説明

トラップ装置及び基板処理装置

【課題】トラップ機能とバイパス機能とを有する小型のトラップ装置を低コストで提供する。
【解決手段】基板を処理するためのガスを導入するためのガス供給部が接続されているチャンバーと、前記チャンバー内のガスを排気するための排気部との間に設けられたトラップ装置50であって、前記チャンバーと接続される吸入口52と、前記排気部と接続される排出口53と、第1の空間57を有するバイパス部51と、前記ガスに含まれる未反応成分を冷却して凝固させて除去する第2の空間61を有する冷却トラップ部60と、を有し、前記ガスは、第1の状態では前記第1の空間57を介し流れ、第2の状態では前記第2の空間61を介し流れるものであって、前記冷却トラップ部60に対し第1の流路55及び第2の流路56を、回転部54により相対的に移動させることにより、前記第1の状態と前記第2の状態とを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラップ装置及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに用いられる絶縁材料の1つとして、ポリイミドが挙げられる。ポリイミドは密着性が高く、リーク電流も低いことから、層間絶縁膜やパッシベーション膜などに用いられている。このようなポリイミドは半導体デバイスの集積度を上げるため、半導体チップを積層する3次元実装を行う際に、絶縁膜として、特に有望とされている。
【0003】
このようなポリイミド膜を成膜する方法の一つとして、原料モノマーとして、PMDA(無水ピロメリト酸)とODA(4,4'−オキシジアニリン)を用いた蒸着重合法(共蒸着重合法)による成膜方法が知られている。
【0004】
この蒸着重合法(Vapor Deposition Polymerization)は、反応性の高い低分子モノマーであるPMDA及びODAを気化させて、チャンバー内に設置した基板表面に共蒸着し、基板表面で重合させて高分子ポリマーとしてのポリイミドを得る方式である。
【0005】
具体的に、この蒸着重合反応は下記に示すような反応である。
【0006】
PMDA+ODA→PAA(ポリアミド酸)→PI(ポリイミド)+H
蒸着重合方式による成膜処理を行う基板処理装置においては、基板上での蒸着重合に寄与することのなかった原料モノマーは、ポリイミド膜の成膜に寄与することなくモノマーの状態で排出され、処理装置のチャンバー内を排気するための真空ポンプ内に到達する。このような原料モノマーは、真空ポンプに到達するまでの間に温度が低下し、気体から固体等の状態に変化し、真空ポンプ内において固着等してしまい真空ポンプの故障の原因となることが知られている。このため、これら原料モノマーが真空ポンプ内に到達する前に除去する必要があり、このような装置としては、水冷コイルを備えたモノマートラップを有する真空重合装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0007】
また、原料にポリマーの気化物質を使用しない、通常の真空成膜装置では、排気中の未反応成分が真空ポンプに異物として混入しないように、チャンバーと真空ポンプの間に除去装置を有しており、このような除去装置の一種として、除去装置内で未反応成分を反応させて、内壁に付着させる事で除去するものが開示されている(例えば、特許文献2)。
【0008】
一方、ガス成分をトラップにより捕獲する機能を有し、トラップの一端を伸縮管の一方の端部に接続し、伸縮管が伸縮することにより捕獲モードと非捕獲モードとに切り換えることが可能な基板処理装置が開示されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−132759号公報
【特許文献2】特開2000−070664号公報
【特許文献3】特開2001−262349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、PMDAやODA等のモノマーの除去に適したトラップ装置及び基板処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基板を処理するためのガスを導入するためのガス供給部が接続されているチャンバーと、前記チャンバー内のガスを排気するための排気部との間に設けられたトラップ装置であって、前記チャンバーと接続される吸入口と、前記排気部と接続される排出口と、第1の流路と、第2の流路と、前記第1の流路及び前記第2の流路の形成されていない領域に設けられた第1の空間とを有するバイパス部と、前記第1の流路及び前記第2の流路と接続されており、前記ガスに含まれる未反応成分を冷却して凝固させて除去する第2の空間を有する冷却トラップ部と、を有し、前記吸入口及び前記排出口と前記第1の流路及び前記第2の流路とが接続されていない第1の状態では前記第1の空間を介し流れ、前記吸入口及び前記排出口と前記第1の流路及び前記第2の流路とが接続されている第2の状態では前記ガスは前記第2の空間を介し流れるものであって、前記冷却トラップ部に対し前記第1の流路及び前記第2の流路を相対的に移動させることにより、前記第1の状態と前記第2の状態とに切り替えることができることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記チャンバー内を大気の状態より排気する場合には、前記第1の状態とし、前記チャンバー内に前記ガスを導入している場合には、前記第2の状態とすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記バイパス部には回転可能な回転部が設けられており、前記第1の流路及び前記第2の流路は前記回転部に設けられているものであって、前記第1の状態と前記第2の状態との切換えは、前記回転部を回転させることにより行うものであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記バイパス部、前記冷却トラップ部の順に、重力の働く方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記バイパス部は、前記ガスに含まれる未反応成分が凝固する温度よりも高い温度に設定されており、前記冷却トラップ部は、前記ガスに含まれる未反応成分が凝固する温度よりも低い温度に設定されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記ガスは、少なくともPMDAまたはODAのいずれかを含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記冷却トラップ部の温度は、120℃以下に設定されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、基板を処理するためのチャンバーと、前記チャンバー内にガスを導入するためのガス供給部と、前記チャンバー内のガスを排気するための排気部と、を有し、前記チャンバーと前記排気部との間に、前記記載のトラップ装置を配置したことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記排気部と、前記トラップ装置と間には、他のトラップが設けられており、前記他のトラップは、前記ガスに含まれる未反応成分を反応させてポリマーを形成することにより除去するものであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記他のトラップの温度は140〜200℃に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、PMDAやODA等のモノマーの除去に適したトラップ装置及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】トラップ装置を含む排気系の説明図
【図2】第1の実施の形態における基板処理装置の構造図
【図3】第1の実施の形態におけるトラップ装置を含む排気系の構成図
【図4】第1のトラップの説明図
【図5】第1の実施の形態におけるトラップ装置の機能の説明図
【図6】第1の実施の形態におけるトラップ装置の構造の説明図(1)
【図7】第1の実施の形態におけるトラップ装置の構造の説明図(2)
【図8】第2の実施の形態におけるトラップ装置の機能の説明図
【図9】第2の実施の形態におけるトラップ装置の構造の説明図(1)
【図10】第2の実施の形態におけるトラップ装置の構造の説明図(2)
【図11】第3の実施の形態におけるトラップ装置の機能の説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。
【0024】
〔第1の実施の形態〕
本実施の形態は、基板処理装置である原料モノマーとしてPMDAとODAを用いて、蒸着重合によりポリイミドを得る成膜装置及びこの基板処理装置に組み込まれるトラップ装置である。
【0025】
最初に、図1に基づき、原料モノマーとしてPMDAとODAを用いた場合のチャンバーから排出されるガスのトラップ装置について説明する。
【0026】
図1に示されるように、原料モノマーとしてPMDAとODAを用いた基板処理装置においては、不図示のチャンバーから排出される気流(ガス)は、第1のトラップ装置330及び第2のトラップ装置350を介し、真空ポンプ370により排気される。第1のトラップ330は、気化したPMDAとODAとを蒸着重合により反応させてポリイミドを生成し、生成されたポリイミドを第1のトラップ330の内部における壁面等に付着させることにより、気化したPMDAとODAを除去するものである。また、第2のトラップ350は、第2のトラップ350の内部を低温にすることによりPMDAとODAを凝固させて粉体状とし、生成されたPMDAとODAとを重力沈降等の方法により除去するものである。このような重力沈降等の方法により、生成されたPMDAとODAの粉体を除去する第2のトラップ350を介して、不図示のチャンバー内を大気圧の状態から排気した場合、コンダクタンスが低くなるため、チャンバー内を所定の到達真空度となるまでに排気する時間が極めて長時間となり、また、重力沈降等により第2のトラップ350の底面に堆積している粉体となったPMDA及びODAを巻き上げてしまう場合がある。
【0027】
このため、第2のトラップ350を介することなく真空ポンプ370によりチャンバー内を排気することができるように、バイパスライン360を設け、第2のトラップ350の前段と後段、即ち、バイパスライン360の前段と後段に、各々第1のバルブ361及び第2のバルブ362を設け、これら第1のバルブ361及び第2のバルブ362の開閉を制御することにより切り替えを行う方法が考えられる。尚、第1のバルブ361及び第2のバルブ362、第1のトラップ330、第2のトラップ350は、制御部となるコントローラ380と接続されており、各々所定の制御が行われる。
【0028】
このような構成においては、不図示のチャンバー内を排気する際には、第1のバルブ361を開き、第2のバルブ362を閉じた状態とし、真空ポンプ370により排気を行う。これにより、チャンバーから排気される気流は、第1のトラップ330、第1のバルブ361、バイパスライン360を流れて真空ポンプ370により排気される。
【0029】
また、チャンバー内に気化したPMDA及びODAを供給しポリイミドを成膜する際には、第1のバルブ361を閉じ、第2のバルブ362を開いた状態とする。これにより、チャンバーから排気される気流は、第1のトラップ330、第2のトラップ350、第2のバルブ361を流れ真空ポンプ370により排気される。この際、第2のトラップ350の内部は冷却されているため、気流に含まれる気化した状態のPMDA及びODAは凝固し、凝固したPMDA及びODAは重力沈降等させることにより除去することができる。
【0030】
しかしながら、この方法では、第1のバルブ361及び第2のバルブ362を必要とし、更には、バイパスライン360も必要となるため、基板処理装置及びトラップ装置を小型化することは困難であり、また、高コストなものとなってしまう。
【0031】
本発明は、このような点を踏まえてなされたものである。
【0032】
(成膜装置)
図2及び図3に基づき、本実施の形態におけるトラップ装置及び基板処理装置について説明する。尚、図2は、本実施の形態における基板処理装置を示すものであり、図3は、本実施の形態における基板処理装置の排気系、即ち、本実施の形態におけるトラップ装置を含む排気系を示すものである。
【0033】
本実施の形態における基板装置は、真空ポンプ70により排気が可能なチャンバー11内にポリイミド膜が成膜されるウエハWを複数設置することが可能なウエハボート12を有している。また、チャンバー11内には、気化したPMDA及びODAを供給するためのインジェクター13及び14を有している。このインジェクター13及び14の側面には開口部が設けられており、インジェクター13及び14より気化したPMDA及びODAが図面において矢印で示すようにウエハWに対して水平方向から供給される。供給された気化したPMDA及びODAは、ウエハW上で蒸着重合反応を起こし、ポリイミドとなって析出する。尚、ポリイミド膜の成膜に寄与しなかった気化したPMDA及びODAは、そのまま流れ、排気口15よりチャンバー11の外に排出される。また、ウエハW上に均一にポリイミド膜が成膜されるようにウエハボート12は、回転部16により回転するように構成されている。更に、チャンバー11の外部には、チャンバー11内のウエハWを一定の温度に加熱するためのヒーター17が設けられている。
【0034】
また、インジェクター13及び14は、PMDA気化器21及びODA気化器22とバルブ23及び24を介しそれぞれ接続されており、更に、PMDA気化器21及びODA気化器22と接続されているバルブ23及び24とインジェクター13及び14との間には導入部25が設けられている。このような構成により、PMDA気化器21及びODA気化器22より気化したPMDA及びODAがインジェクター13及び14より供給される。
【0035】
PMDA気化器21には高温の窒素ガスをキャリアガスとして供給し、PMDA気化器21においてPMDAを昇華させることにより気化した状態で供給する。このため、PMDA気化器21は、260℃の温度に保たれている。また、ODA気化器22では、高温の窒素ガスをキャリアガスとして供給し、高温に加熱され液体状態となったODAを供給された窒素ガスによりバブリングすることにより、窒素ガスに含まれるODAの蒸気とし、気化した状態で供給する。このため、ODA気化器22は220℃の温度に保たれている。この後、気化したPMDA及びODAは、バルブ23及び24を介してインジェクター13及び14内に供給され、チャンバー11内に設置されたウエハWの表面上で、ポリイミドとなる。尚、ポリイミドを成膜する際には、チャンバー11内の温度は200℃に保たれている。
【0036】
従って、本実施の形態における成膜装置では、インジェクター13及び14より横方向に、気化したPMDAと気化したODAとが噴出し、ウエハW上において、重合反応しポリイミド膜が成膜される。
【0037】
尚、本実施の形態においては、チャンバー11内を排気する際には、気流は排気口15より第1のトラップ30及び第2のトラップ50を流れ、真空ポンプ70により排気される。また、第1のトラップ30と第2のトラップ50との間、第2のトラップ50と真空ポンプ70との間には必要に応じて接続バルブを設けた構成であってもよい。
【0038】
また、第1のトラップ30及び第2のトラップ50の各々には、ヒーター等による不図示の温度調節機が設けられており、第1のトラップ30及び第2のトラップ50の各々が所定の温度となるように、コントローラ80により温度制御がなされている。
【0039】
(第1のトラップ)
次に、第1のトラップ30について説明する。図4に第1のトラップ30を示す。第1のトラップ30は、円筒状の筐体部31の内部に複数の円盤状のフィン32を配置した構造のものである。第1のトラップ30の吸入部33は、チャンバー11の排気口15と接続されており、第2のトラップ50を介し、真空ポンプ70により排気を行うことにより、排気される気流(ガス)が吸入部33より第1のトラップ30の内部に入り込む。第1のトラップ30は、コントローラ80により、140〜200℃に保たれており、よって、第1のトラップ30の内部に設置された複数のフィン32も、この温度に保たれている。この温度では気化したPMDAとODAが反応しポリイミドが形成されるため、チャンバー11から第1のトラップ30の内部に流れ込んだPMDAとODAとが反応し、フィン32の表面にポリイミド膜を形成する。このようにして、排気される気流中において、気化した状態のPMDAとODAとを蒸着重合させることにより、できる限り排除することができる。この後、この気流は排出口34より排気される。
【0040】
尚、本実施の形態における第1のトラップ30は、筐体部31内において、フィン32は排気流路に対して略垂直となるよう多段に配置されている。言い換えれば、多段に配置されたフィン32の開口部により排気流路が形成される。このようなにフィン32を多段に配置することにより、効率的に排気中のPMDAとODAとを反応させフィン32の表面にポリイミドを成膜し除去することができ、排気される気流中において、気体として存在するPMDAとODAとを効率的に排除することができる。このため、第1のトラップ30は140〜200℃に設定されている。
【0041】
例えば、本実施の形態における第1のトラップ30は、筐体部31の高さが1000mm、内径が310mmであって、フィン32は、外径が300mm、内径が110mmであり、フィン32の設置されるピッチは24mmで、フィン32を30段設けた構成のものである。
【0042】
(第2のトラップ)
次に、図5から図7に基づき、本実施の形態におけるトラップ装置である第2のトラップ50について説明する。第2のトラップ50は、円筒状に形成されており、円筒状の内部において、上段におけるバイパス部51と下段の冷却トラップ部60を有している。図5は、第2のトラップ50の機能の説明図であり、図6は、第2のトラップ50をバイパス状態にした場合の内部の構造を示すものであり、図7は、第2のトラップ50をトラップ状態にした場合の内部の構造を示すものである。
【0043】
第2のトラップ50の上部の面には、吸入口52及び排出口53が設けられており、第2のトラップ50の吸入口52は、第1のトラップ30の排出口34と接続されており、排出口53は真空ポンプ70と接続されている。
【0044】
第2のトラップ50の上段部におけるバイパス部51は、回転部54が設けられており、回転部54には冷却トラップ部60と接続するための第1の流路55及び第2の流路56が設けられている。尚、バイパス部51において第1の流路55及び第2の流路56が設けられている領域以外には空間57が形成されている。
【0045】
また、冷却トラップ部60の内部には、空間61が設けられており、バイパス部51における回転部54が回転することにより、第1の流路55及び第2の流路56を介し吸入口52及び排出口53と接続される。
【0046】
尚、バイパス部51には加熱部58が設けられておりバイパス部51の全体が加熱されており、冷却トラップ部60には水冷等による冷却部62が設けられており冷却トラップ部60の全体が冷却されている。
【0047】
第2のトラップ50では、バイパス部51における回転部54を回転させ、第1の流路55及び第2の流路56を吸入口52及び排出口53と接続させるか否かにより、冷却トラップ部60の内部の空間61に排気される気流を流入させるか否かの制御を行うことができる。
【0048】
具体的には、図5(a)及び図6に示すように、第1の流路55及び第2の流路56と吸入口52及び排出口53とが接続されていない状態の場合では、吸入口52より流入した気流は、バイパス部51の内部の空間57内に流入し、その後、排出口53より排出される。バイパス部51は加熱部58により加熱されているため、吸入口52よりバイパス部51の内部の空間57内に流入した気流に含まれる気化した物質は、凝固することなく、そのまま排出口53より排出される。
【0049】
次に、図5(b)及び図7に示すように、バイパス部51における回転部54を回転させて、第1の流路55及び第2の流路56と吸入口52及び排出口53とを接続させた状態の場合では、吸入口52より流入した気流は、第1の流路55を介し、冷却トラップ部60の内部の空間61内に流入し、その後、第2の流路56を介し排出口53より排出される。冷却トラップ部60では、冷却部62により、冷却トラップ部60の内部の空間61全体が冷却されており、空間61内に流入したガスに含まれる気化したPMDA及びODAを凝固させることができる。このように凝固したPMDA及びODAは、重力の影響により落下し、冷却トラップ部60の内部の空間61の底面部63に堆積物64として堆積する。
【0050】
以上より、第2のトラップ50では、バイパス部51における回転部54を回転させることにより、気化した状態のPMDA及びODAを冷却し重力沈降によりトラップさせるか否かの制御を行うことができる。
【0051】
例えば、チャンバー11内を大気圧の状態から排気する際には、図5(a)及び図6に示すように、第1の流路55及び第2の流路56と吸入口52及び排出口53とが接続されていない状態とする。この状態において、真空ポンプ70により排気を行うことにより、吸入口52より流入した排気される気流はバイパス部51の内部の空間57を介し排出口53から排出される。チャンバー11内を大気圧の状態から排気する際においては、排気される気流(ガス)の量は多いが、冷却トラップ部60の内部の空間61には排気される気流は流入しないため、空間61の底面部63に堆積している堆積物64を巻き上げてしまうことはない。よって、排気される気流に堆積物64が混入することはないため、真空ポンプ70内に堆積物64が入り込んでしまうことはない。
【0052】
一方、ウエハWにポリイミドを成膜する際には、図5(b)及び図7に示すように、第1の流路55及び第2の流路56と吸入口52及び排出口53とが接続されている状態とする。この状態において、ポリイミドを成膜するための気化したPMDA及びODAをチャンバー11内に流し、真空ポンプ70により排気する。この場合、吸入口52より流入した排気される気流はバイパス部51の第1の流路55を介し、冷却トラップ部60の内部の空間61に流入する。上述のとおり、冷却トラップ部60の内部の空間61は冷却部62により冷却されているため、排気される気流に含まれる気化した状態のPMDA及びODAを凝固させることができ、凝固したPMDA及びODAは、冷却トラップ部60の内部の空間61の底面部63に堆積物64として堆積する。このようにして排気される気流より気化した状態のPMDA及びODAを除去することができる。この後、この気流は、冷却トラップ部60の内部の空間61より第2の流路56を介し排出部53より排出される。
【0053】
尚、本実施の形態におけるトラップ装置では、図5(a)及び図6に示すバイパス状態と、図5(b)及び図7に示すトラップ状態とにおいて、トラップ装置の外観形状が変化することがなく、また、切り換えのためのバルブ等を必要としないため、小型で、低コストなものとなる。
【0054】
ところで、ポリイミドを成膜する際においては、チャンバー11内に供給される気化した状態のPMDA及びODAの供給量が少ないため、真空ポンプ70により排気される気流の量は極めて少ない。よって、冷却トラップ部60の内部の空間61に排気される気流が流入しても、空間61の底面部63に堆積している堆積物64を巻き上げてしまうことはない。よって、堆積物64が排気される気流に混入し排気されることはないため、堆積物64が真空ポンプ70内に入り込むことはない。
【0055】
このように、第2のトラップ50では、バイパス部51における回転部54の回転を制御することにより、排気される気流をバイパス部51の内部の空間57に流しバイパスさせる場合と、冷却トラップ部60の内部の空間61に流入させ気化した状態のPMDA及びODAを除去する場合とに切り替えることができる。よって、本実施の形態のトラップ装置である第2のトラップ50は、小型で、かつ、低コストで、トラップ機能とバイパス機能との切り替えを行うことができる。尚、この切り替えは、手動で行ってもよく、また、コントローラ80等の制御により行ってもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、第2のトラップ50の冷却トラップ部60は、排気される気流に存在する気化した状態のPMDA及びODAを凝固させて排除するものであるため、冷却トラップ部60は、冷却部62により120℃以下となるようにコントローラ80により制御されている。
【0057】
また、第2のトラップ50の冷却トラップ部60の内部の空間62内を流れる気流の速度は、底面部64の内側に堆積している凝固したPMDA及びODAが、上昇する気流により巻き上げられないように、真空ポンプ80の排気速度が設定される。また、第2のトラップ50では、吸入部52より第1の流路55を介し、上から下方向に気流が空間62に流入し、また、空間62より第2の流路56を介し、下から上方向に気流が流れ排出口53へと排気される。よって、第2の流路56を流れる気流の方向は、重力方向とは反対方向であるため、排気される気流に、凝固したPMDA及びODAが混入することをできるだけ防ぐことができる。
【0058】
更に、第2のトラップ50の冷却トラップ部60の外壁には、不図示の異物取り出し部が設けられており、堆積したPMDA及びODAは、この異物取り出し部より取り出すことが可能であり、メンテナンス等を容易に行うことができる。
【0059】
また、第2のトラップ50における回転部54による回転制御、冷却部62に流れる冷媒の温度や流量等については、不図示のコンピュータで動作する制御プログラムにより制御することも可能である。また、この制御プログラムは、コンピュータにより読み取ることが可能な記憶媒体に記憶させておくことも可能である。
【0060】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態におけるトラップ装置とは異なる構造のトラップ装置であり、第1の実施の形態における基板処理装置における第2のトラップとして用いることができるものである。
【0061】
次に、図8から図10に基づき、本実施の形態におけるトラップ装置である第2のトラップ150について説明する。第2のトラップ150は、円筒状の外部筐体部151と外部筐体部151の内部に設けられた円筒状の内部回転部160を有している。図8は、第2のトラップ150の機能の説明図であり、図9は、第2のトラップ150をバイパス状態にした場合の内部の構造を示すものであり、図10は、第2のトラップ150をトラップ状態にした場合の内部の構造を示すものである。
【0062】
第2のトラッ150では、外部筐体部151の側面には吸入口152が設けられており、外部筐体部151の底面には排出口153が設けられている。本実施の形態における第2のトラップ150の吸入口152は、第1の実施の形態における第1のトラップ30の排出口34と接続されており、排出口153は第1の実施の形態における真空ポンプ70と接続されている。
【0063】
内部回転部160は外部筐体部151の内部において回転する構造のものであり、内部回転部160の内部には、空間161と筒状の流路162が設けられている。また、内部回転部160には、内部回転部160の外部と内部回転部160の内部の空間161とを接続するため開口部163が設けられている。よって、本実施の形態におけるトラップ装置である第2のトラップ150では、内部回転部160を回転させることにより、外部筐体部151における吸入口152の位置と内部回転部160における開口部163の位置とを一致させるか否かの制御を行うことができる。これにより、排気される気流を内部回転部160の内部の空間161に流入させるか否かの制御を行うことができる。尚、内部回転部160の内部の空間161は、不図示の冷却部により、気流に含まれるPMDA及びODAが凝固する温度となるように冷却されている。
【0064】
具体的には、図8(a)及び図9に示すように、外部筐体部151の吸入口152の位置と内部回転部160の開口部163との位置が一致していない状態の場合では、吸入口152より流入した気流は、内部回転部160の内部の空間161に流入することなく、外部筐体部151と内部回転部160との間、即ち、外部筐体部151の内部であって、内部回転部160の外部を矢印に示すように流れ、排出口153より排出される。尚、外部筐体部151は不図示の加熱部等により加熱されているため、吸入口152より流入した気流に含まれる気化した物質は凝固することなく、排出口153より排出される。
【0065】
次に、図8(b)及び図10に示すように、内部回転部160を回転させて、外部筐体部151の吸入口152の位置と内部回転部160の開口部163との位置とが一致している状態の場合では、吸入口152より流入した気流は、内部回転部160の内部の空間161に流入する。内部回転部160の内部の空間161に流入した気流は、流路162における上部開口部164に向かって上昇し、この後、流路162内を流れ、下部開口部165より、内部回転部160の外側に排出される。内部回転部160の外側に排出された気流は、この後、排出口153より外部筐体部151の外に排出される。
【0066】
ここで、内部回転部160の内部の空間161は、上述したとおり、不図示の冷却部により冷却されており、空間161内に流入した気流に含まれる気化したPMDA及びODAは凝固し、重力の影響により落下し、空間161の底面部166に不図示の堆積物として堆積する。
【0067】
このように、本実施の形態における第2のトラップ150では、内部回転部160を回転させる制御を行うことにより、排気される気流に含まれる気化した状態のPMDA及びODAを冷却し重力沈降によりトラップするか否かの制御を行うことができる。即ち、排気される気流をバイパスする場合と、内部回転部160の内部の空間161に流入させ気化した状態のPMDA及びODAを除去する場合とに切り替えることができる。よって、本実施の形態におけるトラップ装置である第2のトラップ150では、小型で、かつ、低コストで、トラップ機能とバイパス機能との切り替えを行うことができる。
【0068】
尚、図9及び図10に示されるように、第2のトラップ150は、外部筐体部151の外に設けられた不図示の回転レバーにより手動により内部回転部160を回転させることができるものであるが、不図示のモータ等を設け、このモータ等をコントローラ等により制御することにより自動で回転させることも可能である。
【0069】
尚、上述した内容以外については、第1の実施の形態と同様である。
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態におけるトラップ装置とは異なる構造のトラップ装置であり、第1の実施の形態における基板処理装置における第2のトラップとして用いることができるものである。
【0070】
次に、図11に基づき、本実施の形態におけるトラップ装置である第2のトラップ250について説明する。第2のトラップ250は、上段におけるバイパス部251と下段の冷却トラップ部260を有しており、バイパス部251は冷却トラップ部260に対しスライドして移動させることができるものである。図11は、第2のトラップ250の機能の説明図である。
【0071】
第2のトラップ250の上部の面には、吸入口252及び排出口253が設けられており、本実施の形態における第2のトラップ250の吸入口252は、第1の実施の形態における第1のトラップ30の排出口34と接続されており、排出口253は第1の実施の形態における真空ポンプ70と接続されている。
【0072】
第2のトラップ250の上段部におけるバイパス部251は、スライド部254が設けられており、スライド部254には冷却トラップ部260内と接続するための第1の流路255及び第2の流路256が設けられている。尚、バイパス部251において、第1の流路255及び第2の流路256が設けられている領域以外には空間257が形成されている。
【0073】
また、冷却トラップ部260の内部には、空間261が設けられており、バイパス部251におけるスライド部254が相対的にスライドすることにより、第1の流路255及び第2の流路256を介し吸入口252及び排出口253と接続される。
【0074】
尚、バイパス部251には不図示の加熱部が設けられており、バイパス部251の全体が加熱されており、また、冷却トラップ部260には不図示の冷却部が設けられており、冷却トラップ部260の内部の空間261全体が冷却されている。
【0075】
本実施の形態における第2のトラップ250では、バイパス部251におけるスライド部254をスライドさせ、第1の流路255及び第2の流路256を吸入口252及び排出口253と接続さるか否かにより、冷却トラップ部260の内部の空間261に排気される気流を流入させるか否かの制御を行うことが可能である。
【0076】
具体的には、図11(a)に示すように、第1の流路255及び第2の流路256と吸入口252及び排出口253とが接続されていない状態とした場合では、吸入口252より流入した気流は、バイパス部251の内部の空間257内に流入し、その後、排出口253より排出される。バイパス部251は不図示の加熱部により加熱されているため、バイパス部251の内部の空間257内に流入したガスに含まれる気化した物質が凝固することなく、吸入口252より流入したガスは、そのまま排出口253より排出される。
【0077】
次に、図11(b)に示すように、バイパス部251におけるスライド部254をスライドさせて、第1の流路255及び第2の流路256と吸入口252及び排出口253とを接続させた状態の場合では、吸入口252より流入した気流は、第1の流路255を介し、冷却トラップ部260の内部の空間261内に流入し、その後、第2の流路256を介し排出口253より排出される。冷却トラップ部260には、不図示の冷却部が設けられており、冷却トラップ部260の内部の空間261の全体が冷却されており、空間261内に流入した気流に含まれる気化した状態のPMDA及びODAは凝固し、重力の影響により落下し、冷却トラップ部260の内部の空間261の底面部262に堆積物263として堆積する。
【0078】
尚、上述した内容以外については、第1の実施の形態と同様である。
【0079】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0080】
11 チャンバー
12 ウエハボート
13 インジェクター
14 インジェクター
15 排気口
16 回転部
17 ヒーター
21 PMDA気化器
22 ODA気化器
23 バルブ
24 バルブ
25 導入部
30 第1のトラップ
50 第2のトラップ
51 バイパス部
52 吸入口
53 排出口
54 回転部
55 第1の流路
56 第2の流路
57 空間(第1の空間)
58 加熱部
60 冷却トラップ部
61 空間(第2の空間)
62 冷却部
63 底面部
64 堆積物
70 真空ポンプ
80 コントローラ
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するためのガスを導入するためのガス供給部が接続されているチャンバーと、前記チャンバー内のガスを排気するための排気部との間に設けられたトラップ装置であって、
前記チャンバーと接続される吸入口と、
前記排気部と接続される排出口と、
第1の流路と、第2の流路と、前記第1の流路及び前記第2の流路の形成されていない領域に設けられた第1の空間とを有するバイパス部と、
前記第1の流路及び前記第2の流路と接続されており、前記ガスに含まれる未反応成分を冷却して凝固させて除去する第2の空間を有する冷却トラップ部と、
を有し、
前記吸入口及び前記排出口と前記第1の流路及び前記第2の流路とが接続されていない第1の状態では前記第1の空間を介し流れ、前記吸入口及び前記排出口と前記第1の流路及び前記第2の流路とが接続されている第2の状態では前記ガスは前記第2の空間を介し流れるものであって、
前記冷却トラップ部に対し前記第1の流路及び前記第2の流路を相対的に移動させることにより、前記第1の状態と前記第2の状態とに切り替えることができることを特徴とするトラップ装置。
【請求項2】
前記チャンバー内を大気の状態より排気する場合には、前記第1の状態とし、
前記チャンバー内に前記ガスを導入している場合には、前記第2の状態とすることを特徴とする請求項1に記載のトラップ装置。
【請求項3】
前記バイパス部には回転可能な回転部が設けられており、
前記第1の流路及び前記第2の流路は前記回転部に設けられているものであって、
前記第1の状態と前記第2の状態との切換えは、前記回転部を回転させることにより行うものであることを特徴とする請求項1または2に記載のトラップ装置。
【請求項4】
前記バイパス部、前記冷却トラップ部の順に、重力の働く方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のトラップ装置。
【請求項5】
前記バイパス部は、前記ガスに含まれる未反応成分が凝固する温度よりも高い温度に設定されており、
前記冷却トラップ部は、前記ガスに含まれる未反応成分が凝固する温度よりも低い温度に設定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のトラップ装置。
【請求項6】
前記ガスは、少なくともPMDAまたはODAのいずれかを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のトラップ装置。
【請求項7】
前記冷却トラップ部の温度は、120℃以下に設定されていることを特徴とする請求項6に記載のトラップ装置。
【請求項8】
基板を処理するためのチャンバーと、
前記チャンバー内にガスを導入するためのガス供給部と、
前記チャンバー内のガスを排気するための排気部と、
を有し、前記チャンバーと前記排気部との間に、請求項1から7のいずれかに記載のトラップ装置を配置したことを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
前記排気部と、前記トラップ装置と間には、他のトラップが設けられており、
前記他のトラップは、前記ガスに含まれる未反応成分を反応させてポリマーを形成することにより除去するものであることを特徴とする請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記他のトラップの温度は140〜200℃に設定されていることを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−15196(P2012−15196A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148013(P2010−148013)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】