説明

トラフィック配分算出方法、トラフィック配分算出装置、セッション制御装置、および記録媒体

【課題】IP網のC−planeにおいて、トラフィックの輻輳時に優先的に一部のトラフィックの疎通を確保するトラフィック制御技術を提供する。
【解決手段】トラフィック配分算出装置10は、トラフィックの輻輳時に、輻輳セッション制御装置の接続可能呼数Xと、発呼規制セッション制御装置lから取得するクラスi、測定周期k−1の発信呼数ai,k-1,lとを用いて、クラスi、測定周期k、発呼規制セッション制御装置lの配分呼数xi,k,lを算出する。なお、クラスiの定義は、セッション開始/変更要求(以降、発呼と称する)の疎通を優先的に確保するための優先配分クラスと、そうでない非優先配分クラスと分けて、配分呼数xi,k,lを算出する。また、優先配分クラスの発呼が規制遭遇となった場合には、非優先配分クラスの優先度の最下位から順に再接続を行って、その規制遭遇となった発呼を優先して疎通を確保する再試行を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP(Internet Protocol)網を介する通信サービスのために、コネクション制御等のシグナリングを行うC−plane(呼制御信号プレーン)において、トラフィックの輻輳時に優先的に一部のトラフィックの疎通を確保するトラフィック制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IP網を介する通信サービスにおいて、特定のセッション制御装置に発呼(本明細書では、セッション開始/変更要求を意味する。)が集中して、そのセッション制御装置が輻輳状態となる場合がある。このようなトラフィックの輻輳を解消する方法として、例えば、特許文献1には、公衆電話網において着信集中等によってトラフィックの疎通が困難となった交換機および地域を対地(通信先)として発信呼の制御を行う場合、当該対地へ疎通させる総呼数(呼数総量)を発信側の各交換機に配分し、この配分値を超える発信呼数分を各交換機で規制遭遇とする。なお、配分値は、接続可能な呼数×発信エリア内の発信呼数/呼数総量によって算出することが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、交換機等の輻輳装置へ加わる呼をクラス分けし、それらのクラスごとの呼数を周期的に測定しておき、一つ前の周期において測定された実績値に基づいて、各クラスへの呼数の配分を決定する方法が開示されている。したがって、各クラスへの配分値は、トラフィックのトレンドに沿ったものとなる。
【0004】
また、特許文献3には、IP電話システムにおいて、多数の呼の集中によって、C−planeのソフトスイッチの機能を停止状態に陥らせるような輻輳の検出方法として、呼数を監視し、当該呼数と所定の呼数とを比較し、当該呼数が所定の呼数より大きい場合に輻輳と判定する。そして、輻輳を解消する優先順位を端末ごとに予め定めておいて、優先順位の高いほどその端末宛の呼数密度(単位時間あたりの呼数)を多く設定する制御を行うことが開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、音声電話サービスとテレビ電話サービスを固定の帯域割合で提供するIP網において、音声電話サービスの使用帯域が不足するような輻輳が発生した場合、ユーザデータの送受信を行うU−plane(ユーザ情報転送プレーン)のリソースについて、テレビ電話サービス用の帯域の一部を音声電話サービスに割り当てる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許2749659号公報
【特許文献2】特許3456406号公報
【特許文献3】特許3715604号公報
【特許文献4】特開2007−336146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜4に開示されている方法では、IP網において優先的に一部のトラフィックの疎通を確保することが困難である。すなわち、特許文献3に記載の技術は、特定のサービスの発信トラフィックとそれ以外のサービス(例えば、電話とそれ以外)の発信トラフィックとを区別せずに、一律に呼数密度を用いて制御しているため、優先的に一部のトラフィックの疎通を確保できないという問題がある。特許文献1についても、特許文献3と同様に、特定のサービスとそれ以外のサービスとを区別していない。また、特許文献4に記載の技術は、U−planeの帯域の配分を変更しているだけであるので、C−planeにおける呼の疎通を確保するものではない。さらに、特許文献2に記載の技術は、トラフィックのトレンドに沿った制御を行うものであって、優先的に一部のトラフィックの疎通を確保できない。
【0008】
そこで、本発明の課題は、このような問題を解決するために、IP網のC−planeにおいて、トラフィックの輻輳時に優先的に一部のトラフィックの疎通を確保するトラフィック制御技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、IP網のC−plane(呼制御信号プレーン)に用いられる複数のセッション制御装置のいずれかの輻輳時に、輻輳した前記セッション制御装置である輻輳セッション制御装置へ処理を要求するセッション開始/変更要求(以降、セッション開始/変更要求を発呼と称す)のうち、前記輻輳セッション制御装置での処理が可能な発呼の呼数である接続可能呼数をXとし、当該輻輳セッション制御装置へ加わる発呼を、その発呼に含まれる情報に基づいて定義されたクラスiごとに、前記輻輳セッション制御装置へ向かう発呼を受信する前記セッション制御装置である発呼規制側のセッション制御装置lにおいて周期的に行われるトラフィック測定に基づいて、測定周期k−1のトラフィック測定データから算出されるクラスの集合Gに属するクラスiの発信呼数をai,k-1,l(クラスi、測定周期k−1、発呼規制側のセッション制御装置l)とし、当該発信呼数ai,k-1,lに基づいて、前記接続可能呼数Xを次測定周期kでのクラスiごとの配分呼数xi,k,・に配分し、クラスiの前記輻輳セッション制御装置へ加わる呼数をxi,k,・以下になるように規制することによって、前記輻輳セッション制御装置が受け付ける呼数合計を前記接続可能呼数X以下に制限するトラフィック配分算出装置において用いられるトラフィック配分算出方法において、前記トラフィック配分算出装置が、演算部と前記クラスの定義を記憶する蓄積部とを備え、前記演算部が、前記蓄積部から読み出した前記クラスiを、輻輳時に優先して疎通を確保する優先配分クラスと輻輳時に優先して疎通を確保しない非優先配分クラスとに振り分け、また前記蓄積部からクラスiごとに予め定めた所定値の初期配分呼数siを読み出し、輻輳検出直後の測定周期kをk=0として、測定周期k>1の場合に、zに関する関数g(z)≦1/zなる関数g:(0,∞)→(0,∞)を用いて、測定周期kの各優先配分クラスのクラスiの配分呼数xi,k,・
i,k,・=g(Rp)・MAX{si,ai,k-1,・} ・・式(1)
として算出し、測定周期kの各非優先配分クラスのクラスiの配分呼数xi,k,・
i,k,・=(ai,k-1,・j∈非優先配分クラスの集合j,k-1,・)・(1−g(Rp)・Rp)・X
・・式(2)
として算出することを特徴とする。
ただし、Rp=(Σi∈優先配分クラスの集合MAX{si,ai,k-1,・})/X、s=X、ai,k-1,・およびxi,k,・の中点「・」は、ドット記法であり、すべての前記発呼規制側のセッション制御装置lについての総和を表す。
【0010】
かかる構成によれば、測定周期k>1においては、式(1)のMAX{si,ai,k-1,・}に示すように、初期配分呼数siまたは前測定周期k−1での発信呼数ai,k-1,・のいずれか大きい方を選択するので、優先配分クラスについては、常に初期配分呼数を確保しつつ、発信呼数のトレンドに見合った配分呼数を確保することが可能となる。また、そのため、優先的に一部(優先配分クラス)のトラフィックの疎通を確保することができる。また、式(2)によって、接続可能呼数Xを超えないように、非優先配分クラスの配分呼数を決定することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のトラフィック制御方法において、前記演算部は、測定周期k>1の場合に、前記発呼規制側のセッション制御装置lに配分する、測定周期kのクラスiの配分呼数xi,k,lを、
i,k,l=(ai,k-1,l/ai,k-1,.)・xi,k,. ・・式(3)
として算出することを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、測定周期k>1においては、式(3)に示すように、測定周期kにおける各発呼規制側のセッション制御装置の各クラスの配分呼数を、前測定周期k−1の発信呼数に基づいて決定する。したがって、各発呼規制側のセッション制御装置の各クラスの配分呼数を、発信呼数のトレンドに沿って決定することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のトラフィック制御方法において、前記演算部が、前記蓄積部から前記初期配分呼数siを読み出して、測定周期k=1の場合に、クラスiの配分呼数xi,k,・を、
i,k,・=si ・・式(4)
とすることを特徴とする。
ただし、s=Xである。
【0014】
かかる構成によれば、測定周期k=1の時点でのクラスiの配分呼数は、測定周期k−1の発信呼数がないので、式(1)または式(2)を用いて算出できなかった。しかし、式(4)によって、測定周期k=1の時点において、適切な(過規制とならない)初期配分呼数を設定することが可能となる。したがって、測定周期k=1の時点から、配分呼数のトレンドを明確にすることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のトラフィック制御方法であって、前記演算部が、測定周期k=1の場合に、平常時のトラフィック測定データから算出されるクラスの集合Gに属するクラスiの平常時発信呼数をui,l(クラスi、発呼規制側のセッション制御装置l)とし、当該平常時発信呼数に基づいて、前記発呼規制側のセッション制御装置lに配分する、測定周期kのクラスiの配分呼数xi,k,lを、
i,k,l=(ui,l/ui,.)・xi,k,. ・・式(5)
として算出することを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、測定周期k=1の時点での発呼規制側のセッション制御装置lに配分する配分呼数は、測定周期k−1の発信呼数がないので、式(3)を用いて算出できなかった。しかし、式(5)によって、測定周期k=1の時点において、実態値である平常時発信呼数に基づいて、配分呼数を設定することが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のトラフィック制御方法であって、前記演算部が、発呼に含まれるSIP(Session Initiation Protocol)、SIMPLE(SIP for Instant Messaging and Presence Leveraging Extensions)の各種メソッド、およびSDP(Session Description Protocol)のパラメータと、発信加入者区分と、緊急呼区分とのいずれかの組み合わせによって、前記クラスを定義することを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、IP網においても、容易にクラスの定義を行うことが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、IP網のC−plane(呼制御信号プレーン)に用いられる複数のセッション制御装置のいずれかの輻輳時に、輻輳した前記セッション制御装置である輻輳セッション制御装置へ処理を要求するセッション開始/変更要求(以降、セッション開始/変更要求を発呼と称す)のうち、前記輻輳セッション制御装置での処理が可能な発呼の呼数である接続可能呼数をXとし、当該輻輳セッション制御装置へ加わる発呼を、その発呼に含まれる情報に基づいて定義されたクラスiごとに、前記輻輳セッション制御装置へ向かう発呼を受信する前記セッション制御装置である発呼規制側のセッション制御装置lにおいて周期的に行われるトラフィック測定に基づいて、測定周期k−1のトラフィック測定データから算出されるクラスの集合Gに属するクラスiの発信呼数をai,k-1,l(クラスi、測定周期k−1、発呼規制側のセッション制御装置l)とし、当該発信呼数ai,k-1,lに基づいて、前記接続可能呼数Xを次測定周期kでのクラスiごとの配分呼数xi,k,・に配分し、クラスiの前記輻輳セッション制御装置へ加わる呼数をxi,k,・以下になるように規制することによって、前記輻輳セッション制御装置が受け付ける呼数合計を前記接続可能呼数X以下に制限するトラフィック配分算出装置であって、前記発呼規制側のセッション制御装置から前記トラフィック測定データを受け取り、これを蓄積すると共に、下記配分値決定部に前記発信呼数を通知し、その配分値決定部の算出結果である前記配分呼数を前記発呼規制側のセッション制御装置に通知する測定データ管理部と、前記測定データ管理部から前記トラフィック測定データを受け取り、これを基に請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のトラフィック配分算出方法で前記配分呼数を算出する配分値決定部とを備えることを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、請求項1〜請求項5と同様に、測定周期k>1においては、式(1)のMAX{si,ai,k-1,・}に示すように、初期配分呼数siまたは前測定周期k−1での発信呼数ai,k-1,・のいずれか大きい方を選択しているので、優先配分クラスについては、常に初期配分呼数を確保しつつ、発信呼数のトレンドに見合った配分呼数を確保することが可能となる。そのため、優先的に一部(優先配分クラス)のトラフィックの疎通を確保することができる。また、式(2)によって、接続可能呼数Xを超えないように、非優先配分クラスの配分呼数を決定することが可能となる。また、測定周期k>1においては、式(3)に示すように、測定周期kにおける各発呼規制側のセッション制御装置の各クラスの配分呼数を、前測定周期k−1の発信呼数に基づいて決定する。したがって、各発呼規制側のセッション制御装置の各クラスの配分呼数を、発信呼数のトレンドに沿って決定することが可能となる。また、IP網においても、容易にクラスの定義を行うことが可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のトラフィック配分算出装置から取得した配分呼数xi,k,lに基づいて発呼の接続を判定する前記発呼規制側のセッション制御装置において、前記セッション制御装置が、発呼規制の制御を行う発呼規制部とセッション開始/変更要求である発呼に含まれる情報に基づいて定義されたクラスの定義を記憶する蓄積部とを備え、前記発呼規制部が、前記取得した配分呼数xi,k,lに基づいて、当該蓄積部に記憶されたクラスiの発呼の疎通を確保するか規制遭遇とするかの判定を行った結果、前記優先配分クラスの発呼が規制遭遇となった場合、前記非優先配分クラスの優先度の最下位のクラスから順に再接続を行って、疎通可能となったか否かを判定し、疎通可能と判定されたクラスを介してその規制遭遇となった発呼を優先して疎通させる再試行を実行することを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、優先配分クラスの発呼が規制遭遇となっても、非優先配分クラスにおいて疎通を確保できるクラスを介して、該規制遭遇となった優先配分クラスの発呼の疎通を確保することができる。そのため、優先的に一部(優先配分クラス)の発呼の疎通を確保することができる。また、非優先配分クラスにおいて再接続を行うときに、優先順位の低い方から実行することにより、優先順位のより高い方のクラスの帯域を残しておくことが可能となる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項7に記載のセッション制御装置において、前記発呼規制側のセッション制御装置が、時間を計測する手段と、前記トラフィック配分算出装置から受信した前記配分呼数に基づいて、所定の単位時間あたりの呼数である呼数密度値を用いて発呼規制を行う手段とを備え、発呼規制を行わない未規制クラスにおける処理として、下記の(81)、(82)、(83)の処理を順に行い、
(81)前記トラフィック配分算出装置から全クラスについての呼数密度値の算出の指示を受信し、
(82)前記未規制クラスを含む全クラスの総発信呼数を初期値0から加算し、
(83)当該総発信呼数が全クラスについての呼数密度値未満か否かを判定し、
当該総発信呼数が全クラスについての呼数密度値未満の場合は、再び、(82)へ戻り、当該総発信呼数が全クラスについての呼数密度値未満でない場合は、未規制クラス以外のクラスのすべてについて発呼を規制遭遇とし、呼数密度の前記単位時間が終了した場合には、再び(82)へ戻って処理を順に実行し、前記測定周期が終了した場合には、再び(81)へ戻って処理を順に実行することを特徴とする。
【0024】
かかる構成によれば、前記(82)(83)の処理によって、前記未規制クラスを含む全クラスの総発信呼数を算出し、その層発信呼数が全クラスについての呼数密度値に限りなく近づくようにできるため、輻輳セッション制御装置への接続数が、接続可能呼数Xを超過する可能性を極限まで抑えることができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項7または請求項8に記載のセッション制御装置において、前記発呼規制側のセッション制御装置が、受信した発呼に含まれるSDPのパラメータについて、そのパラメータのパラメータ値が複数ある場合に該複数のパラメータ値に対して1つの代表値を対応させるSDPパラメータ代表値決定写像と、SDPのパラメータに基づいて定義されたクラスとを記憶し、受信した発呼がどのクラスに該当するかを、前記SDPパラメータ代表値決定写像を用いて決定することを特徴とする。
【0026】
かかる構成によれば、発呼に含まれるSDPパラメータについては、そのパラメータ値が複数存在している場合に、その複数のパラメータ値に対して一つの代表値を対応させる写像(SDPパラメータ代表値決定写像)と、SDPのパラメータに基づいて定義されたクラスとを記憶しているので、受信した発呼がどのクラスに該当するかを容易に決定することができる。
【0027】
請求項10に記載の発明は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のトラフィック配分算出方法を実行させるトラフィック配分算出プログラムが記録されたことを特徴とする。このように構成されることにより、この記録媒体を装着されたコンピュータ(トラフィック配分算出装置)は、この記録媒体に記録されたプログラムに基づいた各機能を実現することができる。
【0028】
また、請求項11に記載の発明は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、コンピュータを請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の発呼規制側のセッション制御装置として機能させるセッション制御プログラムが記録されたことを特徴とする。このように構成されることにより、この記録媒体を装着されたコンピュータ(発呼規制側のセッション制御装置)は、この記録媒体に記録されたプログラムに基づいた各機能を実現することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、IP網のC−planeにおいて、トラフィックの輻輳時に優先的に一部のトラフィックの疎通を確保するトラフィック制御技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態における構成例を示す図である。
【図2】本実施形態の概要を示す図である。
【図3】配分呼数の算出処理を示す図である。
【図4】関数g(z)の具体例を示す図である。
【図5】(a)はトラフィック配分算出装置の機能を示す図であり、(b)は発呼規制セッション制御装置の機能を示す図であり、(c)は輻輳セッション制御装置の機能を示す図である。
【図6】発呼規制セッション制御装置とトラフィック配分算出装置との間の情報の流れを示す図である。
【図7】優先配分クラスにおいて発呼が規制遭遇となった場合、その発呼の疎通のために再試行する処理の流れを示す図である。
【図8】未規制クラスにおける処理を示す図である。
【図9】配分呼数の算出処理の具体例を示す図である。
【図10】本実施形態におけるセッション開始/変更要求のプロトコルヘッダから該当のクラスを識別する処理の一例を示す図である。
【図11】クラスの定義の一例を示す図である。
【図12】変形例におけるトラフィック制御システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明を実施するための形態(以降「本実施形態」と称す)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
本実施形態における構成例および概要を、図1および図2を用いて説明する。本実施形態において対象となる装置は、図1に示す、トラフィック配分算出装置10およびセッション制御装置40である。C−planeには、複数のセッション制御装置40A,40B,40C(40)が備えられている。そして、セッション制御装置40は、端末90からの発呼を受け付けて宛先へ伝達する。なお、図1中の実直線は、物理的な接続を表しているのではなく、情報の送受信が可能であることを表しているものとする。トラフィック配分算出装置10は、セッション制御装置40に到着する発呼(本明細書では、セッション開始/変更要求を意味する。)について、発呼の疎通を確保する呼数を、そのセッション制御装置40に指示する装置である。そして、セッション制御装置40は、端末90からの発呼を受け付けて、トラフィック配分算出装置10からの指示に基づいて、発呼の宛先となるセッション制御装置40に向けてパケットを伝達する制御を行う。なお、セッション制御装置40は、図1では3つしか記載していないが、これに限定されるものではない。
【0033】
なお、図1の構成において、例えば、セッション制御装置40Cに、他網や自網のセッション制御装置40から発呼が集中して輻輳が発生したものとする。この場合、セッション制御装置40Cを、輻輳セッション制御装置と称する。また、この輻輳セッション制御装置へ向かう発呼を制御するセッション制御装置40(図1では、40A,40B)を発呼規制セッション制御装置と称する。以下の説明では、この輻輳セッション制御装置および発呼規制セッション制御装置を用いる。
【0034】
次に、図2を用いて、本実施形態における優先的に一部のトラフィックの疎通を確保する処理の流れの概要について説明する。まず、輻輳制御において、特定のサービス(例えば、音声電話サービス等)について、そのトラフィックの疎通を優先的に確保する。そのため、発呼について、クラスiを定義しておく。ここで、クラスの定義の例について、図2を用いて簡単に説明する。クラスiは、例えば、発信加入者区分(一般、緊急等)によって区分し、さらに、呼種の別として、IP網で用いられるSIP(Session Initiation Protocol)、SIMPLE(SIP for Instant Messaging and Presence Leveraging Extensions)の各種メソッドやSDP(Session Description Protocol)のパラメータ等によって区分する。そして、クラスごとに、輻輳時に優先して疎通を確保する優先配分クラスか、あるいは非優先にする非優先配分クラスかを定めて、さらにクラスごとの優先順位を予め決定しておく。図2では、ドットを付した範囲が、優先配分クラスである。
【0035】
トラフィック配分算出装置10は、輻輳セッション制御装置から発呼規制要求を受け付けたとき、その輻輳セッション制御装置の接続可能呼数Xおよび発呼規制セッション制御装置lから取得するクラスi、測定周期k−1の発信呼数ai,k-1,l等を用いて、クラスi、測定周期k、発呼規制セッション制御装置lの配分呼数xi,k,lを算出し、その算出した配分呼数xi,k,lを送信する。そして、発呼規制セッション制御装置lは、受信した配分呼数xi,k,lに基づいて、クラスiの発呼の疎通を確保するか規制遭遇とするかの判断を実行する。なお、測定周期kとは、周期的に行われるトラフィック測定を識別する期間のことである。また、接続可能呼数Xは、自網内の発呼規制セッション制御装置lから到着する発呼の接続可能な呼数であって、トラフィック配分算出装置10のオペレータによる図示しない入力手段(キーボード等)の操作またはセッション制御装置40からの通知等によって、予め、トラフィック配分算出装置10が取得しているものとする。
【0036】
そして、発呼規制セッション制御装置lは、優先配分クラスの発呼が規制遭遇となった場合には、非優先配分クラスの優先度の最下位から順に再接続を行って、最終的に、その発呼を優先して疎通させる再試行を実行する。このことによって、トラフィックの輻輳時に優先的に一部のトラフィックの疎通を確保することが可能となる。
【0037】
次に、本実施形態における、優先的に一部のトラフィックの疎通を確保する処理の詳細について説明する。
始めに、この処理において用いる変数について示す。

X:輻輳セッション制御装置の接続可能呼数
G:{i| iはクラス}
L:{l| lは発呼規制セッション制御装置}
P:{p| pは優先配分クラス}
i,k,l:クラスi、測定周期k、発呼規制セッション制御装置lの配分呼数
i,k,l:クラスi、測定周期k、発呼規制セッション制御装置lの発信呼数
i,l:クラスi、発呼規制セッション制御装置lの平常時発信呼数

なお、以下の説明においては、ドット記法を用いて、表記する。例えば、すべての発呼規制セッション制御装置lへの配分呼数の総和は、xi,k,.と表記する。すなわち、xi,k,.=Σl∈Li,k,l。また、接続可能呼数Xは、セッション制御装置40(図1参照)ごとに、その各種ハードウェアの搭載容量や提供サービス等機能具備状況の違いがあるため異なるが、以降では、1つの輻輳事象を取り上げて説明するため、Xと記しておく。
【0038】
≪呼数配分のポリシ≫
クラスi、測定周期k、発呼規制セッション制御装置lの配分呼数xi,k,lを決定するため、まず、呼数配分のポリシを決めておく。そのポリシについて、以下に示す。
(1)接続可能呼数Xを、優先配分クラスおよび非優先配分クラスに配分し、さらに、発呼規制セッション制御装置lごとに配分する。なお、配分する順番は、基本的には、優先配分クラスが先で、非優先配分クラスが後である。
(2)また、呼数配分の処理において、次の順位でデータを考慮する。
・第一順位 優先的に疎通を確保すべきクラスiに設定された呼数
・第二順位 前測定周期k−1で測定されたトラフィック測定データ
・第三順位 平常時のトラフィック測定データ
なお、前記した第一順位の「優先的に疎通を確保すべきクラスiに設定された呼数」は、例えば、輻輳セッション制御装置の各クラスに必要な機能の具備状況(そのセッション制御装置が加入者を収容するタイプの装置かアプリケーション搭載専用のタイプの装置か、他装置のアプリケーション接続専用か、ビデオサーバを収容している装置であるか否か、またビデオサーバを収容している装置である場合にはそのビデオサーバの同時接続数等)を重視したり、運用上のポリシ等を考慮したりして決められる。
【0039】
≪配分呼数の算出処理≫
配分呼数の算出処理については、図3を用いて説明する。図3は、優先配分クラスおよび非優先配分クラスについて、測定周期k=1、測定周期k>1ごとに、それぞれ、(1)≪接続可能呼数Xからクラスiの配分呼数xi,k,.を算出≫、(2)≪クラスiの配分呼数xi,k,.から発呼規制セッション制御装置lの配分呼数xi,k,lを算出≫の順で配分呼数xi,k,lを算出することを表している。なお、測定周期k=0は、輻輳検出直後の測定周期である。
【0040】
測定周期k=0の時点では、前測定周期k−1のトラフィックデータを使用した所定の算出処理を行えないため、予めクラスiごとに、初期配分呼数siを記憶(設定)しておく。ただし、初期配分呼数siは、そのトータルが接続可能呼数Xに等しくなる(Xを超えないようにする)。すなわち、s.=Xとする。
なお、任意のp∈Pに対しては、優先して疎通を確保するため、初期配分呼数siは、次測定周期k=1以降においても疎通を確保する必要のある呼数に設定しておく。
【0041】
次に、優先配分クラスにおける呼数配分の算出処理について説明する(図3参照)。
測定周期k=1では、図3の(1)に示すように、クラスiの配分呼数xi,k,.=初期配分呼数sとする。そして、図3の(2)に示すように、優先配分クラスの発呼規制セッション制御装置lの配分呼数xi,k,lは、平常時発信呼数ui,lを式(6)に適用して算出される。
優先配分クラスの発呼規制セッション制御装置lの配分呼数xi,k,l
=(ui,l/ui,.)・xi,k,. ・・式(6)
なお、式(6)を用いて、発呼の実績値である平常時発信呼数見合いで配分呼数xi,k,lを決定することによって、実態を反映させることができる。
【0042】
測定周期k>1では、優先配分クラスの配分呼数xi,k,.は、前測定周期k−1におけるクラスiの発信呼数ai,k-1,.を式(7)に適用して算出される。そして、優先配分クラスの発呼規制セッション制御装置lの配分呼数xi,k,lは、測定周期k−1におけるクラスiの発信呼数ai,k-1,.を式(8)に適用して算出される。
優先配分クラスの配分呼数xi,k,.=g(Rp)・MAX{si,ai,k-1,.} ・・式(7)
優先配分クラスの発呼規制セッション制御装置lの配分呼数xi,k,l
=(ai,k-1,l/ai,k-1,.)・xi,k,. ・・式(8)
ただし、Rp=(Σj∈P MAX{sj,aj,k-1,.})/X、g(Rp)≦α/Rp(0<α≦1)である。
ここで、関数gは、優先配分クラスに配分される総配分呼数x.,k,.が接続可能呼数X以下となることを考慮したものである。なお、この関数gの詳細については、後記する。
【0043】
式(7)では、MAX{si,ai,k-1,.}によって、初期配分呼数siまたは前測定周期k−1での発信呼数ai,k-1,.のいずれか大きい方を選択しているので、常に初期配分呼数siを確保しつつ、発信呼数のトレンドに見合った配分呼数を確保することが可能となる。
式(8)では、全発信呼数ai,k-1,.に対するクラスiごとの発信呼数ai,k-1,lの割合で、優先配分クラスの総配分呼数xi,k,.を分配することにより、発信呼数のトレンドに見合った配分が可能となる。
【0044】
次に、非優先配分クラスにおける呼数配分の算出処理について以下に説明する。
測定周期k=1では、図3の(1)に示すように、クラスiの配分呼数xi,k.=初期配分呼数siとする。そして、図3の(2)に示すように、非優先配分クラスの発呼規制セッション制御装置lの配分呼数xi,k,lは、平常時発信呼数ui,lを式(9)に適用して算出される。
非優先配分クラスの発呼規制セッション制御装置lの配分呼数xi,k,l
=(ui,l/ui,.)・xi,k,. ・・式(9)
【0045】
測定周期k>1では、クラスiの非優先配分クラスの配分呼数xi,k,.は、前測定周期k−1におけるクラスiの発信呼数ai,k-1,.を式(10)に適用して算出される。そして、非優先配分クラスの発呼規制セッション制御装置lの配分呼数xi,k,lは、測定周期k−1におけるクラスiの発信呼数ai,k-1,.を式(11)に適用して算出される。
非優先配分クラスの配分呼数xi,k,.
=(ai,k-1,./Σj∈G−Pj,k-1,.)・(1−g(Rp)・Rp)・X
・・式(10)
非優先配分クラスの発呼規制セッション制御装置lの配分呼数xi,k,l
=(ai,k-1,l/ai,k-1,.)・xi,k,. ・・式(11)
【0046】
≪関数g≫
ここで、関数gについて、説明する。少なくとも、優先配分クラスに配分される呼数の総和は、接続可能呼数X以下でなければならない。ここで、
Rp≡(Σj∈P MAX{sj,aj,k-1,.})/X ・・式(12)
とおくと、Rp>1のときに、優先配分クラスの配分呼数の総和がXを超えることになる。そこで、g(z)≦1/zなる関数g:(0,∞)→(0,∞)を用いて、
i,k,.=g(Rp)・MAX{si,ai,k-1,.} ・・式(13)
と配分する。式(13)の両辺のクラスi∈Pについての総和を算出すると、優先配分クラスの総配分呼数は、式(14)のようになる。
Σj∈Pj,k,.=g(Rp)・Σj∈P MAX{sj,aj,k-1,.}=g(Rp)・Rp・X
・・式(14)
したがって、(Σi∈Pi,k,.)/X=g(Rp)・Rp≦1となり、この配分方法によって、優先配分クラスの配分呼数の総和が接続可能呼数Xを超えることはない。
【0047】
関数g(z)の具体例を図4を用いて説明する。図4の横軸は関数g(z)=α/zにおける変数zであり、縦軸はg(z)の値である。0<α≦1なるαを定めて、0<z≦αの範囲ではg(z)=1とし、α<zの範囲では、g(z)=α/zとする。例えば、α=1であれば、0<z≦1の範囲において、g(z)を常に1とすることが可能となり、優先配分クラスの配分呼数xi,k,.は、単純にMAX{si,ai,k-1,.}とすることができる。
【0048】
次に、トラフィック配分算出装置10、発呼規制セッション制御装置l、および輻輳セッション制御装置50の機能について、図5を用いて説明する。
図5(a)に示すトラフィック配分算出装置10は、測定周期k−1に取得されたトラフィック測定データに基づいて、配分呼数xi,k,lを算出する装置であり、配分値決定部20、測定データ管理部25、およびセッション制御装置用情報蓄積部30を備える。測定データ管理部25は、発呼規制セッション制御装置lからトラフィック測定データを取得し、それらを配分値決定部20へ通知する。次に、配分値決定部20は、測定データ管理部25から通知されたトラフィック測定データを基に、配分呼数xi,k,lを決定する。そして、測定データ管理部25は、配分値決定部20が算出した配分呼数xi,k,lを発呼規制セッション装置lへ通知する。
【0049】
配分値決定部20は、機能として、クラスの定義を行う制御パラメータ管理部21にはクラスの定義を記憶するクラス定義蓄積部22を備え、また、配分呼数xi,k,lを算出する演算を行う演算部23を備える。なお、演算部23は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、このCPUが演算処理等に用いる図示しないメインメモリとによって構成され、アプリケーションプログラムがメインメモリに展開され、CPUが、それを実行することによりそれらの機能を具現化している。また、クラスの定義については、後記する
【0050】
測定データ管理部25は、機能として、発呼規制セッション制御装置lから取得したトラフィック測定データを記憶する測定データ蓄積部26と、配分値決定部20が算出した配分呼数xi,k,lを発呼規制セッション装置lへ通知するセッション制御装置指示部27とを備える。
【0051】
セッション制御装置用情報蓄積部30は、各セッション制御装置40(図1参照)について、そのクラスiの初回配分呼数を記憶するクラス別初回配分呼数蓄積部31、輻輳時の接続可能呼数を記憶する処理可能呼数蓄積部32、平常時のクラスiの着信トラフィック測定データを記憶する平常時クラス別着信トラフィックデータ蓄積部33、および平常時のクラスiの発信トラフィック測定データを記憶する平常時クラス別発信トラフィックデータ蓄積部34を備える。
【0052】
次に、図5(b)に示す発呼規制セッション制御装置lは、発呼規制部41、データ測定部42、SDPパラメータ代表値決定写像蓄積部43、優先順位設定蓄積部44、およびクラス定義蓄積部45を備える。発呼規制部41は、トラフィック配分算出装置10によって算出された配分呼数に基づいて、輻輳セッション制御装置に向かう発呼を規制する。データ測定部42は、発信トラフィック測定データや着信トラフィック測定データを測定する。SDPパラメータ代表値決定写像蓄積部43は、発呼に含まれる一部のSDPパラメータについて、そのパラメータ値が複数存在している場合に、その複数のパラメータ値に対して一つの代表値を対応させる写像(SDPパラメータ代表値決定写像)を記憶する。なお、このSDPパラメータ代表値決定写像については、後記する。優先順位設定蓄積部44は、優先配分クラスの発呼が規制遭遇となった場合、その規制遭遇となった発呼の疎通を確保するための再試行を行うときの、非優先配分クラスの優先順位を記憶する。クラス定義蓄積部45は、トラフィック配分算出装置10のクラス定義蓄積部22に記憶されているクラスの定義と同様のクラスの定義を記憶する。なお、クラス定義蓄積部45に記憶するクラスの定義の記憶内容は、発呼規制セッション制御装置lのオペレータによる図示しない入力手段(キーボード等)の操作またはトラフィック配分算出装置10からの通知等によって取得される。
【0053】
図5(c)に示す輻輳セッション制御装置50は、機能として、少なくとも、発呼規制要求をトラフィック配分算出装置10に送信する発呼規制要求部51を備える。
【0054】
次に、本実施形態における、発呼規制セッション制御装置lとトラフィック配分算出装置10との間の情報の流れを、図6を用いて説明する(適宜図1、図5参照)。
まず、トラフィック配分算出装置10は、輻輳セッション制御装置50から発呼規制要求を受信する(ステップS601)。次に、トラフィック配分算出装置10は、発呼規制要求を送信してきた輻輳セッション制御装置50の接続可能呼数Xを処理可能呼数蓄積部32から読み出す(ステップS602)。そして、発呼規制セッション制御装置lが測定周期k−1における発信呼数ai,k-1,lを、トラフィック配分算出装置10に通知する(ステップS603)。
【0055】
トラフィック配分算出装置10は、発呼規制セッション制御装置lから通知されてきた測定周期k−1の発信呼数ai,k-1,lと既に取得している接続可能呼数Xとを用いて、次測定周期kの配分呼数xi,k,lを算出する(ステップS604)。トラフィック配分算出装置10は、算出した配分呼数xi,k,lを示す接続制御指示信号を、発呼規制セッション制御装置lに通知する(ステップS605)。発呼規制セッション制御装置lは、接続制御指示信号を受信する(ステップS606)。そして、発呼規制セッション制御装置lは、受信した接続制御指示信号に示される配分呼数xi,k,lおよびクラス定義蓄積部45に記憶されたクラスの定義に基づいて、呼数密度値制御を行う。また、図6には示していないが、輻輳セッション規制装置50も、図6に示す発呼規制セッション制御装置lと同様に、受信した接続制御指示信号に示される配分呼数xi,k,lおよびクラス定義蓄積部52に記憶されたクラスの定義に基づいて、呼数密度値制御を行う。なお、呼数密度値は、前記したように、単位時間あたりの呼数である。
【0056】
次に、優先配分クラスにおいて発呼が規制遭遇となった場合、その発呼の疎通を確保するための呼数密度制御の再試行の流れについて、図7を用いて説明する(適宜図5参照)。なお、図7に示した処理は、発呼規制セッション制御装置lが実行する。
始めに、発呼規制セッション制御装置lは、非優先配分クラスの優先順位を設定する。ここでは、非優先配分クラスのクラス数がμで、優先順位mの数値が大きいほど、優先度が低い(規制遭遇になりやすい)ものとする。そして、その優先順位に関する情報は、有線順位設定蓄積部44に記憶される。
【0057】
まず、非優先配分クラスの優先順位mがμに設定される(ステップS701)。すなわち、m=μとする。そして、最下位の優先順位から再試行が開始される。次に、発呼規制部41にて、規制遭遇した発呼を、優先順位mの非優先配分クラスにおける発呼と同様の扱いで呼数密度制御を再試行する(ステップS702)。
そして、疎通となった場合(ステップS703でYes)、優先順位mの非優先配分クラスの単位時間あたりに疎通した呼数を+1する(ステップS706)。
なお、疎通とならなかった場合(ステップS703でNo)、m=1か否かを判定する(ステップS704)。
そして、m=1でない場合(ステップS704でNo)、m=m−1として、優先順位が一つ上位のクラスに移動させ(ステップS707)、ステップS702へ戻る。また、m=1の場合(ステップS704でYes)、この発呼を規制遭遇とする(ステップS705)。
【0058】
≪未規制クラスにおける処理≫
未規制クラスは、一部のクラスを優先的に疎通させるための一つの考え方である。例えば、未規制クラスは、行政における緊急対応機関からの電話等のように、絶対に疎通を確保させるために輻輳制御処理を実行しないクラスである。しかし、未規制クラスは、規制されないために、要求される発呼が設定した呼数より多くなることが想定される。そのような場合に、輻輳セッション制御装置の接続可能呼数Xを超過しないように抑制する必要がある。なお、未規制クラスは、優先配分クラスとは別のクラスであっても、優先配分クラスに含まれていていても構わない。
【0059】
図8を用いて、未規制クラスにおける処理について説明する(適宜図5参照)。なお、図8の処理は、発呼規制セッション制御装置lによって実行される。
まず、セション制御装置指示部27から、全クラスについての呼数密度値の算出についての指示を受信する(ステップS801)。そして、発呼規制部41は、未規制クラスを含む全クラスの総発信呼数を初期値0から加算する(ステップS802)。次に、発呼規制部41は、算出した総発信呼数が全クラスについての呼数密度値未満かを判定する(ステップS803)。
【0060】
算出した総発信呼数が全クラスについての呼数密度値未満の場合(ステップS803でYes)、処理はステップS802へ戻る。また、算出した総発信呼数が全クラスについての呼数密度値未満でない場合(ステップS803でNo)、発呼規制部41は、未規制クラス以外のクラスのすべてについて発呼を規制遭遇とする(ステップS804)。
【0061】
次に、呼数密度の単位時間が終了したか否かが判断される(ステップS805)。呼数密度の単位時間が終了している場合(ステップS805でYes)、処理はステップS802へ戻る。また、呼数密度の単位時間が終了していない場合(ステップS805でNo)、測定周期が終了したか否かが判断される(ステップS806)。そして、測定周期が終了している場合(ステップS806でYes)、処理はステップS801へ戻る。また、測定周期が終了していない場合(ステップS806でNo)、処理はステップS805へ戻る。なお、ステップS805とステップS806の順番は、どちらが先でも構わない。このようにして、未規制クラスを設けても、単位時間あたりに要求される呼数が接続可能呼数Xを超過しないようにトラフィックを制御することが可能となる。
【0062】
≪配分呼数の算出処理の具体例≫
ここで、図3に示した測定周期k=1における配分呼数の算出処理の具体例について、図9を用いて説明する。図9に示すように、輻輳時のクラス別配分値として、クラスAの初期配分呼数が3000呼/分、クラスBの初期配分呼数が7000呼/分であり、発呼規制セッション制御装置l(l=1)の平常時発信呼数ui,1がクラスAについては2700呼/分、クラスBについては300呼/分であり、発呼規制セッション制御装置l(l=2)の平常時発信呼数ui,2がクラスAについては400呼/分、クラスBについては4000呼/分であったとする。
この場合、クラスiごとに、各発呼規制セッション制御装置lの間で、初期配分呼数siを、クラスiごとの平常時発信呼数ui,lの総和に対する発呼規制セッション制御装置lの平常時発信呼数ui,lの割合によって配分呼数を決定する。すなわち、発呼規制セッション制御装置l(l=1)では、クラスAの配分呼数については、初期配分呼数3000呼/分に、2700/(2700+400)を乗算して算出する。同様に、発呼規制セッション制御装置l(l=1)のクラスBの配分呼数については、初期配分呼数7000呼/分に、300/(300+4000)を乗算して算出する。発呼規制セッション制御装置l(l=2)についても同様である。
【0063】
≪クラスの定義≫
次に、本実施形態における通信サービスのクラスの定義について説明する。
すなわち、既存公衆電話網では、特許文献2に記載されるように呼種や方路を用いてクラス分けを行っているが、本実施形態で対象とする発呼に含まれるSIP、SIMPLEの各種メソッドやSDPの規定とは異なるパラメータである。すなわち、本実施形態では、新たな指標に基づくクラスの定義が必要となる。
【0064】
クラスiを元とする集合Gの定義について以下に説明する。集合Gは、対象メソッド集合Θ、対象SDPパラメータ区分集合Λ、発信加入者区分集合Ω、緊急呼区分集合Δで定義される。そして、集合Gは、下記に示す(手順1)〜(手順5)をトラフィック配分算出装置使用者が実施することにより、定義される。そして、その定義した結果は、クラス定義蓄積部22(図5(a)参照)およびクラス定義蓄積部45(図5(b)参照)に蓄積する。以下では、まず、Θ’、Λ’、Ω、Δを定義する。
【0065】
全SIP、SIMPLEメソッド区分集合Θ’:={θ’| θ’はSIP、SIMPLEメソッド。ただし、Initial INVITEとInitial INVITEを除くINVITEは別の元とする。}
Θ’={Initial INVITE, Initial INVITEを除くINVITE, ACK, CANCEL, BYE, REGISTER, OPTIONS, REFER, INFO, SUBSCRIBE, NOTIFY, PRACK, UPDATE, MESSAGE}(IETF-REC 2976,3261,3262,3265,3311,3428,3578,4488参照)
【0066】
SDPパラメータ区分集合Λ’:={φ、λ’i|i∈H;HはSDPに規定されているパラメータの集合。また、φは空集合。}
すなわち、Λ’は、φとλ’iとを元とする集合である。なお、λ’i:=(iのパラメータの名称、そのパラメータiの値域q’i)である。例えば、iのパラメータの名称がbandwidthの場合には、その値域q’iが[0,∞)となる。
【0067】
Ω:={ω| ωは発信加入者区分}とする。
例えば、発信加入者区分が3区分であれば、次のようになる。
Ω={第一発信加入者区分、第二発信加入者区分、第三発信加入者区分}
【0068】
Δ:={δ| δは緊急呼区分}とする。
例えば、緊急呼の種類が消防、救急、海上保安であれば、次のようになる。
Δ={消防、救急、海上保安、緊急呼以外}
【0069】
次に、クラス集合Gを定義する(手順1)〜(手順5)を以下に示す。これらの手順は、トラフィック配分算出装置10を操作するオペレータが実施する。
【0070】
(手順1)
対象メソッド集合ΘとSDPパラメータ区分集合Λ’’を選定する。
まず、全SIP、SIMPLEメソッド区分集合Θ’の中から、対象メソッド集合Θ={θ| θ∈Θ’かつ、θはトラフィック制御対象とするセッション開始/変更に使用するメソッド}を選定する。
同様に、SDPパラメータ区分集合Λ’の中から、制御対象とするトラフィックの選定に必要なパラメータの名称とそのパラメータの値域とを選定する。具体的には、トラフィック制御の上でトラフィックを区別するのに使用するSDPパラメータの集合としてH’⊆HとなるH’を定義する。値域q’jのうち、通信サービスを提供する上で不要な値域を除外したq’’j⊆q’jとなるq’’jを選定する。また、λ’’j:=(jのパラメータ名称、q’’j)と空集合φとを元とする集合をΛ’’:={φ、λ’’j|j∈H’}とする。
【0071】
ここで、λ’’jの具体例を4つ示す。
(例1)SDPパラメータMediaTypeの値域からtextを不要な値域で選定外とした場合(IETF-RFC 4566,4856参照)
λ’’m=(media_type, {audio, video, application, message, audio/DV14, audio/G722, audio/G723, audio/G726-16, audio/G726-24, audio/G726-32, audio/G726-40, audio/G728, audio/G729, audio/G729D, audio/G729E, audio/GSM, audio/GSM-EFR, audio/L8, audio/L16, audio/LPC, audio/PCMA, audio/PCMU, audio/VDVI, video/nv})
【0072】
(例2)SDPパラメータattributesの値域からrecvonly,sendrecv,sendonlyのみを選定(inactive,rtpmapその他は不要な値域で選定外)とした場合(IETF-RFC 4566参照)
λ’’a=(attributes, {recvonly, sendrecv, sendonly})
(例3)SDPパラメータbandwidthの値域から帯域[0,∞)(kb/s)を選定(全値域を選定)した場合(IETF-RFC 4566参照)
λ’’b=(bandwidth,[0,∞))(kb/s)
(例4)SDPパラメータRtp payload typeの値域から{0,1,2,・・・,126,127}を選定(全値域を選定)した場合(http://www.iana.org/assignments/rtp-parameters参照)
λ’’r=(Rtp_payload_type, {0,1,2,・・・,126,127})
【0073】
(手順2)
前記したλ’’bのように、値域が非加算であったり、加算できても値域の要素数が多い場合に、クラス定義に用いることのできる程度の要素数にまとめる。
q’’jの値域を、トラフィックを区別するクラスを規定していくのに適当な数の区分数にするために、q’’jを直和分割する。このとき、q’’jを直和分割したものをq’’’jと表記し、λ’’’j:=(パラメータjの名称、q’’’j)とする。また、λ’’’jと空集合φとを元とする集合を対象SDPパラメータ区分集合Λとする。
【0074】
ここで、λ’’’jの具体例を2つ示す。
(例1)bandwidthの値域(kb/s)を0、0超え100以下、100超え1000以下、1000超え10000以下、10000超え100000以下、100000超え、の各区分に分ける場合
λ’’’b=(bandwidth, {[0,0], (0,100], (100,1000], (1000,10000], (10000,100000], (100000,∞)})(kb/s)
(例2)Rtp payload typeの値域をaudio,video,audio-video,?,N/Aの5区分に分ける場合(IETF-REC 3551参照)
λ’’’r=(Rtp_payload_type, {{0,1,2,・・,23}、{24,25,・・,31,32,34}、{33}、{35,36,・・,70,71,77,78,・・,126,127}、{72,・・,76})
【0075】
(手順3)
集合G’=Θ×Λ×Ω×Δと定義する。
【0076】
(手順4)
一部のメソッドは送信データにSDPパラメータを搭載しない(IETF-RFC 2976,3261,3262,3265,3311,3428,3578,4488によれば、MESSAGE,SUBSCRIBE,NOTIFYが該当する)ため、φ∈Λ以外のΛの元を集合G’から除外し、G’’と定義する。つまり、G’’:={(θ、λ、ω、δ)∈G’| θ=MESSAGE or SUBSCRIBE or NOTIFY のときλ=φ}とする。
【0077】
(手順5)
集合G’’を、トラフィック制御を実施する上で、適切に直和分割したものをクラス集合Gと定義する。
【0078】
前記した(手順1)〜(手順5)の結果、クラスの定義内容が定まる。この定義内容例を図11に示すが、発信加入者区分とメソッド種別区分およびSDPパラメータ区分とが直和分割されている。また、図11には、各クラス1〜8を識別するパラメータが記載されている。なお、クラスの定義内容は、オペレータによる図示しない入力手段(キーボード等)の操作等により、予め用意しておいたクラス定義蓄積部22およびクラス定義蓄積部45に記憶され、配分値決定部20が配分呼数xi,k,lを算出する際に参照される。なお、クラスの定義が同じになる場合には、(手順1)と(手順2)とはどちらを先に実行してもよく、(手順2)は(手順4)を行いながら実行してもよく、(手順3)は(手順4)の後に実行してもよい。すなわち、前記した手順の順番を問わない。
【0079】
≪SDPパラメータ代表値決定写像≫
なお、発呼規制セッション制御装置lで受信するセッション開始/変更の信号一つの中において、一部のパラメータjについてはパラメータ値が複数載っている場合がある。
例えば、MediaTypeの値としてaudio, videoが混在で載っている場合、それらの組み合わせを1つのMediaType代表値”video”に対応させる(図10参照)。この写像の情報はSDPパラメータ代表値決定写像蓄積部43(図5(b)参照)に格納しておく。またMediaTypeが複数値の場合、その各々についてRTP Payload Type値も定められるので、当該信号上で”video”のエンコード用に指定されているRTP Payload Type値をRTP Payload Type代表値とする。
【0080】
一般には、attribute、MediaType、bandwidthについては、複数載っているパラメータ値から一つの代表元を写像する。こうした複数パラメータ値に対して1つの代表値を対応させる写像(以下、「SDPパラメータ代表値決定写像」)hjは次のように表せる。
j: ( λ’’’j)|λ’’’j| → λ’’’j
ここに、|λ’’’j|はλ’’’jの要素数であり、( λ’’’j)|λ’’’j|は|λ’’’j|回だけλ’’’jの直積を取ることを表す。
【0081】
そして、SDPパラメータ代表値決定写像蓄積部43は、j=attribute、MediaType、bandwidthの各々に対するSDPパラメータ代表値決定写像hjを格納する(λ’’’jの要素数は高々有限であるから、|λ’’’j|個の組み合わせに対してその中から代表元を対応させるという設定データをSDPパラメータ代表値決定写像蓄積部43に格納しておくことで実装できる)。
【0082】
一方、RTP Payload Type値は上記例のとおり代表MediaType値に対応した値を定める。つまり、RTP Payload Typeに関するSDPパラメータ代表値決定写像
hr: MediaTypeの値域 → RTP Payload Typeの値域
において、
hr(hm((λ’’’m)|λ’’’m|))= 当該のSDPの記述の内でhm((λ’’’m)|λ’’’m| )と同じ行に設定されているRTP Payload Type値とする(図10の例ではこの値は”96”)。
また発呼規制セッション制御装置lが、セッション開始/変更の各信号がどのクラスに該当するか識別する際は、当該信号の各SDPパラメータの代表値を用いるものとする(図11参照)。
【0083】
クラス定義蓄積部22,45に蓄積したクラスの中から、セッション開始/変更要求のプロトコルヘッダから該当するクラスを識別する処理の一例について、図10を用いて説明する。図10に示すリクエスト例は、SIPを用いたセッション開始/変更要求の主要な部分を示した一例である。ヘッダ部分のスタートラインには「INVITE(セッション参加リクエスト)」で始まる文があり、メッセージヘッダには宛先の文があり、ヘッダ部分の終わりを示すのに用いられる改行がある。次に、メッセージボディには、SDP等、SIPメッセージで転送される付加情報が記載されている。「a=」の直後の第一パラメータはattribute値であって、図10ではsendrecv、rtpmap、fmtpの場合を示しているが、これはあくまでも例示であり、この他にも別のattribute値がある。図10ではクラス定義蓄積部に蓄積したattribute値(例:sendonly、recvonly、sendrecv)のどれがプロトコルヘッダ上に載っているか有効行のみサーチしとし、該当しているattribute値(例:sendrecv)を識別する。また、「m=」の直後の第一パラメータはメディア種別を表記していて、audioとvideoが載っている例を示す。この他にも別のMediaType値がある。図10ではaudioとvideoのMediaTypeが混在して載っているが、予めSDPパラメータ代表値決定写像蓄積部43(図5(b)参照)に格納しておいたSDPパラメータ代表値決定写像により、MediaType代表値”video”に対応させる。またMediaTypeが複数値の場合、その各々についてRTP Payload Type値も定められる(RTP Payload Typeに関するSDPパラメータ代表値決定写像)。図10ではRTP Payload Typeに関するSDPパラメータ代表値決定写像により、当該信号上でMediaType代表値”video”のエンコード用に指定されているRTP Payload Type値をRTP Payload Type代表値とする。図10では「b=」の後の第二パラメータ(コロンの直後のパラメータ)は、bandwidth値であって、図10では「10000」と表記されている。すなわち、(1000,10000](1000超え10000以下)に該当することが分かる。なお、図10に示したbandwidth値[0,0]、(0,100]、(100,1000]、(1000,10000]、(10000,100000]、(100000,∞)は、あくまでも例示であり、これと異なる区間設定であっても構わない。
【0084】
(変形例)
前記した実施形態においては、図1に示すように、トラフィック配分算出装置10とセッション制御装置40とは別個の装置として説明した。この変形例では、発呼規制セッション制御装置l(図5(b)参照)の機能とトラフィック配分算出装置10の機能(図5(a)参照)とを併せ持つ、トラフィック制御システム60について、図12を用いて説明する。
【0085】
図12に示すように、変形例におけるトラフィック制御システム60は、図5(a)に示すトラフィック配分算出装置10および図5(b)に示す発呼規制セッション制御装置lのそれぞれの機能を備える。なお、トラフィック配分算出装置10および発呼規制セッション制御装置lの機能については、既に本実施形態において説明したとおりであるので、個々の詳細な説明を省略する。なお、トラフィック制御システム60は、図1に示すセッション制御装置40の位置において用いることができる。そして、本実施形態において説明したとおり、優先的に一部(優先配分クラス)のトラフィックの疎通を確保することができる。
【0086】
以上、本実施形態のトラフィック配分算出装置10および発呼規制セッション制御装置lによれば、測定周期k>1(ただし、輻輳検出直後の測定周期kを0とする)においては、式(1)のMAX(・・)に示すように、初期配分呼数または前測定周期k−1での発信呼数のいずれか大きい方を選択しているので、常に初期配分呼数を確保しつつ、発信呼数のトレンドに見合った配分呼数を確保することが可能となる。そのため、優先的に一部(優先配分クラス)のトラフィックの疎通を確保することができる。また、優先配分クラスの呼が規制遭遇となった場合には、非優先配分クラスの優先度の最下位から順に再接続を行って、最終的に、その呼を優先して疎通させる再試行を実行する。このことによって、トラフィックの輻輳時に優先的に一部のトラフィックの疎通を確保することが可能となる。また、クラスの定義を、SIP、SIMPLEメソッド区分集合やSDPパラメータ区分集合のパラメータと、発信加入者区分と、緊急呼区分とのいずれかの組み合わせによって行うことができる。
【0087】
また、本実施形態において、トラフィック配分算出装置10(図5(a)参照)の各部の処理および発呼規制セッション制御装置l(図5(b)参照)の各部の処理について説明したが、これらの処理は、トラフィック配分算出装置10および発呼規制セッション制御装置lをそれぞれコンピュータで実現したときに搭載されるプログラムによって実現されてもよい。このプログラムは、通信回線を介して提供することもできるし、CD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 トラフィック配分算出装置
20 配分値決定部
21 制御パラメータ管理部
22 クラス定義蓄積部
23 演算部
25 測定データ管理部
26 測定データ蓄積部
27 セッション制御装置指示部
30 セッション制御装置用情報蓄積部
31 クラス別初回配分呼数蓄積部
32 処理可能呼数蓄積部
33 平常時クラス別着信トラフィックデータ蓄積部
34 平常時クラス別発信トラフィックデータ蓄積部
40 セッション制御装置
41 発呼規制部
42 データ測定部
43 SDPパラメータ代表値決定写像蓄積部
44 優先順位設定蓄積部
45 クラス定義蓄積部
50 輻輳セッション制御装置
51 発呼規制要求部
60 トラフィック制御システム
90 端末
l 発呼規制セッション制御装置(発呼規制側のセッション制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP網のC−planeに用いられる複数のセッション制御装置のいずれかの輻輳時に、輻輳した前記セッション制御装置である輻輳セッション制御装置へ処理を要求するセッション開始/変更要求である発呼のうち、前記輻輳セッション制御装置での処理が可能な発呼の呼数である接続可能呼数をXとし、当該輻輳セッション制御装置へ加わる発呼を、その発呼に含まれる情報に基づいて定義されたクラスiごとに、前記輻輳セッション制御装置へ向かう発呼を受信する前記セッション制御装置である発呼規制側のセッション制御装置lにおいて周期的に行われるトラフィック測定に基づいて、測定周期k−1のトラフィック測定データから算出されるクラスの集合Gに属するクラスiの発信呼数をai,k-1,lとし、当該発信呼数ai,k-1,lに基づいて、前記接続可能呼数Xを次測定周期kでのクラスiごとの配分呼数xi,k,・に配分し、クラスiの前記輻輳セッション制御装置へ加わる呼数をxi,k,・以下になるように規制することによって、前記輻輳セッション制御装置が受け付ける呼数合計を前記接続可能呼数X以下に制限するトラフィック配分算出装置において用いられるトラフィック配分算出方法において、
前記トラフィック配分算出装置は、演算部と前記クラスの定義を記憶する蓄積部とを備え、
前記演算部は、前記蓄積部から読み出した前記クラスiを、輻輳時に優先して疎通を確保する優先配分クラスと輻輳時に優先して疎通を確保しない非優先配分クラスとに振り分け、また前記蓄積部からクラスiごとに予め定めた所定値の初期配分呼数siを読み出し、
輻輳検出直後の測定周期kをk=0として、測定周期k>1の場合に、
zに関する関数g(z)≦1/zなる関数g:(0,∞)→(0,∞)を用いて、測定周期kの各優先配分クラスのクラスiの配分呼数xi,k,・
i,k,・=g(Rp)・MAX{si,ai,k-1,・} ・・式(1)
として算出し、
測定周期kの各非優先配分クラスのクラスiの配分呼数xi,k,・
i,k,・=(ai,k-1,・j∈非優先配分クラスの集合j,k-1,・)・(1−g(Rp)・Rp)・X
・・式(2)
として算出する
ことを特徴とするトラフィック配分算出方法。
ただし、Rp=(Σi∈優先配分クラスの集合MAX{si,ai,k-1,・})/X、s=X、ai,k-1,・およびxi,k,・の中点「・」は、ドット記法であり、すべての前記発呼規制側のセッション制御装置lについての総和を表す。
【請求項2】
前記演算部は、測定周期k>1の場合に、
前記発呼規制側のセッション制御装置lに配分する、測定周期kのクラスiの配分呼数xi,k,lを、
i,k,l=(ai,k-1,l/ai,k-1,.)・xi,k,. ・・式(3)
として算出すること
を特徴とする請求項1に記載のトラフィック配分算出方法。
【請求項3】
前記演算部は、前記蓄積部から前記初期配分呼数siを読み出して、
測定周期k=1の場合に、クラスiの配分呼数xi,k,・を、
i,k,・=si ・・式(4)
とすること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のトラフィック配分算出方法。
ただし、s=Xである。
【請求項4】
前記演算部は、測定周期k=1の場合に、平常時のトラフィック測定データから算出されるクラスの集合Gに属するクラスiの平常時発信呼数をui,l(クラスi、発呼規制側のセッション制御装置l)とし、当該平常時発信呼数に基づいて、
前記発呼規制側のセッション制御装置lに配分する、測定周期kのクラスiの配分呼数xi,k,lを、
i,k,l=(ui,l/ui,.)・xi,k,. ・・式(5)
として算出すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のトラフィック配分算出方法。
【請求項5】
前記演算部は、
発呼に含まれるSIP(Session Initiation Protocol)、SIMPLE(SIP for Instant Messaging and Presence Leveraging Extensions)の各種メソッド、およびSDP(Session Description Protocol)のパラメータと、発信加入者区分と、緊急呼区分とのいずれかの組み合わせによって、前記クラスを定義すること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のトラフィック配分算出方法。
【請求項6】
IP網のC−plane(呼制御信号プレーン)に用いられる複数のセッション制御装置のいずれかの輻輳時に、輻輳した前記セッション制御装置である輻輳セッション制御装置へ処理を要求するセッション開始/変更要求(以降、セッション開始/変更要求を発呼と称す)のうち、前記輻輳セッション制御装置での処理が可能な発呼の呼数である接続可能呼数をXとし、当該輻輳セッション制御装置へ加わる発呼を、その発呼に含まれる情報に基づいて定義されたクラスiごとに、前記輻輳セッション制御装置へ向かう発呼を受信する前記セッション制御装置である発呼規制側のセッション制御装置lにおいて周期的に行われるトラフィック測定に基づいて、測定周期k−1のトラフィック測定データから算出されるクラスの集合Gに属するクラスiの発信呼数をai,k-1,l(クラスi、測定周期k−1、発呼規制側のセッション制御装置l)とし、当該発信呼数ai,k-1,lに基づいて、前記接続可能呼数Xを次測定周期kでのクラスiごとの配分呼数xi,k,・に配分し、クラスiの前記輻輳セッション制御装置へ加わる呼数をxi,k,・以下になるように規制することによって、前記輻輳セッション制御装置が受け付ける呼数合計を前記接続可能呼数X以下に制限するトラフィック配分算出装置であって、
前記発呼規制側のセッション制御装置から前記トラフィック測定データを受け取り、これを蓄積すると共に、下記配分値決定部に前記発信呼数を通知し、その配分値決定部の算出結果である前記配分呼数を前記発呼規制側のセッション制御装置に通知する測定データ管理部と、
前記測定データ管理部から前記トラフィック測定データを受け取り、当該トラフィック測定データを基に請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のトラフィック配分算出方法で前記配分呼数を算出する配分値決定部と
を備えることを特徴とするトラフィック配分算出装置。
【請求項7】
請求項6に記載のトラフィック配分算出装置から取得した配分呼数xi,k,lに基づいて発呼の接続を判定する前記発呼規制側のセッション制御装置において、
前記セッション制御装置は、発呼規制の制御を行う発呼規制部とセッション開始/変更要求である発呼に含まれる情報に基づいて定義されたクラスの定義を記憶する蓄積部とを備え、
前記発呼規制部が、
前記取得した配分呼数xi,k,lに基づいて、当該蓄積部に記憶されたクラスiの発呼の疎通を確保するか規制遭遇とするかの判定を行った結果、
前記優先配分クラスの発呼が規制遭遇となった場合、
前記非優先配分クラスの優先度の最下位のクラスから順に再接続を行って、疎通可能となったか否かを判定し、疎通可能と判定されたクラスを介してその規制遭遇となった発呼を優先して疎通させる再試行を実行すること
を特徴とするセッション制御装置。
【請求項8】
前記発呼規制側のセッション制御装置は、
時間を計測する手段と、前記トラフィック配分算出装置から受信した前記配分呼数に基づいて、所定の単位時間あたりの呼数である呼数密度値を用いて発呼規制を行う手段とを備え、
発呼規制を行わない未規制クラスにおける処理として、下記の(81)、(82)、(83)の処理を順に行い、
(81)前記トラフィック配分算出装置から全クラスについての呼数密度値の算出の指示を受信し、
(82)前記未規制クラスを含む全クラスの総発信呼数を初期値0から加算し、
(83)当該総発信呼数が全クラスについての呼数密度値未満か否かを判定し、
当該総発信呼数が全クラスについての呼数密度値未満の場合は、再び、(82)へ戻り、
当該総発信呼数が全クラスについての呼数密度値未満でない場合は、未規制クラス以外のクラスのすべてについて発呼を規制遭遇とし、
呼数密度の前記単位時間が終了した場合には、再び(82)へ戻って処理を順に実行し、
前記測定周期が終了した場合には、再び(81)へ戻って処理を順に実行する
ことを特徴とする請求項7に記載のセッション制御装置。
【請求項9】
前記発呼規制側のセッション制御装置は、
受信した発呼に含まれるSDPのパラメータについて、そのパラメータのパラメータ値が複数ある場合に該複数のパラメータ値に対して1つの代表値を対応させるSDPパラメータ代表値決定写像と、SDPのパラメータに基づいて定義されたクラスとを記憶し、
受信した発呼がどのクラスに該当するかを、前記SDPパラメータ代表値決定写像を用いて決定すること
を特徴とする請求項7または請求項8に記載のセッション制御装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のトラフィック配分算出方法を、コンピュータとしての前記トラヒック配分算出装置に実行させるためのトラフィック制御プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項11】
コンピュータを請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の発呼規制側のセッション制御装置として機能させるためのセッション制御プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−206542(P2010−206542A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49923(P2009−49923)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】