説明

トナー

【課題】200mm/sec以上の高速領域で使用され、低温定着性に優れ、かつ安定性した搬送性を有する非磁性一成分トナーを提供する。
【解決手段】少なくともポリエステル骨格を含む結着樹脂、離型剤、色材、電荷制御剤、外添剤を有するトナーにおいて、前記電荷制御剤が、特定の化学式よりなるホウ素錯体であり、前記外添剤が異なる2種A、Bの一次粒子径D、Dを有し、該外添剤の一次粒子径D、Dと該外添剤の添加量W、Wが、(式1)を満足するトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、非磁性一成分トナーが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1には、下記のような発明が記載されている。
トナー搬送部材を有し、トナーを該搬送部材表面に供給するトナー供給部材、および該搬送部材表面に当接され、前記搬送部材表面に供給されたトナーの層厚を規制するトナー規制部材を有する現像装置に使用されるトナーであって、該トナーは、少なくとも結着樹脂、ワックス、着色剤、荷電制御剤を含有し、示差走査型熱量計(DSC)で測定したときに、60〜80℃の範囲に少なくとも1つの吸熱ピークが存在し、該結着樹脂は少なくともポリエステル骨格を有する樹脂を含有し、該荷電制御剤は、つぎの式(1)で示される化合物であり、該ワックスは、少なくとも炭化水素系ワックスを含有することを特徴とする非磁性一成分現像用トナー。
【0004】
【化1】

【0005】
(式中、MはLi、NaまたはKを示し、R、R、RまたはRは、各々水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子を示し、R、R、RまたはRは、複数存在してもよく、R、R、RまたはRが複数存在する場合、各々が異なっていてもよく同一であってもよい。nは1〜5の正整数を示す。)
【0006】
このような特許文献1に記載の発明によって、離型剤として炭化水素系ワックスを用い、官能基を有さない炭化水素系ワックスを有機ホウ素錯体近傍に存在させることで、高温高湿環境下での帯電性を保持することができることとなった。
【0007】
このような非磁性一成分トナーはまた、ローエンドレーザビームプリンタなどで使用されている。
しかしながら、このような商品において、紙などの記録媒体として、その搬送速度が200mm/sec以上で使用された場合、あるいは環境の変動などによって、トナーの流動性や荷電性が変化すると、トナー層の形成が不安定となるという課題があった。また、これを改善するようにトナーに多量の無機微粒子を外添することによって流動性や荷電性を制御すると、定着性を妨げるなど課題があった。さらに低温定着性においても課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、図1に示す部分拡大図に示すような現像装置を用いる一成分現像方式において、給紙の搬送速度が200mm/sec以上の高速領域で使用された場合においても、低温定着性に優れ、かつ安定した搬送性を有する非磁性一成分トナーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために発明者らは以下のような解決手段を講じた。
(1) トナー担持体を有し、トナーを該担持体表面に供給するトナー供給部材、および該担持体表面に当接され、前記担持体表面に供給されたトナーの層厚を規制する直方体状のトナー規制部材を有する現像装置を有する画像形成装置に使用され、少なくともポリエステル骨格を含む結着樹脂、示差走査型熱量計(DSC)で測定したときに60〜80℃の範囲に少なくとも1つの吸熱ピークが存在する炭化水素系ワックスの離型剤、色材、電荷制御剤、外添剤を少なくとも有する非磁性一成分トナーにおいて、
前記画像形成装置の給紙の搬送速度が、200mm/sec以上400mm/sec以下であり、
前記電荷制御剤が、下記化学式(1)で示される構造であり、
前記外添剤が異なる2種A、Bの一次粒子径D、Dを有し、該外添剤の一次粒子径D、Dと該外添剤の添加量W、Wが、下記式(式1)を満足することを特徴とするトナー。
【0010】
【化2】

【0011】
(上記式(化1)中、MはLi、NaまたはKを示し、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基、またはハロゲン原子を表し、R1〜R4が複数存在する場合は、各々が同一でも異なっていてもよく、nは1〜5である。)
【0012】
【数1】

【0013】
(上記式(式1)中、Pはトナー母体に対する外添剤の被覆率であり、Diはトナーの粒径(μm)であり、Dは無機微粒子Aの一次粒子径(nm)であり、Dは無機微粒子Bの一次粒子径(nm)であり、Wは無機微粒子Aの添加重量部数であり、Wは無機微粒子Bの添加重量部数である。)
(2) 前記(1)に記載のトナーにおいて、前記離型剤の、示差走査型熱量計(DSC)で測定したときの少なくとも1つの吸熱ピークが、80℃未満であることを特徴とする。
(3) 前記(1)または(2)に記載のトナーにおいて、前記上記(式1)中、トナー母体に対する外添剤の被覆率Pが、70以上、120以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
非磁性一成分現像において、給紙の搬送速度200mm/sec以上の高速領域で使用しても、トナー担持体上へのトナー層の形成が均一にでき、安定した画像を得ることができ、また、低温定着性にも優れるトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態にかかる画像形成装置の現像部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態では、非磁性一成分トナーに際して、以下の特徴を有する。
要するに、電荷制御剤として用いる有機ホウ素錯体は、アルカリ金属をカウンターカチオンとする塩であり、置換基の少ないものは水に可溶であることからも明らかなように、空気中の水分を吸湿する傾向があると推測される。
高温高湿環境下において、非磁性一成分プロセスで、ポリエステル骨格を有する樹脂を含有するトナーがトナー担持部材とトナー規制部材、もしくはトナー担持部材とトナー供給部材により電圧印加が繰り返し行なわれると、吸湿した式(1)の電荷制御剤が電気分解などの化学変化が生じ、本来発揮すべき現像特性への効果が低下すると思われる。
炭化水素系ワックスは、トナーのポリエステル骨格を有する樹脂を含有する結着樹脂との相溶性が非常に低いため、少なくとも炭化水素系ワックスとポリエステル骨格を有する結着樹脂を含有するトナー材料を混合・混練・粉砕・分級して得られるトナーは、使用した炭化水素系ワックスの一部がトナーから離脱してトナー表面に付着し、またトナー表面に存在する。
【0017】
しかし、炭化水素系ワックスは、官能基を持たないため、吸湿性が非常に低く、化学的にも安定である。このため、トナー表面に存在する炭化水素系ワックスは、高温高湿環境下においても、電圧印加に対して化学変化を起こさないばかりか、ポリエステル骨格を有する樹脂を含有するトナー中の電荷制御剤として用いる有機ホウ素錯体に対しても吸湿と化学的変化から守る働きを発揮する。その結果、高温高湿環境下において、炭化水素系ワックスを適度に含有し、かつ電荷制御剤として有機ホウ素錯体を含有する。そしてポリエステル骨格を有する樹脂を含有するトナーは、トナー担持体上へのトナー層の形成が均一にでき、固着等の機内汚染が発生せず、長寿命化を可能にする事ができるものと考えられる。
以下に図面を用いて本実施形態のトナーについて、詳細に説明する。
【0018】
図1は本実施形態にかかる画像形成装置の現像部の部分拡大図である。直方体形状のトナー規制部材1は、現像ローラ2(図1では現像ローラを部分的に表している)に当接される。
容器内部のトナーは、補給部から供給ローラで攪拌されながら、現像ローラ2とトナー規制部材1のニップ部分に運ばれる。ここで、トナー規制部材で現像ローラ上のトナー量が規制され、現像ローラ上のトナー薄層が形成される。また、トナーは、供給ローラと現像ローラのニップ部と規制部材と現像ローラの間で摺擦され、適正な帯電量に制御される。
本実施形態のトナーは一成分現像用トナーであり、上記した現像装置を有する画像形成装置に使用されるものである。
本実施形態のトナーは、画像形成装置の紙などの記録媒体の搬送速度が、200mm/sec以上400mm/sec以下で用いられるものである。
【0019】
そして電荷制御剤が、下記化学式(化1)で示される構造であり、
外添剤が異なる2種A、Bの一次粒子径を有し、該外添剤の一次粒子径D、Dと該外添剤の添加量W、Wが、(式1)を満足することを特徴としている。
以下、(化1)に示す化合物についてまず説明する。
【0020】
【化3】

【0021】
式(化1)中、MはLi、NaまたはK原子を示し、R〜Rは、独立して、各々水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、またはハロゲン原子を示し、R〜Rは、複数存在してもよく、R〜Rが複数存在する場合、各々は異なっていても、同一であってもよい。nは1〜5の正整数を示す。前記Mは、Li、NaまたはKであり、トナーの耐湿性を考慮すると、好ましくはNaまたはK原子である。このうち、MがKであり、nR1〜nR4が水素原子である荷電制御剤は、合成が比較的簡便であって、不純物成分が極めて少ないため、高い帯電性能の耐環境変動性を有する点で好適である。
式(化1)の化合物はたとえばホウ酸とKOH、NaOHまたはLiOHの水溶液に下記式(化2)の化合物を加え、温度80℃で約2時間攪拌しながら反応させることにより、容易に得られる。
【0022】
【化4】

【0023】
(式(化2)中、R〜Rおよびnは、式(化1)と同様である。)
以下にM=K、NaおよびLi原子である例を下記式に示す。
【0024】
【化5】

【0025】
<トナー母体部について>
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル骨格を有する樹脂を含有する結着樹脂中に炭化水素系ワックスを適度に含有し、かつ式(化1)で表わされる化合物を含有するトナーは、特に高温高湿環境下で繰り返し現像動作を行なうような過酷な状態において、著しく現像特性が向上することが明らかとなった。
【0026】
このメカニズムについては明確に立証されたわけではないが、次のようであると考えられる。
もともと、式(化1)に示す化合物は、トナーの荷電性を制御するための物質として特開平3−221968号公報などで知られている。
特にポリエステル骨格を有する樹脂を含有する結着樹脂のトナーを用いた非磁性一成分トナーを用いたプロセス(非磁性一成分プロセスともいう)においては、搬送面が均一でムラがない。また現像機からのトナー離脱が生じないなど、トナーに対し良好な現像特性を付与する化合物であることが判明した。
しかし、式(化1)の化合物はアルカリ金属をカウンターカチオンとする塩であり、置換基の少ないものは水に可溶であることからも、空気中の水分を吸湿する傾向があると推測される。
【0027】
高温高湿環境下において、非磁性一成分プロセスでは、ポリエステル骨格を有する樹脂を含有するトナーがトナー担持部材とトナー規制部材、もしくはトナー担持部材とトナー供給部材により電圧印加が繰り返し行なわれる。そのうちに、吸湿した式(化1)の荷電調節剤が電気分解などの化学変化を起こす。その結果、本来発揮すべき現像特性への効果が低下すると考えられる。
【0028】
一方、炭化水素系ワックスは、トナーのポリエステル骨格を有する樹脂を含有する結着樹脂との相溶性が非常に低い。このため、少なくとも炭化水素系ワックスとポリエステル骨格を有する結着樹脂とを含有するトナー材料を混合・混練・粉砕・分級して得られるトナーは、使用した炭化水素系ワックスの一部がトナーから離脱してトナー表面に付着するか、トナー表面に存在する。
【0029】
しかし、炭化水素系ワックスは、官能基を持たないため、吸湿性が非常に低く、化学的にも安定である。このため、トナー表面に存在する炭化水素系ワックスは、高温高湿環境下においても、電圧印加に対して化学変化を起こさない。そればかりか、ポリエステル骨格を有する樹脂を含有するトナー中の式(化1)の荷電調節剤に対しても吸湿と化学的変化から守る働きを発揮する。その結果、高温高湿環境下において、炭化水素系ワックスを適度に含有し、かつ、式(化1)の荷電調節剤を、化学変化を起こさずに含有するので、本実施形態のトナーは、良好な現像特性を発揮し続けるものと考えられる。
本実施形態で用いる炭化水素系ワックスは、酸価が0.5mgKOH/g以下のものであることが好ましい。
【0030】
本実施形態において、前記式(化1)で表される荷電制御剤は、前記結着樹脂100重量部に対して、0.5〜5重量部含有されていることが好ましい。
これ未満であると荷電制御が充分でない場合があり、また、これを超える量添加しても、効果がさほど上がらないばかりか、低温迅速な融着を阻害する等、悪影響がでる場合が多い。
【0031】
(結着樹脂)
また、本実施形態に用いられる結着樹脂としては、ジオール骨格とモノオール骨格の重量比が99/1〜75/25の範囲にあるポリエステル骨格を有する樹脂を含有する樹脂であることが好ましい。また、この結着樹脂は、少なくともポリエステル系樹脂を含有するものである。さらに、少なくともスチレン骨格とポリエステル骨格の双方を含有するハイブリッド樹脂を含有するものであることがより好ましい。
【0032】
(ジオール骨格)
結着樹脂のジオール骨格は、主にポリエステル樹脂の骨格に由来するものである。
結着樹脂としてポリエステル樹脂は、適度な強靭性とホットメルト性を有することから好適に使用される。
ジオールとしては、アルキレングリコール(たとえばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(たとえばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(たとえば1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(たとえばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(たとえばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(たとえばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
これらのうち、好ましいものは炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及びこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
【0033】
(モノオール骨格)
一方、結着樹脂のモノオール骨格は、本実施形態において使用される炭化水素系ワックスとの相溶性の高いユニットであり、トナー表面に存在する炭化水素系ワックスの量を適切な範囲にする役割を果たしていると考えられる。
結着樹脂にモノオール骨格が少ないと、炭化水素系ワックスのほとんどがトナー表面に現れてしまい、トナー担持部材や規制部材を汚染し、結果としてトナーの帯電が不充分になり、トナーこぼれなどの悪影響が現れる。
結着樹脂にモノオール骨格が多ければ炭化水素系ワックスの多くがトナー中に包含されてしまい、トナー表面の保護効果が得られなくなる。
ここで、モノオール骨格とは、モノオール残基を意味し、炭化水素基で修飾されていてもよいエーテル残基やフェノール残基、例えば置換又は未置換のアルキロキシ基、アロアルキロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アリーロキシ基が挙げられる。
モノオールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−オクタデカノール、ベヘニルアルコール、4−フェニルノナノール、3−フェニルプロパノール、4−フェニルブタノール、5−フェニルペンタノールなどが挙げられる。
【0034】
(モノオール骨格の導入方法)
モノオール骨格の導入方法としては、具体的には、以下の(1)〜(4)の方法が挙げられる。
(1)結着樹脂として、少なくともポリエステルの酸末端をモノオールによりエステル結合させた樹脂を使用する。
(2)結着樹脂として、少なくとも側鎖にモノオール骨格を有するポリマーとポリエステルとを使用する。
(3)結着樹脂として、少なくとも側鎖にモノオール骨格を有するポリマーユニットとポリエステルユニットとを有するハイブリッド樹脂を使用する。
(4)上記(1)〜(3)を2つ以上併用するなどの方法が挙げられる。
このうち、好ましくは、(3)の方法である。
【0035】
(側鎖にモノオール骨格を有するポリマーユニット)
モノオール骨格を側鎖に有するポリマーユニットとしては、付加重合可能なカルボン酸とモノオールとのエステルを含むモノマーを共重合させて得られるポリマーユニットが挙げられる。
付加重合可能なカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、p−ビニル安息香酸などが挙げられる。
側鎖にモノオール骨格を有するポリマーユニットを得るには、これらのカルボン酸とモノオールのエステルである付加重合可能なカルボン酸エステルを単独で重合してもよい。また、付加重合可能なカルボン酸エステルと共重合可能な化合物との共重合によってもよい。
共重合可能な化合物としては、付加重合可能なカルボン酸のほか、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ビニルナフタレン、エチレン、プロピレンレン、ブテン、イソブチレン、ぺンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどが挙げられる。
【0036】
(ポリエステルユニット)
ポリエステルユニットとしては、ポリエステルとして公知のものを用いればよく、ポリオールとポリカルボン酸との縮重合、ラクトン類の開環重合などの方法により重合される。
樹脂設計に自由度からポリオールとポリカルボン酸との縮重合が好ましい。
【0037】
(ポリオール)
ポリオールとしては、前述のジオールのほか、水酸基を3つ以上有するものも好適に用いることができる。
【0038】
(ポリカルボン酸)
ポリカルボン酸としては、公知のジカルボン酸、及び3つ以上のカルボン酸基を有する公知の化合物を挙げることができる。
【0039】
(ハイブリッド樹脂を合成する方法)
側鎖にモノオール骨格を有するポリマーユニットとポリエステルユニットとを有するハイブリッド樹脂を合成する方法としては、公知の方法を用いればよい。
例えば、
(1)ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基など付加重合可能な官能基を有するポリエステルの存在下、側鎖にモノオール骨格を有するポリマーユニットの重合を行なう、(2)ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミノ基などの活性水素を有する官能基を有し、側鎖にモノオール骨格を有するポリマーの存在下、ポリエステルユニットの重合を行なう、(3)付加重合可能なカルボン酸エステル、付加重合可能なカルボン酸エステルと共重合可能な化合物、ポリオール、ポリカルボン酸、及びカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基のうち、少なくとも一つの基を有する付加重合可能な化合物の共存下で、付加重合と縮重合を平行して、もしくは順次行なうなどの方法が挙げられる。
【0040】
また、本実施形態においては、前記ポリエステル骨格を有する樹脂に加えて、実施形態の目的を損なわない範囲で所望により、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレンーアクリルエステル共重合体、ポリアミド、石油系樹脂、ロジン等の天然樹脂等公知の他のトナー結着剤用樹脂を配合することができる。
本実施形態におけるこれら他の公知トナー結着剤用樹脂の配合量は、通常40重量%以下であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
【0041】
(炭化水素系ワックス以外のワックス)
また、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、必要に応じて炭化水素系ワックス以外の各種公知のワックスを含有していてもよい。
【0042】
(着色剤)
本実施形態に係るトナーには公知の着色剤が使用できる。
【0043】
(着色剤のマスターバッチ化)
本実施形態で用いる着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
【0044】
<製造方法>
本実施形態のトナーの製造には、公知の方法が適用でき、トナー材料を混合する工程、溶融混練する工程、粉砕する工程、分級する工程を経てトナー母体を作成し、最後に外添処理を行ない、本実施形態のトナーを得ることができる。
また、混合する工程や溶融混練する工程において、粉砕または分級する工程で得られる製品となる粒子以外の粉末を戻して再利用してもよい。
【0045】
(混合する工程)
トナー材料を混合する工程については、少なくとも、結着樹脂、炭化水素系ワックス、式(化1)で示される化合物、着色剤をヘンシェルミキサーなどの公知の混合機で混合してもよいが、好ましくは以下の方法がよい。
すなわち、結着樹脂と炭化水素系ワックスを別々に投入するのではなく、結着樹脂の原料となるモノマーにあらかじめ炭化水素系ワックスを溶解または分散し、次いでモノマーを重合させて、炭化水素系ワックスを内添した結着樹脂を合成する。
次いで、少なくとも、この炭化水素系ワックスを内添した結着樹脂、(化1)に示される化合物、着色剤をヘンシェルミキサーなどの公知の混合機で混合し、トナー材料混合体を得る。
これにより、炭化水素系ワックスをより均一にトナー表面やトナー内部に分散させることが可能になり、安定した現像特性を発揮することが可能となる。
【0046】
(溶融混練する工程)
混合工程が終了したら、次いで混合物を混練機に仕込んで溶融混練する。
溶融混練機としては、一軸、二軸の連続混練機や、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。
例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、池貝鉄工所社製PCM型2軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。
この溶融混練は、結着樹脂の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行なうことが重要である。
具体的には、溶融混練温度は結着樹脂の軟化点を参考に行なうべきであり、軟化点より低過ぎると切断が激しく、高過ぎると分散が進まない。
【0047】
(粉砕する工程)
以上の溶融混練工程が終了したら、次いで混練物を粉砕する。
この粉砕工程においては、まず粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。
この際、ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
【0048】
(分級する工程)
この粉砕工程が終了した後に、粉砕物を遠心力などで、気流中で分級し、もって所定の粒径、例えば平均粒径が6〜10μmの現像剤を製造する。
本実施形態のトナーは、示差走査型熱量計(DSC)において60〜80℃の範囲に少なくとも一つの吸熱ピークが存在する。また、吸熱ピークの半値幅が8℃以下であることが好ましい。
吸熱ピークは、本実施形態で用いる炭化水素系ワックスの融点に由来するものであると考えられ、80℃を超える場合には、本実施形態の効果があまり得られない。
その理由としては、ワックスが硬く、トナー表面の保護効果が得られにくくなるためであると考えられる。
また、60℃未満の場合、トナーの流動性が低下し、トナー供給部材上のトナーの薄層形成が不均一になり、結果として画像品位が著しく損なわれるため好ましくない。
また、吸熱ピークの半値幅が8℃よりも広い場合も、同様にトナーの流動性が低下するため、好適ではない。
半値幅は狭いほどよく、6℃以下であればより好ましい。
【0049】
<外添処理について>
得られたトナー粉体と無機微粒子などを混合することによって、表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。
装置としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)などが挙げられる。
その後、所定見開きのメッシュにて篩を行い、異物等の除去をする。
【0050】
(後処理剤)
無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0051】
上記したように、炭化水素系ワックスは、官能基を持たないため、吸湿性が非常に低く、化学的にも安定であるため、トナー表面に存在する炭化水素系ワックスは、高温高湿環境下においても、電圧印加に対して化学変化を起こさないばかりか、ポリエステル骨格を有する樹脂を含有するトナー中の電荷制御剤として用いる有機ホウ素錯体に対しても吸湿と化学的変化から守る働きを発揮し、環境安定性が向上する。
ただし、前記した給紙の搬送速度が200mm/sec以上の高速領域のトナーとして用いた場合、母体での荷電性制御による環境安定性だけでは不十分で、トナー担持体上に均一なトナー層の形成が十分にできず、カブリ等の画像品質不具合が発生する惧れがある。
この課題を解決するためには、前述の母体での荷電性制御に加え、無機微粒子による外添により、荷電性と流動性を制御する必要がある。
【0052】
より具体的には、異なる一次粒子径の無機微粒子を効果的に組み合わせ、母体への付着強度を所定の範囲に置くことで、トナー担持体上の搬送量を安定にすることができ、カブリ等の画像品質不具合を抑制することができる。
本実施形態では、トナー母体に対する外添剤の被覆率をPとすると、Pは下記の式(式1)を満たすことを特徴とする。
【0053】
【数2】

【0054】
上記式(式1)において、Pはトナー母体に対する外添剤の被覆率である。また上記式(式1)中、Diはトナーの粒径(μm)であり、Dは無機微粒子Aの一次粒子径(nm)であり、Dは無機微粒子Bの一次粒子径(nm)であり、Wは無機微粒子Aの添加重量部数であり、Wは無機微粒子Bの添加重量部数である。
【0055】
前記被覆率Pが、50以下となれば、低温定着性は良好だが、流動性が悪くなり、トナー担持体上に均一なトナー層を形成することが困難になる。また、トナー母体の露出も多くなり、耐固着性、環境安定性に問題が生じる。
また被覆率Pが、140より大きくなれば、耐固着性はよくなるが、低温定着性が悪くなり、かつ流動性も上がりすぎることにより、均一なトナー層形成に支障をきたす。
被覆率Pが50〜140の範囲内において、小径無機微粒子と大径無機微粒子の組み合わせがD≦20、20≦D≦50、0.3≦W≦1.0、W≦Wを満たす範囲で、トナー担持体上に均一なトナー層を形成することができ、かつ、低温定着性の両立することができる。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部はすべて重量部を表わす。
【0057】
(実施例1)
ポリエステル樹脂A(軟化点131℃、AV値 25)・・・68部
ポリエステル樹脂B(軟化点116℃、AV値 1.9)・・・32部
パラフィンワックス(融点73℃)・・・3.0部
帯電制御剤(化1−1)に示す化合物・・・1.5部
カーボンブラック・・・6部
上記材料をブレンダーで充分混合したのち2軸押出し機にて混練し、冷却後粉砕、分級し、体積平均粒径8.0μmの黒色のトナー母体を得た。
母体トナー100部に対して、外添剤として、
微粒子1(疎水性シリカ:ヘキサメチルジシラザンでの表面処理品、一次粒子の平均粒径が10nm)・・・0.5部
微粒子2(疎水性シリカ:ヘキサメチルジシラザンでの表面処理品、一次粒子の平均粒径が30nm)・・・0.5部
をヘンシェルミキサーにて混合を行ない、250メッシュの篩を通して、黒色のトナーを得た。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例2〜8、比較例1〜8)
実施例1と同様に、表1に示す組成を用いて実施例1と同様の方法で作製した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
<評価方法>
(低温定着性)
非磁性一成分現像方式のフルカラープリンタIpsio CX3000(リコー製)を用いて、付着量0.5±0.1 mg/cmとなるように未定着画像を作成し、リコー製Ipsio CX2500の定着部分のみを取り出し、定着ベルトの温度およびベルト線速度が、所望の値になるように改造した定着試験装置を用いて、200mm/sec、300mm/sec、400mm/secについて、定着温度が130℃から200℃の範囲で定着を行い、得られた定着画像について、スミア性試験を行った。
・給紙の搬送速度200mm/secでスミア性を満足する温度が、
○:150℃未満 △:150℃以上160℃未満 ×:160℃以上とした。
・給紙の搬送速度300mm/secでスミア性を満足する温度が、
○:160℃未満 △:160℃以上170℃未満 ×:170℃以上とした。
・給紙の搬送速度400mm/secでスミア性を満足する温度が、
○:170℃未満 △:170℃以上180℃未満 ×:180℃以上とした。
【0061】
(搬送安定性)
リコー製ipsio CX2500のプロセスカートリッジのトナー規制部材を、236mm×12mm×3mm形状のS50C製で当接面をタングステンコートしたものを規制部材とし、規制圧力を30N、給紙の搬送速度300mm/secとできるよう改造したプロセスカートリッジにトナーを入れ、B/W比3%の所定のプリントパターンをH/H環境下(27℃、湿度80%)で連続印字した。H/H環境下の初期、及び10,000枚連続印字後(耐久後)に、白紙パターン印字中の現像ローラ上のトナーを吸引し、単位面積Aあたりの現像ローラ上のトナー量Mから、トナー搬送量M/Aを算出した。
○:トナー搬送量が、5g/cm以上8g/cm未満
△:トナー搬送量が、3g/cm以上5g/cm未満 または、8g/cm以上10g/cm未満
×:トナー搬送量が、3g/cm未満 または、10g/cm以上
【0062】
(カブリ)
リコー製ipsio CX2500のプロセスカートリッジのトナー規制部材を、236mm×12mm×3mm形状のS50C製で当接面をタングステンコートしたものを規制部材とし、規制圧力を30N、システムスピード300mm/secとできるよう改造したプロセスカートリッジにトナーを入れ、B/W比3%の所定のプリントパターンをH/H環境下(27℃、80%)で連続印字した。
地汚れ評価として、感光体上に残留しているトナーを住友3M製のメンディングテープで剥離し、分光濃度計Xrite 939でL*を測定した。
○:85以上
△:80以上85未満
×:80未満
【0063】
(耐熱保管性)
トナーをそれぞれ50mlのポリ瓶に、1本当り20g入れる。
ポリ瓶の蓋を開けた状態で50℃/90%RHの恒温恒湿槽に入れ、72時間後、スパチュラで少量を採り、また目視にて、官能評価を行った。
○:変化なし
△:軽い凝集状態にあるが、簡単に崩れる。
×:凝集体が崩れにくい、または固化している。
上記した評価結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
表1、表2から、本実施形態では、たとえば離型剤の示差走査型熱量計(DSC)で測定したときの少なくとも1つの吸熱ピークが、80℃未満であるとすることが好ましい。また、トナー母体に対する外添剤の被覆率Pが、70以上、120以下であること、すなわち、70≦P≦120であるとすることが好ましい。
【符号の説明】
【0066】
1 トナー規制部材
2 現像ローラの部分断面
3 現像ローラの回転方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2007−65638A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー担持体を有し、トナーを該担持体表面に供給するトナー供給部材、および該担持体表面に当接され、前記担持体表面に供給されたトナーの層厚を規制する直方体状のトナー規制部材を有する現像装置を有する画像形成装置に使用され、少なくともポリエステル骨格を含む結着樹脂、示差走査型熱量計(DSC)で測定したときに60〜80℃の範囲に少なくとも1つの吸熱ピークが存在する炭化水素系ワックスの離型剤、色材、電荷制御剤、外添剤を少なくとも有する非磁性一成分トナーにおいて、
前記画像形成装置の給紙の搬送速度が、200mm/sec以上400mm/sec以下であり、
前記電荷制御剤が、下記化学式(化1)で示される構造であり、
前記外添剤が異なる2種A、Bの一次粒子径D、Dを有し、該外添剤の一次粒子径D、Dと該外添剤の添加量W、Wが、下記式(式1)を満足することを特徴とするトナー。
【化1】

(上記式(化1)中、MはLi、NaまたはKを示し、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基、またはハロゲン原子を表し、R1〜R4が複数存在する場合は、各々が同一でも異なっていてもよく、nは1〜5である。)
【数1】

(上記(式1)中、Pはトナー母体に対する外添剤の被覆率であり、Diはトナーの粒径(μm)であり、Dは無機微粒子Aの一次粒子径(nm)であり、Dは無機微粒子Bの一次粒子径(nm)であり、Wは無機微粒子Aの添加重量部数であり、Wは無機微粒子Bの添加重量部数である。)
【請求項2】
前記離型剤の、示差走査型熱量計(DSC)で測定したときの少なくとも1つの吸熱ピークが、80℃未満であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記上記(式1)中、トナー母体に対する外添剤の被覆率Pが、70以上、120以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。

【図1】
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【公開番号】特開2012−203096(P2012−203096A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65975(P2011−65975)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】