説明

トナー用樹脂およびトナー組成物

【課題】 高速化、省エネ化されたトナーの用途においても、耐ホットオフセット性と低温定着性の両立するトナー用樹脂を開発する。
【解決手段】 THF不溶解分が3〜45重量%、THF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーのピークトップ分子量が3500〜25000、軟化点が120〜185℃であり、チタン元素を20〜2000ppm、チッソ元素を10〜1200ppm含有する非線状ポリエステル樹脂(A)を含有することを特徴とするトナー用樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真、静電記録、静電印刷等に用いられるトナー用樹脂およびトナー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱定着方式に用いられる静電荷像現像用トナーは、高い定着温度でもトナーがヒートロールに融着せず(耐ホットオフセット性)、定着温度が低くてもトナーが定着できること(低温定着性)等が求められている。一般にトナーの耐ホットオフセット性と低温定着性は相反する性能となりやすい。耐ホットオフセット性と低温定着性のバランスに優れたトナーとして、ガラス転移温度の異なる2種類のポリエステルをトナー用樹脂として含有するトナーが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、特定のチタン化合物の存在下で形成された重縮合ポリエステル樹脂を含有するトナーバインダーを用いることが開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−221986号公報
【特許文献2】WO2003/073171号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に提案されているトナーは、耐ホットオフセット性と低温定着性のバランスにある程度優れているものの、さらなる高速化、省エネ化における耐ホットオフセット性と低温定着性の両立の点では改善する必要がある。また、上記特許文献2に提案されているトナーは、色再現性に劣る場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らはこれらの問題点を解決するべく鋭意検討した末、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記〔1〕および〔2〕である。
〔1〕THF不溶解分が3〜45重量%、THF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーのピークトップ分子量が3500〜25000、軟化点が120〜185℃であり、チタン元素を20〜2000ppm、チッソ元素を10〜1200ppm含有する非線状ポリエステル樹脂(A)を含有することを特徴とするトナー用樹脂。
〔2〕このトナー用樹脂と、着色剤、並びに、必要により離型剤、荷電制御剤、および流動化剤から選ばれる1種以上の添加剤を含有するトナー組成物。
【発明の効果】
【0005】
本発明のトナー用樹脂を用いることにより、耐ホットオフセット性と低温定着性に優れるトナーとすることができ、トナーの耐ブロッキング性および色再現性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳述する。
本発明において、色再現性の観点から、本発明のトナー用樹脂中に含有する非線状ポリエステル樹脂(A)のチタン元素含有量は20〜2000ppmであり、好ましくは30〜1800ppm、さらに好ましくは50〜1500ppmである。チタン元素含有量が2000ppmを超えると(A)の着色が大きくなり、トナーとしたときの色再現性が悪くなる。また、チタン元素含有量が20ppm未満であると、(A)を得る際の重縮合に要する時間が長くなることがある。
チタン元素含有量を上記範囲に調整する方法としては、(A)を得る際の重縮合反応時に1種以上のチタン含有触媒を用い、その使用量で調整する方法が好ましい。
【0007】
本発明において、樹脂中のチタン元素含量は、蛍光X線分析装置(PANalytical社製)によって測定される。
【0008】
また、非線状ポリエステル樹脂(A)の窒素元素含有量は10〜1200ppmであり、好ましくは20〜1100ppm、さらに好ましくは30〜1000ppmである。窒素元素含有量が1200ppmを超えると(A)の着色が大きくなり、トナーとしたときの色再現性が悪くなる。また、窒素元素含有量が10ppm未満であると、本発明の効果を奏さない。
窒素元素含有量を上記範囲に調整する方法としては、アミノ基等の窒素含有基を有する化合物を、(A)の原料として僅かな量用いる方法が挙げられ、好ましくは(A)を得る際の重縮合反応時に1種以上のアミノ基を有するチタン含有触媒を用い、その使用量で調整する方法である。
【0009】
本発明において、樹脂中の窒素元素含量は、微量窒素硫黄分析計(ANTEK社製、ANTEK7000)を用いて測定した(窒素量の検量線はトリフェニルアミンのエチルベンゼン溶液を用いて作成した)ものである。
【0010】
本発明においては、上記のように、重縮合反応時にチタン含有触媒を用いて得られた非線状ポリエステル樹脂(A)を用いるのが好ましい。
チタン含有触媒としては特に限定されないが、好ましくは、チタンアルコキシド(チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド等)、シュウ酸チタニルカリウム、テレフタル酸チタン、および下記一般式(I)または(II)で表されるチタン含有触媒(z)であり、さらに好ましくは、シュウ酸チタニルカリウム、および(z)であり、とくに好ましくは(z)である。
Ti(−X)m(−OH)n (I)
O=Ti(−X)p(−OR)q (II)
[式中、Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基であり、ポリアルカノールアミンの他のOH基が同一のTi原子に直接結合したOH基と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく、他のTi原子に直接結合したOH基と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2〜5である。RはH、または1〜3個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜8のアルキル基である。mは1〜4の整数、nは0〜3の整数、mとnの和は4である。pは1〜2の整数、qは0〜1の整数、pとqの和は2である。mまたはpが2以上の場合、それぞれのXは同一であっても異なっていてもよい。]
【0011】
一般式(I)および(II)において、Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のH原子を除いた残基であり、窒素原子の数、すなわち、1級、2級、および3級アミノ基の合計数は、通常1〜2個、好ましくは1個である。
上記モノアルカノールアミンとしては、エタノールアミン、およびプロパノールアミンなどが挙げられる。ポリアルカノールアミンとしては、ジアルカノールアミン(ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、およびN−ブチルジエタノールアミンなど)、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミン、およびトリプロパノールアミンなど)、およびテトラアルカノールアミン(N,N,N’,N’−テトラヒドロキシエチルエチレンジアミンなど)が挙げられる。
ポリアルカノールアミンの場合、Ti原子とTi−O−C結合を形成するのに用いられるHを除いた残基となるOH基以外にOH基が1個以上存在し、それが同一のTi原子に直接結合したOH基と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく、他のTi原子に直接結合したOH基と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2〜5である。重合度が6以上の場合、触媒活性が低下するためオリゴマー成分が増え、トナーのブロッキング性悪化の原因になる。
Xとして好ましいものは、モノアルカノールアミン(とくにエタノールアミン)、ジアルカノールアミン(とくにジエタノールアミン)の残基、およびトリアルカノールアミン(とくにトリエタノールアミン)の残基であり、特に好ましいものはトリエタノールアミンの残基である。
RはH、または1〜3個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜8のアルキル基である。炭素数1〜8のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、β−メトキシエチル基、およびβ−エトキシエチル基などが挙げられる。これらRのうち好ましくは、H、およびエーテル結合を含まない炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくは、H、エチル基、およびイソプロピル基である。
【0012】
式(I)中、mは1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。nは0〜3の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。mとnの和は4である。
式(II)中、pは1〜2の整数、qは0〜1の整数であり、pとqの和は2である。mまたはpが2以上の場合、複数存在するXは同一であっても異なっていてもよいが、すべて同一である方が好ましい。
【0013】
上記チタン含有触媒(z)のうち、一般式(I)で表されるものの具体例としては、チタニウムテトラキス(モノエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリヒドロキシトリエタノールアミネート、チタニウムジヒドロキシビス(ジエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(モノエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(モノプロパノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(N−メチルジエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(N−ブチルジエタノールアミネート)、テトラヒドロキシチタンとN,N,N’,N’−テトラヒドロキシエチルエチレンジアミンとの反応生成物、およびこれらの分子内または分子間重縮合物が挙げられる。
分子内または分子間重縮合物の例としては、下記一般式(I−1)、(I−2)、または(I−3)で表される少なくとも1種の化合物などが挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
[式中、Q1およびQ6はH、または炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。Q2〜Q5およびQ7〜Q9は炭素数1〜6のアルキレン基である。Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基である。]
一般式(II)で表されるものの具体例としては、チタニルビス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(ジエタノールアミネート)、チタニルビス(モノエタノールアミネート)、チタニルヒドロキシエタノールアミネート、チタニルヒドロキシトリエタノールアミネート、チタニルエトキシトリエタノールアミネート、チタニルイソプロポキシトリエタノールアミネート、およびこれらの分子内または分子間重縮合物が挙げられる。
分子内または分子間重縮合物の例としては、下記一般式(II−1)または(II−2)で表される少なくとも1種の化合物などが挙げられる。
【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

【0020】
[式中、Q1およびQ6はH、または炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。Q2〜Q5は炭素数1〜6のアルキレン基である。]
これらのうちで好ましいものは、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(ジエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニウムテトラキス(エタノールアミネート)、チタニルヒドロキシトリエタノールアミネート、チタニルビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)の分子内もしくは分子間重縮合物〔下記(z1)および(z3)〕、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)の分子内重縮合物〔下記(z2)〕、およびこれらの併用であり、さらに好ましくは、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、それらの分子内重縮合物〔(z1)および(z2)〕、とくに(z1)である。
【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
これらのチタン含有触媒(z)は、例えば市販されているチタニウムジアルコキシビス(アルコールアミネート)(Dupont製など)を、水存在下で70〜90℃にて反応させることで安定的に得ることができる。また、重縮合物は、更に100℃にて縮合水を減圧留去することで得ることができる。
【0025】
チタン含有触媒の添加量は、重合活性および色再現性の観点から、得られる重合体の重量に対して、好ましくは0.01〜0.8重量%であり、さらに好ましくは0.015〜0.7重量%である。上記触媒量とすることで、重合活性と透明性を両立できるので好ましい。
また、チタン含有触媒の触媒効果を損なわない範囲で他のエステル化触媒を併用することもできる。他のエステル化触媒の例としては、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、ゲルマニウム含有触媒、アルカリ(土類)金属触媒(例えばアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のカルボン酸塩:酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、および安息香酸カリウムなど)、および酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの他の触媒の添加量としては、得られる重合体に対して、0〜0.6重量%が好ましい。0.6重量%以内とすることで、ポリエステル樹脂の着色が少なくなり、カラー用のトナーに用いるのに好ましい。添加された全触媒中のチタン含有触媒の含有率は、50〜100重量%が好ましく、100重量%がさらに好ましい。
【0026】
本発明のトナー用樹脂中の非線状ポリエステル樹脂(A)の組成としては特に限定されず、例えば、1種以上のポリオール成分と、1種以上のポリカルボン酸成分とが1工程または2工程以上で重縮合されて得られたものが挙げられる。
(A)としては、ポリエステル樹脂の末端にさらにカルボン酸が反応されて得られたものが好ましく、以下に述べる、特定酸価および特定水酸基価を有するポリエステル樹脂(a)と、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、これらカルボン酸の酸無水物およびこれらカルボン酸の低級アルキル(炭素数1〜4)エステルからなる群から選ばれる1種以上のカルボン酸(b)とが反応されて得られたものがさらに好ましい。
上記(a)としては、1種以上のポリオール成分と、1種以上のポリカルボン酸成分とが重縮合されて得られたものが好ましい。
【0027】
ポリエステル樹脂(a)の原料のポリオール成分のうち、2価アルコール(ジオール)としては、炭素数2〜36の脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,7−ヘプタンジオール、およびドデカンジオール等のアルカンジオールなど);炭素数4〜36のポリアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等);上記炭素数2〜36の脂肪族ジオールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド(以下AOと略記する)〔エチレンオキシド(以下EOと略記する)、プロピレンオキシド(以下POと略記する)およびブチレンオキシド等〕付加物(付加モル数2〜30);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等);上記脂環式ジオールの炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールS等)の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ポリオール成分のうち3〜8価またはそれ以上のポリオールとしては、炭素数3〜36の3〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコール(グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびソルビトール等);上記脂肪族多価アルコールの炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラックおよびクレゾールノボラック等:平均重合度3〜60)の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
これらのポリオール成分の中で、好ましくは、炭素数2〜6のポリアルキレンエーテルグリコール、炭素数6〜36の脂環式ジオール、炭素数6〜36の脂環式ジオールの炭素数2〜4のAO付加物、ビスフェノール類の炭素数2〜4のAO付加物、およびノボラック樹脂の炭素数2〜4のAO付加物であり、さらに好ましくは、ビスフェノール類の炭素数2〜3のAO(EOおよび/またはPO)付加物、およびノボラック樹脂の炭素数2〜3のAO(EOおよび/またはPO)付加物である。
【0029】
ポリエステル樹脂(a)の原料のポリカルボン酸成分のうち脂肪族(脂環式を含む)ジカルボン酸としては、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸、およびセバシン酸等)、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、およびグルタコン酸等)、などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸等)などが挙げられる。
【0030】
ポリカルボン酸成分のうち、3〜6価またはそれ以上の脂肪族(脂環式を含む)ポリカルボン酸としては、炭素数6〜36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)、不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(以下Mnと記載、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による):450〜10000](α−オレフィン/マレイン酸共重合体等)等が挙げられる。
ポリカルボン酸成分のうち、3〜6価またはそれ以上の芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、およびピロメリット酸等)、不飽和カルボン酸のビニル重合体[Mn:450〜10000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、およびスチレン/フマル酸共重合体等)等が挙げられる。
ポリカルボン酸成分として、これらのポリカルボン酸の、無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)を用いてもよい。
【0031】
これらのポリカルボン酸成分のうち好ましいものは、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、および炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸であり、さらに好ましくは、アジピン酸、炭素数16〜50のアルケニルコハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、およびこれらの併用であり、とくに好ましくは、アジピン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、およびこれらの併用である。これらの酸の無水物や低級アルキルエステルも、同様に好ましい。
【0032】
また、ポリカルボン酸成分としては、芳香族ポリカルボン酸および必要により脂肪族ポリカルボン酸からなり、芳香族ポリカルボン酸を60モル%以上含有するものが好ましい。芳香族ポリカルボン酸の含有量は、さらに好ましくは70〜100モル%、とくに好ましくは80〜100モル%である。芳香族ポリカルボン酸が60モル%以上含有されていることで、樹脂強度が上がり、低温定着性がさらに向上する。
【0033】
ポリエステル樹脂(a)は、通常のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150〜280℃、さらに好ましくは160〜250℃、とくに好ましくは170〜240℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、とくに2〜40時間である。
【0034】
ポリオール成分とポリカルボン酸成分との反応比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは1.4/1〜1/1、さらに好ましくは1.35/1〜1.1/1、とくに好ましくは1.35/1〜1.2/1である。なお、上記反応比率は、反応中に系外へ除去される成分があるときは、その分を除外した比率である。
【0035】
ポリエステル樹脂(a)は、酸価が6(mgKOH/g、以下の酸価も同様)以下かつ水酸基価が10〜85(mgKOH/g、以下の水酸基価も同様)である。酸価は、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下であり、水酸基価は、好ましくは15〜81、さらに好ましくは20〜60である。酸価が6以下の場合、あるいは水酸基価が85以下の場合は、ポリエステル樹脂(a)の重縮合が十分で、低分子量成分が少なく、それを用いて得られるトナー用樹脂の保存安定性が良好となる。また水酸基価が10以上の場合は、カルボン酸(b)との反応効率が良好である。
ポリエステル樹脂(a)の酸価、水酸基価をこれらの範囲とするには、ポリオール成分とポリカルボン酸成分との反応比率で調整するのが有効である。
【0036】
上記および以下においてポリエステル樹脂の酸価および水酸基価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定される。
なお、試料に架橋にともなう溶剤不溶解分がある場合は、以下の方法で溶融混練後のものを試料として用いる。
混練装置 : 東洋精機(株)製 ラボプラストミル MODEL4M150
混練条件 : 130℃、70rpmにて30分
【0037】
ポリエステル樹脂(a)のTHF可溶分の分子量は、ピークトップ分子量(以下Mpと記載)が、1500〜15000であることが好ましく、2200〜10000であることがさらに好ましい。また、Mnは500〜9000であることが好ましく、1000〜7000であることがさらに好ましく、1500〜6000であることが特に好ましい。
【0038】
本発明において、ポリエステル樹脂の分子量〔Mp、Mn、および重量平均分子量(以下Mwと記載)〕は、GPCを用いて以下の条件で測定される。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF(テトラヒドロフラン)溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点 (分子量 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000 4480000)
得られたクロマトグラム上最大のピーク高さを示す分子量をピークトップ分子量(Mp)と称する。また、分子量の測定は、ポリエステル樹脂をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とした。
【0039】
非線状ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(a)と、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、これらカルボン酸の酸無水物およびこれらカルボン酸の低級アルキル(炭素数1〜4)エステルからなる群から選ばれる1種以上のカルボン酸(b)とを、反応時の混合比が、(a)に由来する水酸基の当量をOHa、(b)に由来するカルボキシル基の当量をCOOHbとするとき、OHa/COOHb=0.1〜1.0の当量比で反応させて得られるものが好ましい。OHa/COOHbは、さらに好ましくは0.2〜0.9であり、とくに好ましくは0.3〜0.8である。OHa/COOHbが0.1以上であると分子量が十分大きくなり、トナー化時の耐ホットオフセット性が向上する。1.0以下であると樹脂の流動性が良好となり、トナー化時の低温定着性、光沢発現性が向上する。
【0040】
カルボン酸(b)としては、モノカルボン酸、ポリカルボン酸のいずれも使用可能であるが、モノカルボン酸とポリカルボン酸の比率は、反応に使用するカルボン酸の全カルボキシル基の当量を100とするとき、モノカルボン酸由来のカルボキシル基とポリカルボン酸由来のカルボキシル基の当量比が、(0〜50)/(50〜100)が好ましく、(0〜20)/(80〜100)がさらに好ましい。モノカルボン酸由来のカルボキシルの比率が50以下であると架橋が不足せず、樹脂の強度が十分に得られる。また、反応生成物の酸価を所定範囲に調整しやすい。
また、(b)として、酸無水物および、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)を用いてもよい。
【0041】
カルボン酸(b)として用いるモノカルボン酸のうち、脂肪族(脂環式を含む)モノカルボン酸としては、炭素数1〜50のアルカンモノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸等)、炭素数3〜50のアルケンモノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸等)などが挙げられる。
芳香族モノカルボン酸としては、炭素数7〜36の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、メチル安息香酸、フェニルプロピオン酸、およびナフトエ酸等)などが挙げられる。
【0042】
(b)として用いるポリカルボン酸のうち、脂肪族(脂環式を含む)ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3〜6価またはそれ以上の脂肪族(脂環式を含む)ポリカルボン酸、および3〜6価またはそれ以上の芳香族ポリカルボン酸としては、前記ポリエステル樹脂(a)に用いるものと同様のものが挙げられる。
これらの中で、2価以上の芳香族カルボン酸が好ましく、3〜6価またはそれ以上の芳香族ポリカルボン酸がさらに好ましく、トリメリット酸、および無水トリメリット酸がとくに好ましい。
【0043】
非線状ポリエステル樹脂(A)を構成するカルボン酸成分中の3〜6価またはそれ以上の芳香族ポリカルボン酸の含有量は、好ましくは1〜30モル%、さらに好ましくは2〜20モル%である。30モル%以下であると、樹脂の流動性が良好で、トナー化時の低温定着性が向上する。
【0044】
非線状ポリエステル樹脂(A)は、下記の範囲の酸価、水酸基価、および酸価/水酸基価を有するように調整するのが好ましい以外は、ポリエステル樹脂(a)と同様の製造法で得ることができる。
本発明における(A)の酸価は、好ましくは12〜85、さらに好ましくは13〜80、とくに好ましくは18〜60である。また水酸基価は、好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上、とくに好ましくは9〜40であり、最も好ましくは10〜30である。
酸価が12以上、あるいは水酸基価が5以上であると定着の強度が向上する。また酸価が85以下であると、環境条件の影響を受けにくく、安定性が向上する。
本発明において、(A)の酸価と水酸基価は、さらに次式(1)の関係を満たすのが好ましい。
酸価/水酸基価≧1(但し、酸価=12〜85、水酸基価≧5) ・・・式(1)
酸価/水酸基価が1以上であると、光沢度発現温度や定着温度域における光沢度が向上する。酸価/水酸基価は、さらに好ましくは1.2〜10である。尚、式(1)を満たすポリエステル樹脂(A)を製造するためには、例えば、ポリエステル樹脂(a)とカルボン酸(b)との反応比率を調整することにより達成できる。
【0045】
非線状ポリエステル樹脂(A)のTHF不溶解分は、3〜45重量%であり、好ましくは3〜36重量%、さらに好ましくは4〜33重量%、とくに好ましくは5〜30重量%である。THF不溶解分が3重量%未満であると耐ホットオフセット性が低下し、45重量%を越えると低温定着性が低下する。
【0046】
上記および以下においてポリエステル樹脂のTHF不溶解分は、以下の方法で求めたものである。
試料0.5gに50mlのTHFを加え、3時間撹拌還流させる。還流温度から20℃まで冷却後、グラスフィルターにて不溶解分をろ別し、グラスフィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧乾燥する。グラスフィルター上の乾燥した樹脂分の重量と試料の重量比から、不溶解分を算出する。
【0047】
本発明に用いる非線状ポリエステル樹脂(A)の軟化点は、耐ホットオフセット性と低温定着性の観点から、120〜185℃であり、好ましくは125〜170℃、さらに好ましくは130〜160℃である。
なお、本発明においては、フローテスターを用いて下記条件で等速昇温し、その流出量が1/2になる温度をもって軟化点とした。
装置 : 島津(株)製 フローテスター CFT−500
荷重 : 20kg
ダイ : 1mmΦ−1mm
昇温速度 : 6℃/min.
【0048】
本発明において、(A)のTHF不溶解分と軟化点は、次式(2)の関係を満たすのが好ましい。
THF不溶解分を重量%単位で表した数値/軟化点を℃単位で表した数値≦0.22
・・・式(2)
THF不溶解分/軟化点が0.22以下であると、低温定着性および耐ホットオフセット性の両立が容易であり、また光沢度発現温度や定着温度域における光沢度が向上する。THF不溶解分/軟化点は、さらに好ましくは0.01〜0.20である。
尚、式(2)を満たす非線状ポリエステル樹脂(A)を製造するためには、例えば、ポリエステル樹脂(a)を製造した後に、(a)とカルボン酸(b)とを反応させる方法でポリエステル樹脂(A)を製造し、その際、(a)の水酸基価を10〜85mgKOH/gとし、かつ(a)と(b)の反応率を調整することで達成できる。具体的には、(a)と(b)の反応率を低くする〔すなわち、未反応の(a)の水酸基と(b)のカルボキシル基の量を多くする〕と、THF不溶解分/軟化点が下がり、逆に(a)と(b)の反応率を高くする〔すなわち、未反応の(a)の水酸基と(b)のカルボキシル基の量を少なくする〕とTHF不溶解分/軟化点が上がる。
【0049】
非線状ポリエステル樹脂(A)のTHF可溶分の分子量は、Mpが3500〜25000であり、好ましくは4000〜20000、さらに好ましくは4900〜15000である。Mwは20000〜400000であることが好ましく、30000〜300000であることがさらに好ましく、40000〜250000であることがとくに好ましい。また、分子量分布を示すMwとMnの比(以下Mw/Mnと記載)は15〜100であることが好ましく、20〜90であることがさらに好ましい。
Mp、Mw、およびMw/Mnが上記範囲内であると、耐ホットオフセット性と低温定着性のバランスが良好である。
【0050】
本発明において、非線状ポリエステル樹脂(A)は、200℃で加熱溶融した前後における軟化点の差が10℃以下であることが好ましく、5℃以下であることがさらに好ましい。尚、200℃で加熱溶融後の軟化点は110〜195℃が好ましく、120〜185℃がさらに好ましい。
尚、200℃で加熱溶融した前後における軟化点の差は、次のようにして測定される。
(A)を3g入れた試験管を、200℃に温調したブロックバスに入れ、10分程度加熱溶解した後に、溶解した(A)を試験管ごと氷水中に投入し冷却する。加熱溶融した(A)および加熱溶融前の(A)について、前記の方法で軟化点を測定し、その差を求める。
【0051】
本発明において、非線状ポリエステル樹脂(A)は、200℃で加熱溶融した前後におけるTHFに可溶な成分のMpの変化率が10%以下であることが好ましく、9%以下であることがさらに好ましい。尚、200℃で加熱溶融後のMpは3150〜27500が好ましく、3500〜25000がさらに好ましい。
尚、200℃での加熱溶融処理の方法は前項の方法と同じであり、またMpは前記したポリエステル樹脂のMp測定方法と同じである。
200℃で加熱溶融した前後における軟化点の差、および200℃で加熱溶融した前後におけるTHFに可溶な成分のMpの差を小さくする方法としては、例えば、(a)と(b)の反応終了後の非線状ポリエステル樹脂(A)の冷却を、ベルトクーラーなどの装置を用いて、より短時間で行う方法が挙げられる。
【0052】
本発明のトナー用樹脂中には、非線状ポリエステル樹脂(A)と共に、線状ポリエステル樹脂(B)を含有してもよい。本発明のトナー用樹脂は、非線状ポリエステル樹脂(A)単独でも優れた定着性を示すが、非線状ポリエステル樹脂(A)と共に線状ポリエステル樹脂(B)を含有することでさらに優れた定着性が得られる。
線状ポリエステル樹脂(B)は、通常、1種以上のポリオール成分と、1種以上のポリカルボン酸成分を重縮合して得られ、線状となるように組み合わせて反応させるのであれば、組成はとくに限定されない。
【0053】
(B)の原料となるポリオール成分のうち、ジオールとしては、炭素数2〜36の脂肪族ジオール、炭素数4〜36のポリアルキレンエーテルグリコール、炭素数2〜36の脂肪族ジオールの炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)、炭素数6〜36の脂環式ジオール、炭素数6〜36の脂環式ジオールの炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)、およびビスフェノール類の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。これらの具体例としては、前述のポリエステル樹脂(a)に用いるものと同様のものが挙げられる。
【0054】
ポリオール成分のうち、3〜8価またはそれ以上のアルコールとしては、炭素数3〜36の3〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコール、脂肪族多価アルコールの炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)、トリスフェノール類の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)、ノボラック樹脂の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。これらの具体例としては、前述のポリエステル樹脂(a)に用いるものと同様のものが挙げられる。
【0055】
これらポリオール成分中好ましいものは、炭素数2〜6の脂肪族ジオール、炭素数4〜36のポリアルキレンエーテルグリコール、炭素数6〜36の脂環式ジオール、炭素数6〜36の脂環式ジオールの炭素数2〜4のAO付加物、ビスフェノール類の炭素数2〜4のAO付加物、およびノボラック樹脂の炭素数2〜4のAO付加物であり、さらに好ましくは、炭素数2〜6の脂肪族ジオール、ビスフェノール類の炭素数2〜3のAO(EOおよびPO)付加物、およびノボラック樹脂の炭素数2〜3のAO(EOおよびPO)付加物である。
【0056】
ポリカルボン酸成分のうち、脂肪族(脂環式を含む)ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3〜6価またはそれ以上の脂肪族(脂環式を含む)ポリカルボン酸、および3〜6価またはそれ以上の芳香族ポリカルボン酸としては、前記ポリエステル樹脂(a)に用いるものと同様のものが挙げられる。
ポリカルボン酸成分として、これらのポリカルボン酸の、無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステルを用いてもよい。
これらのポリカルボン酸成分のうち好ましいものは、前記ポリエステル樹脂(a)に用いるポリカルボン酸と同様である。
【0057】
線状ポリエステル樹脂(B)の酸価は、5〜80が好ましく、8〜50がさらに好ましく、10〜30がとくに好ましい。
また水酸基価は、60以下が好ましく、50以下がさらに好ましく、5〜45がとくに好ましい。
線状ポリエステル樹脂(B)の分子量は、Mpが3000〜10000であることが好ましく、3500〜9000であることがさらに好ましい。
【0058】
線状ポリエステル樹脂(B)のTHF不溶解分は、好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは2重量%以下である。
【0059】
本発明において、ポリエステル樹脂(B)は、通常のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。例えば、前述のポリエステル樹脂(a)の製造法と同様の方法が挙げられる。
ポリオール成分とポリカルボン酸成分との反応比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.3、とくに好ましくは1.3/1〜1/1.2である。
【0060】
本発明のトナー用樹脂における、非線状ポリエステル樹脂(A)と線状ポリエステル樹脂(B)の重量比〔(A)/(B)〕は、(A)と(B)の合計を100としたとき、(20〜100)/(80〜0)が好ましく、(30〜99)/(70〜1)がさらに好ましく、(40〜90)/(60〜10)がとくに好ましい。非線状ポリエステル樹脂(A)の重量比が20以上であると樹脂強度が上昇し、高温域での定着性が良好である。
【0061】
また、ポリエステル樹脂(B)のチタン元素含有量は20〜2000ppmが好ましく、さらに好ましくは30〜1800ppm、とくに好ましくは50〜1500ppmである。チタン元素含有量が2000ppm以下であると(B)の着色が小さくなり、トナーとしたときの色再現性が良好である。また、チタン元素含有量が20ppm以上であると、(B)を得る際の重縮合に要する時間が短縮できる場合がある。
チタン元素含有量を上記範囲に調整する方法としては、(B)を得る際の重縮合反応時に1種以上のチタン含有触媒を用い、その使用量で調整する方法が好ましい。
【0062】
また、ポリエステル樹脂(B)の窒素元素含有量は10〜1200ppmが好ましく、さらに好ましくは20〜1100ppm、とくに好ましくは30〜1000ppmである。窒素元素含有量が1200ppm以下であると(A)の着色が小さくなり、トナーとしたときの色再現性がより良好になる。また、窒素元素含有量が10ppm以上であると、本発明の効果がより得られやすい。
【0063】
本発明のトナー用樹脂は、非線状ポリエステル樹脂(A)のみ、または非線状ポリエステル樹脂(A)と線状ポリエステル樹脂(B)のみを含有することが好ましいが、本発明のトナー用樹脂の特性を損なわない範囲で、これら以外の他の樹脂を含有してもよい。他の樹脂としては、(A)、(B)以外のポリエステル樹脂、ビニル系樹脂[スチレンとアルキル(メタ)アクリレートの共重合体、スチレンとジエン系モノマーとの共重合体等]、エポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル開環重合物等)、ウレタン樹脂(ジオールおよび/または3価以上のポリオールとジイソシアネートの重付加物等)などが挙げられる。
他の樹脂のMnは、300〜10万が好ましい。他の樹脂の含有量は、全トナー用樹脂中、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下である。
【0064】
ポリエステル樹脂を2種以上併用する場合、および少なくとも1種のポリエステル樹脂と他の樹脂を混合する場合、予め粉体混合または溶融混合してもよいし、トナー化時に混合してもよい。
溶融混合する場合の温度は、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは100〜170℃、とくに好ましくは120〜160℃である。
混合温度が低すぎると充分に混合できず、不均一となることがある。2種以上のポリエステル樹脂を混合する場合、混合温度が高すぎると、エステル交換反応による平均化などが起こるため、トナーバインダーとして必要な樹脂物性が維持できなくなる場合がある。
【0065】
溶融混合する場合の混合時間は、好ましくは10秒〜30分、さらに好ましくは20秒〜10分、とくに好ましくは30秒〜5分である。2種以上のポリエステル樹脂を混合する場合、混合時間が長すぎると、エステル交換反応による平均化などが起こるため、トナーバインダーとして必要な樹脂物性が維持できなくなる場合がある。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽などのバッチ式混合装置、および連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続式混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダー、3本ロールなどが挙げられる。これらのうちエクストルーダーおよびコンティニアスニーダーが好ましい。
粉体混合する場合は、通常の混合条件および混合装置で混合することができる。
粉体混合する場合の混合条件としては、混合温度は、好ましくは0〜80℃、さらに好ましくは10〜60℃である。混合時間は、好ましくは3分以上、さらに好ましくは5〜60分である。混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、およびバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
【0066】
本発明のトナー組成物は、バインダー樹脂となる本発明のトナー用樹脂と、着色剤、および必要により、離型剤、荷電制御剤、流動化剤等の1種以上の添加剤を含有する。
【0067】
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンBおよびオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。着色剤の含有量は、本発明のトナー用樹脂100部に対して、好ましくは1〜40部、さらに好ましくは3〜10部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150部、さらに好ましくは40〜120部である。
上記および以下において、部は重量部を意味する。
【0068】
離型剤としては、軟化点が50〜170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、天然ワックス、炭素数30〜50の脂肪族アルコール、炭素数30〜50の脂肪酸およびこれらの混合物等が挙げられる。ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるものおよび熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素および/またはオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸およびその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸および無水マレイン酸等]および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステルおよびマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体、およびサゾールワックス等が挙げられる。
【0069】
天然ワックスとしては、例えばカルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックスおよびライスワックスが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪族アルコールとしては、例えばトリアコンタノールが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪酸としては、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
【0070】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
【0071】
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末等が挙げられる。
【0072】
本発明のトナー組成物の重量比は、トナー重量に基づき、本発明のトナー用樹脂が、好ましくは30〜97重量%、さらに好ましくは40〜95重量%、とくに好ましくは45〜92重量%;着色剤が、好ましくは0.05〜60重量%、さらに好ましくは0.1〜55重量%、とくに好ましくは0.5〜50重量%;添加剤のうち、離型剤が、好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%、とくに好ましくは1〜10重量%;荷電制御剤が、好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%、とくに好ましくは0.5〜7.5重量%;流動化剤が、好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜5重量%、とくに好ましくは0.1〜4重量%である。また、添加剤の合計含有量は、好ましくは3〜70重量%、さらに好ましくは4〜58重量%、とくに好ましくは5〜50重量%である。トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
【0073】
本発明のトナー組成物は、混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、さらに分級することにより、体積平均粒径(D50)が好ましくは5〜20μmの微粒とした後、流動化剤を混合して製造することができる。なお、粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解または分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
【0074】
本発明のトナー組成物は、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイトおよび樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリアー粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。トナーとキャリアー粒子との重量比は、通常1/99〜100/0である。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
【0075】
本発明のトナー組成物は、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる。
【実施例】
【0076】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
製造例1
[チタン含有触媒の合成]
冷却管、撹拌機及び液中バブリング可能な窒素導入管の付いた反応槽中に、窒素置換後チタニウムテトライソプロポキシド1000部と、次いでトリエタノールアミン/イオン交換水=1050部/150部混合物を入れ、窒素にて液中バブリング下、90℃まで徐々に昇温し、90℃で4時間反応させた。さらに、100℃にて、2時間減圧下で反応(脱水縮合)させて、前記の分子内重縮合物(z1)を得た。
【0078】
実施例1
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物50部(0.15モル)、ビスフェノールA・PO3モル付加物480部(1.19モル)、フェノールノボラック(平均官能基数5.6)のEO付加物8.5部(0.01モル)、テレフタル酸170部(1.02モル)、および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)4部を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(a1)とする。
ポリエステル樹脂(a1)の酸価は1.7、水酸基価は54、Mnは2000、Mpは4800であった。
【0079】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(a1)650部、無水トリメリット酸45部(0.23モル)、および触媒としてチタン含有触媒(z1)2部を入れ、系内の気相を窒素置換したのち、180℃で常圧密閉下2時間反応後、220℃で、500〜700mmHgの減圧下に反応させ、軟化点が135℃になった時点でベルトクーラーを通して取り出し、粉砕し粒子化した。反応時のOHa/COOHb=0.89であった。これをポリエステル樹脂(A1)とする。
ポリエステル樹脂(A1)の酸価は26、水酸基価は12、Mwは110000、Mpは10700、軟化点は136℃、THF不溶解分は9重量%、すなわち、式(1)の左辺は2.2、式(2)の左辺は0.07、チタン元素含量は1110ppm、窒素元素含量は719ppmであった。また、(A1)を200℃で加熱溶融後、氷水で冷却したときの軟化点は134℃(加熱溶融前後の軟化点の差:−2℃)であった。
【0080】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物340部(1.08モル)、ビスフェノールA・PO2モル付加物370部(1.08モル)、ビスフェノールA・PO3モル付加物140部(0.35モル)、テレフタル酸332部(2.00モル)および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)4部を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で180℃に冷却し、無水トリメリット酸40部(0.21モル)を加え、常圧密閉下2時間反応後取り出し、ベルトクーラーを通して取り出し、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(B1)とする。
ポリエステル樹脂(B1)の酸価は20、水酸基価は36、Mnは2100、Mpは4400、THF不溶解分は0重量%、チタン元素含量は470ppm、窒素元素含量は268ppmであった。
【0081】
ポリエステル樹脂(A1)700部とポリエステル樹脂(B1)300部を、コンティニアスニーダーにて、ジャケット温度150℃、滞留時間3分で溶融混合した。溶融樹脂を室温まで冷却後、粉砕機にて粉砕し、粒子化して本発明のトナー用樹脂(1)を得た。
【0082】
実施例2
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物30部(0.09モル)、ビスフェノールA・PO2モル付加物70部(0.20モル)、ビスフェノールA・PO3モル付加物320部(0.80モル)、アジピン酸10部(0.07モル)、フェノールノボラック(平均官能基数5.6)のEOモル付加物25部(0.03モル)、テレフタル酸150部(0.90モル)、および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)3部を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(a2)とする。
ポリエステル樹脂(a2)の酸価は1.2、水酸基価は39、Mnは3500、Mpは6900であった。
【0083】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(a2)550部、無水トリメリット酸30部(0.16モル)、および触媒としてチタン含有触媒(z1)1部を入れ、系内の気相を窒素置換したのち、180℃で常圧密閉下2時間反応後、220℃で、500〜700mmHgの減圧下に反応させ、軟化点が135℃になった時点でベルトクーラーを通して取り出し、粉砕し粒子化した。反応時のOHa/COOHb=0.81であった。これをポリエステル樹脂(A2)とする。
ポリエステル樹脂(A2)の酸価は32、水酸基価は11、Mwは80000、Mpは7500、軟化点は134℃、THF不溶解分は27重量%、すなわち、式(1)の左辺は2.9、式(2)の左辺は0.20、チタン元素含量は884ppm、窒素元素含量は572ppmであった。また、(A2)を200℃で加熱溶融後、氷水で冷却したときの軟化点は134℃(加熱溶融前後の軟化点の差:0℃)であった。
【0084】
ポリエステル樹脂(A2)700部とポリエステル樹脂(B1)300部を、コンティニアスニーダーにて、ジャケット温度150℃、滞留時間3分で溶融混合した。溶融樹脂を室温まで冷却後、粉砕機にて粉砕し、粒子化して本発明のトナー用樹脂(2)を得た。
【0085】
実施例3
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物200部(0.63モル)、ビスフェノールA・PO2モル付加物150部(0.44モル)、ビスフェノールA・PO3モル付加物320部(0.80モル)、フェノールノボラック(平均官能基数5.6)のPO付加物4部(0.01モル)、テレフタル酸166部(1.00モル)、および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)2部を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(a3)とする。
ポリエステル樹脂(a3)の酸価は1.4、水酸基価は49、Mnは2200、Mpは5000であった。
【0086】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(a3)500部、無水トリメリット酸30部(0.16モル)、および触媒としてチタン含有触媒(z1)2部を入れ、系内の気相を窒素置換したのち、180℃で常圧密閉下2時間反応後、220℃で、500〜700mmHgの減圧下に反応させ、軟化点が135℃になった時点でベルトクーラーを通して取り出し、粉砕し粒子化した。反応時のOHa/COOHb=0.93であった。これをポリエステル樹脂(A3)とする。
ポリエステル樹脂(A3)の酸価は13、水酸基価は10、Mwは90000、Mpは6400、軟化点は137℃、THF不溶解分は7重量%、すなわち、式(1)の左辺は1.3、式(2)の左辺は0.05、チタン元素含量は966ppm、窒素元素含量は672ppmであった。また、(A3)を200℃で加熱溶融後、氷水で冷却したときの軟化点は135℃(加熱溶融前後の軟化点の差:−2℃)であった。
【0087】
ポリエステル樹脂(A3)700部とポリエステル樹脂(B1)300部を、V型混合器で混合して本発明のトナー用樹脂(3)を得た。
【0088】
実施例4
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、1,2−プロピレングリコール(以下プロピレングリコールと記載)900部(11.84モル)、テレフタル酸432部(2.60モル)、アジピン酸24部(0.16モル)、および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)4部を入れ、180℃で窒素気流下に、生成する水、およびプロピレングリコールを留去しながら8時間反応させた。次いで230℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水、およびプロピレングリコールを留去しながら4時間反応させ、さらに5〜20mmHgの減圧下に反応させ、軟化点が95℃になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(a4)とする。ポリエステル樹脂(a4)の酸価は1.0、水酸基価は43、Mnは2500、Mpは5100であった。
【0089】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(a4)500部、無水トリメリット酸40部(0.21モル)、および触媒としてチタン含有触媒(z1)2部を入れ、系内の気相を窒素置換したのち、180℃で常圧密閉下2時間反応後、220℃で、5〜20mmHgの減圧下に反応させ、軟化点が158℃になった時点でベルトクーラーを通して取り出し、粉砕し粒子化した。反応時のOHa/COOHb=0.61であった。これをポリエステル樹脂(A4)とする。
ポリエステル樹脂(A4)の酸価は28、水酸基価は5、Mwは154000、Mpは8400、軟化点は160℃、THF不溶解分は17重量%、すなわち、式(1)の左辺は5.6、式(2)の左辺は0.11、チタン元素含量は1144ppm、窒素元素含量は846ppmであった。また、(A4)を200℃で加熱溶融後、氷水で冷却したときの軟化点は158℃(加熱溶融前後の軟化点の差:−2℃)であった。
【0090】
ポリエステル樹脂(A4)700部とポリエステル樹脂(B1)300部を、V型混合器で混合して本発明のトナー用樹脂(4)を得た。
【0091】
実施例5
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物20部(0.06モル)、ビスフェノールA・PO2モル付加物300部(0.87モル)、ビスフェノールA・PO3モル付加物20部(0.50モル)、フェノールノボラック(平均官能基数5.6)のEO付加物20部(0.02モル)、テレフタル酸166部(1.00モル)および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)2部を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(a5)とする。
ポリエステル樹脂(a5)の酸価は1.4、水酸基価は81、Mnは1000、Mpは2200であった。
【0092】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(a5)500部、無水トリメリット酸50部(0.26モル)、および触媒としてチタン含有触媒(z1)1部を入れ、系内の気相を窒素置換したのち、180℃で常圧密閉下2時間反応後、200℃で、減圧下(10〜50mmHg)および常圧下(760mmHg)に反応させ、軟化点が135℃になった時点でベルトクーラーを通して取り出し、粉砕し粒子化した。反応時のOHa/COOHb=0.92であった。これをポリエステル樹脂(A5)とする。
ポリエステル樹脂(A5)の酸価は35、水酸基価は30、Mwは56000、Mpは4900、軟化点は136℃、THF不溶解分は30重量%、すなわち、式(1)の左辺は1.2、式(2)の左辺は0.22であった、チタン元素含量は444ppm、窒素元素含量は396ppmであった。また、(A5)を200℃で加熱溶融後、氷水で冷却したときの軟化点は133℃(加熱溶融前後の軟化点の差:−2℃)であった。
【0093】
ポリエステル樹脂(A5)450部とポリエステル樹脂(B1)550部を、V型混合器で混合して本発明のトナー用樹脂(5)を得た。
【0094】
実施例6
前記ポリエステル樹脂(A2)を本発明のトナー用樹脂(6)とした。
【0095】
比較例1
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO3モル付加物572部(1.4モル)、フェノールノボラック(平均官能基数5.6)のEO付加物22部(0.03モル)、テレフタル酸166部(1.0モル)、および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート3部を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(c1)とする。
ポリエステル樹脂(c1)の酸価は1.9、水酸基価は76、Mnは1000、Mpは2500であった。
【0096】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(c1)724部、無水トリメリット酸83部(0.43モル)、および触媒としてテトラブトキシチタネート3部を入れ、系内の気相を窒素置換したのち、180℃で常圧密閉下2時間反応後、220℃で、10〜50mmHgの減圧下に反応させ、軟化点が125℃になった時点で取り出し、室温まで冷却後粉砕し粒子化した。反応時のOHa/COOHb=0.76であった。これをポリエステル樹脂(C1)とする。
ポリエステル樹脂(C1)の酸価は25、水酸基価は23、Mwは15000、Mpは5000、軟化点は135℃、THF不溶解分は35重量%、すなわち、式(1)の左辺は1.1、式(2)の左辺は0.26、チタン元素含量は1240pm、窒素元素含量は0であった。
また、(C1)を200℃で加熱溶融後、氷水で冷却したときの軟化点は123℃(加熱溶融前後の軟化点の差:−12℃)であった。
【0097】
ポリエステル樹脂(C1)700部とポリエステル樹脂(B1)300部を、V型混合機にて混合して比較のトナー用樹脂(7)を得た。
【0098】
比較例2
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO3モル付加物480部(1.19モル)、フェノールノボラック(平均官能基数5.6)のEO付加物22部(0.03モル)、テレフタル酸166部(1.00モル)、および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート3部を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(c2)とする。
ポリエステル樹脂(c2)の酸価は1.8、水酸基価は46、Mnは2600、Mpは5000であった。
【0099】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(c2)716部、無水トリメリット酸50部(0.26モル)、および触媒としてテトラブトキシチタネート3部を入れ、系内の気相を窒素置換したのち、180℃で常圧密閉下2時間反応後、220℃で、500〜700mmHgの減圧下に反応させ、軟化点が130℃になった時点で取り出し、室温まで冷却して粉砕し粒子化した。反応時のOHa/COOHb=0.75であった。これをポリエステル樹脂(C2)とする。
ポリエステル樹脂(C2)の酸価は17、水酸基価は37、Mwは25500、Mpは5700、軟化点は142℃、THF不溶解分は19重量%、すなわち、式(1)の左辺は0.5、式(2)の左辺は0.13、チタン元素含量は1524ppm、窒素元素含量は0であった。
また、(C2)を200℃で加熱溶融後、氷水で冷却したときの軟化点は131℃(加熱溶融前後の軟化点の差:−11℃)であった。
【0100】
ポリエステル樹脂(C2)700部とポリエステル樹脂(B1)300部を、V型混合機で混合して比較のトナー用樹脂(8)を得た。
【0101】
実施例〔7〜12〕・比較例〔3、4〕
本発明のトナー用樹脂(1)〜(6)および比較のトナー用樹脂(7)、(8)それぞれ100部に対して、カルナバワックス5部、およびイエロー顔料[クラリアント(株)製toner yellow HG VP2155]若しくは着色剤[カーボンブラックMAー100、三菱化学(株)製]4部を、ヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I]で分級し、粒径D50が7μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部にコロイダルシリカ(アエロジルR972:日本アエロジル製)0.5部をサンプルミルにて混合して、本発明のトナー組成物(T1)〜(T6)、および比較用のトナー組成物(T7)、(T8)を得た。
下記評価方法で評価した評価結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
[現像剤の調製]
トナー30部とフェライトキャリア(パウダーテック社製、F−150)800部を均一混合し二成分現像剤とした。
[評価方法]
〔1〕最低定着温度(MFT)
上記二成分現像剤を用い、市販複写機(AR5030;シャープ製)で現像した未定着画像を、市販フルカラー複写機(LBPー2160、キヤノン(株)製)の定着機を改造し熱ローラー温度を可変にした定着機を用いてプロセススピード110mm/秒で定着した。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって最低定着温度(MFT)とした。
〔2〕ホットオフセット発生温度(HOT)
上記MFTと同様に定着評価し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視評価した。ホットオフセットが発生した定着ロール温度をもってホットオフセット発生温度(HOT)とした。
〔3〕トナーの耐ブロッキング性試験
上記トナー組成物を、50℃・85%R.H.の高温高湿環境下で、48時間調湿した。同環境下において該現像剤のブロッキング状態を目視判定し、さらに市販複写機(AR5030:シャープ製)でコピーした時の画質を観察した。
判定基準
◎:トナーのブロッキングがなく、3000枚複写後の画質も良好。
○:トナーのブロッキングはないが、3000枚複写後の画質に僅かに乱れが観察さ
れる。
△:トナーのブロッキングが目視でき、3000枚複写後の画質に乱れが観察される

×:トナーのブロッキングが目視でき、3000枚までに画像が出なくなる。
〔4〕色再現性
上記トナー組成物を、市販複写機(AR5030:シャープ製)で、テストパターン画像をOHPシートに印刷した。これをOHPプロジェクターでスクリーン上に投影した。投影像の鮮明さ、色のかすみを目視評価した。
◎:投影像鮮明。色のくすみなし。
○:投影像鮮明。わずかに色のくすみあり。
△:投影像やや不鮮明。わずかに色のくすみあり。
×:投影像不鮮明。色のくすみあり。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のトナー組成物およびトナー用樹脂は、低温定着性、耐ホットオフセット性、現像性に優れる静電荷像現像用トナーおよびトナー用樹脂として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
THF不溶解分が3〜45重量%、THF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーのピークトップ分子量が3500〜25000、軟化点が120〜185℃であり、チタン元素を20〜2000ppm、チッソ元素を10〜1200ppm含有する非線状ポリエステル樹脂(A)を含有することを特徴とするトナー用樹脂。
【請求項2】
非線状ポリエステル樹脂(A)が、次の式(1)および(2)を満たすポリエステル樹脂である請求項1記載のトナー用樹脂。
酸価/水酸基価≧1(但し、酸価=12〜85mgKOH/g、水酸基価≧5mgKOH/g) ・・・式(1)
THF不溶解分を重量%単位で表した数値/軟化点を℃単位で表した数値≦0.22
・・・式(2)
【請求項3】
非線状ポリエステル樹脂(A)が、酸価が6mgKOH/g以下かつ水酸基価が10〜85mgKOH/gのポリエステル樹脂(a)と、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、これらカルボン酸の酸無水物およびこれらカルボン酸の低級アルキル(炭素数1〜4)エステルからなる群から選ばれる1種以上のカルボン酸(b)とが反応されてなるポリエステル樹脂である請求項1または2記載のトナー用樹脂。
【請求項4】
非線状ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量が20000〜400000である請求項1〜3のいずれか記載のトナー用樹脂。
【請求項5】
非線状ポリエステル樹脂(A)を200℃で加熱溶融した前後の軟化点の差が10℃以下である請求項1〜4のいずれか記載のトナー用樹脂。
【請求項6】
非線状ポリエステル樹脂(A)とともに、さらに、線状ポリエステル樹脂(B)を含有する請求項1〜5のいずれか記載のトナー用樹脂。
【請求項7】
非線状ポリエステル樹脂(A)と線状ポリエステル樹脂(B)の重量比〔(A)/(B)〕が、(A)と(B)の合計を100としたとき、(20〜100)/(80〜0)である請求項6記載のトナー用樹脂。
【請求項8】
線状ポリエステル樹脂(B)が、チタン元素を20〜2000ppm、チッソ元素を10〜1200含有する請求項6または7記載のトナー用樹脂。
【請求項9】
非線状ポリエステル樹脂(A)および/または線状ポリエステル樹脂(B)が、下記一般式(I)または(II)で表される少なくとも1種のチタン含有触媒(z)の存在下に形成されてなるポリエステル樹脂である請求項1〜8のいずれか記載のトナー用樹脂。
Ti(−X)m(−OH)n (I)
O=Ti(−X)p(−OR)q (II)
[式中、Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基であり、ポリアルカノールアミンの他のOH基が同一のTi原子に直接結合したOH基と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく、他のTi原子に直接結合したOH基と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2〜5である。RはH、または1〜3個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜8のアルキル基である。mは1〜4の整数、nは0〜3の整数、mとnの和は4である。pは1〜2の整数、qは0〜1の整数、pとqの和は2である。mまたはpが2以上の場合、それぞれのXは同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか記載のトナー用樹脂と、着色剤、並びに、必要により離型剤、荷電制御剤、および流動化剤から選ばれる1種以上の添加剤を含有するトナー組成物。

【公開番号】特開2010−96928(P2010−96928A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266860(P2008−266860)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】