説明

トラネキサム酸含有顆粒剤

【課題】口腔内で速やかに溶解しながらも、包剤中での保形性に優れた顆粒剤を提供すること
【解決手段】単糖、膨潤率30%以下の水膨潤性物質、及びトラネキサム酸を含有する顆粒剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラネキサム酸を含有する顆粒剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扁桃腺等における炎症に対しては、トラネキサム酸、グリチルリチン酸、リゾチーム、セラペプターゼ、ブロメライン、プロナーゼ又はこれらの塩類(カリウム塩、塩酸塩等)等の抗炎症剤が広く使用されている。
【0003】
これらの多くは、主として内服、注射等で投与されている。しかし、トラネキサム酸等は苦味等の不快な味を有しており、経口にて服用する際にはその不快な味をマスキングする必要がある。
【0004】
そこで、このような不快な味をマスキングする方法として、D−ソルビトール、キシリトール等を配合したトローチ剤(特許文献1)、還元麦芽糖水アメ及びスクラロースを配合した経口液剤(特許文献2)、糖アルコールを含有する固形製剤(引用文献3)のような技術が知られている。そして、このような技術を基に、カプセル剤、糖衣錠、フィルムコーティング錠等の剤形とした、トラネキサム酸等の抗炎症剤を有効成分とする市販薬が販売されている。
【0005】
また、トラネキサム酸を有効成分とする顆粒剤、散剤等において、その不快な味をマスキングする技術としては、溶解熱が−20cal/g以下の糖アルコールと、弱アルカリ性の無機化合物を配合する技術が知られている(特許文献4)。しかし、このような技術を用いて製造した顆粒剤は、口腔内での溶解性が悪く、経口による服用後にザラツキ感が残る。
【0006】
そして、顆粒剤そのものが壊れやすく、包剤中にて顆粒剤が微粉化してしまい、そのまま経口にて服用すれば、気管に侵入してしまう可能性があるという点で、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−72860号公報
【特許文献2】特開2009−114142号公報
【特許文献3】特開2008−266270号公報
【特許文献4】国際公開第1999/16470号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、微粉化が起こらず、且つ口腔内で速やかに溶解する、抗炎症剤を有効成分とする顆粒剤は未だ開発されていない。そこで、口腔内で速やかに溶解しながらも、包剤中での保形性に優れた顆粒剤を提供することが、本発明の主な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、トラネキサム酸を、単糖と所定の膨潤率を有する水膨潤性物質とともに造粒し、顆粒剤とすることで、顆粒剤自体の保形性を十分に有しながらも、口腔内での溶解性に優れた作用を示すことを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成されたものであり、下記の態様を広く包含するものである。
【0010】
項1 単糖、膨潤率30%以下の水膨潤性物質、及びトラネキサム酸を含有する顆粒剤。
さらに、以下の(項1−1)〜(項1−4)に記載した態様の発明も例示される。
(項1−1) 単糖、膨潤率30%以下の水膨潤性物質、及びトラネキサム酸を含有する口腔内速溶性顆粒剤。
(項1−2) 単糖、膨潤率30%以下の水膨潤性物質、及びトラネキサム酸を含有する口腔内易溶性顆粒剤。
(項1−3) 単糖、膨潤率30%以下の水膨潤性物質、及びトラネキサム酸を含有する口腔内瞬溶性顆粒剤。
(項1−4) 単糖、膨潤率30%以下の水膨潤性物質、及びトラネキサム酸を含有する水なし服用顆粒剤。
【0011】
項2 水膨潤性物質の膨潤率が、25%以下である上記1に記載の顆粒剤
【0012】
項3 単糖が糖アルコールである上記項1又は2に記載の顆粒剤。
さらに、以下の(項3−1)〜(項3−3)に記載した態様の発明も例示される。
(項3−1) 単糖がアルジトールである上記項1又は2に記載の顆粒剤。
(項3−2) 単糖がエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、及びキシリトールからなる群より選択される、少なくとも一種である上記項1又は2に記載の顆粒剤。
(項3−3) 単糖がエリスリトール及びマンニトールからなる群より選択される、少なくとも一種である上記項1又は2に記載の顆粒剤。
【0013】
項4 トラネキサム酸1重量部に対して単糖が0.5〜10重量部である、上記項1〜3のいずれか一項に記載の顆粒剤。
さらに、以下の(項4−1)〜(項4−4)に記載した態様の発明も例示される。
(項4−1)トラネキサム酸1重量部に対して単糖が1〜8重量部である、上記項1〜3のいずれか一項に記載の顆粒剤。
(項4−2)トラネキサム酸1重量部に対して単糖が1〜6重量部である、上記項1〜3のいずれか一項に記載の顆粒剤。
(項4−3)トラネキサム酸1重量部に対して単糖が1.5〜3重量部である、上記項1〜3のいずれか一項に記載の顆粒剤。
(項4−4)トラネキサム酸1重量部に対して単糖が2〜3重量部である、上記項1〜3のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【0014】
項5 トラネキサム酸1重量部に対して膨潤率30%以下の水膨潤性物質が0.2〜3重量部である、上記項1〜4のいずれか一項に記載の顆粒剤。
さらに、以下の(項5−1)〜(項5−3)に記載した態様の発明も例示される。
(項5−1)トラネキサム酸1重量部に対して膨潤率30%以下の水膨潤性物質が0.3〜2重量部である、上記項1〜4のいずれか一項に記載の顆粒剤。
(項5−2)トラネキサム酸1重量部に対して膨潤率30%以下の水膨潤性物質が0.3〜1.7重量部である、上記項1〜4のいずれか一項に記載の顆粒剤。
(項5−3)トラネキサム酸1重量部に対して膨潤率30%以下の水膨潤性物質が0.3〜0.7重量部である、上記項1〜4のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【0015】
項6 単糖1重量部に対して、膨潤率30%以下の水膨潤性物質が0.02〜1重量部である、上記項1〜5のいずれか一項に記載の顆粒剤。
さらに、以下の(項6−1)〜(項6−3)に記載する態様の発明も例示される。
(項6−1)単糖1重量部に対して、膨潤率30%以下の水膨潤性物質が0.1〜0.4重量部である、上記項1〜5のいずれか一項に記載の顆粒剤。
(項6−2)単糖1重量部に対して、膨潤率30%以下の水膨潤性物質が0.15〜0.4重量部である、上記項1〜5のいずれか一項に記載の顆粒剤。
(項6−3)単糖1重量部に対して、膨潤率30%以下の水膨潤性物質が0.15〜0.35重量部である、上記項1〜5のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【0016】
項7 顆粒剤100重量部に対して、トラネキサム酸が5〜60重量部含まれる、上記項1〜6のいずれか1項に記載の顆粒剤。
さらに、以下の(項7−1)〜(項7−2)に記載する態様の発明も例示される。
(項7−1)顆粒剤100重量部に対して、トラネキサム酸が10〜45重量部含まれる、上記項1〜6のいずれか1項に記載の顆粒剤。
(項7−2)顆粒剤100重量部に対して、トラネキサム酸が13〜35重量部含まれる、上記項1〜6のいずれか1項に記載の顆粒剤。
【0017】
項8 膨潤率30%以下の水膨潤性物質が、デンプン、加工デンプン、又は加水分解化デンプンからなる群より選択される、少なくとも一種である上記項1〜7のいずれか一項に記載の顆粒剤。
さらに、以下の(項8−1)〜(項8−3)に記載した態様の発明も例示される。
(項8−1)膨潤率30%以下の水膨潤性物質が、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、タピオカデンプン、部分アルファー化デンプン、デキストリン、コポリビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(置換度タイプ2906)、及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも一種である、上記項1〜7のいずれか一項に記載の顆粒剤。
(項8−2)膨潤率が30%以下の水膨潤性物質が、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン、及びデキストリンからなる群より選択される少なくとも一種である、上記項1〜7のいずれか一項に記載の顆粒剤。
(項8−3)膨潤率が30%以下の水膨潤性物質が、トウモロコシデンプン、及び部分アルファー化デンプンからなる群より選択される少なくとも一種である、上記項1〜7のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明の顆粒剤は、顆粒剤自体の保形性を十分に有しながらも、口腔内で速やかに溶解するといった、優れた口腔内溶解性を示す。
【0019】
本発明の顆粒剤は、口腔内での溶解性に優れるので、経口による服用後にざらつき感を生じない。そして、服用時に義歯等の隙間に不溶顆粒が入り込むことによる疼痛の発生を抑えることも可能である。
【0020】
本発明の顆粒剤は、十分な保形性を有するので、包材中で顆粒が壊れて微粉化しにくく、経口にて服用しても、気管に侵入する恐れが少ない。
【0021】
本発明の顆粒剤は、口腔内の唾液等の体液で十分に、且つ速やかに溶解されるため、服用時に水を必要としない顆粒剤として有用である。
【0022】
本発明の顆粒剤は、経口で服用しても、唾液等の体液で十分に、且つ速やかに溶解するので、口腔内、扁桃腺、食道等といった消化器官における抗炎症や止血作用が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の顆粒剤は、単糖、膨潤率30%以下の水膨潤性物質、及びトラネキサム酸を含有する。
【0024】
本発明の顆粒剤に用いるトラネキサム酸は、trans-4-(aminomethyl)cyclohexane-1-carboxylic acidであり、第15改正日本薬局方に記載された化合物である。
【0025】
本発明の顆粒剤に用いる単糖とは、糖質のなかでも加水分解によってそれ以上簡単な分子にならない基本的物質で、オリゴ糖、多糖等の構成単位となるものである。具体的には、アルドース、ケトース、ピラノース、フラノース、糖アルコール等が挙げられる。このような単糖の中でも、アルドース、糖アルコール等が好ましい。特に、糖アルコールの中でも、アルドースが還元されることによって生じるアルジトールが好ましい。
【0026】
単糖の炭素数は特に限定されることはなく、通常は三〜九炭糖の単糖とすればよく、中でも四炭糖〜六炭糖が好ましい。
【0027】
単糖は、α体であっても、β体であってもよい。さらに、D体、又は、L体の限定もされず、(+)体、又は(−)体と定義する場合であっても同様に限定はされない。当然、ラセミ体であってもよい。
【0028】
単糖の具体例として、グリセルアルデヒド、エリスロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース等のアルドース;ソルボース、フルクトース等のケトース;グリセリン、エリスリトール、トレイトール、リビトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、イジトール、アリトール、アルトリトール等の糖アルコール等が挙げられる。
【0029】
上述のアルドースの中でもグルコース、ガラクトース等が、本発明の顆粒剤に配合する単糖として好ましい。
【0030】
上述の糖アルコールの中でもエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等が、本発明の顆粒剤に配合する単糖として好ましい。より好ましくは、エリスリトール、マンニトール等である。
【0031】
上述の単糖は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、マルチトール、マルトース、ラクトース、セルロース等のオリゴ糖、多糖等と併用してもよい。オリゴ糖、多糖を併用する場合は、得られる顆粒剤の口腔内溶解性及び保形性の点から、単糖1重量部に対して、オリゴ糖及び多糖の合計が1重量部未満あることが好ましい。より好ましくは0.7重量部以下であり、さらに好ましくは0.5重量部以下である。
【0032】
本発明の顆粒剤に用いる水膨潤性物質は、膨潤率が30%以下の物質である。より好ましくは、膨潤率が25%以下の物質である。
【0033】
膨潤率とは、物質が水を吸収した際、その物質の体積の膨張度合いを示すものである。具体的には下記の試験例3にて詳述する方法を用いて算出される数値である。
【0034】
本発明において、水膨潤性物質は、膨潤率が30%以下でありさえすれば、保形性及び口腔内溶解性に優れる顆粒剤を得ることができるため、その下限値は、特に限定されないが、通常は3%程度とすればよい。得られる顆粒剤の保形性及び口腔内溶解性の点から、好ましくは5%程度、より好ましくは8%程度である。
【0035】
膨潤率が30%以下の水膨潤性物質として、デンプン、加工デンプン、又は加水分解化デンプン等が例示される。具体的には、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、タピオカデンプン、部分アルファー化デンプン、デキストリン等が挙げられる。また、コポリビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(置換度タイプ2906)、ポリビニルピロリドン等を使用することもできる。
【0036】
中でも、得られる顆粒剤の口腔内溶解性の点から、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン、デキストリン等が、本発明の顆粒剤に配合する膨潤率30%以下の水膨潤性物質として好ましく、更に好ましくは、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン等である。
【0037】
上述の膨潤率30%以下の水膨潤性物質は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また膨潤率30%を超える水膨潤性物質を配合してもよい。このとき配合する膨潤率30%を超える水膨潤性物質は、膨潤率30%超50%以下の水膨潤性物質が好ましく、膨潤率30%超40%以下の水膨潤性物質がより好ましい。膨潤率30%超40%以下の水膨潤性物質の具体例としては、例えば、カルメロース、カルメロースナトリウム、クロスポリビニルピロリドン、結晶セルロース、ヒプロメロース(置換度タイプ2208)、ヒプロメロース(置換度タイプ2910)、メチルセルロース等が挙げられる。
【0038】
膨潤率30%を超える水膨潤性物質を、膨潤率が30%以下の水膨潤性物質と併用する場合、得られる顆粒剤の口腔内溶解性の点から、本発明においては、水膨潤性物質の重量平均膨潤率が30%以下となるように配合する。
【0039】
本発明において「重量平均膨潤率」とは、2種類以上の水膨潤性物質が配合されている場合において、それぞれの水膨潤性物質が有する膨張率の加重平均にて算出される数値である。また、顆粒剤に配合されるそれぞれの水膨潤性物質が有する膨潤率を、水膨潤性物質として占める割合に従って乗じて得られる数値を、全て加算した数値としても算出される。
【0040】
例えば、膨潤率15%の水膨潤性物質を10重量部と、膨潤率35%の水膨潤性物質を5重量部配合する場合、(15%×10重量部+35%×5重量部)/(10重量部+5重量部)≒21.7%として算出される。
【0041】
本明細書において、2種類以上の水膨潤性物質を含んでいる場合でも、その重量平均膨潤率が30%以下である場合、当該2種類以上の水膨潤性物質をまとめて、単に「膨潤率30%以下の水膨潤性物質」という。
【0042】
本発明の顆粒剤においては、得られる顆粒剤の口腔内溶解性の点から、膨潤率30%以下の水膨潤性物質1重量部に対して、膨潤率30%を超える水膨潤性物質が1重量部未満であることが好ましい。より好ましくは0.5重量部以下であり、さらに好ましくは0.3重量部以下である。
【0043】
本発明の顆粒剤に配合するトラネキサム酸と単糖の割合は、特に限定されないが、トラネキサム酸1重量部に対して、単糖が通常は0.5〜10重量部程度とすればよい。好ましくは1〜8重量部程度であり、より好ましくは、1〜6重量部程度であり、さらに好ましくは1.5〜3重量部程度であり、2〜3重量部程度が最も好ましい。
【0044】
本発明の顆粒剤に配合するトラネキサム酸と膨潤率30%以下の水膨潤性物質の割合は、特に限定されないが、トラネキサム酸1重量部に対して、水膨潤性物質が通常は0.2〜3重量部程度とすればよい。より好ましくは、0.3〜2重量部程度である。さらに好ましくは0.3〜1.7重量部程度であり、最も好ましくは0.3〜0.7重量部である。
【0045】
本発明の顆粒剤に配合する単糖と膨潤率30%以下の水膨潤性物質の割合は、特に限定されないが、単糖1重量部に対して、通常は、0.02〜1重量部程度である。好ましくは水膨潤性物質を0.1〜0.4重量部、より好ましくは0.15〜0.4重量部、さらに好ましくは0.15〜0.35重量部とすることで、得られる顆粒剤の口腔内溶解性及び保形性をより高めることができる。
【0046】
本発明の顆粒剤に配合するトラネキサム酸の量は、特に限定されないが、通常は顆粒剤100重量部に対して、5〜60重量部すればよく、好ましくは10〜45重量部程度である。より好ましくは、13〜35重量部程度である。
【0047】
本発明の顆粒剤には、上述した単糖、膨潤率30%以下の水膨潤性物質、及びトラネキサム酸以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、薬学的に許容される他の抗炎症剤、解熱鎮痛消炎剤、ビタミン類等を配合することができる。
【0048】
他の抗炎症剤としては、例えば、トラネキサム酸、グリチルリチン酸、リゾチーム、セラペプターゼ、ブロメライン、プロナーゼ又はこれらの塩類(カリウム塩、塩酸塩等)等が挙げられる。
【0049】
解熱鎮痛消炎剤としては、例えば、アセトアミノフェン、フェナセチン等のアニリン誘導体;サリチル酸メチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ナトリウム、アスピリン、アスピリンアルミニウム、エテンザミド、サザピリン等のサリチル酸誘導体;イソプロピルアンチピリン、スルピリン、フェニルブタゾン、ケトフェニルブタゾン、クロフェゾン、アンチピリン、アミノピリン等のピラゾロン誘導体;イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ロキソプロフェンナトリウム、フルルビプロフェン、オキサシプロジン、フェノプロフェンカルシウム、チアプロフェン酸、プラノプロフェン、アルミノプロフェン等のプロピオン酸誘導体;フェンブフェン、ジクロフェナクナトリウム、アンフェナクナトリウム、アルクロフェナック、メチアジン酸等のフェニル酢酸誘導体;ジクロフェナクナトリウム、インドメタシン、インドメタシンファルネシル、スリンダク等のインドール酢酸誘導体;メフェナム酸、フルフェナム酸、フロクタフェニン、トルフェナム酸等のアントラニル酸誘導体;ピロキシカム、アンピロキシカム、テノキシカム、メロキシカム、ロルノキシカム等のオキシカム誘導体;塩酸ベンジダミン、エピリゾール(メピリゾール)、塩酸チアラミド、塩酸チノリジン、ブコローム、エモルファゾン等の非酸性(中性、塩基性)解熱鎮痛消炎剤;セレコキシブ、ロフェコキシブ等のCOX−2選択的阻害薬;等が挙げられる。
【0050】
ビタミン類としては、チアミン、チアミン塩化物塩酸塩、チアミン硝化物、ジセチアミン塩酸塩、セトチアミン塩酸塩、フルスルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩、オクトチアミン、シコチアミン、チアミンジスルフィド、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステル、リボフラビン酪酸エステル、リン酸リボフラビンナトリウム、パンテノール、パンテチン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサールリン酸エステル、シアノコバラミン、メコバラミン、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、ヘスペリジン等が挙げられる。
【0051】
また、本発明の顆粒剤には、賦形剤、滑沢剤、着色剤、酸化防止剤(抗酸化剤)、崩壊剤、増量剤、清涼化剤、基剤、吸着剤、芳香剤、崩壊補助剤、コーティング剤、湿潤剤、消泡剤、光沢化剤、矯味剤、懸濁剤、防湿剤、防腐剤、保存剤、溶剤、溶解剤、共力剤、誘引剤、可溶剤、軟化剤、乳化剤、粘着剤、粘稠剤、発泡剤、分散剤、糖衣剤、pH調節剤、安定剤、界面活性剤、可塑剤及び緩衝剤等の担体や添加剤等の成分を、組成物の形態並びに目的に応じて、加えることが可能である。
【0052】
本発明の顆粒剤は、公知の造粒方法によって製造することができ、特に限定はされないが、湿式造粒によって製造することが好ましい。湿式造粒とは、水及び/又は低級アルコール(エタノール等)を造粒成分の混合物に添加、噴霧又は散布することによって、水等の付着力を利用して造粒する方法である。また、本発明においては、水、含水エタノール等、水を含有する溶媒を用いて造粒することで、優れた顆粒剤とすることができるため好ましい。
【0053】
このような湿式造粒では、押出造粒法、撹拌造粒法、流動層造粒法、練合造粒法、転動造粒法等のような公知の方法を適用すればよい。
【0054】
造粒後は適宜乾燥処理に供してもよい。具体的な乾燥方法は特に限定されず、公知の方法を用いればよいが、例えば、熱風乾燥法(流動層乾燥法、棚式乾燥法等)、凍結乾燥法、天日乾燥法等が挙げられる。熱風乾燥法を採用するのであれば、通常は50〜80℃程度で、1〜24時間程度の乾燥処理に供すればよい。
【0055】
また、必要に応じて、所定のサイズのスクリーンを用いて篩過、分級を行えばよい。具体的には、75μm、200μm、355μm等のオン、500μm、850μm、1000μm等のパスのスクリーンを用いることにより、粒径75〜1000μm、好ましくは200〜1000μm、さらに好ましくは355〜850μmの顆粒剤を調整することができる。なお、粒径は第15改正日本薬局方の顆粒剤の欄に記載される粒度の測定方法に従って測定すればよい。
【0056】
従来公知の方法で顆粒剤を作製すると、口腔内で溶けず、口腔粘膜を傷つけるおそれがあったため、顆粒を水とともに流し込む必要があった。しかし、上述の方法によって得られた本発明の顆粒剤は、経口にて服用した際に、口腔内で速やかに溶解し、本発明において口腔内溶解性として評価される。このような溶解性は速溶性と説明される。また、口腔内にて容易に溶解するために易溶性とも説明され、瞬時に溶解することから瞬溶性とも表現される。
【0057】
本発明の顆粒剤が溶解する際の溶媒は、服用の際に用いる水である必要はなく、口腔内の唾液等の体液に対して容易に溶解する。即ち、本発明の顆粒剤は、チュアブル剤のように服用に必ずしも水を必要としない。水を必要としない顆粒剤は、「水なし服用顆粒剤」として当業界に認知されている。
【0058】
本発明の顆粒剤の用量は、特に限定はされないが、顆粒剤に含有されるトラネキサム酸に換算して、通常は25〜110mg/kg/日程度で服用すればよい。また、一日あたり、数回に分けて服用してもよい。
【0059】
本発明の顆粒剤は、ヒトに対して有用に使用される。また、本発明の顆粒剤は、口腔内での溶解性に優れるために、口腔内、食道、胃等の消化器官において、炎症、出血等を起こしているヒトに対して特に有用である。
【0060】
また本発明の顆粒剤は、水を必要とせずに経口にて服用することができるので、水分摂取制限がある透析患者に対しても簡便に使用することも可能である。
【実施例】
【0061】
以下に、本発明をより詳らかに説明するための実施例を記載する。従って、本発明は下記の実施例に限定されることがないのは言うまでもない。
【0062】
本発明の顆粒剤を評価する口腔内溶解性と、保形性の測定方法は次に示すとおりである。
<口腔内溶解性>
顆粒剤0.3gを水無しで口に含み口腔内での崩壊感及び溶解感を評価した。評価基準は、◎が「非常によい」、○が「よい」、△が「どちらともいえない」、そして×が「悪い」である
<保形性>
42メッシュ(355μm)オン30メッシュ(500μm)の篩にて分級した顆粒剤1gを遠沈管(外径19(φ)×118(L)mm(住友ベークライト株式会社))に入れ、卓上振動機(VORTEX GENIE-2 MODEL G-560(SCIENTIFIC INDUSTRIES INC製))にて目盛り5で30秒間の振動処理を施した。
【0063】
処理後の顆粒剤を、42メッシュ(355μm)オン30メッシュ(500μm)の篩にて篩過し、残留した顆粒剤の重量を測定し、その数値の、振動処理前の重量に対する割合を百分率にて表したものを保形率(%)とした。
【0064】
<試験例1>
表1に示す組成で、トラネキサム酸を含む顆粒剤を製造した。なお、表1にて記載する各成分の配合量は、重量部にて表したものである。本試験例では、湿式造粒法を採用して顆粒剤を製造した。具体的には、下記の表にて示すそれぞれの成分を秤量し、次いで30メッシュ(500μm)で篩過した後に混合し、乳鉢中において適量の水を用いて湿式造粒を行った。具体的には、乳鉢内で水を添加しながら練り合わせ、軽く握って崩れない程度になったら、30メッシュ(500μm)で篩過し、その後、70℃で1時間棚式乾燥した。得られた乾燥物を22メッシュ(710μm)で篩過することで調粒し、顆粒剤を得た。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例1に示すように、トラネキサム酸、単糖であるエリスリトール、及び水膨潤性物質である部分アルファー化デンプンを含有する顆粒剤が、口腔内溶解性、及び保形性に優れていることが明らかとなった。
【0067】
そして、比較例1に示すように、エリスリトール及び部分アルファー化デンプンを欠くと、口腔内溶解性も保形性も十分な顆粒剤は得られなかった。また、比較例2に示すようにエリスリトールを欠くと場合も同様であった。
【0068】
そして、比較例3の結果からは、トラネキサム酸を含まない組成の顆粒剤は、実施例1に示す顆粒剤と同等に優れた口腔内溶解性を有しているものの、保形性が大いに劣る結果となった。このことから、トラネキサム酸が、本発明の顆粒剤の保形性に重要な役割を果たしていることが判明した。
【0069】
<試験例2>
表2に示す組成で、トラネキサム酸を含む顆粒剤を製造した。具体的な製造方法は、試験例1と同様である。なお、表2にて記載する各成分の配合量も、重量部にて表したものである。
【0070】
【表2】

【0071】
実施例2〜7に示すように、単糖を配合した顆粒剤は、口腔内溶解性及び保形性において、優れた作用を示すことが明らかとなった。一方で、比較例4〜8に示すようなオリゴ糖を配合した顆粒剤は、口腔内溶解性も保形性も不十分な性能しか示さないことが明らかとなった。
【0072】
本発明の顆粒剤において、単糖はオリゴ糖よりも分子量が小さく、水分等への溶解速度が速いために、単糖を配合した顆粒剤のほうが、オリゴ糖を配合した顆粒剤よりも口腔内での溶解性に優れているものと考えられる。
【0073】
また単糖の中でも、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトールといったアルジトールを配合した顆粒剤では、保形性においてより優れた効果を示すことが明らかとなった。
【0074】
特に、エリスリトール、及びマンニトールを配合した顆粒剤では、十分な保形性を有しつつも、口腔内溶解性において最も優れた性質を示すことが判明した。
【0075】
<試験例3>
表3に示す組成で、トラネキサム酸を含む顆粒剤を製造した。具体的な製造方法は試験例1と同様である。なお、表3にて記載する各成分の配合量も、重量部にて表されるものである。
【0076】
水膨潤性物質として用いたトウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン、デキストリン、カルメロース、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びクロスカルメロースナトリウムの膨潤率は、特開2005−104844号公報に記載された方法によって測定した。具体的な測定方法を下記に示す。
【0077】
<水膨潤性物質の膨潤率測定方法>
サンプル瓶(直径35mm×高さ78mm)に、測定対象とする上記の水膨潤性物質の粉末8gを添加して開口部をパラフィルムで覆った。このサンプル瓶を、卓上振動機(VORTEXGENIE-2 MOEL G-560(SCIENTIFIC INDUSTRIES INC製))にて、目盛り8で30秒間の振動処理を施した。
【0078】
振動処理後、サンプル瓶の底面から中に封入された物質(粉末)の上面までの距離(これを「膨潤前の高さ」とする)を測定した。
【0079】
次に別のサンプル瓶に3mlの水、及び上記と同じ測定対象とする水膨潤性物質の粉末を8g添加して開口部をパラフィルムで覆い、次いで上記の振動処理条件と同じ条件で処理を施した。その後、サンプル瓶を、室温(20℃)で24時間放置し、サンプル瓶の底面から中に封入された物質(粉末)の上面までの距離(これを「膨潤後の高さ」とする)を測定した。上記の方法によって得られた測定値を基に、次の式にて膨潤率を算出した。
【0080】
膨潤率(%)=((「膨潤後の高さ」/「膨潤前の高さ」)−1)×100
【0081】
【表3】

【0082】
実施例2、8、9に示すように、水膨潤性物質の中でも、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン、デキストリンといった膨潤率が30%以下の成分を配合した顆粒剤は、口腔内溶解性にも保形性にも優れることが明らかとなった。
【0083】
一方で、膨潤率が30%を超える、カルメロース、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムといった成分を配合した顆粒剤は、保形性には優れているものの、すべてにおいて、十分満足し得る口腔内溶解性は得られなかった。
【0084】
顆粒剤に水膨潤性物質を加えることによって、保形性を付与することは可能であるが、顆粒剤に配合する水膨潤性物質の膨潤率が30%を超えてしまうと、口腔内の水分が水膨潤性物質に吸収されやすくなり、顆粒剤が溶解する前に口腔内の水分が枯渇してしまうことで口腔内溶解性に劣るものと考えられる。逆に、30%以下の膨潤率を有する水膨潤性物質を配合した顆粒剤であれば、口腔内の水分で十分に溶解させることができるので、口腔内溶解性に優れた顆粒剤になることが考えられる。
【0085】
<試験例4>
表4に示す組成で、トラネキサム酸を含む顆粒剤を製造した。具体的な製造方法は試験例1と同様である。なお、表4にて記載する各成分の配合量は、重量部にて表されるものである。
【0086】
【表4】

【0087】
実施例1、及び10〜14に示すように、トラネキサム酸に対して、単糖であるエリスリトールの量を多く配合した顆粒剤では、ある程度の保形性を有しながら、より口腔内溶解性に優れる傾向が確認された。
【0088】
<試験例5>
表5に示す組成で、トラネキサム酸を含む顆粒剤を製造した。具体的な製造方法は試験例1と同様である。なお、表5にて記載する各成分の配合量も、重量部にて表されるものである。
【0089】
【表5】

【0090】
顆粒剤に配合する部分アルファー化デンプンの量は、トラネキサム酸1重量部に対して、0.3〜0.5重量部程度とすることにより、口腔内溶解性がより優れる傾向となることが明らかとなった。
【0091】
<処方例>
表6〜10に示す組成で、トラネキサム酸を含む顆粒剤を製造した。具体的な製造方法は試験例1と同様である。表にて記載する各成分の配合量は、重量部にて表されるものである。得られた顆粒剤についても同様に口腔内溶解性及び保形性に優れた顆粒剤であった。
【0092】
【表6】

【0093】
【表7】

【0094】
【表8】

【0095】
【表9】

【0096】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糖、膨潤率30%以下の水膨潤性物質、及びトラネキサム酸を含有する顆粒剤。
【請求項2】
単糖が糖アルコールである請求項1に記載の顆粒剤。
【請求項3】
トラネキサム酸1重量部に対して単糖が0.5〜10重量部である、請求項1又は2に記載の顆粒剤。
【請求項4】
トラネキサム酸1重量部に対して膨潤率30%以下の水膨潤性物質が0.2〜3重量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の顆粒剤。

【公開番号】特開2012−211091(P2012−211091A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76306(P2011−76306)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】