説明

トポイソメラーゼ阻害剤とPARP阻害剤との組み合わせによるがんの治療

一態様において、本発明は、がん治療のためのトポイソメラーゼ阻害剤及びPARP阻害剤の組み合わせを含む組成物及びキットを提供する。別の態様において、本発明は、対象にトポイソメラーゼ阻害剤及びPARP阻害剤の組み合わせを投与することを含むがんの治療方法を提供する。特に、本発明は、ポリアデノシンジホスフェートリボースポリメラーゼ及びトポイソメラーゼを阻害することによって対象におけるがんを治療するための組成物及び方法を提供するだけでなくこのような組成物を投与する製剤及び方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、2007年12月7日(代理人整理番号第28825−747.101号)に出願された「Treatment of Cancer with Combinations of Topoisomerase Inhibitors and PARP Inhibitors」と題する米国仮出願第61/012,364号の利益を主張し、それは参照によりその全体として本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
がんは、一般大衆の健康にとって深刻な脅威である。悪性がん成長は、その独特な特徴のため、現代医療に対して重大な挑戦をもたらす。その特徴としては、悪性組織の無秩序な成長に至る制御不能の細胞増殖、局所的及び離れた組織でさえ浸潤する能力、細胞分化の制御欠如並びに多くの場合、有効な治療及び予防がないことが含まれる。
【0003】
がんは、あらゆる年齢ですべての器官のすべての組織において発症する可能性がある。がんの病因は十分に解明されていないが、しかし、例えば遺伝的感受性、染色体切断障害、ウイルス、環境要因及び免疫学的障害といったような機構は、すべての悪性細胞成長及び変換と関連がある。がんは、世界的には何百万もの人々に影響を及ぼす医学的状態の大きなカテゴリーを包含する。すべてのがんタイプは、異常細胞の制御不能な成長により始まる。
【0004】
肺、膀胱、前立腺、膵臓、子宮頸部、脳、胃、結腸直腸及び黒色腫を含む多くのタイプのがんがある。現在入手可能ないくつかの主な治療は、手術、放射線治療及び化学療法である。手術は、多くの場合、思い切った処置であり、深刻な結果を招くことがありうる。例えば、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん又は精巣がんの一部の治療では、不妊症及び/又は性機能障害が生じることがある。膵臓がんを治療する外科的処置では、膵臓を部分的に又は全体的に除去することがあり、患者は有意の危険性を負うことになりうる。前立腺がんの一部の外科的処置では、尿失禁及び不能症の危険性がある。肺がん患者の処置では、がん性肺組織に至るまで肋骨を切断してがん性肺組織を除去しなければならないため、かなりの術後痛があることが多い。さらに、肺がん及び別の肺疾患、例えば気腫又は慢性気管支炎の両方を有する患者は、典型的に、手術後に息切れが増える。
【0005】
放射線治療は、がん細胞を殺すという利点があるが、それは同時に非がん性組織にも損傷を与える。化学療法は、患者への種々の抗がん剤の投与を含むが、有害な副作用を伴うことが多い。
【0006】
世界的に毎年1000万人を超える人々ががんと診断されており、この数は、2020年までに毎年1500万の新しい症例に増加すると推定される。がんにより世界的に毎年600万人が死亡しており、すなわち死因の12%を占めている。がんを治療することができる方法は、依然として必要とされている。これらの方法は、ヒト及び他の哺乳動物におけるがんの予防及び治療に有用な薬学的組成物に対する基準を提供することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明は、トポイソメラーゼ阻害剤と式(Ia)
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、クロロ、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C3−C7)シクロアルキル、及びフェニルからなる群より独立して選ばれ、ここにおいて、R1、R2、R3、R4、及びR5の5つの置換基の少なくとも2つは常に水素であり、5つの置換基の少なくとも1つは常にニトロであり、そしてニトロに隣接して位置する少なくとも1つの置換基は常にヨードである]
のPARP阻害剤及びその薬学的に許容しうる塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、類似体、又はプロドラッグとの組み合わせの有効量を患者に投与することを含むがんの治療方法であって、その際、がんは乳がん、子宮がん、又は卵巣がんでない前記治療方法を提供する。
【0008】
方法のいくつかの実施態様において、PARP阻害剤は、式:
【化2】

である。
【0009】
方法のいくつかの実施態様において、PARP阻害剤は、
【化3】

【0010】
【化4】

6は、水素、アルキル(C1−C8)、アルコキシ(C1−C8)、イソキノリノン類、インドール類、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン、又はフェニルからなる群より選ばれる。
【0011】
【化5】

【0012】
【化6】

からなる群より選ばれる4−ヨード−3−ニトロベンズアミドの代謝物である。
【0013】
方法のいくつかの実施態様において、トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカン、イリノテカン、ルルトテカン、エキサテカン又はそれらの薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である。いくつかの実施態様において、トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカン又はその
薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である。いくつかの実施態様において、がんは、副腎皮質がん、肛門がん、再生不良性貧血、胆管がん、膀胱がん、骨がん、骨転移、CNS腫瘍、末梢CNSがん、キャッスルマン病、子宮頸がん、小児非ホジキンリンパ腫、結腸及び直腸がん、食道がん、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(Ewing's family of tumors)、眼がん、胆嚢がん、消化菅カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、ヘアリーセル白血病、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭及び下咽頭がん、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、小児白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、肝臓がん、肺がん、肺カルチノイド腫瘍、非ホジキンリンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、鼻腔及び鼻傍がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔及び口腔咽頭がん、骨肉腫、膵臓がん、陰茎がん、下垂体腫瘍、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(成人軟部組織がん)、黒色腫皮膚がん、非黒色腫皮膚がん、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、膣がん、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症並びにウイルス由来のがんから選ばれる。いくつかの実施態様において、がんは、白血病、前立腺がん、膀胱の移行上皮がん、膵臓がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、及び肺がんからなる群より選ばれる。
【0014】
いくつかの実施態様において、本発明の方法は、式(II):
【化7】

(式中、R1、R2、R3及びR4は、H、ハロゲン、場合により置換されたヒドロキシ、場合により置換されたアミン、場合により置換された低級アルキル、場合により置換されたフェニル、場合により置換されたC4−C10ヘテロアリール及び場合により置換されたC3−C8シクロアルキルからなる群より独立して選ばれる)のベンゾピロン化合物又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物若しくはプロドラッグの有効量を投与することをさらに含む。
【0015】
方法のいくつかの実施態様において、少なくとも1つの治療効果が得られ、前記少なくとも1つの治療効果は、腫瘍サイズの縮小、転移の減少、完全寛解(complete remission)、部分寛解(partial remissoin)、病理学的完全奏効(pathologic complete response)、又は安定(stable desease)である。いくつかの実施態様において、トポイソメラーゼ阻害剤を用いるがPARP阻害剤なしの治療と比較して臨床的有用率(clinical benefit rate)の改善(CBR=CR+PR+SD≧6ヵ月)が得られる。いくつかの実施態様において、臨床的有用率の改善は、少なくとも約60%である。いくつかの実施態様において、方法は、手術、放射線治療、化学療法、遺伝子治療、DNA治療、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、ウイルス性治療、RNA治療、免疫療法、ナノ療法又はそれらの組み合わせをさらに含む。いくつかの実施態様において、トポイソメラーゼ阻害剤は、静脈内注入剤として投与される。いくつかの実施態様において、4−ヨード−3−ニトロベンズアミド又はその代謝物は、経口的に、又は非経口注射剤若しくは注入剤、又は吸入剤として投与される。いくつかの実施態様において、PARP阻害剤は、トポイソメラーゼ阻害剤の投与前に、又は同時に、又は後に投与される。いくつかの実施態様において、PARP阻害剤及びトポイソメラーゼ阻害剤は、同じ製剤で投与される。いくつかの実施態様において、PARP阻害剤及びトポイソメラーゼ阻害剤は、別の製剤で投与される。
【0016】
別の態様において、本発明は、がん治療のために患者に投与する組成物を提供し、組成物は、トポイソメラーゼ阻害剤と式(Ia):
【化8】

[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、クロロ、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C3−C7)シクロアルキル、及びフェニルからなる群より独立して選ばれ、ここにおいて、5つのR1、R2、R3、R4及びR5置換基の少なくとも2つは、常に水素であり;5つの置換基の少なくとも1つは常にニトロであり、そしてニトロに隣接して位置する少なくとも1つの置換基は常にヨードである]のPARP阻害剤及びその薬学的に許容しうる塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、類似体又はプロドラッグとの組み合わせの有効量を含み;その際、がんは乳がん、子宮がん、又は卵巣がんでない。
【0017】
組成物のいくつかの実施態様において、PARP阻害剤は、式:
【化9】

である。
【0018】
組成物のいくつかの実施態様において、PARP阻害剤は、
【化10】

【0019】
【化11】

6は、水素、アルキル(C1−C8)、アルコキシ(C1−C8)、イソキノリノン類、インドール類、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン、又はフェニルからなる群より選ばれる。
【0020】
【化12】

【0021】
【化13】

からなる群より選ばれる4−ヨード−3−ニトロベンズアミドの代謝物である。
【0022】
組成物のいくつかの実施態様において、トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカン、イリノテカン、ルルトテカン、エキサテカン又はそれらの薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である。いくつかの実施態様において、トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカン又はその薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である。いくつかの実施態様において、がんは、白血病、前立腺がん、膀胱の移行上皮がん、膵臓がん、結腸直腸がん、子宮頸がん及び肺がんからなる群より選ばれる。いくつかの実施態様において、組成物は、式(II):
【化14】

(式中、R1、R2、R3及びR4は、H、ハロゲン、場合により置換されたヒドロキシ、場合により置換されたアミン、場合により置換された低級アルキル、場合により置換されたフェニル、場合により置換されたC4−C10ヘテロアリール及び場合により置換されたC3−C8シクロアルキルからなる群より独立して選ばれる)のベンゾピロン化合物又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物若しくはプロドラッグの有効量をさらに含む。
【0023】
いくつかの実施態様において、組成物は、単位投与形態で投与される。いくつかの実施態様において、単位投与形態は、経口又は非経口投与に適応させる。いくつかの実施態様において、組成物を投与すると、少なくとも1つの治療効果が得られ、前記少なくとも1つの治療効果は、腫瘍のサイズ縮小、転移の減少、完全寛解、部分寛解、病理学的完全奏効、又は安定である。いくつかの実施態様において、組成物を投与すると、トポイソメラーゼ阻害剤を用いるがPARP阻害剤なしの治療と比較して臨床的有用率(CBR=CR+PR+SD≧6ヵ月)の改善が得られる。いくつかの実施態様において、臨床的有用率の改善は、少なくとも約60%である。いくつかの実施態様において、組成物は、手術、放射線治療、化学療法、遺伝子治療、DNA治療、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、ウイルス性治療、RNA治療、免疫療法、ナノ療法又はそれらの組み合わせと併用して投与される。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、(a)式(Ia):
【化15】

[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、クロロ、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C3−C7)シクロアルキル、及びフェニルからなる群より独立して選ばれ、ここにおいて、5つのR1、R2、R3、R4、及びR5置換基の少なくとも2つは常に水素であり;5つの置換基の少なくとも1つは常にニトロであり、そしてニトロに隣接して位置する少なくとも1つの置換基は常にヨードである]のPARP阻害剤及びその薬学的に許容しうる塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、類似体又はプロドラッグ;及び(b)トポイソメラーゼ阻害剤;を含むがんの治療のためのキットを提供し、その際、がんは乳がん、子宮がん、又は卵巣がんでない。
【0025】
キットのいくつかの実施態様において、PARP阻害剤は、式:
【化16】

である。
【0026】
キットのいくつかの実施態様において、PARP阻害剤は、
【化17】

6は、水素、アルキル(C1−C8)、アルコキシ(C1−C8)、イソキノリノン類、インドール類、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン、又はフェニルからなる群より選ばれる。
【0027】
【化18】

【0028】
【化19】

からなる群より選ばれる4−ヨード−3−ニトロベンズアミドの代謝物である。
【0029】
キットのいくつかの実施態様において、トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカン、イリノテカン、ルルトテカン、エキサテカン又はそれらの薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である。いくつかの実施態様において、トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカン又はその薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である。いくつかの実施態様において、がんは、白血病、前立腺がん、膀胱の移行上皮がん、膵臓がん、結腸直腸がん、子宮頸がん及び肺がんからなる群より選ばれる。いくつかの実施態様において、キットは、式(II):
【化20】

(式中、R1、R2、R3及びR4は、H、ハロゲン、場合により置換されたヒドロキシ、場合により置換されたアミン、場合により置換された低級アルキル、場合により置換されたフェニル、場合により置換されたC4−C10ヘテロアリール及び場合により置換されたC3−C8シクロアルキルからなる群より独立して選ばれる)のベンゾピロン化合物又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物若しくはプロドラッグの有効量をさらに含む。
【0030】
いくつかの実施態様において、キットは、PARP阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤又は両方を投与するための説明書をさらに含む。キットのいくつかの実施態様において、PARP阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、又は両方は、単位投与形態中にある。
【0031】
定義
ニトロベンズアミド化合物は、式(Ia)
【化21】

[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C3−C7)シクロアルキル及びフェニルからなる群より独立して選ばれ、ここにおいて、5つのR1、R2、R3、R4、及びR5置換基の少なくとも2つは常に水素であり;5つの置換基の少なくとも1つは常にニトロであり、そしてニトロに隣接して位置する少なくとも1つの置換基は常にヨードである]の化合物及びその薬学的に許容しうる塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、類似体、又はプロドラッグを意味する。R1、R2、R3、R4、及びR5は、ハライド、例えばクロロ、フルオロ、又はブロモであることもできる。
【0032】
「手術」は、治癒上、治効上、又は診断上の効果をもたらすヒト又は他の哺乳動物の体における手又は機器を用いた手による方法論的行為を含むあらゆる治療上又は診断上の処置を意味する。
【0033】
「放射線治療」は、X線、ガンマ線、及び中性子線を含むがこれらに制限されない高エネルギー放射線に患者を曝露することを意味する。このタイプの治療には、外照射療法(external-beam therapy)、内照射療法(internal radiation therapy)、組織内照射(implant radiation)、近接照射療法、全身放射線療法、及び放射線療法が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0034】
「化学療法」は、静脈内、経口、筋肉内、腹腔内、膀胱内、皮下、経皮、口腔、若しくは吸入を含む種々の方法によって又は坐剤の形態で1つ又はそれ以上の抗がん剤、例えば、抗腫瘍性化学療法剤、化学予防剤、及び/又は他の薬剤をがん患者に投与することを意味する。化学療法は、大きな腫瘍を縮小する手術の前、それを除去する外科的処置の前、手術又は放射線治療の後に、体に残っているすべてのがん細胞の成長を防ぐために施すことができる。
【0035】
用語「有効量」又は「薬学的に有効量」は、所望の生物学的、治療的及び/又は予防的結果を得るために十分な薬剤の量のことである。その結果は、疾患の徴候、症状若しくは原因の縮小及び/又は緩和、又は生体系の他のなんらかの望ましい変化であることができる。例えば、治療上の使用の「有効量」は、疾患において臨床的に有意な縮小を得るために必要な本明細書に記載されたニトロベンズアミド化合物それ自体又は本明細書のニトロベンズアミド化合物を含む組成物の量である。あらゆる個々の場合における適切な有効量は、常用実験を用いて当業者によって決定することができる。
【0036】
「薬学的に許容しうる」又は「薬理学的に許容しうる」とは、生物学的に又は他の点で望ましい物質、すなわち、なんら望ましくない生物学的効果を生じることなく又はそれを含む組成物のあらゆる成分と有害なやり方で相互作用することなく個体に投与することができる物質を意味する。
【0037】
用語「治療」及び本明細書に使用されるその文法的に同等のものは、治療上の利益及び/又は予防上の利益を達成することを含む。治療上の利益とは、治療する原因となる障害の根絶又は改善を意味する。例えば、がん患者では、治療上の利益には、原因となるがんの根絶又は改善が含まれる。また、治療上の利益は、患者が原因となる障害でなお苦しむことがありうる事実にも関わらず、患者において改善が観察されるような、原因となる障害と関連する1つ又はそれ以上の生理学的症状の根絶又は改善により達成される。予防上の利益については、本発明の方法は、状態の診断が行われていない場合であっても、がんを発症する危険性のある患者に、又はこのような状態の生理学的症状の1つ又はそれ以上を報告している患者に本発明の組成物を投与することで実施することができる。
【0038】
ニトロベンズアミド化合物
本発明において有用な化合物は、式(Ia)
【化22】

[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C3−C7)シクロアルキル及びフェニルからなる群より独立して選ばれ、ここにおいて、5つのR1、R2、R3、R4、及びR5置換基の少なくとも2つは常に水素であり、5つの置換基の少なくとも1つは常にニトロであり、そしてニトロに隣接して位置する少なくとも1つの置換基は常にヨードである]の化合物及びその薬学的に許容しうる塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、類似体、又はプロドラッグである。また、R1、R2、R3、R4、及びR5は、ハライド、例えばクロロ、フルオロ又はブロモであることもできる。
【0039】
式Iaの好ましい化合物は、
【化23】

である。
【0040】
本発明は、末梢血における急性前骨髄球性白血病を含む白血病、肺がん、膀胱がん、大腸がん、直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、及び子宮頸がん、並びに本明細書に記載された他のがんタイプ(米国特許第5,464,871号、米国特許第5,670,518号及び米国特許第 6,004,978号は、それらの全体で参照により本明細書に組み込まれている)を治療するための前記ニトロベンズアミド化合物の使用を提供する。また、本発明は、グリベック(イマニチブメシラート(Imanitib Mesylate))抵抗性の患者集団を治療するための前記ニトロベンズアミド化合物の使用を提供する。グリベックは、チロシンキナーゼ阻害剤である。
【0041】
いくつかの好ましい実施態様において、本発明のニトロベンズアミド化合物は、子宮頸がんの治療に用いられる。別の実施態様において、本発明のニトロベンズアミド化合物は、小細胞肺がんを含む肺がんの治療に用いられる。別の実施態様において、本発明のニトロベンズアミド化合物は、結腸及び直腸がんの治療に用いられる。いくつかの好ましい実施態様において、本発明のニトロベンズアミド化合物は、膀胱及び前立腺がんの治療に用いられる。いくつかの好ましい実施態様において、本発明のニトロベンズアミド化合物は、肝臓及び膵臓がんの治療に用いられる。いくつかの好ましい実施態様において、本発明のニトロベンズアミド化合物は、白血病、子宮頸部、神経膠腫及び黒色腫の治療に用いられる。
【0042】
なおさらなる好ましい実施態様において、本発明のニトロベンズアミド化合物は、幹細胞から誘導されたがんの治療に用いられる。本明細書に記載された悪性腫瘍において、腫瘍細胞−『がん幹細胞』の一部は、腫瘍の広範な増殖及び転移の能力を有する。幹細胞の運命及び成長における変化は、腫瘍形成における役割を果たすことがある。上皮幹細胞は、少なくとも生体の寿命と同じ長さの寿命を有しており、そのため、多数の遺伝学的攻撃に影響をうけ、これらが積み重なって腫瘍形成が生じることがあると考えられる。多くのがん、例えば皮膚及び結腸のものは、一生を通して常に細胞で補充される組織中に生じる。しかし、疾患に至る重要な突然変異は、細胞が指数関数的に分裂しているとき、組織の形成期間中に生じる可能性が高い。
【0043】
それぞれの組織において現在、実質的に同定されている幹細胞区分は、生体の一生を通して自己複製及び持続性の独占的特権を与えられたまれな細胞の部分集合として定義することができ、これは、組織のバルクを構成するが、通常、有糸分裂後の挙動及び短寿命を特徴とする分化した細胞とは対照的である。一部の突然変異では細胞が必然的にがんになるという事実は、多くの組織において突然変異は幹細胞に蓄積しうることを示唆している。がん幹細胞が自己複製するにつれ、それは、自己複製している正常な幹細胞又は幹細胞の特有の性質を獲得したさらに分化した細胞のいずれからから誘導されうることになる。一貫して、腫瘍は、「分化した」細胞、及び「がん幹細胞」の部分集合の両方を含む組織とみなすことができ、それは腫瘍塊を保持しており、二次腫瘍(転移)の形成の原因となる可能性がある。従って、本発明のニトロベンズアミドは、幹細胞から誘導された標的がんに用いることができる。
【0044】
いくつかの実施態様において、本発明は、白血病、肺がん、膀胱がん、大腸がん、直腸がん、前立腺がん、膵臓がん及び子宮頸がん、並びに本明細書に記載された他のがんタイプ(米国特許第5,464,871号、米国特許第5,670,518号及び米国特許第6,004,978号は、それらの全体で参照により本明細書に組み込まれている)を含むがこれらに制限されないがんの治療のためのトポイソメラーゼ阻害剤と組み合わせた前記ニトロベンズアミド化合物の使用を提供する。いくつかの実施態様において、本発明を実施するためには、米国特許第7,405,227号に記載された組成物及び方法を用いることができる。すべての特許及び特許出願は、それらの全体で参照により本明細書に組み込まれている。
【0045】
いくつかの好ましい実施態様において、ニトロベンズアミド化合物は、トポイソメラーゼ阻害剤と組み合わせて子宮頸がんの治療に用いられる。別の実施態様において、ニトロベンズアミド化合物は、トポイソメラーゼ阻害剤と組み合わせて小細胞肺がんを含む肺がんの治療に用いられる。別の実施態様において、ニトロベンズアミド化合物は、トポイソメラーゼ阻害剤と組み合わせて結腸及び直腸がんの治療に用いられる。いくつかの好ましい実施態様において、ニトロベンズアミド化合物は、トポイソメラーゼ阻害剤と組み合わせて膀胱及び前立腺がんの治療に用いられる。いくつかの好ましい実施態様において、ニトロベンズアミド化合物は、トポイソメラーゼ阻害剤と組み合わせて肝臓及び膵臓がんの治療に用いられる。いくつかの好ましい実施態様において、ニトロベンズアミド化合物は、トポイソメラーゼ阻害剤と組み合わせて白血病、子宮頸部、神経膠腫及び黒色腫の治療に用いられる。なおさらに好ましい実施態様において、ニトロベンズアミド化合物は、トポイソメラーゼ阻害剤と組み合わせて幹細胞から誘導されたがんの治療に用いられる。いくつかの実施態様において、本発明のニトロベンズアミド化合物は、4−ヨード−3−ニトロベンズアミド(BA)である。
【0046】
本発明は、ヒト腫瘍及び正常な一次細胞における、そしてまたマウスにおける4−ヨード−3−ニトロベンズアミド(BA)の非臨床薬理学を記載する。BAは、in vitroで結腸、前立腺、子宮頸部、肺、黒色腫、リンパ腫及び白血病を含むさまざまなヒト腫瘍細胞の増殖を阻害する。BAは、in vivoでトポイソメラーゼ阻害剤、例えばトポテカン及びイリノテカンと組み合わせて発がんの動物モデルにおいて評価される。BAの1日1回又は週に2回の投与は、ヌード及びSCIDマウスの両方のヒト結腸、肺、及び子宮頚がん異種移植モデルにおいて腫瘍成長を阻害し、そして毎日又は週に2回薬物に暴露された動物の生存率に良い影響を及ぼす。
【0047】
ニトロベンズアミド化合物は、悪性がん細胞において選択的細胞毒性を有するが、非悪性がん細胞においては有しないことが報告されている。Rice et at., Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 89:7703-7707 (1992)参照。一実施態様において、本発明の方法で利用されるニトロベンズアミド化合物は、非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞に対してより選択毒性を示すことができる。
【0048】
BSOをがん細胞に併用投与する場合、ニトロベンズアミド及びニトロソベンズアミド化合物の腫瘍原性(tumorgenicity)が強化されることが報告されている。Mendeleyev et al., Biochemical Pharmacol. 50(5): 705-714 (1995)参照。ブチオニンスルホキシイミン(BSO)は、化学療法に対する細胞抵抗性の部分的な原因となるグルタチオンの生合成における鍵酵素、ガンマ−グルタミルシステイン合成酵素を阻害する。Chen et al., Chem Biol Interact. Apr 24;111-112: 263-75 (1998)参照。また、本発明は、ニトロベンズアミド及び/又はベンゾピロン化合物をBSOと組み合わせた投与を含む、がんの治療方法を提供する。
【0049】
BSOに加えて、ガンマ−グルタミルシステイン合成酵素の他の阻害剤をニトロベンズアミド及び/又はベンゾピロン化合物と組み合わせて用いることができる。BSOの他の適切な類似体には、プロプロオチオニンスルホキシイミン、メチオニンスルホキシイミン、エチオニンスルホキシイミン、メチルブチオニンスルホキシイミン、γ−グルタミル−α−アミノブチラート及びγ−グルタミルシステインが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0050】
ベンゾピロン化合物
いくつかの実施態様において、ベンズアミド化合物は、式IIのベンゾピロン化合物と組み合わせて投与される。式IIのベンゾピロン化合物は、
【化24】

(式中、R1、R2、R3及びR4は、H、ハロゲン、場合により置換されたヒドロキシ、場合により置換されたアミン、場合により置換された低級アルキル、場合により置換されたフェニル、場合により置換されたC4−C10ヘテロアリール及び場合により置換されたC3−C8シクロアルキルからなる群より独立して選ばれる)又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、若しくはプロドラッグ(米国特許第5,484,951号は、その全体で参照により本明細書に組み込まれる)である。
【0051】
好ましい実施態様において、本発明は、以下の式II
【化25】

のベンゾピロン化合物に関する。
【0052】
ニトロベンズアミド化合物の機構
1つの作用機構によって制限しようとするものではないが、本明細書に記載された化合物は、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ酵素の調節を介して抗がん性を有すると考えられる。薬物の作用機構は、核酵素ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP-1)対するリガンドとして作用する能力と関係がある。前出、Mendeleyev等(1995)参照。PARP−1は、核中で発現され、そしてβ−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)からニコチンアミド及びポリ−ADP−リボース(PAR)への転換に触媒作用を及ぼす。恒常的状態でのPARP−1の役割は、DNA転写及び修復に限られているようである。しかしながら、細胞のストレスによってDNA損傷が生じたとき、PARP−1活性は劇的に高まり、それはゲノムの保全に必要であると考えられる。Shall et at., Mutat Res. Jun 30;460(1): 1-15 (2000)。
【0053】
PARP−1の機能の1つは、バイオポリマー(ポリ(ADP−リボース))を合成することである。ポリ(ADP−リボース)及びPARP−1は、いずれもDNA修復、アポトーシス、ゲノムの安定性の維持及び発がんに関連がある。Masutani et al., Genes, Chromosomes, and Cancer 38:339-348 (2003)参照。PARP−1は、DNA修復、特に塩基除去修復(BER)において役割を果たしている。BERは、哺乳動物細胞における単一塩基DNA切断の保護機構である。PARP−1は、大きな親和性を有するその亜鉛フィンガードメインを通してDNA断片の末端に結合し、それによってDNA損傷センサとして作用する。Gradwohl et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2990-2994 (1990);
Murcia et al., Trends Biochem Sci 19: 172-176 (1994)。DNAにおける切断は、PARP−1による切断部位への結合反応を誘発する。次いで、PARP−1は、その触媒活性を数百倍高め(See Simonin et al., J Biol Chem 278: 13454-13461 (1993))、そしてポリADP−リボシル化それ自体(Desmarais et al., Biochim Biophys Acta 1078: 179-186 (1991))及びBERタンパク質、例えばDNA−PKcs及び分子的骨格タンパク質XRCC−1の変換を開始する。Ruscetti et al., J. Biol. Chem. Jun 5;273(23): 14461-14467 (1998) 及び Masson et al., Mol Cell Biol. Jun;18(6): 3563-71 (1998)参照。BERタンパク質は、DNA損傷部位に急速に補充される。El-Kaminsy et al., Nucleic Acid Res. 31(19): 5526-5533 (2003); Okano et al., Mol Cell Biol. 23(11): 3974-3981 (2003)。PARP−1は、DNAから切断部位を分離されるが、それはDNA修復イベントの近くに残る。
【0054】
PARP分子の活性を阻害することは、これらの分子の活性を低下させることを含む。用語「阻害する」及びその文法上の活用、例えば「阻害性」は、PARP活性における完全な低下を必要とするわけではない。このような低下は、阻害作用がない場合、例えば、本発明のニトロベンズアミド化合物のような阻害剤がない場合の分子活性の好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、そしてより好ましくは少なくとも約95%である。最も好ましくは、その用語は、活性における観察可能な又は測定可能な低下のことである。治療計画では、阻害は、治療する状態において治療上及び/又は予防上の利益を生じるのに十分であることが好ましい。成句「阻害しない」及びその文法上の活用は、活性における効果の完全な欠如を必要としない。例えば、それは、本発明のニトロベンズアミド化合物のような阻害剤の存在下でPARP活性における低下が約20%未満、約10%未満、そして好ましくは約5%未満である状態のことである。
【0055】
BA代謝物:
本明細書に使用されるように、「BA」は、4−ヨード−3−ニトロベンズアミドを意味する。「BNO」は、4−ヨード−3−ニトロソベンズアミドを意味する。「BNHOH」は、4−ヨード−3−ヒドロキシアミノベンズアミドを意味する。
【0056】
本発明に有用な前駆体化合物は、式(Ia)
【化26】

[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C3−C7)シクロアルキル、及びフェニルからなる群より独立して選ばれ、ここにおいて、5つのR1、R2、R3、R4、及びR5置換基の少なくとも2つは常に水素であり、5つの置換基の少なくとも1つは常にニトロであり、そしてニトロに隣接して位置する少なくとも1つの置換基は常にヨードである]の化合物及び薬学的に許容しうる塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、類似体、又はプロドラッグである。また、R1、R2、R3、R4、及びR5は、ハライド、例えばクロロ、フルオロ又はブロモ置換基であることもできる。
【0057】
式Iaの好ましい前駆体化合物は:
【化27】

である。
【0058】
本発明における有用ないくつかの代謝物は、式(IIa):
【化28】

[式中、(1)R1、R2、R3、R4、及びR5置換基の少なくとも1つは、常に硫黄含有置換基であり、そして残りの置換基R1、R2、R3、R4、及びR5は、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、クロロ、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C3−C7)シクロアルキル、及びフェニルからなる群より独立して選ばれ、ここにおいて、5つのR1、R2、R3、R4、及びR5置換基の少なくとも2つは常に水素であり;又は(2)R1、R2、R3、R4、及びR5置換基の少なくとも1つは、硫黄含有置換基でなく、そして5つの置換基R1、R2、R3、R4、及びR5の少なくとも1つは、常にヨードであり、そしてここにおいて、前記ヨードは、ニトロ、ニトロソ、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシ又はアミノ基のいずれかであるR1、R2、R3、R4、又はR5基に常に隣接している;のいずれかである]の化合物及びその薬学的に許容しうる塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、類似体、又はプロドラッグである。いくつかの実施態様において、(2)の化合物は、ヨード基が、ニトロソ、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシ又はアミノ基であるR1、R2、R3、R4又はR5基に常に隣接するようになっている。いくつかの実施態様において、(2)の化合物は、ヨード基が、ニトロソ、ヒドロキシアミノ又はアミノ基であるR1、R2、R3、R4又はR5基に常に隣接するようになっている。
【0059】
以下の組成物は、それぞれ化学式:
【化29】

6は、水素、アルキル(C1−C8)、アルコキシ(C1−C8)、イソキノリノン類、インドール類、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン、又はフェニルからなる群より選ばれる。
【0060】
【化30】

【0061】
【化31】

によって表される好ましい代謝物化合物である。
【0062】
いずれか1つの特定の機構に制限されるわけではないが、以下に、ニトロレダクターゼ又はグルタチオン抱合機構を経たMS292代謝の例を提供する:
【化32】

【0063】
BAグルタチオン抱合及び代謝:
【化33】

【0064】
ニトロベンズアミド代謝物化合物は、悪性がん細胞において選択的細胞毒性を有するが、非悪性がん細胞においては有しないことが報告されている。Rice et at., Proc. Natl.
Acad. Sci. USA 89:7703-7707 (1992)参照、それは全体で本明細書に組み込まれている。一実施態様において、本発明の方法において利用されるニトロベンズアミド代謝物化合物は、非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞に対してより選択的毒性を示しうる。従って、本発明による代謝物は、このような治療を必要とする患者に少なくとも1つのトポイソメラーゼ阻害剤を用いる化学療法と併せて投与してもよい。このような代謝物の投与量範囲は、約0.0004〜約0.5mmol/kg(患者体重1キログラム当たりの代謝物のミリモル)の範囲であってもよく、その投与量は、モル濃度基準で、BA約0.1〜約100mg/kgの範囲に相当する。代謝物の投与量の他の有効な範囲は、0.0024〜0.5mmol/kg、そして0.0048〜0.25mmol/kgである。このような用量は、毎日、1日おきに、週に2回、毎週、隔週、毎月又は他の適切なスケジュールで投与してもよい。BAに関しては代謝物と本質的に同じ投与方法、例えば経口、i.v.、i.p.、などを使用してもよい。
【0065】
トポイソメラーゼ阻害剤
トポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼ酵素(トポイソメラーゼI及びII)の作用を妨げるために設計された薬剤であり、これは、正常な細胞周期におけるDNA鎖のリン酸ジエステル骨格鎖の切断及び再結合に触媒作用を及ぼすことによってDNA構造における変化を制御する酵素である。トポイソメラーゼは、がん化学療法治療の一般的な標的となっている。トポイソメラーゼ阻害剤は、細胞周期のライゲーション工程(ligation
step)を阻止し、一本及び二本鎖を破壊してゲノムの完全性を損なうと考えられる。こ
れらの破壊により、続いてアポトーシス及び細胞死に至る。トポイソメラーゼ阻害剤は、多くの場合、どのタイプの酵素を阻害するにより分類される。真核細胞中に最も多く見出されるトポイソメラーゼタイプ、トポイソメラーゼIは、トポテカン、イリノテカン、ルルトテカン及びエキサテカンによる標的となり、これらはそれぞれ商業的に入手可能である。トポテカンは、商品名ハイカムチン(R)(Hycamtim (R))の下でグラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)から入手可能である。イリノテカンは、商品名カンプトサール(R)(Camptosar (R))の下でファイザー(Pfizer)から入手可能である。ルルトテカンは、ギリアド・サイエンシズ社(Gilead Sciences Inc.)からリポソーム製剤として入手することもできる。トポイソメラーゼ阻害剤は、有効量で投与することができる。いくつかの実施態様において、ヒト治療の有効量は、約0.01〜約10mg/m2/日の範囲である。治療は、毎日、隔週、週2回、毎週、又は毎月を基準にして繰り返すことができる。いくつかの実施態様において、治療期間の後に、1日から数日まで、又は1週間から数週間までの休止期間があってもよい。PARP−1阻害剤との組み合わせにおいて、PARP−1阻害剤及びトポイソメラーゼ阻害剤は、同じ日に投薬してもよいし、又は別々の日に投薬してもよい。
【0066】
II型トポイソメラーゼを標的とする化合物は、主に2つの種類:トポイソメラーゼ−DNA複合体を標的とするトポイソメラーゼ毒、及び触媒による代謝回転を中断するトポイソメラーゼ阻害剤に分類される。トポII毒には、真核性II型トポイソメラーゼ阻害剤(トポII):アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド及びドキソルビシンが含まれるが、これらに制限されるわけではない。これらの薬物は、抗がん治療剤である。トポイソメラーゼ阻害剤の例としては、ICRF−193が含まれる。これらの阻害剤は、トポIIのN末端のATPアーゼ領域を標的とし、トポIIを代謝回転から回避させる。ATPアーゼドメインに結合したこの化合物の構造は、クラッセン(Classen)(Proceedings of the National Academy of Science, 2004)によって解明されており、薬物は非競合的やり方で結合し、ATPアーゼドメインの二量化を終了させることを示している。
【0067】
イリノテカン
イリノテカンは、トポイソメラーゼ1阻害剤である。化学的には、それは天然アルカロイドカンプトセシンの半合成類似体である。その主な使用は、特に他の化学療法剤と組み合わせた大腸がんである。これは、注入投与の5−フルオロウラシル、ロイコボリン及びイリノテカンからなるレジメンFOLFIRIに含まれる。
イリノテカンは、S−38、トポイソメラーゼIの阻害剤に加水分解によって活性化される。次いで、これは、ウリジン二リン酸グルクロノシルトランスフェラーゼ1A1(UGT1A1)によるグルクロン酸抱合によって不活性化される。活性代謝物SN−38によるトポイソメラーゼIの阻害は、最終的にDNA複製及び転写の両方の阻害に至る。
【0068】
トポテカン:
塩酸トポテカン(商品名ハイカムチン)は、トポイソメラーゼ1の阻害剤である。塩酸トポテカンは、より早期の化学療法でがんが良くならなかった患者において卵巣がん及び小細胞肺がんを治療するために食品医薬品局(FDA)によって承認されている。がんが良くならなかった又は再発した一部の女性において子宮頸がんを治療するためにシスプラチン、白金化合物と共に使用することが承認されている。塩酸トポテカンは、がんの他のタイプの治療においても研究されている。トポテカンは、静脈注射により又は経口的に投与することができる。
【0069】
臨床的有効性:
臨床的有効性(clinical efficacy)は、当分野で知られているあらゆる方法で測定することができる。いくつかの実施態様において、トポイソメラーゼ阻害剤及びPARP−1阻害剤(例えばトポテカン及びBA)の組み合わせの臨床的有効性は、臨床的有用率(clinical benefit rate)(CBR)を測定することで判定することができる。臨床的有用率は、治療の終わりから少なくとも6ヵ月の時点で完全寛解(CR)の患者、部分寛解(PR)の患者数及び安定(SD)にいる患者数のパーセンテージの合計を測定することにより評価される。この式の短縮形は、CBR=CR+PR+SD≧6ヵ月である。トポイソメラーゼ阻害剤及びPARP−1阻害剤(例えばトポテカン及びBA;CBRT-B)を用いる併用療法についてのCBRは、トポテカン単独による治療のもの(CBRT)と比較することができる。いくつかの実施態様において、CBRT-Bは、少なくとも約40%、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%である。
【0070】
本明細書に記載されたいくつかの実施態様において、方法は、がんがPARPモジュレーターによって治療できることを予め決定することを含む。いくつかのそのような方法は、患者の腫瘍サンプル中のPARPレベルを同定し、サンプル中のPARP発現レベルが所定の値より大きいかどうかを測定し、そしてPARP発現が前記所定の値より大きい場合、トポイソメラーゼ阻害剤(例えばトポテカン又はイリノテカン)及びBAのようなPARP阻害剤の組み合わせを用いて患者を治療することを含む。
【0071】
PARP阻害剤は、このDNA修復形態が存在しない細胞を殺し、そのためBRCA欠損した腫瘍細胞及び他の同様の腫瘍細胞を殺すのに有効である。正常細胞は、このDNA修復機構をなお有しうるため薬物によって影響を受けることはない。この治療は、BRCA欠損したがんのように作用する他の型のがんにも適用しうる。いくつかの実施態様において、PARP阻害剤を用いる治療の利点は、それが標的療法であるということであり、腫瘍細胞が殺されるのに対して正常細胞は影響を受けない。これは、PARP阻害剤がいくつかの腫瘍細胞の特異的な遺伝学的構成を活用するためである。
【0072】
BRCA遺伝子が欠損した患者は、PARPレベルが上方制御されている。PARP上方制御は、他の欠陥のあるDNA−修復経路及び認識されてないBRCA様遺伝子欠損の指標となりうる。PARP−1遺伝子発現の評価は、PARP阻害剤に対する腫瘍感受性の指標である。PARPが上方制御される場合、PARP阻害剤によって治療できるBRCA欠損患者を特定することができる。さらに、このようなBRCA欠損患者はPARP阻害剤で治療することができる。
【0073】
いくつかの実施態様において、サンプルは、がんであると疑われる病変を有する患者から集められる。このようなサンプルは、あらゆる入手可能な生物学的組織であってもよいが、ほとんどの場合、サンプルは、腹腔鏡検査又は観血手術によって得たかどうかに関係なく、疑わしい病変の一部である。次いで、PARP発現を分析することができ、そしてPARP発現が所定のレベルより上にある(例えば、正常組織と比較して上方制御されている)場合、トポイソメラーゼ阻害剤と組み合わせてPARP−1阻害剤で患者を治療することができる。
【0074】
いくつかの実施態様において、相同組換え欠損である腫瘍は、PARP発現のレベルを評価することによって同定される。PARPの上方制御が観察される場合、このような腫瘍は、PARP阻害剤で治療することができる。別の実施態様は、方法は、PARP発現のレベルを評価し、そして過剰発現は観察された場合、がんをトポイソメラーゼ阻害剤と組み合わせてPARP阻害剤で治療することができることを含む、相同組換え欠損がんの治療方法である。
【0075】
BRCA1又はBRCA2遺伝子のいずれかに欠損を有する腫瘍は、腫瘍細胞が損傷を受けたDNAを修復する特異的な機構を失ったために生じる。BRCA1及びBRCA2は、相同組換えによるDNA二本鎖切断修復にとって重要であり、そしてこれらの遺伝子における突然変異は、多くのがんの素因となる。PARPは、DNA一本鎖切断の修復における経路、塩基除去修復に関与している。BRCA1又はBRCA2機能障害は、細胞をPARP酵素活性の阻害に対して過敏にし、染色体不安定性、細胞周期停止及びその後のアポトーシスが生じる。
【0076】
PARP阻害剤は、このDNA修復形態が存在しない細胞を殺し、そのためBRCA欠損した腫瘍細胞及び他の同様の腫瘍細胞を殺すのに有効である。正常細胞は、このDNA修復機構をなお有しうるため薬物によって影響を受けることはない。いくつかの実施態様において、PARP阻害剤を用いる治療の利点は、それが標的療法であるということであり、腫瘍細胞が殺されるのに対して正常細胞は影響を受けない。これは、PARP阻害剤がいくつかの腫瘍細胞の特異的な遺伝学的構成を活用するためである。理論によって拘束されることは望まないが、PARP阻害剤及びトポイソメラーゼ阻害剤を組み合わせた治療は、より低い、従って毒性の少ない用量でトポイソメラーゼ阻害剤の有効な投薬が可能となりうることが考えられる。いくつかの実施態様において、PARP阻害剤と共に用いられるトポイソメラーゼ阻害剤の有効量は、単独で用いられるトポイソメラーゼ阻害剤の有効量の約10〜約90%、約10〜約80%、約10〜約60%、約10〜約50%、約90%未満、約80%未満、約60%未満、約50%未満又は約40%未満であってもよい。
【0077】
サンプル収集、調製及び分離
生体サンプルは、体液サンプル又は組織サンプルを含む患者のさまざまな供給源から集めることができる。集めたサンプルは、ヒトの正常及び腫瘍サンプル、乳頭アスピラント(nipple aspirants)であることができる。サンプルは、長期間にわたって繰り返し(例えば、およそ1日1回、週に1回、月に1回、半年毎、又は毎年)個体から集めることができる。一定期間にわたって個体から多くのサンプルを得ることにより、より早期の検出から結果を確認すること及び/又は例えば、疾患進行、薬物治療、などの結果として生物学的パターンにおける変性を同定することに用いることができる。
【0078】
サンプルの調製及び分離は、集めたサンプルのタイプ及び/又はPARPの分析に応じていずれかの方法で行うことができる。このような方法は、ほんの一例として、濃縮、希釈、pHの調整、多量のポリペプチド(例えばアルブミン、ガンマグロブリン及びトランスフェリン、など)の除去、保存剤及びキャリブラント(calibrants)の添加、プロテアーゼ阻害剤の添加、変性剤の添加、サンプルの脱塩、サンプルタンパク質の濃縮、脂質の抽出及び精製を含む。
【0079】
また、サンプル調製では、非共有結合的錯体において他のタンパク質(例えばキャリアタンパク質)に結合した分子を単離することもできる。この方法は、特異的なキャリアタンパク質(例えばアルブミン)に結合した分子を単離することができ、又は、例えば、酸を用いたタンパク質変性によりすべてのキャリアタンパク質から結合した分子を解放し、続いてキャリアタンパク質を除去するといったようなより一般的な方法を用いることができる。
【0080】
サンプルからの望ましくないタンパク質(例えば多量の、情報価値がない、又は検出不可能なタンパク質)の除去は、高親和性試薬、高分子量フィルター、超遠心分離及び/又は電気透析を用いて実施することができる。高親和性試薬には、多量のタンパク質に選択的に結合する抗体又は他の試薬(例えばアプタマー)が含まれる。また、サンプル調製は、イオン交換クロマトグラフィ、金属イオンアフィニティクロマトグラフィ、ゲル濾過、疎水性クロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、吸着クロマトグラフィ、等電点電気泳動及び関連技術を含むことができる。分子量フィルターは、サイズ及び分子量に基づいて分子を分離する膜を含む。このようなフィルターは、さらに逆浸透、ナノ濾過、限外濾過及び精密濾過で使用してもよい。
【0081】
超遠心分離は、サンプルから望ましくないポリペプチドを除去するための方法である。超遠心分離では、光学系を用いて粒子の沈降(又はその欠如)をモニターしながら約15,000〜60,000rpmでサンプルを遠心分離する。電気透析は、電位勾配の影響下で一方の溶液から他方へ半透膜を通してイオンを輸送する方法において電気膜(electromembrane)又は半透膜を用いる方法である。電気透析に用いる膜は、陽性又は陰性電荷を有するイオンを選択的に輸送し、反対電荷のイオンを拒絶し、又はサイズ及び電荷に基づいて化学種が半透膜を通して移動するのを可能にする能力を有することができるため、電気透析は、電解質の濃縮、除去又は分離に有用である。
【0082】
本発明における分離及び精製は、キャピラリー電気泳動(例えば、キャピラリー中又はオンチップ)又はクロマトグラフィ(例えば、キャピラリー、カラム中又はチップ上)といったような当分野で知られているあらゆる方法を含むことができる。電気泳動は、電界の影響下でイオン性分子を分離するために用いることができる方法である。電気泳動は、ゲル、キャピラリー中、又はチップ上のマイクロチャネル中で実施することができる。電気泳動に用いるゲルの例としては、デンプン、アクリルアミド、ポリエチレンオキシド、アガロース、又はそれらの組み合わせが含まれる。ゲルは、その架橋性、洗浄剤又は変性剤の添加、酵素又は抗体(アフィニティー電気泳動)又は基質(ザイモグラフィ)の固定化及びpH勾配の組込みによって改良することができる。電気泳動に用いるキャピラリーの例としては、エレクトロスプレーと適合するキャピラリーが含まれる。
【0083】
キャピラリー電気泳動法(CE)は、錯体親水性分子及び高度に荷電された溶質の分離にとって好ましい。また、CE技術は、マイクロ流体チップ上でも実施することができる。使用するキャピラリー及びバッファーのタイプに応じて、CEは、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)、キャピラリー等速電気泳動(cITP)及びキャピラリー電気クロマトグラフィ(CEC)といったような分離技術にさらに分けることができる。エレクトロスプレーイオン化にCE技術を連結する実施態様には、揮発性溶液、例えば、揮発性酸及び/又は塩基及び有機物、例えばアルコール又はアセトニトリルを含む水性混合物の使用が含まれる。
【0084】
キャピラリー等速電気泳動(cITP)は、検体が一定速度でキャピラリー中を移動するが、それにもかかわらずそれぞれの移動性によって分離する技術である。自由溶液CE(free-solution CE)(FSCE)としても知られているキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)は、化学種の電気泳動移動度における差に基づいており、分子が移動中に接触する摩擦抵抗によって測定され、これは分子上の電荷及び分子のサイズに正比例していることが多い。キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)では、わずかにイオン化可能な両性分子を、pH勾配の電気泳動によって分離することができる。CECは、従来の高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)とCEとのハイブリッド技術である。
【0085】
本発明に用いられる分離及び精製技術には、当分野で知られているあらゆるクロマトグラフィ方法が含まれる。クロマトグラフィは、ある種の検体の示差吸着及び溶離又は移動相と固定相との間での検体の分配に基づくことができる。クロマトグラフィの異なる例としては、液体クロマトグラフィ(LC)、ガスクロマトグラフィ(GC)、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)などが含まれるが、これらに制限されるものではない。
【0086】
PARPレベルの同定
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、ポリ(ADP−リボース)合成酵素及びポリADP−リボシルトランスフェラーゼとしても知られている。PARPは、核タンパク質に(同様にそれ自体に)結合してそれによりそのタンパク質の活性を改良することができるポリ(ADP−リボース)ポリマーの形成に触媒作用を及ぼす。酵素は、DNA修復における役割を果たしており、そしてまた核中のクロマチンの調節において役割を果たしている(総説については、D. D famours et al. “Poly (ADP-ribosylation reactions in the regulation of nuclear functions,” Biochem. J. 342: 249-268 (1999)参照)。
【0087】
PARP−1は、N末端DNA結合ドメイン、自己修飾ドメイン(automodification domain)及びC末端触媒ドメインを含み、そして種々の細胞のタンパク質はPARP−1と相互作用する。N末端DNA結合ドメインは、2つの亜鉛フィンガーモチーフを含む。転写エンハンサー因子−1(TEF−1)、レチノイドX受容体α、DNAポリメラーゼβ、X線修復交互補足因子−1(X-ray repair cross-complementing factor-1)(XRCC1)及びPARP−1それ自体は、このドメインにおいてPARP−1と相互作用する。自己修飾ドメインは、タンパク質−タンパク質相互作用モジュールの1つであるBRCTモチーフを含む。このモチーフは、BRCA1(乳がん、若年発症性)のC末端で最初に見出され、そしてDNA修復、組換え及び細胞周期チェックポイント制御に関連する種々のタンパク質中に存在する。POU−ホメオドメインを含有する八量体転写因子−1(Oct−1)、Yin Yang(YY)1及びユビキチン結合酵素9(ubc9)は、PARP−1中のこのBRCTモチーフと相互作用することがある。
【0088】
哺乳類ゲノムには15種のメンバーを超えるPARPファミリーの遺伝子が存在する。PARPファミリータンパク質及びポリ(ADP−リボース)をADP−リボースに分解するポリ(ADP−リボース)グリコヒドロラーゼ(PARG)は、DNA損傷反応及び転写調節を含むさまざまな細胞調節機能に関与していることもあり、そして多くの点で発がん及びがんの生物学に関連している可能性がある。
【0089】
いくつかのPARPファミリータンパク質が同定されている。タンキラーゼは、テロメア調節因子1(TRF−1)と相互作用するタンパク質として見出され、テロメア調節に関与している。ヴォールトPARP(VPARP)は、核−細胞質輸送体として作用するヴォールト複合体中の成分である。また、PARP−2、PARP−3及び2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ジオキシン誘導性PARP(TiPARP)も同定されている。従って、ポリ(ADP−リボース)代謝は、さまざまな細胞調節機能と関係があると考えられる。
【0090】
この遺伝子ファミリーのメンバーは、PARP−1である。PARP−1遺伝子産物は、細胞核において高レベルで発現され、活性化についてはDNA損傷に依存している。なんら理論によって拘束されることはないが、PARP−1は、アミノ末端DNA結合ドメインを通したDNA一本又は二本鎖破壊に関係があると考えられる。結合によりカルボキシ末端触媒ドメインを活性化し、その結果、標的分子においてADP−リボースのポリマーが形成される。PARP−1は、中央に位置する自己修飾ドメインによるポリADPリボシル化の標的それ自体である。PARP−1のリボシル化によりDNAからPARP−1分子の解離が生じる。結合、リボシル化及び解離の全体プロセスは、きわめて急速に生じる。DNA損傷部位へのPARP−1のこの一時的な結合は、DNA修復機構の補強(recruitment)を行うか、又は修復機構の補強にとって十分に長い間、組換えを抑制するように作用しうることが示唆されている。
【0091】
PARP反応のためのADP−リボースの供給源は、ニコチンアミドアデノシンジヌクレオチド(NAD)である。NADは、細胞中で細胞のATP貯蔵部位から合成され、そのためPARP活性が高レベルで活性化されると、細胞のエネルギー貯蔵部位の枯渇を急速に招くことがある。PARP活性を誘発すると細胞死に至ることがあり、それは細胞のNAD及びATPプールの枯渇と関連があることが示されている。PARP活性は、酸化的ストレスの多くの場合に又は炎症中に誘発される。例えば、虚血性組織の再灌流の際に反応性一酸化窒素が生成され、そして一酸化窒素が、過酸化水素、ペルオキシニトラート(peroxynitrate)及びヒドロキシル基を含むさらなる活性酸素種を生成することになる。これらの後者の種は、DNAを直接損傷することがあり、生成した損傷はPARP活性の活性化を誘発する。多くの場合、PARP活性が十分に活性化されると細胞のエネルギー貯蔵が減少して細胞死に至ると考えられている。同様の機構は、炎症中に内皮細胞及び炎症誘発性細胞が一酸化窒素を合成するときに働くと考えられ、これにより周囲細胞における酸化的DNA損傷、そしてその後にPARP活性の活性化が起こる。PARP活性化から生じる細胞死は、虚血−再灌流障害から又は炎症から生じる組織損傷の程度に寄与する主な要因であると考えられる。
【0092】
いくつかの実施態様において、患者からのサンプル中のPARPのレベルを所定の標準サンプルと比較する。患者からのサンプルは、通常、がん細胞又は組織のような患部組織からである。標準サンプルは、同じ患者から又は異なる対象からであることができる。標準サンプルは、通常、正常な非病変サンプルである。しかしながら、疾患の病期分類するため又は治療の有効性を評価するといったようないくつかの実施態様では、標準サンプルは、病変組織からである。標準サンプルは、数人の異なる対象からのサンプルの組み合わせであることができる。いくつかの実施態様において、患者からのPARPのレベルを所定のレベルと比較する。この所定のレベルは、通常、正常サンプルから得られる。本明細書に記載された通り、「所定のPARPレベル」は、ほんの一例として、治療のために選ばれうる患者を評価するため、PARP阻害剤治療に対する反応を評価するため、PARP阻害剤と二次的な治療剤の治療との組み合わせに対する反応を評価するため、及び/又はがん、炎症、疼痛及び/又は関連する状態について患者を診断するために使用されるPARPのレベルであってもよい。所定のPARPレベルは、がんを有する又は有しない患者の集団で測定してもよい。所定のPARPレベルは、すべての患者に同様に適用できる単一の数であることができ、又は所定のPARPレベルは、患者の特定の部分母集団に応じて変えることができる。例えば、男性は、女性とは異なる所定のPARPレベルを有する可能性があり;非喫煙者は、喫煙者とは異なる所定のPARPレベルを有することもありうる。患者の年齢、体重及び身長は、個々の所定のPARPレベルに影響を及ぼすことがある。さらにまた、所定のPARPレベルは、個々に各患者について測定されるレベルであることができる。所定のPARPレベルは、いずれか適切な標準であることができる。例えば、所定のPARPレベルは、患者選択を判断するのと同じ又は異なるヒトから得ることができる。一実施態様において、所定のPARPレベルは、同じ患者の前の評価から得ることができる。このようなやり方で、患者選択の経過は、時間をかけてモニターすることができる。さらに、標準は、別のヒト又は複数のヒト、例えば選ばれたヒトの群の評価から得ることができる。このようなやり方で、選択を判断されるヒトの選択範囲は、適切な他のヒト、例えば、類似の又は同じ状態を患っているヒトのように興味のヒトと類似の状態にある他のヒトと比較することができる。
【0093】
患者におけるPARPレベルの分析は、医師がより効果的に最良の治療を選ぶことができるだけでなく、より積極的な治療及びPARPの上方制御された又は下方制御されたレベルに基づく治療レジメンを利用することができるため、特に有益で価値がある。より積極的な治療、又は併用療法及びレジメンは、患者の予後及び全体の生存期間を延ばすのに役立つことができる。この情報を備えることで、開業医は、PARP阻害剤を用いた治療及び/又はより積極的な治療といったようなある種の治療タイプを提供することを選択することができる。
【0094】
一定期間にわたって患者のPARPレベルをモニタリングする際、期間は、数日、数週、数ヵ月そして場合によっては数年又はそれらのさまざまな間隔であってもよく、患者の体液サンプル、例えば、血清又は血漿を、医師又は臨床家のような従事者によって決定された間隔をおいて集め、PARPのレベルを測定し、そして治療又は疾患の経過にわたって正常な人のレベルと比較することができる。例えば、本発明に従って患者のサンプルを採取し、そして毎月、2ヵ月毎に、又は1、2若しくは3ヵ月の間隔を組み合わせてモニターすることができる。さらに、時間をかけて得られた患者のPARPレベルは、モニタリング期間中、正常な対照のPARP値だけでなく相互に都合よく比較することができ、それによって長期的なPARPモニタリングの内部、又は個人的対照として患者自身のPARP値を得ることができる。
【0095】
PARP阻害剤及びトポイソメラーゼ阻害剤の治療上の使用
がんタイプ
本発明は、いくつかの特異的ながん又は腫瘍の治療方法を提供する。例えば、がんタイプとしては、副腎皮質がん、肛門がん、再生不良性貧血、胆管がん、膀胱がん、骨がん、骨転移、成人CNS脳腫瘍、小児CNS脳腫瘍、キャッスルマン病、子宮頸がん、小児非ホジキンリンパ腫、結腸及び直腸(結腸直腸)がん、食道がん、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(Ewing's family of tumors)、眼がん、胆嚢がん、消化菅カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭及び下咽頭がん、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、小児白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、肝臓がん、肺がん、肺カルチノイド腫瘍、非ホジキンリンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び鼻傍がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔及び口腔咽頭がん、骨肉腫、膵臓がん、陰茎がん、下垂体腫瘍、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(成人軟部組織がん)、黒色腫皮膚がん、非黒色腫皮膚がん、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、膣がん、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ウイルス由来のがん及びウイルス関連のがんが含まれる。
【0096】
甲状腺のがん腫は、内分泌系の最も一般的な悪性腫瘍である。甲状腺のがん腫には、分化型腫瘍(乳頭状又は濾胞状)及び低分化型腫瘍(髄様性又は未分化)が含まれる。膣のがん腫には、扁平上皮がん、腺がん、黒色腫及び肉腫が含まれる。精巣がんは、大まかにはセミノーマ及び非セミノーマタイプに分けられる。
【0097】
胸腺腫は、胸腺の上皮性腫瘍であり、それは非腫瘍性リンパ球によって広く浸潤しうる又はすることがない。胸腺腫という用語は、上皮成分の明白な異型性を示さない新生物を記載するために慣用的に用いられる。胸腺に特異的でない明確な細胞学的異型性及び組織学的特徴を示す胸腺上皮性腫瘍は、胸腺がん(タイプCの胸腺腫としても知られている)として知られている。
【0098】
本発明によって提供される方法は、ベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に他の治療と併用して投与することを含むことができる。本発明の組成物と併用して実施することができる治療の選択は、治療する状態に部分的に左右される。例えば、急性骨髄性白血病を治療するために、本発明のいくつかの実施態様のベンズアミド化合物は、放射線治療、モノクローナル抗体療法、化学療法、骨髄移植、遺伝子治療、DNA/RNA治療、アジュバント療法、ナノ療法、ネオアジュバント療法、免疫療法、又はそれらの組み合わせと併用して使用することができる。
【0099】
子宮頸がん
別の態様において、本発明は、子宮頸がん、好ましくは子宮頸部上皮における腺がんの治療方法を提供する。このがんには2つの主要なタイプ:扁平上皮がん及び腺がんが存在する。前者は、すべての子宮頸がんの約80〜90%を占め、そして子宮頸膣部(ectocervix)(膣に最も近い部分)と子宮頸内膜(endocervix)(子宮に最も近い部分)とが結合するところで発症する。後者は、子宮頚内膜の粘液を産生する腺細胞において発症する。一部の子宮頸がんは、これらの両方の特徴を有し、腺扁平上皮がん又は混合がんと称する。
【0100】
子宮頸がんに利用できる主な治療は、手術、免疫療法、放射線治療及び化学療法である。いくつかの可能な外科的選択肢は、冷凍外科療法、子宮摘出術、及び広範子宮全摘術である。子宮頸がん患者の放射線治療には、外照射療法又は近接照射療法が含まれる。子宮頸がんを治療するための化学療法の一部として投与することができる抗がん剤としては、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、イリノテカン、ブレオマイシン、ビンクリスチン(vincrinstine)、マイトマイシン、イホスファミド、フルオロウラシル、エトポシド、メトトレキセート、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0101】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって子宮頸がん患者に有益効果を提供することができる。
【0102】
前立腺がん
別の一態様において、本発明は、前立腺がん、好ましくは、以下:腺がん又は骨に移動した腺がんから選ばれる前立腺がんの治療方法を提供する。前立腺がんは、ヒトでは前立腺器官で発症し、それは尿道の最初の部分を包囲している。前立腺は、いくつかの細胞タイプを有するが、腫瘍の99%は、精液の産生を担う腺細胞で発症する腺がんである。
【0103】
手術、免疫療法、放射線治療、冷凍外科療法、ホルモン療法、及び化学療法は、前立腺がん患者に利用できるいくつかの治療である。前立腺がんの治療に使用できる外科的処置としては、根治的恥骨後前立腺切除術、根治的会陰式前立腺切除術、及び腹腔鏡による根治的前立腺切除術が含まれる。放射線治療のいくつかの選択肢は、三次元原体照射療法、強度変調放射線治療、及び原体陽子線照射療法(conformal proton beam radiation therapy)を含む外照射(external beam radiation)である。また、近接照射療法(シード・インプランテーション又は組織内放射線治療)は、前立腺がんに利用できる治療方法である。冷凍外科療法は、局在化した前立腺がん細胞を治療するために用いられる別の可能な方法である。
【0104】
前立腺がんを治療するために、ホルモン療法、いわゆるアンドロゲン枯渇療法又はアンドロゲン抑制療法を用いることができる。アンドロゲンの90%を産生する精巣を除去する精巣摘除術を含む、この治療のいくつかの方法は、利用できる。別の方法は、アンドロゲンレベルを低下させるための黄体形成ホルモン-ホルモン放出因子(LHRH)類似体の投与である。利用できるLHRH類似体としては、ロイプロリド、ゴセレリン、トリプトレリン、及びヒストレリンが含まれる。また、アバレリクスのようなLHRHアンタゴニストを投与することもできる。
【0105】
体内におけるアンドロゲン活性を阻止する抗アンドロゲン剤による治療は、別の利用できる治療である。このような薬剤には、フルタミド、ビカルタミド、及びニルタミドが含まれる。この治療は、LHRH類似体投与又は精巣摘除術と典型的に併用され、それは複合アンドロゲン遮断療法(CAB)と称する。
【0106】
前立腺腫瘍が前立腺の外側に広がっており、ホルモン治療が有効でない場合、化学療法が適切でありうる。抗がん剤、例えばドキソルビシン、エストラムスチン、エトポシド、ミトキサントロン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、カルボプラチン及びプレドニゾンは、前立腺がんの成長を遅らせ、症状を緩和し、そして生活の質を改善するために投与することができる。
【0107】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって前立腺がん患者に有益効果を提供することができる。
【0108】
膵臓がん
いくつかの実施態様は、膵臓がん、好ましくは、以下:膵管組織における類上皮がん及び膵管における腺がんから選ばれる膵臓がんの治療方法を提供する。
膵臓がんの最も一般的なタイプは、腺がんであり、それは膵管の内層中に生じる。膵臓がんに利用できる可能な治療は、手術、免疫療法、放射線治療、及び化学療法である。可能な外科処置の選択肢としては、膵尾部又は膵全切除術及び膵十二指腸切除術(Whipple法)が含まれる。
【0109】
放射線治療は、特に、体の外側で装置によって腫瘍上に放射線の焦点を合わせる外照射は、膵臓がん患者にとって選択肢でありうる。別の選択肢は、手術中に施される術中電子線照射線である。
【0110】
膵臓がん患者を治療するために化学療法を用いることができる。適切な抗がん剤としては、5−フルオロウラシル(5−FU)、マイトマイシン、イホスファミド、ドキソルビシン、ストレプトゾシン、クロロゾトシン及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0111】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって膵臓がん患者に有益効果を提供することができる。
【0112】
膀胱がん
いくつかの実施態様は、膀胱がん、好ましくは膀胱における移行上皮がんの治療方法を提供する。膀胱がんは、尿路上皮がん(移行上皮がん)又は膀胱の内側を覆う尿路上皮細胞の腫瘍である。膀胱がんの残りの場合は、扁平上皮がん、腺がん及び小胞がんである。尿路上皮がんには、非浸潤性又は浸潤性であるかどうか及び乳頭状又は扁平状であるかどうかによりいくつかのサブタイプが存在する。非浸潤性腫瘍は、膀胱の最も内側層、尿路上皮にあるが、浸潤性腫瘍は、尿路上皮から膀胱の主な筋肉壁のより深部の層に広がっている。浸潤性乳頭状尿路上皮がんは、細長い指のような突起であり、それは膀胱の中空に枝分かれし、そしてまた膀胱壁中に外側に成長する。非浸潤性乳頭状尿路上皮腫瘍は、膀胱の中心に向かって成長する。
【0113】
非浸潤性扁平尿路上皮腫瘍(non-invasive, flat urothelial tumor)(扁平上皮内がんとも称する)は、膀胱の内側中空部分に最も近い細胞の層に限られているが、浸潤性扁平尿路上皮がん(invasive flat urothelial carcinoma)は、膀胱のより深い層、特に筋肉層に浸潤する。
【0114】
膀胱がんを治療するために、手術、放射線治療、免疫療法、化学療法、又はそれらの組み合わせを適用することができる。いくつかの可能な外科的選択肢は、経尿道的切除術、膀胱切開術、又は根治的膀胱切除術である。膀胱がんのための放射線治療としては、外照射及び近接照射療法が含まれうる。
【0115】
免疫療法は、膀胱がん患者を治療するために用いることができる別の方法である。
典型的に、これは膀胱内で実施され、これはカテーテルを用いて膀胱中に治療剤を直接投与することである。1つの方法は、結核予防接種にしばしば用いられるバクテリアを、カテーテルを通して膀胱に直接与えるBacillus Calmete-Guerin(BCG)である。バクテリアに対する免疫反応を体につけ、それによってがん細胞を攻撃し、そして殺す。
【0116】
免疫療法の別の方法は、免疫反応を調節する糖タンパク質、インターフェロンの投与である。インターフェロンアルファは、膀胱がんを治療するためにしばしば用いられる。
【0117】
膀胱がんを治療するために化学療法で用いることができる抗がん剤としては、チテパ(thitepa)、メトトレキセート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、パクリタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、イホスファミド、ゲムシタビン、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0118】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって膀胱がん患者に有益効果を提供することができる。
【0119】
大腸がん及び直腸がん
別の態様において、本発明は、結腸直腸がんの治療方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、対象にベンゾピロン化合物を単独で投与することを含む。別の実施態様において、方法は、ベンゾピロン化合物を本明細書に記載された1つ又はそれ以上の抗腫瘍剤と併用して対象に投与することを含む。
【0120】
結腸直腸がんは、結腸、直腸及び虫垂におけるがん成長を含む。多くの結腸直腸がんは、結腸における腺腫様ポリープから生じると考えられる。結腸直腸がんは、胃腸管の内側を覆っている上皮細胞から生じる。DNA複製又はDNA修復遺伝子、そしてまたAPC、K−Ras、NOD2及びp53遺伝子を含む特異的なDNA配列における遺伝性又は体細胞性の突然変異は、無制限の細胞分裂に至る。治療は、通常、手術によるものであり、多くの場合、その後に化学療法を行う。Bacillus Calmette-Guerin(BCG)は、結腸直腸がんのための免疫療法において自己由来腫瘍細胞と混合するアジュバント(adjuvant)として研究されている。
【0121】
診断時に転移性(IV期)結腸直腸がんが存在する患者の20%を超える患者、そしてこの群の多くとも25%が潜在的に切除可能である孤立性肝転移を有する。大腸がん及び肝臓への転移性疾患を有する患者は、長時間の手術に対する患者の適応度、結腸又は肝臓切除術のいずれかの方法で予想される困難、及び潜在的に複雑な肝臓手術を実施する手術の快適性に応じて1回の手術又は段階的な手術のいずれかで治療することができる。
【0122】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって結腸直腸がん患者に有益効果を提供することができる。
【0123】
急性骨髄性白血病
いくつかの実施態様は、急性骨髄性白血病(AML)、好ましくは末梢血における急性前骨髄球性白血病の治療方法を提供する。AMLは、骨髄で始まるが、リンパ節、肝臓、脾臓、中枢神経系及び精巣を含む体の他の部分に広がることができる。急性とは、急激に発症し、数ヵ月以内で治療しなければ致命的でありうるという意味である。AMLは、未熟骨髄細胞、通常、顆粒球又は単球を特徴とし、それらは複製及び蓄積を続ける。
【0124】
AMLは、免疫療法、放射線治療、化学療法、骨髄又は末梢血幹細胞移植術、又はそれらの組み合わせによって治療することができる。放射線治療には外照射が含まれ、副作用を伴うことがありうる。AMLを治療するために化学療法で用いることができる抗がん剤としては、シタラビン、アントラサイクリン、アントラセンジオン、イダルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、チオグアニン、ビンクリスチン、プレドニゾン、エトポシド、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0125】
モノクローナル抗体療法は、AML患者を治療するために用いることができる。体内で白血病細胞を殺す手段を提供するために患者に投与する前にこれらの抗体に小分子又は放射性化学物質を結合してもよい。モノクローナル抗体、ゲムツズマブオゾガマイシンは、AML細胞においてCD33を結合し、前化学療法レジメンを許容することができないAML患者を治療するために用いることができる。
【0126】
骨髄又は末梢血幹細胞移植術は、AML患者を治療するために用いることができる。いくつかの可能な移植法は、同種又は自己移植である。
【0127】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって白血病患者に有益効果を提供することができる。
【0128】
本発明によって提供される方法によって治療することができる白血病の他のタイプとしては、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリーセル白血病、脊髄形成異常症、及び骨髄増殖性疾患が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0129】
肺がん
いくつかの実施態様は、肺がんの治療方法を提供する。肺がんの最も一般的なタイプは、非小細胞肺がん(NSCLC)であり、これは肺がんの約80〜85%を占め、そして扁平上皮がん、腺がん及び大細胞未分化がんに分けられる。小細胞肺がんは、肺がんの15〜20%を占める。
【0130】
小細胞肺がんは、肺の組織中に悪性(がん)細胞が形成される疾患である。小細胞肺がんには3つのタイプがある。これらの3つのタイプには、多くの異なるタイプの細胞が含まれる。各タイプのがん細胞は、異なる方法で成長し、そして広がる。小細胞肺がんのタイプは、顕微鏡下で調べた時にがん中に見出される細胞の種類及び細胞がどのように見えるかで命名される:小細胞がん(燕麦細胞がん);混在小細胞/大細胞がん;及び混合小細胞がん。小細胞肺がんを有するほとんどの患者では、現在の治療は、がんを治癒しない。
【0131】
肺がんの治療選択肢としては、手術、免疫療法、放射線治療、化学療法、光線力学療法、又はそれらの組み合わせが含まれる。肺がんを治療するためのいくつかの可能な外科的選択肢は、部分若しくは楔状切除術、肺葉切除術又は肺切除術である。放射線治療は、外照射療法又は近接照射療法であることができる。
【0132】
肺がんを治療するために化学療法で用いることができるいくつかの抗がん剤としては、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ビノレルビン、イリノテカン、エトポシド、ビンブラスチン、ゲフィチニブ、イホスファミド、メトトレキセート、又はそれらの組み合わせが含まれる。肺がん患者を治療するために光線力学療法(PDT)を用いることができる。
【0133】
本明細書に記載された方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって肺がん患者に有益効果を提供することができる。
【0134】
皮膚がん
いくつかの実施態様は、皮膚がんの治療方法を提供する。皮膚で発症する幾つかのタイプのがんがある。最も一般的なタイプは、基底細胞がん及び扁平上皮がんであり、それらは非黒色腫皮膚がんである。光線性角化症は、しばしば扁平上皮がんに進行する皮膚状態である。非黒色腫皮膚がんが体の他の部分に広がることはまれである。皮膚がんで最もまれな形態である黒色腫は、近くの組織を浸潤して体の他の部分に広がることが多い。非黒色腫及び黒色腫皮膚がん並びに光線性角化症を有する患者では、手術、放射線治療、化学療法及び光線力学療法を含む異なるタイプの治療を利用することができる。皮膚がんの治療に可能ないくつかの外科的選択肢は、モース顕微鏡手術、単純切除術、電気乾燥法及び掻爬術、冷凍外科療法、レーザー手術である。放射線治療は、外照射療法又は近接照射療法であってもよい。臨床試験で試験される他のタイプの治療は、生物学的治療又は免疫療法、化学免疫療法、フルオロウラシルによる局所化学療法及び光線力学療法である。
【0135】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって皮膚がん患者に有益効果を提供することができる。
【0136】
眼がん、網膜芽細胞腫
いくつかの実施態様は、眼網膜芽細胞腫の治療方法を提供する。網膜芽細胞腫は、網膜の悪性腫瘍である。網膜芽細胞腫はあらゆる年齢で生じうるが、より若い小児、通常5歳前の年齢で発症することが最も多い。腫瘍は、片眼のみ又は両眼にありうる。網膜芽細胞腫は、通常、眼に限定され、近くの組織又は体の他の部分に広がることはない。患者を治癒し、視力を保つための治療選択肢としては、摘出術(眼球を摘出する手術)、放射線治療、寒冷療法、光凝固術、免疫療法、温熱療法及び化学療法が含まれる。放射線治療は、外照射療法又は近接照射療法であってもよい。
【0137】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって眼網膜芽細胞腫患者に有益効果を提供することができる。
【0138】
眼がん、眼内黒色腫
いくつかの実施態様は、眼内(眼)黒色腫の治療方法を提供する。まれながんである眼内黒色腫は、がん細胞がブドウ膜を称する眼の部分で見出される疾患である。ブドウ膜には、虹彩、毛様体及び脈絡膜が含まれる。眼内黒色腫は、中年の人々に発症することが最も多い。眼内黒色腫の治療には、手術、免疫療法、放射線治療及びレーザー療法が含まれる。手術は、眼内黒色腫の最も一般的な治療である。いくつかの可能な外科的選択肢は、虹彩切除術、虹彩線維柱帯切除術(iridotrabeculectomy)、虹彩毛様体切除術、脈絡膜切除術(choroidectomy)、摘出術及び眼窩内容除去術である。放射線治療は、外照射療法又は近接照射療法であってもよい。レーザー療法は、腫瘍を破壊するための極めて強力な光線、温熱療法又は光凝固術であってもよい。
【0139】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって眼内黒色腫患者に有益効果を提供することができる。
【0140】
肝臓がん
いくつかの実施態様は、原発性肝臓がん(肝臓で発症するがん)の治療方法を提供する。原発性肝臓がんは、成人及び小児の両方で生じることがある。原発性肝臓がん患者では種々のタイプの治療が利用できる。これらには、手術、免疫療法、放射線治療、化学療法及び経皮的エタノール注射が含まれる。使用しうる手術のタイプは、冷凍外科療法、部分肝摘出術、肝臓全摘出術及び高周波アブレーションである。放射線治療は、外照射療法、近接照射療法、放射線増感剤又は放射標識抗体であってもよい。他のタイプの治療には、温熱療法及び免疫療法が含まれる。
【0141】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって肝臓がん患者に有益効果を提供することができる。
【0142】
腎臓がん
いくつかの実施態様は、腎臓がんの治療方法を提供する。腎臓がん(腎細胞がん又は腎腺がんとも称する)は、悪性細胞が腎臓中の尿細管の内層に見出される疾患である。腎臓がんは、手術、放射線治療、化学療法及び免疫療法によって治療することができる。腎臓がんを治療するためのいくつかの可能な外科的な選択肢は、部分腎摘出術、単純腎摘出術及び根治的腎摘出術である。放射線治療は、外照射療法又は近接照射療法であってもよい。幹細胞移植は、腎臓がんを治療するために用いることができる。
【0143】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって腎臓がん患者に有益効果を提供することができる。
【0144】
甲状腺がん
いくつかの実施態様は、甲状腺がんの治療方法を提供する。甲状腺がんは、がん(悪性)細胞が甲状腺の組織で見出される疾患である。甲状腺がんの4つの主なタイプは、乳頭状、濾胞状、髄様性及び未分化である。甲状腺がんは、手術、免疫療法、放射線治療、ホルモン療法及び化学療法によって治療することができる。手術は、甲状腺がんの最も一般的な治療である。甲状腺がんの治療のためのいくつかの可能な外科的選択肢は、葉摘手術(lobectomy)、甲状腺全摘術(near-total thyroidectomy)、甲状腺全摘術(near-total thyroidectomy)及びリンパ節郭清である。放射線治療は、外照射療法(external radiation therapy)であってもよく又は放射性ヨウ素を含む液体の摂取が必要でありうる。ホルモン療法は、がん細胞の成長を停止するためにホルモンを用いる。甲状腺がんの治療では、ホルモンは、体ががん細胞を成長させうる他のホルモンを作るのを停止するために用いることができる。
【0145】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって甲状腺がん患者に有益効果を提供することができる。
【0146】
AIDS関連のがん
AIDS関連のリンパ腫
いくつかの実施態様は、AIDS関連のリンパ腫の治療方法を提供する。AIDS関連のリンパ腫は、後天性免疫不全症候群(AIDS)を有する患者のリンパ系において悪性細胞が形成される疾患である。AIDSは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって発症し、これは体の免疫系を攻撃し、弱める。その時、免疫系は、体を侵す感染症及び疾患と戦うことができない。HIV疾患の人々は、感染症、リンパ腫及び他タイプのがんを発症する危険性が高まる。リンパ腫は、リンパ系の白血球に影響を及ぼすがんである。リンパ腫は、2つの一般的なタイプ:ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫に分けられる。ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫は、いずれもAIDS患者で生じることがあるが、非ホジキンリンパ腫がより一般的である。AIDS患者が非ホジキンリンパ腫を有する場合、AIDS関連のリンパ腫と称する。非ホジキンリンパ腫は、不活性(遅い成長)又は攻撃的(速い成長)でありうる。AIDS関連のリンパ腫は、通常、攻撃的である。AIDS関連のリンパ腫の3つの主なタイプは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、B細胞免疫芽球性リンパ腫及び小型非切れ込み核細胞性リンパ腫である。
【0147】
AIDS関連のリンパ腫の治療では、リンパ腫の治療をAIDSのための治療と併用する。AIDS患者は免疫系が弱まっており、治療によりさらに損傷が生じることがある。そのため、AIDS関連のリンパ腫を有する患者は、通常、AIDSを有しないリンパ腫患者より低い用量の薬物で治療する。高活性抗レトロウイルス療法(HAART)は、HIVの進行を遅らせるために用いられる。また、重症となりうる感染症を予防及び治療する薬剤が用いられる。AIDS関連のリンパ腫は、化学療法、免疫療法、放射線治療及び幹細胞移植による高用量化学療法によって治療してもよい。放射線治療は、外照射療法又は近接照射療法であってもよい。AIDS関連のリンパ腫は、モノクローナル抗体療法によって治療することができる。
【0148】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによってAIDS関連のリンパ腫患者に有益効果を提供することができる。
【0149】
カポジ肉腫
いくつかの実施態様は、カポジ肉腫の治療方法を提供する。カポジ肉腫は、口、鼻及び肛門の内側を覆う皮膚又は粘膜下の組織においてがん細胞が見出される疾患である。古典的カポジ肉腫は、通常、ユダヤ人、イタリア人、又は地中海沿岸のイスラエル人(Mediterranean heritage)の老齢男性に生じる。このタイプのカポジ肉腫は、ゆっくりと、時には10〜15年かけて進行する。カポジ肉腫は、免疫抑制剤を摂取している人々に生じることがある。後天性免疫不全症候群(AIDS)を有する患者のカポジ肉腫は、流行性カポジ肉腫と称する。AIDS患者のカポジ肉腫は、通常、他の種類のカポジ肉腫より急速に広がり、体の多くの部分で見出されることが多い。カポジ肉腫は、手術、化学療法、放射線治療及び免疫療法で治療してもよい。外照射療法は、カポジ肉腫の一般的な治療である。カポジ肉腫を治療するためのいくつかの可能な外科的選択肢は、局所切除術、電気凝固術及び掻爬術、並びに寒冷療法である。
【0150】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによってカポジ肉腫に対して有益効果を提供することができる。
【0151】
ウイルス誘発性がん
いくつかの実施態様は、ウイルス誘発性がんの治療方法を提供する。いくつかの一般的なウイルスは、特定の悪性腫瘍の病因において明確な又は有望な原因となる要素である。これらのウイルスでは、いずれも通常、潜伏期が設定されており、すなわちほとんど持続感染になることはない。発がんは、感染したホストにおけるウイルスの活性化レベルが高められたことに関連しており、多量のウイルス又は悪化した免疫調節を反映している。主なウイルス−悪性腫瘍系としては、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、及び肝細胞がん;ヒトリンパ向性ウイルス1型(HTLV−1)及び成人T細胞白血病/リンパ腫;並びにヒト乳頭腫ウイルス(HPV)及び子宮頸がんが含まれる。一般に、これらの悪性腫瘍は、比較的若年期に生じ、典型的に中年期又はそれ以前にピークに達する。
【0152】
ウイルス誘発性肝細胞がん
HBV及びHCVの両方と肝細胞がん又は肝臓がんとの因果関係は、実質的に疫学的証拠を通して確立されている。両者は、細胞死及びその後の再生を生じることによって肝臓での慢性複製を経て作用すると考えられる。肝臓がん患者では異なるタイプの治療が利用できる。これらには、手術、免疫療法、放射線治療、化学療法及び経皮的エタノール注射が含まれる。使用できる手術のタイプは、冷凍外科療法、部分肝切除、肝臓全摘出及び高周波アブレーションである。放射線治療は、外照射療法、近接照射療法、放射線増感剤又は放射標識抗体であってもよい。他タイプの治療には、温熱療法及び免疫療法が含まれる。
【0153】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、経皮的エタノール注射、温熱療法及び免疫療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによってウイルス誘発性肝細胞がん患者に有益効果を提供することができる。
【0154】
ウイルス誘発性成人T細胞白血病/リンパ腫
HTLV−1と成人T細胞白血病(ATL)との関連は、しっかりと確立されている。世界中の至る所で見出される他の腫瘍ウイルスと異なり、HTLV−1は、非常に地理的に制限され、主に南日本、カリブ海、西及び中央アフリカ並びに南太平洋の島において見出される。因果関係の証拠としては、キャリアにおけるATLのほとんどすべての場合でウィルスゲノムの単クローン性の組込み(monoclonal integration)が含まれる。HTLV−1関連の悪性腫瘍についての危険因子は、周産期感染症、高ウイルス量及び男性であることと考えられる。
【0155】
成人T細胞白血病は、血液及び骨髄のがんである。成人T細胞白血病/リンパ腫の標準治療は、放射線治療、免疫療法、及び化学療法である。放射線治療は、外照射療法又は近接照射療法であってもよい。成人T細胞白血病/リンパ腫を治療する他の方法には、免疫療法及び幹細胞移植による高用量化学療法が含まれる。
【0156】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを放射線治療、化学療法、免疫療法及び幹細胞移植による高用量化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって成人T細胞白血病患者に有益効果を提供することができる。
【0157】
ウイルス誘発性子宮頸がん
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)で子宮頸部の感染症は、子宮頸がんの最も一般的な原因である。しかしながら、HPV感染症のすべての女性が、子宮頸がんを発症するというわけでない。子宮頸がんは、通常、時間をかけてゆっくり発症する。がんが子宮頸部に現れる前に、子宮頸部の細胞は、異形成として知られている変化を受け、その際、正常でない細胞が子宮頸部組織に現れ始める。その後、がん細胞が成長し始め、子宮頸部及び周囲領域により深く広がる。子宮頸がんの標準治療は、手術、免疫療法、放射線治療及び化学療法である。使用できる手術のタイプは、円錐切除術、子宮全摘出、両側卵管卵巣摘出術、広範子宮全摘術、骨盤内容除去術、冷凍外科療法、レーザー手術及び電気外科的ループ切除法である。放射線治療は、外照射療法又は近接照射療法であってもよい。
【0158】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって成人子宮頸がんに有益効果を提供することができる。
【0159】
CNSがん
脳及び脊髄腫瘍は、中枢神経系(CNS)の主成分である頭蓋又は骨性脊柱に見出される組織の異常成長である。良性腫瘍は非がん性であり、そして悪性腫瘍はがんである。CNSは、硬い骨性の部分(rigid, bony quarters)(すなわち頭蓋及び脊柱)に収容されているため、あらゆる異常成長は、良性又は悪性であるにせよ、感受性組織上に圧力がかかり、機能を損なう可能性がある。脳又は脊髄に生じる腫瘍は、原発腫瘍と称する。ほとんどの原発腫瘍は、ニューロンを取り囲んで支える細胞における制御不能の成長によって生じる。一部の人では、原発腫瘍は、特定の遺伝病(例えば神経線維腫症、結節硬化症)又は放射線若しくは発がん性化学物質への暴露により生じることがある。ほとんどの原発腫瘍の原因は、未解明のままである。
【0160】
脳及び脊柱腫瘍を診断する最初の試験は、神経学的検査である。特定の撮像技術(コンピュータ断層撮影、及び磁気共鳴画像法、陽電子断層撮影法)も使用される。臨床検査には、EEG及び脊椎穿刺が含まれる。疑わしい腫瘍から組織のサンプルを採取する外科的処置である生検は、医師が腫瘍のタイプを診断するのに役立つ。
【0161】
腫瘍は、腫瘍が生じると考えられる細胞の種類に従って分類される。成人における最も一般的な原発性脳腫瘍は、星状細胞と称する脳内の細胞で生じ、それは血液脳関門を構成し、中枢神経系の栄養摂取に寄与する。これらの腫瘍は、神経膠腫(星状細胞腫、未分化星状細胞腫又は多形性膠芽腫)と称し、すべての原発性中枢神経系腫瘍の65%を占める。いくつかの腫瘍は、乏突起膠腫、上衣腫、髄膜腫、リンパ腫、神経鞘腫及び髄芽腫であるが、これらに制限されるわけではない。
【0162】
CNSの神経上皮腫瘍
星状細胞の腫瘍、例えば星状細胞腫;未分化(悪性)星状細胞腫、例えば大脳半球、間脳、視覚、脳幹、小脳;多形性膠芽腫;重細胞性星状細胞腫、例えば大脳半球、間脳、視覚、脳幹、小脳;上衣下巨細胞星状細胞腫;及び多形性黄色星状細胞腫。乏突起膠細胞の腫瘍、例えば乏突起膠腫;及び未分化(悪性)乏突起膠腫。上衣細胞腫瘍、例えば上衣腫;未分化上衣腫;粘液乳頭型上衣腫;及び上衣下腫。混合性神経膠腫、例えば、混合性乏突起星細胞腫;退形成性(悪性)乏突起星細胞腫;及び他のもの(例えば上衣星状細胞腫)。原因不明の神経上皮の腫瘍、例えば極性海綿芽細胞腫;星状芽細胞腫;及び大脳神経膠腫症。脈絡叢の腫瘍、例えば脈絡叢乳頭腫;及び脈絡叢がん腫(未分化脈絡叢乳頭腫)。神経細胞系及び混合神経細胞−膠細胞腫瘍(Neuronal and mixed neuronal-glial tumors)、例えば神経節細胞腫;小脳の形成異常の神経節細胞腫(dysplastic gangliocytoma) (Lhermitte-Duclos);神経節膠腫;未分化(悪性)神経節膠腫;線維形成性乳児神経節膠腫、例えば線維形成性乳児星状細胞腫;中枢神経細胞腫;胚芽異形成性神経上皮腫瘍;嗅神経芽細胞腫(感覚神経芽細胞腫、松果体実質腫瘍、例えば松果体細胞腫;松果体芽細胞腫;及び混合性松果体細胞腫/松果体芽細胞腫。神経芽細胞性又は神経膠芽細胞性の要素を有する腫瘍(胚芽腫)、例えば髄様上皮腫;多能性分化による未分化神経外胚葉性腫瘍、例えば髄芽細胞腫;大脳未分化神経外胚葉性腫瘍;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;及び上衣芽細胞腫。
【0163】
他のCNS新生物
トルコ鞍部(Sellar Region)の腫瘍、例えば下垂体腺腫;下垂体がん;及び頭蓋咽頭腫。造血器腫瘍、例えば原発性悪性リンパ腫;形質細胞腫;及び顆粒球性肉腫。胚細胞腫瘍、例えば胚細胞腫;胎生期がん;卵黄嚢腫瘍(内胚葉洞腫瘍);絨毛がん;奇形腫;及び混合性胚細胞腫瘍。髄膜の腫瘍、例えば髄膜腫;異型性髄膜腫;及び未分化(悪性)髄膜腫。髄膜の非髄膜皮性腫瘍(non-menigothelial tumors)、例えば良性間葉性;悪性間葉性;原発性メラニン細胞性病変(Primary Melanocytic Lesions);造血性新生物;及び不確定な組織形成の腫瘍、例えば血管芽細胞腫(毛細血管芽細胞腫)。頭部及び脊椎神経の腫瘍、例えば神経鞘腫(schwannoma)(神経鞘腫(neurinoma)、神経鞘腫(neurilemoma));神経線維腫;悪性末梢神経鞘腫瘍(悪性神経鞘腫)、例えば類上皮、分岐間葉性(divergent mesenchymal)又は上皮分化、及び色素性。局部腫瘍からの局所的拡大;例えば傍神経節腫(非クロム親和性傍神経節腫);脊索腫;軟骨腫;軟骨肉腫;及びがん腫。転移性腫瘍、分類されていない腫瘍及び嚢胞並びに腫瘍様病変、例えばラトケ裂溝嚢胞;エピデルモイド;類皮腫;第三脳室コロイド嚢胞;腸性嚢胞;神経膠嚢胞;顆粒細胞腫(分離腫、下垂体細胞腫);視床下部神経細胞過誤腫;鼻神経膠転位;及び形質細胞肉芽腫。
【0164】
利用できる化学療法剤は、アルキル化剤、例えばシクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロランブシル、BCNU、CCNU、デカルバジン、プロカルバジン、ブスルファン、及びチオテパ;代謝拮抗剤、例えば、メトトラキセート(Methotraxate)、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン(ジェムザールR)、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビン及びクラドリビン;アントラサイクリン、例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン及びミトキサントロン;抗生剤、例えばブレオマイシン;カンプトセシン、例えばイリノテカン及びトポテカン;タキサン、例えばパクリタキセル及びドセタキセル;並びに白金、例えばシスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチンであるが、これらに制限されるわけではない。
【0165】
治療は、手術、放射線治療、免疫療法、温熱療法、遺伝子治療、化学療法、及び放射線と化学療法との組み合わせである。また、医師はステロイドを処方してCNS内の腫脹を低減してもよい。
【0166】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって成人子宮頸がんに有益効果を提供することができる。
【0167】
PNSがん
末梢神経系は、脳及び脊髄から分枝した神経からなる。これらの神経は、CNSと体の部分との間に伝達ネットワークを形成する。末梢神経系は、体性神経系及び自律神経系にさらに分けられる。体性神経系は、皮膚及び筋肉に至る神経からなり、意識的活動に関与する。自律神経系は、内臓器官、例えば心臓、胃及び腸にCNSをつなぐ神経からなる。それは無意識的活動に介在する。
【0168】
聴神経腫は、第八脳神経又は内耳神経とも称する平衡神経から生じる良性の繊維状の成長である。これらの腫瘍は非悪性であり、それは体の他の部分に広がらない又は転移しないという意味である。この腫瘍の場所は、脳幹中の重要な大脳中枢に隣接する頭蓋内の深部である。腫瘍が拡大するにつれ、生体機能に関係がある周囲構造に影響を及ぼす。多くの場合、これらの腫瘍は、数年の期間をかけてゆっくり成長する。
【0169】
悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)は、神経線維腫及び神経鞘腫のような良性軟組織腫瘍に対する悪性対応物である。それは、通常、神経幹にごく近接した深部軟組織において最もよくみられる。最も一般的な部位としては、坐骨神経、腕神経叢、及び仙骨神経叢が含まれる。最も一般的な症状は疼痛であり、これは、通常、生検を喚起する。それは、まれな、攻撃的、かつ致死性の眼窩腫瘍であり、通常、成人では三叉神経の感覚枝から生じる。悪性PNS腫瘍は、神経に沿って広がり脳に影響を及ぼし、そしてほとんどの患者は臨床診断の5年以内に死亡する。MPNSTは、類上皮性、間葉性又は腺性の特徴を有する3つの主なカテゴリーに分類することができる。いくつかのMPNSTとしては、軟骨分化を伴う皮下悪性類上皮神経鞘腫(Subcutaneous malignant epithelioid schwannoma)、腺性悪性神経鞘腫(Glandular malignant schwannoma)、神経周膜の分化を伴う悪性末梢神経鞘腫瘍、横紋筋様の特徴を有する皮膚類上皮悪性神経鞘腫瘍(Cutaneous epithelioid malignant nerve sheath tumor)、表在性類上皮(Superficial epithelioid)MPNST、トリトン腫瘍(横紋筋芽細胞の分化を伴うMPNST)、横紋筋芽細胞の分化を伴う神経鞘腫が含まれるが、これらに制限されるわけではない。まれなMPNSTの症例には、複数の肉腫性組織タイプ、特に骨肉腫、軟骨肉腫及び血管肉腫が含まれる。これらは、しばしば軟組織の悪性間葉腫と区別できない。
【0170】
他タイプのPNSがんには、悪性繊維性細胞腫、悪性線維性組織球腫、悪性髄膜腫、悪性中皮腫、及び悪性混合ミュラー腫瘍が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0171】
治療は、手術、放射線治療、免疫療法、化学療法、及び放射線と化学療法との組み合わせである。
【0172】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによってPNSがんに有益効果を提供することができる。
【0173】
口腔及び口腔咽頭がん
中枢神経系(CNS)がんの患者の管理は、厄介な課題として残っている。下咽頭がん、喉頭がん、鼻咽頭がん、口腔咽頭がんなどのようながんは、手術、免疫療法、化学療法、化学療法と放射線治療との組み合わせで治療されてきた。トポイソメラーゼIIを阻害する2つの一般に使用される腫瘍学の薬剤、エトポシド及びアクチノマイシンDは、有用な量で血液脳関門を越えることに失敗している。
【0174】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって口腔及び口腔咽頭がんに有益効果を提供することができる。
【0175】
胃がん
胃がんは、胃の内層における細胞変化の結果である。胃がんには、3つの主要なタイプ:リンパ腫、胃間質性腫瘍、及びカルチノイド腫瘍がある。リンパ腫は、しばしば胃壁中に見出される免疫系組織のがんである。胃間質性腫瘍は、胃壁の組織から発症する。カルチノイド腫瘍は、胃のホルモン産生細胞の腫瘍である。
【0176】
胃がんの原因は、議論が続いている。遺伝及び環境(食事、喫煙、など)の組み合わせはすべて役割を果たしていると考えられる。治療に対する一般的なアプローチには、手術、免疫療法、化学療法、放射線治療、化学療法と放射線治療又は生物学的治療との組み合わせが含まれる。
【0177】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって胃がんに有益効果を提供することができる。
【0178】
胆嚢がん
別の態様において、本発明は、胆嚢がんの治療方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、対象にベンゾピロン化合物を単独で投与することを含む。別の実施態様において、方法は、対象にベンゾピロン化合物を本明細書に記載された1つ又はそれ以上の抗腫瘍剤と組み合わせて投与することを含む。
【0179】
胆嚢がんは、悪性細胞は胆嚢の組織中に見出されるまれながんである。胆嚢は、脂肪を消化するために肝臓によって作られる液体、胆汁を貯蔵する。胆嚢の壁は、3つの主要な組織層:粘膜層(最も内側)層、筋(中間、筋肉)層、及び漿膜(外側)層を有する。これらの層の間は、結合組織が支えている。原発性胆嚢がんは、最も内側の層で始まり、成長するにつれて外層を通して広がる。胆嚢がんは、手術によって除去することができるとき、それが広がる前に見出された場合にしか治癒することができない。がんが広がった場合、待期療法は、この疾患の症状及び合併症を抑制することによって患者の生活の質を改善することができる。
【0180】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって胆嚢がん患者に有益効果を提供することができる。
【0181】
食道がん
別の態様において、本発明は、食道がんの治療方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法は、対象にベンゾピロン化合物を単独で投与することを含む。別の実施態様において、方法は、対象にベンゾピロン化合物を本明細書に記載された1つ又はそれ以上の抗腫瘍剤と組み合わせて投与することを含む。
【0182】
食道がんは、食道の悪性腫瘍である。種々のサブタイプがある。食道のほとんどの腫瘍は、悪性である。平滑筋腫(平滑筋腫瘍)又は消化管間質腫瘍(GIST)は、非常に低い比率(10%未満)である。悪性腫瘍は、一般に腺がん、扁平上皮がん、そして場合により小細胞がんである。後者は小細胞肺がんと多くの性質を共有しており、そして他のタイプと比較して化学療法に対して比較的感受性である。
【0183】
小さな局所的な腫瘍は、治癒的な目的で外科的に治療される。より大きな腫瘍は、手術可能でない傾向があり、そのため治癒することができず;その成長は、化学療法、放射線療法又は2つの組み合わせでさらに遅らせることができる。場合によっては、化学及び放射線療法はこれらのより大きな腫瘍を手術可能にすることができる。
【0184】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって食道がん患者に有益効果を提供することができる。
【0185】
精巣がん
精巣がんは、典型的に青年の一方又は両方の精巣で発症するがんである。精巣のがんは、生殖細胞として知られているある種の細胞において発症する。ヒトにおいて生じる胚細胞腫瘍(GCT)の2つの主要タイプは、セミノーマ(60%)及び非セミノーマ(40%)である。また、腫瘍は、精巣の支持的な及びホルモン産生組織、又は間質で生じることもある。このような腫瘍は、生殖腺間質腫として知られている。2つの主要タイプは、ライディッヒ細胞腫瘍及びセルトリ細胞腫瘍である。続発性精巣腫瘍は、別の器官で生じてから精巣に広がったものである。リンパ腫は、最も一般的な続発性精巣がんである。
【0186】
治療に対する一般的なアプローチしては、手術、免疫療法、化学療法、放射線治療、化学療法と放射線治療又は生物学的治療との組み合わせが含まれる。精巣がんを治療するために、いくつかの薬物:プラチノール(シスプラチン)、ベプシド又はVP-16(エトポシド)及びブレノキサン(硫酸ブレオマイシン)が典型的に用いられる。さらに、イフェクス(Ifex)(イホスファミド)、ベルバン(硫酸ビンブラスチン)及びその他を用いてもよい。
【0187】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって胃がんに有益効果を提供することができる。
【0188】
胸腺がん
胸腺は、胸部の上/正面部分にあり、のどの基部から心臓の前方まで延びている小さな器官である。胸腺は、2つの主要タイプの細胞、胸腺上皮細胞及びリンパ球を含む。胸腺上皮細胞は、胸腺腫及び胸腺がんの起点となることがある。リンパ球は、胸腺中又はリンパ節中にせよ、悪性となり、そしてホジキン病及び非ホジキンリンパ腫と称するがんを発症することがある。また、胸腺は、Kulchitsky細胞と称する他のあまり一般的でないタイプの細胞、又は通常、ある種のホルモンを放出する神経内分泌細胞を含む。これらの細胞は、しばしば同じタイプのホルモンを放出し、そして体内の他の場所で神経内分泌細胞から生じる他の腫瘍と類似しているカルチノイド又はカルチノイド腫瘍と称するがんを生じることがある。
【0189】
治療に対する一般的なアプローチとしては、手術、免疫療法、化学療法、放射線治療、化学療法と放射線治療又は生物学的治療との組み合わせが含まれる。胸腺腫及び胸腺がんの治療に用いられてきた抗がん剤は、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン、イホスファミド及びコルチコステロイド(プレドニゾン)である。多くの場合、これらの薬物は、それらの有効性を増強するために組み合わせて提供される。胸腺がんを治療するために用いられる組み合わせとしては、シスプラチン、ドキソルビシン、エトポシド及びシクロホスファミド、並びにシスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド及びビンクリスチンの組み合わせが含まれる。
【0190】
本発明によって提供される方法は、ニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することによって、又はニトロベンズアミド化合物をトポイソメラーゼ阻害剤と共に投与することを手術、放射線治療、化学療法、若しくはそれらの組み合わせと併用することによって胃がんに有益効果を提供することができる。
【0191】
併用療法
いくつかの実施態様は、本明細書に記載された1つ又はそれ以上のPARP阻害剤と本明細書に記載された1つ又はそれ以上のトポイソメラーゼ阻害剤との組み合わせを提供する。いくつかの実施態様において、PARP阻害剤は、4−ヨード−3−ニトロベンズアミド又はその薬学的に許容しうる塩、プロドラッグ又は代謝物である。いくつかの実施態様において、トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカン、イリノテカン、ルルトテカン、エキサテカン又はそれらの薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である。いくつかの好ましい実施態様において、組み合わせは、BA又はその薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物及びトポテカン又はその薬学的に許容しうる塩の組み合わせである。
【0192】
本発明の別の実施態様において、本発明の方法は、手術、放射線治療(例えばX線)、遺伝子治療、免疫療法、DNA治療、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、ウイルス性治療、RNA治療又はナノ療法を含むがこれらに制限されない別の抗がん治療と併用してPARP阻害剤を少なくとも1つのトポイソメラーゼ阻害剤と共に対象に投与することによってがんを治療することをさらに含む。
【0193】
併用療法が非薬物治療をさらに含む場合、非薬物治療は、治療剤及び非薬物治療の組み合わせの共同作用による有益効果が達成される限り、あらゆる適切なときに実施することができる。例えば、適切な場合、非薬物治療が、かなりの期間、治療剤の投与から時間的に離れている場合でも、有益効果が達成される。合剤(conjugate)及び他の薬理活性剤は、同時に、順次又は組み合わせて患者に投与することができる。本発明の組み合わせを用いる場合、本発明の化合物及び他の薬理活性剤は、同じ薬学的に許容しうる担体中にあってもよく、そのため同時に投与されることは言うまでもない。それらは、同時に摂取される慣用の経口投与形態のような別々の薬剤担体中にあってもよい。「組み合わせ」という用語は、さらに、化合物が個々の投与形態で提供され、順次投与される場合にも相当する。
【0194】
放射線治療
放射線治療(又は放射線療法)は、悪性細胞を制御するがん治療の一部としてのイオン化放射線の医学的使用である。放射線療法は、治癒的な又は補助的ながん治療に用いることができる。それは、待機的治療(治癒が可能でなく、そして局所的な疾患管理又は症状の軽減を目的とする場合)として又は治療的治療(治療により生存の恩恵があり、治癒が可能である場合)として用いられる。放射線療法は悪性腫瘍の治療に用いられ、そして一次治療として用いてもよい。また、放射線療法を手術、化学療法、ホルモン療法又は3つのいくつかを混合したものと組み合わせることも一般的である。最もよくみられるがんタイプは、いくつかのやり方で放射線療法により治療することができる。正確な治療目的(治癒的な、アジュバント的な、ネオアジュバント的な、治療的な、又は待機的な)は、腫瘍のタイプ、位置及び病期と同様に患者の健康状態に左右される。
【0195】
放射線治療は、一般にがん腫瘍に適用される。また、流入領域リンパ節が臨床的に若しくは放射線学的に腫瘍に関与する場合、又は不顕性の悪性腫瘍が広がる危険性があると考えられる場合、放射線照射野には流入領域リンパ節が含まれる。毎日の設定及び内部腫瘍の移動における不確定要素を考慮して腫瘍周囲に正常組織のマージンを含む必要がある。
【0196】
放射線治療は、細胞のDNAを損傷することによって作用する。損傷は、DNA鎖を構成する原子を直接又は間接的にイオン化する光子、電子、陽子、中性子又はイオンビームによって生じる。間接的なイオン化は、水のイオン化の結果、フリーラジカル、特にヒドロキシル基が形成されて起こり、次いで、それがDNAを損傷する。放射線治療の最も一般的な形態では、ほとんどの放射線効果は、フリーラジカルによるものである。細胞はDNA損傷を修復するための機構を有するため、両鎖におけるDNAの破壊は、細胞の特徴を変える際の最も重要な技術であることがわかる。がん細胞は一般に未分化で、そして幹細胞様であるため、より多く複製し、ほとんどの健康な分化細胞と比較して亜致死性損傷を修復する能力が低い。DNA損傷は、細胞分裂を通して受け継がれ、がん細胞への損傷が蓄積され、がん細胞を死に至らせるか又は複製をより遅くする。陽子放射線療法は、腫瘍で正確に停止するように運動エネルギーを変化させて陽子を送ることによって作用する。
【0197】
また、ガンマ線もある種のがんの治療に用いられる。ガンマ−ナイフ手術(gamma−knife surgery)と称する方法では、がん細胞を殺すために複数のガンマ線の集中ビームを成長部分に向ける。周囲組織に損傷を最小限にしながら、異なる角度からビームを向けて成長部分に放射線の焦点を合わせる。
【0198】
遺伝子治療剤
遺伝子治療剤は、患者の細胞の特異的なセットに遺伝子のコピーを挿入し、そしてがん及び非がん性細胞の両方を標的とする。遺伝子治療の目標は、変質した遺伝子を機能性遺伝子で置き換えること、がんに対する患者の免疫反応を刺激すること、がん細胞を化学療法に対してより感受性にすること、「自殺」遺伝子をがん細胞に入れること、又は血管新生を阻害することである。遺伝子は、ウイルス、リポソーム、又は他のキャリア若しくはベクターを用いて標的細胞に送達してもよい。これは、遺伝子−キャリア組成物を直接注射するか、又はex vivoで感染細胞を患者に取り込ませることによって行ってもよい。このような組成物は、本発明の使用に適切である。
【0199】
アジュバント療法
アジュバント療法は、治癒の機会を増強するために一次治療の後に施される治療である。アジュバント療法は、化学療法、放射線治療、ホルモン療法、又は生物学的治療を含んでもよい。どのアジュバント療法が患者にとって最良かは、がんのタイプ及びその段階による。
【0200】
アジュバント療法の主な目的は、広がった可能のあるすべてのがん細胞を殺すことであるため、治療は、通常、全身である(血流を通して移動し、体の至る所のがん細胞に到達して影響を及ぼす物質を使用する)。
【0201】
アジュバント化学療法は、がん細胞を殺す薬物の使用である。化学療法は、がん細胞を殺すために体のほとんどすべての部分に到達することができる。アジュバント化学療法は、通常、単一抗がん剤より有効であることがわかっている抗がん剤の組み合わせである。
【0202】
いくつかのがんは、ホルモンに感受性である。ホルモン産生を低下させることによって又はホルモンを受け取るがんの能力を阻止することによって、ホルモン療法は、がん細胞が成長するのを防ぐことができる。ホルモン療法は、手術、放射線又は化学療法と併せて用いることができる。
【0203】
放射線治療は、しばしば、局部的なアジュバント療法として用いられる。放射線治療は、乳房切除術の前又は後に施すときはアジュバント療法とみなされる。
【0204】
ネオアジュバント療法
ネオアジュバント療法は、一次治療の前に施す治療のことである。ネオアジュバント療法の例としては、化学療法、放射線治療及びホルモン療法が含まれる。
【0205】
腫瘍崩壊性ウイルス性治療
がんのウイルス性治療では、腫瘍崩壊ウイルスと称するタイプのウイルスを利用する。腫瘍崩壊ウイルスは、正常細胞を無傷のまま、がん細胞を感染させて溶解することができるウイルスであり、がん治療において有用である可能性がある。腫瘍崩壊ウイルスの複製は、腫瘍細胞の破壊を促進し、そしてまた腫瘍部位における用量増幅を生じる。それは、抗がん遺伝子のベクターとして作用してもよく、抗がん遺伝子を腫瘍部位に特異的に送達するのを可能にする。
【0206】
腫瘍選択性を生じるために、2つの主要なアプローチ:形質導入による及び形質導入によらない標的化(transductional and non−transductional targeting)がある。形質導入による標的化には、ウイルスコートタンパク質の特異性を改良し、それにより非標的細胞への侵入を減らしながら標的細胞への侵入を増やすことが含まれる。形質導入によらない標的化には、がん細胞中でしか複製できないようにウイルスのゲノムを変えることが含まれる。これは、ウイルス複製に必須の遺伝子を腫瘍特異性プロモーターの管理下に置く転写標的化、又は正常細胞中ではなく、がん細胞中で不必要な機能を排除するウィルスゲノムの中に欠失を導入することが含まれる転写減衰(attenuation)のいずれかによって行うことができる。また、さらに少しわかりにくい他の方法もある。
【0207】
Chen 等 (2001)は、マウスの前立腺がんにおいて放射線療法と共に前立腺に特異的なアデノウイルス、CV706を使用した。併用治療により細胞死が相乗的に増加しただけでなく、ウイルスの放出量(各細胞溶解物(cell lysis)から放出されたウイルス粒子の数)が著しく増加した。
【0208】
ONYX−015を化学療法と共に試験した。併用治療では、いずれかの単独治療よりも大きな反応を得たが、結果が完全に決定的であるわけではなかった。ONYX−015は、放射線療法との併用が有望である。
【0209】
静脈内に投与されるウイルス剤は、慣用的に治療するのが特に困難である転移がんに対して特に有効でありうる。しかしながら、血液を媒介とするウイルス(bloodborne viruse)は、抗体によって非活性化され、例えばクッパー細胞(アデノウイルスを排除する役割を担っている、肝臓中で極めて活性な食細胞)によって素早く血流から取り除くことができる。腫瘍が破壊されるまで免疫系を回避することが、腫瘍崩壊ウイルス治療の成功にとって最も大きな障害となるにちがいない。これまで、免疫系を回避するために使用される技術で完全に満足のいくものはない。腫瘍崩壊ウイルスは、慣用のがん治療との併用において、併用療法が明白なマイナスの効果なしに相乗的に作動するため最も有望である。
【0210】
腫瘍崩壊ウイルスの特異性及び柔軟性とは、それが最小限の副作用でさまざまながんを治療する可能性を有することを意味する。腫瘍崩壊ウイルスには、がん細胞を選択的に殺すという問題を解決する可能性がある。
【0211】
ナノ療法
ナノメートルサイズの粒子は、個々の分子又はバルク固体のいずれからも入手することができない新規な光学的、電子的、そして構造的性質を有する。腫瘍特異性リガンド又はモノクローナル抗体のような腫瘍標的部分と結合したとき、これらのナノ粒子は、高い親和性及び精度でがん特異的受容体、腫瘍抗原(バイオマーカー)、及び腫瘍血管系を標的にするために用いることができる。がんナノ療法についての製剤及び製造方法は、米国特許第7179484号、及び論文M. N. Khalid, P. Simard, D. Hoarau, A. Dragomir, J. Leroux, Long Circulating Poly(Ethylene Glycol)Decorated Lipid Nanocapsules Deliver Docetaxel to Solid Tumors, Pharmaceutical Research, 23(4), 2006に記載されており、それらのすべては、それらの全体として参照により本明細書に組み込まれている。
【0212】
RNA治療
siRNA、shRNA、ミクロRNAを含むがこれらに制限されないRNAは、遺伝子発現の調節及びがん治療に用いることができる。二本鎖オリゴヌクレオチドは、2本の明確なオリゴヌクレオチド配列の構築によって形成され、ここで一方の鎖のオリゴヌクレオチド配列は、2本目の鎖のオリゴヌクレオチド配列に対して相補的であり;このような二本鎖オリゴヌクレオチドは、2つの別々のオリゴヌクレオチド(例えばsiRNA)から又はそれ自体折り畳まれて二本鎖構造を形成している単一分子(例えばshRNA又は低分子ヘアピン型RNA)から一般に構成される。当分野で知られているこれらの二本鎖オリゴヌクレオチドは、全て二本鎖の各鎖が明瞭なヌクレオチド配列を有するという共通の特徴を有し、その際、1つのヌクレオチド配列領域(ガイド配列又はアンチセンス配列)のみが標的核酸配列に対して相補性を有し、そして他の鎖(センス配列)は、標的核酸配列に対して相同性であるヌクレオチド配列を含む。
【0213】
ミクロRNA(miRNA)は、長さ約21〜23個のヌクレオチドの一本鎖RNA分子であり、これは遺伝子発現を調節する。miRNAは、DNAから転写されるが、タンパク質に翻訳されない遺伝子によってコードされており(非翻訳RNA);その代わりにpri−miRNAとして知られている一次転写産物からpre−miRNAと称するショートステムループ構造、そして最終的に機能性miRNAに加工される。成熟したmiRNA分子は、1つ又はそれ以上のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に対して部分的に相補的であり、そしてその主な機能は、遺伝子発現を下方制御することである。
【0214】
ある種のRNA阻害剤は、がん表現型と関連するメッセンジャーRNA(「mRNA」)の発現又は翻訳を阻害するのに利用することができる。本明細書における使用に適したこのような薬剤の例としては、低分子干渉RNA(「siRNA)、リボザイム及びアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれるが、これらに制限されるわけではない。本明細書における使用に適したRNA阻害剤の例としては、Cand5、Sirna−027、ホミビルセン、及びアンギオザイムが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0215】
小分子酵素阻害剤
ある種の小分子治療剤は、チロシンキナーゼ酵素活性又は上皮成長因子受容体(「EGFR」)若しくは血管内皮成長因子受容体(「VEGFR」)のような特定の細胞受容体の下流のシグナル伝達シグナルを標的にすることができる。小分子療法によるこのような標的化は、抗がん効果を生じることができる。本明細書における使用に適したこのような薬剤の例としては、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブ、ZD6474、ソラフェニブ(BAY43−9006)、ERB−569、並びにそれらの類似物及び誘導体が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0216】
抗転移剤
がん細胞が最初の腫瘍部位から体中の他の場所に広がるプロセスをがん転移と称する。ある種の薬剤は、がん細胞が広がるのを抑制するために設計された抗転移性を有する。本明細書における使用に適したこのような薬剤の例としては、マリマスタット、ビバシズマブ、トラスツズマブ、リタキシマブ、エルロチニブ、MMI−166、GRN163L、ハンター−キラーペプチド、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)、それらの類似体、誘導体及び変種が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0217】
化学予防剤
ある種の薬剤は、がんの最初の発生を予防するために又は再発若しくは転移を予防するために用いることができる。本発明のエフロルニチン−NSAID結合体と組み合わせたこのような化学予防剤の投与は、がんの治療及び再発の予防の両方に作用することができる。本明細書における使用に適した化学予防剤の例としては、タモキシフェン、ラロキシフェン、チボロン、ビスホスホネート、イバンドロネート、エストロゲン受容体モジュレーター、アロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール)、黄体形成ホルモン放出ホルモン作動剤、ゴセレリン、ビタミンA、レチナール、レチン酸、フェンレチニド、9−シス−レチノイド酸(9-cis-retinoid acid)、13−シス−レチノイド酸(13-cis-retinoid acid)、オールトランスレチノイン酸、イソトレチノイン、トレチノイド(tretinoid)、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ、ポリフェノール、ポリフェノールE、緑茶抽出物、葉酸、グルカル酸、インターフェロンアルファ、アネトールジチオールチオン、亜鉛、ピリドキシン、フィナステリド、ドキサゾシン、セレニウム、インドール−3−ガルビナル(indole-3-carbinal)、アルファ−ジフルオロメチルオルニチン、カロチノイド、ベータ−カロチン、リコペン、抗酸化剤、コエンザイムQ10、フラボノイド、ケルセチン、クルクミン、カテキン、没食子酸エピガロカテキン、N−アセチルシステイン、インドール−3−カルビノール、イノシトール六リン酸、イソフラボン、グルカン酸(glucanic acid)、ローズマリー、大豆、ノコギリヤシ(saw palmetto)及びカルシウムが含まれるが、これらに制限されるわけではない。本発明の使用に適した化学予防剤のさらなる例は、がんワクチンである。これは、予防接種プロセスによって、標的となるがん細胞タイプの全部又は一部を有する患者に免疫性を与えることにより行うことができる。
【0218】
製剤、投与経路及び有効量
本発明の別の態様は、製剤及びニトロベンズアミド化合物を含む薬剤組成物の投与経路に関する。このような薬剤組成物は、上に詳述された方法でがんを治療するために用いることができる。
【0219】
式Iaの化合物は、プロドラッグとして提供してもよく及び/又は投与後にin vivoでニトロソベンズアミドの形態に相互変換してもよい。すなわち、ニトロベンズアミド形態及び/又はニトロソベンズアミド形態、又は薬学的に許容しうる塩のいずれかを本発明に使用するための製剤の製造に用いることができる。さらに、いくつかの実施態様において、化合物は、1つ若しくはそれ以上の他の化合物と組み合わせて又は1つ若しくはそれ以上の他の形態で用いてもよい。例えば製剤は、ニトロベンズアミド化合物及び酸形態の両方をそれぞれの相対的効力及び目的の適応症に応じて特定の比率で含んでもよい。2つの形態は、同じ投薬単位中、例えば1つ乳剤、坐剤、錠剤、カプセル剤、又は飲料に溶解する散剤のパケット中に一緒に処方してもよく;又は各形態は、別々の単位、例えば、2つの乳剤、2つの坐剤、2つの錠剤、2のカプセル剤、錠剤及び錠剤を溶解するための液体、散剤のパケット及び散剤を溶解するための液体などで処方してもよい。
【0220】
ニトロベンズアミド化合物及び別の活性剤の組み合わせを含む組成物は有効でありうる。2つの化合物及び/又は化合物の形態は、同じ投薬単位中、例えば1つ乳剤、坐剤、錠剤、カプセル剤、又は飲料に溶解する散剤のパケット中に一緒に処方してもよく;又は各形態は、別々の単位、例えば、2つの乳剤、坐剤、錠剤、2つのカプセル剤、錠剤及び錠剤を溶解するための液体、散剤のパケット及び散剤を溶解するための液体などで処方してもよい。
【0221】
用語「薬学的に許容しうる塩」は、本発明に用いられる化合物の生物学的効果及び性質を保持し、そして生物学的に又は他の点で望ましい塩を意味する。例えば、薬学的に許容しうる塩は、がんの治療において本発明の化合物の有益効果を妨げない。
【0222】
典型的な塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムイオンのような無機イオンのものである。このような塩には、無機又は有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸又はマレイン酸との塩が含まれる。さらに、本発明に用いられる化合物がカルボキシ基又は他の酸性基を含む場合、それは無機又は有機塩基により薬学的に許容しうる付加塩に変換することができる。適切な塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンが含まれる。
【0223】
経口投与のために、活性化合物を当分野でよく知られている薬学的に許容しうる担体と合わせることによって化合物を容易に処方することができる。このような担体は、本発明の化合物を、治療する患者による経口摂取のために、咀嚼錠を含む錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、トローチ剤、硬いキャンディ、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、散剤、懸濁剤、エリキシル剤、カシェ剤、などとして処方するのを可能にする。このような製剤は、固形賦形剤又は増量剤、滅菌水性媒体及び種々の非毒性有機溶媒を含む薬学的に許容しうる担体を含むことができる。一般に、本発明の化合物は、所望の投薬単位を供給するのに十分な量において、経口投与形態の全体組成物の約0.5質量%、約5質量%、約10質量%、約20質量%、又は約30%〜約50質量%、約60質量%、約70質量%、約80質量%又は約90質量%からの範囲の濃度レベルで含まれる。
【0224】
水性懸濁剤は、ニトロベンズアミド化合物を薬学的に許容しうる添加剤、例えば懸濁化剤(例えばメチルセルロース)、湿潤剤(例えばレシチン、リゾレシチン及び/又は長鎖脂肪族アルコール)並びに着色剤、保存剤、矯味矯臭剤などと共に含むことができる。
【0225】
いくつかの実施態様において、例えば、大きな親油性部分が存在するため、化合物を溶液にするために油又は非水性溶媒を必要とすることがある。別法として、乳剤、懸濁剤、又は他の製剤、例えばリポソーム製剤を用いてもよい。リポソーム製剤に関して、状態を治療するリポソームを製造するためのあらゆる知られている方法を用いることができる。例えばBangham et al., J. Mol. Biol, 23: 238-252 (1965) and Szoka et al., Proc. Natl Acad. Sci 75: 4194-4198 (1978)参照、これは参照により本明細書に組み込まれる。また、リガンドをリポソームに結合して特定の作用部位にこれらの組成物を導くこともできる。本発明の化合物は、ある種の患者集団において可溶化、投与、及び/又はコンプライアンスを容易にするために食材、例えばクリームチーズ、バター、サラダドレッシング又はアイスクリーム中に組み込むことができる。
【0226】
経口使用のための医薬製剤は、場合により生成した混合物を粉砕し、そして顆粒の混合物を加工し、適切な補助剤を加えた後、所望により、錠剤又は糖衣錠核を得て固形添加剤として得ることができる。適切な添加剤は、特に、増量剤、例えばラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む砂糖;香味成分、セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)である。所望により、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを加えてもよい。また、化合物は、徐放性製剤として処方してもよい。
【0227】
糖衣錠核は、適切なコーティングを施すことができる。このために、濃縮された糖溶液を用いることができ、これはアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を場合により含んでもよい。識別のため又は活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴づけるため染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠コーティングに加えてもよい。
【0228】
経口的に用いることができる医薬製剤は、ゼラチンでできたプッシュフィットカプセル剤(push fit capsules)並びにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールでできた軟質密封カプセル剤が含まれる。プッシュ−フィットカプセル剤は、ラクトースのような増量剤、デンプンのような結合剤及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤及び場合により安定化剤との混合物中に活性成分を含むことができる。軟カプセル剤では、活性化合物を、適当な液体、例えば脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコール中に溶解又は懸濁することができる。さらに、安定剤を加えてもよい。経口投与のためのすべての製剤は、投与に適した投与量でなければならない。
【0229】
注射のために、本発明の阻害剤を水溶液中、好ましくは、例えばハンクス液、リンゲル液又は生理食塩水緩衝液のような生理学的に適合しうる緩衝液中で処方することができる。このような組成物は、1つ又はそれ以上の賦形剤、例えば保存剤、可溶化剤、増量剤、滑沢剤、安定剤、アルブミンなどを含んでもよい。製造方法は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, latest edition, Mack Publishing Co., Easton P.に記載されたように当分野で知られている。また、これらの化合物は、経粘膜投与、口腔投与、吸入による投与、非経口投与、経皮的投与及び直腸投与のために処方してもよい。
【0230】
前記の製剤に加えて、化合物は、デボー製剤として処方してもよい。このような長時間作用性の製剤は、移植若しくは経皮的送達(例えば皮下又は筋肉内に)、筋肉内投与又は経皮的パッチの使用によって投与してもよい。従って、例えば、化合物は、適切なポリマー若しくは疎水性物質(例えば許容しうる油中の乳剤として)若しくはイオン交換樹脂を用いて、又はやや難溶性の誘導体として、例えば、やや難溶性の塩として処方してもよい。
【0231】
本発明に使用するための適切な薬学的組成物としては、活性成分が有効量、すなわち、本明細書に記載された少なくとも1つのがんにおいて治療上の及び/又は予防上の利益を達成するための有効量で存在する組成物が含まれる。特定の適用に有効な実際の量は、治療する1つ又は複数の状態、対象の状態、製剤、及び投与経路、並びに当業者に知られている他の要因に左右される。ニトロベンズアミド化合物の有効量の決定は、本明細書における記載を考慮して当業者の能力の範囲内で十分であり、そして常用の最適化技術を用いて決定される。
【0232】
いくつかの実施態様において、本発明を実施するには、他の特許に記載された組成物及び方法並びにBiParに譲渡された特許出願が用いられる。例えば、米国特許出願第12/015,403号及びPCT出願第PCT/US2008/51214に記載されたようながんを治療するための製剤を用いることができる。すべての特許及び特許出願は、それらの全体で参照により本明細書に組み込まれている。
【実施例】
【0233】
実施例1:4−ヨード−3−ニトロベンズアミド(BA)とイリノテカンとのin vitro組み合わせ効果
ヒト小細胞肺がん細胞、LX−1細胞を用いて4−ヨード−3−ニトロベンズアミド(BA)と塩酸イリノテカンとのin vitro組み合わせ効果を試験した。
細胞培養
LX−1ヒト小細胞肺がん細胞株は、ATCC (American Type Culture Collection)から入手した。D−MEM(ダルベッコ改変イーグル培地)及び10%ウシ胎仔血清(FC)を含む培地中でLX−1ヒト小細胞肺がん細胞株を継代培養した。5%CO2のインキュベーター中37℃で培養を行なった。また、以下の実験でも同じ培地を使用した。継代培養のLX−1細胞をトリプシン処理にかけ、培地中に懸濁し、そして種々の濃度の化合物又はDMSO対照の存在下、P100細胞培養皿当たり105細胞で又はP60細胞培養皿当たり104細胞で平板培養した。処理した後、結合した細胞の数を、コールターカウンターを用い、そして1%メチレンブルーで染色することによって測定した。メチレンブルーは、メタノール及び水の50%−50%混合物に溶解した。24又は96ウェルプレート中で細胞を平板培養し、そして計画通り処理し、培地を吸引し、細胞をPBSで洗浄し、メタノール中5〜10分間固定し、メタノールを吸引し、そしてプレートを完全に乾燥させた。メチレンブルー溶液をウェルに加え、そしてプレートを5分間インキュベートした。染色液を除去し、洗浄液が青色でなくなるまでプレートをdH2Oで洗浄した。プレートを完全に乾燥した後、少量の1N HClを各ウェルに加えてメチレンブルーを抽出した。600nmでODを読み出し及び検量線を用いて細胞数を決定した。
【0234】
化合物
試験薬剤を以下のように調製した。塩酸イリノテカンは、Daiichi Pharmaceutical Co., Ltd.から入手し、そして使用する際、培地で2倍連続希釈後に供給した。ベンズアミド化合物を、それぞれ個々の実験のため乾燥粉末からDMSO中の10mM保存液に直接溶解した。対照実験は、ビヒクル(DMSO)の体積/濃度を釣り合せて行ない;これらの対照において、細胞はその増殖又は細胞周期分布において変化を示さなかった。
【0235】
PI排除(Exclusion)、細胞周期及びTUNELアッセイ
薬物の添加及びインキュベーション後、細胞をトリプシン処理し、そしてサンプルのアリコートをカウント及びPI(ヨウ化プロピジウム)排除アッセイ用に取った。細胞の一部を遠心分離し、そして5μg/mlのPIを含む氷冷PBS0.5ml中に再懸濁した。細胞の他の部分を氷冷70%エタノール中固定し、そして冷凍庫中に一夜保存した。細胞周期分析のため、細胞を標準的な方法によってヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。BD LSRII FACSを用いてフローサイトメトリーによって細胞DNA含量を測定し、そしてModFitソフトウェアを用いてG1、S又はG2/M中の細胞パーセンテージを測定した。
“In Situ Cell Death Detection Kit, Fluorescein” (Roche Diagnostics Corporation, Roche Applied Science, Indianapolis, IN)を用いてアポトーシスのために細胞を標識した。簡潔には、固定細胞を遠心分離し、そして1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、次いで、浸透化緩衝液(permeabilization buffer)(PBS中0.1%トリトンX−100及び0.1%クエン酸ナトリウム)2ml中、室温で25分間再懸濁し、そしてPBS/1%BSA0.2mlで2回洗浄した。細胞をTUNEL反応混合物(TdT酵素及び標識溶液)50μl中に再懸濁し、そしてインキュベーター中、加湿暗雰囲気中37℃で60分間インキュベートした。標識細胞をPBS/1%BSA中で1回洗浄し、次いで、1μg/mlの4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を含む氷冷PBS0.5ml中少なくとも30分間再懸濁した。すべての細胞サンプルをBD LSR II (BD Biosciences, San Jose, CA)で分析した。
【0236】
ブロモデオキシウリジン(BrdU)標識アッセイ
BrdU (Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)保存液(1mM)50μlを加えて10μM BrdUの最終濃度を得た。細胞を37℃で30分間インキュベートし、そして氷冷70%エタノール中固定し、そして低温室(4℃)中で一夜保存した。固定細胞を遠心分離し、そしてPBS2ml中で1回洗浄し、次いで、暗所にて37℃で15分間、変性溶液(2N HCl中0.2mg/mlペプシン)0.7ml中再懸濁し、そして1Mトリス緩衝液(トリズマ塩基,Sigma Chemical Co.)1.04mlと共に懸濁し、そしてPBS2ml中で洗浄した。次いで、TBFP浸透性緩衝液(PBS中の0.5%Tween−20,1%ウシ血清アルブミン及び1%ウシ胎仔血清)中1:100で希釈した抗BrdU抗体(DakoCytomation, Carpinteria, CA)100μl中で細胞を再懸濁し、そして暗所にて室温で25分間インキュベートし、そしてPBS2ml中で洗浄した。TBFP浸透性緩衝液中1:200で希釈したヤギ抗マウスIgG(H+L)(2mg/ml)のAlexa Fluor F(ab')2断片(Molecular Probes, Eugene, OR)100μl中一次抗体標識細胞を再懸濁し、そして暗所にて室温で25分間インキュベートし、そしてPBS2ml中で洗浄し、次いで、1μg/mlの4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を含む氷冷PBS0.5ml中少なくとも30分間再懸濁した。すべての細胞試料をBD LSR II (BD Biosciences, San Jose, CA)により分析した。
4−ヨード−3−ニトロベンズアミド(BA)とトポイソメラーゼ阻害剤、すなわちイリノテカン又はトポテカンとの組み合わせを、がんのin vitro及びin vivoモデルで試験した。LX−1小細胞肺がん細胞株におけるイリノテカンと組み合わせたBAの評価は、BAがS−及びG2/M細胞周期停止を増強し、そしてイリノテカンによって誘導された細胞毒性効果を高めることを示した。
【0237】
実施例2:
結腸直腸がんの治療における4−ヨード−3−ニトロベンズアミド(BA)及びイリノテカンの組み合わせのin vivo抗腫瘍活性
3種の結腸直腸がん細胞株:CACO−2、HT−29及びDHD/K12/TRb(PROb)を、それぞれ6週齢のヌードマウス(動物59匹)に皮下移植した。腫瘍移植から11日後、約100〜300mm3の腫瘍体積を有する動物36匹を、1群当たり6匹の動物からなる5つの群に割り当てた。同じ日に、動物に、それぞれ、「ビヒクル群」についてはシステイン緩衝液、「BA単独投与群」については隔週でBA50mg/kg又は15mg/kg(i.p.)、「イリノテカン単独投与群」についてはイリノテカン50mg/kg又は15mg/kg(i.p.)、「併用投与群(高用量)」についてはBA50mg/kg(i.p.)及びイリノテカン50mg/kg(i.p.)、「併用投与群(低用量)」についてはBA15mg/kg(i.p.)及びイリノテカン15mg/kg(i.p.)を非経口投与で投与した。その後、マウスの腫瘍体積及び体重を30日間測定した。
【0238】
それぞれ個々の実験のために、BAを乾燥粉末からDMSO中の10mM保存液に直接溶解した。対照実験は、ビヒクル(DMSO)の体積/濃度をマッチさせて行なった。イリノテカンは、イリノテカン50mg/kg又は15mg/kgを腹腔内(i.p.)で与えることによって投与した。
【0239】
エンドポイント
腫瘍は、本研究の期間中、週に2回カリパスで測定した。その新生物が所定のエンドポイントサイズ(1,000mm3)に到達した時、各動物を安楽死させた。各マウスについてのエンドポイント(TTE)までの時間を以下の式によって算出した:
【数1】

ここで、TTEは日で表され、エンドポイント体積はmm3であり、bは切片であり、そしてmはログ変換された腫瘍増殖データセットの線形回帰によって得られた直線の傾きである。データセットには、研究エンドポイント体積を超えた第1の観察の、及びエンドポイント体積の達成直前の3つの連続的な観察のデータが含まれる。腫瘍サイズについて、算出されたTTEは、通常、動物が安楽死させられた日より少ない。エンドポイントに到達しなかった動物は、研究終了後、安楽死させ、そして最終日(68日)に等しいTTE値を割り当てた。治療有効性は、腫瘍増殖遅延(tumor growth delay)(TGD)から測定し、これは、対照群と比較した治療群についてTTE中央値(median TTE)における増加として定義され:
TGD=T−C、
日、又は対照群のTTE中央値のパーセンテージとして表され:
【数2】

ここで:
T=治療群のTTE中央値、
C=対照群のTTE中央値。
MTV及び退縮反応についての基準
【0240】
また、治療有効性は、最終日に本研究に残っている動物の腫瘍体積から、及び退縮効果(regression responses)の数から測定される。MTV(n)は、腫瘍がエンドポイント体積に達成せずに残っている動物の数nにおけるD61の腫瘍体積の中央値として定義される。治療では、動物において腫瘍の部分退縮(partial regression)(PR)又は完全退縮(complete regression)(CR)が生じることがある。PRは、腫瘍体積が本研究の経過中の3つの連続した測定値についてそのD1体積の50%又はそれ未満であり、そしてこれらの3つの測定値の1つ又はそれ以上について13.5mm3に等しいか又はそれを超えることを指示する。CRは、腫瘍体積が、本研究の経過中の3つの連続した測定値について13.5未満mm3であることを指示する。研究終了時にCRを有する動物は、腫瘍のない生存(TFS)としてさらに分類される。
【0241】
統計的及びグラフィック解析
ログランク検定を用いて、2つの群のTTE値間における差の有意性を、それらのカプランマイアー曲線を比較することによって解析した。ログランク検定では、NTR死を除く、群中のすべての動物についてのデータを解析する。Windows版Prism 3.03(GraphPad)を用いてP=0.05で両側統計解析を行なった。Prismでは、ログランク検定結果を、P>0.05で有意ではなく、0.01<P≦0.05で有意であり、0.001<P≦0.01で非常に有意であり、そしてP≦0.001で極めて有意であると報告する。ログランク検定は統計的有意性を決定し、群間の差の大きさの評価を提供するわけではないため、この報告のテキスト中では、すべての有意レベルは、有意であるか又は有意でないかのいずれかとして報告される。
【0242】
結果:
腫瘍増殖曲線は、時間の関数として群の腫瘍体積の中央値を示す。種々の用量のBAとイリノテカンとの組み合わせでは、イリノテカン単独の治療と比較して腫瘍体積が非常に低下した。
【0243】
腫瘍サイズ又はTR死のため動物が研究からはずれるとき、動物について記録される最終的な腫瘍体積が、その後の時点で体積の中央値を算出するために使用されるデータと共に含められる。従って、曲線によって示される最終的な腫瘍体積の中央値は、最終日に本研究に残っているマウス(エンドポイントを達成した腫瘍を有する全てのものを除く)についての腫瘍体積の中央値であるMTVと異なっていてもよい。複数のTR死が群中で生じた場合、腫瘍増殖曲線の中央値については、第2のTR死に先行する最後の測定時で切り捨てる。群中の評価可能な動物の50%を超える腫瘍がエンドポイント体積を達成したときも腫瘍増殖曲線を切り捨てる。
【0244】
実施例3:
小細胞肺がんの治療における4−ヨード−3−ニトロベンズアミド(BA)及びトポテカンの組み合わせの抗腫瘍効果
BAと、ヒトにおける小細胞肺がん(SCLC)の治療に承認された薬物の1つであるトポテカンとの組み合わせの抗腫瘍効果を、SCLCの確立された皮下異種移植モデルで評価した。SCIDマウス(動物24匹)に、ヒト小細胞肺がんSW−2細胞(8×106細胞/動物)をマウス右側腹に皮下注射して接種した。腫瘍が約80mm3のサイズに到達したときに、マウスを4つの群(1群当たり6匹の動物)にランダムに分けた。第1群のマウスは、i.p.投与されたトポテカンで治療した。この群のマウスをさらに3つのサブグループに分け、それらに、それぞれ0.5mg/kg、1mg/kg、又は2mg/kgのトポテカンi.p.を投与した。第2群の動物は、4−ヨード−3−ニトロベンズアミド(BA)で治療した。Alzet(R)浸透ポンプ(Model 1002)を介してBAを連続注入(静脈内)(CI)として投与し、それは0.25μL/時で14日間、約100μLの総体積を送達した。各ポンプは、BA25mg/kg/週の全量を14日かけて送達した。Alzetモデル浸透ポンプを、日1、15及び29に入れた。ポンプを37℃で約1時間予熱し、それから、イソフルオラン麻酔したマウスの左側腹に皮下に(s.c.)挿入した。第3群のマウスに、群1及び2と同じ用量及びスケジュールを用いてトポテカン及びBAの組み合わせを投与した。対照群の動物に、群2の動物と同じスケジュールを用いてリン酸緩衝化食塩水(PBS)を投与した。腫瘍増殖は、週に2回腫瘍サイズを測定することによってモニターした。腫瘍サイズは、式:長さ×幅×高さ×(1/2)を用いて算出した。
【0245】
腫瘍サイズの変化を、週に2回、次いで毎日モニターした。対照群の動物では、腫瘍は44日で約800mm3に増殖した。トポテカン単独の治療では、12日の腫瘍増殖遅延が生じた。BA単独の治療では、6匹の動物のうちの3匹において34日の腫瘍増殖遅延が生じた。この群の残りの3匹の動物は、完全腫瘍退縮であった。トポテカン及びBAの組み合わせ治療では、高められた抗腫瘍効果を示し、6匹の治療動物のうちの5匹で完全腫瘍退縮の結果となった。これらの動物は、最終測定点、日78では腫瘍なしであった。従って、トポテカン及びBAの組み合わせは、このヒトSCLC異種移植モデルにおいて単剤と比較したときに相乗効果がある。
【0246】
実施例4:
子宮頸がんの治療における4−ヨード−3−ニトロベンズアミド(BA)及びトポテカンの組み合わせの抗腫瘍効果
免疫不全SCIDマウスに、トポテカンを2つの用量レベルで単一療法として、及び4−ヨード−3−ニトロベンズアミド(BA)と組み合わせて投与し、それは3回の連続14日注入を介して投与した。治療を日1(D1)に開始し、そして腫瘍がエンドポイント体積750mm3を達成したときに動物を安楽死させた。
【0247】
本研究は、確立されたSiHaがん腫を担持するSCIDマウスにおいてトポテカン活性及び忍容性に関する連続BA注入の効果を試験する。
【0248】
マウス
雌CB.17 SCIDマウス(Charles River)は10週齢であり、そして本研究のD1において15.2〜26.6gの体重(BW)範囲を有する。動物には、水(逆浸透,1ppm Cl)並びに粗タンパク質18.0%、粗脂肪5.0%及び粗繊維5.0%からなるNIH 31 Modified and Irradiated Lab Diet(R)を自由に与えた。実験動物の管理及び使用に関する容認基準でコンプライアンスを保証するAAALAC International (Association for Assessment and Accreditation of Laboratory)によって認定された実験室中、21〜22℃(70〜72°F)及び湿度40〜60%で12時間の明サイクルにおいて静的マイクロアイソレータ(static microisolators)中照射されたALPHA-dri(R) bed-o-cobs(R)実験動物床敷上にマウスを収容した。
【0249】
腫瘍移植
外科的に除去された子宮頚がんから誘導されたヒトSiHa細胞を、連続生着(serial engraftment)により胸腺欠損ヌードマウス中に維持した。腫瘍断片(1mm3)を各試験マウスの右側腹中にs.c.移植した。腫瘍を週に2回、次いでそれらの体積が80〜120mm3に接近した場合毎日モニターした。本研究のD1に、腫瘍サイズ63〜144mm3及び群の平均腫瘍サイズ約102mm3を有する治療群に動物を分類した。
【数3】

腫瘍質量は、1mgが腫瘍体積1mm3に相当すると仮定して推定することができる。
【0250】
治療
マウスを群(n=10)に分類し、そしてプロトコールに従って治療した。
4−ヨード−3−ニトロベンズアミド(BA)を、隔週15mg/kg又は50mg/kgで腹腔内に(i.p.)投与した。対照群1のマウスには、ビヒクルを投与した。トポテカンは、日1〜5、8〜12及び15〜19(qd×5/2/5/2/5)に1日1回、それぞれ、0.5及び1mg/kgで静脈内に(i.v.)投与した。トポテカンは、日16に開始して0.5mg/kg、1mg/kg、又は2mg/kgで腹腔内に(i.p.)投与した。
【0251】
エンドポイント
腫瘍は、本研究の期間中、週に2回カリパスで測定した。その新生物が所定のエンドポイントサイズ(1,000mm3)に到達した時、各動物を安楽死させた。各マウスについてのエンドポイント(TTE)までの時間を以下の式によって算出した:
【数4】

ここで、TTEは日で表され、エンドポイント体積はmm3であり、bは切片であり、そしてmはログ変換された腫瘍増殖データセットの線形回帰によって得られた直線の傾きである。データセットには、研究エンドポイント体積を超えた第1の観察の、及びエンドポイント体積の達成直前の3つの連続的な観察のデータが含まれる。腫瘍サイズについて、算出されたTTEは、通常、動物が安楽死させられた日より少ない。エンドポイントに到達しなかった動物は、研究終了後、安楽死させ、そして最終日(68日)に等しいTTE値を割り当てた。治療有効性は、腫瘍増殖遅延(TGD)から測定し、これは、対照群と比較した治療群についてTTE中央値における増加として定義され:
TGD=T−C、
日、又は対照群のTTEの中央値のパーセンテージとして表され:
【数5】

ここで:
T=治療群のTTE中央値、
C=対照群のTTE中央値。
MTV及び退縮反応についての基準
【0252】
また、治療有効性は、最終日に本研究に残っている動物の腫瘍体積から、及び退縮効果の数から測定される。MTV(n)は、腫瘍がエンドポイント体積に達成せずに残っている動物の数nにおけるD61の腫瘍体積の中央値として定義される。治療では、動物において腫瘍の部分退縮(PR)又は完全退縮(CR)が生じることがある。PRは、腫瘍体積が本研究の経過中の3つの連続した測定値についてそのD1体積の50%又はそれ未満であり、そしてこれらの3つの測定値の1つ又はそれ以上について13.5mm3に等しいか又はそれを超えることを指示する。CRは、腫瘍体積は、本研究の経過中の3つの連続した測定値について13.5未満mm3であることを指示する。研究終了時にCRを有する動物は、腫瘍のない生存(TFS)としてさらに分類される。
【0253】
統計的及びグラフィック解析
ログランク検定を用いて、2つの群のTTE値間における差の有意性を、それらのカプランマイアー曲線(図1)を比較することによって解析した。ログランク検定では、NTR死を除く、群中のすべての動物についてのデータを解析する。Windows版Prism 3.03(GraphPad)を用いてP=0.05で両側統計解析を行なった。Prismでは、ログランク検定結果を、P>0.05で有意ではなく、0.01<P≦0.05で有意であり、0.001<P≦0.01で非常に有意であり、そしてP≦0.001で極めて有意であると報告する。ログランク検定は統計的有意性を決定し、群間の差の大きさの評価を提供するわけではないため、この報告のテキスト中では、すべての有意レベルは、有意であるか又は有意でないかのいずれかとして報告される。腫瘍増殖曲線は、時間の関数として群の腫瘍体積の中央値を示す。BAとトポテカンとの組み合わせでは、トポテカン単独の治療と比較して腫瘍体積が非常に低下した。
【0254】
腫瘍サイズ又はTR死のため動物が研究からはずれるとき、動物について記録される最終的な腫瘍体積が、その後の時点で体積の中央値を算出するために使用されるデータと共に含められる。従って、曲線によって示される最終的な腫瘍体積の中央値は、最終日に本研究に残っているマウス(エンドポイントを達成した腫瘍を有する全てのものを除く)についての腫瘍体積の中央値であるMTVと異なっていてもよい。複数のTR死が群中で生じた場合、腫瘍増殖曲線の中央値については、第2のTR死に先行する最後の測定時で切り捨てる。群中の評価可能な動物の50%を超える腫瘍がエンドポイント体積を達成したときも腫瘍増殖曲線を切り捨てる。
【0255】
上記の実施例は、本発明の範囲をなんら制限しようとするものではない。さらに、特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく多くの変更及び改良を行うことができ、そしてこのような変更及び改良が本発明の範囲内で企図されることは、当業者に認められる。
【0256】
添付された特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく多く変更及び改変を行うことができることは当業者にとって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トポイソメラーゼ阻害剤と式(Ia)
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、クロロ、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C3−C7)シクロアルキル、及びフェニルからなる群より独立して選ばれ、ここにおいて、R1、R2、R3、R4、及びR5の5つの置換基の少なくとも2つは常に水素であり、5つの置換基の少なくとも1つは常にニトロであり、そしてニトロに隣接して位置する少なくとも1つの置換基は常にヨードである]
のPARP阻害剤及びその薬学的に許容しうる塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、類似体、又はプロドラッグとの組み合わせの有効量を患者に投与することを含み、
がんは乳がん、子宮がん、又は卵巣がんでない、がんの治療方法。
【請求項2】
PARP阻害剤が式:
【化2】

のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PARP阻害剤が、
【化3】

6は、水素、アルキル(C1−C8)、アルコキシ(C1−C8)、イソキノリノン類、インドール類、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン、又はフェニルからなる群より選ばれる。
【化4】

【化5】

【化6】

からなる群より選ばれる4−ヨード−3−ニトロベンズアミドの代謝物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
トポイソメラーゼ阻害剤がトポテカン、イリノテカン、ルルトテカン、エキサテカン又はそれらの薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
トポイソメラーゼ阻害剤がトポテカン又はその薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
がんが、副腎皮質がん、肛門がん、再生不良性貧血、胆管がん、膀胱がん、骨がん、骨転移、CNS腫瘍、末梢CNSがん、キャッスルマン病、子宮頸がん、小児非ホジキンリンパ腫、結腸及び直腸がん、食道がん、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、眼がん、胆嚢がん、消化菅カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛疾患、ヘアリーセル白血病、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭及び下咽頭がん、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、小児白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、肝臓がん、肺がん、肺カルチノイド腫瘍、非ホジキンリンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、鼻腔及び鼻傍がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔及び口腔咽頭がん、骨肉腫、膵臓がん、陰茎がん、下垂体腫瘍、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(成人軟部組織がん)、黒色腫皮膚がん、非黒色腫皮膚がん、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、膣がん、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症並びにウイルス起源のがんから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
がんが白血病、前立腺がん、膀胱の移行上皮がん、膵臓がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、及び肺がんからなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
式(II):
【化7】

(式中、R1、R2、R3及びR4は、H、ハロゲン、場合により置換されたヒドロキシ、場合により置換されたアミン、場合により置換された低級アルキル、場合により置換されたフェニル、場合により置換されたC4−C10ヘテロアリール及び場合により置換されたC3−C8シクロアルキルからなる群より独立して選ばれる)のベンゾピロン化合物又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物若しくはプロドラッグの有効量を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの治療効果が得られ、該少なくとも1つの治療効果が腫瘍サイズの縮小、転移の減少、完全寛解、部分寛解、病理学的完全奏効、又は安定である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
トポイソメラーゼ阻害剤を用いるがPARP阻害剤なしの治療と比較して臨床的有用率の改善(CBR=CR+PR+SD≧6ヵ月)が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
臨床的有用率の改善が少なくとも約60%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
手術、放射線治療、化学療法、遺伝子治療、DNA治療、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、ウイルス性治療、RNA治療、免疫療法、ナノ療法又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
トポイソメラーゼ阻害剤が静脈内注入剤として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
4−ヨード−3−ニトロベンズアミド又はその代謝物が経口的に、又は非経口注射剤若しくは注入剤、又は吸入剤として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
PARP阻害剤がトポイソメラーゼ阻害剤の投与前に、又は同時に、又は後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
PARP阻害剤及びトポイソメラーゼ阻害剤が同一製剤で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
PARP阻害剤及びトポイソメラーゼ阻害剤が別の製剤で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
がん治療のために患者に投与する組成物であって、トポイソメラーゼ阻害剤と式(Ia):
【化8】

[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、クロロ、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C3−C7)シクロアルキル、及びフェニルからなる群より独立して選ばれ、ここにおいて、5つのR1、R2、R3、R4及びR5置換基の少なくとも2つは、常に水素であり;5つの置換基の少なくとも1つは常にニトロであり、そしてニトロに隣接して位置する少なくとも1つの置換基は常にヨードである]のPARP阻害剤及びその薬学的に許容しうる塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、類似体又はプロドラッグとの組み合わせの有効量を含み、ここにおいて、がんは乳がん、子宮がん、又は卵巣がんでない、上記組成物。
【請求項19】
PARP阻害剤が式:
【化9】

である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
PARP阻害剤が
【化10】

【化11】

6は、水素、アルキル(C1−C8)、アルコキシ(C1−C8)、イソキノリノン類、インドール類、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン、又はフェニルからなる群より選ばれる。
【化12】

【化13】

からなる群より選ばれる4−ヨード−3−ニトロベンズアミドの代謝物である、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
トポイソメラーゼ阻害剤がトポテカン、イリノテカン、ルルトテカン、エキサテカン又はそれらの薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
トポイソメラーゼ阻害剤がトポテカン又はその薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である、請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
がんが白血病、前立腺がん、膀胱の移行上皮がん、膵臓がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、及び肺がんからなる群より選ばれる、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
式(II):
【化14】

(式中、R1、R2、R3及びR4は、H、ハロゲン、場合により置換されたヒドロキシ、場合により置換されたアミン、場合により置換された低級アルキル、場合により置換されたフェニル、場合により置換されたC4−C10ヘテロアリール及び場合により置換されたC3−C8シクロアルキルからなる群より独立して選ばれる)のベンゾピロン化合物又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物若しくはプロドラッグの有効量をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項25】
組成物が単位投与形態で投与される、請求項18に記載の組成物。
【請求項26】
単位投与形態が経口又は非経口投与に適合される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
組成物を投与すると、少なくとも1つの治療効果が得られ、該少なくとも1つの治療効果が腫瘍サイズの縮小、転移の減少、完全寛解、部分寛解、病理学的完全奏効、又は安定である、請求項18に記載の組成物。
【請求項28】
組成物を投与すると、トポイソメラーゼ阻害剤を用いるがPARP阻害剤なしの治療と比較して臨床的有用率(CBR=CR+PR+SD≧6ヵ月)の改善が得られる、請求項18に記載の組成物。
【請求項29】
臨床的有用率の改善が少なくとも約60%である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
組成物が手術、放射線治療、化学療法、遺伝子治療、DNA治療、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、ウイルス性治療、RNA治療、免疫療法、ナノ療法又はそれらの組み合わせと組み合わせて投与される、請求項18に記載の組成物。
【請求項31】
(a)式(Ia):
【化15】

[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、クロロ、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C3−C7)シクロアルキル、及びフェニルからなる群より独立して選ばれ、ここにおいて、5つのR1、R2、R3、R4、及びR5置換基の少なくとも2つは常に水素であり;5つの置換基の少なくとも1つは常にニトロであり、そしてニトロに隣接して位置する少なくとも1つの置換基は常にヨードである]のPARP阻害剤及びその薬学的に許容しうる塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、類似体又はプロドラッグ;及び
(b)トポイソメラーゼ阻害剤;を含み、
がんは乳がん、子宮がん、又は卵巣がんでない、がんの治療のためのキット。
【請求項32】
PARP阻害剤が式:
【化16】

である、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
PARP阻害剤が
【化17】

6は、水素、アルキル(C1−C8)、アルコキシ(C1−C8)、イソキノリノン類、インドール類、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン、又はフェニルからなる群より選ばれる。
【化18】

【化19】

からなる群より選ばれる4−ヨード−3−ニトロベンズアミドの代謝物である、請求項31に記載のキット。
【請求項34】
トポイソメラーゼ阻害剤がトポテカン、イリノテカン、ルルトテカン、エキサテカン又はそれらの薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である、請求項31に記載のキット。
【請求項35】
トポイソメラーゼ阻害剤がトポテカン又はその薬学的に許容しうる塩若しくは代謝物である、請求項31に記載のキット。
【請求項36】
がんが白血病、前立腺がん、膀胱の移行上皮がん、膵臓がん、結腸直腸がん、子宮頸がん及び肺がんからなる群より選ばれる、請求項31に記載のキット。
【請求項37】
式(II):
【化20】

(式中、R1、R2、R3及びR4は、H、ハロゲン、場合により置換されたヒドロキシ、場合により置換されたアミン、場合により置換された低級アルキル、場合により置換されたフェニル、場合により置換されたC4−C10ヘテロアリール及び場合により置換されたC3−C8シクロアルキルからなる群より独立して選ばれる)のベンゾピロン化合物又はその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物若しくはプロドラッグの有効量をさらに含む、請求項31に記載のキット。
【請求項38】
キットがPARP阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤又は両方を投与するための説明書をさらに含む、請求項31に記載のキット。
【請求項39】
PARP阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、又は両方が単位投与形態中にある、請求項31に記載のキット。

【公表番号】特表2011−506343(P2011−506343A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537135(P2010−537135)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/085756
【国際公開番号】WO2009/073869
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(507401258)バイパー サイエンシズ,インコーポレイティド (13)
【Fターム(参考)】