説明

トナー用結着樹脂

【課題】トナーの低温定着性、保存性及び耐久性に優れたトナー用結着樹脂、及び該結着樹脂を含有した電子写真用トナーを提供すること。
【解決手段】フラン環を有する非晶質ポリエステルを含むトナー用結着樹脂であって、前記非晶質ポリエステルがカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合して得られるものであり、該カルボン酸成分と該アルコール成分の少なくともいずれかが、炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又は炭素数6〜40の脂肪族アルコールを含むアルコール成分である、トナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有した電子写真用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有した電子写真用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンターやコピー機の高速化及び省エネ化に伴い、低温定着性に優れたトナーがますます必要となってきている。しかし、通常トナーの結着樹脂を低温で溶融させるために低分子量化を行うと、樹脂のガラス転移点が低下し、保存性が低下するとともに、耐久性も低下する。
この課題を解決するために、低分子量でも高ガラス転移点のトナー用結着樹脂として、テレフタル酸やイソフタル酸等の芳香環を有するカルボン酸を原料モノマーとして用いて得られたポリエステルが汎用されているが、十分な耐久性を有していない。
【0003】
一方、特許文献1には、バイオマスを原料に用いて耐熱性、機械物性、耐候性に優れた、十分な分子量を有する熱可塑性樹脂を提供することを課題として、フラン構造を有し、還元粘度(ηsp/C)が0.48dL/g以上、末端酸価が200μeq/g未満であることを特徴とする熱可塑性樹脂が開示されている。又、特許文献2には、フラン構造を有するジカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂の製造方法が開示されている。
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の樹脂は、フィルム用途や射出成形品の用途を主として使用する機械物性に優れるものであるため結晶性が高く、トナー用結着樹脂には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−291243号公報
【特許文献2】特開2008−291244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、トナーの低温定着性、保存性及び耐久性に優れたトナー用結着樹脂、及び該結着樹脂を含有した電子写真用トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
〔1〕 フラン環を有する非晶質ポリエステルを含むトナー用結着樹脂であって、前記非晶質ポリエステルがカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合して得られるものであり、該カルボン酸成分と該アルコール成分の少なくともいずれかが、炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又は炭素数6〜40の脂肪族アルコールを含むアルコール成分である、トナー用結着樹脂、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂を含有してなる、電子写真用トナー
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトナー用結着樹脂は、トナーの低温定着性と保存性を両立することができ、さらに耐久性も向上するという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の結着樹脂は、フラン環を有するとともに、炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物及び/又は炭素数6〜40の脂肪族アルコールを原料モノマーとして用いて得られた非晶質ポリエステルを含有している点に特徴を有している。本発明者らは、非晶質ポリエステルの原料モノマーとしてフラン環を有する化合物を用いることにより、軟化点が低くとも、ガラス転移点の高い樹脂、換言すれば、数平均分子量が低くとも、ガラス転移点の高い樹脂が得られるため、トナーの低温定着性及び保存性に優れるとともに、炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物及び/又は炭素数6〜40の脂肪族アルコールを原料モノマーとして用いることで、トナーの耐久性が格段に向上することを見出した。この理由は不明なるも、炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物や炭素数6〜40の脂肪族アルコールは、ワックスの分散性を向上させると考えられ、その結果トナーの耐久性を向上させるが、同時にガラス転移点が低下し、トナーの保存性が低下する。しかし、前記フラン環を有する非晶質ポリエステルは、リジッドな構造を有しているため、炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物及び/又は炭素数6〜40の脂肪族アルコールを有効量用いても、ガラス転移点の低下が抑制され、トナーの保存性と耐久性が両立すると考えられる。
【0009】
本発明において、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち、「軟化点/吸熱の最高ピーク温度」で定義される結晶性指数によって表される。一般に、この結晶性指数が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満では結晶性が低く非晶質部分が多い。本発明において、「非晶質」の樹脂とは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂をいう。
【0010】
樹脂の結晶性は、用いる原料モノマーの種類と組み合わせにより、容易に調整することができる。具体的には、分岐鎖構造を有するカルボン酸成分やアルコール成分、3価以上のカルボン酸成分やアルコール成分、例えば、後述するようなアルキル又はアルケニルコハク酸や第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール、トリメリット酸、無水トリメリット酸等を適量用いることで、非晶質化を促進することができる。
【0011】
「吸熱の最高ピーク温度」とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度のことを指す。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば、最高ピーク温度を結晶性樹脂(結晶性ポリエステル)の融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークは非晶質樹脂のガラス転移に起因するピークとする。
【0012】
本発明において、フラン環を有する非晶質ポリエステルは、前記の如く、原料モノマーとして、カルボン酸成分及びアルコール成分とを用い、これらを縮重合させて得られる樹脂であって、カルボン酸成分とアルコール成分の少なくともいずれかが、炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又は炭素数6〜40の脂肪族アルコールを含むアルコール成分である。
【0013】
炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物は、トナーの耐久性と保存性との観点から、直鎖もしくは分岐鎖のモノ又はジカルボン酸化合物が好ましい。炭素数が6未満ではトナーの耐久性が低下し、40を超えるとトナーの保存性が低下する。また、炭素数は、トナーの耐久性の観点から6以上が好ましく、8以上がより好ましく、12以上がさらに好ましく、保存性の観点から40以下が好ましく、36以下がより好ましく、26以下がさらに好ましく、22以下がよりさらに好ましく、16以下がよりさらに好ましい。したがって、トナーの保存性と耐久性の観点から、炭素数は6〜40であり、8〜36が好ましく、12〜26がより好ましく、12〜22がさらに好ましく、12〜16がよりさらに好ましい。なお、本発明において、カルボン酸化合物の炭素数は、カルボキシル基の炭素数も含めた炭素数であるが、アルキルエステルのアルキル基の炭素数は含まれない。また、本発明においては、カルボン酸、酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体等を含め、総称してカルボン酸化合物という。
【0014】
直鎖もしくは分岐鎖のモノカルボン酸化合物の具体例としては、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0015】
直鎖もしくは分岐鎖のジカルボン酸化合物の具体例としては、アルキル(アルキル基の炭素数が、好ましくは炭素数8〜22、より好ましくは炭素数8〜18、さらに好ましくは炭素数8〜14)又はアルケニル(アルケニル基の炭素数が、好ましくは炭素数8〜22、より好ましくは炭素数8〜18、さらに好ましくは炭素数8〜14)コハク酸(以下、単にコハク酸誘導体という)、アジピン酸、ペンタンジカルボン酸、ヘキサンジカルボン酸、ヘプタンジカルボン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、炭素数8〜18の不飽和脂肪酸が2量化したダイマー酸、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0016】
上記炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物の中では、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、コハク酸誘導体、セバシン酸及びダイマー酸が好ましく、トナーの低温定着性及び耐久性と保存性との観点から、コハク酸誘導体がより好ましい。炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物の含有量、好ましくはコハク酸誘導体の含有量は、カルボン酸成分中、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、2モル%以上が好ましく、4モル%以上がより好ましく、6モル%以上がさらに好ましく、10モル%以上がよりさらに好ましく、トナーの低温定着性及び保存性の観点から75モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましく、40モル%以下がよりさらに好ましく、30モル%以下がよりさらに好ましい。したがって、トナーの低温定着性、保存性及び耐久性の観点から、2〜75モル%が好ましく、4〜60モル%が好ましく、6〜50モル%がより好ましく、6〜40モル%がさらに好ましく、10〜30モル%がより好ましい。
【0017】
炭素数6〜40の脂肪族アルコールは、トナーの保存性と耐久性との観点から、直鎖もしくは分岐鎖のモノ又はジアルコールが好ましい。炭素数が6未満ではトナーの耐久性が低下し、40を超えるとトナーの保存性が低下する。また、炭素数は、トナーの耐久性の観点から6以上が好ましく、8以上がより好ましく、12以上がさらに好ましく、保存性の観点から40以下が好ましく、36以下がより好ましく、26以下がさらに好ましく、22以下がよりさらに好ましく、16以下がよりさらに好ましい。したがって、トナーの保存性と耐久性の観点から、炭素数は6〜40であり、8〜36が好ましく、12〜26がより好ましく、12〜22がさらに好ましく、12〜16がよりさらに好ましい。
【0018】
直鎖もしくは分岐鎖のモノアルコールの具体例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール等が挙げられる。
【0019】
直鎖もしくは分岐鎖のジアルコールの具体例としては、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ダイマージオール等が挙げられる。
【0020】
炭素数6〜40の脂肪族アルコールの含有量は、アルコール成分中、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から2モル%以上が好ましく、4モル%以上がより好ましく、6モル%以上がさらに好ましく、10モル%以上がよりさらに好ましく、トナーの低温定着性及び保存性の観点から75モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましく、40モル%以下がよりさらに好ましく、30モル%以下がよりさらに好ましい。したがって、トナーの低温定着性、保存性及び耐久性の観点から、2〜75モル%が好ましく、4〜60モル%がより好ましく、6〜50モル%がさらに好ましく、6〜40モル%がよりさらに好ましく、10〜30モル%がよりさらに好ましい。
【0021】
炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物と炭素数6〜40の脂肪族アルコールとの合計量は、カルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、3モル%以上がさらに好ましく、5モル%以上がよりさらに好ましく、トナーの低温定着性及び保存性の観点から35モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、20モル%以下がさらに好ましく、15モル%以下がよりさらに好ましい。したがって、トナーの低温定着性及び保存性と耐久性の観点から、1〜35モル%が好ましく、2〜30モル%がより好ましく、3〜20モル%がさらに好ましく、5〜15モル%がよりさらに好ましい。
【0022】
〔炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物と炭素数6〜40の脂肪族アルコールとの合計量〕/〔後述するフラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量〕のモル比は、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、0.03以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましく、0.2以上がよりさらに好ましく、トナーの低温定着性及び保存性の観点から5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましく、1以下がよりさらに好ましい。したがって、トナーの低温定着性及び保存性と耐久性の観点から、0.03〜5が好ましく、0.05〜5がより好ましく、0.1〜3がさらに好ましく、0.1〜2がよりさらに好ましく、0.2〜1がよりさらに好ましい。
【0023】
また、コハク酸誘導体/後述するフラン環を有するカルボン酸化合物のモル比は、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、0.03以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましく、0.2以上がよりさらに好ましく、トナーの低温定着性及び保存性の観点から5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましく、1以下がよりさらに好ましい。したがって、トナーの低温定着性、保存性及び耐久性の観点から、0.03〜5が好ましく、0.05〜5がより好ましく、0.1〜3がさらに好ましく、0.1〜2がよりさらに好ましく、0.2〜1がよりさらに好ましい。
【0024】
本発明において、フラン環を有する非晶質ポリエステルは、カルボン酸成分とアルコール成分の少なくともいずれかに、フラン環を有するカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又はフラン環を有するアルコールを含むアルコール成分が用いられた樹脂であることが好ましい。フラン環としては、式(Ia)又は(Ib):
【0025】
【化1】

【0026】
で表される構造が好ましい。
【0027】
フラン環を有するカルボン酸化合物としては、フラン-2,5-ジカルボン酸、フラン-2,4-ジカルボン酸、フラン-2,3-ジカルボン酸、フラン-3,4-ジカルボン酸等のフランジカルボン酸化合物(本明細書中、カルボン酸化合物はカルボン酸とカルボン酸の炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルコールとのエステル及び酸無水物を含む);フラン-2-カルボン酸、フラン-3-カルボン酸等のフランカルボン酸化合物;5-ヒドロキシメチル-フラン-2-カルボン酸等のヒドロキシフランカルボン酸化合物;フルフリル酢酸化合物、3-カルボキシ-4-メチル-5-プロピル-2-フランプロピオネート等のカルボン酸化合物(本明細書中、ヒドロキシカルボン酸化合物はカルボン酸化合物に含める)等が挙げられ、これらの中では、トナーの低温定着性と保存性の観点から、フランジカルボン酸化合物、フランカルボン酸化合物及びヒドロキシフランカルボン酸化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、特にトナーの保存性の観点からフランジカルボン酸化合物がより好ましい。
【0028】
フラン環を有するアルコールとしては、ジヒドロキシフラン等のフランジアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフリルアルコール等のヒドロキシメチルフルフリルアルコール;フルフリルアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられ、これらの中では、トナーの低温定着性と保存性の観点から、フランジアルコール、ヒドロキシメチルフルフリルアルコール及びフルフリルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、特にトナーの保存性の観点から、フランジアルコール及びヒドロキシメチルフルフリルアルコールがより好ましい。
【0029】
式(Ia)で表わされるフラン環を有するカルボン酸化合物として、フラン-2,5-ジカルボン酸、フラン-2,4-ジカルボン酸、フラン-2,3-ジカルボン酸、フラン-3,4-ジカルボン酸等のフランジカルボン酸化合物;5-ヒドロキシメチル-フラン-2-カルボン酸等のヒドロキシフランカルボン酸化合物等のカルボン酸化合物等が挙げられる。
【0030】
式(Ia)で表わされるフラン環を有するアルコールとして、5-ヒドロキシメチルフルフリルアルコール等のヒドロキシメチルフルフリルアルコール;ジヒドロキシフラン等のフランジアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられる。
【0031】
式(Ib)で表わされるフラン環を有するカルボン酸化合物として、フラン-2-カルボン酸、フラン-3-カルボン酸等のフランカルボン酸化合物;フルフリル酢酸化合物等が挙げられる。
【0032】
式(Ib)で表わされるフラン環を有するアルコールとして、フルフリルアルコール等が挙げられる。
【0033】
上記のカルボン酸化合物及びアルコールの中では、トナーの低温定着性と保存性の観点から、式(Ia)で表わされるフラン環を有する、カルボン酸化合物とアルコールとが好ましく、フランジカルボン酸化合物及びヒドロキシメチルフルフリルアルコールがより好ましく、フランジカルボン酸化合物がさらに好ましい。
【0034】
フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量は、カルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、トナーの保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、好ましくは10〜95モル%、より好ましくは15〜75モル%、さらに好ましくは20〜50モル%、よりさらに好ましくは25〜40モル%である。
【0035】
さらに、フラン環を有するカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性と保存性と耐久性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜96モル%、さらに好ましくは20〜90モル%、よりさらに好ましくは30〜90モル%、よりさらに好ましくは30〜80モル%、よりさらに好ましくは60〜80モル%であり、フランジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性と保存性と耐久性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜96モル%、さらに好ましくは20〜90モル%、よりさらに好ましくは30〜90モル%、よりさらに好ましくは30〜80モル%、よりさらに好ましくは60〜80モル%である。
【0036】
フラン環を有するアルコールの含有量は、トナーの低温定着性と保存性と耐久性の観点から、アルコール成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜96モル%、さらに好ましくは20〜90モル%、よりさらに好ましくは30〜80モル%である。
【0037】
また、トナーの低温定着性と保存性と耐久性の観点から、カルボン酸成分中、1種類のフラン環を有するカルボン酸化合物の含有量は、好ましくは10〜100モル%、さらに好ましくは20〜96モル%、より好ましくは20〜90モル%、よりさらに好ましくは30〜80モル%、よりさらに好ましくは60〜80モル%であり、アルコール成分中、1種類のフラン環を有するアルコールの含有量は、好ましくは10〜100モル%、さらに好ましくは20〜96モル%、より好ましくは20〜90モル%、よりさらに好ましくは30〜80モル%である。なお、1種類とは、構造上の種類であり、組成式が同じであっても構造式が異なるものは、異なる種類としてみなす。
【0038】
フラン環を有するアルコール及び炭素数6〜40の脂肪族アルコール以外のアルコール成分としては、トナーの低温定着性の観点から、炭素数2〜5の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数3〜4の脂肪族ジオールがより好ましい。
【0039】
炭素数2〜5の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ブテンジオール、2,3-ブタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール等が挙げられる。
【0040】
これらの中で、フラン環とともに、樹脂の運動性をさらに低下させることで、トナーの保存性を向上させると共に樹脂の非晶質を促進し、低温定着性を向上させる観点から、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する炭素数3〜5の脂肪族ジオールが好ましい。かかる脂肪族ジオールは、低温定着性と保存性の観点から、炭素数3〜4がより好ましく、具体的例としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等が挙げられ、トナーの低温定着性と保存性と耐久性の観点から、1,2-プロパンジオール及び2,3-ブタンジオールが好ましく、1,2-プロパンジオールがより好ましい。
【0041】
炭素数2〜5の脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性の観点から、フラン環を有するアルコール及び炭素数6〜40の脂肪族アルコール以外のアルコール成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%、よりさらに好ましくは50〜100モル%、よりさらに好ましくは90〜100モル%、よりさらに好ましくは実質的に100モル%であり、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する炭素数3〜5の脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性と保存性の観点から、アルコール成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%、よりさらに好ましくは50〜100モル%、よりさらに好ましくは90〜100モル%、よりさらに好ましくは実質的に100モル%である。
【0042】
アルコール成分がフラン環を有するアルコールを含む場合、炭素数2〜5の脂肪族ジオール/フラン環を有するアルコール(モル比)は、トナーの低温定着性と保存性の観点から、0〜10が好ましく、0.1〜8がより好ましく、0.2〜5がさらに好ましい。
【0043】
これら以外のアルコール成分としては、トナーの保存性の観点から、芳香族アルコールが好ましい。
【0044】
芳香族アルコールとしては、トナーの保存性の観点から、式(II):
【0045】
【化2】

【0046】
(式中、R1O及びOR1はオキシアルキレン基であり、R1はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
【0047】
式(II)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0048】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、トナーの保存性の観点から、フラン環を有するアルコール及び炭素数6〜40の脂肪族アルコール以外のアルコール成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%、よりさらに好ましくは50〜100モル%、よりさらに好ましくは90〜100モル%、よりさらに好ましくは実質的に100モル%である。
【0049】
本発明において、アルコール成分は、樹脂の非晶質化を促進し、トナーの低温定着性及び耐久性を高める観点から、3価以上の炭素数3〜5の多価アルコールを含有してもよい。3価以上の炭素数3〜5の多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール等が好ましく、グリセリンがより好ましい。3価以上の炭素数3〜5の多価アルコールの含有量は、トナーの低温定着性及び耐久性を高める観点から、アルコール成分中、0.1〜30モル%が好ましく、1〜25モル%がより好ましく、5〜25モル%がさらに好ましい。
【0050】
フラン環を有するカルボン酸化合物と炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物以外のカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸化合物又は炭素数2〜5の脂肪族ジカルボン酸化合物が好ましい。
【0051】
芳香族ジカルボン酸化合物は、トナーの帯電性及び保存性の観点から好ましい。
【0052】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜5)エステル等が挙げられる。
【0053】
フラン環を有するカルボン酸化合物と炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物以外のカルボン酸成分中、芳香族ジカルボン酸化合物は、トナーの帯電性の観点から、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは実質的に100モル%である。
【0054】
カルボン酸成分がフラン環を有するカルボン酸化合物を含む場合、芳香族ジカルボン酸化合物/フラン環を有するカルボン酸化合物(モル比)は、トナーの帯電性と保存性の観点から、0〜10が好ましく、0.1〜8がより好ましく、0.2〜5がさらに好ましい。
【0055】
炭素数2〜5の脂肪族ジカルボン酸化合物は、低温定着性の観点から好ましく、炭素数は2〜4がより好ましい。
【0056】
炭素数2〜5の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、コハク酸、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0057】
炭素数2〜5の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性の観点から、フラン環を有するカルボン酸化合物と炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物以外のカルボン酸成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは実質的に100モル%である。
【0058】
本発明において、カルボン酸成分は、樹脂の非晶質化を促進し、トナーの低温定着性、耐久性及び保存性を高める観点から、3価以上の炭素数3〜5の多価カルボン酸化合物を含有していることが好ましい。3価以上の炭素数3〜5の多価カルボン酸化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等が好ましく、トリメリット酸化合物が好ましく、無水トリメリット酸がより好ましい。3価以上の炭素数3〜5の多価カルボン酸化合物の含有量は、トナーの耐久性及び保存性の観点から、カルボン酸成分中、0.1〜40モル%が好ましく、1〜30モル%がより好ましく、5〜28モル%がより好ましく、20〜28モル%がさらに好ましく、23〜28モル%がさらに好ましい。
【0059】
その他のカルボン酸化合物として、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;ロジン;フマル酸、コハク酸、マレイン酸又はアクリル酸等で変性されたロジン等が挙げられる。
【0060】
なお、アルコール成分には1価の炭素数5以下のアルコールが、カルボン酸成分には1価の炭素数5以下のカルボン酸化合物が、分子量の調整や耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0061】
カルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、0.5〜1.3が好ましく、0.6〜1.3がより好ましく、0.7〜1.1がより好ましい。
【0062】
本発明の非晶質ポリエステルの製造において、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合は、不活性ガス雰囲気中にて行うことが好ましく、反応性やフラン環を有する化合物の熱分解性の観点から、反応温度は、160〜230℃が好ましく、180〜220℃がより好ましい。
【0063】
本発明の非晶質ポリエステルは、用いる原料モノマーの種類と組み合わせにより、触媒を用いても、用いなくとも製造することができる。例えば、触媒を用いない場合は、トナーの結着樹脂として色相に優れた樹脂を得ることができる。
【0064】
触媒としては、例えば錫化合物、チタン化合物等のエステル化触媒が挙げられる。
【0065】
錫化合物としては、例えば、酸化ジブチル錫が知られているが、本発明では、ポリエステル中での分散性が良好である観点から、Sn-C結合を有していない錫(II)化合物が好ましい。
【0066】
Sn-C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn-O結合を有する錫(II)化合物、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく、Sn-O結合を有する錫(II)化合物がより好ましい。
【0067】
Sn-O結合を有する錫(II)化合物としては、シュウ酸錫(II)、酢酸錫(II)、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリル酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)等の炭素数2〜28のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II);オクチロキシ錫(II)、ラウロキシ錫(II)、ステアロキシ錫(II)、オレイロキシ錫(II)等の炭素数2〜28のアルコキシ基を有するアルコキシ錫(II);酸化錫(II);硫酸錫(II)等が、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物としては、塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II)等が挙げられ、これらの中では、帯電立ち上がり効果及び触媒能の点から、(R2COO)2Sn(ここでR2は炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表される脂肪酸錫(II)、(R3O)2Sn(ここでR3は炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるアルコキシ錫(II)及びSnOで表される酸化錫(II)が好ましく、(R2COO)2Snで表される脂肪酸錫(II)及び酸化錫(II)がより好ましく、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)及び酸化錫(II)がさらに好ましい。
【0068】
チタン化合物の具体例としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C37O)2〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4102N)2(C37O)2〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C511O)2〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C25O)2〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(OHC816O)2〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C1837O)2〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)(C37O)3〕、チタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6143N)3(C37O)〕等が挙げられ、これらの中ではチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートが好ましく、これらは、例えばマツモト交商(株)の市販品としても入手できる。
【0069】
他の好ましいチタン化合物の具体例としては、テトラ-n-ブチルチタネート〔Ti(C49O)4〕、テトラプロピルチタネート〔Ti(C37O)4〕、テトラステアリルチタネート〔Ti(C1837O)4〕、テトラミリスチルチタネート〔Ti(C1429O)4〕、テトラオクチルチタネート〔Ti(C817O)4〕、ジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C817O)2(OHC816O)2〕、ジミリスチルジオクチルチタネート〔Ti(C1429O)2(C817O)2〕等が挙げられ、これらの中ではテトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートが好ましい。これらは、例えばハロゲン化チタンを対応するアルコールと反応させることにより得ることができ、又は、ニッソー社等の市販品としても入手できる。
【0070】
エステル化触媒の存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分の合計量100重量部に対して、0.01〜2.0重量部が好ましく、0.1〜1.5重量部がより好ましく、0.2〜1.0重量部がさらに好ましい。
【0071】
本発明において、互いに隣接する3個の炭素原子に結合した水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物をエステル化触媒とともに用いることが、トナーの保存性を向上させる観点から好ましい。
【0072】
ピロガロール化合物としては、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられる。
【0073】
縮重合反応におけるピロガロール化合物の存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分の合計量100重量部に対して、トナーの保存性の観点から、0.001〜1.0重量部が好ましく、0.005〜0.4重量部がより好ましく、0.01〜0.2重量部がさらに好ましい。ここで、ピロガロール系化合物の存在量とは、縮重合反応に供したピロガロール系化合物の全配合量を意味する。
【0074】
ピロガロール化合物は、エステル化触媒の助触媒として働いていると考えられる。ピロガロール化合物とともに用いられるエステル化触媒としては、錫化合物、チタン化合物、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、及び2酸化ゲルマニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属触媒が好ましい。
【0075】
ピロガロール化合物とエステル化触媒の重量比(ピロガロール化合物/エステル化触媒)は、トナーの保存性の観点から、0.01〜0.5が好ましく、0.03〜0.3がより好ましく、0.05〜0.2がさらに好ましい。
【0076】
本発明の非晶質ポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分の縮重合によるポリエステルユニットを含む樹脂をいい、ポリエステルだけでなく、ポリエステル・ポリアミド等も含まれるが、これらの中では、トナーの保存性及び帯電安定性の観点から、ポリエステルが好ましい。
【0077】
なお、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。
【0078】
ポリエステル変性樹脂としては、例えば、ポリエステルがウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル、ポリエステルがエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル、及びポリエステル成分とビニル系樹脂成分を含む2種以上の樹脂成分を有する複合樹脂等が挙げられる。
【0079】
ポリエステル成分とビニル系樹脂成分とを有する複合樹脂は、それぞれの樹脂を必要に応じて開始剤等の存在下に溶融混練する方法、それぞれの樹脂を溶剤に溶解させ混合する方法、それぞれの樹脂の原料モノマー混合物を重合させる方法等の、いずれの方法により製造されたものでもよい。好ましくは、前記ポリエステル成分の原料モノマー及びビニル系樹脂成分の原料モノマーを用いて、縮重合反応と付加重合反応とを行う方法により得られる樹脂(特開平7−98518号公報)である。具体的には、縮重合系樹脂の原料モノマーと付加重合系樹脂の原料モノマーに加えて、さらに縮重合系樹脂の原料モノマー及び付加重合系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る化合物(両反応性モノマー)を用いて得られるハイブリッド樹脂(縮重合系樹脂と付加重合系樹脂とが部分的に両反応性モノマーを介して結合した樹脂)であることが好ましい。両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシル基、より好ましくはカルボキシル基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸がより好ましい。
【0080】
ビニル系樹脂成分の原料モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン化合物;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。反応性、粉砕性及び帯電安定性の観点から、スチレン、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸メチルが好ましく、スチレン及び/又は(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが、ビニル系樹脂成分中、50重量%以上含有されていることが好ましく、より好ましくは80〜100重量%である。
【0081】
なお、ビニル系樹脂成分の原料モノマーを重合させる際には、重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて使用してもよい。
【0082】
ビニル系樹脂成分の原料モノマーに対するポリエステル成分の原料モノマーの重量比(ポリエステル成分の原料モノマー/ビニル系樹脂成分の原料モノマー)は、ポリエステル成分により連続相を形成する観点から、好ましくは55/45〜95/5、より好ましくは60/40〜95/5、さらに好ましくは70/30〜90/10である。なお、両反応性モノマーはポリエステル成分の原料モノマーとする。
【0083】
本発明の非晶質ポリエステルは、低分子量であっても、高いガラス転移点に調整することが可能であり、ガラス転移点は、トナーの低温定着性及び保存性の観点から、40〜100℃が好ましく、45〜85℃がより好ましく、45〜80℃がさらに好ましい。
【0084】
本発明の非晶質ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性の観点から180℃以下が好ましく、トナーの保存性及び耐久性の観点から80℃以上が好ましく、トナーの低温定着性、保存性及び耐久性の観点から、80〜180℃が好ましく、90〜160℃がより好ましく、95〜150℃がさらに好ましい。
【0085】
本発明の非晶質ポリエステルは、軟化点が低くとも、高いガラス転移点に調整することが可能であることから、トナーの低温定着性、保存性及び耐久性の観点から、軟化点が80℃以上115℃未満である場合、ガラス転移点は40〜70℃が好ましく、50〜65℃がより好ましい。また、軟化点が115〜180℃である場合、ガラス転移点は55〜90℃でが好ましく、60〜85℃がより好ましい。
【0086】
本発明の非晶質ポリエステルの酸価は、トナーの帯電安定性の観点から、1〜80mgKOH/gが好ましく、2〜70mgKOH/gがより好ましく、3〜60mgKOH/gがさらに好ましく、3〜20mgKOH/gがさらに好ましく、水酸基価は、5〜80mgKOH/gが好ましく、5〜75mgKOH/gがより好ましく、10〜70mgKOH/gがさらに好ましく、40〜70mgKOH/gがさらに好ましい。
【0087】
なお、非晶質ポリエステルの軟化点、ガラス転移点、酸価及び水酸基価は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。例えば、縮重合の反応温度を高めたり、反応時間を長くしたり、触媒量を増加させたり、助触媒を併用したりすることで、縮重合反応を進め、軟化点、ガラス転移点を高めることができる。また、縮重合反応に用いられる、カルボン酸成分とアルコール成分との合計量中のフラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量を増加させることでガラス転移点を高めることもできる。
【0088】
本発明の結着樹脂は、トナーの低温定着性、保存性、耐久性及び帯電安定性の観点から、軟化点の高い樹脂(高軟化点樹脂)と低い樹脂(低軟化点樹脂)とからなることが好ましく、高軟化点樹脂、低軟化点樹脂共にフラン環を含む樹脂であることがより好ましい。
【0089】
高軟化点樹脂と低軟化点樹脂との軟化点の差は、トナーの低温定着性及び保存性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20〜60℃である。
【0090】
高軟化点樹脂の軟化点は、好ましくは115〜180℃、より好ましくは120〜160℃であり、低軟化点樹脂の軟化点は、好ましくは80℃以上、115℃未満、より好ましくは90〜110℃である。高軟化点樹脂の低軟化点樹脂に対する重量比(高軟化点樹脂/低軟化点樹脂)は、1/4〜4/1が好ましく、1/3〜3/1がより好ましく、1/3〜1/1がさらに好ましい。
【0091】
本発明の非晶質ポリエステルを結着樹脂として用いることにより、トナーの低温定着性と保存性を維持しつつ、耐久性に優れた電子写真用トナーが得られる。
【0092】
本発明のトナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、前記非晶質ポリエステル以外の公知の結着樹脂、例えば、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の他の樹脂が併用されていてもよいが、本発明の非晶質ポリエステルの含有量は、結着樹脂中、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%がよりさらに好ましい。
【0093】
本発明のトナーには、さらに、着色剤、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0094】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
【0095】
離型剤としては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、シリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナバロウワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等のワックスが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0096】
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
【0097】
離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、結着樹脂中への分散性の観点から、0.5〜10重量部が好ましく、1〜8重量部がより好ましく、1.5〜7重量部がさらに好ましい。
【0098】
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
【0099】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等が挙げられる。
【0100】
また、負帯電性の荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-77」(保土谷化学工業社製)、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット社製);サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「E-304」(以上、オリエント化学工業社製)、「TN-105」(保土谷化学工業社製);銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体;有機金属化合物、例えば「TN105」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。
【0101】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.01〜5重量部がより好ましく、0.3〜3重量部がさらに好ましく、0.5〜3重量部がよりさらに好ましく、1〜2重量部がよりさらに好ましい。
【0102】
本発明には、帯電性を向上させるために、荷電制御樹脂を含有することが好ましい。荷電制御樹脂としては、スチレン系樹脂が好ましく、トナーの正帯電性発現の観点からは、4級アンモニウム塩基含有スチレン系樹脂が好ましく、トナーの負帯電性発現の観点からは、スルホン酸基含有スチレン系樹脂が好ましい。
【0103】
荷電制御樹脂として含有されるスチレン系樹脂の使用量は、トナーの帯電性向上の観点から、結着樹脂100重量部に対して、3〜40重量部が好ましく、4〜30重量部がより好ましく、5〜20重量部がさらに好ましい。
【0104】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。一方、トナーの小粒径化の観点からは、重合法によるトナーが好ましい。
【0105】
本発明の電子写真用トナーは、本発明の結着樹脂を含む原料を水系媒体中で粒子化する工程を含む方法により得られるものであってもよい。その製造方法は特に限定されず、例えば、(A)水系媒体中で予め結着樹脂を含有する一次粒子を形成させた後、一次粒子を凝集・合一させる方法、(B)水系媒体中で予め結着樹脂を含有する一次粒子を形成させた後、一次粒子を融着させる方法、(C)結着樹脂を含む原料を水系媒体中で分散させて、粒子化する方法等が挙げられる。
【0106】
本発明においては、方法(A)が好ましく、結着樹脂を含有した原料を有機溶媒中に溶解又は分散させて調製された混合溶液に、水性媒体を導入した後、有機溶媒を除去し、結着樹脂を含有した一次粒子の水分散液を得る工程(1)、及び該一次粒子を凝集、合一させる工程(2)を含む方法が好ましい。方法(B)の具体例としては、結着樹脂を溶解したラジカル重合性単量体溶液を乳化重合して樹脂微粒子を得、この樹脂微粒子を水系媒体中で融着させる方法(特開2001−42568号公報参照)、方法(C)の具体例としては、結着樹脂を含有した原料を加熱溶融し、結着樹脂の溶融状態を維持しながら、有機溶剤を含まない水性媒体中に分散し、次いで乾燥する方法(特開2001−235904号公報参照)等がそれぞれ挙げられる。
【0107】
工程(1)は、結着樹脂を含有した原料を有機溶媒中に溶解又は分散させて調製された混合溶液に、水性媒体を導入した後、有機溶媒を除去し、結着樹脂を含有する一次粒子水分散液を得る工程である。
【0108】
有機溶剤の使用量は、結着樹脂100重量部に対して、100〜1000重量部が好ましい。混合溶液に、水、さらに必要に応じ中和剤を混合し、攪拌した後、得られた分散体から有機溶剤を除去し、自己分散型樹脂の一次粒子水分散液を得ることができる。
【0109】
水系媒体の使用量は、有機溶剤100重量部に対して、100〜1000重量部が好ましい。なお、方法(1)に用いられる水系媒体は、有機溶剤等の溶剤を含有していてもよいが、水を好ましくは50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上含有するものである。
【0110】
混合物を攪拌させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等のアルカリ金属;アンモニア、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、及びトリブチルアミン等の有機塩基が挙げられる。中和剤の添加量は、中和に供する反応後のポリエステルの酸価に対して、0.5〜1.5当量が好ましく、0.7〜1.3当量がより好ましく、0.8〜1.2当量がさらに好ましい。
【0111】
結着樹脂の溶融粘度及び融点の低下、並びに生成する一次粒子の分散性の向上を目的として、分散剤を用いることができる。分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン界面活性剤;ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機塩が挙げられる。分散剤の使用量は、乳化安定性及び洗浄性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
【0112】
工程(1)により、得られた結着樹脂を含有した一次粒子(以下、単に一次粒子ともいう)の分散液の固形分濃度は、分散液の安定性と凝集工程での分散液の取扱い性の観点から、7〜50重量%が好ましく、より好ましくは7〜40重量%である。なお、固形分には、樹脂等の不揮発性成分が含まれる。
【0113】
一次粒子の平均粒径は、続く工程で均一に凝集させる観点から、0.05〜3μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましく、0.05〜0.8μmがさらに好ましい。本発明において一次粒子の平均粒径とは、体積中位粒径(D50)を指し、レーザー回折型粒径測定機等により測定できる。
【0114】
続いて、工程(1)で得られた一次粒子を、凝集、合一させる工程(工程(2))について説明する。
【0115】
工程(2)において、工程(1)で得られた一次粒子を凝集させる凝集工程における系内の固形分濃度は、結着樹脂の分散液に水を添加して調整することができ、均一な凝集を起こさせるために、5〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、5〜20重量%がさらに好ましい。
【0116】
凝集工程における系内のpHは、混合液の分散安定性と、結着樹脂等の微粒子の凝集性とを両立させる観点から、2〜10が好ましく、2〜9がより好ましく、3〜8がさらに好ましい。
【0117】
同様の観点から、凝集工程における系内の温度は、結着樹脂の軟化点−70℃以上、軟化点以下が好ましい。
【0118】
また、着色剤、荷電制御剤等の添加剤は、一次粒子を調製する際に結着樹脂に予め混合してもよく、別途各添加剤を水等の分散媒中に分散させた分散液を調製して、一次粒子と混合し、凝集工程に供してもよい。一次粒子を調製する際に結着樹脂に添加剤を予め混合する場合には、予め結着樹脂と添加剤とを溶融混錬することが好ましい。溶融混練には、オープンロール型二軸混練機を使用することが好ましい。オープンロール型二軸混練機は、2本のロールが並行に近接して配設された混練機であり、各ロールに熱媒体を通すことにより、加熱機能又は冷却機能を付与することができる。従って、オープンロール型二軸混練機は、溶融混練する部分がオープン型であり、また加熱ロールと冷却ロールを備えていることから、従来用いられている二軸押出機と異なり、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。
【0119】
凝集工程においては、凝集を効果的に行うために凝集剤を添加することができる。凝集剤としては、有機系では、4級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等、無機系では、無機金属塩、2価以上の金属錯体等が用いられる。無機金属塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体が挙げられる。
【0120】
凝集剤の使用量は、トナーの耐環境特性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
【0121】
続いて、前記凝集工程で得られた少なくとも結着樹脂を含有した凝集粒子を加熱して、合一させる(合一工程)。
【0122】
合一工程における系内の温度は、目的とするトナーの粒径、粒度分布、形状制御、及び粒子の融着性の観点から、結着樹脂の軟化点−50℃以上、軟化点+10℃以下が好ましく、軟化点−45℃以上、軟化点+10℃以下がより好ましく、軟化点−40℃以上、軟化点+10℃以下がさらに好ましい。また、攪拌速度は凝集粒子が沈降しない速度が好ましい。なお、本発明において、結着樹脂として、2種類以上の樹脂を用いた場合は、混合樹脂の軟化点を結着樹脂の軟化点とする。
【0123】
工程(2)により得られた合一粒子を、適宜、ろ過などの固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程に供することにより、トナーを得ることができる。
【0124】
洗浄工程では、トナーとして十分な帯電特性及び信頼性を確保する目的から、トナー表面の金属イオンを除去するため酸を用いることが好ましい。また、着色剤等の分散液に非イオン性界面活性剤を使用した場合は、洗浄により完全に除去することが好ましく、非イオン性界面活性剤の曇点以下での水系溶液での洗浄が好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
【0125】
また、乾燥工程では、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法等、任意の方法を採用することができる。
【0126】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0127】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、無機微粒子を外添剤として用いるのが好ましい。具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる1種以上が好ましく挙げられ、これらの中では、シリカが好ましく、埋め込み防止の観点から、比重の小さいシリカが含有されているのがより好ましい。
【0128】
シリカは、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
【0129】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノジシラザン、環状オルガノポリシラザン、線状オルガノポリシロキサン等が例示され、具体的には、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの中ではヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0130】
外添剤の平均粒径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、10〜250nmが好ましく、10〜200nmがより好ましく、15〜150nmがさらに好ましい。
【0131】
外添剤の含有量は、外添剤で処理する前のトナー100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜3重量部であり、さらに好ましくは0.3〜3重量部である。
【0132】
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
【実施例】
【0133】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0134】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却しそのまま1分間静止させた。その後、昇温速度50℃/分で測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とした。
【0135】
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0136】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0137】
〔樹脂の水酸基価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。
【0138】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0139】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0140】
〔外添剤の平均粒径〕
平均粒径は、個数平均粒径を指し、外添剤の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定した、500個の粒子の粒径の平均値をいう。長径と短径がある場合は長径を指す。
【0141】
樹脂製造例1〔樹脂1、2、4〜7、9〜17〕
表1〜4に示す所定量の原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温を行った。その後210℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、40kPaにて表1〜4に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステル(樹脂1、2、4〜7、9〜17)を得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
【0142】
樹脂製造例2〔樹脂3、19〕
表1、4に示す所定量の原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、235℃にて10時間反応を行った。その後235℃、8kPaにて1時間反応を行った後、210℃まで冷却し、20kPaにて表1、4に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステル(樹脂3、19)を得た。
【0143】
樹脂製造例3〔樹脂8、18〕
表2、4に示す所定量の無水トリメリット酸を除く原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温を行った。その後210℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、表2、4に示す所定量の無水トリメリット酸を投入した。1時間常圧にて反応を行った後、40kPaにて表2、4に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステル(樹脂8、18)を得た。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
【表3】

【0147】
【表4】

【0148】
実施例1〜16及び比較例1、2
表5に示す結着樹脂100重量部、着色剤「Regal 330R」(キャボット社製、カーボンブラック)5重量部、離型剤「三井ハイワックスNP055」(三井化学社製、ポリプロピレンワックス、融点:125℃)2重量部、及び負帯電性荷電制御剤「ボントロン E-81」(オリエント化学工業社製)1重量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度80℃で溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8μmのトナー粒子を得た。
【0149】
得られたトナー粒子100重量部に、疎水性シリカ「NAX-50」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:HMDS、平均粒径:約30nm)1.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
【0150】
実施例17
結着樹脂、着色剤等とともに、荷電制御樹脂「FCA-701PT」(藤倉化成社製、4級アンモニウム塩基含有スチレンアクリル系樹脂、軟化点:123℃)5重量部を使用し、負帯電性荷電制御剤の代わりに、正帯電性荷電制御剤「ボントロン P-51」(オリエント化学工業社製)1重量部を使用し、外添剤として「NAX-50」の代わりに、疎水性シリカ「TG-C243」(キャボット社製、平均粒径100nm、疎水化処理剤:ヘキサメチルジシラザン+オクチルトリエトキシシラン)1.0重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0151】
実施例18、20
着色剤として、カーボンブラック「Regal 330R」の代わりに、実施例18では、シアン顔料「Toner Cyan BG」(クラリアント社製、P.B.15:3)5重量部、実施例20では、イエロー顔料「Paliotol Yellow D1155」(BASF社製、P.Y.185)6重量部を使用し、離型剤として「三井ハイワックスNP055」の代わりに、「HNP-9」(日本精鑞社製、パラフィンワックス、融点:80℃)2重量部を使用し、負帯電性荷電制御剤として、「ボントロン E-81」(オリエント化学工業社製)の代わりに「LR-147」(日本カーリット社製)1重量部を使用し、外添剤として「NAX-50」の代わりに、疎水性シリカ「R-972」(日本アエロジル社製、平均粒径16nm、疎水化処理剤:ジメチルジクロロシラン)1.0重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0152】
実施例19
着色剤として、カーボンブラック「Regal 330R」の代わりにマゼンタ顔料「スーパーマゼンタR」(大日本インキ化学工業社製、P.R.122)5重量部を使用し、離型剤として、「三井ハイワックスNP055」の代わりに「HNP-9」(日本精鑞社製、パラフィンワックス、融点:80℃)2重量部を使用し、負帯電性荷電制御剤として、「ボントロン E-81」(オリエント化学工業社製)の代わりにLR-297」(日本カーリット社製)1重量部を使用し、外添剤として「NAX-50」の代わりに疎水性シリカ「R-972」(日本アエロジル社製、平均粒径16nm、疎水化処理剤:ジメチルジクロロシラン)1.0重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0153】
実施例21
〔樹脂分散液の調製〕
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた5L容の容器にメチルエチルケトン600gを投入し、表5に示す樹脂1 140gと樹脂8 60gを室温にて添加し、溶解させた。得られた溶液に、トリエチルアミン3.9g(結着樹脂酸価に対して1当量)を添加して中和し、続いてイオン交換水2000gを添加した後、250r/minの攪拌速度で、減圧下、50℃以下の温度でメチルエチルケトンを留去し、自己分散型の水系樹脂粒子分散液(樹脂含有量:9.6重量%(固形分換算))を得た。得られた樹脂分散体中に分散するポリエステル粒子(一次粒子)の平均粒径は0.3μmであった。
【0154】
〔着色剤分散液の調製〕
シアン顔料「Toner Cyan BG」(クラリアント社製、P.B.15:3)50g、非イオン性界面活性剤(エマルゲン150、花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:18.4、曇点:100℃以上)5g及びイオン交換水200gを混合し、銅フタロシアニンを溶解させ、ホモジナイザーを用いて10分間分散させて、着色剤分散液を得た。
【0155】
〔離型剤分散液の調製〕
「HNP-9」(日本精鑞社製、パラフィンワックス、融点:80℃)50g、カチオン性界面活性剤(サニゾールB50、花王(株)製)5g及びイオン交換水200gを95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて、パラフィンワックスを分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、パラフィンワックスが平均粒径550nmで分散した離型剤分散液を得た。
【0156】
〔荷電制御剤分散液の調製〕
荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)50g、非イオン性界面活性剤(エマルゲン150、花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:18.4、曇点:100℃以上)5g及びイオン交換水200gを混合し、ガラスビーズを使用し、サンドグラインダーを用いて10分間分散させて、荷電制御剤が平均粒径500nmで分散した荷電制御剤分散液を調製した。
【0157】
〔凝集工程〕
得られた樹脂粒子分散液490g、着色剤分散液20g、離型剤分散液15g、荷電制御剤分散液7g及びカチオン性界面活性剤(サニゾールB50、花王(株)製)2gを、丸型のステンレス製フラスコ中でホモジナイザーを用いて混合し、分散させた後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら48℃まで加熱した。さらに、48℃で1時間保持した後、重量平均粒径が6.0μmの凝集粒子が形成されていることが確認された。この時の固形分濃度は8.8重量%、pHは6.8であった。
【0158】
〔合一工程〕
凝集粒子分散液に、アニオン性界面活性剤(ペレックスSS-L、花王(株)製)3gを添加した後、前記ステンレス製フラスコに還流管を装着し、攪拌を継続しながら、5℃/minの速度で80℃まで加熱し、5時間保持して、凝集粒子を合一し、融合させた。その後、冷却し、融合粒子をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させた。得られた着色樹脂微粒子粉末の体積中位粒径(D50)は6.3μmであった。
【0159】
〔表面処理工程〕
得られた着色樹脂微粒子粉末100重量部に対して1.0重量部の疎水性シリカ「R-972」(日本アエロジル社製、平均粒径16nm、疎水化処理剤:ジメチルジクロロシラン)を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して外添し、シアントナーとした。
【0160】
実施例22
結着樹脂を、樹脂3 70g、樹脂8 30gに変更した以外は、実施例21と同様にして、シアントナーを得た。乳化粒子の重量平均粒径が0.2μmの凝集粒子が形成されていることが確認され、この時の固形分濃度は9.8重量%、pHは6.7であった。
【0161】
試験例1〔低温定着性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置(但し、実施例17の評価については、非磁性一成分現像方式プリンター「HL-2040」(ブラザー工業社製)を改造した装置)にトナーを実装し、シャープ(株)製の紙[CopyBond SF-70NA(75g/m2)]上に、未定着画像を得た。総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度390mm/sec)を用い、定着ローラーの温度を100℃から240℃へと10℃ずつ順次上昇させながら、最低定着温度に達するまで、各温度で定着紙に未定着画像を定着させた。定着画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の画像の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、以下の評価基準に従って、低温定着性を評価した。結果を表5に示す。なお、表中のカッコ内の数値は最低定着温度の測定値を示す。
【0162】
〔評価基準〕
A:最低定着温度が140℃未満である。
B:最低定着温度が140℃以上、170℃未満である。
C:最低定着温度が170℃以上である。
【0163】
試験例2〔保存性〕
トナー4gを半径12mmの円筒型容器に入れ、温度55℃、湿度60%の環境下で72時間放置した。放置後、トナーを容器から取り出し、トナー凝集の発生程度を目視にて観察し、以下の評価基準に従って、保存性を評価した。結果を表5に示す。
【0164】
〔評価基準〕
A:72時間後も凝集は全く認められない。
B:48時間後で凝集は認められないが72時間後で凝集が認められる。
C:48時間後で凝集が認められる。
【0165】
試験例3〔耐久性〕
「ページプレスト N-4」(カシオ計算機社製、定着:接触定着方式、現像:非磁性一成分現像方式、現像ロール径:2.3cm)にトナーを実装し、温度32℃、湿度85%の環境下にて黒化率5.5%の斜めストライプのパターンを連続して印刷した。途中、500枚ごとに黒ベタ画像を印字し、画像上のスジの有無を確認した。印刷は、画像上にスジが発生した時点で中止し、最高5000枚まで行った。画像上にスジが目視にて観察された時点までの印字枚数を、現像ロールにトナーが融着・固着したことによりスジが発生した枚数とし、以下の評価基準に従って、耐久性を評価した。即ち、スジの発生しない枚数が多いほど、トナーの耐久性が高いものと判断できる。結果を表5に示す。なお、表中のカッコ内の数値は耐久性のスジが観察された時点までの印字枚数を示す。
【0166】
〔評価基準〕
A:スジが5000枚の印字で発生せず
B:スジが2000枚以上5000枚未満の印字で発生
C:スジが2000枚未満の印字で発生
【0167】
【表5】

【0168】
以上の結果より、フラン環を有していない非晶質ポリエステルを結着樹脂として含有する比較例1、2と対比して、実施例1〜22では、低温定着性、保存性及び耐久性のいずれもが良好であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明のトナー用結着樹脂は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられるトナーの結着樹脂として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラン環を有する非晶質ポリエステルを含むトナー用結着樹脂であって、前記非晶質ポリエステルがカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合して得られるものであり、該カルボン酸成分と該アルコール成分の少なくともいずれかが、炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又は炭素数6〜40の脂肪族アルコールを含むアルコール成分である、トナー用結着樹脂。
【請求項2】
カルボン酸成分とアルコール成分の少なくともいずれかが、少なくともフラン環を有するカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又はフラン環を有するアルコールを含むアルコール成分である、請求項1記載のトナー用結着樹脂。
【請求項3】
フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量が、カルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、10〜95モル%である、請求項1又は2記載のトナー用結着樹脂。
【請求項4】
アルコール成分が、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する炭素数3〜5の脂肪族ジオールを含む、請求項1〜3いずれか記載のトナー用結着樹脂。
【請求項5】
炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物と炭素数6〜40の脂肪族アルコールとの合計量が、カルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、1〜35モル%である、請求項1〜4いずれか記載のトナー用結着樹脂。
【請求項6】
炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物が、アルキル(炭素数8〜22)コハク酸及び/又はアルケニル(炭素数8〜22)コハク酸である、請求項1〜5いずれか記載のトナー用結着樹脂。
【請求項7】
フラン環を有するカルボン酸化合物が、フランジカルボン酸化合物、フランカルボン酸化合物及びヒドロキシフランカルボン酸化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項2〜6いずれか記載のトナー用結着樹脂。
【請求項8】
フラン環を有するアルコールが、フランジアルコール、ヒドロキシメチルフルフリルアルコール及びフルフリルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項2〜7いずれか記載のトナー用結着樹脂。
【請求項9】
〔炭素数6〜40の脂肪族カルボン酸化合物と炭素数6〜40の脂肪族アルコールとの合計量〕/〔フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量〕のモル比が0.03〜5である、請求項2〜8いずれか記載のトナー用結着樹脂。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか記載のトナー用結着樹脂を含有してなる、電子写真用トナー。

【公開番号】特開2012−214680(P2012−214680A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235384(P2011−235384)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】