説明

トラバース塗装工程の前処理方法およびトラバース塗装方法

【課題】 簡素な方法により、導電性ローラ等の基体部の表面への塗料の塗りむらや厚みの不均一を解消できるトラバース塗装工程の前処理方法を提供する。
【解決手段】 導電性ローラ1等の基体部の表面に塗料を塗布するトラバース塗装方法において、塗装工程の直前に前記ローラ1を回転させるとともに、プラズマ照射手段17によりプラズマを前記ローラ1の基体部表面に照射し、これらプラズマ照射手段17とローラ1とを軸方向に相対移動させて前記基体部の表面を改質することにより、比較的容易に作りだすことができるプラズマ状態の雰囲気中で、導電性ローラ1等の基体部表面が改質されて塗料の濡れ性が高まり、塗りむらや厚みの不均一性が解消される。その結果、塗料の密着性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真装置、静電記録装置等の画像形成装置に用い
られる導電性ローラ等を製造する技術に係り、特に、これらの導電性ローラ等の表面の高
品質化のために採用されるもので、導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの基体部
の表面に塗料を塗布するトラバース塗装工程の前処理方法およびトラバース塗装方法に関
する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置においては、潜像を保持した感光ド
ラム等にトナーを供給し、感光ドラムの潜像に該トナーを付着させて潜像を可視化する現
像方法として、加圧現像法が知られている。該加圧現像法においては、例えば、感光ドラ
ムを一定電位に帯電させた後、露光機により感光ドラム上に静電潜像を形成し、さらに、
トナーを担持した現像ローラを、静電潜像を保持した感光ドラムに接触させて、トナーを
感光ドラムの潜像に付着させる現像を行う。また、感光ドラムと現像ローラに一定の間隙
を設け、その間隙にトナーを電気的に飛翔させて現像を行う非接触現像法も提案されてい
る。
【0003】
また、上記感光ドラムの帯電には、従来コロナ放電方式が採用されていたが、コロナ放
電方式では、6〜10kVの高電圧を印加する必要があるため、装置の安全確認の観点か
ら好ましくはなく、さらに、コロナ放電中にオゾン等の有害物質が発生するため、環境面
からも好ましくなかった。これに対し、感光ドラムを帯電させる接触帯電方式が提案され
ている。
【0004】
上記加圧現像法における現像ローラ、ならびに上記接触帯電方式における帯電ローラは
、感光ドラムに密着した状態を確実に保持しながら回転しなければならないため、また、
非接触現像法における現像ローラにおいても、トナーに対するストレスを軽減するために
、金属等の良導電性材料からなるシャフトの外周に、シリコーンゴム、アクリロニトリル
−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エピク
ロロヒドリンゴム(ECO)、ポリウレタン等のエラストマーにカーボンブラックや金属
粉を分散させた半導電性の弾性体やこれらを発泡させた発泡体からなる半導電性弾性層を
形成した構造となっている。また、トナーに対する帯電性や付着性の制御、弾性層による
感光ドラムの汚染防止等を目的として、上記弾性層の表面に、さらに、樹脂被覆層を形成
する場合がある。
【0005】
さらに、上記現像ローラおよび帯電ローラに加えて、現像ローラにトナーを供給するた
めのトナー供給ローラ、感光ドラムの潜像に付着したトナーを記録媒体に転写するための
転写ローラ、転写後に感光ドラム上に残留するトナーを除去するためのクリーニングロー
ラ等にも、上記のようなシャフトの外周に半導電性弾性層を形成し、該弾性層の表面にさ
らに樹脂被覆層を形成した構造の導電性ローラが用いられている。
【0006】
一方、カラープリンターやカラー複写機においても、基本的には前記加圧現像法にした
がってプリントが行われるが、カラー印刷の場合には、マゼンタ、イエロー、シアン、ブ
ラックの4色のトナーを用いて色調を再現するもので、これらのトナーを所定割合で重ね
合わせて必要な色調を得るための工夫が必要であり、この工程を行うためにはいくつかの
方式が提案されている。
【0007】
4つの感光ドラムを設け、各ドラムの潜像をそれぞれマゼンタ、イエロー、シアン、ブ
ラックの4色のトナーで現像することにより、マゼンタによるトナー像、イエローによる
トナー像、シアンによるトナー像、ブラックによるトナー像の4つのトナー像を形成し、
これらトナー像が形成された感光ドラムを1列に並べて各トナー像を紙等の記録媒体に順
次転写して記録媒体上に重ねるとにより、カラー画像を再現するタンデム方式と、感光体
上のトナー像を一旦転写保持するドラムやベルトからなる中間転写部材を設け、この中間
転写部材の周囲にマゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナ
ー像、ブラックによるトナー像を形成した4つの感光体を配置して、4色のトナー像を中
間転写部材上に順次転写することにより、この中間転写部材上にカラー画像を形成し、こ
のカラー画像を紙等の記録媒体上に転写する中間転写方式がある。また、タンデム方式と
中間転写方式とを組み合わせたタンデム中間転写方式もある。これらの方式において、記
録媒体送り機能付与とトナー像形成のために無端状の導電性エンドレスベルトが用いられ
ているのは周知の通りである。
【0008】
これらのローラまたはベルト表面において、トナー離型性等の機能性を向上させるため
、基材層とは別に表層として樹脂被覆層を形成することが行われている。
【0009】
従来、上記導電性ローラや導電性エンドレスベルトにおいて、上記樹脂被覆層は、シャ
フトと弾性層とからなる導電性ローラ基材本体(基体部)または無端状の導電性エンドレ
スベルト基材本体を溶剤系もしくは水系の塗工液中にディップするか、または該塗工液を
導電性ローラ基材本体もしくは導電性エンドレスベルト基材本体にスプレーした後、熱も
しくは熱風で乾燥・硬化して形成される。導電性エンドレスベルトをディップ塗装するも
のとしては下記特許文献1に開示されたものがあり、導電性エンドレスベルトをスプレー
塗装するものとしては下記特許文献2に開示されたものがある。また、導電性ローラをデ
ィップ塗装するものとしては下記特許文献3に開示されたものがある。
【特許文献1】特開2001−42658号公報(段落0032参照)
【特許文献2】特開平11−15295号公報(段落0056参照)
【特許文献3】特開2003−76089公報(全文)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の塗装方法によって、均一な塗装を可能にするとともに
、塗装後の工程も簡素化されて生産効率が向上することとなったとしても、導電性ローラ
基体部が通常は合成樹脂等により構成されているために、導電性ローラ基体部自身の撥
によって塗料がはじかれてしまい、依然として、導電性ローラ基体部表面への塗料の塗
りむらの解消や塗膜の厚みの均一化が完全とは言えなかった。
【0011】
そこで本発明は、このような従来の塗装の諸課題を解決して、簡素な方法により、導電
性ローラ基体部の表面への塗料の塗りむらや厚みの不均一を解消できるトラバース塗装工
程の前処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため本発明は、回転する導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの基体部の表
面にこれら導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトと軸方向に相対移動する塗装装置
により塗料を塗布するトラバース塗装方法において、塗装工程の直前にプラズマ照射手段
によりプラズマを前記ローラの基体部表面に照射し、これらプラズマ照射手段とローラと
を軸方向に相対移動させて前記基体部の表面を改質することを特徴とする。また本発明は
、回転する導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの基体部の表面にこれら導電性ロ
ーラまたは導電性エンドレスベルトと軸方向に相対移動する塗装装置により塗料を塗布す
るトラバース塗装方法において、塗装工程の直前にコロナ放電手段により前記ローラの基
体部表面をコロナ放電処理し、これらコロナ放電手段とローラとを軸方向に相対移動させ
て前記基体部の表面を改質することを特徴とする。また本発明は、回転する導電性ローラ
または導電性エンドレスベルトの基体部の表面にこれら導電性ローラまたは導電性エンド
レスベルトと軸方向に相対移動する塗装装置により塗料を塗布するトラバース塗装方法に
おいて、塗装工程の直前に紫外線照射手段により前記ローラの基体部表面を紫外線照射処
理し、これら紫外線照射手段とローラとを軸方向に相対移動させて前記基体部の表面を改
質することを特徴とする。また本発明は、前記紫外線照射手段による前処理方法により改
質された基体部が塗装された導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトを逆戻りさせて
塗料が塗布された塗膜層を前記紫外線照射手段により硬化させて後処理することを特徴と
する。また本発明は、前記塗装装置に併設して塗装工程直前にプラズマ照射手段を設置し
たことを特徴とする。また本発明は、前記塗装装置に併設して塗装工程直前にコロナ放電
手段を設置したことを特徴とする。また本発明は、前記塗装装置に併設して紫外線照射手
段を設置したことを特徴とする。また本発明は、前記いずれかに記載の前処理方法により
改質された導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの基体部表面に紫外線硬化型樹脂
あるいは電子線硬化型樹脂からなる塗料をトラバース塗装により塗装することを特徴とす
る。また本発明は、前記トラバース塗装方法が、ロールコーター、ダイコーターあるいは
スプレーコーターによりなされることを特徴とするもので、これらを課題解決のための手
段とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転する導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの基体部の表面
にこれら導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトと軸方向に相対移動する塗装装置に
より塗料を塗布するトラバース塗装方法において、塗装工程の直前にプラズマ照射手段に
よりプラズマを前記ローラの基体部表面に照射し、これらプラズマ照射手段とローラとを
軸方向に相対移動させて前記基体部の表面を改質することにより、比較的容易に作りだす
ことができるプラズマ状態の雰囲気中で、導電性ローラ等(導電性エンドレスベルトも含
む。以下同じ)の基体部表面が改質されて塗料の濡れ性が高まり、塗りむらや厚みの不均
一性が解消される。その結果、塗料の密着性が向上して、長期運転時の塗膜層の剥離等の
不具合が解消できる。特に、塗装コーターとプラズマ照射手段を併置して、トラバース塗
装の特性を活かして塗装工程の簡略化に寄与できる。なお、大気圧プラズマを発生させて
照射することが望ましい。
【0014】
また、回転する導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの基体部の表面にこれら導
電性ローラまたは導電性エンドレスベルトと軸方向に相対移動する塗装装置により塗料を
塗布するトラバース塗装方法において、塗装工程の直前にコロナ放電手段により前記ロー
ラの基体部表面をコロナ放電処理し、これらコロナ放電手段とローラとを軸方向に相対移
動させて前記基体部の表面を改質することにより、導電性ローラ等の基体部表面が改質さ
れて塗料の濡れ性が高まり、塗りむらや厚みの不均一性が解消される。その結果、塗料の
密着性が向上して、長期運転時の塗膜層の剥離等の不具合が解消できる。また、コロナ放
電を用いれば、低電流で大気圧での表面処理が可能となる。
【0015】
また、回転する導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの基体部の表面にこれら導
電性ローラまたは導電性エンドレスベルトと軸方向に相対移動する塗装装置により塗料を
塗布するトラバース塗装方法において、塗装工程の直前に紫外線照射手段により前記ロー
ラの基体部表面を紫外線照射処理し、これら紫外線照射手段とローラとを軸方向に相対移
動させて前記基体部の表面を改質することにより、基体部に紫外線硬化樹脂を用いた場合
に、予備的に基体部表面が改質されているので、塗料との密着性を促進して、塗りむらや
厚みの不均一性が解消される。
【0016】
さらに、前記紫外線照射手段による前処理方法により改質された基体部が塗装された導
電性ローラまたは導電性エンドレスベルトを逆戻りさせて塗料が塗布された塗膜層を前記
紫外線照射手段により硬化させて後処理する場合は、前述のプラズマ照射手段やコロナ放
電手段に代えて、1つの紫外線照射手段を用いて、予備的に基体部表面を改質して塗料と
の密着性を促進して、塗りむらや厚みの不均一性が解消できるとともに、塗装後の塗料が
均一かつ効果的に硬化されて品質を向上させることができる。
【0017】
さらにまた、前記塗装装置に併設して塗装工程直前にプラズマ照射手段を設置した場合
は、トラバース塗装としての特徴を活かして、前述のプラズマ照射手段やコロナ放電手段
に代えて、1つの紫外線照射手段を塗装装置に併設するだけで、塗装に連続して前処理と
後処理を同時に行うことができて、作業工程が大幅に短縮されるとともに、構造が簡素化
される。
【0018】
また、前記塗装装置に併設して塗装工程直前にコロナ放電手段を設置した場合は、トラ
バース塗装としての特徴を活かして、塗装に先立って、連続して前処理を同時に行うこと
ができて、作業工程が大幅に短縮されるとともに、構造が簡素化される。同様に、前記塗
装装置に併設して紫外線照射手段を設置した場合は、トラバース塗装としての特徴を活か
して、塗装に先立って、連続して前処理を同時に行うとともに、導電性ローラまたは導電
性エンドレスベルトの被塗装体を逆戻りさせることで、塗膜層を硬化後処理することがで
き、これら一連の処理が連続して行え、作業工程が大幅に短縮されるとともに、構造が簡
素化される。
【0019】
さらに、前記前処理方法により改質された導電性ローラまたは導電性エンドレスベルト
の基体部表面に紫外線硬化型樹脂あるいは電子線硬化型樹脂からなる塗料をトラバース塗
装により塗装する場合は、表面が改質されて塗料の濡れ性が高まって均一に塗装された導
電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの基体部表面が、その後の紫外線や電子線のト
ラバース照射により、塗料が均一かつ効果的に硬化されて品質が向上する。
【0020】
また、前記トラバース塗装方法が、ロールコーター、ダイコーターあるいはスプレーコ
ーターによりなされる場合は、簡素なプラズマ放電やコロナ放電による導電性ローラ等の
基体部の表面の改質が、トラバース塗装方法の前処理として簡便に採用することができる
ので、トラバース塗装方法の利点を活かして、特に、塗装コーターとプラズマ照射手段、
コロナ放電手段あるいは紫外線照射手段を併置して、トラバース塗装の特性を活かして塗
装工程の簡略化に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のトラバース塗装(トラバース塗装とは、回転する導電性ローラまたは導
電性エンドレスベルトに対して、これら導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの軸
方向に相対移動する塗装装置により塗料を塗布する塗装方法)工程の前処理方法を図面に
基づいて説明する。図1は本発明のトラバース塗装工程の前処理方法の1つの実施例を示
すもので、図1(A)はロールコータ塗装工程に採用された平面図、図1(B)は図1(
A)のA−A断面図、図2は導電性ローラの各例の斜視図である。本発明のトラバース塗
装工程の前処理方法の基本的な構成は、図1に示すように、導電性ローラ1等の基体部の
表面に塗料を塗布するトラバース塗装方法において、塗装工程の直前に前記ローラ1を回
転させるとともに、プラズマ照射手段17によりプラズマを前記ローラ1の基体部表面に
照射し、これらプラズマ照射手段17とローラ1とを軸方向に相対移動させて前記基体部
の表面を改質することを特徴とする。
【0022】
以下、実施例について説明する。図2は導電性ローラとして使用される各例を示す。図
2(A)は弾性ローラ1の例で、金属や合成樹脂製の硬質の中実棒状体からなる軸6の周
囲に弾性体の基体部5が被覆される。該基体部5の周囲にさらに塗膜層4が塗装される。
図2(B)はパイプ型ローラ2の例で、金属や合成樹脂製の硬質の管状体からなるパイプ
軸7の周囲に厚さの薄い弾性体の基体部5が被覆される。該基体部5の周囲にさらに塗膜
層4が塗装される。図2(C)はベルトの例で、一対の金属や合成樹脂製の硬質の中実棒
状体(管状体からなるパイプ軸またはそれらの外周に弾性層を設けた駆動用のローラでも
よい)8、9間に無端状弾性体からなる基体部5が張設される。該基体部5の周囲にさら
に塗膜層4が塗装される。
【0023】
これらの導電性ローラの中の弾性ローラ1の塗装工程を例として説明する。図1(A)
に示すように、被塗装体である導電性の弾性ローラ1は、その軸の両端部が軸支されて図
示省略のローラ駆動モータにより回転しつつ、軸方向にトラバース移動する。弾性ローラ
1の基体部の表面に接触するロールコーター10の塗装ロール11により、弾性ローラ1
の基体部の表面が塗装される。塗装ロール11の軸と弾性ローラ1の軸とは所定角度θ(
θは変更可能)にて交差配置されており、両ローラーの点接触により螺旋状(図1(A)
のA−A部近傍の螺旋模様参照)に均一に塗りむらが少なく塗布されていく。前記角度θ
を小さくすれば塗装の螺旋塗膜の幅を大きくすることができる。設計上許容されるなら、
弾性ローラ1側を回転のみとしてトラバース移動を不可とし、ロールコータ10側をトラ
バース移動可能に構成してもよい。
【0024】
図1(B)に示すように、ロールコーター10は、塗料タンク12内に貯溜された塗料
中に浸されて配設される塗装ロール11と、該塗装ロール11を回転駆動するロール駆動
モータ14とから構成される。ロールコーター10における塗装ロール11の表面は、被
塗装体である導電性の弾性ローラ1の表面に接触し、互いに回転する表面同士が点接触し
て、塗装ロール11の周面の塗料を導電性ローラ1の基体部の表面に移載する。このよう
に構成することで、塗膜の厚さの均一化と両者の離脱時の離脱線の解消が図られ、連続し
ての塗布が可能となって生産性が向上する他、塗りむらの解消や塗膜の厚みの均一化が可
能となる。塗装ロール11の周面には微細なグラビア状の凹凸面が形成されており、塗料
タンク12から導電性ローラ1の基体部5表面への塗料の移載を容易にする。図1(B)
の符号16は、前記グラビア状の凹凸面による塗装ロール11の表面への過剰な塗料の移
載が抑制されるように、塗装ロール11の表面から塗料を剥ぎ取るブレードを示すもので
ある。
【0025】
本発明では、このような塗装ロール11による導電性ローラ1の基体部5の表面の塗装
に先立って、塗装工程の直前に前記ローラ1を回転させるとともに、プラズマ照射手段1
7によりプラズマを前記ローラ1の基体部5の表面に照射し、これらプラズマ照射手段1
7とローラ1とを軸方向に相対移動させて前記基体部5の表面を改質することを特徴とす
る。好適には、図示省略のローラ駆動モータを搭載しローラ1の両端部を支持するフレー
ム体(図示省略)を矢印Aのように軸方向にトラバース移動させる。したがって、その場
合はロールコーター10はローラ1との交差角度θの調整を除いて静止構造とされる。
【0026】
塗装工程に先立って導電性ローラ1の基体部5の表面をプラズマ照射することにより、
基体部5を構成するエラストマー等の樹脂材の表面がプラズマ状態の雰囲気中に晒される
。この結果、エラストマー等の樹脂材の表面が改質されて表面の濡れ性が向上し、塗装の
際の塗料の塗りむらが解消されるとともに均一な厚みの塗装が実現されて、ローラ1の表
面品質が向上する。プラズマ照射は大気圧プラズマを使用すると、プロセスが簡略化され
て好ましい。プラズマ照射手段17に代えて、コロナ放電手段を設置してもよい。コロナ
放電手段17により導電性ローラ1の基体部5の表面をコロナ放電雰囲気中に晒す場合は
、コロナ放電手段を絶縁被覆し、被塗布物の基体部と接触させながら表面処理を行う。
【0027】
導電性ローラ1の基体部5の表面をプラズマ照射することにより、基体部5を構成する
エラストマー等の樹脂材の表面がプラズマ状態の雰囲気中に晒される。この結果、エラス
トマー等の樹脂材の表面が改質されて撥水性が減少して塗料の濡れ性が高まり、塗装の際
の塗料の塗りむらが解消されるとともに均一な厚みの塗装が実現されて、ローラ1の表面
品質が向上する。プラズマ照射手段17に代えて、コロナ放電手段を設置してもよい。コ
ロナ放電手段17により導電性ローラ1の基体部5の表面をコロナ放電雰囲気中に晒す場
合は、コロナ放電の特性により、低電流で大気圧での表面処理が可能となる。
【0028】
本発明の導電性ローラの弾性層は、エラストマーに導電剤を含むものであって、必要に
応じて添加剤等の他の成分を含む。該弾性層に用いるエラストマーとしては、シリコーン
ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエン
ゴム(NBR)、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、クロロ
プレンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、エチレン−酢酸ビニル
共重合体(EVA)、ポリウレタンおよびこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でも
、シリコーンゴム、EPDM、ECOおよびポリウレタンが好ましい。上記弾性層には、
上記エラストマーを発泡剤を用いて化学的に発泡させたり、ポリウレタンフォームのよう
に空気を機械的に巻き込んで発泡させる等して、上記エラストマーを発泡体として用いて
もよい。
【0029】
上記シャフトと弾性層とは、反応射出成形法(RIM成形法)を用いて一体化してもよ
い。すなわち、弾性層の原料成分を構成する2種類の液を筒状型内に混合射出し、反応硬
化させて、シャフトと弾性層とを一体化することができる。これにより、原料の注入から
脱型までの所要時間を短縮し、生産コストを大幅に削減することができる。
【0030】
また、上記弾性層にシリコーンゴムを用いる場合、該シリコーンゴムは、一般的なミラ
ブル型シリコーンゴム(HCR)でも液状シリコーンゴム(LSR)でもよい。なお、液
状シリコーンゴムを用いる場合、液状射出成形(LIM:Liquid injecti
on Molding)で弾性層を形成するのが好ましい。上記液状シリコーンゴムは、
ビニル基含有ポリオルガノシロキサンに対して、オルガノハイドロジェンポリシロキサン
、シリカ等の補強性充填剤、導電剤、白金系触媒、反応抑制剤、シリコーンオイル、その
他の各種添加剤を配合してなり、所定の形状のモールドに注入された後、加熱硬化によっ
て成形される。
【0031】
上記ビニル基含有ポリオルガノシロキサンは、分子中に2個以上の反応基を有し、該反
応基としてはアルケニル基および水酸基が挙げられる。該ビニル基含有ポリオルガノシロ
キサンとしては、下記式1
【数1】

(式1中、R1 は、それぞれ独立して一価の炭化水素基であり、nは100〜10000
の整数である)で表される化合物が好ましい。ここで、R1 における一価の炭化水素基と
しては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基およびペンチル基等のアルキル基、
ビニル基およびアリル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フ
ェニル基等のアリール基、ベンジル等のアルキル基等が挙げられる。
【0032】
また、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記式2
【数2】

(式2中、R2 は、それぞれ独立して水素または一価の炭化水素基であり、mは10〜1
000の整数である)で表され、分子中に2個以上の珪素−水素結合を有する化合物が好
ましい。ここで、R2 おける一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル
基、ブチル基およびペンチル基等のアルキル基、ビニル基およびアリル基等のアルケニル
基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル等の
アルキル基等が挙げられる。
【0033】
また、液状シリコーンゴムに含まれる導電剤としては、前記弾性層に一般に用いられる
導電剤を使用することができる。白金系触媒としては、塩化第二白金、塩化白金酸、アル
コール変性塩化白金等が挙げられ、反応抑制剤としては、メチルビニルシクロテトラシロ
キサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパー
オキサイド等が挙げられる。
【0034】
上記弾性層に用いる導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤等が挙げられる。電子
導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF
、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラック
、酸化処理等を施したカラー用カーボンブラック、熱分解カーボンブラック、天然グラフ
ァイト、人造グラファイト、アンチモンドープ酸化スズ、ITO、酸化スズ、酸化チタン
、酸化亜鉛等の金属化合物、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、ポリアニリン、
ポリビニール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、カーボンウィスカー、黒鉛ウィスカ
ー、炭化チタンウィスカー、導電性チタン酸カリウムウィスカー、導電性チタン酸バリウ
ムウィスカー、導電性酸化チタンウィスカー、導電性酸化亜鉛ウィスカー等の導電性ウィ
スカー等が挙げられる。上記電子導電剤の配合量は、上記エラストマー100質量部に対
して1〜50質量部の範囲が好ましく、5〜40質量部の範囲がさらに好ましい。
【0035】
また、上記イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニ
ウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジ
ルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩
素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、
カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カ
ルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、
塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸
塩、スルホン酸塩等が挙げられる。上記イオン導電剤の配合量は、上記エラストマー10
0質量部に対して0.01〜10質量部の範囲が好ましく、0.05〜5質量部の範囲が
さらに好ましい。上記導電剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用
いてもよく、電子導電剤とイオン導電剤とを組み合わせてもよい。
【0036】
上記弾性層は、上記導電剤の配合により、その抵抗値を103 〜1010Ωcmとするこ
とが好ましく、104 〜108 Ωcmとすることが好ましい。弾性層の抵抗値が103 Ω
cm未満では、電荷が感光ドラム等にリークしたり、電圧により導電性ローラ自体が破壊
する場合があり、1010Ωcmを超えると、地かぶりが発生し易くなる。
【0037】
上記弾性層は、必要に応じて上記エラストマーをゴム状物質とするために、有機過酸化
物等の架橋剤、硫黄等の加硫剤を含有してもよく、さらに加硫促進剤、加硫促進助剤、加
硫遅延剤等を含有してもよい。また、上記弾性層は、さらに充填剤、しゃく解剤、発泡剤
、可塑剤、軟化剤、粘着付与剤、粘着防止剤、分離剤、離型剤、増量剤、着色剤等のゴム
用配合剤を含有してもよい。
【0038】
また、ポリウレタンまたはEPDMを基材として上記弾性層を形成する場合、表面上の
トナー帯電量をコントロールするために、ニグロシン、トリアミノフェニルメタン、カチ
オン染料等の各種荷電制御剤、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ナイロン等の微粉体を
添加してもよい。ここで、上記荷電制御剤の添加量は、上記ポリウレタンまたはEPDM
100質量部に対して1〜5質量部の範囲が好ましく、上記微粉体の添加量は、上記ポリ
ウレタンまたはEPDM100質量部に対して1〜10質量部の範囲が好ましい。
【0039】
上記弾性層の硬度は、特に限定されるものではないが、アスカーC硬度で80度以下で
あるのが好ましく、20〜70度であるのがさらに好ましい。弾性層のアスカーC硬度が
80ど超えると、導電性ローラと感光ドラム等との接触面積が小さくなり、良好な現像が
行えなくなる虞れがあり、また、導電性ローラを現像ローラとして用いた場合、トナーに
損傷を与え、感光ドラムや成層ブレードへのトナー固着等が発生して画像不良が起こり易
い。一方、弾性層が低硬度過ぎると、導電性ローラを現像ローラとして用いた場合、感光
ドラムや成層ブレードとの摩擦力が大きくなり、ジッター等の画像不足が発生する虞れが
ある。なお、上記弾性層は、感光ドラムや成層ブレード等に当接して使用されるため、硬
度を低硬度に設定する場合でも、圧縮永久歪みをなるべく小さくすることが好ましく、具
体的には20%以下とすることが好ましい。
【0040】
本発明の導電性エンドレスベルトにおいて、基材に用いる熱可塑性樹脂としては、特に
制限されるものではないが、例えば、熱可塑性ポリアミド(PA)、アクリロニトリル−
ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、熱可塑性ポリアセタール(POM)、熱可塑性ポ
リアリレート(PAR)、熱可塑性ポリカーボネート(PC)等を好適に挙げることがで
きる。また、かかる熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとのポリマーアロイ、またはポ
リマーブレンドを用いることもでき、これらのうちのいずれかを基材として用いることに
より、良好な強度、特には良好な屈曲耐久性を備えたベルトを得ることができる。
【0041】
また、本発明に用いる高分子イオン導電材料としては、例えば、特開平9−22771
7号公報、特開平10−120924号公報および特開2000−327922号公報に
記載されているものを用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0042】
具体的には、(A)有機ポリマー材料、(B)イオン導電可能なポリマーまたはコポリ
マーおよび(C)無機または低分子量有機塩からなる混合物を挙げることができ、ここで
、成分(A)は、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニ
トリル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアミド、ポリウレタンまた
はポリエステルであり、成分(B)は、オリゴエトキシ化アクリレートもしくはメタクリ
レート、芳香族環についてオリゴエトキシ化されたスチレン、ポリエーテルウレタン、ポ
リエーテル尿素、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミドまたはポリエーテル
エステルであり、また成分(C)は、無機または低分子量有機プロトン酸のアルカリ金属
、アルカリ土類金属、亜鉛またはアンモニウム塩であり、好ましくは、LiClo4 、L
iCF3 SO3 、NaClo4 、LiBF4 、NaBF4 、KBF4 、NaCF4 SO3
、KClO4 、KPF6 、KCF3 SO3 、KC4 9 SO3 、Ca(ClO4 2 、C
a(PF6)2 、Mg(ClO4)2 、Mg(CF3 SO3 2 、Zn(ClO4)2 、Zn(
PF6)2 、またはCaCF3 SO3 2 等である。
【0043】
これらの中でも、成分(B)として、ポリエーテルアミド成分またはポリエーテルエス
テルアミド成分を含有する高分子イオン導電剤が好適であり、さらにこれに加えて成分(
C)として低分子イオン導電剤成分を含有することが好ましい。また、かかるポリエーテ
ルアミド成分およびポリエーテルエステルアミド成分としては、ポリエーテル成分が(C
−H2 −CH2 −O)含有し、ポリアミド成分がナイロン12またはナイロン6を含有す
るものが特に好ましく、これを成分(B)として含有し、さらに成分(C)の低分子イオ
ン導電剤成分としてNaClO4 を含有する高分子イオン導電剤が特に好適である。かか
る好適な高分子イオン導電剤は、市場においてIrgastat(登録商標)P18およ
びIrgastat(登録商標)P22(共に、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・イ
ンコーポレーテッド製)、ペレスタットNC6321(三洋化成(株)製)として入手す
ることができる。
【0044】
また、本発明においては、基材に対して、機能性成分として他の導電性材料を添加して
、補助的に導電性の付与、調整を行うこともできる。かかる導電性材料としては、特に限
定されず、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オク
タデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリ
メチルアンモニウム、変性脂肪酸、ジメチルエチルアンモニウムの過塩素酸塩、塩素酸塩
、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(臭化ベル
ジル塩、塩化ベンジル塩等)等の第4級アンモニウム等の陽イオン界面活性剤:脂肪族ス
ルホン酸、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸
塩、高級アルコール燐酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤;各種ベタイン等の両性イオ
ン界面活性剤;高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エス
テル、多価アコール脂肪酸エステル等の非イオン性帯電防止剤等の帯電防止剤、LiCF
2 SO2 、NaClo4 、LiBF4 、NaCl等の周期律表第1族の金属塩;Ca)C
lO4 2 等の周期律表第2族の金属塩;およびこれらの帯電防止剤がイソシアネートと
反応する活性水素を有する基(水素基、カルボキシル基、一級乃至二級アミン等)を1個
以上有するもの等が挙げられる。さらに、これらと多価アルコール(1、4−ブタジエン
オール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等)また
はその誘導体との錯体、あるいはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリ
コールモノエチルエーテル等との錯体等のイオン導電剤;ケッチェンブラック、アセチレ
ンブラック等の導電性カーブン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、
FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したカラーインク用カーボン、熱分解カー
ボン、天然グラファイト、人造グラファイト等;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッ
ケル、銅等の金属および金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の
導電性ポリマー等を例示することができる。
【0045】
これら他の導電性材料の添加量は、基材100重量部に対して好ましくは0.01〜3
0重量部、より好ましくは0.1〜20重量部程度である。本発明においては、本発明の
効果を損なわない範囲で、上述の成分に加えて他の機能性成分を適宜添加することも可能
であり、例えば、各種充填材、カップリング剤、酸化防止剤、滑剤、表面処理剤、顔料、
紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、架橋剤等を適宜配合することがで
きる。さらに、着色剤を添加して、ベルトに着色を施してもよい。
【0046】
塗装に先立つ導電性ローラ1の基体部5の表面へのプラズマ照射あるいはコロナ放電は
、塗装のためのロールコータ10等を退避させた状態にて、導電性ローラ1を回転させつ
つ矢印Aのようにトラバース移動させて行ってもよいし、トラバース塗装の利点を活かし
て、ロールコータ10等のトラバース塗装手段を作動させて塗装を行いつつローラ1の先
行側にてプラズマ照射、コロナ放電あるいは紫外線照射を行ってもよい。この場合は、時
間が経つと失活してしまう虞れがある改質面に速やかに塗装を施すことができてトラバー
ス塗装の利点を最大限に活かせる上に、塗装工程時間の大幅な短縮が可能となる。
【0047】
このようなプラズマ照射、コロナ放電あるいは紫外線照射による前記前処理方法により
改質された導電性ローラ1等の基体部5表面に、ロールコータ10等のトラバース塗装手
段により塗料が高い密着性により、塗りむら、厚みの不均一を生じることなく確実に塗布
される。
【0048】
本発明の樹脂被覆層は、紫外線または電子線硬化型樹脂および/または化合物が好適に
用いられるが、非紫外線または非電子線硬化型樹脂を含んでもよい。一般に、弾性層の外
表面に樹脂被覆層を設けることで、抵抗値を調整したり、トナー帯電量およびトナー搬送
量を制御することができるが、樹脂被覆層に非紫外線または非電子線硬化型樹脂および/
または化合物と紫外線または電子線硬化型樹脂とを含ませることで、樹脂被覆層のトナー
付着を大幅に低減して、ローラ等の耐久性を大幅に向上させることできる。ここで、上記
塗工液は、反応性希釈剤、導電剤を含んでもよい。また、紫外線硬化型樹脂あるいは紫外
線硬化型化合物の場合には、光重合開始剤、光重合促進剤を含むのが好ましい。その他、
必要に応じて公知の添加剤を含んでもよく、また、溶剤を含まないのが好ましい。
【0049】
上記樹脂被覆層に用いる紫外線または電子線硬化型樹脂としては、ポリエステル樹脂、
ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル
樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミ
ン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ビニルエーテル系樹脂
、ビニルエステル系樹脂およびこれら樹脂に特定の官能基を導入した変性樹脂等が挙げら
れ、これら樹脂は、1種単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
上記紫外線または電子線硬化型樹脂は、紫外線または電子線により重合可能な樹脂およ
び/または化合物、好ましくは、紫外線または電子線により重合可能な炭素原子間二重結
合を有する樹脂および/または化合物を紫外線または電子線照射により硬化させてなる。
上記紫外線または電子線により重合可能な樹脂および/または化合物は、(メタ)アクリ
レートモノマーおよびオリゴマーが好ましい。ここで、(メタ)アクリレートモノマーお
よびオリゴマーとしては、ウレタン系(メタ)アクリレート、エポキシ系(メタ)アクリ
レート、エーテル系(メタ)アクリレート、エステル系(メタ)アクリレート、ポリカー
ボネート系(メタ)アクリレート、シリコーン系(メタ)アクリレート等のモノマーおよ
びオリゴマーが挙げられる。
【0051】
上記樹脂被覆層の形成に用いる塗工液には、さらに必要に応じて重合性二重結合を有す
る反応性希釈剤、導電剤等の各種添加剤を配合してもよい。塗工液に重合性二重結合を有
する反応性希釈剤を配合することで、塗工液の粘度を調整することができる。該反応性希
釈剤としては、アミノ酸や水酸基を含む化合物に、(メタ)アクリル酸がエステル化反応
およびアミド化反応で結合した構造の単官能、2官能または多官能の重合性化合物を使用
することができる。上記反応性希釈剤の配量は、上記紫外線により重合可能な樹脂およ
び化合物の合計100質量部に対して1〜200質量部の範囲が好ましい。
【0052】
また、上記塗工液に用いる導電剤としては、上記弾性層用導電剤として例示したものと同
様のものを例示することができる。それらの中でも、カーボン系電子導電剤、イオン導電
剤および透明導電剤が好ましい。
【0053】
上記樹脂被覆層の形成に用いる塗工液には、紫外線を照射して硬化させる場合には光重
合開始剤を配合するのが好ましい。該光重合開始剤としては、公知のものを使用すること
ができる。例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル
、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール
、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノンおよび3,3
−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4、4−ジメトキシベンゾフェノン、4、4
−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビ
ス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジルおよびベンジルメチルケタール等
のベンジル誘導体、ベンゾインおよびベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導
体、ベンゾインイソプロピルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、チオキサントンおよびチオ
キサントン誘導体、フルオレン、2,4,6トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン
オキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾオイル)−2,4.4−トリメチルペンチル
ホスフィンオキシド、ビス(2,4,66−トリメチリルベンゾオイル)フェニルホスソ
フィンオキシド、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプ
ロパン−1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルホリノフェニル)−ブタン
−1等が挙げられる。これら光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を
併用してもよい。
【0054】
上記樹脂被覆層の形成に用いる塗工液に光重合開始剤を配合する場合、光重合開始剤に
よる重合反応を促進するために、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第3級ア
ミン系光重合促進剤、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系光重合促進剤。チオジグ
リコール等のチオエーテル系光重合促進剤等をさらに添加してもよい。これら光重合促進
剤の添加量は、紫外線により重合可能な樹脂および化合物の合計100質量部に対して0
.01〜10質量部の範囲が好ましい。
【0055】
上記樹脂被覆層の厚さは、1から100μmの範囲がさらに好ましく、5〜100μm
の範囲がより一層好ましい。樹脂被覆層の厚さが1μm未満では、長期使用時の摩擦によ
りローラ等の表面の電気性能を充分に確保することができない場合があり、100μmを
超えると、表面が硬くなり、トナーにダメージを与えて感光ドラムへのトナーの固着が発
生して、画像不良を引き起こす場合がある。
【0056】
本発明の前処理方法の後工程で採用されるトラバース塗装方法としては、実施例にて説
明したロールコーターによる塗装の他、トラバース塗装が可能であるところの、ダイコー
ター塗装方法あるいはスプレーコーター塗装方法が採用される。ダイコーター塗装方法は
、導電性ローラ1に併設して配置された上部および下部ダイヘッド間の隙間から線状に噴
射される塗料により、回転する導電性ローラ1の基体部5の表面を塗装するものである。
ダイヘッドを導電性ローラ1の軸線に沿ってトラバースさせる。スプレーコーター塗装方
法は、導電性ローラ1に併設して配置されたスプレーから放射状に噴射される塗料により
、トラバース移動しつつ回転する導電性ローラ1の基体部5の表面を塗装するものである

【0057】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、導電性ロー
ラ等の種類(帯電ローラ、現像ローラ等)、層状形態を含む形状、形式(弾性ローラ、パ
イプ型ローラ、ベルト型ローラ等)、トラバース塗装形態(好適には被塗装体である導電
性ローラ側を軸移動させるが、ロールコーター等の塗装ロール側を軸移動させてもよい)
、導電性ローラの回転形態、トラバースおよび回転駆動のためのアクチュエータの形態(
電動、流体、磁気等の駆動源の種類およびラックとピニオン、ピストンとシリンダ等)、
プラズマ照射手段およびコロナ放電手段ならびに紫外線照射手段の形状、形式およびそれ
らの照射形態、放電形態、導電性ローラ等の基体部の軸あるいはパイプ軸への固着形態、
基体部の材質および導電剤の含有量等の添加形態、紫外線硬化型樹脂あるいは電子線硬化
型樹脂等の塗料への含有量等の添加形態、トラバース塗装方法の種類(好適には、ロール
コーターが採用されるが、ダイコーターあるいはスプレーコーター等も採用され得る)等
については適宜選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のトラバース塗装工程の前処理方法の1つの実施例を示すもので、図1(A)はロールコータ塗装工程に採用された平面図、図1(B)は図1(A)のA−A断面図である。
【図2】同、導電性ローラの各例の斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1 導電性ローラ(弾性ローラ等)
4 塗膜層
5 基体部(弾性層)
6 軸(中実軸)
10 ロールコーター
11 塗装ロール
14 ロール駆動モータ
17 プラズマ照射手段(あるいはコロナ放電手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの基体部の表面にこれら導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトと軸方向に相対移動する塗装装置により塗料を塗布するトラバース塗装方法において、塗装工程の直前にプラズマ照射手段によりプラズマを前記ローラの基体部表面に照射し、これらプラズマ照射手段とローラとを軸方向に相対移動させて前記基体部の表面を改質することを特徴とするトラバース塗装工程の前処理方法。
【請求項2】
回転する導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの基体部の表面にこれら導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトと軸方向に相対移動する塗装装置により塗料を塗布するトラバース塗装方法において、塗装工程の直前にコロナ放電手段により前記ローラの基体部表面をコロナ放電処理し、これらコロナ放電手段とローラとを軸方向に相対移動させて前記基体部の表面を改質することを特徴とするトラバース塗装工程の前処理方法。
【請求項3】
回転する導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの基体部の表面にこれら導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトと軸方向に相対移動する塗装装置により塗料を塗布するトラバース塗装方法において、塗装工程の直前に紫外線照射手段により前記ローラの基体部表面を紫外線照射処理し、これら紫外線照射手段とローラとを軸方向に相対移動させて前記基体部の表面を改質することを特徴とするトラバース塗装工程の前処理方法。
【請求項4】
前記紫外線照射手段による前処理方法により改質された基体部が塗装された導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトを逆戻りさせて塗料が塗布された塗膜層を前記紫外線照射手段により硬化させて後処理することを特徴とする請求項3に記載の前処理方法を用いたトラバース塗装方法。
【請求項5】
前記塗装装置に併設して塗装工程直前にプラズマ照射手段を設置したことを特徴とする請求項1に記載のトラバース塗装方法。
【請求項6】
前記塗装装置に併設して塗装工程直前にコロナ放電手段を設置したことを特徴とする請求項2に記載のトラバース塗装方法。
【請求項7】
前記塗装装置に併設して紫外線照射手段を設置したことを特徴とする請求項3または4に記載のトラバース塗装方法。
【請求項8】
前記1から7のいずれかに記載の前処理方法により改質された導電性ローラまたは導電性エンドレスベルトの基体部表面に紫外線硬化型樹脂あるいは電子線硬化型樹脂からなる塗料をトラバース塗装により塗装することを特徴とするトラバース塗装方法。
【請求項9】
前記トラバース塗装方法が、ロールコーター、ダイコーターあるいはスプレーコーターによりなされることを特徴とする請求項8に記載のトラバース塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−150265(P2006−150265A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346159(P2004−346159)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】