説明

トラックボールのボール取り出し構造およびトラックボール

【課題】清掃時等に、治具やリングに設ける特別な構造を用いることなく、トラックボールに使用しているボールを容易に取り出すことの可能なトラックボールのボール取り出し構造を提供する。
【解決手段】トラックボール26は、リング22によってボール収容部25に収納され、リング22と収納部25は係止部位(つめ)24で連結される。収納部と一体になったトラックボール26は、リング22を回転することで、筐体28と着脱し、収納部25に対してリング22を回転させることで、ボールの取出しが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラックボールのボール取り出し構造およびトラックボールに係り、特に、トラックボールに使用しているボールを容易に取り出すことの可能なトラックボールのボール取り出し構造およびトラックボールに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックボール筐体内部やボールの清掃作業等、トラックボールからボールを取り出すことの必要な場合がある。このような場合は従来、専用の治具を用いてボールを取り出している。
【0003】
図3は、トラックボールにおける従来のボール取り出し方法の一例を示す斜視説明図である。この例はへら状の治具を用い、治具を筐体内のボールの下に差込み、ボールをすくい上げる方法である。
【0004】
また図4は、トラックボールにおける従来のボール取り出し方法の他の例を示す斜視図である(特許文献1)。これは、トラックボールのリングの下方に下端が内側方向に突起を有する保持アームを複数個設けた、いわばリング一体治具の構造とすることによって、リングをケースから抜くことでボールも一緒に取り外し、その後リング一体治具に保持されたボールを取り外す、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−189562号公報「トラックボールのボール取り出し構造」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、へら状治具を用いる方法は作業性が良くなく効率的ではない。また特許文献1の技術では、リングごとボールを取り出した後でさらにボールをリング一体治具から取り外さなくてはならず、手間がかかる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、これら従来技術の問題点を除き、他の治具やリングに設ける特別な構造を用いることなく、トラックボールに使用しているボールを容易に取り出すことの可能なトラックボールのボール取り出し構造、およびトラックボールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した結果、より簡易な構造によって課題を解決できることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
(1) トラックボールに設けられたボール取り出し用の構造であって、該構造はリングとボールが収容されるボール収容部とからなり、該リングと該ボール収容部には該リングの回転によって両者を係止するための相互に係止する形状を備えた一対の係止部位が設けられている、トラックボールのボール取り出し構造。
(2) (1)に記載のボール取り出し構造を備えていることを特徴とする、トラックボール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のトラックボールのボール取り出し構造およびトラックボールは上述のように構成されるため、これによれば、他の治具やリングに設ける特別な構造を用いたり、さらにその治具からボールを取り外す手間をかけることなく、筐体から、使用しているボールを容易に取り出すことができる。したがって、トラックボールのボールや筐体内の清掃の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】本発明のトラックボールのボール取り出し構造の構成を示す断面図であり、リングとボール収容部が相互に係止された状態を示す。
【図1B】本発明のトラックボールのボール取り出し構造の構成を示す断面図であり、リングとボール収容部が分離した状態を示す。
【図2A】本発明ボール取り出し構造の実施例についてボール取り出しの手順を示す斜視図であり、筐体内については透視図である。
【図2B】本発明ボール取り出し構造の実施例についてボール取り出しの手順を示す斜視図であり、筐体内については透視図である。
【図2C】本発明ボール取り出し構造の実施例についてボール取り出しの手順を示す斜視図であり、筐体内については透視図である。
【図2D】本発明ボール取り出し構造の実施例についてボール取り出しの手順を示す斜視図であり、筐体内については透視図である。
【図3】トラックボールにおける従来のボール取り出し方法の一例を示す斜視説明図である。
【図4】トラックボールにおける従来のボール取り出し方法の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面により本発明をさらに詳細に説明する。
図1A、図1Bは、本発明のトラックボールのボール取り出し構造の構成を示す断面図である。前者はリングとボール収容部が相互に係止された状態、後者は分離した状態を示す。これらに図示するように、本発明トラックボールのボール取り出し構造1はトラックボール10に設けられた構造であって、リング2とボール6が収容されるボール収容部4とからなり、リング2とボール収容部4には、リング2の回転によって両者を係止するための相互に係止可能な形状を備えた一対の係止部位3、5が設けられていることを、主たる構成とする。
【0013】
本ボール取り出し構造1のリング2およびボール収容部4の各係止部位3、5は、一対のみであっても充分に安定的な係止ができる限り、本発明の目的を達成できるため、本発明の範囲内である。しかし、両部材2、4間の係止を確実なものとするために、図示するようにリング2およびボール収容部4の各係止部位3、5は、一対のみではなく二対あるいはそれ以上設けることが望ましい。なお係止部位3、5の具体的構造は図示するものに限定されない。要するに、リング2とボール収容部4とを着脱可能に連結させることのできる構造であればすべて、本発明の係止部位である。
【0014】
リング2がトラックボール筐体に取り付けられている通常の状態においては、リング2は脱着自在に筐体に固定されている。固定は、リング2をねじ込み締め付けるように回してなされるが、通常これは時計方向(右回り)によりなされている。ボールを取り出す必要がある場合は、リング2を反時計方向(左回り)に回すことによって、リング2の筐体への固定を解除するとともに、リング2の係止部位3とボール収容部4の係止部位5とが係止可能な位置へと移動させることになる。そのようにして各係止部位3、5の係止がなされる。
【0015】
なお、リング2のねじ込み締め付けの方向が反時計方向(左回り)の構成の場合は、取り出し時の回転方向はその逆方向、つまり時計方向(右回り)とする構成とすればよい。
【0016】
各係止部位3、5の係止がなされたら、リング2を上方へと引き上げる。そうすると、リング2の係止部位3に係止された係止部位5によりボール収容部4が内部にボールを収容したまま、一緒に引き上げられる。このようにしてリング2とボール収容部4との合体によりなる本ボール取り出し構造1をトラックボール筐体から分離した後、リング2とボール収容部4の係止部位3、5の係止が解除されるようにいずれかを回して、リング2とボール収容部4とを分離し、ボール収容部4内に収容されているボールを取り出す。
【0017】
図2A〜2Dは、本発明ボール取り出し構造の実施例についてボール取り出しの手順を示す斜視図であり、筐体内透視図である。
リング22がトラックボール210の筐体28に取り付けられている通常の状態においては、リング22は脱着自在に筐体28に固定されている。固定は、リング22を筐体28側に時計方向(右回り)にねじ込み締め付けるように回してなされている。ボール26はボール収容部25に収容保持された状態である<図2A>。
【0018】
ボール26を取り出す場合は、まずリング22を反時計方向つまり左回りに回していく<図2A>。この過程で、リング22の筐体28への固定が解除され、最終的にリング22の係止部位(23)がボール収容部(25)の係止部位(24)の位置まで来て係止可能な状態となったら<図2B>、リング22を把持して引き上げる<図2C>。
【0019】
リング22を引き上げることにより、その係止部位23によって係止されたボール収容部25はリング22と一緒に吊り上げられ、内部にボール26を収容保持したままで引き上げられる<図2C>。その後、リング22の係止部位23とボール収容部25の係止部位24との間の係止が解除されてリング22とボール収容部25とは分離され、ボール収容部25内のボール26を取り出すことができる<図2D>。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、他の治具やリングに設ける特別な構造を用いたり、さらにその治具からボールを取り外す手間をかけることなく、使用しているボールを筐体から容易に取り出すことができ、清掃の作業性を向上させることができるため、トラックボールを用いるあらゆる製品分野において利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0021】
1、21…トラックボールのボール取り出し構造
2、22…リング
4、25…ボール収容部
3、5、23、24…係止部位
6、26…ボール
10、210…トラックボール
28…筐体
35…筐体
36、46…ボール
37…へら状の治具
45…ケース
47…リング一体治具
48…リング
49…保持アーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックボールに設けられたボール取り出し用の構造であって、該構造はリングとボールが収容されるボール収容部とからなり、該リングと該ボール収容部には該リングの回転によって両者を係止するための相互に係止する形状を備えた一対の係止部位が設けられている、トラックボールのボール取り出し構造。
【請求項2】
請求項1に記載のボール取り出し構造を備えていることを特徴とする、トラックボール。


【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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