説明

トラクタにおけるサンバイザの取付構造

【課題】サンバイザを必要に応じて後付けするにあたり、構造の簡略化及びコストダウンを可能にする。
【解決手段】運転座席4の周囲を覆うキャビン8と、該キャビン8の上部フレーム10に取り付けられてキャビン8の天井部を形成するインナールーフ14と、キャビン内を空調する空調装置とを備えるトラクタにおいて、運転座席4の前方上方にサンバイザ18を設けるにあたり、平面視コ字状に形成されるブラケット19の両端部を、上部フレーム10に対してインナールーフ14と共に共締めして固定すると共に、ブラケット19の中央部にヒンジ20を介してサンバイザ18を回動自在に取付け、さらに、ブラケット19のコ字状空間に臨ませて空調装置の吹出口17を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビン仕様のトラクタにおけるサンバイザの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キャビン仕様のトラクタが増えている。キャビン仕様のトラクタでは、運転の邪魔になる直射日光を遮るために、運転座席の前方上方にサンバイザを備えることが好ましい(例えば、特許文献1参照)。この種のサンバイザは、標準装備として予め取付けられる場合と、必要に応じてオプションとして後付けされる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4289614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるトラクタでは、サンバイザ用のブラケットを、インナールーフを介して、空調装置の取付枠に取付ける構造となっているので、インナールーフに貫通孔を形成し、かつ、取付枠にナットなどの固定部材を備えなければならない。このようなサンバイザの取付構造では、サンバイザを取付けることを前提としたキャビン構造としなければならず、サンバイザを必要に応じて後付けする場合には、インナールーフの貫通孔や取付枠の固定部材が無駄になる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、運転座席の周囲を覆うキャビンと、該キャビンの上部フレームに取り付けられてキャビンの天井部を形成するインナールーフと、キャビン内を空調する空調装置とを備えるトラクタにおいて、前記運転座席の前方上方にサンバイザを設けるにあたり、平面視コ字状に形成されるブラケットの両端部を、上部フレームに対してインナールーフと共に共締めして固定すると共に、ブラケットの中央部にヒンジを介してサンバイザを回動自在に取付け、さらに、ブラケットのコ字状空間に臨ませて空調装置の吹出口を配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、ブラケットを上部フレームに対してインナールーフと共締めすることにより、サンバイザの後付けが容易になるので、サンバイザを取付けることを前提としたキャビン構造とする場合に比べ、構造の簡略化及びコストダウンが図れる。しかも、ブラケットのコ字状空間に臨ませて空調装置の吹出口を配設することにより、吹出口がブラケットで遮られることを回避し、空調効率の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】トラクタの左側面図である。
【図2】キャビンの左側面図である。
【図3】キャビンの正面図である。
【図4】キャビンの要部を示す下面図である。
【図5】キャビンの要部を示す左側面図である。
【図6】サンバイザ、ブラケット及びルームミラーを示す斜視図である。
【図7】サンバイザ、ブラケット及びルームミラーを示す正面図である。
【図8】サンバイザ、ブラケット及びルームミラーを示す背面図である。
【図9】サンバイザ、ブラケット及びルームミラーを示す左側面図である。
【図10】サンバイザ、ブラケット及びルームミラーを示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はトラクタの走行機体であって、該走行機体1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部2、ホイール式又はクローラ式の走行部3、運転座席4や各種の操作具が配置される操縦部5、各種の作業機6を選択的に装着可能な作業機装着部7などを備えて構成されている。
【0009】
図1〜図5に示すように、操縦部5には、オペレータの操縦空間を覆うキャビン8が備えられている。キャビン8は、四隅に立設される支柱9、支柱9の上端部同士を連結する断面コ字状の上部フレーム10、キャビン8の上方を覆うアウタールーフ11、キャビン8の窓部を覆う窓ガラス12、キャビン8の乗降口を開閉自在に覆うドア13などを備えて構成されている。
【0010】
図5に示すように、アウタールーフ11の下方には、所定の間隔を存してインナールーフ14が設けられている。インナールーフ14は、上部フレーム10の下端部にボルト止めされる。例えば、上部フレーム10の下端部にナット15を溶着しておき、ここにインナールーフ14を貫通させたボルトをねじ込むことにより、インナールーフ14を上部フレーム10に取り付ける。
【0011】
アウタールーフ11とインナールーフ14との間に形成される空間16は、空調装置(図示せず)などの組み込みスペースとして利用される。空調装置は、キャビン内又はキャビン外の空気を吸入し、これを加温又は冷却して吹出口17からキャビン内に吹き出す。吹出口17は、図4に示すように、インナールーフ14の前端部を切欠いて組み込まれており、ここから下方に向けて温風や冷風を吹き出す。
【0012】
キャビン8は、運転の邪魔になる直射日光を遮るために、運転座席4の前方上方にサンバイザ18を備えることができる。この種のサンバイザ18は、標準装備として予め取付けられる場合と、必要に応じてオプションとして後付けされる場合がある。本発明は、サンバイザ18を必要に応じてオプションとして後付けする場合に好適なサンバイザ取付構造を提供する。
【0013】
図2〜図10に示すように、本発明の実施形態に係るサンバイザ18の取付構造では、平面視コ字状に形成されるブラケット19の両端部を、上部フレーム10に対してインナールーフ14と共に共締めして固定すると共に、ブラケット19の中央部にヒンジ20を介してサンバイザ18を回動自在に取付ける。このようにすると、ブラケット19を上部フレーム10に対してインナールーフ14と共締めすることにより、サンバイザ18の後付けが容易になる。その結果、サンバイザ18を取付けることを前提としたキャビン構造とする場合に比べ、構造の簡略化及びコストダウンが図れる。
【0014】
また、空調装置の吹出口17は、ブラケット19のコ字状空間に臨ませて配設してある。言い換えれば、ブラケット19を、吹出口17の周縁に沿うコ字形状としてある。このようにすると、吹出口17がブラケット19で遮られることを回避できるので、空調効率の低下を防止できる。
【0015】
ブラケット19は、例えば、金属製の棒材19aを平面視コ字状に曲げ形成し、その両端部に上下方向を向くパイプ19bを溶着して形成される。そして、上部フレーム10に取り付ける際には、取付位置に既設されているインナールーフ固定用の短尺ボルトを取り外し、ここに、ブラケット19のパイプ19bに貫通させた共締め用の長尺ボルト21をねじ込むことにより、ブラケット19を上部フレーム10に対してインナールーフ14と共に共締めして固定する。
【0016】
本実施形態では、サンバイザ18と同様の取付構造を用いてルームミラー22の取り付けを行っている。つまり、ルームミラー22を支持するブラケット23の両端部を、上部フレーム10に対してインナールーフ14と共に共締めして固定する。このようにすると、ルームミラー22の後付けが容易になるので、ルームミラー22を取付けることを前提としたキャビン構造とする場合に比べ、構造の簡略化及びコストダウンが図れる。
【0017】
また、本実施形態では、ルームミラー用ブラケット23の左端部を、上部フレーム10に対してインナールーフ14と共に共締めするにあたり、サンバイザ用ブラケット19の右端部を、上部フレーム10に対してインナールーフ14と共に共締めする長尺ボルト21を兼用する。このようにすると、部品の兼用化により、更なる構造の簡略化やコストダウンが可能になる。
【0018】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、運転座席4の周囲を覆うキャビン8と、該キャビン8の上部フレーム10に取り付けられてキャビン8の天井部を形成するインナールーフ14と、キャビン内を空調する空調装置とを備えるトラクタにおいて、運転座席4の前方上方にサンバイザ18を設けるにあたり、平面視コ字状に形成されるブラケット19の両端部を、上部フレーム10に対してインナールーフ14と共に共締めして固定すると共に、ブラケット19の中央部にヒンジ20を介してサンバイザ18を回動自在に取付け、さらに、ブラケット19のコ字状空間に臨ませて空調装置の吹出口17を配設したので、ブラケット19を上部フレーム10に対してインナールーフ14と共締めすることにより、サンバイザ18の後付けが容易になり、その結果、サンバイザ18を取付けることを前提としたキャビン構造とする場合に比べ、構造の簡略化及びコストダウンが図れる。しかも、ブラケット19のコ字状空間に臨ませて空調装置の吹出口17を配設することにより、吹出口17がブラケット19で遮られることを回避し、空調効率の低下を防止できる。
【符号の説明】
【0019】
1 走行機体
4 運転座席
5 操縦部
8 キャビン
10 上部フレーム
11 アウタールーフ
14 インナールーフ
15 ナット
17 吹出口
18 サンバイザ
19 ブラケット
20 ヒンジ
21 長尺ボルト
22 ルームミラー
23 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転座席の周囲を覆うキャビンと、該キャビンの上部フレームに取り付けられてキャビンの天井部を形成するインナールーフと、キャビン内を空調する空調装置とを備えるトラクタにおいて、
前記運転座席の前方上方にサンバイザを設けるにあたり、平面視コ字状に形成されるブラケットの両端部を、上部フレームに対してインナールーフと共に共締めして固定すると共に、ブラケットの中央部にヒンジを介してサンバイザを回動自在に取付け、さらに、ブラケットのコ字状空間に臨ませて空調装置の吹出口を配設したことを特徴とするトラクタにおけるサンバイザの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−111101(P2011−111101A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271267(P2009−271267)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】