説明

トラクション計測用試験装置

【課題】 トラクション係数を精密に求めることができるようにする。
【解決手段】 駆動側試験片15を取り付けた駆動側回転軸16にACサーボモータ17を連結する。負荷側試験片18を取り付けた負荷側回転軸19に、トルク計20と負荷トルク可変型のブレーキ装置21を連結し、更に、ロータリーエンコーダ22を装備する。
駆動側試験片15を負荷側試験片18の外周面に所要の予圧力を付した状態で押し付けるための予圧力付与手段23を備えてトラクション計測用試験装置を形成する。ACサーボモータ17により駆動側試験片15の回転数の正確な制御とトルク監視を行わせ、一方、負荷側試験片18の回転数はロータリーエンコーダ22により精密に計測させ、又、負荷側トルクは上記トルク計20の検出値をブレーキ装置21にフィードバックすることで精密に制御させることで、トラクション係数とすべり率の高精度計測を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦駆動機構における駆動ローラと該駆動ローラに接するスライドバーや、その他、2つの部材間に転がりすべりが生じる部分におけるトラクション係数や、耐久性の検証を行うために用いるトラクション計測用試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体関連の製造、検査等の精密な位置決めを行う精密機械では、搬送ステージ(搬送テーブル)等の移動体を該精密機械の固定部に対して移動させるときに、移動体の精密な位置決め、たとえば、μmオーダー以下の精度での位置決めを行うことができるようにすることが要求されることがある。
【0003】
そのために、上記のような精密機械における移動体を移動させると共に該移動体の精密な位置決めを行うことができるようにするための駆動機構として、搬送テーブルの移動方向に延びるスライドバーを固定部側に設け、且つ搬送テーブル側に、上記スライドバーの一側面に接触させる一側面側ローラと、上記スライドバーの他側面に接触させる複数の他側面側ローラと、上記各ローラのうちのいずれか1つのローラにたわみ継手を介して連結して、該ローラを駆動ローラとして回転駆動させるための駆動モータとを設けた構成の摩擦駆動機構が提案されている。
【0004】
上記構成としてある摩擦駆動機構によれば、上記駆動ローラを上記スライドバーの一側面に、又、他の各ローラをバックアップローラとして上記スライドバーの他側面にそれぞれ押し当てた状態にて、上記駆動モータの正逆転駆動により上記駆動ローラを回転駆動させることで、上記駆動ローラと上記スライドバーとの接触面に作用する摩擦を利用して、上記移動体としての搬送テーブルを上記スライドバーの長手方向に移動させることができるようにしてある。
【0005】
ところで、上記摩擦駆動機構における駆動ローラとスライドバーとの接触部分には、転がりすべりが生じることとなるため、上記駆動ローラの回転駆動による搬送テーブルの移動を正確に行わせたり、上記駆動ローラの回転駆動による搬送テーブルの移動を高効率で行わせるためには、上記転がりすべり部におけるトラクション性能が高いほど望ましいが、このトラクション性能を計測するためには、上記転がりすべり部におけるトラクション係数μやすべり率λを精密に測定する必要がある。
【0006】
なお、トラクション性能を試験するための装置としては、図3(イ)(ロ)にその一例の概略を示す如き二円筒形式(2ローラー形式)のものが従来提案されている。
【0007】
これは、固定基台1に駆動ローラ2の両端軸部3を軸受ベアリング4を介して回転自在に支持させると共に、該駆動ローラ2の片側の軸部3に、トルクメータ5と駆動モータ6が同軸に連結してある。上記固定基台1の上方には、可変基台7を上下方向に変位可能に設け、該可変基台7に、吸収ローラ8の両端軸部9を軸受ベアリング10を介して回転自在に支持させて、該吸収ローラ8の円周面が上記駆動ローラ2の円周面に対して接触するようにし、且つ該吸収ローラ8の片側の軸部9に、吸収モータ11が連結軸12を介して同軸に連結してある。更に、上記可変基台7の上面に載置したライナー13を介して負荷用シリンダ14を設けた構成として、該負荷用シリンダ14の押圧力により上記駆動ローラ2の円周面に対する吸収ローラ8の円周面の圧接負荷量を可変とすることができるようにした構成としてある。これにより、試験時に上記駆動モータ6と吸収モータ11に相対スピード差をつけることで、上記トルクメータ5によって駆動ローラ2と吸収ローラ8との間に生ずる摩擦力を測定することができるとされている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
又、図示してないが、二円筒形式の試験装置としては、電動機に連結した駆動ローラによって駆動される負荷側の円筒体にブレーキを連結してなる形式のものも従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平6−308016号公報
【特許文献2】特開昭63−1946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記図3(イ)(ロ)に示した従来の2つのローラ(円筒)2,8を用いた形式のトラクション性能の試験装置では、通常、トラクション係数を測定するために上記駆動ローラ2に連結した駆動モータ6と、吸収ローラ8に連結した吸収モータ11に、共に三相交流モータを使用するようにしてあることから、該各モータ6,11では、回転数制御やトルク監視を精密には行うことができないという問題がある。
【0011】
更に、トルク監視を行うためには、駆動モータ6の出力側にトルクメータ5を設ける必要が生じるというのが実状である。
【0012】
又、上記特許文献2に示されたように、負荷側にブレーキを備えた形式の二円筒形式の試験装置においても、電動機として通常は三相交流モータを用いるようにしてあるため、上記と同様に、回転数制御やトルク監視を精密に行うことができず、又、トルク監視を行うためには、電動機の出力側にトルク計を設ける必要が生じてしまう。
【0013】
そこで、本発明は、2つの円筒状の試験片の外周面同士を接触させた状態で回転させるときに駆動ローラの回転数の正確な制御を可能にすると共に、トルク計を用いることなく上記駆動ローラのトルク監視を行うことができて、トラクション係数の高精度計測を行うことができ、更には、耐久性検証試験を行うことも可能なトラクション計測用試験装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、円筒状の駆動側試験片を着脱可能に取り付けた駆動側回転軸にサーボモータの出力側を連結し、且つ上記駆動側試験片の側方に配置する円筒状の負荷側試験片を着脱可能に取り付けた負荷側回転軸に、トルク計と負荷トルク可変型のブレーキ装置を連結すると共に、該負荷側回転軸の所要個所にロータリーエンコーダを装備し、更に、上記駆動側回転軸に取り付けた駆動側試験片を、負荷側回転軸に取り付けた負荷側試験片の外周面に、所要の予圧力を付した状態で押し付けるための予圧力付与手段を備えてなる構成とする。
【0015】
又、上記構成において、駆動側試験片と負荷側試験片の外周面の摩耗量を計測するためのセンサを設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のトラクション計測用試験装置によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)円筒状の駆動側試験片を着脱可能に取り付けた駆動側回転軸にサーボモータの出力側を連結し、且つ上記駆動側試験片の側方に配置する円筒状の負荷側試験片を着脱可能に取り付けた負荷側回転軸に、トルク計と負荷トルク可変型のブレーキ装置を連結すると共に、該負荷側回転軸の所要個所にロータリーエンコーダを装備し、更に、上記駆動側回転軸に取り付けた駆動側試験片を、負荷側回転軸に取り付けた負荷側試験片の外周面に、所要の予圧力を付した状態で押し付けるための予圧力付与手段を備えてなる構成としてあるので、駆動側回転軸に取り付けて回転させる駆動側試験片の回転数をサーボモータにより正確に制御できると共に、該駆動側試験片のトルク監視を、上記サーボモータに付属しているサーボアンプの機能を利用してトルク計を用いることなく正確に行うことができる。
又、負荷側試験片の回転数は負荷側回転軸に装備したロータリーエンコーダにより正確に計測できると共に、上記負荷側試験片に作用する負荷側トルクは、上記トルク計の検出値を負荷トルク可変型のブレーキ装置にフィードバックすることで制御できる。したがって、駆動側試験片に精密な回転数を与えることができると共に、負荷側試験片の回転数を精密に計測することができ、更に、負荷側試験片に作用する負荷側トルクの常時監視や、負荷一定運転等の様々な試験を行うことが可能になるため、トラクション係数の高精度計測や、微小なすべり状態の検出等の高精度な試験を行うことができ、更には、負荷変動の少ない状態での耐久性検証試験を行うことが可能になる。よって、上記駆動側と負荷側の各試験片の材質変化によるトラクション係数や耐久性についての正確な評価を行うことが可能となる。
(2)駆動側試験片と負荷側試験片の外周面の摩耗量を計測するためのセンサを設けるようにした構成とすることにより、駆動側と負荷側の各試験片の外周面の摩耗のトレンドを計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1及び図2は本発明のトラクション計測用試験装置の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0019】
すなわち、先端部となる長手方向の一端部に同軸上に配した円筒状の駆動側試験片15を着脱可能に取り付けるための駆動側回転軸16を備え、且つ該駆動側回転軸16の基端側となる他端側に、駆動モータとなるACサーボモータ17の出力側を連結する。
【0020】
更に、上記駆動側試験片15の側方に配置する円筒状の負荷側試験片18を、先端部となる長手方向の一端部に同軸上に配置して着脱可能に取り付けるための負荷側回転軸19を備え、且つ該負荷側回転軸19の基端側となる他端側に、トルク計20と負荷トルク可変型のブレーキ装置21を連結すると共に、上記負荷側回転軸19の所要個所に、該負荷側回転軸19の回転数を計測するためのロータリーエンコーダ22を装備する。
【0021】
更に又、上記駆動側回転軸16に取り付けた状態の駆動側試験片15の外周面を、その側方に配される負荷側回転軸19に取り付けた状態の負荷側試験片18の外周面に、所要の予圧力を付与した状態で押し付けるための予圧力付与手段23を備えて、トラクション計測用試験装置を構成する。
【0022】
詳述すると、一軸方向に長い所要の矩形状としてある水平な支持架台24の長手方向一端寄りの上側に、上記支持架台24の長手方向と直角方向にスライド可能なスライド台25を設けて、上記駆動側回転軸16及びACサーボモータ17は上記スライド台25上に設ける一方、上記負荷側回転軸1とトルク計20とブレーキ装置21とロータリーエンコーダ22は、上記支持架台24の上に設けるようにしてある。
【0023】
具体的には、上記支持架台24における長手方向一端側の上側には、支持架台24の長手方向と直角方向に延びるリニアガイド26を設け、該リニアガイド26の上に上記スライド台25が取り付けてある。これにより、上記スライド台25を、上記支持架台24上にて、上記リニアガイド26の長手方向に、すなわち、支持架台24の長手方向と直角方向に移動させることができるようにしてある。
【0024】
上記スライド台25上における上記支持架台24の中央寄りとなる端部付近には、上記駆動側回転軸16を、所要の高さ位置で支持架台24の長手方向と平行に延びるよう配置して軸受27を介して回転自在に取り付け、該駆動側回転軸16における上記軸受27より支持架台24の中央側へ突出する長手方向一端部に、上記円筒状の駆動側試験片15を取り付けるようにしてある。更に、上記スライド台25における上記支持架台24の一端部と対応する端部寄り位置に、ACサーボモータ17を取付部材28を介して内向きに設置すると共に、該サーボモータ17の出力側を、上記駆動側回転軸16の長手方向他端部に連結した構成としてある。
【0025】
又、上記支持架台24の長手方向の中間部に、上記負荷側回転軸19を、上記スライド台25側に設けた駆動側回転軸16と水平方向にややずれた配置で支持架台24の長手方向と平行に延びるように配置して軸受29を介して回転自在に取り付け、該負荷側回転軸19における上記軸受29よりも上記スライド台25側へ突出する長手方向一端部に、上記円筒状の負荷側試験片18を取り付けるようにしてある。更に、上記負荷側回転軸19の長手方向他端側となる支持架台24の長手方向他端寄り位置に、上記トルク計20とブレーキ装置21とを、それぞれ取付部材30と31を介して設置して、該トルク計20とブレーキ装置21とを上記負荷側回転軸19の長手方向他端部に順次連結するようにしてある。更に又、上記支持架台24上における負荷側回転軸19近傍となる所要個所に支持台32を設けて、該支持台32上に、上記負荷側回転軸19の所要個所に装備させるための上記ロータリーエンコーダ22を取り付けるようにしてある。
【0026】
なお、上記駆動側回転軸16に取り付ける駆動側試験片15の円筒形状や、上記負荷側回転軸19に取り付ける負荷側試験片18の円筒形状に多少の誤差が生じている場合であっても、上記駆動側試験片15の外周面と、上記負荷側試験片18の外周面とを面接触させることができるようにすることが望まれる。このために、上記スライド台25は、上記リニアガイド26の上側に取り付けた下層部材25aと、上記駆動側回転軸16の軸受27及び上記ACサーボモータ17を設置した上層部材25bとからなる上下二層構造として、上記上層部材25bを、上記下層部材25a上にて所要個所を中心に水平方向に角度調整可能とすると共に、上記下層部材25a上にて任意の角度姿勢に調整した上記上層部材25bの外周部の複数個所を、ボルト止めする位置固定具25cで上記下層部材25aに対して固定することができるようにした構成としてある。これにより、上記スライド台25側に支持される上記駆動側回転軸16に取り付けた駆動側試験片15の円筒形状や、上記負荷側回転軸19に取り付けた負荷側試験片18の円筒形状に誤差が生じていた場合は、上記各位置固定具25cを緩めた状態で、上記下層部材25a上にて上記上層部材25bを水平方向に所要角度回転させて角度調整し、その後、上記上層部材25bを各位置固定具25cにより下層部材25aに再度固定することにより、上記駆動側試験片15の外周面と、上記負荷側試験片18の外周面とを正確に面接触させることができるようにしてある。
【0027】
上記予圧力付与手段23は、たとえば、上記支持架台24の長手方向一端側における上記スライド台25の移動方向片側の端縁部近傍位置、具体的には、上記スライド台25上に設けた駆動側回転軸16に取り付けた駆動側試験片15を、上記負荷側回転軸19に取り付けた負荷側試験片18に押し付ける際の押し付け方向の前方となる支持架台24の端縁部近傍位置に、一対の略L字形状のレバー33を、該各レバー33の一方の腕部が上記支持架台24の端縁部より外方に突出し且つ他方の腕部が上向きとなるように配置して、該各レバー33の屈曲部を、ブラケット34を介して上下方向へ揺動可能に上記支持架台24に取り付ける。
【0028】
上記各レバー33の上向きに配置した他方の腕部の先端部には、上記スライド台25の上面所要個所に取り付けた連結部材35をリンク部材36を介してそれぞれ連結する。更に、上記各レバー33の支持架台24の端縁部より外方に突出させた一方の腕部の先端部同士の間に連結ロッド部材37を取り付けると共に、該連結ロッド部材37に、上下方向に所要寸法延びて、下端側に錘載置台38を取り付けたロッド部材39の上端部を回動自在に連結した構成としてある。これにより、上記錘載置台38に所要重量の錘40を搭載することで、該錘40の荷重を、上記各レバー33を梃子にして上記連結部材35と一体に上記スライド台25を該各レバー33の設置個所側へ引く力として作用させることができるようにしてある。よって、上記錘載置台38に錘40を搭載することで、上記スライド台25上に軸受27を介して取り付けてある駆動側回転軸16に保持させる駆動側試験片15の外周面を、上記負荷側回転軸19に保持させた負荷側試験片18の外周面に押し付けて予圧力を発生させることができるようにしてあると共に、上記錘載置台38に搭載する錘40の重量を調整することで、上記予圧力の大きさを調整することができるようにしてある。
【0029】
更に、上記負荷側試験片18の表面近傍位置に、該負荷側試験片18の外周面との間隔の変化に伴う静電容量変化に基づいて該負荷側試験片18の外周面の摩耗量を検出する非接触式センサ41を配置して、上記ロータリーエンコーダ22と共用の支持台32に取り付けた構成としてある。これにより、上記負荷側試験片18を駆動側試験片15と面接触させて回転させた状態で、該負荷側試験片18の外周面の摩耗量をリアルタイムに検出できるようにしてある。
【0030】
又、上記スライド台25側の所要個所、たとえば、駆動側回転軸16の軸受27の外側面に、上記駆動側試験片15の外周面を負荷側試験片18の外周面に所要の予圧力で接触させた回転前の初期状態から生じる該軸受27の上記支持架台24に対する相対的な変位量を検出できるようにした接触式センサ42を設けた構成としてある。これにより、上記駆動側試験片15を負荷側試験片18と面接触させて回転させた状態で、該接触式センサ42による上記駆動側回転軸16の軸受27の上記支持架台24に対する相対的な変位量から、上記非接触式センサ41によって検出される負荷側試験片18の外周面の摩耗量を引いた差分として、上記駆動側試験片15の外周面の摩耗量をリアルタイムに検出できるようにしてある。
【0031】
43は錘載置台38の所要個所に上下方向に突設した錘40用のガイドロッドであり、上記錘載置台38に載置する各錘40に予め設けてある貫通孔44を上記ガイドロッド43に嵌合させることで、錘載置台38上に搭載する錘40の位置合わせと、脱落防止を図ることができるようにしてある。45は上記錘載置台38の下方位値となる支持架台24の下端部に設けた上下方向に延びるロッド状のガイド部材であり、該ガイド部材45に上記錘載置台38の所要個所に穿設してある貫通孔46を嵌合させることで、該錘載置台38の上下動以外の動き、たとえば、揺動を未然に防止できるようにしてある。
【0032】
以上の構成としてあるトラクション計測用試験装置を使用する場合は、予め、駆動側回転軸16に駆動側試験片15を、又、負荷側回転軸19に負荷側試験片18をそれぞれ取り付けた後、上記スライド台25の上層部材25bの角度を調整することで、上記駆動側試験片15と負荷側試験片18の外周面同士が面接触するようにしておく。更に、上記錘載置台38に所要重量の錘40を搭載して、上記駆動側試験片15の外周面を所要の予圧力を付した状態で上記負荷側試験片18の外周面に押し付けるようにしておく。
【0033】
この状態で、上記ACサーボモータ17により上記駆動側回転軸16と一体に駆動側試験片15を回転駆動させると、該駆動側試験片15と面接触している負荷側試験片18に回転駆動力が伝達されて、該負荷側試験片18が負荷側回転軸19を中心に回転させられるようになる。
【0034】
この際、上記駆動側試験片15の回転駆動にACサーボモータ17を用いるようにしてあることから、回転数の正確な制御が可能になると共に、該ACサーボモータ17に装備されている図示しないサーボアンプの機能を利用して、上記駆動側試験片15のトルク監視が行われるようになる。
【0035】
又、上記負荷側回転軸19に接続されているトルク計20により上記負荷側試験片18の負荷トルクが正確に計測されると共に、上記ロータリーエンコーダ22により負荷側回転軸19と一体に回転している負荷側試験片18の回転数が正確に計測されるようになる。
【0036】
この状態で、上記各試験片15,18同士の間のトラクション係数を計測する場合は、上記ACサーボモータ17による駆動側試験片15の回転数を一定に保持した状態にて、上記負荷側回転軸19に接続してある負荷トルク可変型のブレーキ装置21の負荷を徐々に増大させるようにして、トラクション係数μとすべり率λとを、以下の式により計測する。
μ=T/(P・R
λ={(N−N)/N}×100
ここで、
:負荷側トルク[N・m]
P :与圧力[N]
:負荷側ローラ径[m]
:駆動側回転数[rpm]
:負荷側回転数[rpm]
である。
【0037】
次いで、縦軸に上記トラクション係数μを、横軸に上記すべり率λをプロットすることで、図2に示す如きトラクションカーブを得ることができ、該トラクションカーブにおける線形限界点Aに達するまでの傾きとして、トラクション係数の値が求められるようになる。
【0038】
一方、上記各試験片15,18の耐久性を検証する試験を行う場合には、上記と同様にしてACサーボモータ17により上記駆動側回転軸16と一体に駆動側試験片15を回転駆動させ、該駆動側試験片15と面接触している負荷側試験片18へ回転駆動力を伝達させて、該負荷側試験片18を負荷側回転軸19を中心に回転させるようにした後、上記トルク計20により負荷側トルクを常時監視し、該トルク計20によって計測される負荷側トルクが所要の値で一定になるように、上記負荷トルク可変型のブレーキ装置21をフィードバック制御することで、負荷一定運転を行わせるようにし、この負荷一定運転を所要期間、たとえば、2週間程度継続させる。その後、上記駆動側と負荷側の各試験片15,18をそれぞれ取り外して、摩耗体積V[m]と、負荷側回転数より求めた転走距離L[m]とから、摩耗特性を示す摩耗体積比α[m/m]が、以下の式により求められる。
α=V/L
【0039】
更に、上記耐久性検証試験時には、上記したように、上記非接触式センサ41による検出結果より負荷側試験片18の外周面の摩耗量がリアルタイムで検出されると共に、上記接触式センサ42の検出結果と上記非接触式センサ41の検出結果とを基に、駆動側試験片15の外周面の摩耗量がリアルタイムで検出されるようになることから、上記駆動側と負荷側の各試験片15と18の外周面の摩耗のトレンド、たとえば、時間経過に比例して摩耗量が増加したり、時間経過と共に徐々に摩耗量が増加あるいは減少するといった傾向を把握することが可能になる。
【0040】
このように、本発明のトラクション計測用試験装置によれば、駆動側回転軸16に取り付けて回転させる駆動側試験片15の駆動にACサーボモータ17を用いるようにしてあることから、上記駆動側試験片15の回転数を正確に制御できると共に、該駆動側試験片15のトルク監視を、トルク計を用いることなく行うことができる。
【0041】
一方、負荷側試験片18の回転数は負荷側回転軸19に装備したロータリーエンコーダ22により正確に計測できる。又、上記負荷側試験片18に作用する負荷側トルクは、上記トルク計20の検出値をブレーキ装置21にフィードバックすることで制御できる。
【0042】
したがって、駆動側試験片15に精密な回転数を与えると同時に、負荷側試験片18の回転数を精密に計測することができ、更に、負荷側試験片18に作用する負荷側トルクの常時監視や、負荷一定運転等の様々な試験を行うことができて、トラクション係数の高精度計測を行うことができる。更に、微小なすべり状態の検出等の高精度な試験を行うことができると共に、負荷変動の少ない状態(外乱の少ない状態)での耐久性検証試験を行うことができる。よって、上記駆動側と負荷側の各試験片15と18の材質の変化によるトラクション係数や耐久性についての評価を行うことが可能となる。
【0043】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、支持架台24上における負荷側駆動軸19の軸受29、トルク計20、ブレーキ装置21の配置は、上記トルク計20やブレーキ装置21の形式に応じて適宜変更してもよい。スライド台25を設けるのは、サーボモータ17側でなく、トルク計20とブレーキ装置21側でも良い。
【0044】
予圧力付与手段23は、スライド台25上に設けた軸受27に支持させた駆動側回転軸16に取り付けてある駆動側試験片15を、支持架台24上に設けた軸受29に支持させた負荷側回転軸19に取り付けてある負荷側試験片18に所要の予圧力を付した状態で押し付けることができるようにしてあれば、たとえば、支持架台24と上記スライド台25との間に所要のアクチュエータを介在させて設ける等、図示した以外の任意の形式のものを採用してもよい。
【0045】
非接触式センサ41と接触式センサ42は、駆動側と負荷側の各試験片15,18の外周面の摩耗のトレンドを計測するという観点からすると設けることが望ましいが、上記各試験片15,18の外周面の摩耗のトレンドの計測が不要な場合は省略してもよい。
【0046】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のトラクション計測用試験装置の実施の一形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の試験装置によって得られるトラクション係数μを縦軸に、すべり率λを横軸にプロットして得たトラクションカーブを示す図である。
【図3】従来提案されているトラクション性能の試験装置を示すもので、(イ)は概略切断側面図、(ロ)は駆動ローラと吸収ローラの部分を軸心方向の片側より見た図である。
【符号の説明】
【0048】
15 駆動側試験片
16 駆動側回転軸
17 サーボモータ
18 負荷側試験片
19 負荷側回転軸
20 トルク計
21 ブレーキ装置
22 ロータリーエンコーダ
23 予圧力付与手段
41 非接触式センサ(センサ)
42 接触式センサ(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の駆動側試験片を着脱可能に取り付けた駆動側回転軸にサーボモータの出力側を連結し、且つ上記駆動側試験片の側方に配置する円筒状の負荷側試験片を着脱可能に取り付けた負荷側回転軸に、トルク計と負荷トルク可変型のブレーキ装置を連結すると共に、該負荷側回転軸の所要個所にロータリーエンコーダを装備し、更に、上記駆動側回転軸に取り付けた駆動側試験片を、負荷側回転軸に取り付けた負荷側試験片の外周面に、所要の予圧力を付した状態で押し付けるための予圧力付与手段を備えてなる構成を有すること特徴とするトラクション計測用試験装置。
【請求項2】
駆動側試験片と負荷側試験片の外周面の摩耗量を計測するためのセンサを設けるようにした請求項1記載のトラクション計測用試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate