説明

トラクタのアシストグリップ

【課題】作業者が夜間や暗い環境の中でもエンジン部のメンテナンスを行うことができるトラクタのアシストグリップを提供する。
【解決手段】操縦部4への乗車時、または降車時に、体重を支える為に、ハンドル11の前方でボンネット9後部に配置するアシストグリップ31において、前記アシストグリップ31を、左右一対の上方延出部32と、該上方延出部32の上端を連繋する水平延出部33とから略門型に形成して、前記ボンネット9を、前方下端に設けられた支点25を中心として後方が回動する構成とし、前記アシストグリップ31にボンネット9を開状態としたときにボンネット9内部を照らす照明部材40を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタのアシストグリップの技術に関し、特にハンドルの前方に配置して作業者が乗車、降車の際に容易に掴むことができるトラクタのアシストグリップの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からトラクタ等の作業車両において、エンジンフレームの上部前側にはエンジン部が配設され、該エンジン部内のエンジン等はボンネット等によって保護されたトラクタ等の作業車両が公知となっている。そして、前記ボンネット内部のエンジン等のメンテナンスを行う際に、前記ボンネットが車体前端に設けられた枢支軸を中心にエンジンフレーム上に上下回動可能に枢支され、ボンネットが枢支軸を中心に上方へ回動して開くトラクタ等の作業車両が公知となっている(例えば特許文献1を参照)。このような構成のボンネットを具備するトラクタ等の作業車両において、前記エンジン等のメンテナンスを行う際に、夜間や納屋等の暗い屋内で作業をする場合、エンジン部がボンネットの影となり目視しづらくなるため、作業が困難となっていた。
一方、作業者がステップに足を載せて操縦部へ搭乗する際に、または、操縦部から降りる際に、身体を安定させ、容易に乗降できるように握る補助グリップとして、後輪のフェンダー上部に設けられたアシストグリップが公知となっている(例えば特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開平6−316279号公報
【特許文献2】実公平7−34781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明はかかる課題に鑑み、作業者が夜間や暗い環境の中でもエンジン部のメンテナンスを行うことができるトラクタのアシストグリップを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、操縦部への乗車時、または降車時に、体重を支える為に、ハンドルの前方でボンネット後部に配置するアシストグリップにおいて、前記アシストグリップを、左右一対の上方延出部と、該上方延出部の上端を連繋する水平延出部とから略門型に形成して、前記ボンネットを、前下部に設けられた支点を中心として後方が回動する構成とし、前記アシストグリップにボンネットを開状態としたときにボンネット内部を照らす照明部材を設けたものである。
【0006】
請求項2においては、前記照明部材をボンネットの開閉を検知する手段と接続し、ボンネットを開状態としたときに点灯し、ボンネットを閉状態としたときには消灯するように構成したものである。
【0007】
請求項3においては、操縦部への乗車時、または降車時に、体重を支える為に、ハンドルの前方でボンネットの後方に配置するアシストグリップにおいて、前記アシストグリップを、左右一対の上方延出部と、該上方延出部の上端を連繋する水平延出部とから略門型に形成して、前記アシストグリップに操縦部を照らす照明部材を設けたものである。
【0008】
請求項4においては、前記アシストグリップの上方延出部と水平延出部の接続部の少なくともどちらか一方に段差部を形成し、該段差部に照明部材を設けたものである。
【0009】
請求項5においては、前記照明部材を角度調節可能に取り付けたものである。
【0010】
請求項6においては、前記照明部材をアシストグリップの少なくとも一部に埋め込んだものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、夜間または暗い場所でボンネットを開状態とし、作業者がエンジン部のメンテナンスを行う際に、照明部材によってエンジン部を照らすことが出来るため、作業者の手元やエンジン周囲やエンジンに付設された機器等を明るく照らしてメンテナンスや確認作業が容易にできる。
【0013】
請求項2においては、メンテナンス時にボンネットを開状態としたときのみ照明部材が点灯し、ボンネットを閉状態にすると自動的に消灯するので、無駄な電力を消費せず、手動で点灯・消灯する手間も省くことができる。
【0014】
請求項3においては、夜間または暗い場所で作業者が操縦部に搭乗する際に、暗い場所でも足元を確認して搭乗することができる。また、作業時や走行時には、操縦部に配置されたレバーやスイッチ等を容易に確認することができる。
【0015】
請求項4においては、アシストグリップを握る際に邪魔にならず、意匠性も損ねることがない。
【0016】
請求項5においては、照明部材により照らす方向を任意に変更することができるようになり、作業を確実に行えるようになる。
【0017】
請求項6においては、アシストグリップに大きな凹凸部がなくなり、アシストグリップを握る際に邪魔にならないとともに、意匠性を向上できる。また、アシストグリップの形状が照明部材により制限されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図、図2は操縦部の前方斜視図、図3は操縦部の後方斜視図である。図4はアシストグリップの取付部分を示した拡大後方斜視図、図5は操縦部の側面図、図6は操縦部の平面図、図7はアシストグリップの正面図、図8はアシストグリップの側面図、図9はライトの回路図、図10は別実施例にかかるアシストグリップの正面図、図11は別実施例にかかるアシストグリップの平面図、図12は別実施例にかかるアシストグリップの正面図、図13は(a)別実施例にかかるアシストグリップの正面図(b)A−A´線断面図である。
【実施例1】
【0019】
[全体構成]
まず図1により、トラクタ1の全体構造について説明する。
トラクタ1は、エンジンフレーム2の上部前側にはエンジン部3が配設され、その後部に操縦部4が配設されている。前記エンジンフレーム2の前下部には、フロントアクスルケース(図示せず。)が左右揺動自在に配設され、該フロントアクスルケースに軸支された前車軸(図示せず。)の両端には、前輪6・6が軸支されている。一方、前記エンジンフレーム2の後部には、ミッションケース(図示せず。)が配設され、該ミッションケースの後部両側には、リヤアクスルケース(図示せず。)に軸止された後車軸(図示せず。)が設けられている。そして、該後車軸の両端部には、後輪7・7が軸支されている。
【0020】
前記エンジン部3はエンジンフレーム2の上部前側に配設されており、エンジンフレーム2上には、エンジン8が搭載されており、該エンジン8からの動力は、前記ミッションケース内の変速装置や駆動伝達機構等を介して、前輪6・6や後輪7・7やPTO軸等に伝達される。
【0021】
前記ボンネット9は車体前端下方にある回動支点である枢支軸25を中心にエンジンフレーム2上に上下回動可能に枢支され、前後反対側にロック部(図示せず。)が構成されている。前記ボンネット9内部のエンジン8等のメンテナンスを行う際には、ロック部を開放し、前記ボンネット9を、枢支軸25を中心にして上方へ回動させて開状態にするものである。
【0022】
図1、図2、図3及び図5に示すように操縦部4はエンジン部3の後方に位置し、トラクタ1の略中央部から後部にかけて配設される。
前記ボンネット9の後方には、ダッシュボード10が配設され、その内部には、燃料タンク18等が収納されている。また、ダッシュボード10の上後部にはハンドル軸17を挿通するための開口部が設けられ、前記ハンドル軸17の上端にハンドル11が配置されている。また、該ハンドル11の前方には、回転数計や燃料計や警報ランプ等を配備した表示パネル12が配設され、該表示パネル12の前方、即ち前記ダッシュボード10の前部上面には、本発明に係るアシストグリップ(前アシストグリップ)31が配置されている。また、前記ダッシュボード10の後方には、座席シート13が配設され、該座席シート13の両側部には、アシストグリップ(横アシストグリップ)16・16が配置されている。該座席シート13とダッシュボード10の間の下部には、ステップ14が設けられており、これらハンドル11、座席シート13等により、操縦部4が構成されている。
尚、座席シート13の後方には、安全フレーム15が立設されている。
【0023】
[アシストグリップ]
次に、本発明に係るアシストグリップ31の実施例1について、図2乃至図8を用いて説明する。
アシストグリップ31は、樹脂製素材(ダッシュボード10と同素材。)で成形された一体型の略「門型」形状から構成されており、ダッシュボード10の上面部に配設される。即ち、図5及び図6に示すように、前記アシストグリップを、左右一対の上方延出部32と、該上方延出部32の上端を連繋する水平延出部33とから形成して、これらは継ぎ目無く一体型の略「門型」形状から構成される。また、アシストグリップの左右両端の少なくともどちらか一方に段差部31aが設けられている。すなわち、該段差部31aは、上方延出部32と水平延出部33の接続部の少なくともどちらか一方に設けられており、上方延出部32の中途部を正面視略「L」字状に屈曲して形成している。
また、図4、図7及び図8に示すように、前記上方延出部32の下端は正面視略長方形に形成された基部34が突設されており、該基部34の下端からボルト35が突設している。
【0024】
次に、本発明に係るアシストグリップ31の取付について、図3及び図4を用いて説明する。
アシストグリップ31は、ダッシュボード10に直接取付けることも可能であるが、別体として、ダッシュボード10に開口した孔10aに前記基部34を挿通し、ダッシュボード10内に配置した取付部材(本実施例ではラジエータブラケット41に設けられたステー部42)に着脱自在に取付けることが好ましい。以下、その詳細を説明する。
【0025】
図3及び図4に示すようにボンネット9内後部には、エンジンフレーム2からラジエータブラケット41が立設されており、該ラジエータブラケット41の上部より機体後方に突出して、取付部となるステー部42が一体的に形成されている。該ステー部42の左右両側には、上部が開口された略筒状の嵌合部42aが一体的に形成され、該嵌合部42aの内部には前記ボルト35・35を挿通するためのボルト孔42b・42bが上下方向に開口されている。つまり、アシストグリップ両端基部34の形状に合わせた略筒状の嵌合部42aが、ラジエータブラケット41上のステー部42の左右両側上に一体的に構成されているのである。該ボルト孔42b・42bは前記ボルト35・35の本数に対応して開口されており、本実施例においては一箇所の嵌合部42aにつき前後二箇所のボルト孔42bが開口されている。また、本実施例では前面及び左右両側面に板状部材を立設して嵌合部42aを形成しているが、前記ステー部42の厚さを大きくし、嵌合部42aを刳り貫いて形成することも可能である。
【0026】
前記アシストグリップ31を前記ステー部42に取付ける際は、まず上方から前記基部34をダッシュボード10の孔10aに挿入する。その後、図7に示すようにアシストグリップ31を基部34の下端を前記嵌合部42aに嵌合させて、位置決めと支持を強固にするとともにボルト35・35をボルト孔42b・42bに挿入し、下方からナット52・52及びワッシャ53・53で締結するのである。このように取付けられたアシストグリップ31は、下端がボルト締結されるだけでなく、下部が嵌合部42aで強固に固定されるので、耐久性・水平方向の荷重に対する耐加重性が大きくなるのである。
このように構成することにより、アシストグリップの取付作業が容易になり、例えばアシストグリップに損傷があった場合にはアシストグリップのみを交換することで容易に修理をすることが可能となる。また、後述する形状の違うアシストグリップに変更することも容易となる。
【0027】
また、アシストグリップ31は側面視においてダッシュボード10上で上後方へ傾斜させており、前記アシストグリップ31の傾斜は前記表示パネル12の上部カバーの傾斜に合わせることで違和感なく意匠性を向上させている。こうして、操縦部4へ左右両側から乗車する場合に、ハンドル11の前方に位置するアシストグリップ31の上方延出部32を容易に握れるようにしている。
そして、アシストグリップ31の上側部はハンドル11の最上端部より低い位置まで達した後、左右両側から中央へ緩やかに上方に変化させ、継ぎ目無く連結される。換言すると、ハンドル11の上端の前下方にアシストグリップ31の上端が位置するように構成している。こうして、アシストグリップ31の水平延出部33の上端はハンドル11の上端よりも低くなるように配置し、また、アシストグリップ31の左右幅はハンドル11の左右幅より長くダッシュボード10の左右幅と略同じ、或いは、短く構成して、アシストグリップ31を上方や側方より容易に握れるようにするとともに、該アシストグリップ31と安全フレーム15により作業者の安全空間を形成している。
また、アシストグリップ31は表示パネル12上方を跨いで左右方向に配置され、アシストグリップ31の内側と表示パネル12の外周との間に所定の空間S(図2参照)を形成して、その間に指が入り、確実に握れるようにしている。
また、アシストグリップ31の水平延出部33は平面視において、円弧状に構成しており、ハンドル11と略同心円状として、アシストグリップ31とハンドル11との間に所定の空間を形成して、ハンドル操作の邪魔にならないようにし、かつ、アシストグリップ31の水平延出部33を上から容易に握れるようにしている。
【0028】
アシストグリップ31の断面形状は略矩形の形状とし、鋭角部を排除した、曲線による構成を基本とするが、これに限定されるものでは無く、例えば、部材の剛性や、作業者の握り易さ等の理由から、円形、多角形、または独特の形状にて構成しても良い。
【0029】
また、前記アシストグリップ31には、前方にあるエンジン部3もしくは前記操縦部4下部を照らす照明部材の一例であるライト40が設けられている。但し、点滅させたり光色や輝度を変更したり、照射範囲を変更することで、方向指示器や作業灯とすることもできる。そして、作業灯とすることで、高い位置から左右側方を広く照らすことが可能となる。方向指示器とすることで前方や側方または操縦者自身も容易に確認することができる。前記ライト40はエンジン部3を照らす場合には、照らす方向が前方に向けて取り付けられ、前記操縦部4下部を照らす場合には、照らす方向が後下方に向けて取り付けられる。但し、ライト40の取付部には上下・左右・前後方向の角度調節手段を設け、照らす方向を前方に向けたり、後方に向けたり、上方または下方に向けて所望の位置を照らすように構成することも可能である。前記角度調節手段は、例えばライトに固定した支持軸を螺子部として、アシストグリップの支持部に枢支し、所望の角度に回転してナットで位置固定するように構成したり、ライトに固定した支持軸にバネを介して前記支持部に枢支し、バネの付勢力で位置決めしたりするように構成でき、その構成は限定するものではない。
また、一つの光源の周囲にリフレクタ(反射板)を設けて、前方及び後方の一方または両方を照らす構成とすることもできる。更に、このリフレクタを回動可能に構成して、照らす方向を変更するように構成することもできる。こうして、ボンネット9内のメンテナンスの場合にはボンネット9内方に照明を当てて、手元を明るくすることができる。操縦部4を照らす場合には、レバー類やスイッチ類の配置場所が容易に判る。また、側方を照らす場合には、既作業位置や収穫位置等が容易に認識でき、上方を照らす場合には、ローダー作業でのバケットの位置を容易に確認できる。そして、照明方向が変更できる場合には、作業の種類に合わせることができ、最も確認したい位置に向けてライトを照らし、確実に作業することができるようになる。
【0030】
前記ライト40をアシストグリップ31に設置する構成について図5乃至図8を用いて説明する。
前記ライト40は、アシストグリップ31の水平延出部33の左右両端に設けられた段差部31aに設置されている。つまり、上方延出部32の中途部を正面視略「L」字状に屈曲して形成された段差部31a内にライト40が配置されている。該ライト40の筐体40a外周から突設した支持軸40bをアシストグリップ31の段差部31aに立設する。なお、本実施例では図7及び図8に示すように段差部31aの水平部31bに取り付けているが、立設部31cの側面に取り付ける構成であってもよい。また、左右両方の段差部31aにライト40を配置しているが、左右いずれか一方の段差部31aのみに設けることも可能である。このように構成することにより、作業者が乗降する際や座席から立ち上がるためにアシストグリップ31を握るときには水平延出部33または上方延出部32の略中央部を握るので、段差部31aにライトを配置してもアシストに対する影響は殆どなく、また、前記段差部31aは通常の水平延出部33よりも支点間距離が短いため振動しにくく、車体本体の揺れの影響を受けず揺れを防止することができる。
【0031】
前記ライト40は図9に示すように、ボンネット9の開閉によって点灯・消灯を行うことができる。すなわち、ボンネット9の回動基部またはボンネットが閉じた時に当接部分にボンネット閉検出手段となるスイッチ52を設ける。該スイッチ52は常時「閉」のスイッチとして、ボンネット9を閉じているときには、スイッチ52の接点が押されて「開」となり、ボンネット9を開けるとスイッチ52は「閉」となって、ライト40が点灯するように構成している。但し、ボンネット9は前支点として、後側を前上下方向に開閉する構成の場合、または、ボンネット9を取り外す場合に限られる。このように構成することにより、ボンネット9を開けてメンテナンスを行う等照明が必要なときにだけ、前記ライト40を点灯させることが可能となり、また、完全に閉じられていない場合にも点灯するので、ボンネット9の閉状態を確実に確認することもできる。
【0032】
前記ライト40はバッテリ53より電力を供給する。即ち、エンジンや前照灯やセンサ等に電力を供給するバッテリ53から電力を供給することにより、新たな電源を確保する必要がなくなる。また、電源から直接電力を供給することにより、エンジン停止時にもライトが点灯するため、メンテナンス作業を行う際にエンジンを停止した状態でも照明として使用することができる。
【0033】
また、前記ボンネット9の裏面(内面)には反射板を貼設してもよい。前記ボンネット9が開状態のとき前述の如くライト40が点灯するが、前記反射板により前記ライト40からの光が反射することにより内部を照らすことが可能となる。つまり、エンジン部3において、ライト40からの光が直接照射する部分は目視できる状態であるが、ライト40からの光が直接照射しない部分は影となって目視しにくい状態となっている。そこで、エンジン部3の前方に位置するボンネット9の内面に光を当て、その反射光によって内部を照らすことにより、前記影の部分も照らすことができる。よって、メンテナンスをする際ボンネットを開けた状態で、エンジン部3がより明るく全体が照らされて、作業がしやすくなる。
【実施例2】
【0034】
次に、前記ライト40をアシストグリップ31に設置する別実施例について説明する。なお、アシストグリップ31以外の構成については実施例1と同様とする。
アシストグリップ31は、樹脂製素材(ダッシュボード10と同素材。)で成形された一体型の「門型」形状から構成されており、ダッシュボード10の上面部に配設される。即ち、図10及び図11に示すように、アシストグリップ31は上下方向に伸延する上方延出部32と正面視にて略水平方向へ延出する水平延出部33から構成されており、これらは継ぎ目無く一体型の「門型」形状から構成される。
【0035】
そして、図10及び図11に示すように、アシストグリップ31の前面側の一部分(本実施例では水平延出部33中央付近に設けているが、上方延出部32に設けることもできる。また、アシストグリップの後面または側面に配置することもできる)に凹部を設け、LEDから構成されるライト140を凹部に嵌合させる。本実施例では、前記ライト140は長方形状の照明基板140aと該照明基板140aに複数配置されるLED140bから構成されている。このように構成することにより、ライト140がアシストグリップ31より突出しないことから、視界を遮ることがなく、意匠性も向上する。また、LEDは通常の電球より長寿命であるので、電球の交換時期を遅らせることが可能となり、また、通常の電球より低電力で発光することが可能であるため、消費電力を抑えることができる。
【0036】
なお、図10及び図11に示すライト140の数は一つであるが、これに限定するものではなく、複数個のライト140をアシストグリップ31に埋め込む構成としても構わない。また、図12に示すように、アシストグリップ31の一部を透明の樹脂(例えばアクリル樹脂等)からなる部材45で構成し、LEDをアシストグリップ31内部に配置することも可能である。また、ライト140は一カ所に配置しているが、所定間隔をあけてアシストグリップ31の前面に複数配置することもできる。また、光源はLEDに限定するものではなく発光するものであれば電球等で構成することもできる。このように構成することにより透明の樹脂部分が光を通すため、広範囲を照らし出すこととなり、アシストグリップ31を握る時の邪魔にならず、メンテナンスの際エンジン部3での作業において手元の目視を容易にする。
【0037】
また、図13(a)及び(b)に示すように、前記アシストグリップ31の軸心部に鋼管等のパイプ部材からなる心材60を設けて、前記心材60の外周を透明または半透明の樹脂からなる周縁材61で形成し、構成することも可能である。また、図13(a)に示すように前記外周の周縁材61の内部に所定間隔をあけてLED140a等の光源を配置し、或いは、アシストグリップ31の一端または両端にLEDまたは電球等の光源を配置することもできる。すなわち、図13(b)に示すように、前記心材60及び周縁材61の一部を切除してLED140aを嵌設するものである。このように構成することにより、暗くなった時にスイッチをONして光源に電力を供給することで光源が点灯して、樹脂部分が光を乱反射して、アシストグリップ31全体が発光することとなり、アシストグリップ31を握る時の邪魔にならず、アシストグリップ31の位置が容易に判り、乗降の際に容易に掴むことができる。また、その周囲も明るくなり、ステップやスイッチ等も容易に認識できる。また、走行中においては前方から容易に視認することができ、アクセサリともなる。なお、樹脂部材の形状は本実施例に限定するものではなく、例えば、帯状またはチューブ状の樹脂内に複数のLED140aを配置し、アシストグリップの長手方向に沿って埋め込む構成とすることも可能である。この場合、LED140aからの照射方向は前方またはステップ方向とする。
【0038】
前記ライト140への電力の供給はバッテリ53からではなく、図11及び図12に示すようにアシストグリップ31の表面に付設した太陽電池41で発電した電力を蓄電する蓄電装置42より行うこともできる。すなわち、LEDの消費電力は小さいことから、太陽電池41によって日中に発電した電力を蓄電装置42に蓄電して、LED点灯時には該蓄電装置42より電力を供給するものである。前記蓄電装置42は、例えば、二次電池等で構成されている。前記太陽電池41は太陽光の当たりやすい前記アシストグリップ31の水平延出部33上面に敷設されており、二次電池はアシストグリップ31の内部に設けることにより蓄電装置42がアシストグリップ31から突出することなく配置することができる。
【0039】
以上のように、本実施例にかかるトラクタのアシストグリップ31は、操縦部4への乗車時、または降車時に、体重を支える為に、ハンドル11の前方でボンネット9後部に配置するアシストグリップ31において、前記アシストグリップ31を、左右一対の上方延出部32と、該上方延出部32の上端を連繋する水平延出部33とから略門型に形成して、前記ボンネット9を、前下部に設けられた支点25を中心として後方が回動する構成とし、前記アシストグリップ31にボンネット9を開状態としたときにボンネット9内部を照らす照明部材40を設けたものである。このように構成することにより、夜間または暗い場所でボンネットを開状態とし、作業者がエンジン部のメンテナンスを行う際に、照明部材によってエンジン部を照らすことが出来るため、作業者の手元やエンジン周囲やエンジンに付設された機器等を明るく照らしてメンテナンスや確認作業が容易にできる。
【0040】
また、前記照明部材40をボンネット9の開閉を検知する手段52と接続し、ボンネット9を開状態としたときに点灯し、ボンネット9を閉状態としたときには消灯するように構成したものである。このように構成することにより、メンテナンス時にボンネットを開状態としたときのみ照明部材が点灯し、ボンネットを閉状態にすると自動的に消灯するので、無駄な電力を消費せず、手動で点灯・消灯する手間も省くことができる。
【0041】
また、操縦部4への乗車時、または降車時に、体重を支える為に、ハンドル11の前方に配置するアシストグリップ31において、前記アシストグリップ31を、左右一対の上方延出部32と、該上方延出部32の上端を連繋する水平延出部33とから略門型に形成して、前記アシストグリップ31上に操縦部4を照らす照明部材40を設けたものである。このように構成することにより、夜間または暗い場所で作業者が操縦部に搭乗する際に、暗い場所でも足元を確認して搭乗することができる。また、作業時や走行時には、操縦部に配置されたレバーやスイッチ等を容易に確認することができる。
【0042】
また、前記アシストグリップ31の上方延出部32と水平延出部33の接続部の少なくともどちらか一方に段差部31aを形成し、該段差部31aに照明部材40を設けたものである。このように構成することにより、アシストグリップを握る際に邪魔にならず、意匠性も損ねることがない。
また、前記照明部材40を角度調節可能に取り付けたものである。このように構成することにより、照明部材により照らす方向を任意に変更することができるようになり、作業を確実に行えるようになる。
また、前記照明部材40をアシストグリップ31の少なくとも一部に埋め込んだものである。このように構成することにより、アシストグリップに大きな凹凸部がなくなり、アシストグリップを握る際に邪魔にならないとともに、意匠性を向上できる。また、アシストグリップの形状が照明部材により制限されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図。
【図2】操縦部の前方斜視図。
【図3】操縦部の後方斜視図。
【図4】アシストグリップの取付部分を示した拡大後方斜視図。
【図5】操縦部の側面図。
【図6】操縦部の平面図。
【図7】アシストグリップの正面図。
【図8】アシストグリップの側面図。
【図9】ライトの回路図。
【図10】別実施例にかかるアシストグリップの正面図。
【図11】別実施例にかかるアシストグリップの平面図。
【図12】別実施例にかかるアシストグリップの正面図。
【図13】(a)別実施例にかかるアシストグリップの正面図(b)A−A´線断面図。
【符号の説明】
【0044】
1 トラクタ
2 エンジンフレーム
4 操縦部
6 前輪
7 後輪
10 ダッシュボード
11 ハンドル
31 アシストグリップ
32 上方延出部
33 水平延出部
40 ライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦部への乗車時、または降車時に、体重を支える為に、ハンドルの前方でボンネット後部に配置するアシストグリップにおいて、前記アシストグリップを、左右一対の上方延出部と、該上方延出部の上端を連繋する水平延出部とから略門型に形成して、前記ボンネットを、前下部に設けられた支点を中心として後方が回動する構成とし、前記アシストグリップにボンネットを開状態としたときにボンネット内部を照らす照明部材を設けたことを特徴とするトラクタのアシストグリップ。
【請求項2】
前記照明部材をボンネットの開閉を検知する手段と接続し、ボンネットを開状態としたときに点灯し、ボンネットを閉状態としたときには消灯するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタのアシストグリップ。
【請求項3】
操縦部への乗車時、または降車時に、体重を支える為に、ハンドルの前方でボンネットの後方に配置するアシストグリップにおいて、前記アシストグリップを、左右一対の上方延出部と、該上方延出部の上端を連繋する水平延出部とから略門型に形成して、前記アシストグリップに操縦部を照らす照明部材を設けたことを特徴とするトラクタのアシストグリップ。
【請求項4】
前記アシストグリップの上方延出部と水平延出部の接続部の少なくともどちらか一方に段差部を形成し、該段差部に照明部材を設けたことを特徴とする請求項1または請求項3に記載のトラクタのアシストグリップ。
【請求項5】
前記照明部材を角度調節可能に取り付けたことを特徴とする請求項1または請求項3または請求項4に記載のトラクタのアシストグリップ。
【請求項6】
前記照明部材をアシストグリップの少なくとも一部に埋め込んだことを特徴とする請求項1または請求項3に記載のトラクタのアシストグリップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−35185(P2009−35185A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202357(P2007−202357)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】