説明

トラクタ

【課題】本発明の課題は、頻繁に作動するクラッチペダルを利用し、クラッチペダルの踏み込み操作毎にワイパーを作動させて防塵ネットの表面に付着する塵埃類の除去作用が的確に行える除塵装置を提供する。また、エンジン冷却水温度の一定以上の上昇に関連して、ワイパーを作動させて防塵ネットの表面に付着する塵埃類の除去作用が的確に行える除塵装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、ラジエータ9の前方に設置された防塵ネット10の外面には該防塵ネット10の外面に沿って往復動しネット表面に付着する塵埃を拭き取るワイパー12を設けたトラクタにおいて、該ワイパー12はクラッチペダル16の踏み込み操作に連動して作動すべく連動構成してあることを特徴とするトラクタとする。また、該ワイパー12は、水温計18の一定以上の温度上昇に起因して作動するように連動構成してあることを特徴とするトラクタの構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業機械であるトラクタに関し、特にトラクタに装備されたラジエータ防塵ネットの除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば、特許文献1には、ラジエータの防塵網に付着する塵埃を取り除くワイパーを網の外面に沿って往復揺動するよう作動自在に設け、そして、このワイパーは専用の操作レバーの操作で手動的に作動させたり、或は、エンジンの起動力によって所定時間毎に自動的に作動させるなどの手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−335108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、頻繁に作動するクラッチペダルを利用し、クラッチペダルの踏み込み操作毎にワイパーを作動させて防塵ネットの表面に付着する塵埃類の除去作用が的確に行える除塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、ラジエータ(9)の前方に設置された防塵ネット(10)の外面には該防塵ネット(10)の外面に沿って往復動しネット表面に付着する塵埃を拭き取るワイパー(12)を設けたトラクタにおいて、該ワイパー(12)はクラッチペダル(16)の踏み込み操作に連動して作動すべく連動構成してあることを特徴とするトラクタとする。
【0006】
上記構成によると、作業中、クラッチペダル(16)を踏み込み操作する毎に、ワイパー(12)を作動させて防塵ネット(10)に付着する塵埃類を確実に取り除くことができ、ワイパーを作動させるための特別な操作を要しない。
【0007】
請求項2記載の本発明は、ラジエータ(9)の前方に設置された防塵ネット(10)の外面には該防塵ネット(10)の外面に沿って往復動しネット表面に付着する塵埃を拭き取るワイパー(12)を設けたトラクタにおいて、該ワイパー(12)は、水温計(18)の一定以上の温度上昇に起因して作動するように連動構成してあることを特徴とする請求項1に記載のトラクタとする。
【0008】
上記構成によると、ワイパー(12)が水温上昇に伴って自動的に作動するので、人為的に除塵操作を行う場合のように操作忘れがなく、塵埃除去によって吸気性能を高く維持することができる。
【0009】
請求項3記載の本発明は、ラジエータ(9)の前方に設置された防塵ネット(10)の外面には該防塵ネット(10)の外面に沿って往復動しネット表面に付着する塵埃を拭き取るワイパー(12)を設けたトラクタにおいて、前記防塵ネット(10)の下方部には拭き取られた塵埃を受け取る受取板(21)を設け、該受取板(21)は前記ワイパー(12)の作動に関連して開閉作動するように構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のトラクタとする。
【0010】
上記構成によると、塵埃の受取板(21)は、下方に設置されたエンジンの付属機器等に降りかからないようにするためのものであるが、ワイパー(12)の作動に関連して開閉作動するので、機器類への上方位置を避けた地面上に排出落下させることができる。
【0011】
請求項4記載の本発明は、前記ラジエータ(9)のフィン(9a)前面にもこれに付着する塵埃を除去する除塵体(23)を往復動可能に構成して設けてあることを特徴とする請求項3に記載トラクタとする。
【0012】
上記構成によると、ワイパー(12)による防塵ネット(10)の除塵作用が容易に行えるものでありながら、除塵体(23)の作動によってラジエータフインの清掃も同時に行えるので、フィン(9a)へのゴミの付着が回避され、エアブロー等による清掃の必要がなくなる。
【発明の効果】
【0013】
以上要するに、請求項1記載の本発明によれば、クラッチペダルの踏み込み操作によりワイパーを作動させて防塵ネットに付着する塵埃類を確実に取り除くことができ、ワイパーを作動させるための特別な操作手段を要せず、簡単に構成することができる。
【0014】
請求項2記載の本発明によれば、ワイパーが所定以上の水温上昇に伴って自動的に作動するので、人為的に除塵操作を行う場合のように操作忘れがなく、防塵ネットの塵埃除去によって吸気性能を高めることができる。
【0015】
請求項3記載の本発明によれば、ワイパーにより取り除かれた塵埃類は受取板によって受け取ることができるので、エンジンの付属機器等への滞積を防止できるものでありながら、受取板はワイパーの作動に関連して開閉作動するので、機器類への降りかかりを避けた地面上に容易に排出落下させることができる。
【0016】
請求項4記載の本発明は、ワイパーによる防塵ネットの除塵作用と、除塵体の作動によってラジエータフインの清掃も同時に行えるので、フィンへのゴミの付着が回避され、エアブロー等による清掃の必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トラクタの側面図
【図2】ラジエータ除塵装置の側面図
【図3】同上要部の正面図
【図4】ラジエータ除塵装置の側面図
【図5】同上要部の正面図
【図6】ラジエータ除塵装置の側面図
【図7】トラクタ要部のブレーキ部側面図
【図8】トラクタ要部の前後進ペダル部側面図
【図9】トラクタ要部の側面図
【図10】同上要部の平面図
【図11】(a)〜(c)はシートとPTOレバーとの関係側面図
【図12】(a)〜(c)はシートSWとPTOレバーとの関係側面図
【図13】フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、トラクタを示すものであり、この走行車体1前部のボンネット2内部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース3内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪4及び後輪5とに伝えるようにしている。機体後部にはロータリ作業機Rが装備され、キャビン6内に設置された運転席7の前方には、前輪4,4を操舵するステアリングハンドル8が装備されている。
【0019】
エンジンEの前側にラジエータ9が立設され、ラジエータ9の前側には防塵ネット10が附設されている。ラジエータ9とエンジンEとの間に冷却ファン11が設けられ、エンジンEの駆動力によって回転駆動するように連動構成されている。
【0020】
防塵ネット10の外面には該ネットの外面に沿って往復動しネット表面に付着する塵埃を拭き取るワイパー12が設けられ、ネットの外面に接触して往復動するようになっている。ワイパー12は、ケーブル13をモータ14で引っ張ることにより往復動させる構成であり、モータ14は、運転部近くに設けられたスイッチレバー15のON操作により駆動される。
【0021】
また、クラッチペダル16を踏込み操作すると、リミットスイッチ17がONし、モータ14の駆動によりワイパー12が作動するようになっている。
図4に示す実施例では、ラジエータの水温計18の水温検出センサ19が所定以上の水温上昇を検出すると、制御部20によりモータ14を駆動してワイパーを適宜作動させるように構成している。
【0022】
また、他の実施例として、防塵ネット10の下部には、ワイパーにより拭き取られた塵埃を受け取る受取板21が設けられている。受取板21は、支軸22を支点として揺動開閉できる構成であり、トルクスプリングなどにより常時閉じ方向に付勢されている。往復動するワイパー12の復動時に受取板21を下方に押し開けるように構成している。
【0023】
また、図6に示す実施例では、ラジエータ9のフィン9a前面にもブラシのような除塵体23を横スライド可能に設けることで、フィン前面に付着する塵埃も綺麗に取り除くことができる。また、かかる除塵体においては前記ワイパー12の駆動構成と同様にモータの駆動によるケーブルの引き操作によってスライド作動するように構成することもできる
図7、図8例は、自動パーキング装置の構成例を示すもので、ブレーキのON.OFFを検知するブレーキON.OFF検知センサ27、前後進ペダル28の踏み代を検出するセンサ29、ブレーキアーム30と連結したモータMを備え、ブレーキペダル26を踏み込んだ状態でエンジン始動用キースイッチをOFFにすると、モータMでブレーキアーム30を作動してパーキングブレーキがかかり、キースイッチをONにし、前後進ペダル28を一定量踏み込む(踏み代が一定量を超える)と緩やかにパーキングブレーキが解除され、機体が動き始めるように構成している。
【0024】
トラクタにおいては、平地で作業、停車することが多いため、パーキングブレーキを忘れがちであり、微妙な傾斜にも作業者が気付かない場合がある。上記構成によると、自動的にパーキングブレーキがかかるので安全である。
【0025】
また、上記構成とは別例として、ブレーキペダル26を踏み込んだ状態でトラクタのキースイッチをOFFにすると、モータMが動きブレーキをロックしてパーキングをかけ、キースイッチをONにした後、ブレーキペダルを踏まないとロックが解除されないように構成することもできる。
【0026】
地面の傾斜角を検知できる傾斜角センサとブレーキアーム30と連結したモータMを備えた構成において、斜面の傾斜角をセンサが検知し、キースイッチをOFFにすると、傾斜地の角度によってモータの速さを変化させる構造、つまり、坂道ではパーキングをかける速度を速くすることによって安全性をより確保することができる。
【0027】
また、傾斜角を検知できる傾斜角センサ、サブチェンジを検知するセンサ、ブレーキアーム30と連結したモータMを備えた構成において、キイースイッチをOFFにすると、モータがブレーキアームを引っ張ってブレーキをロックし、キースイッチをONにし、チェンジギヤを入れると、モータによりパーキングが解除され、傾斜角を検知し、不利な方向に車体を走らせる場合、パーキングの解除される速度が遅くなるように構成することもできる。上記構成によると、ギヤが入っていないとロックが解除しないため、急発進や傾斜地での滑りを防止することができる。
【0028】
次にトラクタなどの盗難防止制御装置について説明する。トラクタの制御装置などのON.OFFとコントローラのメモリ機能を有する構成の移動農機において、エンジンをOFFにする際、すべての装備制御スイッチをOFFの状態にし、クラッチを2秒以上踏み続けると、盗難防止機能モードに突入し、以後暗証スイッチ配列を復元しないと機関が始動しない構成としている。そして、次回のメインスイッチON時にモニター内の全LEDが点滅し、更にウインカーランプがバザードとなり、暗証コードが入力されるまで点滅が継続されること。暗証コードと同じスイッチON状態にセットした後、警告音ブザーを2秒以上鳴らすことでセット確認する。かかる制御によると、盗難防止機能設定がいづれの農機でも可能で、覚えやすい。また、警告音を鳴らすことで、周囲にその状況を知らせるため、機械の持ち主以外が近づきにくいため、盗難防止効果がさらに高まる。
【0029】
図9、図10例は、省エネ運転のため、エンジンのスロットルレバー32使用時にあってもアイドリング設定できるアイドリング設定スイッチ33を運転席7横側のフェンダー34適所に設置している。設定スイッチ33を押すとエンジンがアイドリング状態となり、もう一度押すとエンジン回転が設定値に戻るようになっている。
【0030】
また、省エネ運転のため、スロットルレバー32使用時、アクセルペダル35でレバー設定値を超えた後にアクセルペダルをアイドリングに戻した場合にスロットルレバー使用は除外されてアイドリング状態となるように構成することもできる。
【0031】
更に、エンジン始動時にアクセルペダルがアイドリング設定されていないとエンジンがかからないように構成することもできる。
上記構成例において、省エネ運転のためにエンジン回転をパーセント(例えば+10%アップ、−10%ダウン)でアップダウン設定できるように構成したり、エンジン回転を0〜20%アップダウン設定できるように構成することもできる。また、エンジン回転をダイヤル設定できるように構成するものであっても省エネ運転が可能となる。
【0032】
運転者が運転席シート7に座るとシートSW36が作用してエンジンが始動可能となるトラクタにおいて、乗車着座してエンジンを始動し、運転者がPTOチェンジをONした後に運転席から降りてもエンジンが止まらないように構成する。この場合、図11の(a),(b),(c)図で示すように、PTOチェンジレバー37でシート7をロックするか、又は、図12の(a),(b),(c)図で示すようにシートSW36をPTOチェンジレバー37でロックすることもできる。これによると、PTOチェンジONでシートから降りてもエンジンが止まらないので、無乗車定地でのPTOを利用した作業が可能となる。
【0033】
一台の作業機に複数のICカードと、運転席にリーダを備えた構成において、ICカードは一人の作業者につき一枚与える。運転者は作業前にカードを所定のリーダ内に置きエンジンを始動する。制御ルーチンでは、初期化の時点でカード内の情報を読み取り番号に応じた設定(アクセル変速・メモリー変速など)を行うようにしている(図13参照)。
【0034】
上記構成によると、一台の作業者を複数の運転者が使用している場合において、それぞれの作業者の好みや技量に応じた配慮を行うことができる。
海外のトラクタの多くは牽引作業に使用される。牽引作業はバランスのとり方によっては事故になりやすい。トラクタ本体に牽引対象となるものの重量を選択されたギヤとエンジン回転数からある程度推定し、場合によっては警告をモニタに表示し、安全作業のガイドの役割を果たすシステム構成を具現する。
【0035】
そこで、牽引時のロード計測機能第1案として、まず、
(1)牽引対象物を接続する。
(2)牽引対象物重量推定モードに入れる。
【0036】
以下、モニタにガイダンスが表示される。
(3)ガイダンスに従い、計測するため特定のギヤに入れる。
(4)ガイダンスに従い、エンジン回転数を特定の回転数に合わせる。
(5)正しく設定されたことをトラクタが認識し、「走行して下さい」というガイダンスが表示される。
(6)ギヤ比と、設定されたエンジン回転数に対して牽引することで現れるエンジン回転数とのギャップからある程度の牽引物の重量を判断する。
【0037】
エンジンがストールし、エンストした場合は、回転数を1500→1800などに変更してやり直す。
重量があまりに重いという判断の場合は警告を表示する。
【0038】
また、トラクタの姿勢が不安定になりそうな場合は、「カウンタウエイト装備推奨」や「牽引物の重量を減らせ」などのアドバイスがもらえる。
これにより、中、小型トラクタでの牽引作業を安全に行うことができる。
【0039】
また、牽引時のロード計測機能第2案として、
(1)牽引対象物を接続する。
(2)牽引対象物重量推定モードに入れる。
【0040】
以下、モニタにガイダンスが表示される。
(3)ガイダンスに従い、計測するため特定のギヤに入れる。
(4)ガイダンスに従い、エンジン回転数を特定の回転数に合わせる。
(5)正しく設定されたことをトラクタが認識し、「走行して下さい」というガイダンスが表示される。
(6)ガイダンスどおりなら微速度前進するが、数秒後に「ブレーキを踏んで下さい」と出る。
(7)ブレーキを踏むと、牽引物がトラクタのドローバ部に力を加えるので、ある程度の重量を計測することが可能。
(8)計測した推定重量を表示後、安全作業に必要な情報が出る(推奨車速など)。
【0041】
これにより、牽引物の重量が評価できるため、牽引作業の安全性向上につながる。
【符号の説明】
【0042】
E エンジン
9 ラジエータ
9a フィン
10 防塵ネット
12 ワイパー
16 クラッチペダル
18 水温計
21 受取板
23 除塵体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータ(9)の前方に設置された防塵ネット(10)の外面には該防塵ネット(10)の外面に沿って往復動しネット表面に付着する塵埃を拭き取るワイパー(12)を設けたトラクタにおいて、該ワイパー(12)はクラッチペダル(16)の踏み込み操作に連動して作動すべく連動構成してあることを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
ラジエータ(9)の前方に設置された防塵ネット(10)の外面には該防塵ネット(10)の外面に沿って往復動しネット表面に付着する塵埃を拭き取るワイパー(12)を設けたトラクタにおいて、該ワイパー(12)は、水温計(18)の一定以上の温度上昇に起因して作動するように連動構成してあることを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
ラジエータ(9)の前方に設置された防塵ネット(10)の外面には該防塵ネット(10)の外面に沿って往復動しネット表面に付着する塵埃を拭き取るワイパー(12)を設けたトラクタにおいて、前記防塵ネット(10)の下方部には拭き取られた塵埃を受け取る受取板(21)を設け、該受取板(21)は前記ワイパー(12)の作動に関連して開閉作動するように構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトラクタ。
【請求項4】
前記ラジエータ(9)のフィン(9a)前面にもこれに付着する塵埃を除去する除塵体(23)を往復動可能に構成して設けてあることを特徴とする請求項3に記載トラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−72332(P2013−72332A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211031(P2011−211031)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)