説明

トラフィック情報抽出装置、トラフィック情報抽出システム、トラフィック情報抽出方法

【課題】情報処理や演算にかかる負荷が従来技術よりも小さく、正確にトラフィック量を把握できるトラフィック情報抽出装置を提供する。
【解決手段】CEルータα、βと直接接続するPEルータPから、PEルータPと通信経路を挟んで対向するPEルータUを特定する情報と、PEルータPからPEルータUに至る通信経路のトラフィック量を示す情報とを取得するフロー情報取得部103a、PEルータPとPEルータUとの間に設けられるPルータR、S、Tの接続関係を示す、予め設定されている情報を取得するトポロジ取得部103b、トポロジ情報から、PEルータPからPEルータUに向かう通信経路を特定し、フロー情報取得部によって取得されたトラフィック量を、特定された通信経路のトラフィック量とする通信経路特定部103c及びトラフィック情報抽出部103dによってトラフィック情報抽出装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラフィック情報抽出装置、トラフィック情報抽出システム、トラフィック情報抽出方法に係り、特に、VPN(Virtual Private Network)においてトラフィック量に関する情報を抽出する、トラフィック情報抽出装置、トラフィック情報抽出システム、トラフィック情報抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
VPNは、トンネリング(Tunneling)機能や暗号化機能などを備え、パケットに新しいヘッダを付け加え、カプセル化(Encapsulation)して通信を行う独立したネットワークである。通信事業者等VPNサービスを提供する者は、複数のVPNを収容できるよう、例えばIP/MPLS技術を用いたネットワークを構成し、サービスを提供している。当該VPNを使用した場合、ユーザは他のユーザの使用アドレス等を意識することなく、プライベート・アドレスによる通信やマルチプロトコル通信を実現することができる。
【0003】
図6は、一般的なVPNを説明するための図である。VPNを収容、提供する共通のネットワークであるVPN提供ネットワークVは、複数のルータ(router)を含んでいる。ルータのうち、顧客のルータであるCE(Customer Edge)ルータを収容し、CEルータと直接接続されるルータをPE(Provider Edge)ルータとする。また、VPN提供ネットワークVにおいて、PEルータ以外のルータをP(Provider)ルータとする。図6中、CEルータに「CE」の記号を付して示す。また、PEルータに「PE」の記号を付し、Pルータに「P」の記号を付して示す。
【0004】
例えば、VPN-AとVPN−Bがある場合、実線で囲ったCEルータがVPN−Aを構成し、点線で囲ったCEルータがVPN−Bを構成するという形とすると、VPN−A、VPN−Bはそれぞれ独立にアドレス設計等を実施することができ、独立のネットワークとして提供される。また許容される通信はVPN−A内のみ、VPN−B内のみとなるように、VPN提供ネットワークVの制御が実施される。また、各VPNを構成するCEルータ群のうち、各CEルータをそれぞれVPNサイトとも記す。
【0005】
ところで、近年、VPNの需要拡大によってVPNで使用される通信帯域が増加し、ルータにかかる負荷も大きくなる傾向にある。現状では、回線増速や設備の増設等によって通信帯域の増加に対応しているが、より効率的に通信帯域の増加に対応する技術が求められている。
VPNを収容、提供するVPN提供ネットワークは、予め設計されたネットワーク・トポロジ(Network topology:以下、単にトポロジと記す)を元に構成され、VPN提供ネットワーク内の通信経路については、VPN提供ネットワーク内で動作するルーティングプロトコルにより自動、あるいはスタティック設定による手動、あるいはその両方を用いることで決定される。
【0006】
VPNの通信帯域の増加に効率的に適応するには、VPN提供ネットワーク内におけるボトルネックとなるポイントの増速だけでなく、当該ポイントをバイパスするといったトポロジ情報の変更(物理的ネットワーク設計の変更)や、あるいはMPLS技術で使用されるRSVP−TEを用いたTEトンネルを利用することでボトルネックポイントを迂回させることも方法として考えられる。しかし、これを実現するためには、VPNサイト間の通信経路上のトラフィック量(通信経路上を移動するデータ量)を把握することが必要になる。
【0007】
VPNのトラフィック量を把握する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1記載の発明は、ラベルスイッチパスの通信経路に関する情報(以下、LSP情報と記す)を監視装置が収集している。LSP情報には、パケットに付与されるラベルや通信経路のUP、Down、帯域情報やその他のパラメータが含まれる。このような特許文献1記載の発明によれば、図6中のPEルータ、Pルータから通信経路の情報を取得して、VPNのトラフィックを把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−286818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した特許文献1記載の発明は、VPNに含まれる複数のPEルータ及びPルータから情報を収集し、収集された情報を解析することが必要になる。上記したLSP情報の解析は、パケットの深いレベル(データ部分)の情報を抽出するため、情報の収集や演算処理にかかる負荷が大きくなる。また、特許文献1記載の発明では、より多くのルータからトラフィック量に関するトラフィック情報を取得することにより、抽出されるトラフィック情報の精度を高めることができるようになる。このため、特許文献1記載の発明を使って正確なトラフィック情報を抽出しようとすると、その処理にかかる負荷が益々大きくなることになる。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、情報処理や演算にかかる負荷が従来技術よりも小さく、しかも正確にトラフィック量を把握できるトラフィック情報抽出装置、トラフィック情報抽出システム、トラフィック情報抽出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様のトラフィック情報抽出装置は、第1ネットワーク(例えば図1に示したネットワーク112、113、114)に含まれる複数のルータのうち、第2ネットワーク(例えば図1に示したVPN提供ネットワーク111)に含まれるルータと直接接続される第1ルータ(例えば図1に示したPEルータP、Q)と、第1ネットワークに含まれる複数のルータのうち、第3ネットワーク(例えば図1に示したネットワーク115、116、7)に含まれるルータと直接接続される第2ルータ(例えば図1に示したPEルータU、V)と、の間の通信経路のトラフィック量に関する情報を抽出するトラフィック情報抽出装置(例えば図1に示したフロー計算部103)であって、前記第1ルータ及び前記第2ルータから、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路のトラフィック量を取得するフロー情報取得部(例えば図1に示したフロー情報取得部103a)と、前記第1ルータと前記第2ルータとの間に設けられている一つまたは複数の第3ルータ(例えば図1に示したPルータR、S、T)の接続に関する関係を示す、予め設定されているトポロジ情報を取得するトポロジ取得部(例えば図1に示したトポロジ取得部103b)と、前記トポロジ取得部によって取得された前記トポロジ情報から、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路を特定する通信経路特定部(例えば図1に示した通信経路特定部103c)と、前記フロー情報取得部によって取得されたトラフィック量を、前記通信経路特定部によって特定された前記通信経路のトラフィック量とするトラフィック情報抽出部(例えば図1に示したトラフィック情報抽出部103d)と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様のトラフィック情報抽出装置は、前記第3ルータが複数ある場合、前記通信経路特定部が、前記第1ルータと直接接続される第3ルータである直結ルータと直接または間接的に接続される他の第3ルータを特定するための情報を前記トポロジ情報から順次取得し、前記トポロジ情報から取得された情報によって特定された第3ルータが、前記第2ルータと直接接続されている場合、前記第1ルータから前記トポロジ取得部によって情報が取得された複数の第3ルータを経由し、前記第2ルータに達するまでの経路を、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路として特定することを特徴とする。
また、本発明の一態様のトラフィック情報抽出装置は、前記トポロジ情報が、前記第3ルータ同士の接続関係を示す情報と、前記第3ルータと前記第1ルータとの接続関係を示す情報と、前記第3ルータと前記第2ルータとの接続関係を示す情報と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様のトラフィック情報抽出システムは、第1ネットワークに含まれる複数のルータのうち、第2ネットワークに含まれるルータと直接接続される第1ルータと、第1ネットワークに含まれる複数のルータのうち、第3ネットワークに含まれるルータと直接接続される第2ルータと、の間の通信経路のトラフィック量に関する情報を抽出するトラフィック情報抽出装置であって、前記第1ルータ及び前記第2ルータから、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路のトラフィック量を取得するフロー情報取得部と、前記第1ルータと前記第2ルータとの間に設けられている一つまたは複数の第3ルータの接続関係を示す、予め設定されているトポロジ情報を取得するトポロジ取得部と、前記トポロジ取得部によって取得された前記トポロジ情報から、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路を特定する通信経路特定部と、前記フロー情報取得部によって取得されたトラフィック量を、前記通信経路特定部によって特定された前記通信経路のトラフィック量とするトラフィック情報抽出部と、を備えるトラフィック情報抽出装置と、前記第1ルータ及び前記第2ルータから、前記第1ルータと前記第2ルータとの間のトラフィック量にかかる情報を収集して前記フロー情報取得部に供給するフロー情報取得サーバ(例えば図1に示したフロー管理部104)と、予め設定されているトポロジ情報を、前記トポロジ取得部に供給するトポロジ情報管理サーバ(例えば図1に示したトポロジ管理部105)と、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様のトラフィック情報抽出方法は、第1ネットワークに含まれる複数のルータのうち、第2ネットワークに含まれるルータと直接接続される第1ルータと、第1ネットワークに含まれる複数のルータのうち、第3ネットワークに含まれるルータと直接接続される第2ルータと、の間の通信経路のトラフィック量に関する情報を抽出するトラフィック情報抽出方法であって、前記第1ルータ及び前記第2ルータから、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路のトラフィック量を取得する第1ステップ(例えば図5に示したステップS501〜S504)と、前記第1ルータと前記第2ルータとの間に設けられている一つまたは複数の第3ルータの接続に関する関係を示す、予め設定されているトポロジ情報を取得する第2ステップ(例えば図5に示したステップS505〜S506)と、前記第2ステップにおいて取得された前記トポロジ情報から、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路を特定する第3ステップ(例えば図5に示したステップS505〜S507)と、前記第1ステップにおいて取得されたトラフィック量を、前記第3ステップにおいて特定された前記通信経路のトラフィック量とする第4ステップ(例えば図5に示したステップS508)と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1ルータ、第2ルータのみからフロー情報(トラフィック量情報)を取得するだけでよく、情報収集にかかる装置の負荷を軽減することができる。また、第3ルータに関する接続関係を示す情報を、予め設定されているトポロジ情報から取得するため、ルータを通るデータの情報を抽出するよりも通信経路を特定する処理にかかる負荷を軽減することができる。さらに、通信経路特定の精度を高めることによって処理の負荷が大きくなることがない。このため、本発明は、情報処理や演算にかかる負荷が従来技術よりも小さく、しかも正確にトラフィック量を把握できるトラフィック情報抽出装置、トラフィック情報抽出システム、トラフィック情報抽出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態のトラフィック情報抽出システムを説明するための図である。
【図2】図1に示したPEルータPについてのVPN収容情報を説明するための図である。
【図3】(a)は、図1に示したPEルータPのフロー情報を説明するための図である。(b)は、フロー情報から得られるトラフィック量を説明するための図である。
【図4】図1に示したPEルータPについての、コンフィグファイルを例示した図である。
【図5】本実施形態のトラフィック情報抽出方法を説明するための図である。
【図6】一般的なVPNを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照して本発明に係るトラフィック情報抽出装置、トラフィック情報抽出システム、トラフィック情報抽出方法の一実施形態を説明する。
(トラフィック情報抽出システム)
図1は、本実施形態のトラフィック情報抽出システムを説明するための図である。図示したトラフィック情報抽出システム101は、VPN提供ネットワーク111のフローを把握するためのシステムである。なお、本実施形態でいうフローとは、VPN提供ネットワーク111における通信経路と、通信経路を移動するデータの量(トラフィック量)と、を合わせた情報を指すものとする。
【0017】
トラフィック情報抽出システム101は、フロー把握の対象となるVPNをユーザが指定するためのVPN指定部102と、指定されたフローを計算するフロー計算部103と、フローの計算のため、フロー計算部103にPEルータから取得された情報(以下、フロー情報と記す)を提供するフロー管理部104と、フローの計算のため、フロー計算部103にPルータの接続関係を示す情報(以下、トポロジ情報と記す)を提供するトポロジ管理部105と、PEからフロー情報を収集する通信部106と、を含んでいる。
【0018】
フロー計算部103は、フロー管理部104からフロー情報及びVPN情報を取得するフロー情報取得部103a、トポロジ管理部105からトポロジ情報を取得するトポロジ管理部103b、フロー情報及びVPN情報を抽出するトラフィック情報抽出部103d、フロー情報及びトポロジ情報から通信経路を特定するための演算を行う通信経路特定部103cを含んでいる。
【0019】
また、本実施形態では、図1に示したVPNのフロー情報を抽出するものとしてトラフィック情報抽出システムを説明する。図1に示したVPN提供ネットワーク111は、複数のネットワーク112〜117を収容している。複数のネットワーク112〜117のうち、本実施形態では、ネットワーク112とネットワーク115とが1つのVPNを構築し、ネットワーク113とネットワーク116とが1つのVPNを構築する。また、ネットワーク114とネットワーク117が1つのVPNを構築するものとする。
【0020】
図中に示したルータα、β、Χ、Δ、Φ、Eは、ネットワーク112〜117のいずれかに含まれて、かつ、VPN提供ネットワーク111のルータに直接接続されるCEルータを示す。また、VPN提供ネットワーク111を構成するルータとしてPEルータとなるのが、ルータP、Q、U、V、Pルータとなるのが、ルータR、S、Tである。
【0021】
PEルータPは、3つのインターフェースを有している。3つのインターフェースのうち、CEルータα、βと接続するインターフェースa、bをIIF(InputInterFace)、PルータRと接続するインターフェースcをOIF(OutputInterFace)とも記す。IIF、OIFはトラフィックの流れを意識した記載であり、例えばCEルータα→PEルータP向きのトラフィックの流れを考えた場合に、PEルータPはインターフェースaがInput側となるため、IIFと記載している。
【0022】
また、PEルータQは、2つのインターフェースを有している。2つのインターフェースのうち、CEルータΧと接続するインターフェースqをIIF、PルータHと接続するインターフェースdをOIFとも記す。また、本実施形態では、図1に示すように、PEルータU、V、PルータR、S、Tについても、インターフェースの各々に小文字のアルファベットを付して示す。インターフェースを示すアルファベットは、以降の説明において使用される。
【0023】
(フロー管理部)
フロー管理部104は、VPN情報と、フロー情報とを保持している。ここで、VPN情報、フロー情報について説明する。
図2は、図1に示したPEルータPについてのVPN情報を説明するための図である。VPN情報は、PEルータPと接続するCEルータα、βに対応するVPNα、βと、このVPNα、βに接続するPEルータPのインターフェースa、bを示している。
【0024】
図3(a)は、図1に示したPEルータPのフロー情報を説明するための図である。
フロー情報は、PEルータPをVPNαと接続するIIF、OIFを示す情報と、PEルータPのOIFから送出されたデータが、1つの通信経路を通って達する他のPEルータ(以下、対向PEルータ(図中、対向PEルータアドレスと記す)と記す)を示す情報と、VPNαから対向PEルータに移動するデータのトラフィック量と、を含む。また、フロー情報は、PEルータPをVPNβと接続するIIF、OIFを示す情報と、PEルータPの対向PEルータ(図中対向PEルータアドレスと記す)を示す情報と、VPNβから対向PEルータに移動するデータのトラフィック量と、を含む。なお、当該フロー情報中に含まれる対向PEルータアドレスについては、フローキーとしてBGP nexthopアドレスを利用することにより、把握可能である。また、IIF、OIFは実際にパケットが流入、送出されるインターフェース名を元に把握可能である。
【0025】
図3(a)に示したフロー情報によれば、図3(b)に示したように、CEルータαから対向PEルータUに向かうデータ(図中に矢線301を付して示す)のトラフィック量、CEルータαから対向PEルータVに向かうデータ(図中に矢線302を付して示す)のトラフィック量、CEルータβから対向PEルータUに向かうデータ(図中に矢線303を付して示す)のトラフィック量、CEルータβから対向PEルータVに向かうデータ(図中に矢線304を付して示す)のトラフィック量を把握することができる。
【0026】
上記したVPN情報及びフロー情報は、PEルータによって保持されていて、通信部106がPEルータと通信することによって収集される。VPN情報及びフロー情報の収集は、定期的に行うものであってもよいし、必要に応じて行うものであってもよい。
フロー管理部104は、収集されたVPN情報及びフロー情報を管理する。なお、本実施形態において、VPN情報及びフロー情報の「管理」とは、VPN情報及びフロー情報に識別情報を付して図示しないメモリの所定のアドレスに保存し、必要に応じて読みだすことをいう。
【0027】
(トポロジ管理部)
本実施形態において、トポロジ情報とは、VPN提供ネットワークにおける物理的結線(トポロジ)および通信経路を設定するための情報を指すものとする。トポロジ情報は、例えば、コンフィグファイル(configuration file)の形式で設定される。
図4(a)は、トポロジ管理部105に保持されている、図1に示したPEルータPについての結線状態(コンフィグファイル)を例示した図である。図4(a)によれば、PEルータPは3つのインターフェースa、b、cを有し、インターフェースcがPルータRに接続されていることが分かる。また、図4(b)は、図1に示したPルータRの結線状態を例示した図であって、PルータRのインターフェースはc、d、e、fであり、例えばインターフェースfにPルータTが接続されていることが分かる。
【0028】
さらに、図4(c)は、図1に示したPルータTの結線状態を例示した図である。PルータTのインターフェースはf、g、h、jであり、例えばインターフェースhにPEルータUが接続されていることが分かる。
上記のように、全PE、Pルータの結線状態を示す情報が管理されている。本実施形態では、コンフィグファイルを使い、PEルータPのインターフェースcから対向PEルータであるPEルータUまでの通信経路を特定することができる。
【0029】
なお、コンフィグファイルは、トポロジ情報に応じてユーザが手動で設定するものでもよい。また、ルータの設定情報から自動的に生成することも可能である。
また、本実施形態では、説明の簡単化のため、インターフェースを特定する記号として、図1に示したインターフェースのアルファベットを図4(a)、(b)、(c)中に示している。しかし、インターフェースを識別する情報は、ルータごとに固有に設定されるものである。このため、例えば、図1に示したインターフェースcを示す識別情報が、PEルータPとPルータRとで異なっている場合もある。
【0030】
(フロー計算部、トラフィック情報抽出装置)
フロー計算部103は、本実施形態において、トラフィック情報抽出装置として機能する。このため、フロー情報取得部103aが、フロー管理部104からVPN情報及びフロー情報を取得する。また、トポロジ取得部103bが、トポロジ管理部105からコンフィグファイルを取得する。そして、通信経路特定部103c及びトラフィック情報抽出部103dが、VPN情報及びフロー情報と、コンフィグファイルとを使って所定のPEルータから対向PEルータに至るデータのトラフィック量を算出する。
【0031】
(VPN指定部)
VPN指定部102は、キーボードやタッチパネル等のユーザインターフェースとして構成される。ユーザは、VPN指定部102を介し、データの送信元となるCEルータと接続されているVPN間通信を把握したい検索対象のVPNを指定する。
【0032】
(トラフィック情報抽出方法)
次に、フロー計算部103において実行されるトラフィック量を算出する処理を説明する。トラフィック量を算出する一連の処理が、本実施形態のトラフィック情報抽出方法に相当する。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、1つのOIFから異なる通信経路を通って同じPEルータに達する通信経路はないもとする。
【0033】
図5は、本実施形態のトラフィック情報抽出方法を説明するための図である。ユーザは、VPN指定部102を介して検索対象のVPNを指定する。フロー計算部103は、指定されたVPNに含まれるCEルータと直接接続されているPEルータのうち基点となる1つのPEルータ(基点PEルータとする)を選択する(ステップS501)。基点PEルータの選択は、VPN情報から指定されたVPNを検出し、このVPNに対応するCEルータと接続されるインターフェースを有するPEルータを1つ特定することによって可能である。
【0034】
次に、フロー計算部103は、基点PEルータにおけるインターフェース(IIF)を取得し(ステップS502)、フロー情報から、特定された基点PEルータの対向PEルータ(ステップS503)を特定するための情報を取得し、そして、IIFから対向PEルータに向かって移動するデータのトラフィック量を抽出する(ステップS504)。
次に、フロー計算部103は、フロー情報に含まれるインターフェース(OIF)の情報を取得する。また、コンフィグファイルからOIFに接続される、Next hopルータとなる第1番目のPルータ(Next hopルータn0)を特定する(ステップS505)。
【0035】
ステップS505の処理を、図3(a)、(b)と図4に示した例を使って説明する。フロー計算部103は、フロー情報から対向PEルータ(Uとする)に対応するOIFがインターフェースcであることを特定する。そして、図4(a)に示したコンフィグファイルから、インターフェースcと接続するPルータがPルータRであることを検出する。このような場合、PルータRが、Next hopルータn0となる。
【0036】
次に、フロー計算部103は、通信部106を介してPルータRへ接続し、対向PEルータアドレス(アドレスU)宛て経路情報を取得し、ネクストホップインターフェース名を取得する(CLIあるいはSNMP等、ルータから情報を収集する)。その後、コンフィグファイルから、上記ネクストホップインターフェース名を検索することで、PルータRに接続されるルータが検出され、検出されたルータをNext hopルータn1とする(ステップS506)。本実施形態では、PルータRにおいて、対向PEルータアドレス(アドレスU)宛てのネクストホップインターフェースがfとすると、本実施形態では、PルータTがNext hopルータn1となる。
【0037】
なお、上記実施例ではトポロジ管理部105で管理するのはコンフィグファイルのみでPEルータアドレスについては、その都度取得する例を記載したが、事前にトポロジ管理部において、全PEルータアドレス宛の経路情報を事前に取得しておくことで、都度取得の手間を省略することも可能である。
フロー計算部103は、PルータTが、フロー情報により特定した対向PEルータ(例えばPEルータU)と一致しているか否か判断する(ステップS507)。本実施形態では、PルータTはPEルータUではない(ステップS507:No)。このため、フロー計算部103は、Next hopルータの「n1」を1つカウントアップし、再度ステップS506を実行する。この処理により、PルータTの次のNext hopルータが特定される。
【0038】
ステップS506を再度実行すると、本実施形態では、対向PEルータであるPEルータUがPルータTと直接接続されるNext hopルータであることが分かる(ステップS507:Yes)。このため、通信経路特定部103cは、VPNαからPEルータUに向かう通信経路は、PEルータPからPルータR、PルータTを経由してPEルータUに達するまでの経路であると判断する。そして、フロー情報から得たトラフィック量が、PEルータPからPルータR、PルータTを経由してPEルータUに達するまでの経路のトラフィック量であると判断する。以上の情報とフロー情報とを合わせて、PEルータ(VPN)間を移動するデータの経路と、この経路を移動したデータのトラフィック量とを対応付ける処理(マッピング)が実行される(ステップS508)。
【0039】
次に、フロー計算部103は、ステップ501で選択されたPEルータに他のフローがあるか否か判断する(ステップS509)。他のフローがある場合(ステップS509:Yes)、フロー計算部103は、他のフローについて、ステップS505の処理以降の処理を再度実行する。
また、フロー計算部103は、他のフローがない場合(ステップS509:No)、指定されたVPNと接続する他のPEルータを選択してトラフィック量を把握する処理を実行するか否か判断する(ステップS5010)。処理を実行する必要がある場合(ステップS5010:Yes)、フロー計算部103は、他のPEルータについて、ステップS501の処理以降の処理を再度実行する。フロー計算部103は、処理を実行する必要がない場合(ステップS5010:No)、トラフィック情報抽出の処理を終了する。
【0040】
以上説明した本実施形態のトラフィック情報抽出装置、トラフィック情報抽出システム、トラフィック情報抽出方法によれば、フロー情報はPEルータのみから情報を取得しているため、情報収集にかかるルータへの負荷の低減を図ることができる。また、Pルータの接続を、予め設定されているトポロジ情報に関する情報から特定しているので、ルータを通るデータの情報を抽出するよりも通信経路を特定する処理にかかる負荷を軽減することができる。さらに、通信経路特定の精度を高めたことによって処理の負荷が大きくなることがない。
【0041】
また、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、VPNのトラフィック量を把握することができるため、VPNの設計やトポロジ情報の設定に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
101 トラフィック情報抽出システム
102 VPN指定部
103 フロー計算部
103a フロー情報取得部
103b トポロジ取得部
103c 通信経路特定部
103d トラフィック情報抽出部
104 フロー管理部
105 トポロジ管理部
106 通信部
111 VPN提供ネットワーク
112〜117 ネットワーク
a、b、c、d、e、f、g、h、j、k、m、n、q インターフェース
P、Q、U、V PEルータ
R、S、T Pルータ
α、β、Χ、Δ、Ε、Φ CEルータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ネットワークに含まれる複数のルータのうち、第2ネットワークに含まれるルータと直接接続される第1ルータと、第1ネットワークに含まれる複数のルータのうち、第3ネットワークに含まれるルータと直接接続される第2ルータと、の間の通信経路のトラフィック量に関する情報を抽出するトラフィック情報抽出装置であって、
前記第1ルータ及び前記第2ルータから、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路のトラフィック量を取得するフロー情報取得部と、
前記第1ルータと前記第2ルータとの間に設けられている一つまたは複数の第3ルータの接続に関する関係を示す、予め設定されているトポロジ情報を取得するトポロジ取得部と、
前記トポロジ取得部によって取得された前記トポロジ情報から、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路を特定する通信経路特定部と、
前記フロー情報取得部によって取得されたトラフィック量を、前記通信経路特定部によって特定された前記通信経路のトラフィック量とするトラフィック情報抽出部と、
を含むことを特徴とするトラフィック情報抽出装置。
【請求項2】
前記第3ルータが複数ある場合、
前記通信経路特定部は、
前記第1ルータと直接接続される第3ルータである直結ルータと直接または間接的に接続される他の第3ルータを特定するための情報を前記トポロジ情報から順次取得し、
前記トポロジ情報から取得された情報によって特定された第3ルータが、前記第2ルータと直接接続されている場合、前記第1ルータから前記トポロジ取得部によって情報が取得された複数の第3ルータを経由し、前記第2ルータに達するまでの経路を、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路として特定することを特徴とする請求項1に記載のトラフィック情報抽出装置。
【請求項3】
前記トポロジ情報は、前記第3ルータ同士の接続関係を示す情報と、前記第3ルータと前記第1ルータとの接続関係を示す情報と、前記第3ルータと前記第2ルータとの接続関係を示す情報と、を含むことを特徴とする請求項2に記載のトラフィック情報抽出装置。
【請求項4】
第1ネットワークに含まれる複数のルータのうち、第2ネットワークに含まれるルータと直接接続される第1ルータと、第1ネットワークに含まれる複数のルータのうち、第3ネットワークに含まれるルータと直接接続される第2ルータと、の間の通信経路のトラフィック量に関する情報を抽出するトラフィック情報抽出装置であって、前記第1ルータ及び前記第2ルータから、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路のトラフィック量を取得するフロー情報取得部と、前記第1ルータと前記第2ルータとの間に設けられている一つまたは複数の第3ルータの接続関係を示す、予め設定されているトポロジ情報を取得するトポロジ取得部と、前記トポロジ取得部によって取得された前記トポロジ情報から、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路を特定する通信経路特定部と、前記フロー情報取得部によって取得されたトラフィック量を、前記通信経路特定部によって特定された前記通信経路のトラフィック量とするトラフィック情報抽出部と、を備えるトラフィック情報抽出装置と、
前記第1ルータ及び前記第2ルータから、前記第1ルータと前記第2ルータとの間のトラフィック量にかかる情報を収集して前記フロー情報取得部に供給するフロー情報取得サーバと、
予め設定されているトポロジ情報を、前記トポロジ取得部に供給するトポロジ情報管理サーバと、
を含むことを特徴とするトラフィック情報抽出システム。
【請求項5】
第1ネットワークに含まれる複数のルータのうち、第2ネットワークに含まれるルータと直接接続される第1ルータと、第1ネットワークに含まれる複数のルータのうち、第3ネットワークに含まれるルータと直接接続される第2ルータと、の間の通信経路のトラフィック量に関する情報を抽出するトラフィック情報抽出方法であって、
前記第1ルータ及び前記第2ルータから、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路のトラフィック量を取得する第1ステップと、
前記第1ルータと前記第2ルータとの間に設けられている一つまたは複数の第3ルータの接続に関する関係を示す、予め設定されているトポロジ情報を取得する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて取得された前記トポロジ情報から、前記第1ルータと前記第2ルータとの間の通信経路を特定する第3ステップと、
前記第1ステップにおいて取得されたトラフィック量を、前記第3ステップにおいて特定された前記通信経路のトラフィック量とする第4ステップと、
を含むことを特徴とするトラフィック情報抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46371(P2013−46371A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185013(P2011−185013)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】