説明

トナー組成物

【課題】優れた摩擦帯電特性を付与する電荷制御剤を含むトナーおよびトナー粒子を調整するプロセスを提供する。
【解決手段】少なくとも1つの樹脂を含むエマルションに、任意要素の着色剤および任意要素のワックスを加えて粒子を作成することと、この粒子を凝集させて凝集粒子を作成することと、凝集粒子を融着させてトナー粒子を作成することと、トナー粒子を、亜鉛、クロム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、ベリリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属イオンを含む溶液で洗浄することと、トナー粒子を回収することとを含む、トナーを製造するプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デジタル、多重画像型および同様の装置のような装置を含む電子写真式装置に適したトナー、およびトナーを提供するのに有用なプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
トナーを調製するために、当該技術分野の技術常識の範囲内に多くのプロセスが存在する。乳化凝集(EA)は、このような方法のひとつである。
【0003】
トナー系は、通常は、現像材料が、トナー粒子が摩擦電気的に付着する磁気担体顆粒を含む2成分系と、トナーのみを使用してもよい単成分系(SDC)の2種類に分類される。
【0004】
摩擦帯電を向上させるために、電荷制御剤を利用してもよい。電荷制御剤は、有機塩または大きな有機分子の錯体を含んでいてもよい。電荷制御剤の量は、トナーの他の成分と比べて少量でよいが、電荷制御剤は、トナーの摩擦帯電性にとって重要な場合がある。これらの摩擦帯電性は、ひいては画像化の速度および品質に影響を及ぼすことがあり、寿命性能を伸ばすことができる。
【0005】
表面に電荷制御剤が付加されたときに生じ得る問題は、電荷制御剤が不均一に分布し、長時間にわたって表面に衝撃を与え、これにより、電荷が顕著に減り、最終的には、トナーの寿命性能に影響を及ぼしかねないことである。
【0006】
トナー粒子の帯電をきわめて良好に制御することができるトナーを製造する改良法が依然として好ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に示す局面によれば、少なくとも1つの樹脂を含むエマルションに、任意要素の着色剤および任意要素のワックスを加えて粒子を作成することと、この粒子を凝集させて凝集粒子を作成することと、凝集粒子を融着させてトナー粒子を作成することと、トナー粒子を、亜鉛、クロム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、ベリリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属イオンを含む溶液で洗浄することと、トナー粒子を回収することとを含む、トナーを製造するプロセスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、優れた帯電特性をもつトナー、およびトナー粒子を調製するプロセスを提供する。本開示のトナーは、トナー粒子の帯電性を高めるために、融着の後に洗浄工程を用いることによって調製されてもよい。洗浄は、トナー粒子に電荷を与える金属イオンを含む溶液を含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、トナー粒子を亜鉛洗浄液にさらし、粒子の負電荷を増やしてもよい。他の実施形態では、トナー粒子をカルシウム洗浄液にさらし、粒子の正電荷を増やしてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示のトナーは、ラテックスポリマーと、任意要素の着色剤、任意要素のワックス、他の任意要素の添加剤とを合わせることによって調製されてもよい。ラテックスポリマーは、当業者の技術の範囲内にある任意の方法によって調製されてもよく、いくつかの実施形態では、ラテックスポリマーは、半連続式乳化重合を含む乳化重合方法によって調製されてもよく、トナーは、乳化凝集トナーを含んでいてもよい。乳化凝集は、ミクロン未満のラテックスおよび顔料の粒子をトナーの粒径になるまで凝集させることを含み、粒径の成長は、例えば、いくつかの実施形態では、約0.1ミクロン〜約15ミクロンである。
【0010】
トナーに使用するラテックスを調製するのに適した任意のモノマーを使用してもよい。上述のように、いくつかの実施形態では、トナーを乳化凝集によって製造してもよい。ラテックスポリマーエマルションを作成するのに有用で適切なモノマー、したがって、ラテックスエマルション中に得られたラテックス粒子としては、限定されないが、スチレン、アクリレート、メタクリレート、ブタジエン、イソプレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0011】
いくつかの実施形態では、ラテックスポリマーは、少なくとも1つのポリマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つは、約1〜約20、いくつかの実施形態では、約3〜約10であってもよい。例示的なポリマーとしては、スチレンアクリレート、スチレンブタジエン、スチレンメタクリレート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。ポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、または交互コポリマーであってもよい。
【0012】
それに加え、ポリエステル樹脂をラテックスポリマーとして使用してもよい。使用可能な適切なポリエステルとしては、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはプロピレンカーボネートとの反応生成物から得られるもの、およびこれらの反応生成物とフマル酸とを反応させることによって得られるポリエステル、テレフタル酸ジメチルと1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオールおよびペンタエリスリトールとの反応から得られる分岐ポリエステル樹脂が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリエステル樹脂の組み合わせ(アモルファスポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を含む)を利用してもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、ポリ(スチレン−アクリル酸ブチル)をラテックスポリマーとして利用してもよい。いくつかの実施形態で本開示のトナーを作成するのに使用可能なこのラテックスのガラス転移点は、約35℃〜約75℃、いくつかの実施形態では、約40℃〜約70℃、いくつかの実施形態では、約45℃〜約65℃であってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、トナーを作成するのに用いられる樹脂は、重量平均分子量(Mw)が、約25kpse〜約75kpse、いくつかの実施形態では、約30kpse〜約55kpse、他の実施形態では、約35kpse〜約55kpseであってもよい。トナーを作成するのに用いられる樹脂は、数平均分子量(Mn)が、約1kpse〜約30kpse、いくつかの実施形態では、約2kpse〜約20kpse、他の実施形態では、約3kpse〜約15kpseであってもよい。したがって、樹脂の多分散性(すなわち、Mw/Mn)は、約0.5〜約約15、いくつかの実施形態では、約0.75〜約10、他の実施形態では、約1〜約5であってもよい。したがって、トナー中に存在する樹脂の量は、約50%wt/wt〜約90%wt/wt、さらなる実施形態では、約65%wt/wt〜約85%wt/wt、他の実施形態では、約70%wt/wt〜約80%wt/wtであってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、ラテックスは、界面活性剤または補助界面活性剤を含有する水相中で調製されてもよい。ポリマーとともに利用してラテックス分散物を作成することが可能な界面活性剤は、イオン系(アニオン系またはカチオン系)界面活性剤、または非イオン系界面活性剤、またはこれらの組み合わせであってもよく、量は、固形分の約0.01〜約15重量%、いくつかの実施形態では、約0.1〜約10重量%、いくつかの実施形態では、約1〜約7.5重量%であってもよい。
【0016】
特定の界面活性剤またはその組み合わせの選択、および使用するそれぞれの量は、当業者の常識の範囲内である。
【0017】
いくつかの実施形態では、ラテックスポリマーを作成するために、開始剤を加えてもよい。適切な開始剤の例としては、水溶性開始剤(例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム)、過酸化有機物を含む有機物溶解性開始剤、VAZO過酸化物、例えば、VAZO 64(商標)(2−メチル 2−2’−アゾビスプロパンニトリル)、VAZO 88(商標)(2−2’−アゾビスイソブチルアミド無水物)を含むアゾ化合物、およびこれらの組み合わせが挙げられる。使用可能な他の水溶性開始剤としては、アゾアミジン化合物、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(4−アミノ−フェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]四塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−2−プロペニルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシ−エチル)2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0018】
開始剤を、適切な量で、例えば、モノマーの約0.1〜約8重量%、いくつかの実施形態では、約0.2〜約5重量%、いくつかの実施形態では、約0.5〜約4重量%の量で加えてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、ラテックスポリマーを作成するときに連鎖移動剤を利用してもよい。適切な連鎖移動剤としては、本開示にしたがって乳化重合が行われるとき、ラテックスポリマーの分子量特性を制御するために、モノマーの約0.1〜約10%、いくつかの実施形態では、約0.2〜約5重量%、いくつかの実施形態では、約0.5〜約3.5重量%のドデカンチオール、オクタンチオール、四臭化炭素、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0020】
いくつかの実施形態では、ラテックスポリマーや、このポリマーを構成する粒子を作成するとき、機能性モノマーを含むことが有利である場合がある。適切な機能性モノマーとしては、カルボン酸官能基を有するモノマーが挙げられる。このようなモノマーは、以下の式(I)を有していてもよく、
【化1】

式中、R1は、水素またはメチル基であり、R2およびR3は、独立して、炭素原子を約1〜約12個含むアルキル基、またはフェニル基から選択され、nは、約0〜約20、いくつかの実施形態では、約1〜約10である。このような機能性モノマーの例としては、β−カルボキシエチルアクリレート(β−CEA)、ポリ(2−カルボキシエチル)アクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、これらの組み合わせなどが挙げられる。利用可能な他の機能性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびその誘導体、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、カルボン酸官能基を有する機能性モノマーは、良好な乳化重合の結果を得るために、例えば、ナトリウム、カリウムおよび/またはカルシウムのような少量の金属イオンを含有していてもよい。金属イオンは、カルボン酸官能基を有する機能性モノマーの約0.001〜約10重量%、いくつかの実施形態では、約0.5〜約5重量%、いくつかの実施形態では、約0.75〜約4重量%の量で存在していてもよい。
【0022】
機能性モノマーが存在する場合、機能性モノマーを、モノマー合計量の約0.01〜約10重量%、いくつかの実施形態では、約0.05〜約5重量%、いくつかの実施形態では、約0.1〜約3重量%の量で加えてもよい。
【0023】
また、乳化凝集合成のときのラテックスポリマーを生成している間に、ワックス分散物を加えてもよい。適切なワックスとしては、例えば、約50〜約1000ナノメートルの粒径範囲、いくつかの実施形態では、容積平均径が約100〜約500ナノメートルのミクロン未満ワックス粒子を、水およびイオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、またはこれらの組み合わせの水相に懸濁させたものであってもよい。適切な界面活性剤としては、上述のものが挙げられる。イオン系界面活性剤または非イオン系界面活性剤は、ワックスの約0.1〜約20重量%、いくつかの実施形態では、約0.5〜約15重量%の量で存在していてもよい。
【0024】
本開示の実施形態のワックス分散物としては、天然植物ワックス、天然動物ワックス、鉱物ワックスおよび/または合成ワックスといったワックスが挙げられる。天然植物ワックスの例としては、例えば、カルナバワックス、カンデリラワックス、日本ろう、ベーベリろうが挙げられる。天然動物ワックスの例としては、例えば、蜜ろう、カルタゴろう、ラノリン、ラックワックス、シェラックワックス、クジラろうが挙げられる。鉱物ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、微晶質ワックス、モンタンワックス、オゾケライトワックス、セレシンワックス、ペトロラタムワックス、石油ワックスが挙げられる。本開示の合成ワックスとしては、例えば、Fischer−Tropschワックス、アクリレートワックス、脂肪酸アミドワックス、シリコーンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
ポリプロピレンワックスおよびポリエチレンワックスの例としては、Allied ChemicalおよびBaker Petroliteから市販されているもの、Michelman Inc.およびDaniels Products Companyから入手可能なワックスエマルション、Eastman Chemical Products,Inc.から市販されているEPOLENE N−15、三洋化成工業株式会社(Sanyo Kasel K.K.)から入手可能な重量平均分子量が小さいポリプロピレンVISCOL 550−P、および類似の材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、市販のポリエチレンワックスは、分子量(Mw)が約100〜約5000、いくつかの実施形態では、約250〜約2500であり、一方、市販のポリプロピレンワックスは、分子量が約200〜約10,000、いくつかの実施形態では、約400〜約5000である。
【0026】
いくつかの実施形態では、ワックスは官能基化されていてもよい。ワックスを官能化するために付加される基の例としては、アミン、アミド、イミド、エステル、四級アミン、および/またはカルボン酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、官能化されたワックスは、アクリルポリマーエマルション、例えば、JONCRYL 74、89、130、537、538(すべてJohnson Diversey,Incから入手可能)、またはAllied Chemical、Baker Petrolite CorporationおよびJohnson Diversey,Inc.から市販されている塩素化ポリプロピレンおよび塩素化ポリエチレンであってもよい。
【0027】
ワックスは、トナーの約0.1〜約30重量%、いくつかの実施形態では、約2〜約20重量%の量で存在していてもよい。
【0028】
ラテックス粒子を着色剤分散物に加えてもよい。着色剤分散物は、例えば、粒径が、例えば、容積平均径で約50〜約500ナノメートル、いくつかの実施形態では、約100〜約400ナノメートルのミクロン未満の着色剤粒子を含んでいてもよい。着色剤粒子を、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、またはこれらの組み合わせを含む水相に懸濁させてもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、イオン系であってもよく、着色剤の約1〜約25重量%、いくつかの実施形態では、約4〜約15重量%であってもよい。
【0029】
本開示にしたがってトナーを作成するのに有用な着色剤としては、顔料、染料、顔料と染料の混合物、顔料混合物、染料混合物などが挙げられる。着色剤は、例えば、カーボンブラック、シアン、イエロー、マゼンタ、レッド、オレンジ、ブラウン、グリーン、ブルー、バイオレット、またはこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、顔料を利用してもよい。本明細書で使用する場合、顔料は、選択的な色吸収の結果、反射する光の色を変える材料を含む。いくつかの実施形態では、一般的に水溶液に適用され得る染料とは対照的に、顔料は、一般的に不溶性である。例えば、染料は、含まれる媒剤(バインダー)に可溶性であってもよく、顔料は、含まれる媒剤に不溶性であってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、着色剤が顔料である場合、顔料は、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、レッド、グリーン、オレンジ、ブラウン、バイオレット、イエロー、RHODAMINE B(商用)型を含む蛍光着色剤などであってもよい。
【0031】
着色剤は、本開示のトナー中に、トナーの約1〜約25重量%、いくつかの実施形態では、約2〜約15重量%の量で存在していてもよい。
【0032】
例示的な着色剤としては、REGAL 330(登録商標)のようなカーボンブラック;MO8029(商標)、MO8060(商標)を含むMobayマグネタイト;Columbianマグネタイト;MAPICO BLACKS(商標)および表面処理されたマグネタイト;CB4799(商標)、CB5300(商標)、CB5600(商標)、MCX6369(商標)を含むPfizerマグネタイト;BAYFERROX 8600(商標)、8610(商標)を含むBayerマグネタイト;NP−604(商標)、NP−608(商標)を含むNorthern Pigmentマグネタイト;TMB−100(商標)またはTMB−104(商標)、HELIOGEN BLUE L6900(商標)、D6840(商標)、D7080(商標)、D7020(商標)、PYLAM OIL BLUE(商標)、PYLAM OIL YELLOW(商標)、PIGMENT BLUE 1(商標)(Paul Uhlich and Company,Inc.から入手可能)を含むMagnoxマグネタイト、Dominion Color Corporation,Ltd.(トロント、オンタリオ)から入手可能なPIGMENT VIOLET 1(商標)、PIGMENT RED 48(商標)、LEMON CHROME YELLOW DCC 1026(商標)、E.D.TOLUIDINE RED(商標)、BON RED C(商標);Hoechst製のNOVAPERM YELLOW FGL(商標)、HOSTAPERM PINK E(商標);E.I.DuPont de Nemours and Company製のCINQUASIA マゼンタ(商標)を述べることができる。他の着色剤としては、Cl 60710としてColor Indexで特定される2,9−ジメチル置換キナクリドンおよびアントラキノン染料、Cl 26050としてColor Indexで特定されるCl Dispersed Red 15ジアゾ染料、Cl Solvent Red 19、銅テトラ(オクタデシルスルホンアミド)フタロシアニン、Cl 74160としてColor Indexで特定されるx−銅フタロシアニン顔料、Cl 69810としてColor Indexで特定されるCl Pigment Blue、Anthrathrene Blue、Cl 12700としてColor Indexで特定されるSpecial Blue X−2137、ジアリーリドイエロー3,3−ジクロロベンジデンアセトアセトアニリド、モノアゾ顔料、Foron Yellow SE/GLNとしてColor Indexで特定されるCl Solvent Yellow 16、ニトロフェニルアミンスルホンアミド、Cl Dispersed Yellow 33、2,5−ジメトキシ−4−スルホンアニリドフェニルアゾ−4’−クロロ−2,5−ジメトキシアセトアセトアニリド、Yellow 180およびPermanent Yellow FGLが挙げられる。利用可能な色域の目的で高純度の有機物可溶性染料としては、Neopen Yellow 075、Neopen Yellow 159、Neopen Orange 252、Neopen Red 336、Neopen Red 335、Neopen Red 366、Neopen Blue 808、Neopen Black X53、Neopen Black X55が挙げられ、この染料は、種々の適切な量で、例えば、トナーの約0.5〜約20重量%、いくつかの実施形態では、約5〜約18重量%の量で選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、着色剤の例としては、カラーインデックス番号が74160のPigment Blue 15:3、カラーインデックス番号が45160:3のマゼンタ Pigment Red 81:3、カラーインデックス番号が21105のYellow 17、および食品用染料、イエロー、ブルー、グリーン、レッド、マゼンタ染料などのような既知の染料が挙げられる。
【0034】
他の実施形態では、マゼンタ顔料、Pigment Red 122(2,9−ジメチルキナクリドン)、Pigment Red 185、Pigment Red 192、Pigment Red 202、Pigment Red 206、Pigment Red 235、Pigment Red 269、これらの組み合わせなどを着色剤として利用してもよい。Pigment Red 122(時に、本明細書ではPR−122と呼ばれる)は、個性的なマゼンタの色調のため、トナー、プラスチック、インク、コーティングの着色に幅広く使用されている。PR−122、Pigment Red 269、Pigment Red 185(本明細書では、時にPR−185とも呼ばれる)の化学構造を以下に記載する。
【化2】

【0035】
ある実施形態では、乳化凝集プロセスの速度を制御するために、pH調整剤を加えてもよい。本開示のプロセスで利用されるpH調整剤は、製造される生成物に悪影響を及ぼさない任意の酸または塩基であってもよい。適切な塩基としては、金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、および場合によりこれらの組み合わせが挙げられる。適切な酸としては、硝酸、硫酸、塩酸、クエン酸、酢酸、および場合によりこれらの組み合わせが挙げられる。したがって、塩基添加量は、約0.1%wt/wt〜約20%wt/wt、他の実施形態では、約0.2%wt/wt〜約10%wt/wt、さらなる実施形態では、約0.5%wt/wt〜約5%wt/wtであってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、ラテックスおよび水系着色剤分散物を凝集させている間、または凝集させる前に、凝固剤を加えてもよい。凝固剤を、処理条件によって、約1分〜約60分、いくつかの実施形態では、約1.25分〜約20分、いくつかの実施形態では、約2分〜約15分かけて加えてもよい。
【0037】
適切な凝固剤の例としては、ハロゲン化ポリアルミニウム、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、または対応する臭化物、フッ化物またはヨウ化物、ポリケイ酸アルミニウム、例えば、ポリアルミニウムスルホシリケート(PASS)、塩化アルミニウム、亜硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸亜鉛、亜硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、臭化マグネシウム、塩化銅、硫酸銅を含む水溶性金属塩、およびこれらの組み合わせであってもよい。適切な凝固剤のひとつはPACであり、PACは市販されており、塩化アルミニウムを水酸化ナトリウムを用いて制御しつつ加水分解することによって調製することができる。一般的に、PACは、2モルの塩基を1モルの塩化アルミニウムに付加させることによって調製することができる。この化学種は可溶性であり、pHが約5未満の酸性条件下で溶解させ、保存する場合、安定である。溶液中のこの化学種は、単位あたり約7個の正電荷をもつ式Al13(OH)24(HO)12を含むと考えられる。
【0038】
いくつかの実施形態では、適切な凝固剤としては、多価金属塩、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ臭化アルミニウム、ポリアルミニウムスルホシリケートが挙げられる。多価金属塩は、硝酸溶液であってもよく、例えば、硫酸、塩酸、クエン酸または酢酸のような他の希酸溶液であってもよい。凝固剤を、トナーの約0.01〜約5重量%、いくつかの実施形態では、約0.1〜約3重量%、いくつかの実施形態では、約0.5〜約2重量%の量で加えてもよい。
【0039】
本開示のトナーを作成する際に、錯体化することが可能な任意の凝集剤を使用してもよい。アルカリ土類金属塩または遷移金属塩の両方を凝集剤として利用してもよい。いくつかの実施形態では、アルカリ(II)塩は、スルホン酸ナトリウムポリエステルコロイドを着色剤とともに凝集させ、トナーコンポジットを作成することができるように選択することができる。このような塩としては、例えば、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、酢酸ベリリウム、硫酸ベリリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、および場合によりこれらの組み合わせが挙げられる。凝集剤として利用可能な遷移金属塩または遷移金属アニオンの例としては、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウムまたは銀のアセテート;バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウムまたは銀のアセトアセテート;バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウムまたは銀のサルフェート;アルミニウム塩、例えば、酢酸アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、例えばポリ塩化アルミニウム、これらの組み合わせなどが挙げられる。したがって、凝集剤の添加量は、約0.01%wt/wt〜約1%wt/wt、他の実施形態では、約0.1%wt/wt〜約0.5%wt/wt、さらなる実施形態では、約0.15%wt/wt〜約0.3%wt/wtであってもよい。
【0040】
電荷制御剤(CCA)をトナー粒子に加えてもよい。いくつかの実施形態では、CCAを、ラテックス、任意要素の着色剤分散物、ワックス、凝集剤に加え、トナー粒子にCCAを組み込んでもよい。他の実施形態では、粒子がシェルの一部として作成されたら、CCAを加えてもよい。CCAを使用すると、CCAが得られるトナーの画像化速度および品質に影響を与え得るため、トナーの摩擦帯電性にとって有用であろう。
【0041】
利用可能な適切な電荷制御剤としては、いくつかの実施形態では、サリチル酸、他の酸(例えば、ジカルボン酸誘導体、安息香酸、オキシナフトエ酸、スルホン酸)のような酸のアルキル誘導体の金属錯体、ポリヒドロキシアルカノエート四級ホスホニウムトリハロジンケートのような他の錯体、ジメチルスルホキシドの金属錯体、これらの組み合わせなどが挙げられる。このような錯体を作成するのに利用される金属としては、限定されないが、亜鉛、マンガン、鉄、カルシウム、ジルコニウム、アルミニウム、クロム、これらの組み合わせなどが挙げられる。サリチル酸の誘導体を作成するときに利用可能なアルキル基としては、限定されないが、メチル、ブチル、t−ブチル、プロピル、ヘキシル、これらの組み合わせなどが挙げられる。このような電荷制御剤の例としては、BONTRON(登録商標)E−84およびBONTRON(登録商標)E−88として市販されているものが挙げられる(Orient Chemicalから市販)。BONTRON(登録商標)E−84は、粉末形態の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の亜鉛錯体である。BONTRON(登録商標)E−88は、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンゾエート]と3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の混合物である。他の適切なCCAとしては、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のカルシウム錯体、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のジルコニウム錯体、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム錯体、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0042】
電荷制御剤が利用される場合、電荷制御剤は、トナー粒子の約0.01重量%〜約10重量%、いくつかの実施形態では、約0.05重量%〜約5重量%、いくつかの実施形態では、約0.1重量%〜約3重量%の量で存在していてもよい。
【0043】
乳化凝集プロセスでは、適切な反応器(例えば、混合容器)に反応剤を加えてもよい。ラテックス(場合により、分散物で)、CCA(場合により、分散物で)、任意要素の着色剤分散物、任意要素のワックス、任意要素の凝固剤、任意要素の凝集剤のブレンドを得て、これを撹拌し、ラテックスのガラス転移点(Tg)以上の温度まで、いくつかの実施形態では、約30℃〜約70℃、いくつかの実施形態では、約40℃〜約65℃、いくつかの実施形態では、約45℃〜約60℃まで、約0.2時間〜約6時間、いくつかの実施形態では、約0.3〜約5時間、いくつかの実施形態では、約0.5時間〜約3時間加熱し、容積平均径が約3ミクロン〜約15ミクロン、いくつかの実施形態では、約4ミクロン〜約8ミクロン、いくつかの実施形態では、約5ミクロン〜約7ミクロンのトナー凝集物を得てもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、凝集粒子の上にシェルを作成してもよい。コアラテックスを作成するために上述のように利用した任意のラテックスを、シェルラテックスを作成するために利用してもよい。いくつかの実施形態では、スチレン−アクリル酸n−ブチルコポリマーを利用し、シェルラテックスを作成してもよい。いくつかの実施形態では、シェルを作成するために利用されるラテックスは、ガラス転移点が約35℃〜約75℃、いくつかの実施形態では、約40℃〜約70℃であってもよい。
【0045】
シェルラテックスが存在する場合、シェルラテックスを、浸漬、噴霧などの当業者の常識の範囲内にある任意の方法によって塗布してもよい。トナー粒子の望ましい最終粒径、いくつかの実施形態では、約3ミクロン〜約12ミクロン、他の実施形態では、約4ミクロン〜約8ミクロン、他の実施形態では、約5ミクロン〜約7ミクロンが得られるまで、シェルラテックスを塗布してもよい。他の実施形態では、凝集粒子が生成したら、シェルラテックスを加えてラテックスを系内で播種して半連続的に乳化共重合させることによって、トナー粒子を調製してもよい。
【0046】
望ましい最終粒径のトナー粒子が得られたら、塩基を用い、混合物のpHを約3.5〜約7、いくつかの実施形態では、約4〜約6.5に調整してもよい。塩基としては、任意の適切な塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムが挙げられる。アルカリ金属水酸化物を、混合物の約0.1〜約30重量%、いくつかの実施形態では、約0.5〜約15重量%の量で加えてもよい。
【0047】
次いで、トナー粒子を融着させてもよい。融着は、撹拌し、約80℃〜約100℃、いくつかの実施形態では、約90℃〜約98℃の温度で約0.5時間〜約12時間、いくつかの実施形態では、約1時間〜約6時間加熱することを含んでいてもよい。融着を、さらに撹拌することによって促進してもよい。
【0048】
次いで、混合物のpHを、例えば、酸を用いて約3.5〜約6、いくつかの実施形態では、約3.7〜約5.5まで下げ、トナー凝集物を融着させてもよい。適切な酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、クエン酸または酢酸が挙げられる。酸の添加量は、混合物の約0.1〜約30重量%、いくつかの実施形態では、約1〜約20重量%であってもよい。
【0049】
混合物を冷却工程または凍結工程で冷却する。冷却は、約20℃〜約40℃、いくつかの実施形態では、約22℃〜約30℃で約1時間〜約8時間、いくつかの実施形態では、約1.5時間〜約5時間行ってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、融着したトナースラリーを冷却することは、約20℃〜約40℃、いくつかの実施形態では、約22℃〜約30℃の温度まですばやく冷却するために、冷媒、例えば、氷、ドライアイスなどを加えることによって急冷することを含む。急冷は、少量(例えば、約2リットル未満、いくつかの実施形態では、約0.1リットル〜約1.5リットル)のトナーの場合、実現可能であろう。もっと大きなスケールでのプロセスの場合、例えば、約10リットルを超える場合、トナー混合物をすばやく冷却することは、トナー混合物に冷媒を入れることによって、またはジャケットによる反応器の冷却を利用することによっても実現可能ではないか、または現実的ではないだろう。
【0051】
この冷却の後、凝集物の懸濁物を、ラテックスのTg以上の温度まで加熱してもよい。粒子がコア−シェル構造を有する場合、コアを作成するために使用される第1のラテックスのTg、およびシェルを作成するために使用される第2のラテックスのTgよりも高い温度まで加熱し、シェルラテックスとコアラテックスとを融合させてもよい。いくつかの実施形態では、凝集物の懸濁物を、約80℃〜約120℃、いくつかの実施形態では、約85℃〜約98℃の温度まで、約1時間〜約6時間、いくつかの実施形態では、約2時間〜約4時間かけて加熱してもよい。
【0052】
次いで、トナースラリーを洗浄してもよい。洗浄は、約7〜約12、いくつかの実施形態では、約9〜約11のpHで実施してもよい。洗浄は、約30℃〜約70℃、いくつかの実施形態では、約40℃〜約67℃の温度で実施してもよい。洗浄は、脱イオン水中にトナー粒子を含むフィルターケーキを濾過し、再びスラリー化することを含んでいてもよい。フィルターケーキを脱イオン水によって1回以上洗浄するか、またはスラリーのpHを酸によって調整し、pH約4で、脱イオン水洗浄液で1回洗浄し、次いで、場合により、脱イオン水洗浄液で1回以上洗浄してもよい。いくつかの実施形態では、粒子を水で約3回洗浄してもよい。
【0053】
例えば、いくつかの実施形態では、トナー粒子を40℃の脱イオン水で洗浄し、濾過し、HCl酸を加えて再びスラリー化し、濾過し、新しい脱イオン水で再びスラリー化してもよい。濾液の溶液導電度が低い(10マイクロジーメン/cm未満)と測定されるまで洗浄を続けてもよく、溶液導電度が低いことは、イオン含有量が顕著に低く、金属(いくつかの実施形態では、亜鉛)による処理を妨害しないことを示す。
【0054】
いくつかの実施形態では、その後、粒子に対し、帯電特性を高めるために、溶液に金属を含むさらなる洗浄工程を実施してもよい。トナー粒子表面にある特定の金属系帯電剤(いくつかの実施形態では、サリチル酸亜鉛または他の同様の薬剤)の量を増やすと、トナー粒子の帯電性を高めるだろう。したがって、本開示によれば、このような金属を含む洗浄工程は、トナー粒子の帯電性を高めるだろう。
【0055】
いくつかの実施形態では、トナーの湿潤ケーキを、水、いくつかの実施形態では、脱イオン水に再び分散させ、約20℃〜約50℃、いくつかの実施形態では、約35℃〜約45℃、他の実施形態では、約40℃まで加熱し、金属系帯電剤(いくつかの実施形態では、サリチル酸亜鉛、サリチル酸クロム、サリチル酸アルミニウム、または他の金属系電荷制御剤)を含む溶液をこれに加え、金属サリチル酸塩がトナー粒子の表面に付着するように混合してもよい。この洗浄溶液中の金属帯電剤の適切な供給源としては、酢酸亜鉛、酪酸亜鉛、塩素酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、クエン酸亜鉛、フッ化亜鉛、サリチル酸亜鉛、サリチル酸アルミニウム、フッ化亜鉛四水和物、亜鉛 3,5−ジ三級ブチルサリチル酸、アルミニウム 3,5−ジ三級ブチルサリチル酸、これらの組み合わせなどが挙げられる。金属イオンは、濃度が約0.01%〜約10%、いくつかの実施形態では、約0.1%〜約3%の溶液であってもよい。
【0056】
金属イオン溶液を用いたトナー粒子の洗浄は、約30℃〜約50℃の温度で実施されてもよい。金属イオン溶液(いくつかの実施形態では、亜鉛を含む)を、約1〜約120滴の量でスラリーに滴下する。金属イオン溶液を約1滴/分〜約120滴/分、いくつかの実施形態では、約5滴/分〜約100滴/分、いくつかの実施形態では、約10滴/分〜約60滴/分の速度でスラリーに滴下し、約0.5時間〜約1.5時間、いくつかの実施形態では、約0.75時間〜約1.25時間、いくつかの実施形態では、約1時間混合する。この混合時間の間に、スラリーを約20℃〜約60℃、他の実施形態では、約30℃〜約55℃、さらなる実施形態では、約35℃〜約45℃までわずかに加熱する。亜鉛は、粒子を凝集させることなく、トナー表面に制御された様式で付着する。
【0057】
次いで、処理したトナーを濾過し、脱イオン水に再び分散させ、約48時間かけて凍結乾燥してもよい。粒子の水分濃度が約0重量%〜約1重量%、いくつかの実施形態では、約0.1重量%〜約0.7重量%になるまで乾燥を続けてもよい。
【0058】
本開示によれば、上述の融着および他の洗浄液の後に、トナー粒子の最後の洗浄液の一部として、亜鉛のような金属イオンを加えると、粒子の負電荷が増える。この洗浄工程は、それ自体を使用してもよく、CCAを組み合わせて使用してもよい。上述のものを含め、任意のCCAを利用してもよい。いくつかの実施形態では、CCA(例えば、3,5 ジ−tert−ブチルサリチル酸)、亜鉛または他の金属帯電剤を加え、トナーの全領域での帯電性を高め、寿命を高めてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、金属(いくつかの実施形態では、亜鉛)を含む洗浄液にさらした本開示のトナーは、摩擦電荷が約−2μC/g〜約−60μC/g、いくつかの実施形態では、約−10μC/g〜約−40μC/gであってもよい。また、本開示のトナーは、元のトナーの電荷質量比(Q/M)が約−3μC/g〜約−35μC/gであってもよく、表面添加剤をブレンドした後の最終的なトナーの電荷は、−10μC/g〜約−45μC/gであってもよい。
【0060】
他の実施形態では、トナー粒子の摩擦電荷を調節するために、他の金属源を利用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、トナーにもっと正電荷を付与するために、亜鉛の代わりに洗浄液にカルシウム(例えば、塩化カルシウム由来のカルシウム)、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化ベリリウム、これらの組み合わせなどを加えてもよい。これらの金属を用いた洗浄は、亜鉛を含む溶液について上に記載したのと同じプロセスにしたがって実施してもよい。カルシウム化合物を含む洗浄液にさらしたトナーは、摩擦電荷が約1μC/g〜約60μC/g、いくつかの実施形態では、約10μC/g〜約45μC/gであってもよい。
【0061】
トナーと合わせてもよいさらなる任意要素の添加剤としては、トナー組成物の特性を向上させる任意の添加剤が挙げられる。表面添加剤、色向上剤などが含まれる。洗浄または乾燥の後にトナー組成物に加えてもよい表面添加剤としては、例えば、金属塩、脂肪酸の金属塩、コロイド状シリカ、金属酸化物、チタン酸ストロンチウム、これらの組み合わせなどが挙げられ、添加剤は、通常は、それぞれトナーの約0.1〜約10重量%、いくつかの実施形態では、約0.5〜約7重量%の量で存在する。このような添加剤の例としては、Degussaから入手可能なステアリン酸亜鉛AEROSIL R972(登録商標)が挙げられる。また、コーティングされたシリカを、例えば、トナーの約0.05〜約5重量%、いくつかの実施形態では、約0.1〜約2重量%の量で選択してもよい。これらの添加剤を、生成したトナー生成物に凝集中に加えてもよく、ブレンドしてもよい。
【0062】
本開示のラテックスを利用して製造されるトナー粒子は、粒径が約1ミクロン〜約20ミクロン、いくつかの実施形態では、約2ミクロン〜約15ミクロン、いくつかの実施形態では、約3ミクロン〜約7ミクロンであってもよい。本開示のトナー粒子は、真円度が約0.9〜約0.99、いくつかの実施形態では、約0.92〜約0.98であってもよい。
【0063】
本開示の方法にしたがって、従来のトナーとくらべていくつかの利点をもつトナー粒子を得てもよい。(1)粒子の摩擦電荷のロバスト性が大きく、トナーの欠陥が減り、機械性能が向上する。(2)実装しやすく、既存の凝集/融着プロセスに対し、大きな変更がない。(3)製造時間が短くなり、再加工(品質の向上)の必要が減ることによって、生産性が上がり、単位製造コスト(UMC)が小さくなる。
【0064】
本開示のトナーを、プリンタ、複写機などを含む種々の画像形成デバイスに使用することができる。本開示にしたがって作られたトナーは、画像形成プロセス(特に、ゼログラフィープロセス)に優れており、画像の解像度が優れており、信号対雑音比が許容される値であり、画像が均一な高品質の着色画像を得ることができる。さらに、本開示のトナーを、デジタル画像形成システムおよびプロセスのような電子写真の画像形成および印刷システムのために選択することができる。
【0065】
本明細書に開示するプロセスを用いて得られるトナーと、コーティングされた担体(例えば、鋼、フェライトなど)のような既知の担体粒子とを混合することによって、現像剤組成物を調製することができる。担体は、トナーの約2重量%〜約8重量%、いくつかの実施形態では、約4重量%〜約6重量%の量で存在していてもよい。また、担体粒子は、例えば、導電性カーボンブラックのような導電性成分が分散したポリメタクリル酸メチル(PMMA)のようなポリマーコーティングを表面に備えるコアを含んでいてもよい。担体のコーティングとしては、シリコーン樹脂、例えば、メチルシルセスキオキサン、フルオロポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン、帯電列に隣接していない樹脂混合物(例えば、ポリフッ化ビニリデンとアクリル樹脂のようなアクリル熱硬化性樹脂)、これらの組み合わせおよび他の既知の成分が挙げられる。
【0066】
放電領域の現像によって現像を実施してもよい。放電領域の現像において、感光体を帯電させ、次いで、現像すべき領域を放電する。現像場およびトナーの電荷は、感光体上の帯電した領域とトナーが反発し、放電した領域に引き付けられるようになっている。この現像プロセスをレーザースキャナで用いる。
【0067】
磁気ブラシ現像プロセスによって現像を行ってもよい。この方法は、本開示のトナーと磁気担体粒子とを含む現像剤材料を磁石によって運ぶことを伴う。磁石の磁場によって、ブラシ状の構造に磁気担体が整列し、この「磁気ブラシ」が、感光体の静電画像を生じる表面と接触する。感光体の放電した領域に対する静電引力によって、トナー粒子がブラシから静電画像へと引き付けられ、画像の現像が起こる。いくつかの実施形態では、現像剤が導電性担体粒子を含み、バイアスがかかった磁石から担体粒子を介して感光体へと電流を流すことができる導電性磁気ブラシプロセスを使用する。
【0068】
また、画像形成方法は、本明細書に開示するトナーを伴う。この画像形成プロセスは、電子印刷磁気画像文字認識装置で画像を作成し、その後、本開示のトナー組成物を用いて画像を現像することを含む。静電手段によって光伝導性材料の表面に画像を作成し、現像することは、よく知られている。基本的なゼログラフィープロセスは、光伝導性絶縁層の上に均一な静電電荷を配置することと、この層を、光と影画像にさらし、光のあたった層の領域にある電荷は失われることと、微細に分割された検電材料(例えば、トナー)を画像の上に堆積させることによって、得られた静電潜像を現像することとを含む。トナーは、通常は、層の電荷が残っている領域に引き付けられ、それにより、静電潜像に対応するトナー画像が作られるだろう。次いで、この粉末状の画像を支持表面(例えば、紙)に転写してもよい。その後、転写された画像を熱によって支持表面に永久的に固着させてもよい。光導電層を均一に帯電し、次いで、光および影画像に層をさらすことによって潜像を作成することに代わり、画像の構造になるように層を直接帯電させることによって潜像を作成してもよい。その後、粉末状の画像を光導電層に固着させ、粉末画像の転写を行わない。溶媒またはオーバーコーティング処理のような他の適切な固定手段を上の熱固定工程と置き換えてもよい。
【実施例】
【0069】
(実施例1:0.8%亜鉛 3,5−ジ三級ブチルサリチレート洗浄液)
最後の洗浄工程において、0.8%wt/wtの3,5−ジ三級ブチルサリチル酸を水溶液に溶解するために、水酸化ナトリウムによって調整した。この14%スラリーに、0.8%の3,5−ジ三級ブチルサリチレートを滴下した。数分間混合した後、このスラリーに等量の塩化亜鉛溶液を加え、スラリーをさらに40分間混合した。塩を加えた後、スラリー粘度のわずかな上昇がみられた。混合した後、スラリーを通常の様式でふるい分けし、洗浄し、乾燥させ、流動性およびさらなる帯電特性を改良するために、添加剤をこの表面でブレンドした。
【0070】
(実施例2:0.4%亜鉛 3,5−ジ三級ブチルサリチレート洗浄液)
最後の洗浄工程において、0.4%wt/wtの3,5−ジ三級ブチルサリチル酸を水溶液に溶解するために、水酸化ナトリウムによって調整した。この14%スラリーに、0.4%の3,5−ジ三級ブチルサリチレートを滴下した。数分間混合した後、このスラリーに等量の塩化亜鉛溶液を加え、スラリーをさらに40分間混合した。塩を加えた後、スラリー粘度の上昇度は、0.8%のときよりも少なかった。混合した後、スラリーを通常の様式でふるい分けし、洗浄し、乾燥させ、流動性およびさらなる帯電特性を改良するために、添加剤をこの表面でブレンドした。
【0071】
(実施例3:1% サリチル酸亜鉛洗浄液)
最後の洗浄工程において、1%wt/wtのサリチル酸を水溶液に溶解するために、0.5%水酸化ナトリウムによって調整した。この14%スラリーに、1%のサリチレートを滴下した。数分間混合した後、このスラリーに1%の塩化亜鉛溶液を加え、スラリーをさらに50分間混合した。混合した後、スラリーを通常の様式でふるい分けし、洗浄し、乾燥させ、流動性およびさらなる帯電特性を改良するために、添加剤をこの表面でブレンドした。なお、この実験の後、表面の亜鉛は10,000ppmであった。0.3%サリチル酸亜鉛を用いてさらに実験すると、表面亜鉛の低下がみられた。
【0072】
(実施例4:1% 亜鉛 3,5−ジ三級ブチルサリチル酸)
最後の洗浄工程において、1%wt/wtの亜鉛 3,5−ジ三級ブチルサリチル酸を75%エタノールに溶解し、数分間混合した。スラリーに、この混合物を加え、高温(40℃)で50分間混合した。混合した後、スラリーを通常の様式でふるい分けし、洗浄し、乾燥させ、流動性およびさらなる帯電特性を改良するために、添加剤をこの表面でブレンドした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを製造するプロセスであって、
少なくとも1つの樹脂を含むエマルションに、任意要素の着色剤および任意要素のワックスを加えて粒子を作成することと;
この粒子を凝集させて凝集粒子を作成することと;
凝集粒子を融着させてトナー粒子を作成することと;
トナー粒子を、亜鉛、クロム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、ベリリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属イオンを含む溶液で洗浄することと;
トナー粒子を回収することとを含む、プロセス。
【請求項2】
前記溶液が、酢酸亜鉛、酪酸亜鉛、塩素酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、クエン酸亜鉛、フッ化亜鉛、サリチル酸亜鉛、フッ化亜鉛四水和物、サリチル酸アルミニウム、亜鉛 3,5−ジ三級ブチルサリチル酸、アルミニウム 3,5−ジ三級ブチルサリチル酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物によって与えられる金属イオンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記トナー粒子が、約−2μC/g〜約−60μC/gの摩擦電荷を有する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記溶液が、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化ベリリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物によって与えられる金属イオンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記トナー粒子が、約1μC/g〜約60μC/gの摩擦電荷を有する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記トナー粒子を洗浄することが、約30℃〜約50℃の温度で実施され、金属イオンを含む溶液が、約1滴〜約120滴の量で加えられ、洗浄することが、さらに、約100rpm〜約300rpmの速度で約0.5時間〜約1.5時間混合することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
溶液中、洗浄工程の間にトナー粒子と少なくとも1つの電荷制御剤とを接触させることをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
トナーを製造するプロセスであって、
少なくとも1つの樹脂を含むエマルションに、着色剤、任意要素のワックス、任意要素の電荷制御剤、凝集剤を加えて粒子を作成することと;
この粒子を凝集させて凝集粒子を作成することと;
凝集粒子を融着させてトナー粒子を作成することと;
トナー粒子を脱イオン水で少なくとも1回洗浄することと;
亜鉛、クロム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、ベリリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属イオンを含み、約0.01%〜約10%の濃度で金属イオンを含む溶液でトナー粒子を洗浄することと;
トナー粒子を回収することとを含む、プロセス。
【請求項9】
前記トナー粒子を洗浄することが、約30℃〜約50℃の温度で実施され、金属イオンを含む溶液が、約1滴/分〜約120滴/分の速度で加えられ、洗浄が、さらに、約100rpm〜約300rpmの速度で約0.5時間〜約1.5時間混合することを含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
トナー粒子と少なくとも1つの電荷制御剤とを接触させることをさらに含み、トナー粒子がコア/シェル構造を有し、電荷制御剤が、コア、シェルまたは両方に存在する、請求項8に記載のプロセス。

【公開番号】特開2013−45106(P2013−45106A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−170814(P2012−170814)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】