説明

トナー

【課題】本発明は、低温定着性及び耐オフセット性に優れ、長期に亘り、高品位な画像を形成することが可能なトナーを提供することを目的とする。また、本発明は、該トナーを有する現像剤、該現像剤を有する現像剤収容容器並びに該現像剤を用いる画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【解決手段】トナーは、結着樹脂、着色剤及び離型剤を少なくとも有し、結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含み、離型剤は、平均重合度が2以上10以下のポリグリセリンと、平均炭素数が16以上24以下の脂肪酸をエステル化させたポリグリセリンエステルであり、ポリグリセリンエステルは、120℃における溶融粘度が1.0mPa・秒以上40mPa・秒以下であると共に、水酸基価が0mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、現像剤、現像剤収容容器、画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真装置、静電記録装置等において、電気的潜像又は磁気的潜像は、トナーによって顕像化されている。例えば、電子写真法では、感光体上に静電荷像(潜像)を形成した後、潜像をトナーで現像して、トナー像を形成する。トナー像は、通常、紙等の記録媒体上に転写された後、加熱等の方法で定着される。静電荷像現像に使用されるトナーは、一般に、結着樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、その他の添加剤を含有する着色粒子である。
【0003】
乾式現像方式における定着方式としては、そのエネルギー効率の良さから、加熱ヒートローラー方式が広く一般に用いられている。また、近年は、トナーの低温定着化による省エネルギー化を図るため、定着時にトナーに与えられる熱エネルギーを低くする傾向にある。1999年度の国際エネルギー機関(IEA)のDSM(demand−side Management)プログラム中には、次世代複写機の技術調達プロジェクトが存在し、その要求仕様が公表されている。30cpm以上の複写機については、待機時間が10秒以内、待機時の消費電力が10〜30ワット以下(複写速度で異なる)とするよう、従来の複写機に比べて飛躍的な省エネルギー化の達成が要求されている。この要求を達成するための方法の一つとして、加熱ヒートローラー等の定着部材を低熱容量化させて、トナーの温度応答性を向上させる方法が考えられるが、十分満足できるものではない。
【0004】
このような要求を達成し、待機時間を短縮するためには、トナーの溶融開始温度を低下させて、使用可能時の定着温度を低下させることが必須の技術的達成事項であると考えられる。こうした低温定着化に対応するために、従来多用されてきたスチレン−アクリル系樹脂の代わりに、低温定着性に優れ、耐熱保存性も比較的良好なポリエステル樹脂の使用が試みられている。
【0005】
また、電子写真法における定着方式としては、熱効率に優れること、ダウンサイジングの点から、加熱ローラーを直接記録媒体上のトナー像に圧接することにより定着する方法、即ち、熱ローラー定着方式がエネルギー効率の良さから広く用いられている。このように、省エネルギーという環境への配慮から、定着に用いる熱ローラーの消費電力の削減が望まれている。
【0006】
近年、定着装置の改良がさらに進み、トナー像を支持する面と接触する側のローラーの厚みを薄くすることによって熱エネルギー効率が高められ、立ち上げ時間の大幅な短縮が可能となっている。しかしながら、比熱容量が小さくなったために、記録媒体が通った部分と通らなかった部分の温度差が大きくなり、定着ローラーへのトナーの付着が発生する。このため、定着ローラーが1周した後、記録媒体上の非画像部にトナーが定着する、いわゆるホットオフセット現象が発生する。したがって、低温定着性と共に、耐ホットオフセット性に対するトナーへの要求もますます厳しくなっている。
【0007】
トナーの耐オフセット性を向上させるために、離型剤として、溶融粘性が低く、樹脂との分離性に優れるといった特性が望まれる。一般に、トナーに用いられる離型剤としては、例えば、カルナウバワックス、モンタン系ワックス(特許文献1〜4参照)、ポリエチレン、ポリプロピレン、パラフィン類等に代表される炭化水素系ワックス(特許文献5〜6参照)等が知られている。
【0008】
しかしながら、これらの離型剤を用いた場合でも、トナーの耐オフセット性が十分とは言えず、更なる向上が望まれている。さらに、これらの離型剤のトナー中への分散が不均一であると、帯電性、流動性が悪化し、長期に亘り、高品位な画像を形成するのが困難になる場合がある。このため、トナー中に離型剤を均一に微分散させることが課題となっている。特に、高画質化を目的として、トナーを小粒径化する場合に、その影響が顕著となる。
【特許文献1】特開平1−185660号公報
【特許文献2】特開平1−185661号公報
【特許文献3】特開平1−185662号公報
【特許文献4】特開平1−185663号公報
【特許文献5】特公昭52−3304号公報
【特許文献6】特公昭52−3305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、低温定着性及び耐オフセット性に優れ、長期に亘り、高品位な画像を形成することが可能なトナーを提供することを目的とする。また、本発明は、該トナーを有する現像剤、該現像剤を有する現像剤収容容器並びに該現像剤を用いる画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、結着樹脂、着色剤及び離型剤を少なくとも有するトナーであって、前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含み、前記離型剤は、平均重合度が2以上10以下のポリグリセリンと、平均炭素数が16以上24以下の脂肪酸をエステル化させたポリグリセリンエステルであり、前記ポリグリセリンエステルは、120℃における溶融粘度が1.0mPa・秒以上40mPa・秒以下であると共に、水酸基価が0mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のトナーにおいて、前記脂肪酸は、ステアリン酸及び/又はベヘニン酸を含有することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のトナーにおいて、前記ポリエステル樹脂は、酸価が5mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナーにおいて、前記ポリグリセリンエステルは、融点が50℃以上70℃以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナーにおいて、前記ポリグリセリンエステルを3重量%以上20重量%以下含有することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナーにおいて、前記ポリグリセリンエステルは、分散径が0.05μm以上1.00μm以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナーにおいて、ガラス転移温度が50℃以上65℃未満であることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、現像剤において、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトナーを有することを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の現像剤において、キャリアをさらに有することを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の発明は、現像剤収容容器において、請求項8又は9に記載の現像剤が収容されていることを特徴とする。
【0020】
請求項11に記載の発明は、画像形成方法において、静電潜像担持体に静電潜像を形成する工程と、該静電潜像担持体に形成された静電潜像を請求項8又は9に記載の現像剤で現像する工程を有することを特徴とする。
【0021】
請求項12に記載の発明は、画像形成装置において、静電潜像が形成される静電潜像担持体と、該静電潜像担持体に形成された静電潜像を請求項8又は9に記載の現像剤で現像する現像手段を有することを特徴とする。
【0022】
請求項13に記載の発明は、プロセスカートリッジにおいて、静電潜像が形成される静電潜像担持体と、該静電潜像担持体に形成された静電潜像を請求項8又は9に記載の現像剤で現像する現像手段が少なくとも一体化され、画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、低温定着性及び耐オフセット性に優れ、長期に亘り、高品位な画像を形成することが可能なトナーを提供することができる。また、本発明によれば、該トナーを有する現像剤、該現像剤を有する現像剤収容容器並びに該現像剤を用いる画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
【0025】
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤及び離型剤を少なくとも有し、結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含み、離型剤は、平均重合度が2〜10のポリグリセリンと、平均炭素数が16〜24の脂肪酸をエステル化させたポリグリセリンエステルである。このとき、ポリグリセリンエステルは、120℃における溶融粘度が1.0〜40mPa・秒であると共に、水酸基価が0〜100mgKOH/gである。これにより、低温定着性及び耐オフセット性に優れるトナーが得られる。さらに、トナー中に離型剤を均一に微分散させることができるため、長期に亘り、高品位な画像を形成することができる。
【0026】
本発明において、ポリグリセリンエステルは、従来の離型剤に比べ、低温で素早く溶解する性質を有する。さらに、ポリグリセリンエステルの120℃における溶融粘度が40mPa・秒以下であるため、トナーの低温定着性及び耐オフセット性を向上させることができる。ただし、ポリグリセリンエステルの120℃における溶融粘度が1.0mPa・秒未満である場合は、トナー中にポリグリセリンエステルを均一に微分散させることが困難となり、かぶり、フィルミングが生じやすくなる。なお、溶融粘度は、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて測定することができる。
【0027】
また、ポリグリセリンエステルは、合成する際に用いられる脂肪酸の炭素数が16〜24であり、水酸基価が0〜100mgKOH/gであるため、適度に疎水性を有し、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂を有するトナーの離型剤として、優れた機能を有する。なお、脂肪酸としては、特に限定されないが、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、炭化水素鎖が長く、ポリグリセリンエステルの疎水性を向上させ、離型性に優れることから、ステアリン酸、ベヘニン酸が好ましい。脂肪酸の炭素数が16未満である場合及びポリグリセリンエステルの水酸基価が100mgKOH/gを超える場合は、ポリグリセリンエステルの疎水性が低下するため、離型剤としての十分な機能が得られず、トナーの耐オフセット性が悪化する。また、脂肪酸の炭素数が24を超える場合は、ポリグリセリンエステルの疎水性が高くなりすぎるため、トナー中でポリグリセリンエステルを均一に微分散させることが困難となり、かぶり、フィルミングが生じやすくなる。
【0028】
なお、水酸基価とは、試料1gを以下の条件でアセチル化したとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)量[mg]である。以下、水酸基価の測定方法を説明する。まず、試料約1gを精密に量り、丸底フラスコに入れ、無水酢酸・ピリジン試液5mlを正確に量って加え、フラスコの口に小漏斗を載せ、95〜100℃の油浴中に底部を約1cm浸して1時間加熱する。次に、冷却し、水1mlを加えてよく振り混ぜ、更に10分間加熱する。さらに、冷却した後、小漏斗及びフラスコの首部をエタノール5mlで洗い込み、指示薬として、フェノールフタレイン試液1mlを添加した後、過量の酢酸を0.5mol/lエタノール製水酸化カリウム溶液で滴定する(本試験)。別に、試料を入れない以外は、上記と同様に空試験を行い、式
水酸基価=((a[ml]−b[ml])×28.05)/試料の採取量[g]+酸価
により水酸基価が求められる。ただし、a及びbは、それぞれ空試験及び本試験における0.5mol/lエタノール製水酸化カリウム溶液の滴定量である。
【0029】
また、酸価とは、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)量[mg]である。以下、酸価の測定方法を説明する。まず、試料約1.0gを精密に量り、エタノール/エーテル混合液(体積比1:1)50mlを加え、必要に応じて、加温して溶解させ、検液とする。次に、冷却した後、フェノールフタレイン試液を数滴加え、0.1mol/lエタノール製水酸化カリウム溶液で30秒間持続する紅色を呈するまで滴定し、式
酸価=c[ml]×5.611/試料の採取量[g]
により酸価が求められる。ただし、cは、0.1mol/lエタノール製水酸化カリウム溶液の滴定量である。
【0030】
さらに、ポリグリセリンエステルを合成する際に用いられるポリグリセリンは、平均重合度が2〜10、好ましくは、2〜4であり、分子中にエステル結合を多く含むため、ポリエステル樹脂との適度な親和性を有する。その結果、従来の離型剤に比べ、トナー中に均一に微分散させることができる。ポリグリセリンの平均重合度が2未満である場合は、ポリグリセリンエステルのエステル結合数が少なくなるため、ポリエステル樹脂との親和性が低下し、ポリグリセリンエステルをトナー中で微分散させることが困難になる。一方、ポリグリセリンの平均重合度が10を超える場合は、ポリグリセリンの溶融粘度が上昇し、トナーの耐オフセット性が悪化する。なお、ポリグリセリンの平均重合度は、ポリグリセリンの水酸基価から算出することができる。
【0031】
本発明において、ポリグリセリンエステルは、融点が50〜70℃であることが好ましい。融点が50℃未満である場合は、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、70℃を超える場合は、トナーの低温定着性が低下することがある。なお、融点は、示差走査熱量分析(Differential scanning calorimetry;DSC)により得られる示差熱曲線において、吸熱量が極大になる温度である。
【0032】
また、本発明のトナーは、ポリグリセリンエステルを3〜20重量%含有することが好ましい。ポリグリセリンエステルの含有量が3重量%未満である場合は、トナーの耐オフセット性が低下することがあり、20重量%を超える場合は、トナーの流動性、帯電性が低下することがある。
【0033】
本発明において、トナー中のポリグリセリンエステルの含有量Wは、融点と同様にDSCにより求められる。具体的には、まず、ポリグリセリンエステル単体のDSC測定を予め行い、ポリグリセリンエステルの単位重量当たりの融解熱量Qw[J/mg]を求める。次に、トナーのDSC測定を同様に行い、ポリグリセリンエステルの吸熱ピークの面積から、トナー単位重量中に含まれるポリグリセリンエステルの融解熱量Qt[J/mg]を求める。このとき、Wは、式
W(x)=Qt/Qw×100[重量%]
で表される。
【0034】
本発明のトナー中におけるポリグリセリンエステルの分散径(最大方向の粒径)は0.05〜1.00μmであることが好ましい。分散径が1.00μmを超える場合は、トナー中のポリグリセリンエステルの含有量のばらつきが大きくなって、トナーの帯電性、流動性が低下したり、現像装置内にポリグリセリンエステルが固着したりすることがある。その結果、高品位な画像が得られないことがある。また、分散径が0.05μm未満である場合は、トナーの内部に存在するポリグリセリンエステルの割合が大きくなって、トナーの耐オフセット性が低下することがある。
【0035】
本発明において、ポリグリセリンエステルの分散径の測定方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法を用いることができる。まず、トナーをエポキシ樹脂に包埋して約100nmに超薄切片化し、四酸化ルテニウムにより染色する。次に、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率10000倍で観察を行い、撮影した写真を画像評価する。これにより、ポリグリセリンエステルの分散状態を観察し、分散径を測定することができる。
【0036】
本発明において、結着樹脂は、良好な低温定着性が得られることから、ポリエステル樹脂を含有するが、ポリエステル樹脂の分子量、構成モノマー等は、目的に応じて適宜選択することができる。また、結着樹脂は、ポリエステル樹脂以外の樹脂をさらに含有してもよい。ポリエステル樹脂以外の樹脂としては、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等の単独重合体又は共重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0037】
ポリエステル樹脂は、多価アルコールと多価カルボン酸を脱水縮合することにより得られるが、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルを付加することにより得られる2価のアルコール等が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂を架橋させるためには、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等の3価以上のアルコールを併用することが好ましい。
【0038】
多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラキス(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、これらの無水物、部分低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0039】
本発明において、ポリエステル樹脂は、酸価が5〜40mgKOH/gであることが好ましく、10〜20mgKOH/gがさらに好ましい。酸価が5mgKOH/g未満である場合は、主たる記録媒体である紙との親和性が低下するため、低温定着性が低下することがあり、また、負帯電性が得にくく、形成される画像が劣化することがある。一方、酸価が40mgKOH/gを超える場合は、高温高湿、低温低湿下等の環境下において、環境の影響を受けやすくなって、画像が劣化することがある。
【0040】
また、ポリエステル樹脂は、トナーの定着性、耐オフセット性の点で、THFに可溶な成分の分子量分布において、分子量が3000〜50000の領域に少なくとも1つのピークを有することが好ましく、分子量5000〜20000の領域に少なくとも1つのピークを有することがさらに好ましい。さらに、ポリエステル樹脂のTHFに可溶な成分は、分子量が100000以下である成分の含有量が60〜100重量%であることが好ましい。なお、ポリエステル樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0041】
結着樹脂は、トナーの保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80℃であることが好ましく、40〜75℃がさらに好ましい。Tgが35℃未満である場合は、高温雰囲気下でトナーが劣化しやすくなることがあり、さらに、定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。一方、Tgが80℃を超える場合は、定着性が低下することがある。
【0042】
着色剤としては、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロロオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられ、2種以上併用してもよい。
【0043】
トナー材料中の着色剤の含有量は、1〜15重量%であることが好ましく、3〜10重量%がさらに好ましい。この含有量が、1重量%未満であると、トナーの着色力が低下することがあり、15重量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0044】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。このような樹脂としては、例えば、ポリエステル、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられ、2種以上併用してもよい。
【0045】
スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリビニルトルエン等が挙げられる。スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0046】
マスターバッチは、高せん断力をかけて、樹脂と着色剤を混合又は混練させて製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶媒を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。フラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶媒と共に混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水及び有機溶媒を除去する方法である。混合又は混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置を用いることができる。
【0047】
本発明のトナーは、帯電制御剤、無機微粒子、クリーニング性向上剤、磁性材料等をさらに含有することができる。
【0048】
帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられ、2種以上併用してもよい。
【0049】
帯電制御剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩基等の官能基を有する高分子系の化合物等が挙げられる。
【0050】
トナー組成物中の帯電制御剤の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.2〜5重量%がさらに好ましい。この含有量が、0.1重量%未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10重量%を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラーとの静電的吸引力が増大し、トナーの流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0051】
無機微粒子は、トナーに流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として用いられる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられ、2種以上併用してもよい。
【0052】
無機微粒子は、一次粒径が5nm〜2μmであることが好ましく、5〜500nmがさらに好ましい。
【0053】
トナー中の無機微粒子の含有量は、0.01〜5.0重量%であることが好ましく、0.01〜2.0重量%がさらに好ましい。
【0054】
また、無機微粒子は、流動性向上剤で表面処理されていることが好ましい。これにより、無機微粒子の疎水性が向上し、高湿度下においても流動性や帯電性の低下を抑制することができる。流動性向上剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。シリカ、酸化チタンは、流動性向上剤で表面処理し、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして用いることが好ましい。
【0055】
クリーニング性向上剤は、転写後に感光体や一次転写媒体に残存するトナーを除去しやすくするために用いられる。クリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ポリメタクリル酸メチル微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子等が挙げられる。ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01〜1μmであることが好ましい。
【0056】
磁性材料としては、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト等が挙げられる。なお、磁性材料は、トナーの色調の点から、白色のものが好ましい。
【0057】
本発明のトナーは、低温定着性及び耐オフセット性に優れ、長期に亘り、高品位な画像を形成することができる。したがって、本発明のトナーは、各種分野で使用することができ、特に、電子写真法による画像形成に使用することが好ましい。
【0058】
本発明のトナーの製造方法としては、特に限定されないが、粉砕法、水中造粒法等が挙げられる。
【0059】
本発明の現像剤は、本発明のトナーを有するが、キャリア等の成分をさらに有してもよく、トナーからなる一成分現像剤、トナー及びキャリアからなる二成分現像剤等として、用いることができるが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等には、寿命向上等の点で、二成分現像剤を用いることが好ましい。このような現像剤は、磁性一成分現像法、非磁性一成分現像法、二成分現像法等の公知の各種電子写真法に用いることができる。
【0060】
本発明の現像剤を一成分現像剤として用いると、トナーの収支が行われても、トナーの粒径の変動が少なく、現像ローラーへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着を抑制することができ、現像装置の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0061】
また、本発明の現像剤を二成分現像剤として用いると、長期に亘るトナーの収支が行われても、トナーの粒径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0062】
二成分現像剤中のキャリアの含有量は、90〜98重量%であることが好ましく、93〜97重量%がさらに好ましい。
【0063】
キャリアは、特に限定されないが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有することが好ましい。
【0064】
芯材の材料としては、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料等が挙げられ、二種以上併用してもよい。なお、画像濃度の確保の点では、芯材として、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体への当りを弱くでき、高画質化に有利である点では、芯材として、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料を用いることが好ましい。
【0065】
芯材は、体積平均粒径(D50)が10〜150μmであることが好ましく、20〜80μmがさらに好ましい。D50が10μm未満であると、キャリアの粒径分布において、微粉が多くなるため、1粒子当たりの磁化が低下して、キャリアの飛散が生じることがある。一方、D50が150μmを超えると、キャリアの比表面積が低下して、トナーの飛散が生じることがある。その結果、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現性が低下することがある。
【0066】
樹脂層の材料としては、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、フッ化ビニリデンとアクリル単量体の共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体のターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0067】
アミノ系樹脂としては、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。ポリビニル系樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。また、ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体等が挙げられる。ハロゲン化オレフィン樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0068】
また、樹脂層は、必要に応じて、導電粉等を含有してもよい。導電粉の材料としては、例えば、金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。なお、導電粉は、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。平均粒径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0069】
樹脂層は、例えば、シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布液を調製した後、公知の塗布方法により、芯材の表面に塗布液を塗布して、乾燥及び焼付を行うことにより形成することができる。塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法等が挙げられる。また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブチルアセテート等が挙げられる。さらに、焼付方法としては、外部加熱方式及び内部加熱方式のいずれであってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロ波を用いる方法等が挙げられる。
【0070】
キャリア中の樹脂層の含有量は、0.01〜5.0重量%が好ましい。この含有量が0.01重量%未満であると、芯材の表面に均一な樹脂層を形成できないことがあり、5.0重量%を超えると、樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生して、均一なキャリアが得られないことがある。
【0071】
本発明の現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0072】
本発明の現像剤収容容器は、本発明の現像剤が収容されているが、容器としては、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択することができるが、容器本体とキャップを有するもの等が挙げられる。
【0073】
また、容器本体の大きさ、形状、構造、材質等は、特に限定されないが、形状は、円筒状等であることが好ましく、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより、内容物である現像剤が排出口側に移行することが可能であり、スパイラル状の凹凸の一部又は全てが蛇腹機能を有することが特に好ましい。さらに、材質は、特に限定されないが、寸法精度がよいものであることが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0074】
現像剤収容容器は、保存、搬送等が容易であり、取扱性に優れるため、後述するプロセスカートリッジ、画像形成装置等に着脱可能に取り付け、現像剤の補給に使用することができる。
【0075】
本発明の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程を少なくとも有することが好ましく、クリーニング工程を有することがさらに好ましく、必要に応じて、例えば、除電工程、リサイクル工程、制御工程等を有してもよい。
【0076】
また、本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段を少なくとも有することが好ましく、クリーニング手段を有することがさらに好ましく、必要に応じて、例えば、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してもよい。
【0077】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置を用いて、実施することができ、静電潜像形成工程は、静電潜像形成手段を用いて、現像工程は、現像手段を用いて、転写工程は、転写手段を用いて、定着工程は、定着手段を用いて、これら以外の工程は、これら以外の手段を用いて、実施することができる。
【0078】
静電潜像形成工程は、光導電性絶縁体、感光体等の静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。静電潜像担持体の材質、形状、構造、大きさ等は、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択することができるが、形状は、ドラム状であることが好ましい。また、感光体としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体等が挙げられる。中でも、長寿命である点で、アモルファスシリコン感光体等が好ましい。
【0079】
静電潜像は、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより形成され、静電潜像形成手段を用いて形成することができる。静電潜像形成手段は、例えば、静電潜像担持体の表面に電圧を印加して一様に帯電させる帯電器と、静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器を少なくとも有する。
【0080】
帯電器としては、特に限定されないが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等を用いることができる。
【0081】
露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に形成すべき像様に露光することができれば、特に限定されないが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光器を用いることができる。なお、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0082】
現像工程は、静電潜像を、本発明の現像剤で現像してトナー像を形成する工程であり、可視像は、現像手段を用いて形成することができる。現像手段は、本発明の現像剤で現像することができれば、特に限定されないが、例えば、本発明の現像剤を収容し、静電潜像にトナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものを用いることができ、本発明の現像剤収容容器を備えた現像器等が好ましい。現像器は、乾式現像方式及び湿式現像方式のいずれであってもよく、また、単色用現像器及び多色用現像器のいずれであってもよく、例えば、本発明の現像剤を摩擦攪拌により帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラを有するもの等が挙げられる。現像器内では、例えば、トナーとキャリアが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、静電潜像担持体近傍に配置されており、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって、静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて、静電潜像担持体の表面にトナー像が形成される。なお、現像器に収容する現像剤は、本発明の現像剤であるが、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
【0083】
転写工程は、例えば、転写帯電器を用いて、トナー像が形成された静電潜像担持体を帯電することにより、トナー像を記録媒体に転写する工程であり、転写手段を用いて転写することができる。このとき、転写工程は、トナー像を中間転写体上に転写する一次転写工程と、中間転写体上に転写されたトナー像を記録媒体上に転写する二次転写工程を有することが好ましい。また、転写工程は、二色以上のトナー、好ましくは、フルカラートナーを用いて、各色のトナー像を中間転写体上に転写して複合トナー像を形成する一次転写工程と、中間転写体上に形成された複合トナー像を記録媒体上に転写する二次転写工程を有することがさらに好ましい。
【0084】
転写手段は、トナー像を中間転写体上に転写して複合トナー像を形成する一次転写手段と、中間転写体上に形成された複合トナー像を記録媒体上に転写する二次転写手段を有することが好ましい。なお、中間転写体としては、特に限定されないが、例えば、無端状の転写ベルト等が挙げられる。また、転写手段(一次転写手段、二次転写手段)は、静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体側に帯電剥離させる転写器を少なくとも有することが好ましい。なお、転写手段は、1個又は2個以上の転写器を有することができる。
【0085】
転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラー、圧力転写ローラー、粘着転写器等が挙げられる。
【0086】
なお、記録媒体としては、特に限定されず、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0087】
定着工程は、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程であり、定着手段を用いて、定着させることができる。なお、二色以上のトナーを用いる場合は、各色のトナーが記録媒体に転写される毎に定着させてもよいし、全色のトナーが記録媒体に転写されて積層された状態で定着させてもよい。定着手段としては、特に限定されず、公知の加熱加圧手段を用いることができる。加熱加圧手段としては、加熱ローラーと加圧ローラーを組み合わせたもの、加熱ローラーと加圧ローラーと無端ベルトを組み合わせたもの等が挙げられる。このとき、加熱温度は、通常、80〜200℃である。なお、必要に応じて、定着手段と共に、あるいは定着手段の代わりに、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0088】
除電工程は、静電潜像担持体に除電バイアスを印加して除電する工程であり、除電手段を用いて除電することができる。除電手段としては、静電潜像担持体に除電バイアスを印加することができれば、特に限定されないが、例えば、除電ランプ等を用いることができる。
【0089】
クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、クリーニング手段を用いてクリーニングすることができる。クリーニング手段としては、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去することができれば、特に限定されないが、例えば、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー、ブラシクリーナー、ウエブクリーナー等を用いることができる。
【0090】
リサイクル工程は、クリーニング工程で除去されたトナーを現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段を用いてリサイクルさせることができる。リサイクル手段としては、特に限定されず、公知の搬送手段等を用いることができる。
【0091】
制御工程は、各工程を制御する工程であり、制御手段を用いて制御することができる。制御手段としては、各手段の動作を制御することができれば、特に限定されないが、例えば、シークエンサー、コンピューター等を用いることができる。
【0092】
図1に、本発明の画像形成装置の一例を示す。画像形成装置100Aは、静電潜像担持体としての感光体ドラム10と、帯電手段としての帯電ローラー20と、露光手段としての露光装置(不図示)と、現像手段としての現像器40と、中間転写体50と、クリーニング手段としてのクリーニングブレードを有するクリーニング装置60と、除電手段としての除電ランプ70を有する。
【0093】
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置されている3個のローラー51で張架されており、矢印方向に移動することができる。3個のローラー51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加することが可能な転写バイアスローラーとしても機能する。
【0094】
また、中間転写体50の近傍には、クリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されている。さらに、記録紙95にトナー像を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加することが可能な転写手段としての転写ローラー80が中間転写体50に対向して配置されている。
【0095】
また、中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー像に電荷を付与するためのコロナ帯電器52が、感光体ドラム10と中間転写体50の接触部と、中間転写体50と記録紙95の接触部との間に配置されている。
【0096】
ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色の現像器40は、現像剤収容部41と、現像剤供給ローラー42と、現像ローラー43を備える。
【0097】
画像形成装置100Aでは、帯電ローラー20により感光体ドラム10を一様に帯電させた後、露光装置(不図示)により露光光Lを感光ドラム10上に像様に露光し、静電潜像を形成する。次に、感光体ドラム10上に形成された静電潜像を、現像器40から現像剤を供給して現像してトナー像を形成した後、ローラー51から印加された転写バイアスにより、トナー像が中間転写体50上に転写(一次転写)される。さらに、中間転写体50上のトナー像は、コロナ帯電器52により電荷を付与された後、記録紙95上に転写(二次転写)される。なお、感光体ドラム10上に残存したトナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体ドラム10は除電ランプ70により一旦、除電される。
【0098】
図2に、本発明の画像形成装置の他の例を示す。画像形成装置100Bは、タンデム型カラー画像形成装置であり、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400を有する。
【0099】
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。中間転写体50は、支持ローラー14、15及び16に張架されており、矢印方向に回転することができる。
【0100】
支持ローラー15の近傍には、中間転写体50上に残留したトナーを除去するためのクリーニング装置17が配置されている。また、支持ローラー14と支持ローラー15により張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの4個の画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。各色の画像形成手段18は、図3に示すように、感光体ドラム10と、感光体ドラム10を一様に帯電させる帯電ローラー20と、感光体ドラム10に形成された静電潜像をブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色の現像剤で現像してトナー像を形成する現像器40と、各色のトナー像を中間転写体50上に転写させるための転写ローラー80と、クリーニング装置60と、除電ランプ70を備える。
【0101】
また、タンデム型現像器120の近傍には、露光装置30が配置されている。露光装置30は、感光体ドラム10上に露光光Lを露光し、静電潜像を形成する。
【0102】
さらに、中間転写体50のタンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22は、一対のローラー23に張架されている無端ベルトである二次転写ベルト24からなり、二次転写ベルト24上を搬送される記録紙と中間転写体50が互いに接触可能となっている。
【0103】
二次転写装置22の近傍には、定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、定着ベルト26に押圧されて配置される加圧ローラー27を有する。
【0104】
また、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、記録紙の両面に画像を形成するために記録紙を反転させる反転装置28が配置されている。
【0105】
次に、画像形成装置100Bにおけるフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。まず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。次に、スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は、直ちにスキャナ300が駆動し、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に、原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読み取りセンサ36で受光される。これにより、カラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色の画像情報が得られる。
【0106】
さらに、露光装置30により、得られた各色の画像情報に基づいて、各色の静電潜像が感光体ドラム10に形成された後、各色の静電潜像は、各色の現像器40から供給された現像剤で現像され、各色のトナー像が形成される。形成された各色のトナー像は、支持ローラー14、15及び16により回転移動する中間転写体50上に、順次重ねて転写(一次転写)され、中間転写体50上に複合トナー像が形成される。
【0107】
給紙テーブル200においては、給紙ローラー142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つから記録紙を繰り出し、分離ローラー145で1枚ずつ分離して給紙路146に送り出し、搬送ローラー147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラー49に突き当てて止める。あるいは、手差しトレイ54上の記録紙を繰り出し、分離ローラー58で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、レジストローラー49に突き当てて止める。なお、レジストローラー49は、一般に接地して使用されるが、記録紙の紙粉除去のために、バイアスが印加された状態で使用してもよい。
【0108】
そして、中間転写体50上に形成された複合トナー像にタイミングを合わせてレジストローラー49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22の間に記録紙を送り出し、複合トナー像を記録紙上に転写(二次転写)する。
【0109】
複合トナー像が転写された記録紙は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25に送り出される。そして、定着装置25において、定着ベルト26及び加圧ローラー27により、加熱加圧されて複合トナー像が記録紙上に定着される。その後、記録紙は、切換爪55で切り換えて排出ローラー56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。あるいは、切換爪55で切り換えて反転装置28により反転されて再び転写位置へと導かれて、裏面にも画像を形成した後、排出ローラー56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【0110】
なお、複合トナー像が転写された後に中間転写体50上に残留したトナーは、クリーニング装置17により除去される。
【0111】
本発明のプロセスカートリッジは、各種画像形成装置に着脱可能に成型されており、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に担持された静電潜像を本発明の現像剤で現像してトナー像を形成する現像手段を少なくとも有する。なお、本発明のプロセスカートリッジは、必要に応じて、他の手段をさらに有していてもよい。
【0112】
現像手段としては、本発明の現像剤を収容する現像剤収容容器と、現像剤収容容器内に収容された現像剤を担持すると共に搬送する現像剤担持体を少なくとも有する。なお、現像手段は、担持する現像剤の厚さを規制するため規制部材等をさらに有してもよい。
【0113】
図4に、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す。プロセスカートリッジ110は、感光体ドラム10、コロナ帯電器52、現像器40、転写ローラー80及びクリーニング装置90を有する。
【実施例】
【0114】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、実施例に何ら限定されるものではない。前述のように、本発明のトナーの製造方法は、特に限定されないが、実施例においては、水中造粒法の一つである溶解懸濁法を用いて、トナーを製造した結果について述べる。なお、部は、重量部を意味する。
【0115】
(ポリエステル樹脂の合成)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物67部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物84部、テレフタル酸274部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、5時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が2100、重量平均分子量(Mw)が5600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が20mgKOH/gであった。
【0116】
(スチレン−アクリル樹脂の合成)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、酢酸エチル300部、スチレン200部、アクリルモノマー100部及びアゾビスイソブチルニトリル5部を投入して、窒素雰囲気下、60℃(常圧)で6時間反応させた。次に、メタノール200部を加え、1時間攪拌した後、上澄みを除去し、減圧乾燥させて、スチレン−アクリル樹脂を合成した。得られたスチレン−アクリル共重合体は、Mwが16000、Tgが57℃であった。
【0117】
(ポリグリセリンエステルの合成)
表1に示す炭素数の脂肪酸と、表1に示す平均重合度のポリグリセリンを、触媒と共に、所定の比率で反応容器に入れ、窒素気流下、240℃でエステル化反応させ、表1に示す物性を有するポリグリセリンエステルを合成した。
【0118】
【表1】

なお、表1には、後述する比較例4及び5で用いるカルナウバワックス及びパラフィンワックスの物性も併せて記載した。
【0119】
(マスターバッチの作製)
水1000部、DBP吸油量が42ml/100g、pHが9.5のカーボンブラックPrintex35(デグサ社製)540部、及び1200部のポリエステル樹脂を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。次に、二本ロールを用いて、得られた混合物を150℃で30分間混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチを作製した。
【0120】
(水系媒体の調製)
イオン交換水306部、リン酸三カルシウムの10重量%懸濁液265部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部を混合撹拌し、均一に溶解させて、水系媒体を調製した。
【0121】
(実施例1)
ビーカー内に、ポリエステル樹脂85部及び酢酸エチル100部を入れ、攪拌して溶解させた。次に、テトラグリセリンヘキサベヘネート5部及びマスターバッチ10部を加えて、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスクの周速度6m/秒で、粒径0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスし、トナー材料液を調製した。
【0122】
容器に水系媒体150部を入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、12000rpmで攪拌しながら、トナー材料液100部を添加し、10分間混合して、乳化スラリーを調製した。
【0123】
攪拌機及び温度計をセットしたコルベンに、乳化スラリー100部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃で12時間脱溶剤し、分散スラリーを得た。
【0124】
分散スラリー100部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を3回行った。得られた濾過ケーキに10重量%塩酸10部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行い、濾過ケーキを得た。
【0125】
循風乾燥機を用いて、得られた濾過ケーキを45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、母体粒子を得た。
【0126】
母体粒子100部と、外添剤としての疎水性シリカH2000(クラリアントジャパン社製)1.0部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて、周速30m/秒で30秒間混合し、1分間休止する処理を5サイクル行った後、目開き35μmメッシュで篩い、トナーを得た。なお、トナー中におけるテトラグリセリンヘキサベヘネートの分散径は0.2μmであった。
【0127】
(実施例2)
テトラグリセリンヘキサベヘネートの代わりに、ヘキサグリセリンオクタベヘネートを用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるヘキサグリセリンオクタベヘネートの分散径は0.2μmであった。
【0128】
(実施例3)
テトラグリセリンヘキサベヘネートの代わりに、テトラグリセリンテトラベヘネートを用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるテトラグリセリンテトラベヘネートの分散径は0.4μmであった。
【0129】
(実施例4)
テトラグリセリンヘキサベヘネートの代わりに、ジグリセリンテトラベヘネートを用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるジグリセリンテトラベヘネートの分散径は0.3μmであった。
【0130】
(実施例5)
テトラグリセリンヘキサベヘネートの代わりに、テトラグリセリンヘキサステアレートを用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるテトラグリセリンヘキサステアレートの分散径は0.2μmであった。
【0131】
(実施例6)
テトラグリセリンヘキサベヘネートの代わりに、テトラグリセリンヘキサパルミテートを用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるテトラグリセリンヘキサパルミテートの分散径は0.2μmであった。
【0132】
(実施例7)
テトラグリセリンヘキサベヘネートの代わりに、デカグリセリンデカベヘネートを用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるデカグリセリンデカベヘネートの分散径は0.2μmであった。
【0133】
(比較例1)
テトラグリセリンヘキサベヘネートの代わりに、ジデシルグリセリンデカベヘネートを用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるジデシルグリセリンデカベヘネートの分散径は0.2μmであった。
【0134】
(比較例2)
テトラグリセリンヘキサベヘネートの代わりに、テトラグリセリンジベヘネートを用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるテトラグリセリンジベヘネートの分散径は0.2μmであった。
【0135】
(比較例3)
テトラグリセリンヘキサベヘネートの代わりに、セスキグリセリンモノベヘネートを用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるセスキグリセリンモノベヘネートの分散径は1.2μmであった。
【0136】
(比較例4)
テトラグリセリンヘキサベヘネートの代わりに、カルナウバワックスWA−05(東亜化成社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるカルナウバワックスの分散径は0.3μmであった。
【0137】
(比較例5)
テトラグリセリンヘキサベヘネートの代わりに、パラフィンワックスHNP−09D(日本精鑞社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるパラフィンワックスの分散径は2.0μmであった。
【0138】
(比較例6)
テトラグリセリンヘキサベヘネートの代わりに、テトラグリセリンヘキサラウレートを用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるテトラグリセリンヘキサラウレートの分散径は0.2μmであった。
【0139】
(比較例7)
ポリエステル樹脂の代わりに、スチレンアクリル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。なお、トナー中におけるジデシルグリセリンデカベヘネートの分散径は0.2μmであった。
【0140】
(キャリアの作製)
トルエン100部に、シリコーン樹脂オルガノストレートシリコーン100部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5部及びカーボンブラック10部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。流動床型コーティング装置を用いて、平均粒径50μmの球状マグネタイト1000部の表面に樹脂層塗布液を塗布して、キャリアを作製した。
【0141】
(現像剤の作製)
ボールミルを用いて、トナー5部とキャリア95部を混合し、現像剤を作製した。
【0142】
(評価方法及び評価結果)
得られた現像剤を用いて、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0143】
<定着下限温度>
定着ローラーとして、テフロン(登録商標)ローラーを使用した複写機MF−200(リコー社製)の定着部を改造した装置を用いて、タイプ6200紙(リコー社製)をセットし、定着ローラーの温度を5℃刻みで変化させて、複写テストを行った。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ローラーの温度の最小値を定着下限温度とした。定着下限温度は、消費電力が抑えられることから、低いことが好ましく、135℃以下であれば、実使用上問題の無いレベルである。
【0144】
<ホットオフセット発生温度>
タンデム型カラー電子写真装置Imagio Neo C350(リコー社製)の定着ユニットから、シリコーンオイル塗布機構を取り去り、オイルレス定着方式に改造して、温度及び線速を調整可能にチューニングした。このタンデム型カラー電子写真装置を用いて、0.85±0.3mg/cmのトナーが現像されるように調整した。得られた画像を定着ローラーの温度を5℃刻みで変化させて定着し、ホットオフセットの発生する定着温度(オフセット発生温度)を測定し、ホットオフセットが発生せずに定着させることが可能な定着ローラーの温度の最大値を定着上限温度とした。定着上限温度は、耐オフセット性に対する余裕度が増すことから、高いことが好ましく、190℃以上であれば、実使用上問題の無いレベルである。
【0145】
<転写率>
画像形成装置MF2800(リコー社製)を用いて、マクベス反射濃度計で平均画像濃度が1.38以上となる、15cm×15cmの黒ベタ画像を形成し、式
転写率[%]=(記録紙上に転写されたトナー量/感光体上に現像されたトナー量)×100
から、転写率を求めた。なお、転写率が90%以上のものを◎、80%以上90%未満のものを○、70%以上80%未満のものを△、70%未満のものを×として、判定した。
【0146】
<転写ムラ>
画像形成装置MF2800(リコー社製)を用いて、黒ベタ画像を形成し、得られた画像の転写ムラの有無を目視観察し、転写ムラを評価した。なお、転写ムラがなく、非常に良好なレベルであるものを◎、転写ムラがなく、実使用上、問題が無いレベルであるものを○、転写ムラが少しあるが、実使用可能なレベルであるものを△、転写ムラがあり、実用上、問題があるレベルであるものを×として、判定した。
【0147】
<かぶり>
感光体に当接するクリーニングブレード及び帯電ローラーを有するタンデム型カラー電子写真装置imagio Neo 450(リコー社製)を用いて、現像スリーブの回転方向に対して垂直な方向に1cm間隔で黒ベタと白ベタを繰り返したA4横チャート(画像パターンA)を1万枚出力した後、白紙画像を出力し、かぶりの有無を目視評価した。なお、かぶりが無いものを○、かぶりが有るものを×として、判定した。
【0148】
<フィルミング>
画像形成装置MF2800(リコー社製)を用いて、10000枚画像を形成させた後の感光体を目視で検査し、トナー成分、主に離型剤の感光体への固着が生じていないか評価した。なお、感光体へのトナー成分の固着が確認されないものを○、感光体へのトナー成分の固着が確認できるが、実用上、問題になるレベルではないものを△、感光体へのトナー成分の固着が確認でき、実用上、問題のあるレベルであるものを×として、判定した。
【0149】
また、得られたトナーを用いて、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0150】
<耐熱保存性>
50mlのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した後、24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)により、針入度を測定し、耐熱保存性を評価した。なお、針入度が25mm以上であるものを◎、15mm以上25mm未満であるものを○、5mm以上15mm未満であるものを△、5mm未満であるものを×として、判定した。このとき、針入度が大きい程、耐熱保存性が優れていることを意味し、針入度が5mm未満であるものは、使用上、問題が発生する可能性が高い。
【0151】
【表2】

表2より、実施例のトナーは、低温定着性に優れるポリエステル樹脂と、融点が低く、溶融粘度が低く、疎水性が高く、離型剤としての性能に優れるポリグリセリンエステルが用いられているため、低温定着性、耐ホットオフセット性に優れることがわかる。さらに、ポリグリセリンエステルがポリエステル樹脂と適度に親和性を有するため、トナー中におけるポリグリセリンエステルの微分散化が可能となる。その結果、転写性に優れ、画像のかぶり、フィルミングも生じず、長期に亘り、高品位な画像を形成することが可能となる。
【0152】
一方、比較例1のトナーは、ポリグリセリンの重合度が高く、溶融粘度が高いため、耐オフセット性、低温定着性が劣る。
【0153】
比較例2のトナーは、ポリグリセリンエステルの水酸基価が高く、溶融粘度が高いため、耐オフセット性が不十分となり、転写性、かぶり、フィルミング、耐熱保存性も悪化する。
【0154】
比較例3のトナーは、ポリグリセリンの重合度が低く、ポリグリセリンエステル化合物中のエステル結合数が少ないため、ポリエステル樹脂との親和性に劣り、トナー中におけるポリグリセリンエステルの微分散化が困難となる。このため、転写性、かぶり、フィルミングが悪化する。
【0155】
比較例4のトナーは、離型剤として、カルナウバワックスが用いられているため、耐オフセット性、低温定着性が不十分である。
【0156】
比較例5のトナーは、離型剤として、パラフィンワックスが用いられており、定着性に優れるものの、ポリエステル樹脂との親和性が低いため、トナー中における離型剤の微分散化が困難である。このため、転写性、かぶり、フィルミング性が悪化する。
【0157】
比較例6のトナーは、脂肪酸の炭素数が少なく、ポリグリセリンエステルの疎水性が低下し、離型剤として十分な機能が得られないため、耐オフセット性、転写性、かぶり、フィルミング、耐熱保存性が悪化する。
【0158】
比較例7のトナーは、スチレンアクリル樹脂が用いられているため、耐オフセット性、低温定着性が不十分である。
【0159】
以上により、実施例のトナーは、低温定着システムに対応し、耐オフセット性が良好であり、定着装置及び画像を汚染しにくいことがわかる。さらに、実施例のトナーは、高品位なトナー像を長期に亘り、形成することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の画像形成装置の他の例を示す図である。
【図3】図2のタンデム型現像器を示す図である。
【図4】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0161】
10 感光体ドラム
18 画像形成手段
20 帯電ローラー
22 二次転写装置
24 二次転写ベルト
25 定着装置
30 露光装置
40 現像器
50 中間転写体
52 コロナ帯電器
60 クリーニング装置
70 除電ランプ
80 転写ローラー
90 クリーニング装置
100A、100B 画像形成装置
110 プロセスカートリッジ
120 タンデム型現像器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、着色剤及び離型剤を少なくとも有するトナーであって、
前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含み、
前記離型剤は、平均重合度が2以上10以下のポリグリセリンと、平均炭素数が16以上24以下の脂肪酸をエステル化させたポリグリセリンエステルであり、
前記ポリグリセリンエステルは、120℃における溶融粘度が1.0mPa・秒以上40mPa・秒以下であると共に、水酸基価が0mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記脂肪酸は、ステアリン酸及び/又はベヘニン酸を含有することを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂は、酸価が5mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記ポリグリセリンエステルは、融点が50℃以上70℃以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記ポリグリセリンエステルを3重量%以上20重量%以下含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記ポリグリセリンエステルは、分散径が0.05μm以上1.00μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
ガラス転移温度が50℃以上65℃未満であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトナーを有することを特徴とする現像剤。
【請求項9】
キャリアをさらに有することを特徴とする請求項8に記載の現像剤。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の現像剤が収容されていることを特徴とする現像剤収容容器。
【請求項11】
静電潜像担持体に静電潜像を形成する工程と、
該静電潜像担持体に形成された静電潜像を請求項8又は9に記載の現像剤で現像する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
静電潜像が形成される静電潜像担持体と、
該静電潜像担持体に形成された静電潜像を請求項8又は9に記載の現像剤で現像する現像手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
静電潜像が形成される静電潜像担持体と、該静電潜像担持体に形成された静電潜像を請求項8又は9に記載の現像剤で現像する現像手段が少なくとも一体化され、
画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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