トラクタキャビンの吸音装置
【課題】トラクタ等のキャビンルームの内側や、外側から、エンジンや、伝動装置等の激しい騒音、振動等が伝播されて、とくに、500Hz以下の低周波数域では十分な騒音低減が行われ難く、キャビンルームの角部においては騒音のこもり現象が著しく、騒音低減を行い難いので、それを改善する吸音装置を提供するものである。
【解決手段】車体に対して防振体を介在させて支持し取付けるキャビンに、吸音材によって一側面にスリット状の開口4部を有した吸音洞5を形成する吸音器6を設けて、この吸音器6の開口4部をキャビンフロア7部上にのぞませて設けた吸音装置の構成。
【解決手段】車体に対して防振体を介在させて支持し取付けるキャビンに、吸音材によって一側面にスリット状の開口4部を有した吸音洞5を形成する吸音器6を設けて、この吸音器6の開口4部をキャビンフロア7部上にのぞませて設けた吸音装置の構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トラクタキャビンのキャビンルーム内の吸音効果を高く維持する吸音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャビンを構成する構成部材からキャビンルーム内へ透過するエンジン騒音等を遮断するため間隔部に遮音板を設けることによって、室内騒音を低下させる技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0003】
又、キャビンルームの騒音低減のために、ピラーやルーフの空間を利用して、運転者の耳元部における騒音低減を図る技術(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4119049号公報
【特許文献2】特開2008ー260432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラクタキャビンは、キャビンルームの内側や、外側から、エンジンや、伝動装置等の激しい騒音、振動等が伝播されて、とくに、500Hz以下の低周波数域では十分な騒音低減が行われないで、吸音材の吸音面積や、厚みを増加してみるが、効果的ではない。キャビンルームの角部においては騒音のこもり現象が著しく、騒音低減を行い難いものである。この発明は、このようなキャビンルームの角部近傍部における騒音のこもりを少なくして、キャビンルーム内のより静かな運転環境を効果的に形成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、車体1に対して防振体2を介在させて支持し取付けるキャビン3に、吸音材によって一側面にスリット状の開口4部を有した吸音洞5を形成する吸音器6を設けて、この吸音器6の開口4部をキャビンフロア7部上にのぞませて設けたトラクタキャビンの吸音装置の構成とする。
【0007】
トラクタキャビン3のキャビンフロア7上近傍部に発生する騒音は、この位置に開口4部をのぞませる吸音器6によって、このスリット状の開口4部を吸音堂5へ侵入する空気は振動して、吸音洞5の空気が圧縮されたり膨張される作用が繰り返されて、この間に、壁面等の粘性抵抗によって騒音波は減衰して吸音される。
【0008】
このように吸音洞5にて共鳴吸音して、特に、キャビンフロア7上面近くは凹凸部が著しく形成されているためにキャビンルーム内の底部にこもり易い騒音を、前記吸音器6の配置によって吸音して低減し、しかも、低周波数域の騒音を低減させる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記吸音器6の開口4部を、キャビンフロア7底部と、フロントガラス18、ドアガラス20、リヤガラス21、ダッシュボード6、フェンダー22、フロントピラー13、又はリヤピラー14との間の角部、乃至角間隔部にのぞませて設ける。
【0010】
このようなキャビンルーム7のキャビンフロア8の周囲に位置するキャビン周壁面、乃至ガラス面との間の角部には、このキャビンフロア8の中央部に運転シート12が高く形成されるものであるから、特に低周波域の騒音が停滞し易いものであるが、この騒音は、直ちに吸音器6の開口4部を吸音洞5へ吸収されて、低減され、角部におけるこもり騒音をなくして、キャビンルーム7における運転環境を快適にする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記吸音器6を、フロントピラー13、又はリヤピラー14の内部に設けて、この開口4部をピラー周面に形成する。
キャビンルーム7の騒音は、各フロントピラー13や、リヤピラー14のキャビンルーム7内周面に形成された開口4部を通してピラー内部に形成される吸音洞5に共鳴されて騒音低減される。特に、キャビンルーム7の四隅部に位置する各ピラー13、14の配置位置の角部は、騒音のこもり易いものであるが、この角部における騒音は各位値にあるピラー13、14の開口4部に吸引されて、低減される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は、吸音洞5にて共鳴吸音して、キャビンフロア7上面近くは凹凸部が著しく形成されていてキャビンルーム内の底部にこもり易い騒音を、前記吸音器6の配置によって吸音して、低減し、しかも、低周波数域の騒音を低減させるものである。とくに、500Hz以下の低周波数騒音低減に効果的な共鳴吸音器6を、特に直方体形状の空間吸音洞5、及びスリット状の開口4部を形成して、トラクタキャビン3のキャビンルーム内のフロア部近くの角部位置近傍における低周波数域のいわゆるこもり音を、特にキャビン3のキャビンフロア8角部近傍部に、この共鳴吸音器6のスリット状開口4部をのぞませて配置することによって効果的に吸音することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記吸音器6の開口4部を、キャビンフロア7底部と、フロントガラス18、ドアガラス20、リヤガラス21、ダッシュボード6、フェンダー22、フロントピラー13、又はリヤピラー14との間の角部、乃至角間隔部にのぞませて設けるものであるから、このようなキャビンルーム7のキャビンフロア8の周囲に位置するキャビン周壁面、乃至ガラス面との間の角部における、特に低周波域の騒音が停滞し易い騒音は、直ちに吸音器6の開口4部を吸音洞5へ共鳴吸収されて、低減され、角部におけるこもり騒音を消音して、キャビンルーム7における運転環境を快適にすることができ、構成を簡単にすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、キャビンルーム7の前後左右の四角位置には、騒音がこもり易いものであるが、この角部位置のピラー13、14には吸音器6が内装されていて、この角部に位置する開口4部から直接騒音がピラー内部の吸音洞5に共鳴侵入されて、吸音低減される。このため、角部における騒音のこもり現象をなくして、運転環境を良好に維持することができる。
【0015】
作業車体の運転では、左右、前後の非対称状騒音のあることが一般であり、運転者の左右耳元部近傍位置における騒音の音圧差を緩和するように、キャビンルーム7に配置される、各吸音器6の振幅、周波数、位相等の各部の吸音特性を作業機に応じ他形態に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】トラクタキャビンの側面図。
【図2】そのキャビンを取付支持するダンパ部の側断面図。
【図3】そのキャビンフロア部の平面図。
【図4】そのダッシュボード、乃至エンジンルームの斜視図。
【図5】キャビンルーム内のフェンダ部の正断面図。
【図6】吸音器の共鳴吸音作動を示す作動図。
【図7】キャビンフロアの前部に取付け吸音器の側断面図。
【図8】キャビンフロアのドア口部に取付け吸音器の側断面図。
【図9】シートフロア部に取付け吸音器の側断面図。
【図10】シートフロアの後部に取付け吸音器の側断面図と、その構成例の斜視図。
【図11】吸音器の各構成例(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)を示す斜視図。
【図12】キャビンピラー部の斜視図と、その一部の平断面図。
【図13】フロントガラスの正面図。
【図14】そのアンダガラス部の構成例(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)を示す断面図。
【図15】フロントガラス部の構成例(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面に基づいて、車体1後部のリフトアーム26の上下動によって昇降される昇降リンク機構28の後端に、ロータリ耕耘装置27等の作業機を装着して作業することができるが、このトラクタ車体1にはキャビン3を搭載する。この車体1は、前部にエンジンEボディーを連結するクラッチハウジングや、この後側にミッションケース等を一体的に連結して構成され、この車体1ミッションケースの後端部には左右両側方へ張出すリヤアクスルハウジングを有して、この車軸57の両端に後輪58を軸装する。又、クラッチハウジングの前方にはフロントブラケットを設けて、上側に前記エンジンEを搭載し、下部にフロントアクスルハウジング、及びこの両端の車軸に前輪59を軸装して、ダッシュボード9上のステアリングハンドル30によって操向操作することができる。このエンジンEは、上側をボンネットで覆われるエンジンルームに位置し、前側をフロントマスクで覆う。前記後輪58の前上部はフェンダ22を有し、左右のフェンダ22間にバケット状のシートフロア24を形成し、このシートフロア24上に運転シート12を搭載している。このシートフロア24の前端とダッシュボード9の下端部との間には、運転者が乗降するステップフロア23を形成する。
【0018】
このような車体1に対してキャビン3を搭載する。このキャビン3は、左右前後の四隅部にフロントピラー13、リヤピラー14を有し、これらの各ピラー13、14の上端部間には囲桁状のルーフフレーム15に連結し、又、下端部は、前記フェンダ22や、ステップフロア23、及びシートフロア24の後端面等に沿って形成されるキャビンフレーム17に連結して、キャビンフレームの主体を構成する。前記ルーフフレーム15の上側にはルーフボード16を設け、左右のフロントピラー13間にはフロントガラス18を設け、左右のリヤピラー14間にリヤガラス21を設け、左右両側の各フロントピラー13と、リヤピラー14との間には、このリヤピラー14にドアヒンジとして開閉回動するドアガラス20を設けて、キャビン3内から外周の視界を良好にしている。
【0019】
このようなキャビン3は、前記フロントピラー13や、リヤピラー14等の下端部の四隅部位置にキャビンブラケット34を設けて、このキャビンブラケット34を前記車体1側の支持ブラケット48に取付けて支持させる。この四隅部のキャビンブラケット34の取付形態(図2)は、防振ゴムからなる弾性防振体2を有した取付ブラケット35と、これら防振体2及び取付ブラケット35の中心部に形成する取付ボルト37の挿通しうるボルトカラー等を有し、この防振体2及び取付ブラケット35を、車体1側の支持ブラケット48と、キャビン3側のキャビンブラケット34の受座36との間に介在させて、支持するように取付ける。このキャビンブラケット34と、防振体2等の中心部のカラーと、この下端部に重合する座金との間にわたって取付ボルト37を挿通して、下端からナット38で締付ける。又、前記取付ブラケット35は取付ボルトで支持ブラケット48に対して取付ける。
【0020】
前記のようにして車体1に対して着脱するキャビン3は、前記フェンダ22や、シートフロア24、運転シート12、及びステップフロア23等の底部構成部分を、このキャビンフレームを構成するフロントピラー13や、リヤピラー14等と一体的に構成する形態としている。
【0021】
前記運転シート12とフェンダ22との間には、キャビンフロア8のシートフロア24部に一体にガイドケース43を構成し、昇降レバー44等の操作レバーの操作を行わせる。この昇降レバー44は、油圧弁等を内装するバルブケース45を有し、このベルブケース45部が、ゴム板等の防振座46を介在させて、フェンダ22の内側面にボルト47締めによって取付けられる。このように昇降レバー44は、キャビン3の構成部材で支持されているが、作業機(耕耘装置27)の昇降操作位置により特定の振動が伝達されることがあり、これに起因してキャビンルーム7内の左、右片側の騒音が高くなる。
【0022】
キャビンルーム7内の音圧分布は複雑であり、キャビン3容量によっては、左、右のいずれかの共鳴吸音機構の吸音周波数特性を大とするかは、状況によって異なるが、左、右の共鳴吸音機構の共鳴周波数を変更することによって、運転者の耳元騒音の左、右バランスをとることで、平均的に騒音を低減する。
【0023】
前記図4のようにキャビン3を搭載する車体1の前部に構成するエンジンルーム11には、エンジンEの前側にラジエータ40を配置し、後部右側にマフラー41から連通されるテールパイプ42を配置し、キャビン3の一側のフロントピラー13の前側部に接近させて立設し、運転視界を邪魔し難い形態としている。このようなテールパイプ42の配置形態においては、このテールパイプ42に遠い側の左耳騒音が高くなることがある。キャビンフロア8部に左右に共鳴吸音機構を設け、しかもこの左右の共鳴吸音機構の共鳴周波数を変更する等によって、マフラーテールパイプ42側の防振支持弾性体2側の共鳴吸音機構の吸音特性を反対側の共鳴吸音機構よりも低周波数側或は高周波数に設定することによって、右耳騒音特有の周波数騒音を低減することができ、快適な室内とすることができる。
【0024】
ここにおいて、この共鳴吸音装置は、車体1に対して防振体2を介在させて支持し取付けるキャビン3に、吸音材によって一側面にスリット状の開口4部を有した吸音洞5を形成する吸音器6を設けて、この吸音器6の開口4部をキャビンフロア8部上にのぞませて設ける。
【0025】
トラクタキャビン3のキャビンフロア8上近傍部に発生する騒音は、図6の作動図のように、この位置に開口4部をのぞませる吸音器6によって、このスリット状の開口4部を吸音洞5へ侵入する空気質量Wは、スプリングSの如く振動して、吸音洞5の空気が圧縮されたり膨張される作用が繰り返されて、この間に、壁面等の粘性抵抗Rによって騒音波は減衰して吸音される。
【0026】
図7の構成は、キャビンフロア8の前端縁部のフロントガラス18下端部との間の角部において、フロアマットMの下側に吸音器6を設け、この開口4部を前側のフロントガラス18の下端縁部面に対向させたものである。適宜の弾性を有した遮音材、乃至吸音材で吸音洞5を形成の吸音器6を構成し、このフロアマットMを樹脂材で成形して下側のスリット状の開口4部へ圧接させてもよい。吸収音の周波数調整は吸音洞5部の容積、スリット状開口4部の容積で調整可能であり、別途筒状のスリット状開口4部を形成した部材を装着することによって、適宜に、簡単にその長さを調整できる。トラクタにおいて前記フロントガラス18は、ダッシュボード9の左右両側でキャビンフロア8のステップフロア部に下端縁を接近させて、運転視界を広く形成している。これらフロントガラス18の下端縁部面は、キャビンフロア8の前端縁部に接着剤10で接着連結されている。
【0027】
このように吸音洞5にて共鳴吸音して、特に、キャビンフロア8上面近くは凹凸部が著しく形成されているためにキャビンルーム7内の底部にこもり易い騒音を、前記吸音器6の配置によって吸音して、低減し、しかも、低周波数域の騒音を低減させる。
【0028】
このうち、前記吸音器6の開口4部をキャビンフロア7の底部とフロントガラス18の下端縁部との間の角部にのぞませる形態は、図7に示すように、吸音器6の開口4部がフロントガラス18の内側面に接近して、この角部間隔K1を通して、キャビンルーム7内の騒音が開口4部へ吸収される。特にこのキャビンルーム7の底部角部こもる低周波域の騒音が角部間隔K1を通してスリット状の開口4部から吸音洞5へ侵入して低減される。
【0029】
又、このような低周波域の騒音は、図8のように、キャビンフロア7のステップフロア23部と、ドアガラス20の下端縁部との間の角部に角部間隔K2においても前記同様にして吸音低減される。11はこのドアがラス20の周縁部に形成したインシュレータであり、ドアガラス20を開放しているときは、キャビンルーム7の騒音がこのドア口部にこもることはないが、閉じたときは前例(図7)と同様に、このドア口の角部に角部間隔K2が形成される。
【0030】
又、図9のように低周波域騒音のこもり易い箇所は、運転シート12を支持するシートフロア24の後部と、この後側のリヤガラス21(又は、この下側のリヤアンダーガラス)との間の角部が形成されて、運転シート12の背部に位置した影部として、騒音のこもり易いものであるが、この座席シート12の下側のシートフロア24との間の間隔部に、吸音器6を設けて、この開口4部を後側のリヤガラス21側へ対向させて、この後端側角部にこもる騒音を吸収低減する。又、この吸音器6は、前記運転シート12を取付け支持する支持部材を吸音材によって構成して、吸音洞5と開口4部を形成して、この開口4部を後方へ向けて設定することもできる。
【0031】
又、図10、図11のように、前記共鳴形態の吸音器6を左右横方向に細長い筒型形態として、前記運転シート12の後側のシートフロア24の上面に載置して取り付ける。吸音器6は断面四角筒状(イ)、(ロ)、三角筒状(ハ)、(ホ)、又は円形筒状等の形態で、左、右一側端部(ホ)、又は両側端部(イ)、(ロ)、(ニ)にスリット状の開口4部を形成し、この中間部に吸音洞5を形成する。左右の開口4部の面積や、厚さ等は、適宜に設定することができ、キャビンルーム7の音圧分布に対応して設定できる。又、横長の吸音器6の吸音洞5を中間位置(イ)、(ニ)、乃至異長比位置(ロ)部に仕切壁31を形成して、左右両側に分離形成するもよく、又、長手方向にわたって吸音洞5を上下に仕切る仕切壁32を形成することもできる(ハ)、(ホ)。このような吸音洞5の内周面には吸音材を敷設するが、長い吸音洞5の形態では、一部にのみ吸音材33を設ける形態とすることもできる(ニ)、(ホ)。キャビンルーム7の後側左右横角部の吸音効果を有効に高めることができる。
【0032】
又、前記吸音器6を、フロントピラー13、又はリヤピラー14の内部に設けて、この開口4部をピラー周面に形成する。
キャビンルーム7の騒音は、各フロントピラー13や、リヤピラー14のキャビンルーム7内周面に形成された開口4部を通してピラー内部に形成される吸音洞5に共鳴されて騒音低減される。特に、キャビンルーム7の四角部に位置する各ピラー13、14の配置位置の角部は、騒音のこもり易いものであるが、この角部における騒音は各位置にあるピラー13、14の開口4部に吸引されて、低減される。
【0033】
図12において、ルーム角部の各ピラー13、14のキャビンルーム7内側面に、縦長のピラー口58を開口して、この内側の中空部を利用して吸音洞5を形成する。このピラー口58を被覆するようにピラーカバー59を貼付る。このピラーカバー59の内側には吸音材33を有して前記ピラー口58部に位置させる。これらピラーカバー59や、内側に重合の吸音材33にはスリット状の開口4部を形成して、キャビンルーム7内の騒音侵入を受ける。又、このピラー13、14の中空部内周全面にわたって吸音材を形成することもできる。
【0034】
図13、図14において、キャビン3のフロントガラス18は、ダッシュボード9の左右両側部に位置して下方に張出す(フロント)アンダガラス29を形成するが、このアンダガラス29に振動減衰層を形成する樹脂膜50を接着する。車体1走行時に発生する振動がキャビン3に伝達されて、このアンダガラス29の振動を減衰するもので、このアンダガラス29の振動を減衰することによって、上部のフロントガラス18全体への振動伝播を減衰することができると共に、キャビンルーム7内の、特に運転者耳元部における振動騒音を軽減するものである。そして、図例のアンダガラス29は、二枚(イ)、又は三枚(ロ)のガラスを重合させる合せ面間に前記樹脂膜50を介在させた合せガラス形態として、キャビン3からの振動伝播を低減すると共に、キャビンルーム7からの騒音、こもり音圧を吸収して緩和する。前記樹脂膜50としては、透明なポリエチレンテレフタレートや、ポリビニルブチラール、塩化ビニル系樹脂等を用いることが望ましい。
【0035】
図例(ハ)に示すアンダガラス29は、この表面、または裏面に前記透明な樹脂膜50を接着したものである。又、この表面と裏面の両面に樹脂膜50を接着するもよい(ニ)。更には、このようなトラクタキャビン3のガラス窓における防音は、フロントガラス18の上部にも透明、乃至半透明の遮光を兼ねたフイルム(振動減衰膜)をキャビンルーム7内側から添着することにより、このフイルム等によるガラスの振動エネルギーを吸収して一層の振動振幅を軽減して、キャビンルーム7内のこもり音を減衰する。
【0036】
図15で、前記フロントガラス18における、ダッシュボード9の左側Lのアンダガラス29と、右側Rのアンダガラス29において、前記使用する樹脂膜50の厚さを変えて、振動、騒音等の分布に対応して設定し、振動、騒音減衰効果の少ない薄層の樹脂膜Aと、振動、騒音減衰効果の大きい厚層の樹脂膜Bとに設定して、キャビンルーム7左、右部における騒音減衰力の比率を変えて設定し、左、右バランスよく、かつ効果的に騒音低減する。
【符号の説明】
【0037】
1 車体
2 防振体
3 キャビン
4 開口
5 吸音洞
6 吸音器
7 エンジンルーム
8 キャビンフロア
9 ダッシュボード
12 運転シート
13 フロントピラー
14 リヤピラー
20 ドアガラス
21 リヤガラス
22 フェンダー
23 ステップフロア
24 シートフロア
29 アンダガラス
【技術分野】
【0001】
トラクタキャビンのキャビンルーム内の吸音効果を高く維持する吸音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャビンを構成する構成部材からキャビンルーム内へ透過するエンジン騒音等を遮断するため間隔部に遮音板を設けることによって、室内騒音を低下させる技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0003】
又、キャビンルームの騒音低減のために、ピラーやルーフの空間を利用して、運転者の耳元部における騒音低減を図る技術(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4119049号公報
【特許文献2】特開2008ー260432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラクタキャビンは、キャビンルームの内側や、外側から、エンジンや、伝動装置等の激しい騒音、振動等が伝播されて、とくに、500Hz以下の低周波数域では十分な騒音低減が行われないで、吸音材の吸音面積や、厚みを増加してみるが、効果的ではない。キャビンルームの角部においては騒音のこもり現象が著しく、騒音低減を行い難いものである。この発明は、このようなキャビンルームの角部近傍部における騒音のこもりを少なくして、キャビンルーム内のより静かな運転環境を効果的に形成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、車体1に対して防振体2を介在させて支持し取付けるキャビン3に、吸音材によって一側面にスリット状の開口4部を有した吸音洞5を形成する吸音器6を設けて、この吸音器6の開口4部をキャビンフロア7部上にのぞませて設けたトラクタキャビンの吸音装置の構成とする。
【0007】
トラクタキャビン3のキャビンフロア7上近傍部に発生する騒音は、この位置に開口4部をのぞませる吸音器6によって、このスリット状の開口4部を吸音堂5へ侵入する空気は振動して、吸音洞5の空気が圧縮されたり膨張される作用が繰り返されて、この間に、壁面等の粘性抵抗によって騒音波は減衰して吸音される。
【0008】
このように吸音洞5にて共鳴吸音して、特に、キャビンフロア7上面近くは凹凸部が著しく形成されているためにキャビンルーム内の底部にこもり易い騒音を、前記吸音器6の配置によって吸音して低減し、しかも、低周波数域の騒音を低減させる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記吸音器6の開口4部を、キャビンフロア7底部と、フロントガラス18、ドアガラス20、リヤガラス21、ダッシュボード6、フェンダー22、フロントピラー13、又はリヤピラー14との間の角部、乃至角間隔部にのぞませて設ける。
【0010】
このようなキャビンルーム7のキャビンフロア8の周囲に位置するキャビン周壁面、乃至ガラス面との間の角部には、このキャビンフロア8の中央部に運転シート12が高く形成されるものであるから、特に低周波域の騒音が停滞し易いものであるが、この騒音は、直ちに吸音器6の開口4部を吸音洞5へ吸収されて、低減され、角部におけるこもり騒音をなくして、キャビンルーム7における運転環境を快適にする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記吸音器6を、フロントピラー13、又はリヤピラー14の内部に設けて、この開口4部をピラー周面に形成する。
キャビンルーム7の騒音は、各フロントピラー13や、リヤピラー14のキャビンルーム7内周面に形成された開口4部を通してピラー内部に形成される吸音洞5に共鳴されて騒音低減される。特に、キャビンルーム7の四隅部に位置する各ピラー13、14の配置位置の角部は、騒音のこもり易いものであるが、この角部における騒音は各位値にあるピラー13、14の開口4部に吸引されて、低減される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は、吸音洞5にて共鳴吸音して、キャビンフロア7上面近くは凹凸部が著しく形成されていてキャビンルーム内の底部にこもり易い騒音を、前記吸音器6の配置によって吸音して、低減し、しかも、低周波数域の騒音を低減させるものである。とくに、500Hz以下の低周波数騒音低減に効果的な共鳴吸音器6を、特に直方体形状の空間吸音洞5、及びスリット状の開口4部を形成して、トラクタキャビン3のキャビンルーム内のフロア部近くの角部位置近傍における低周波数域のいわゆるこもり音を、特にキャビン3のキャビンフロア8角部近傍部に、この共鳴吸音器6のスリット状開口4部をのぞませて配置することによって効果的に吸音することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記吸音器6の開口4部を、キャビンフロア7底部と、フロントガラス18、ドアガラス20、リヤガラス21、ダッシュボード6、フェンダー22、フロントピラー13、又はリヤピラー14との間の角部、乃至角間隔部にのぞませて設けるものであるから、このようなキャビンルーム7のキャビンフロア8の周囲に位置するキャビン周壁面、乃至ガラス面との間の角部における、特に低周波域の騒音が停滞し易い騒音は、直ちに吸音器6の開口4部を吸音洞5へ共鳴吸収されて、低減され、角部におけるこもり騒音を消音して、キャビンルーム7における運転環境を快適にすることができ、構成を簡単にすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、キャビンルーム7の前後左右の四角位置には、騒音がこもり易いものであるが、この角部位置のピラー13、14には吸音器6が内装されていて、この角部に位置する開口4部から直接騒音がピラー内部の吸音洞5に共鳴侵入されて、吸音低減される。このため、角部における騒音のこもり現象をなくして、運転環境を良好に維持することができる。
【0015】
作業車体の運転では、左右、前後の非対称状騒音のあることが一般であり、運転者の左右耳元部近傍位置における騒音の音圧差を緩和するように、キャビンルーム7に配置される、各吸音器6の振幅、周波数、位相等の各部の吸音特性を作業機に応じ他形態に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】トラクタキャビンの側面図。
【図2】そのキャビンを取付支持するダンパ部の側断面図。
【図3】そのキャビンフロア部の平面図。
【図4】そのダッシュボード、乃至エンジンルームの斜視図。
【図5】キャビンルーム内のフェンダ部の正断面図。
【図6】吸音器の共鳴吸音作動を示す作動図。
【図7】キャビンフロアの前部に取付け吸音器の側断面図。
【図8】キャビンフロアのドア口部に取付け吸音器の側断面図。
【図9】シートフロア部に取付け吸音器の側断面図。
【図10】シートフロアの後部に取付け吸音器の側断面図と、その構成例の斜視図。
【図11】吸音器の各構成例(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)を示す斜視図。
【図12】キャビンピラー部の斜視図と、その一部の平断面図。
【図13】フロントガラスの正面図。
【図14】そのアンダガラス部の構成例(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)を示す断面図。
【図15】フロントガラス部の構成例(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面に基づいて、車体1後部のリフトアーム26の上下動によって昇降される昇降リンク機構28の後端に、ロータリ耕耘装置27等の作業機を装着して作業することができるが、このトラクタ車体1にはキャビン3を搭載する。この車体1は、前部にエンジンEボディーを連結するクラッチハウジングや、この後側にミッションケース等を一体的に連結して構成され、この車体1ミッションケースの後端部には左右両側方へ張出すリヤアクスルハウジングを有して、この車軸57の両端に後輪58を軸装する。又、クラッチハウジングの前方にはフロントブラケットを設けて、上側に前記エンジンEを搭載し、下部にフロントアクスルハウジング、及びこの両端の車軸に前輪59を軸装して、ダッシュボード9上のステアリングハンドル30によって操向操作することができる。このエンジンEは、上側をボンネットで覆われるエンジンルームに位置し、前側をフロントマスクで覆う。前記後輪58の前上部はフェンダ22を有し、左右のフェンダ22間にバケット状のシートフロア24を形成し、このシートフロア24上に運転シート12を搭載している。このシートフロア24の前端とダッシュボード9の下端部との間には、運転者が乗降するステップフロア23を形成する。
【0018】
このような車体1に対してキャビン3を搭載する。このキャビン3は、左右前後の四隅部にフロントピラー13、リヤピラー14を有し、これらの各ピラー13、14の上端部間には囲桁状のルーフフレーム15に連結し、又、下端部は、前記フェンダ22や、ステップフロア23、及びシートフロア24の後端面等に沿って形成されるキャビンフレーム17に連結して、キャビンフレームの主体を構成する。前記ルーフフレーム15の上側にはルーフボード16を設け、左右のフロントピラー13間にはフロントガラス18を設け、左右のリヤピラー14間にリヤガラス21を設け、左右両側の各フロントピラー13と、リヤピラー14との間には、このリヤピラー14にドアヒンジとして開閉回動するドアガラス20を設けて、キャビン3内から外周の視界を良好にしている。
【0019】
このようなキャビン3は、前記フロントピラー13や、リヤピラー14等の下端部の四隅部位置にキャビンブラケット34を設けて、このキャビンブラケット34を前記車体1側の支持ブラケット48に取付けて支持させる。この四隅部のキャビンブラケット34の取付形態(図2)は、防振ゴムからなる弾性防振体2を有した取付ブラケット35と、これら防振体2及び取付ブラケット35の中心部に形成する取付ボルト37の挿通しうるボルトカラー等を有し、この防振体2及び取付ブラケット35を、車体1側の支持ブラケット48と、キャビン3側のキャビンブラケット34の受座36との間に介在させて、支持するように取付ける。このキャビンブラケット34と、防振体2等の中心部のカラーと、この下端部に重合する座金との間にわたって取付ボルト37を挿通して、下端からナット38で締付ける。又、前記取付ブラケット35は取付ボルトで支持ブラケット48に対して取付ける。
【0020】
前記のようにして車体1に対して着脱するキャビン3は、前記フェンダ22や、シートフロア24、運転シート12、及びステップフロア23等の底部構成部分を、このキャビンフレームを構成するフロントピラー13や、リヤピラー14等と一体的に構成する形態としている。
【0021】
前記運転シート12とフェンダ22との間には、キャビンフロア8のシートフロア24部に一体にガイドケース43を構成し、昇降レバー44等の操作レバーの操作を行わせる。この昇降レバー44は、油圧弁等を内装するバルブケース45を有し、このベルブケース45部が、ゴム板等の防振座46を介在させて、フェンダ22の内側面にボルト47締めによって取付けられる。このように昇降レバー44は、キャビン3の構成部材で支持されているが、作業機(耕耘装置27)の昇降操作位置により特定の振動が伝達されることがあり、これに起因してキャビンルーム7内の左、右片側の騒音が高くなる。
【0022】
キャビンルーム7内の音圧分布は複雑であり、キャビン3容量によっては、左、右のいずれかの共鳴吸音機構の吸音周波数特性を大とするかは、状況によって異なるが、左、右の共鳴吸音機構の共鳴周波数を変更することによって、運転者の耳元騒音の左、右バランスをとることで、平均的に騒音を低減する。
【0023】
前記図4のようにキャビン3を搭載する車体1の前部に構成するエンジンルーム11には、エンジンEの前側にラジエータ40を配置し、後部右側にマフラー41から連通されるテールパイプ42を配置し、キャビン3の一側のフロントピラー13の前側部に接近させて立設し、運転視界を邪魔し難い形態としている。このようなテールパイプ42の配置形態においては、このテールパイプ42に遠い側の左耳騒音が高くなることがある。キャビンフロア8部に左右に共鳴吸音機構を設け、しかもこの左右の共鳴吸音機構の共鳴周波数を変更する等によって、マフラーテールパイプ42側の防振支持弾性体2側の共鳴吸音機構の吸音特性を反対側の共鳴吸音機構よりも低周波数側或は高周波数に設定することによって、右耳騒音特有の周波数騒音を低減することができ、快適な室内とすることができる。
【0024】
ここにおいて、この共鳴吸音装置は、車体1に対して防振体2を介在させて支持し取付けるキャビン3に、吸音材によって一側面にスリット状の開口4部を有した吸音洞5を形成する吸音器6を設けて、この吸音器6の開口4部をキャビンフロア8部上にのぞませて設ける。
【0025】
トラクタキャビン3のキャビンフロア8上近傍部に発生する騒音は、図6の作動図のように、この位置に開口4部をのぞませる吸音器6によって、このスリット状の開口4部を吸音洞5へ侵入する空気質量Wは、スプリングSの如く振動して、吸音洞5の空気が圧縮されたり膨張される作用が繰り返されて、この間に、壁面等の粘性抵抗Rによって騒音波は減衰して吸音される。
【0026】
図7の構成は、キャビンフロア8の前端縁部のフロントガラス18下端部との間の角部において、フロアマットMの下側に吸音器6を設け、この開口4部を前側のフロントガラス18の下端縁部面に対向させたものである。適宜の弾性を有した遮音材、乃至吸音材で吸音洞5を形成の吸音器6を構成し、このフロアマットMを樹脂材で成形して下側のスリット状の開口4部へ圧接させてもよい。吸収音の周波数調整は吸音洞5部の容積、スリット状開口4部の容積で調整可能であり、別途筒状のスリット状開口4部を形成した部材を装着することによって、適宜に、簡単にその長さを調整できる。トラクタにおいて前記フロントガラス18は、ダッシュボード9の左右両側でキャビンフロア8のステップフロア部に下端縁を接近させて、運転視界を広く形成している。これらフロントガラス18の下端縁部面は、キャビンフロア8の前端縁部に接着剤10で接着連結されている。
【0027】
このように吸音洞5にて共鳴吸音して、特に、キャビンフロア8上面近くは凹凸部が著しく形成されているためにキャビンルーム7内の底部にこもり易い騒音を、前記吸音器6の配置によって吸音して、低減し、しかも、低周波数域の騒音を低減させる。
【0028】
このうち、前記吸音器6の開口4部をキャビンフロア7の底部とフロントガラス18の下端縁部との間の角部にのぞませる形態は、図7に示すように、吸音器6の開口4部がフロントガラス18の内側面に接近して、この角部間隔K1を通して、キャビンルーム7内の騒音が開口4部へ吸収される。特にこのキャビンルーム7の底部角部こもる低周波域の騒音が角部間隔K1を通してスリット状の開口4部から吸音洞5へ侵入して低減される。
【0029】
又、このような低周波域の騒音は、図8のように、キャビンフロア7のステップフロア23部と、ドアガラス20の下端縁部との間の角部に角部間隔K2においても前記同様にして吸音低減される。11はこのドアがラス20の周縁部に形成したインシュレータであり、ドアガラス20を開放しているときは、キャビンルーム7の騒音がこのドア口部にこもることはないが、閉じたときは前例(図7)と同様に、このドア口の角部に角部間隔K2が形成される。
【0030】
又、図9のように低周波域騒音のこもり易い箇所は、運転シート12を支持するシートフロア24の後部と、この後側のリヤガラス21(又は、この下側のリヤアンダーガラス)との間の角部が形成されて、運転シート12の背部に位置した影部として、騒音のこもり易いものであるが、この座席シート12の下側のシートフロア24との間の間隔部に、吸音器6を設けて、この開口4部を後側のリヤガラス21側へ対向させて、この後端側角部にこもる騒音を吸収低減する。又、この吸音器6は、前記運転シート12を取付け支持する支持部材を吸音材によって構成して、吸音洞5と開口4部を形成して、この開口4部を後方へ向けて設定することもできる。
【0031】
又、図10、図11のように、前記共鳴形態の吸音器6を左右横方向に細長い筒型形態として、前記運転シート12の後側のシートフロア24の上面に載置して取り付ける。吸音器6は断面四角筒状(イ)、(ロ)、三角筒状(ハ)、(ホ)、又は円形筒状等の形態で、左、右一側端部(ホ)、又は両側端部(イ)、(ロ)、(ニ)にスリット状の開口4部を形成し、この中間部に吸音洞5を形成する。左右の開口4部の面積や、厚さ等は、適宜に設定することができ、キャビンルーム7の音圧分布に対応して設定できる。又、横長の吸音器6の吸音洞5を中間位置(イ)、(ニ)、乃至異長比位置(ロ)部に仕切壁31を形成して、左右両側に分離形成するもよく、又、長手方向にわたって吸音洞5を上下に仕切る仕切壁32を形成することもできる(ハ)、(ホ)。このような吸音洞5の内周面には吸音材を敷設するが、長い吸音洞5の形態では、一部にのみ吸音材33を設ける形態とすることもできる(ニ)、(ホ)。キャビンルーム7の後側左右横角部の吸音効果を有効に高めることができる。
【0032】
又、前記吸音器6を、フロントピラー13、又はリヤピラー14の内部に設けて、この開口4部をピラー周面に形成する。
キャビンルーム7の騒音は、各フロントピラー13や、リヤピラー14のキャビンルーム7内周面に形成された開口4部を通してピラー内部に形成される吸音洞5に共鳴されて騒音低減される。特に、キャビンルーム7の四角部に位置する各ピラー13、14の配置位置の角部は、騒音のこもり易いものであるが、この角部における騒音は各位置にあるピラー13、14の開口4部に吸引されて、低減される。
【0033】
図12において、ルーム角部の各ピラー13、14のキャビンルーム7内側面に、縦長のピラー口58を開口して、この内側の中空部を利用して吸音洞5を形成する。このピラー口58を被覆するようにピラーカバー59を貼付る。このピラーカバー59の内側には吸音材33を有して前記ピラー口58部に位置させる。これらピラーカバー59や、内側に重合の吸音材33にはスリット状の開口4部を形成して、キャビンルーム7内の騒音侵入を受ける。又、このピラー13、14の中空部内周全面にわたって吸音材を形成することもできる。
【0034】
図13、図14において、キャビン3のフロントガラス18は、ダッシュボード9の左右両側部に位置して下方に張出す(フロント)アンダガラス29を形成するが、このアンダガラス29に振動減衰層を形成する樹脂膜50を接着する。車体1走行時に発生する振動がキャビン3に伝達されて、このアンダガラス29の振動を減衰するもので、このアンダガラス29の振動を減衰することによって、上部のフロントガラス18全体への振動伝播を減衰することができると共に、キャビンルーム7内の、特に運転者耳元部における振動騒音を軽減するものである。そして、図例のアンダガラス29は、二枚(イ)、又は三枚(ロ)のガラスを重合させる合せ面間に前記樹脂膜50を介在させた合せガラス形態として、キャビン3からの振動伝播を低減すると共に、キャビンルーム7からの騒音、こもり音圧を吸収して緩和する。前記樹脂膜50としては、透明なポリエチレンテレフタレートや、ポリビニルブチラール、塩化ビニル系樹脂等を用いることが望ましい。
【0035】
図例(ハ)に示すアンダガラス29は、この表面、または裏面に前記透明な樹脂膜50を接着したものである。又、この表面と裏面の両面に樹脂膜50を接着するもよい(ニ)。更には、このようなトラクタキャビン3のガラス窓における防音は、フロントガラス18の上部にも透明、乃至半透明の遮光を兼ねたフイルム(振動減衰膜)をキャビンルーム7内側から添着することにより、このフイルム等によるガラスの振動エネルギーを吸収して一層の振動振幅を軽減して、キャビンルーム7内のこもり音を減衰する。
【0036】
図15で、前記フロントガラス18における、ダッシュボード9の左側Lのアンダガラス29と、右側Rのアンダガラス29において、前記使用する樹脂膜50の厚さを変えて、振動、騒音等の分布に対応して設定し、振動、騒音減衰効果の少ない薄層の樹脂膜Aと、振動、騒音減衰効果の大きい厚層の樹脂膜Bとに設定して、キャビンルーム7左、右部における騒音減衰力の比率を変えて設定し、左、右バランスよく、かつ効果的に騒音低減する。
【符号の説明】
【0037】
1 車体
2 防振体
3 キャビン
4 開口
5 吸音洞
6 吸音器
7 エンジンルーム
8 キャビンフロア
9 ダッシュボード
12 運転シート
13 フロントピラー
14 リヤピラー
20 ドアガラス
21 リヤガラス
22 フェンダー
23 ステップフロア
24 シートフロア
29 アンダガラス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)に対して防振体(2)を介在させて支持し取付けるキャビン(3)に、吸音材によって一側面にスリット状の開口(4)部を有した吸音洞(5)を形成する吸音器(6)を設けて、この吸音器(6)の開口(4)部をキャビンフロア(7)部上にのぞませて設けることを特徴とするトラクタキャビンの吸音装置。
【請求項2】
前記吸音器(6)の開口(4)部を、キャビンフロア(7)底部と、フロントガラス(18)、ドアガラス(20)、リヤガラス(21)、ダッシュボード(6)、フェンダー(22)、フロントピラー(13)、又はリヤピラー(14)との間の角部、乃至角間隔部にのぞませて設けることを特徴とする請求項1に記載のトラクタキャビンの吸音装置。
【請求項3】
前記吸音器(6)を、フロントピラー(13)、又はリヤピラー(14)の内部に設けて、この開口(4)部をピラー周面に形成することを特徴とする請求項1、又は2に記載のトラクタキャビンの吸音装置。
【請求項1】
車体(1)に対して防振体(2)を介在させて支持し取付けるキャビン(3)に、吸音材によって一側面にスリット状の開口(4)部を有した吸音洞(5)を形成する吸音器(6)を設けて、この吸音器(6)の開口(4)部をキャビンフロア(7)部上にのぞませて設けることを特徴とするトラクタキャビンの吸音装置。
【請求項2】
前記吸音器(6)の開口(4)部を、キャビンフロア(7)底部と、フロントガラス(18)、ドアガラス(20)、リヤガラス(21)、ダッシュボード(6)、フェンダー(22)、フロントピラー(13)、又はリヤピラー(14)との間の角部、乃至角間隔部にのぞませて設けることを特徴とする請求項1に記載のトラクタキャビンの吸音装置。
【請求項3】
前記吸音器(6)を、フロントピラー(13)、又はリヤピラー(14)の内部に設けて、この開口(4)部をピラー周面に形成することを特徴とする請求項1、又は2に記載のトラクタキャビンの吸音装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−126347(P2012−126347A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281894(P2010−281894)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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