説明

トラック用フレーム

【課題】自動車メーカ及び架装メーカの双方の労力面やコスト面での負担を必要最小限に抑制し且つ架装メーカ側で追加の穴明け加工を施す際にも既設の取付穴による制約を緩和して自由度の高い加工を行い得るようにしたトラック用フレームを提供する。
【解決手段】サイドレール1のウェブ2に対し格子状に等ピッチで穴位置を設定し、このうちの汎用性の高い穴位置にシャシ部品の取付穴5を予め穿設する一方、残りの汎用性の低い穴位置には取付穴を明けずにマーキング6だけを施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック用フレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、各種の車型バリエーションを持つトラックは、自動車メーカからフレーム上にキャブだけを組み付けた状態で架装メーカに供給され、ここで、カーゴ、ダンプ、タンクローリ等の様々な架装が組み付けられて完成車となるが、この際、フレームのサイドレールのウェブに対し各架装における固有の機器を追加装備したり、既に架装メーカに供給された段階で装備されている燃料タンクやバッテリキャリヤ等を移設する必要が生じることがあり、このような場合には、架装メーカにてサイドレールのウェブに罫書きを行って穴位置を決め、ここに追加の穴明け加工を施して新たな取付穴を設けるようにしている。
【0003】
また、このような追加の穴明け加工を施すことは、架装メーカにとって労力面やコスト面で大きな負担となるため、これらの負担を軽減するための対策として、車型バリエーションの全てに対応したシャシ部品(各架装における固有の機器、燃料タンク、バッテリキャリヤ等)の取付穴を全て自動車メーカ側で予め明けておく方式も既に提案されている。
【0004】
尚、この種のトラック用フレームに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【特許文献1】特開2001−278108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車型バリエーションの全てに対応したシャシ部品の取付穴を自動車メーカ側で全て加工してしまうようにすると、汎用性の低い取付穴でも必ず自動車メーカ側で穴明け加工を施さなければならなくなって、実際に使用されることなく終わってしまう取付穴の加工に手間とコストが嵩むため、今度は自動車メーカ側での労力負担やコスト負担が大きくなってしまうという問題を生じた。
【0006】
また、架装メーカ側の事情により自動車メーカ側で想定している穴位置以外の場所に新たに取付穴を明ける必要が生じた際に、その取付穴を明けたい位置に隣接して既に自動車メーカ側で明けられた取付穴が存在している場合が多くなり、その既設の取付穴に対し新たに明けたい取付穴が十分な間隔を隔てられなくなったり、或いは、一部が重複して穴が過剰に大きくなってしまうといった事態を招き易くなるため、強度的な信頼性を確保する観点から新たな取付穴を明けられないケースが多くなった。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、自動車メーカ及び架装メーカの双方の労力面やコスト面での負担を必要最小限に抑制し且つ架装メーカ側で追加の穴明け加工を施す際にも既設の取付穴による制約を緩和して自由度の高い加工を実現し得るようにしたトラック用フレームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、サイドレールのウェブに対し格子状に等ピッチで穴位置を設定し、このうちの汎用性の高い穴位置にシャシ部品の取付穴を予め穿設する一方、残りの汎用性の低い穴位置には取付穴を明けずにマーキングだけを施したことを特徴とするトラック用フレーム、に係るものである。
【0009】
而して、このようにすれば、汎用性の高い穴位置の取付穴だけで架装を組み付けられる場合に、架装メーカ側で特に追加の穴明け加工を行わずに作業を完了することが可能となり、また、マーキングを施した汎用性の低い穴位置に新たに追加の取付穴を明けるだけで架装を組み付けられる場合には、既にマーキングにより穴位置が決まっていることから罫書きを省略して簡易に追加の穴明け加工を行うことが可能となる。
【0010】
この際、汎用性の高い穴位置の取付穴は既に穿設されているので、追加の穴明け加工が必要となるケースが少なくて済み、しかも、追加の穴明け加工が必要となるケースでも、その追加の取付穴の加工数は必要最小限で済むので、架装メーカ側での追加の穴明け加工に要する労力面やコスト面での負担が軽減される。
【0011】
一方、自動車メーカ側からすれば、車型バリエーションの全てに対応したシャシ部品の取付穴を全て加工してしまわなくても済み、汎用性の高い穴位置について取付穴を穿設するだけで済むため、自動車メーカ側での穴明け加工に要する労力面やコスト面での負担も軽減される。
【0012】
しかも、サイドレールのウェブには、汎用性の高い穴位置の取付穴だけが開口されていて、残りの汎用性の低い穴位置にはマーキングが施されているにすぎないため、架装メーカ側の事情により自動車メーカ側で想定している穴位置以外の場所に新たに取付穴を明ける必要が生じた際に、その取付穴を明けたい位置に隣接して既に取付穴が存在しているようなケースが少なくなり、仮にマーキングが施されていたとしても、そこには未だ取付穴が開口されていないので、新たな取付穴を強度的な信頼性を損なうことなく明けることが可能となる。
【0013】
また、各穴位置を格子状に等ピッチで設定したことにより、自動車メーカ及び架装メーカの双方でサイドレールのウェブにシャシ部品を取り付けるためのブラケット類を標準化し、これにより部品点数を削減してコストダウンを図ると共に、シャシ部品の移設作業の容易化を図ることが可能となる。
【0014】
尚、本発明においては、汎用性の低い穴位置にマーキングを施すにあたり、凹みで印を付けてマーキングとしたり、エッチングで印を付けてマーキングとしたり、塗料で印を付けてマーキングとしたりすることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明のトラック用フレームによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)汎用性の高い穴位置の取付穴を予め穿設しておくことにより追加の穴明け加工を極力不要とし、追加の穴明け加工を必要とする場合でも加工数を必要最小限に抑制し且つマーキングされた穴位置に対しては罫書きを省略して簡易に穴明け加工を実施することができるので、架装メーカ側での追加の穴明け加工に要する労力面やコスト面での負担を大幅に軽減することができ、しかも、自動車メーカ側で車型バリエーションの全てに対応したシャシ部品の取付穴を全て加工せずに汎用性の高い穴位置についてだけ取付穴を穿設すれば済むので、自動車メーカ側での穴明け加工に要する労力面やコスト面での負担も大幅に軽減することができる。
【0017】
(II)サイドレールのウェブには、汎用性の高い穴位置の取付穴だけが開口していて、残りの汎用性の低い穴位置にはマーキングが施されているにすぎないため、架装メーカ側の事情により自動車メーカ側で想定している穴位置以外の場所に新たに取付穴を明ける必要が生じた際に、その取付穴を明けたい位置に隣接して既に取付穴が存在しているようなケースが少なくなり、仮にマーキングが施されていたとしても新たな取付穴を強度的な信頼性を損なうことなく明けることができるので、既設の取付穴による制約を緩和して自由度の高い加工を実現することができる。
【0018】
(III)各穴位置を格子状に等ピッチで設定したことにより、自動車メーカ及び架装メーカの双方でサイドレールのウェブにシャシ部品を取り付けるためのブラケット類を標準化することができるので、部品点数を削減してコストダウンを図ることができると共に、シャシ部品の移設作業の容易化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図中1はトラックの前後方向に延びてフレームの基本骨格を成す左右一対(ここでは何れか一方のみを図示)のサイドレール、2は該サイドレール1における上部フランジ3と下部フランジ4との間を縦方向に連結するウェブを示している。
【0021】
ここで、本形態例においては、サイドレール1のウェブ2に対し格子状に等ピッチで穴位置(後述する取付穴5及びマーキング6が配置されている位置)が設定されており、このうちの汎用性の高い穴位置(図示の例ではウェブ2の最上段で水平方向に並ぶ穴位置とウェブ2の最下段で水平方向に並ぶ穴位置)に、各架装における固有の機器や燃料タンク、バッテリキャリヤ等といったシャシ部品の取付穴5が予め穿設されるようになっており、残りの汎用性の低い穴位置(図示の例ではウェブ2の上から二段目と三段目で水平方向に並ぶ穴位置)には、取付穴5を明けずに凹みで印を付けたマーキング6だけが施されるようにしてある。
【0022】
ただし、ここに図示している例では、汎用性の低い穴位置にマーキング6を施すにあたり、凹みで印を付けてマーキング6としているが、エッチングで印を付けてマーキング6としたり、塗料で印を付けてマーキング6としたりしても良い。
【0023】
而して、このようにすれば、汎用性の高い穴位置の取付穴5だけで架装を組み付けられる場合に、架装メーカ側で特に追加の穴明け加工を行わずに作業を完了することが可能となり、また、マーキング6を施した汎用性の低い穴位置に新たに追加の取付穴5を明けるだけで架装を組み付けられる場合には、既に凹みで印を付けたマーキング6により穴位置が決まっていることから罫書きを省略して簡易に追加の穴明け加工を行うことが可能となる。
【0024】
この際、汎用性の高い穴位置の取付穴5は既に穿設されているので、追加の穴明け加工が必要となるケースが少なくて済み、しかも、追加の穴明け加工が必要となるケースでも、その追加の取付穴5の加工数は必要最小限で済むので、架装メーカ側での追加の穴明け加工に要する労力面やコスト面での負担が軽減される。
【0025】
一方、自動車メーカ側からすれば、車型バリエーションの全てに対応したシャシ部品の取付穴5を全て加工してしまわなくても済み、汎用性の高い穴位置について取付穴5を穿設するだけで済むため、自動車メーカ側での穴明け加工に要する労力面やコスト面での負担も軽減される。
【0026】
しかも、サイドレール1のウェブ2には、汎用性の高い穴位置の取付穴5だけが開口されていて、残りの汎用性の低い穴位置には、凹みによりマーキング6が施されているにすぎないため、架装メーカ側の事情により自動車メーカ側で想定している穴位置以外の場所に新たに取付穴5を明ける必要が生じた際に、その取付穴5を明けたい位置に隣接して既に取付穴5が存在しているようなケースが少なくなり、仮にマーキング6が施されていたとしても、そこには未だ取付穴5が開口されずに凹みで印が付けられているだけなので、新たな取付穴5を強度的な信頼性を損なうことなく明けることが可能となる。
【0027】
また、各穴位置を格子状に等ピッチで設定したことにより、自動車メーカ及び架装メーカの双方でサイドレール1のウェブ2にシャシ部品を取り付けるためのブラケット類を標準化し、これにより部品点数を削減してコストダウンを図ると共に、シャシ部品の移設作業の容易化を図ることが可能となる。
【0028】
従って、上記形態例によれば、汎用性の高い穴位置の取付穴5を予め穿設しておくことにより追加の穴明け加工を極力不要とし、追加の穴明け加工を必要とする場合でも加工数を必要最小限に抑制し且つマーキングされた穴位置に対しては罫書きを省略して簡易に穴明け加工を実施することができるので、架装メーカ側での追加の穴明け加工に要する労力面やコスト面での負担を大幅に軽減することができ、しかも、自動車メーカ側で車型バリエーションの全てに対応したシャシ部品の取付穴5を全て加工せずに汎用性の高い穴位置についてだけ取付穴5を穿設すれば済むので、自動車メーカ側での穴明け加工に要する労力面やコスト面での負担も大幅に軽減することができる。
【0029】
また、サイドレール1のウェブ2には、汎用性の高い穴位置の取付穴5だけが開口していて、残りの汎用性の低い穴位置にはマーキング6が施されているにすぎないため、架装メーカ側の事情により自動車メーカ側で想定している穴位置以外の場所に新たに取付穴5を明ける必要が生じた際に、その取付穴5を明けたい位置に隣接して既に取付穴5が存在しているようなケースが少なくなり、仮にマーキング6が施されていたとしても新たな取付穴5を強度的な信頼性を損なうことなく明けることができるので、既設の取付穴5による制約を緩和して自由度の高い加工を実現することができる。
【0030】
更に、各穴位置を格子状に等ピッチで設定したことにより、自動車メーカ及び架装メーカの双方でサイドレール1のウェブ2にシャシ部品を取り付けるためのブラケット類を標準化することができるので、部品点数を削減してコストダウンを図ることができると共に、シャシ部品の移設作業の容易化を図ることができる。
【0031】
尚、本発明のトラック用フレームは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、サイドレールのウェブに対して格子状に等ピッチで設定される穴位置は、必ずしも図示例の如き四段配置に限定されるものではなく、また、汎用性の高い穴位置も図示例の如きウェブの最上段と最下段で水平方向に並ぶものだけに限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す側面図である。
【図2】図1のII−II矢視の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 サイドレール
2 ウェブ
5 取付穴
6 マーキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドレールのウェブに対し格子状に等ピッチで穴位置を設定し、このうちの汎用性の高い穴位置にシャシ部品の取付穴を予め穿設する一方、残りの汎用性の低い穴位置には取付穴を明けずにマーキングだけを施したことを特徴とするトラック用フレーム。
【請求項2】
汎用性の低い穴位置にマーキングとして凹みで印を付けたことを特徴とする請求項1に記載のトラック用フレーム。
【請求項3】
汎用性の低い穴位置にマーキングとしてエッチングで印を付けたことを特徴とする請求項1に記載のトラック用フレーム。
【請求項4】
汎用性の低い穴位置にマーキングとして塗料で印を付けたことを特徴とする請求項1に記載のトラック用フレーム。

【図1】
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【図2】
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