説明

トラクタ

【課題】負荷の大小にも対応して、適切なエンジン回転数が得られる省エネルギー運転が可能な運転制御装置を備えたトラクタを提供すること。
【解決手段】エンジンEの駆動力を変速して駆動輪を駆動させる変速装置とエンジン回転数を調整する手動操作用アクセルレバー20を設け、制御装置100がアクセルレバー20の操作量に応じてエンジン回転数を設定する。また、制御装置100はエンジン回転数センサ63で計測されるエンジン回転数を所定時間毎に平均化して得られる平均回転数を算出し、該平均回転数がアクセルレバー20で設定した値より小さいと、表示パネル22に平均回転数までエンジン回転数を下げることができる旨の表示をさせる。表示パネル22を見た操縦者は、例えば負荷の大きさが軽いときには増速せずにエンジン回転を下げることで対応できるので燃料消費が抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省エネルギー運転を可能にしたトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー運転を可能にしたトラクタの例として特開平10−136709号公報には変速装置の変速シフト操作時に作業機の昇降を制限したトラクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−136709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載のトラクタでは変速装置の変速シフト操作があった時に、エンジン回転数の変化率の規定値を大きくすることでエンジン回転数が多少変動しても作業機の昇降を行わないようにして、省エネルギー運転を可能にしているが、エンジン回転数に大きな変動があると省エネルギー運転を中止するというものである。
しかし、特許文献1記載の省エネルギー運転方法は、変速シフト操作があったときに、エンジン回転数の変化率の規定値を通常より大きな値に変更してはじめて可能になるというものであり、頻繁に行われる変速装置の変速シフト操作に対してエンジン回転数の変化率の規定値を変更しないでも行える省エネルギー運転ができることが望まれる。
【0005】
また、特許文献1記載のトラクタでは負荷に応じて変速段を変更しているので、負荷が軽いときに増速すると作業機による作業の仕上がりが粗いものとなり、また、負荷が軽いときに増速するとトルクが下がるために不意に大きな負荷が作用するとエンストする可能性がある。
本発明の課題は、負荷の大小にも対応して、適切なエンジン回転数が得られる省エネルギー運転が可能な運転制御装置を備えたトラクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、エンジン(E)と、該エンジン(E)の駆動力を変速して駆動輪を駆動させる変速装置と、操縦室(7)と、該操縦室(7)内に設けたエンジン回転数を調整する手動操作用アクセルレバー(20)と、各種表示を行う表示パネル(22)と、前記アクセルレバー(20)の操作量に応じてエンジンの回転数を設定する制御装置(100)と、実際のエンジン回転数を計測するエンジン回転数センサ(63)とを備えたトラクタにおいて、前記制御装置(100)により、エンジン回転数センサ(63)で計測されるエンジン回転数を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均化して得られる平均回転数(実測値)を算出し、該平均回転数(実測値)が前記アクセルレバー(20)で設定した設定値より小さいと、表示パネル(22)上に平均回転数までエンジン回転数を下げることができる旨の表示をさせるトラクタである。
【0007】
請求項2記載の発明は、操縦室(7)内に予め設定されたエンジンの回転数を記憶して再現するエンジン回転数記憶スイッチ(29)を設け、前記制御装置(100)により、エンジン回転数センサ(63)で計測される実作業で得たエンジン回転数を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均化して得られ平均回転数(実測値)がアクセルレバー(20)の操作量又はエンジン回転数記憶スイッチ(29)の作動で設定した設定値より小さいと、前記平均回転数の90%以上の回転数で、かつ所定時間(例えば2,3分間)の間の90%以上の時間、前記エンジン回転数が続いたとき、表示パネル(22)上に、設定する回転数を下げて作業ができる旨の表示をさせる請求項1記載のトラクタである。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記制御装置(100)により、エンジン回転数センサ(63)で計測されるエンジン回転数を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均化して得られ平均回転数(実測値)を算出し、該平均回転数(実測値)がアクセルレバー(20)の操作量で設定したエンジン回転数より小さい場合に、エンジン回転数記憶スイッチ(29)の作動で前記平均回転数を再現する制御を実行させる請求項1記載のトラクタである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、表示パネル22の表示を見た操縦者は、省エネルギー作業ができることを確認でき、例えば負荷の大きさが軽いときには増速せずにエンジン回転を下げることで対応できるので燃料消費が抑制できる。そして、負荷が軽いときに増速してしまうと、増速することでトルクが下がるために、不意に大きな負荷が作用するとエンストしてしまうが、このような不具合を防止できる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、表示パネル22の表示を見た操縦者は、あまり負荷がかかっていないと判断されるとき、さらに省エネルギー作業ができることを確認でき、省燃費作業ができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、エンジン回転数記憶スイッチ(29)を操作すると平均回転数が再現できるので、操作性が向上するとともに省エネ運転となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の農業機械であるトラクタの側面図である。
【図2】図1のトラクタの操縦席部分の平面図である。
【図3】図1のトラクタの操縦席部分の部分斜視図である。
【図4】図1のトラクタの操縦席部分の部分斜視図である。
【図5】図1のトラクタの表示パネルの画面を示す図である。
【図6】図1のトラクタの操縦席部分の副変速レバー部分の斜視図である。
【図7】図1のトラクタの操縦席部分のスイッチ群の平面図である。
【図8】図1のトラクタの表示パネルの画面を示す図である。
【図9】図1のトラクタのエンジン回転計部分の平面図である。
【図10】図1のトラクタの液晶パネルの表示が切り換わる様子を示す図(図10(a)はアワーメータ表示、図10(b)はトリップメータ表示、図10(c)は燃料消費率表示)である。
【図11】図1のトラクタの制御ブロック図である。
【図12】図1のトラクタの省エネルギー運転用の表示のためのフローチャートである。
【図13】図1のトラクタの省エネルギー運転用の表示のためのフローチャートである。
【図14】図1のトラクタの省エネルギー運転用の表示のためのフローチャートである。
【図15】図1のトラクタのエンジン回転数制御のフローチャートである。
【図16】図1のトラクタのエンジン回転数制御のフローチャートである。
【図17】図1のトラクタのエンジン回転数制御のフローチャートである。
【図18】図1のトラクタのエンジン回転数制御のフローチャートである。
【図19】図1のトラクタの操縦室の照明装置の構成図である。
【図20】図1のトラクタのワークランプの点灯用スイッチの側面図(図20(a))と該点灯用スイッチの作動とランプの点灯の関係を示す表(図20(b))である。
【図21】図1のトラクタのワークランプの点灯用スイッチの側面図(図20(a))と該点灯用スイッチの作動とランプの点灯の関係を示す表(図20(b))である。
【図22】図1のトラクタのワークランプの点灯用スイッチの側面図(図20(a))と該点灯用スイッチの作動とランプの点灯の関係を示す表(図20(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施例を図面と共に説明する。
図1は、農業機械であるトラクタの側面図を示している。
トラクタ1は、機体の前後部に前輪2,2と後輪3,3を備え、機体前部のエンジンルーム4内に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケース5内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。前記エンジンルーム4はボンネット6で覆う構成である。また、機体後部にロータリなどの作業機(図示せず)を装着し、PTO軸で作業機を駆動する構成としている。
【0014】
図2にキャビン内の平面図を示すように、トランスミッションケース5の上部位置に運転座席7を配置し、この運転座席7の一側方(右外側方)に後述の操作装置8を設けるほか、運転座席7の他側方(左外側方)に、駐車ブレーキ9や作業機の回転速度を変更するPTO変速レバー10等を配置して構成している(図3)。駐車ブレーキ9の作動を検出する検出スイッチ9aが駐車ブレーキ9の近傍に設けられている。また、ステアリングハンドル11の左側近傍に前後進切換レバー12を設け、フロア13にクラッチペダル14、左右ブレーキペダル15a,15b、アクセルペダル16等の走行操作具が配置されている。また、後述する液晶パネル22の表示切換スイッチ52とホーンスイッチ53とハザードスイッチ54がハンドル11の左側近傍にある。
【0015】
前記操作装置8について説明する。
操作装置8の前部に副変速レバー17を設けている。この副変速レバー17は、トランスミッションケース5内の副変速装置を超低速,低速,中速,高速の4段に変速可能に構成しているが、型式によっては、低速,中速,高速の3段仕様のものもある。副変速レバー17による変速は機械的な変速であるので、一旦停車して前記クラッチペダル14を踏んで変速する構成である。
【0016】
また、副変速レバー17の上部には、トランスミッションケース5内の主変速装置を手動で変速する増速スイッチ18と減速スイッチ19を設けている(図4)。この増速スイッチ18と減速スイッチ19による変速は8段変速であり、油圧クラッチの入り切りによる接続であるので、クラッチペダル14を踏む必要がなく、走行しながら変速可能な構成としている。
【0017】
また、副変速レバー17にはクラッチボタン17a(図4)が設けられており、クラッチペダル14の代わりにクラッチボタン17aを押すことで、副変速装置が変速可能な構成としている。従って、クラッチペダル14やクラッチボタン17aによって入り切りされるクラッチは、電気的に入り切りする構成である。
【0018】
副変速レバー17の左側にはアクセルレバー20を設けており、操作した位置でアクセルレバー20の位置が保持されるとともに、エンジン回転数も保持される。前記副変速レバー17やアクセルレバー20を設けている操作面A1(図4)は前上がりの傾斜面に構成し、レバーガイドの前後方向の向きを機体右側に振っているので、運転座席7に着座している運転者から視認しやすく操作が容易となる。
【0019】
また、図6に示しているように、副変速4段の場合は4段変速用ガイド17bを操作面A1に取り付け、副変速3段の場合は図6の四角枠内に示す3段変速用ガイド17cを操作面A1に取り付ける構成としているので、操作装置8全体を変える必要はなく、廉価な構成となる。
【0020】
副変速レバー17の前方にはアクセル変速スイッチ21を設けている。このアクセル変速スイッチ21を押して入り状態にした場合、副変速レバー17を高速位置にするとアクセル変速が作動する。アクセル変速では、副変速が路上走行位置の時、エンジン回転数(アクセルペダルの踏込量)に応じて主変速が1速〜6速まで自動で変速する。この変速は、スタート位置が1速〜3速で選択可能であり、トラクタの工場出荷状態では3速←→4速←→5速←→6速でアクセル変速する。停止時に2速(1速)に変更してスタートすると、2速(1速)からアクセル変速する。次回からは変速した位置からスタートできる。
【0021】
図5は副変速レバー17を中立位置から高速位置にして、アクセル変速スイッチ21を入り状態にした場合の液晶パネル22への表示例を示している。この場合は「路上」と表示されるが、アクセル変速スイッチ21を入りにしない場合は、「高速」と表示される。このように、操作装置8の前部の領域は、走行関係の操作類が配置される走行領域Aとしている。
【0022】
走行領域Aの後方は、トラクタに装着する作業機関係の操作を行う作業領域Bとしており、操作領域Bに配置して操作類について説明する。
作業機の昇降操作を行う昇降レバー23が副変速レバー17の近傍にあり、昇降レバー23を後側に向かって操作すると作業機が上昇するが、最大操作しても設定している高さ(電気的に設定)までしか上昇しない。昇降レバー23を前側に向かって操作すると作業機が下降するが、この下降する位置を規制する下げ位置規制ダイヤル25を設けている。下げ位置規制ダイヤル25については、昇降レバー23の動きを機械的に規制する構成としている。
【0023】
上下スイッチ24は作業機をワンタッチで昇降させるためのスイッチである。上下スイッチ24の後側を軽く押すと、作業機は設定している高さまで自動的に上昇する。上下スイッチ24の前側を軽く押すと、作業機は前記昇降レバー23で設定している高さまで自動的に下降する構成である。昇降レバー23の近傍に設けられる耕深調整ダイヤル26は作業機(ロータリ)の耕す深さを調整するダイヤルであり、左に回すと耕起深さが浅くなり、右に回すと耕起深さが深くなる。また、耕深調整ダイヤル26を最大右に回すと切りとなり、自動耕深制御は作動せず、前記昇降レバー23の位置で耕深が決められる構成である。
【0024】
耕深調整ダイヤル26の近傍にあるPTO回転スイッチ27は、押しながら右に回すとPTO軸が回転して作業機(ロータリ)が回転し、押すのみでPTO回転スイッチ27は元の位置に戻り、PTO軸の回転が停止して作業機(ロータリ)の回転が停止する構成である。
【0025】
PTO回転スイッチ27の隣にはPTO切換スイッチ28を配置している。このPTO切換スイッチ28には自動と手動の切換えがある。自動にすると、作業機の昇降動作やクラッチペダル14の踏み込み操作に連動してPTOの回転が「回転」したり「停止」したりする。即ち、作業機が上昇したりクラッチペダル14を踏み込むと、PTOの回転が停止し、作業機が下降したりクラッチペダル14の踏み込みを止めると、PTOが回転する。PTO切換スイッチ28を手動にすると、前記PTO回転スイッチ27の操作に応じてPTOが回転したり停止したりする。
【0026】
前記耕深調整ダイヤル26の隣にエンジン回転数記憶スイッチ29を設けている。作業機で作業を行うときにおいて、適正なエンジン回転数に自動的にセットするものである。アクセルレバー20でエンジン回転数をアイドリング付近の回転数とし、次に、エンジン回転数記憶スイッチ29の上側を押すと、所定の第一エンジン回転数となる。また、エンジン回転数記憶スイッチ29の下側を押すと、所定の第二エンジン回転数となる。エンジン回転数記憶スイッチ29を元の状態にすると、エンジン回転数はアクセルレバー20で指示している回転数となる。また、前記PTO回転スイッチ27が入りである場合においては、入りから切りにするとエンジン回転数はアクセルレバー20の回転数となる。
【0027】
後述する操作領域Cの上側には、外部油圧を作動する外部油圧レバー47を設けている。状況に応じて外部油圧レバー47を追加可能なガイド48が外部油圧レバー47に隣接配置されている。外部油圧レバー47の後方にはデフロックスイッチ49を設けている。このデフロックスイッチ49を入りにすると、左右の後輪3が同じ回転速度で回転する。
【0028】
作業領域Bの後方には自動操作領域Cを構成している。
自動操作領域Cには各種自動関係の多くのスイッチ群Dを配置しており、運転座席7の右側に位置しているため、自動関係のスイッチ群Dの操作がし易くなっている。自動関係スイッチ群Cの構成について、図7に基づき説明する。
【0029】
最高速規制スイッチ30は、主変速を8段まで自動変速(アクセル変速スイッチ21入り時)させたくない場合に使用する。図8は最高速が6速に規制されている場合の例を示している。この最高速規制速は次のような方法で変更可能な構成としている。
すなわち、副変速レバー17を中立にし、増速スイッチ18と減速スイッチ19で変更したい主変速位置にする。そして、調整ボタン35を押したまま、最高速規制スイッチ30を所定時間(約2秒)押し続けるとブザー音が鳴り、規制速が変更される構成としている。
【0030】
最高速規制スイッチ30の隣にあるスイッチはオートアクセルスイッチ31である。このオートアクセルスイッチ31を入り状態にしておくと、作業機が上昇したり前後進切換レバー12を後進にするとエンジン回転が下がり(約1700rpm)、作業機を下げ、かつ、前後進切換レバー12を中立か前進にすると、エンジン回転は元の回転数に戻る構成である。
【0031】
バックアップスイッチ32を入り状態にしておき、前後進切換レバー12を後進位置にすると、作業機が自動的に上昇する。そして、作業機上下スイッチ24の下降側を押すか、又は、昇降レバー23を一度最上げ位置まで操作した後、昇降レバー23を再度下げ操作すると、作業機は下降する構成としている。
【0032】
オートリフトスイッチ33を入り状態にしておき、旋回時にステアリングハンドル11を所定角度以上回すと、作業機が自動的に上昇する。そして、旋回終了後は、作業機上下スイッチ24の下降側を押すか、又は、昇降レバー23を一度最上げ位置まで操作した後、昇降レバー23を再度下げ操作すると、作業機は下降する構成としている。
【0033】
デセラスイッチ34を入り状態にしておくと、作業機が下降するときにおいて、所定の高さ位置から下降速度が遅くなる構成である。
【0034】
メモリー調整増速スイッチ36aとメモリー調整減速スイッチ36bは、メモリー変速の一部の機能として用いるものである。先ずメモリー変速について説明する。副変速レバー17の変速位置に対して、記憶している主変速を自動的に呼び出してセットするものである。このメモリー変速には手動と自動がある。クラッチペダル14を踏み込んで副変速レバー17を目的の位置に変速する。そして、副変速レバー17に付いているクラッチボタン17aを押す毎に手動と自動の切換えが行われ、この表示は液晶パネル22に表示される。
【0035】
自動を選択した場合は、記憶されている過去の使用時間の一番長い主変速段数に自動的にセットされる構成である。工場出荷時においては、市場において使用頻度が多いと思われる主変速段数が予め仮の記憶として記憶されている。
【0036】
また、手動を選択した場合は、運転者が記憶させている主変速段数に自動的にセットされる構成である。この場合も、工場出荷時においては、市場において使用頻度が多いと思われる主変速段数が予め仮の記憶として記憶されている。主変速段数を手動で記憶させる方法について説明する。副変速レバー17を操作して、変更したい副変速位置へ入れる。増速スイッチ18と減速スイッチ19を操作して変更したい主変速段にする。調整ボタン35を押したまま、増速スイッチ18と減速スイッチ19を所定時間(約2秒)以上押し続けるとブザー音が鳴り、手動メモリーの記憶位置が変更される構成としている。
【0037】
変速時の接続感度スイッチ37aとPTOの接続感度スイッチ37bは、いずれのスイッチも入り状態であれば緩やかな接続を行い、切り状態であれば急接続を行う構成である。
【0038】
上げ位置調整ダイヤル38は、作業機の昇降レバー23を最上げにして作業機を最上昇させた位置および作業機上下スイッチ24で作業機を上げた時やバックアップ等で作業機が上がった時の位置を任意の高さに規制するものである。また、下げ速度調整ダイヤル39は、作業機の降下速度を変更するものである。
【0039】
オートブレーキスイッチ40を入り状態にした場合、旋回時にステアリングハンドル11を所定角度以上回すと、自動的に旋回内側の車輪にブレーキが作動する構成である。ブレーキ調整ダイヤル41は、オートブレーキのブレーキ力を調整するものである。
【0040】
3P切換スイッチ42は作業機の取り付け方(JISカテゴリー1型や2型等)によって切り換えるスイッチである。
【0041】
水平切換スイッチ43は、作業機の水平制御の切換えを行うスイッチであり、押す毎に「自動2」〜「傾斜地」まで切り換わる構成である。「自動2」を選択すると、自動水平制御装置が作動し、トラクタ本体の傾きに関係なく、傾き調整ダイヤル44(図4)で設定した一定角度に作業機を保持する構成である。傾き調整ダイヤル44を右に回すと作業機が右に傾き、設定した位置を基準に自動水平制御装置が作動する。左に回すと作業機が左に傾き、設定した位置を基準に自動水平制御装置が作動する。「自動1」を選択すると、「自動2」よりも敏感に自動水平制御装置が作動する構成である。「手動」を選択すると、水平手動スイッチ45(図4)により、作業機をトラクタ本体に対し、希望の傾きにする構成である。「平行」を選択すると、作業機がトラクタ本体と平行になる。その後、水平手動スイッチ45を操作すると、希望の傾きに設定することができ、作業機最上げ操作によりトラクタ本体と平行に戻る構成である。「傾斜地」を選択すると、傾斜地面に対して常に平行になるように作業機を保持する構成である。
【0042】
オート感度スイッチ46は、自動耕深制御の動作感度を切り換えるものであり、このスイッチ46を押すごとに前記自動耕深制御の動作感度が「負荷オート」、「敏感」及び「標準」の間で切り換わる構成である。「標準」は一般的な作業に使用し、「敏感」はプラウで使用するとプラウの昇降動作が速くなる。
【0043】
前述した操作領域Cは、透明又は半透明な樹脂カバー50で覆っており開閉可能に構成している。また、操作領域Cのスイッチ群は、平面部51に対して所定角度θ2上方に傾斜している。この傾斜角θ2は運転座席7に着座している運転者から略正対して見ることが可能な角度としている。
【0044】
前述のごとく、自動操作領域Cには自動関係の多くのスイッチ群Dを集中的に配置しており、しかも、スイッチ群Dは運転座席7の右方に位置しているため、自動関係のスイッチ群Dの操作がし易くなっている。特に、運転座席7に着座した運転者が右側を振り向くと、略正面に自動操作領域Cが視認されるので、細かいスイッチ類である自動関係のスイッチ群Dの操作が容易となる。また、自動操作領域Cの前方に作業機関係の操作を行うスイッチやレバー等を集中的に配置する作業領域Bを構成しているので、作業機関係の操作がし易くなる。さらに、作業領域Bの前方に走行関係の操作を行うスイッチやレバー等を集中的に配置する走行領域Aを構成しているので、走行関係の操作がし易くなる。
【0045】
このように、自動操作領域C、作業領域B、走行領域Aを分けてスイッチやレバー等を集中的に配置する構成としているので、操作が容易になると共に瞬時に判断しなくてはならない状況でも速やかに操作が可能となる。また、前側がトラクタ本体であり、トラクタ本体の後側が作業機になっているのと同じように、前側に走行領域Aがあり、走行領域Aの後側に作業領域Bを配置しているので、操作がし易くなる。
【0046】
図2に示すパネル57の拡大図を図9に示す。エンジン回転計59を中央部に配置し、エンジン回転計59の左側に各種表示灯群58を設けている。エンジン回転計59の右側には液晶パネル22を設けている。また、図2で説明した表示切換スイッチ52を押すごとに、図10に示すように、液晶パネル22の表示が切り換わる。図10(a)はアワーメータ表示、図10(b)はトリップメータ表示、図10(c)は燃料消費率表示を示している。
【0047】
図2のハンドル11の右側の操作パネル部に低燃費モードスイッチ55が設けられている。この低燃費モードスイッチ55を入り状態にすると、前記表示灯群58に中の低燃費表示灯60が点灯する。この低燃費表示灯60は緑色で点灯する。
【0048】
前記低燃費モードスイッチ55の右側にはダイヤル式の4輪駆動切換スイッチ56を設けており、2輪駆動、4輪駆動、条件により自動的に4輪駆動になるオート4輪駆動、旋回時に2輪駆動になる2輪駆動ターン、旋回時に前輪回転が速くなる前輪増速ターンの選択が可能な構成となっている。
【0049】
本実施例では図11に示す制御装置100により以下のような制御が行われる。
アクセルレバー20又はエンジン回転数記憶スイッチ(アクセルメモリスイッチ)29で記憶している回転数を再現したエンジン回転数に比較して、実作業で得たエンジン回転数(エンジン回転数センサ63で計測される)を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均化して得られた平均回転数(実測値)が前記アクセルレバー20又はエンジン回転数記憶スイッチ29で再現している回転数より小さい場合に、前記平均回転数の90%以上の回転数で、かつ、所定時間(例えば2,3分間)の間の90%以上の時間、前記エンジン回転数が続いたとき、すなわちあまり負荷がかかっていないと判断されるとき、液晶パネル22上に「設定する回転数を下げて作業ができるメーセージ」を表示させる。この表示を見た操縦者は、手動で省エネルギー運転を実行することができる。また、このフローチャートを図12に示す。こうして、操縦者が希望すれば、省エネルギー運転が可能となる。
【0050】
アクセルレバー20又はエンジン回転数記憶スイッチ29で設定したエンジン回転数に比較して、実作業で積算されたエンジン回転数を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均回転数を演算し、該平均回転数(実測値)が予め設定した前記アクセルレバー20又はエンジン回転数記憶スイッチ29で設定した設定値より小さいと、その平均回転数までエンジン回転数を下げることができる旨の表示をする液晶パネル22に、例えば「エンジン回転数を、2000rpmまで下げることができます。」などと表示させる。このフローチャートを図13に示す。この表示を見た操縦者は、希望すれば、手動で省エネルギー運転を実行することができる。
【0051】
アセルレバー20で設定したエンジン回転数に比較して、実作業で積算されたエンジン回転数を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均回転数を演算し、得られたエンジン回転数を四捨五入して、+100min-1(1分間の回転数(rpm))を加算したエンジン回転数まで下げた回転数を液晶パネル22に表示して、上記「低下したエンジン回転数まで下げて作業できます。」と操縦者に知らせることができる。
例えば、平均エンジン回転数が1880min-1であった場合には、次の計算に基づき液晶パネル22に「エンジン回転数を2000rpmにして作業ができます。」と表示する。
1880min-1=1900(10の位を四捨五入)+100min-1=2000min-1
このフローチャートを図14に示す。こうして省エネルギー作業ができることを操縦者が確認しながら作業することが可能となる。
【0052】
また、アクセルレバー20に代えてエンジン回転数記憶スイッチ29で設定したエンジン回転数に比較して、実作業で積算されたエンジン回転数を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均回転数を演算し、得られたエンジン回転数を四捨五入して、+100min-1(1分間の回転数(rpm))を加算したエンジン回転数まで下げた回転数を液晶パネル22に表示して、上記「低下したエンジン回転数まで下げて作業できます。」と操縦者に知らせることができる。この場合のフローチャートは図14と同じである。こうして省エネルギー作業ができることを操縦者が確認しながら作業することが可能となる。
【0053】
アクセルレバー20で設定したエンジン回転数に比較して、実作業で積算されたエンジン回転数を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均回転数を演算し、得られたエンジン回転数(例えば、2600rpm)に合わせるようにするエンジン回転数記憶スイッチ29を設けた。すなわち、アクセルレバー20で決めていたエンジン回転数(例えば、2800rpm)にしないで、エンジン回転数記憶スイッチ29のオンで平均化したエンジン回転数にしてもよい。
このフローチャートを図15に示す。このようにしても、省エネルギー作業ができる。しかも自動的に平均化したエンジン回転数に設定するため、省燃費作業ができる。
【0054】
前記エンジン回転数記憶スイッチ29は、作業者が好みのエンジン回転数を記憶(2種類の回転数(ArpmとBrpm))させ、この記憶させたエンジン回転数を再現するスイッチであるが、一方の回転数については、実作業で積算されたエンジン回転数を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均回転数を演算し、得られたエンジン回転数(例えば、2600rpm)を自動的に記憶(Brpm)させる構成とし、Bの方を操作するとBrpmが再現する構成とする。
この場合も、省エネルギー作業ができる。しかも自動的に平均化したエンジン回転数に設定するため、省燃費作業ができる。
【0055】
さらに、アクセルレバー20で設定したエンジン回転数に比較して、実作業で積算されたエンジン回転数を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均回転数を演算し、得られたエンジン回転数を四捨五入して、+100min-1(1分間の回転数(rpm))を加算したエンジン回転数に自動的に合わせるようにすることができる。
例えば、アクセルレバー20での設定エンジン回転数が3000rpmであるときに、実作業で積算されたエンジン回転数を所定時間毎に平均化した平均回転数が2700rpmとなった場合は、自動的にエンジン回転数を2800rpmにしてもよい。
このフローチャートを図16に示す。この場合は、ユーザーが省エネルギー作業に気をつけなくても、自動的に省燃費作業ができる。
【0056】
また、エンジン回転数記憶スイッチ29で設定したエンジン回転数に比較して実作業で積算されたエンジン回転数を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均回転数を演算し、得られたエンジン平均回転数が、前記設定エンジン回転数の90%以上であり、そのエンジン回転数が所定時間(例えば2,3分間)の間の90%以上の時間続いた時に、前記得られたエンジン平均回転数にプラス100min-1加算した回転数に自動的に調整してもよい。
このフローチャートを図17に示す。この場合には、省エネルギー作業ができる。ユーザーが省エネに気をつけなくても、省燃費作業ができる。
【0057】
さらに、エンジン回転数記憶スイッチ29で設定したエンジン回転数に比較して実作業で積算されたエンジン回転数を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均回転数を演算し、得られたエンジン平均回転数が、前記設定エンジン回転数の90%以上であり、そのエンジン回転数が所定時間(例えば2,3分間)の間の90%以上の時間続いた場合には、車速を1速アップさせてもよい。
このフローチャートを図18に示す。こうして省エネルギー作業ができる。同じ広さでも負荷が軽いと、短時間で作業ができる。
【0058】
また、エンジン回転数記憶スイッチ29に代えてアクセルレバー20で設定したエンジン回転数に比較して、実作業で積算されたエンジン回転数を所定時間(例えば2,3分間)毎に平均回転数を演算し、得られたエンジン平均回転数が前記アクセルレバー20で設定した設定エンジン回転数の90%以上であり、そのエンジン回転数が所定時間(例えば2,3分間)の間の90%以上の時間続いた場合には、車速を1速アップさせてもよい。この場合も省エネルギー作業ができる。同じ広さでも負荷が軽いと、短時間で作業ができる。
【0059】
キャビン7内の天井壁には図19に示すワークランプを設けるが、フロントワークランプ64を2つに分けてそれぞれ上側を照らす上側ワークランプ64aと下側を照らすワークランプ64bを設け、別々にルーフインナ65の前方に配置したワークランプスイッチ66により点灯できるようにすると、フロントワークランプ64a,64bが全灯だと見えにくくなる作業を行う場合にも上側フロントワークランプ64aと下側フロントワークランプ64bを別々に点灯することにより、作業性が従来より向上する。
【0060】
前記ワークランプスイッチ66として図20(a)に示す単一のトグルスイッチ66を使用することでコスト的に有利になる。すなわち、トグルスイッチ66が図20(b)に示すN位置ではキャビン7の室外の前後に配置されるヘッドライト67(図1)と連動し全点灯(このとき図1に示すキャビン7の外壁の前後に設けるヘッドライト67も含めて点灯)、ON1位置では上側ワークランプ64aのみが点灯、ON2位置では下側ワークランプ64bのみが点灯する構成である。
【0061】
前記ワークランプスイッチ66として図21(a)に示す3点切換VRスイッチ66を使用することでコスト的に有利になる。すなわち、VRスイッチ66が図21(b)に示すN位置ではキャビン7の外壁の前後に設けたヘッドライト67と連動して全点灯、ON1位置では上側ワークランプ64aのみが点灯、ON2位置では下側ワークランプ64bのみが点灯する構成である。
【0062】
前記ワークランプスイッチ66として図22(図22(a)に側面図、図22(b)にその機能を示す。)に示すシーソースイッチ66を使用することができる。シーソースイッチ66を使用することにより、ルーフインナ前方の他のスイッチ類との並びが良く、見た目もすっきりしているので従来より操作性とデザイン性が良い。
【符号の説明】
【0063】
1 トラクタ 2 前輪
3 後輪 4 エンジンルーム
5 トランスミッションケース 6 ボンネット
7 運転座席 8 操作装置
9 駐車ブレーキ 9a 検出スイッチ
10 PTO変速レバー 11 ステアリングハンドル
12 前後進切換レバー 13 フロア
14 クラッチペダル 15a,15b 左右ブレーキペダル
16 アクセルペダル 17 副変速レバー
17a クラッチボタン 17b 4段変速用ガイド
17c 3段変速用ガイド 18 増速スイッチ
19 減速スイッチ 20 アクセルレバー
21 アクセル変速スイッチ 22 液晶パネル
23 昇降レバー 24 作業機上下スイッチ
25 下げ位置規制ダイヤル 26 耕深調整ダイヤル
27 PTO回転スイッチ 28 PTO切換スイッチ
29 エンジン回転数記憶スイッチ
30 最高速規制スイッチ 31 オートアクセルスイッチ
32 バックアップスイッチ 33 オートリフトスイッチ
34 デセラスイッチ 35 調整ボタン
36a メモリー調整増速スイッチ
36b メモリー調整減速スイッチ
37a 接続感度スイッチ 37b PTOの接続感度スイッチ
38 上げ位置調整ダイヤル 39 下げ速度調整ダイヤル
40 オートブレーキスイッチ 41 ブレーキ調整ダイヤル
42 3P切換スイッチ 43 水平切換スイッチ
44 傾き調整ダイヤル 45 水平手動スイッチ
46 オート感度スイッチ 47 外部油圧レバー
48 ガイド 49 デフロックスイッチ
50 樹脂カバー 51 平面部
52 表示切換スイッチ 53 ホーンスイッチ
54 ハザードスイッチ 55 低燃費モードスイッチ
56 4輪駆動切換スイッチ 57 パネル
58 表示灯群 59 エンジン回転計
60 低燃費表示灯 63 エンジン回転数センサ
64 フロントワークランプ
64a フロント(上側)ワークランプ
64b 下側ワークランプ 65 ルーフインナ
66 ワークランプスイッチ
(トグルスイッチ、VRスイッチ、シーソースイッチ)
67 ヘッドライト 100 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)と、該エンジン(E)の駆動力を変速して駆動輪を駆動させる変速装置と、操縦室(7)と、該操縦室(7)内に設けたエンジン回転数を調整する手動操作用アクセルレバー(20)と、各種表示を行う表示パネル(22)と、前記アクセルレバー(20)の操作量に応じてエンジンの回転数を設定する制御装置(100)と、実際のエンジン回転数を計測するエンジン回転数センサ(63)とを備えたトラクタにおいて、
前記制御装置(100)により、エンジン回転数センサ(63)で計測されるエンジン回転数を所定時間毎に平均化して得られる平均回転数を算出し、該平均回転数が前記アクセルレバー(20)で設定した設定値より小さいと、表示パネル(22)上に平均回転数までエンジン回転数を下げることができる旨の表示をさせたことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
操縦室(7)内に予め設定されたエンジンの回転数を記憶して再現するエンジン回転数記憶スイッチ(29)を設け、
前記制御装置(100)により、エンジン回転数センサ(63)で計測される実作業で得たエンジン回転数を所定時間毎に平均化して得られる平均回転数がアクセルレバー(20)の操作量又はエンジン回転数記憶スイッチ(29)の作動で設定した設定値より小さいと、前記平均回転数の90%以上の回転数で、かつ、所定時間の間の90%以上の時間、前記エンジン回転数が続いたとき、表示パネル(22)上に、設定する回転数を下げて作業ができる旨の表示をさせることを特徴とする請求項1記載のトラクタ。
【請求項3】
前記制御装置(100)により、エンジン回転数センサ(63)で計測されるエンジン回転数を所定時間毎に平均化して得られる平均回転数を算出し、該平均回転数がアクセルレバー(20)の操作量で設定したエンジン回転数より小さい場合に、エンジン回転数記憶スイッチ(29)の作動で前記平均回転数を再現する制御を実行させることを特徴とする請求項1記載のトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−158208(P2012−158208A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17464(P2011−17464)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】