説明

トナー

【課題】高速印字を長期に行った場合でも帯電分布の均一性と帯電安定性に優れ、高い現像性を有するトナーを提供すること。
【解決手段】水系媒体中で製造されたトナー粒子と、無機微粉体とを少なくとも含有するトナーであって、トナー粒子は、結着樹脂、着色剤及び非イオン性界面活性剤を少なくとも含有し、結着樹脂は、チタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂を含み、トナーからメタノールにより抽出される非イオン性界面活性剤の抽出量をAとし、トナーの粒子径分布から求められる理論比表面積をBとしたときに、AのBに対する比が特定の範囲であり、非イオン性界面活性剤は、アルキレングリコールのブロック共重合体を含有し、アルキレングリコールのブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定された数平均分子量が、1200以上40000以下であることを特徴とするトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法に用いられるトナーに関する。詳しくは、複写機、プリンター、ファクシミリ、プロッター等に利用し得る画像記録装置に用いられる静電荷像現像用トナー(以後トナーと略す)に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター、ファクシミリなどに用いられる電子写真技術は発展を続けており、近年の動向では、高速印刷が可能であること、あるいは小型化や省エネルギー化を達成することが益々求められている。
この様な要求を満足させる為、トナーとしては例えばトナー粒子に用いられる結着樹脂のガラス転移点を低下させる、あるいは結着樹脂の分子量を下げることで、より低温でも定着しうるトナーへの改良が進められている。
また、トナーの樹脂材料として、ポリエステル樹脂またはスチレンアクリル樹脂が、帯電特性、樹脂強度、発色性の観点から汎用的に選択されている。特に、重合性単量体の選択性が広く、樹脂設計が容易であることからポリエステル樹脂の検討が盛んに行われている。
例えば、更なる低温定着性を達成しつつ耐久性を維持する為に、融点を有する結晶性ポリエステル樹脂をトナーの結着樹脂中へ含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。結晶性ポリエステル樹脂はシャープメルト性を有し、融点を越えた温度領域で流動化するので、トナーの定着性に大きく関与する。また、融点を越えない温度では充分な強度が得られ、より高い耐久画像安定性を導ける。
しかしながら、ポリエステル樹脂は帯電安定性の点において近年求められる性能を満足するには至っておらず、改善する必要があった。
本発明者らは、特に耐久性に着眼して検討を進めてきた。耐久性に関しては、低温定着化の手段とトレードオフの関係になる場合が多い。例えば、樹脂のガラス転移温度を低温化すると、より低温側で樹脂が流動化するため定着に有利になるものの、摺擦によりどうしても発生する熱や圧力でトナーが潰れやすくなるため、各種部材汚染等の弊害が生じやすくなる。本発明者らは着眼点を変え、トナーが潰れても部材を汚染させない手段を深化させることに注力してきた。種々検討した結果、非イオン性界面活性剤が適量、トナー表面に存在すると、トナーが各種部材に対して付着しにくくなることを見出した。
これまで、トナー表面に界面活性剤が存在すると種々の性能が悪化するため、極力排除すべきことが常識的に語られている(例えば特許文献2参照)。特に特許文献2においては、非イオン性界面活性剤は存在しなければしないほど良いとされている。また、それ以外の文献においても、例えばトナー製造時に界面活性剤を使用する場合は、手段は問わないが強力な洗浄によって完全に界面活性剤を除去することが、暗黙の了解事項として扱われてきた。
上記のような状況にあるトナー分野での界面活性剤中でも、トナー表面の非イオン性界面活性剤に着眼した文献がいくつか見受けられる。例えば、表面の非イオン性界面活性剤と外添剤の種類、被覆率を規定することにより、トナーの低温定着性を高めつつ環境安定性のよいトナーが得られることが挙げられている(特許文献3参照)。さらには、トナー中の残留界面活性剤と凝集剤由来の2価の金属イオンを規定することにより、帯電特性と環境安定性の優れたトナーが得られることが提案されている(特許文献4参照)。
特許文献3では、非イオン性界面活性剤を含有させることによりトナーの可塑化は達成できたが、帯電分布の均一性に若干の課題を有していることが解った。
特許文献4では、乳化剤として好適に用いられるような界面活性剤は親水性が強いためか、あるいはイオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤が共に存在しているためか、吸湿性と帯電安定性の両立を図るには若干の課題を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−191260号公報
【特許文献2】特開2002−131977号公報
【特許文献3】特開2008−151950号公報
【特許文献4】特許第3107062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記背景に記載の課題を解決しうるトナーを提供することである。すなわち、高速印字を長期に行った場合でも帯電分布の均一性と帯電安定性に優れ、高い現像性を有するトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、水系媒体中で製造されたトナー粒子と、無機微粉体とを少なくとも含有するトナーであって、前記トナー粒子は、結着樹脂、着色剤及び非イオン性界面活性剤を少なくとも含有し、前記結着樹脂は、チタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂を含み、前記トナーからメタノールにより抽出される前記非イオン性界面活性剤の抽出量をA(ppm)とし、細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置を用いたトナーの粒子径分布から求められる理論比表面積をB(m/g)としたときに、前記AのBに対する比(A/B)が、5.0×10−5以上9.0×10−3(g/m)以下であり、前記非イオン性界面活性剤は、アルキレングリコールのブロック共重合体を含有し、前記アルキレングリコールのブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定された数平均分子量が、1200以上40000以下であることを特徴とするトナーに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高速印字を長期に行った場合でも帯電分布の均一性と帯電安定性に優れ、高い現像性を有するトナーを提供しうる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
多様な環境下において、安定した高い現像性および耐久性をあわせ持ったトナーを提供することは、市場ニーズを満足する為にも必須課題となっている。本発明者らは、そのような要求性能を満たす為のトナーに関し鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、チタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂を含有するトナー粒子に特定の非イオン性界面活性剤を、適量含有させることで上記課題に対応できることを見出した。詳細な理由は不明な点も多いが、本発明者らは以下のように考えている。
本発明のトナーに用いられるポリエステル樹脂は、チタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂である。それゆえ、本発明のトナーは、トナー内部に、微小な酸化チタンとポリエステルが化学結合した、ポリエステル−酸化チタンがチャージポイント(蓄電点)として存在していると考えている。また、トナー表面に本発明の非イオン性界面活性剤が存在することで、チャージポイントであるポリエステル−酸化チタンへ電荷の注入が起きるようになる。そのため、トナーは表面だけでなくトナー内部にまで電荷を蓄えられるようになる為、大きな帯電量が保持できるようになり安定化する。また、表面のみで帯電しているトナーに比べ、内部まで電荷が存在するので、トナー1粒子あたりの帯電量は表面積だけに依存せず、体積にも依存してくるようになり、トナー粒子間の帯電量は均一化する方向に向かう。すなわち、トナーの粒径が小さいほど、体積あたりの表面積は大きいために、表面のみで帯電するトナーは粒径ごとの体積電荷密度に大きな差があったが、トナー内部まで電荷を蓄えられるようになると、トナーの粒径による体積電荷密度の差
は小さくなる。
以上のことから、本発明のトナーであれば帯電量の分布が均一であり、高い帯電量の安定性が達成できる。
以下さらに詳細に本発明について説明する。
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、チタン化合物を触媒として製造される。このポリエステル樹脂の製造に用いられるチタン化合物の触媒は、他の重縮合触媒に比べ高い加水分解性を有するために、ポリエステル樹脂中にポリエステル−酸化チタンとしてチャージポイントを有すると考えている。このポリエステル−酸化チタンは、重縮合反応が進む過程においてチタン化合物の触媒が、ポリエステルとエステル交換しながら加水分解を進める際に発生する。チタン化合物の触媒はエステル交換により加水分解することで酸化チタンへと徐々に構造を変化させるため、生成される酸化チタンには、エステル交換途中のチタン化合物が存在していると考えている。この加水分解によって生成された酸化チタン中に含まれる、エステル交換途中のチタン化合物とポリエステルの一部が直接化学的に相互作用した状態を取っていると考えられ、これがポリエステルと酸化チタンを結ぶことで非常に微分散したポリエステル−酸化チタンとなる。また、酸化チタンである部分とエステル交換途中のチタン化合物の割合は、加水分解の程度により様々な比率で存在することが考えられ、多様な抵抗値を持った化合物として存在すると考えられる。
そして、微分散したポリエステル−酸化チタンがポリエステル樹脂中において電荷を蓄える際に、チャージポイントとして作用することで、トナー樹脂内部まで帯電させることが可能になると推定している。
しかしながら、単純に、結着樹脂にチタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂を用いた従来のトナーでは効率的かつ迅速に帯電をチャージポイントに蓄えることができなかった。これは、ポリエステル樹脂とチャージポイントであるポリエステル−酸化チタン間での抵抗差が大きいことに由来すると考えている。電荷の保持性としては、大きな抵抗値を持つものほど多く、小さな抵抗値を持つものほど少ないことが一般的である。反面、大きな抵抗値を持つものは電荷の注入やリークが遅く、小さな抵抗値のものは電荷の注入やリークが早くなる。すなわち、抵抗値が大きいものほど電荷の移動が起こりにくく、抵抗値が小さなものほど電荷は移動しやすくなる。ポリエステル樹脂中のポリエステル−酸化チタンはポリエステル樹脂に比べ、かなり小さな抵抗値を持っていると推定している。ひとたび、ポリエステル−酸化チタンが電荷を得ることができれば、高抵抗値のポリエステル樹脂に囲まれる為、電荷移動が制限されると考えられる。そのため、トナー表層で得られた電荷は、トナー樹脂内部のチャージポイントであるポリエステル−酸化チタンへ移動することができない。それゆえ、従来のチタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂を用いたトナーであっても、他のポリエステル樹脂を用いたトナーと同様の帯電性能しか発揮できていなかったと考えている。
本発明によれば、非イオン性界面活性剤がトナー表面に存在することによって、上記チャージポイントに効率的かつ迅速に電荷を蓄えることができるものと考えている。
非イオン性界面活性剤は、トナー表層に対する極性部位の配位の仕方や、吸湿状態によって、抵抗値の大きさを多様化させることができていると考えている。帯電量の低い状態では比較的低抵抗値の状態、帯電量の高い状態では比較的高抵抗値の状態を取りうることができ、トナー表面での電荷の状態を多様化できると考えられる。これによって、トナーへのスムーズな電荷の注入が行えると考えている。さらに、非イオン性界面活性剤が抵抗値を多様化できることから、電荷のエネルギー状態を様々に遷移させることができる為に、トナー表層からポリエステル樹脂内部のチャージポイントである微小酸化チタンへ、トンネル現象により電荷が移動できるものと考えている。この効果により、トナー内部へ電荷を蓄えられるので、帯電は安定し、分布の均一性は極めて優れたものとなると考えている。
【0008】
次に、上記の効果を発現するために必要なトナーの単位表面積あたりの非イオン性界面活性剤の量を説明する。その条件は、トナーからメタノールにより抽出される非イオン性
界面活性剤の抽出量と、トナーの粒子径分布から求められる理論比表面積とで求めることができる。具体的には、トナーからメタノールにより抽出される非イオン性界面活性剤の抽出量をA(ppm)とし、細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置を用いたトナーの粒子径分布から求められる理論比表面積をB(m/g)としたときに、AのBに対する比(A/B)が、5.0×10−5以上9.0×10−3(g/m)以下である。
これは、トナー表面に存在する界面活性剤量の近似であり、本発明で必要な界面活性剤量を表現したものである。(A/B)が上記範囲にあることで、本発明の目的である帯電分布の均一性と帯電安定性を得ることができる。なお、本発明においては、トナー表面の非イオン性界面活性剤量を議論するため、非イオン性界面活性剤の抽出には、樹脂であるトナーを膨潤、あるいはトナー内部まで浸透することのほとんど無い、親水性の強いメタノールを用いた。抽出条件等の詳細は後述する。
(A/B)が5.0×10−5(g/m)以上であることが、本発明が求めるトナーの帯電の均一性と安定性を両立し得るための下限の条件である。また、(A/B)が5.0×10−5(g/m)よりも小さいと、電荷のリーク性が弱まる為にトナーが過帯電しやすく、帯電安定性の低下に繋がる。
一方、(A/B)が9.0×10−3(g/m)よりも大きいと、トナーの単位表面積あたりの非イオン性界面活性剤量が多いため電荷のリーク性が強くなりすぎ、特に高湿環境下の吸湿による帯電量の低下が起きやすくなる領域でもある。全体の帯電量が大きく低下してくると、帯電量の分布としてはゼロ成分や逆極性の成分が増える領域となる。また、電荷が注入されるよりもリーク性が上回る為に帯電量の分布は均一化されにくくなる。さらには、帯電量が充分に得られた場合でも、急速に電荷がリークしてしまうので、連続印字後、間隔をあけた場合などに、極めて帯電量が低くなり転写効率の大きな低下に繋がる。
ほかにも、トナー表面に適量以上の非イオン性界面活性剤が存在することで、それを介在して保管時にトナー同士が凝集する可能性もでてくる。よって、(A/B)が9.0×10−3(g/m)以下であることが、本発明の求めるトナーの帯電の均一性と安定性を両立し得る上限の条件である。
本発明における(A/B)の好ましい条件は、(A/B)が5.0×10−4以上4.0×10−3(g/m)以下である。この範囲にあることで、本発明が求めるトナーの帯電量分布の均一化と帯電量の安定性がより好適に得られる。
【0009】
検討の結果、非イオン性界面活性剤が、アルキレングリコールのブロック共重合体を含有し、前記アルキレングリコールのブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定された数平均分子量(Mn)が1200以上40000以下であれば、本発明の効果を発現できることがわかった。当該ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、2000以上30000以下あることが好ましく、その範囲であるとより安定して本発明の効果が発揮される。より好ましくは3000以上18000以下である。
前記アルキレングリコールのブロック共重合体において、ブロック共重合体の各ブロックはオキシエチレンまたはオキシプロピレンなどのモノマーを重合することで得られる。このブロックにおけるモノマーの付加モル数やモノマーの構造により親水性、疎水性がコントロールできる。特に、水系媒体中においてはエチレングリコールのオキシエチレン鎖長が延びれば親水性が増し、プロピレングリコールのプロピレンオキサイド鎖長が延びれば疎水性が増す傾向になる。しかし水系媒体中でなければ、いずれのブロック体であっても空間的な自由度が存在すれば、多くの配向状態をとることができ、分子としての抵抗値は多様化する。
また、配向状態は非イオン性界面活性剤の分子の大きさにより変わるため、上記数平均分子量が1200以上であれば本発明の効果が発現する。一方、非イオン性界面活性剤の分子サイズが大きくなると、分子内で自己凝集を起こし始める。自己凝集が強くなると、空間的な自由度は失われるため配向状態は限定され、抵抗値の多様化は失われる。そのため数平均分子量が40000以下であれば本発明の効果が発現する。また、数平均分子量
が40000以下であっても、30000よりも大きい場合は、溶解性が著しく低下する。そのため、数平均分子量が30000以下である場合に比べ添加量を多くしなければ、トナー中に十分な量含有させることができない。
また、ブロック共重合体の両端部に存在するアルキレングリコールのブロック重合体部分は、自由度が高いために配向状態が多様化しやすい。このことから、炭素数の少ないエチレングリコールのブロック重合体が両端部に存在するブロック共重合体である方が、本発明の効果を得るのに好ましいと考えられる。
したがって、本発明におけるアルキレングリコールのブロック共重合体は下記構造式(1)で示されるポリプロピレングリコール(PPG)のエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。
【0010】
【化1】

[構造式中、a、b及びcは整数であって、a>0、b≧4、c>0、a+c≧4]

【0011】
反対に、両端部がプロピレンオキサイドのブロック重合体である場合にはメチル基が立体障害となりうる為、配向状態が制限される傾向にある。
従って、上記構造式(1)は、下記構造式(2)で示されるポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物であって、構造式(2)で示されるポリプロピレングリコールの数平均分子量(Mn)が1000以上3600以下であることが好ましい。
【0012】
【化2】

[式中、bは整数であって、4≦b≦100]

【0013】
上記構造式(1)及び(2)中のプロピレンオキサイドの付加モル数を示す「b」は4以上100以下であることが好ましく、10以上80以下であることがより好ましい。
一方、上記構造式(1)中のエチレンオキサイドの総付加モル数を示す「a+c」は4以上であることが好ましく、10以上1000以下であることがより好ましく、30以上300以下であることがさらに好ましい。
上記構造式(1)で示される組成物におけるエチレンオキサイド部は他のアルキレンオキサイドに比べ、非常に親水性が高くなりやすく高湿環境下での吸湿性が高くなりがちである。従って、上述のようにプロピレングリコールの数平均分子量が1000以上であれば、充分な疎水性を発現する為に、高湿環境下での水分吸着量を少なく制御できていると考えられる。また、プロピレングリコールの数平均分子量が3600以下であれば疎水部の大きさが適当である為、両端部のエチレンオキサイドのブロック重合体同士が分子内で相互作用できるので、さらに多様な配向状態を取りうる。それによって、チャージポイントへの電荷の注入がさらに起きやすくなり、帯電量分布がより均一化し安定性も増すと考えられる。
【0014】
本発明のトナーは、水系媒体中で製造されたトナー粒子と、無機微粉体とを少なくとも含有するトナーであって、当該トナー粒子は、結着樹脂、着色剤及び非イオン性界面活性剤を少なくとも含有する。また、当該結着樹脂は、チタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂を含む。
本発明では、上述のように、チタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂を用いたトナー中の、チタン化合物由来の酸化チタンがチャージポイントとして寄与することで効果を発現する。そのため、トナー中の、チタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂に由来するチタン元素の含有量が、30ppm以上3,000ppm以下であることが好ましく、100ppm以上1000ppm以下であることがより好ましい。
チタン元素の含有量が、30ppm以上であれば帯電の保持性を発揮するのに十分なチャージポイントを得られ、3,000ppm以下であれば適度な帯電リーク性を有する為に帯電安定性に優れ過帯電することがない。
次に、上記触媒としてのチタン化合物について説明する。当該チタン化合物は、アルコキシチタンまたはチタンキレート化合物であることが好ましい。
具体的なアルコキシチタンとしては具体的に以下のものが挙げられる。テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラペンチルオキシチタン、テトラヘキシルオキシチタン、テトラヘプチルオキシチタン、テトラオクチルオキシチタン、テトラノニルオキシチタン、テトラデシルオキシチタン。
これらのうち、好ましくはテトラブトキシチタン、テトラヘキシルオキシチタン、テトラオクチルオキシチタンが好ましい。
上記チタンキレート化合物としては、配位子が、ジオール、ジカルボン酸、オキシカルボン酸のいずれかであることが好ましい。これらの中でも、配位子が、脂肪族系ジオール、ジカルボン酸、オキシカルボン酸のいずれかであることが特に好ましい。
具体的な配位子としては、ジオールについては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールが挙げられる。ジカルボン酸については、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸が挙げられる。オキシカルボン酸については、グルコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が挙げられる。特に、配位子としてジカルボン酸を持つことが好ましい。また、チタンキレート化合物が水和物であっても良い。
チタンキレート化合物の対陽イオンとしては、アルカリ金属が好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられ、これらのうち好ましいものは、リチウム、ナトリウム、カリウムであり、特に好ましいものとしては、ナトリウム、カリウムである。これらのチタンキレート化合物は、2種類以上を併用し、触媒として用いることも本発明の良好な形態となる。
上記のアルコキシチタンまたはチタンキレート化合物であれば本発明の効果が良好に得られる。これは、上記チタン化合物の触媒が効果を得るのに最適な反応性と加水分解性を有しているためと考えている。
上記触媒としてのチタン化合物の使用量は、ポリエステル樹脂の単量体組成物100質量部に対して、0.5質量部乃至5質量部であることが好ましい。当該使用量とすることで、ポリエステル樹脂中に、本発明の効果を発現するのに良好な上記チタン化合物を生成することができる。
本発明に用いられるトナー粒子は、上述のように、チタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂を少なくとも含有する。すなわち、チタン化合物を触媒として用いないで製造されたポリエステル樹脂及びそれ以外の樹脂を結着樹脂として併用してもよい。
チタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂の含有量は、トナー粒子を構成する結着樹脂全体に対して、1質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
本発明における、チタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂としては、従来公知のポリエステル樹脂が挙げられ、非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂のいずれでも良い。ここで結晶性ポリエステル樹脂とは、示差走査熱量(DSC)測
定において昇温時に吸熱ピークがあり、かつ降温時に発熱ピークがあるポリエステル樹脂をいう。この発熱ピークをその結晶性ポリエステル樹脂の融点とする。ここでDSC測定は「ASTM D 3417−99」に準じて行う。また非晶性ポリエステル樹脂とは前記結晶性ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂を言う。
これらポリエステル樹脂は、通常のポリエステル樹脂の合成法に従って製造することができる。例えば、カルボン酸単量体とアルコ−ル単量体とをエステル化反応、またはエステル交換反応せしめた後、減圧下または窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることで所望のポリエステル樹脂を得ることができる。
本発明のトナーに用いられる非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定された重量平均分子量(Mw)は2,000乃至20,000であることが好ましく、より好ましくは2,000乃至15,000である。非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が2,000未満の場合、トナー製造時に結着樹脂への相溶を生じ易く、本発明の目的とする効果が得られにくいだけでなく、トナーの保存安定性や耐久性を悪化させやすい。
一方、非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が20,000よりも大きいと良好な分散性が得られ難く、更には熱に対する応答性が低下(溶融するまでに時間が係る等)してしまいやすく、低温定着性が低下する傾向がある。
上記ポリエステル樹脂の重量平均分子量はGPC法により求められる。具体的な測定手順としては、測定対象であるポリエステル樹脂0.03gをo−ジクロロベンゼン10mlに分散して溶解させる。得られた溶液を135℃において24時間振投機で振投した後、溶液を0.2μmフィルターで濾過する。得られた濾液を試料として、以下の分析条件にて測定する。
[分析条件]
分離カラム:Shodex(TSK GMHHR−H HT20)×2
カラム温度:135℃
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
移動相流速:1.0ml/min.
試料濃度 :約0.3%
注入量 :300μl
検出器 :示差屈折率検出器 Shodex RI−71
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂により作成した分子量校正曲線を使用する。標準ポリスチレン樹脂としては、東ソー社製TSK スタンダード
ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500を用いる。
【0015】
上記非晶性ポリエステル樹脂は2価以上の多価カルボン酸と多価アルコールの反応により得ることができる。
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多価カルボン酸を1種又は2種以上用いることができる。これら多価カルボン酸の中、芳香族カルボン酸を使用することが好ましく、また良好なる定着性を確保するために架橋構造あるいは分岐構造を形成しうる3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。
多価アルコールのうち、2価アルコールの例には、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等の芳香族アルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等が含まれる。また、多価アルコールのうち3価以上の多価アルコ
ールの例には、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコール等が含まれる。
これら単量体組成物における酸成分及びアルコール成分の全量に対する酸成分の比率(モル基準)は、40モル%乃至60モル%であることが好ましい。
さらに、非晶性ポリエステル樹脂は、1価のカルボン酸を含有していてもよい。1価のカルボン酸の例には、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸が含まれる。
ここで、エステル化もしくはエステル交換反応または重縮合反応において、得られるポリエステル樹脂の強度を上げるために全単量体を一括に仕込むこと、または得られるポリエステル樹脂の低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させることなどができる。
【0016】
上記結晶性ポリエステル樹脂は2価以上の多価カルボン酸とジオールの反応により得ることができる。その中でも、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を主成分とするポリエステル樹脂が、結晶化度が高く好ましい。
特に、本発明においては、炭素数2乃至22の脂肪族ジオールと、炭素数2乃至22の脂肪族ジカルボン酸とを主成分として含むポリエステル樹脂が好ましい。ここで「主成分として含む」とは、単量体組成物の50モル%以上(好ましくは70モル%以上)が上記脂肪族ジカルボン酸あるいは脂肪族ジオールであることを意味する。単量体組成物の主成分を、炭素数2乃至22の脂肪族ジオールと、炭素数2乃至22の脂肪族ジカルボン酸の組み合わせとすることにより、得られる結晶性ポリエステル樹脂の分子配列の秩序を高めることができ、したがって結晶化度を高めることができると考えられる。
上記単量体組成物における酸成分及びジオール成分の全量に対する酸成分の比率(モル基準)は、40モル%乃至60モル%であることが好ましい。
炭素数2乃至22(より好ましくは炭素数2乃至12)の脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであることが好ましい。鎖状の脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブタジエングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが含まれる。これらの中でも、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールの如き直鎖脂肪族α,ω−ジオールが好ましく例示される。
また、上述のように、ジオール成分のうち、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が、炭素数2乃至22の脂肪族ジオールから選ばれる。
また、本発明における結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に、上記脂肪族ジオール以外の多価アルコール単量体を用いることもできる。該多価アルコール単量体のうち2価アルコール単量体の例には、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等の芳香族アルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等が含まれる。また、該多価アルコール単量体のうち3価以上の多価アルコール単量体の例には、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリ
メチロールプロパン等の脂肪族アルコール等が含まれる。
さらに、本発明における結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のアルコ−ルを用いてもよい。該1価のアルコールの例には、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコール等の1官能性モノマーなどが含まれる。
一方、炭素数2乃至22(より好ましくは炭素数4乃至14)の脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸の具体的な例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、およびイタコン酸、ならびにこれらの酸無水物が含まれる。
また、低級アルキルエステルを加水分解させて前記脂肪族ジカルボン酸として用いることもできる。
上述のように、カルボン酸成分のうち、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が、炭素数2乃至22の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる。
さらに、炭素数2乃至22の脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を含んでいても良い。その他の多価カルボン酸単量体のうち2価のカルボン酸の例には、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸の脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が含まれ、これらの酸無水物も含まれる。さらに、低級アルキルエステルを加水分解させて2価のカルボン酸として用いてもよい。
また、その他の多価カルボン酸単量体のうち、3価以上の多価カルボン酸の例には、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、等の脂肪族カルボン酸が含まれ、これらの酸無水物も含まれる。さらに、低級アルキルエステルを加水分解させて多価カルボン酸として用いてもよい。
さらに、本発明における結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を含有していてもよい。1価のカルボン酸の例には、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸が含まれる。
エステル化もしくはエステル交換反応または重縮合反応において、得られるポリエステル樹脂の強度を上げるために全単量体を一括に仕込むこと、または、得られるポリエステル樹脂の低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させることなどができる。
【0017】
本発明において、従来公知の、チタン化合物の触媒を用いないで製造されたポリエステル樹脂を併用することができる。
ここで、ポリエステル樹脂を効率的に得るためには触媒を加えることが好ましい。チタン化合物以外の触媒として具体的には、硫酸、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いて行うことができる。
また、結着樹脂に用いられる、ポリエステル樹脂以外の樹脂としては、例えば従来公知の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類の単独重合体又は共重合体(スチレン系樹脂);アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、
アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類の単独重合体又は共重合体(オレフィン系樹脂);エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等の非ビニル縮合系樹脂、及びこれらの非ビニル縮合系樹脂とビニル系モノマーとのグラフト重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの樹脂の中でもビニル系樹脂が好ましい。また、高温多湿や低温低湿の環境においてトナーの帯電量変化の少ないスチレン−アクリル樹脂がより好ましい。
ビニル系樹脂の場合、乳化重合やシード重合により樹脂粒子分散液を容易に調製することができる点で有利である。ビニル系樹脂を製造するためのビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ビニルスルフォン酸、エチレンイミン、ビニルピリジン、ビニルアミンなどのビニル系高分子酸やビニル系高分子塩基の原料となるモノマーが挙げられる。これらのビニル系モノマーの中でも、ビニル系樹脂の形成反応の容易性等の点でビニル系高分子酸がより好ましく、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸などのカルボキシル基を解離基として有する解離性ビニル系モノマーが、重合度やガラス転移温度の制御の点で特に好ましい。さらに、この時、分子量を調節するために、連鎖移動剤、架橋剤等を併用することもできる。
連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、四臭化炭素等のハロゲン化合物、ジスルフィド類等が使用される。
架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するもの等を用いることが可能で、特にジビニルベンゼンが好ましく用いられる。
本発明においてラジカル重合開始剤は水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物〔4,4’−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等〕、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物等が挙げられる。
更に上記ラジカル重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とすることが可能である。レドックス系開始剤を用いることで、重合活性が上昇し重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が期待できる。
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択しても良いが、常圧条件下においては例えば50℃から80℃の範囲が用いられる。また、加圧条件下においては分散液(通常は水系媒体)の沸点以上の温度において重合することも可能である。
重合に用いることのできる界面活性剤としては、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウムなど)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなど)、脂肪酸塩
(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなど)などが挙げられる。
【0018】
本発明に用いられるトナー粒子は着色剤を含有する。着色剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、キナクリドン系顔料などが挙げられる。これらの具体例としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレレートなどの種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、チアゾール系、キサンテン系などの各種染料;などが挙げられる。これらの着色剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明に用いられるトナー粒子は、定着性能を改良する為に離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、耐久性と離型性の両立の観点より、融点は150℃以下のものが好ましく、より好ましくは45℃乃至130℃である。
例えば、ポリエチレン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により融点(軟化点)を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類、ステアリン酸ステアリル等のエステルワックス類、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウ等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;及びそれらの変性物などの粒子が挙げられる。なかでも離型剤粒子分散液としたときの安定性、トナー化したときの耐環境特性、画像安定性等の観点から、エステルワックスが好ましく用いられる。
なお、本発明に用いられる結着樹脂の物性とのマッチングにより、低温定着性と、耐久性をバランス良く達成できる最適な離型剤としては、融点が45℃以上75℃以下の低融点エステルワックスが特に好ましい。また、定着可能温度のラティチュードを広げる為に、低融点ワックスに加えて融点が70℃より大きく130℃以下の高融点ワックスを併用することで、好適に機能付与することができる。
また、本発明においては、さらに帯電特性を向上させたい場合には、帯電制御剤を添加することも可能である。帯電制御剤としては例えば、4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロム、亜鉛、ジルコニウム等の錯体からなる化合物等の粒子が挙げられる。なお、本発明における帯電制御剤粒子としては、凝集時や融合時の安定性に影響するイオン強度の制御と廃水再利用の観点から、水に溶解しにくい素材のものが好ましい。
【0020】
本発明のトナーは、トナー粒子表面に非イオン性界面活性剤を有することで効果が発現している。トナー表面へ非イオン性界面活性剤を保持する方法は、トナー粒子分散液に非イオン性界面活性剤を添加して付着させる方法や、メタノールなどの揮発性の高い溶剤に非イオン性界面活性剤を分散させたのちスプレーで噴霧し混合する方法などが挙げられる。しかし、非イオン性界面活性剤はトナー表面にできるだけ均一に存在していることが好ましい。そのためには、水やメタノール水溶液などに非イオン性界面活性剤を溶解した溶
解液に、トナー粒子を分散させて付着させることが好ましい。
また、非イオン性界面活性剤の添加タイミングは、トナー粒子造粒前の結着樹脂分散液、着色剤分散液および離型剤分散液等に非イオン性界面活性剤を添加しても構わない。しかし、帯電量の環境安定性の点から、トナー粒子造粒後であることが好ましい。これは、非イオン性界面活性剤をトナー粒子の造粒前に添加することにより、非イオン性界面活性剤がトナー粒子内部にまで含まれている場合、トナーの帯電量の環境安定性が低下する傾向にあるからである。当該理由は、非イオン性界面活性剤が吸水した状態でトナーを構成する樹脂内部に存在する場合、高湿環境下でトナーから電荷がリークしやすいのではないかと推測している。
また、トナー粒子の固液分離方法は、濾過、遠心分離、デカントなど既知のいずれの方法を使用しても構わない。また、洗浄方法においても、どのような方法を用いても構わないが真空式のベルトフィルターを用いて、得られたトナー粒子ケーキを洗浄する方法が好ましい。この方法を用いることでトナー粒子表面の非イオン性界面活性剤含有量を容易に制御することが可能となる。また、この方法であれば非イオン性界面活性剤を用いずにトナー粒子ケーキを得た後、所望の濃度の非イオン性界面活性剤溶液あるいは非イオン性界面活性剤分散液で洗浄することにより、トナー表面の非イオン性界面活性剤の存在量を簡便に制御することが可能となる。
【0021】
次に、本発明のトナーについて詳述する。
本発明に用いられるトナー粒子は、水系媒体中で製造されたものならば特に限定されるものではない。
トナー粒子を水系媒体中で製造する、具体的方法としては、乳化凝集法、溶解懸濁法、懸濁重合法などが挙げられるが、なかでも上記ポリエステル樹脂中のチタン化合物と非イオン性界面活性剤とを均一に相互作用させるためにも乳化凝集法が好ましい。具体的には、本願発明に用いられるトナー粒子は、結着樹脂粒子、着色剤粒子、及び必要に応じて離型剤粒子等を少なくとも含む水系媒体中で、結着樹脂粒子、着色剤粒子、及び必要に応じて離型剤粒子等を少なくとも含む凝集粒子を形成した後、凝集粒子を加熱して融合させることにより得られるトナー粒子であることが好ましい。
なお、溶融混練粉砕法で得られたトナーに関して、本発明の構成、すなわちチタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂を用いて溶融混練粉砕法でトナー粒子を製造した後、上記で説明した非イオン性界面活性剤で表面処理したところ、本発明の効果が得られなかった。これは、高温且つ非水系でポリエステル樹脂が溶融混練される際に、ポリエステル樹脂中で、脱水反応が進み、ポリエステル−酸化チタンの結合が切れた為ではないかと推定している。
以下、乳化凝集法を用いたトナー粒子の製造方法を例示して、詳細に説明するが、当該製造方法に、なんら限定されるものではない。
【0022】
(分散液調製工程)
結着樹脂粒子分散液は、例えば、以下のようにして調製される。即ち、前記結着樹脂粒子における樹脂が、前記ビニル基を有するエステル類、前記ビニルニトリル類、前記ビニルエーテル類、前記ビニルケトン類等のビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)である場合には、前記ビニル系単量体をイオン性界面活性剤中で乳化重合やシード重合等行うことにより、ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)の樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
前記結着樹脂粒子における樹脂が、前記ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体以外の樹脂である場合には、イオン性界面活性剤や高分子電解質を溶解した水系媒体に該樹脂を混合する。その後、この溶液を融点または軟化点以上に加熱して溶解させ、ホモジナイザー等の剪断力の強力な分散機を用い、ビニル系樹脂以外の樹脂の樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
前記分散の手段としては、特に制限はないが、例えば、回転剪断型ホモジナイザーやメ
ディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどのそれ自体公知の分散装置が挙げられる。
前記結着樹脂粒子の個数平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01乃至1.00μmであることが好ましい。前記個数平均粒径が1.00μmを超えると、最終的に得られるトナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じたり、性能や信頼性の低下を招き易い。一方、前記個数平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。
着色剤粒子分散液は、少なくとも着色剤粒子を分散剤中に分散させてなるものである。前記着色剤粒子の個数平均粒径としては、0.5μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。前記個数平均粒径が0.5μmを超えると、可視光の乱反射を防ぐことができず、また、粗大粒子が存在した場合、着色力、色再現性、OHP透過性に悪影響し、後述の凝集工程において前記結着樹脂粒子と該着色剤粒子とが凝集しないか、あるいは凝集しても融合時に脱離してしまうことがあり、得られるトナーの品質が劣化することがある点で好ましくない。一方、前記個数平均粒径が前記範囲内にあると、前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。
離型剤粒子分散液は、少なくとも離型剤粒子を分散剤中に分散させてなるものである。前記離型剤粒子の個数平均粒径としては、2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。前記個数平均粒径が2.0μmを超えると、トナー粒子間で離型剤の含有量にかたよりが生じやすく、長期にわたった画像の安定性に悪影響を及ぼす。一方、前記個数平均粒径が前記範囲内にあると、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる。
前記着色剤粒子及び前記結着樹脂粒子の組み合わせ、並びに前記着色剤粒子及び前記結着樹脂粒子と必要に応じて使用される前記離型剤粒子の組み合わせとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜自由に選択することができる。
前記結着樹脂粒子分散液及び前記着色剤粒子分散液、並びに必要に応じて使用される前記離型剤粒子分散液のほか、分散剤中に適宜選択した粒子を分散させてなる粒子分散液を更に混合してもよい。
前記粒子分散液に含まれる粒子としては、特に制限はなく目的に応じ適宜選択することができ、例えば、内添剤粒子、帯電制御剤粒子、無機粒子、研磨材粒子などが挙げられる。なお、本発明において、これらの粒子は、前記結着樹脂粒子分散液中や前記着色剤粒子分散液中に分散させてもよい。
前記帯電制御剤粒子の個数平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01乃至1.00μmであることが好ましい。個数平均粒径が1.00μmを超えると、最終的に得られるトナーの粒径分布が広くなり、性能や信頼性の低下を招き易い。一方、前記個数平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。
前記結着樹脂粒子分散液、前記着色剤粒子分散液、前記離型剤微分散液、前記粒子分散液等に含まれる分散剤としては、例えば、極性界面活性剤を含有する水系媒体などが挙げられる。前記水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記極性界面活性剤の含有量としては、一概に規定することはできず、目的に応じて適宜選択することができる。
前記極性界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤などが挙げられる。前記アニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。前記カチオン界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、ア
ルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明においては、これらの極性界面活性剤と、非極性界面活性剤とを併用することできる。前記非極性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
前記着色剤粒子の含有量としては、前記凝集粒子が形成された際の凝集粒子分散液中の結着樹脂100質量部に対して、1乃至10質量部であることが好ましい。
前記離型剤粒子の含有量としては、前記凝集粒子が形成された際の凝集粒子分散液中の結着樹脂100質量部に対して、1乃至25質量部程度であり、5乃至20質量部が好ましい。前記含有量が5質量部より小さいと、十分な離型効果が得られにくく、低温定着性に劣る傾向にある。一方、離型剤の含有量が20質量部を超えると、トナーの耐久劣化に伴い離型剤の表面存在量、或いは析出量が増える為、かぶり特性が低下する傾向にある。また、前記含有量が20質量部より大きい場合、離型剤の種類によっては粒度分布が広がり、特性が悪化する場合がある。この場合は、例えば樹脂粒子を生成させる時に、離型剤に対してシード重合を行うと前記問題を解決できる。
さらに、得られるトナーの帯電性をより詳細に制御するために、前記帯電制御粒子及び前記結着樹脂粒子を前記凝集粒子が形成された後に添加する場合もある。
なお、前記結着樹脂粒子、前記着色剤粒子分散液、前記離型剤微分散液、前記粒子分散液等の粒径測定は堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いて行った。
【0023】
(凝集工程)
凝集粒子を形成する凝集工程は、結着樹脂粒子、着色剤粒子、及び必要に応じて離型剤粒子等を少なくとも含む水系媒体中で、結着樹脂粒子、着色剤粒子、及び必要に応じて離型剤粒子等を少なくとも含む凝集粒子を形成する工程である。
前記凝集粒子は、例えばpH調整剤、凝集剤、安定剤を水系媒体中に添加し混合し、温度、機械的動力等を適宜加えることにより該水系媒体中に形成することができる。
pH調整剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ、硝酸、クエン酸等の酸があげられる。凝集剤としては、ナトリウム、カリウム等の1価の金属塩;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属塩;鉄、アルミニウム等の3価の金属塩等;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類があげられる。
安定剤としては、主に前記極性界面活性剤そのもの又はそれを含有する水系媒体などが挙げられる。例えば、各粒子分散液に含まれる極性界面活性剤がアニオン性の場合には、安定剤としてカチオン性のものを選択することができる。
凝集剤等の添加・混合は、水系媒体中に含まれる樹脂のガラス転移温度以下の温度で行うのが好ましい。この温度条件下で混合を行うと、凝集が安定した状態で進行する。混合は、例えばそれ自体公知の混合装置、ホモジナイザー、ミキサー等を用いて行うことができる。
また、凝集工程において、凝集粒子の表面に、第2の結着樹脂粒子を含む結着樹脂粒子分散液を用いて、第2の結着樹脂粒子を付着させ、被覆層(シェル層)を形成することによりコア凝集粒子表面にシェル層が形成されたコア/シェル構造を持つ凝集粒子を得ることも可能である。なお、この際用いる第2の結着樹脂粒子は、コア凝集粒子を構成する結着樹脂粒子と同じであってもよく、異なったものであってもよい。なお、前記凝集工程は、段階的に複数回に分けて繰り返し実施してもよい。
【0024】
(熟成工程)
熟成工程は、得られた凝集粒子を加熱して融着する工程である。熟成工程に入る前に、トナー粒子間の融着を防ぐため、前記pH調整剤、前記極性界面活性剤、前記非極性界面活性剤等を適宜投入することができる。
加熱の温度としては、凝集粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度(樹脂の種類が2種類以上の場合は最も高いガラス転移温度を有する樹脂のガラス転移温度)乃至樹脂の分解温度であればよい。したがって、前記加熱の温度は、前記結着樹脂粒子の樹脂の種類に応じて異なり、一概に規定することはできないが、一般的には前記凝集粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度乃至140℃である。なお、前記加熱は、それ自体公知の加熱装置・器具を用いて行うことができる。
融着の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。即ち、融合の時間は、加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には30分乃至10時間である。
上記の各工程を経ることにより得られたトナー粒子は、公知の方法に従って固液分離し、トナー粒子を回収し、次いで、適宜の条件で洗浄、乾燥等することができる。
【0025】
(外添工程)
本発明においては、トナー粒子表面に外添剤として一般に知られている無機微粉体を添加する。本発明に使用される無機微粉体としては公知の無機微粒子が用いられるが、帯電安定性、現像性、流動性、クリーニング性向上のためには、疎水化処理されたシリカ粒子であることが好ましい。
上記疎水化処理されたシリカ粒子は、疎水化及び帯電性制御等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物等の処理剤で、あるいは、種々の処理剤を併用して処理されていることが望ましい。
例えば、シランカップリング剤としては、代表的にはジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジビニルクロルシラン等をあげることができる。なお、処理剤の添加量を含む処理方法は公知の方法を用いることができる。
上記無機微粉体の総量は、トナー粒子100質量部に対して1.0乃至5.0質量部であることが好ましい。より好ましくは1.0質量部乃至2.5質量部である。
【0026】
以下、本発明にかかる各種物性値の測定方法について説明する。
<トナーの粒度分布から求められる理論比表面積(B)の測定およびトナーの重量平均粒径(D4)の測定>
トナーの粒度分布から求められる理論比表面積(B)およびトナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。なお、上記理論比表面積(B)および重量平均粒径(D4)の測定について、後述する(6)までの工程はそれぞれで共通である。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。尚、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズ
レベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
以降、理論比表面積(B)の測定の場合は(7−1)に、重量平均粒径(D4)の場合は(7−2)に進む。
(7−1)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、後述のように理論比表面積を算出する。まず、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面において、次の16チャンネルの結果を算出させる。具体的には、測定されたトナーサンプルの粒度分布(個数統計値)の測定結果において、以下の16チャンネルに分割して各レンジ範囲内の粒径の個数%を算出させる。
【0027】
個数
CH レンジ DIF%
1 1.587〜2.000μm N
2 2.000〜2.520μm N
3 2.520〜3.175μm N
4 3.175〜4.000μm N
5 4.000〜5.040μm N
6 5.040〜6.350μm N
7 6.350〜8.000μm N
8 8.000〜10.079μm N
9 10.079〜12.699μm N
10 12.699〜16.000μm N10
11 16.000〜20.159μm N11
12 20.159〜25.398μm N12
13 25.398〜32.000μm N13
14 32.000〜40.317μm N14
15 40.317〜50.797μm N15
16 50.797〜64.000μm N16
【0028】
次に各レンジの粒径範囲の粒子は、全て各レンジの丁度中間の粒径かつ、比重1.00(g/cm)の真球粒子と仮定する(例えば1.587〜2.000μmのレンジの粒子は全て1.7935μmと仮定する)。そして、各レンジの粒子の粒子1個当たりの表面積及び体積と各レンジの粒子の個数%から、測定したトナーの理論比表面積(m/g)を算出する。
つまり、あるレンジの中間の粒径の半径をRn(m)、そのレンジの個数%をNn(個数%)として、該当する全レンジについて計算していくと、トナー粒度分布より求められる理論比表面積(B)は以下のように算出される。
理論比表面積B(m/g)
={Σ(4πRn×Nn)}/[Σ{(4/3)πRn×Nn×1.00×10−6}]
(n=1〜16)
【0029】
(7−2)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0030】
<トナー表面から抽出される非イオン界面活性剤の抽出量(A)の測定>
トナー表面から抽出される非イオン性界面活性剤の抽出量はH−NMR(核磁気共鳴)測定を用い、以下のようにして求める。
まず、サンプルビンにメタノール50mLとトナー5gを精秤しよく混合した後、発振周波数42kHz、電気的出力125Wの卓上型超音波洗浄器(商品名「B2510J−MTH」、ブランソン社製)にて超音波を30分間照射する。その後、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)を用いて濾過を行う。濾液からエバポレーターによりメタノールを除去したのち10mgのトリメチルシラン(TMS)入り重クロロホルム(1%TMS)で溶解させ、H−NMRで分析する。
あらかじめトナー中に含有している界面活性剤と同一の界面活性剤を用いて得られた、TMS強度基準の検量線を用いて、トナー表面から抽出された非イオン性界面活性剤の抽出量A(ppm)を算出する。尚、検量線はTMS強度と3.0ppm以上5.0ppm以下のオキシアルキレン基の水素由来のピーク強度比から作成する。
測定装置及び測定条件は、下記の通りである。
装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :1024回
測定温度 :40℃
【0031】
<非イオン性界面活性剤におけるアルキレングリコールのブロック重合体又は共重合体の数平均分子量(Mn)の算出>
本発明における、非イオン性界面活性剤におけるアルキレングリコールのブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、非イオン性界面活性剤(アルキレングリコールのブロック共重合体)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0032】
<トナー中のチタン元素含有量の測定>
チタン元素含有量の測定は、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行う。
蛍光X線の測定は、JIS K 0119−1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。尚、X線管球のアノードとしてはロジウム(Rh)を用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナー約4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE−32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで60秒間加圧し、厚さ約2mm、直径約39mmに成型したペレットを用いる。
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
一方、トナー粒子100質量部に対して、二酸化チタン(TiO)微粉末を0.10質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、二酸化チタン微粉末を0.20質量部、0.50質量部となるようにトナー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、LiF200を分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=86.11°に観測されるTi−Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、40kV、60mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のTiO添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
次に、分析対象のトナーを、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにしてペレットとし、そのTi−Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線からトナー中のチタン元素含有量を求める。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例の部数及び%は特
に断りが無い場合、すべて質量基準である。
<非イオン性界面活性剤1の製造方法>
三方コックを取り付けた、フラスコに5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリン(TPP)を6.0質量部とり、乾燥窒素で容器内を置換したのちジクロロメタンを245質量部加えて溶解させた。この溶液に、ヘキサン溶媒の5.0質量%ジエチルアルミニウムクロリド溶液を35.0質量部加え、5時間室温で反応させた。反応混合物を、減圧下で溶媒除去を行い、5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリン(TPP)アルミニウムクロリド触媒を得た。
上記TPPアルミニウムクロリド触媒を1.0質量部とメタノール2.0質量部を、ジクロロメタン50質量部で溶解させ、乾燥窒素で容器内を置換し、液体窒素浴につけて冷却した。これに、精製したプロピレンオキサイド120質量部をトラップ−トゥ−トラップ法により導入した。窒素雰囲気下にて室温で60時間反応させた。ここで、反応物の一部を取り出しGPCにより分子量を測定したところ、数平均分子量(Mn)は2000であった。上記反応物に、精製したエチレンオキサイド700質量部をトラップ−トゥ−トラップ法によりさらに導入し、窒素下室温で120時間反応させた。メタノールを300質量部加え、重合反応を終了させた。次いで、活性炭を3.0質量部入れて3時間撹拌を行い、混合溶液中の触媒を活性炭に吸着させた。その後、濾過によって触媒を吸着した活性炭の除去を行い、溶媒を減圧下で除去し、非イオン性界面活性剤1を得た。得られた非イオン性界面活性剤1の一部をテトラヒドロフランに溶解させ、GPC測定を行い、分子量分布を測定したところ、数平均分子量(Mn)は15000であった。
【0034】
<非イオン性界面活性剤2〜9の製造方法>
用いるアルキレンオキサイドの種類や量を表1に示すように変えた以外は、非イオン性界面活性剤1の製造方法と同様にして非イオン性界面活性剤2〜9を製造した。
【0035】
【表1】

【0036】
<ポリエステル樹脂1の製造方法>
攪拌器、温度計、流出用冷却機を備えた反応装置にプロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)20質量部、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(3モル付加物)80質量部、テレフタル酸20質量部、イソフタル酸20質量部およびテトラブトキシチタン0.50質量部を入れ、190℃でエステル化反応を行った。その後、無水トリメリット酸(TMA)1質量部を加え、220℃に昇温すると共に系内を徐々に減圧し、150Paで重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂1を得た。ポリエステル樹脂1について表2に示す。
【0037】
<ポリエステル樹脂2乃至8の製造方法>
ポリエステル樹脂1の製造方法において、用いる原料モノマーの種類や量、及び重縮合触媒の種類や量を変更した以外は、ポリエステル樹脂1と同様の方法でポリエステル樹脂2乃至8を得た。得られたポリエステル樹脂2乃至8について表2に示す。
【0038】
<ポリエステル樹脂9の製造方法>
100質量部のポリエステル樹脂7と0.2質量部の酸化チタンを溶融混練してポリエステル樹脂9を得た。得られたポリエステル樹脂9について表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
(ポリエステル樹脂粒子分散液1の調製)
・ポリエステル樹脂1 200質量部
・イオン交換水 500質量部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1N炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくする。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3質量部とイオン交換水297質量部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散することでポリエステル樹脂粒子分散液1を得た。このポリエステル樹脂粒子分散液1の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA−920)を用いて測定したところ、含まれるポリエステル樹脂粒子分散液1の個数平均粒径は、0.25μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0041】
(ポリエステル樹脂粒子分散液2乃至9の調製)
ポリエステル樹脂粒子分散液1の調製において、ポリエステル樹脂1をポリエステル樹脂2乃至9にしたこと以外は、上記結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1の調製と同様に
してポリエステル樹脂粒子分散液2乃至9を得た。
このポリエステル樹脂粒子分散液2乃至9の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA−920)を用いて測定したところ、含まれるポリエステル樹脂粒子分散液2乃至8の個数平均粒径はそれぞれ0.27μm、0.31μm、0.24μm、0.26μm、0.21μm、0.21μm、0.23μm、及び0.30μmであり、またいずれも1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0042】
(離型剤粒子分散液の調製)
・イオン交換水 500質量部
・離型剤(ベヘン酸ベヘニルを主体とするエステル化合物) 250質量部
(ユニスターM−2222SL、日本油脂製)
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1N炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくする。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5質量部とイオン交換水245質量部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散を行った。この離型剤粒子分散液に含まれる離型剤粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA−920)を用いて測定したところ、含まれる離型剤粒子の個数平均粒径は、0.35μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0043】
(着色剤粒子分散液の調製)
・C.I.ピグメントブルー15:3 100質量部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5質量部
・イオン交換水 400質量部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この着色剤粒子分散液に含まれる着色剤粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA−920)を用いて測定したところ、含まれる着色剤粒子の個数平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0044】
<トナー1の製造例>
・ポリエステル樹脂粒子分散液1 425質量部
(ポリエステル樹脂 85質量部相当)
・ポリエステル樹脂粒子分散液2 75質量部
(ポリエステル樹脂 15質量部相当)
・着色剤粒子分散液 50質量部
・離型剤粒子分散液 40質量部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5質量部
反応器(容積1リットルフラスコ、バッフル付きアンカー翼)にポリエステル樹脂粒子分散液1、ポリエステル樹脂粒子分散液2、離型剤粒子分散液およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを仕込み、均一に混合する。一方、500mLビーカーに着色剤粒子分散液を均一に混合しておき、これを撹拌しながら反応器に徐々に添加し混合分散液を得る。得られた混合分散液を撹拌しながら硫酸アルミニウム水溶液を固形分として0.5質量部、滴下した(凝集工程)。
滴下終了後、窒素を用いて系内を置換し、50℃にて1時間、さらに55℃にて1時間保持した。
その後昇温して90℃にて30分保持した(熱融着工程)。その後、63℃まで降温したのち3時間保持した(熟成工程)。このときの反応は窒素雰囲気下で行った。所定時間終了後、毎分0.5℃の降温速度にて室温になるまで冷却を行った。
冷却後、反応生成物を10L容量の加圧濾過器にて、0.4MPaの圧力下で固液分離を行い、トナーケーキを得た。その後、イオン交換水を加圧濾過器に満水になるまで加え
、0.4Mpaの圧力で洗浄した。さらに同様に洗浄して、計3回洗浄した。このトナーケーキを、0.15質量部の非イオン性界面活性剤1を溶解させたメタノール/水の50:50混合溶媒1Lに分散して、表面処理したトナー粒子分散物を得た。
このトナー粒子分散物を加圧濾過器に注ぎ、さらにイオン交換水を5L加えた。その後0.4MPaの圧力下で固液分離をしたのち、45℃で流動層乾燥を行い、トナー粒子を得た。
このトナー粒子100質量部に対し、BET比表面積の値が50(m/g)の疎水化処理したシリカ1.0質量部を撹拌混合してトナー1を得た。得られたトナー1について表3および表4に示す。
【0045】
<トナー2乃至12およびトナー16乃至21の製造例>
トナー1の製造例において、用いるポリエステル樹脂粒子分散液の種類や量、及び非イオン性界面活性剤の種類や量を、表3に示すように変更した以外は、トナー1と同様にしてトナー2乃至12およびトナー16乃至21を得た。得られたトナー2乃至12及びトナー16乃至21について表3および表4に示す。
【0046】
<トナー13の製造例>
イオン交換水720質量部に0.1M−NaPO水溶液500質量部を投入して60℃に加温した後、1.0M−CaCl水溶液72質量部を添加して分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 70質量部
・n−ブチルアクリレート 20質量部
・ポリエステル樹脂2 10質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 10質量部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を60℃に加温し、離型剤(ベヘン酸ベヘニル)10質量部を添加し混合溶解した後、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5.5質量部を溶解した。
上記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、窒素雰囲気下においてTK式ホモミキサーを用いて12,000rpmで撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ70℃で5時間反応させた後、90℃に昇温し、そのまま2時間攪拌した。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて酸洗浄した。
上記反応生成物を10L容量の加圧濾過器にて、0.4MPaの圧力下で固液分離を行い、トナーケーキを得た。その後、イオン交換水を加圧濾過器に満水になるまで加え、0.4Mpaの圧力で洗浄した。さらに同様に洗浄して、計3回洗浄した。このトナーケーキを、0.10質量部の非イオン性界面活性剤1を溶解させたメタノール/水の50:50混合溶媒1Lに分散して、表面処理したトナー粒子分散物を得た。
このトナー粒子分散物を加圧濾過器に注ぎ、さらにイオン交換水を5L加えた。その後0.4MPaの圧力下で個液分離をしたのち、45℃で流動層乾燥を行い、トナー粒子を得た。
このトナー粒子100質量部に対し、BET比表面積の値が300(m/g)の疎水化処理したシリカ1.0質量部とBET比表面積の値が50(m/g)の疎水化処理したシリカ0.5質量部とを撹拌混合してトナー13を得た。得られたトナー13について表3および表4に示す。
【0047】
<トナー14およびトナー15の製造例>
トナー13の製造例において、用いるポリエステル樹脂粒子分散液の種類や量、及び非イオン性界面活性剤の種類や量を、表3に示すように変更した以外は、トナー13と同様にしてトナー14およびトナー15を得た。得られたトナー14及び15について表3および表4に示す。
【0048】
<トナー22の製造方法>
・ポリエステル樹脂5 30質量部
・ハイブリッド樹脂 70質量部
(スチレン、2−エチルヘキシルアクリレート、α−メチルスチレン、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、コハク酸、無水トリメリット酸、フマル酸(質量比;20:10:7:30:10:5:3:15)からなる
ハイブリッド樹脂で、重量平均分子量(Mw)が38000、数平均分子量(Mn)が22000、Tgが60℃)
・銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメンブルー15:3) 4質量部
・パラフィンワックス(最大吸熱ピーク67℃) 5質量部
上記の処方の材料を、ヘンシェルミキサーでよく混合した後、温度130℃に設定した2軸混練機にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて2mm以下に粗粉砕し、粗粉砕物を得た。
得られた粗粉砕物を、ホソカワミクロン社製ACM10を用いて、重量平均粒径100μmに中粉砕し、得られた中粉砕物を機械式粉砕機(ターボ工業社製ターボミルT250−RS型)を用いて微粉砕した。その後、得られた微粉砕物を、ホソカワミクロン社製ターボプレックス100ATPを用いて粗粒分級を行い、トナー粒子を得た。
このトナー粒子を、0.10質量部の非イオン性界面活性剤1を溶解させたメタノール/水の50:50混合溶媒1Lに分散して、表面処理したトナー粒子分散物を得た。
このトナー粒子分散液を加圧濾過器に注ぎ、さらにイオン交換水を5L加えた。その後0.4MPaの圧力下で個液分離をしたのち、45℃で流動層乾燥を行い、トナー粒子を得た。
このトナー粒子100質量部に対し、BET比表面積の値が300(m/g)の疎水化処理したシリカ1.0質量部とBET比表面積の値が50(m/g)の疎水化処理したシリカ0.5質量部とを撹拌混合してトナー22を得た。得られたトナー22について表3および表4に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
<画像評価>
本発明において、画像評価は、市販のカラーレーザープリンタ HP Color LaserJet 3525dn(HP社製)を一部改造して評価を行った。改造はプロセススピードを240mm/secに変更した。カートリッジには、上記トナー(200g)を充填した。この画像出力用カートリッジをシアンステーションに装着、その他にはダミーカートリッジを装着し、画像評価を実施した。
画像評価は高温高湿環境下(HH:30℃、80%RH)および低温低湿環境下(LL:15℃、10%RH)での各環境で印字率が1%の画像を連続して出力し、1000枚および15000枚出力した後に行った。
転写材は、LETTERサイズのXEROX 4024用紙(XEROX社製、75g/m)を用いた。
【0052】
<転写効率の評価>
15000枚出力後、48時間放置後にベタ画像を有する画像を出力した。測定装置は、「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)を用いた。
ベタ画像転写後の感光体上の転写残トナーをマイラーテープでテーピングして剥ぎ取った。その後、該テープとテーピングしていないテープをLETTERサイズのXEROX
4200用紙(XEROX社製、75g/m)に貼り付けた。該テープの反射率Ds(%)とテーピングせずに貼り付けたテープの反射率Dr(%)の差から、転写効率(%)(=Dr(%)−Ds(%))として算出した。フィルターは、イエローフィルターを用いた。A、B及びCは使用上問題とならないレベルであるが、Dは使用上問題となるレ
ベルであり、何らかのその他対策が必要である。
A:1.0%未満
B:1.0%以上2.0%未満
C:2.0%以上3.0%未満
D:3.0%以上
【0053】
<濃度安定性>
1000枚および15000枚出力後、20mm四方のべた黒画像が紙面の4隅と中央に印字されたサンプル画像を出力して、その5点の平均濃度を測定した。1000枚印字後の平均濃度D(1000)と15000枚印字後の平均濃度D(15000)の差(=D(15000)−D(1000))から下記基準により評価した。A、B及びCは使用上問題とならないレベルであるが、Dは使用上問題となるレベルであり、何らかのその他対策が必要である。
尚、画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
A:0.05未満
B:0.05以上0.10未満
C:0.10以上0.15未満
D:0.15以上
【0054】
〔実施例1〕
トナー1を用いて評価を行った。その結果、各項目において良好な結果が得られた。評価結果を表5に示す。
【0055】
〔実施例2乃至15〕
トナー2乃至15を用いて実施例1と同様にして評価を行った。いずれも実用上問題ない結果が得られた。トナー2乃至15の評価結果を表5に示す。
【0056】
〔比較例1乃至7〕
トナー16乃至22を用いて実施例1と同様にして評価を行った。トナー16及び17は、高温高湿環境下での転写効率が特に悪く実用上用いることができないレベルであった。また、トナー19は高温高湿環境下、トナー18、20乃至22は低温低湿下での濃度安定性が特に悪く実用上用いることができないレベルであった。トナー16乃至22の評価結果を表5に示す。
【0057】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系媒体中で製造されたトナー粒子と、無機微粉体とを少なくとも含有するトナーであって、
前記トナー粒子は、結着樹脂、着色剤及び非イオン性界面活性剤を少なくとも含有し、
前記結着樹脂は、チタン化合物を触媒として製造されたポリエステル樹脂を含み、
前記トナーからメタノールにより抽出される前記非イオン性界面活性剤の抽出量をA(ppm)とし、細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置を用いたトナーの粒子径分布から求められる理論比表面積をB(m/g)としたときに、前記AのBに対する比(A/B)が、5.0×10−5以上9.0×10−3(g/m)以下であり、
前記非イオン性界面活性剤は、アルキレングリコールのブロック共重合体を含有し、前記アルキレングリコールのブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定された数平均分子量が、1200以上40000以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記トナー中の、前記ポリエステル樹脂に由来するチタン元素の含有量が、30ppm以上3,000ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記アルキレングリコールのブロック共重合体は、下記構造式(1)で示される組成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
【化1】

[構造式中、a、b及びcは整数であって、a>0、b≧4、c>0、a+c≧4]
【請求項4】
前記構造式(1)で示されるアルキレングリコールのブロック共重合体は、下記構造式(2)で示されるポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物であって、下記構造式(2)で示されるポリプロピレングリコールの数平均分子量が、1000以上3600以下であることを特徴とする請求項3に記載のトナー
【化2】

[構造式中、bは整数であって、4≦b≦100]
【請求項5】
前記トナー粒子は、乳化凝集法により製造されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトナー。