合よりも、離型剤の分散性が良好となる傾向にあるからである。
【0056】
架橋反応開始剤の希釈剤として離型剤を用いる場合には、不飽和二重結合の架橋反応を阻害しないものを用いることが好ましい。不飽和二重結合の架橋反応を阻害しないもとのしては、炭化水素系の離型剤が好ましく、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;またはこれらのブロック化合物などが挙げられる。
【0057】
次に、本発明のトナーについて説明する。
【0058】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂のトナー中の含有量は、磁性粉を含有する磁性トナーの場合にはトナー全量中40〜60質量%であることが好ましく、磁性粉を含まない非磁性トナーの場合にはトナー全量中80〜95質量%であることが好ましい。
【0059】
本発明のトナーは、本発明のポリエステル樹脂以外にも、所望に応じて、環状オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−アクリル樹脂等の樹脂を結着樹脂として含有してもよい。
【0060】
離型剤としては、特に制限されないが、例えば、融点が60〜130℃の範囲の離型剤が好ましい。離型剤の融点が60℃以上の場合に、トナーの耐ブロッキング性が良好となる傾向にあり、130℃以下の場合に、トナーの低温定着性が良好となる傾向にある。
【0061】
離型剤の種類としては、特に制限されないが、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック化合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、および脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類の一部または全部を脱酸化したものが挙げられる。
【0062】
離型剤の含有量は、特に制限されないが、トナー全量中0.1〜10質量%が好ましい。
【0063】
着色剤としては、特に制限されず、公知の顔料、染料等を用いることができる。着色剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0064】
着色剤の含有量は、特に制限されないが、トナーの色調や画像濃度、帯電安定性、熱特性の点から、トナー全量中0.1〜15質量%の範囲が好ましい。
【0065】
本発明のトナーは、前述のポリエステル樹脂、離型剤、および着色剤を含有するものであるが、必要に応じて、荷電制御剤、流動改質剤、磁性体等の各種添加剤を含有してもよい。
【0066】
また、2成分現像剤として用いる場合には、キャリアと併用して用いられる。キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉などの磁性物質、それらの表面に樹脂コーティングを施したもの、磁性キャリア等の公知のものを使用することができる。
【0067】
本発明のトナーは、磁性1成分現像剤、非磁性1成分現像剤、2成分現像剤の何れの現像剤としても使用できる。磁性1成分現像剤として用いる場合には磁性体を含有し、磁性体としては、例えば、フェライト、マグネタイト等の、鉄、コバルト、ニッケル等を含む強磁性の合金の他、化合物や強磁性元素を含まないが適当に熱処理することによって強磁性を表すようになる合金、例えば、マンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−スズ等のマンガンと銅とを含む所謂ホイスラー合金、二酸化クロム等が挙げられる。
【0068】
また、2成分現像剤として用いる場合には、キャリアと併用して用いられる。キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉などの磁性物質、それらの表面に樹脂コーティングを施したもの、磁性キャリア等の公知のものを使用することができる。樹脂コーティングキャリアのための被覆樹脂としては、一般に知られているスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル共重合系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、それらの樹脂の混合物などを利用することができる。
【0069】
次に、本発明のトナーの製造方法について説明する。
【0070】
本発明のトナーは、上述のトナー用ポリエステル樹脂、離型剤、及び着色剤、並びに所望に応じて、荷電制御剤、流動改質剤、磁性体等の添加剤を混合した後、二軸押出機などで溶融混練し、粗粉砕、微粉砕、分級を行い、必要に応じて流動改質剤の外添処理等を行って製造することができる。
【0071】
特に、混練工程においては、押出機のシリンダー内温度がポリエステル樹脂の軟化温度よりも高くなるような温度で混練するのが好ましい。また、上記工程において、微粉砕〜分級後にトナー粒子を球形にするなどの処理を行ってもよい。
【0072】
以下、実施例をあげて本発明を説明する。なお、評価は以下の方法に従った。
【0073】
(1)ポリエステル樹脂軟化温度
フローテスターCFT−500(島津製作所(株)製)を用い、1mmφ×10mmのノズルにより、荷重294N(30Kgf)、予熱時間5分、昇温速度3℃/分で測定した時、サンプル1.0g中の1/2が流出した温度を軟化温度とした。
【0074】
(2)ガラス転移温度
示差走差熱量計(DSC測定装置)、DSC−60(島津製作所(株)製)を用い、測定試料10mgを精秤してこれをアルミパンに入れ、リファレンスとしてアルミナを入れたアルミパンを用い、昇温速度5℃/分で測定した時、チャートのベースラインとガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0075】
(3)テトラヒドロフラン(THF)不溶分
内径3.5cmの円筒状のガラスろ過器1GP100(柴田化学社製)に、セライト545(キシダ化学社製)を約2g入れ、セライト545の層の高さが変化しなくなるまで、ガラスろ過器をコルク台に軽くたたきつけた。この操作を4回繰り返して、セライト545の層の高さがフィルター面から2cmとなるように、ガラスろ過器へセライト545を充填した。
【0076】
このセライト545が充填されたガラスろ過器を105℃で3時間以上乾燥させて、その重さを秤量した(Yg)。次いで、サンプル約0.5gを三角フラスコ内に入れて精秤し(Xg)、次いでTHF50mlを加え、70℃のウォーターバスにて3時間加熱して、THF還流下でサンプルを溶解させた。この溶液を上記セライト545が充填されたガラスろ過器へ投入し、吸引ろ過した。THF不溶分を捕捉したガラスろ過器を80℃で3時間以上乾燥させて、その重さを秤量し(Zg)、以下の式に従って、THF不溶分を算出した。
【0077】
THF不溶分=(Z−Y)/X ×100 (質量部)
(4)トナー定着特性:耐高温オフセット性
複写機「PAGEPREST N4−612 II」(カシオ電子工業社製)をを用い、未定着画像を画出し、定着温度領域のテストを行った。ここで用いた定着ローラーは、シリコーンオイルが塗布されていない定着ローラーであり、ニップ幅3mm、線速15mm/秒に設定したものである。熱ローラーは温度の設定が変更可能なものであり、熱ローラー設定温度を5℃ずつ上昇させ、A4普通紙(大昭和製紙製:BM64T、60mg/cm)の上部に印刷した1部の印字比率のベタ画像がローラーに付着し、紙の下余白部分を汚すかどうかを目視にて確認し、汚れの生じない最高の設定温度を最高定着温度とし、以下の基準で判定した。
【0078】
◎(非常に良好) :最高定着温度が175℃以上200℃未満
○(使用可能) :最高定着温度が150℃以上175℃未満
×(劣る) :最高定着温度が150℃未満
(5)トナー定着特性定着特性:最低定着温度
線速100mm/秒に設定した以外は上記同様の装置を用いて、前記熱ローラーの設定温度を5℃ずつ低下させながら100℃まで繰り返し、この定着画像について擦り試験を行い、定着率が90部を超える温度を最低定着温度とした。
【0079】
定着率は、A4レター用紙(Xerox社製:Laser Paper 24lb、90mg/cm)を用い、印刷部分を折り曲げて加重5kg/cmをかけた後、セロハンテープ(日東電工包装システム社製、品番:N.29)を貼って剥がし、この操作の前後における印刷部分の光量をマクベス光量計にて測定し、その測定値から定着率を算出した。
【0080】
定着率(部)=(セロハンテープ剥離試験後の光量)/(試験前の光量)×100(部)
◎(非常に良好) :最低定着温度が130℃以上140℃未満
○(使用可能) :最低定着温度が140℃以上150℃未満
×(劣る) :最低定着温度が150℃以上
(6)トナー耐ブロッキング性
トナーを約5g秤量してサンプル瓶に投入し、これを50℃に保温された乾燥機に約72時間放置し、トナーの凝集程度を評価して耐ブロッキング性の指標とした。評価基準を以下の通りとした。
【0081】
◎(良好) :サンプル瓶を逆さにするだけで分散する
○(使用可能):サンプル瓶を逆さにし、2〜3回叩くと分散する
×(劣る) :サンプル瓶を逆さにし、4〜5回以上叩くと分散する
(7)トナー耐久性
評価機として、SPEEDIA N5300(カシオ電子工業社製)を使用し、2部の印字比率の未定着画像を画出した以外は定着特性の評価方法と同じ条件で印刷を5,000枚行った後、感光体への樹脂の付着の有無及び定着画像の欠損の有無について観察を行った。
【0082】
◎(非常に良好):感光体に樹脂の付着は全くなく、画像欠損は全く発生していない
○(使用可能):感光体に樹脂の付着があり、画像欠損もわずかに発生しているが、問題ないレベル
×(劣る) :感光体に樹脂の付着がひどく、画像欠損も目立つレベル
(8)材料分散性
トナー溶融混練物をミクロトーム(ミクローム社製HM 330)を用いて切断し、1〜3μm程度の観察用薄片を作製した。この観察用薄片を、金属顕微鏡((株)ニコン製エクリプスME600L)を用いて観察した。観察視野中の未着色部分の大きさを材料分散性の判定基準とした。この未着色部分は、結着樹脂由来の過度に高密度化されたTHF不溶分である。このような未着色部分には着色剤が存在しておらず、未着色部分が大きいということは材料分散性が悪いということを示す。
【0083】
◎(非常に良好):未着色部分が全く存在しない
○+(良好) :5μm以下の大きさの未着色部分が存在する
○(使用可能) :5〜10μm程度の大きさの未着色部分が存在する
×(劣る) :10μm以上の大きさの未着色部分が存在する
(合成例1)
酸成分としてテレフタル酸80モル部及びフマル酸20モル部、アルコール成分としてエチレングリコールを80モル部及び1,4−シクロヘキサンジメタノールを40モル部、また全酸成分に対して1500ppmの三酸化アンチモンと、全酸成分に対して2000ppmのヒンダードフェノール化合物(旭電化工業(株)製AO−60)とを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。
【0084】
次いで昇温を開始し、反応系内の温度が260℃になるように加熱し、この温度を保持し、反応系からの水の留出がなくなるまでエステル化反応を継続した。次いで、反応系内の温度を225℃とし、反応容器内を減圧し、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を実施した。反応とともに反応系の粘度が上昇し、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで反応を行った。そして、所定のトルクを示した時点で反応物を取り出し冷却して、ポリエステル樹脂(1a)を得た。ポリエステル樹脂(1a)の特性値を表1に示す。
【0085】
(合成例2)
酸成分としてテレフタル酸90モル部及びフマル酸10モル部、アルコール成分としてエチレングリコールを15モル部及びポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを40モル部、ポリオキシプロピレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを50モル部、また全酸成分に対して2000ppmのトリブチルスズオキシドを合成例1と同様の反応容器に投入した。
【0086】
次いで昇温を開始し、反応系内の温度が260℃になるように加熱し、この温度を保持し、反応系からの水の留出がなくなるまでエステル化反応を行い、反応物を取り出し冷却して、ポリエステル樹脂(2a)を得た。ポリエステル樹脂(2a)の特性値を表1に示す。
【0087】
(合成例3)
酸成分としてテレフタル酸90モル部及びフマル酸10モル部、アルコール成分としてエチレングリコールを55モル部及びポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを40モル部、また全酸成分に対して4000ppmのトリブチルスズオキシドを合成例1と同様の反応容器に投入した。
【0088】
次いで昇温を開始し、反応系内の温度が260℃になるように加熱し、この温度を保持し、反応系からの水の留出がなくなるまでエステル化反応を行い、反応物を取り出し冷却して、ポリエステル樹脂(2b)を得た。ポリエステル樹脂(2b)の特性値を表1に示す。
【0089】
(合成例4)
酸成分としてテレフタル酸90モル部及びフマル酸10モル部、アルコール成分としてエチレングリコールを45モル部及びネオペンチルグリコールを60モル部、また全酸成分に対して1000ppmのトリブチルスズオキシドを合成例1と同様の反応容器に投入した。
【0090】
次いで昇温を開始し、反応系内の温度が260℃になるように加熱し、この温度を保持し、反応系からの水の留出がなくなるまでエステル化反応を行い、反応物を取り出し冷却して、ポリエステル樹脂(2c)を得た。ポリエステル樹脂(2c)の特性値を表1に示す。
【実施例1】
【0091】
離型剤(日本精鑞(株)製SP−0160)90質量部を75℃に加熱し溶融させ、2,5−ジメチルー2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン10質量部を添加し、得られた混合物を冷却、粉砕して、離型剤で希釈された架橋反応開始剤(I)を調製した。
【0092】
ポリエステル樹脂(1a)15質量部とポリエステル樹脂(2a)85質量部を粉体混合した後、二軸押出機((株)池貝製PCM−29:L/D=30)に供給し外温設定180℃、約3分の滞在時間で溶融混合し粉砕した。この粉砕物に離型剤で希釈された架橋反応開始剤(I)を2.25質量部混合し、二軸押出機に供給し外温設定180℃、約3分の滞在時間で架橋反応を行い、ポリエステル樹脂(3a−1)を得た。ポリエステル樹脂(3a−1)の特性値を表3に示す。
【0093】
ポリエステル樹脂(3a−1)95.5質量部、キナクリドン顔料(クラリアント社製E02)3質量部、カルナバワックス0.5質量部及び負帯電性の荷電制御剤LR−147(日本カートリット社製)1質量部を混合し、二軸押出機を用いて外温設定120℃、滞在時間1分として溶融混練し、粗粉砕後、ジェットミル型粉砕機で微粉砕し、分級機で平均粒径5μmの微粉末を得た。得られた微粉末に対して、0.2質量部となるようにシリカ(日本エアロジル社製R−972)を加え、ヘンシェルミキサーで混合し付着させ、トナー1を得た。このトナーを非磁性1成分乾式複写機に実装し、その性能を評価した。トナーの評価結果を表4に示す。低温定着性と耐高温オフセット性のバランスが良好であり、耐ブロッキング性、耐久性、材料分散性も使用可能なレベルにあった。
【実施例2】
【0094】
ポリエステル樹脂(2a)に代わりポリエステル樹脂(2b)を用い、離型剤で希釈された架橋反応開始剤(I)を1.35質量部用いた以外は実施例1と同様の方法で架橋反応を行い、ポリエステル樹脂(3a−2)を得た。ポリエステル樹脂(3a−2)の特性値を表3に示す。
【0095】
カルナバワックス1.5質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂(3a−2)のトナー化を行い、トナー2を得た。トナー2の評価結果を表4に示す。低温定着性と耐高温オフセット性のバランスが良好であり、耐ブロッキング性、耐久性、材料分散性も使用可能なレベルにあった。
【0096】
(比較例1)
ポリエステル樹脂(1a)とポリエステル樹脂(2a)の溶融混合を行わずに、粉体混合した後に、架橋反応を行ったこと以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂(3a−3)を得た。ポリエステル樹脂(3a−3)の特性値を表3に示す。
【0097】
ポリエステル樹脂(3a−3)のトナー化を実施例1と同様の方法で行い、トナー3を得た。トナー3の評価結果を表4に示す。架橋反応を行う前に溶融混合を行っていないため、過度に高密度化したTHF不溶分が発生し、材料分散性が悪化した。
【0098】
(比較例2)
ポリエステル樹脂(1a)14質量部、ポリエステル樹脂(2a)79質量部、キナクリドン顔料(クラリアント社製E02)3質量部、カルナバワックス3質量部及び負帯電性の荷電制御剤LR−147(日本カートリット社製)1質量部を粉体混合した。該混合物を実施例1と同様の方法でトナー化を行い、トナー4を得た。トナー4の評価結果を表4に示す。架橋反応を行っていないため、耐高温オフセット性と低温定着性が不十分であった。
【0099】
(比較例3)
ポリエステル樹脂(1a)とポリエステル樹脂(2c)を用いた以外は比較例2と同様の方法で架橋反応を行い、ポリエステル樹脂(3a−4)を得た。ポリエステル樹脂(3a−4)の特性値を表3に示す。
【0100】
ポリエステル樹脂(3a−4)のトナー化を実施例1と同様の方法で行い、トナー5を得た。トナー5の評価結果を表4に示す。ビスフェノールA誘導体をアルコール成分として含まないため、耐ブロッキング性及び耐久性が不十分となった。
【表1】

【0101】
※1 希釈率:架橋反応開始剤の希釈率(架橋反応開始剤と離型剤の質量混合比率)
※2 PHB:2,5−ジメチルー2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン
※3:ベンゾイルパーオキサイド
【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和二重結合を有しアルコール成分としてビスフェノールA誘導体を構成単位として含有するポリエステル樹脂と、該ポリエステル樹脂と軟化温度の異なる不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂を、溶融混合した後、架橋反応開始剤を用いて架橋反応させるトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法により得られたトナー用ポリエステル樹脂。
【請求項3】
請求項2記載のトナー用ポリエステル樹脂を用いたトナー。

【公開番号】特開2010−54852(P2010−54852A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220307(P2008−220307)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】