説明

トラクタ

【課題】変速レバーの中途部及び基部を覆う閉鎖カバーにより、キャビン内への塵埃等の侵入を防止することができるトラクタを提供する。
【解決手段】トランスミッションケース11に設けた変速装置を、キャビンのフロア13に設けた開口部13aからキャビン内に突出させた変速レバー20によって変速操作するトラクタであって、変速レバー20を座席6aの側方に設けた開口部13aからフェンダ10の側面に沿わせて立ち上がらせ、その上方をフェンダ10に固定したレバーガイド18によって覆い、また開口部13aの上方、並びに開口部13aからレバーガイド18の下縁18aに至る側方をフロア13に固定した閉鎖カバー27によって覆う構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速レバーをキャビン内に設けるトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にトラクタはトランスミッションケース内に設けた変速装置を、キャビンの開口部から座席側方のフェンダに沿って立ち上げられる変速レバーによって変速操作するようになっている。
そして、変速レバーはガイド溝に挿入して変速案内させるものが知られている(例えば特許文献1。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−84623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で示される変速レバーは、変速レバーの上部をレバーガイドで覆うものの、変速レバーの中途部及び基部が座席側に露出して見苦しかった。また代掻き作業や耕耘作業を行う際に飛散した泥水や塵埃等が、フロア開口部を通してキャビン内に侵入し操縦部を汚損する欠点があった。
さらにトラクタが横転したり構造物に接当する等の不慮の事態において、キャビンに横向きの荷重が加わりキャビンの一部が室内に向けて変形するような場合に、座席に物が当たらないか、座席が変形部分のストッパにならないという破壊試験における条件が課せられている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は係る課題を解決するために、第1に、トランスミッションケース11に設けた変速装置を、キャビン7のフロア13に設けた開口部13aからキャビン7内に突出させた変速レバーによって変速操作するトラクタ1において、前記変速レバーを座席6aの側方に設けた開口部13aからフェンダ10の側面に沿わせて立ち上がらせ、その上方をフェンダ10に固定したレバーガイド18によって覆い、また開口部13aの上方、並びに開口部13aからレバーガイド18の下縁18aに至る側方をフロア13に固定した閉鎖カバー27によって覆うことを特徴としている。
第2に、前記レバーガイド18の下縁18aと閉鎖カバー27の上面との間に間隙31を設けることを特徴としている。
第3に、前記変速レバーをフェンダ10と閉鎖カバー27の内面にそれぞれ貼り付けたシール32,33によって挟持し、開口部13aからキャビン7内への泥水や塵埃等の浸入を阻止することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、座席側方の開口部から立ち上がらせる変速レバーの上方を、フェンダに固定したレバーガイドによって覆い、また開口部の上方並びに開口部からレバーガイドの下縁に至る側方を、フロアに固定する閉鎖カバーによって覆うことにより、変速部や変速レバーの基部を露出させずに外観を向上し、また下方から飛散してくる塵埃等のキャビン内への侵入を阻止することができる。
また請求項2の発明によれば、レバーガイドの下縁と閉鎖カバーの上面との間に間隙を設けることにより、キャビンが横向きの荷重を受けフェンダ、そしてレバーガイドが座席側に向けて変形するような場合にも、閉鎖カバーはレバーガイドと間隙を有してフロア側に取付けられているため、閉鎖カバーが座席側に変形することが防止され閉鎖カバーが座席に当たることがない。
また請求項3の発明によれば、前記変速レバーをフェンダと閉鎖カバーの内面にそれぞれ貼り付けたシールによって挟持することにより、塵埃等のキャビン内への侵入を効果的に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明が適用されたトラクタの斜視図である。
【図2】操縦部の要部の全体構造を示す斜視図である。
【図3】図2の変速レバー構造を示す側面図である。
【図4】図2の変速レバー構造を示す斜視図である。
【図5】図4の閉鎖カバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【図6】図2の変速レバー構造を一部破断をして示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。符号1は農業用のトラクタであり、トラクタ1は前輪2と後輪2aとを前後左右に有する機体3に、前側からエンジン4を配設してボンネット5で覆い、その後方にハンドル及び座席等からなる操縦部6をキャビン7で覆い、機体後部に耕耘装置等の作業機を装着する3点リンク方式の昇降機構9を備えている。このトラクタ1は走行変速や作業機等の変速を行なう変速レバーを、左側の後輪2aを覆うフェンダ10と操縦部6の座席6aとの間に設置している。
【0009】
先ず図2,図3,図6を参照し操縦部6及びキャビン7等の構成について説明する。図示の操縦部6はその操縦部フロア6bをキャビン7の床板フレームを形成する底板部で構成している。上記操縦部フロア6bは、下方に配置するトランスミッションケース11と、該トランスミッションケース11の左側に配置する変速部12等を覆うフロア13と、乗降用のステップとなる前部フロア15とから構成され、両者は一体に結合されている。
【0010】
またキャビン支柱16は操縦部フロア6bの前後左右から立設しており、各キャビン支柱16の上部を横フレーム17で連結し一体的なキャビンフレームを構成する。そして、上記キャビンフレームは、走行機体3に対し4箇所で防振ゴムを介して取付けられる。
キャビン支柱16及び横フレーム17は上部に天上板が取付けられ、前後部にフロントウインドウとリヤウインドウを取付け、且つ左右にドア等を取付けてキャビン7を形成する。
【0011】
上記構成においてフロア13は、トランスミッションケース11の上方を覆うと共に、左右のフェンダ10の中間位置に座席6aを高さ及び前後調節可能に設置し、また座席6aの左側下方において開口部13aを形成することにより、変速部12の上方側を露出させるようにしている。
【0012】
また左側のフェンダ10は、後輪2aの上部と側部を覆う一部を凹入させた凹陥部19を形成し、そのスペース内に変速レバーを配置すると共に、上部に各変速レバーの操作を案内するレバーガイド18を取付けている。また凹陥部19に設置される変速レバーは、PTO変速装置を変速操作するPTO変速レバー20と、機体の走行速度を変速操作する主変速レバー21及び副変速レバー22等としている。
【0013】
上記各変速レバーは図5,図6で示すように、それぞれの変速レバーの基部を、トランスミッションケース11内に設けた各変速装置12の変速操作部材12aにボルト12bにより着脱可能に接続し、その中途部を屈曲させ前記凹陥部19の側面に沿わせ近接して立ち上がるようにしている。そして、各変速レバーの上部を、レバーガイド18に形成されるPTOレバーガイド部23と主変速レバーガイド部24と副変速レバーガイド部25とに、それぞれ挿入し把持部を各ガイド部の上方に突出させている。
【0014】
レバーガイド18は、合成樹脂材によってフェンダ10のアール面に沿う下向きコ字状の箱型形状に形成しており、フェンダ10の凹陥部19に上方から嵌め込んだ状態でフェンダ10に固定される。またレバーガイド18の右側の下縁18aを凹入状になすことにより、変速レバーの中途部との干渉を回避し、且つレバーガイド18の座席側の上下方向のガイド開口部18bが大きくなるように形成している。これによりガイド開口部18bは、開口部13aからレバーガイド18の下縁18aに至る上下方向の開口を前記開口部13aと一連に形成し、広い開口部を介して変速レバーの前記変速操作部材12aに対する結合作業を行い易くするようにしている。
【0015】
そして、上記開口部13aとガイド開口部18bは、フロア13に着脱可能に取付けられる閉鎖カバー27によって覆うようにしている。即ち、閉鎖カバー27は開口部13aを上側から覆う横カバー部28と、ガイド開口部18bを側方から覆う縦カバー部29とを正面視で逆L字状なすように形成しており、フロア13に対し横カバー部28の前後を複数のボルト30によって着脱自在に取付けている。
【0016】
これにより閉鎖カバー27は開口部13aとガイド開口部18bとを共に覆い、変速レバーの基部並びに中途部を座席側に露出させることなく隠しすっきりとした外観にすることができる。
また耕耘作業中等に飛散した泥水飛沫や塵埃等が機体腹部から操縦部6側へ侵入しようとするとき、これらを横カバー部28と縦カバー部29が遮るので、キャビン7内への侵入を防止し操縦部6の汚損を防ぐことができる。
【0017】
また閉鎖カバー27は図3,図4,図6で示すように、縦カバー部29の自由端となる上面29aを前記レバーガイド18の下縁18aに沿って、上下方向に所定の間隙31を有して入り込ませている。この上面29aは縦カバー部29の上縁を横向に屈曲することにより、閉鎖カバー27の剛性を向上させることができる。
また上面29aはレバーガイド18の下縁18aに対し間隙31を有して入り込ませることにより、その横向きの内面で高圧洗車した場合に吹き上がる水のキャビン7内への漏出を阻止する。
【0018】
またトラクタ1が横転したり構造物に接当する等の不慮の事態において、キャビン7に横向きの荷重が加わりキャビン支柱16を介してフェンダ10がキャビン室内に向けて変形したような場合に、フェンダ10に固定されたレバーガイド18も座席6a側に変形することになる。しかし、フロア13に取付けている閉鎖カバー27は、レバーガイド18の下縁18aと間隙31を有して離間しているため、閉鎖カバー27が変形する度合いが少なくなり、閉鎖カバー27が座席6aと接当することが防止される。
【0019】
また図5,図6で示すように、スポンジ等からなるシール32を、フェンダ10の側面に前後方向に貼り付けると共に、該シール32と対をなすシール33を縦カバー部29の側面に前後方向に貼り付けている。これにより閉鎖カバー27の組み付け状態においてシール32とシール33とは、互いの対向面を接当状態となし且つ変速レバーの中途部を挟持する状態になしている。
【0020】
このシール構造によれば、間隙31をシール32,33により塞いだ状態にするので、塵埃等の上方移動を阻止すると共に、洗車時に高圧洗車水を機体下部から噴き付ける場合でも、洗車水をシール32,33によって遮ることができる。また洗車水が変速レバーを挟持するシール32,シール33との小隙から上方に漏れ出したとしも、この漏出水は量が抑制され流速も弱められるため、閉鎖カバー27の縦カバー部29や上面29aに遮られてキャビン7内への侵入が阻止される。
【0021】
以上のように構成されるトラクタ1は、製造時に機体にキャビン7を搭載したのち、PTO変速レバー20,主変速レバー21,副変速レバー22等をレバーガイド18に差し込み開口部13aからレバーガイド18の下縁18aに至る開口部内で、変速レバーの基部を変速部12の変速操作部材12aに取り付けることにより、各変速装置を変速レバーによって操作できるようになる。こののち閉鎖カバー27をフロア13に固定することによって上記開口部を簡単に覆うことができる。
【0022】
またPTO変速レバー20,主変速レバー21,副変速レバー22等が、それぞれのレバーガイド部のガイド溝に沿って前後及び横方向に操作されるとき、シール32とシール33は各レバー杆20a,21a,22aに押されて操作方向に弾力性を有して撓むため、変速レバーの操作をスムーズに行うことができる。また閉鎖カバー27は側方からフェンダ10側のシール32に対しシール33を接当させるように組み付け、横カバー部28をフロア13に固定する簡単な作業によって、ガイド開口部18bと開口部13aとを共に覆うことができる。
【符号の説明】
【0023】
1 トラクタ
6 操縦部
6a 座席
10 フェンダ
12 変速部
13 フロア
13a 開口部
18 レバーガイド
18b ガイド開口部
19 凹陥部
20 PTO変速レバー(変速レバー)
21 主変速レバー(変速レバー)
22 副変速レバー(変速レバー)
27 閉鎖カバー
31 間隙
32,33 シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションケース(11)に設けた変速装置を、キャビン(7)のフロア(13)に設けた開口部(13a)からキャビン(7)内に突出させた変速レバーによって変速操作するトラクタ(1)において、前記変速レバーを座席(6a)の側方に設けた開口部(13a)からフェンダ(10)の側面に沿わせて立ち上がらせ、その上方をフェンダ(10)に固定したレバーガイド(18)によって覆い、また開口部(13a)の上方、並びに開口部(13a)からレバーガイド(18)の下縁(18a)に至る側方をフロア(13)に固定した閉鎖カバー(27)によって覆うことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
前記レバーガイド(18)の下縁(18a)と閉鎖カバー(27)の上面との間に間隙(31)を設けることを特徴とする請求項1記載のトラクタ。
【請求項3】
前記変速レバーをフェンダ(10)と閉鎖カバー(27)の内面にそれぞれ貼り付けたシール(32),(33)によって挟持し、開口部(13a)からキャビン(7)内への泥水や塵埃等の浸入を阻止することを特徴とする請求項1又は2記載のトラクタ。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−284999(P2010−284999A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138280(P2009−138280)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】