説明

トムソン刃切断機

【課題】トムソン刃の切断時に切断面の形が崩れないように、切断金型の交換を容易にすることを可能にするトムソン刃切断機を提供すること。
【解決手段】ハンドルにより駆動される切断金型の上刃が、固定された切断金型の下刃に対し上下方向に変位して該下刃の上に置かれたトムソン刃を切断する装置において、上記切断金型の下刃がトムソン刃の胴部に接する部分と刃先に接する部分とにより構成されており、トムソン刃の刃先に接する部分がトムソン刃の胴部に接する部分と容易に取付けおよび取り外し出来る構造であることを特徴とするトムソン刃切断機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トムソン刃、押罫、リード罫、ミシン刃等の帯刃を切断加工する、打抜金型を用いたトムソン刃切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
トムソン刃、押罫、リード罫、ミシン刃等の帯刃は皮革、紙、プラスチックシート、シート状木材等の押切加工に使用されるもので、通常は、折曲加工、切断加工により所定の形状寸法に加工されたのち、別途製作された基板の溝に植設されて、一群の帯刃による押切装置が製作される。
【0003】
押切装置の一例の刃先側から見た平面図を図8に、そのX−X’線での断面図を図4に示した。縦方向のトムソン刃(1)と横方向の押罫(2)が交差した状態で基板(33)に植設されている。
基板は図4に示すように通常は鉄板(35)と合板(34)の積層構造のものが用いられ、合板に帯刃を植設するための溝が刻設される。
【0004】
図3にはこの合板(34)に刻設された溝(36)の平面図を図8と対応させて示している。
全体としてトムソン刃(1)と押罫(2)を植設するための互いに交差した溝が形成されているが適宜間隔に不連続個所(37)が設けられて合板(34)がばらばらになることを防止している。
【0005】
図4に断面を示したようにこれらの押切装置では帯刃の大半が合板に埋まり先端部が露出している。たとえば、押罫(2)の中間の所定位置には、上記の不連続個所(37)を逃げるためにコの字状の切欠き部(4)が形成されている。このコの字状切り欠き部(4)はトムソン刃(1)にも同様に形成されている。
【0006】
また、トムソン刃(1)の刃先のわずかな高低差を調整するため、片方のトムソン刃の背面と鉄板(35)の間に所定厚さのテープ(38)が貼付されている。このテープの幅はトムソン刃(1)の厚さよりも大きく、トムソン刃の背面の両側にわずかながらはみ出している。そのため、押罫(2)の背面が隙間なく鉄板(35)に密着するように、押罫の端面と背面とが交わる隅部に、テープのはみ出しを逃げるための切欠部(5)を設ける必要がある。
【0007】
このように、帯刃を所定の長さに切断し、各種切欠部を形成する方法として用いられている従来のトムソン刃切断機の一例を図7に示した。
図7に示す切断機においては、本体(21)の下部に被加工物である長尺の帯刃を載せる載置台(22)を固着してその右端に下刃(23)を取付け、本体(21)の下刃(23)の上方に上下方向に摺動変位する上刃台(24)を設けてこれにハンドル(25)を係合させ、上刃台(24)の下端に上刃(26)を設ける構造となっている。
【0008】
これを使用して長尺のトムソン刃を切断するときは、載置台(22)上にトムソン刃を載せ、切断位置を切断機の下刃(23)の刃先に合わせてハンドル(25)を下方へ押圧すると、切断機の上刃(26)が下方へ変位して所定位置でトムソン刃を切断することができる。
【0009】
このような装置を用いて帯刃の切断加工を行う場合に、切断される帯刃の断面の形状に
合わせて異なる形状の下刃(切断金型の受け刃)を使用する従来の方法では、多くの点数の金型の準備が必要になるのみならず、金型の交換にかかる時間も無視出来ないものがあった。
【0010】
これに対して特許文献1では、長手方向に送られる長尺の帯刃をプレス装置により切断加工するための帯刃の打抜金型の形状を工夫することによって、型の位置を移動するのみで異なる位置に異なる形状の加工を行うことが出来る略T字状の打抜金型が提案されている。
この方法を用いて金型の交換を含む工程の制御を自動化することでその効果を最大限に発揮できるとされている。
【0011】
また、特許文献2には予め曲げ加工されたトムソン刃を、曲げ加工部に近接した位置で切断することができるように、ハンドルにより駆動される上刃(押し刃)が固定された下刃(受け刃)に対し上下方向に変位して下刃の上に置かれたトムソン刃を切断する装置において、上面に上記下刃が取付けられた基台に上下方向のガイド溝を形成するとともに、このガイド溝に沿って摺動変位し、上部が上記基台の上面上に突出した昇降部材を設け、この昇降部材の上記下刃取付位置に当る部分にトムソン刃の通る開口部を形成するとともに、この開口部の上の頂部にはり部を設け、そのはり部の上記下刃の刃先上方に上記上刃を取付け、上記はり部の上記上刃が取付けられていない側面に切欠部を形成し、上記基台内に上記ハンドルと上記昇降部材の係合機構を設けたトムソン刃の切断機が提案されている。
【0012】
特許文献1,2に提案された上記の方法によれば、切断の形状や位置によって異なる金型を使用することが必要であった従来の方法に比べて、金型や切断機の交換にかかる時間を短縮することが可能になった。
しかしながら、金型の交換は帯刃の種類や形状によっても必要となる場合があり、交換の頻度と程度を減らすためにさらなる改良が望まれていた。
【0013】
その一つは、帯状の刃のなかでも他の部分と比較して特に硬度の高い刃先部分を切断する位置の切断金型の摩耗であり、とくに帯状の刃の刃先部分の断面形状が異なる場合に必要となる、切断金型の刃先部分の受け部(通称「まくら」)の摩耗時の交換に手間がかかるという問題である。
一般的なトムソン刃切断機の刃材切断部位の模式図を図5に、その断面を図6に示した。
トムソン刃切断機は長尺の帯刃をプレス装置により切断加工するための打抜金型により断面の形状を崩さずに切断することが求められている装置である。
【0014】
トムソン刃は先端が鋭角になった刃先(15)と、刃先を連設した断面が長方形の胴部(14)からなり、トムソン刃の切断面を均一にするために切断金型の受け刃先端部(まくら)(12)はトムソン刃の刃先の断面を模した形状になっていることが多い。
トムソン刃は刃先(15)と胴部(14)で硬度が異なる場合が多く、トムソン刃を切断するための金型は部位によって摩耗具合が異なる。また刃先の形状も多種多様であり、それぞれの形状に合わせた切断金型の受け刃を用いることが望ましい。
【0015】
トムソン刃においては、刃先の断面形状が重要となっており、図5に示す切断金型受け刃の「まくら」の部位(12)が磨耗した場合には断面の形状が崩れてしまうので、切断金型全体を交換する必要があり、手間と費用がかかる。
また、トムソン刃の刃先形状が変更となった場合も金型を交換する必要があり、手間がかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】実用新案登録第3022859号公報
【特許文献2】実公平6−18795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
トムソン刃の切断時に切断面の形が崩れないように、切断金型の交換を容易にすることを可能にするトムソン刃切断機を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の請求項1に係る発明は、ハンドルにより駆動される切断金型の上刃が、固定された切断金型の下刃に対し上下方向に変位して該下刃の上に置かれたトムソン刃を切断する装置において、上記切断金型の下刃がトムソン刃の胴部に接する部分と刃先に接する部分とにより構成されており、トムソン刃の刃先に接する部分がトムソン刃の胴部に接する部分と容易に取付けおよび取り外し出来る構造であることを特徴とするトムソン刃切断機である。
【0019】
本発明の請求項2に係る発明は、切断金型の下刃のトムソン刃の刃先に接する部分の断面が該トムソン刃の断面に沿った面を有することを特徴とする請求項1に記載のトムソン刃切断機である。
【0020】
本発明の請求項3に係る発明は、切断金型の下刃のトムソン刃の刃先に接する部分の硬度が該トムソン刃の胴部に接する部分の硬度よりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載のトムソン刃切断機である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るトムソン刃切断機によれば、受け刃の切断金型を、トムソン刃の刃先に接する部分(まくら部)とトムソン刃の胴部に接する部分(胴部)とに分割し、容易に取付けおよび取り外し出来る構造として、まくら部をボルトやエアシリンダで固定することで切断金型の全体を交換することなく金型の一部だけを交換することによって手間と時間をかけることなく交換することが出来る。
【0022】
また、まくら部の金型を数種類持っておくことで、断面形状の異なる複数種類のトムソン刃材にも手間無く対応することが出来る。
その結果トムソン刃の切断工程における切断金型交換の手間を少なくして、かつ切断金型費用の削減を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のトムソン刃切断機の一例の刃材切断部位断面模式図
【図2】本発明のトムソン刃切断機の他の一例の刃材切断部位断面模式図
【図3】図8に示す押切装置の基板33を示す平面図
【図4】図8のX−X′断面模式図
【図5】トムソン刃切断機の刃材切断部近辺の模式説明図
【図6】従来のトムソン刃切断機の刃材切断部位断面模式図
【図7】トムソン刃切断機の説明図
【図8】帯刃の用途説明図(押切装置の一部を刃先側から見た平面図)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、必要に応じて図面を参照しながら、本発明のトムソン刃切断機の実施の形態の
一例について説明する。
図5は従来のトムソン刃切断機の刃材切断部近辺の模式説明図である。図6は図5のトムソン刃切り口方向から見たトムソン刃切断機の刃材切断部位断面模式図である。
【0025】
図5に示したトムソン刃切断機において、切断対象の長尺のトムソン刃はその刃先部分を図の左側にして、その胴部(14)を図の右側にして、載置台上を紙面表裏方向に移動するようになっている。
刃材切断部において上下の矢印方向に摺動可能な上部の切断金型の押し刃(10)と下部の切断金型の受け刃(11)との間でトムソン刃は押圧切断される。このとき、トムソン刃の刃先に接する切断金型の下刃の部分(まくら)の断面がトムソン刃の刃先部分の断面に沿った面となっていることによって切断された刃先の断面は崩れることなく均一な形状を保つことが出来る。
【0026】
図6には切断対象の長尺のトムソン刃が、その刃先部分(15)を右側にして、その胴部(14)を左側にして載置台上を紙面表裏方向に移動する状態の刃材切断部の断面を示した。
刃材切断部において上下の矢印方向に摺動可能な上部の切断金型の押し刃(10)と下部の切断金型の受け刃(11)との間でトムソン刃は押圧切断される。トムソン刃の刃先(15)に接する切断金型の下刃の部分(12)の断面がトムソン刃の刃先部分の断面に沿った面となっていることによって切断されたトムソン刃の刃先の断面は崩れることなく均一な形状を保つ。
【0027】
しかしながら、トムソン刃の刃先の部分(15)は通常トムソン刃の胴部(14)よりも高硬度であり下部の切断金型の受け刃(11)との間でトムソン刃が押圧切断される時も切断金型のトムソン刃の刃先に接する受け刃部分(12)の方が磨耗しやすい。
このような場合、従来の切断機においては切断金型の一部が磨耗しても金型全体を交換しなければならない。また切断金型の磨耗しやすい一部の部位だけを焼き入れ等の方法で硬度を上げることは非常に面倒であり実用的ではない。
【0028】
本発明においては、切断金型のうちでも特に磨耗しやすい部位のみを容易に交換できるようにすることによってこの問題を解決した。
すなわち、切断金型のトムソン刃の刃先に接する磨耗しやすい受け刃部分(12)を分離して簡単に交換可能とした。
また、分離した切断金型のトムソン刃の刃先に接する磨耗しやすい受け刃部分(12)の断面をトムソン刃の刃先部分の断面に沿った面とすることによって切断時の断面の崩れを防止することが出来た。
さらに、分離した受け刃部分の硬度を他の部分よりも高い材質の素材を使用することによって切断の繰り返しに伴う受け刃の磨耗を低減することが出来た。
【0029】
図1と図2は本発明のトムソン刃切断機の一例の刃材切断部位の断面模式図である。
図1においては切断金型の受け刃(11)を二つの部分すなわち、トムソン刃の刃先に接する部分(12)とトムソン刃の胴部に接する部分(13)に分離したものを留めネジ(16)を用いて結合した断面を示している。
この場合、切断金型の受け刃のトムソン刃の刃先に接する部分(12)の材質にトムソン刃の胴部に接する部分(13)の材質よりも硬度の高い素材を用いることによって、受け刃のそれぞれの部分の磨耗を均一にして交換の間隔をより長期にすることが出来る。
【0030】
図2においても同様でありトムソン刃の刃先に接する部分(12)のみを交換することによって、この場合も切断金型のトムソン刃の胴部に接する部分(13)は図7の場合と同じものを交換しないで使うことが出来る。
本発明のトムソン刃切断機によれば、このようにまだ磨耗していない切断金型のトムソン刃の胴部に接する部分(13)を生かして、全体を交換することなく切断金型の寿命を有効に活用するというやり方が可能になる。
【0031】
図1と図2の本発明のトムソン刃切断機の違いはトムソン刃の刃先(15)の断面の角度が異なるので切断金型のトムソン刃の刃先に接する受け刃部分(12)の角度をそれに沿う形状に変えたことである。
【0032】
このようにして本発明のトムソン刃切断機によれば、切断面の断面形状の異なるトムソン刃の場合にもトムソン刃の刃先に接する切断金型の受け刃部分(12)の交換のみで容易に対応できて交換時間と費用を気にすることなくトムソン刃をはじめとする多種多様な長尺の帯状刃の切断に対応することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のトムソン刃切断機は、トムソン刃の切断加工のみならず、トムソン刃、押罫、リード罫、ミシン刃等の帯状の長尺刃の押切による切断加工において、切断時に切断面が崩れないようにするための簡単で効果的な構成の装置として幅広く応用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…トムソン刃
2…押罫
3…背面
4…コの字状切欠部
5…隅切欠部
10…切断金型(押し刃)
11…切断金型(受け刃)
12…切断金型(まくら受け刃)
13…切断金型(胴部受け刃)
14…トムソン刃(胴部)
15…トムソン刃(刃先)
16…留めネジ
22…載置台
23…下刃
24…上刃台
25…ハンドル
26…上刃
33…基板
34…合板
35…鉄板
36…基板に刻設された溝
37…溝の不連続箇所
38…テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルにより駆動される切断金型の上刃が、固定された切断金型の下刃に対し上下方向に変位して該下刃の上に置かれたトムソン刃を切断する装置において、上記切断金型の下刃がトムソン刃の胴部に接する部分と刃先に接する部分とにより構成されており、トムソン刃の刃先に接する部分がトムソン刃の胴部に接する部分と容易に取付けおよび取り外し出来る構造であることを特徴とするトムソン刃切断機。
【請求項2】
切断金型の下刃のトムソン刃の刃先に接する部分の断面が該トムソン刃の断面に沿った面を有することを特徴とする請求項1に記載のトムソン刃切断機。
【請求項3】
切断金型の下刃のトムソン刃の刃先に接する部分の硬度が該トムソン刃の胴部に接する部分の硬度よりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載のトムソン刃切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−161897(P2012−161897A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25821(P2011−25821)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】