説明

トラクタ

【課題】バックホーを搭載可能なトラクタにおいて、キャビンを支持する支持フレームが連結される支持ブラケットとバックホーフレームとの干渉を回避する。
【解決手段】バックホーを支持する左右一対のバックホーフレーム70がミッションケース15に沿って配設されるように連結可能な連結部を備えたトラクタにおいて、ミッションケース15の上方に配設されるキャビンフレームから下向きに延設される左右一対の支持フレーム36と、ミッションケース15における後車軸ケース16よりも後側の部分に連結された支持ブラケット80とが備えられ、支持フレーム36の下部36aが前方に向かって斜めに延設され、支持フレーム36の下端部36bと連結された連結部材82の一端から後方且つ内側に向かって連結部材82が斜めに延設され、連結部材82の他端が支持ブラケット80に防振部材83を介して支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体後部に配設されるミッションケースから両横外側に突出する後車軸ケースに、バックホーを支持する左右一対のバックホーフレームが連結可能な連結部を備えたトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたトラクタのキャビンにおいては、キャビンフレームから下方に延設される左右一対の上下向きフレームの下端を、ミッションケースの後輪用車軸ケース部に支持されている取付け体に防振部材を介して取り付けることによって、キャビンが機体に固定されるように構成されている。一対の上下向きフレームの下部は背面視で互いに平行な直線状となっており、取付け体への溶接部付近においてもフレームの間隔を一定距離に維持しているので、キャビンを安定的に支持でき、応力集中の発生を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−291958号公報(図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のトラクタの後方には、リンク機構を介してバックホー等の作業装置を連結することができる。バックホーをトラクタに搭載するために、ミッションケースの後輪用車軸ケース部に連結されるバックホーフレームは、バックホーを搭載していなくとも後輪用車軸ケース部に取り付けたままにしておくことがある。このような場合、特許文献1のトラクタのようにキャビンを搭載していると、ミッションケースの後輪用車軸ケース部に支持されている上記取付け体とバックホーフレームとが干渉し易く、このような干渉を回避するためにバックホーフレームの設計の自由度において限界があった。
【0005】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたもので、バックホーを搭載可能なトラクタにおいて、キャビンを支持する支持フレームが連結される支持ブラケットとバックホーフレームとの干渉を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトラクタの第1特徴構成は、機体後部に配設されるミッションケースから両横外側に突出する後車軸ケースに、バックホーを支持する左右一対のバックホーフレームが前記ミッションケースに沿って配設されるように連結可能な連結部を備えたトラクタにおいて、前記ミッションケースの上方に配設されるキャビンフレームから下向きに延設される左右一対の支持フレームと、前記ミッションケースにおける前記後車軸ケースよりも後側の部分に連結された支持ブラケットとが備えられ、前記支持フレームの下部が前方に向かって斜めに延設され、前記支持フレームの下端部と連結された連結部材の一端から後方且つ内側に向かって前記連結部材が斜めに延設され、前記連結部材の他端が前記支持ブラケットに防振部材を介して支持されている点にある。
【0007】
本特徴構成によれば、バックホーフレームを連結する連結部がミッションケースの後車軸ケースに備えられるのに対し、支持フレームを支持する支持ブラケットがミッションケースの後車軸ケースよりも後側の部分に連結されるので、連結部と支持ブラケットとの間に一定の距離を確保することができる。従って、バックホーフレームと支持ブラケットとの干渉を回避し易くなる。
【0008】
更に、支持フレームの下部が前方に向かって斜めに延設されるとともに、支持フレームと支持ブラケットとを連結する連結部材が支持フレームの下端部から後方且つ内側に向かって斜めに延設されているので、支持ブラケットの側方に空間ができる。これにより、支持フレームを支持ブラケットに支持しながら、支持フレーム及び連結部材とバックホーフレームとの干渉を回避することができるので、支持ブラケットの側方の空間をバックホーフレームの配設空間として利用することができ、バックホーフレームの設計自由度が向上する。
【0009】
第2特徴構成は、前記支持ブラケットに、前記バックホーフレームが連結可能なブラケット側連結部が備えられている点にある。
【0010】
本特徴構成によれば、バックホーフレームがミッションケースの後車軸ケースに設けた連結部だけでなく、支持ブラケットのブラケット側連結部にも連結できるので、バックホーフレームの取付け剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】トラクタの背面図である。
【図3】バックホーフレームの連結箇所を示す側面図である。
【図4】トラクタの支持構造を示す平面図である。
【図5】支持ブラケット近傍の一部分解斜視図である。
【図6】支持ブラケット近傍の斜視図である。
【図7】支持ブラケット近傍の背面図である。
【図8】収納部を示す斜視図である。
【図9】収納部の断面図である。
【図10】バックホーを搭載したトラクタの全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るトラクタの実施形態について、図面に基づいて説明する。本発明に係るトラクタ1は、図1に示すように前部にフロントローダ2を、中央部にキャビン3を搭載することができる。或いは、図10に示すように中央部にキャビン3を搭載せずに、後部にバックホー4を搭載することも可能である。
【0013】
図1に示すように、平鋼材等を連結して枠状に形成した車体フレーム10の前部にラジエータ11及び水冷式のエンジン12を連結し、更にエンジン12の後部に主クラッチ(図示せず)を内装したクラッチハウジング13を連結してある。車体フレーム10の後部に静油圧式無段変速装置14やミッションケース15等を配備して、エンジン12からの動力を、主クラッチを介して主変速装置である静油圧式無段変速装置14に伝達する。静油圧式無段変速装置14からの変速動力を、ミッションケース15に内装したギヤ式の副変速装置(図示せず)等からなる走行伝動系を介して、走行用として左右一対の前輪5及び後輪6に伝達する4輪駆動型に構成される。
【0014】
ミッションケース15の上部には、左右一対のリフトアーム17が上下揺動可能に装備されるとともに、それらのリフトアーム17を揺動駆動する油圧式のリフトシリンダ18が一体装備される。更に、ミッションケース15の左右両側部には後車軸ケース16が連結されている。又、左右の前輪5を操舵するステアリングホイール7や運転座席8等は、キャビン3の内部に位置するように配置される。
【0015】
フロントローダ2は、左右一対の支柱20、対応する支柱20の上端部から上下揺動可能に延設された左右一対のブーム21、これらのブーム21の延出端部に上下揺動可能に連結されたバケット22、左右の対応する支柱20とブーム21とに亘って架設された左右一対のブームシリンダ23、左右の各ブーム21とバケット22とに亘って架設された左右一対のバケットシリンダ24を備えて構成されている。
【0016】
十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー25を操作すると、作動油の流動状態が切り換えられ、ブームシリンダ23やバケットシリンダ24が駆動或いは停止する。即ち、操縦レバー25の操作に基づくバルブユニット(図示せず)の油圧制御で、左右のブームシリンダ23やバケットシリンダ24が伸縮作動してブーム21やバケット22を揺動駆動することにより、しゃくり動作や掬い動作或いは下ろし動作等が可能なように構成されている。
【0017】
フロントローダ2には、トラクタ1から取り外した際に使用するスタンド26が、2つ折りにしてブーム21の延出端側に沿う姿勢に揺動変位させた格納状態と、一直線状に伸ばしてその下端部がブーム21の延出端側から離れる姿勢に揺動変位させた使用状態とに姿勢切り換え可能に装備されている。
【0018】
図1、図3及び図4に示すように、車体フレーム10の左右両外側部には、フロントローダ2の装着を可能にするローダフレーム27が着脱可能にボルト連結される。このローダフレーム27は、左右一対の板状フレーム27A、各板状フレーム27Aから横外方に向けて延設された左右一対のパイプフレーム27B、各パイプフレーム27Bの左右中間部に垂下装備された左右一対の連結ブラケット27C、各パイプフレーム27Bの延出端に立設された平面視コの字状で左右一対の連結フレーム27D、各連結フレーム27Dの下部に左右向きに装備された左右一対の支持ピン27E、及び、各連結フレーム27Dの上部に左右方向に抜き差し可能に挿通装備された左右一対の連結ピン27F等を備えて構成されている。左右の各支持ピン27Eで受け止め支持されるように、フロントローダ2の左右の支柱20を対応する連結フレーム27Dに内嵌させ、左右の連結ピン27Fで対応する連結フレーム27Dに連結固定することで、フロントローダ2を装着できるようになっている。
【0019】
図1及び図8に示すように、キャビン3は、左右一対の前部縦フレーム31、左右一対の後部縦フレーム32、左右の後部縦フレーム32の間に亘って略水平に配設される補強フレーム33等からなるキャビンフレーム30を有する。更に、キャビンフレーム30の上部に屋根部材34を備え、下部に床部材35を備えて構成される。床部材35の左右両端部は後輪6のフェンダーとして機能するフェンダー部35aとして構成される。補強フレーム33は上面視コの字状に形成され、この補強フレーム35の中間部から下向きに延設される左右一対の支持フレーム36をミッションケース15に支持することにより、キャビン3の後部側がトラクタ1に搭載支持されるように構成されている。
【0020】
図1及び図2に示すように、左右一対の前部縦フレーム31の間には前方ガラス(図示せず)が取り付けられ、左右それぞれの前部縦フレーム31と後部縦フレーム32との間には左右一対の側方ガラス61が設置される。左右の側方ガラス61は開閉可能に後部縦フレーム32に支持されており、作業者がキャビン3への出入りができるようになっている。左右一対の後部縦フレーム32の間、且つ補強フレーム33と屋根部材34との間には、平面視が補強フレーム33のコの字形状に沿うように後方ガラス62が配設される。後方ガラス62の左右それぞれの上角部62aと屋根部材34との間には、閉塞部材63が後方ガラス62の上角部62aの形状に合わせて設けられる。閉塞部材63を設けることにより、後方ガラス62にラウンドガラスを用いても、後方ガラス62と屋根部材34との間に隙間が生じることを防止できる。
【0021】
図8及び図9に示すように、運転座席8の設置箇所の後方には収納部37が設けられる。この収納部37は、運転座席8を支持するシートアンダーカバー38における上方に膨出した後部膨出箇所38aの上部を蓋部材39で覆うことにより構成され、蓋部材39の上面には、後部支点周りに揺動開閉可能で前部中央に開閉操作部39bが形成された開閉部39aが設けられる。このように収納箱等を別途用意せず、シートアンダーカバー38に蓋部材39を一体的に設けることにより収納部37を構成しているので、収納部37の作製コストを削減できるとともに、左右のフェンダー部35aの間に亘る広い収納部37を確保することができる。
【0022】
図10に示すように、トラクタ1の後方にバックホー4を搭載することも可能である。バックホー4は、左右一対のアウトリガー40を備えた基台41、基台41に左右揺動可能に連結されたスウィングブラケット42、スウィングブラケット42から起伏揺動可能に延設されたブーム43、ブーム43の延出端部から前後揺動可能に延設されたアーム44、アーム44の延出端部に前後揺動可能に連結されたバケット45を備えて構成される。更に、基台41とスウィングブラケット42とに亘って架設されたスウィングシリンダ46、スウィングブラケット42とブーム43とに亘って架設されたブームシリンダ47、ブーム43とアーム44とに亘って架設されたアームシリンダ48、アーム44とバケット45とに亘って架設されたバケットシリンダ49を備える。
【0023】
バックホー4は、基台41の操縦塔50に装備した左右一対の十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー51等を備えた操作ユニット(図示せず)、及び、それらの操縦レバー51の操作に基づいて各シリンダ46〜49に対する作動油の流動状態を切り換えるバルブユニット(図示せず)等を備えている。左右の操縦レバー51の操作に基づくバルブユニットの油圧制御で、対応するシリンダ46〜49が伸縮作動してブーム43やアーム44或いはバケット45等を揺動駆動することで、掘削動作や掻き込み動作或いは下ろし動作等を行う油圧式に構成されている。
【0024】
図10に示すように、バックホー4をトラクタ1に搭載するには、ボルト連結されるバックホーフレーム70をトラクタ1に装着する必要がある。このバックホーフレーム70は、図3に示すように、車体フレーム10から左右方向に所定間隔を隔てるようにフロントローダ2の連結ブラケット27Cの連結部27aと後車軸ケース16の連結部16aとに亘って架設される左右一対の板状フレーム70A、各板状フレーム70Aの後端下部に一体装備された左右一対の受金具70B、及び各板状フレーム70Aの突出部70aに一体装備された左右一対のボス部70C等を備えて構成されている。
【0025】
バックホー4の基台41に備えた左右向きの連結軸(図示せず)を、左右の受金具70Bに受け止め支持させた後、左右の板状フレーム70Aに基台41を左右のボス部70Cに連結ピン(図示せず)を挿入して連結固定することにより、バックホー4を装着できるように構成されている。バックホーフレーム70は、連結ブラケット27Cの連結部27aと後車軸ケース16の連結部16aとに加えて、後述する支持ブラケット80のブラケット側連結部80aにも横向きの筒状部材を介在させた状態でボルト固定できるように構成されており、バックホーフレーム70の取り付け強度の向上が図られている。
【0026】
図3〜図7に示すように、支持ブラケット80はミッションケース15における後車軸ケース16の後側部分にボルト連結され、キャビン3の支持フレーム36を後述する連結部材82と防振部材83とを介して支持できるとともに、バックホーフレーム70を固定できるように構成されている。支持ブラケット80は左右対称に構成されており、ミッションケース15にボルト固定される背面視逆L字状の主部材80A、主部材80Aの上面に溶接固定される側面視逆L字状の支持部材80B、主部材80Aの側面に溶接固定される背面視L字状の固定部材80Cをそれぞれ左右一対備えて構成される。そして、左右の主部材80Aの上面の内端箇所を付き合せて接合部材80Dによってボルト連結することにより、支持ブラケット80は構成されている。
【0027】
図5〜図7に示すように、各主部材80Aの上面には凸部80bが形成されており、リフトシリンダ18の背面にボルト固定される左右一対のブラケット81を、各凸部80bの左右外側から当接状態で固定することにより、支持ブラケット80ひいてはキャビン3の振動を抑制する。ブラケット81に形成された連結孔81aには、3点リンク機構(図示せず)のトップリンク(図示せず)を上下揺動自在に支持する横軸(図示せず)が連結される。又、左右の支持ブラケット80の主部材80Aに形成された連通孔80cに亘って、3点リンク機構の左右一対のロアリンク(図示せず)を上下揺動自在に支持する1本の横軸(図示せず)が連結される。
【0028】
キャビン3は、支持フレーム36の下端部36bが連結部材82の一端に連結されるとともに、前部縦フレーム31の下端部が防振部材85(図1及び図3参照)を介してローダフレーム27に支持されることによりトラクタ1に搭載される。連結部材82の他端は、支持ブラケット80の支持部材80Bに防振部材83を介して固定されることにより、キャビン3に伝達される振動を抑制する。更に、支持フレーム36と連結部材82とに亘って補強部材84が連結され、支持フレーム36の強度向上を図っている。
【0029】
支持フレーム36はその下部36aが前方に向かって斜めに延設され、連結部材82は横平板状に形成されており、支持フレーム36の下端部36bと連結されている一端から支持ブラケット80の支持部材80Bに支持される他端に向かって、後方且つ内側に向かって斜めに延設されている。この配置によれば、バックホーフレーム70の突出部70aが支持フレーム36、連結部材82及び支持ブラケット80と干渉することを回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、機体後部に配設されるミッションケースから両横外側に突出する後車軸ケースに、バックホーを支持する左右一対のバックホーフレームが連結可能な連結部を備えたトラクタに適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 トラクタ
4 バックホー
15 ミッションケース
16 後車軸ケース
16a 連結部
27a 連結部
30 キャビンフレーム
36 支持フレーム
36a 支持フレームの下部
36b 支持フレームの下端部
70 バックホーフレーム
80 支持ブラケット
80a ブラケット側連結部
82 連結部材
83 防振部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体後部に配設されるミッションケースから両横外側に突出する後車軸ケースに、バックホーを支持する左右一対のバックホーフレームが前記ミッションケースに沿って配設されるように連結可能な連結部を備えたトラクタにおいて、
前記ミッションケースの上方に配設されるキャビンフレームから下向きに延設される左右一対の支持フレームと、前記ミッションケースにおける前記後車軸ケースよりも後側の部分に連結された支持ブラケットとが備えられ、
前記支持フレームの下部が前方に向かって斜めに延設され、
前記支持フレームの下端部と連結された連結部材の一端から後方且つ内側に向かって前記連結部材が斜めに延設され、前記連結部材の他端が前記支持ブラケットに防振部材を介して支持されているトラクタ。
【請求項2】
前記支持ブラケットに、前記バックホーフレームが連結可能なブラケット側連結部が備えられている請求項1に記載のトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−230693(P2011−230693A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103920(P2010−103920)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】