説明

トラバース装置およびトラバース方法

【課題】線状材料の整列巻きを簡単な手段で簡単且つ安価に行えるようにする。
【解決手段】ガイドローラー2をリール胴部1aの外周に近接して配置し、リール胴部1b外周に近い側の外縁近傍に位置する回転中心C(Rガイド8の曲率中心)を支点として、ローラー2の外縁がリール胴部1aから遠い側でトラバース方向前方のリールフランジ部1bから離れる方向に傾斜させる。そして、その傾斜方向をリールフランジ1b間の中間位置で切り換え、ガイドローラー2を常に傾斜させた状態で、リール1を軸方向に移動させつつ回転させて線状材料Tを巻き取らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールコード、ビードワイヤ、ピストンリング用線などの金属線、電線などの被覆線、その他ロープ等の線状材料を整列巻きで巻き取るためのトラバース装置およびトラバース方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線状材料をリールに巻き取る方法として、リール胴部から径方向に距離を置いて配置したガイドローラーを介して巻取り物である線状材料をリール胴部に導き、リールあるいはガイドローラーをリール軸方向に移動させて巻取り位置を移動(トラバース)させながら、リールを回転させて線状材料を巻き取る方法が従来から知られている。この方法によれは、線状材料をリール胴部に1周巻き取る度に、リールあるいはガイドローラーをリールの軸方向に所定ピッチで往復移動させる動作を繰り返すことで、線状材料をリールに整列巻きで巻き取ることが可能である。しかし、この方法では、リール胴部とガイドローラーとの間に距離があるため、リール胴部上の線状材料の巻取り位置の移動とリールあるいはガイドローラーの移動とにずれがあり、そのため、特にリール胴部両端での反転時のトラバース調整が容易でない。
【0003】
また、大径のガイドローラーを使用し、ローラー外縁がリール側でリール胴部に近接する配置として、リール胴部上の線状材料の巻取り位置の移動とリールあるいはガイドローラーの移動とを一致させる方法も考えられているが、この方法では、巻取り物である線状材料が細い場合に、線状材料をガイドローラーの胴部フランジ際まで巻き取れるよう、また、線状材料が振れてピッチがずれることがないように、ローラー幅を小さくする必要があって、強度を十分に維持できなくなる虞がある。
【0004】
また、ガイドローラーをリール胴部外周から遠い側のロール外縁側に位置する回転軸を回転中心としてリール軸線方向に傾斜可能に配置し、リール胴部上の両端フランジ際近傍でのトラバース反転時に、リールの軸線方向移動を止め、ガイドローラーを首振りさせてローラー外縁がリール側でリールフランジ際に近づくよう傾斜させつつ、リールの回転により線状材料をフランジ際に巻き取り、リール胴部の中間位置では、リールを軸方向へ一定速度で連続的に移動させならが、ガイドローラーを首振りさせて線状材料を1周ずつ巻き取るようにする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、リール胴部両端でガイドローラーを傾けてフランジ際まで線状材料を巻き取るので、ローラー幅は必要な強度を維持できる程度に大きくすることができる。
【0005】
しかし、この方法では、トラバース反転時のみならず、リール胴部の中間位置でも、ガイドローラーを首振りさせる度に、ガイドローラーがリールから離反しないよう、傾きに合わせてガイドローラーの回転軸をリール胴部に対し近づけたり遠ざける方向へ移動させることが必要で、制御が複雑になる。また、ガイドローラーを傾けると、例えばリールが一定速度で移動していたのではトラバースのピッチが変わってくる。そのため、トラバースのピッチを一定にするためには、首振りの度にリール側あるいはガイドローラー側でピッチ調整をしなければならず、その制御が複雑で高価になる。
【0006】
そこで、やはりガイドローラーをリール胴部外周から遠い側のロール外縁側に位置する回転軸を回転中心としてリール軸線方向に傾斜可能に配置し、ローラー外縁をリール胴部に近接する側でトラバース方向前方のリールフランジ部に近づく方向に傾斜させる点は上記方法と同様であるが、ガイドローラーの傾斜方向をリール胴部の中間位置で反対側に切り換え、切換え時以外はガイドローラーを常に傾斜させた状態で、例えばリールの軸線方向移動によりトラバースさせつつ、リールを回転させて線状材料を巻き取らせる方法が考えられた。図4は、この方法に使用するトラバース装置の要部構成を示している。
【0007】
図4において、1はリール、1aはリール胴部、1bはリールフランジ部、2はガイドローラー、2aはガイドローラー外周のガイド溝、3はガイドローラーを支持する支持アーム、4は支持アーム3が固定された支持ブロックである。
【0008】
ガイドローラー2は、外縁(ローラー外縁)がリール1側でリール胴部1aに近接する配置で、支持アーム3に固定されたローラー軸5に軸受6を介して回転自在に軸支されている。
【0009】
支持ブロック4は、ベース(図示せず)上に設置された直線状のガイドレール(図示せず)上を水平移動用のエアーシリンダー(図示せず)を駆動源としてリール1の軸線方向に対し直交する方向に移動可能な移動台(図示せず)上に設置され、支持アーム3に支持されたガイドローラー2のリール胴部2a外周から遠い側のロール外縁側に設定された回転中心Cを軸として、円弧状のガイドレール(図示せず)に沿って、回転移動用のエアーシリンダー(図示せず)を駆動源として回転可能とされている。
【0010】
支持ブロック4はこのように移動並びに回転可能であって、支持ブロック4が回転中心Cを中心に回転すると、ガイドローラー2は、リール軸線方向に対し垂直な基準姿勢(図4に実線で示す)から、上記回転中心Cを中心として回転し、リール軸線方向両側に数度傾いた傾斜姿勢(図4に二点鎖線で示す)となる。また、支持ブロック4が移動すると、ガイドローラー2はローラー外縁がリール1側でリール胴部1aに対し近接あるいは離反する方向に移動する。
【0011】
この装置では、リール移動用のエアーシリンダー(図示せず)を駆動源としてリール1をリール軸線方向(図4における上下方向)に移動させることによりトラバース(巻取り位置の移動)を行う。そして、その際に、ガイドローラー2がリール胴部1aの中間位置である例えばリール軸方向中央に位置するときに、ガイドローラー2の傾斜方向を切り換え、ガイドローラー2の外縁がリール胴部1aに近接する側で、トラバース方向前方のリールフランジ部1bに近づく方向に傾斜させる。そして、そのようにガイドローラー2を傾斜させた状態で、リール1を軸方向に移動させつつ回転させて線状材料Tをリール胴部1aに巻き取らせる。
【0012】
この方法によれば、ガイドローラーは常に傾斜させた状態でトラバースさせるので、ガイドローラーの傾きに合わせてガイドローラーを進退移動させる必要がなく、また、トラバース1往復の間はガイドローラーの傾斜方向が変わらないので、ピッチ調整の制御も比較的簡単になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−180866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、ガイドローラー2を常にリール軸方向に傾斜させてトラバースさせる方法によれば、ガイドローラー2の傾きに合わせてリール胴部1aに対しガイドローラー2を進退移動させる必要がなく、また、トラバース1往復の間はガイドローラー2の傾斜方向が変わらないので、トラバースピッチの調整のための制御も比較的簡単になる。しかしながら、この場合も、ガイドローラー2はトラバース1往復の毎に傾斜方向が切り換わり、その際、ガイドローラー2は、リール胴部2a外周から遠い側のロール外縁側に位置する回転中心Cを中心に回転して、図4に二点鎖線で示す姿勢の一方から他方へと切り換わるので、巻取り物である線状材料Wのリール胴部1aへの巻取り位置がリール軸線方向に若干ずれて、トラバースのピッチが変わる。そのため、ピッチを一定にするために、リール1あるいはガイドローラー2をリール軸方向に移動させる制御が必要で、その制御が簡単でない。
【0015】
本発明は、こうした問題を解決し、線状材料の整列巻きを簡単な手段で簡単且つ安価に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明のトラバース装置は、外周にガイド溝を有するガイドローラーを介して供給される線状材料のリールに対する巻取り位置をリール軸線方向に移動させつつリールに線状材料を巻き取らせるトラバース装置であって、ガイドローラーを、リールの胴部外周に近接して配置し、リールの胴部外周に近い側の外縁近傍に位置する回転中心を支点としてローラー外縁がリール胴部から遠い側でトラバース方向前方のリールフランジ部から離れる方向に傾斜させ、その傾斜方向をリールフランジ部間の中間位置で切り換えて、切換え時以外は常に傾斜させた状態でリールあるいはガイドローラーをリール軸線方向に往復移動させて巻取り位置を移動させるよう構成したことを特徴とする。
【0017】
この装置は、ガイドローラーを傾斜した姿勢で線状材料のふらつきを抑えてリールフランジ際まで線状材料を巻き取らせることができるので、巻取り物である線状材料が細い場合でもローラー幅を過度に小さくする必要がなくて、ガイドローラーに必要な強度を維持でき、また、ガイドローラーを切換え時以外は常に傾斜させた状態でトラバースさせるので、ガイドローラーの傾きに合わせてガイドローラーをリール胴部に対し進退移動させる必要がなく、また、トラバース1往復の間はガイドローラーの傾斜方向が変わらず、ガイドローラーの傾斜方向をリール胴部の中間位置で切り換えた時でも、ガイドローラーはリールの胴部外周に近い側の外縁近傍に位置する回転中心を支点として傾斜させるので、線状材料はガイド溝の幅方向に大きくずれることがなくて、トラバースピッチを略一定に維持することができ、ピッチ調整の制御も比較的簡単で、線状材料の整列巻きを簡単且つ安価に行うことができる。
【0018】
また、請求項2に係る発明のトラバース装置は、請求項1に係る発明のトラバース装置において、特に、傾斜のための回転中心が、リールの軸線に近づく側でリールの軸線を通り該軸線に垂直な方向に、回転中心とガイドローラー外周のガイド溝底面との距離Lが、ガイドローラー外周のガイド溝の幅a、巻取り物である線状材料の幅w、ガイド溝の深さh、ガイドローラーの傾斜角αに対して、L=(a−w)/(2tanα)+h/2を満たす位置まで移動可能であるよう構成したことを特徴とする。
【0019】
この装置は、ガイドローラーを傾斜した姿勢で線状材料のふらつきを抑えてリールフランジ際まで線状材料を巻き取らせることができるので、巻取り物である線状材料が細い場合でもローラー幅を過度に小さくする必要がなくて、ガイドローラーに必要な強度を維持でき、また、ガイドローラーを切換え時以外は常に傾斜させた状態でトラバースさせるので、ガイドローラーの傾きに合わせてガイドローラーをリール胴部に対し進退移動させる必要がなく、また、トラバース1往復の間はガイドローラーの傾斜方向が変わらず、しかも、傾斜のための回転中心とガイドローラー外周のガイド溝底面との距離Lが、ガイド溝の幅a、線状材料の幅w、ガイド溝の深さh、ガイドローラーの傾斜角αに対して、L=(a−w)/(2tanα)+h/2を満たす位置になるようセットすることにより、ガイドローラーの傾斜方向をリール胴部の中間位置で切り換えた時でも、線状材料はガイド溝の幅方向にずれなくて、トラバースピッチを一定に維持することができ、ピッチ調整の制御が簡単となり、線状材料の整列巻きを簡単且つ安価に行うことができる。
【0020】
そして、請求項3に係る発明のトラバース方法は、請求項1に係る発明のトラバース装置を使用し、ガイドローラーを、ローラー外縁がリール胴部から遠い側でトラバース方向前方のリールフランジ部から離れる方向に傾斜させ、その傾斜方向をリール胴部の中間位置で切り換え、切換え時以外は常に傾斜させた状態でリールあるいはガイドローラーをリール軸線方向に往復移動させて巻取り位置を移動させつつリールに線状材料を巻き取らせることを特徴とする。この方法で、線状材料の整列巻きを簡単且つ安価に行うことができる。
【0021】
また、請求項4に係る発明のトラバース方法は、請求項2に係る発明のトラバース装置を使用し、回転中心を、該回転中心とガイドローラー外周のガイド溝底面との距離Lが、ガイドローラー外周のガイド溝の幅a、巻取り物である線状材料の幅w、ガイド溝の深さh、ガイドローラーの傾斜角αに対して、L=(a−w)/(2tanα)+h/2を満たす位置にセットし、ガイドローラーを、ローラー外縁がリール胴部から遠い側でトラバース方向前方のリールフランジ部から離れる方向に傾斜させ、その傾斜方向をリール胴部の中間位置で切り換え、切換え時以外は常に傾斜させた状態でリールあるいはガイドローラーをリール軸線方向に往復移動させて巻取り位置を移動させつつリールに線状材料を巻き取らせることを特徴とする。この方法で、線状材料の整列巻きを簡単且つ安価に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、線状材料の整列巻きを簡単な手段で簡単且つ安価に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態のトラバース装置の要部構成を示す平面図(a)及び側面図(b)である。
【図2】本発明の実施の形態のトラバース装置の動作説明図(a)、(b)である。
【図3】本発明の実施の形態の他の例のトラバース装置の要部構成を示す平面図(a)及び側面図(b)である。
【図4】従来のトラバース装置の要部構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に本発明の実施の形態のトラバース装置の要部構成を示す。図中、1はリール、1aはリール胴部、1bはリールフランジ部、2はガイドローラー、2aはガイドローラー外周のガイド溝、3はガイドローラーを支持する支持アーム、4は支持アーム3を支持する支持ブロックである。
【0025】
ガイドローラー2は、リール胴部1aの外周に近接した配置(巻取り前のリール胴部1aとの間に1〜20mm程度を置いた配置が好ましく、1〜10mmの隙間を置いた配置がより好ましい。)とされ、支持アーム3に支持されたローラー軸5に軸受6を介して回転自在に支持されている。
【0026】
支持アーム3は、支持ブロック4に支持され、その支持位置は、調節ハンドル12の操作により支持ブロック4に対しリール軸線Rに向けて進退移動可能となっている。
【0027】
支持ブロック4は、ベース(図示せず)上に設置された直線状のガイドレール(図示せず)上を水平移動用のエアーシリンダー(図示せず)を駆動源としてリール1の軸線方向に対し直交する方向(リール胴部1aに対し進退する方向)に移動可能な移動台11上に載置されている。そして、支持ブロック4は、移動台11上で、Rガイド(円弧状のガイドレール)8に沿って、Rガイド8の曲率中心を中心として回転可能となっている。
【0028】
支持ブロック4はこのように移動並びに回転可能であって、支持ブロック4が回転すると、ガイドローラー2は、Rガイド8の曲率中心を回転中心Cとして、リール軸線方向に対し垂直な姿勢(図1(a)に実線で示す)から傾斜し、リール軸線方向(図1(a)における上下方向)に±数度(1〜10度程度)傾いた姿勢(図1(a)に二点鎖線で示す)となる。また、支持ブロック4が移動台11と共にリール胴部2aに対し進退する方向に移動すると、ガイドローラー2はローラー外縁がリール1側でリール胴部1aに対し近接あるいは離反する方向に移動する。
【0029】
ガイドローラー2と回転中心C(Rガイド8の曲率中心)との位置関係は、調節ハンドル12の操作によって調節可能である。調節ハンドル12を廻して支持ブロック4上で支持アーム3の支持位置を移動させると、Rガイド8の曲率中心に対して支持アーム3の位置が変わり、支持アーム3に支持されたガイドローラー2の位置すなわちガイドローラー2の回転中心Cとの位置関係が変わる。
【0030】
この装置では、リール移動用のエアーシリンダー(図示せず)を駆動源としてリール1をリール軸線方向(図1(a)における上下方向)に移動させることによりトラバースを行う。その際、ガイドローラー2がリールフランジ1b間の中間位置である例えばリール軸方向(図1(a)における上下方向)の中央に位置するときに、ガイドローラー2の傾斜方向を切り換え、リール胴部1b外周に近い側の外縁近傍に位置する回転中心C(Rガイド8の曲率中心)を支点として、ローラー2の外縁がリール胴部1aから遠い側でトラバース方向前方のリールフランジ部1bから離れる方向に傾斜させる。そして、そのようにガイドローラー2を傾斜させた状態で、リール1を軸方向に移動させつつ回転させて繰出しリール(図示せず)から送り出される線状材料Tをリール胴部1aに巻き取らせる。そして、線状材料Tを1周巻き取らせる毎に、移動台11を移動させてガイドローラー2を線状材料Tの厚さ分だけリール胴部2から離れる方向に移動させ、巻き重ねていく。
【0031】
この装置において、ガイドローラー2の傾斜のための回転中心Cの位置は、調節ハンドル12の操作により、リール軸線Rに近い側のガイドローラー2外周のガイド溝2aの底面の幅方向中央を基準としてリール軸線Rから離れる側に5〜10mm程度ずれた位置まで、また、リール軸線Rに近づく側には、リール軸線Rを通りリール軸線Rに垂直な方向に、回転中心Cとガイドローラー2外周のガイド溝2aの底面との距離Lが、ガイド溝2aの幅a、線状材料Tの幅w、ガイド溝2aの深さh、ガイドローラー2の傾斜角αに対して、L=(a−w)/(2tanα)+h/2を満たす位置を5〜10mm程度越えた位置まで移動可能で、巻取り物である線状材料の太さ等に合わせて回転中心Cの位置を調節可能とされている。
【0032】
回転中心Cは、上記のようにリール軸線Rに近い側のガイドローラー2外周のガイド溝2aの底面の幅方向中央を基準として、リール軸線Rから離れる側あるいはリール軸線Rに近づく側に移動可能であるが、特に、図2(a)から明らかなように、上記L、a、w、hおよびαが、tanα={(a−w)/2}/(L−h/2)を満たす、すなわち、L=(a−w)/(2tanα)+h/2を満たす位置にセットすると、ガイドローラー2の傾斜方向が、図2(a)に実線で示す状態から破線で示す状態に、あるいはその逆に切り換わった時でも、線状材料Tは、実線で示す状態から破線で示す状態に、あるいはその逆になるだけで、線状材料Tの中心位置pは移動せず、ガイド溝2a内で幅方向に線状材料Tがずれることはない。そのため、トラバースのピッチが変ることはない。
【0033】
それに対し、回転中心Cを、例えば、リール軸線Rに近い側のガイドローラー2外周のガイド溝2aの底面の幅方向中央にセットした場合は、図2(b)に示すように、ガイドローラー2の傾斜方向が実線で示す状態から破線で示す状態に、あるいはその逆に切り換わると、線状材料Tは、実線で示す状態から破線で示す位置に、あるいはその逆に、ガイド溝2a内で幅方向にずれ、そのずれ幅sだけトラバースのピッチが変わる。但し、ガイド溝の幅aに対し線状材料の幅wが大きいと、ずれ幅sは小さくて、ピッチへの影響は少ない。
【0034】
この実施の形態の装置は、ガイドローラー2を傾斜した姿勢で線状材料Tのふらつきを抑えてリール胴部1aのリールフランジ際まで線状材料を巻き取らせるので、巻取り物である線状材料Tが細い場合でもローラー幅を過度に小さくする必要がなくて、ガイドローラーに必要な強度を維持でき、ガイドローラー2を切換え時以外は常に傾斜させた状態でトラバースさせるので、ガイドローラー2の傾きに合わせてガイドローラー2をリール胴部1aに対し進退移動させる必要がなく、また、トラバース1往復の間はガイドローラー2の傾斜方向が変わらず、また、特に、回転中心Cの位置を、L=(a−w)/(2tanα)+h/2を満たす位置にセットすることで、ガイドローラー2の傾斜方向をリール胴部1aの中間位置で切り換えた時に線状材料Tがガイド溝2aの幅方向にずれないようにして、トラバースピッチを一定に維持することができ、ピッチ調整の制御が簡単となり、線状材料の整列巻きを簡単且つ安価に行うことができる。
【0035】
図3は、回転中心Cを、リール胴部2a外周に近い側のローラー外縁近傍において、特に、リール軸線Rに近い側のガイドローラー2外周のガイド溝2aの底面の幅方向中央の位置に固定(但し、トラバース方向には移動する)した例(実施の形態の他の例)を示している。図中、1はリール、1aはリール胴部、1bはリールフランジ部、2はガイドローラー、2aはガイドローラー外周のガイド溝、3はガイドローラーを支持する支持アーム、4は支持アーム3を支持する支持ブロックである。
【0036】
ガイドローラー2は、リール胴部1aの外周に近接した配置(巻取り前のリール胴部1aとの間に1〜20mm程度を置いた配置が好ましく、1〜10mmの隙間を置いた配置がより好ましい。)とされ、支持アーム3に支持されたローラー軸5に軸受6を介して回転自在に支持されている。そして、支持アーム3は、支持ブロック4に固定されている。
【0037】
支持ブロック4は、ベース(図示せず)上に設置された直線状のガイドレール(図示せず)上を水平移動用のエアーシリンダー(図示せず)を駆動源としてリール1の軸線方向に対し直交する方向(リール胴部1aに対し進退する方向)に移動可能な移動台11上に載置されている。そして、支持ブロック4は、移動台11上で、Rガイド(図示せず)に沿って、Rガイドの曲率中心を中心として回転可能となっている。
【0038】
支持ブロック4はこのように移動並びに回転可能であって、支持ブロック4が回転すると、ガイドローラー2は、Rガイドの曲率中心を回転中心Cとして、リール軸線方向に対し垂直な姿勢(図3(a)に実線で示す)から傾斜し、リール軸線方向(図2(a)における上下方向)に±数度(1〜10度程度)傾いた姿勢(図3(a)に二点鎖線で示す)となる。また、支持ブロック4が移動台11と共にリール胴部2aに対し進退する方向に移動すると、ガイドローラー2はローラー外縁がリール1側でリール胴部1aに対し近接あるいは離反する方向に移動する。
【0039】
この装置では、リール移動用のエアーシリンダー(図示せず)を駆動源としてリール1をリール軸線方向(図3(a)における上下方向)に移動させることによりトラバースを行う。その際、ガイドローラー2がリールフランジ1b間の中間位置である例えばリール軸方向(図3(a)における上下方向)の中央に位置するときに、ガイドローラー2の傾斜方向を切り換え、リール胴部1b外周に近い側の外縁近傍に位置する回転中心C(Rガイドの曲率中心)を支点として、ローラー2の外縁がリール胴部1aから遠い側でトラバース方向前方のリールフランジ部1bから離れる方向に傾斜させる。そして、そのようにガイドローラー2を傾斜させた状態で、リール1を軸方向に移動させつつ回転させて繰出しリール(図示せず)から送り出される線状材料Tをリール胴部1aに巻き取らせる。そして、線状材料Tを1周巻き取らせる毎に、移動台11を移動させてガイドローラー2を線状材料Tの厚さ分だけリール胴部2から離れる方向に移動させ、巻き重ねていく。
【0040】
回転中心Cは、リール胴部2a外周に近い側のローラー外縁近傍において、特に、リール軸線Rに近い側のガイドローラー2外周のガイド溝2aの底面の幅方向中央に位置する設定としている。この場合は、図2(b)に示すように、ガイドローラー2の傾斜方向が実線で示す状態から破線で示す状態に、あるいはその逆に切り換わると、線状材料Tは中心位置pが、実線で示す状態から破線で示す位置に、あるいはその逆に、ガイド溝2a内で幅方向にずれ、そのずれ幅sだけトラバースのピッチが変わるが、線状材料が太くて、ガイド溝の幅aと線状材料の幅wが小さい場合は、ずれ幅sは小さく、ピッチへの影響は少ない。
【0041】
この実施の形態の装置は、ガイドローラー2を傾斜した姿勢で線状材料Tのふらつきを抑えてリール胴部1aのリールフランジ際まで線状材料を巻き取らせるので、巻取り物である線状材料Tが細い場合でもローラー幅を過度に小さくする必要がなくて、ガイドローラーに必要な強度を維持でき、また、ガイドローラー2を切換え時以外は常に傾斜させた状態でトラバースさせるので、ガイドローラー2の傾きに合わせてガイドローラー2をリール胴部1aに対し進退移動させる必要がなく、また、トラバース1往復の間はガイドローラー2の傾斜方向が変わらず、ガイドローラー2の傾斜方向をリール胴部1aの中間位置で切り換えた時でも、線状材料Tがガイド溝2aの幅方向へ大きくずれることがなく、トラバースピッチを略一定に維持することができて、ピッチ調整の制御が比較的簡単となり、線状材料の整列巻きを簡単且つ安価に行うことができる。
【0042】
図3に示す例では、ガイドローラー2の傾斜のための回転中心Cは、リール軸線Rに近い側のガイドローラー2外周のガイド溝2aの底面の幅方向中央に位置する設定となっているが、回転中心Cの位置は、例えば、リール軸線Rに近い側のガイドローラー2外周のガイド溝2aの底面の幅方向中央を基準としてリール軸線Rから離れる側に5〜10mm程度ずれた位置から、リール軸線Rに近づく側に5〜10mm程度ずれた位置までの範囲で任意の設定することができる。
【0043】
なお、上記実施の形態の各例では、リール1を移動させてトラバースする場合を説明したが、リール1は移動させずにガイドローラー2をリール軸方向に移動させるようにしてもよく、リール1とガイドローラー2の双方を移動させてトラバースするようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施の形態の各例では、巻取り物である線状材料は、断面が矩形であるもの(角線)を説明したが、線状材料は断面円形のもの(丸線)、その他(異形線)であってもよく、また、被覆線、撚り線、その他であってもよい。
本発明は、スチールコード、ビードワイヤ、ピストンリング用線などの金属線、電線などの被覆線、その他ロープ等、様々な線状材料に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 リール
1a リール胴部
1b リールフランジ部
2 ガイドローラー
2a ガイド溝
3 支持アーム
4 支持ブロック
5 ローラー軸
8 Rガイド
11 移動台
12 調節ハンドル
C 回転中心
R リール軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周にガイド溝を有するガイドローラーを介して供給される線状材料のリールに対する巻取り位置をリール軸線方向に移動させつつリールに線状材料を巻き取らせるトラバース装置であって、
前記ガイドローラーを、前記リールの胴部外周に近接して配置し、前記リールの胴部外周に近い側の外縁近傍に位置する回転中心を支点としてローラー外縁がリール胴部から遠い側でトラバース方向前方のリールフランジ部から離れる方向に傾斜させ、その傾斜方向をリールフランジ部間の中間位置で切り換えて、切換え時以外は常に傾斜させた状態で前記リールあるいは前記ガイドローラーをリール軸線方向に往復移動させて巻取り位置を移動させるよう構成したことを特徴とするトラバース装置。
【請求項2】
前記回転中心は、前記リールの軸線に近づく側で該リールの軸線を通り該軸線に垂直な方向に、該回転中心と前記ガイドローラー外周のガイド溝底面との距離Lが、前記ガイドローラー外周のガイド溝の幅a、巻取り物である線状材料の幅w、前記ガイド溝の深さh、前記ガイドローラーの傾斜角αに対して、L=(a−w)/(2tanα)+h/2を満たす位置まで移動可能であるよう構成したことを特徴とする請求項1記載のトラバース装置。
【請求項3】
請求項1記載のトラバース装置を使用し、前記ガイドローラーを、ローラー外縁がリール胴部から遠い側でトラバース方向前方のリールフランジ部から離れる方向に傾斜させ、その傾斜方向をリール胴部の中間位置で切り換え、切換え時以外は常に傾斜させた状態で前記リールあるいは前記ガイドローラーをリール軸線方向に往復移動させて巻取り位置を移動させつつリールに線状材料を巻き取らせることを特徴とするトラバース方法。
【請求項4】
請求項2記載のトラバース装置を使用し、前記回転中心を、該回転中心と前記ガイドローラー外周のガイド溝底面との距離Lが、前記ガイドローラー外周のガイド溝の幅a、巻取り物である線状材料の幅w、前記ガイド溝の深さh、前記ガイドローラーの傾斜角αに対して、L=(a−w)/(2tanα)+h/2を満たす位置にセットし、前記ガイドローラーを、ローラー外縁がリール胴部から遠い側でトラバース方向前方のリールフランジ部から離れる方向に傾斜させ、その傾斜方向をリール胴部の中間位置で切り換え、切換え時以外は常に傾斜させた状態で前記リールあるいは前記ガイドローラーをリール軸線方向に往復移動させて巻取り位置を移動させつつリールに線状材料を巻き取らせることを特徴とするトラバース方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71793(P2013−71793A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210616(P2011−210616)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(394010506)
【Fターム(参考)】