説明

トナー組成物およびプロセス

【課題】環境に優しい代替的なトナーが依然として望まれている。本開示は、環境に優しいトナー、およびこれらのトナーを製造するプロセスを提供する。
【解決手段】カンファー酸を生物由来の樹脂の約1重量%〜約60重量%の量で含む、少なくとも1種類の生物由来のアモルファスポリエステル樹脂と;場合により、少なくとも1種類の結晶性ポリエステル樹脂と;場合により、着色剤、ワックス、凝固剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分とを含む、トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年4月26日に出願された米国特許出願第13/094,065号(内容全体が本明細書に参考として組み込まれる)の一部継続出願である。
【0002】
本開示は、トナー組成物中で使用するのに適した樹脂に関する。より特定的には、本開示は、トナー組成物で使用するのに適した生物由来のポリエステル樹脂、およびこの樹脂を製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
トナーを調製する技術分野の常識の範囲内に、多くのプロセスがある。乳化凝集(EA)は、このような方法のひとつである。トナーを調製するための乳化凝集/融着プロセスは、多くの特許に記載されており、例えば、米国特許第5,290,654号、同第5,278,020号、同第5,308,734号、同第5,344,738号、同第6,593,049号、同第6,743,559号、同第6,756,176号、同第6,830,860号、同第7,029,817号、同第7,329,476号、米国特許公開第2006/0216626号、第2008/0107989号、第2008/0107990号、第2008/0236446号、第2009/0047593号に記載されている。上の特許それぞれの開示内容は、全体的に本明細書に参考として組み込まれる。
【0004】
ポリエステルEA超低融点(ULM)トナーは、例えば、米国特許公開第2008/0153027号(内容全体が本明細書に参考として組み込まれる)に記載されているように、アモルファスポリエステル樹脂および結晶性ポリエステル樹脂を利用して調製されている。
【0005】
トナーの作成に利用される多くのポリマー材料は、化石燃料の抽出および処理に基づくものであり、最終的に、温室ガスが増加し、環境中に非分解性材料が蓄積してしまう。さらに、現行のポリエステル系トナーは、ビスフェノールAモノマーに由来するものもあり、この物質は、既知の発癌性物質/内分泌かく乱物質である。
【0006】
このような問題の多いモノマーの需要を減らすために、生物由来のポリエステル樹脂が利用されている。一例として、同時係属中の米国特許公開第2009/0155703号に開示されているように、生物由来の樹脂(例えば、ポリヒドロキシアルカノエートを含む半結晶性生分解性ポリエステル樹脂)の粒子を含むトナーが挙げられ、このトナーは、乳化凝集プロセスによって調製される。
【0007】
費用対効果が高く、環境に優しい代替的なトナーが依然として望まれている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、環境に優しいトナー、およびこれらのトナーを製造するプロセスを提供する。いくつかの実施形態では、本開示のトナーは、約1重量%〜約60重量%の量でカンファー酸を含む少なくとも1種類の生物由来のアモルファスポリエステル樹脂と;場合により、少なくとも1種類の結晶性ポリエステル樹脂と;場合により、着色剤、ワックス、凝固剤、およびこれらの組み合わせのような1つ以上の成分とを含む。
【0009】
他の実施形態では、本開示のトナーは、D−イソソルビド、ナフタレンジカルボキシレート、アゼライン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、コハク酸、無水ドデセニルコハク酸、テレフタル酸ジメチル、ダイマー酸、プロピレングリコール、エチレングリコール、およびこれらの組み合わせのような少なくとも1つの他の要素と、カンファー酸とを組み合わせて含む少なくとも1種類の生物由来のアモルファスポリエステル樹脂と;場合により、少なくとも1種類の結晶性ポリエステル樹脂と;場合により、着色剤、ワックス、凝固剤、およびこれらの組み合わせのような1つ以上の成分とを含み、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂は、生物由来のモノマーを、樹脂の約45重量%〜約100重量%の量で含む。
【0010】
さらに他の実施形態では、本開示のトナーは、D−イソソルビド、ナフタレンジカルボキシレート、アゼライン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、コハク酸、無水ドデセニルコハク酸、テレフタル酸ジメチル、ダイマー酸、プロピレングリコール、エチレングリコール、およびこれらの組み合わせのような少なくとも1つの他の要素と、約1重量%〜約60重量%の量のカンファー酸とを組み合わせて含む少なくとも1種類の生物由来のアモルファスポリエステル樹脂と;少なくとも1種類の結晶性ポリエステル樹脂と;着色剤、ワックス、凝固剤、およびこれらの組み合わせのような1つ以上の成分とを含み、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂は、生物由来のモノマーを、樹脂の約45重量%〜約100重量%の量で含む。
【0011】
本開示の種々の実施形態を、図面を参照しつつ以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本開示の樹脂のレオロジー温度プロフィールを他の樹脂と比較して示したグラフである。
【図2】図2は、本開示の別の樹脂のレオロジー温度プロフィールを他の樹脂と比較して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、トナー組成物を調製するためのトナープロセス、およびこれらのプロセスによって製造されたトナーを提供する。いくつかの実施形態では、化学プロセスによって、例えば、凝固剤存在下、生物由来のラテックス樹脂を、場合により、アモルファス樹脂、結晶性樹脂、ワックス、着色剤とともに凝集させた後、この凝集物を安定化し、この混合物を樹脂のガラス転移温度温度(Tg)より高い温度まで加熱し、トナーの粒径を与えることによって融着または融合させる乳化凝集によって製造されてもよい。
【0014】
生物由来の樹脂または製品は、本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態では、米国環境行政局が定義しているような、全体またはかなりの部分が生体産物または再生可能な国内農業材料(植物、動物または海産物を含む)および/または森林材料で構成されていてもよい商業製品および/または工業製品を含む(食品または餌以外のもの)。
【0015】
いくつかの実施形態では、生物由来のポリエステル樹脂をラテックス樹脂として利用してもよい。いくつかの実施形態では、樹脂は、カンファー酸を含んでいてもよい。
【0016】
(生物由来の樹脂)
本開示で利用される樹脂としては、生物由来のアモルファス樹脂が挙げられる。本明細書で使用される場合、生物由来の樹脂は、石油化学物質の代わりに、植物由来の原料のような生体源(いくつかの実施形態では、植物油)から誘導される樹脂または樹脂配合物である。環境への影響が少ない再生可能なポリマーの場合、このポリマーの主な利点は、限りある石油化学資源への依存を減らすことであり、これらのポリマーが、大気から炭素を捕捉することである。生物由来の樹脂としては、いくつかの実施形態では、例えば、樹脂の少なくとも一部分が天然の生体材料(例えば、動物、植物、これらの組み合わせなど)から誘導された樹脂が挙げられる。
【0017】
いくつかの実施形態では、生物由来の樹脂としては、天然トリグリセリド植物油(例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ油)またはフェノール系植物油(例えば、カシューナッツ殻液(CNSL))、これらの組み合わせなどを挙げることができる。適切な生物由来のアモルファス樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリイソブチレート、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0018】
利用可能な生物由来のアモルファスポリマー樹脂の例としては、米国特許第5,959,066号、同第6,025,061号、同第6,063,464号、同第6,107,447号、米国特許公開第2008/0145775号、同第2007/0015075号(それぞれの内容全体が本明細書に参考として組み込まれる)に記載されているような、大豆油、D−イソソルビド、および/またはアミノ酸(例えば、L−チロシン、グルタミン酸)の脂肪族ダイマー酸またはジオールを含むモノマーから誘導されるポリエステルが挙げられる。
【0019】
生物由来の樹脂を作成するために利用されるモノマーとしては、いくつかの実施形態では、D−イソソルビド、ナフタレンジカルボン酸、さらなるジカルボン酸(例えば、アゼライン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、コハク酸、クエン酸、およびこれらの組み合わせ)、酸無水物(例えば、無水ドデセニルコハク酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、およびこれらの組み合わせ)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸、およびこれらの組み合わせを含むフタレートおよび/またはテレフタレートが挙げられる。生物由来の樹脂を作成するために利用される他のモノマーとしては、例えば、ダイマー酸(例えば、Cognis Corp.製のEMPOL 1061(登録商標)、EMPOL 1062(登録商標)、EMPOL 1012(登録商標)、EMPOL 1016(登録商標)、または、Croda Ltd.製のPRIPOL 1009(登録商標)、PRIPOL 1012(登録商標)、PRIPOL 1013(登録商標))、ダイマージオール(例えば、Cognis Corp.製のSOVERMOL 908、またはCroda Ltd.製のPRIPOL 2033)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。プロピレングリコールおよび/またはエチレングリコールを含むグリコールを用い、生物由来の樹脂を作成してもよい。いくつかの実施形態では、上の成分の組み合わせを利用してもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、適切な生物由来のポリマー樹脂は、カンファー酸を含むポリエステルを含んでいてもよい。ショウノウは、テレピン油から誘導される天然産物である(したがって、林業および製紙業で廃棄物として生成するロジンの副生成物である)α−ピネンから合成によって作られる。カンファー酸は、このプロセスで作られる半合成ショウノウから調製されてもよく、または、最後から2番目の中間体材料(イソボルネオール)から調製されてもよい。したがって、カンファー酸のそれぞれの炭素原子は、結局のところ、木材の樹脂に由来する。カンファー酸は、少量市販されている二酸のひとつであり、再生可能な資源から誘導され、環構造を含む。カンファー酸の堅固な環構造は、アモルファス樹脂中でテレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはナフタレンジカルボン酸の代わりに用いるのに適している。これらの石油由来のモノマーをカンファー酸と置き換えると、得られる樹脂のうち、生物由来で、そのため再生可能である物質の含有量が増える。
【0021】
本開示によれば、カンファー酸の使用によって、トナー製造で利用されるモノマーの環境に優しい代替品が得られるだけではなく、トナー用のポリエステルを調製するために用いられる場合、ガラス転移温度が十分高く、平衡水分含有量が低い樹脂を得ることができ、このことは、得られるトナーの電子写真による帯電特性および融合特性にとって望ましいだろう。
【0022】
いくつかの実施形態では、生物由来のポリエステル樹脂を調製するために用いられる出発材料のモノマーのうち少なくとも45%が、生物由来の供給源に由来するものであってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の生物由来のポリエステル樹脂は、生物由来のモノマーを、樹脂の約45重量%〜約100重量%の量で、いくつかの実施形態では、樹脂の約50重量%〜約70重量%の量で含んでいてもよい。
【0023】
例えば、本開示の生物由来の樹脂は、いくつかの実施形態では、D−イソソルビドを、生物由来の樹脂の約2重量%〜約60重量%、いくつかの実施形態では、約5重量%〜約40重量%の量で、ジメチルナフタレン 2,6−ジカルボキシレートを、生物由来の樹脂の約2重量%〜約50重量%、いくつかの実施形態では、約5重量%〜約40重量%の量で、カンファー酸を、生物由来の樹脂の約1重量%〜約60重量%、いくつかの実施形態では、約10重量%〜約50重量%の量で、ダイマー酸を、生物由来の樹脂の約0.02重量%〜約50重量%の量で、いくつかの実施形態では、約0.04重量%〜約20重量%の量で、グリコール(例えば、プロピレングリコール)を、生物由来の樹脂の約5重量%〜約50重量%、いくつかの実施形態では、約10重量%〜約40重量%の量で含んでいてもよい。
【0024】
他の実施形態では、本開示の生物由来の樹脂は、無水ドデセニルコハク酸を、生物由来の樹脂の約2重量%〜約40重量%、いくつかの実施形態では、約5重量%〜約30重量%の量で、カンファー酸を、生物由来の樹脂の約1重量%〜約60重量%、いくつかの実施形態では、約10重量%〜約50重量%の量で、テレフタル酸ジメチルを、生物由来の樹脂の約2重量%〜約50重量%、いくつかの実施形態では、約5重量%〜約40重量%の量で、グリコール(例えば、プロピレングリコール)を、生物由来の樹脂の約5重量%〜約50重量%、いくつかの実施形態では、約10重量%〜約40重量%の量で含んでいてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、適切な生物由来のアモルファス樹脂は、ガラス転移温度が、約25℃〜約90℃、いくつかの実施形態では、約30℃〜約70℃であってもよく、軟化点(時に、本明細書ではTsと呼ばれる)が、約90℃〜約140℃、いくつかの実施形態では、約100℃〜約130℃、重量平均分子量(Mw)が、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定する場合、約1,500グラム/モル(g/mol)〜約100,000g/mol、いくつかの実施形態では、約3,000g/mol〜約20,000g/molであってもよく、数平均分子量(Mn)が、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定する場合、約1,000g/mol〜約50,000g/mol、いくつかの実施形態では、約2,000g/mol〜約15,000g/molであってもよく、分子量分布(Mw/Mn)(本明細書では、時に多分散性(PDI)と呼ばれる)が、約1〜約20、いくつかの実施形態では、約2〜約15であってもよく、炭素/酸素比が、約2〜約6、いくつかの実施形態では、約3〜約5であってもよい。いくつかの実施形態では、ラテックスに利用される樹脂の組み合わせは、約130℃での溶融粘度が約10〜約100,000Pa*S、いくつかの実施形態では、約50〜約10,000Pa*Sであってもよい。
【0026】
生物由来のアモルファス樹脂は、例えば、トナー要素の約10〜約90重量%、いくつかの実施形態では、約20〜約80重量%の量で存在していてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂は、粒子の直径が約40nm〜約800nm、いくつかの実施形態では、約75nm〜約225nmのエマルションを形成してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂は、樹脂の末端にヒドロキシル基を有していてもよい。いくつかの実施形態では、これらのヒドロキシル基を、カルボン酸基などを含む酸基に変換することが望ましい場合がある。
【0029】
いくつかの実施形態では、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂の末端にあるヒドロキシル基を、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂を多官能の生物由来の酸または環状酸無水物と反応させることによって、カルボン酸基に変換してもよい。このような酸の例としては、例えば、クエン酸、無水クエン酸、無水コハク酸、これらの組み合わせなどが挙げられる。生物由来のアモルファスポリエステル樹脂と反応させる酸の量は、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂、ヒドロキシル基をカルボン酸基に変換する所望の量などによって変わるだろう。
【0030】
いくつかの実施形態では、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂に加えられる多官能の生物由来の酸の量は、樹脂固体の約0.1重量%〜約20重量%、いくつかの実施形態では、約0.5重量%〜約10重量%、いくつかの実施形態では、約1重量%〜約7.5重量%の量であってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、得られた生物由来のアモルファス樹脂(いくつかの実施形態では、カンファー酸を含む)は、酸価(acid value)(時に、本明細書では、いくつかの実施形態で酸価(acid number)と呼ぶ)が、約30mg KOH/樹脂1g、いくつかの実施形態では、約5mg KOH/樹脂1g〜約30mg KOH/樹脂1g、いくつかの実施形態では、約7mg KOH/樹脂1g〜約25mg KOH/樹脂1gであってもよい。酸を含有する樹脂をテトラヒドロフラン溶液に溶解してもよい。酸価は、指示薬としてフェノールフタレインを含むKOH/メタノール溶液を用いて滴定することによって検出されてもよい。酸価(または中和価)は、樹脂1グラムを中和するのに必要な、ミリグラム単位での水酸化カリウム(KOH)の質量である。
【0032】
本開示の生物由来の樹脂(いくつかの実施形態では、カンファー酸を含む)は、酸素に対する炭素の比率(時に、本明細書では、いくつかの実施形態でC/O比と呼ぶ)が、約1.5〜約7、いくつかの実施形態では、約2〜約6、いくつかの実施形態では、約2.5〜約5、いくつかの実施形態では、約3.5〜約4.7であってもよい。(炭素/酸素比は、酸素の重量%に対する炭素の重量%を得ることによって誘導される理論計算を用いて決定されてもよい。)
【0033】
いくつかの実施形態では、上の樹脂を製造するために利用される要素(例えば、ジオール)は、石油由来のものでなくてもよく、その結果、得られたポリエステルが、再生可能な資源から誘導される(すなわち、生物由来である)。生成物が石油を起源とするか、再生可能な資源を起源とするかは、放射性炭素(14C)年代測定法によって調べることができる。生物由来の炭素について、現在知られている14C/12Cの天然存在比は、約1×10−12である。これとは対照的に、化石炭素は、14Cの半減期(約5730年)よりもずっと長い時間がたっているため、放射性炭素を含まない。言い換えると、化石資源が作られた時点で化石資源に存在していたであろう14Cは、放射性崩壊プロセスによって12Cに変わったと思われる。したがって、14C/12Cの比率は、化石由来の材料ではゼロであると思われる。それとは反対に、いくつかの実施形態では、本開示にしたがって製造された生物由来の樹脂は、14C/12Cモル比が、約0.5×10−12〜約1×10−12、いくつかの実施形態では、約0.6×10−12〜約0.95×10−12、いくつかの実施形態では、14C/12Cモル比が、約0.7×10−12〜約0.9×10−12であってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、縮重合方法によって樹脂を作成してもよい。他の実施形態では、乳化重合方法によって樹脂を作成してもよい。
【0035】
(他の樹脂)
上の生物由来の樹脂は、単独で用いてもよく、トナーを作成するのに適した任意の他の樹脂とともに用いてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、樹脂は、アモルファス樹脂、結晶性樹脂、および/またはこれらの組み合わせであってもよい。さらなる実施形態では、樹脂を作成するために利用されるポリマーは、米国特許第6,593,049号および同第6,756,176号(それぞれの開示内容は、全体的に本明細書に参考として組み込まれる)に記載される樹脂を含むポリエステル樹脂であってもよい。また、適切な樹脂は、米国特許第6,830,860号(この開示内容は、全体的に本明細書に参考として組み込まれる)に記載されるような、アモルファスポリエステル樹脂および結晶性ポリエステル樹脂の混合物を含んでいてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、樹脂は、任意要素の触媒が存在する状態で、ジオールと二酸とを反応させることによって作成されるポリエステル樹脂であってもよい。
【0038】
アモルファスポリエステルの調製で利用される二酸またはジエステル(ビニル二酸またはビニルジエステルを含む)の例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、フマル酸、トリメリット酸、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、シス,1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、コハク酸、シクロヘキサン酸、無水コハク酸、ドデシルコハク酸、無水ドデシルコハク酸、グルタル酸、無水グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、無水フタル酸、フタル酸ジエチル、コハク酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ドデシルコハク酸ジメチル、およびこれらの組み合わせのようなジカルボン酸またはジエステルが挙げられる。有機二酸またはジエステルは、例えば、樹脂の40〜60モル%、いくつかの実施形態では、樹脂の約42〜約52モル%、いくつかの実施形態では、樹脂の約45〜約50モル%の量で存在していてもよい。
【0039】
アモルファスポリエステルを作成する際に利用可能なジオールの例としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、2,2,3−トリメチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ドデカンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)−ビスフェノールA、ビス(2−ヒドロキシプロピル)−ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、キシレンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ビス(2−ヒドロキシエチル)オキシド、ジプロピレングリコール、ジブチレン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。選択される有機ジオールの量は変わってもよく、例えば、樹脂の40〜60モル%、いくつかの実施形態では、約42〜約55モル%、いくつかの実施形態では、約45〜約53モル%の量で存在してもよい。
【0040】
結晶性ポリエステルまたはアモルファスポリエステルのいずれかを作成する際に使用可能な重縮合触媒としては、チタン酸テトラアルキル、ジアルキルスズオキシド、例えば、ジブチルスズオキシド、テトラアルキルスズ、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジアルキルスズオキシド水酸化物、例えば、ブチルスズオキシド水酸化物、アルミニウムアルコキシド、アルキル亜鉛、ジアルキル亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一スズ、またはこれらの組み合わせが挙げられる。このような触媒は、ポリエステル樹脂を作成するために使用される出発物質の二酸またはジエステルを基準として、例えば、0.01モル%〜5モル%の量で利用されてもよい。
【0041】
利用可能なアモルファス樹脂の例としては、アルカリスルホン酸化ポリエステル樹脂、分岐アルカリスルホン酸化ポリエステル樹脂、アルカリスルホン酸化ポリイミド樹脂、分岐アルカリスルホン酸化ポリイミド樹脂が挙げられる。アルカリスルホン酸化ポリエステル樹脂は、いくつかの実施形態では有用な場合があり、例えば、コポリ(エチレン−テレフタレート)−コポリ(エチレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(プロピレン−テレフタレート)−コポリ(プロピレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(ジエチレン−テレフタレート)−コポリ(ジエチレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(プロピレン−ジエチレン−テレフタレート)−コポリ(プロピレン−ジエチレン−5−スルホイソフタレート)、コポリ(プロピレン−ブチレン−テレフタレート)−コポリ(プロピレン−ブチレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(プロポキシル化ビスフェノール−A−フマレート)−コポリ(プロポキシル化ビスフェノールA−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(エトキシル化ビスフェノール−A−フマレート)−コポリ(エトキシル化ビスフェノール−A−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(エトキシル化ビスフェノール−A−マレエート)−コポリ(エトキシル化ビスフェノール−A−5−スルホ−イソフタレート)の金属塩またはアルカリ塩が挙げられ、ここで、アルカリ金属は、例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオンまたはカリウムイオンである。
【0042】
いくつかの実施形態では、樹脂は、架橋可能な樹脂であってもよい。架橋可能な樹脂は、C=C結合のような1個以上の架橋可能な基を含む樹脂である。この樹脂は、例えば、開始剤を用いた遊離ラジカル重合によって架橋させることができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、上述のように、不飽和アモルファスポリエステル樹脂をラテックス樹脂として利用してもよい。このような樹脂の例としては、米国特許第6,063,827号に開示されるものが挙げられ、この開示内容は、本明細書に全体が参考として組み込まれる。例示的な不飽和アモルファスポリエステル樹脂としては、限定されないが、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(1,2−プロピレンフマレート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(1,2−プロピレンマレエート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(1,2−プロピレンイタコネート)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
いくつかの実施形態では、適切なアモルファス樹脂としては、アルコキシル化ビスフェノールAフマレート/テレフタレートに由来するポリエステルおよびコポリエステル樹脂を挙げることができる。いくつかの実施形態では、適切なポリエステル樹脂は、以下の式(I)を有するポリ(プロポキシル化ビスフェノールA コ−フマレート)樹脂のようなアモルファスポリエステルであってもよく、
【0045】
【化1】

【0046】
式中、mは約5〜約1000であってもよいが、mの値は、この範囲からはずれていてもよい。このような樹脂およびこれらを製造するプロセスの例としては、米国特許6,063,827号に開示されるものが挙げられ、この開示内容は、全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0047】
ラテックス樹脂として利用可能な直鎖プロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂の一例は、Resana S/A Industrias Quimicas(サンパウロ、ブラジル)製の商標名SPARIIで入手可能である。利用可能であり、市販されている他のプロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂としては、花王株式会社(日本)製のGTUFおよびFPESL−2、Reichhold(リサーチトライアングルパーク、ノースキャロライナ)製のEM181635などが挙げられる。
【0048】
結晶性ポリエステルを作成する場合、適切な有機ジオールとしては、炭素原子が約2〜約36個の脂肪族ジオール、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなど;アルカリスルホ脂肪族ジオール、例えば、ソジオ 2−スルホ−1,2−エタンジオール、リチオ 2−スルホ−1,2−エタンジオール、ポタシオ 2−スルホ−1,2−エタンジオール、ソジオ 2−スルホ−1,3−プロパンジオール、リチオ 2−スルホ−1,3−プロパンジオール、ポタシオ 2−スルホ−1,3−プロパンジオール、これらの混合物などが挙げられ、これらの構造異性体を含む。脂肪族ジオールは、例えば、樹脂の約40〜約60モル%、いくつかの実施形態では、約42〜約55モル%、いくつかの実施形態では、約45〜約53モル%の量で選択されてもよく、第2のジオールは、樹脂の約0〜約10モル%、いくつかの実施形態では、約1〜約4モル%の量で選択されてもよい。
【0049】
結晶性樹脂を調製するために選択される有機二酸またはジエステルの例(ビニル二酸またはビニルジエステルを含む)としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、シス,1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸(時に、本明細書でいくつかの実施形態ではシクロヘキサン二酸と呼ばれる)、マロン酸およびメサコン酸、これらのジエステルまたは酸無水物;および、アルカリ スルホ−有機二塩基酸、例えば、ジメチル−5−スルホ−イソフタレート、ジアルキル−5−スルホ−イソフタレート−4−スルホ−1,8−ナフタレン酸無水物、4−スルホ−フタル酸、ジメチル−4−スルホ−フタレート、ジアルキル−4−スルホ−フタレート、4−スルホフェニル−3,5−ジカルボメトキシベンゼン、6−スルホ−2−ナフチル−3,5−ジカルボメトキシベンゼン、スルホ−テレフタル酸、ジメチル−スルホ−テレフタレート、5−スルホ−イソフタル酸、ジアルキル−スルホ−テレフタレート、スルホエタンジオール、2−スルホプロパンジオール、2−スルホブタンジオール、3−スルホペンタンジオール、2−スルホヘキサンジオール、3−スルホ−2−メチル−ペンタンジオール、2−スルホ−3,3−ジメチルペンタンジオール、スルホ−p−ヒドロキシ安息香酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホネートのナトリウム塩、リチウム塩またはカリウム塩、またはこれらの混合物が挙げられる。有機二酸は、例えば、いくつかの実施形態では、例えば、樹脂の約40〜約60モル%、いくつかの実施形態では、約42〜約52モル%、いくつかの実施形態では、約45〜約50モル%の量で選択され、第2の二酸は、樹脂の約0〜約10モル%の量で選択されてもよい。
【0050】
特定の結晶性樹脂は、ポリエステルに由来するものであってもよく、例えば、ポリ(エチレン−アジペート)、ポリ(プロピレン−アジペート)、ポリ(ブチレン−アジペート)、ポリ(ペンチレン−アジペート)、ポリ(ヘキシレン−アジペート)、ポリ(オクチレン−アジペート)、ポリ(エチレン−サクシネート)、ポリ(プロピレン−サクシネート)、ポリ(ブチレン−サクシネート)、ポリ(ペンチレン−サクシネート)、ポリ(ヘキシレン−サクシネート)、ポリ(オクチレン−サクシネート)、ポリ(エチレン−セバケート)、ポリ(プロピレン−セバケート)、ポリ(ブチレン−セバケート)、ポリ(ペンチレン−セバケート)、ポリ(ヘキシレン−セバケート)、ポリ(オクチレン−セバケート)、ポリ(デシレン−セバケート)、ポリ(デシレン−デカノエート)、ポリ(エチレン−デカノエート)、ポリ(エチレンドデカノエート)、ポリ(ノニレン−セバケート)、ポリ(ノニレン−デカノエート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−セバケート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−デカノエート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−ドデカノエート)、コポリ(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール−デカノエート)−コポリ(エチレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(プロピレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(ブチレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(オクチレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(エチレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(プロピレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ブチレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(オクチレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(エチレン−サクシネート)、アルカリ コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(プロピレン−サクシネート)、アルカリ コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(ブチレン−サクシネート)、アルカリ コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−サクシネート)、アルカリ コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−サクシネート)、アルカリ コポリ(5−スルホイソフタロイル)−コポリ(オクチレン−サクシネート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(エチレン−セバケート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(プロピレン−セバケート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ブチレン−セバケート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−セバケート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−セバケート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(オクチレン−セバケート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(エチレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(プロピレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ブチレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ペンチレン−アジペート)、アルカリ コポリ(5−スルホ−イソフタロイル)−コポリ(ヘキシレン−アジペートノニレン−デカノエート)、ポリ(オクチレン−アジペート)であってもよく、ここで、アルカリは、ナトリウム、リチウムまたはカリウムのような金属である。ポリアミドの例としては、ポリ(エチレン−アジポアミド)、ポリ(プロピレン−アジポアミド)、ポリ(ブチレン−アジポアミド)、ポリ(ペンチレン−アジポアミド)、ポリ(ヘキシレン−アジポアミド)、ポリ(オクチレン−アジポアミド)、ポリ(エチレン−コハク酸イミド)、ポリ(プロピレン−セバカミド)が挙げられる。ポリイミドの例としては、ポリ(エチレン−アジピミド)、ポリ(プロピレン−アジピミド)、ポリ(ブチレン−アジピミド)、ポリ(ペンチレン−アジピミド)、ポリ(ヘキシレン−アジピミド)、ポリ(オクチレン−アジピミド)、ポリ(エチレン−コハク酸イミド)、ポリ(プロピレン−コハク酸イミド)、ポリ(ブチレン−コハク酸イミド)が挙げられる。
【0051】
結晶性樹脂は、例えば、トナー要素の約1〜約85重量%、いくつかの実施形態では、約2〜約50重量%、いくつかの実施形態では、約5〜約15重量%の量で存在していてもよい。結晶性樹脂は、種々の融点、例えば、約30℃〜約120℃、いくつかの実施形態では、約50℃〜約90℃、いくつかの実施形態では、約60℃〜約80℃の融点を有していてもよい。結晶性樹脂は、数平均分子量(M)が、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定する場合、例えば、約1,000〜約50,000、いくつかの実施形態では、約2,000〜約25,000であってもよく、重量平均分子量(M)が、ポリスチレン標準を用いたゲル透過クロマトグラフィーによって測定する場合、例えば、約2,000〜約100,000、いくつかの実施形態では、約3,000〜約80,000であってもよい。結晶性樹脂の分子量分布(M/M)は、例えば、約2〜約6、いくつかの実施形態では、約3〜約4であってもよい。
【0052】
場合により上述のアモルファス樹脂と組み合わせて利用可能な適切な結晶性樹脂としては、米国特許公開第2006/0222991号に開示されるものが挙げられ、この開示内容は、全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0053】
いくつかの実施形態では、適切な結晶性樹脂は、以下の式を有する、エチレングリコールと、ドデカン二酸およびフマル酸のコモノマー混合物とから作られる樹脂を挙げることができ、
【0054】
【化2】

【0055】
式中、bは、5〜2000であり、dは、5〜2000である。
【0056】
(トナー)
トナー組成物を作成するために上述の樹脂を利用してもよい。1種類、2種類、またはそれ以上の樹脂を用いてもよい。2個以上の樹脂を用いる実施形態では、樹脂は、任意の適切な比率(例えば、重量比)、例えば、約1%(第1の樹脂)/99%(第2の樹脂)〜約99%(第1の樹脂)/1%(第2の樹脂)、いくつかの実施形態では、約4%(第1の樹脂)/96%(第2の樹脂)〜約96%(第1の樹脂)/4%(第2の樹脂)であってもよい。樹脂が、結晶性樹脂と、生物由来のアモルファス樹脂とを含む場合、樹脂の重量比は、1%(結晶性樹脂):99%(生物由来のアモルファス樹脂)〜約10%(結晶性樹脂):90%(生物由来のアモルファス樹脂)であってもよい。
【0057】
また、トナー組成物は、任意要素の着色剤、ワックス、凝固剤、他の添加剤(例えば、界面活性剤)を含んでいてもよい。トナーは、当業者の技術常識の範囲内にある任意の方法を利用して作られてもよい。また、トナー粒子は、コロイド状シリカのような従来の任意要素の添加剤を(流動剤として)含んでいてもよい。
【0058】
上述の樹脂から作成することによって得られたラテックスを利用し、当業者の技術常識の範囲内にある任意の方法によってトナーを作成してもよい。ラテックスエマルションを、着色剤(場合により、分散物の状態)、他の添加剤と接触させ、適切なプロセスによって、いくつかの実施形態では、乳化凝集および融着プロセスによって超低融点トナーを作成してもよい。
【0059】
(界面活性剤)
いくつかの実施形態では、トナー組成物を作成するために利用される着色剤、ワックス、他の添加剤は、界面活性剤を含む分散物の状態であってもよい。さらに、トナー粒子は、樹脂およびトナーの他の要素を、1つ以上の界面活性剤に入れ、エマルションを生成させ、トナー粒子が凝集し、融着し、場合により、これを洗浄し、乾燥させ、回収するような乳化凝集方法によって作られてもよい。
【0060】
1種類、2種類またはそれ以上の界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤は、イオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤から選択されてもよい。アニオン系界面活性剤およびカチオン系界面活性剤が用語「イオン系界面活性剤」に包含される。いくつかの実施形態では、アニオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤を用いることによって、界面活性剤が存在しなければ凝集が不安定なものであろう凝集プロセスを、凝固剤存在下で安定化させるのに役立つだろう。
【0061】
いくつかの実施形態では、界面活性剤を、固体として加えてもよく、または濃度が約5重量%〜約100重量%(純粋な界面活性剤)、いくつかの実施形態では、約10重量%〜約95重量%の溶液として加えてもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、樹脂の約0.01重量%〜約20重量%、いくつかの実施形態では、約0.1重量%〜約16重量%、いくつかの他の実施形態では、約1重量%〜約14重量%の量で存在するように利用されてもよい。
【0062】
利用可能なアニオン系界面活性剤としては、サルフェートおよびスルホネート、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキルサルフェートおよびジアルキルベンゼンアルキルスルホネート、Aldrichから入手可能なアビエチン酸のような酸、第一工業製薬から得られるNEOGEN R(商標)、NEOGEN SC(商標)、これらの組み合わせなどが挙げられる。他の適切なアニオン系界面活性剤としては、いくつかの実施形態では、The Dow Chemical Company製のアルキルジフェニルオキシドジスルホネートDOWFAX(商標)2A1、および/または分岐型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムであるテイカ株式会社(日本)製のTAYCA POWER BN2060が挙げられる。いくつかの実施形態では、これらの界面活性剤および上のアニオン系界面活性剤の組み合わせを利用してもよい。
【0063】
通常は正に帯電するカチオン系界面活性剤の例としては、例えば、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、C12、C15、C17トリメチルアンモニウムブロミド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン塩、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、Alkaril Chemical Companyから入手可能なMIRAPOL(商標)およびALKAQUAT(商標)、花王株式会社から入手可能なSANIZOL(商標)など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
利用可能な非イオン系界面活性剤の例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、メタロース、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、Rhone−Poulencから、IGEPAL CA−210(商標)、IGEPAL CA−520(商標)、IGEPAL CA−720(商標)、IGEPAL CO−890(商標)、IGEPAL CO−720(商標)、IGEPAL CO−290(商標)、IGEPAL CA−210(商標)、ANTAROX 890(商標)、ANTAROX 897(商標)(アルキルフェノールエトキシレート)として入手可能なものが挙げられる。適切な非イオン系界面活性剤の他の例としては、SYNPERONIC PE/F、いくつかの実施形態では、SYNPERONIC PE/F 108として市販されているものを含め、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーが挙げられる。
【0065】
(着色剤)
加えられる着色剤としては、種々の既知の適切な着色剤(例えば、染料、顔料、染料混合物、顔料混合物、染料と顔料の混合物など)が、トナーに含まれてもよい。着色剤は、例えば、トナーの約0.1〜約35重量%、約1〜約15重量%、または約3〜約10重量%の量で含まれていてもよいが、着色剤の量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0066】
適切な着色剤の例として、REGAL 330(登録商標)(Cabot)、Carbon Black 5250および5750(Columbian Chemicals)、Sunsperse Carbon Black LHD 9303(Sun Chemicals)のようなカーボンブラック;マグネタイト、例えば、MobayマグネタイトMO8029(商標)、MO8060(商標);Columbianマグネタイト;MAPICO BLACKS(商標)、表面処理されたマグネタイト;PfizerマグネタイトCB4799(商標)、CB5300(商標)、CB5600(商標)、MCX6369(商標);Bayerマグネタイト、BAYFERROX 8600(商標)、8610(商標);Northern Pigmentマグネタイト、NP−604(商標)、NP−608(商標);MagnoxマグネタイトTMB−100(商標)またはTMB−104(商標)などから作られるものが述べられてもよい。着色した顔料として、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブラウン、ブルー、またはこれらの混合物が選択されてもよい。一般的に、シアン、マゼンタ、またはイエローの顔料または染料、またはこれらの混合物を使用する。1種類の顔料または複数の顔料料が、一般的に、水系顔料分散物として用いられる。
【0067】
一般的に、適切な着色剤としては、Paliogen Violet 5100および5890(BASF)、Normandy Mazenta RD−2400(Paul Uhlrich)、Permanent Violet VT2645(Paul Uhlrich)、Heliogen Green L8730(BASF)、Argyle Green XP−111−S(Paul Uhlrich)、Brilliant Green Toner GR 0991(Paul Uhlrich)、Lithol Scarlet D3700(BASF)、Toluidine Red(Aldrich)、Scarlet for Thermoplast NSD PS PA(Ugine Kuhlmann of Canada)、Lithol Rubine Toner(Paul Uhlrich)、Lithol Scarlet 4440(BASF)、NBD 3700(BASF)、Bon Red C(Dominion Color)、Royal Brilliant Red RD−8192(Paul Uhlrich)、Oracet Pink RF(Ciba Geigy)、Paliogen Red 3340および3871K(BASF)、Lithol Fast Scarlet L4300(BASF)、Heliogen Blue D6840、D7080、K7090、K6910およびL7020(BASF)、Sudan Blue OS(BASF)、Neopen Blue FF4012(BASF)、PV Fast Blue B2G01(American Hoechst)、Irgalite Blue BCA(Ciba Geigy)、Paliogen Blue 6470(BASF)、Sudan II、IIIおよびIV(Matheson、Coleman、Bell)、Sudan Orange(Aldrich)、Sudan Orange 220(BASF)、Paliogen Orange 3040(BASF)、Ortho Orange OR 2673(Paul Uhlrich)、Paliogen Yellow 152および1560(BASF)、Lithol Fast Yellow 0991K(BASF)、Paliotol Yellow 1840(BASF)、Novaperm Yellow FGL(Hoechst)、Permanerit Yellow YE 0305(Paul Uhlrich)、Lumogen Yellow D0790(BASF)、Sunsperse Yellow YHD 6001(Sun Chemicals)、Suco−Gelb 1250(BASF)、Suco−Yellow D1355(BASF)、Suco Fast Yellow D1165、D1355およびD1351(BASF)、HOSTAPERM PINK E(商標)(Hoechst)、Fanal Pink D4830(BASF)、CINQUASIA MAGENTATM(DuPont)、Paliogen Black L9984(BASF)、Pigment Black K801(BASF)、Levanyl Black A−SF(Miles、Bayer)、上のものの組み合わせなどが挙げられる。
【0068】
他の適切な水系着色剤分散物としては、Clariantから市販されているもの、例えば、Hostafine Yellow GR、Hostafine Black TおよびBlack TS、Hostafine Blue B2G、Hostafine Rubine F6B、および使用前に水および/または界面活性剤に分散させてもよいマゼンタ乾燥顔料、例えば、Toner Mazenta 6BVP2213およびToner Mazenta EO2が挙げられる。
【0069】
顔料の特定の例としては、Sunsperse BHD 6011X(Blue 15 Type)、Sunsperse BHD 9312X(Pigment Blue 15 74160)、Sunsperse BHD 6000X(Pigment Blue 15:3 74160)、Sunsperse GHD 9600XおよびGHD 6004X(Pigment Green 7 74260)、Sunsperse QHD 6040X(Pigment Red 122 73915)、Sunsperse RHD 9668X(Pigment Red 185 12516)、Sunsperse RHD 9365Xおよび9504X(Pigment Red 57 15850:1、Sunsperse YHD 6005X(Pigment Yellow 83 21108)、Flexiverse YFD 4249(Pigment Yellow 17 21105)、Sunsperse YHD 6020Xおよび6045X(Pigment Yellow 74 11741)、Sunsperse YHD 600Xおよび9604X(Pigment Yellow 14 21095)、Flexiverse LFD 4343およびLFD 9736(Pigment Black 7 77226)、Aquatone、これらの組み合わせなど(Sun Chemicals製の水系顔料分散物として)、HELIOGEN BLUE L6900(商標)、D6840(商標)、D7080(商標)、D7020(商標)、PYLAM OIL BLUE(商標)、PYLAM OIL YELLOW(商標)、PIGMENT BLUE 1(商標)(Paul Uhlich & Company,Inc.から入手可能)、PIGMENT VIOLET 1(商標)、PIGMENT RED 48(商標)、LEMON CHROME YELLOW DCC 1026(商標)、E.D.TOLUIDINE RED(商標)およびBON RED C(商標)(Dominion Color Corporation,Ltd.(トロント、オンタリオ)から入手可能)、NOVAPERM YELLOW FGL(商標)などが挙げられる。一般的に、選択されてもよい着色剤は、黒色、シアン、マゼンタまたはイエロー、およびこれらの混合物である。マゼンタの例には、Color IndexでCI 60710、CI Dispersed Red 15として特定される2,9−ジメチル置換されたキナクリドン染料およびアントラキノン染料、Color IndexでCI 26050、CI Solvent Red 19などとして特定されるジアゾ染料がある。シアンの具体例としては、Color IndexでCI 74160、CI Pigment Blue、Pigment Blue 15:3で列挙される銅テトラ(オクタデシルスルホンアミド)フタロシアニン、x−銅フタロシアニン顔料、Color IndexでCI 69810、Special Blue X−2137で特定されるAnthrathrene Blueなどが挙げられる。イエローの代表例は、ジアリーリドイエロー 3,3−ジクロロベンジデンアセトアセトアニリド、Color IndexでCI 12700、CI Solvent Yellow 16として特定されるモノアゾ顔料、Color IndexでForon Yellow SE/GLN、CI Dispersed Yellow 33として特定されるニトロフェニルアミンスルホンアミド、2,5−ジメトキシ−4−スルホンアニリドフェニルアゾ−4’−クロロ−2,5−ジメトキシアセトアセトアニリド、Permanent Yellow FGLがある。
【0070】
いくつかの実施形態では、着色剤としては、トナーに望ましい色を付与するのに十分な量の、顔料、染料、これらの組み合わせ、カーボンブラック、マグネタイト、黒色、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルー、ブラウン、これらの組み合わせが挙げられる。他の有用な着色剤は、本開示に基づいて容易に明らかになると理解されるべきである。
【0071】
いくつかの実施形態では、顔料または着色剤は、固体基準でトナー粒子の約1重量%〜約35重量%、他の実施形態では、約5重量%〜約25重量%の量で使用されてもよい。
【0072】
(ワックス)
場合により、トナー粒子を作成する際に、ワックスを、樹脂および着色剤と組み合わせてもよい。ワックスは、ワックス分散物の状態で与えられてもよく、1種類のワックスを含んでいてもよく、2種類以上の異なるワックスの混合物を含んでいてもよい。例えば、特定のトナーの性質(例えば、トナー粒子の形状、トナー粒子表面のワックスの有無およびワックスの量、帯電特性および/または融合特性、光沢、剥離、オフセット性など)を高めるために、トナー配合物に1種類のワックスを加えてもよい。または、トナー組成物に複数の性質を与えるために、ワックスの組み合わせを加えてもよい。
【0073】
ワックスが含まれる場合、ワックスは、例えば、トナー粒子の約1重量%〜約25重量%、いくつかの実施形態では、約5重量%〜約20重量%の量で存在していてもよい。
【0074】
ワックス分散物が用いられる場合、ワックス分散物は、乳化凝集トナー組成物で従来から用いられる任意の種々のワックスを含んでいてもよい。選択可能なワックスとしては、例えば、重量平均分子量が約500〜約20,000、いくつかの実施形態では、約1,000〜約10,000のワックスが挙げられる。使用可能なワックスとしては、例えば、直鎖ポリエチレンワックスおよび分岐ポリエチレンワックスを含むポリエチレン、直鎖ポリプロピレンワックスおよび分岐ポリプロピレンワックスを含むポリプロピレン、ポリエチレン/アミド、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン/アミド、ポリブテンワックスのようなポリオレフィン、例えば、Allied ChemicalおよびPetrolite Corporationから市販されているもの、例えば、POLYWAX(商標)ポリエチレンワックス(例えば、Baker Petroliteから市販されているもの)、Michaelman,Inc.およびDaniels Products Companyから入手可能なワックスエマルション、Eastman Chemical Products,Inc.から市販されているEPOLENE N−15(商標)、VISCOL 550−P(商標)(三洋化成工業株式会社から入手可能な重量平均分子量が小さいポリプロピレン);植物由来のワックス、例えば、カルナバワックス、ライスワックス、カンデリラワックス、木蝋、ホホバ油;動物由来のワックス、例えば、蜜蝋;鉱物由来のワックスおよび石油由来のワックス、例えば、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、微晶質ワックス(例えば、未精製油の蒸留から誘導されるワックス)、シリコーンワックス、メルカプトワックス、ポリエステルワックス、ウレタンワックス;改質ポリオレフィンワックス(例えば、末端がカルボン酸のポリエチレンワックスまたは末端がカルボン酸のポリプロピレンワックス);Fischer−Tropschワックス;高級脂肪酸と高級アルコールとから得られるエステルワックス、例えば、ステアリン酸ステアリルおよびベヘン酸ベヘニル;高級脂肪酸と一価または多価の低級アルコールとから得られるエステルワックス、例えば、ステアリン酸ブチル、オレイン酸プロピル、グリセリドモノステアレート、グリセリドジステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート;高級脂肪酸と多価アルコールマルチマーとから得られるエステルワックス、例えば、ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジグリセリルジステアレート、トリグリセリルテトラステアレート;ソルビタン高級脂肪酸エステルワックス、例えば、ソルビタンモノステアレート、コレステロール高級脂肪酸エステルワックス、例えば、ステアリン酸コレステリルが挙げられる。使用可能な官能化ワックスの例としては、例えば、アミン、アミド、例えば、AQUA SUPERSLIP 6550(商標)、SUPERSLIP 6530(商標)(Micro Powder Inc.から入手可能)、フッ素化ワックス、例えば、POLYFLUO 190(商標)、POLYFLUO 200(商標)、POLYSILK 19(商標)、POLYSILK 14(商標)(Micro Powder Inc.から入手可能)、混合フッ素化アミドワックス、例えば、脂肪族極性アミド官能化ワックス;ヒドロキシル化した不飽和脂肪酸のエステルから構成される脂肪族ワックス、例えば、MICROSPERSION 19(商標)(これもまたMicro Powder Inc.から入手可能)、イミド、エステル、四級アミン、カルボン酸またはアクリルポリマーのエマルション、例えば、JONCRYL 74(商標)、89(商標)、130(商標)、537(商標)、538(商標)(すべてSC Johnson Waxから入手可能)、塩素化ポリプロピレンおよび塩素化ポリエチレン(Allied ChemicalおよびPetrolite CorporationおよびSC Johnson waxから入手可能)が挙げられる。いくつかの実施形態では、上のワックスの混合物および組み合わせを使用してもよい。ワックスは、例えば、フューザーロール剥離剤として含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、ワックスは、結晶性であってもよく、非結晶性であってもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、ワックスを、固体ワックスを水に加えた1つ以上の水系エマルションまたは分散物の形態でトナーに組み込んでもよく、ここで、固体ワックスの粒径は、約100nm〜約300nmであってもよい。
【0076】
(トナーの調製)
トナー粒子は、当業者の技術常識の範囲内にある任意の方法によって調製されてもよい。トナー粒子の製造に関連する実施形態を、乳化凝集プロセスに関して以下に記載しているが、例えば、米国特許第5,290,654号および第5,302,486号(それぞれの開示内容全体が本明細書に参考として組み込まれる)に開示される懸濁およびカプセル化のプロセスのような化学プロセスを含む、トナー粒子を調製する任意の適切な方法を用いてもよい。いくつかの実施形態では、トナー組成物およびトナー粒子は、粒径の小さな樹脂粒子が適切なトナー粒径になるまで凝集させ、次いで、最終的なトナー粒子の形状および形態を得るまで融着させる、凝集融着プロセスによって調製することができる
【0077】
いくつかの実施形態では、トナー組成物は、乳化凝集プロセスによって、例えば、任意要素の着色剤と、任意要素のワックスと、任意要素の凝固剤と、任意の他の望ましい添加剤または必要な添加剤と、上述の選択された樹脂を含むエマルションとを含む混合物を、場合により上述のような界面活性剤中で凝集させ、次いで、この凝集混合物を融着させることを含むプロセスによって調製することができる。混合物は、着色剤と、場合により、ワックスまたは他の材料とを(場合により、界面活性剤を含む分散物の状態であってもよい)、エマルション(樹脂を含む2つ以上のエマルションの混合物であってもよい)に加えることによって調製されてもよい。例えば、トナーを調製するための乳化/凝集/融着プロセスは、本明細書で上に引用した特許および刊行物の開示内容で示されている。
【0078】
樹脂、着色剤、ワックス、凝固剤、添加剤などを含む、得られた混合物のpHは、例えば、酢酸、硫酸、塩酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、サリチル酸、硝酸などの酸によって調整されてもよい。いくつかの実施形態では、混合物のpHは、約2〜約5に調節されてもよい。いくつかの実施形態では、pHは、水で約0.5〜約10重量%まで、他の実施形態では、水で約0.7〜約5重量%まで希釈した形態の酸を利用して調整する。
【0079】
さらに、いくつかの実施形態では、混合物を均質化してもよい。混合物を均質化する場合、毎分約600回転〜約6,000回転の速度で混合することによって均質化してもよい。均質化は、任意の適切な手段によって、例えば、IKA ULTRA TURRAX T50プローブホモジナイザーによって行われてもよい。
【0080】
上の混合物を調製した後、凝集剤を混合物に加えてもよい。任意の適切な凝集剤を利用してトナーを作成してもよい。適切な凝集剤としては、例えば、二価カチオン材料または多価カチオン材料の水溶液が挙げられる。凝集剤は、例えば、ポリアルミニウムハロゲン化物、例えば、ポリアルミニウムクロリド(PAC)または対応する臭化物、フッ化物またはヨウ化物、ポリアルミニウムシリケート、例えば、アルミニウムスルホシリケート(PASS)、塩化アルミニウム、亜硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸亜鉛、亜硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、臭化マグネシウム、塩化銅、硫酸銅を含む水溶性金属塩、およびこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、樹脂のガラス転移点(Tg)よりも低い温度で、凝集剤を混合物に加えてもよい。
【0081】
有機カチオン凝集剤の適切な例としては、例えば、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルピリジニウム、C12、C15、C17トリメチルアンモニウムブロミド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0082】
また、他の適切な凝集剤としては、限定されないが、チタン酸テトラアルキル、ジアルキルスズオキシド、テトラアルキルスズオキシド水酸化物、ジアルキルスズオキシド水酸化物、アルミニウムアルコキシド、アルキル亜鉛、ジアルキル亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド水酸化物、テトラアルキルスズ、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0083】
凝集剤が多価イオン凝集剤である場合、凝集剤には、任意の望ましい数の多価イオン原子が存在していてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、適切なポリアルミニウム化合物は、化合物中に、約2〜約13個、他の実施形態では、約3〜約8個のアルミニウムイオンが存在している。
【0084】
凝集剤は、トナーを作成するために利用される混合物に、例えば、混合物中の樹脂の約0.1重量%〜約10重量%、いくつかの実施形態では、約0.2重量%〜約8重量%、他の実施形態では、約0.5重量%〜約5重量%の量で加えられてもよい。この量は、凝集させるのに十分な量の薬剤を与える量であるべきである。
【0085】
所定の望ましい粒径が得られるまで、粒子を凝集させてもよい。所定の望ましい粒径とは、作成前に決定されるような、得られることが望ましい粒径、および、成長プロセス中に、このような粒径に達するまでモニタリングされる粒径を指す。成長プロセス中にサンプルを採取し、例えば、平均粒径の場合、Coulter Counterで分析してもよい。このような凝集は、撹拌を維持しつつ、高温に維持することによって、または、例えば、約40℃〜約100℃の温度までゆっくりと上げ、混合物をこの温度に約0.5時間〜約6時間、いくつかの実施形態では、約1〜約5時間維持し、凝集粒子を得ることによって行ってもよい。所定の望ましい粒径に達したら、成長プロセスを止める。
【0086】
凝集剤を加えた後の粒子の成長および成形は、任意の適切な条件下で行ってもよい。例えば、成長および成形は、凝集と融合とを別個に行う条件で行ってもよい。別個の凝集段階および融着段階では、凝集プロセスは、剪断条件下、高温、例えば、約40℃〜約90℃、いくつかの実施形態では、約45℃〜約80℃で行われてもよく、この温度は、トナー粒子を作成するために利用される樹脂のガラス転移温度よりも低い温度であってもよい。
【0087】
上述のように、本開示の酸性化した生物由来の樹脂は、いくつかの実施形態では、さらなる遊離カルボン酸を有していてもよく、この遊離カルボン酸を、凝固剤および他のカチオン種(例えば、Al(SO)と反応させることができる。
【0088】
トナー粒子の望ましい最終粒径が達成されたら、混合物のpHを、塩基を用いて約3〜約10、いくつかの実施形態では、約5〜約9に調節してもよい。トナーの成長を凍結させる(すなわち、停止する)ためにpHの調節を利用してもよい。トナーの成長を止めるのに利用される塩基としては、任意の適切な塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、これらの組み合わせなど)を挙げることができる。いくつかの実施形態では、pHを上述の所望な値に調節しやすくするために、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を加えてもよい。
【0089】
(シェル樹脂)
いくつかの実施形態では、凝集が終わってから融着の前に、凝集した粒子に樹脂をコーティングし、粒子表面にシェルを形成させてもよい。上述の樹脂をシェルとして利用してもよい。いくつかの実施形態では、上述のポリエステルアモルファス樹脂ラテックスがシェルに含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、上述のポリエステルアモルファス樹脂ラテックスを、異なる樹脂と組み合わせ、次いで、樹脂コーティングとして粒子に加え、シェルを形成させてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、シェルを作成するために利用されてもよい樹脂としては、限定されないが、上述の酸性化した生物由来のアモルファス樹脂と組み合わせた、上述のアモルファス樹脂が挙げられる。さらに他の実施形態では、上述の生物由来の樹脂を別の樹脂と合わせ、次いで、粒子に樹脂コーティングとして加え、シェルを作成してもよい。
【0091】
シェルの樹脂を、当業者の技術常識の範囲内にある任意の方法によって、凝集した粒子に塗布してもよい。いくつかの実施形態では、シェルを形成させるのに利用される樹脂は、上述の任意の界面活性剤を含むエマルションの状態であってもよい。樹脂を含むエマルションを、凝集した粒子の表面にシェルが形成されるように、上述の凝集した粒子と組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、シェルの厚みは、作成した凝集物全体にわたって、約5ミクロンまで、いくつかの実施形態では、約0.1〜約2ミクロン、他の実施形態では、約0.3〜約0.8ミクロンであってももよい。
【0092】
凝集した粒子表面でのシェルの形成は、約30℃〜約80℃、いくつかの実施形態では、約35℃〜約70℃の温度に加熱しつつ行ってもよい。シェルの形成は、約5分〜約10時間、いくつかの実施形態では、約10分〜約5時間行ってもよい。
【0093】
シェルは、トナー粒子の約1重量%〜約80重量%、いくつかの実施形態では、約10重量%〜約40重量%、他の実施形態では、約20重量%〜約35重量%の量で存在していてもよい。
【0094】
(融着)
所望の粒径になるまで凝集させ、場合により任意のシェルを塗布した後、粒子が所望の最終形状になるまで融着させてもよく、融着は、例えば、混合物を約45℃〜約100℃、いくつかの実施形態では、約55℃〜約99℃の温度(この温度は、トナー粒子を形成させるのに利用される樹脂のガラス転移点以上の温度であってもよい)まで加熱し、および/または、例えば、約100rpm〜約1,000rpm、いくつかの実施形態では、約200rpm〜約800rpmまで撹拌を遅くすることによって行われてもよい。融合した粒子について、例えば、Sysmex FPIA 2100分析機を用い、望ましい形状が得られるまで形状因子または真円度を測定してもよい。
【0095】
融着は、約0.01〜約9時間、いくつかの実施形態では、約0.1〜約4時間で達成されてもよい。
【0096】
凝集および/または融着の後、混合物を室温まで、例えば、約20℃〜約25℃まで冷却してもよい。冷却は、所望な場合、迅速であってもゆっくりであってもよい。適切な冷却方法は、反応器の周囲にあるジャケットに冷水を導入することを含んでいてもよい。冷却した後、トナー粒子を、場合により、水で洗浄し、次いで乾燥してもよい。乾燥は、例えば、凍結乾燥を含む、乾燥に適した任意の方法によって行ってもよい。
【0097】
(添加剤)
いくつかの実施形態では、トナー粒子は、望ましい場合、または必要な場合、任意要素の他の添加剤をさらに含んでいてもよい。例えば、トナーは、正電荷または負電荷の制御剤を、例えば、トナーの約0.1〜約10重量%、いくつかの実施形態では、約1〜約3重量%の量で含んでいてもよい。適切な電荷制御剤の例としては、アルキルピリジニウムハロゲン化物を含む四級アンモニウム化合物;硫酸水素塩;米国特許第4,298,672号(開示内容全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているものを含む、アルキルピリジニウム化合物;米国特許第4,338,390号(開示内容全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているものを含む、有機サルフェートおよびスルホネートの組成物;セチルピリジニウムテトラフルオロボレート;ジステアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェート;アルミニウム塩、例えば、BONTRON E84(商標)またはE88(商標)(Orient Chemical Industries,Ltd.)など、これらの組み合わせなどが挙げられる。このような電荷制御剤を上述のシェル樹脂と同時に塗布してもよく、または、シェル樹脂を塗布した後に塗布してもよい。
【0098】
また、作成後にトナー粒子と外部添加剤粒子(流動補助添加剤を含む)とをブレンドしてもよく、この場合、添加剤は、トナー粒子の表面に存在しているだろう。これらの添加剤の例としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スズ、これらの混合物などのような金属酸化物;コロイド状シリカおよびアモルファスシリカ、例えば、AEROSIL(登録商標)、金属塩、およびステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムを含む脂肪酸金属塩、またはこれらの長鎖アルコール(例えば、UNILIN 700)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0099】
一般的に、トナーの流動性、摩擦帯電性の向上、混合制御、現像および転写の安定性向上、トナーブロッキング温度を高くするために、トナー表面にシリカを塗布してもよい。相対湿度(RH)安定性、摩擦帯電性の制御、現像および転写の安定性向上のために、TiOを塗布してもよい。ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、および/またはステアリン酸マグネシウムは、場合により、潤滑特性、現像剤の導電性、摩擦帯電性の向上、トナーとキャリア粒子との接触数を増やすことによってトナーの電荷を多くし、電荷の安定性を高めるために、外部添加剤として用いられてもよい。いくつかの実施形態では、Ferro Corporationから得られる、Zinc Stearate Lとして知られている市販のステアリン酸亜鉛を用いてもよい。外部表面添加剤をコーティングによって用いてもよく、コーティングせずに用いてもよい。
【0100】
これらの外部添加剤は、それぞれ、トナーの約0.1重量%〜約5重量%、いくつかの実施形態では、約0.25重量%〜約3重量%の量で存在していてもよいが、添加剤の量は、これらの範囲から外れていてもよい。いくつかの実施形態では、トナーは、約0.1重量%〜約5重量%のチタニア、約0.1重量%〜約8重量%のシリカ、約0.1重量%〜約4重量%のステアリン酸亜鉛を含んでいてもよい。
【0101】
適切な添加剤としては、米国特許第3,590,000号および同第6,214,507号(それぞれの開示内容全体が本明細書に参考として組み込まれる)に開示されているものが挙げられる。この場合も、これらの添加剤を上述のシェル樹脂と同時に塗布してもよく、シェル樹脂を塗布した後に塗布してもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、本開示のトナーを、超低温溶融(ULM)トナーとして利用してもよい。いくつかの実施形態では、コアおよび/またはシェルを含む乾燥トナー粒子は、外部表面添加剤を除き、以下の1つ以上の特徴を有している。
【0103】
(1)体積平均径(「体積平均粒径」とも呼ばれる)が、約3〜約25μm、いくつかの実施形態では、約4〜約15μm、他の実施形態では、約5〜約12μmである。
【0104】
(2)数平均幾何粒度分布(GSDn)および/または体積平均幾何粒度分布(GSDv):いくつかの実施形態では、上の(1)に記載したトナー粒子は、数比率による下側GSDが約1.15〜1.38、他の実施形態では、約1.31未満の狭い粒径分布を有する。本開示のトナー粒子は、容積による上側GSDが、約1.2〜約1.4、いくつかの実施形態では、約1.26〜約1.3であるような粒径を有していてもよい。体積平均粒径D50v、GSDvおよびGSDnは、製造業者の指示にしたがって操作されたBeckman Coulter Multisizer 3のような測定装置を用いて測定されてもよい。代表的なサンプリングは、以下のように行ってもよい。少量のトナーサンプル(約1g)を得て、25マイクロメートルのふるいで濾過し、次いで、等張性溶液に入れ、濃度約10%を得て、次いで、このサンプルをBeckman Coulter Multisizer 3で操作する。
【0105】
(3)形状因子SF1*aが、約105〜約170、いくつかの実施形態では、約110〜約160である。走査型電子顕微鏡法(SEM)を用い、トナーの形状因子の分析をSEMおよび画像分析(IA)によって決定してもよい。平均的な粒子の形状は、以下の形状因子(SF1*a)式を用いることによって定量化され、
【0106】
【数1】

【0107】
式中、Aは、粒子の面積であり、dは、主軸である。完全に円形または球状の粒子は、形状因子がほぼ100である。形状がより不規則になるか、または表面積が大きくなるような形状に伸ばされると、形状因子SF1*aは、大きくなる。
【0108】
(4)真円度が、約0.92〜約0.99、他の実施形態では、約0.94〜約0.975である。粒子の真円度を測定するために用いられる装置は、製造業者の指示にしたがって、SYSMEX製のFPIA−2100であってもよい。
【0109】
トナー粒子の特徴は、任意の適切な技術および装置によって決定されてもよいが、本明細書で上に示した機器および技術に限定されない。
【0110】
いくつかの実施形態では、トナー粒子は、重量平均分子量(Mw)が、約1,500g/mol〜約60,000g/mol、いくつかの実施形態では、約2,500g/mol〜約18,000g/molであってもよく、数平均分子量(Mn)が、約1,000g/mol〜約18,000g/mol、いくつかの実施形態では、約1,500g/mol〜約10,000g/molであってもよく、MWD(トナー粒子のMnに対するMwの比率、ポリマーの多分散性の測定値である)が、約1.7〜約10、いくつかの実施形態では、約2〜約6であってもよい。着色したトナーの場合(シアン、イエロー、黒色およびマゼンタのトナーを含む)、トナー粒子は、重量平均分子量(Mw)が、約1,500g/mol〜約45,000g/mol、いくつかの実施形態では、約2,500g/mol〜約15,000g/molであってもよく、数平均分子量(Mn)が、約1,000g/mol〜約15,000g/mol、いくつかの実施形態では、約1,500g/mol〜約10,000g/molであってもよく、MWDが、約1.7〜約10、いくつかの実施形態では、約2〜約6であってもよい。
【0111】
本開示にしたがって製造されるトナーは、極端な相対湿度(RH)条件にさらされた場合にも、優れた帯電特性を有しているだろう。低湿度領域(C領域)は、約12℃/15% RHであってもよく、一方、高湿度領域(A領域)は、約28℃/85% RHであってもよい。本開示のトナーは、親トナーの電荷対質量比(Q/M)が、約−2μC/g〜約−50μC/g、いくつかの実施形態では、約−4μC/g〜約−35μC/gであってもよく、表面添加剤をブレンドした後の最終的なトナー電荷が、約−8μC/g〜約−40μC/g、いくつかの実施形態では、約−10μC/g〜約−25μC/gであってもよい。
【0112】
(現像剤)
トナー粒子を、現像剤組成物に配合してもよい。例えば、トナー粒子をキャリア粒子と混合し、二成分系現像剤組成物を得てもよい。キャリア粒子を、種々の適切な組み合わせでトナー粒子と混合してもよい。現像剤中のトナーの濃度は、現像剤の合計重量の約1重量%〜約25重量%、いくつかの実施形態では、約2重量%〜約15重量%であってもよい(しかし、これらの範囲からはずれた値を用いてもよい)。いくつかの実施形態では、トナーの濃度は、キャリアの約90重量%〜約98重量%であってもよい(しかし、これらの範囲からはずれた値を用いてもよい)。しかし、トナーおよびキャリアの割合が異なるものを使用し、望ましい特性を有する現像剤組成物を得てもよい。
【0113】
(キャリア)
本開示にしたがって調製したトナー組成物と混合するために選択可能なキャリア粒子の具体例としては、トナー粒子の電荷と反対の極性の電荷を摩擦電気として得ることが可能な粒子が挙げられる。したがって、一実施形態では、キャリア粒子は、正に帯電したトナー粒子が、その周囲にあるキャリア粒子に付着するように、負の極性を有するように選択されてもよい。このようなキャリア粒子の具体例としては、顆粒状ジルコン、顆粒状シリコン、ガラス、二酸化ケイ素、鉄、鉄アロイ、鋼、ニッケル、鉄フェライト(ストロンチウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛などが組み込まれたフェライトを含む)、マグネタイトなどが挙げられる。他のキャリアとしては、米国特許第3,847,604号、同第4,937,166号、同第4,935,326号に開示されているものが挙げられる。
【0114】
選択したキャリア粒子をコーティングして用いてもよく、コーティングせずに用いてもよい。いくつかの実施形態では、キャリア粒子は、帯電列に近接していないポリマー混合物から作られてもよいコーティングを含むコアを含んでいてもよい。コーティングとしては、ポリオレフィン、フルオロポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン樹脂)、スチレン、アクリル系、メタクリル系のポリマー、例えば、フルオロポリマーを含むか、またはモノアルキルアミンまたはジアルキルアミンおよび/またはシラン(例えば、トリエトキシシラン)を含む、メタクリル酸メチル、アクリルおよびメタクリルのコポリマー、テトラフルオロエチレン、他の既知のコーティングなどが挙げられる。例えば、フッ化ポリビニリデンを含むコーティング(例えば、KYNAR 301F(商標)として入手可能な)および/またはポリメタクリル酸メチル(例えば、重量平均分子量が約300,000〜約350,000のもの、例えば、Sokenから市販されている)を用いてもよい。いくつかの実施形態では、ポリフッ化ビニリデンおよびポリメタクリル酸メチル(PMMA)を、約30重量%〜約70重量%、いくつかの実施形態では、約40重量%〜約60重量%の比率で混合してもよい(しかし、これらの範囲からはずれる値を用いてもよい)。このコーティングは、コーティング重量が、例えば、キャリアの約0.1重量%〜約5重量%、いくつかの実施形態では、約0.5重量%〜約2重量%であってもよい(しかし、これらの範囲からはずれる値が得られてもよい)。
【0115】
いくつかの実施形態では、得られるコポリマーが適切な粒径を保持しているのであれば、場合により、PMMAを任意の望ましいコモノマーと共重合させてもよい。適切なコモノマーとしては、モノアルキルアミンまたはジアルキルアミン、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジイソプロピルアミノエチルメタクリレート、またはt−ブチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。キャリア粒子は、機械的衝撃および/または静電引力によってキャリアコアに付着するまで、キャリアコアと、コーティングされたキャリア粒子の重量を基準として、約0.05重量%〜約10重量%、いくつかの実施形態では、約0.01重量%〜約3重量%の量になるようにポリマーとを混合することによって調製されてもよい(しかし、これらの範囲からはずれる値を用いてもよい)。
【0116】
例えば、カスケードロールによる混合、タンブリング、粉砕、振とう、クラウド式静電粉末噴霧、流動床、静電ディスク処理、円板型静電処理、静電カーテン、これらの組み合わせなどのような種々の有効で適切な手段を用い、キャリアコア粒子表面にポリマーを塗布してもよい。次いで、キャリアコア粒子とポリマーとの混合物を加熱し、キャリアコア粒子に対し、ポリマーを溶融させ、融合することができる。次いで、コーティングされたキャリア粒子を冷却し、その後、望ましい粒径になるまで分級してもよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、適切なキャリアとしては、例えば、米国特許第5,236,629号および同第5,330,874号に記載されているプロセスを用いる、粒径は約25〜約100μm、いくつかの実施形態では、約50〜約75μmであり(しかし、これらの範囲からはずれる粒径を用いてもよい)、約0.5重量%〜約10重量%、いくつかの実施形態では、約0.7重量%〜約5重量%(しかし、これらの範囲からはずれる量が得られてもよい)の導電性ポリマー混合物(例えば、メチルアクリレートとカーボンブラックとを含む)でコーティングされた鋼鉄製のコアが挙げられる。
【0118】
キャリア粒子を、トナー粒子と種々の適切な組み合わせで混合してもよい。濃度は、トナー組成物の約1重量%〜約20重量%であってもよい(しかし、これらの範囲からはずれる濃度を用いてもよい)。しかし、望ましい特性を有する現像剤組成物を得るために、異なる割合のトナーおよびキャリアを用いてもよい。
【0119】
(画像形成)
例えば、米国特許第4,295,990号(開示内容全体が本明細書に参考として組み込まれる)に開示されているものを含む電子写真式画像形成方法に本開示のトナーを利用してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、磁気ブラシによる現像、単成分のジャンピング現像、ハイブリッドスカベンジレスによる現像(HSD)などの任意の既知の種類の画像現像システムを画像現像デバイスに用いてもよい。これらの現像システムおよび類似の現像システムは、当業者の常識の範囲内である。
【0120】
画像形成プロセスは、例えば、帯電要素、画像形成要素、光導電性要素、現像要素、転写要素および融合要素を備える電子写真デバイスを用いて画像を調製することを含んでいる。いくつかの実施形態では、現像要素は、キャリアと、本明細書に記載のトナー組成物とを混合することによって調製される現像剤を含んでいてもよい。電子写真デバイスとしては、高速プリンター、白黒高速プリンター、カラープリンターなどを挙げることができる。
【0121】
適切な画像現像方法(例えば、上述の任意の方法)によって、画像がトナー/現像剤とともに作られたら、画像を受け入れる媒体(例えば、紙など)に画像を転写してもよい。いくつかの実施形態では、フューザーロール部材を利用する画像現像デバイスに画像を現像する際に、トナーを用いてもよい。フューザーロール部材は、当業者の範囲内の融合デバイスと接触し、そこで、ロールからの熱および圧力を用い、トナーを、画像を受け入れる媒体に融合させてもよい。いくつかの実施形態では、フューザー部材を、トナーの融合温度よりも高い温度まで加熱してもよく、例えば、画像を受け入れる基板の上で溶融させた後、または溶融中に、約70℃〜約160℃、いくつかの実施形態では、約80℃〜約150℃、他の実施形態では、約90℃〜約140℃の温度まで加熱してもよい。
【0122】
以下の実施例は、本開示の実施形態を説明するために提案されている。これらの実施例は、単に説明を目的としたものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、部および百分率は、他の意味であると示されていない限り、重量基準である。本明細書で使用される場合、「室温」は、約20℃〜約25℃の温度を指す。
【実施例】
【0123】
(比較例1)
約57%生物由来である、コントロールである生物由来の樹脂をプロピレングリコールを用いて製造した。1リットルのParr Bench Top Reactorに、短経路型凝縮器、窒素注入口、コントローラに接続した磁気攪拌軸を取り付けた。この容器に、約215グラム(約1471.19mmol)のイソソルビド(IS)と、約172.18グラム(約704.96mmol)のジメチルナフタレン−2,6−ジカルボキシレート(NDC)と、約64.37グラム(約845.95mmol)のプロピレングリコール(PG)と、約0.584グラム(約2.795mmol)のブチルスズ酸触媒(FASCAT(登録商標)4100、Arkemaから市販されている)を入れた。この容器と内容物に窒素をパージし、容器の内容物の温度が約150℃になるように反応器を約50分間加熱した。容器の温度が150℃に達したら、撹拌を開始し、約2時間かけて温度を約215℃まで上げた。容器の温度が215℃に達した時点で、反応剤であるジオールとジエステルの重縮合が開始した。約31グラムの蒸留水が集められた。この容器を約190℃に一晩加熱しておいた。
【0124】
次の日に、この容器に、約57.29グラム(約101.41mmol)のダイマー二酸(PRIPOL(登録商標)1012としてCrodaから市販)と、約74.7グラム(約433.82mmol)の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(1,4−CHDA)を入れた。温度を約205℃まで上げ、約4時間加熱した後に集まった蒸留物の合計量は、約63グラムであった。次いで、減圧受け器を、ホースを介して減圧ポンプに取り付け、さらなる蒸留物を集めつつ(合計で約101.3グラム)、約9時間かけて反応容器内の圧力を大気圧から約0.09Torrまで下げた。
【0125】
滴点セル(Mettler FP83HT Dropping Point Cellを取り付けたMettler FP90中央演算装置)で軟化点の値を測定することによって監視しつつ、分子量を上げるために、減圧下で反応を約9時間続けた。適切な軟化点に達したら、大気圧にすることによって反応を止めた。温度を約190℃まで下げ、この容器に約8.76グラムの無水トリメリット酸(TMA)を加えた。ポリマー鎖末端にある酸官能基を増やすために、TMAを加えた。約190℃で約1時間反応させた後、ポリマーをアルミニウム皿に取り出した。ポリマー樹脂を室温まで冷却した後、ポリマーをのみで小片に刻み、M20 IKA Werkeミルで少量を粉砕した。
【0126】
粉砕したポリマーについて、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分子量を分析し、示差走査熱量測定(DSC)によってガラス転移温度(Tg)を分析し、AR2000レオメーターを用いて粘度を分析した。既知の量のポリマーサンプルを有機溶媒に溶解し、色指示薬としてフェノール蓋レインを加え、既知の濃度の水酸化カリウム溶液で滴定することによって、酸価(acid value)(または「中和価」または「酸価(acid number)」または「酸性度」)を測定した。酸価は、化学基質1gを中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)のmg数であると定義される。この場合、酸価は、ポリエステル分子中のカルボン酸基の量の測定値であった。
【0127】
以下の表1に、比較例1の樹脂を作成するために利用された反応剤をまとめている。
【0128】
【表1】

【0129】
(実施例1)
この実施例では、比較例1で使用したシクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)をカンファー酸と交換し、他の配合物は変えなかった。この樹脂は、約70%が生物由来であった。
【0130】
1リットルのParr Bench Top Reactorに、短経路型凝縮器、窒素注入口、コントローラに接続した磁気攪拌軸を取り付けた。この容器に、約215グラム(約1472mmol)のISと、約172.2グラム(約705mmol)のNDCと、約64.4グラム(約846mmol)のプロピレングリコールと、約0.596グラム(約2.86mmol)のブチルスズ酸触媒(FASCAT(登録商標)4100、Arkemaから市販されている)を入れた。この容器と内容物に窒素をパージし、容器の内容物の温度が約150℃になるように約50分かけて加熱した。容器の温度が150℃に達したら、撹拌を開始し、約2時間かけて温度を約210℃まで上げた。容器の温度が210℃に達した時点で、反応剤であるジオールとジエステルの重縮合が開始した。蒸留物を約43グラム集めた。この容器を約200℃に一晩加熱しておいた。
【0131】
次の日に、この容器に、約57.3グラム(約101mmol)のダイマー二酸(PRIPOL(登録商標)1012としてCrodaから市販)と、約87グラム(約434mmol)のカンファー酸を入れた。温度を約210℃まで上げ、約4時間加熱した後に集まった蒸留物の合計量は、約83グラムであった。次いで、減圧受け器を、ホースを介して減圧ポンプに取り付け、さらなる蒸留物を集めつつ(合計で約101.3グラム)、約11時間かけて反応容器内の圧力を大気圧から約0.02Torrまで下げた。
【0132】
比較例1に記載したように軟化点の値を測定することによって監視しつつ、分子量を上げるために、減圧下で反応を約11時間続けた。適切な軟化点に達したら、大気圧にすることによって反応を止めた。温度を約190℃まで下げ、この容器に約8グラムの無水トリメリット酸(TMA)を加えた。約190℃で約1.5時間反応させた後、ポリマーをアルミニウム皿に取り出した。ポリマー樹脂を室温まで冷却した後、ポリマーをのみで小片に刻み、M20 IKA Werkeミルで少量を粉砕した。
【0133】
粉砕したポリマーについて、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分子量を分析し、示差走査熱量測定(DSC)によってガラス転移温度(Tg)を分析し、AR2000レオメーターを用いて粘度を分析し、比較例1で上に記載したように酸価を分析した。
【0134】
以下の表2に、実施例1の樹脂を作成するために利用された反応剤をまとめている。
【0135】
【表2】

【0136】
以下の表3および表4は、実施例1の樹脂と比較例1の樹脂の性質を比較したものである。それぞれ4個のサンプルを対象に試験を実施した。カンファー酸の反応性が低いため、反応条件をほぼ同じにすると、実施例1の樹脂は、コントロールの樹脂よりも分子量が小さかった(Tgおよび軟化点(Ts)が低かった)。
【0137】
【表3】

【0138】
Mw=重量平均分子量
Mn=数平均分子量
PDI=多分散性(Mw/Mn)
Mz=z平均分子量
Mp=融点
Tg(on)=ガラス転移温度(開始)
Tg(mid)=ガラス転移温度(中点)
Tg(off)=ガラス転移温度(終了)
Ts=軟化点
AV=酸価
C/O=酸素に対する炭素の比率
COOH:OH(1:x)=ヒドロキシルに対するカルボキシルの比率
【0139】
【表4】

【0140】
実施例1の樹脂を、比較例1の樹脂および他の数種類の代表的な樹脂とも比較した。代表的な樹脂には、既知の生物由来の樹脂であるBIOREZ(登録商標)64−113(Advanced Image Resourcesから市販されている);Mwが約63,400g/molであり、アルコキシル化ビスフェノールAと、テレフタル酸、トリメリット酸、ドデセニルコハク酸コモノマーとを含む高分子量アモルファス樹脂(以下「High Mwアモルファス樹脂」);Mwが約16,100であり、アルコキシル化ビスフェノールAと、テレフタル酸、フマル酸、ドデセニルコハク酸コモノマーとを含む低分子量アモルファス樹脂(以下、「Low Mwアモルファス樹脂」);Mwが約3500であり、Tsが約103℃であり、イソソルビド、ダイマー二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジメチルナフタレン−2,6−ジカルボキシレート、1,3−プロパンジオールコモノマーを含む、実施例1の樹脂に匹敵する樹脂(本明細書では以下、「低粘度樹脂」と呼ぶ)が含まれていた。
【0141】
図1は、実施例1の樹脂と、比較例1の樹脂、High Mwアモルファス樹脂、Low Mwアモルファス樹脂、BIOREZ(登録商標)64−113、低粘度樹脂のレオロジー挙動を比較したグラフである。図1からわかるように、実施例1の樹脂は、粘性が高めであるが、BIOREZ(登録商標)64−113およびLow MWアモルファス樹脂ほど粘性ではなかった。これらの粘度の違いは、配合よりも分子量および軟化点の差を反映したものであった。
【0142】
(比較例2)
約46%生物由来である、コントロールである生物由来の樹脂をプロピレングリコールを用いて製造した。容積が1リットルのParr Bench Top Reactorに、短経路型凝縮器、窒素注入口、コントローラに接続した磁気攪拌軸を取り付けた。この容器に、約59.1グラム(約222mmol)の無水ドデセニルコハク酸と、約316.8グラム(約4162.5mmol)のプロピレングリコールと、約287.4グラム(約1480mmol)のテレフタル酸ジメチルと、約1.1グラム(約5.18mmol)のブチルスズ酸触媒(FASCAT(登録商標)4100、Arkemaから市販されている)を入れた。
【0143】
この容器と内容物に窒素をパージし、容器の内容物の温度が約120℃になるように約50分かけて加熱した。温度を約2.5℃/分の速度で上げた。容器の温度が163℃に達したら、撹拌を開始し、約4.5時間かけて温度を約200℃まで上げた。容器の温度が170℃に達した時点で、反応剤であるジオールとジエステルの重縮合が開始した。約88.25グラムのメタノール蒸留物を集めた後、減圧受け器を、ホースを介して減圧ポンプに取り付けた。まず、反応器を約1Torrよりも高い低減圧状態で約30分間維持し、その後に、グリコール蒸留物を集めつつ(合計で約161.5グラム)、反応容器の圧力を約3時間かけて約0.4Torrまで下げた。この時点で、ポリマーの軟化点は、Dropping Point Cell(Mettler FP83HT滴点セルを取り付けたMettler FP90中央演算装置)で測定すると、約108.6℃であった。反応器の温度を約185〜190℃まで下げ、約21.3グラム(約111mmol)の無水トリメリット酸(TMA)を加えた。約2.5時間窒素をパージした後、約10分間低減圧状態にし、次いで、約35分間、高減圧状態にした。
【0144】
適切な軟化点に達したら、大気圧にすることによって反応を止め、ポリマーをアルミニウム皿に取り出した。ポリマー樹脂を室温まで冷却した後、ポリマーを小片に刻み、M20 IKA Werkeミルで少量を粉砕した。粉砕したポリマーについて、上に比較例1で述べたように、分子量、ガラス転移温度、粘度、酸価を分析した。
【0145】
以下の表5に、比較例2の樹脂を作成するために利用された反応剤をまとめている。
【0146】
【表5】

【0147】
(実施例2)
この実施例では、比較例2のテレフタル酸ジメチル(DMT)の一部をカンファー酸と置き換えた。この樹脂は、約62%が生物由来であった。
【0148】
容積が1リットルのParr Bench Top Reactorに、上の比較例2と同じように取り付けた。この容器に、約58.7グラム(約220mmol)の無水ドデセニルコハク酸と、約316グラム(約4150mmol)のプロピレングリコールと、約88グラム(約441mmol)のカンファー酸と、約200グラム(約1028mmol)のテレフタル酸ジメチルと、約1.07グラム(約5.14mmol)のブチルスズ酸触媒(FASCAT(登録商標)4100、Arkemaから市販されている)を入れた。この容器と内容物に窒素をパージし、容器の内容物の温度が約150℃になるように約50分かけて加熱した。容器の温度が157℃に達したら、撹拌を開始し、約7.5時間かけて温度を約200℃まで上げた。容器の温度が200℃に達した時点で、反応剤であるジオールとジエステルの重縮合が開始した。メタノール蒸留物を約74グラム集めた。窒素で覆いつつ、この容器を約190℃に一晩加熱しておいた。
【0149】
次の日に、反応器の温度を約195℃まで上げた。次いで、減圧受け器を、ホースを介して減圧ポンプに取り付け、約1.5時間かけて反応容器内の圧力を大気圧から約1Torr超まで下げた。次いで、グリコール蒸留物を集めつつ(合計で約168.4グラム)、反応容器内の圧力を、約5時間かけて約0.4Torrまでさらに下げた。窒素で覆いつつ、反応器の温度を一晩かけて約195℃まで下げ、維持した。
【0150】
次の日に、樹脂の軟化点がまだ約110℃未満であったため、温度を約205℃まで上げ、再び高減圧状態にした。減圧下、約5時間後、軟化点は、116.7℃と測定された。この時点で、反応器の温度を約170〜175℃まで下げ、反応器に約21.17グラムのクエン酸(約110mmol)を加えた。反応器を約1.5時間、低減圧状態(>1Torr)にした。次いで、大気圧にすることによって反応を止め、ポリマーをアルミニウム皿に取り出した。ポリマー樹脂を室温まで冷却した後、ポリマーをのみで小片に刻み、M20 IKA Werkeミルで少量を粉砕した。粉砕したポリマーについて、上に比較例1で述べたように、分子量、ガラス転移温度、粘度、酸価を分析した。
【0151】
この樹脂の最終的な軟化点は、クエン酸を加えた後に加水分解が起こったため、116.7℃から109.2℃まで低下した。
【0152】
以下の表6に、実施例2の樹脂を作成するために利用された反応剤をまとめている。
【0153】
【表6】

【0154】
以下の表7は、比較例2の樹脂と実施例2の樹脂の性質を比較したものである。カンファー酸を含む樹脂は、TgおよびTsが低かった。実施例2の樹脂は、分子量が大きかったが、これはおそらく、クエン酸が分岐および架橋を誘発し得るからであろう。
【0155】
【表7】

【0156】
実施例2の樹脂を、比較例2の樹脂および数種の他の代表的な樹脂と比較した。代表的な樹脂には、既知の生物由来の樹脂であるBIOREZ(登録商標)64−113(Advanced Image Resourcesから市販されている);Mwが約63,400g/molであり、アルコキシル化ビスフェノールAと、テレフタル酸、トリメリット酸、ドデセニルコハク酸コモノマーを含む高分子量アモルファス樹脂(以下「High Mwアモルファス樹脂」);Mwが約16,100であり、アルコキシル化ビスフェノールAと、テレフタル酸、フマル酸、ドデセニルコハク酸コモノマーとを含む低分子量アモルファス樹脂(以下、「Low Mwアモルファス樹脂」)が含まれていた。
【0157】
図2は、実施例2の樹脂と、比較例2の樹脂、High Mwアモルファス樹脂、Low Mwアモルファス樹脂、BIOREZ(登録商標)64−113のレオロジー挙動を比較したグラフである。実施例2の樹脂は、軟化点およびTgが低いにもかかわらず、典型的な融合温度でLow MWアモルファス樹脂に匹敵するレオロジー挙動を示した。
【0158】
種々の上に開示した特徴および機能または代替物、および他の特徴および機能または代替物は、多くの他の異なるシステムまたは用途に望ましく組み込まれてもよいことが理解されるだろう。さらに、種々の現時点でわかっていないか、または予想されていない代替物、改変、変形または改良は、当業者によって後でなされてもよく、これらも以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。請求項に特定的に引用されていない限り、その請求項の工程または要素は、任意の特定の順序、数、位置、大きさ、形状、角度、色または材料について、明細書または任意の他の請求項の内容を含有すべきではなく、明細書または任意の他の請求項の内容を持ち込むべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンファー酸を生物由来の樹脂の約1重量%〜約60重量%の量で含む、少なくとも1種類の生物由来のアモルファスポリエステル樹脂と;
場合により、少なくとも1種類の結晶性ポリエステル樹脂と;
場合により、着色剤、ワックス、凝固剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分とを含む、トナー。
【請求項2】
前記生物由来のアモルファス樹脂が、D−イソソルビド、ナフタレンジカルボキシレート、アゼライン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、コハク酸、無水ドデセニルコハク酸、テレフタル酸ジメチル、ダイマー酸、プロピレングリコール、エチレングリコール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類の他の要素をさらに含む、請求項1のトナー。
【請求項3】
前記生物由来のアモルファス樹脂が、D−イソソルビドを、前記生物由来の樹脂の約2重量%〜約60重量%の量で、ジメチルナフタレン 2,6−ジカルボキシレートを、前記生物由来の樹脂の約2重量%〜約50重量%の量で、ダイマー酸を、前記生物由来の樹脂の約0.02重量%〜約50重量%の量で、プロピレングリコールを、前記生物由来の樹脂の約5重量%〜約50重量%の量で含む、請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記生物由来のアモルファス樹脂が、無水ドデセニルコハク酸を、前記生物由来の樹脂の約2重量%〜約40重量%の量で、テレフタル酸ジメチルを、前記生物由来の樹脂の約2重量%〜約50重量%の量で、プロピレングリコールを、前記生物由来の樹脂の約5重量%〜約50重量%の量で含む、請求項2に記載のトナー。
【請求項5】
前記生物由来のアモルファス樹脂は、ガラス転移温度が約25℃〜約90℃であり、軟化点が約90℃〜約140℃である、請求項1のトナー。
【請求項6】
前記生物由来のアモルファス樹脂は、重量平均分子量が約1,500g/mol〜約100,000g/molであり、数平均分子量が約1,000g/mol〜約50,000g/molである、請求項1のトナー。
【請求項7】
前記生物由来のアモルファス樹脂は、酸素に対する炭素の比率が約1.5〜約7であり、酸価が約7mg KOH/樹脂1g〜約25mg KOH/樹脂1gである、請求項1のトナー。
【請求項8】
前記生物由来のアモルファス樹脂は、生物由来のモノマーを、生物由来のアモルファス樹脂の約45重量%〜約100重量%の量で含み、この生物由来のアモルファス樹脂は、14C/12Cのモル比が約0.5×10−12〜約1×10−12である、請求項1のトナー。
【請求項9】
前記生物由来のアモルファス樹脂が、前記トナーの約30重量%〜約60重量%の量で存在する、請求項1に記載のトナーの組成物。
【請求項10】
D−イソソルビド、ナフタレンジカルボキシレート、アゼライン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、コハク酸、無水ドデセニルコハク酸、テレフタル酸ジメチル、ダイマー酸、プロピレングリコール、エチレングリコール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類の他の要素と、カンファー酸とを組み合わせて含む、少なくとも1種類の生物由来のアモルファスポリエステル樹脂と;
場合により、少なくとも1種類の結晶性ポリエステル樹脂と;
場合により、着色剤、ワックス、凝固剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分とを含み、
前記生物由来のアモルファスポリエステル樹脂が、生物由来のモノマーを、樹脂の約45重量%〜約100重量%の量で含む、トナー。
【請求項11】
前記生物由来のアモルファス樹脂が、D−イソソルビドを、前記生物由来の樹脂の約2重量%〜約60重量%の量で、ジメチルナフタレン 2,6−ジカルボキシレートを、前記生物由来の樹脂の約2重量%〜約50重量%の量で、カンファー酸を、前記生物由来の樹脂の約1重量%〜約60重量%の量で、ダイマー酸を、前記生物由来の樹脂の約0.02重量%〜約50重量%の量で、プロピレングリコールを、前記生物由来の樹脂の約5重量%〜約50重量%の量で含む、請求項10に記載のトナー。
【請求項12】
前記生物由来のアモルファス樹脂が、無水ドデセニルコハク酸を、前記生物由来の樹脂の約2重量%〜約40重量%の量で、カンファー酸を、前記生物由来の樹脂の約1重量%〜約60重量%の量で、テレフタル酸ジメチルを、前記生物由来の樹脂の約2重量%〜約50重量%の量で、プロピレングリコールを、前記生物由来の樹脂の約5重量%〜約50重量%の量で含む、請求項10に記載のトナー。
【請求項13】
前記生物由来のアモルファス樹脂は、ガラス転移温度が約30℃〜約70℃であり、軟化点が約100℃〜約130℃である、請求項10に記載のトナー。
【請求項14】
前記生物由来のアモルファス樹脂は、重量平均分子量が約3,000g/mol〜約20,000g/molであり、数平均分子量が約2,000g/mol〜約15,000g/molである、請求項10に記載のトナー。
【請求項15】
前記生物由来のアモルファス樹脂は、酸素に対する炭素の比率が約1.5〜約7であり、酸価が約7mg KOH/樹脂1g〜約25mg KOH/樹脂1gであり、この生物由来のアモルファス樹脂は、14C/12Cのモル比が約0.5×10−12〜約1×10−12である、請求項10に記載のトナー。
【請求項16】
D−イソソルビド、ナフタレンジカルボキシレート、アゼライン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、コハク酸、無水ドデセニルコハク酸、テレフタル酸ジメチル、ダイマー酸、プロピレングリコール、エチレングリコール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類の他の要素と、約1重量%〜約60重量%の量のカンファー酸とを組み合わせて含む、少なくとも1種類の生物由来のアモルファスポリエステル樹脂と;
少なくとも1種類の結晶性ポリエステル樹脂と;
着色剤、ワックス、凝固剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分とを含み、
前記生物由来のアモルファスポリエステル樹脂が、生物由来のモノマーを、樹脂の約45重量%〜約100重量%の量で含む、トナー。
【請求項17】
前記生物由来のアモルファス樹脂が、D−イソソルビドを、前記生物由来の樹脂の約2重量%〜約60重量%の量で、ジメチルナフタレン 2,6−ジカルボキシレートを、前記生物由来の樹脂の約2重量%〜約50重量%の量で、カンファー酸を、前記生物由来の樹脂の約1重量%〜約60重量%の量で、ダイマー酸を、前記生物由来の樹脂の約0.02重量%〜約50重量%の量で、プロピレングリコールを、前記生物由来の樹脂の約5重量%〜約50重量%の量で含む、請求項16に記載のトナー。
【請求項18】
前記生物由来のアモルファス樹脂が、無水ドデセニルコハク酸を、前記生物由来の樹脂の約2重量%〜約40重量%の量で、テレフタル酸ジメチルを、前記生物由来の樹脂の約2重量%〜約50重量%の量で、カンファー酸を、前記生物由来の樹脂の約1重量%〜約60重量%の量で、プロピレングリコールを、前記生物由来の樹脂の約5重量%〜約50重量%の量で含む、請求項16に記載のトナー。
【請求項19】
前記生物由来のアモルファス樹脂は、ガラス転移温度が約25℃〜約90℃であり、軟化点が約90℃〜約140℃であり、重量平均分子量が約1,500g/mol〜約100,000g/molであり、数平均分子量が約1,000g/mol〜約50,000g/molであり、この生物由来のアモルファス樹脂は、14C/12Cのモル比が約0.5×10−12〜約1×10−12である、請求項16に記載のトナー。
【請求項20】
前記生物由来のアモルファス樹脂は、酸素に対する炭素の比率が約1.5〜約7であり、酸価が約7mg KOH/樹脂1g〜約25mg KOH/樹脂1gである、請求項16に記載のトナー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−230357(P2012−230357A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−72045(P2012−72045)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】