説明

トラックボール

【課題】情報機器の薄型化可能なトラックボールを提供する。
【解決手段】上部部分と上部部分を内部に収納可能な下部部分に分離されたボールであって、上部部分の縁と下部部分の縁とが重なりかつ係合して形成されるボールと、下部部分の内部に設けられ、上部部分を押下げて下部内部の底に近い位置にロックして、上部部分を再度押下げて元の位置に復帰させる、下部部分に上部部分を接続するカム機構とを備え、上部部分は、(1)収納時において、前記ボールの直径方向に押し下げられて、カム機構により、押し下げられた状態でロックされて下部部分の内部に収納される状態を維持し、(2)使用時において、ボールの直径方向に押し下げられて、カム機構により、押し下げられた状態のロックがリリースされてカム機構の弾性力により直径方向へ押し上げられて、上部部分の縁と下部部分の縁とが係合して、ボールの外からの一定の圧力に対して球形状を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報機器の画面に表示されるカーソルを操作するためのトラックボールに関する。より詳しくは、薄型の情報機器等に搭載可能なトラックボールに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックボール (Trackball) は、マウスなどと同様にコンピュータの操作に用いるポインティングデバイスの一種である。パーソナルコンピュータ(PC)等の情報機器本体の薄型化が進行するにつれて、ボールの直径が筐体の薄型化の阻害要因になる。また、ボールの直径を小さくした場合に良好な操作性を確保することが難しいことなどの問題がある。しかし、現在でも、医療機器の現場では操作性や「ボールをまわす」操作感覚が重要と考えられており、トラックボールを実装した機器が多い。
【0003】
特許文献1は、使用時、トラックボール全体を本体ケース上に突出させ、非使用時にはトラックボール全体を本体ケース内に収納できるようにする情報処理装置を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−030385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療機器及び産業機器である超音波診断装置は、小型化、薄型化された部品を搭載することができるようになり、持ち運び可能な製品も登場している。機構部品の一つであるトラックボールは、ユーザーインターフェースの観点から薄型化することができず、これが機器の厚みを薄くすることを阻害している。例えば、特許文献1は、少なくともトラックボール分だけ厚さが必要であり、薄型化に限界がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、ユーザーインターフェースとしてのトラックボールをそのまま利用でき、情報機器の薄型化を実現できるトラックボールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明は、情報機器の画面に表示されるカーソルを操作するためのトラックボールであって、
上部部分と前記上部部分を内部に収納可能な下部部分に分離されたボールであって、前記上部部分の縁と前記下部部分の縁とが重なり係合して形成されるボールと、
前記下部部分の内部に設けられ、前記上部部分を押下げて前記下部部分の内の底に近い位置にロックでき、前記上部部分を再度押下げてロックをリリースせいて元の位置に復帰できる、前記下部部分に前記上部部分を接続するカム機構とを備え、前記上部部分は、
(1)収納時において、
前記ボールの直径方向に押し下げられて、前記カム機構により、押し下げられた状態でロックされて前記下部部分の内部に収納される状態を維持し、
(2)使用時において、
前記ボールの直径方向に押し下げられて、前記カム機構により、押し下げられた状態のロックがリリースされて前記カム機構の弾性力により直径方向へ押し上げられて、前記上部部分の縁と前記下部部分の縁とが係合して、前記ボールの外からの一定の圧力に対して球形状を維持できる、トラックボールである。
【0008】
ここで、このトラックボールは、前記下部部分の縁部の前記上部部分との係合面はテーパ状をなし、前記上部部分と下部部分との縁部の継ぎ面は滑らかな球面を形成することを特徴とする。
【0009】
また、このトラックボールは、前記上部部分の表面は前記下部部分の表面と色分けされ、前記上部部分を特定できることを特徴とする。
【0010】
更に、本発明は、上記トラックボールを含む情報機器である。
【0011】
また、この情報機器は、表示部を含む上側部と、入力部(文字キー、機能キー、及びトラックボールを有するキーボード)を含む下側部とを備え、前記入力部は上記トラックボールを含み、前記上側部と前記下側部とが折り畳み可能であることを特徴とする。
【0012】
更に、この情報機器は、前記上側部と前記下側部とを開いた状態において、
前記収納状態の上部部分を直径方向に押し下げることによりカム機構のロックをリリースし、前記上部部分を直径方向に押し上げて前記上部部分の縁を前記下部部分の縁に押し付け係合させて前記ボールの球形状を回復させて、前記上部部分への前記ボールの外からの一定の力に対して球形状を維持し、
前記上部部分と前記下部部分とを折り畳む際に、前記使用状態の上部部分は、前記カム機構のロックの機能により、下部部分の内部に押し下げられて収納されることを特徴とする。
【0013】
また、この情報機器は、前記上側部と前記下側部とを折り畳んだ場合の前記上面の内側表面が、前記トラックボールの収納時の前記上部部分の頂点と接触しないことを特徴とする。
【0014】
また、上記トラックボールのカム機構は、前記下部部分の内部に設けたハートカムである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記構造のトラックボールを搭載すれば、情報機器の薄型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のトラックボールが搭載されたノートPCの斜視図を示す。
【図2】ノートブックPCの上面図を示す。
【図3】表示画面を有する上側部と下側部とを折り畳んだ従来のノートPC側面のトラックボール中心での断面図を示す。
【図4】表示画面を有する上側部と下側部とを折り畳んだ本発明のノートPC側面のトラックボール中心での断面図を示す。
【図5】本発明のトラックボールの使用状態の断面図を示す。
【図6】本発明のトラックボールの収納状態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のトラックボールの実施の形態(実施例)を説明する。
【0018】
トラックボールは、手のひらで操作する関係上、ある程度ボールの直径が大きくないと操作性が悪い。また、手のひらでボールを回転させて使えるように、ボールは製品表面から飛び出した状態で使われる。ノートブックPCのような形状をしたポータブル機器の場合、持ち運びを考慮して情報処理の部品を内蔵した下側部と、表示部を搭載した上側部と、が折りたためる構造を採用している。典型的には、下側部は、CPU及びメインメモリなど情報処理部品を内蔵しキーボードやトラックボールが搭載されている。上側部の表示部は、典型的にはLCD等の表示部が搭載されている。上側部と下側部を折りたたむと、トラックボールのボールが飛び出した部分がLCD等の表示画面にぶつからないような空間が必要になる。この空間分の高さに起因して機器を薄型化することができない。
【0019】
情報機器において折りたたみを可能としつつ、その機器折りたたみ時の厚みを薄くするとともに、使用時には通常のトラックボールとして機能するトラックボールを発明である。本発明の対象の情報機器は、持ち運びを考慮してキーボードやトラックボールが搭載された下側部と、表示部が搭載された上側部が折りたためる構造である。ボールの一部(上部)を、ボール内部に格納できるカム機構を持つトラックボールを考案した。ボール内部にボールペンのノックのような構造を持たせ、格納と球形状への復帰を実現する。通常使用時、格納部はコイルスプリングで内部から押されている。カム機構により、使用時にボールは球形状を維持している。この状態では通常のトラックボールのように使用することができる。機器を折り畳むときなどにボール上部を格納する際には、この格納される上部部分が上にある状態で、上から指で強く押し下げることにより、ボール内部にあるカム機構が働き、上部部分が沈むとともに格納された状態でロックされる。再度、通常状態に戻すときには、格納された上部部分を再度上から指で押すことで、ロックが外(リリース)されてボールが球形状に復帰する。
【0020】
図1は、本発明のトラックボールが搭載されたノートPCの斜視図を示す。図2は、そのノートブックPCの上面図を示す。ノートPCは、表示画面12を有する上側部10と入力装置を有する下側部16とからなる。表示画面12は典型的にはLCDなどである。上側部10と下側部16とは、ヒンジ14により折り畳み可能に結合されている。上側部10はCPU、主記憶メモリ、HDDなど外部記憶装置を内部に搭載している。上側部10と下側部16とが開いた状態がPCの使用状態である。下側部16は表面にキーボード18、トラックボール20、カーソル確定スイッチ22など入力装置を組込んでいる。トラックボール20を、ボールを手のひらなどで回転させて、方向づけて表示画面12内でカーソルの操作を行う。カーソルの位置はカーソル確定スイッチ22が押されて位置が確定する。
【0021】
図3は、表示画面を有する上側部と下側部とを折り畳んだ従来のノートPC側面のトラックボール中心での断面図を示す。トラックボール20の上部部分が、下側部16の表面(パームレスト)33から突出し、上側部10のLCD12の表面と接触している。トラックボール20が下側部16の表面33から突出しているため、上側部10を下側部16に折り畳んだとしても、トラックボール20の上部部分の高さ分相当の間隙が必要である。そのためトラックボールを搭載したノートPCを薄くするに限界となる。
【0022】
図4は、表示画面12を有する上側部10と下側部16とを折り畳んだ本発明のノートPC側面のトラックボール中心での断面図を示す。トラックボール20の上部部分24は、下部部分40に収納され、下側部16の表面33より下に存在する。上部部分24と下部部分40はカム機構28により接続されている。トラックボール20の存在にかかわらず、上側部10の表示画面12を、下側部16の表面33に近づけることができるので、ノートPCなど情報機器の薄型化を可能となる。
【0023】
本発明のボール部分20が上部部分24と下部部分40部とに分離され、これら部分がカム機構により接続される。カム機構は下部部分40の内部に含まれ、上部部分24と下部部分40の2段階の位置関係を確定させる。カム機構は、例えば、典型的にはハートカム、回転カム、円筒カムである。これらのカム機構は、上部部分24を「プッシュ」すると下部部分40内の底に近い位置に「ロック」即ち固定する機構と、再度上部部分を「プッシュ」すると「リリース」即ちロックを外す機構である。トラックボール使用状態から上部部分を押すと下部部分の底に近い位置に「ロック」即ち固定され収納状態になる。収納状態において、上部部分を「プッシュ」すると下部部分内の底に近い位置に固定された「ロック」が外れ(リリース)され、トラックボールは使用状態に復帰する。
【0024】
図5は、本発明のトラックボールの使用状態の断面図を示す。本発明のトラックボール20を含む部品が示されている。ボール部分は、上部部分24と下部部分40が球状を形成してトラックボール20として機能する。上部部分24は下部部分40の内部に収納できる形状である。上部部分24と下部部分40はカム機構により接続されている。カム機構は、「プッシュ」すると「ロック」即ち固定する機構と、再度「プッシュ」すると「リリース」即ちロックを外す機構である。トラックボールの使用時では、収納状態の上部部分24を直径下方向に押し込まれ、上部部分24と下部部分40とが縁部26・27において係合し使用可能なトラックボール20を形成する。使用時では、上部部分24の縁部26は下部部分40の縁部27と一致するように、カム機構の弾性力により、直径外側方向に押しつけられる。上部部分24の縁26と下部部分40の縁27が係合して外部表面が滑らか球面を形成する。例えば、下部部分40の縁27の係合面がテーパ状をなす。上部部分24の縁26の係合面は、縁27のテーパ状の係合面と係合して2つの部分の継ぎ目が滑らかな球状をなすように形成される。また、カム機構の直径外側方向の弾性的な付勢により上部部分24が下部部分40に縁部で係合してトラックボールの球状を形成する。この係合力は、手の平、指先などによるトラックボールとして回転運動の際に、ボール20が上部部分24と下部部分40の縁部26・27において凹み、位置ずれなどを避けることができるためである。
【0025】
図6は、本発明のトラックボールの収納状態の断面図を示す。
使用状態のボール部分20は、上部部分24をカム機構の弾性力に抗して直径下方向に圧されて下部部分40の所定の位置でロックされる。ロックされた位置において上部部分24の頂点は、下側部16の表面33と同一又はそれ以下に納まるよう設計される。
【0026】
ボール20はカバー30の中で回転するため、収納時には格納部(上部部分24)を上に持ってくる必要がある。目印として格納部の色を他の部分と変えておくことで容易に視認できるため、格納部を上に持ってくることができる。また、上部部分24と下部部分40の表面を「ザラザラ」と「滑らか」というように手触りなど触感で識別できるようにしてもよい。
【0027】
この機構により、キーボードやトラックボールが搭載された下側部16の高さがフラットになり、製品折りたたみ時の上側部10と下側部の隙間を最小化することができる。これにより、トラックボールを搭載しつつ機器の薄型化を実現することができる。
【0028】
以上で説明された構造のトラックボールを搭載した情報機器は、トラックボールの利用を可能にしつつ薄型化を実現できる。詳しくは、本発明のトラックボールを搭載したとしても、折り畳み可能な情報機器の上側部と下側部の隙間を最小化することができ、表示部表面を損傷しない効果が得られる。
【0029】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の範囲は上記実施例には限定されない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々に変更したり代替態様を採用したりすることが可能なことは、当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0030】
10…上側部、
12…表示画面(LCD)、
14…ヒンジ、
16…下側部、
18…キーボード部分、
20…トラックボール、
22…カーソル確定スイッチ、
24…トラックボールの上部部分、
28…カム機構、
30…トラックボールの筐体
33…下側部の表面(パームレスト部)、
40…トラックボールの下部部分、
30…トラックボールの筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報機器の画面に表示されるカーソルを操作するためのトラックボールであって、
上部部分と前記上部部分を内部に収納可能な下部部分に分離されたボールであって、前記上部部分の縁と前記下部部分の縁とが係合して形成されるボールと、
前記下部部分の内部に設けられ、前記上部部分を、押下げて前記下部部分内の所定の位置にロックし、再度押下げて元の位置に復帰させる、前記下部部分を前記上部部分に接続するカム機構とを備え、前記上部部分は、
収納時において、前記ボールの直径方向に押し下げられて、前記カム機構により、押し下げられた状態でロックされて前記下部部分の内部に収納される状態を維持し、
使用時において、前記ボールの直径方向に押し下げられて、前記カム機構により、押し下げられた状態のロックがリリースされて前記カム機構の弾性力により直径方向へ押し上げられて、前記上部部分の縁と前記下部部分の縁とが係合して、前記ボールの外からの一定の圧力に対して球形状を維持できる、トラックボール。
【請求項2】
前記下部部の縁部の前記上部部分との係合面はテーパ状をなし、前記上部部分と下部部分との縁部の継ぎ面は滑らかな球面を形成する請求項1に記載のトラックボール。
【請求項3】
前記上部部分の表面は前記下部部分の表面と色分けされ、前記上部部分を特定できる請求項1に記載のトラックボール。
【請求項4】
請求項1に記載のトラックボールを含む情報機器。
【請求項5】
表示部を含む上側部と、
入力部を含む下側部とを備え、
前記入力部は請求項1記載のトラックボールを含み、
前記上側部と前記下側部とが折り畳み可能な情報機器。
【請求項6】
請求項5に記載の情報機器は、
前記上側部と前記下側部とを開いた状態において、
前記収納状態の上部部分を直径方向に押し下げることによりカム機構のロックをリリースし、前記上部部分を直径方向に押し上げて前記上部部分の縁を前記下部部分の縁に押し付け係合させて前記ボールの球形状を回復させて、前記上部部分への前記ボールの外からの一定の力に対して球形状を維持し、
前記上部部分と前記下部部分とを折り畳む際に、前記使用状態の上部部分は、前記カム機構のロックの機能により、下部部分の内部に押し下げられて収納される、情報機器。
【請求項7】
請求項6に記載の情報機器は、
前記上側部と前記下側部とを折り畳んだ場合の前記上面の内側表面が、前記トラックボールの収納時の前記上部部分の頂点と接触しないことを特徴とする、情報機器。
【請求項8】
前記カム機構は前記下部部分の内部に設けたハートカムである、請求項1に記載のトラックボール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−109530(P2013−109530A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253212(P2011−253212)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】