説明

トマトケチャップ

【課題】生のトマトに感じる新鮮な香気が高められ、かつ味のバランスにも優れたトマトケチャップを提供する。
【解決手段】
下記(A)〜(C)成分を含有するトマトケチャップ:
(A)糖質 12〜31質量%、
(B)カリウム 0.6〜1.9質量%、及び
(C)ナトリウム 0.1〜1.55質量%。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマトケチャップに関する。
【背景技術】
【0002】
トマトケチャップは、トマト原料に食塩、香辛料、砂糖類、食酢、野菜等を加えて調味した可溶性固形分が25質量%以上のトマト加工品である。
トマトケチャップの製造工程では、通常、殺菌処理等の加熱処理が施されるが、この加熱処理はトマト特有の新鮮な風味を減少させてしまう。したがって、従来のトマトケチャップは、生鮮トマトが有する新鮮(フレッシュ)な風味に欠けるものであった。
一方、トマト加工品のフレッシュ感を改善する方法も報告されている。例えば、特許文献1には、トマトのフレッシュ感を有するトマトソースを得るために微粉砕化卵殻を配合することが開示されている。また、特許文献2には、トマト本来のフレッシュな風味が発現された加工食品を得るために、トマト原料と共に、柑橘類を主原料とする発酵酒を添加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−089659号公報
【特許文献2】特開2009−189266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、生のトマトに感じる新鮮な香気が高められ、かつ味のバランスにも優れたトマトケチャップの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、糖質、カリウム及びナトリウムの含有量を特定の範囲に調整することで、生のトマトが有する特有の新鮮な香気が高められながらも味のバランスに優れたトマトケチャップを製造できることを見い出した。本発明は、この知見に基づき完成させるに至ったものである。
【0006】
本発明は、下記(A)〜(C)成分を含有するトマトケチャップに関する:
(A)糖質 12〜31質量%、
(B)カリウム 0.6〜1.9質量%、及び
(C)ナトリウム 0.1〜1.55質量%。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトマトケチャップは、生のトマトに感じる新鮮な香味がより際立っており、従来のトマトケチャップではぼやけていた生鮮トマトの風味をより鮮明に感じることができると同時に、まとまりのある味わいを有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のトマトケチャップについて以下に詳細に説明する。
【0009】
本発明のトマトケチャップは、少なくともトマト原料、糖類、糖アルコール類及び/又は多糖類、カリウム塩、並びにナトリウム塩を配合して製造され、20℃において糖用屈折計で測定される可溶性固形分が25質量%以上のトマト加工品である。
本発明のトマトケチャップは、通常にはペースト状の組成物の形態である。
【0010】
本発明のトマトケチャップは特定量の糖質((A)成分)を含有する。トマトケチャップ中の糖質の量は、栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)に基づき計算された値であり、ケチャップ中の水分、たんぱく質、脂質、食物繊維及び灰分の合計量をトマトケチャップ全量から差し引くことで求めることができる。
本発明のトマトケチャップ中の糖質の含有量は、12〜31質量%であるが、生のトマトの香味をより引き立たせ、味のまとまりを向上させるために、21〜30質量%であることが好ましい。
本発明のトマトケチャップ中に含有される糖質は、主に配合されたトマト原料、糖類、果汁等に由来する成分である。
【0011】
本発明のトマトケチャップは、特定量のカリウム((B)成分)を含有する。当該カリウムは、トマトケチャップ中に塩の形態で存在するものをいう。
本発明のトマトケチャップ中のカリウムの含有量は、0.6〜1.9質量%であるが、生のトマトの香味をより引き立たせ、味のまとまりを向上させるために、0.6〜1.6質量%であることが好ましく、0.6〜1.5質量%であることがより好ましく、0.7〜1.5質量%であることがさらに好ましく、0.7〜1.1質量%であることがさらに好ましい。
本発明のトマトケチャップ中のカリウムの含有量とは、トマトケチャップの製造において配合したカリウム塩に由来するカリウムと、トマト原料等の他の原料に由来するカリウムとの合計量であり、原子吸光光度計により測定することができる。
【0012】
本発明のトマトケチャップは、特定量のナトリウム((C)成分)を含有する。当該ナトリウムは、食品成分表示上の「ナトリウム」または「Na」を指し、トマトケチャップ中に塩の形態で存在するものをいう。
本発明のトマトケチャップ中のナトリウムの含有量は、0.1〜1.55質量%であるが、生のトマトの香味をより引き立たせ、味のまとまりを向上させるために、0.1〜1.5質量%であることが好ましく、0.1〜1.2質量%であることがより好ましく、0.2〜1.2質量%であることがさらに好ましく、0.2〜1質量%であることが特に好ましい。
本発明のトマトケチャップ中のナトリウムの含有量とは、トマトケチャップの製造において配合したナトリウム塩に由来するナトリウムと、トマト原料等の他の原料に由来するナトリウムとの合計量であり、原子吸光光度計により測定することができる。
【0013】
本発明のトマトケチャップは、生のトマトの香味をより引き立たせ、味のまとまりを向上させるために、当該トマトケチャップ中の糖質の含有量に対するカリウムの含有量の比率(カリウム/糖質、質量比)が0.021〜0.09であることが好ましく、0.025〜0.058であることがより好ましい。
【0014】
また、本発明のトマトケチャップは、生のトマトの香味をより引き立たせ、味のまとまりを向上させるために、当該トマトケチャップ中のカリウムの含有量x(質量%)とナトリウムの含有量y(質量%)が下記式(I)を満たすことが好ましく、下記式(II)を満たすことがより好ましい。

−0.5x+0.6≦y≦−0.9x+2.3(x>0、y>0) (I)
−0.5x+0.8≦y≦−0.9x+1.8(x>0、y>0) (II)

【0015】
また、本発明のトマトケチャップは、電子レンジ加熱後の蒸れた臭いの抑制、カリウム由来の異味の抑制、及び素材の香りの向上の観点から、当該トマトケチャップ中のカリウムの含有量x(質量%)に対するナトリウムの含有量y(質量%)(Na/K)が0.05〜1.2であることが好ましく、さらに0.2〜1であることが好ましく、さらに0.5〜0.9であることが好ましく、さらに0.5〜0.7であることが好ましい。
【0016】
本発明のトマトケチャップには、風味をより高める観点から、アスパラギン酸もしくはその塩又はこれらの組み合わせが含有されていることも好ましい。アスパラギン酸の塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アスコルビン酸等の有機酸との酸付加塩、カルシウム等のアルカリ土類金属、アンモニウム等の無機塩基との塩、アミンやアルカノールアミン等の有機塩基との塩が挙げられる。アミンとしては、メチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等が挙げられる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0017】
トマト含有調味料中、アスパラギン酸もしくはその塩又はこれらの組み合わせの含有量は、風味の点から、アスパラギン酸換算で、0.13〜1.13質量%であることが好ましく、0.14〜1質量%であることがより好ましく、0.2〜0.9質量%であることがより好ましく、0.3〜0.9質量%であることがさらに好ましく、0.6〜0.9質量%であることがさらに好ましい。アスパラギン酸換算での含有量とは、後述の実施例に記載するようにアミノ酸分析計により測定した値である。
【0018】
本発明のトマトケチャップに配合されるトマト原料としては、生鮮トマト、ホールトマト、ダイストマト、トマトピューレ、トマトペースト、及びトマトジュースを挙げることができる。すなわち、本発明のトマトケチャップには、生鮮トマトの他、生鮮トマトを加熱処理したもの、搾汁したもの、煮詰めたもの、加熱殺菌したもの等を用いることができる。トマト原料の材料となるトマト(Lycopersicum esculentum P. Mill)は、完熟した赤色の、又は赤みを帯びたトマトの果実であることが好ましい。
【0019】
上記ホールトマトとは、トマトを丸ごと水煮にしたものをいう。
上記ダイストマトとは、トマトを皮ごとサイの目にカットしたものをいう。
上記トマトピューレとは、濃縮トマトのうち、無塩可溶性固形分が24質量%未満のもの、又はこれに少量の食塩、香辛料、野菜類、レモン及び/又はpH調整剤を加えたもので、無塩可溶性固形分が24質量%未満のものをいう。
また、トマトペーストとは、濃縮トマトのうち、無塩可溶性固形分が24質量%以上のもの、又はこれに少量の食塩、香辛料、野菜類、レモン及び/又はpH調整剤を加えたもので、無塩可溶性固形分が24質量%以上のものをいう。
上記トマトジュースとは、トマトを破砕して搾汁し、又は裏ごしし、皮、種子等を除去したもの(以下、トマトの搾汁という。)又はこれに食塩を加えたもの、又は濃縮トマトを希釈して搾汁の状態に戻したもの又はこれに食塩を加えたものをいう。
上記濃縮トマトとは、トマトを破砕して搾汁し、又は裏ごしし、皮、種子等を除去した後濃縮したもので無塩可溶性固形分が8質量%以上のものをいう。また、上記濃縮トマトは粉末状及び固形状のものが除かれている。
【0020】
本発明に用いるトマト原料は加熱殺菌されたものであってもよい。当該加熱殺菌条件に特に制限はないが、100℃以下で120分を超えない時間加熱殺菌したものであることが好ましく、70〜100℃で10秒間〜90分間加熱殺菌したものであることがより好ましい。
【0021】
本発明のトマトケチャップは、1種又は2種以上のトマト原料を用いて製造される。本発明に用いるトマト原料は、トマトペースト、トマトピューレ、濃縮トマトから選択される1種又は2種以上であることが好ましく、トマトペーストであることがより好ましい。
【0022】
本発明のトマトケチャップに配合される上記トマト原料の量に特に制限はないが、適度なトマト感を付与する観点から、10〜80質量%の濃度で配合する(すべての原料を配合した後の終濃度が10〜80質量%になるように配合することを意味する。以下同様。)ことが好ましい。本発明に用いるトマト原料が生鮮トマト、ホールトマト、ダイストマト及びトマトジュースから選ばれる1種又は2種以上である場合には、トマト原料は15〜75質量%の濃度で配合することがより好ましく、20〜50質量%の濃度で配合することがさらに好ましい。また、トマトピューレをトマト原料として用いる場合には、トマト原料は12〜70質量%の濃度で配合することがより好ましく、15〜65質量%の濃度で配合することがさらに好ましい。また、トマトペーストをトマト原料として用いる場合には、トマト原料は11〜60質量%の濃度で配合することがより好ましく、15〜55質量%の濃度で配合することがさらに好ましい。
【0023】
本発明のトマトケチャップに配合される糖類、糖アルコール類、及び/又は多糖類に特に制限はなく、例えば、上白糖、三温糖、グラニュー糖、白ざら糖、中ざら糖、黒砂糖、角砂糖、氷砂糖、和三盆糖、砂糖ブドウ糖果糖液糖、グルコース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、マルトース、トレハロース、液糖、転化糖、水飴、エリスリトール、キシリトール、グリセロール、ソルビトール、還元水飴、澱粉、デキストリン等が挙げられる。本発明のトマトケチャップには、糖類、糖アルコール、多糖類から選択される1種又は2種以上の成分が1〜50質量%の濃度で配合されることが好ましく、10〜40質量%の濃度で配合されることがより好ましい。
【0024】
本発明のトマトケチャップに配合されるカリウム塩は、無機カリウム塩であっても有機酸のカリウム塩であってもよい。無機カリウム塩としては、塩化カリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム等が挙げられる。また、有機酸のカリウム塩としては、アミノ酸のカリウム塩、イノシン酸カリウムやグアニル酸カリウム等の核酸のカリウム塩、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、クエン酸カリウム等が挙げられる。本発明のトマトケチャップには、上記カリウム塩の1種又は2種以上を配合することができるが、コスト面から、塩化カリウムを好適に配合することができる。
本発明のトマトケチャップには、上記カリウム塩が0.1〜10質量%の濃度で配合されることが好ましく、0.5〜7質量%の濃度で配合されることがより好ましく、1〜5質量%の濃度で配合されることがさらに好ましい。
【0025】
本発明のトマトケチャップに配合されるナトリウム塩は、無機ナトリウム塩であっても有機酸のナトリウム塩であってもよい。上記無機ナトリウム塩としては、塩化ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム等が挙げられる。また、上記有機酸のナトリウム塩としては、アミノ酸のナトリウム塩、イノシン酸ナトリウムやグアニル酸ナトリウム等の核酸のナトリウム塩、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。本発明のトマトケチャップには、上記ナトリウム塩の1種又は2種以上を配合することができるが、コスト面から、塩化ナトリウムを好適に配合することができる。ナトリウム塩を配合する目的で、天然塩、天日塩、岩塩、食卓塩等の食塩を配合してもよい。
本発明のトマトケチャップには、上記ナトリウム塩が0.01〜10質量%の濃度で配合されることが好ましく、0.05〜7質量%の濃度で配合されることがより好ましく、0.1〜5質量%の濃度で配合されることがさらに好ましい。
【0026】
本発明のトマトケチャップには香辛料が配合されていてもよい。当該香辛料に特に制限はなく、例えば、パプリカ、シナモン、オールスパイス、クローブ、トウガラシ、ナツメグ、タイム、ローレル、ニッケイ、セイジ、コショウ等又はこれらの抽出物が挙げられる。本発明のトマトケチャップには、香辛料が0.01〜5質量%の濃度で配合されることが好ましく、0.05〜3質量%の濃度で配合されることがより好ましい。
【0027】
本発明のトマトケチャップには食酢が配合されていてもよい。当該食酢に特に制限はなく、例えば、穀物酢、果実酢、米酢、醸造酢、ホワイトビネガー、ワインビネガー、りんご酢等が挙げられる。また、これらを原料とした高酸度酢を用いてもよい。本発明のトマトケチャップには、食酢が1〜30質量%の濃度で配合されることが好ましく、3〜20質量%の濃度で配合されることがより好ましい。
【0028】
本発明のトマトケチャップには、たまねぎ及び/又はにんにくが配合されていてもよい。たまねぎ及びにんにくは、細かな粒子状又はペースト状で配合することにより、トマトケチャップ中における分布が均質となり、なめらかなペースト状のトマトケチャップが得られる。本発明のトマトケチャップには、たまねぎ及び/又はにんにくが0.01〜10質量%の濃度で配合されることが好ましく、0.05〜5質量%の濃度で配合されることがより好ましい。
【0029】
本発明のトマトケチャップには、酸味料が配合されていてもよい。酸味料に特に制限はなく、例えばクエン酸、DL−リンゴ酸、かんきつ類の果汁、酢酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、グルコン酸、フィチン酸、酒石酸、リン酸等が挙げられる。
【0030】
本発明のトマトケチャップには、糊料が配合されていてもよい。糊料に特に制限はなく、例えばタマリンドシードガム、ペクチン、キサンタンガム、カラギーナン、グアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、モナトウガム、アラビアガム、アルギン酸塩類、トラガントガム、ポリデキストロース、セルロース類、加工澱粉類、プルラン、カードラン、ゼラチン、大豆多糖類等の天然物、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール類等の化学合成品のガム類等が挙げられる。
【0031】
本発明のトマトケチャップは、さらに野菜類、果実類、キノコ類、海藻類、魚介類、肉類、畜肉加工品、乳製品、穀類、卵類、食用油、酒類、無機塩、糖類、甘味料、乳化剤、保存料、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、着色料、香料、水など食品に使用可能な各種添加物が適宜配合されていてもよい。
【0032】
本発明のトマトケチャップは通常の方法で製造することができ、例えば、前述した原料を混合して均質化することで得ることができる。本発明のトマトケチャップは、充填及び殺菌されたものであることが好ましい。
本発明のトマトケチャップの可溶性固形分は25質量%以上である。可溶性固形分は、日本農林規格品質表示基準食品編(中央法規出版発行)に記載された方法で測定することができる。
【0033】
本発明のトマトケチャップの製造においては、いずれかの工程で加熱処理が施されるが、通常には少なくとも殺菌工程で加熱処理が施される。また、加熱しながら均質化してもよい。加熱温度は70〜100℃であることが好ましく、より好ましくは75〜100℃で10秒間〜90分間、さらに好ましくは80〜100℃で30秒間〜60分間加熱処理することが、風味、殺菌性の観点から好ましい。また、密封系で(レトルト)加熱の場合は、100〜130℃が好ましく、加熱時間は10秒間〜20分間が好ましい。より好ましくは100〜120℃で加熱時間は20秒間〜10分間、更に好ましくは101〜110℃で加熱時間は30秒間〜8分間である。
【0034】
加熱方法としては、例えば、(1)レトルトパウチや金属缶容器等の加熱殺菌できる容器を用いる場合には、容器に充填後、食品衛生法に定められた殺菌条件で加熱殺菌して製造する方法;(2)PETボトル、紙容器等のレトルト殺菌できない容器を用いる場合には、あらかじめ上記と同様の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器等を用いて高温短時間で殺菌する工程を経て、一定の温度まで冷却して容器に充填する等の方法が挙げられる。
【0035】
上記加熱処理により、トマトケチャップを適切に殺菌することができ、また、トマトケチャップをよりなめらかなペースト状にすることができるが、従来組成のトマトケチャップでは、生のトマトに特有の新鮮な香味が損なわれてしまい、トマトの風味がぼやけたものとなっていた。
これに対し、本発明のトマトケチャップは、加熱処理を施しても、生のトマトに特有の新鮮な香味をより鮮明に感じることができる。
【0036】
本発明のトマトケチャップは、各種食品又は食品材料の味付けに広く用いることができる。
【0037】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
[分析方法]
糖質の含有量測定:
「五訂 日本食品標準成分表 分析マニュアルの解説」(中央法規)に記載の方法に従い、トマトケチャップ中の水分を減圧加熱乾燥法により、たんぱく質をケルダール法により、脂質を酸分解法により、食物繊維を酵素−重量法により、灰分を直接灰化法により測定した。トマトケチャップ全量から水分、たんぱく質、脂質、食物繊維及び灰分の合計量を差し引くことで糖質の含有量を求めた。
【0039】
カリウム(K)及びナトリウム(Na)の含有量測定:
原子吸光光度計(偏光ゼーマン原子吸光光度計 日立 Z−6100)を用いてNa及びKの含有量を測定することで算出した。
【0040】
可溶性固形分(Brix)の測定:
糖用屈折計(デジタル糖度計 IPR-201α、アズワン社製)を用いて20℃において測定した。
【0041】
アスパラギン酸の測定
高速アミノ酸分析計(株式会社日立ハイテクノロジーズ L―8800A)を用いてアスパラギン酸の含有量を測定し、トマトケチャップ中のアスパラギン酸の含有量を算出した。
【0042】
[調製例1] トマトケチャップの調製−1
トマトペースト(カゴメ社製)、塩化ナトリウム(NaCl、和光純薬社製)、塩化カリウム(KCl、和光純薬社製)、醸造酢(ミツカン社製)、還元水飴(三菱商事フードテック社製)、たまねぎ、香辛料及び水を下記表1に記載の配合組成で配合し(表1中の配合量の単位:質量部)、ホモジナイザー(ULTRA DISPERSER LK-22、ヤマト科学社製)を用いて十分攪拌して均質化し、90℃で5分間加熱処理することで、トマトケチャップ中のナトリウムの含有量が0.6質量%である各種トマトケチャップを得た(本発明品(1)〜(20)、比較品(1)〜(22))。なお、下表には、得られたトマトケチャップ中の可溶性固形分、糖質、カリウム及びナトリウムの含有量(質量%)、カリウム/糖質、ナトリウム/カリウム(いずれも質量比)も併せて示す。また、表中、式(I)及び式(II)のカラムには各式の充足性を示した。「Y」は各式の条件を満足すること、「N」は満足しないことを示す。
【0043】
【表1】

【0044】
[試験例1] トマトケチャップの官能評価−1
上記調製例1で得られた各トマトケチャップについて、フレッシュ感、味のまとまり(味のバランス)を、それぞれ下記評価基準により評価した。評価数値は5名の専門パネルにより決定した。
【0045】
フレッシュ感の評価基準:
8:生のトマトに感じる新鮮な香味を非常に強く感じる。
7:生のトマトに感じる新鮮な香味をとても強く感じる。
6:生のトマトに感じる新鮮な香味を強く感じる。
5:生のトマトに感じる新鮮な香味をやや強く感じる。
4:生のトマトに感じる新鮮な香味を感じる。
3:生のトマトに感じる新鮮な香味をあまり感じない。
2:生のトマトに感じる新鮮な香味をほとんど感じない。
1:生のトマトに感じる新鮮な香味を全く感じない。
【0046】
味のまとまりの評価基準:
6:塩味、うま味、甘味、酸味のバランスが非常に良い。
5:塩味、うま味、甘味、酸味のバランスがとても良い。
4:塩味、うま味、甘味、酸味のバランスが良い。
3:塩味、うま味、甘味、酸味のバランスがやや崩れている。
2:塩味、うま味、甘味、酸味のバランスがより崩れている。
1:塩味、うま味、甘味、酸味のバランスが悪い。
【0047】
結果を上記表1に示す。
【0048】
表1に示すように、糖質の含有量が本発明で規定するよりも低い比較品(1)〜(7)は、そもそもトマトケチャップらしさが感じられなかった。糖質の含有量が本発明で規定するよりも高い比較品(16)〜(22)、カリウムの含有量が本発明で規定するよりも低い比較品(8)、(10)、(12)及び(14)、並びに、カリウムの含有量が本発明で規定するよりも高い比較品(9)、(11)、(13)及び(15)は、フレッシュ感及び味のまとまりのいずれか又は双方において劣るものであった。
一方、糖質、カリウム及びナトリウムのいずれの含有量も本発明で規定する範囲内である本発明品(1)〜(20)は、フレッシュ感と味のまとまりのいずれにおいても一定以上の評価が得られた。
【0049】
また、本発明品(1)〜(20)の中でも、糖質の含有量に対するカリウムの含有量(K/糖質、質量比)が所定の範囲内にあるものは、トマトのフレッシュ感と味のまとまりにおいてより高い評価となった。
【0050】
[調製例2] トマトケチャップの調製−2
下記表2に記載の配合組成で各原料を配合し(表2中の配合量の単位:質量部)、ホモジナイザー(ULTRA DISPERSER LK-22、ヤマト科学社製)を用いて十分攪拌して均質化し、90℃で5分間加熱処理することで、各種トマトケチャップを得た(本発明品(21)〜(52)、比較品(23)〜(34))。
【0051】
【表2】

【0052】
[試験例2] トマトケチャップの官能評価−2
上記調製例2で得られた各トマトケチャップについて、フレッシュ感、味のまとまりを、それぞれ上記評価基準により評価した。評価数値は5名の専門パネルにより決定した。
結果を上記表2に示す。
【0053】
表2に示すように、カリウムの含有量が本発明で規定するよりも低い比較品(23)及び(25)〜(30)並びにカリウムの含有量を本発明で規定するよりも高めた比較品(32)〜(34)は、フレッシュ感及び味のまとまりのいずれか又は双方に劣るものであった。また、カリウムの含有量が本発明で規定する範囲内であっても、ナトリウムの含有量が本発明で規定する範囲外である比較品(24)及び(31)もまた、フレッシュ感及び味のまとまりのいずれか又は双方に劣るものであった。
一方、糖質、カリウム及びナトリウムのいずれの含有量も本発明で規定する範囲内である本発明品(21)〜(52)は、フレッシュ感及び味のまとまりのいずれにも優れていた。
【0054】
また、本発明品(21)〜(52)の中でも、カリウムの含有量とナトリウムの含有量とが特定の関係を有する場合に、トマトのフレッシュ感がより高まり、かつ良好な味を呈した。
【0055】
[調製例3] トマトケチャップの調製−3
下記表3に記載の配合組成で各原料を配合し(表3中の配合量の単位:質量部)、ホモジナイザー(ULTRA DISPERSER LK-22、ヤマト科学社製)を用いて十分攪拌して均質化し、90℃で5分間加熱処理することで、各種トマトケチャップを得た(本発明品(53)〜(58)、比較品(35))。
【0056】
【表3】

【0057】
[試験例3] トマトケチャップの官能評価−3
上記調製例2で得られた各トマトケチャップについて、フレッシュ感、味のまとまりを、それぞれ上記評価基準により評価した。さらに、各トマトケチャップ10gを20mLのガラス製サンプル瓶に充填し、蓋を閉めた後に電子レンジで600W、10秒間加熱した。冷却後のトマトケチャップの蒸れた臭い、異味、及び素材の香りについて、それぞれ下記評価基準により評価した。評価数値は5名の専門パネルにより決定した。
結果を上記表3に示す。
【0058】
蒸れた臭いの評価基準:
5:蒸れた臭いが感じられない。
4:蒸れた臭いがあまり感じられない。
3:蒸れた臭いがわずかに感じられる。
2:蒸れた臭いが感じられる。
1:蒸れた臭いが強く感じられる。
【0059】
素材の香りの評価基準:
5:たまねぎやスパイスの香りが強く感じられる。
4:たまねぎやスパイスの香りがやや強く感じられる。
3:たまねぎやスパイスの香りがわずかに感じられる。
2:たまねぎやスパイスの香りがあまり感じられない。
1:たまねぎやスパイスの香りが殆ど感じられない。
【0060】
異味の評価基準:
5:カリウム由来の異味が感じられない。
4:カリウム由来の異味があまり感じられない。
3:カリウム由来の異味がわずかに感じられる。
2:カリウム由来の異味が感じられる。
1:カリウム由来の異味が強く感じられる。
【0061】
表3に示すように、カリウムの含有量とナトリウムの含有量とが特定の関係を有する本発明品(53)〜(58)は、フレッシュ感と味がより良好になることがわかった。また、ナトリウム/カリウムの質量比率が特定の範囲であると、電子レンジ加熱後のトマトケチャップの蒸れた臭いが抑えられ、かつカリウム由来の異味も抑えられ、さらに素材の香りが引き立つ結果となった。また、加熱後のトマトケチャップはいずれもフレッシュ感と味の双方が良好に保たれていた。
【0062】
[調製例4] トマトケチャップの調製−4
トマトペースト(カゴメ社製)、塩化ナトリウム(NaCl、和光純薬社製)、塩化カリウム(KCl、和光純薬社製)、アスパラギン酸ナトリウム(キリン協和フーズ社製)、醸造酢(ミツカン社製)、還元水飴(三菱商事フードテック社製)、たまねぎ、香辛料及び水を下記表4に記載の配合組成で配合し(表4中の配合量の単位:質量部)、ホモジナイザー(ULTRA DISPERSER LK-22、ヤマト科学社製)を用いて十分攪拌して均質化し、90℃で5分間加熱処理すること、あるいは密閉系で120℃に達してから5分間加熱処理を実施することで、各種トマトケチャップを得た(本発明品(59)〜(67))。
【0063】
【表4】

【0064】
[試験例4] トマトケチャップの官能評価−4
上記調製例4で得られた各トマトケチャップについて、フレッシュ感を、それぞれ上記評価基準により評価した。
結果を上記表4に示す。
【0065】
表4に示すようにアスパラギン酸を所定量含有するトマトケチャップは、フレッシュ感がより高められており、120℃における密封加熱後においてもなおフレッシュ感が損なわれることがなかった。なお、本発明品(59)〜(67)は120℃における密封加熱後においても味のまとまりに優れていた。
【0066】
以上の結果から、本発明のトマトケチャップは、生のトマトが有する新鮮な香味が高められており、しかも味のまとまりにも優れたトマトケチャップであることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)成分を含有するトマトケチャップ:
(A)糖質 12〜31質量%、
(B)カリウム 0.6〜1.9質量%、及び
(C)ナトリウム 0.1〜1.55質量%。
【請求項2】
糖質の含有量に対するカリウムの含有量(カリウム/糖質、質量比)が、0.021〜0.09である、請求項1に記載のトマトケチャップ。
【請求項3】
糖質の含有量に対するカリウムの含有量(カリウム/糖質、質量比)が、0.025〜0.058である、請求項2に記載のトマトケチャップ。
【請求項4】
カリウムの含有量x(質量%)とナトリウムの含有量y(質量%)が下記式(I)を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトマトケチャップ。
−0.5x+0.6≦y≦−0.9x+2.3(x>0、y>0) (I)
【請求項5】
カリウムの含有量x(質量%)とナトリウムの含有量y(質量%)が下記式(II)を満たす、請求項4に記載のトマトケチャップ。
−0.5x+0.8≦y≦−0.9x+1.8(x>0、y>0) (II)
【請求項6】
カリウムの含有量に対するナトリウムの含有量(ナトリウム/カリウム、質量比)が、0.05〜1.2である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のトマトケチャップ。
【請求項7】
カリウムの含有量に対するナトリウムの含有量(ナトリウム/カリウム、質量比)が、0.2〜1である、請求項6に記載のトマトケチャップ。
【請求項8】
アスパラギン酸もしくはその塩又はこれらの組み合わせを、アスパラギン酸換算で0.13〜1.13質量%含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のトマトケチャップ。
【請求項9】
アスパラギン酸もしくはその塩又はこれらの組み合わせを、アスパラギン酸換算で0.2〜0.9質量%含有する、請求項8に記載のトマトケチャップ。
【請求項10】
生鮮トマト、ホールトマト、ダイストマト、トマトピューレ、トマトペースト及びトマトジュースから選択される1種又は2種以上のトマト原料を含んでなる請求項1〜9のいずれか1項に記載のトマトケチャップ。